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特許7277317セメント用添加剤、セメント混和剤、およびセメント組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】セメント用添加剤、セメント混和剤、およびセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/12 20060101AFI20230511BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20230511BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230511BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20230511BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230511BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20230511BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20230511BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C04B24/12 A
C04B24/16
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/30 B
C04B28/02
C04B24/00
C08F220/28
C08F290/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019160243
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2020050580
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018177194
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅美
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 優弥
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124719(JP,A)
【文献】特開2016-222484(JP,A)
【文献】特開2018-140920(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006995(WO,A1)
【文献】特開2013-053013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C08F 220/28
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分およびB成分を含む、セメント用添加剤であり、
前記セメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合((B成分の質量/A成分の質量)×100%)が1%~10000%である、セメント用添加剤
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【請求項2】
前記A成分が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のセメント用添加剤。
【請求項3】
前記A成分が、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ジイソプロパノールエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のセメント用添加剤。
【請求項4】
前記B成分を表す一般式(1)において、R1が水素原子、R2が水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基、R3が水素原子またはメチル基である、請求項1から3までのいずれかに記載のセメント用添加剤。
【請求項5】
下記のA成分およびB成分と、下記のC成分を含む、セメント混和剤。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化2】
(一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分、C4成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
C1成分:不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化3】
(構造単位(I)中、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R6は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、A1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。)
【化4】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2zCOOM基を表す。-(CH2zCOOM基は-COOX基または他の-(CH2zCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C2成分:不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化5】
(構造単位(II)中、R7およびR8は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R9は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、A2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。)
【化6】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2zCOOM基を表す。-(CH2zCOOM基は-COOX基または他の-(CH2zCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【請求項6】
下記のA成分およびB成分を含む、セメント組成物であり、
前記セメント組成物中の、A成分に対するB成分の質量の割合((B成分の質量/A成分の質量)×100%)が1%~10000%である、セメント組成物
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化7】
(一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤、セメント混和剤、およびセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント組成物は、一般に、セメントと骨材と水を含んでおり、通常、流動性を高めて減水させることが求められる。
【0003】
近年、セメント組成物に対し、セメント組成物の硬化物の強度性能の向上の要求が多くなってきている。
【0004】
セメント組成物の硬化物の強度性能の代表的なものとしては、一般に、早期強度向上性能と長期強度向上性能とが知られている。
【0005】
早期強度向上性能が高いと、施工後の養生期間を短くできるので、工期の短縮化や工事の省力化に供することができる。このような早期強度向上性能は、例えば、1週間レベルでの強度向上効果(代表的には、7日後圧縮強度)によって評価することができる。このような早期強度向上性能を発現し得るセメント添加剤については、これまで、各種検討がなされている(例えば、特許文献1、2など)。
【0006】
他方、長期強度向上性能が高いと、セメント組成物の硬化物の耐久性が長期にわたって維持され、長年にわたっての高強度の維持が必要とされる構造物には欠かせない性能として着目されている性能である。このような長期強度向上性能は、例えば、4週間レベルでの強度向上効果(代表的には、28日後圧縮強度)によって評価することができる。
【0007】
最近、本出願人は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント添加剤として、質量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物(A)とアルカノールアミン化合物(B)とを含むセメント添加剤を報告している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-084459号公報
【文献】特開2016-222484号公報
【文献】再表2017-006995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することにある。また、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント混和剤を提供することにある。さらに、硬化物の強度が長期にわたって顕著に向上し得るセメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人は、特許文献3に記載の発明において長期強度向上性能を発現できるセメント添加剤を見出した。そこで、さらに、特許文献3に記載の発明以外のセメント添加剤について、長期強度向上性能を発現できるものがないか検討を重ねた。その結果、カルボニル基と水酸基を有する特定構造を含む化合物とアルカノールアミン化合物を組み合わせて含むセメント添加剤が、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得ることが判明し、本発明の完成に至った。
【0011】
なお、本出願人が見出した上記組み合わせに用いるカルボニル基と水酸基を有する特定構造を含む化合物は、特許文献2において早期強度向上を発現し得るセメント添加剤に用いられる化合物と一部共通するが、特許文献2に記載の発明はセメント組成物の硬化物の早期強度向上を課題としており、セメント組成物の硬化物の長期強度向上については何ら検討されていない。
【0012】
本発明のセメント用添加剤は、
下記のA成分およびB成分を含む。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【0013】
好ましい実施形態においては、上記A成分が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記A成分が、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ジイソプロパノールエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記B成分を表す一般式(1)において、Rが水素原子、Rが水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基、Rが水素原子またはメチル基である。
【0016】
本発明のセメント混和剤は、下記のA成分およびB成分と、下記のC成分を含む。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化2】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分、C4成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
C1成分:不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化3】
(構造単位(I)中、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R6は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。)
【化4】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CHCOOM基を表す。-(CHCOOM基は-COOX基または他の-(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C2成分:不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化5】
(構造単位(II)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。)
【化6】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CHCOOM基を表す。-(CHCOOM基は-COOX基または他の-(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【0017】
本発明のセメント組成物は、下記のA成分およびB成分と、セメントを含む。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化7】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる。また、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント混和剤を提供することができる。さらに、硬化物の強度が長期にわたって顕著に向上し得るセメント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
【0020】
≪1.セメント用添加剤≫
本発明のセメント用添加剤は、下記のA成分およびB成分を含む。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化8】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【0021】
A成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。B成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
本発明のセメント用添加剤は、A成分とB成分とを含むことにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現する。
【0023】
本発明のセメント用添加剤によって発現される、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ得る効果(長期強度向上効果)は、好ましくは、A成分のみに起因する長期強度向上効果とB成分のみに起因する長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
【0024】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分とB成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは80質量%~100質量%であり、最も好ましくは85質量%~100質量%である。本発明のセメント用添加剤中のA成分とB成分との合計量の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0025】
本発明のセメント用添加剤の一つの実施形態は、本発明のセメント用添加剤がA成分とB成分とからなる。この場合、セメント用添加剤中の、A成分とB成分との合計量の含有割合は、100質量%となる。
【0026】
本発明のセメント用添加剤の別の一つの実施形態は、本発明のセメント用添加剤がA成分とB成分と他の成分とからなる。他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。この場合、本発明のセメント用添加剤中の、A成分とB成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~99.9質量%であり、より好ましくは50質量%~97質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%であり、特に好ましくは80質量%~90質量%であり、最も好ましくは85質量%~90質量%である。
【0027】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合((B成分の質量/A成分の質量)×100%)は、好ましくは1%~10000%であり、より好ましくは10%~5000%であり、さらに好ましくは25%~250%であり、特に好ましくは50%~100%である。本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の質量の割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0028】
本発明のセメント用添加剤中のA成分の含有割合は、好ましくは10質量%~85質量%であり、より好ましくは20質量%~80質量%であり、さらに好ましくは30質量%~75質量%であり、特に好ましくは40質量%~70質量%である。本発明のセメント用添加剤中のA成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0029】
本発明のセメント用添加剤中のA成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント用添加剤中のA成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0030】
本発明のセメント用添加剤中のB成分の含有割合は、好ましくは5質量%~90質量%であり、より好ましくは10質量%~80質量%であり、さらに好ましくは15質量%~70質量%であり、特に好ましくは20質量%~60質量%である。本発明のセメント用添加剤中のB成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0031】
本発明のセメント用添加剤中のB成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント用添加剤中のB成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0032】
<1-1.A成分>
A成分はアルカノールアミン化合物である。アルカノールアミン化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
アルカノールアミン化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアルカノールアミン化合物を採用し得る。このようなアルカノールアミン化合物としては、例えば、低分子型のアルカノールアミン化合物、高分子型のアルカノールアミン化合物などが挙げられる。
【0034】
低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミンなどが挙げられる。これらの中でも、低分子型のアルカノールアミン化合物としては、好ましくは、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ジイソプロパノールエタノールアミンが挙げられる。他の低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するモノマーなども挙げられる。
【0035】
高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、アルカノールアミンの一部がポリマーと結合している構造のアルカノールアミンが挙げられる。このような高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するポリマーが挙げられる。
【0036】
<1-2.B成分>
B成分は、一般式(1)で表される化合物である。
【化9】
【0037】
一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
【0038】
一般式(1)中、Rは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0039】
一般式(1)中、Rは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子またはメチル基である。
【0040】
一般式(1)中、Rは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0041】
B成分としては、具体的には、例えば、ヒドロキシアセトン(一般式(1)において、Rが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子)、アセトイン(一般式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(一般式(1)において、Rが水素原子、Rがメチル基、Rがメチル基)などが挙げられる。
【0042】
<1-3.その他の成分>
本発明のセメント用添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。
【0043】
本発明のセメント用添加剤がその他の成分を含む場合、本発明のセメント用添加剤中の、その他の成分の含有割合は、好ましくは0.1質量%~70質量%であり、より好ましくは3質量%~50質量%であり、さらに好ましくは5質量%~30質量%であり、特に好ましくは10質量%~20質量%であり、最も好ましくは10質量%~15質量%である。本発明のセメント用添加剤中のその他の成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0044】
≪2.セメント混和剤≫
本発明のセメント混和剤は、下記のA成分およびB成分と、下記のC成分を含む。
A成分:アルカノールアミン化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化10】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分、C4成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
C1成分:不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化11】
(構造単位(I)中、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R6は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。)
【化12】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CHCOOM基を表す。-(CHCOOM基は-COOX基または他の-(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C2成分:不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤。
【化13】
(構造単位(II)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。)
【化14】
(構造単位(III)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CHCOOM基を表す。-(CHCOOM基は-COOX基または他の-(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【0045】
A成分については、<1-1.A成分>の項における説明を援用し得る。
【0046】
B成分については、<1-2.B成分>の項における説明を援用し得る。
【0047】
本発明のセメント混和剤は、A成分とB成分とを含むので、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得る。
【0048】
本発明のセメント混和剤によって発現される、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ得る効果(長期強度向上効果)は、好ましくは、A成分のみに起因する長期強度向上効果とB成分のみに起因する長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
【0049】
本発明のセメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは80質量%~100質量%であり、最も好ましくは85質量%~100質量%である。本発明のセメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0050】
本発明のセメント混和剤の一つの実施形態は、本発明のセメント混和剤がA成分とB成分とC成分からなる。この場合、セメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合は、100質量%となる。
【0051】
本発明のセメント混和剤の別の一つの実施形態は、本発明のセメント混和剤がA成分とB成分とC成分とその他の成分とからなる。その他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。この場合、本発明のセメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分の合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~99.9質量%であり、より好ましくは50質量%~97質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%であり、さらに好ましくは80質量%~90質量%であり、特に好ましくは85質量%~90質量%である。
【0052】
本発明のセメント混和剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合((B成分の質量/A成分の質量)×100%)は、好ましくは1%~10000%であり、より好ましくは10%~5000%であり、さらに好ましくは25%~250%であり、特に好ましくは50%~100%である。本発明のセメント混和剤中のA成分に対するB成分の質量の割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0053】
本発明のセメント混和剤中のA成分の含有割合は、好ましくは0.1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~40質量%であり、さらに好ましくは2質量%~30質量%であり、特に好ましくは3質量%~20質量%である。本発明のセメント混和剤中のA成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0054】
本発明のセメント混和剤中のA成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント混和剤中のA成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0055】
本発明のセメント混和剤中のB成分の含有割合は、好ましくは0.1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~40質量%であり、さらに好ましくは2質量%~30質量%であり、特に好ましくは3質量%~20質量%である。本発明のセメント混和剤中のB成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0056】
本発明のセメント混和剤中のB成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント混和剤中のB成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0057】
本発明のセメント混和剤中のC成分の含有割合は、好ましくは35質量%~99質量%であり、より好ましくは40質量%~97質量%であり、さらに好ましくは45質量%~93質量%であり、特に好ましくは50質量%~90質量%である。本発明のセメント混和剤中のC成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0058】
本発明のセメント混和剤中のC成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.03質量%~1質量%であり、さらに好ましくは0.07質量%~0.5質量%であり、特に好ましくは0.1質量%~0.3質量%である。本発明のセメント混和剤中のC成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0059】
<2-1.C1成分>
C1成分は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤である。C1成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【化15】
【化16】
【0060】
構造単位(I)を供する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は一般式(Ia)で表され、構造単位(III)を供する不飽和カルボン酸系単量体は一般式(IIIa)で表される。
【化17】
【化18】
【0061】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0062】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1~30のアルケニル基、炭素原子数1~30のアルキニル基、炭素原子数6~30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基である。
【0063】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0064】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表し、2~300の数であり、好ましくは2~200の数であり、より好ましくは5~200の数であり、さらに好ましくは8~100の数であり、特に好ましくは20~70の数であり、最も好ましくは40~60の数である。mが上記範囲内にあることにより、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0065】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、xは0~2の整数である。
【0066】
一般式(Ia)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルのいずれかにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物;が挙げられ、好ましくは、3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物である。
【0067】
一般式(Ia)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0068】
構造単位(III)および一般式(IIIa)中、R10~R12は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CHCOOM基を表す。-(CHCOOM基は-COOX基または他の-(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0~2の整数である。
【0069】
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0070】
Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0071】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0072】
アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0073】
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0074】
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩であり、より好ましくは、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩である。
【0075】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0076】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0077】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5モル%~80モル%であり、より好ましくは5モル%~70モル%であり、さらに好ましくは10モル%~60モル%であり、特に好ましくは15モル%~50モル%であり、最も好ましくは20モル%~40モル%である。
【0078】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは20モル%~95モル%であり、より好ましくは30モル%~95モル%であり、さらに好ましくは40モル%~90モル%であり、特に好ましくは50モル%~85モル%であり、最も好ましくは60モル%~80モル%である。
【0079】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)と構造単位(III)の合計の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50モル%~100モル%であり、より好ましくは60モル%~100モル%であり、さらに好ましくは70モル%~100モル%であり、特に好ましくは80モル%~100モル%であり、最も好ましくは90モル%~100モル%である。
【0080】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中には、構造単位(I)と構造単位(III)以外に、他の単量体由来の構造単位(IV)を含んでいてもよい。
【0081】
他の単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0082】
他の単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを平均1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを平均1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
【0083】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0モル%~50モル%であり、より好ましくは0モル%~40モル%であり、さらに好ましくは0モル%~30モル%であり、特に好ましくは0モル%~20モル%であり、最も好ましくは0モル%~10モル%である。
【0084】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)と構造単位(III)との合計の含有割合は、それぞれ、例えば、該ポリカルボン酸系重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、C1成分であるポリカルボン酸系重合体を製造する際に用いる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と他の単量体の使用量と重合率に基づいて算出される該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と該他の単量体由来の構造単位の含有割合に基づいて、C1成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)と構造単位(III)との合計の含有割合を算出してもよい。
【0085】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中の構造単位の含有比率を求める場合には、構造単位がカルボキシル基の塩を有する場合には、カルボキシル基の酸部分を全てナトリウム塩に換算して計算を行う。
【0086】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは65000以上であり、より好ましくは65000~1000000であり、さらに好ましくは67000~800000であり、特に好ましくは70000~400000であり、最も好ましくは75000~200000である。
【0087】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法によって製造し得る。C1成分であるポリカルボン酸系重合体は、好ましくは、単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
【0088】
<2-2.C2成分>
C2成分は、不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である、ポリカルボン酸系分散剤である。C2成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0089】
【化19】
【化20】
【0090】
構造単位(II)を供する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は一般式(IIa)で表される。
【化21】
【0091】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0092】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、Rは、炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1~30のアルケニル基、炭素原子数1~30のアルキニル基、炭素原子数6~30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素原子数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素原子数1~3のアルキル基である。
【0093】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、AOは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。オキシアルキレン基は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0094】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表し、2~300であり、好ましくは5~150であり、より好ましくは10~100であり、さらに好ましくは15~75であり、特に好ましくは20~50である。nが上記範囲内にあることにより、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0095】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、例えば、炭素数1~20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3~20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3~20の脂環式アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6~20の芳香族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
【0096】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステルである。
【0097】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0098】
不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)、構造単位(III)を供する不飽和カルボン酸系単量体(IIIa)については、前述の、C1成分の説明中におけるこれらの説明を援用し得る。
【0099】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5モル%~95モル%であり、より好ましくは10モル%~90モル%であり、さらに好ましくは20モル%~80モル%であり、特に好ましくは30モル%~70モル%であり、最も好ましくは40モル%~60モル%である。
【0100】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5モル%~95モル%であり、より好ましくは10モル%~90モル%であり、さらに好ましくは20モル%~80モル%であり、特に好ましくは30モル%~70モル%であり、最も好ましくは40モル%~60モル%である。
【0101】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50モル%~100モル%であり、より好ましくは60モル%~100モル%であり、さらに好ましくは70モル%~100モル%であり、特に好ましくは80モル%~100モル%であり、最も好ましくは90モル%~100モル%である。
【0102】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中には、構造単位(II)と構造単位(III)以外に、他の単量体由来の構造単位(IV)を含んでいてもよい。
【0103】
他の単量体および他の単量体由来の構造単位(IV)については、前述の、C1成分の説明における他の単量体および他の単量体由来の構造単位(IV)の説明を援用し得る。
【0104】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0モル%~50モル%であり、より好ましくは0モル%~40モル%であり、さらに好ましくは0モル%~30モル%であり、特に好ましくは0モル%~20モル%であり、最も好ましくは0モル%~10モル%である。
【0105】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)と構造単位(III)との合計の含有割合は、それぞれ、例えば、該ポリカルボン酸系重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、C2成分であるポリカルボン酸系重合体を製造する際に用いる不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と他の単量体の使用量と重合率に基づいて算出される該不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位と該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と該他の単量体由来の構造単位の含有割合に基づいて、C2成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)と構造単位(III)との合計の含有割合を算出してもよい。
【0106】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中の構造単位の含有比率を求める場合には、構造単位がカルボキシル基の塩を有する場合には、カルボキシル基の酸部分を全てナトリウム塩に換算して計算を行う。
【0107】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは3000以上であり、より好ましくは5000~1000000であり、さらに好ましくは10000~500000であり、特に好ましくは20000~300000であり、最も好ましくは30000~200000である。
【0108】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法によって製造し得る。C2成分であるポリカルボン酸系重合体は、好ましくは、単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
【0109】
<2-3.C3成分>
C3成分は、スルホン酸系分散剤である。C3成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0110】
スルホン酸系分散剤は、主にスルホン酸基によってもたらされる静電的反発によりセメントに対する分散性を発現する分散剤であって、任意の適切なスルホン酸系分散剤を用いることができ、分子中に芳香族基を有する化合物であることが好ましい。スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和スルホン酸系単量体を含む単量体から得られる重合体またはその塩;などが挙げられる。
【0111】
<2-4.C4成分>
C4成分は、リン酸系分散剤である。C4成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0112】
リン酸系分散剤としては、分子中にリン酸基を有する任意の適切なリン酸系分散剤を用いることができ、例えば、特開2006-52381号公報に記載のリン酸系分散剤、特表2008-517080号公報に記載のリン酸系分散剤などが挙げられる。
【0113】
≪3.セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、下記のA成分およびB成分と、セメントを含む。
A成分:アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物。
B成分:一般式(1)で表される化合物。
【化22】
(一般式(1)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。)
【0114】
A成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。B成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0115】
本発明のセメント組成物は、A成分とB成分とを含むことにより、硬化物の強度が長期にわたって顕著に向上し得る。
【0116】
本発明のセメント組成物によって発現される、硬化物の強度が長期にわたって向上し得る効果(長期強度向上効果)は、好ましくは、A成分のみに起因する長期強度向上効果とB成分のみに起因する長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
【0117】
A成分については、<1-1.A成分>の項における説明を援用し得る。
【0118】
B成分については、<1-2.B成分>の項における説明を援用し得る。
【0119】
セメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、およびそれぞれの低アルカリ型)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。
【0120】
本発明のセメント組成物は、骨材を含んでいてもよい。骨材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材としては、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0121】
本発明のセメント組成物は、任意の適切な混和材を含んでいてもよい。混和材としては、例えば、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、膨張剤などが挙げられる。
【0122】
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【0123】
本発明のセメント組成物は、A成分、B成分、セメント、および必要によりその他の成分が独立して配合されて調製されたものであってもよいし、A成分とB成分を含む本発明のセメント用添加剤、セメント、および必要によりその他の成分が配合されて調製されたものであってもよい。また、≪2.セメント混和剤≫の項で説明したC成分が配合される場合には、本発明のセメント組成物は、A成分、B成分、C成分、セメント、および必要によりその他の成分が独立して配合されて調製されたものであってもよいし、A成分とB成分を含む本発明のセメント用添加剤、C成分、セメント、および必要によりその他の成分が配合されて調製されたものであってもよいし、A成分とB成分とC成分を含む本発明のセメント混和剤、セメント、および必要によりその他の成分が配合されて調製されたものであってもよい。
【0124】
本発明のセメント組成物中のA成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント組成物中のA成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント組成物は、硬化物の強度が長期にわたってより顕著に向上し得る。
【0125】
本発明のセメント組成物中のB成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.001質量%~0.5質量%であり、より好ましくは0.003質量%~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007質量%~0.1質量%であり、特に好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。本発明のセメント組成物中のB成分の含有割合をセメントに対して上記範囲内に調整することによって、本発明のセメント組成物は、硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上し得る。
【0126】
本発明のセメント組成物がC成分を含む場合、本発明のセメント組成物中のC成分の含有割合は、セメントに対しては、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.03質量%~1質量%であり、さらに好ましくは0.07質量%~0.5質量%であり、特に好ましくは0.1質量%~0.3質量%である。本発明のセメント組成物中のC成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。
【0127】
本発明のセメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m~250kg/mであり、使用セメント量が200kg/m~800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m~185kg/mであり、使用セメント量が250kg/m~800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.12~0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0128】
本発明のセメント組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような添加剤としては、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、早強剤・促進剤、遅延剤、AE剤、消泡剤、ひび割れ低減剤、界面活性剤、防水材、防錆剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などが挙げられる。
【0129】
水溶性高分子物質としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β-1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド;が挙げられる。
【0130】
高分子エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の重合物が挙げられる。
【0131】
早強剤・促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;が挙げられる。
【0132】
遅延剤としては、例えば、グルコン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;ピルビン酸、オキソグルタル酸等のケト酸もしくはその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、異性化糖、マルトース、シュークロース、ラクトース、ラフィノース、デキストリン等の糖;グリセリン、キシリトール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、リビトール、ボレミトール、ペルセイトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、D-トレイトール、L-トレイトール、D-イジトール、D-グリシドール、D-エリトローD-ガラクト-オクチトール等の糖アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸およびその誘導体;などが挙げられる。
【0133】
AE剤としては、例えば、樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホネートが挙げられる。
【0134】
消泡剤としては、例えば、オキシアルキレン系消泡剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤が挙げられる。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;が挙げられる。
【0135】
ひび割れ低減剤としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテルが挙げられる。
【0136】
界面活性剤としては、例えば、各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;が挙げられる。
【0137】
防水剤としては、例えば、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスが挙げられる。
【0138】
防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛が挙げられる。
【0139】
膨張材としては、例えば、エトリンガイト系膨張材、石炭系膨張材が挙げられる。
【0140】
その他の成分の種類、組み合わせ、配合量等は目的に応じて適切に設定され得る。
【0141】
本発明のセメント組成物中における添加剤の含有割合は、固形分割合として、好ましくは0質量%~50質量%であり、より好ましくは0質量%~10質量%であり、さらに好ましくは0質量%~1質量%であり、特に好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0142】
本発明のセメント組成物は、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。
【0143】
本発明のセメント組成物は、例えば、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【実施例
【0144】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
【0145】
<重量平均分子量分析条件>
ポリエチレングリコールの重量平均分子量については、市販品でカタログやホームページ上で公開されている場合は、実施例および比較例において特記(例えば、「実測値」などと記載)していない限り、その値を採用した(カタログやホームページ上での公開が「平均分子量」等の他の表現になっている場合はその値を採用した)。
・使用カラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumnα+TSKgelα-5000+TSKgelα-4000+TSKgelα-3000を各1本ずつ連結して使用した。
・溶離液:リン酸二水素ナトリウム・2HO:62.4g、リン酸水素二ナトリウム・12HO:143.3gを、イオン交換水:7794.3gに溶解させた溶液に、アセトニトリル:2000gを混合した溶液を用いた。
・検出器:Viscotek社製のトリプル検出器「Model302光散乱検出器」、直角光散乱として90°散乱角度、低角度光散乱として7°散乱角度、セル容量として18μL、波長として670nm。
・標準試料:東ソー株式会社製、ポリエチレングリコールSE-8(Mw=l07000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定した。
・打ち込み量
標準試料:ポリマー濃度が0.2vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
サンプル:ポリマー濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
・流速:0.8ml/min
・カラム温度:40℃
【0146】
<フロー値、空気量、28日圧縮強度の測定>
(フロー値と空気量の測定)
セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材として大井川水系産陸砂、粗骨材として青海産砕石、A成分および/またはB成分、減水剤、混練水として水道水を用い、セメント:382kg/m、水:172kg/m、細骨材:796kg/m、粗骨材:930kg/m、細骨材率(細骨材/細粗骨材+粗骨材)(容積比):47%、水/セメント比(質量比)=0.45の配合にてセメント組成物を調製した。
なお、セメント組成物の温度が20℃の測定温度になるように、測定に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類を上記の測定温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の測定温度雰囲気下で行った。また、セメント組成物中の気泡がセメント組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、必要に応じてオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が4.5±0.5%となるように調整した。
上記条件下に強制練りミキサーを用いて混練時間90秒間でコンクリートを製造し、フロー値と空気量を測定した。なお、フロー値と空気量の測定は、日本工業規格(JIS-A-1101、1128)に準拠して行った。また、A成分および/またはB成分、C成分の添加量は、フロー値が375mm~425mmになる添加量とした。
(28日圧縮強度)
フロー値と空気量を測定した後、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:100mm×200mm
供試体養生(28日):温度約20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
(28日圧縮強度比、28日圧縮強度相乗効果分)
表中における「28日圧縮強度比」とは、比較例1において測定された28日圧縮強度(p(N/mm))を100としたときの、他の実施例、比較例における28日圧縮強度(q(N/mm))の比、すなわち、100×(q/p)(%)を表す。
また、表中における「28日圧縮強度相乗効果分」とは、A成分とB成分を併用した実施例において、(用いたA成分のみを用いた場合の対応する比較例における28日圧縮強度比-100)%と(用いたB成分のみを用いた場合の対応する比較例における28日圧縮強度比-100)%との単純和をX%とし、(該A成分と該B成分を併用した実施例における28日圧縮強度比-100)%をY%としたときの、(Y-X)%のことであり、この値が大きいほど、A成分とB成分を併用したことによる単純和に対する、28日圧縮強度向上の相乗効果が大きいことを示している。
【0147】
〔製造例1〕:分散剤としての重合体(1)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水80.0部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個)133.4部、メタクリル酸26.6部、メルカプトプロピオン酸1.53部およびイオン交換水106.7部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.19部とイオン交換水50.6部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量100000の重合体(1)の水溶液を得た。
【0148】
〔製造例2〕:分散剤としての重合体(2)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN-50と称す)(80%水溶液)198.2部、アクリル酸0.32部、過酸化水素水(2%水溶液)12.47部、イオン交換水44.75部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、アクリル酸27.12部、イオン交換水108.5部からなる混合溶液を3時間かけ滴下し、それと同時にL-アスコルビン酸0.74部、3-メルカプトプロピオン酸1.61部、イオン交換水86.31部からなる混合溶液を3時間30分かけて滴下した。滴下完了後1時間、58℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量140000の重合体(2)の水溶液を得た。
【0149】
〔製造例3〕:リン酸系分散剤の製造
特表2008-517080号公報記載の方法に準じて縮合反応を行い、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートのホルムアルデヒドによる縮合によって、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートの比率が30/70(モル%)、質量平均分子量(Mw)が25000の縮合体を含有するリン酸系分散剤(3)の水溶液を得た。
【0150】
〔製造例4〕:分散剤としての重合体(4)の製造
特表2004-519406号公報記載の方法に準じて共重合反応を行い、メタリルアルコールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルとアクリル酸ナトリウムの共重合組成比が85/15(質量%)、19/81(モル%)、重量平均分子量(Mw)が32000の重合体(4)の水溶液を得た。
【0151】
〔製造例5〕:分散剤(5)の製造
マイティ150(花王社製)を分散剤(5)とした。
【0152】
〔製造例6〕:分散剤(6)の製造
マスターポゾリスNo.8(BASFジャパン社製)を分散剤(6)とした。
【0153】
〔実施例1a~3a〕:セメント用添加剤(1)~(3)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(1)~(3)を調製した。
【0154】
〔実施例4a~6a〕:セメント用添加剤(4)~(6)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(4)~(6)を調製した。
【0155】
〔実施例7a~9a〕:セメント用添加剤(7)~(9)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(7)~(9)を調製した。
【0156】
〔実施例10a~12a〕:セメント用添加剤(10)~(12)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(10)~(12)を調製した。
【0157】
〔実施例13a~15a〕:セメント用添加剤(13)~(15)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(13)~(15)を調製した。
【0158】
〔実施例16a~18a〕:セメント用添加剤(16)~(18)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(16)~(18)を調製した。
【0159】
〔実施例19a~21a〕:セメント用添加剤(19)~(21)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(19)~(21)を調製した。
【0160】
〔実施例22a~24a〕:セメント用添加剤(22)~(24)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(22)~(24)を調製した。
【0161】
〔実施例25a〕:セメント用添加剤(25)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(25)を調製した。
【0162】
〔実施例26a〕:セメント用添加剤(26)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(26)を調製した。
【0163】
〔実施例27a〕:セメント用添加剤(27)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(27)を調製した。
【0164】
〔実施例28a〕:セメント用添加剤(28)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(28)を調製した。
【0165】
〔実施例29a〕:セメント用添加剤(29)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(29)を調製した。
【0166】
〔実施例1b~3b〕:セメント混和剤(1)~(3)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(1)~(3)を調製した。
【0167】
〔実施例4b~6b〕:セメント混和剤(4)~(6)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(4)~(6)を調製した。
【0168】
〔実施例7b~9b〕:セメント混和剤(7)~(9)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(7)~(9)を調製した。
【0169】
〔実施例10b~12b〕:セメント混和剤(10)~(12)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(10)~(12)を調製した。
【0170】
〔実施例13b~15b〕:セメント混和剤(13)~(15)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(13)~(15)を調製した。
【0171】
〔実施例16b~18b〕:セメント混和剤(16)~(18)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(16)~(18)を調製した。
【0172】
〔実施例19b~21b〕:セメント混和剤(19)~(21)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(19)~(21)を調製した。
【0173】
〔実施例22b~24b〕:セメント混和剤(22)~(24)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(22)~(24)を調製した。
【0174】
〔実施例25b〕:セメント混和剤(25)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例2で得られた重合体(2)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(25)を調製した。
【0175】
〔実施例26b〕:セメント混和剤(26)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例3で得られたリン酸系分散体(3)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(26)を調製した。
【0176】
〔実施例27b〕:セメント混和剤(27)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例4で得られた重合体(4)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(27)を調製した。
【0177】
〔実施例28b〕:セメント混和剤(28)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、ヒドロキシアセトン(東京化成工業株式会社製)、製造例5で得られた分散剤(5)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(28)を調製した。
【0178】
〔実施例29b〕:セメント混和剤(29)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、アセトイン(東京化成工業株式会社製)、製造例6で得られた分散剤(6)を表2の条件で配合して、セメント混和剤(29)を調製した。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
〔実施例1c~29c〕
表3に示す配合にて、セメント組成物(1)~(29)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表3に示した。なお、A成分、B成分、C成分を個々に配合した場合であっても、A成分とB成分をセメント用添加剤(1)~(29)として配合した場合であっても、A成分とB成分とC成分をセメント混和剤(1)~(29)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0182】
【表3】
【0183】
〔比較例1c〕
表4に示す配合にて、セメント組成物(C-1)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。セメント組成物(C-1)は、A成分、B成分を含まないセメント組成物である。
【0184】
〔比較例2c~7c〕
表4に示す配合にて、セメント組成物(C-2)~(C-7)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。なお、B成分、C成分を個々に配合した場合であっても、B成分をセメント用添加剤(C-2)~(C-7)として配合した場合であっても、B成分とC成分をセメント混和剤(C-2)~(C-7)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0185】
〔比較例8c~11c〕
表4に示す配合にて、セメント組成物(C-8)~(C-11)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。なお、A成分、C成分を個々に配合した場合であっても、A成分をセメント用添加剤(C-8)~(C-11)として配合した場合であっても、A成分とC成分をセメント混和剤(C-8)~(C-11)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0186】
〔比較例12c~14c〕
表4に示す配合にて、セメント組成物(C-12)~(C-14)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。なお、ジヒドロキシアセトン、C成分を個々に配合した場合であっても、ジヒドロキシアセトンをセメント用添加剤(C-12)~(C-14)として配合した場合であっても、ジヒドロキシアセトンとC成分をセメント混和剤(C-12)~(C-14)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0187】
〔比較例15c〕
表4に示す配合にて、セメント組成物(C-15)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。なお、A成分、ジヒドロキシアセトン、C成分を個々に配合した場合であっても、A成分とジヒドロキシアセトンをセメント用添加剤(C-15)として配合した場合であっても、A成分とジヒドロキシアセトンとC成分をセメント混和剤(C-15)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0188】
【表4】
【0189】
表3、4に示すように、比較例1cの28日圧縮強度を100%としたとき、A成分とB成分を用いた実施例1cの28日圧縮強度比は121%であり、121%-100%=21%に相当する強度向上効果が発現できている。一方、実施例1cで用いているA成分(TIPA)に起因する強度向上効果は比較例8cに示されているように28日圧縮強度比として105%であり、実施例1cで用いているB成分(アセトイン)に起因する強度向上効果は比較例2cに示されているように28日圧縮強度比として107%であり、それらの効果の単純和は(105%+107%)-100=12%である。したがって、実施例1cにおいては強度向上の有意な相乗効果(12%から21%への顕著な増加)が見られる。他の実施例2c~29cについても同様に、強度向上の有意な相乗効果が見られる。
【0190】
また、本願発明で用いるB成分に該当しないジヒドロキシアセトンを用いた比較例12c~15cにおいては、強度向上の有意な相乗効果は見られない。
【0191】
〔実施例30a~32a〕:セメント用添加剤(30)~(32)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(30)~(32)を調製した。
【0192】
〔実施例33a~35a〕:セメント用添加剤(33)~(35)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(33)~(35)を調製した。
【0193】
〔実施例36a~38a〕:セメント用添加剤(36)~(38)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(36)~(38)を調製した。
【0194】
〔実施例39a~41a〕:セメント用添加剤(39)~(41)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(39)~(41)を調製した。
【0195】
〔実施例30b~32b〕:セメント混和剤(30)~(32)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表6の条件で配合して、セメント混和剤(30)~(32)を調製した。
【0196】
〔実施例33b~35b〕:セメント混和剤(33)~(35)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表6の条件で配合して、セメント混和剤(33)~(35)を調製した。
【0197】
〔実施例36b~38b〕:セメント混和剤(36)~(38)
TIPA(トリイソプロパノールアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表6の条件で配合して、セメント混和剤(36)~(38)を調製した。
【0198】
〔実施例39b~41b〕:セメント混和剤(39)~(41)
EDIPA(ジイソプロパノールエタノールアミン、アルドリッチ社製)、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成工業株式会社製)、製造例1で得られた重合体(1)を表6の条件で配合して、セメント混和剤(39)~(41)を調製した。
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
〔実施例30c~41c〕
表7に示す配合にて、セメント組成物(30)~(41)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表7に示した。なお、A成分、B成分、C成分を個々に配合した場合であっても、A成分とB成分をセメント用添加剤(30)~(41)として配合した場合であっても、A成分とB成分とC成分をセメント混和剤(30)~(41)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0202】
【表7】
【0203】
〔比較例16c~18c〕
表8に示す配合にて、セメント組成物(C-16)~(C-18)を調製し、フロー値、28日圧縮強度を測定した。結果を表8に示した。なお、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、C成分を個々に配合した場合であっても、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンをセメント用添加剤(C-16)~(C-18)として配合した場合であっても、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンとC成分をセメント混和剤(C-16)~(C-18)として配合した場合であっても、同様の結果が得られた。
【0204】
【表8】
【0205】
表7、8に示すように、比較例1cの28日圧縮強度を100%としたとき、A成分とB成分を用いた実施例30cの28日圧縮強度比は121%であり、121%-100%=21%に相当する強度向上効果が発現できている。一方、実施例30cで用いているA成分(TIPA)に起因する強度向上効果は比較例8cに示されているように28日圧縮強度比として105%であり、実施例30cで用いているB成分(3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン)に起因する強度向上効果は比較例16cに示されているように28日圧縮強度比として107%であり、それらの効果の単純和は(105%+107%)-100=12%である。したがって、実施例30cにおいては強度向上の有意な相乗効果(12%から21%への顕著な増加)が見られる。他の実施例31c~41cについても同様に、強度向上の有意な相乗効果が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明のセメント用添加剤は、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物に好適に用いられる。