(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】衝撃および穿刺抵抗を分析するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/42 20060101AFI20230511BHJP
G01N 3/30 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N3/42
G01N3/30 N
G01N3/30 P
(21)【出願番号】P 2020503992
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018030298
(87)【国際公開番号】W WO2019027522
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】マッカーティー 2世、ドナルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】スタント、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ルンド、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グラッド、ブライデン イー.
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハイテンドラ
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-188032(JP,A)
【文献】特表2006-526775(JP,A)
【文献】実開平07-034352(JP,U)
【文献】特開平08-226881(JP,A)
【文献】特開平01-158330(JP,A)
【文献】特開平03-142188(JP,A)
【文献】特開2002-286604(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106053236(CN,A)
【文献】特開2005-148057(JP,A)
【文献】特開昭64-013434(JP,A)
【文献】特開2009-271037(JP,A)
【文献】特開2014-032173(JP,A)
【文献】特開2017-090166(JP,A)
【文献】特開2003-014600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/42
G01N 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムサンプルの物理的特性を分析するためのシステムであって、前記システムが、
前記フィルムサンプルを保持するように構成された材料保持システムと、
前記フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍試験システムと、
分析または試験される前記保持されたフィルムサンプルを、ステーション間で移動させるように構成された移動システムと、を備え、
前記移動システムが、前記材料保持システム内の前記保持されたフィルムサンプルを前記槍試験システムに移動させるように構成され、
前記材料保持システムが、真空吸引を通じて前記フィルム
サンプルを保持するように構成された真空吸引システムを含み、
前記フィルムサンプルが、4つの角部を有する四辺形形状を有し、前記真空吸引システムが、前記フィルムサンプルの実質的に各角部で前記フィルムサンプルを保持するように構成された第1の対の吸引カップおよび第2の
対の吸引カップを含み、
前記真空吸引システムが、試験される前記フィルムサンプルを保持および配置するように構成された第1の対の吸引カップおよび第2の対の吸引カップと、以前に試験されたフィルムサンプルを拾い上げるように構成された第3の対の吸引カップと、を含む、前記システム。
【請求項2】
前記移動システムが、関節アームロボットシステムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フィルムサンプルの厚さを測定するように構成された材料厚さ測定システムをさらに備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記材料厚さ測定システムが、前記測定中に前記フィルムサンプルを穿刺することを回避するために、広がった区域にわたって前記フィルムサンプルの厚さを測定するように構成されたプローブを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記槍試験システムが、上顎および下顎を有するクランプシステムを含み、前記上顎および前記下顎が、各々、溝および隆起部を含み、前記上および下顎のうちの一方の隆起部が、前記上および下顎のうちの他方の溝に嵌合するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記上顎および前記下顎のうちの一方が、前記クランプシステムが開放している間に、前記フィルムサンプルを適所に保持するように構成された保持機構を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記槍試験システムが、前記フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍プローブ機構を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記槍プローブ機構が、槍プローブと、前記槍プローブを移動させるように構成された推進システムと、を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記推進システムが、リニアモータを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記槍プローブ機構が、前記槍プローブに接続された圧電式力センサを含み、前記圧電式力センサが、前記フィルムサンプルの槍試験中に力信号を測定するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記槍試験システムと通信するコンピュータシステムをさらに備え、前記コンピュータシステムが、前記槍試験システムから力データを取得するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィルムサンプルの欠陥を検出するように構成された材料画像分析システムをさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
フィルムサンプルの物理的特性を分析するための方法であって、前記方法が、
移動システムに接続された材料保持システムによって前記フィルムサンプルを保持することと、
前記移動システムによって前記フィルムサンプルを槍試験システムに移動させることと、
前記槍試験システムを使用して、前記材料の前記フィルム
サンプルの物理的特性を試験することと
を含み、
前記材料保持システムが、真空吸引を通じて前記フィルム
サンプルを保持するように構成された真空吸引システムを含み、前記フィルムサンプルが、4つの角部を有する四辺形形状を有し、前記真空吸引システムが、前記フィルムサンプルの実質的に各角部で前記フィルムサンプルを保持するように構成された第1の対の吸引カップおよび第2の
対の吸引カップを含み、
前記第1の対の吸引カップおよび前記第2の対の吸引カップは、試験される前記フィルムサンプルを保持および配置するように構成されており、前記真空吸引システムは、以前に試験されたフィルムサンプルを拾い上げるように構成された第3の対の吸引カップをさらに含む、前記方法。
【請求項14】
前記フィルムサンプルの前記物理的特性を試験することが、前記槍試験システムのクランプシステムを使用して、前記試験中に前記フィルムサンプルをぴんと張って強勢せずに保持することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルムサンプルの前記物理的特性を試験することが、前記槍試験システムの槍プローブで前記フィルムサンプルを穿刺することと、前記フィルムサンプルの試験中に力を測定することと、を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記移動システムによって前記フィルムサンプルを材料厚さ測定システムに移動させることと、
前記材料厚さ測定システムを使用してフ前記フィルムサンプルの厚さを測定することと、をさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記移動システムによって前記フィルムサンプルを
材料画像分析システムに移動させることと、
前記材料画像分析システムを使用して、前記フィルムサンプルの欠陥を検出することと、をさらに含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料のフィルムまたはシートの衝撃および穿刺抵抗を分析するためのシステムおよびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
材料の物理的特性を特徴付けることは、材料の製造に使用される化学組成を分析および改善すること、ならびに材料の製造プロセスを分析および改善することに役立つ。物理的特性を特徴付けることはまた、消費者が特定のユースケースに最適な製品を決定することにも役立つと共に、研究者が特定の用途向けの新しいソリューションを開発することにも役立ち得る。材料の有用な物理的特性の1つは、材料の穿刺特性を決定することである。槍試験は、科学者に材料の高速穿刺特性についての洞察を提供する。槍試験では、通常、特定の速度で進行する特定の寸法の丸い円筒形プローブで薄膜を穿孔し、プローブが薄膜に及ぼす力を測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、フィルムの槍試験は、手動落槍システムおよび計装化槍システムの2つの方法で実施されている。どちらの場合も、システムは重力に依存して槍プローブを試験されるフィルムに向けて加速させる。フィルムは、クランプ機構によって適所にぴんと張られて保持される。落槍(DD)は、既知の質量/重量をフィルムに落下させることを含む。オペレータは、フィルムが穿刺されたかどうかの観察を行う。この試験は、フィルムの複数の複製物上で異なる質量/重量で何度も繰り返すことができる。結果として得られるフィルム特性(通常は全体のエネルギーのみ)が、結果から推定される。ただし、このシステムは使用が面倒で、自動化された動作には適さず、フィルムに印加される力曲線の性質の詳細な理解を提供しない。
【0004】
計装化槍衝撃システム(IDI)は、フィルムを穿刺するために使用される槍プローブに力センサを組み込むことによって、1回の試験からより豊富なデータを取得することにより適している。これは、自動化された槍システムの最新技術である。ただし、このシステムでも、フィルムの載置および取り外しは手動で実施される。さらに、このシステムは、限られた量の収集されたデータを提供する。
【0005】
したがって、材料のフィルムの衝撃および/または穿刺抵抗を分析するための自動化されたプロセスおよびシステムの必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による衝撃および/または穿刺抵抗を分析するためのシステムおよび方法を使用することによって、プロセスが自動化され、スループットが向上し、試験から収集されるデータ量が改善されることが決定された。
【0007】
本開示の一態様は、フィルムサンプルの物理的特性を分析するためのシステムを提供することである。システムは、フィルムサンプルを保持するように構成された材料保持システムと、フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍試験システムと、分析または試験される保持されたフィルムサンプルを、ステーション間で移動させるように構成された移動システムと、を含む。移動システムは、材料保持システムの保持されたフィルムサンプルを槍試験システムに移動させるように構成されている。
【0008】
本開示の別の態様は、フィルムサンプルの物理的特性を分析するための方法を提供することである。方法は、移動システムに接続された材料保持システムによってフィルムサンプルを保持することと、移動システムによってフィルムサンプルを槍試験システムに移動することと、槍試験システムを使用して、材料のフィルムの物理的特性を試験することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示、ならびに構造の関連要素の動作方法および機能、ならびに部品および製造の経済性の組み合わせは、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮するとより明らかになり、これらの全ては本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は様々な図における対応する部分を示す。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的としており、本発明の制限の定義として意図されていないことを明確に理解されたい。
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態によるシステムの概略図を示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による、ロボットシステムの3次元斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、材料保持システムの3次元斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による、厚さ測定システムの構成要素の3次元斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態による、フィルムサンプル中の欠陥を分析するための材料画像分析システムの3次元斜視図を示す。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態による、クランプシステムの3次元斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一実施形態による、クランプシステムの断面図を示す。
【
図7A】
図7Aは、本開示の一実施形態による、クランプアセンブリによってクランプされたフィルムサンプルのビデオの最初および最後のフレームを示す。
【
図7B】
図7Bは、本開示の一実施形態による、クランプアセンブリによってクランプされたフィルムサンプルのビデオの最初および最後のフレームを示す。
【
図8A】
図8Aは、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムにちょうど突き当たったとき(
図8A)およびフィルムサンプルが最も伸張されたとき(穿刺直前)(
図8B)のフィルムサンプルのフレームを示す。
【
図8B】
図8Bは、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムにちょうど突き当たったとき(
図8A)およびフィルムサンプルが最も伸張されたとき(穿刺直前)(
図8B)のフィルムサンプルのフレームを示す。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態による、槍プローブ機構の3次元斜視図を示す。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態による、槍プローブの3次元斜視図を示す。
【
図11A】
図11Aは、それぞれ、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムサンプルに接触する直前、および槍プローブがフィルムサンプルに接触し、穿刺直前に最大までフィルムを伸張させた後の、クランプによってクランプされたフィルムサンプルの側面図を示す。
【
図11B】
図11Bは、それぞれ、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムサンプルに接触する直前、および槍プローブがフィルムサンプルに接触し、穿刺直前に最大までフィルムを伸張させた後の、クランプによってクランプされたフィルムサンプルの側面図を示す。
【
図12A】
図12Aは、一実施形態による、プローブの移動の開始からプローブの完全な停止までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。
【
図12B】
図12Bは、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルとの衝突点からフィルムサンプルの穿刺の完了までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。
【
図13A】
図13Aは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。
【
図13B】
図13Bは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。
【
図14】
図14は、本開示の一実施形態による、材料保持システムを使用してフィルムサンプルを拾い上げるロボットシステムを示す。
【
図15】
図15は、本開示の一実施形態による、材料厚さ測定システムを使用したサンプルの厚さの測定を示す。
【
図16】
図16は、本開示の一実施形態による、材料画像分析システムを使用した欠陥分析の実施を示す。
【
図17A】
図17Aは、本開示の一実施形態による、槍試験システムから試験フィルムサンプルを拾い上げるロボットシステムを示す。
【
図17B】
図17Bは、本開示の一実施形態による、槍試験システムに新しい未試験フィルムサンプルを配置するロボットシステムを示す。
【
図18】
図18は、試験されたフィルムサンプルを廃棄するロボットシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態によれば、材料の薄膜の衝撃および穿刺抵抗を試験するプロセスを自動化することができる。自動化された槍試験システムのアイデアは、様々な産業における高スループット(HTP)試験の必要性から生じている。試験速度が高いほど、大量の材料および比較的迅速に収集して傾向を分析することができるデータの取得により、関心のある分野でより詳細な研究を行うことが可能になる。HTP試験設定の開始に必要な機能の1つは、連続(またはほぼ連続)の動作である。システムをノンストップで実行することを可能にすることで、実施される試験の量が増加する。システムはまた、手動試験システムと比較して、1回の試験の速度を向上させることも可能にする。これは、ロボットが中断することなく長時間動作できるため、ロボットを使用して人間の研究者またはオペレータに取って代わる。精度を犠牲にすることなくシステムのスループットを向上させるために使用され得る第2の機能は、複数の試験を並行して実施することである。第3の機能は、人間ベースの試験システムと比較して、システムが反復可能かつ均一であることである。本開示の実施形態は、これらの機能を使用して、試験されたサンプルの数を大幅に増加させることができる試験設定を提供する。
【0011】
インフレーションフィルム製造ラインと統合することに加えて、薄膜の衝撃および穿刺抵抗を分析するための本システムは、既存のインフレーションフィルムラボに統合することもできる。試験を自動的かつ比較的迅速に実施できることによって、ラボは、本システムを使用して試験のバックログをクリアできるようになる。
【0012】
さらに、本システムは、ポリマーフィルム(例えば、プラスチック)および非ポリマーフィルムの試験を含む材料の様々なフィルムの試験を可能にする。さらに、本システムは、厚さ1mm以上の基材を含む様々な厚さのフィルムまたは基材を試験するために使用することができる。基材は、例えば、ポリマープラーク、金属シート、紙シート、または他の複合材料であり得る。したがって、本明細書では、「フィルム」、「フィルムサンプル」、または「材料のフィルム」という用語は、様々な種類の材料(例えば、プラスチック、紙、金属、または複合材料)および様々な厚さの材料を包含するために使用される。一例では、システムは、射出成形および他のプラスチック成形手段を通じて形成されたものなど、他の加工材料の試験を可能にする。
【0013】
以下の段落から理解できるように、本開示の一実施形態によるシステムは、効率的な方法でタスクのセットを達成する。タスクは、フィルムサンプルの厚さを測定することと、分析に影響を与えるであろう測定領域の欠陥についてフィルムを視覚的に分析することと、衝撃下でのフィルムの強度およびエネルギー散逸を測定することと、フィルムサンプルを試験ステーションに載置してフィルムを試験することと、試験されたフィルムを試験ステーションから取り除くことと、を含む。一実施形態では、システムは、ASTM F1306によって記述された位置でフィルムの厚さを測定することと、カメラおよびマシンビジョン分析技術を使用して、槍衝撃測定領域の欠陥についてフィルムを分析することと、一定の載置のためにフィルムを確実に分離するシステムを使用して、フィルムを試験ステーションに載置することと、フィルムサンプルの槍衝撃分析を実施することと、結果の自動化された計算を実施することと、を可能にする。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態によるシステムの概略図を示す。本開示の一実施形態では、衝撃および穿刺抵抗を分析するためのシステム10は、ロボットシステム12、材料保持システム14、材料厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験システム20のうちの1つ以上を含む。ロボットシステム12、材料保持システム14、材料厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験システム20は、作業面22または共通の枠組みに位置付けられ得る。ロボットシステム12、材料保持システム14、厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験システム20は、コンピュータシステム24を使用して制御され得る。送達システムも提供されてもよい。送達システムは、ロボットシステム12および材料保持システム14が1つ以上のトレイからフィルムサンプルを取り出すことができる作業面にサンプルを送達する1つ以上のトレイを含んでもよい。
【0015】
図2は、本開示の一実施形態による、ロボットシステム12の3次元斜視図を示す。一実施形態では、ロボットシステム12は、エプソン社製のEpson C4Lロボットなどの6軸ロボットアームシステムである。実施形態によれば、Epson C4Lロボットシステムは、900mm(約35インチ)の最大リーチを有する。ロボットシステム12は、分析または試験されるフィルムサンプルを、作業面22または共通の枠組みに設けられたステーション間で移動するように構成されている。例えば、ロボットシステムは、
図3に関連して以下に記載されるように、材料保持システムに接続され得る。
図2に示されるロボットアームに加えて他の種類のロボットシステムを使用して、作業面22に設けられたステーション間でフィルムサンプルを移動させることができる。
【0016】
図3は、本開示の一実施形態による、材料保持システムの3次元斜視図を示す。材料保持システム14は、
図2に示されるロボットシステム12の1つの端部に接続されている。例えば、一実施形態では、材料保持システム14は、締結具を使用してロボットシステム12のアームに取り付けられる。材料保持システム14は、フィルムサンプルを保持および移動させるように構成さている。一実施形態では、材料保持システムは、真空吸引を通じてフィルムサンプルを保持するように適合された真空吸引システム30を含む。一実施形態では、真空吸引システム30は、フィルムの垂れ下がりを防止するために、フィルムサンプルをフィルムの各角部で実質的に平坦に保持するように構成された2対の吸引カップ32を含む。一実施形態では、真空吸引システムは、フィルムサンプルが作業面の周りを移動する効率を高めるために、第3の対の吸引カップ34をさらに含む。例えば、第3の対の吸引カップ34を提供することによって、試験のために新しいフィルムサンプル38が配置される間に、以前に試験されたフィルムサンプル36を同時に拾い上げることができる。
【0017】
本明細書では、吸引カップがフィルムサンプルを保持するために使用されるものとして記載されているが、他の機構またはシステムを使用して、材料の種類に応じてフィルムサンプルを保持することもできる。例えば、吸引カップは、様々なプラスチックおよびポリマー材料などの、非多孔質の比較的軽いサンプルを保持するのに適している場合がある。したがって、例えば、多孔質材料が使用される場合、吸引カップは、磁石、クリップ、または何らかの他の種類の把持機構などの他の保持機構に置き換えることができる。
【0018】
図4は、本開示の一実施形態による、厚さ測定システムの構成要素の3次元斜視図を示す。厚さ測定システム16は、例えば、0.5ミル(12.7マイクロメートル)~10ミル(250マイクロメートル)の広範囲の厚さでフィルムサンプルの厚さを測定するように構成されている。厚さ測定システム16は、接触板40およびプローブ41を使用して、フィルムの厚さを測定するように構成されている。接触板40およびプローブ41は略平坦であり、その対向面でフィルムに接触し、フィルムの厚さは、接触板40とプローブ41との間の距離として測定される。接触板40およびプローブ41の両方の表面は、測定中にフィルムサンプルに穿刺することを回避するのに十分である。接触板40およびプローブ41は、厚さゲージの力を分散させ、測定中にフィルムサンプルが変形するのを防止するという利点を有する。例えば、接触板40およびプローブ41は、可撓性のかつ柔軟な材料またはより剛性のサンプルに使用されるように構成され得る。
【0019】
厚さ測定システム16はまた、高精度デジタル接触センサ44(例えば、Keyence社のKeyence GT2シリーズ)も含む。センサ44は、フィルムサンプルの厚さを1ミクロン(0.04ミル)の精度で測定するために使用される。センサ44は、その精度のために選択される。プローブ41は、センサ44に機械的にリンクされている。厚さ測定システム16はまた、フィルムサンプル(図示せず)がセンサ44の上部または下部接点のいずれにも引っ掛からないように配置されたランプ42も含む。フィルムが接触板40とプローブ41との間の適所に置かれると、空気圧システム46からの加圧空気がセンサ44に加えられ、センサ44は、センサ44とプローブ41とにリンクされたシャフト45を延伸させ、プローブ41を移動させてフィルムの厚さを測定する。
【0020】
機械の種類の厚さ測定システム16が記載および使用されているが、他の種類の厚さ測定システムも使用することができる。例えば、別の実施形態では、厚さ測定システム16は、レーザビームを使用して厚さを決定するように適合されたレーザ距離測定センサを含む。例えば、デュアルレーザ厚さ分析器を使用して、フィルムサンプルの厚さを測定することができる。さらに別の実施形態では、容量測定システムを使用して、フィルムの厚さを測定することができる。静電容量(または一般にインピーダンス)測定システムは、材料全体の静電容量(またはインピーダンス)の測定に基づいている。
【0021】
再び
図1を参照すると、厚さ測定システム16での厚さ測定の前後に、フィルムサンプルは、ロボットシステム12によって材料画像分析システム18に移動される。
図5は、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルの欠陥を分析するための材料画像分析システムの3次元斜視図を示す。一実施形態では、材料画像分析システム18は、偏光の原理に基づいている。本明細書では、フィルムサンプルの任意の欠陥または不規則性を含めるために、「欠陥」という用語が使用される。材料画像分析システム18は、試験されるフィルムサンプルの欠陥を検出するように構成されている。偏光源18Aを使用して、分析システム18内のフィルムを照射し、あらゆる周囲光を除去する。光がフィルムを通過した後、フィルムは、偏光フィルタが取り付けたカメラ18Bによって捕捉される。完全に形成されたフィルムは、光源からの偏光を散乱させず、したがって完全に鮮明な画像が得られる。ただし、フィルムに何らかの欠点/欠陥があると、カメラによって検出された光が散乱する。次いで、マシンビジョンアルゴリズムは、重大な欠陥を伴うフィルムを識別およびタグ付けする。したがって、材料画像分析システム18は、フィルムサンプルを通過する偏光がサンプルに存在する特定の物理的欠陥の影響を受けるときに生じる欠陥の検出に基づいている。材料画像分析システムは偏光に依存しているため、試験される材料が変更されると、偏光も変化する可能性があり、これは何もない場合に存在する欠陥を示す可能性がある。ただし、分析の態様の一部として、欠陥または不規則性の分析は、データ解釈に移行し、フィルムからの結果の範囲を調べること、ならびに標準偏差および平均からの距離に基づいて外れ値を識別することによって行われる。したがって、欠陥を決定する本方法は、材料に依存せず、問題に対するより普遍的なソリューションである。あるいは、一実施形態では、材料画像分析システム18は、欠陥の種類を定量化および識別するように構成されたゲル試験器を含み得る。ゲル試験器の例として、光学制御システム(OCS)試験器が挙げられる。上述されたもの以外の他の種類の材料画像分析システムが、代替的に使用されてもよい。例えば、光透過率分析システムまたは超音波欠陥検出システムを使用して、フィルムサンプルの欠陥を検出することができる。
【0022】
欠陥分析に続いて、フィルムサンプルは、ロボットシステム12によって槍試験システム20に移動される。槍試験システムは、フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成されている。一実施形態では、物理的特性は、フィルムサンプルの弾性および強度を含む。
図6Aおよび6Bを参照すると、槍試験システム20は、フィルムクランプシステム60を含む。
図6Aは、本開示の一実施形態による、クランプシステム60の3次元斜視図である。
図6Bは、本開示の一実施形態による、クランプシステム60の断面図を示す。フィルムクランプシステム60は、試験の精度を確保する役割を果たす。クランプシステム60は、2つの顎62Aおよび62Bを含む。一実施形態では、顎62Aおよび62Bは円形であり、すなわち、円形または環状の形状を有する。しかしながら、顎62Aおよび62Bは、多角形などの異なる形状を有することもある。一実施形態では、2つの顎62Aおよび62Bは、顎62A、62Bが互いに閉鎖されたときに互いに完全または部分的に噛み合う対応する表面形状を含む。例えば、
図6Bの切断図に示されるように、上顎62Aには、溝64Aおよび隆起部65Aのパターンが設けられている。下顎62Bには、一致する溝64Bおよび隆起部65Bが設けられている。上顎62Aの隆起部65Aは、下顎62Bの溝64Bと噛み合うように構成されている。下顎62Bの隆起部65Bは、上顎62Aの溝64Aと噛み合うように構成されている。溝64A、64Bおよび隆起部65A、65Bは、2つの顎62A、62Bが互いに閉鎖するときに、フィルムをぴんと引っ張るように構成されている。溝64A、64Bおよび隆起部65A、65Bは、プロセス中にフィルムに過度の応力が印加されないようにさらに構成されている。一実施形態では、溝および隆起部は円形である。一実施形態では、フィルムサンプルが対向する隆起部および溝の間に挟まれるために、ただしこの間で切断されないために十分な空間を提供するために、隆起部の幅は溝の幅よりもわずかに小さい。顎62Aおよび62Bは、穴66などの中央に位置付けられている孔を画定する。一実施形態では、中央穴66の直径は3インチ(7.6cm)である(ASTM試験規格によって指定されている)。2つの顎62Aおよび62Bは、顎62A、62Bを開放および閉鎖するように作動させることができる平行顎空気圧式把持器68(Schunkから入手した)によって作動する。一実施形態では、底部顎62Bは、フィルムクランプシステム60が開放している間にフィルムを適所に保持する4つの吸引カップ63(
図6Aに示される)を含む。
図6Aおよび6Bに示されているもの以外の他のクランプを使用して、槍試験中にフィルムサンプルを保持することができる。一実施形態では、10psi(0.68bar)~50psi(3.45bar)、例えば、15psi(1.03bar)の圧力が平行顎空気圧式把持器68によって印加され、2つの顎62Aおよび62Bを閉鎖して、それらの間でフィルムサンプルを保持する。ただし、印加された圧力がフィルムサンプルをせん断しない限り、他の圧力も可能である。
【0023】
クランプアセンブリ60の機能を試験して、(a)クランプが閉鎖したときにフィルムサンプルがぴんと引っ張られ、クランプに起因するフィルムサンプルの過度の応力/伸張がないこと、および(b)フィルムが試験プロセス全体でクランプに滑り込まないことを確認する。高速カメラシステムを使用して、これらの研究の質的データを収集する。
【0024】
フィルムをぴんと引っ張るクランプアセンブリ60の有効性を試験するために、様々なレベルのしわおよび折り目を有する複数のフィルムサンプルを、異なる試験のためにクランプに配置する。高速ビデオは、クランプアセンブリ60がフィルム上で閉鎖するときに、クランプアセンブリ60の上から捕捉される。
【0025】
図7Aおよび
図7Bは、本開示の一実施形態による、クランプアセンブリ60によってクランプされたフィルムサンプルのビデオの最初および最後のフレームを示す。
図7Aの最初のフレームは、フィルムのいくつかのしわを示している。しかし、クランプシステム60を閉鎖すると、
図7Bの最終フレームは、フィルムがぴんと引っ張られたことを明確に示している。フィルムサンプルがクランプアセンブリ60に配置される前のフィルムサンプル上に、同心円が示された。フレームはまた、クランプアセンブリ60が閉鎖したときに、円の形状が大きく変化していないことも示している。したがって、クランプアセンブリ60は、フィルムサンプルをぴんと引っ張っている間に、フィルムサンプルに悪影響を与えない。
【0026】
フィルムサンプルがクランプアセンブリ60によって固定された後、槍はフィルムサンプルを通って移動し、再び、試験の高速ビデオが捕捉される。
図8Aおよび
図8Bは、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムにちょうど突き当たったとき(
図8A)およびフィルムが最も伸張されたとき(穿刺直前)(
図8B)のフィルムサンプルのフレームを示す。
図8Aおよび
図8Bの2つのフレーム画像は、クランプ顎に最も近いフィルムサンプルの縁部が適所に留まることを示し、フィルムサンプルがクランプアセンブリ60内で滑らないことを示している。上記の試験は、比較的薄いフィルム(0.5milまたは12.7マイクロメートル)および比較的厚いフィルム(10milまたは254マイクロメートル)で実施され、どちらの場合も結論は同じであった。
【0027】
図9を参照すると、槍試験システム20はまた、槍プローブ機構90も含む。
図9は、本開示の一実施形態による、槍プローブ機構90の3次元斜視図を示す。槍プローブ機構90は、槍プローブ92と、槍プローブ92を移動させる推進システム94と、を含む。一実施形態では、推進システム94は、リニアモータ96(例えば、LinMot USA,IncのLinMotリニアモータ)と、リニアモータ96を制御するコントローラ(図示せず)と、を含む。リニアモータ96は、規定の運動プロファイルに正確に追従しながら、比較的高い加速および減速のために構成されている。一実施形態では、リニアモータは、槍プローブの目標速度を比較的低い速度(0.04m/s)から比較的高い速度(4m/s)に変更するか、またはこれらの速度を選択し、かつ許容運動範囲内で目標速度に到達しながら、穿刺抵抗および槍衝撃試験中に速度を調整する柔軟性を提供する。さらに、リニアモータは、槍プローブがリニアモータにリンクされているため、槍プローブをすばやく簡単に取り出すことができるという利点を提供する。コントローラは、推定されたモータパラメータに基づくフィードフォワード補償を有する従来の比例-積分-微分(PID)コントローラを使用することができる。命令は、コンピュータシステム24によってコントローラに送信される(
図1を参照)。コンピュータシステム24は、コントローラと通信しており、コンピュータシステム24は、コントローラにコマンド信号を送信して、リニアモータ96を制御するように構成されている。コンピュータシステム24は、コントローラにコマンド信号を送信して軌道を読み込み、読み込まれた軌道に従って槍プローブ92を移動させるように構成されている。同様に、フィードバックデータは、コンピュータシステム24によってPIDコントローラから受信される。槍プローブ92は、リニアモータ96の可動スライダ95に取り付けられる一方、固定子は、例えば、ポスト97によって作業面22またはフレームに固定される。槍プローブ92はリニアモータ96によって制御されるため、槍プローブ92の取り出しプロセスは従来技術のシステムよりも速くて安全であり、自動化された高スループットのフィルム試験が可能になる。しかしながら、リニアモータ96以外の推進システムを使用して、槍プローブ92を移動させることができる。例えば、油圧システムまたは空気圧システム(例えば、圧縮空気を使用)を使用して、槍プローブ92を移動させることもできる。リニアモータ96の代わりにモータを使用して、槍プローブ92を移動させることもできる。
【0028】
装置20の槍試験システムは、力センサ99をさらに含む。力センサ99は、槍プローブ92の移動中、槍プローブ92が受ける力を測定するように構成されている。一実施形態では、力センサ99は、槍試験中に力信号を測定するために、例えば、槍プローブ92とリニアモータ94のスライダ95との間の、槍プローブ92の底部に設置される圧電式(PZT)力センサである。圧電式センサは、急速に変化する力を正確に測定することができる。圧電式センサは、急速に変化する力プロファイルを伴う槍プローブ92からの力を測定するのに良く適している。本明細書では、槍試験中に力を測定するための圧電式センサが使用されているが、他の種類のセンサを使用して力を測定することもできる。
【0029】
槍衝撃試験は、ASTM D1709規格と相関している一方、穿刺抵抗試験は、ASTM F1306規格と相関している。槍試験システム20は、より良い速度調整およびより速いプローブ取り出しのために構成されている。槍プローブ92を交換することによって、槍試験システム20は、低速で穿刺抵抗試験を、より高速で槍衝撃試験を実施することができる。
【0030】
図10は、本開示の一実施形態による、槍プローブの3次元斜視図を示す。一実施形態では、槍プローブ92は、ASTM試験規格によって指定されるように構築されている。一実施形態では、槍プローブ92は、直径0.5インチ(1.27cm)の円筒形ロッド102である。一実施形態では、円筒形ロッド102は、0.2インチ(0.51cm)~1インチ(2.54cm)の直径を有する。槍プローブ92はまた、ASTM標準によって指定されているように、半球形端部104も有する。半球状の形状は、応力集中が最小化する。一実施形態によれば、半球形端部104は、ASTM試験規格によって指定されるように、0.25インチ(0.63cm)の半径を有することができる。ASTM規格では、プローブが鋼製であることが指定されているが、これによりプローブが重くなる。したがって、一実施形態では、槍プローブ92の重量を最小化するために、槍プローブ92は、中空に構成される。追加的または代替的に、槍プローブ92は、アルミニウムで作られている。槍プローブ92がASTM規格に準拠することを保証するために、先端104は、鋼から作られてもよい。一実施形態では、先端104は、例えば、接着剤を使用して、またはねじで円筒形ロッド102に締結される。プローブの全長は、約10インチ(25.4cm)である。一実施形態では、プローブの全長は、6インチ(15.2cm)~約16インチ(40.6cm)である。槍プローブ92の重量は、おおよそ90gである。一実施形態では、槍プローブ92の重量は、50g~200gである。
【0031】
高速槍衝撃試験を実施するために、ASTM規格では、槍プローブが試験されるフィルムサンプルとの衝突の瞬間に3.3m/sで、好ましくは実質的に一定に進行し、フィルムサンプルが穿刺されるまで、その速度の80%以上で進行し続けることが要求される。一実施形態では、槍プローブ92の速度は、フィルムサンプルとの衝突時に3.3m/sであり、フィルムサンプルが槍プローブ92によって穿刺されるまで、速度は3.3m/sの80%を超えたままである。妥当な進行距離でこの速度プロファイルを実現するには、軌道の慎重な計画が必要になる場合がある。軌道には、フィルムサンプルと接触する前の静止から3.3m/sへの加速、3.3m/sの一定速度、およびフィルムサンプルを穿刺した後の3.3m/sから静止への減速の、3つの段階がある。加速および減速に起因して、力センサ99は、加速および減速段階のG力を記録する。次の段落でさらに説明されるであろうように、加速および減速段階からのデータは破棄される。理想的には、これらの力は軌道の一定速度の部分には存在せず、プローブがフィルムサンプルに衝突することに起因する、力の測定値を損なうことはない。ただし、加速度プロファイルが強すぎる場合、PID位置制御システムは最初に目標位置に追いつくことができず、最終的に一定速度の領域で目標速度をオーバーシュートする。これにより、槍の運動に振動が発生し、これは、力センサ99に反映される。この望ましくない状況を回避するために、滑らかな軌道を確立して、加速度の突然の変化を最小化することができる。PIDコントローラのゲインを調整して、システムが過減衰または非振動になるようにすることができる。槍プローブ92の速度は、衝突時に3.3m/sに等しいものとして上述されているが、槍プローブ92の速度は、高速槍衝撃試験を実施するために、比較的低い0.04m/sから4m/sまでの穿刺抵抗試験を実施するように調整することができる。
【0032】
図11Aおよび11Bは、それぞれ、本開示の一実施形態による、槍がフィルムサンプルと接触する直前、および槍がフィルムサンプルと接触し、穿刺直前に最大までフィルムサンプルを伸張した後に、クランプによってクランプされたフィルムサンプルの図を示す。
【0033】
試験されるすべてのフィルムサンプルの試験条件を実質的に同じに保つために、試験サンプルに共通のフィルム形式が選択される。例えば、一実施形態では、6インチ×6インチ(15.2cm×15.2cm)のフィルム片が共通形式として選択される。例えば、このサイズは、槍試験用に3インチ(7.6cm)の直径のクランプ60でしっかりと保持されるのに十分な大きさである。さらに、この形式のフィルムを切断するために、従来のダイが利用可能である。ただし、理解できるように、他のサイズと形式も使用することができる。
【0034】
槍ステムの試験手順の例は、以下のステップを含む。
(a)
図14に示されるように、材料保持システム14を使用して、ロボットシステム12によってフィルムサンプルを拾い上げるステップ。
(b)
図15に示されるように、材料厚さ測定システム16を使用して、フィルムサンプルの厚さを測定するステップ。
(c)
図17Aおよび17Bに示されるように、槍試験システム20のクランプ60にフィルムサンプルを配置するステップ。
図17Aは、槍試験システム20から試験されたフィルムサンプルを拾い上げるロボットシステム12を示す。
図17Bは、槍試験システム20に新しい試験されていないフィルムサンプルを配置するロボットシステム12を示す。
(d)槍試験システム20内の槍プローブ92を移動させるステップ。
(e)コンピュータシステム24による槍試験のデータおよび結果を収集するステップ。
(f)
図18に示されるように、試験されたフィルムサンプルを廃棄するステップ。
任意に、試験手順はまた、
図16に示されるように、材料画像分析システム18を使用してフィルムサンプルの欠陥分析を実施することも含むことができる。
【0035】
サンプルは、6インチ(15.2cm)の正方形のフィルムを含み得る。
【0036】
ステップ(a)に関して、6インチ(15.2cm)の正方形のフィルムをサンプル容器に配置し、試験シーケンスを開始することができる。ロボットシステム12は、材料保持システム14を使用してフィルムサンプルを拾い上げる。一実施形態では、拾い上げ運動は、フィルムサンプルの落下を回避するために適切な速度で実施される。
【0037】
ステップ(b)に関して、ロボットシステム12は、フィルムを厚さ測定システム16に移動させる。一実施形態では、厚さ測定システム16によって2つの別個の測定が行われる。ゼロ測定値を取得するために、フィルムサンプルが存在しない状態で1回目の測定を実施し、フィルムサンプルが適所にある状態で2回目の測定を実施する。2回目および1回目の測定値の差は、フィルムサンプルの厚さを提供する。各測定値についてゼロ値を測定することによって、厚さ測定システム16は、センサ内のあらゆる長期ドリフト/蓄積を明らかにすることができる。ただし、ゼロ値に信頼性がある場合は、ゼロ値の測定を1回実施することもできる(つまり、ゼロ値は測定ごとに変化しない)。あるいは、ゼロ値は、複数の測定後に、または定期的に測定して、時間と共に発生する可能性のある任意のドリフトを考慮することができる。
【0038】
ステップ(c)に関して、フィルムサンプルが試験の準備ができたときに、槍試験システム20のクランプ60が開放し、ロボットシステム12に取り付けられた材料保持システム14は、最初にクランプ60にある任意の古いフィルムを取り除き(フィルムがクランプ内に存在する場合)、新しいフィルムサンプルをクランプ60に配置する。
図3および
図17Aおよび
図17Bに示されるように、これは、使用された/試験されたフィルム36を掴んでクランプ60から取り除くために、材料保持システム14上の真空吸引カップ34を制御することによって(
図17Aを参照)、かつ対の真空吸引カップ32を制御して新しいフィルムサンプル38を保持し、試験された/使用されたフィルム36を真空吸引カップ34で保持しながら、クランプ60の2つの顎62Aおよび62Bの間に新しいフィルムサンプル38を配置することによって(
図17Bを参照)達成される。対の真空吸引カップ34を使用することによって、以前に試験されたフィルムサンプル36を掴んで取り上げると同時に、試験のための新しいフィルムサンプル38を掴んで配置することができる。これにより、システム全体の効率が向上する。ロボットシステム12を移動させて試験されたフィルムを取り除き、次いで、試験のための新しいフィルムサンプルを配置する代わりに、ロボットシステム12を1回移動させて、試験されたフィルムサンプルを拾い上げると同時に、試験のための新しいフィルムサンプルを配置する。次いで、クランプ60上の吸引カップ63のセット(
図6Aを参照)を制御して、2つの顎62Aおよび62Bの間の適所にフィルムサンプル36を保持する。
図18に示されるように、ロボットシステム12と共に材料保持システム14を移動させ、それを廃棄のための区域に配置することによって、既に試験されたフィルムサンプルを取り除く。材料保持システム14を有するロボットシステム12がクランプ60の空間から引き出されると、クランプ60は閉鎖され、新たに配置されたフィルムサンプルは、クランプ60の顎62Aおよび62Bの間にぴんと張った状態で保持される。したがって、新しいフィルムサンプルを試験する準備ができている。
【0039】
ステップ(d)に関して、リニアモータ96(
図9を参照)は、一定の開始位置へのリニアモータ96(
図9を参照)のホーミングを含むシステムが開始されたときに初期化される。一実施形態では、リニアモータ96が初期化されると、リニアモータ96を再初期化することなく複数の試験を実行することができる。一実施形態では、槍試験システム20のリニアモータ96を定期的に、例えば、毎日再初期化して、リニアモータ96が確実に同じ開始位置に戻るようにすることができる。槍試験システム20の槍プローブ92は、次いで、コンピュータシステム24によって移動され、指定された軌道を読み込み、槍プローブ92を移動させるコマンドをリニアモータ96に送信するように、槍試験システム20のPIDコントローラに命令する。
【0040】
ステップ(e)に関して、コマンドはまた、コンピュータシステム24によって、コンピュータシステム24と通信し、槍試験中に力信号を測定してデータ収集を開始する力センサと通信するデータ取得システムにも送信される。このコマンドは、槍コマンドの移動と実質的に同時に送信することも、槍コマンドの移動と同時に送信することもできる。試験が完了した後、モータはその初期位置に戻る。
【0041】
ステップ(f)に関して、使用されたフィルムサンプルを、次いで、ロボットシステム12を使用して材料保持システム14によって持ち上げることができ、オペレータによって定期的に空にされるゴミ箱に配置することができる。これによりサイクルが完了し、システムはその初期状態に戻り、例えば、レセプタクルから、またはレセプタクルに到着したときに、次のフィルムサンプルを拾い上げる準備ができている。
【0042】
一実施形態によれば、ロボットシステム12は、フィルムサンプルを材料画像分析システム18に移動させる。上記の段落に記載されたように、フィルムの画像は、偏光で照射されている間に、偏光フィルタを通して捕捉される。画像をさらなる分析(後の自動画像分析または手動分析のいずれか)のために記憶して、フィルムサンプルが何らかの欠陥を有するかどうか、または試験結果に何らかの重大な影響を及ぼす欠陥があるかどうかを決定することができる。
【0043】
槍試験の制御および槍試験のデータおよび結果の収集に加えて、一実施形態では、コンピュータシステム24は、様々な試験を通じて進行するフィルムサンプルを追跡するようにさらに構成することができ、これにより厚さ測定、欠陥分析、および槍試験情報が各サンプルに相関されて、後での参照および分析のために記憶されるようにする。したがって、例えば、欠陥のあるサンプルからの試験データにフラグを付けて、それを信頼すべきかまたは破棄すべきかを評価することができる。
【0044】
通常、フィルムサンプルに対する衝突から穿刺までの時間は、数ミリ秒のオーダーである。さらに、取得した衝撃信号の高速フーリエ解析により、約20kHzの周波数情報内容が示された。したがって、サンプリング周波数(データ収集率)は20 kHzを超える速度で実施される場合がある。捕捉されたデータの周波数スペクトルは、関連するデータを低周波数で、任意のノイズを高周波数で示す。ノイズは、ローパスフィルタを使用して除去することができる。
【0045】
上記のように、センサはプローブが受ける力を測定するために使用される。一実施形態では、槍システムの力を測定するために単軸力センサが使用される。上で説明したように、一実施形態では、圧電式センサは、その高い帯域幅(36000Hz)、したがって力の高速変化を測定する能力に起因して選択される。一実施形態では、PCB Piezotronicsの単軸力センサ、モデルICP力センサ、208C02が選択される。この圧電式センサは、Z方向に100lb(444 Nの力に相当)の負荷容量を有する。このセンサは、動的な力の用途に構成されている。センサのあらゆる静的負荷は最終的にゼロに戻る。
【0046】
一実施形態では、衝撃時の槍の速度を確認するため、およびフィルムを穿刺するプロセスを通して、位置信号の数値導関数をとることによって、槍速度が計算される。このプロセスによって導入されるあらゆる数値ノイズを除去するために、力信号のフィルタリングに使用されるものと同様のローパスフィルタリング戦略が使用される。
【0047】
一実施形態では、槍試験システム20と通信するコンピュータシステム24は、槍試験システム20から力データを収集または取得するように構成されている。一実施形態では、槍試験システム20でのデータ収集は、槍が移動されたときに開始し、槍がそのストロークの最上部で停止したときに終了する。これにより、槍がフィルムサンプルと接触している間、遅延およびタイミングの考慮が収集されたデータに影響を与えないことが保証される。したがって、収集されたデータ内のデータの関連部分を分離するために、収集されたデータは切り捨てられることが好ましい。これは、槍がフィルムと接触する時間を示す衝撃センサからのデータを使用して実施される。測定された力がゼロになったとき、穿刺の完了が示される。ただし、力信号のフィルタリングに起因して、力がゼロにならない場合がある。したがって、一実施形態では、穿刺完了点は、フィルタリングされていない力信号を使用して識別される。
【0048】
図12Aは、一実施形態による、プローブの移動の開始からプローブの完全な停止までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。このプロットは、プローブの加速度に対応する1番目の広いピーク、プローブのフィルムサンプルとの接触に対応する鋭いピーク、およびプローブの減速に対応する2番目の広いピークを示している。
【0049】
図12Bは、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルとの衝突点からフィルムサンプルの穿刺の完了までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。
【表1】
【0050】
科学者は、槍システムによって収集された力データから計算されたいくつかの重要な指標を求める。これらの測定基準は、用途に基づいてフィルムを特徴付けることに役立つ。これらの計量法の例は、その単位、説明、およびそれらの計算方法の簡単な説明と共に、表2に要約されている。
【0051】
図13Aは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。
図13Aには、力のピークまたは最大力、および最大力までの力曲線下の区域に対応するピークエネルギーが示されている。エネルギーは、距離または変位に対する力の積分に対応する。一実施形態では、台形法を使用して、力のエネルギーまたは積分を計算する。ただし、理解できるように、他のコンピューティング方法を使用することもできる。
【0052】
図13Bは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。
図13Bには、力のピークまたは最大力、および総変位までの力曲線の下の区域に対応する総エネルギーが示されている。
【0053】
単一の種類のフィルムのすべての複製またはフィルムサンプルを試験した後、統計アルゴリズムを使用して、データ内のあらゆる外れ値を検出および除去する。あらゆる統計上の外れ値を除去する目的は、不適切な試験から生じる可能性のあるあらゆる誤った試験結果(例えば、試験中にフィルムが存在しない、フィルムが引き裂かれているなど)を除去することである。したがって、外れ値を除去するために使用される閾値は保守的である。
【0054】
一実施形態では、外れ値が識別されると、データセット内の残りの複製またはサンプルの平均および標準偏差を計算し、データベースにアップロードすることができる。外れ値データは、そのようにタグ付けすることができ、必要に応じてさらなるレビューのためにデータベースに記憶することができる。
【0055】
用語「コンピュータシステム」は、本明細書では、任意のデータ処理システムまたは処理ユニット(単数または複数)を包含するために使用される。コンピュータシステムは、1つ以上のプロセッサまたは処理ユニットを含み得る。コンピュータシステムまた、分散コンピューティングシステムでもあり得る。コンピュータシステムは、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PDAなどのハンドヘルドコンピューティング装置、タブレット、スマートフォンなどを含み得る。上の段落に記載された機能または動作を達成するために、コンピュータプログラム製品(単数または複数)がコンピュータシステム上で実行されてもよい。コンピュータプログラム製品は、上述の機能または動作を実施するようにコンピュータシステムをプログラムするために使用される命令が内部に記憶された、コンピュータ可読媒体または記憶媒体(単数または複数)を含む。好適な記憶媒体(単数または複数)の例としては、フロッピーディスク、光ディスク、DVD、CD ROM、光磁気ディスク、RAM、EPROM、EEPROM、磁気もしくは光学カード、ハードディスク、フラッシュカード(例えば、USBフラッシュカード)、PCMCIAメモリカード、スマートカード、または他の媒体を含む、任意の種類のディスクが挙げられる。あるいは、コンピュータプログラム製品の一部分または全体を、インターネット、ATMネットワーク、ワイドエリアネットワーク(WAN)またはローカルエリアネットワークなどのネットワークを介してリモートコンピュータまたはサーバからダウンロードすることができる。
【0056】
コンピュータ可読媒体のうちの1つ以上に記憶されたプログラムは、汎用または専用のコンピュータシステムまたはプロセッサを制御するためのソフトウェアを含み得る。また、このソフトウェアにより、コンピュータシステムまたはプロセッサは、グラフィカルユーザインターフェース、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの出力装置を介してユーザと対話することもできる。ソフトウェアは、装置ドライバ、オペレーティングシステム、およびユーザアプリケーションなども含み得るがこれらに限定されない。あるいは、コンピュータで具現化されるコンピュータプログラム製品(単数または複数)として(例えば、ソフトウェア製品として)、上述の方法を実装する代わりに、またはそれに加えて、上述の方法は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはグラフィック処理ユニット(単数または複数)(GPU)が本開示の方法(単数または複数)、機能、または動作を実装するように設計され得るハードウェアとして実装することができる。