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▶ 株式会社イズミフードマシナリの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】攪拌羽根組立体および攪拌槽
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/192 20220101AFI20230511BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20230511BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20230511BHJP
   B01F 27/072 20220101ALI20230511BHJP
【FI】
B01F27/192
B01F27/90
B01F27/112
B01F27/072
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019114510
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000589
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000127237
【氏名又は名称】株式会社イズミフードマシナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】杉舩 大亮
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 寛太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039075(JP,A)
【文献】特開2001-219046(JP,A)
【文献】特開2009-195896(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106390829(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
A23L 2/00 - 2/84
A47J 31/00 - 31/60
A47J 43/00 - 43/28
B01F 23/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と側壁部とを有し、液体を貯留するタンク内に設置して、前記液体の攪拌に用いられる攪拌羽根組立体であって、
前記底部に設けられ、鉛直方向と平行な回転軸回りに回転可能に支持され、回転した際に前記液体に対して、前記回転軸から遠ざかる方向に向かってから前記側壁部に沿って上側に向かう第1流れを生じさせる第1攪拌羽根と、
前記第1攪拌羽根よりも上側に設けられる第2攪拌羽根と、を備え、
前記第2攪拌羽根は、前記回転軸回りに回転可能に支持され、回転した際に前記液体に対して、鉛直下方に向かう流れと、前記回転軸から遠ざかってから前記回転軸側に向かう流れとの合成により、前記回転軸から遠ざかりつつ、鉛直下方に向かい、かつ、前記第1流れを阻害しない第2流れを生じさせることを特徴とする攪拌羽根組立体。
【請求項2】
底部と側壁部とを有し、液体を貯留するタンク内に設置して、前記液体の攪拌に用いられる攪拌羽根組立体であって、
前記底部に設けられ、鉛直方向と平行な回転軸回りに回転可能に支持され、回転した際に前記液体に対して、前記回転軸から遠ざかる方向に向かってから前記側壁部に沿って上側に向かう第1流れを生じさせる第1攪拌羽根と、
前記第1攪拌羽根よりも上側に設けられ、前記回転軸回りに回転可能に支持された第2攪拌羽根と、を備え、
前記第2攪拌羽根は、前記回転軸と交差する方向に突出した第1突出部と、前記第1突出部の端部に配置され、斜め下方に突出した第2突出部とを有し、回転した際に前記液体に対して、前記回転軸から遠ざかりつつ、鉛直下方に向かう第2流れを生じさせることを特徴とする攪拌羽根組立体。
【請求項3】
前記第2攪拌羽根は、ボスと、
前記ボスに片持ち支持され、前記回転軸と交差する方向に突出した第1突出部と、
前記第1突出部の前記ボスと反対側に片持ち支持され、下方に突出した第2突出部と、を有する請求項に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項4】
前記第1突出部は、水平方向に対して傾斜した板状をなす第1板状部材で構成され、
前記第2突出部は、前記回転軸を中心とし、前記第2突出部を通る円の接線方向に対して傾斜した板状をなす第2板状部材で構成される請求項2または3に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項5】
前記第2板状部材の幅は、前記第1板状部材の幅よりも小さい請求項4に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項6】
前記第1突出部は、前記回転軸を介して2つ配置されており、該2つの第1突出部にそれぞれ前記第2突出部が配置されている請求項~5のいずれか1項に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項7】
前記第2突出部同士の間隔は、鉛直下方に向かって漸増する請求項6に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項8】
前記第2攪拌羽根は、鉛直方向に沿って複数配置されている請求項1~7のいずれか1項に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項9】
前記第1攪拌羽根は、前記回転軸と交差する方向に突出し、鉛直方向と平行に配置された板状をなす板状部材を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項10】
前記板状部材は、前記回転軸と反対側の端部が前記回転軸に対して傾斜する請求項9に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項11】
前記第2攪拌羽根の直径は、前記第1攪拌羽根の直径よりも小さい請求項1~10のいずれか1項に記載の攪拌羽根組立体。
【請求項12】
底部を有し、液体を貯留するタンクと、
前記タンク内に設置して、前記液体の攪拌に用いられる請求項1~11のいずれか1項に記載の攪拌羽根組立体と、を備えることを特徴とする攪拌槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌羽根組立体および攪拌槽に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を攪拌する攪拌機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の攪拌機は、撹拌槽と、攪拌軸に支持された上部傾斜翼と、攪拌軸に支持され、上部傾斜翼の下方に配置されたボトム翼とを、を備える。この特許文献1に記載の攪拌機は、上部傾斜翼とボトム翼とが攪拌軸回りに回転することにより、撹拌槽内の液体を攪拌することができる。また、上部傾斜翼の回転径と、ボトム翼の回転径とが同じ大きさとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-220083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の攪拌機では、上部傾斜翼の回転径と、ボトム翼の回転径とが同じ大きさとなっているため、ボトム翼の回転により生じる上昇流と、上部傾斜翼の回転より生じる下降流とが打ち消し合うおそれがある。この場合、攪拌槽内では、例えば共回りの状態となり、比重が異なる材料同士を混合させようとしても、材料同士の混合状態が不均一となる、すなわち、混合ムラが生じるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、例えば比重が異なる材料同士を混合させる際、均一な混合状態を生成することができる攪拌羽根組立体および攪拌槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の攪拌羽根組立体の一つの態様は、底部と側壁部とを有し、液体を貯留するタンク内に設置して、前記液体の攪拌に用いられる攪拌羽根組立体であって、
前記底部に設けられ、鉛直方向と平行な回転軸回りに回転可能に支持され、回転した際に前記液体に対して、前記回転軸から遠ざかる方向に向かってから前記側壁部に沿って上側に向かう第1流れを生じさせる第1攪拌羽根と、
前記第1攪拌羽根よりも上側に設けられる第2攪拌羽根と、を備え、
前記第2攪拌羽根は、前記回転軸回りに回転可能に支持され、回転した際に前記液体に対して、前記回転軸から遠ざかりつつ、鉛直下方に向かい、かつ、前記第1流れを阻害しない第2流れを生じさせることを特徴とする。
【0007】
本発明の攪拌槽の一つの態様は、底部を有し、液体を貯留するタンクと、
前記タンク内に設置して、前記液体の攪拌に用いられる上記一つの態様の攪拌羽根組立体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1流れ1と第2流れとにより、回転軸付近では、下降し、側壁部付近では、上昇する対流を安定して生じさせることができる。この対流により、比重が異なる材料同士攪拌して、これらの材料同士とを均一に混合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の攪拌槽の第1実施形態を示す部分鉛直断面側面図である。
図2図2は、図1中のA-A線断面図である。
図3図3は、図2中のB-B線断面図である。
図4図4は、図1中のC-C線断面図である。
図5図5は、図1中のD-D線断面図である。
図6図6は、図1に示す攪拌槽を作動させたときのタンク内の流れの状態を示す図である。
図7図7は、本発明の攪拌槽の第2実施形態を示す側面図である。
図8図8は、本発明の攪拌槽(第3実施形態)が備える攪拌羽根組立体を示す側面図である。
図9図9は、本発明の攪拌槽(第4実施形態)が備える攪拌羽根組立体を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の攪拌槽の第1実施形態を示す部分鉛直断面側面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、図2中のB-B線断面図である。図4は、図1中のC-C線断面図である。図5は、図1中のD-D線断面図である。図6は、図1に示す攪拌槽を作動させたときのタンク内の流れの状態を示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図3図4および図6中の上側を「上(または上方)」、下側を「下(または下方)」と言う(図7図9についても同様)。
【0011】
本実施形態では、攪拌槽1の適用例の一例として、攪拌槽100を、果肉の粒と果汁ジュースとを混合して果肉入りジュースを製造する場合について説明する。図1に示す攪拌槽100は、タンク9と、タンク9内に設置された攪拌羽根組立体10と、を備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0012】
タンク9は、下方(外側)に向かって丸みを帯びた底部91と、底部91から上方に向かって立設し、円筒状をなす側壁部92とを有する。そして、タンク9は、底部91と側壁部92とで囲まれた空間93内に液体Q1を貯留することができる。なお、前記のように攪拌槽1を果肉入りジュースの製造する場合、本実施形態では、液体Q1は、果汁ジュースであり、この液体Q1と混合される粒Q2は、果肉の粒である。
【0013】
なお、本実施形態では、側壁部92の内径φD92と、底部91から液体Q1の液面LSまでの高さHとの比H/D92は、1以上1.2以下の範囲にある。
また、タンク9は、バッフル(邪魔板)を有していてもよい。この場合、攪拌羽根組立体10が作動して回転した際に、液体Q1の共回りを防止することができる。
【0014】
タンク9内には、攪拌羽根組立体10が設置されている。攪拌羽根組立体10は、液体Q1と粒Q2との攪拌に用いられる。攪拌羽根組立体10は、鉛直方向と平行な回転軸11と、回転軸11に支持された第1攪拌羽根1と、第1攪拌羽根1よりも上側で回転軸11に支持された第2攪拌羽根2Aおよび第2攪拌羽根2Bと、を備える。
【0015】
回転軸11は、その下方側で、駆動部12と連結されている。
駆動部12は、回転軸11を、第1攪拌羽根1、第2攪拌羽根2A、第2攪拌羽根2Bごと矢印α方向に回転させる駆動源であり、例えば、モータを有する構成となっている。なお、駆動部12による回転軸11の回転数は、例えば、30rpm以上300rpm以下であるのが好ましく、40rpm以上250rpm以下であるのがより好ましい。これにより、後述する第1流れFL1、第2流れFL2を過不足なく生じさせることができる。
【0016】
タンク9の底部91側には、第1攪拌羽根1が設けられている。図1図2に示すように、第1攪拌羽根1は、ボス3と、ボス3に片持ち支持された2つの板状部材4とを有する。なお、第1攪拌羽根1が有する板状部材4の枚数は、本実施形態では2つであるが、これに限定されず、例えば、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0017】
ボス3は、円筒状をなし、その内側に回転軸11が挿通している。ボス3は、回転軸11に対して固定されている。これにより、第1攪拌羽根1が回転軸11回りに回転可能に支持される。なお、ボス3の固定方法としては、特に限定されず、例えば、溶接による方法、ネジ止めによる方法等を用いることができる。
【0018】
各板状部材4は、回転軸11と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に突出している。板状部材4同士は、ボス3(回転軸11)を介して、互い反対方向に向かって突出している。
また、各板状部材4は、鉛直方向と平行に配置された平板状をなす。
このような板状部材4により、第1攪拌羽根1が回転した際には、液体Q1に対して、回転軸11から遠ざかる方向に向かってから、側壁部92に衝突して当該側壁部92に沿って上側に向かう第1流れFL1(図6参照)を生じさせることができる。
【0019】
各板状部材4は、回転軸11と反対側の端部に回転軸11、すなわち、鉛直方向に対して傾斜角度θ41で傾斜した傾斜部41を有する。傾斜部41により、液体Q1に第1流れFL1を生じさせる過程で、前述した側壁部92への衝突の際に、その衝突を緩和するとができる。これにより、例えば、側壁部92への衝突後の側壁部92に沿った上側への流れを十分に確保することができ、よって、第1流れFL1を安定して生じさせることができる。また、傾斜部41から斜め上方向に液体Q1が吐出され、当該液体Q1が側壁部92に沿った上側への流れを助長する。なお、傾斜角度θ41は、特に限定されないが、例えば、30°以上60°以下であるのが好ましく、40°以上50°以下であるのがより好ましい。これにより、前記側壁部92への衝突の緩和が過不足なく行われる。
【0020】
また、各板状部材4は、下部に、丸みを帯びた底部91に沿って湾曲した湾曲部42を有する。これにより、各板状部材4と底部91との隙間をできる限り小さくすることができ、よって、各板状部材4と底部91と間で生じる流れが、第1流れFL1を阻害するのを防止することができる。
【0021】
第1攪拌羽根1よりも上側には、鉛直方向に沿って第2攪拌羽根2Aと第2攪拌羽根2Bとが設けられている(配置されている)。このような構成は、比H/D92が1以上1.2以下の範囲にあるタンク9に適しており、タンク9内で、後述する対流CVを安定して生じさせることができる。
【0022】
なお、第2攪拌羽根2Aおよび第2攪拌羽根2Bのうち、下側に第2攪拌羽根2Aが配置され、上側に第2攪拌羽根2Bが配置されている。また、第2攪拌羽根2Aと第2攪拌羽根2Bとは、離間しており、離間距離SDは、第2攪拌羽根2Aの直径φDの0.3倍以上0.5倍以下の範囲内にある。
第2攪拌羽根2Aおよび第2攪拌羽根2Bは、配置箇所が異なること以外は、同じ構成であるため、第2攪拌羽根2Aについて代表的に説明する。
【0023】
図1に示すように、第2攪拌羽根2Aは、第1攪拌羽根1から離間しており、ボス5と、ボス5に片持ち支持された第1突出部6と、各第1突出部6のボス5と反対側に片持ち支持された第2突出部7とを有する。この第2攪拌羽根2Aは、回転した際に液体Q1に対して、回転軸11から遠ざかりつつ、鉛直下方に向かう第2流れFL2(図6参照)を生じさせることができる。
【0024】
ボス5は、円筒状をなし、その内側に回転軸11が挿通している。ボス5は、回転軸11に対して固定されている。これにより、第2攪拌羽根2Aが回転軸11回りに回転可能に支持される。なお、ボス5の固定方法としては、図3に示すように、本実施形態では、溶接による方法が用いられている。溶接部13は、ボス5と回転軸11との境界部に設けられている。
【0025】
各第1突出部6は、回転軸11と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に突出している。第1突出部6同士は、ボス5(回転軸11)を介して、互い反対方向に向かって突出している。
また、各第1突出部6は、平板状をなす第1板状部材で構成されている。図4に示すように、各第1突出部6は、水平方向に対して傾斜角度θで傾斜している。これにより、第2攪拌羽根2が回転した際には、液体Q1に対して、鉛直下方に向かう流れFL2-1(図6参照)を生じさせることができる。なお、傾斜角度θは、特に限定されないが、例えば、15°以上75°以下であるのが好ましく、30°以上60°以下であるのがより好ましい。これにより、流れFL2-1を過不足なく生じさせることができる。
【0026】
第1突出部6の幅(平均幅)Wは、第1攪拌羽根1の板状部材4の幅(平均幅)Wよりも小さく、例えば、幅Wの5%以上50%以下である。
各第1突出部6は、本実施形態では平板状をなす部材で構成されているが、これに限定されず、角柱状をなす部材で構成されていてもよい。
【0027】
各第1突出部6の端部には、第2突出部7が配置されている。第2突出部7同士の間隔は、鉛直下方に向かって漸増する。すなわち、各第2突出部7は、第1突出部6から斜め下方に突出している。これにより、第2流れFL2の斜め下向きの流れを形成することができるとともに、回転軸11から遠ざかる液体Q1の流れを回転軸11側に引きこむ流れが発生し、第1流れFL1(上昇流)の流れを阻害しにくくなる。なお、第2突出部7の回転軸11に対する傾斜角度θ7-1は、に限定されないが、例えば、5°以上60°以下であるのが好ましく、10°以上30°以下であるのがより好ましい。
【0028】
ここで、仮に、各第2突出部7は、第1突出部6から直下、すなわち、鉛直下方に向かって突出している場合、液体Q1の流れは真下(鉛直下方)にしか流れないどころか、第1流れFL1を引き込む可能性がある。一方、第1流れFL1を引き込まないように第1突出部6を短くした場合、回転軸11回りにしか撹拌が起こらず、十分な撹拌を達成することができない。
【0029】
また、各第2突出部7は、平板状をなす第2板状部材で構成されている。図5に示すように、各第2突出部7は、回転軸11を中心とし、各第2突出部7を通る仮想円CLの、第2突出部7での接線TA方向に対して、傾斜角度θ7-2で傾斜している。これにより、第2攪拌羽根2が回転した際には、液体Q1に対して、一旦回転軸11から遠ざかる方向に向かってから回転軸11に向かう流れFL2-2(図6参照)を生じさせることができる。なお、傾斜角度θ7-2は、特に限定されないが、例えば、5°以上75°以下であるのが好ましく、30°以上60°以下であるのがより好ましい。これにより、第2突出部7が第1突出部6から傾斜角度θ7-1で斜め下方に突出していることと相まって、流れFL2-2を過不足なく生じさせることができる。
【0030】
そして、図6に示すように、流れFL2-1と流れFL2-2との合成により、第2流れFL2が生じる。
なお、第1流れFL1、第2流れFL2、流れFL2-1、流れFL2-2は、それぞれ、例えば、数値流体力学(computational fluid dynamics、略称:CFD)を利用した各種の流体シミュレーションや、その他、流体実験等により、可視化して確認をすることができる。
【0031】
攪拌槽100では、第2攪拌羽根2Aの直径φDは、第1攪拌羽根1の直径φDよりも小さく、例えば、直径φDの30%以上100%以下であるのが好ましく、50%以上80%以下であるのがより好ましい。これにより、第2流れFL2は、第1流れFL1に合流し難くなり、よって、第1流れFL1を阻害しない流れとなる。そして、第1流れFL1と第2流れFL2とにより、回転軸11付近では、下降し、側壁部212付近では、上昇する対流CVを安定して生じさせることができる。この対流CVにより、比重が異なる液体Q1と粒Q2と攪拌して、粒Q2を崩さずに(つぶさずに)、液体Q1と粒Q2とを均一に混合させることができる。そして、この混合物Q3は、タンク9から排出された後、次の工程に移送されて、例えば商品用容器に収納され、販売可能な状態となる。
【0032】
比重が異なる液体Q1と粒Q2との混合状態が不均一、すなわち、混合ムラがある場合について考えてみる。この場合、タンク9から排出した際には、比重が軽い方の材料が、比重が重い方の材料よりも後に排出される。例えば、液体Q1の方が比重が軽く、粒Q2の方が比重が重い場合、先に製造された商品用容器内は、粒Q2が多く、後に製造された商品用容器内は、粒Q2が少ない状態となり、品質上好ましくはない。これとは反対に、粒Q2の方が比重が軽く、液体Q1の方が比重が重い場合、先に製造された商品用容器内は、粒Q2が少なく、後に製造された商品用容器内は、粒Q2が多い状態となり、この場合も品質上好ましくはない。
【0033】
これに対し、攪拌槽100では、例えば比重が異なる液体Q1と粒Q2とを混合させた際には、混合物Q3を均一な混合状態で生成することができる。これにより、製造される商品用容器の順番によらず、各商品用容器内では、液体Q1と粒Q2との比率が一定の混合物Q3となっており、品質上好ましい。
【0034】
前述したように、各第2突出部7は、片持ち支持されている。これにより、回転軸11の回転数によって各第2突出部7に作用する遠心力が変化し、この変化に伴って、傾斜角度θ7-1も変化する。傾斜角度θ7-1が変化した場合、流れFL2-2も変化することとなる。従って、回転軸11の回転数に応じた第2流れFL2の調整が可能となる。
【0035】
また、第2突出部7(第2板状部材)の幅(平均幅)Wは、第1突出部6(第1板状部材)の幅Wの幅よりも小さく、例えば、幅Wの20%以上80%以下であるのが好ましく、40%以上60%以下であるのがより好ましい。これにより、例えば、第1突出部6で生じさせる流れFL2-1の大きさと、第2突出部7で生じさせる流れFL2-2の大きさとの大小関係が、第2流れFL2を過不足なく生じさせる程度の大小関係となる。また、第2突出部7は、第1突出部6に片持ち支持されているため、「幅W<幅W」の関係は、第2突出部7にかかる負荷の面でも、第2攪拌羽根2Aや第2攪拌羽根2Bの強度の面でも回転軸11から遠ざかるにつれて幅Wが小さく、負荷が小さくなる方がよい。これにより、第2突出部7、第1突出部6の平板の板厚等を低減することができ、片持ちの接続部(支持部)の接続も簡単になるという利点もある。
【0036】
<第2実施形態>
図7は、本発明の攪拌槽の第2実施形態を示す側面図である。
以下、この図を参照して本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2攪拌羽根の配置数が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、攪拌羽根組立体10は、下側から順に配置された第2攪拌羽根2A、第2攪拌羽根2B、第2攪拌羽根2Cおよび第2攪拌羽根2Dを備える。このような構成は、比H/D92が1.7以上2.2以下の範囲にあるタンク9に適しており、タンク9内で対流CVを安定して生じさせることができる。
なお、第2攪拌羽根2Dを省略した場合は、比H/D92が1.2以上1.7以下の範囲にあるタンク9に適している。
【0038】
<第3実施形態>
図8は、本発明の攪拌槽(第3実施形態)が備える攪拌羽根組立体を示す側面図である。
以下、この図を参照して本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2攪拌羽根の構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0039】
図8に示すように、本実施形態では、第2攪拌羽根2A、第2攪拌羽根2B、第2攪拌羽根2Cおよび第2攪拌羽根2Dは、いずれも、1つの第1突出部6と、この第1突出部6に支持された第2突出部7とを有する。
第2攪拌羽根2Aおよび第2攪拌羽根2Cの第1突出部6の突出方向は、同じ方向となっている。
【0040】
第2攪拌羽根2Bおよび第2攪拌羽根2Dの第1突出部6の突出方向も、同じ方向となっているが、第2攪拌羽根2Aおよび第2攪拌羽根2Cの第1突出部6の突出方向と反対方向となっている。
このような攪拌羽根組立体10は、前記第2実施形態での攪拌羽根組立体10に比べて、同じ回転数であっても、第2流れFL2の大きさを抑えることができ、例えば、粒Q2が崩れ易い場合に有効な構成となる。
【0041】
<第4実施形態>
図9は、本発明の攪拌槽(第4実施形態)が備える攪拌羽根組立体を示す鉛直断面図である。
以下、この図を参照して本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、第2攪拌羽根の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0042】
図9に示すように、本実施形態では、第2攪拌羽根2Aのボス5は、回転軸11に対してネジ止めにより固定されている。ボス5には、雌ネジ51が貫通して形成されている。この雌ネジ51にネジ14が螺合している。ネジ14は、回転軸11の外周部に形成された凹部111に係合している。これにより、ボス5を回転軸11に対して固定することができ、また、回転軸11に対するボス5の位置決めもなされる。
【0043】
以上、本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、攪拌羽根組立体および攪拌槽を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の攪拌羽根組立体および攪拌槽は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0044】
また、攪拌槽(攪拌羽根組立体)は、前記各実施形態では果肉の粒と果汁ジュースとの混合に適用されているが、これに限定されず、例えば比重が異なる材料同士を混合する場合であれば、その適用態様については、限定されない。例えば、食用であれば、ナタデココの粒と液体ヨーグルトとを混合する場合等に攪拌槽を適用することもできる。また、その他に、金属粉を油に混合する場合や、粘土または石灰石を水に混合してセメント等のスラリーを得る場合等にも攪拌槽を適用することもできる。
【0045】
また、第1攪拌羽根の回転方向と第2撹拌羽根の回転方向とは、前記各実施形態では同じであるが、これに限定されず、例えば、互いに反対方向となる状態もあってもよい。この場合、回転軸は、同心的に配置された2つの部材で構成することができる。
また、第1攪拌羽根の回転数と第2撹拌羽根の回転数とは、前記各実施形態では同じであるが、これに限定されず、例えば、異なる場合もあってもよい。
【0046】
また、複数の第2撹拌羽根は、前記各実施形態では同じ回転数となっているが、これに限定されず、上方に向かって回転数が段階的に減少または増大していてもよい。
また、複数の第2撹拌羽根は、前記各実施形態では同じ直径となっているが、これに限定されず、上方に向かって直径が段階的に小さくなっていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 攪拌槽
10 攪拌羽根組立体
1 第1攪拌羽根
2A、2B 第2攪拌羽根
3 ボス
4 板状部材
41 傾斜部
42 湾曲部
5 ボス
51 雌ネジ
6 第1突出部
7 第2突出部
9 タンク
91 底部
92 側壁部
93 空間
11 回転軸
111 凹部
12 駆動部
13 溶接部
14 ネジ
CL 仮想円
CV 対流
φD 直径
φD 直径
φD92 内径
H 高さ
FL1 第1流れ
FL2 第2流れ
FL2-1 流れ
FL2-2 流れ
LS 液面
TA 接線
SD 離間距離
Q1 液体
Q2 粒
Q3 混合物
幅(平均幅)
幅(平均幅)
幅(平均幅)
α 矢印
θ41 傾斜角度
θ 傾斜角度
θ7-1 傾斜角度
θ7-2 傾斜角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9