(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】X線検査システム及びX線検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20230511BHJP
G01N 23/10 20180101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/10
(21)【出願番号】P 2019123386
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515242467
【氏名又は名称】株式会社ティーアンドエス
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕信
(72)【発明者】
【氏名】住川 健
(72)【発明者】
【氏名】水谷 博成
(72)【発明者】
【氏名】笛木 豊
(72)【発明者】
【氏名】崔 成民
(72)【発明者】
【氏名】横島 伸
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 羊司
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525594(JP,A)
【文献】特開2010-230532(JP,A)
【文献】特開2013-019688(JP,A)
【文献】特開2015-083967(JP,A)
【文献】特開2011-075470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0238335(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0172129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302034(US,A1)
【文献】米国特許第7012256(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物にX線を照射するX線照射部及び前記検査対象物を透過した前記X線を受像するX線受像部を有するX線検査装置と、
前記X線検査装置から、前記X線受像部で受像した画像データを取得する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、任意の有形物の形状データ及び線量データを記憶する記憶部と、
前記記憶部内の前記形状データに基づいて前記画像データに含まれる有形物を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された有形物に対応する前記線量データに基づいて当該有形物の画像を前記画像データから除去する画像処理部と、
前記画像処理部で前記有形物の画像を除去した前記画像データを表示する表示部と、を有することを特徴とするX線検査システム。
【請求項2】
前記抽出部は、前記画像データに含まれる形状データと、前記記憶部内の前記形状データとの照合により前記画像データに含まれる有形物を抽出することを特徴とする請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項3】
前記画像データにおける前記X線の透過線量を解析し、当該画像データに対応する前記X線の透過線量の分布データを生成する画像解析部を更に有し、
前記画像処理部は、前記抽出部で抽出された有形物に対応する前記線量データを前記分布データから減算することで、当該有形物の画像を前記画像データから除去することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線検査システム。
【請求項4】
検査対象物にX線を照射するX線照射部及び前記検査対象物を透過した前記X線を受像するX線受像部を有するX線検査装置と、前記X線検査装置から、前記X線受像部で受像した画像データを取得する制御装置と、を用いたX線検査方法であって、
任意の有形物の形状データ及び線量データを記憶する記憶部内の前記形状データに基づいて前記画像データに含まれる有形物を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された有形物に対応する前記線量データに基づいて当該有形物の画像を前記画像データから除去する除去ステップと、
前記除去ステップで前記有形物の画像を除去した前記画像データを表示する表示ステップと、を有することを特徴とするX線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査システム及びX線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空港、駅、スポーツ施設、イベント会場などの任意の場所で、セキュリティの向上を図るべく、危険物や不審物に対して適切な措置をとることが要求されている。
【0003】
特許文献1には、空港等で手荷物検査を行う手荷物検査X線装置において、X線発生部とX線受像部とを対向配置すると共に、これらの間に手荷物を搭載する手荷物検査台を形成し、この手荷物検査台に照射されるX線の領域を示すX線照射範囲設定領域を設けたX線装置が開示されている。この手荷物検査X線装置では、X線の照射を受けることなく手荷物の位置をずらしながら手荷物内の不審物の有無を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手荷物検査X線装置においては、X線発生部から照射され、手荷物を透過したX線が、蛍光発光エネルギー又は熱エネルギーに変換されてX線受像部に像を形成する。このため、手荷物内にて、不審物に他の物品が重なっていると、正確にX線受像部に不審物の像を形成することができない事態が発生し得る。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、検査対象物内で物品が重なって配置される場合であっても、高精度に不審物を検出することができるX線検査システム及びX線検査方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のX線検査システムは、検査対象物にX線を照射するX線照射部及び前記検査対象物を透過した前記X線を受像するX線受像部を有するX線検査装置と、前記X線検査装置から、前記X線受像部で受像した画像データを取得する制御装置と、を備え、前記制御装置は、任意の有形物の形状データ及び線量データを記憶する記憶部と、前記記憶部内の前記形状データに基づいて前記画像データに含まれる有形物を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された有形物に対応する前記線量データに基づいて当該有形物の画像を前記画像データから除去する画像処理部と、前記画像処理部で前記有形物の画像を除去した前記画像データを表示する表示部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査対象物内で物品が重なって配置される場合であっても、高精度に不審物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るX線検査システムの構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るX線検査装置の内部構成を説明するための斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係るX線検査装置の正面図、側面図及び平面図である。
【
図4】本実施の形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】本実施の形態に係る制御装置の有形物データベースに登録される有形物データの一例の説明図である。
【
図6】本実施の形態に係るX線検査システムにおいてX線検査を行う場合の制御装置の動作を説明するためのフロー図である。
【
図7】本実施の形態に係るX線検査システムにおける有形物抽出処理を説明するためのフロー図である。
【
図8】本実施の形態に係るX線検査システムにおける線量消去処理を説明するためのフロー図である。
【
図9】本実施の形態に係るX線検査システムによるX線検査の過程で生成される画像データの一例を示す図である。
【
図10】本実施の形態に係るX線検査システムによるX線検査の過程で生成される画像データの一例を示す図である。
【
図11】本実施の形態に係るX線検査システムによるX線検査の過程で生成される画像データの一例を示す図である。
【
図12】本実施の形態に係るX線検査システムによるX線検査の過程で生成される画像データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
空港等で手荷物検査を行うX線検査装置においては、X線発生部とX線受像部とを対向配置すると共に、これらの間に検査対象物(手荷物)を搭載する検査台を形成する。そして、X線発生部から照射され、検査対象物を透過したX線が、蛍光発光エネルギー等に変換されてX線受像部に像を形成する。このため、検査対象物内の不審物に他の物品が重なっていると、正確にX線受像部に不審物の像を形成することができない事態が発生し得る。
【0011】
また、空港等で利用される手荷物検査X線装置では、金属製の不審物(例えば、刃物等)の検出精度を高めるため、X線発生部の出力強度が高めに設定されている。この場合、金属製の不審物は、X線の透過率が低く、結果として高精度に検出することができる。一方、非金属製の不審物(例えば、粉状体の爆発物)については、X線の透過率が高く、その存在を検出し難くなるという問題がある。
【0012】
本発明者らは、検査対象物内における物品が重なって配置される場合に不審物の検出精度が低下し得ること、並びに、不審物の種別によってはX線発生部の出力強度との関係でX線検査自体が困難になることに着目した。そして、検査対象物内における物品の重なりを考慮した上で不審物の有無を検査することが、検査対象物内で物品が重なった場合における不審物の検出精度の向上に寄与することを見出し、本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明の骨子は、検査対象物にX線を照射するX線照射部及び検査対象物を透過したX線を受像するX線受像部を有するX線検査装置と、X線検査装置から、X線受像部で受像した画像データを取得する制御装置とを備え、制御装置において、任意の有形物の形状データ及び線量データを記憶する記憶部内の形状データに基づいて画像データに含まれる有形物を抽出し、抽出した有形物に対応する線量データに基づいて当該有形物の画像を画像データから除去し、この画像を除去した画像データを表示することである。
【0014】
本発明によれば、任意の有形物の形状データ及び線量データを記憶する記憶部内の形状データに基づいて画像データに含まれる有形物が抽出され、抽出した有形物に対応する線量データに基づいて当該有形物の画像が画像データから除去され、除去後の画像データが表示部で表示されることから、記憶部に記憶された有形物の画像を除去した画像データによって検査対象物内の不審物等を確認することができる。これにより、検査対象物内で物品が重なって配置される場合であっても、高精度に不審物を検出することができる。
【0015】
以下、本実施の形態に係るX線検査システムの構成について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るX線検査システムの構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るX線検査システム100は、X線検査装置1と、X線検査装置1との間で無線通信を行う制御装置10とを含んで構成される。X線検査装置1は、制御装置10の制御の下、検査対象物に対してX線検査を行い、X線検査により得た画像データを制御装置10に出力可能に構成される。制御装置10は、X線検査装置1から取得した画像データに所定の画像処理を行った上でディスプレイ等の表示部に表示可能に構成される。
【0016】
まず、本実施の形態に係るX線検査システム100が有するX線検査装置1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図2は、本実施の形態に係るX線検査装置1の内部構成を説明するための斜視図である。以下においては、
図1及び
図2に示す前後方向、左右方向及び上下方向をX線検査装置1の前後方向、左右方向及び上下方向として説明する。また、
図2においては、後述するX線照射装置4によるX線の照射領域について、一点鎖線で示している。
図3においても同様である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、X線検査装置1は、筐体2、開閉機構3、X線照射装置(以下、「照射装置」という)4及びX線受像装置(以下、「受像装置」という)5を含んで構成される。筐体2は、本体部21と、本体部21の上方に配置される照射装置収納部22と、本体部21の下方に配置される受像装置収納部23とを有している。例えば、本体部21、照射装置収納部22及び受像装置収納部23は、それぞれ独立して構成され、これらを組み合わせることで筐体2が構成される。なお、筐体2の構成については、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0018】
筐体2の内部には、空間Sが形成されている(
図2参照)。空間Sは、本体部21及び照射装置収納部22の内壁面及び受像装置収納部23の上面により規定される。空間Sには、開閉機構3が収容されている。また、空間Sには、X線検査の対象物(検査対象物)OBが配置される(
図3参照)。検査対象物OBは、開閉機構3の下方側に配置される。空間Sを規定する本体部21及び照射装置収納部22の内壁面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0019】
筐体2の本体部21の前面には、開口部21aが形成されている(
図1参照)。開口部21aは、本体部21の下方側の大部分であって、幅方向(左右方向)の略全域に亘って形成されている。開口部21aは、筐体2内の空間Sに連通しており、開閉機構3の一部又は検査対象物OBを露出可能に構成されている。X線検査装置1の操作者は、開口部21aを介して開閉機構3を開閉可能に構成されている。開閉機構3を開いた状態において、開口部21aを介して空間S内に検査対象物OBが収容される一方、検査終了後の検査対象物OBが空間Sから取り出される。
【0020】
照射装置収納部22は、本体部21の上面部から上方側に突出して構成される。照射装置収納部22は、本体部21の前後方向の中央より僅かに後方側の位置において、左右方向に延在して設けられている(
図3B参照)。照射装置収納部22の内部には、照射装置4の一部を収納可能な空間(内部空間)22aが形成されている。照射装置収納部22の右側面には、内部空間22aに連通する開口部22bが形成されている。照射装置収納部22は、この開口部22bから内部空間22a内に照射装置4の一部を収納可能に構成されている。筐体2の内部において、照射装置収納部22は、下方側に開口しており、上述した内部空間22aが本体部21内の空間Sに接続されている。
【0021】
受像装置収納部23は、本体部21の下端部に連続して構成される。受像装置収納部23は、扁平な箱形状を有している。受像装置収納部23の内部には、受像装置5を収納可能な空間(内部空間)23aが形成されている(
図3参照)。受像装置収納部23の前面には、内部空間23aに連通する開口部23bが形成されている。受像装置収納部23は、この開口部23bから内部空間23a内に受像装置5を収納可能に構成されている。受像装置収納部23の上面には、放射線遮蔽用鉛ガラス(以下、単に「鉛ガラス」という)23cが嵌め込まれている(
図2参照)。鉛ガラス23cは、内部空間23aに収納された受像装置5のX線受像パネル51に対向して配置される(
図3B参照)。鉛ガラス23cは、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0022】
図2に示すように、開閉機構3は、一対のレール部材31及びシャッター部材32を含んで構成されている。一対のレール部材31は、前方レール部311、上方レール部312及び後方レール部313を有し、側面視にて、下方側に開口した構成を有している。これらのレール部材31は、例えば、本体部21の左右の側面の内壁面に固定される。それぞれのレール部材31は、本体部21の中心側(言い換えると、他のレール部材31側)に開口した形状を有し、シャッター部材32の左右の側縁部を収容可能に構成される。
【0023】
レール部材31の前方レール部311は、筐体2(本体部21)の前面近傍に配置される。前方レール部311は、本体部21の前面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する。後方レール部313は、本体部21の後面近傍に配置される。後方レール部313は、本体部21の後面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する。上方レール部312は、本体部21の上端部近傍に配置される。上方レール部312は、本体部21の上端部近傍でシャッター部材32を前後方向に案内する。
【0024】
シャッター部材32は、左右方向に延在する複数の板状部材を、その内側部分(開閉機構3の内側に配置される空間S側)で接続して構成されている。シャッター部材32は、X線検査装置1の前後方向又は上下方向に板状部材を並べた構成を有している。シャッター部材32の左右の側縁部は、レール部材31に収容される。シャッター部材32は、レール部材31の形状に沿って前後方向及び上下方向にスライド移動可能に構成されている。なお、シャッター部材32のスライド移動は、X線検査装置1の操作者(検査者)によって行われる。シャッター部材32の内側面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0025】
以下の説明においては、説明の便宜上、レール部材31の前方レール部311側に配置されたシャッター部材32の端部を前端部32aと呼び、後方レール部313側に配置されたシャッター部材32の端部を後端部32bと呼ぶものとする。シャッター部材32の前端部32aを前方レール部311の下端部まで移動させることで、開閉機構3が閉じた状態となる(閉鎖状態:
図1参照)。一方、図示していないが、シャッター部材32の後端部32bを後方レール部313の下端部まで移動させることで、開閉機構3が開いた状態となる(完全開放状態)。
【0026】
閉鎖状態において、レール部材31の前方レール部311に配置されたシャッター部材32は、本体部21の開口部21aの僅かに内側で本体部21の前面と略平行に配置された状態となり、開口部21aを閉じた状態となる。一方、閉鎖状態から完全開放状態に移行する過程において、シャッター部材32は、開口部21aを開いていく。
【0027】
シャッター部材32の前端部32aの近傍の中央には、把持部32cが設けられている。把持部32cは、シャッター部材32をスライド移動させる際に操作者により把持される部分である。開閉機構3を閉じる際は、把持部32cを持ってシャッター部材32が引き下ろされる。一方、開閉機構3を開く際は、把持部32cを持ってシャッター部材32が引き上げられる。
【0028】
シャッター部材32の後端部32b寄りの中央には、開口部32dが形成されている。開口部32dは、X線透過部の一例を構成する。開口部32dは、シャッター部材32の厚み方向に貫通して形成されている。例えば、開口部32dは、平面視にて、矩形状に形成される(
図3C参照)。開口部32dは、開閉機構3が閉じられた状態(閉鎖状態)において、上方レール部312に対応する位置に配置される。このとき、開口部32dは、後述する照射装置4のX線照射口47に対応する位置に配置される(
図2参照)。一方、開口部32dは、開閉機構3が完全に開いた状態(完全開放状態)において、後方レール部313に対応する位置に配置される。このとき、後述する照射装置4のX線照射口47に対応する位置には、シャッター部材32の一部が配置される。これにより、開閉機構3が開いた状態で空間S内にX線が照射される事態が防止される。
【0029】
照射装置4及び受像装置5は、筐体2に着脱可能に構成される。照射装置4は、筐体2の照射装置収納部22に着脱可能に構成される。受像装置5は、筐体2の受像装置収納部23に着脱可能に構成される。照射装置4及び受像装置5は、空間Sに収容された検査対象物OBを挟んで対向するように、筐体2に支持される(
図3B参照)。照射装置4が検査対象物OBに対してX線を照射し、受像装置5が検査対象物OBを透過したX線を受像する。
【0030】
ここで、照射装置4及び受像装置5の構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施の形態に係るX線検査装置1の正面図(
図3A)、側面図(
図3B)及び平面図(
図3C)である。なお、
図3Bにおいては、X線検査装置1を右方側から見た側面を示し、説明の便宜上、シャッター部材32を示している。さらに、
図3Cにおいては、説明の便宜上、筐体2の一部(照射装置収納部22)を省略し、レール部材31及びシャッター部材32を示している。
【0031】
図3に示すように、照射装置4は、概して円柱形状を有する長尺体で構成されている。照射装置4は、その長手方向が左右方向に沿って延在するように筐体2(照射装置収納部22)に支持される。照射装置4は、照射装置収納部22の内部空間22a内にその一部が挿入される。照射装置4は、その右方側に配置される一端部4aがX線検査装置1の右方側に突出する一方、その左方側に配置される他端部4cが照射装置収納部22の中央付近に配置されている。
【0032】
図3Bに示すように、照射装置4の一端部4aの端面には、電源スイッチ41、電源ソケット42及び通信ソケット43が設けられている。電源スイッチ41は、一端部4aの端面の中央に配置される。電源スイッチ41は、照射装置4のオン/オフ状態を切り換えるためのスイッチである。電源ソケット42及び通信ソケット43は、電源スイッチ41を挟んで対向する位置に配置されている。電源ソケット42は、照射装置4を充電するために電源プラグが挿抜されるソケットである。通信ソケット43は、照射装置4を有線で操作する場合の通信プラグが挿抜されるソケットである。なお、これらの電源プラグや通信プラグが接続されていない状態において、電源ソケット42及び通信ソケット43には、保護キャップが装着されている(
図3Bでは、保護キャップが装着された状態を示している)。
【0033】
照射装置4の一端部4a寄りの周面部には、くびれ部4bが設けられている(
図3A参照)。くびれ部4bは、照射装置4の運搬時や装着時等に操作者が把持する把持部として利用される。くびれ部4bを構成する傾斜面の一部には、指紋リーダ44が設けられている(
図3A参照)。指紋リーダ44は、照射装置4の操作者の指紋情報を取得するために利用される。操作者の指紋情報を取得することで、事前に指紋情報を登録されていない操作者のX線照射指示を制限している。指紋リーダ44は、照射装置4が筐体2(照射装置収納部22)に支持された状態で前方側に向く位置に配置されている。
【0034】
指紋リーダ44の近傍には、一対のLEDランプ45、46が設けられている。LEDランプ45は、電源オン状態と充電状態を示すために色を変えて発光する。例えば、LEDランプ45は、電源オン状態又は充電完了状態では緑色に発光し、充電途中状態ではオレンジ色に発光する。LEDランプ46は、指紋リーダ44による認証結果を示すために色を変えて発光する。例えば、LEDランプ46は、認証結果がNG状態の場合に赤色に発光し、認証結果がOK状態の場合に緑色に発光する。
【0035】
照射装置4の他端部4c寄りの周面部には、概して円形状を有するX線照射口(以下、「照射口」という)47が設けられている(
図3C参照)。照射口47は、照射装置4が筐体2(照射装置収納部22)に支持された状態で下方側(受像装置5側)に向く位置に配置されている。照射口47は、上面視にて、筐体2の中央付近に配置される。開閉機構3が閉じている状態において、照射口47は、シャッター部材32に形成された開口部32dに対応する位置に配置される(
図3C参照)。一方、開閉機構3が開いている状態において、照射口47は、シャッター部材32の一部に対向する位置に配置される。この場合、照射口47に対向配置されるシャッター部材32の一部は、X線の照射を規制する。
【0036】
本実施の形態において、照射口47からのX線の照射角度は、下方側(受像装置5側)に向けて40~50度に設定されている。このように照射口47からの照射角度を設定することで、X線照射領域が拡大され過ぎず、受像装置5の受像パネル51のX線検出領域にX線を照射することができる。なお、照射口47からのX線の照射角度については、受像装置5までの距離や検査対象物OBの大きさ等に応じて適宜変更が可能である。
【0037】
照射装置4は、X線検査装置1と無線通信可能な制御装置10との間で無線通信を行う無線通信部を有している。例えば、照射装置4は、この無線通信部により制御装置10からX線の照射指示(X線検査指示)を受信する。制御装置10からX線の照射指示を受信すると、照射装置4は、照射口47からX線を照射する。
【0038】
受像装置5は、
図3A及び
図3Bに示すように、筐体2(受像装置収納部23)の前後方向及び左右方向に延在する板状部材で構成される。受像装置5は、その上面(検査対象物OBを挟んで照射装置4と対向する面)にX線受像パネル(以下、「受像パネル」という)51を有している。受像装置5は、照射装置4が照射したX線であって、検査対象物OBを透過したX線を受像パネル51で受像する。
【0039】
受像装置5は、X線検査装置1と無線通信可能な制御装置10との間で通信を行うための構成や装置自体を充電するための構成を備えている。図示は省略するが、例えば、受像装置5には、X線画像情報(画像データ)を制御装置10との間で有線通信を行う際にPCケーブルを差し込むためのケーブル差込部や、電源プラグを差し込むための電源ソケット等が設けられる。また、受像装置5は、制御装置10からX線の受像指示(X線検査指示)を受信し、或いは、受像したX線画像情報(画像データ)を制御装置10に送信する無線通信部を有する。受像装置5から無線通信されたX線画像情報(画像データ)は、制御装置10が有するモニタ等の表示部13に表示される(
図4参照)。
【0040】
このような構成を有し、X線検査装置1では、制御装置10からのX線検査指示に応じてX線の照射及び受像を行う一方、受像した画像データ(X線画像データ)を制御装置10に送信する。制御装置10において、X線検査装置1から受信した画像データを表示することにより、検査対象物OBの内部に危険物や不審物が収容されているかを判定することができる。
【0041】
次に、本実施の形態に係るX線検査システム100が有する制御装置10の構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施の形態に係る制御装置10の機能ブロック図である。
図4においては、本発明に関係する制御装置10の構成のみを示している。制御装置10は、基本ハードウェアとして、CPU(中央演算処理装置)、メモリ(主記憶装置)、ハードディスク(補助記憶装置)、ディスプレイ(表示部)、キーボード(入力部)などを備える汎用のコンピュータシステムで構成することができる。後述する制御部11の諸機能は、ハードディスクに格納されたプログラムがメモリに読み込まれ、CPUによって実行されることにより、ソフトウェアとハードウェアとが協働して実現される。
【0042】
図4に示すように、制御装置10は、装置全体の制御を行う制御部11、通信部12、表示部13、入力部14及び有形物データベース(DB)15を含んで構成されるが、これに限定されない。通信部12は、X線検査装置1との間で無線通信を行う。表示部13は、制御装置10の操作に必要な情報を表示する。例えば、表示部13は、X線検査装置1に対してX線検査指示を行うための操作画面や、X線検査装置1から受信した画像データを表示する。入力部14は、制御装置10に対する操作者からの指示を受け付ける。
【0043】
有形物DB15は、任意の有形物に関するデータ(以下、適宜「有形物データ」という)を記憶する記憶部を構成する。有形物DB15には、日常生活で利用される各種の有形物データ、特に、検査対象物OBに収容して持ち運ばれる有形物データが登録される。例えば、有形物DB15における有形物データは、X線検査システム100の管理者により予め登録され、定期的に更新される。有形物DB15に対する有形物データの登録方法については、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0044】
ここで、本実施の形態に係る有形物DB15に登録される有形物データの一例について、
図5を参照して説明する。
図5は、本実施の形態に係る制御装置10の有形物DB15に登録される有形物データの一例の説明図である。
図5に示す有形物DB15においては、有形物データとして、各種のハサミに関するデータが登録される場合(
図5A)、各種の充電アダプタに関するデータが登録される場合(
図5B)及び各種のペットボトルに関するデータが登録される場合(
図5C)を示している。有形物DB15には、ハサミ、充電アダプタやペットボトルに限らず、任意の有形物データが登録される。
図5においては、説明の便宜上、有形物の種別に応じて別々に示しているが、有形物DB15ではこれらの全ての有形物データが登録される。以下では、
図5Aに示すハサミに関するデータを代表して説明する。
【0045】
図5Aに示すように、有形物DB15には、ハサミの種別に応じた識別番号(番号)151、名称152、形状データ153及び基準線量データ(以下、単に「線量データ」という)154が登録されている。例えば、形状データ153には、該当するハサミを正面から見た場合のシルエットに応じた形状データが登録されるが、これに限定されない。形状データ153には、該当するハサミを任意の角度から見た場合のシルエットに応じた形状データが登録されてもよい。ここでは、説明の便宜上、形状データ153として、「FA1」、「FA2」、「FA3」…「FAn」と表記している。
【0046】
また、線量データ154には、形状データ153の内容に応じてX線を照射した場合のX線の透過量に対応する線量データが登録される。例えば、形状データ153にハサミを正面から見た場合の形状データが登録される場合、対応する線量データ154には、ハサミに対して正面からX線を照射した場合の線量データが登録される。ここでは、説明の便宜上、線量データ154として、「DA1」、「DA2」、「DA3」…「DAn」と表記している。なお、線量データは、透過線量データとよんでもよい。
【0047】
制御部11は、画像取得部(取得部)111、画像解析部(解析部)112、有形物抽出部(抽出部)113及び画像処理部114を有している。本実施の形態に係る制御装置10において、制御部11の一部又は全部の機能を、人工知能(AI)を用いて実現することは実施の形態として好ましい。特に、画像解析部112、有形物抽出部113及び画像処理部114の機能を人工知能で実現することにより、後述する各構成部の処理の精度を向上することができる。
【0048】
画像取得部111は、通信部12を介してX線検査装置1から画像データ(X線画像データ)を取得する。より具体的にいうと、画像取得部111は、通信部12を介してX線検査指示をX線検査装置1に出力し、その応答情報として画像データを取得する。画像取得部111は、取得した画像データを画像解析部112に出力する。
【0049】
画像解析部112は、画像取得部111が取得した画像データの解析を行う。より具体的にいうと、画像解析部112は、画像データに平面座標を割り当てた場合において、各座標値におけるX線の透過線量を解析し、X線の透過線量の分布データ(以下、適宜「線量分布データ」という)を生成する。画像解析部112は、生成した線量分布データを、画像データと一緒に有形物抽出部113に出力する。
【0050】
有形物抽出部113は、有形物DB15に登録された有形物データに基づいて、画像取得部111が取得した画像データから有形物を抽出する。より具体的にいうと、有形物抽出部113は、画像データに含まれる形状データと、有形物DB15に登録された有形物の形状データとの照合を行い、画像データに含まれる有形物と、この有形物が配置される座標値(座標領域)とを抽出する。有形物抽出部113は、これらの有形物及び座標値を画像処理部114に出力する。
【0051】
画像処理部114は、画像取得部111が取得した画像データと、画像解析部112で生成された線量分布データと、有形物DB15に登録された有形物データの線量データとに基づいて、有形物抽出部113で抽出された有形物の基準線量を除去した画像データを生成する。より具体的にいうと、画像処理部114は、有形物抽出部113で抽出された有形物に対応する線量データを有形物DB15から読み出し、当該線量データを線量分布データの該当する座標領域から除去した画像データを生成する。
【0052】
次に、上記構成を有するX線検査システム100においてX線検査を行う場合の制御装置10の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施の形態に係るX線検査システム100においてX線検査を行う場合の制御装置10の動作を説明するためのフロー図である。ここでは、
図6に示す処理を開始する前に有形物DB15に任意の有形物データが登録されているものとする。
【0053】
X線検査に先立ち、X線検査装置1の空間Sに検査対象物OBが収納され、開閉機構3が閉鎖状態とされる。また、制御装置10において、操作者から有形物DB15に登録された有形物データとの照合により画像データから除去される有形物が指定される。この指定により、X線検査装置1の判定結果である画像データ上の表示物として残存又は消去される有形物が指定される。
【0054】
X線検査システム100でX線検査を行う場合、
図6に示すように、制御装置10は、X線検査装置1に対してX線検査を指示する(ステップ(以下、「ST」という)601)。このX線検査の指示は、制御部11(画像取得部111)によって生成され、通信部12を介してX線検査装置1に出力される。
【0055】
X線検査を指示した後、制御部11(画像取得部111)は、X線検査装置1から画像データを取得するか判定する(ST602)。X線検査装置1では、制御装置10からX線検査指示を受け取ると、照射装置4から受像装置5に向けてX線が照射される。照射装置4から照射されたX線は、検査対象物OBを透過し、受像装置5に受像される。そして、X線検査装置1では、受像装置5で受像された画像データを制御装置10に送信する。ST602において、制御部11(画像取得部111)は、このようにX線検査装置1から送信された画像データの取得の有無を判定する。
【0056】
X線検査装置1から画像データを取得しない場合、制御部11(画像取得部111)は、ST602の判定処理を継続する。一方、X線検査装置1から画像データを取得した場合、制御部11(画像解析部112)は、画像データの解析を行う(ST603)。上述したように、画像解析部112は、画像データに平面座標を割り当てた場合において、各座標値におけるX線の透過線量を解析し、線量分布データを生成する。
【0057】
線量分布データを生成した後、制御部11(有形物抽出部113)は、X線検査装置1から取得した画像データに対して有形物抽出処理を行う(ST604)。有形物抽出処理において、有形物抽出部113は、有形物DB15に登録された有形物データに基づいて、X線検査装置1から取得した画像データに含まれる有形物とその座標値(座標領域)を抽出する。
【0058】
図7は、本実施の形態に係るX線検査システム100における有形物抽出処理を説明するためのフロー図である。
図7に示すように、有形物抽出処理において、有形物抽出部113は、有形物DB15に登録された有形物データのうち、最も識別番号151が小さい有形物データの形状データを選択する。そして、有形物抽出部113は、選択した有形物データの形状データと、画像データに含まれる形状データとの照合(以下、適宜「形状データ間照合」という)を行う(ST701)。この形状データ間照合は、画像データの全体に亘って実行される。
【0059】
形状データ間照合を開始すると、有形物抽出部113は、合致する形状データ(合致形状データ)が検出されたか判定する(ST702)。ここで、合致する形状データが検出されない場合(ST702:No)、有形物抽出部113は、画像データに含まれる形状データと照合を行う有形物データの形状データを更新する(ST703)。そして、有形物抽出部113は、更新後の有形物データの形状データを用いて、再び形状データ間照合を行う(ST701)。
【0060】
一方、合致する形状データが検出された場合(ST702:Yes)、有形物抽出部113は、当該形状データを含む有形物データと、画像データにおける座標値を記録する(ST704)。これらの有形物データ及び座標値を記録すると、有形物抽出部113は、有形物抽出処理を終了する。
【0061】
有形物抽出処理を終了すると、制御部11(画像処理部114)は、画像除去処理を行う(ST605)。画像除去処理において、画像処理部114は、有形物抽出処理で抽出された有形物データの線量データを取得すると共に、有形物抽出処理で抽出された座標値に応じて取得した線量データを、画像解析部112で生成した線量分布データから減算した画像データを生成する。
【0062】
図8は、本実施の形態に係るX線検査システム100における画像除去処理を説明するためのフロー図である。
図8に示すように、画像除去処理において、画像処理部114は、有形物抽出処理にて記録された有形物データの線量データを有形物DB15から取得する(ST801)。
【0063】
該当する線量データを取得した後、画像処理部114は、画像解析部112で生成した線量分布データのうち、有形物抽出処理で抽出された画像データ上の座標値で示される領域から、当該線量データを減算する(ST802)。
【0064】
そして、画像処理部114は、線量データを減算した線量分布データに相当する画像データを生成する(ST803)。より具体的にいうと、画像処理部114は、有形物抽出処理で抽出された画像データ上の座標値で示される領域から、減算対象となる線量データに相当する濃度を消去した画像データを生成する。このように画像データを生成すると、画像処理部114は、画像除去処理を終了する。
【0065】
画像除去処理を終了すると、
図6に示すように、制御部11(有形物抽出部113)は、全ての有形物DB15に登録された全ての有形物データに対して処理を行ったかを判定する(ST606)。ここで、全ての有形物データに対して処理を行っていない場合(ST606:No)、有形物抽出部113は、処理をST604に戻し、再び有形物抽出処理を行う。
【0066】
一方、全ての有形物データを処理している場合(ST606:Yes)、制御部11は、最後に行った画像除去処理(ST605)で生成した画像データを表示部13に出力し、X線検査の判定結果として表示する(ST607)。画像データを表示部13に表示すると、制御部11は、X線検査システム100における一連の動作を終了する。
【0067】
ここで、本実施の形態に係るX線検査システム100によるX線検査の過程で生成される画像データの具体例について説明する。
図9~
図12は、本実施の形態に係るX線検査システム100によるX線検査の過程で生成される画像データの一例を示す図である。
【0068】
図9においては、X線検査装置1にて、有形物DB15に登録されたハサミA1、充電アダプタB1及びペットボトルC1と、有形物DB15に登録されていない粉状体Pとが収容された検査対象物OBがX線検査された場合の画像データを示している。なお、有形物DB15に登録された有形物データにおいては、ハサミA1、充電アダプタB1及びペットボトルC1の順に識別番号151が大きくなるものとする。
【0069】
ST602にて、
図9に示す画像データが生成された後、画像解析により当該画像データに対応する線量分布データが生成される(ST603)。そして、ST604に示す有形物抽出処理にて
図9に示す画像データに含まれる有形物データとその座標値が抽出される。その後、ST605に示す画像除去処理にて当該有形物データの線量データを減算した画像データが生成される。
【0070】
図9に示す画像データが取得されると、有形物抽出処理においては、
図7に示すST701~ST703を繰り返す中で、ST702にて、ハサミA1に応じた形状データFA1が合致形状データとして検出される。ハサミA1に応じた形状データFA1が検出されると、識別番号“A1”に応じた有形物データと、画像データにおける座標値とが記録される。
【0071】
そして、これらの情報が記録されると、
図8に示す画像除去処理のST801にて、識別番号“A1”に応じた有形物データの線量データDA1が取得され、ST802にて、線量分布データのうち、画像データの座標値で示される領域から、当該線量データDA1が減算される。そして、ST803にて、該当する座標領域から当該線量データDA1を減算した画像データが生成される(
図10参照)。
図10に示す画像データには、ハサミA1に対応する線量データが減算された結果、ハサミA1に対応する画像が除去されている。
【0072】
この画像除去処理を行った後、
図6に示すST606にて有形物DB15内の全ての有形物データに対する処理の完了が判定される結果、処理が再びST604に戻される。この場合、
図10に示す画像データを対象として有形物抽出処理が行われる。
【0073】
図10に示す画像データが取得されると、有形物抽出処理においては、
図7に示すST701~ST703の処理を繰り返す中で、ST702にて、充電アダプタB1に応じた形状データFB1が合致形状データとして検出される。充電アダプタB1に応じた形状データFB1が検出されると、識別番号“B1”に応じた有形物データと、画像データにおける座標値とが記録される。
【0074】
そして、これらの情報が記録されると、
図8に示す画像除去処理のST801にて識別番号“B1”に応じた有形物データの線量データDB1が取得され、ST802にて、線量分布データのうち、画像データの座標値で示される領域から、当該線量データDB1が減算される。そして、ST803にて、該当する座標領域から当該線量データDB1を減算した画像データが生成される(
図11参照)。
図11に示す画像データには、充電アダプタB1に応じた線量データDB1が減算された結果、充電アダプタB1に対応する画像が除去されている。
【0075】
この画像除去処理を行った後、
図6に示すST606にて有形物DB15内の全ての有形物データに対する処理の完了が判定される結果、処理が再びST604に戻される。この場合、
図11に示す画像データを対象として有形物抽出処理が行われる。
【0076】
図11に示す画像データが取得されると、有形物抽出処理においては、
図7に示すST701~ST703の処理を繰り返す中で、ST702にて、ペットボトルC1に応じた形状データFC1が合致形状データとして検出される。ペットボトルC1に応じた形状データFC1が検出されると、識別番号“C1”に応じた有形物データと、画像データにおける座標値とが記録される。
【0077】
そして、これらの情報が記録されると、
図8に示す画像除去処理のST801にて識別番号“C1”に応じた有形物データの線量データDC1が取得され、ST802にて、線量分布データのうち、画像データの座標値で示される領域から、当該線量データDC1が減算される。そして、ST803にて、該当する座標領域から当該線量データDC1を減算した画像データが生成される(
図12参照)。
図12に示す画像データには、ペットボトルC1に応じた線量データDC1が減算された結果、ペットボトルC1に対応する画像が除去されている。
【0078】
この画像除去処理を行った後、
図6に示すST606にて有形物DB15内の全ての有形物データに対する処理の完了が判定される結果、処理がST607に移行される。有形物DB15には、粉状体Pの形状データは登録されていないため、全ての有形物データに対する処理が完了しているためである。ST607では、
図12に示す画像データが表示部13に表示されることとなる。このため、X線検査システム100の検査者は、
図12に示す画像データを目視により確認することができる。
【0079】
このように本実施の形態に係るX線検査システム100においては、有形物DB15内の形状データに基づいて画像データに含まれる有形物が抽出される。そして、抽出された有形物に対応する有形物DB15内の線量データに基づいて当該有形物の画像が画像データから除去され、除去後の画像データが表示部13で表示されることから、有形物DB15に記憶された有形物の画像を除去した画像データによって検査対象物OB内の不審物等を確認することができる。これにより、検査対象物OB内で物品が重なって配置される場合であっても、高精度に不審物を検出することができる。
【0080】
特に、有形物抽出部113においては、画像データに含まれる形状データと、有形物DB15内の形状データとの照合により画像データに含まれる有形物を抽出している。これにより、有形物DB15に形状データが登録されている全ての有形物が、画像データに含まれるかを確実に抽出することができる。
【0081】
また、X線検査システム100においては、画像データにおけるX線の透過線量を解析し、当該画像データに対応するX線の透過線量の分布データ(線量分布データ)を生成する画像解析部112を有している。画像処理部114は、有形物抽出部113で抽出された有形物に対応する線量データを、画像解析部112で生成された線量分布データから減算することで、当該有形物の画像を画像データから除去する。これにより、該当する有形物の線量データに対応する画像を画像データから効果的に除去することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のX線検査システム及びX線検査方法は、検査対象物内で物品が重なって配置される場合であっても、高精度に不審物を検出することができるという効果を有し、危険物や不審物のおそれがある検査対象物OBの検査に好適である。
【符号の説明】
【0084】
1:X線検査装置
2 :筐体
21 :本体部
21a :開口部
21b :ガラス面部
21c :車輪
21d :ハンドル部
22 :照射装置収納部
23 :受像装置収納部
3 :開閉機構
31 :レール部材
311 :前方レール部
312 :上方レール部
313 :後方レール部
32 :シャッター部材
32d :開口部
4 :X線照射装置(照射装置)
47 :X線照射口(照射口)
5 :X線受像装置(受像装置)
51 :X線受像パネル(受像パネル)
10 :制御装置
11 :制御部
111 :画像取得部(取得部)
112 :画像解析部(解析部)
113 :有形物抽出部(抽出部)
114 :画像処理部
12 :通信部
13 :表示部
14 :入力部
S :空間
OB :検査対象物