(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】搭乗橋
(51)【国際特許分類】
E01D 18/00 20060101AFI20230511BHJP
B64F 1/305 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
E01D18/00 C
B64F1/305
(21)【出願番号】P 2020063152
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠介
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120012(JP,A)
【文献】特開2007-009423(JP,A)
【文献】特開平03-051404(JP,A)
【文献】特開昭63-125706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 18/00
B64F 1/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
港の旅客ターミナルの搭乗口と岸壁に着岸した船舶の舷門とを連絡する搭乗橋であって、
第1フロアと、前記第1フロアの上方に位置する第2フロアと、前記第1フロアと前記第2フロアとを連絡する階段とを有する第1構造体と、
前記搭乗口と前記第1フロアとを連絡する第1接続通路が形成された第1接続通路体と、
昇降フロアを有する第2構造体と、
前記第2構造体を昇降移動させる無段階昇降装置と、
前記第2構造体に俯仰可能に接続され、前記昇降フロアと前記第1フロア及び前記第2フロアのうち選択された一方とを連絡する俯仰通路が形成された俯仰通路体と、
前記昇降フロアと前記舷門とを連絡する第2接続通路が形成された第2接続通路体とを、備える、
搭乗橋。
【請求項2】
前記第1フロアは、前記搭乗口と略同一高さである、
請求項1に記載の搭乗橋。
【請求項3】
前記昇降フロアは、前記舷門と略同一高さである、
請求項1又は2に記載の搭乗橋。
【請求項4】
前記俯仰通路体は、前記岸壁の延在方向と直交する方向へ延びるトンネル状を呈する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の搭乗橋。
【請求項5】
前記第1構造体は、前記第1フロアと連通された第1開口と、前記第1開口の上方に設けられて前記第2フロアと連通された第2開口とを有し、
前記俯仰通路体が前記第1開口及び前記第2開口のうち選択された一方と接続可能に構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の搭乗橋。
【請求項6】
前記俯仰通路体は、角度可変式階段を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の搭乗橋。
【請求項7】
前記第1構造体は、前記第1フロアと連通された第1エレベータ連絡口を有し、
前記第2構造体は、前記昇降フロアと連通された第2エレベータ連絡口を有し、
前記第1エレベータ連絡口と前記第2エレベータ連絡口とを連絡するエレベータを更に備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の搭乗橋。
【請求項8】
前記昇降フロアの高さを検出するレベル検出器を更に備え、
前記エレベータは、昇降路、前記昇降路に沿って移動するカゴ、前記カゴを昇降させる昇降装置、及び、制御装置を有し、
前記制御装置は、前記第1フロアの高さと対応する第1フロア階の位置を記憶しており、前記レベル検出器で検出された前記昇降フロアの高さと対応する昇降フロア階の位置を求め、前記カゴが前記第1フロア階から前記昇降フロア階へ又はその逆へ移動するように前記昇降装置の動作を制御する、
請求項7に記載の搭乗橋。
【請求項9】
前記第2エレベータ連絡口に通過の許容と阻止とを切り替える開閉部材が設けられており、前記開閉部材は非常時に開放又は前記第2エレベータ連絡口から除去可能に構成されている、
請求項7又は8に記載の搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港の旅客ターミナルと船舶との間を連絡する搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港の旅客ターミナルの搭乗口と岸壁に着岸した船舶の舷門(乗降口)との間は、可動式の搭乗橋によって連絡される。岸壁に停泊している船舶の舷門の高さは、船舶の大きさ、喫水状態、潮位などの条件によって変化する。そこで、港用の搭乗橋は、潮汐や波浪による船体の動きに追従する機能を備える。特許文献1では、この種の搭乗橋の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の搭乗橋(船客乗降装置)は、走行フレームと、走行フレームに柱部材を介して支持された渡船通路本体と、渡船通路本体に傾動可能に支持された起伏通路と、起伏通路の陸側に前進後退可能に接続された陸側可動通路と、起伏通路の船側に前進後退可能に接続された船側可動通路と、船側可動通路の先端部に俯仰可能に接続された起伏階段通路と、起伏階段通路の先端部に接続されたプラットホームとを備える。この搭乗橋では、起伏通路の傾動角度を変化させることにより、舷門の高さの異なる多種の船舶に対応できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は船舶の大型化や多様化に伴い、搭乗口と舷門との高低差の大きな船舶にも対応できる搭乗橋が求められている。特許文献1のように渡船通路がスロープで形成される場合、搭乗口と舷門との高低差が大きくなるにしたがってスロープ長が大きくなり、搭乗橋が大型化する。このような搭乗橋は、長いスロープのために乗客の移動距離が長くなり、また、狭い岸壁エプロンでは走行に技量を要し、転回も難しい。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、旅客ターミナルの搭乗口と船舶の舷門との高低差が比較的大きくなる船舶(例えば、大型客船)にも対応可能であり、且つ、小型化を実現する港用の搭乗橋を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る搭乗橋は、
港の旅客ターミナルの搭乗口と岸壁に着岸した船舶の舷門とを連絡する搭乗橋であって、
第1フロアと、前記第1フロアの上方に位置する第2フロアと、前記第1フロアと前記第2フロアとを連絡する階段とを有する第1構造体と、
前記搭乗口と前記第1フロアとを連絡する第1接続通路が形成された第1接続通路体と、
昇降フロアを有する第2構造体と、
前記第2構造体を昇降移動させる無段階昇降装置と、
前記第2構造体に俯仰可能に接続され、前記昇降フロアと前記第1フロア及び前記第2フロアのうち選択された一方とを連絡する俯仰通路が形成された俯仰通路体と、
前記昇降フロアと前記舷門とを連絡する第2接続通路が形成された第2接続通路体とを、備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の搭乗橋では、第1フロア及び第2フロアのうち選択された一方を昇降フロアと俯仰通路を介して接続することができる。例えば、第1フロアと昇降フロアとが俯仰通路を介して接続され、俯仰通路体が所定の俯仰許容範囲内で最大に上方へ回動したときの昇降フロアの高さが下限位置となる。また、例えば、第2フロアと昇降フロアとが俯仰通路を介して接続され、俯仰通路体が所定の俯仰許容範囲内で最大に下方へ回動したときの昇降フロアの高さが上限位置となる。このように、本発明の搭乗橋では、昇降フロアと接続されるフロアが単数である場合と比較して、昇降フロアの下限位置と上限位置との高低差を大きくすることができる。その上、昇降フロアの高さは無段階に調整可能であるので、昇降フロアの高さを下限位置と上限位置との間で自在に調整することができる。これにより、昇降フロアと接続された第2接続通路の先端(即ち、舷門との接続部)の高さの下限位置と上限位置との高低差を大きくすることができ、且つ、第2接続通路の先端の高さを下限位置と上限位置との間で自在に調整することができる。このように、本発明の搭乗橋は、舷門の高さの異なる複数の船舶に対して適用可能である。また、本発明の搭乗橋は、搭乗口と舷門との高低差が比較的大きい大型船にも適用可能である。
【0009】
また、上記構成の搭乗橋では、第1フロアと第2フロアとの接続のために階段が採用されていることから、搭乗口と舷門との高低差が大きい場合であっても、階段に代えてスロープを使う場合と比較して搭乗橋を小型化することができ、その上、乗客の移動距離を短縮することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、旅客ターミナルの搭乗口と船舶との舷門との高低差が比較的大きくなる船舶(例えば、大型客船)にも対応可能であり、且つ、小型化を実現する港用の搭乗橋を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る搭乗橋の側面図である。
【
図4】
図4は、エレベータの制御系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る搭乗橋1の側面図、
図2は、搭乗橋1の1階部分の平面図、
図3は、搭乗橋1の2階部分の平面図である。
図1では、第1構造体10、俯仰通路体5、及び第2構造体20は断面として示され、第1構造体10の階段15は仮想線(二点鎖線)で示されている。また、
図2では第1開口16と俯仰通路体5とが接続された様子が示され、
図3では第2開口18と俯仰通路体5とが接続された様子が示されている。
【0013】
図1~3に示すように、搭乗橋1は、旅客ターミナル80の搭乗口81と、岸壁31に接岸している船舶90の舷門91とを連絡している。以下の説明では、平面視において岸壁31の延伸方向を第1方向Xとし、第1方向Xと直交する水平方向を第2方向Yとする。また、「高さ」とは岸壁エプロン32の上面からの垂直方向の距離を表す。
【0014】
搭乗橋1は、ターミナル80から船舶90へ向かって連接された、第1接続通路体4、第1構造体10、俯仰通路体5、第2構造体20、及び第2接続通路体6を備える。第2構造体20は、無段階昇降装置22によって無段階に昇降可能である。搭乗橋1は、第1構造体10と第2構造体20とを連絡するエレベータ7を更に備える。
【0015】
〔第1構造体10〕
第1構造体10は、第1フロア1F、第2フロア2F、及び、第1フロア1Fと第2フロア2Fとを連絡する階段15を有する。第1構造体10は、支柱を介して走行機体2に支持されている。走行機体2は、複数の車輪と、複数の車輪のうち駆動輪を回転駆動する駆動装置とを備える(いずれも図示略)。走行機体2は、岸壁エプロン32上で走行や転回が可能である。
【0016】
第1構造体10の基部11は、第1方向Xを長手方向とする中空直方体形状を呈する。基部11内には、第1フロア1Fと、第1フロア1Fよりも上方の第2フロア2Fとが形成されている。第1フロア1Fと、旅客ターミナル80の搭乗口81の床面とは実質的に同じ高さである。
【0017】
第1構造体10の船舶90側へ向いた側壁には第1開口16と第2開口18とが設けられている。第2開口18は、第1開口16の上方に位置する。第1開口16は第1フロア1Fと連通されており、第2開口18は第2フロア2Fと連通されている。第1開口16を通過する経路が最短経路となるように、搭乗口81から舷門91までの直線経路上に第1開口16が位置することが望ましい。第1開口16には開閉を切り替える第1シャッタ17が設けられ、第2開口18には開閉を切り替える第2シャッタ19が設けられている。
【0018】
第1フロア1Fと第2フロア2Fとは、階段15で接続されている。階段15は、途中に踊り場のある回り階段(折れ曲がり階段)である。階段15では、第1フロア1Fに開口した下段出入口と、第2フロア2Fに開口した上段出入口とがともにターミナル80側へ向いている。
【0019】
第1フロア1Fには、船舶90側へ向いた第1エレベータ連絡口14が設けられている。本実施形態では、第1構造体10の基部11から第1エレベータ連絡口14とは第2方向Yに離間しており、この間に第2方向Yに延びるエレベータ連絡通路12が設けられている。エレベータ連絡通路12は、第1フロア1Fの一部分である。第1エレベータ連絡口14と階段15とは第1方向Xに離間しており、この間に第1開口16及び俯仰通路体5が位置する。第1エレベータ連絡口14には、安全柵51が設けられている。安全柵51は通常閉止されており、安全柵51が開放されているときにのみ第1エレベータ連絡口14の通過が許容される。
【0020】
〔第1接続通路体4〕
第1構造体10にはターミナル80側へ向いた出入口13が開口している。この出入口13に、第2方向Yに延びる第1接続通路体4が接続されている。第1接続通路体4は、搭乗口81と第1フロア1Fとを連絡する第1接続通路40を有する。
【0021】
〔第2構造体20及び昇降装置22〕
第2構造体20は、昇降フロア21を有する。昇降フロア21は、平面視において第1方向Xを長手方向とする長方形状を呈する。第2構造体20は、第1構造体10に対して昇降可能に構成されている。
【0022】
第2構造体20は走行機体2に立設されたリフトコラム27に昇降可能に支持されている。昇降装置22は、昇降フロア21の水平を維持したまま、第2構造体20をリフトコラム27に沿って無段階に上下方向に変位させる。昇降装置22は、例えば、第2構造体20をリフトコラム27に吊り下げるケーブルと、ケーブルの巻上げ/巻下げを行うウインチと、第2構造体20の移動を案内するガイドとにより構成され得る(いずれも図示略)。但し、昇降装置22は、ウインチ式に限定されず、シリンダ式、ボールねじ式、ラック&ギア式などの他の方式が採用されてよい。
【0023】
昇降装置22によって、昇降フロア21の高さは船舶90の舷門91の床面と実質的に同一となるように調整される。なお、船舶90の舷門91の高さは潮位や波浪の影響を受けて変動することから、乗客が搭乗橋1を利用する短期間の間における船舶90の舷門91の平均的高さが舷門91の高さと見做されてよい。
【0024】
第2構造体20のターミナル80側には、第2エレベータ連絡口28が開口している。第2エレベータ連絡口28には、開閉部材としての安全柵52が設けられている。安全柵52は通常閉止されており、安全柵52が開放されているときにのみ第2エレベータ連絡口28の通過が許容される。安全柵52は非常時には手動で開放する又は取り外すことができ、第2エレベータ連絡口28を非常用経路の一部として利用することができる。例えば、安全柵52は図示されない開閉駆動装置によって開閉駆動されるが、非常時のみに動作する非常開放スイッチが設けられており、当該非常開放スイッチが操作されることによって開閉駆動装置と安全柵52との動力伝達系統が一時的に切断され、安全柵52の手動操作が許容される。また、例えば、安全柵52と第2構造体20との結合部に非常時に解除が可能なロック装置が設けられており、管理者がロック装置を解除して安全柵52を第2エレベータ連絡口28から除去することができる。
【0025】
〔俯仰通路体5〕
俯仰通路体5は、第2構造体20からターミナル80側へ向かって第2方向Yに延びたトンネル形状を呈する。俯仰通路体5の船舶90側の端部は、第2構造体20に対し当該端部に設けられた支点を中心として上下に回動可能、且つ、第2方向Yへ移動可能に接続されている。俯仰通路体5のターミナル80側の端部には俯仰装置58が接続されている。俯仰装置58は、例えば、俯仰通路体5に接続されたロッドと、ロッドを上下昇降させるシリンダとで構成される。俯仰装置58の動作によって、俯仰通路体5は予め定められた俯仰許容範囲内で俯仰可能である。
【0026】
俯仰通路体5のターミナル80側の端部は、第1開口16及び第2開口18に対し選択的に接続可能である。俯仰通路体5の端部には接続部55が設けられている。また、第1開口16と第2開口18の各々には、接続部55と脱着可能な被接続部16a,18aが設けられている。俯仰通路50が第1開口16と接続され、俯仰通路体5が第2構造体20側の端部に設けられた支点を中心として俯仰許容範囲内で最大に上方へ回動した状態で、昇降フロア21の高さは下限位置となる。俯仰通路50が第1開口16と接続され、俯仰通路体5が支点を中心として俯仰許容範囲内で最大に下方へ回動した状態で、昇降フロア21の高さは第1開口16と接続されたときの上限位置となる。俯仰通路50が第2開口18と接続され、俯仰通路体5が支点を中心として俯仰許容範囲内で最大に下方へ回動した状態で、昇降フロア21の高さは上限位置となる。俯仰通路50が第2開口18と接続され、俯仰通路体5が支点を中心として俯仰許容範囲内で最大に上方へ回動した状態で、昇降フロア21の高さは第2開口18と接続されたときの下限位置となる。潮位に追従可能とするために、俯仰通路50が第1開口16と接続されたときの昇降フロア21の上限位置は、俯仰通路50が第2開口18と接続されたときの昇降フロア21の下限位置よりも上方に位置する。
【0027】
俯仰通路体5内には俯仰通路50が形成されている。俯仰通路50は、昇降フロア21と第1構造体10の第1開口16及び第2開口18のうち一方とを選択的に連絡する。俯仰通路50は、角度可変式階段により形成されていてよい。角度可変式階段は、一般に、リンクで連結された複数のステップを有し、俯仰通路体5の俯仰角度に関わらず、複数のステップが水平に維持されるように構成されている。角度可変式階段は、公知の構造のもの(例えば、特許文献1に記載の起伏階段通路)が用いられてよい。或いは、俯仰通路50は、床面が平らなスロープにより形成されていてよい。俯仰通路体5の俯仰許容範囲は、俯仰通路50が階段の場合とスロープの場合でそれぞれ異なっていてよい。
【0028】
〔第2接続通路体6〕
第2構造体20の船舶90側には、船舶90側の出入口29が開口している。この出入口29から船舶90へ向かって第2方向Yへ第2接続通路体6が延びている。第2接続通路体6には、昇降フロア21と舷門91とを連絡する第2接続通路60が形成されている。
【0029】
第2接続通路体6は第2構造体20に接続された第1板61と、第1板61に接続された第2板62とを含む。第1板61は、第2構造体20に対して第1方向Xに変位可能に支持されている。例えば、第2構造体20に第1方向Xに延びたレールが取り付けられており、このレール上を走行するスライダに第1板61が取り付けられている。但し、第2構造体20による第1板61の支持態様はこれに限定されない。
【0030】
第2板62は、第2方向Yの長さが可変である。例えば、第2板62が第1板61から第2方向Yへ進出・後退するように構成されていてよい。例えば、第2板62は、テレスコピックに伸長・短縮する複数の板で構成されていてよい。このように第2接続通路60が第1方向Xへ変位可能且つ第2方向Yへ伸縮可能であることによって、船舶90の舷門91に対する渡り板24の第1方向X及び第2方向Yの位置を微調整することができる。
【0031】
第2接続通路体6の先端には、渡り板24が回動可能に連結されている。渡り板24は、第1方向Xへ延びた軸線を中心として揺動可能である。渡り板24が揺動することにより、波浪や潮汐による岸壁エプロン32の上面を基準とした船舶90の舷門91の高さの変化が吸収される。
【0032】
〔エレベータ7〕
図4は、エレベータ7の制御系統を示すブロック図である。
図1及び
図4に示すように、エレベータ7は、走行機体2に立設された昇降路74と、カゴ75と、カゴ75を吊り下げる巻上索(図示略)と、巻上索を巻上げ及び巻下げする巻上装置77(カゴ75の昇降装置の一例)と、制御装置78とを備える。但し、エレベータ7の昇降方式はウインチ式に限定されず、シリンダ式、ボールねじ式、ラック&ギア式などの他の方式が採用されてよい。また、エレベータ7は垂直エレベータに限定されず、斜行エレベータであってもよい。
【0033】
カゴ75には、旅客ターミナル80へ向かって開放される第1出入口71と、岸壁31へ向かって開放される第2出入口72とが設けられている。また、第1出入口71には第1カゴ戸71aが設けられており、第2出入口72には第2カゴ戸72aが設けられている。
【0034】
エレベータ7は、第1フロア階が設定されているほかは、無段階に停止可能な無段階式のエレベータである。エレベータ7は、カゴ75を第1フロア階と昇降フロア階との間で昇降移動するように構成されている。カゴ75が第1フロア階にあるとき、カゴ75の床、第1接続通路40、及び、第1フロア1Fが搭乗口81と同一高さとなる。第1フロア階の高さは、旅客ターミナル80に固有の高さである。カゴ75が昇降フロア階にあるとき、カゴ75の床、昇降フロア21、及び第2接続通路60と舷門91とが同一高さとなる。昇降フロア階の高さは、船舶90の規模や種類、潮位などに応じて変化する。
【0035】
制御装置78は、第1フロア階の位置を記憶しており、カゴ75を第1フロア階で待機させておくことができる。カゴ75が第1フロア階にあるときにのみ、第1出入口71に設けられた第1カゴ戸71aの開放が許容される。制御装置78によりカゴ戸71aが開放された後、又は、カゴ戸71aの開放と同時に、安全柵51が開放される。
【0036】
第2構造体20には、昇降フロア21の高さを検出するレベル検出器79が設けられている。制御装置78は、カゴ75と検出された昇降フロア21の高さが同一となるように巻上装置77を動作させる。ここで、制御装置78は、検出された昇降フロア21の高さに基づいて、カゴ75を第1フロア階から昇降フロア階まで又はその逆へ移動させるための巻上げ/巻下げ速度の加減速パターンを求め、求めた加減速パターンに基づいて巻上装置77を動作させる。カゴ75が昇降フロア階にあるときにのみ、第2出入口72に設けられた第2カゴ戸72aの開放が許容される。制御装置78により第2カゴ戸72aが開放された後、又は、第2カゴ戸72aの開放と同時に、安全柵52が開放される。
【0037】
ここで、上記構成の搭乗橋1に構成され得る3つの搭乗ルートについて説明する。
【0038】
〔第1ルート〕
図5は、第1ルートを説明する図である。
図2及び
図5に示すように、第1ルートは、第1フロア1Fから俯仰通路50を通って昇降フロア21へ渡るルートである。第1ルートを形成するために、俯仰通路体5の接続部55が第1開口16の被接続部16aと接続され、第1シャッタ17が開放される。これにより、第1フロア1Fと俯仰通路50とが連通される。また、昇降装置22によって、昇降フロア21が船舶90の舷門91の床の高さとが略同一となるように調整される。
【0039】
第1ルートを使用する乗客は、ターミナル80の搭乗口81から第1接続通路40へ進入し、出入口13を通過して第1フロア1Fへ進入し、第1開口16を通過して俯仰通路50へ進入する。搭乗口81から第1開口16までの道程は、直線的且つ平坦である。続いて、乗客は、俯仰通路50を上って又は下って昇降フロア21に入り、昇降フロア21から出入口29を通過して第2接続通路60へ進入し、第2接続通路60及び渡り板24を通過して船舶90の舷門91へ到達する。以上、旅客ターミナル80から船舶90への第1ルートを説明したが、船舶90から旅客ターミナル80へはこれと逆の道程を辿る。
【0040】
〔第2ルート〕
図6は、第2ルートを説明する図である。
図1~3,6に示すように、第2ルートは、第2フロア2Fから俯仰通路50を通って昇降フロア21へ渡るルートである。第2ルートは、例えば船舶90が大型客船である場合のように、旅客ターミナル80の搭乗口81と船舶90の舷門91との高低差が比較的大きい場合に使用される。第2ルートを形成するために、俯仰通路体5の接続部55が第2開口18の被接続部18aと接続され、第2シャッタ19が開放される。これにより、第2フロア2Fと俯仰通路50とが連通される。また、昇降装置22によって、昇降フロア21が船舶90の舷門91の床と略同一高さとなるように調整される。
【0041】
第2ルートを使用する乗客は、ターミナル80の搭乗口81から第1接続通路40へ進入し、出入口13を通過して第1フロア1Fへ進入する。乗客は、第1フロア1Fから階段15を上って第2フロア2Fへ進入し、第2フロア2Fから第2開口18を通過して俯仰通路50へ進入する。乗客は、俯仰通路50を上って又は下って昇降フロア21へ進入し、昇降フロア21から出入口29を通過して第2接続通路60へ入り、第2接続通路60及び渡り板24を通過して船舶90の舷門91へ到達する。以上、旅客ターミナル80から船舶90への第2ルートを説明したが、船舶90から旅客ターミナル80へはこれと逆の道程を辿る。
【0042】
〔第3ルート〕
図7は、第3ルートを説明する図である。
図2及び7に示すように、第3ルートは、エレベータ7を利用するバリアフリールートである。第3ルートを形成するために、昇降装置22によって、昇降フロア21と船舶90の舷門91の床の高さが略同一となるように昇降フロア21の高さが調整される。
【0043】
第3ルートを使用する乗客は、ターミナル80の搭乗口81から第1接続通路40へ進入し、出入口13を通過して第1フロア1Fへ進入する。乗客は、第1フロア1Fを進んで第1エレベータ連絡口14の手前に至る。乗客は、安全柵51の近傍に配置されている開放ボタンを操作する。
【0044】
開放ボタンが操作されると、エレベータ7のカゴ75が第1フロア階へ移動し、カゴ75が第1フロア階へ到達してから第1出入口71及び安全柵51が開放される。乗客は、第1出入口71を通過してカゴ75に乗り込んで、カゴ75内で昇降ボタンを操作する。昇降ボタンが操作されると、第1出入口71及び安全柵51が閉じられて、カゴ75が上昇または降下して昇降フロア階へ移動する。カゴ75が昇降フロア階へ到達してから第2出入口72及び接続部55が開放される。乗客は、カゴ75から第2出入口72を通過して昇降フロア21へ進入し、昇降フロア21から出入口29を通過して第2接続通路60へ入り、第2接続通路60及び渡り板24を通過して船舶90の舷門91へ到達する。以上、旅客ターミナル80から船舶90への第3ルートを説明したが、船舶90から旅客ターミナル80へはこれと逆の道程を辿る。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態の搭乗橋1は、港の旅客ターミナル80の搭乗口81と岸壁31に着岸した船舶90の舷門91とを連絡する搭乗橋1であって、
第1フロア1Fと、第1フロア1Fの上方に位置する第2フロア2Fと、第1フロア1Fと第2フロア2Fとを連絡する階段15とを有する第1構造体10と、
搭乗口81と第1フロア1Fとを連絡する第1接続通路40が形成された第1接続通路体4と、
昇降フロア21を有する第2構造体20と、
第2構造体20を昇降移動させる無段階昇降装置22と、
第2構造体20に俯仰可能に接続され、昇降フロア21と第1フロア1F及び第2フロア2Fのうち選択された一方とを連絡する俯仰通路50が形成された俯仰通路体5と、
昇降フロア21と舷門91とを連絡する第2接続通路60が形成された第2接続通路体6とを、備えることを特徴としている。
【0046】
上記構成の搭乗橋1では、第1フロア1F及び第2フロア2Fのうち選択された一方を昇降フロア21と俯仰通路50を介して接続することができる。例えば、第1フロア1Fと昇降フロア21とが俯仰通路50を介して接続され、俯仰通路体5が所定の俯仰許容範囲内で最大に上方へ回動したときの昇降フロア21の高さが下限位置となる。また、例えば、第2フロア2Fと昇降フロア21とが俯仰通路50を介して接続され、俯仰通路体5が所定の俯仰許容範囲内で最大に下方へ回動したときの昇降フロア21の高さが上限位置となる。このように、本実施形態に係る搭乗橋1では、昇降フロア21と接続されるフロアが単数である場合と比較して、昇降フロア21の下限位置と上限位置との高低差を大きくすることができる。その上、昇降フロア21の高さは無段階に調整可能であるので、昇降フロア21の高さを下限位置と上限位置との間で自在に調整することができる。これにより、昇降フロア21と接続された第2接続通路60の先端(即ち、舷門91との接続部)の高さの下限位置と上限位置との高低差を大きくすることができ、且つ、第2接続通路60の先端の高さを下限位置と上限位置との間で自在に調整することができる。このように、本実施形態に係る搭乗橋1は、舷門91の高さの異なる複数の船舶90に対して適用可能である。また、本実施形態に係る搭乗橋1は、搭乗口81と舷門91との高低差が比較的大きい大型船にも適用可能である。
【0047】
更に、上記構成の搭乗橋1では、第1フロア1Fと第2フロア2Fとの接続のために階段15が設けられていることから、搭乗口81と舷門91との高低差が大きい場合であっても、階段15に代えてスロープを使う場合と比較して搭乗橋1を小型化することができ、その上、乗客の移動距離を短縮することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、第1フロア1Fは、搭乗口81と略同一高さである。
【0049】
この構成によれば、搭乗口81から第1フロア1Fまでの高低差が殆ど無いので、乗客は搭乗口81から第1フロア1Fまで上り下りすることなく移動することになる。但し、第1フロア1Fの高さは本実施形態に限定されず、搭乗口81と第1フロア1Fとを繋ぐ第1接続通路40の勾配が車いすで上り下り可能となる範囲内で、搭乗口81と第1フロア1Fとの間に高低差が存在してもよい。
【0050】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、昇降フロア21は、舷門91と略同一高さである。
【0051】
上記構成によれば、昇降フロア21から舷門91までの高低差が殆ど無いので、乗客は昇降フロア21から舷門91まで上り下りすることなく移動することになる。但し、昇降フロア21の高さは本実施形態に限定されず、舷門91と昇降フロア21とを繋ぐ第2接続通路60の勾配が車いすで上り下り可能となる範囲内で、舷門91と昇降フロア21との間に高低差が存在してもよい。
【0052】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、俯仰通路体5は、岸壁31の延在方向と直交する方向へ延びるトンネル状を呈する。
【0053】
上記構成によれば、俯仰通路50は、第1フロア1F又は第2フロア2Fから俯仰通路50が船舶90へ向かって直線的に延びる。よって、俯仰通路50が岸壁31の延在方向と平行に配置される場合と比較して、第1フロア1F又は第2フロア2Fから船舶90の舷門91までの乗客の移動距離を短縮することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、第1構造体10は、第1フロア1Fと連通された第1開口16と、第1開口16の上方に設けられて第2フロア2Fと連通された第2開口18とを有し、俯仰通路体5が第1開口16及び第2開口18のうち選択された一方と接続可能に構成されている。
【0055】
上記構成によれば、俯仰通路体5の先端を上下に変位させることにより、第1開口16から第2開口18へ又はその逆へ、俯仰通路体5の接続先を変更することができる。よって、第1ルートから第2ルートへ、又はその逆へのルート変更が容易である。
【0056】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、俯仰通路体5は、角度可変式階段を有する。
【0057】
上記構成によれば、俯仰通路体5の俯仰角度に関わらず角度可変式階段のステップは常に水平となる。よって、俯仰通路体5を所定の俯仰許容範囲内で任意の俯仰角度とすることができる。更に、俯仰通路50が階段となるので、スロープの場合と比較して、俯仰通路50及び俯仰通路体5を短く構成することが可能となり、搭乗橋1の小型化に寄与することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、第1構造体10は、第1フロア1Fと連通された第1エレベータ連絡口14を有し、第2構造体20は、昇降フロア21と連通された第2エレベータ連絡口28を有し、第1エレベータ連絡口14と第2エレベータ連絡口28とを連絡するエレベータ7を更に備える。
【0059】
上記構成によれば、第1フロア1Fから昇降フロア21まで、乗客が上り下りすることなく移動できるバリアフリーなルートが形成される。この場合、第1フロア1Fが搭乗口81と同一高さであり、且つ、昇降フロア21が舷門91と同一高さであることが望ましく、これにより搭乗口81から舷門91までのバリアフリー(段差の少ない)な搭乗ルート(第3ルート)が形成される。
【0060】
更に、本実施形態に係る搭乗橋1では、昇降フロア21の高さを検出するレベル検出器79を更に備え、エレベータ7は、昇降路74、昇降路74に沿って移動するカゴ75、カゴ75を昇降させる昇降装置(巻上装置77)、及び、制御装置78を有する。この制御装置78は、第1フロア1Fの高さと対応する第1フロア階の位置を記憶しており、レベル検出器79で検出された昇降フロア21の高さと対応する昇降フロア階の位置を求め、カゴ75が第1フロア階から昇降フロア階へ又はその逆へ移動するように昇降装置の動作を制御する。
【0061】
上記構成によれば、昇降フロア21の高さが無段階に設定可能であっても、昇降フロア21の高さに合わせてエレベータ7のカゴ75を昇降させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る搭乗橋1において、第2エレベータ連絡口28に通過の許容と阻止とを切り替える開閉部材(安全柵52)が設けられており、開閉部材は非常時に開放又は第2エレベータ連絡口28から除去可能に構成されている。
【0063】
上記構成によれば、非常時には第2エレベータ連絡口28を非常用経路の一部として利用することが可能である。
【0064】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0065】
例えば、上記実施形態に係る搭乗橋1において、第1構造体10は第1フロア1Fと第2フロア2Fとの2層を有するが、第1構造体10は3層以上のフロアを有していてもよい。これにより、搭乗橋1はより大きな搭乗口81と舷門91との高低差に対応することが可能となる。
【0066】
また、例えば、上記実施形態に係る搭乗橋1において、下段の第1フロア1Fと搭乗口81とが連通されるが、上段の第2フロア2Fと搭乗口81とが連通されてもよい。これにより、旅客ターミナル80の高層階に搭乗口81が設けられている場合にも、本発明に係る搭乗橋1を適用することができる。
【0067】
また、例えば、上記実施形態に係る搭乗橋1において、エレベータ7のカゴ75は、第1フロア階及び昇降フロア階で停止可能であるが、エレベータ7のカゴ75が第1フロア階及び昇降フロア階に加えて地上階でも停止可能なように構成されていてもよい。地上階は、岸壁エプロン32の高さと対応している。これにより、乗客は、ターミナル80及び第1構造体10を介さずに、岸壁エプロン32からエレベータ7を利用して直接に昇降フロア21へ(又は、その逆へ)移動することができる。
【0068】
また、例えば、上記実施形態に係る搭乗橋1において、第1フロア1Fと地上(岸壁エプロン32)とを繋ぐ外階段が設けられていてもよい。これにより、乗客は、ターミナル80を介さずに、岸壁エプロン32から外階段を利用して直接に第1フロア1Fへ(又は、その逆へ)移動することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :搭乗橋
1F :第1フロア
2F :第2フロア
4 :第1接続通路体
5 :俯仰通路体
6 :第2接続通路体
7 :エレベータ
10 :第1構造体
14 :第1エレベータ連絡口
15 :階段
16 :第1開口
18 :第2開口
20 :第2構造体
21 :昇降フロア
22 :無段階昇降装置
28 :第2エレベータ連絡口
31 :岸壁
40 :第1接続通路
50 :俯仰通路
60 :第2接続通路
80 :旅客ターミナル
81 :搭乗口
90 :船舶
91 :舷門