IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイ テンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電子部品及び電池の封止システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20230511BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230511BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230511BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20230511BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20230511BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20230511BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230511BHJP
   H01C 1/02 20060101ALI20230511BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20230511BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230511BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20230511BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20230511BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230511BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20230511BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/485
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0585
H01G11/78
H01G11/84
H01G4/224 100
H01G9/08 A
H01G2/10 J
H01C1/02 M
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/133
H01M50/548 101
H01M50/562
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2019571597
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 FR2018051582
(87)【国際公開番号】W WO2019002768
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】1756079
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1756364
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1853930
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン ファビアン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05561004(US,A)
【文献】特開平03-015150(JP,A)
【文献】特開2002-352850(JP,A)
【文献】特表2010-519675(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1161154(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/587
H01M 4/00- 4/62
H01G 11/78
H01G 11/84
H01G 4/224
H01G 9/08
H01G 2/10
H01C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品又は電気化学部品である物体(1000)を封止するシステム(30)であって、
i)前記物体を少なくとも部分的に被覆する、原子層堆積によって堆積された電気絶縁材料から構成された第1の被覆層(31,31’)と、
ii)前記第1の被覆層の上に積層されたパリレンから構成された第2の被覆層(32,32’)と、
iii)前記第2の被覆層を、酸素から保護し、前記物体の耐用年数を延ばすための、前記第2の被覆層の上に堆積された第3の被覆層(33,33’)とからなる、連続する3つの層を備えた、封止システム。
【請求項2】
電子部品又は電気化学部品である物体(1000)を封止するシステムにおいて、
パリレン及び/又はポリイミドから構成された被覆層と、
パリレン及び/又はポリイミドから構成された前記被覆層の上に堆積された、請求項1に記載の封止システム(30)とを備えた、封止システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の封止システムを備えた、
電子部品又は電気化学部品。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学部品において、
前記電気化学部品が電池であって、
- 少なくとも1つのアノード(10,10’)及び少なくとも1つのカソード(20,20’)が交互に堆積され、その各々が薄膜のスタックにより構成されたスタックであり、前記アノード(10、10’)は、
-- アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜(12)、及び
-- 任意の、電解質材料からなる薄膜(13)、を含み、
前記カソード(20,20’)は、
-- カソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜(22)、及び
-- 任意の、電解質材料からなる薄膜(23)であって、電池が、連続する、アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜(12)、電解質材料からなる少なくとも1つの薄膜(13,23)、及びカソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜22、を含むように構成されている薄膜(23)、を含む、スタックと、
- 前記第1の被覆層(31,31’)が前記スタックを少なくとも部分的に被覆する請求項1に記載の封止システム30であって、
第1のアノード(10)又は第1のカソード20が、少なくとも1つの接続可能な接続ゾーンを有し、一方で、それに隣接するカソード20又はアノード10は、少なくとも前記第1の被覆層(31,31’)及び前記第2の被覆層(32,32’)により被覆されている被覆ゾーンZRTを含み、前記被覆ゾーンは、前記第1のアノード又は前記第1のカソードの接続ゾーンZCに面して、前記スタックの面に垂直な方向に並んで設けられている、封止システム(30)と
を備える、電気化学部品。
【請求項5】
請求項1に記載の封止システムの形成を含む、封止された電子部品又は電気化学部品の製造方法であって、
- 原子層堆積による、電気絶縁材料から構成された第1の被覆層(31,31’)と、
- 前記第1の被覆層上に堆積された、パリレン及び/又はポリイミドから構成された第2の被覆層(32,32’)と、
- 前記第2の被覆層上に堆積され、該第2の被覆層を、酸素から保護することができ、且つそのように堆積された第3の被覆層33,33’と
を連続して堆積することにより前記封止システムの形成する、電子部品又は電気化学部品の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の封止システムの形成を含む、封止された電子部品又は電気化学部品の製造方法において、
- 前記電子部品又は前記電気化学部品上に形成され、パリレン及び/又はポリイミドから構成された前処理層と、
- パリレン及び/又はポリイミドから構成された前記被覆層の上にALDにより堆積され、電気絶縁材料から構成された第1の被覆層(31,31’)と、
- 前記第1の被覆層上に堆積された、パリレン及び/又はポリイミドから構成された第2の被覆層(32,32’)と、
- 前記第2の被覆層上に堆積され、該第2の被覆層を、酸素から保護することができ、且つそのように堆積された第3の被覆層(33,33’)と
を連続して堆積することにより前記封止システムを形成する、電子部品又は電気化学部品の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の製造方法において、
前記電気化学部品は電池であって、
前記電池は、少なくとも1つのアノード(10)及び少なくとも1つのカソード(20,20’)が交互に堆積されたスタックを備え、その各々が薄膜のスタックにより構成されたスタックであり、
前記アノード(10,10’)が、
- アノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(12)、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜(13)
を有し、
前記カソード(20,20’)が、
- カソード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(22)、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜(23)
を有し、
前記電池が、連続する、アノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(12)と、電解質材料から構成された少なくとも1つの薄膜(13,23)と、カノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(22)と、を備え、
(a)カソードのシート及びアノードのシートが交互に連続する主積層体を形成するステップであって、該主積層体は、少なくとも1つの電池を構成するものであり、2つの隣接するシートは、接続可能な接続ゾーン(ZC)を構成する少なくとも1つの突出領域(RS)、及び被覆ゾーン(RTC)を構成する少なくとも1つの後退ゾーン(RT)を画定するステップと、
(b)請求項1に記載の封止システムを、請求項5に記載の製造方法により堆積するステップと
を含む、製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電池の製造方法において、
前記ステップ(b)の後、接続可能な接続ゾーン(ZC)又は接続可能な各接続ゾーン(ZC)を露出させる、電池の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電池の製造方法において、
ステップ(b)の後に、
前記アノードの接続ゾーンZCを接続可能にする、前記主積層体の面と垂直な少なくとも1つの第1のカットを形成する工程と、
前記カソードの接続ゾーンZCを接続可能にする、前記主積層体の面と垂直な少なくとも1つの第1のカットを形成する工程と
を含むステップ(c)を実行する、
電池の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電池の製造方法において、
前記各第1のカットは、前記主積層体の互いに反対側に位置する端部に形成する、
電池の製造方法。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の電池の製造方法であって、
カソードのシート及びアノードのシートの交互に連続する前記主積層体における2つの隣接するシートの端部は直線状の端部であり、第1のシートの端部は突出領域(RS)を構成する一方、第2のシートの端部は後退領域(RR)を構成する、
電池の製造方法。
【請求項12】
請求項7~9のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
第1の大きな断面を有する第1のノッチ(50、50’,50’’,50’’’)を、カソードのシート及びアノードのシートが交互に連続する前記主積層体の第1のシートの端部に形成し、
前記第1のノッチの壁が、後退領域(RR)を構成しており、
前記第1の大きな断面よりも小さい第2の小さな断面を有する第2のノッチを、隣接する第2のシートに形成し、
前記第2のノッチ(50、50’,50’’,50’’’)の壁は、前記突出領域(RS)を構成している、電池の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電池の製造方法であって、
カソードの前記シート及びアノードの前記シートは、円形状のノッチ50、50’、50’’、50’’’’を有している、電池の製造方法。
【請求項14】
請求項7~9のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
第1の大きな断面を有する第1のオリフィスを第1のシートに形成し、
前記第1のオリフィスの壁が後退領域(RR)を構成しており、
前記第1の断面より小さな第2の小さな断面を有する第2のオリフィスを、隣接する第2のシートに形成し、
前記第2のオリフィスの壁が前記突出領域(RS)を構成しており、
前記各オリフィスの内部は、前記封止システムによって充填されおり、
前記接続ゾーン(ZC)を前記第2の小さな断面を有する前記壁の近くに形成し、且つ前記被覆ゾーンを前記第1の大きな断面を有する前記壁の近くに形成するように、少なくとも1つの第2のカットを、前記第1のオリフィス及び前記第2のオリフィスの内側に形成する、電池の製造方法。
【請求項15】
請求項7~11のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
2つの隣接するシートにおいて、前記シートの面に垂直な方向に相互にずらされた第1のスロット及び第2のスロットを形成し、
前記各スロットの内部は、封止システムによって充填されており、
前記接続ゾーンを第1のスロットの壁の近くに形成し、前記被覆ゾーンを第2のスロットの壁の近くに形成するように、少なくとも1つの第2のカットを、前記スロットの内側に形成する、電池の製造方法。
【請求項16】
請求項9又は10に記載の電池の製造方法において、
ステップ(c)の後、前記アノードの接続ゾーン(ZC)及び前記カソードの接続ゾーン(ZC)を、導電体のALDによる薄膜堆積(41、41’)によって互いに電気的に接続する、電池の製造方法。
【請求項17】
請求項9~15のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
アノード及びカソードの相互接続(40、40’)を、導電体の薄膜で予め被覆された金属部分によって形成する、電池の製造方法。
【請求項18】
請求項9又は10に記載の電池の製造方法において、
ステップ(c)の後、
- 第1の導電層と、
- 前記第1の導電層の上に堆積した、銀を添加したエポキシ樹脂を含む第2の層(42,42’)と、
- 前記第2の層の上に堆積した、スズを含む第3の層43、43’と
が連続する相互接続システムによって、アノードの接続ゾーン及びカソードの接続ゾーンを互いに電気的に接続する、電池の製造方法。
【請求項19】
請求項9又は10に記載の電池の製造方法において、
ステップ(c)の後、
- 第1の導電層と、
- 前記第1の導電層の上に堆積した、銀を添加したエポキシ樹脂を含む第2の層(42)と、
- 前記第2の層の上に堆積した、ニッケルを含む第3の層(43a)と、
- 前記第3の層の上に堆積した、スズ又は銅を含む第4の層(43b)と
が連続する相互接続システムによって、アノードの接続ゾーン及びカソードの接続ゾーンを、互いに電気的に接続する、電池の製造方法。
【請求項20】
前記シートは、最終電池の寸法よりも寸法が大きく、
少なくとも1つの第3のカットを、前記シートの中央部分に形成する、
請求項7~19のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項21】
前記電気絶縁材料は、Al、SiO、SiO、及びエポキシ樹脂から選択される、請求項7~20のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項22】
前記第2の被覆層はパリレンNを含む、
請求項7~21のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項23】
前記第1の被覆層の厚さは200nm未満であり、
前記第2の被覆層の厚さは1~50μmである、
請求項7~22のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項24】
前記第3の被覆層の厚さは1~50μmである、
請求項7~23のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項25】
請求項7~24のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
アノードの層は、
- スズの酸窒化物(一般式はSnO);
- リチウム化されたリン酸鉄(一般式はLiFePO);
- シリコンとスズとが混合された酸窒化物(一般式はSiSn、ここで、a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3)(SiTONともよばれる)、;酸窒化物炭化物(一般式はSiSn、ここで、a>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17);SiSn、ここで、Xは、F、Cl、Br、I、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、Ge、Pbのうちのいずれか1つの元素であり、a>0、b>0、a+b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24及び0<z<17;SiSn、ここで、Xは、F、Cl、Br、I、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、Ge、Pbのうち少なくとも1つの元素であり、a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3;
- Siタイプの窒化物(x=3且つy=4)、Sn(x=3且つy=4)、Zn(x=3且つy=4)、Li3-xN(M=Co、0≦x≦0.5、M=Ni且つ0≦x≦0.6、又はM=Cu且つ0≦x≦0.3);
- 酸化物SnO、LiTi12、SnB0.60.42.9、及びTiO
から選択される材料から構成された、電池の製造方法。
【請求項26】
請求項7~25のいずれか1項に記載の電池の製造方法において、
電解質材料の層は、
- 一般式Li (TOのガーネット、
ここで、
-- Aは、酸化数+IIのカチオンであり、
-- Aは、酸化数+IIIのカチオンであり、
-- (TO)は、Tが酸素原子からなる四面体の中心にある酸化数+IVのあるアニオンであり、
-- dは2~10であり、xは2.6~3.4であり、yは1.7~2.3であり、zは2.9~3.1であり;
- 以下より選択されるガーネット:LiLaZr12:LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12(M=Nb若しくはTa又はこれらの混合物):Li7-xBaLa3-x12(0≦x≦1、M=Nb若しくはTa又はこれらの混合物):Li7-xLaZr2-x12(0≦x≦2、M=Al、Ga、若しくはTa、又はこれらの2つ若しくは3つの混合物);
- 以下から選択されるリチウム化リン酸塩:NASICONタイプのリチウム化リン酸塩;LiPO;LiPO;「LASP」とよばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li(Sc2-x)(PO(M=Al又はY、0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(PO(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO(0≦x≦0.8、0≦y≦1及びM=Al若しくはY又は2つの混合物):Li1+x(Ga)2-x(PO(M=Al、Y、又は2つの混合物、0≦x≦0.8);「LATP」とよばれるLi1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1);又は、「LAGP」とよばれるLi1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1);又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、且つ0≦z≦0.6、M=Al、Ga、Y、又はこれら2つ若しくは3つの混合物);Li3+y(Sc2-x)Q3-y12(M=Al及び/又はY、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8、且つ0≦y≦1);又はLi1+x+ySc2-x3-y12(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8、且つ0≦y≦1);又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1、0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又は2つの混合物、Q=Si及び/又はSe);又はLi1+x 2-x12(0≦x≦1及びM=Cr及び/又はV、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se、若しくはSi、又はこれらの混合物を含む);
- 以下から選択されるリチウム化硫化化合物:LiAlz-yGa(PO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiAlz-yGa(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4、0<c<20);LiAlz-ySc(PO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiAlz-ySc(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiGez-ySi(PO、4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20;LixGe(z-y)Si(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4、0<c<20);
- 以下から選択されるリチウム化ホウ酸塩:Li(Sc2-x)(BO(M=Al又はY、0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(BO(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO(0≦x≦0.8、0≦y≦1、M=Al又はY);Li1+x(Ga)2-x(BO(M=Al、Y、又は2つの混合物、0≦x≦0.8);LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
- LiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、若しくはLiGeO4-x2x/3(0<x<4)、又はLiBO3-xN2x/3(0<x<3)から選択される、酸窒化物;
- 「LiPON」とよばれる、LiPO(x~2.8及び2y+3z~7.8及び0.16≦z≦0.4)で表されるリチウムとリンとの酸窒化物を含むリチウム化化合物、LiPO(2x+3y+2z=5=w)又はLiPO(3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3)又はLiAl(5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2);
- それぞれ「LiPON」又は「LiBON」ともよばれる、リン又はホウ素のリチウムの酸窒化物を含む材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素と組み合わせを含んでいてもよく、リンのリチウムの酸窒化物を含む材料についてはホウ素を含んでいてもよい;
- 「LiSiPON」とよばれる、リチウム、リン、及びシリコンの酸窒化物を含むリチウム化化合物;
- LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、thio-LiSiCON、LiPONB(B、P、Sはそれぞれホウ素、リン、硫黄を表す)のタイプのリチウムの酸窒化物;
- (1-x)LiBO-xLiSO(0.4≦x≦0.8)で表されるLiBSOタイプのリチウムの酸窒化物;
- LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12(A=Sc、Y、Al、Ga及び1.4≦x≦2)、又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦0.16)(LLTO)から選択されるリチウム化酸化物;
- LiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるケイ酸塩;
- 以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:
-- LiOA(Aはハロゲン又はハロゲンの混合物である);
-- Li(3-x)x/2OA、(0<x≦3、Mは2価の金属であって、Mg、Ca、Ba、Srから選択される元素の少なくとも1つ、又はこれらの2つ、3つ、若しくは4つの混合物、Aはハロゲン又はハロゲンの混合物である);
-- Li(3-x) x/3OA(0≦x≦3、Mは3価の金属、Aはハロゲン又はハロゲンの混合物);LiCOX(1-z)(X及びYは、前記Aと同様のハロゲン、0≦z≦1);
- 化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
- LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Αl0.3Τi1.7(ΡΟ、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti、及び/又はHf、及び0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1及び0≦y≦1);
- リチウムイオンを伝導するポリマーを含み、リチウム塩に含浸させた又は含浸させない電解質;
- リチウムイオンを運ぶ相が挿入されるセラミックマトリックスである無機マトリックスを含む、ハイブリッド電解質であって、リチウムイオンを運ぶ相が、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含む溶液、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含む少なくとも1つのイオン液体から選択される少なくとも1つのリチウム塩を含む有機電解質、
から選択される材料から構成された、電池の製造方法。
【請求項27】
薄膜電池であって、
(a)少なくとも1つのアノード(10)及び少なくとも1つのカソード(20,20’)が交互に堆積されたスタックを備え、その各々が薄膜のスタックにより構成されたスタックであり、
前記アノード(10,10’)が、
- アノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(12)、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜(13)
を有し、
前記カソード(20,20’)が、
- カソード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(22)、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜(23)
を有し、
前記電池が、連続する、アノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(12)と、電解質材料から構成された少なくとも1つの薄膜(13,23)と、カノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(22)と、を備え、
カソードのシート及びアノードのシートが交互に連続する主積層体が形成され、2つの隣接するシートは、接続可能な接続ゾーン(ZC)を構成する少なくとも1つの突出領域(RS)、及び被覆ゾーン(RTC)を構成する少なくとも1つの後退ゾーン(RT)を画定し、
(b)封止システムであって、
i)前記主積層体を少なくとも部分的に被覆する、原子層堆積によって堆積された電気絶縁材料から構成された第1の被覆層(31,31’)と、
ii)前記第1の被覆層の上に積層されたパリレンから構成された第2の被覆層(32,32’)と、
iii)前記第2の被覆層を、酸素から保護し、前記薄膜電池の耐用年数を延ばすための、前記第2の被覆層の上に堆積された第3の被覆層(33,33’)と
からなる、連続する3つの層を備えた封止システム
とを備えた、薄膜電池。
【請求項28】
前記被覆層がパリレンNから構成されている、請求項2に記載された封止システム。
【請求項29】
前記接続ゾーンを第1のスロットの壁の近くに形成し、前記被覆ゾーンを第2のスロットの壁の近くに形成するように、各第2のカットを、前記スロットの内側に形成する、請求項15に記載の電池の製造方法。
【請求項30】
前記第1の導電層は、金属層であって、ALDによって堆積された層(41、41’)である、請求項18に記載の電池の製造方法。
【請求項31】
前記第1の導電層は、金属層であって、ALDにより堆積された層(41)である、請求項19に記載の電池の製造方法。
【請求項32】
前記第1の被覆層の厚さは5~200nmであり、
前記第2の被覆層の厚さは1~50μmである、
請求項7~22のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項33】
前記第1の被覆層の厚さは50nmであり、
前記第2の被覆層の厚さは10μmである、
請求項7~22のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項34】
前記第3の被覆層の厚さは10μm未満である、請求項24に記載の電池の製造方法。
【請求項35】
前記第3の被覆層の厚さは5μm未満である、請求項34に記載の電池の製造方法。
【請求項36】
前記第3の被覆層の厚さは2μmである、請求項35に記載の電池の製造方法。
【請求項37】
前記SiSnは、SiSn0.871.21.72である、請求項25に記載の電池の製造方法。
【請求項38】
前記「LiPON」とよばれる、LiPOが、Li2.9PO3.30.46である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項39】
前記「LiSiPON」とよばれる、リチウム、リン、及びシリコンの酸窒化物を含むリチウム化化合物が、Li1.9Si0.281.01.11.0である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項40】
前記Aは、Ca、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdのうちのいずれか1つの元素である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項41】
前記Aは、Al、Fe、Cr、Ga、Ti、Laのうちのいずれか1つの元素である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項42】
前記TOは、酸化数+IVの元素Tのすべて又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taのうちのいずれか1つの元素である酸化数が+III又は+Vの原子で置換されている、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項43】
前記LiOAのAは、F、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素、又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項44】
前記Li(3-x)x/2OAのAは、F、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素、又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項45】
前記Li(3-x) x/3OAのAは、F、Cl、Br、I又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物である、請求項26に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型電子部品及び電池などの物体を封止するシステムに関する。具体的には、電池、すなわち、この方法で封止できるリチウムイオン電池の分野に関する。本発明はまた、特に自己放電を低減し及び耐用年数を改善する新規な構造及び封止を有する、薄膜リチウムイオン電池を製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超小型電子部品と電池、特に薄膜電池は、酸素及び湿度(湿度)によって劣化するため耐久性を保つために封止する必要がある。特に、リチウムイオン電池は湿度の影響をとても受けやすく、耐用年数が10年以上の封止が必要である。携帯型電子機器及び自律型センサのネットワークの普及に伴い、高エネルギー密度及び高電力密度を有する充電式電池の需要が大幅に高まっている。薄膜リチウムイオン電池は、高エネルギー密度及び高電力密度を有し、再充電可能で、メモリー効果がないので、これらの需要を満たすことはできるが、信頼性及び耐用年数はまだ課題が残る要素である。
【0003】
薄膜リチウムイオン電池は、完全に固体の、つまり液体のない電極及び電解質で構成されている。それらを形成する種々の層の厚さは通常10μmを超えず、多くの場合1~4μmである。多層電池などのこれらの薄膜電池は、自己放電による影響を受けやすいことがわかっている。電極の配置、すなわち多層電池の電極の端部の近接度、及び切断面の清浄度に応じて、端部にリーク電流が発生する場合がある。これは電池の性能を低下させる沿面短絡(a creeping short circuit)である。この現象は、電解質の膜が非常に薄い場合に深刻である。
【0004】
これらの全固体薄膜リチウムイオン電池は、ほとんどの場合、金属リチウムの層を有するアノードを使用する。アノードの材料は、電池の充電と放電のサイクルにおいてその体積が大きく変動することがわかっている。実際、充電と放電のサイクルにおいて、金属リチウムの一部がリチウムイオンに変換され、それがカソードの材料の構造に挿入され、アノードの体積が減少する。体積のこの周期的な変動によって、電極及び電解質の層間の機械的及び電気的接触が悪化する場合がある。これにより、電池の耐用年数が短くなる。
【0005】
アノードの材料の体積の周期的変動は、電池のセルの体積の周期的変動をも誘発する。これによって、封止システムに周期的なストレスがかかり、封止システムのシール性(又は完全性)の喪失の原因となるひび割れが生じ得る。この現象は、電池の耐用年数全体にわたる性能低下のもう1つの原因である。
【0006】
実際、リチウムイオン電池の活物質は、空気、特に湿度の影響を非常に受けやすい。移動するリチウムイオンは、微量の水分と自然に反応してLiOHを形成し、電池のカレンダ劣化を引き起こす。リチウムイオンの挿入に関わる材料及びリチウムイオンを伝導する電解質のすべてが、水分と接触して反応するわけではない。例えば、LiTi12は空気又は微量の水分と接触しても劣化しない。反対に、x>0のLi4+xTi12の形態でリチウムが増えるとすぐに、この挿入された余剰分(x)が、空気の影響を受けやすいので、微量の水分と自然に反応してLiOHを形成する。従って、反応したリチウムは充電に利用できなくなり、電池の容量の損失を引き起こす。
【0007】
リチウムイオン電池の活物質が空気及び水にさらされるのを回避し、この種の劣化を防ぐために、封止システムによって保護することが不可欠である。薄膜電池の多くの封止システムが文献に記載されている。
【0008】
文献US2002/0071989には、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、五酸化タンタル(Ta)、及びアモルファス炭素より選択される誘電体材料からなる第1層、誘電体材料からなる第2層、並びに第2層上に積層され電池全体を被覆する被覆層からなる積層体によって構成される全固体薄膜電池の封止システムが記載されている。
【0009】
文献US5561004には、薄膜リチウムイオン電池の保護のための複数のシステムが記載されている。提案された第1のシステムは、電池の活性要素上に堆積された、アルミニウムフィルムで被覆されたパリレンからなる層を含む。しかし、空気及び水蒸気の拡散に対するこの保護システムは、効果が約1か月間しかない。提案された第2のシステムは、パリレン(厚さ500nm)及び金属(厚さ約50nm)の交互の層で構成されている。また、この文献には、空気中の成分による電池の劣化の速度を低減するために、これらの電池を紫外線(UV)照射によって硬化したエポキシ層で被覆することが好ましいことが記載されている。
【0010】
先行技術によれば、ほとんどのリチウムイオン電池は、電池セルの周りを閉じたポリマーからなる金属含有シート(「ポーチ(pouch)」とよばれる)によって封止され、コネクタテープ(「タブ」とよばれる)でヒートシールされている。このパッケージングは比較的柔軟であり、電池の正極及び負極の接続は、電池の周りのパッケージングに用いられているヒートシールされたポリマーに埋め込まれている。しかし、このポリマーのシート間の溶着部分は、空気に対する完全な不透過性があるわけではなく、電池のヒートシールに用いられるポリマーは、空気に対する透過性が高い。この透過性は、温度とともに増加し、それが劣化を促進することがわかっている。
【0011】
しかし、空気にさらされるこの溶着部分の表面は非常に小さく、パッケージングの残りの部分は、これらのポリマーシート間に挟まれたアルミニウムシートで構成されている。一般に、2枚のアルミニウムシートが、これらのアルミニウムシートのそれぞれにおける欠陥の孔の存在に関連する影響を最小限に抑える。位置合わせされている各シート上の2つの欠陥の確率は大幅に低減されている。
【0012】
これらのパッケージング技術によって、通常の使用条件下で、10×20cmの表面積を有する10Ah電池のカレンダ耐用年数は、約10~15年であることが保証されている。電池が高温にさらされると、この耐用年数は5年未満に短縮される。このため、多くの用途に対しては不十分である。同様の技術は、キャパシタ及び活性要素などの他の電子部品にも利用できる。
【0013】
従って、空気、湿度、及び温度の影響から部品を保護する、薄膜電池及びその他電子部品の封止システム及びその製造方法が必要である。より具体的には、薄膜リチウムイオン電池を、空気及び湿気並びに充電及び放電サイクルによる劣化から保護する、封止システム及びその製造方法が必要である。封止システムは不浸透となるように密閉され、部品又は電池を完全に包み込んで被覆し、電池セルの寸法のわずかな変化(「呼吸(breaths)」)に対応できる十分な柔軟性を有し、且つ、あらゆる沿面短絡を避けるために、符号が反対の電極の端部を分離しているものでなければならない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の1つの目的は、前述の従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0015】
本発明の他の目的は、耐用年数が非常に長く、自己放電が少ないリチウムイオン電池を提供することである。
【0016】
―本発明の目的―
前記目的の少なくとも1つは、以下に示す本発明の目的の少なくとも1つによって達成される。本発明は、第1の目的として、電池などの電子部品又は電気化学部品のような物体1000を封止するシステム30を提供する。これは、以下の3つの連続する層によって構成されることを特徴とする。
i)前記物体を少なくとも部分的に被覆する、原子層堆積法(以下、ALD(Atomic Layer Deposition))によって堆積された電気絶縁材料から構成された第1の被覆層31,31’、
ii)第1の被覆層上に積層された、パリレン及び/又はポリイミドから構成された第2の被覆層32,32’。
iii)第2の被覆層を、酸素から保護し、物体の耐用年数を長くするための、第2の被覆層上に堆積された第3の被覆層33,33’。
【0017】
物体の封止システムは、パリレン及び/又はポリイミドから、好ましくはパリレンNから、構成された被覆層と、前記被覆層上に堆積された、パリレン及び/又はポリイミドから構成された封止システム30とを備えていることが好ましい。
【0018】
第3の被覆層33,33’は、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、又はシリコーンを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の第2の目的は、電池、好ましくは封止システム30を含む薄膜電池などの、電子部品又は電気化学部品を提供することである。本発明の他の目的は、薄膜電池である前記部品であり、前記電池が以下の構成を備える部品を提供することである。
- 少なくとも1つのアノード10,10’及び少なくとも1つのカソード20,20’が交互に堆積され、その各々が薄膜のスタックにより構成されたスタックであって、前記アノード10、10’は、
-- アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜12、及び
-- 任意の、電解質材料からなる薄膜13、を含み、
前記カソード20,20’は、
-- カソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜22、及び
-- 任意の、電解質材料からなる薄膜23であって、電池が、連続する、アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜12、電解質材料からなる少なくとも1つの薄膜13,23、及びカソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜22、を含むように構成されている薄膜23、を含む、スタック。
- 前記第1の被覆層31,31’が前記スタックを少なくとも部分的に被覆する封止システム30であって、
第1のアノード10又は第1のカソード20が、少なくとも1つの接続可能な接続ゾーンを有し、一方で、それに隣接するカソード20又はアノード10は、少なくとも前記第1の被覆層31,31’及び前記第2の被覆層32,32’により被覆されている被覆ゾーンZRTを含み、前記被覆ゾーンは、前記第1のアノード又は前記第1のカソードの接続ゾーンZCに面して、前記スタックの面に垂直な方向に並んで設けられている、封止システム30。
【0020】
本発明の他の目的は、封止システム30の形成を含む、封止された電子部品又は電気化学部品の製造方法を提供することである。この方法では、前記封止システム30を形成するように、以下の層を連続して堆積する。
(i)ALDによる、電気絶縁材料から構成された第1の被覆層31,31’。
(ii)前記第1の被覆層上に堆積された、パリレン及び/又はポリイミドから構成された第2の被覆層32,32’。
(iii)第2の被覆層上に堆積され、第2の被覆層を、(具体的には酸素から)保護することができ、且つそのように堆積された第3の被覆層33,33’。
【0021】
本発明の他の目的は、本発明に係る封止システムの形成を含む電子部品又は封止電池の製造方法であって、前記封止システムを形成するように、以下の層を連続して堆積する方法を提供することである。
- 前記電子部品又は電気化学部品上に形成され、パリレン及び/又はポリイミドから構成された前処理層。
- パリレン及び/又はポリイミドから構成された前記被覆層上にALDにより堆積され、電気絶縁材料から構成された第1の被覆層31,31’。
- 前記第1の被覆層上に堆積され、パリレン及び/又はポリイミドを含む第2の被覆層32,32’。
- 第2の被覆層上に堆積され、第2の被覆層を、(具体的には酸素から)保護することができ、且つそのように堆積される第3の被覆層33,33’。
【0022】
本発明の更に他の目的は、以下を含む、薄膜電池の製造方法である。
前記電池は、少なくとも1つのアノード10,10’及び少なくとも1つのカソード20,20’が交互に堆積された積層体を備え、その各々が薄膜のスタックにより構成されたスタックであり、
アノード10,10’が、
- アノード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜12、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜13
を有し、
カソード20,20’が、
- カソード活物質から構成された少なくとも1つの薄膜(22)、及び
- 任意の、電解質材料から構成された薄膜(23)
を有し、
前記製造方法は、以下のステップを含む。
(a)カソードのシートとアノードのシートが交互に連続する主積層体を形成するステップであって、この主積層体は、少なくとも1つの電池を構成するものであり、2つの隣接するシートは、接続可能な接続ゾーンZCを構成する少なくとも1つの突出領域RS、及び被覆ゾーンRTCを構成する少なくとも1つの後退ゾーンRTを画定するステップ。
(b)本発明に係る封止システムを、前述の方法により堆積するステップ。
【0023】
ステップ(b)の後、接続可能な接続ゾーンZC又は接続可能な各接続ゾーンZCを露出させることが好ましい。
【0024】
一実施形態では、ステップ(b)の後に、アノードの接続ゾーンZC(以下、アノード接続ゾーン)を接続可能にする、前記主積層体の面に垂直な少なくとも1つの第1のカット(切断面)を形成する工程と、カソードの接続ゾーンZC(以下、カソード接続ゾーン)を接続可能にする、前記主積層体の面に対して垂直な少なくとも1つの第1のカットを形成する工程とを含むステップ(c)を実行する。
【0025】
第1のカットは、前記主積層体の互いに反対側に位置する端部に形成されることが好ましい。
【0026】
第1の実施形態では、カソードのシート及びアノードのシートの交互に連続する主積層体における2つの隣接するシートの端部は直線状の端部であり、第1のシートの端部は突出領域RSを構成する一方、第2のシートの端部は後退領域RRを構成する。
【0027】
第2の実施形態では、第1の大きな断面を有する第1のノッチ50、50’,50’’,50’’’を、カソードのシート及びアノードのシートが交互に連続する前記主積層体の第1のシートの端部に形成し、前記第1のノッチの壁が、前記後退領域RRを構成しており、前記第1の断面よりも小さい第2の小さな断面を有する第2のノッチを、隣接する第2のシートに形成し、前記第2のノッチ50、50’,50’’,50’’’の壁は、前記突出領域RSを構成している。
【0028】
カソードのシート及びアノードのシートは、円形状のノッチ50、50’、50’’、50’’’’を有していることが好ましい。
【0029】
好ましくは、第1の大きな断面を有する第1のオリフィスを第1のシートに形成し、前記オリフィスの壁が前記後退領域RRを構成しており、第1の断面よりも小さな第2の小さな断面を有する第2のオリフィスを、隣接する第2のシートに形成し、前記第2のオリフィスの壁が前記突出領域RSを構成しており、前記各オリフィスの内部は、封止システム又はこれらの代替案の1つによって充填されており、第2の小さな断面を有する壁の近くに接続ゾーンZCを形成し且つ第1の大きな断面を有する壁の近くに被覆ゾーンが形成するように、少なくとも1つの第2のカット、好ましくは各第2のカットを、第1のオリフィス及び第2のオリフィスの内側に形成する。
【0030】
好ましくは、2つの隣接するシートにおいて、前記シートの面に垂直な方向に相互にずらされた第1のスロット及び第2のスロットを形成し、前記各スロットの内部は、封止システムによって充填されており、接続ゾーンを第1のスロットの壁の近くに形成し、被覆ゾーンを第2のスロットの壁の近くに形成するように、少なくとも1つの第2のカット、好ましくは、各第2のカットを、前記スロットの内側に形成する。
【0031】
好ましくは、ステップ(c)の後、アノードの接続ゾーンZC及びカソードの接続ゾーンZCを、導電体のALDによる薄膜堆積41、41’によって互いに電気的に接続する。
【0032】
好ましくは、アノード及びカソードの相互接続40、40’を、導電体の薄膜で予め被覆された金属部分によって形成する。
【0033】
好ましくは、ステップ(c)の後、
- 第1の導電層、好ましくは、金属層であって、任意の、好ましくはALDによって堆積された層41、41’と、
- 前記第1の導電層上に堆積した、銀を添加したエポキシ樹脂を含む第2の層42,42’と、
- 前記第2の層上に堆積した、スズを含む第3の層43、43’と
が連続する相互接続システムによって、アノードの接続ゾーン及びカソードの接続ゾーンを互いに電気的に接続する。
【0034】
他の実施形態では、ステップ(c)の後、
- 第1の導電層、好ましくは金属層、であって、任意で、好ましくはALDにより堆積された層41と、
- 前記第1の導電層上に堆積した、銀を添加したエポキシ樹脂を含む第2の層42と、
- 前記第2の層上に堆積した、ニッケルを含む第3の層43aと、
- 前記第3の層上に堆積した、スズ又は銅を含む第4の層43bと
が連続する相互接続システムによって、アノードの接続ゾーン及びカソードの接続ゾーンを、互いに電気的に接続する。
【0035】
好ましくは、シートは、最終電池の寸法よりも寸法が大きく、少なくとも1つの他のカット(第3のカットという)を、前記シートの中央部分に形成する。
【0036】
好ましくは、前記電気絶縁材料は、水に対してバリア特性を有する非導電性有機又は無機ポリマー材料から選択される。好ましくは、前記電気絶縁材料は、Al、SiO、SiO、及びエポキシ樹脂から選択される。
【0037】
好ましくは、第2の被覆層はパリレンNを含む。
【0038】
好ましくは、第1の被覆層の厚さは200nm未満、好ましくは5~200nm、更に好ましくは約50nmであり、第2の被覆層の厚さは1~50μm、好ましくは約10μmである。
【0039】
好ましくは、第3の被覆層の厚さは1~50μm、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満、更により好ましくは約2μmである。
【0040】
好ましくは、アノードの層は、以下より選択される材料から構成されている。
(i)スズの酸窒化物(一般式はSnO);
(ii)リチウム化されたリン酸鉄(一般式はLiFePO);
(iii)シリコンとスズとが混合された酸窒化物(一般式はSiSn、ここで、a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3)(SiTONともよばれる)、特に、SiSn0.871.21.72;酸窒化物炭化物(一般式はSiSn、ここで、a>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17);SiSn、ここで、Xは、F、Cl、Br、I、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、Ge、Pbのうちのいずれか1つの元素であり、a>0、b>0、a+b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24及び0<z<17;SiSn、ここで、Xは、F、Cl、Br、I、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、Ge、Pbのうち少なくとも1つの元素であり、a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3;
(iv)Siタイプの窒化物(特にx=3且つy=4)、Sn(特にx=3且つy=4)、Zn(特にx=3且つy=4)、Li3-xN(M=Co、0≦x≦0.5、M=Ni且つ0≦x≦0.6、又はM=Cu且つ0≦x≦0.3);
(v)酸化物SnO、LiTi12、SnB0.60.42.9、及びTiO
【0041】
好ましくは、カソードの層は、以下より選択されるカソード材料から構成されていてもよい。
- 酸化物LiMn、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Ndなど、又はSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され、0<x<0.1)、及びLiMn2-x(M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg、又はこれらの混合物であり、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05
- リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;一般式LiMM’PO(M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択される)のリン酸塩、
- 以下のカルコゲナイドのすべてのリチウム化された形式:V、V、TiS、チタンの酸硫化物(TiO、ここで、z=2-y且つ0.3≦y≦1)、タングステンの酸硫化物(WO、ここで、0.6<y<3且つ0.1<z<2)、CuS、CuS、好ましくはLi(0<x≦2)、Li(0<x≦1.7)、LiTiS(0<x≦1)、チタン及びリチウムの酸硫化物LiTiO(z=2-y、0.3≦y≦1)、LiWO、LiCuS、LiCuS
【0042】
好ましくは、電解質材料の層は、以下から選択される電解質材料から構成されている。
- 一般式Li (TOのガーネット、
ここで、
-- Aは、酸化数+IIのカチオンであって、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdであり、
-- Aは、酸化数+IIIのカチオンであって、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laであり、
-- (TO)は、Tが酸素原子からなる四面体の中心にある酸化数+IVのあるアニオンであって、TOは、好ましくは、酸化数+IVの元素Tのすべて又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化数が+III又は+Vの原子で置換されていてもよく、
-- dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8であり、xは3であるが、2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)であってもよく、yは2であるが、1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)であってもよく、zは3であるが、2.9~3.1であってもよい;
- 好ましくは、以下より選択されるガーネット:LiLaZr12:LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12(M=Nb若しくはTa又はこれらの混合物):Li7-xBaLa3-x12(0≦x≦1、M=Nb若しくはTa又はこれらの混合物):Li7-xLaZr2-x12(0≦x≦2、M=Al、Ga、若しくはTa、又はこれらの2つ若しくは3つの混合物);
- 好ましくは以下から選択されるリチウム化リン酸塩:NASICONタイプのリチウム化リン酸塩;LiPO;LiPO;「LASP」とよばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li(Sc2-x)(PO(M=Al又はY、0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(PO(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO(0≦x≦0.8、0≦y≦1及びM=Al若しくはY又は2つの混合物):Li1+x(Ga)2-x(PO(M=Al、Y、又は2つの混合物、0≦x≦0.8);「LATP」とよばれるLi1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1);又は、「LAGP」とよばれるLi1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1);又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、且つ0≦z≦0.6、M=Al、Ga、Y、又はこれら2つ若しくは3つの混合物);Li3+y(Sc2-x)Q3-y12(M=Al及び/又はY、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8、且つ0≦y≦1);又はLi1+x+ySc2-x3-y12(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8、且つ0≦y≦1);又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1、0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又は2つの混合物、Q=Si及び/又はSe);又はLi1+x 2-x12(0≦x≦1及びM=Cr及び/又はV、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se、若しくはSi、又はこれらの混合物を含む);
- 好ましくは以下から選択されるリチウム化硫化化合物:LiAlz-yGa(PO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiAlz-yGa(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4、0<c<20);LiAlz-ySc(PO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiAlz-ySc(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20);LiGez-ySi(PO、4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4及び0<c<20;LixGe(z-y)Si(BO(4<w<20、3<x<10、0≦y<1、1≦z<4、0<c<20);
- 好ましくは以下から選択されるリチウム化ホウ酸塩:Li(Sc2-x)(BO(M=Al又はY、0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(BO(M=Al、Y、Ga又は3つの混合物、0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO(0≦x≦0.8、0≦y≦1、M=Al又はY);Li1+x(Ga)2-x(BO(M=Al、Y、又は2つの混合物、0≦x≦0.8);LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
- 好ましくは、LiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、若しくはLiGeO4-x2x/3(0<x<4)、又はLiBO3-xN2x/3(0<x<3)から選択される、酸窒化物;
- 「LiPON」とよばれる、LiPO(x~2.8及び2y+3z~7.8及び0.16≦z≦0.4)で表されるリチウムとリンとの酸窒化物を含むリチウム化化合物、特にLi2.9PO3.30.46、LiPO(2x+3y+2z=5=w)又はLiPO(3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3)又はLiAl(5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2);
- それぞれ「LiPON」又は「LiBON」ともよばれる、リン又はホウ素のリチウムの酸窒化物を含む材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄、及び/若しくはケイ素と組み合わせを含んでいてもよく、リンのリチウムの酸窒化物を含む材料についてはホウ素を含んでいてもよい;
- 「LiSiPON」とよばれる、リチウム、リン、及びシリコンの酸窒化物を含むリチウム化化合物であって、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
- LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、thio-LiSiCON、LiPONB(B、P、Sはそれぞれホウ素、リン、硫黄を表す)のタイプのリチウムの酸窒化物;
- (1-x)LiBO-xLiSO(0.4≦x≦0.8)などのLiBSOタイプのリチウムの酸窒化物。
- LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12(A=Sc、Y、Al、Ga及び1.4≦x≦2)、又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦0.16)(LLTO)から選択されるリチウム化酸化物;
- 好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるケイ酸塩;
- 以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:
-- LiOA(Aはハロゲン又はハロゲンの混合物であって、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素、又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物);
-- Li(3-x)x/2OA、(0<x≦3、Mは2価の金属であって、Mg、Ca、Ba、Srから選択される元素の少なくとも1つ、又はこれらの2つ、3つ、若しくは4つの混合物、Aはハロゲン又はハロゲンの混合物であって、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1つの元素、又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物);
-- Li(3-x) x/3OA(0≦x≦3、Mは3価の金属、Aはハロゲン又はハロゲンの混合物、好ましくはF、Cl、Br、I又はこれらの元素の2つ、3つ、若しくは4つの混合物);LiCOX(1-z)(X及びYは、前記Aと同様のハロゲン、0≦z≦1);
- 化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
- LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Αl0.3Τi1.7(ΡΟ、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti、及び/又はHf、及び0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1及び0≦y≦1);
- リチウムイオンを伝導するポリマーを含み、リチウム塩に含浸させた又は含浸させない電解質;
- リチウムイオンを運ぶ相が挿入されるセラミックマトリックスなどの無機マトリックスを含むハイブリッド電解質であって、リチウムイオンを運ぶ相が、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含む溶液、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含む少なくとも1つのイオン液体などの、少なくとも1つのリチウム塩を含む有機電解質。
【0043】
リチウムイオンを運ぶこの相は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含む溶液であってもよく、及び/又はリチウム塩を含むポリマーを含んでいてもよく、及び/又はリチウム塩を含むイオン液体を含んでいてもよい(すなわち、溶融リチウム塩)。この相は、これらの3つの混合物からなる溶液であってもよい。
【0044】
リチウム塩は、例えば、非プロトン性溶媒に溶解したLiPF若しくはLiBF、又はリチウム塩を含むイオン液体であってもよい。このイオン液体を有機電解質と混合してもよい。例えば、EC/DMCに溶解したLiPFは、LiTFSI:PYR14TFSI(1:9モル)タイプのリチウム塩を含むイオン液体と、50質量%となるように混合してもよい。例えば、LiTFSI:PYR13FSI:PYR14TFSI(2:9:9モル比)の混合物など、低温で活性のあるイオン液体の混合物であってもよい。
【0045】
ECは、エチレンカーボネートの一般的な略語である(CAS番号:96-49-1)。DMCは、炭酸ジメチルの一般的な略語である(CAS番号:616-38-6)。LITFSIは、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(CAS番号:90076-65-6)の一般的な略語である。PYR13FSIは、N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドの一般的な略語である。PYR14TFSIは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの一般的な略語である。
【0046】
本発明の更に他の目的は、本発明に係る製造方法により製造される薄膜電池を提供することである。
【0047】
本発明の更に他の目的は、前記封止システムが前記電池の6面のうち4面を完全に被覆し、残りの互いに反対側に位置する側部である2面を部分的に被覆し、前記2面は、少なくとも前記第1の被覆層31,31’及び少なくとも前記第2の被覆層32,32’によって部分的に被覆され、前記2面は、アノードの接続ゾーン及びカソードの接続ゾーンを含む、本発明に係る方法により得られる薄膜電池を提供することである。
【0048】
本発明の他の目的は、それぞれが薄膜のスタックから構成された少なくとも1つのアノード10’と少なくとも1つのカソード20’とが交互に積層されたスタックから構成された電池を提供することである。ここで、アノード10’は、以下により構成されている。
- アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜12’。
- 任意の、電解質材料からなる薄膜13’。
カソード20’は、以下により構成されている。
- カソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜22’。
- 任意の、電解質材料からなる薄膜23’。
ここで、少なくとも1つのアノード活物質からなる薄膜、少なくとも1つの電解質材料からなる薄膜、及び少なくとも1つのカソード活物質からなる薄膜、が連続して積層されている。
アノード10’は、第1の断面を有する第1のオリフィス50を有し、前記第1のオリフィスの壁には、少なくとも1つの後退領域RT(突出領域RS)が形成されている。隣接するカソード20’は、第1の断面よりも小さい(大きい)第2の断面を有する第2のオリフィスを有し、前記第2のオリフィスの壁には、少なくとも1つの突出領域RS(後退領域RT)が形成されている。前記少なくとも1つの突出領域は、接続可能な接続ゾーンZCを画定し、前記少なくとも1つの後退領域RTは、接続不可能な被覆ゾーンを画定している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】中央要素及びこの中央要素の両端に配置された相互接続の概略図を示す。
図2図1のII-II線に沿った切断面の斜視図を示す。
図3図2の部分IIIの拡大図を示す。
図4図3の部分IVを更に拡大した拡大図を示す。
図5】本発明に係る封止システムの内部構造を更に拡大した拡大図を示す。
図6】相互接続の内部構造を更に拡大した拡大図を示す。
図7】アノード及びカソードの薄膜により構成されたスタックの分解斜視図を示す。
図8】被覆層のスタックを含む、アノード及びカソードの層のスタックを封止したシステムの分解斜視図を示す。
図9A】アノード集電体を示す。
図9B】カソード集電体を示す。
図10】各層のスタックから構成された全固体電池の相互接続の分解斜視図を示す。
図11】複数の全固体電池を製造する方法の概略図を示す。
図12図11の全固体電池のXII-XII線に沿った切断面の斜視図を示す。
図13図11の全固体電池のXIII-XIII線に沿った切断面の斜視図を示す。
図14】アノード及びカソードのシートの側方(横方向)にずれた積層体、封止システム、並びに相互接続における、全固体電池の断面の斜視図を示す。
図15図14の部分VIの拡大図を示す。
図16】他の実施形態に係る複数の全固体電池の製造方法の概略図を示す。
図17図16の部分VIIの拡大断面図を示す。
図18図16の部分VIIIの拡大図を示す。
図19A図18の全固体電池のXIX-XIX線に沿った断面を含む斜視図を示す。
図19B図18の全固体電池のXIX’-XIX’線に沿った断面を含む斜視図を示す。
図20】封止システムによって被覆された図18に示す構造の斜視図を示す。
図21A図20の全固体電池のXXI-XXI線に沿った断面を含む斜視図を示す。
図21B図20の全固体電池のXXI’-XXI’線に沿った断面を含む斜視図を示す。
図22図21Aの部分IXの拡大図を示す。
図23図22の部分Xの拡大図を示す。
図24図20に示される構造の斜視図を示し、本発明に係る封止システムを示す。
図25A図24の全固体電池のXXV-XXV線に沿った断面の斜視図を示す。
図25B図24の全固体電池のXXV’-XXV’線に沿った断面の斜視図を示す。
図26図25の部分XIの拡大図を示す。
図27図26の部分XIIの拡大図を示す。
図28A】本発明に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図28B図28Aとは異なる態様の封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図29A】本発明の第1の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図29B図29Aとは異なる態様の封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図30A】本発明の第2の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図30B図30Aとは異なる態様の封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図31A】本発明の第3の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図31B図31Aとは異なる態様の封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示す。
図32】物体1000を封止する、本発明に係る封止システムを製造する方法のフローチャートを示す。
図33】本発明に係る封止システムにより封止された電池の製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1~27は、本発明の特定の態様を示しているが、その範囲を限定するものではない。
【0051】
図1は、中央要素及びこの中央要素の両端に配置された相互接続が現れている電池の概略図を示している。
【0052】
図2は、全固体電池のII-II線に沿った切断面の斜視図を示し、本発明に係る封止システムによって被覆された基本セルのアセンブリを含む中央要素及び相互接続の内部構造を示している。
【0053】
図3は、図2の部分IIIの拡大図であり、図2と同様の切断面の斜視図を示している。基本セル、封止システム、及び相互接続を形成する要素は、図4~6に、それぞれ詳細に示されている。
【0054】
図4は、全固体電池を構成する様々な要素の内部構造を示し、図3の部分IVを更に拡大した、図3と同様の切断面の斜視図を示している。
【0055】
図5は、本発明に係る封止システムの内部構造を更に拡大した、図4と同様の切断面の斜視図を示している。
【0056】
図6は、相互接続の内部構造を更に拡大した、図4と同様の切断面の斜視図を示している。
【0057】
図7は、アノード及びカソードの薄膜により構成されたスタックの分解斜視図を示している。これらの層は側方(横方向)にずれている。
【0058】
図8は、被覆層のスタックを含むアノード及びカソードの層のスタックを、本発明に従って封止したシステムの分解斜視図を示している。
【0059】
図9Aは、アノードの断面(outlet)の図を示し、周囲が封止システムによって囲まれたアノード集電体を示している。図9Bは、カソードの断面の図を示し、周囲が封止システムによって囲まれたカソード集電体を示している。
【0060】
図10は、各層のスタックにより構成された全固体電池の相互接続の分解斜視図を示している。
【0061】
図11は、U字状の切断面によって画定された数十~数百のアノードから構成されたシートと、U字状の切断面よって画定された数十~数百のカソードから構成されたシートとが交互になっているスタックから、複数の全固体電池を製造する方法の概略図を示している。
【0062】
図12は、図11の全固体電池のXII-XII線に沿った切断面の斜視図を示し、アノード及びカソードのシートが積層され、側方にずれたスタックを示している。
【0063】
図13は、図11の全固体電池のXIII-XIII線に沿った切断面の斜視図を示し、アノード及びカソードのシートが積層され、側方にずれた積層体を示している。
【0064】
図14は、アノード及びカソードのシートが積層され且つ側方にずれたスタック、封止システム、並びに相互接続における、全固体電池の断面の斜視図を示している。
【0065】
図15は、全固体電池を構成する様々な要素の内部構造を示す、図14の部分VIの拡大図を示している。
【0066】
図16は、他の実施形態に係る、複数の全固体電池の製造方法の概略図を示している。
【0067】
図17は、図16の部分VIIの拡大断面図を示している。
【0068】
図18は、図16の部分VIIIの拡大図を示している。
【0069】
図19Aは、図18の全固体電池のXIX-XIX線に沿った断面を含む斜視図を示している。図19Bは、図18の全固体電池のXIX’-XIX’線に沿った断面を含む斜視図を示している。
【0070】
図20は、封止システムによって被覆された図18に示す構造の斜視図を示している。
【0071】
図21Aは、図20の全固体電池のXXI-XXI線に沿った断面を含む斜視図を示している。図21Bは、図20の全固体電池のXXI’-XXI’線に沿った断面を含む斜視図を示している。
【0072】
図22は、この図21Aの部分IXの拡大図を示している。
【0073】
図23は、図22の部分Xの拡大図を示している。
【0074】
図24は、図20に示される構造の斜視図を示し、相互接続の多層システムで被覆された本発明に係る多層の封止システムを示している。
【0075】
図25は、図24の全固体電池のXXV-XXV線又はXXV’-XXV’線に沿った断面の斜視図を示し、アノード及びカソードのシートが積層されたスタックを示している。
【0076】
図25Aは、相互接続の多層システムによって側方が被覆されたアノード接続点を示している。
【0077】
図25Bは、相互接続の多層システムによって側方が被覆されたカソード接続点を示している。
【0078】
図26は、図25の部分XIを拡大した斜視図を示している。
【0079】
図27は、図26の部分XIIを拡大した斜視図を示している。
【0080】
図28A及び図28Bは、本発明に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示している。
【0081】
図29A及び29Bは、本発明の第1の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示している。
【0082】
図30A及び30Bは、本発明の第2の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示している。
【0083】
図31A及び31Bは、本発明の第3の代替案に係る封止システムによって被覆された電子部品又は電気化学部品などの物体1000の一部の断面図を示している。
【0084】
図32は、物体1000を封止する、本発明に係る封止システムの製造方法のフローチャートを示している。
【0085】
図33は、本発明に係る封止システムにより封止された電池の製造方法のフローチャートを示している。
【0086】
以下、図面で用いられている符号は以下の通りである。
1000 物体、好ましくは、電子部品や電気化学部品
1 全固体電池
2 基本セル
3 アノード及びカソードのシートのスタック
10、10’ アノード
11,11’ ステンレス鋼などの導電性材料からなる薄膜
12,12’ アノード活物質からなる薄膜
13,13’ 電解質材料からなる薄膜
20,20’ カソード
21,21’ ステンレス鋼などの導電性材料からなる薄層
22,22’ カソード活物質からなる薄層
23,23’ 電解質材料からなる薄層
30,30’ 本発明に係る封止システム
31,31’,31a,31b,31n 第1の被覆層
32,32’,32a,32b,32n 第2の被覆層
32’’’,32’’’’ 第2の被覆層を形成することができる層
33,33’ 第3の被覆層
40,40’ 相互接続
41,41’ ALDにより堆積された金属層
42,42’ Agが添加されたエポキシ樹脂からなる層
43,43’ 金属含有層(スズ)
43a/43b 第1/第2の金属含有層
50 前処理層
50a,50b 第1/第2の前処理層
F 封止システムによって被覆されたゾーンを示す矢印
RS 突出領域
RR 後退領域
ZRT 被覆ゾーン
ZC 接続ゾーン
III,IV,V,VI,VII,VIII,IX,X,XI,XII 拡大部分
II-II,XII-XII,XIX-XIX,XIX’-XIX’,XXI-XXI,XXI’-XXI’ ,XXV-XXV,XXV’-XXV’ 切断線
【0087】
本発明は、物体1000を封止することによって、この物体を電気絶縁し、それを外部環境、すなわち周辺の空気から保護するシステムに関する。本発明に係る封止システムは、電子部品がその動作を著しく妨害され又は損傷されることなく、効果的な耐性を有する、ストレスに適合した保護を提供することを可能にする。
【0088】
図28Aに示すように、本発明に係る、物体を封止するシステムは以下を含む。
i)前記物体を少なくとも部分的に被覆する、ALDによって堆積された電気絶縁材料から構成された第1の被覆層。
ii)第1の被覆層上に積層されたパリレン及び/又はポリイミドから構成された第2の被覆層。
iii)前記第2の被覆層を、酸素から保護し、前記物体の耐用年数を長くするための、前記第2の被覆層上に堆積された第3の被覆層。
【0089】
封止される物体は、電子部品(集積回路、抵抗器、キャパシタなど)であってもよく、又は電気化学部品(電池、光起電性パネルなど)であってもよい。
【0090】
封止システムの第1の被覆層31は、Al、SiO、SiO、及びエポキシ樹脂などの電気絶縁材料からなる。好ましくは、前記電気絶縁材料は、水に対するバリア特性を有する有機又は無機ポリマー材から選択される。この第1の層は、原子層堆積(Atomic Layer Depositionの頭字語ALDとしてよく知られている)などのコンフォーマル堆積技術によって、前記物体の少なくとも一部に堆積される。物体が電池である場合、第1の被覆層31は、ALDによってスタックに又は主積層体上に堆積される。従って、スタックの到達可能なすべての表面においてコンフォーマルな被覆が得られる。この第1の層は、無機層であることが好ましくい。
【0091】
ALDによる堆積の技術は、粗い表面を、完全に不浸透となるように且つコンフォーマルに被覆することに特によく適している。ALDによる堆積技術により、欠陥による孔のないコンフォーマル層を作成できる。これらの層は「孔のない」(ピンホールフリーな)層として認められており、非常に優れたバリアであることを意味している。そのWVTR(水蒸気透過率)係数は非常に低い。WVTR係数により、封止システムの水蒸気透過性を評価できる。WVTR係数が低いほど、封止システムの不浸透性が高くなる。例えば、ALDにより形成された厚さ100nmのAlの堆積層の水蒸気透過率は0.00034g/(m・24h)である。
【0092】
このようにして得られた第1の被覆層は、セラミック材料、ガラス材料、又はガラスセラミック材料から構成されていてもよい。それは一般に、酸化物、Alタイプのもの、窒化物、リン酸塩、酸窒化物、シロキサンからなり、その厚さが200nm未満、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nm、更により好ましくは約50nmである。しかし、ALDによって堆積されたこれらの層は機械的に非常に脆弱であり、剛性の高い支持面が必要である。柔軟な表面に脆弱な層を堆積すると、亀裂が形成され、この保護層の完全性が失われる。更に、工業的に比較的高い堆積速度を可能にするために、これらの層はかなり高い温度、すなわち180~300℃で堆積しなければならない。従って、物体を構成する材料は、そのような温度に耐え、ALDによる質の高い封止の生成を保証するのに十分な剛性が必要である。これは特に、剛性スタックや、リチウムイオンセルの一体型固体スタック、すなわちリチウムイオン電池に当てはまる。しかし、リチウム塩を含むポリマーを含む通常の電解質、すなわちゲル、液体、又は液体ポケットを含む電解質のほとんどは、そのような温度で耐性がなく、ALDによる信頼性のある封止の生成を保証するのに十分な剛性がない。実際、真空下及び高温下で、これらの電解質は、脱気され、従って、均一で保護性の高い薄い堆積物が表面に直接生成するのが妨げられる。従って、本発明に係る封止システムを適用する電池においては、これらの電解質は使用を控えるのが好ましい。
【0093】
少なくとも1つの多孔質電極及び/又は多孔質無機層からなる少なくとも1つの電解質を使用するリチウムイオン電池について、例外を設けることができる。電極及び多孔質無機層は、細孔が互いにつながったネットワークを有している。細孔の直径D50は2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmである。この細孔は、そのサイズのために、単純な毛管現象により液相を吸収することができ、リチウムイオンを運ぶ相によって含侵されている。すなわち、例えば、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含む溶液、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解した少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解した少なくとも1つのリチウム塩を含む少なくとも1つのイオン液体、などの電解質によって、含浸されている。
【0094】
細孔、好ましくはメソポーラス細孔に「ナノ制限」(nanoconfined)又は「ナノトラップ」(nanotrapped)された液相は、もはや出てくることはできない。それは、「メソポーラス構造での吸収」とよばれる現象(リチウムイオン電池に関しては文献に記載されていない)に束縛され、たとえこのセルが真空下に置かれても出てこない。従って、そのような多孔質電極及び/又はそのような電解質を含むこの電池は、準固体とみなされる。リチウムイオンを運ぶ導電相の多孔質でのナノ制限により、前述のような通常の電解質を含浸させたセパレータを使用するリチウムイオン電池とは異なり、この電池は真空下で処理できる。セパレータを使用するリチウムイオン電池は、十分な剛性がなく、真空下で劣化することなくこれらの処理を行うことができない。
【0095】
物体1000が電池である場合、この第1の被覆層31は、自己放電及び電池の劣化のリスクを低減するために、電極のセクションを分離することもでき、従って、電極を互いに近づけることができる。
【0096】
本発明によれば、第2の被覆層32が第1の被覆層上に堆積されて、その外部環境からの物体(すなわち、電子部品又は電池などの電気化学部品)の保護を改善する。典型的には、この第2層は、例えばシリコーン(例えば、ディッピング又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を使用したプラズマアシスト化学蒸着によって堆積)、エポキシ樹脂、ポリイミド、又はパリレンから構成され、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドから構成されている。この第2の被覆層は、化学気相堆積(CVD)により、表面に堆積された気体モノマーの凝縮によって形成することが好ましく、これにより、到達可能な物体のすべての表面をコンフォーマル且つ均一に被覆することができる。
【0097】
この第2の被覆層は、封止システムの第1の被覆層を劣化させることなく、封止システムの充填を保証する。これは、動作中に物体の体積の変化に追従でき、その弾性特性により電池自体の切断が容易になる。前記第2の被覆層の厚さは、1~50μm、好ましくは1~35μm、好ましくは2~10μm、好ましくは2~5μm、更により好ましくは約3μmである。
【0098】
好ましくは、第1の被覆層31上に、パリレンCからなるフィルム、パリレンDからなるフィルム、パリレンNからなるフィルム(CAS番号:1633-22-3)、又はパリレンC、D及び/若しくはNの混合物からなるフィルムなどのパリレンフィルムが堆積される。パリレンのこのフィルムによって、物体において影響を受けやすい要素を環境から保護できる。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)ともよばれる)は、熱力学的安定性が高く、耐溶剤性に優れ、透過性が非常に低い、誘電性の透明な半結晶材料である。パリレンには、物体を外部環境から保護できるバリア特性もある。この第2の被覆層がパリレンNから構成されていると、電池の保護が強化される。
【0099】
或いはこれに代えて、ポリイミドから構成された層が第1の被覆層上に堆積される。このポリイミドの層は、電池において影響を受けやすい要素を外部環境から保護する。
【0100】
或いはこれに代えて、特に好ましくは、第2の被覆層32は、第1の被覆層上に堆積された、好ましくは厚さ約1μmの、ポリイミド32’’’からなる第1層と、この第1層上に堆積された厚さ約2μmのパリレンからなる第2層32’’’’とから構成されている。厚さ約2μmのこの第2層がパリレンNから構成されていると、保護が強化される。ポリイミドの層は、パリレンの層にとともに、電池において影響を受けやすい要素の外部環境からの保護を改善する(図28B参照)。しかし、本願の発明者らは、第1の被覆層上に堆積されたこの第2の被覆層がパリレンから構成されている場合、酸素の存在下では十分な安定性を有さないことを観察した。この第2の被覆層がポリイミドから構成されている場合、それは、水の存在下で、十分な不透過性を有さない。本発明によれば、第3の被覆層で被覆されると、この第3の被覆層が空気から保護し、電子部品又は電気化学部品(この場合、電池)の耐用年数を改善する。
【0101】
好ましくは、この第3のバリア層33は、高温に耐性があるように選択され、物体のその後の使用の際に保護するのに十分な機械的強度を有する。好ましくは、第3の被覆層の厚さは1~50μmである。理想的には、第3の被覆層の厚さは約10~15μmであり、このような厚さの範囲であると、電池を機械的損傷から保護することができる。第3の被覆層の厚さは、好ましくは10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは約2μmである。
【0102】
この第3の層33は、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン又はシリコーンを含むことが好ましい。好ましくは、この第3の層を形成する材料は、電子部品又は電気化学部品の組み立てを容易にするように選択される。この第3の層はディッピングにより堆積することが好ましい。
【0103】
以下に、本発明に係る封止システムの3つの代替案について説明し、次いで、2つの実施形態について説明する。この2つの実施形態の各々は、本発明又は本発明の3つの代替案のうちのいずれか1つと組み合わせることができる。
【0104】
第1の代替案
以下に説明する実施形態のいずれかと無関係に実施される本発明の好ましい代替案によれば、本発明に係る封止システムによる封止の前に物体の前処理が行われる(図29A参照)。物体1000のこの前処理は、物体の保護を改善するために、ポリイミド及び/又はパリレン、好ましくはパリレン、具体的にはパリレンNを含むポリマーからなる層で被覆することが好ましい。この前処理層50は被覆層である。この前処理層50は、前述の、少なくとも1つの多孔質電極及び/又は多孔質無機層からなる少なくとも1つの電解質を使用するリチウムイオン電池を保護するために使用されることが好ましい。この電極及び多孔質無機層は相互接続された細孔のネットワークを有し、この細孔の平均直径D50は2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmであり、その細孔にはリチウムイオンを運ぶ相が含浸され、好ましくはイオン液体が「ナノ制限」又は「ナノトラップ」されている。この種のリチウムイオン電池における前処理層50は、前記電池のあらゆる動作中の、真空及び高温下での、電解質の脱気を防ぐ。
【0105】
この前処理層50は、好ましくはイオン液体が含浸されて「ナノ制限」された、少なくとも1つの多孔質電極及び/又は前述の多孔質無機層からなる少なくとも1つの電解質を使用したリチウムイオン電池に、高性能の封止を行うことを可能にする。
【0106】
これは、化学気相堆積(CVD)技術により、真空下で堆積させることができる。この前処理層50は、化学気相堆積(CVD)技術により表面上に堆積された気体状モノマーの凝縮によって形成することが好ましく、これによって、スタックの到達可能な表面のすべてをコンフォーマル且つ均一に被覆することができる。動作中に電池などの物体の体積の変化に追従でき、弾性特性により電池自体の切断が容易になる。好ましくは、この前処理層の厚さは、1~50μm、好ましくは2~10μm、好ましくは2~5μm、より好ましくは約3μmである。これによって、スタックのすべての到達可能な表面が被覆され、これらの到達可能な表面のすべての細孔が閉じられ、基材の化学的性質を均一にすることができる。従って、スタック上に直接封止を行うことができ、被覆は到達可能なすべての細孔に浸透できる。
【0107】
好ましくは、パリレンの層は、パリレンCの層、パリレンDの層、パリレンN(CAS番号:1633-22-3)の層、又はパリレンC、D及び/若しくはNの混合物を含む層などの、前処理層50として物体上に堆積される。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)ともよばれる)は、熱力学的安定性が高く、耐溶剤性に優れ、透過性が非常に低い、誘電性の透明な半結晶材料である。パリレンは、その特性、つまり水に対するバリア特性によって、外部環境から物体を絶縁するのに役立つ。このパリレンの層は、電池の影響の受けやすい要素を外部環境から保護する。この前処理層がパリレンNから構成されている場合、この保護は強化される。或いはこれに代えて、ポリイミドから構成された前処理層が堆積される。このポリイミドの層は、電池において影響を受けやすい要素を外部環境から保護する。
【0108】
或いはこれに代えて、特に好ましくは、前処理層50は、好ましくは厚さ約1μmの第1のポリイミド層50aと、その上に堆積された、好ましくは厚さ約2μmの、第2のパリレン層50bとから構成されている(図29B参照)。この保護は、好ましくは厚さ約2μmのこの第2のパリレン層50bがパリレンNから構成されていると、強化される。ポリイミド50aの層は、パリレン50bの層とともに、電池において影響を受けやすい要素の外部環境からの保護を改善する。
【0109】
しかし、本願の発明者らは、この前処理層50がパリレンから構成されている場合、酸素の存在下では十分な安定性を有さないことを観察した。この前処理層がポリイミドから構成されている場合、水の存在下では、十分な不浸透性を有さない。これらの理由から、封止システムの第1の層31は、この前処理層50上に堆積され、第1の被覆層31が前処理層50を被覆する。前処理層50は、物体1000と本発明に係る封止システム31の第1層との間に積層されている。
【0110】
好ましくは、電気絶縁材料、好ましくは無機材料からなる第1の被覆層31は、ALDなどのコンフォーマルな堆積の技術によって前処理層上に堆積される。従って、前処理層で予め被覆されたスタックの到達可能な表面のすべてのコンフォーマルな被覆が得られる。第1の層は好ましくは無機層である。ALDによって堆積された層の成長は、基板の性質に影響される。ALDによって、化学的性質の異なる様々なゾーンを有する基板上に堆積された層は、不均一に成長し、この保護層の完全性が喪失させるおそれがある。
【0111】
ALDによる堆積の技術は、高い粗さを有する表面を完全に不浸透となるように且つコンフォーマルに被覆することに特に適しており、孔などの欠陥のないコンフォーマルな層(「ピンホールフリー」とよばれる、孔のない層)を形成できる。これは、非常に優れたバリアであることを意味する。WVTR(水蒸気透過率)係数は非常に低い。WVTR係数により、封止システムの水蒸気に対する透過性を評価できる。WVTR係数が低いほど、封止システムの不浸透性が高くなる。
【0112】
第1の層31は、例えば酸化物、Alタイプ、窒化物、リン酸塩、酸窒化物、又はシロキサンの形態のセラミック材料、ガラス材料、又はガラスセラミック材料から構成されていてもよい。この第1の被覆層31は、200nm未満、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nm、更により好ましくは約50nmの厚さを有している。これらは、ALDなどのコンフォーマルな堆積の手法により堆積することが好ましい。
【0113】
ALDによってポリマーからなる前処理層50上に堆積されたこの第1の層31は、一方では、構造の不浸透性を確保する、すなわち、物体の内部に水が行き渡るのを防ぐ。また、他方では、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドからなる前処理層50を、周辺環境から、すなわち空気及び湿度から、並びに熱への暴露から保護し、劣化を抑える。この第1の層31は、封止された電池の耐用年数を長くする。
【0114】
しかし、ALDによって堆積された層は機械的に非常に脆弱であり、保護の役割を確保するために剛性の高い支持面が必要である。柔軟な表面に脆弱な層を堆積すると、亀裂が形成され、この保護層の完全性が失われる。
【0115】
好ましくは、電池セルの外部環境からの保護を強化するために、第1の被覆層31上に第2の被覆層32を堆積する。典型的には、この第2の層32は、例えばシリコーン(例えば、ディッピング又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を使用したプラズマアシスト化学蒸着により堆積)、エポキシ樹脂、パリレン、又はポリイミドから構成されており、好ましくは、前述のようにパリレン及び/又はポリイミドから構成されている。本発明の第1の代替案によれば、第2の被覆層32は、これを空気から保護し、物体(この場合は電池)の耐用年数を改善するための第3の層33で被覆されている。好ましくは、この第3の被覆層33も高温に耐性があるように選択され、物体のその後の使用の際にそれを保護するのに十分な機械的強度を有する。好ましくは、第3の被覆層の厚さは1~50μmである。理想的には、第3の被覆層の厚さは約10~15μmであり、このような厚さの範囲であれば、電池を機械的損傷から保護できる。第3の被覆膜33の厚さは、好ましくは10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは約2μmである。
【0116】
この第3層33は、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン又はシリコーンを含むことが好ましい。好ましくは、この第3の層を形成する材料は、電子部品又は電気化学部品の組み立てを容易にするように選択される。好ましくは、この第3の層33はディッピングにより堆積される。
【0117】
第2の代替案
本発明の好ましい第2の代替案は、後述の実施形態のいずれかと無関係に実施することができる。
【0118】
本発明の第2の代替案によれば、物体は、厚さが、好ましくは2~10μm、好ましくは2~5μm、より好ましくは約3μmであるパリレン及び/又はポリイミドの交互に連続する層、並びに、好ましくはALDによってコンフォーマルに堆積された無機層など、前述のような多層の封止システムを構成する、厚さが10~100nm、好ましくは約50nmである電気絶縁材料からなる層によって封止されていてもよい。
【0119】
封止の性能を改善するために、本発明に係る封止システムによる封止の前に、物体の前処理を行ってもよい。この物体の前処理は、第1の代替案に示されるように物体の保護を改善するために、好ましくはポリイミド及び/又はパリレン、好ましくはパリレン、具体的にパリレンNを含むポリマー層(前処理層50)で物体を被覆する。
【0120】
好ましくは、パリレンの層は、パリレンC、パリレンD、パリレンN(CAS番号:1633-22-3)、又はパリレンC、D、及び/若しくはNの混合物から構成されている層などを、前処理層50として物体に堆積させる。パリレンは、その特性、つまり水に対するバリア特性を介して、物体の外部環境からの絶縁に役立つ。パリレンのこの層は、電池において影響を受けやすい要素を外部環境から保護する。この前処理層50がパリレンNから構成されている場合、この保護は強化される。
【0121】
或いはこれに代えて、ポリイミドから構成された前処理層50を堆積させてもよい。このポリイミド層は、電池において影響を受けやすい要素を外部環境から保護する。
【0122】
或いはこれに代えて、特に好ましくは、前処理層50は、好ましくは厚さが約1μmの第1のポリイミド層50aからなり、その上に、好ましくは厚さが約2μmの、第2のパリレン層50bが堆積される。好ましくは厚さ約2μmの第2のパリレン層が、パリレンNから構成されている場合、この保護は強化される。ポリイミドの層は、パリレン層とともに、電池において影響を受けやすい要素の外部環境からの保護を改善する。
【0123】
このようにこの前処理層50で被覆された物体は、電気絶縁材料、好ましくは無機層からなり、厚さが好ましくは10~100nm、好ましくは約50nmの、ALDによりコンフォーマルに堆積された少なくとも1つの第1の層31aと、この少なくとも1つの第1の層31a上に堆積された、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドを含み、好ましくは厚さ約3μmの、本発明に係る封止システムにおける少なくとも1つの第2の層32aとが、交互に連続して被覆されている。
【0124】
好ましくは、第3の被覆層33は、本発明に係る封止システムの少なくとも1つの第1の層31a、31b、31n及び少なくとも1つの第2の層32a、32b、32nの交互に連続する層の上に堆積されており、物体は、前述の3つの連続する層から構成される本発明に係る封止システム30(図30A及び30Bを参照)によって封止される。好ましくは、第3の被覆層33は、外部環境からの電池セルの保護を高め、機械的損傷から電池セルを保護する。この最後の第3の被覆層33は、厚さが約10~15μmである。典型的には、この最後の第3の層は、例えば(例えば、ディッピング又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を使用したプラズマアシスト化学蒸着によって堆積された)シリコーン、エポキシ樹脂、パリレン、又はポリイミドなどの、ポリマーから構成されている。例えば、電池を機械的損傷から保護するために、シリコーン層(典型的な厚さは約15μm)をインジェクションによって堆積してもよい。このような材料を選択する理由は、高温に耐性があり、ガラス転移が発生することなく電子カードに溶接して電池を簡単に組み立てることができるという事実による。
【0125】
第3の代替案
本発明の好ましい第3の代替案は、後述の実施形態のいずれかと無関係に実施することができる。
【0126】
好ましくは、物体は、前述のように前処理層50で被覆され、次いで、電気絶縁材料(好ましくは無機層)からなる、好ましくは厚さ10~100nm(好ましくは約50nm)の、ALDによりコンフォーマルに堆積された第1の層31aで被覆され、次いで、少なくともこの第1の層が、好ましくは前述の代替案におけるパリレン及び/又はポリイミドからなる、好ましくは厚さ約3μmの、第2の層32aで被覆され、次いで、この第2の層32aが、電気絶縁材料(好ましくは無機層)からなり、好ましくは厚さ10~100nm(好ましくは厚さ約50nm)の、ALDによりコンフォーマルに堆積された、新たな第1の層31bで被覆され、次いで、少なくともこの新たな第1の層31bが、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドからなり、好ましくは厚さ約3μmの、新たな第2の層32bで被覆されていることが好ましい。次いで、このように被覆された物体は、本発明に係る封止システム33の第3の層に対応する最後の層によって被覆される(図31A及び31B参照)。典型的には、この最後の第3の層は、例えば(例えば、ディッピング又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を使用したプラズマアシスト化学蒸着によって堆積された)シリコーン、エポキシ樹脂、パリレン、又はポリイミドなどの、ポリマーから構成されている。好ましくは、封止システムの第3の層33の厚さは、1~50μmである。理想的には、第3の被覆層33の厚さは約10~15μmであり、このような厚さの範囲であれば、機械的損傷から電池を保護することができる。第3の層33の厚さは、特に電池のサイズを最小化し且つ機械的損傷に対する電池の良好な保護を維持することが望まれる場合には、好ましくは10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは約2μmであってもよい。この連続した層により、比較的薄い厚さを維持しながら、物体の保護を著しく強化することができる。
【0127】
アノードのシート及びカソードのシートの主積層体/アノード及びカソードのスタック
本発明に係る封止システムによって保護される物体は、電池であることが好ましく、以下に示すように全固体又は準固体電池であることが好ましい。
【0128】
本明細書において、「全固体」電池とは、少なくともカソード薄膜、アノード薄膜、及び固体電解質の薄膜を備え、各薄膜がとても少ない数の細孔を有する電池を意味する。
【0129】
本明細書において、電池、好ましくは全固体電池の、基本セルには、各々が任意に薄膜のスタックからなるアノード及びカソードが交互に設けられている。アノードは、アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜と、電解質材料からなる任意の薄膜とを含む。カソードは、カノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜と、電解質材料からなる任意の薄膜とを含む。すなわち、電池、好ましくは全固体電池の基本セルには、アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜と、電解質材料からなる少なくとも1つの薄膜と、カソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜とが連続して設けられている。
【0130】
電池が少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードの連続する交互の層から構成されている場合、アノードには、連続して以下が設けられていることが好ましい:
- 任意の、電解質材料からなる薄膜、
- アノード活物質からなる薄膜、
- 金属薄膜、
- アノード活物質からなる薄膜、及び
- 任意の、電解質材料からなる薄膜。
【0131】
本明細書では、「アノードのシート」は、少なくとも1つの単位電池、好ましくは複数の単位電池を得るための、主積層体を形成するために使用可能な連続する層を意味する。
【0132】
同様に、カソードには、連続して以下が設けられていることが好ましい:
- 任意の、電解質材料からなる薄膜、
- カソード活物質からなる薄膜、
- 金属薄膜、
- カソード活物質からなる薄膜、及び
- 任意の、電解質材料からなる薄膜。
【0133】
これによって、電池、好ましくは全固体電池は、アノード活物質からなる少なくとも1つの薄膜と、電解質材料からなる少なくとも1つの薄膜と、及びカソード活物質からなる少なくとも1つの薄膜とが連続して設けられている構成になる。
【0134】
本発明の文脈において、電池の各薄膜の厚さは、10μm未満であり、好ましくは5μm未満である。
【0135】
本明細書では、「カソードのシート」は、主積層体を形成するために使用可能な連続する層を意味する。主積層体は、カソードのシート及びアノードのシートの連続する交互の層からなり、この連続する交互の層から、少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードのスタックから構成された少なくとも1つの単位電池、好ましくは複数の単位電池が得られる。この主積層体における2つの隣接するシートは、接続可能な接続ゾーンを形成するための少なくとも1つの突出領域と、被覆ゾーン、つまり封止システムによって又は封止システムの3つの代替案の1つによって被覆されるゾーンを構成する少なくとも1つの後退領域を画定する。これらの突出領域及び後退領域は、本発明を限定しない2つの実施形態との関係でより詳細に説明される。
【0136】
本発明は、特に、全固体リチウムイオン電池の封止に関する。本発明はまた、少なくとも1つの多孔質電極及び/又は多孔質無機層からなる少なくとも1つの電解質を使用するリチウムイオン電池の封止に関し、電極及び多孔質無機層は、細孔の相互接続ネットワークを有する。細孔の平均直径D50は2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmであり、そのサイズのため、細孔は単純な毛管現象により液相を吸収でき、リチウムイオンを運ぶ相、によって含侵されている。すなわち、細孔は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含む溶液、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマー、及び/又は有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解し得る少なくとも1つのリチウム塩を含む少なくとも1つのイオン液体、などの電解質に含侵されている。この液体の相は、多孔性、好ましくはメソ多孔性に「ナノ制限」又は「ナノトラップ」されており、もはや細孔の外に出ない。従って、そのような多孔質電極及び/又はそのような電解質を含むこの電池は、準固体とみなされる。本発明によれば、本発明に係る封止システムは、セパレータを使用するリチウムイオン電池には使用できない。なぜなら、それらは真空下で劣化することなくこれらの処理を行うのに十分な剛性がないからである。
【0137】
全固体電池1は、封止システム30を堆積させることができる剛性の一体の構造を有している(図1を参照)。図3は、図2の全固体電池1の断面を示す斜視図である。これは、本発明に係る封止システム30によって被覆された基本セル2のアセンブリを含む中央要素の内部構造を示している。図4は、各々が薄膜のスタックからなるアノード10及びカソード20を含む全固体電池をより詳細に示している。アノードは、連続する、電解質材料からなる薄膜13、LiTi12などのアノード活物質からなる薄膜12、金属(例えばステンレス鋼製)からなる薄膜11、LiTi12などのアノード活物質からなる薄膜12、及び電解質材料からなる薄膜13を備えている。
【0138】
カソード20は、連続する、電解質材料からなる薄膜23、LiMnなどのカノード活物質からなる薄膜22、金属(例えば、ステンレス鋼製)からなる薄膜21、LiMnなどのカノード活物質からなる薄膜22、電解質材料からなる薄膜23を備えている。ここで、電池は、少なくとも1つのアノード10及び少なくとも1つのカソード20が交互に連続して積層され、その2つの隣接するシートが、接続可能な接続ゾーンを構成する少なくとも1つの突出領域、及び、被覆ゾーン(つまり封止システムによって被覆されるゾーン)を構成する少なくとも1つの後退領域を画定している。
【0139】
この電池は、並列に接続された複数の基本セルのアセンブリを含み、電池の充電及び放電のステップ中に寸法安定性のある材料からなるアノード及びカソードの薄膜から構成されている。
【0140】
このような機能を発揮するために使用できるアノード活物質には、LiTi12タイプの挿入材料、リチウム挿入の範囲が限られたLi3-xNタイプの特定の窒化物、及びLiSiTON又はSnタイプの他のアノードが挙げられる。
【0141】
カソードの製造に使用されるリチウム挿入材料は、アノードの材料よりも寸法安定性がはるかに高いことが多い。LiMn、LiMn1.5Ni0.5などのスピネル構造を持つ酸化物、及びLiFePOなどのかんらん石タイプの構造が特に寸法安定性が高く、本発明の文脈では、これらを使用することが好ましい。
【0142】
同様に、これらのアノード活物質及びカノード活物質は、固体電解質を用いて構成され、封止のための剛性が高く安定した表面を確保し、電池の使用サイクル中の後者の劣化のリスクを回避する。これらの固体電解質は、ポリマー、セラミック、ガラス、ガラスセラミック、及び/又は有機部分と無機部分の両方からを含むハイブリッド材料であってもよい。
【0143】
周辺空気に対する優れた保護を確保するには、WVTRが非常に低い保護フィルムが必要である。従来技術によれば、最良の保護は金属フィルムによって提供されるが、これは電極をショートさせずに電池全体を被覆することはできない。
【0144】
積層ステップ(図4,7,15参照)の後、相互接続を設ける前に、スタックは本発明に係る封止システムによって封止され、電池の周辺空気からの保護が確保される。
【0145】
封止システム
封止の質は、リチウムイオン電池にとって非常に重要である。本発明に係る封止システム30は、化学的に安定であり、高温に耐性があり、湿度に対する保護を提供し、周辺空気に対して不透過性がある。すなわち、バリア層の役割を果たす。これは、前述のように、スタック上に連続して堆積された複数の層から構成されている(図5,8,27,28A,28B,29A,29B,30A,及び30Bを参照)。
【0146】
このため、本発明に係る封止システムは、物体、すなわち物体の保護される必要のある部分に連続的に堆積された複数の層から構成されている。
【0147】
この封止システムにより、電子部品又は電池が電気絶縁性及び不浸透性を有し、その一方で、それらが相互に及び/又は外部接続点に電気的に接続される可能性を確保する。この封止システムは、本発明の第1、第2又は第3の代替案に従って実施してもよい。
【0148】
相互接続
封止システム又はその代替物のいずれかによる電子部品又は電池などの電気化学部品の封止ステップの後、各要素の正しい動作に必要な電気接続点を確立するために相互接続を設ける。
【0149】
以下に説明する相互接続は、第1又は第2の実施形態に従って得られ、当業者にとってその組み合わせが可能な限り、本発明又はその代替案のいずれか1つによる封止システムによって被覆された、電子部品電池などの又は電気化学部品上で実施することができる。
【0150】
これらの相互接続40を設けるために、封止システム又はその代替案のいずれかによって被覆されたスタックは、突出領域に電池の(+)接続及び(-)接続がそれぞれに露出するような切断面で切断し、単位電池部品を得ることができる。封止システムが電池の6つの面のうち4つを、システムが溶接なしで組み立てられるように、好ましくは連続的に被覆し、電池の他の2つの面を相互接続によって後に被覆する。好ましくは、電池は、カソード、アノード、及び集電体が視認できる相互接続を備えている。好ましくは、アノード接続及びカソード接続は、スタックにおいて互いに反対側の位置に設けられている。これらの接続又はその周囲には、相互接続システムが配置されている(図6を参照)。次いで、相互接続に金属の層を堆積してもよい。その方法は、当業者に知られているプラズマ蒸着技術の使用、好ましくはALD(図6又は図10の符号41を参照)及び/又は導電性エポキシ樹脂(銀が添加されている)(図6又は図10の符号42を参照)及び/又は溶融スズ浴(図6又は図10の符号43を参照)への浸漬、又は電解析出による。好ましくは、相互接続は、ALDにより堆積された第1の金属被覆層41、この第1の層上に堆積された銀が添加されたエポキシ樹脂からなる第2の層42、及びこの第2の層上に堆積されたスズを含む第3の層43が連続する、スタックから構成されている。
【0151】
ALDによって堆積された最初の導電性の層41は、電池のこの部分を湿度から保護する。ALDによって堆積されたこの最初の導電性の層は必須ではない。相互接続のWVTRを小さくすることにより、電池のカレンダ耐用年数を長くすることができる。銀が添加されたエポキシ樹脂からなる第2の層42によって、電気回路が熱及び/又は振動ストレスを受けたときに電気接続点を破壊することなく、接続の「柔軟性」が得られる。
【0152】
スズを含む第3の金属層43によって、WVTRが小さくなり、電池の耐用年数が長くなる。
【0153】
他の実施形態では、この第3の層は、材料の異なる2つの層から構成されていてもよい。第1の層43aは、銀42が充填されたエポキシ樹脂から構成された層42と接触している。この層43aはニッケルで構成されており、電解析出によって形成される。ニッケルから構成された層は、部品の残りの部分を、リフローによるアセンブリのステップ中に、熱バリアとして拡散から保護する。ニッケルで構成された層43a上に堆積された最後の層43bも金属層であり、好ましくはスズで構成され、リフローによりアセンブリに適した界面を形成する。スズで構成されたこの層は、溶融スズ浴にディッピングするか又は電着のいずれかで堆積できる。これらの技術は既知である。
【0154】
マイクロワイヤリングを介する銅製の回路上の特定のアセンブリでは、銅から構成された最後の金属層43bが必要になる場合がある。このような層は、電着によってスズの代わりに形成してもよい。
【0155】
他の実施形態では、相互接続は、銀が添加されたエポキシ樹脂の層42と、この第1の層上に堆積されたスズ又はニッケルを含む第2の層43とが連続するスタックから構成されていてもよい。
【0156】
他の実施形態では、相互接続は、銀が添加されたエポキシ樹脂層42などの導電性ポリマーの層と、この第1の層に堆積されたニッケルを含む第2の層43aと、スズ又は銅を含む第3の層43bとが連続するスタックから構成されていてもよい。
【0157】
好ましい実施形態では、相互接続は、銀を含むエポキシ樹脂などの導電性ポリマーからなる層、ニッケルからなる層、及びスズからなる層から構成されているが、限定されない様々な層で構成されていてもよい。
【0158】
相互接続により、電池の各端部で正及び負の交互の接続部の電気接続が可能となる。これらの相互接続により、様々な電池要素間で並列に電気接続することができる。このため、(+)接続部のみが一方の端部(突出領域)において突出しており、(-)接続部は他方の端部(他の突出領域)に設けられている。
【0159】
次に、本発明又はその代替例のいずれか1つに係る封止システムと組み合わせることができる第1の実施形態について説明する。
【0160】
第1の実施形態に係る電池(好ましくは全固体電池)の製造方法
図7は、それぞれが薄膜のスタックからなるアノード10及びカソード20を備えている、第1の実施形態に係る図4と同様の全固体電池を示す。アノード及びカソードは、接続可能な接続ゾーンが形成された突出領域RS、及び被覆ゾーン(すなわち封止システムで被覆されたゾーン)が形成された後退領域RRを形成するように側方にずらされている。
【0161】
この第1の実施形態では、電池は、好ましくは、スタックの6つの面のうちの4つが封止されている。この封止システムは、側面での電流の収集が容易となるように、第1の面に現れるカソード部分及び第2の面に現れるアノード部分は被覆しない。被覆層はスタックの周囲を囲み、残りの部分は、相互接続で得られた層によって、周辺空気からの保護が保証される。
【0162】
カソード及びアノード接続は、横方向にずらされていることが好ましい。これにより、被覆層が誘電体として機能し、これらの端部がショートするのを防止できる。
【0163】
スタックが形成されると、スタックの封止後、カソード及びアノードの各集電体が視認できる部分(絶縁性電解質で被覆されていない部分)に相互接続(電気接続点)(図6の符号40を参照)が設けられる。これらの接続ゾーンは、電流を収集するためにスタックの互いに反対側の側部(側方の集電体)又は互いに隣接する側部に設けてもよい(図9A及び図9Bを参照)。
【0164】
好ましくは、上記のアノードシート及びカソードシートが交互に連続する主積層体から構成されている本発明に係る電池は、本発明又はその代替案1~3のいずれか1つに係る前記封止システムが、前記電池の6つの面のうちの4つを完全に被覆しており、互いに反対側の側部に位置する残り2つの面を部分的に被覆しており、当該残りの2つの面は、少なくとも前記第1の被覆層31,31’及び少なくとも第2の層32、32’によって部分的に被覆されており、当該2つの残りの面は、アノード接続ゾーン及びカソード接続ゾーンを含んでいるという点に特徴がある。前記封止システムの第3の被覆層は、主積層体を貫通するのが困難である。その結果、この第3の層は、互いに反対側の側部に位置する2つの残りの面を被覆するのが困難である。
【0165】
複数の電池を同時に製造する方法
<第1の実施形態>
電池、好ましくは全固体電池の、生産率を高めるために、U字状の切断面よって画定される数十~数百のアノードを含むシート及びU字状の切断面によって画定される数十~数百のカソードを含むシートが、交互に積層された主積層体を使用して、複数の全固体電池を同時製造してもよい(第1の実施形態)(図11を参照)。これらすべてのシートは、4つの端に開口部を有している(第1の実施形態)(図12及び13参照)。これらのシートのすべてのカソードとすべてのアノードは、これらの開口部を重ねるようにして積層され、且つ横方向にずらされている。
【0166】
次いで、図12及び13に示す矢印(F)に従って、前述のように封止を行う。これらの矢印は、本発明に係る封止システムによって被覆されるゾーン(後退領域)を示している。本発明に係る封止システムは、図12及び図13に示されるように、上部から下部にわたって存在し、ずらされたU字状の切り欠きとして存在する空間を充填する。
【0167】
アノードのシート及びカソードのシートの主積層体は、前述の第1、第2、又は第3の代替案による封止システムで被覆されていることが好ましい。
【0168】
次いで、このように被覆されたアノード及びカソードのシートの主積層体を、任意の適切な手段によって切断し、アノード及びカソードの集電体を露出し、単位電池が得られる。
【0169】
カソード及びアノードのそれぞれの集電体が視認できる位置(絶縁電解質で被覆されていない位置)に、相互接続(図15の符号40、41’、42’及び43’を参照)を設ける。これらの接触ゾーンは、電流を収集するために電池のスタックの互いに反対側の側部(側方の集電体)又は隣接する側部に配置されていることが好ましくい。
【0170】
次に、本発明又はその代替案のいずれか1つに係る封止システムと組み合わせることができる第2の実施形態について説明する。
【0171】
第2の実施形態
他の実施形態では、複数の電池、好ましくは複数の全固体電池、の同時製造は、ノッチ50,50’を有する数十~数百のアノード10’から構成されたシート及びノッチ50’’,50’’’を有する数十~数百のカソード20’ から構成されたシートが交互に積層された主積層体を使用してもよい。これらのすべてのシートは、ノッチ、好ましくは、同心のオリフィス又は孔を有し、これらの開口部を重ね合わせた際に、これらのシートのすべてのカソード及びすべてのアノードが、接続可能な接続ゾーンを構成する少なくとも1つの突出領域RS、及び、被覆ゾーン(すなわち封止システムによって被覆されるゾーン)を構成する少なくとも1つの後退領域RRを画定する(図16~19を参照)。図16に示すように、各アノードシートには、直径D及びDの孔が交互に連続して形成されている。ここで、DはDよりも小さい。また、各カソードシートには、直径D及びDの孔が交互に連続して形成されている。ここで、DはDよりも小さい。アノードシート上に形成された直径D(D)の孔及びカソードシート上に形成された直径D(D)の孔は、互いに同心上に位置する。図19は、図16と同様に斜視図であり、アノードシートとカソードシートの主積層体の拡大図を示しており、これらのシート上に形成された異なる直径D及びDを有する同心の孔の重ね合わせを、突出領域及び後退領域に着目した拡大図を示している。
【0172】
次いで、アノードのシートとカソードのシートの主積層体を、以下を含む本発明に係る封止システムで被覆する。
- 封止システムの第1の被覆層31と同一であり、ALDによりスタック上に堆積された封止システムの第1の被覆層31’、
- 電池セルの外部環境からの保護を改善するために、第1の被覆層上に堆積された第2の被覆層層32と同等の第2の被覆層32’、
- 第2の被覆層上に堆積された第3の層33’と同等の第3の層33(図22及び23を参照)。
【0173】
或いはこれに代えて、アノードのシート及びカソードのシートの主積層体は、前述の第1~第3の代替案に係る封止システムで被覆してもよい。
【0174】
次いで、このように被覆されたアノード及びカソードのシートの主積層体は、適切な手段によって、直径がD~Dの同心の孔が形成してもよい。これによって、アノード接続又はカソード接続、すなわち、電池の(+)接続及び(-)接続(図21A及び21Bを参照)が、各孔に露出し、側部における同心の孔で電流の収集がしやすくなる。
【0175】
第3とよばれるカット(a cut called tertiary)の後、前記主積層体の中央部分で、単位電池が得られ(図20を参照)、相互接続(電気接続点、図24の符号40、図27の符号41’、42’及び43’)を、カソード集電体及びアノード集電体が視認できる位置(絶縁電解質で被覆されていない位置)に設ける。これらの接触ゾーンは、好ましくは、電流を収集するために、電池のスタックの互いに反対側に位置する側部(側方の集電体)又は互いに隣接する位置の側部に配置されている(図24~27を参照)。
【0176】
接続は、好ましくはALD(図27の符号41’を参照)及び/又は銀を添加した導電性エポキシ樹脂への浸漬(図27の符号42’を参照)及び/又は溶融スズの浴(図27の符号43’を参照)によって、当業者に知られたプラズマ蒸着技術を用いて金属部分を設けることによって行ってもよい。好ましくは、相互接続は、ALDによって堆積された金属からなる第1の被覆層41’、この第1層に堆積された銀が充填されたエポキシ樹脂からなる第2の層42’、及びこの第2の層に堆積されたスズを含む第3の層43’が連続するスタックで構成されている。この相互接続により、同心の孔が形成された各端部で正と負とが交互となった接続が可能となる。これらの相互接続により、様々な電池要素間で並列の電気接続が設けられる。このため、(+)接続が一方の同心の孔が形成された端部から突出しており、(-)接続は、他方の同心の孔が形成された端部で利用可能となる。
【実施例
【0177】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは本発明を限定するものではない。この実施例は、全固体電池の製造及びそのような電池の封止に関する。
【0178】
1.リチウムイオン電池の製造
LiTi12を、粉砕後、クエン酸数ppmを添加した無水エタノールに分散させて、アノード材料の懸濁液10g/Lを得た。LiMnを、粉砕後、無水エタノールに分散させて、カソード材料の懸濁液25g/Lを得た。次いで、このカソード懸濁液をアセトンにより5g/Lの濃度に希釈した。粉砕したLiAl0.4Sc1.6(POの粉末を、無水エタノールに分散させることにより5g/Lの電解質材料の懸濁液を得た。
【0179】
これらすべての懸濁液について、粉砕は、粒径が100nm未満である安定した懸濁液が得られるように行った。
【0180】
負電極は、予め準備した懸濁液に含まれるLiTi12のナノ粒子の電気泳動堆積によって製造した。LiTi12の薄膜(厚さ約1μm)を基板の2つの面に堆積した。次いで、これらの負極を600℃で焼きなましした。
【0181】
正極は、LiMnの懸濁液を用いた電気泳動堆積により、同じ方法で準備した。LiMnの薄膜(厚さ約1μm)を基板の2つの面に堆積した。次いで、これらの正極を600°Cで焼きなましした。
【0182】
焼きなまし後、電気泳動堆積により、LiAl0.4Sc1.6(POからなる電解質層で、負極及び正極を被覆した。LiAl0.4Sc1.6(POの厚さは、各電極で約500nmであった。次いで、電解質からなるこれらのフィルムを乾燥した。
【0183】
次いで、LiAl0.4Sc1.6(POで被覆されたアノード及びカソードのスタックから、側方にずらした多層のスタックを得た(図7を参照)。次いで、全体を15分間加圧下、600℃に維持し、アセンブリを行った。
【0184】
2.電池の封止
次いで、前述の多層のスタック上に、封止システムを堆積した。封止システムの第1の層であるアルミナAlの層は、ALDによって堆積した。被覆されたアノード及びカソードの多層のスタックを、Picosun(商標登録) P300 ALDリアクターのチャンバーに投入した。このALDリアクターのチャンバーは、堆積を行う前にチャンバーの雰囲気を安定させるために、事前に、5hPaに減圧された180°C下に置き、事前に、150sccm(standard cm/min)の流量のキャリアガスとしての、タイプ1(σは、約0.05μS/cm)の超純水3ppm未満を含む窒素下で、アルミナの化学前駆体であるトリメチルアルミニウム(以下TMA)(CAS番号:75-24-1)の流れに30分間さらした。チャンバーの安定化後、100nmのAlの層をALDによって堆積した。
【0185】
次いで、このアルミナの第1の層の上に、CVDにより、厚さ12μm+/-2μmのパリレンNの層を堆積した。
【0186】
次いで、この第2の層の上に第3の被覆層を堆積した。この層は、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコーン、ポリイミド、ポリアミド又はポリウレタンから構成されていてもよく、好ましくは、エポキシ樹脂から構成されている。この第3の層は、紫外線(UV)照射の下で硬化し、周辺空気中の成分による電池の劣化速度を低減する。
【0187】
3.電池の相互接続の形成
このように封止したスタックを、電池のカソード及びアノード集電体が露出するような切断面で切断し、単位電池を得た。すなわち、封止されたスタックは、カソード及びアノードのそれぞれの集電体が露出するように、スタックの6つの面のうち2つが切断面となるようにした。次いで、カソード及びアノードの各集電体が視認できる位置(絶縁電解質で被覆されていない位置)に相互接続を形成した。
【0188】
次いで、ALDにより、好ましい金属層を形成し、接続を導電性とした。この第1の相互接続層は、金属であるか、又は金属窒化物を含んでいてもよい。次いで、この第1の相互接続層を(銀が添加された)導電性エポキシ樹脂に浸漬し、次いで、溶融スズ浴に浸漬した。
【0189】
このようにして得た電池は、2~2.7Vでサイクルした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32
図33