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特許72774441,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースを含有する皮膚保湿用皮膚外用剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースを含有する皮膚保湿用皮膚外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/92
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020516600
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018008693
(87)【国際公開番号】W WO2019066237
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0123915
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】キム キュ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウイ ドン
(72)【発明者】
【氏名】シム ジン スプ
(72)【発明者】
【氏名】リ テ リョン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/123183(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0127137(KR,A)
【文献】特開平11-060442(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1709734(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61K 36/00-36/9068
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を有効成分として含有し、
前記1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースの含有量は、組成物の総重量に対して、0.1~0.2重量%であり、前記植物性硬化油の含有量は、組成物の総重量に対して、1.2~1.7重量%であることを特徴とするフィラグリン、インボルクリン及びロリクリンの遺伝子発現増加用の皮膚保湿用化粧料組成物。
[化学式1]
【化1】
【請求項2】
前記植物性硬化油は、パーム硬化油、菜種硬化油、キャノーラ硬化油、オリーブ硬化油、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコース(以下、「PGG」という)を含有する皮膚外用剤組成物に関し、より詳細には、PGGを含有することにより、角質形成細胞においてフィラグリンの生成を促進し、ロリクリン(loricrin)およびインボルクリン(involucrin)の発現を増加させて正常な角質層の形成を促進し、これにより、皮膚バリア機能を強化させることによって、優れた皮膚の保湿力改善効果を提供することができる皮膚外用剤組成物、その用途およびそれを用いた皮膚の保湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角質層の主要機能は、皮膚の水分の蒸発を防ぐか、外部からの有害物質の侵入を防いで皮膚を保護してくれる機能を担当する。特に、角質層には、乾燥重量対比30%の水が存在するが、このうち、20%は角質細胞(corneocyte)内に存在し、10%は細胞間脂質に存在する。角質細胞内の水は、フィラグリンが分解された天然保湿因子(Natural moisturizing Factors;NMFs)と結合して存在する。
【0003】
フィラグリンは、表皮の分化過程中、最終分化と関連して発現され、フィラグリンの外にインボルクリンとロリクリンも保湿と関連した重要なマーカーである。ロリクリンは、最終分化を経る間に発現されるタンパク質であって、角質形成細胞が分化して安定的な角質を形成するのに必要であり、角質質量の70~85%を占める物質であるが、これは、トランスグルタミナーゼが触媒するペプチド間の交差結合に参与できるグルタミンとリシンが豊かなドメインを有しており、角質形成タンパク質間の架橋結合を助けることにより、角質の形成に重要な役割を果たす。このようなロリクリンは、上部顆粒層において細胞膜と互いに結合してタンパク質として完成するので、角質形成細胞の最終分化過程を追跡する上で標識として使用される。
【0004】
フィラグリン、インボルクリン、ロリクリンのようなマーカーの増加は、正常な角質層の形成を通じて角質細胞内にNMFの前駆体であるフィラグリンと細胞間脂質が正常化したことを意味する。したがって、皮膚の老化を防止し、外部環境変化である大気乾燥、紫外線および各種の公害物質から皮膚の健康を維持できるように、皮膚組織の水分維持を促進しつつ、皮膚組織の水分の損失を防止する皮膚バリアを強化するように、角質層を形成させるために、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリンなどのようなマーカーの発現を促進する皮膚保湿用物質の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国登録特許第10-1709734号(公告日:2017年2月23日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、大豆、緑茶、高麗人参など様々な天然物などの指標物質として報告されている様々な物質を表皮細胞に処理し、フィラグリンの遺伝子発現を増加させる物質をスクリーニングした後、ロリクリン、インボルクリンなどの発現を介して保湿マーカーが増加するかを確認し、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースがフィラグリンの遺伝子発現だけでなく、ロリクリンおよびインボルクリンの発現を増加させる結果を示すことを確認した。また、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースを植物性硬化油と共に使用すると、これらの効能がはるかに向上することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を含有して、正常な角質層の形成を促進させることにより、皮膚の保湿力を向上させることができる、皮膚外用剤組成物、その用途およびそれを用いた皮膚の保湿方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を有効成分として含有する皮膚保湿用皮膚外用剤組成物、その用途およびそれを用いた皮膚の保湿方法を提供する。より具体的には、本発明は、皮膚の保湿用皮膚外用剤組成物の製造において、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油の混合物の用途を提供する。また、本発明は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物を用いた皮膚の保湿方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を含有して、正常な角質層の形成を促進させることによって、皮膚のバリア機能を強化し、最終的に優れた皮膚の保湿力の改善効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、PGGを濃度別に処理して細胞の生存力を確認した結果を示したものである。
図2図2は、PGG0.2ppmまたは1ppmを角質形成細胞に処理した後、mRNAを分離してPGGによるインボルクリン(IVL)およびロリクリン(LOR)の遺伝子発現量を測定した結果を示したものである。
図3図3は、PGG含有剤形の皮膚水分含有量の増加の程度を示したものである。
図4図4は、PGG含有剤形の皮膚のしっとり程度に対する官能評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚外用剤組成物は、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油を有効成分として含有する。
【0012】
1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコース(1,2,3,4,6-penta-O-galloyl-β-D-glucose;PGG)は、生物体に作用するタンニン(tannin)であって、多くの薬剤植物に存在し、抗炎症、抗酸化作用、抗癌作用、抗ウイルス作用のような様々な生物学的活性を有していることが知られており(参照:B.M. Choi,et al.,Neurosci.Lett,328:185-189,2002;L.L. Ho,et al.,Eur.J.Pharmacol.,453:149-158,2002;D.G. Kang,et al.,Eur.J.Pharmacol.,524:111-119,2005;S.J. Lee,et al.,Biol.Pharm.Bull.,29:2131-2134,2006)、シャクヤクの根、ウコンの葉をはじめとする地上部、マンシュウグルミ(Juglans mandshurica)など様々な植物に存在し、下記化学式1の構造を有する化合物である。
[化学式1]
【化1】
【0013】
本発明において使用されるPGGは、様々な植物から当業界に公知された方法で直接抽出して使用することもでき、商業的に市販されている商品を購入して使用することもできる。
【0014】
本発明において使用される植物性硬化油は、パーム硬化油、菜種硬化油、キャノーラ硬化油、オリーブ硬化油、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上である。
【0015】
本発明による皮膚外用剤組成物は、PGGを組成物の総重量に対して、0.01~1.0重量%、好ましくは0.05~0.2重量%の量で含有することができる。PGGの含有量が0.01重量%未満である場合、十分な皮膚保湿効果を得ることができず、1.0重量%を超える場合、安全性および剤形の安定性が低くなり得る。
【0016】
さらに、本発明による皮膚外用剤組成物は、植物性硬化油を組成物の総重量に対して、0.001~2.0重量%、好ましくは1.2~1.7重量%の量で含有することができる。上記の範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示すのに適切だけでなく、組成物の安定性および剤形の安全性の両方を満たすことができ、費用対比効果の側面からも、上記の範囲で含むことが適切であり得る。具体的に、PGGと植物性硬化油との混合物が0.011重量%未満である場合、十分な皮膚保湿効果を得ることができず、3.0重量%を超える場合、安全性と剤形の安定性が低くなり得る。
【0017】
本発明の組成物は、保湿用皮膚外用剤組成物として使用されることができ、これは、フィラグリンの遺伝子発現だけでなく、ロリクリンおよびインボルクリンの発現を向上させることにより、皮膚の角質形成細胞の分化を誘導し、正常な角質層の形成を促進して皮膚のバリア機能を強化させることができる。したがって、表皮分化の不完全さによって生じる皮膚乾燥症、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎または乾癬などを予防または改善する皮膚外用剤組成物として有用に使用され得る。
【0018】
本発明による組成物は、これに限定されるものではないが、化粧料組成物または医薬組成物として剤形化され得る。
【0019】
本発明による組成物は、化粧品学または皮膚科学的に許容可能な媒質または基剤を含有して剤形化され得る。これは、局所適用に適したすべての剤形であって、例えば、溶液、ゲル化、固体、練りこねた無水生成物、水相に油相を分散させて得られたエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)および非イオン型の小嚢分散剤の形で、またはクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーもしくはスティックコンシーラ-の形で提供され得る。また、フォーム(foam)の形で、または圧縮された推進剤をさらに含有したエアロゾール組成物の形としても使用され得る。これらの組成物は、当該分野における通常の方法によって製造され得る。
【0020】
さらに、本発明による組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型もしくは非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性もしくは親油性活性剤、脂質小嚢または化粧品に通常使用される任意の他の成分などの化粧品学もしくは皮膚科学分野において通常使用される補助剤を含有することができる。上記補助剤は、化粧品学または皮膚科学分野において一般に使用される量で取り込まれる。
【0021】
また、本発明の組成物は、皮膚保湿改善効果を増加させるために、皮膚への吸収促進物質を含有することができる。
【0022】
また、本発明は、皮膚保湿改善効果のための本発明による皮膚外用剤組成物の用途を提供することができる。具体的に、本発明は、皮膚保湿用皮膚外用剤組成物、好ましくは化粧料組成物の製造において、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油の混合物を有効保湿成分として使用することができる。
【0023】
また、本発明は、皮膚の保湿が必要な被検体に、本発明の1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコースおよび植物性硬化油の混合物を有効保湿成分として含有する皮膚外用剤組成物を局所的に適用し、皮膚の保湿力を維持または改善する方法を提供することができる。
【実施例
【0024】
以下、試験例および剤形例を挙げ、本発明の構成および効果をより具体的に説明する。しかしながら、これらの試験例および剤形例は、本発明に対する理解を助けるために例示の目的にのみ提供されたものだけであり、本発明のカテゴリおよび範囲が下記の例によって制限されるものではない。
【0025】
[参考例1]PGGの準備
下記において使用したPGGは、SIGMA-ALDRICHから入手した。
【0026】
[参考例2]植物性硬化油の準備
下記において植物性硬化油としては、AAK Sweden ABから入手したAkogel Plusを使用した。
【0027】
[試験例1]PGGの細胞毒性評価
新生児の角質形成細胞(keratinocyte)(Lonzaから入手)を、KGM培地を使用して60mm細胞培養ディッシュ(cell culture dish)に1.25×10細胞/ディッシュの密度で分注した後、37℃、5%COインキュベーターで80%程度のコンフルエンシーまで培養した。その後、PGGを0ppm、1ppm、2ppmおよび4ppmの濃度で細胞を処理して4日間培養した後、細胞の生存力を確認した。確認の結果は、図1に示した。
【0028】
図1を見ると、PGGの濃度差による細胞生存力に有意な差がなく、PGGは細胞毒性がない物質であることを確認できる。
【0029】
[試験例2]フィラグリン遺伝子発現量の測定(RNA分離およびRT-PCR)
新生児の角質形成細胞(keratinocyte)(Lonzaから入手)を、KGM培地を使用して60mm細胞培養ディッシュ(cell culture dish)に1.25×10細胞/ディッシュの密度で分注した後、37℃、5%COインキュベーターで80%程度のコンフルエンシーまで培養した。その後、大豆、緑茶、高麗人参、その他の天然物からPGGを含む8つの化合物を試験対象物質として選択し(表1)、これらの化合物をそれぞれ1ppmで細胞を処理して2日間培養した。培養後、培地を除去し、トリゾール(Trizol)〔インビトロジェン(Invitrogen)〕1mlを添加して、インビトロジェン社のRNA分離法によってmRNAを分離した。紫外線検出器〔ヒューレット・パッカード(HEWLETT PACKARD)〕を用いて、260nmでmRNAを定量した後、RT-PCR(Reverse transcription-polymerase chain reaction)を実施した。それぞれのサンプルに対する遺伝子分析のために、相補的な遺伝子であるRPL13Aを基準として補正し、それぞれのサンプルに対するフィラグリン発現量は、下記表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1に示した結果を見ると、他の化合物を処理したサンプルの場合には、フィラグリンの発現増加率が大きくなかったが、PGGを処理したサンプルの場合には、対照群対比2倍以上のフィラグリン発現増加率を示すことを確認できる。
【0032】
[試験例3]インボルクリン(IVL)、ロリクリン(LOR)の遺伝子増加実験(RNA分離およびRT-PCR)
新生児の角質形成細胞を、KGM培地を使用して60mm細胞培養ディッシュ(cell culture dish)に1.25×10細胞/ディッシュの密度で分注した後、37℃、5%COインキュベーターで80%程度のコンフルエンシーまで培養した。その後、PGGを0.2ppmまたは1ppmで上記角質形成細胞を処理して4日間培養した。培養後、培地を除去し、トリゾール(Trizol)(インビトロジェン)1mlを添加して、インビトロジェン社のRNA分離法によってmRNAを分離した。紫外線検出器(ヒューレット・パッカード)を用いて、260nmでmRNAを定量した後、LORとIVLのプライマー〔それぞれLOR-Hs01894962_s1、IVL-Hs00846307_s1;これらのいずれもライフテクノロジーズ(Life Technologies)から入手〕を使用して、RT-PCR(Reverse transcription-polymerase chain reaction)を実施した。それぞれのサンプルに対する遺伝子分析のために、相補的な遺伝子であるRPLP0を基準として補正し、結果は図2に示した。
【0033】
図2を見ると、PGGを0.2ppmの濃度で処理した場合には、ロリクリン遺伝子の発現量は、対照群と比較してほとんど差がないが、インボルクリン遺伝子は、対照群対比3倍以上の発現量の増加を示すことが分かる。
【0034】
また、PGGを1ppmの濃度で処理した場合には、対照群対比インボルクリン遺伝子は5倍、ロリクリン遺伝子は2倍以上増加したことを確認できる。
【0035】
[参考例3]実施例および比較例の製造
下記表2の組成に応じて、通常の方法で柔軟化粧水を製造した(単位:重量%)。
【0036】
【表2】
【0037】
[試験例4]皮膚水分量および皮膚のしっとり評価
上記参考例3の比較例1~5、参考実施例1および実施例~3の皮膚保湿力を調べるために、次のように評価した。
【0038】
30~40代の女性80人をそれぞれ10人ずつ8組に分け、それぞれ比較例1~5、参考実施例1または実施例~3の柔軟化粧水を朝晩、毎日2回ずつ8週間顔面に塗布するようにした。塗布開始前と、塗布後4週、8週経過した時点で恒温、恒湿条件(24℃、相対湿度40%)で、皮膚水分量測定器〔コルネオメーター(Corneometer) CM825は、C+K Electronic Co.、ドイツ〕を用いて皮膚の水分含有量を測定し、その結果を図3に示した。図3の結果値は、皮膚の水分含有量を意味する。
【0039】
図3を見ると、PGGと植物性硬化油の両方を含有していない比較例1および植物性硬化油のみを含有する比較例2の場合には、皮膚水分含有量がほとんど増加しなかったが、PGGを単独で含有する比較例3~5の場合には、比較例1に比べて4週と8週で皮膚水分含有量が濃度依存的に増加したことが分かる。
【0040】
また、PGGと植物性硬化油を共に含有した参考実施例1および実施例~3の場合、比較例3~5に比べて皮膚水分含有量がさらに増加したことを確認できる。
【0041】
また、官能評価のために、上記比較例1~5、参考実施例1または実施例~3の柔軟化粧水を使用したユーザーからの使用前と使用後(塗布後4週目)、皮膚のしっとり程度を1点から5点に点数化して示すようにして(1点:非常に悪い、5点:非常に良い)、その結果を図4に示した。
【0042】
図4を見ると、PGGと植物性硬化油の両方を含有していない比較例1および植物性硬化油のみを含有する比較例2の場合には、皮膚のしっとり程度がほとんど変化しなかったが、PGGを単独で含有する比較例3~5の場合には、比較例1に比べて塗布した後、4週目に皮膚のしっとりが増加し、また、PGGと植物性硬化油を共に含有した参考実施例1および実施例~3の場合、比較例3~5に比べて皮膚のしっとりがさらに増加したことを確認できる。
図1
図2
図3
図4