(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20230511BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20230511BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230511BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230511BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G08G1/16 A
G09B29/00 A
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2019043125
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明子
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257518(JP,A)
【文献】特開2010-266323(JP,A)
【文献】特開2011-226979(JP,A)
【文献】特開2018-146498(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168553(WO,A1)
【文献】特開2020-119397(JP,A)
【文献】特開2010-097443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両のドライバの運転の熟練度を取得する熟練度取得部と、
複数の前記車両の位置情報
と、複数の前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを取得する車両情報取得部と、
前記熟練度
と、前記位置情報
と、前記走行経路とに基づいて、
所定時間後の前記熟練度に応じた前記車両の
位置の分布を示すリスクマップを
時間毎に生成する
リスクマップ生成部と、
前記リスクマップの任意の領域において、前記車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する前記車両が存在する台数の割合である評価点を算出する評価点算出部と、
を備え
、
前記リスクマップ生成部は、時間毎に変化する前記評価点が所定のしきい値より高い前記領域を示す前記リスクマップを生成することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記評価点が
所定のしきい値より高い
前記領域を回避する回避ルートを生成する回避ルート生成部を備えることを特徴とする、請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記回避ルートを車両側へ送信する処理を行う送信処理部を備えることを特徴とする、請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記
リスクマップを車両側へ送信する処理を行う送信処理部を備えることを特徴とする、請求項1~
3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記熟練度は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、判定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
車両のドライバの運転の熟練度を判定する熟練度判定部と、前記熟練度と前記車両の位置情報
と、前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを送信する処理を行う送信処理部と、を有する車両の制御装置と、
複数の前記車両の
ドライバの運転の前記熟練度を取得する熟練度取得部と、複数の前記車両の前記位置情報
と、複数の前記車両の前記走行経路とを取得する車両情報取得部と、前記熟練度
と、前記位置情報
と、前記走行経路とに基づいて、
所定時間後の前記熟練度に応じた前記車両の
位置の分布を示すリスクマップを
時間毎に生成する
リスクマップ生成部と、
前記リスクマップの任意の領域において、前記車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する前記車両が存在する台数の割合である評価点を算出する評価点算出部と、を有する、情報処理装置と、
を備え
、
前記リスクマップ生成部は、時間毎に変化する前記評価点が所定のしきい値より高い前記領域を示す前記リスクマップを生成することを特徴とする、情報処理システム。
【請求項7】
車両のドライバの運転の熟練度を
判定する熟練度
判定部と、
前記熟練度と前記車両の位置情報
と、前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを送信する処理を行う送信処理部と、
複数の車両の
ドライバの運転の前記熟練度
と、前記位置情報
と、前記走行経路とに基づいて生成された、
所定時間後の前記熟練度に応じた車両の
位置の分布を示すリスクマップを受信する受信処理部と、
を備え
、
前記リスクマップは、車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する車両が存在する台数の割合である評価点が、前記所定時間後において所定のしきい値より高い領域を示すことを特徴とする、車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、運転者の技能レベルに応じたアドバイスを警報装置に表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初心者運転者標識は、運転免許取得後、1年未満の運転者の交通事故防止と保護を目的に義務化されている。しかしながら、初心者運転者標識は、実際のドライバの運転スキルに関わらず、年数のみに基づき装着される標識であるため、非熟練者の交通事故防止や保護につながるとは限らなかった。また、運転免許取得後、1年以上経過した者が初心者運転者標識を表示しても法的には問題はないものの、そのような活用はそもそも想定されていなかった。従って、現状では、ドライバの熟練、非熟練を判定し、判定結果に応じたサービスを提供するシステムは構築されていない。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術は、運転者の技能レベルに応じたアドバイスを提供することは想定しているものの、ドライバの熟練、非熟練を判定し、判定結果に応じたサービスを提供することに関して、何ら考慮するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、走行する車両のドライバの運転の熟練度を認識することが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、情報処理システム及び車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の車両のドライバの運転の熟練度を取得する熟練度取得部と、複数の前記車両の位置情報と、複数の前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを取得する車両情報取得部と、前記熟練度と、前記位置情報と、前記走行経路とに基づいて、所定時間後の前記熟練度に応じた前記車両の位置の分布を示すリスクマップを時間毎に生成するリスクマップ生成部と、前記リスクマップの任意の領域において、前記車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する前記車両が存在する台数の割合である評価点を算出する評価点算出部と、を備え、前記リスクマップ生成部は、時間毎に変化する前記評価点が所定のしきい値より高い前記領域を示す前記リスクマップを生成する、情報処理装置が提供される。
【0011】
また、前記評価点が所定のしきい値より高い前記領域を回避する回避ルートを生成する回避ルート生成部を備えるものであっても良い。
【0012】
また、前記回避ルートを車両側へ送信する処理を行う送信処理部を備えるものであっても良い。
【0013】
また、前記リスクマップを車両側へ送信する処理を行う送信処理部を備えるものであっても良い。また、前記熟練度は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、判定されてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両のドライバの運転の熟練度を判定する熟練度判定部と、前記熟練度と前記車両の位置情報と、前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを送信する処理を行う送信処理部と、を有する車両の制御装置と、複数の前記車両のドライバの運転の前記熟練度を取得する熟練度取得部と、複数の前記車両の前記位置情報と、複数の前記車両の前記走行経路とを取得する車両情報取得部と、前記熟練度と、前記位置情報と、前記走行経路とに基づいて、所定時間後の前記熟練度に応じた前記車両の位置の分布を示すリスクマップを時間毎に生成するリスクマップ生成部と、前記リスクマップの任意の領域において、前記車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する前記車両が存在する台数の割合である評価点を算出する評価点算出部と、を有する、情報処理装置と、を備え、前記リスクマップ生成部は、時間毎に変化する前記評価点が所定のしきい値より高い前記領域を示す前記リスクマップを生成する、情報処理システムが提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両のドライバの運転の熟練度を判定する熟練度判定部と、前記熟練度と前記車両の位置情報と、前記車両の現在地から目的地までの走行経路とを送信する処理を行う送信処理部と、複数の車両のドライバの運転の前記熟練度と、前記位置情報と、前記走行経路とに基づいて生成された、所定時間後の前記熟練度に応じた車両の位置の分布を示すリスクマップを受信する受信処理部と、を備え、前記リスクマップは、車両の総数における前記熟練度が低いドライバが運転する車両が存在する台数の割合である評価点が、前記所定時間後において所定のしきい値より高い領域を示す、車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走行する車両のドライバの運転の熟練度を認識することが可能な、情報処理装置、情報処理システム及び車両の制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両システムと、その周辺の構成を示す模式図である。
【
図2】車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図3】車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図4A】
図3のステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。
【
図4B】Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
【
図5】熟練度に応じた地図情報(リスクマップ)を生成し、リスク回避のための推奨ルートを設定する処理を示すフローチャートである。
【
図6】、リスクマップ生成部2020が生成したリスクマップの例を示す模式図である。
【
図7】
図6に示す領域A1,A2を回避したリスク回避ルートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両システム1000と、その周辺の構成を示す模式図である。車両システム1000は、基本的には自動車などの車両に構成されるシステムである。
図1に示すように、車両システム1000は、車外センサ100、車両センサ200、操舵角センサ300、制御装置400、車内表示装置500、車外表示装置600、ナビゲーション装置700、通信装置800を有して構成されている。車両システム1000は、外部のサーバ2000と通信可能に構成されている。
【0020】
車外センサ100は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。車外センサ100がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置400へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0021】
車両センサ200は、車両の速度、加速度、角速度、ヨーレートなど、車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されている情報を取得する。なお、これらの情報は、各種センサから取得することができる。操舵角センサ300は、ステアリングホイールに装着され、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
【0022】
制御装置400は、車両のドライバの運転の熟練度を判定し、サーバ2000へ送る。このため、制御装置400は、熟練度判定部(熟練度取得部)402、通信処理部404、ドライバ認証部406、表示制御部408、走行経路推定部410、リスク回避ルート生成部412を有している。熟練度判定部402は、車両のドライバの運転の熟練度を判定する。通信処理部404は、熟練度判定部402が判定したドライバの熟練度、車両の位置情報、走行経路の情報などを、通信装置800を介してサーバ2000へ送信する処理を行う。また、通信処理部404は、サーバ2000側で生成された地図情報(リスクマップ)、リスク回避ルートの情報を、通信装置800を介して受信する処理を行う。ドライバ認証部406は、車両を運転するドライバの認証を行う。なお、認証方法の一例として、ドライバが入力した氏名やIDを認証する方法、ドライバの顔または指紋などを認証する方法が挙げられるが、認証方法としては様々な手法を用いることができる。走行経路推定部410は、走行経路を推定する。リスク回避ルート生成部412は、サーバ2000側で生成されたリスクマップに基づいて、リスク回避ルートを生成する。なお、後述するが、リスク回避ルート生成部412は、サーバ2000側に設けられていれば、制御装置400側に設けられていなくても良い。
図1に示す制御装置400の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0023】
車内表示装置500は、例えば車内のダッシュパネル、メータ周り等に表示を行う装置である。車外表示装置600は、車両外部に向けて表示を行う装置である。なお、車内表示装置500、車外表示装置600は、HUD(Head-up Display)装置から構成されていても良い。HUD(Head-up Display)装置は、人間の視野に直接情報を映し出す表示装置であって、自動車のフロントガラスやリアガラスなどのガラス上に実像または虚像を表示する。
【0024】
通信装置800は、車両外部と通信を行い、渋滞情報、道路情報などの各種情報を受信する。また、通信装置800は、ドライバの熟練度、車両の位置情報、走行経路の情報などのサーバ2000に送信するとともに、リスクマップ、リスク回避ルートの情報をサーバ2000から受信する。なお、通信装置800とサーバ2000との間の通信は無線により行われるが、通信方式は特に限定されるものではない。
【0025】
ナビゲーション装置700は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置700は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置700は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0026】
サーバ2000は、車両側で判定したドライバの熟練度の情報を取得し、ドライバの熟練度と車両の位置に基づいて、熟練度に応じた車両の位置の分布を示す地図情報(リスクマップ)を作成する。また、サーバ2000は、作成した地図情報に基づいて、ドライバの推奨ルートを設定し、推奨ルートをドライバに提供する。これにより、例えば、熟練度の低いドライバが密集する領域を避けてルート設定を行うことができる。
【0027】
このため、サーバ2000は、熟練度取得部2010、リスクマップ生成部2020、リスク回避ルート生成部2030、車両情報取得部2040、通信処理部2050、評価点算出部2060を有している。熟練度取得部2010は、車両システム1000側から送信された、ドライバの運転の熟練度を取得する。リスクマップ生成部2020は、熟練度及び車両の位置情報に基づいて、熟練度に応じた車両の位置の分布を示すリスクマップを生成する。リスク回避ルート生成部2030は、熟練度に応じたリスクを回避するリスク回避ルートを生成する。車両情報取得部2040は、車両の位置情報、走行経路などの情報を取得する。通信処理部2050は、車両システム1000側から送信された、ドライバの運転の熟練度、車両の位置情報、走行経路を受信する処理を行うとともに、リスクマップ、リスク回避ルートを車両システム1000側に送信する処理を行う。評価点算出部2060は、あるエリアにおける車両の総数に対する非熟練ドライバが運転する車両の台数をリスク評価点として算出する。なお、リスクマップ生成部2020は、リスクマップを生成する代わりに、リスクマップを他の装置から取得しても良い。
【0028】
なお、サーバ2000の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0029】
図2及び
図3は、車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
図2及び
図3の処理は、制御装置400により所定の周期毎に行われ、主に熟練度判定部402によって行われる。
図2は、カーブ走行区間に基づいて、ドライバの熟練度を判定する処理を示している。なお、カーブは単一のカーブであっても良いし、複数のカーブを平均しても良い。
【0030】
先ず、ステップS10では、車両センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行したか否かを判定する。具体的に、ステップS10では、ヨーレートが第1のしきい値X1よりも大きく、第2のしきい値X2よりも小さい場合は、車両がカーブを走行したと判定する。車両がカーブを走行した場合はステップS12へ進み、車両がカーブを走行していない場合は、処理を終了する。
【0031】
ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したか否かを判定する。具体的に、ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えているか否かを判定し、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えている場合は、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したと判定し、ステップS16へ進む。
【0032】
ステップS16では、車両センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行している時間t1の中で、ヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を取得する。次のステップS18では、Z秒間における操舵角速度αまたは操舵角加速度βを算出する。次のステップS20では、操舵角速度αまたは操舵角加速度βの標準偏差σを算出する。
【0033】
次のステップS22では、標準偏差σの値が所定のしきい値Tよりも大きいか否かを判定し、標準偏差σが所定のしきい値Tよりも大きい場合はステップS24へ進む。ステップS24へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的大きいため、操舵が不安定であると考えられる。従って、ステップS24では、車両のドライバが非熟練者であると判定する。ステップS24の後は処理を終了する。
【0034】
一方、ステップS22で標準偏差σの値が所定のしきい値T以下の場合は、ステップS26へ進む。ステップS26へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的小さいため、操舵が安定していると考えられる。従って、ステップS26では、車両のドライバが熟練者であると判定する。ステップS26の後は処理を終了する。
【0035】
図4Aは、ステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。また、
図4Bは、Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
図4Bに示すように、熟練者の方が非熟練者よりも操舵角速度の分布が狭くなり、標準偏差の値が小さくなる。
【0036】
図3は、直線走行区間に基づいて、ドライバの熟練度を判定する処理を示している。この処理では、直線でのふらつきを横加速度の標準偏差から評価し、熟練度を判定する。先ず、ステップS30では、車両センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両が直線を走行したか否かを判定する。具体的に、ステップS30では、ヨーレートが所定のしきい値Xよりも小さい場合は、車両が直線を走行したと判定する。車両が直線を走行した場合はステップS32へ進み、車両が直線を走行していない場合は、処理を終了する。
【0037】
ステップS32では、車両が直線を走行している時間t1が一定時間継続したか否かを判定する。具体的に、ステップS32では、車両が直線を走行している時間t1がしきい値Yを超えているか否かを判定し、車両が直線を走行している時間t1がしきい値Yを超えている場合は、車両が直線を走行している時間t1が一定時間継続したと判定し、ステップS36へ進む。
【0038】
ステップS36では、車両センサ200が取得した車両の横加速度に基づいて、車両が直線を走行している時間t1の中で、直線走行区間の横加速度を取得する。次のステップS38では、ステップS36で取得した横加速度の標準偏差γを算出する。
【0039】
次のステップS40では、標準偏差γの値が所定のしきい値Sよりも大きいか否かを判定し、標準偏差γが所定のしきい値Sよりも大きい場合はステップS42へ進む。ステップS42へ進んだ場合は、横加速度のバラツキが比較的大きいため、車両挙動が不安定であると考えられる。従って、ステップS42では、車両のドライバが非熟練者であると判定する。ステップS42の後は処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS40で標準偏差γの値が所定のしきい値S以下の場合は、ステップS44へ進む。ステップS44へ進んだ場合は、横加速度のバラツキが比較的小さいため、車両挙動が安定していると考えられる。従って、ステップS44では、車両のドライバが熟練者であると判定する。ステップS44の後は処理を終了する。
【0041】
熟練度判定部402は、予め熟練度が判明しているドライバについては、ドライバ認証部406による認証の結果に基づいて熟練度を判定しても良い。例えば、過去に非熟練者として判定したドライバAが車両を運転する場合に、ドライバ認証部406によってドライバAであることが認証されると、
図2、
図3に示した処理を行うことなく、ドライバAを非熟練者と判定することができる。
【0042】
また、ドライバの熟練度の判定方法として、
図2及び
図3に示した方法以外の方法を用いても良い。例えば、加減速の滑らかさをアクセル開度変化率の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、直線でのふらつきを、GPSまたは白線検知などから得られる走行軌跡に基づいて評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、走行軌跡以外にも、操舵角速度の周波数解析結果、操舵角速度の絶対値が所定値を超えた時間(または回数)、ヨーレートの標準偏差、車線逸脱回数などをしきい値で評価しても良い。更に、車間の取り方を衝突余裕時間の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を評価しても良い。
【0043】
以上のような車両のドライバの熟練度の判定に基づいて、本実施形態では、サーバ2000が複数の車両から情報を取得することで、サーバ2000側で、熟練度に応じた地図情報を生成する。そして、生成した地図情報に基づいて、推奨ルートを設定し、各車両に提供する。
図5は、熟練度に応じた地図情報を生成し、リスク回避のための推奨ルートを設定する処理を示すフローチャートである。
【0044】
図5において、ステップS50~S56,S68,S72,S74の処理は、車両の制御装置400で行われる。また、ステップS58~S66,S70の処理は、サーバ2000で行われる。先ず、ステップS50では、熟練度判定部402が、ドライバの熟練度を判定する。熟練度の判定は、
図2、
図3の処理によって行われる。例えば、ステップS50では、標準偏差σの値をしきい値処理することで、ドライバが熟練と非熟練のいずれであるかを判定しても良い。次のステップS52では、走行経路推定部410が、走行経路を推定する。走行経路推定部410は、ナビゲーション装置700が検索した現在地から目的地までの経路に基づき、走行経路を推定する。次のステップS56では、送信処理部404が、通信装置800を用いて熟練度、車両の位置情報、及び走行経路をサーバ2000に送信するための処理を行う。
【0045】
ステップS58では、サーバ2000の通信処理部2050が、車両システム1000から送られた熟練度、車両の位置情報、走行経路のデータを受信する処理を行う。次のステップS60では、リスクマップ生成部2020が、ステップS58で受信したデータから任意の各地点におけるリスクマップを作成し、時間ごとの変化を予測する。
【0046】
図6は、リスクマップ生成部2020が生成したリスクマップの例を示す模式図である。リスクマップ生成部2020は、受信した各車両の熟練度、車両の位置情報、走行経路に基づいて、非熟練者が集中する度合いに基づいてリスクマップを生成する。例えば、任意の地点において、半径500m以内に存在する、熟練ドライバが運転する車両の台数をAとし、非熟練ドライバが運転する車両の台数をBとした場合、評価点算出部2060は、以下の式(1)からリスク評価点を算出する。
リスク評価点=B/(A+B) ・・・(1)
【0047】
リスクマップ生成部2020は、このリスク評価点を任意の地点毎に求めることで、
図6に示すようなリスクマップを生成する。
図6では、一例として、10分後にリスク評価点が所定のしきい値を超える領域(領域A1,A2)にドットによる濃度を付けて示している。このように、各車両から走行経路を取得することで、所定時間経過後の各車両の位置が判るため、所定時間毎に、リスク評価点が所定のしきい値を超える領域を示すリスクマップを生成できる。領域A1,A2では、非熟練ドライバが運転する車両が多く、領域A1,A2の走行にはリスクが伴う可能性がある。
【0048】
また、
図6では、車両10の走行経路として、2つのルート(ルート1、ルート2)を示し、10分後の車両10の位置を破線で示している。
図6に示すように、ルート1を走行した場合は車両10が領域A1に到達し、ルート2を走行した場合は車両10が領域A2に到達する。従って、いずれのルートを走行した場合も、リスク評価点が比較的高い領域を通過してしまうことになる。このように、リスクマップを作成することで、所定時間毎に、リスク評価点が所定のしきい値を超える領域と、走行経路毎の車両10の位置が判るため、リスクを回避するルートを生成することが可能となる。
【0049】
ステップS62以降の処理では、リスクマップに応じたルート推奨が行われる。まず、ステップS62では、車両側にリスク回避ルートを生成する機能があるか否かを判定する。具体的には、制御装置400が、
図1に示したリスク回避ルート生成部412を備えるか否かを判定する。制御装置400がリスク回避ルート生成部412を備えるか否かは、サーバ2000が車両システム1000と通信を行い、制御装置400の機能を送信させることで判定できる。
【0050】
ステップS62の判定の結果、車両側にリスク回避ルートを生成する機能がない場合は、ステップS64へ進む。ステップS64では、サーバ2000のリスク回避ルート生成部2030が、リスク回避ルートを生成する。次のステップS66では、通信処理部2050が、リスク回避ルートのデータを車両システム1000に送信する処理を行う。次のステップS68では、車両システム1000の通信装置800が、リスク回避ルートのデータを受信する。
【0051】
一方、ステップS62の判定の結果、車両側にリスク回避ルートを生成する機能がある場合は、ステップS70へ進む。ステップS70では、通信処理部2050が、リスクマップのデータを車両システム1000に送信する処理を行う。次のステップS72では、車両システム1000の通信装置800が、リスクマップのデータを受信する。次のステップS74では、制御装置400のリスク回避ルート生成部412が、リスク回避ルートを生成する。
【0052】
リスク回避ルートのデータは、表示制御部408の制御により、車内表示装置500に表示される。これにより、車両のドライバは、リスク回避のルートを参照することで、非 熟練のドライバが多い領域A1,A2を回避して目的地に到達することが可能となる。
【0053】
図7は、
図6に示す領域A1,A2を回避したリスク回避ルートを示している。リスク回避ルート生成部2030(又はリスク回避ルート生成部412)は、車両の現在地、目的地、リスク評価点が所定のしきい値を超える領域(領域A1,A2)の位置に基づいて、リスク回避ルートを生成する。リスク回避ルートは、所定時間毎に、リスク評価点が所定のしきい値を超える領域と重ならないように設定される。
図7に示すようなリスク回避ルートの情報を車両側に提供し、車両がリスク回避ルートを走行することで、車両のドライバは、リスク評価点の高い領域A1,A2を通過することなく目的地へ到達することができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
400 制御装置
402 熟練度判定部
404 通信処理部
2000 サーバ
2010 熟練度取得部
2020 リスクマップ生成部
2030 リスク回避ルート生成部
2040 車両情報取得部
2050 通信処理部
2060 評価点算出部