(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】カプリル酸を含む非石鹸液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20230511BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230511BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230511BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230511BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q19/10
A61K8/46
A61K8/42
A61K8/41
(21)【出願番号】P 2020514985
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2018076145
(87)【国際公開番号】W WO2019081152
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アガークヘッド,アジート・マノハール
(72)【発明者】
【氏名】バパット,モヒーニ・アナンド
(72)【発明者】
【氏名】チャンダル,プレム
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ,プーナム・マノージ
(72)【発明者】
【氏名】シローチ,アナト
(72)【発明者】
【氏名】ウー,グオフイ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-500962(JP,A)
【文献】特開昭57-083597(JP,A)
【文献】特開2002-145719(JP,A)
【文献】特表2002-540898(JP,A)
【文献】特開2016-026197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5~25%のアニオン性界面活性剤;
b)0~5%の非イオン性界面活性剤;
c)任意の両性界面活性剤
を含み、アニオン性界面活性剤は界面活性剤の50%以上であり;
d)0.5~3%のカプリル酸
を含む、液体組成物であって、
pHは4.5~5.5であり、4.5~5.0のpKa、1.8超のlogPおよび0.5g/100ml超の水溶解度を有する有機酸がさらに存在し、
該有機酸が、安息香酸、アジピン酸、ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸及び3-フェニルプロピオン酸からなる群より選択される、前記液体組成物。
【請求項2】
アニオン性界面活性剤がアルキル硫酸塩、アミノ酸系界面活性剤またはこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤が0.5~4%のレベルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤が、存在する場合、ココモノアルカノールアミドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の任意の組成物。
【請求項5】
抗菌剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗菌剤がチモール、テルピネオール、銀、フェノキシエタノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機酸が3-フェニルプロパノイドである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤とは別の非イオン性分子がさらに存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記非イオン性分子が、カプリルグリコール、フェノキシエタノール、ソルビタンカプリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
全界面活性剤が組成物の5~8%で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から10に記載の組成物を調製する方法であって、
a)5~25重量%のアニオン性界面活性剤、0~5重量%の非イオン性界面活性剤、任意の両性界面活性剤および0.5~3%のカプリル酸を用意するステップと;
b)(a)の前記成分を合わせて、pH4.5~5.5を有する液体混合物を形成するステップと;
c)前記得られた混合物を容器に包装するステップと
を含む方法。
【請求項12】
グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対する抗菌活性を提供するための、5~25%のアニオン性界面活性剤、0~5重量%の非イオン性界面活性剤および任意の両性界面活性剤を含む組成物における0.5~3.0重量%のカプリル酸の使用であって、組成物のpHが4.5~5.5であり、4.5~5.0のpKa、1.8超のlogPおよび0.5g/100ml超の水溶解度を有する有機酸がさらに存在し、
該有機酸が、安息香酸、アジピン酸、ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸及び3-フェニルプロピオン酸からなる群より選択される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性が増強された非石鹸(時折シンデット(syndet)または合成洗剤と呼ばれる)系液体洗浄剤に関する。具体的には、カプリル酸(オクタン酸)を温和なpH(pH4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、特に4.5~4.9)の液体シンデット組成物に添加すると、このpH範囲で抗菌活性が驚くほど増強することが分かった。
【背景技術】
【0002】
液体を含むパーソナルクレンジング製品は、衛生で重要な役割を果たす。衛生は、典型的には、フェノール系抗微生物化合物(例えば、トリクロサン、トリクロカルバン、PCMX)、非フェノール系抗微生物化合物(例えば、四級アンモニウム塩)、および遊離金属イオン(例えば、Ag+、Zn2+、Cu2+)を含む化学物質などの抗菌剤の使用を通してもたらされる。
【0003】
しかしながら、温和なpH範囲(例えば、4.5~5.5、または4.5~5.1、特に4.5~5.0または4.5~4.9;pHが4.5未満の製品は一般に苛酷と考えられ、皮膚にいくらかの害を引き起こし得る)の組成物では、特に抗菌剤の使用を避けたい場合、増強された抗菌活性を提供することは困難である。例えば、抗菌剤の使用、その環境への潜在的な影響、およびその薬剤耐性の促進における潜在的な役割に関する懸念が存在している。抗菌剤は、製造プロセス中の追加の材料取扱いおよびコストは言うまでもなく、規制当局からの監視の増加に直面している。よって、伝統的な抗菌剤を使用せずに抗菌効果を提供することは大いに有益となるだろう。
【0004】
さらに、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して広範な効果を達成することは困難であり;迅速な効果(20秒以下、特に10秒以下での効果)を達成することは困難である。
【0005】
例えば、合成界面活性剤系液体洗浄剤(特に、50%以上のアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤に基づくもの)では、C8脂肪酸の添加により、4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、特に4.5~4.9のpH範囲で、高速で広範な抗菌効果を得ることができることが現在分かっている。上記のような伝統的な抗菌剤は、C8脂肪酸単独の効果をわずかに改善することができるが、伝統的な抗菌剤を含まない組成物でさえも有意な改善が見られる。
【0006】
カプリル酸(オクタン酸としても知られている)を一定の有機酸(例えば、フェニルプロピオン酸)と組み合わせると、カプリル酸単独の効果(伝統的な抗菌剤が存在しないと仮定しても)をさらに強化することができる。
【0007】
カプリル酸を、4.0超5.0未満のpKaを有する他の有機酸(例えば、安息香酸、ソルビン酸および本明細書で定義される他の有機酸)と組み合わせると、効果をさらに増強することができる。すぐ上で言及されたフェニルプロピオン酸は、有効性の点でカプリル酸で特によく機能する。これはpKaが4.5超であり;また、比較的高いLogP(通常はオクタノールおよび水を使用して測定される、水相と親油相の間の分配係数)と高い水へ溶解度の両方を有する。これらのパラメータは、有機酸の利用可能性がpH4.5~約4.9で比較的高く(そのpKaおよび水溶解度が高いため)、同時に細菌膜に分配するのに十分に疎水性であることを保証している。さらに、本明細書で定義される一定の非イオン性分子と組み合わせると、効果を増強することができる。
【0008】
Mitrinovaらの2013年の論文(“Efficient control of the Rheological and Surface Properties of Surfactant Solutions Containing C8 to C18 Fatty Acids as Co-surfactants”,published June 11,2013 in Langmuir)で、ラウロイルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)およびココアミドプロピルベタイン(CAPB)界面活性剤系を含み、C8~C18脂肪酸をさらに含む組成物が開示されている;この参考文献は、界面活性剤のレオロジーに対するこれらの脂肪酸の望ましい効果を記載している。このような系でのC8の使用および特に特定の温和なpH範囲の組成物での抗菌有効性に対するその効果をより具体的に認識するものはない。一定のpH範囲でのpHと抗菌効果の具体的な議論はない。
【0009】
Georgieva等による2016年の論文(“Synergistic Growth of Giant Wormlike Micelles in Ternary Mixed Surfactant Solutions:Effect of Octanoic Acid”,published 2016 in Langmuir)では、SLES/CAPB/カプリル酸系の最低pHが約5.1であることが言及されている。より低いpHおよび/または抗菌有効性は言及されていない。
【0010】
P&Gの欧州特許出願公開第044582号明細書は、1:3~3:1の比の遊離脂肪酸と脂肪アルキロールアミドの特定の組み合わせがアニオン性界面活性剤の泡立て増進剤(lather booster)として使用される組成物を開示している。ヤシ油脂肪酸が、0.2重量%のレベルで開示されているが(実施例1)、カプリル酸はヤシ油の約10%以下を構成することが知られている(例えば、http://www.thevirgincoconutoil.com/articleitem.php?articleid=163のバージンヤシ油の脂肪酸組成参照)。よって、ヤシ油ブレンドは0.2%以下のカプリルを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Mitrinova et al.“Efficient control of the Rheological and Surface Properties of Surfactant Solutions Containing C8 to C18 Fatty Acids as Co-surfactants”,published June 11,2013 in Langmuir
【文献】Georgieva et al.“Synergistic Growth of Giant Wormlike Micelles in Ternary Mixed Surfactant Solutions:Effect of Octanoic Acid”,published 2016 in Langmuir
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、非石鹸(すなわち、合成界面活性剤系)液体組成物に関する。特に、本発明は、温和なpH(例えば、pH4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、特に4.5~5.0または4.5~4.9)の液体におけるカプリル酸の使用に関する。好ましくは、カプリル酸は、他の抗菌(AB)剤の非存在下で、グラム陰性菌とグラム陽性菌の両方に対する抗微生物有効性を増強するために使用される。
【0014】
より具体的には、本発明は以下:
1)5~25重量%、好ましくは8~20%のアニオン性界面活性剤(例えば、アルキル硫酸塩、例えばラウリルエーテル硫酸ナトリウム、SLES;またはアミノ酸系界面活性剤、例えばグルタメートまたはグリシネート、ならびにタウレート);洗浄剤は、手洗い液またはフォーマーなどの除菌用途に使用することができる。
【0015】
低界面活性剤配合物は特によく機能し、好ましい界面活性剤レベルは5~8重量%、好ましくは6.0~7.5重量%である;カプリル酸の利用可能性は、ミセルへの分配が少ないため、低界面活性剤で最適ある。実施例7および8は、比較的低い界面活性剤を含有する高い発泡特性を有する洗浄剤組成物の例である。
【0016】
非石鹸洗浄剤は、液体ハンドソープ、発泡液体ハンドソープ、液体ボディウォッシュ、バスジェル、角質除去洗浄剤、シャンプー、清掃用ワイプ、または工業用石鹸などの用途に特に適している。配合物を、それを必要とする対象の皮膚および/または髪(毛皮)を洗浄または処置することにより、種々の微生物感染症を予防および処置するために石鹸組成物のベースとして使用することができる。
【0017】
2)任意の非イオン性界面活性剤(例えば、0~5重量%、好ましくは0.5~4重量%)、好ましくはアルキルアミドアルカノールアミン(例えば、ココモノエタノールアミドなどのアルカノールアミド);
3)任意の両性および/または双性イオン性界面活性剤(アミドベタインが好ましくは最小化される(例えば、2重量%以下、好ましくは1重量%、より好ましくは0.01~0.5%)、または好ましくは完全に存在しない);アミドベタインの存在は、配合物の抗微生物有効性の観点からカプリル酸の増強効果を抑制する(実施例の実施例4対実施例2参照)
4)0.5~3%、特に1.0~3%、特に1.1または1.2または1.3~3%のカプリル酸
を含み、
組成物のpHは4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、より好ましくは4.5~5.0または4.5~4.9である。
【0018】
予想外に、カプリル酸が、一定の最小レベルで使用すると、広範囲の抗菌活性(例えば、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対する)を増強することが分かった;少量の伝統的な抗菌活性物質は、活性物質としてC8の活性をわずかに増強することができるが、C8は抗菌活性物質の非存在下でさえも極めて有効である;このような抗菌活性物質は、配合物において任意であり、典型的には0~0.4%、好ましくは0~0.2%、より好ましくは0.1~0.2%のレベルで存在する。
【0019】
使用され得る抗菌活性物質の例としては、銀、フェノキシエタノールおよびこれらの混合物などの活性物質が挙げられる。他の活性物質には、チモール、テルピネオールおよび混合物が含まれ;後者は当然、単独で(もしくはチモールとテルピネオールの混合物として);または、銀、フェノキシエタノールもしくは他の既知の抗菌剤もしくはこのような既知の抗菌剤の混合物と組み合わせて使用され得る。
【0020】
ある形態では、カプリル酸を4.0~5.0のpKa、0超のlogPおよび0.014g/100ml超の水溶解度を有する一定の有機酸(例えば、安息香酸、ソルビン酸、デカン酸、アジピン酸、ヒドロキシ安息香酸など、および/またはこれらのいずれかの混合物)とさらに組み合わせると、カプリル酸の抗菌有効性がさらに増強される(実施例9~12参照)。
【0021】
別の形態では、カプリル酸を4.5~5.0のpKa、比較的高いlogP(1.8超のlogP)および比較的高い水溶解度(0.5g/100ml超の溶解度)を有する有機酸とさらに組み合わせると(このような有機酸の例はフェニルプロパノイド(例えば、フェニルプロポン酸(phenylproponoic acid)である)、抗菌効果がさらに強くなる(実施例13参照)。
【0022】
カプリル酸と一定の非イオン性分子(例えば、カプリルグリコール、フェノキシエタノール、ソルビタンカプリレートおよび混合物)の組み合わせの別の形態では、カプリル酸の活性がなおさらに増強される(実施例15および16参照)。
【0023】
本発明はさらに、組成物の説明で指定された量の成分を用意し、これらを合わせ、得られた混合物を容器に包装することによって、本発明の組成物を調製する方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対する抗菌活性を提供するための、5~25重量%のアニオン性界面活性剤、0~5重量%、好ましくは0.5~4重量%の非イオン性界面活性剤および任意の両性界面活性剤を含む組成物における0.5~30%のカプリル酸の使用であって、組成物のpHが4.5~5.5である使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例を除いて、または明示的に指示しない限り、反応の材料または条件の量、材料および/または使用の物理特性を示す本明細書の全ての数字は、「約」という単語により修飾されるものと理解すべきである。
【0026】
全体を通して使用されるように、範囲は、範囲内にある各々のおよび全ての値を記載するための略記として使用される。範囲内の任意の値を範囲の終点として選択することができる。および/またはの使用は、リストから任意の1つを個別に選択することができること、またはリストから任意の組み合わせを選択することができることを示す。
【0027】
疑義を避けるため、「含む(comprising)」という単語は、「含む(including)」を意味するが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「で構成される(composed of)」を意味するわけではないことを意図している。換言すれば、列挙したステップまたは選択肢が網羅的である必要はない。
【0028】
別段の指示がない限り、使用される成分の1または複数の量の全ての%は、合計100%である組成物の総重量中の材料の活性重量に基づく重量%であると理解されるべきである。
【0029】
本発明は、温和なpHを含む合成系液体(アニオン性界面活性剤は界面活性剤系の50%以上を構成する)に関する。カプリル酸の使用が、他の抗菌剤の非存在下でさえAB活性を増強することが予想外に分かった。
【0030】
具体的には、組成物は、
1)5~25重量%、好ましくは8~20重量%のアニオン性界面活性剤(界面活性剤系の50%以上である);一態様では、例えば、組成物は、手洗い液またはフォーマーなどの除菌用途に使用することができる。
【0031】
低界面活性剤配合物は特によく機能し、好ましい界面活性剤レベルは5~8重量%、好ましくは6.0~7.5重量%である;カプリル酸の利用可能性は、ミセルへの分配が少ないため、低界面活性剤で最適ある。
【0032】
2)任意の非イオン性界面活性剤(例えば、0~5重量%、好ましくは0.5~4重量%)、特にアルキルアミドアルカノールアミン;
3)任意の両性および/または双性イオン性界面活性剤(アミドベタインは好ましくは最小化される);
4)0.5~3重量%、特に1.0~3重量%、特に1.1または1.2または1.3~3重量%のカプリル酸;および
5)任意の抗菌活性物質
を含み;
pHは4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、好ましくは4.5~5.0または4.5~4.9である。
【0033】
アニオン性界面活性剤は、例えば、脂肪族スルホネート、例えば、一級アルカン(例えば、C8~C22)スルホネート、一級アルカン(例えば、C8~C22)ジスルホネート、C8~C22アルケンスルホネート、C8~C22ヒドロキシアルカンスルホネートもしくはアルキルグリセリルエーテルスルホネート(AGS);またはアルキルベンゼンスルホネートなどの芳香族スルホネートであり得る。
【0034】
アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩(例えば、C12~C18アルキル硫酸塩)またはアルキルエーテル硫酸塩(アルキルグリセリルエーテル硫酸塩を含む)であってもよい。アルキルエーテル硫酸塩の中には、式:
RO(CH2CH2O)nSO3M
(式中、Rは8~18個の炭素、好ましくは12~18個の炭素を有するアルキルまたはアルケニルであり、nは1.0超の、好ましくは2~3の平均値を有し;Mはナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムなどの可溶化カチオンである)
を有するものがある。ラウリルエーテル硫酸アンモニウムおよびナトリウムが好ましい。
【0035】
アルカリ金属ラウリルエーテル硫酸塩(ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなど)が特に好ましい。
【0036】
アニオン性界面活性剤はまた、アルキルスルホサクシネート(モノおよびジアルキル、例えば、C6~C22スルホサクシネートを含む);アルキルおよびアシルタウレート、アルキルおよびアシルサルコシネート、スルホアセテート、C8~C22アルキルホスフェートおよびホスフェート、アルキルホスフェートエステルおよびアルコキシアルキルホスフェートエステル、アシルラクテート、C8~C22モノアルキルスクシネートおよびマレエート、スルホアセテート、およびアシルイセチオネートであり得る。
【0037】
サルコシネートは一般に、式RCON(CH3)CH2CO2M(式中、RはC8~C20アルキルに及び、Mは可溶化カチオンである)によって示される。
【0038】
タウレートは一般に、式:
R2CONR3CH2CH2SO3M
(式中、R2はC8~C20アルキルに及び、R3はC2~C4アルキルに及び、Mは可溶化カチオンである)
によって特定される。
【0039】
別のクラスのアニオン性界面活性剤は、以下のようなカルボキシレートである:
【化1】
【0040】
(式中、RはC8~C20アルキルであり;nは0~20であり;Mは上に定義される通りである)。
【0041】
使用することができる別のカルボキシレートは、例えば、Seppic製のMonteine LCQ(登録商標)などのアミドアルキルポリペプチドカルボキシレートである。
【0042】
使用され得る別の界面活性剤は、C8~C18アシルイセチオネートである。これらのエステルは、アルカリ金属イセチオネートと6~18個の炭素原子および20未満のヨウ素価を有する混合脂肪族脂肪酸との間の反応によって調製される。混合脂肪酸の少なくとも75%が12~18個の炭素原子を有し、最大25%が6~10個の炭素原子を有する。
【0043】
アニオン性界面活性剤は、好ましくは、グルタメートまたはグリシネートなどのアミノ酸系アニオン性界面活性剤であり得る。
【0044】
使用され得る非イオン性界面活性剤には、疎水性基および反応性水素原子を有する化合物、例えば脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノールとアルキレンオキシド、特に単独またはプロピレンオキシドと合わせたエチレンオキシドの反応生成物が含まれる。特定の非イオン性洗剤化合物は、アルキル(C6~C22)フェノール-エチレンオキシド縮合物、脂肪族(C8~C18)一級もしくは二級直鎖または分岐アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、およびエチレンオキシドと、プロピレンオキシドとエチレンジアミンの反応生成物の縮合によって調製される生成物である。他のいわゆる非イオン性洗剤化合物には、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシドおよびジアルキルスルホキシドが含まれる。
【0045】
非イオン性界面活性剤は、多糖アミドなどの糖アミドであってもよい。
【0046】
特に好ましい非イオン性界面活性剤は、アルキルアミドアルカノールアミン(例えば、ココモノエタノールアミドまたはCMEA)である。好ましくは、CMEAがおよそ0.5~2重量%で使用される。
【0047】
双性イオン性界面活性剤(任意)は、脂肪族基が直鎖または分岐鎖であることができ、脂肪族置換基の1つが約8~18個の炭素原子を含み、1つがアニオン性基、例えばカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートを含む、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の誘導体として広く記載され得るものによって例示される。これらの化合物の一般式は:
【化2】
【0048】
(式中、R2は、約8~約18個の炭素原子、0~約10個のエチレンオキシド部分および0~約1個のグリセリル部分のアルキル、アルケニルまたはヒドロキシルアルキル基を含み;Yは、窒素、リンおよび硫黄原子からなる群から選択され;R3は、約1~約3個の炭素原子を含むアルキルまたはモノヒドロキシアルキル基であり;Xは、Yが硫黄原子である場合、1であり、Yが窒素またはリン原子である場合、2であり;R4は、約1~約4個の炭素原子のアルキレンまたはヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネートおよびホスフェート基からなる群から選択される基である)
である。
【0049】
本発明で使用され得る両性洗剤(任意)は、少なくとも1つの酸基を含む。これは、カルボン酸基またはスルホン酸基であり得る。これらは四級窒素を含むので、四級アミド酸である。これらは一般に、7~18個の炭素原子のアルキルまたはアルケニル基を含むべきである。これらは通常、全体構造式:
【化3】
【0050】
(式中、R
1は7~18個の炭素原子のアルキルまたはアルケニルであり;
R
2およびR
3はそれぞれ独立に、1~3個の炭素原子のアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
Nは2~4であり;
Mは0~1であり;
Xは、ヒドロキシルで置換されていてもよい1~3個の炭素原子のアルキレンであり、
Yは
【化4】
【0051】
【0052】
である)
に従う。
【0053】
【0054】
【0055】
(式中、mは2または3である)
のアミドベタインが含まれる。
【0056】
アミドベタインが最小化される、または完全に存在しないことが好ましい。
【0057】
示されるように、組成物は0.1~5%、好ましくは0.5~3%のカプリル酸(オクタン酸)を含むべきである。
【0058】
組成物のpHは4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1、より好ましくは4.5~5.0または4.5~4.9であるべきであり、4.5~4.9のpHレベルが特に好ましい。
【0059】
ある態様では、カプリル酸を4.0~5.0のpKa、0超のlogP、および0.014g/100ml超の水溶解度を有する一定の有機酸(例えば、安息香酸、ソルビン酸、デカン酸、アジピン酸、ヒドロキシ安息香酸など、および/またはこれらのいずれかの混合物)とさらに組み合わせると、カプリル酸の抗菌有効性が増強される。
【0060】
別の態様では、カプリル酸を4.5~5.0のpKa、比較的高いlogP(1.8超のlogP)および比較的高い水溶解度(0.5g/100ml超の溶解度)を有する有機酸、例えばフェニルプロパノイド(例えば、フェニルプロポン酸)とさらに組み合わせると、抗菌効果がさらに強くなる(実施例13参照)。
【0061】
カプリル酸と一定の非イオン性分子(例えば、カプリルグリコール、フェノキシエタノール、ソルビタンカプリレートおよび混合物)の組み合わせの別の態様では、カプリル酸の活性がなおさらに増強される(実施例15および16参照)。
【0062】
抗菌活性物質を、組成物にさらに添加してもよい。これらには、チモール、テルピネオール、銀、フェノキシエタノールおよびこれらの混合物が含まれ得る。言及されるように、C8はこのような抗菌剤の非存在下でさえ極めて有効である。
【0063】
本発明はさらに、組成物の説明で指定された量の成分を用意し、これらを合わせ、得られた混合物を容器に包装することによって、本発明の組成物を調製する方法を提供する。
【0064】
本発明はさらに、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対する抗菌活性を提供するための、5~25重量%のアニオン性界面活性剤、0~5重量%、好ましくは0.5~4重量%の非イオン性界面活性剤および任意の両性界面活性剤を含む組成物における0.5~30%のカプリル酸の使用であって、組成物のpHが4.5~5.5である使用に関する。
【0065】
[実施例]
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するために提供されるものであり、本発明は決してこれに限定されない。以下のプロトコトルを使用して、殺生物活性を評価した。
【0066】
インビトロタイム・キル(time-kill)プロトコル
石鹸溶液の調製
溶液の調製は、一部は、液体石鹸配合物の特定の形態に依存する。例えば、使用時に希釈しない配合物、例えば、自己発泡配合物はそのままで使用する。30重量%以下の洗浄界面活性剤を含有し、使用時に希釈することを意図した配合物は、水と混合して、62.5重量%の初期配合物を含有する石鹸溶液を形成する。30重量%超の洗浄界面活性剤を含有し、使用時に希釈することを意図した配合物は、水と混合して、16重量%の初期配合物を含有する石鹸溶液を形成する。
【0067】
細菌
大腸菌(E.coli)ATCC 10536および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538を、それぞれグラム陰性菌およびグラム陽性菌を表すためにこの試験で使用した。細菌を-80℃で保存した。新鮮な単離株を、各実験の前に37℃で24時間、Tryptic Soy Agarプレートで2回培養した。
【0068】
インビトロタイム・キル・アッセイ
タイム・キル・アッセイを、参照により本明細書に組み込まれる、欧州規格EN 1040:2005標題「化学消毒剤および防腐剤-化学消毒剤および防腐剤の基本的な殺菌活性を評価するための定量的懸濁試験-試験方法および要件(フェーズ1)」に従って実施した。この手順の後、1.5X108~5X108コロニー形成単位/ml(cfu/ml)の増殖期細菌培養物を、25℃で石鹸溶液(上記のように調製)で処理した。試験試料を形成する際、8重量部の上記のように調製した石鹸溶液を、1重量部の培養物および1重量部の水と合わせた。10、20、および30秒の曝露後、試料を中和して、石鹸溶液の抗菌活性を停止した。次いで、試験溶液を連続希釈し、固体培地に蒔き、24時間インキュベートし、生存細胞を数えた。殺菌活性を、0秒での細菌濃度に対するcfu/mlの対数減少として定義する。石鹸溶液に曝露していない培養物が、無処理対照として機能する。
【0069】
log
10減少を、以下の式を使用して計算した:
log
10減少=log
10(対照の数値)-log
10(試験試料生存菌)
[実施例]
以下の表1には、本発明の対照実施例および実施例1~4が見出される。
【表1】
【表2】
【0070】
表2のデータによって示されるように、示される接触時間で、1.0%、1.5%および2.0%のカプリル酸の添加(実施例1、2、3、4)は、対照と比較して抗微生物有効性を増強する。ココアミドプロピルベタインの添加は、対照に対して依然として有効であるが、同じ量のカプリル酸を使用した例に比べて増強効果を抑制する;見られるように、実施例4は、実施例2よりも抗微生物有効性が比較的低い。
【0071】
実施例1に対する実施例2、3および4はまた、1.0%超のカプリル酸(例えば、1.1または1.2または1.5~3%)の使用が特に有効であることを示している。
【表3】
【表4】
【0072】
表4のデータによって示されるように、示される接触時間で、pH4.9の実施例5は、pH5.4の実施例6よりも大腸菌(E.coli)ATCC 10536に対して高い殺菌有効性を有していた;これは、カプリル酸を含有する非石鹸配合物の抗微生物有効性に関して、4.5~5.1、または特に4.5~5.0、特に4.5~4.9の範囲のpHの特に強い効果を示している。
【0073】
実施例7および8は、カプリル酸を含む高い発泡特性を有する洗浄剤配合物に関する。これらの特定の例の約5%~8%の比較的低い界面活性剤レベルでは、カプリル酸は利用可能性増加により特によく機能する。
【表5】
【表6】
【0074】
表6のデータによって示されるように、示される接触時間で、実施例7および8は、対照(カプリル酸なし)よりも大腸菌(E.coli)ATCC 10536と黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC 6538の両方に対して高い殺菌有効性を有していた。
【表7】
【表8】
【表9】
【0075】
表9のデータによって示されるように、示される接触時間で、実施例9~13(pKaが4.0~5.0であり、0超のlogPおよび0.014g/100ml超の水溶解度の要件を満たすカプリル酸と有機酸の組み合わせ)は、実施例1(カプリル酸のみを含有)よりも高い大腸菌(E.coli)ATCC 10536に対する殺菌有効性を有していた。比較Cは、logPが低すぎる有機酸のマイナスの例である。
【表10】
【表11】
【0076】
表11のデータによって示されるように、示される接触時間で、実施例15および16(ソルビタンカプリレートまたはカプリリルグリコールなどの非イオン性界面活性剤と組み合わせたカプリル酸)は、対応する比較DおよびE(非イオン性界面活性剤を含まないカプリル酸のみ)よりも高い殺菌有効性を有していた。