IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リプトン, スチュアート エー.の特許一覧

特許7277458神経学的疾患を治療するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】神経学的疾患を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/13 20060101AFI20230511BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K31/13
A61P25/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020529097
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 US2018044608
(87)【国際公開番号】W WO2019028025
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】62/539,549
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520038633
【氏名又は名称】リプトン, スチュアート エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リプトン, スチュアート エー.
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514620(JP,A)
【文献】特表2008-513491(JP,A)
【文献】特表2004-515477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359759(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0171291(US,A1)
【文献】国際公開第2015/004371(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/015047(WO,A1)
【文献】特表2003-523989(JP,A)
【文献】A retrospective study of memantine in children and adolescents with pervasive developmental disorders,Psychopharmacology,2007年,191,pp.141-147,doi: 10.1007/s00213-006-0518-9
【文献】Stuart Lipton,Application of FDA-Approved Memantine and Newer NitroMemantine Derivatives to treat neurological Manifestation in Rodent Models of Tuberous Sclerosis Complex,DEFENSE TECHNICAL INFOMATION CENTER,2015年06月18日,https://apps.dtic.mil/sti/pdfs/ADA621184.pdf,AWARD NUMBER:W81XWH-13-1-0053
【文献】Pharmacologically targeted NMDA receptor antagonism by NitroMemantine for cerebrovascular disease,Scientific Reports,2015年,5:14781,doi: 10.1038/srep14781
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Sciences,2016年,6(6),pp.392-398,doi: 10.20936/jpbms/160260
【文献】Nature Communications,2017年11月14日,8:1488,doi: 10.1038/s41467-017-01563-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00-25/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-メチルd-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(NMDAR)の阻害剤を含む、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療を、それを必要とする対象において行うための組成物であって、前記NMDARの阻害剤が、ニトロシナプシン
【化7】

(式中、各R は-CH CH であり、R は-ONO である)
またはその薬学的に許容可能な塩である、組成物
【請求項2】
前記自閉症スペクトラム障害(ASD)が、自閉症である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記自閉症スペクトラム障害(ASD)が、レット症候群である、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
前記対象が、小児である、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記対象が、MEF2Cハプロ不全であり、MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)を有する、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
前記治療対象が、MEF2C、SLC32A1、SLC17A6、SYP、およびGAD65から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルに基づいて選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項7】
前記発現レベルが、前記対象の細胞の前記発現レベルである、請求項に記載の組成物
【請求項8】
前記発現レベルが、前記対象の脳内の細胞の前記発現レベルである、請求項に記載の組成物
【請求項9】
前記発現レベルが、前記対象の循環細胞の前記発現レベルである、請求項に記載の組成物
【請求項10】
前記発現レベルが、mRNAの発現レベルである、請求項に記載の組成物
【請求項11】
前記発現レベルが、タンパク質の発現レベルである、請求項に記載の組成物
【請求項12】
前記対象が、MEF2Cハプロ不全を有する、請求項に記載の組成物
【請求項13】
前記遺伝子が、SLC32A1であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、請求項12に記載の組成物
【請求項14】
前記遺伝子が、SLC17A6であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に増加している、請求項12に記載の組成物
【請求項15】
前記遺伝子が、SYPであり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、請求項12に記載の組成物
【請求項16】
前記遺伝子が、GAD65であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、請求項12に記載の組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月1日に出願された、米国仮特許出願第62/539,549号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
脳においては、筋細胞エンハンサ因子2(MEF2)の転写は、神経細胞の分化、シナプス形成、および神経細胞の生存について重要な意味を持っている。ネスチン発現神経前駆細胞におけるMef2cの条件付きノックアウトは、ASDに関連する神経障害であるレット症候群を連想させる電気生理学的ネットワーク特性の不全および行動障害のあるマウスを生成することが示されている。染色体5q14.3q15の微小欠失の領域は、MEF2Cハプロ不全と特定された小児に神経学的欠損表現型を引き起こす。こうした患者は、ASD、知的障害および発達障害(IDD)、互恵的行動の不良、発話の欠如、定型的かつ反復的な行動、ならびにてんかんを含む兆候および症状を示す。MEF2Cハプロ不全によって引き起こされる障害は、集合的にMEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)と呼ばれている。さらに、複数のMEF2標的遺伝子が、祖先が共通するヒト血統における自閉症関連遺伝子として特定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの態様では、N-メチルd-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(NMDAR)の阻害剤による、若年発症神経学的疾患の治療を、それを必要とする対象において行う、方法を本明細書に開示する。いくつかの例では、NMDARの阻害剤は、ニトロシナプシンを含む。いくつかの例では、NMDARの阻害剤は、ニトロシナプシンである。いくつかの例では、NMDARの阻害剤は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
【化1】
式I
式中、
各Rは、-CHおよび-CHCHから独立して選択され、
は、水素および-ONOから選択される。
いくつかの例では、各Rは、-CHCHであり、Rは、-ONOである。いくつかの例では、NMDARの阻害剤は、式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
【化2】
式II
式中、
各Rは、水素、C-Cアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択され、
は、水素、C-Cアルキル、および-ONOから選択され、
およびRは各々、水素およびC-Cアルキルから独立して選択されるか、
または、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキルを形成する。
いくつかの例では、RおよびRは、各々水素である。いくつかの例では、Rは、水素および-ONOから選択される。いくつかの例では、Rは、-ONOである。いくつかの例では、各Rは、独立してC-Cアルキルである。いくつかの例では、各Rは、メチルおよびエチルから独立して選択される。いくつかの例では、各Rは、エチルである。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、知的障害および発達障害である。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、自閉症スペクトラム障害(ASD)である。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、てんかんを含む。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、結節性硬化症である。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、自閉症である。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、レット症候群である。いくつかの例では、対象は、小児である。いくつかの例では、対象は、MEF2Cハプロ不全であり、MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)を有する。いくつかの例では、MEF2C、SLC32A1、SLC17A6、SYP、およびGAD65から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルに基づいて、治療対象を選択すること。いくつかの例では、該発現レベルは、対象の細胞の該発現レベルである。いくつかの例では、該発現レベルは、対象の脳内の細胞の該発現レベルである。いくつかの例では、該発現レベルは、対象の循環細胞の該発現レベルである。いくつかの例では、該発現レベルは、mRNAの発現レベルである。いくつかの例では、該発現レベルは、タンパク質の発現レベルである。いくつかの例では、対象は、MEF2Cハプロ不全を有する。いくつかの例では、遺伝子は、SLC32A1であり、該発現レベルは、MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の該発現レベルと比較して、有意に低下している。いくつかの例では、遺伝子は、SLC17A6であり、該発現レベルは、MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の該発現レベルと比較して、有意に増加している。いくつかの例では、遺伝子は、SYPであり、該発現レベルは、MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の該発現レベルと比較して、有意に低下している。いくつかの例では、遺伝子は、GAD65であり、該発現レベルは、MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の該発現レベルと比較して、有意に低下している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】(図1)ニトロシナプシン(ニトロメマンチンYQW-036またはNMI-6979としても知られている)によって回復されたE/I不均衡およびMCHS様表現型につながるMef2cハプロ不全の要約図を示している。
図2】(図2)Mef2c-het脳においてMEF2Cタンパク質レベルが低下したことを示している。前脳組織溶解物の免疫ブロッティングは、WTと比較して、Mef2c-hetマウスにおいてMEF2Cの減少を示した。β-アクチンに対して正規化されたタンパク質レベル(制御%)。下に例示された代表的なブロット。値は、平均+標準誤差であり、n=5、スチューデントのt検定で**P<0.01。
図3A】(図3)Mef2c-hetマウスがMCHS様表現型を示したことを示している。(図3A)Mef2c-hetマウスが早期に死亡することを示している。WTマウスと比較したMef2c-hetの数は、E18でほぼ同等であったが、成人期(約3か月)までには、WTに対するMef2c-hetの数は、約45%になった(*カイ2乗によるP<0.05)。
図3B】(図3Bおよび図3C)訓練中(図3B)およびその後のプローブ試験(図3C)におけるMef2c-hetマウスのバーンズ迷路における空間学習および記憶の障害を示している。
図3C】(図3Bおよび図3C)訓練中(図3B)およびその後のプローブ試験(図3C)におけるMef2c-hetマウスのバーンズ迷路における空間学習および記憶の障害を示している。
図3D】(図3Dおよび図3E)穴ボード探査におけるMef2c-hetマウスの増加した手足の握り(図3D)および反復的な頭部突っ込み(図3E)を示している。データは、平均±標準誤差であり、図3B、C、およびEにおいては、遺伝子型あたりn=9~11匹のマウスであり、dにおいては、n=30匹(WT)および21匹(het)であり、n.s.は有意ではなく、スチューデントのt検定(図3C~E)またはANOVA(図3B)で*P<0.05、**P<0.01。
図3E】(図3Dおよび図3E)穴ボード探査におけるMef2c-hetマウスの増加した手足の握り(図3D)および反復的な頭部突っ込み(図3E)を示している。データは、平均±標準誤差であり、図3B、C、およびEにおいては、遺伝子型あたりn=9~11匹のマウスであり、dにおいては、n=30匹(WT)および21匹(het)であり、n.s.は有意ではなく、スチューデントのt検定(図3C~E)またはANOVA(図3B)で*P<0.05、**P<0.01。
図4A】(図4)マイクロアレイ分析によるMef2c-hetマウスにおける神経原性およびシナプス遺伝子の下方制御を示している。(図4A)火山プロットが、出生後日数(P)30のMef2c-hetおよびWT海馬(赤=上、青=下、緑線で示されるP<0.05)におけるRNA発現プロファイリングを示すことを示している。[注記:カラーを参照する図4および後続の図5~19において、カラー画像が我々の公報に表示されている:Tu S,Lipton SA,Nakanishi N,et al.NitroSynapsin therapy for the mouse MEF2C haploinsufficiency model of human autism.Nature Commun 8,1488(2017)]。
図4B】(図4B)NextBioおよびGene-Ontology(GOターム)フィルタリングを使用した、WTと比較して、Mef2c-hetにおける発現が有意に変化したすべての遺伝子の経路濃縮分析を示している。
図4C】(図4C)WT制御の割合としてのMef2c-hetマウスにおけるmRNAの発現レベル(18Sに関する)を示すqPCR実験のグラフを示している(制御%、グループあたりn=4匹)。データは、平均値±標準誤差であり、スチューデントのt検定で*P<0.05、**P<0.01。
図5A】(図5)Mef2c-hetマウスが異常な神経特性を示したことを示している。(図5A)WTおよびMef2c-hetマウスの歯状回(DG)におけるNeuN+細胞を示す免疫組織化学を示している。
図5B】(図5B)WTと比較して、Mef2c-hetマウスにおける海馬(hipp)および皮質(Ctx)のNeuN+細胞数の減少を示す定量化を提示している。海馬の測定値は、DGの分子層における顆粒細胞に関して得られたものであり、皮質の測定値は、前頭葉層IVおよびVに関して得られたものである。
図5C】(図5Cおよび図5D)Mef2c-hetマウスにおける星状細胞と一致するGFAP+細胞数の増加を示す。
図5D】(図5Cおよび図5D)Mef2c-hetマウスにおける星状細胞と一致するGFAP+細胞数の増加を示す。
図5E】(図5E)WTおよびMef2c-hetマウスの視覚皮質のV1(一次視覚皮質)、M2ML(二次視覚皮質の中外側領域)、およびLPtA(側方頭頂連合皮質)におけるゴルジ染色によって視覚化された代表的な樹状突起のNeurolucida図面を示している。
図5F】(図5Fおよび図5G)Mef2c-het神経細胞における樹状突起交差(図5F)および樹状突起長(図5G)の累積数の減少を示すSholl分析の要約グラフを示している。スケールバー:50μm。データは、平均値±標準誤差であり、グループあたりn=4匹。図5A~Dにおけるスチューデントのt検定ならびに図5Fおよび図5GにおけるANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図5G】(図5Fおよび図5G)Mef2c-het神経細胞における樹状突起交差(図5F)および樹状突起長(図5G)の累積数の減少を示すSholl分析の要約グラフを示している。スケールバー:50μm。データは、平均値±標準誤差であり、グループあたりn=4匹。図5A~Dにおけるスチューデントのt検定ならびに図5Fおよび図5GにおけるANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図6A】(図6)Mef2c-hetマウスが異常な成体神経新生を示したことを示している。(図6A)8週齢のWTおよびMef2c-hetマウスのDGの顆粒下領域(SGZ)におけるPCNA(緑)およびDCX(赤)の二重染色を示す共焦点画像。
図6B】(図6Bおよび図6C)PCNA+およびDCX+細胞の定量化が、Mef2c-het DGにおける増殖細胞(図6B)および発達中の神経細胞(図6C)の数の減少を明らかにしたことを示している。
図6C】(図6Bおよび図6C)PCNA+およびDCX+細胞の定量化が、Mef2c-het DGにおける増殖細胞(図6B)および発達中の神経細胞(図6C)の数の減少を明らかにしたことを示している。
図6D】(図6D)8週齢のWTおよびMef2c-hetマウスにBrdUを注射してから4週間後に、BrdU(緑)およびNeuN(赤)の二重染色が、新生DG神経細胞を明らかにしたことを示している(矢印:BrdU+/NeuN+)。
図6E】(図6E)Mef2c-het DGにおけるBrdU+/NeuN+細胞の減少を示し、n=パネルA~Eにおける遺伝子型あたり4匹のマウス。
図6F】(図6F)成体Mef2c-hetおよびWTマウスで生まれた神経細胞の形態学的発達の例を示している。歯状回(DG)の分裂細胞は、レトロウイルスを介した遺伝子導入を介してmCherryで標識された。4週間後にマウスを屠殺した。
図6G】(図6G)4週齢の神経細胞の総樹状突起長の定量化が、WTマウス(n=12)と比較して、Mef2c-hetマウス(n=17)における樹状突起長の減少を明らかにしたことを示している。
図6H】(図6H)定量化が、WTマウス(n=28)と比較して、Mef2c-hetマウス(n=71)における体細胞サイズの減少を示したことを示している。
図6I】(図6I)神経突起数の定量化が、WT脳と比較して、Mef2c-hetにおける4週齢の神経細胞の一次(nWT=25、nHet=55)、二次(nWT=25、nHet=55)、三次(nWT=25、nHet=55)、四次(nWT=12、nHet=17)、および五次(nWT=12、nHet=17)神経突起の正常な数を示したことを示している。切片厚:40μm。スケールバー:50μm。値は、平均±標準誤差であり、スチューデントのt検定で*P<0.05、***P<0.001。
図7A】(図7)Mef2c-hetマウスが、シナプス特性の変化およびシナプス神経伝達における興奮性/抑制性(E/I)不均衡を示したことを示している。(図7A)WTおよびMef2c-het海馬におけるシナプトフィジン(SYP)、VGLUT1、およびVGATの免疫組織化学を示している。スケールバー:500μm(上部パネル)、50μm(中央および下部パネル)。
図7B】(図7B)皮質(Ctx)または線条体(str、左)ではなく、Mef2c-het海馬の歯状回(DG)およびCA1領域におけるSYPの免疫反応性の低下を示している。分子層においてDG測定、錐体細胞層においてCA1測定、前頭皮質層IVおよびVIにおいてCtx測定、ならびに側坐核レベルの被殻においてstr測定を実行した。Mef2c-het海馬におけるVGLUT1ではなくVGATの発現の減少(右)。データは、平均±標準誤差であり、グループあたりn=4匹、スチューデントのt検定で*P<0.05、**P<0.01。
図7C】(図7Cおよび7D)WTおよびMef2c-hetマウスのDG神経細胞のスライス記録からのmIPSC(図7C)および小型興奮性シナプス後電流(mEPSC)(図7D)の代表的なトレースを示している。
図7D】(図7Cおよび7D)WTおよびMef2c-hetマウスのDG神経細胞のスライス記録からのmIPSC(図7C)および小型興奮性シナプス後電流(mEPSC)(図7D)の代表的なトレースを示している。
図7E】(図7E~H)小型抑制性シナプス後電流(mIPSC)およびmEPSC振幅およびイベント間間隔の累積プロットを示している。n=遺伝子型あたり7~9匹、2試料コルモゴロフ-スミルノフ検定で**P<0.01。
図7F】(図7E~H)小型抑制性シナプス後電流(mIPSC)およびmEPSC振幅およびイベント間間隔の累積プロットを示している。n=遺伝子型あたり7~9匹、2試料コルモゴロフ-スミルノフ検定で**P<0.01。
図7G】(図7E~H)小型抑制性シナプス後電流(mIPSC)およびmEPSC振幅およびイベント間間隔の累積プロットを示している。n=遺伝子型あたり7~9匹、2試料コルモゴロフ-スミルノフ検定で**P<0.01。
図7H】(図7E~H)小型抑制性シナプス後電流(mIPSC)およびmEPSC振幅およびイベント間間隔の累積プロットを示している。n=遺伝子型あたり7~9匹、2試料コルモゴロフ-スミルノフ検定で**P<0.01。
図8A】(図8)Mef2c-hetマウスが、海馬において変化したレベルのシナプスタンパク質を発現したことを示している。(図8A)シナプトソームが豊富な海馬溶解物の免疫ブロットが、Mef2c-hetマウスにおいてVGLUT1ではなくシナプトフィジン(SYP)およびGAD65の減少を示したことを示している。α-チューブリンに対して正規化されたタンパク質レベル(制御%)。下に例示された代表的なブロット。
図8B】(図8B)VGLUT1とGAD65との比を示している。
図8C】(図8C)シナプトソームが豊富な海馬溶解物の免疫ブロットが、Mef2c-hetマウスにおけるα-チューブリンに対して正規化されたVGLUT2の増加を示したことを示している。下の代表的なブロット。データは、平均値+標準誤差であり、n=遺伝子型あたり4匹、*P<0.05、**P<0.01。統計的有意性を、スチューデントのt検定によって判定した。
図9A】(図9)Mef2c-hetマウスが、脳スライス記録において海馬長期増強(LTP)およびペアパルス促進(PPF)の障害を示したことを示している。(図9Aおよび9B)Mef2c-hetマウスが、LTPの障害(図9A)およびPPFの減少(図9B)を示したことを示している。グラフの下に代表的なトレースを示す。データは、平均値±標準誤差であり、n=遺伝子型あたり5~9匹。統計的有意性を、ANOVA(図9A、*P<0.01)または符号検定(図9B、*P<0.05)によって判定した。
図9B】(図9)Mef2c-hetマウスが、脳スライス記録において海馬長期増強(LTP)およびペアパルス促進(PPF)の障害を示したことを示している。(図9Aおよび9B)Mef2c-hetマウスが、LTPの障害(図9A)およびPPFの減少(図9B)を示したことを示している。グラフの下に代表的なトレースを示す。データは、平均値±標準誤差であり、n=遺伝子型あたり5~9匹。統計的有意性を、ANOVA(図9A、*P<0.01)または符号検定(図9B、*P<0.05)によって判定した。
図10A】(図10)ニトロシナプシンが、Mef2c-hetマウスにおいてMCHS様表現型を回復させたことを示している。(図10A)モリス水迷路における訓練セッション中に隠されたプラットフォームを見つける待ち時間を示している。
図10B】(図10B)プローブ試験の結果を示しており、ビヒクルで治療したMef2c-hetマウス(Het/V)は、標的と反対の象限との間に選好を示さず、これは、記憶障害を示唆している。ニトロシナプシン(N)による治療は、この効果を回復させた(Het/N)。下に示す代表的な水泳パターン。
図10C】(図10Cおよび図10D)オープンフィールド試験を示しており、Het/Vマウスは、Nでの治療により回復された中心時間の増加を示した(図10C)。対照的に、Het/Vマウスは、正常な総活動を示した(図10D)。
図10D】(図10Cおよび図10D)オープンフィールド試験を示しており、Het/Vマウスは、Nでの治療により回復された中心時間の増加を示した(図10C)。対照的に、Het/Vマウスは、正常な総活動を示した(図10D)。
図10E】(図10E)Het/Vマウスが、穴あたりの頭部突っ込みの増加を示したことを示しており、これは、反復的な行動を示唆している。回復された各薬物。
図10F】(図10F~I)N治療が、Mef2c-hetマウスの異常な社会的能力を回復させたことを示している。(図10E)3部屋社会的能力試験におけるマウスの動きの代表的なトレースを示している。
図10G】(図10G~I)Mef2c-hetマウス(Het/V)が、各部屋で過ごした時間(図10G)、ならびにE(空)またはS1(見知らぬマウス1)部屋への訪問数(図10H)および訪問期間(図10I)によって測定される社会的相互作用の異常を示すことを示している。N治療は、この障害(Het/N)を改善した。M:中間の部屋。データは、平均±標準誤差であり、グループあたりn=7~9匹。ANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図10H】(図10G~I)Mef2c-hetマウス(Het/V)が、各部屋で過ごした時間(図10G)、ならびにE(空)またはS1(見知らぬマウス1)部屋への訪問数(図10H)および訪問期間(図10I)によって測定される社会的相互作用の異常を示すことを示している。N治療は、この障害(Het/N)を改善した。M:中間の部屋。データは、平均±標準誤差であり、グループあたりn=7~9匹。ANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図10I】(図10G~I)Mef2c-hetマウス(Het/V)が、各部屋で過ごした時間(図10G)、ならびにE(空)またはS1(見知らぬマウス1)部屋への訪問数(図10H)および訪問期間(図10I)によって測定される社会的相互作用の異常を示すことを示している。N治療は、この障害(Het/N)を改善した。M:中間の部屋。データは、平均±標準誤差であり、グループあたりn=7~9匹。ANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図11】(図11)Mef2cヘテロ接合性またはニトロシナプシン治療のいずれも、モリス水迷路におけるマウスの水泳速度を変化させなかったことを示している。モリス水迷路の訓練段階中にマウスが隠れたプラットフォームに逃げる速度を、距離を待ち時間で割ったものとして計算した。プラットフォームへの待ち時間(図10を参照されたい)とは異なり、マウスの3つのグループ(WT/V、Het/V、およびHet/N)の速度に、有意な差はなかった。データは、平均±標準誤差であり、グループあたりn=7~9匹。
図12A】(図12)Mef2c-hetマウスの神経学的欠損の救済において、ニトロシナプシンがメマンチンよりも効果的であることを示している。(図12A)3部屋社会的相互作用試験において、ニトロシナプシン(N)で治療されたMef2c-hetマウスによる社会的訪問数が、メマンチン(M)で治療されたマウスの社会的訪問数よりも有意に多かったことを示す要約グラフを示している。社会的訪問は、見知らぬマウスによる部屋への訪問数(S1)から空の部屋への訪問数(E)を引いたものである。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=7~9匹、*スチューデントのt検定でP<0.05。
図12B】(図12B)メトロニン(M)ではなくニトロシナプシン(N)で治療されたMef2c-hetマウスにおける海馬NeuN+細胞の数が、ビヒクル(V)で治療されたマウスよりも有意に多かったことを示す要約グラフを提示している。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4~5匹、**ANOVAでP<0.01。
図13A】(図13)ニトロシナプシン(N)治療が3部屋アッセイにおいてWTマウスの社会的行動を変化させなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTマウスによる3つの部屋における時間(図13A)、訪問数(図13B)、および訪問期間(図13C)を示す要約グラフ。ニトロシナプシン治療は、WTマウスの社会的行動を有意に変化させなかった。データは、平均+標準誤差であり、WT/VおよびWT/Nグループについてn=各々10匹。E:空の部屋、S1:見知らぬマウス1部屋。*ANOVAまたはt検定によるEと比較して、P<0.05および**P<0.01。
図13B】(図13)ニトロシナプシン(N)治療が3部屋アッセイにおいてWTマウスの社会的行動を変化させなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTマウスによる3つの部屋における時間(図13A)、訪問数(図13B)、および訪問期間(図13C)を示す要約グラフ。ニトロシナプシン治療は、WTマウスの社会的行動を有意に変化させなかった。データは、平均+標準誤差であり、WT/VおよびWT/Nグループについてn=各々10匹。E:空の部屋、S1:見知らぬマウス1部屋。*ANOVAまたはt検定によるEと比較して、P<0.05および**P<0.01。
図13C】(図13)ニトロシナプシン(N)治療が3部屋アッセイにおいてWTマウスの社会的行動を変化させなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTマウスによる3つの部屋における時間(図13A)、訪問数(図13B)、および訪問期間(図13C)を示す要約グラフ。ニトロシナプシン治療は、WTマウスの社会的行動を有意に変化させなかった。データは、平均+標準誤差であり、WT/VおよびWT/Nグループについてn=各々10匹。E:空の部屋、S1:見知らぬマウス1部屋。*ANOVAまたはt検定によるEと比較して、P<0.05および**P<0.01。
図14A】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図14B】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図14C】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図14D】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図14E】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図14F】(図14)Mef2c-hetマウスが、ニトロシナプシンによって回復されなかった手足の握りを除いて、異常な運動行動を示さなかったことを示している。ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)による3か月の治療後のWTおよびMef2c-hetマウスの運動行動を示す要約グラフ。Mef2c-hetマウスは、平均台(図14A)、円柱状ロッド(図14B)、牽引力(図14C)、懸垂試験(図14D)、または垂直ポール試験(図14E)に対する有意に変化した行動を示さなかった。これらの実験では、ニトロシナプシンによる治療は、WTまたはMef2c-hetマウスの行動に有意な影響を与えなかった。Mef2c-hetマウスにおいて観察された異常な手足の握り行動は、ニトロシナプシン治療によって回復されなかった(図14F)。データは、平均+標準誤差であり、それぞれ、WT/V、WT/N、Het/V、およびHet/Nのグループについてn=12、5、11、および13匹。*WT/Vと比較して、ANOVAでP<0.05。
図15A】(図15)Mef2c-hetマウスにおいて、ニトロシナプシンが異常な神経細胞およびシナプス特性を回復させたことを示している。(図15A)ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)で治療したWTおよびMef2c-hetマウスの海馬歯状回(DG)の分子層(ML)における、NeuN、VGLUT1、VGAT、およびVGLUT2の免疫組織化学画像を示している。スケールバー:500μm(上部パネル)、25μm(中央パネル)、40μm(下部パネル)。
図15B】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15C】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15D】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15E】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15F】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15G】(図15B~F)Mef2c-hetマウスの海馬における、総NeuN+細胞数の減少(図15B)、VGAT(図15D)およびVGLUT2(図15F)の免疫反応性の低下、ならびにVGLUT1/VGAT(e)またはVGLUT2/VGATの比の増加(図15G)についてのニトロシナプシンによる回復を示す要約グラフを提示している。
図15H】(図15H)Mef2c-hetマウスのLTPの障害もニトロシナプシンによって回復されたことを示している。データは、平均±標準誤差であり、図15A~Gでは、グループあたりn=4~5匹、図15Hでは、7~9匹である。ANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図16A】(図16)Mef2c-hetマウスが、海馬におけるカスパーゼ3活性化およびアポトーシスの増加を示したことを示している。(図16A)ビヒクル(WT/V)またはニトロシナプシン(WT/N)で治療したWTマウスの海馬CA3領域における、かつビヒクル(Het/V)またはニトロシナプシン(Het/N)で治療したMef2c-hetマウスにおける、カスパーゼ3の活性化(Act Casp 3、上部パネル)およびTUNEL染色(下部パネル)の免疫組織化学を示している。スケールバー、25μm。
図16B】(図16Bおよび図16C)カスパーゼ3+(図16B)およびTUNEL+神経細胞(図16C)が、対照WT/Vマウスと比較して、Het/Vマウスにおいて有意に増加したことを示すヒストグラムを提示している。さらに、これらの表現型のうちの両方が、Het/Nマウスにおいて改善された。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4~5匹、ANOVAで*P<0.05。
図16C】(図16Bおよび図16C)カスパーゼ3+(図16B)およびTUNEL+神経細胞(図16C)が、対照WT/Vマウスと比較して、Het/Vマウスにおいて有意に増加したことを示すヒストグラムを提示している。さらに、これらの表現型のうちの両方が、Het/Nマウスにおいて改善された。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4~5匹、ANOVAで*P<0.05。
図17A】(図17)ニトロシナプシンが、Mef2c-het海馬の星状細胞の数を正常化したことを示している。(図17A~C)Mef2c-hetマウス対WT(図17B図17A)における星状細胞の形態を有するGFAP+細胞の増加を示す代表的な画像を提示している。GFAP+細胞の数は、ニトロシナプシンによる長時間治療によってWTレベルに回復された(図17C)。ML、歯状回の分子層(DG)。スケールバー、25μm。(図17D)ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)で治療したWTおよびMef2c-hetマウスの海馬におけるGFAP+細胞の定量化。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4または5匹、**WT/Vと比較して、P<0.01、Het/Vと比較して、P<0.05。
図17B】(図17)ニトロシナプシンが、Mef2c-het海馬の星状細胞の数を正常化したことを示している。(図17A~C)Mef2c-hetマウス対WT(図17B図17A)における星状細胞の形態を有するGFAP+細胞の増加を示す代表的な画像を提示している。GFAP+細胞の数は、ニトロシナプシンによる長時間治療によってWTレベルに回復された(図17C)。ML、歯状回の分子層(DG)。スケールバー、25μm。(図17D)ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)で治療したWTおよびMef2c-hetマウスの海馬におけるGFAP+細胞の定量化。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4または5匹、**WT/Vと比較して、P<0.01、Het/Vと比較して、P<0.05。
図17C】(図17)ニトロシナプシンが、Mef2c-het海馬の星状細胞の数を正常化したことを示している。(図17A~C)Mef2c-hetマウス対WT(図17B図17A)における星状細胞の形態を有するGFAP+細胞の増加を示す代表的な画像を提示している。GFAP+細胞の数は、ニトロシナプシンによる長時間治療によってWTレベルに回復された(図17C)。ML、歯状回の分子層(DG)。スケールバー、25μm。(図17D)ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)で治療したWTおよびMef2c-hetマウスの海馬におけるGFAP+細胞の定量化。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4または5匹、**WT/Vと比較して、P<0.01、Het/Vと比較して、P<0.05。
図17D】(図17)ニトロシナプシンが、Mef2c-het海馬の星状細胞の数を正常化したことを示している。(図17A~C)Mef2c-hetマウス対WT(図17B図17A)における星状細胞の形態を有するGFAP+細胞の増加を示す代表的な画像を提示している。GFAP+細胞の数は、ニトロシナプシンによる長時間治療によってWTレベルに回復された(図17C)。ML、歯状回の分子層(DG)。スケールバー、25μm。(図17D)ビヒクル(V)またはニトロシナプシン(N)で治療したWTおよびMef2c-hetマウスの海馬におけるGFAP+細胞の定量化。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4または5匹、**WT/Vと比較して、P<0.01、Het/Vと比較して、P<0.05。
図18A】(図18)Mef2c-hetマウスが、パルブアルブミン+(PV+)抑制性シナプスおよび細胞の減少を示したことを示している。(図18A)ビヒクルで治療したWTマウス(WT/V)の海馬およびビヒクル(Het/V)またはニトロシナプシン(Het/N)で治療したMef2c-hetマウスにおけるPV+免疫反応性を示す代表的な画像を提示している。PV+神経細胞(各パネルの左下)またはシナプス(各パネルの右下)の高倍率。スケールバー、25μm。
図18B】(図18B)WT/Vマウスと比較したHet/VマウスにおけるPV免疫反応性シナプスの減少を示すヒストグラムを提示している。この減少は、ニトロシナプシン治療後に著しく改善された。
図18C】(図18C)WT/Vマウスと比較したHet/VマウスではなくHet/NマウスにおけるPV免疫反応性細胞の数の減少を示すヒストグラムを提示している。データは、平均+標準誤差であり、グループあたりn=4~5匹、ANOVAで*P<0.05、**P<0.01。
図19】(図19)ニトロシナプシン治療が、Mef2c-hetマウスにおけるLTPの欠損を回復させたことを示している。WT/V-、Het/V-、およびHet/N治療マウスから調製したスライスにおける海馬LTPの誘導前(左)および誘導後(右)の誘発電流の代表的なトレース。動物の各グループのfEPSP勾配は、図15Hの本文に提示されている。
図20A】(図20A)シナプス外N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(eNMDAR)活性が、結節性硬化症2(TSC2)を不活性化し、NMDAR拮抗薬ニトロメマンチン(別名、ニトロシナプシン、YQW-036、NMI-6979)によってメマンチンよりも大きい程度に弱毒化されるシグナル伝達をトリガしたことを示している。スキーマは、NMDA受容体拮抗薬がp38 MAPKカスケードの活性化を遮断したことを示している。ニトロメマンチンYQW-036(ニトロシナプシンとしても知られている)は、メマンチンよりも効果的な拮抗薬であるため、さらに大きな有益な効果を発揮した(したがって、より大きな阻害剤のシンボル)。
図20B】(図20B)eNMDAR刺激が、p38 MAPK/MAPKAPK2/TSC2/mTORC1/S6K1カスケードのリン酸化/活性化を増加させたというウエスタンブロット証拠を示している。eNMDAR拮抗薬メマンチン(10μM)によるeNMDARの遮断は、このシグナル伝達を減少させた。この実験を、同様の結果で4回繰り返し、図20Cにおいて定量化した。
図20C】(図20C)不対のt検定による免疫ブロットの定量化を示しており、平均値±標準誤差、n=4、*P<0.05(Mem、メマンチン)。
図21A】(図21)Tsc2+/-(het)マウスのシナプス完全性に対するメマンチン(M)およびニトロシナプシン(N、図ではニトロメマンチンと標識されている)治療の効果を示している。(図21A)ビヒクル、M、またはNで治療した3か月齢のWTおよびTsc2+/-遺伝子導入マウスからの脳スライスの代表的な組織学的画像を示している。SY38(シナプトフィジン)陽性シナプス末端(赤)に対する染色を海馬に示す。
図21B】(図21B)ビヒクル、M、またはN治療をしたWTおよびTSC2+/-遺伝子導入マウスにおけるシナプトフィシンの免疫反応性の定量化を示している。シナプスの完全性は、免疫反応性SY38の占有面積の割合として測定された。Nによる治療Tsc2+/-Nのマウスは、シナプスシグナルをWTレベルに上昇させ、治療されたビヒクルよりも有意に大きかった。面積%+標準誤差として提示された値、t検定で*P<0.5、治療グループあたりn=3匹のマウス。
図22A】(図22)Tsc2+/-(het)マウスにおける異常なCA1-LTPおよびニトロシナプシンによる改善を示している。(図22A)多電極アレイ(MEA)によって海馬スライスから記録されたLTP(長期増強)を示している。fEPSP勾配は、30秒ごとにプロットされ、Tsc2+/+およびTsc2+/-の平均値±標準誤差を表している(n=7匹のマウスからの7つのスライス)。
図22B】(図22B)Tsc+/-マウスに対するビヒクル制御対1~2μMのメマンチンまたはニトロシナプシンによる治療の効果を示している(n=13匹のマウスからの13個のスライス、誘導後55~65分モニタされた、ニトロシンナプシン(しかしメマンチンではない)によるLTPの改善について、P<0.001)。
図23】(図23)恐怖条件付け試験によって評価されたTsc2+/-(het)マウスにおけるコンテキスト識別に対するメマンチンではなくニトロシナプシンによる治療の有益な効果を示している。恐怖条件付け試行において、ビヒクル、メマンチン、またはニトロシナプシンで治療した3か月齢のWTおよびTsc2+/-遺伝子導入マウスの身動き停止時間。試験されたマウスの4つすべてのグループ(WTビヒクル、Hetビヒクル、Hetメマンチン、およびHetニトロシナプシン)が、「訓練コンテキスト」および「新規コンテキスト+キュー」において身動き停止を示し、これは、条件付けられた恐怖反応が遺伝子型または薬物によって影響を受けなかったことを示している。さらに、WTマウスは、訓練コンテキストと新規コンテキストとの間のコンテキスト識別を表示した(*P=0.032)。対照的に、ビヒクルまたはメマンチンで治療されたTsc2+/-マウスは、この行動において欠陥を示し、訓練と新しいコンテキストと間の識別の欠如をもたらした(n.s.=有意差なし)。ニトロシナプシン(メマンチンではない)治療は、この表現型を改善し、Tsc2+/-マウスのコンテキスト識別を正常化した(**P=0.023)。値は、平均+標準誤差である(グループあたりn=7~12匹のマウス)。
図24】(図24)ニトロシナプシンによる治療によるレット症候群のMeCP2ノックアウト(KO)マウスモデルのロータロッド能力の改善を示している。マウスを静止したシリンダ上に置き、シリンダをゆっくりと10回転/分まで加速した。シリンダから落下するまでの10rpmでの合計時間を記録した。V=ビヒクル治療(WTについてn=12匹、MeCP2 KOマウスについて、n=7匹、M=メマンチン治療(WTについてn=16匹、MeCP2 KOについてn=13匹、N=ニトロシナプシン治療(WTについてn=5匹、MeCP2 KOについてn=14匹)。値は、+標準誤差であり、*P<0.05。MではなくNによる治療が、このロータロッド試験において運動能力の有意な改善を示した。
【発明を実施するための形態】
【0005】
脳においては、転写因子である筋細胞エンハンサ因子2(MEF2)が、神経細胞の分化、シナプス形成、および神経細胞の生存について重要な意味を持っている。ネスチン発現神経前駆細胞におけるMef2cの条件付きノックアウトは、電気生理学的ネットワーク特性の障害および自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する神経障害であるレット症候群を連想させる行動障害のあるマウスを生成することが示されている。染色体5q14.3q15の微小欠失の領域は、MEF2Cハプロ不全として特定された小児に神経学的欠損表現型を引き起こす。こうした患者は、ASD、知的障害および発達障害(IDD)、互恵的行動の不良、発話の欠如、定型的かつ反復的な行動、ならびにてんかんを含む兆候および症状を示す。MEF2Cハプロ不全によって引き起こされる障害は、集合的にMEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)と呼ばれている。さらに、複数のMEF2標的遺伝子が、祖先が共通するヒト血統における自閉症関連遺伝子として特定されている。したがって、請求されたMCHSに対する治療法は、同様に他の形態のASD/IDDおよびてんかんも効果的に治療するのに有用である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
N-メチルd-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(NMDAR)の阻害剤による、若年発症神経学的疾患の治療を、それを必要とする対象において行う、方法。
(項目2)
前記NMDARの阻害剤が、ニトロシナプシンを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記NMDARの阻害剤が、ニトロシナプシンである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記NMDARの阻害剤が、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
【化7】

式I
式中、
各R は、-CH および-CH CH から独立して選択され、
は、水素および-ONO から選択される、項目1に記載の方法。
(項目5)
各R が、-CH CH であり、R が、-ONO である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記NMDARの阻害剤が、式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、
【化8】

式II
式中、
各R は、水素、C -C アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択され、
は、水素、C -C アルキル、および-ONO から選択され、
およびR は各々、水素およびC -C アルキルから独立して選択されるか、
または、R およびR は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキルを形成する、項目1に記載の方法。
(項目7)
およびR が、各々水素である、項目6に記載の方法。
(項目8)
が、水素および-ONO から選択される、項目6に記載の方法。
(項目9)
が、-ONO である、項目8に記載の方法。
(項目10)
各R が、独立してC -C アルキルである、項目6に記載の方法。
(項目11)
各R が、メチルおよびエチルから独立して選択される、項目6に記載の方法。
(項目12)
各R が、エチルである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記若年発症神経学的疾患が、知的発達障害である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記若年発症神経学的疾患が、自閉症スペクトラム障害(ASD)である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記若年発症神経学的疾患が、てんかんを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記若年発症神経学的疾患が、結節性硬化症である、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記若年発症神経学的疾患が、自閉症である、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記若年発症神経学的疾患が、レット症候群である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記対象が、小児である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記対象が、MEF2Cハプロ不全であり、MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)を有する、項目1に記載の方法。
(項目21)
MEF2C、SLC32A1、SLC17A6、SYP、およびGAD65から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルに基づいて、前記治療対象を選択することを含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記発現レベルが、前記対象の細胞の前記発現レベルである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記発現レベルが、前記対象の脳内の細胞の前記発現レベルである、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記発現レベルが、前記対象の循環細胞の前記発現レベルである、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記発現レベルが、mRNAの発現レベルである、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記発現レベルが、タンパク質の発現レベルである、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記対象が、MEF2Cハプロ不全を有する、項目21に記載の方法。
(項目28)
前記遺伝子が、SLC32A1であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記遺伝子が、SLC17A6であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に増加している、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記遺伝子が、SYPであり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記遺伝子が、GAD65であり、前記発現レベルが、前記MEF2C遺伝子の2つのコピーを含む平均的な対象の前記発現レベルと比較して、有意に低下している、項目27に記載の方法。
【0006】
ASD、IDD、てんかん、および関連する症状の治療には、改善された治療が必要である。これらの線に沿って、デュアルメマンチン様作用および主にシナプス外NMDA受容体(eNMDAR)のレドックス(S-ニトロシル化)ベースの阻害に基づいて、一連の改善された薬物が最近合成された。当初、これらの化合物は、「ニトロメマンチン」と呼ばれていたが、最近、リード化合物であるYQW-036(またはNMI-6979)が、複数の損傷に直面してシナプス数および機能を回復させる能力があるため、ニトロシナプシンに指定された。スキーム1は、メマンチンおよびニトロメマンチン(別名、ニトロシナプシン)の構造を示している。
スキーム1.
【化3】
【0007】
本明細書の実施例に具体化されているように、神経行動障害、興奮性/抑制性(E/I)の不均衡、および組織学的損傷はすべて、Mef2c+/-(Mef2c-het)マウスにおいてニトロシナプシン(ニトロメマンチンYQW-036/NMI-6979としても知られている-構造Iを参照されたい)による治療によって改善された。Mef2c-hetマウスは、ASDのヒトMEF2Cハプロ不全形態に対するモデルとして開発された。Mef2c-hetマウスは、神経細胞およびシナプスの異常を示し、海馬における抑制性および興奮性シナプス伝達を減少させ、長期増強(LTP)およびMCHS様行動表現型を抑制した。ニトロシナプシンによる治療の前に、これらのマウスは、神経新生の減少、神経細胞のアポトーシスの強化、E/I神経伝達の割合の変化、ならびに自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的発達障害(IDD)、およびを有するヒト患者に似た行動障害の表現型を示した。重要なことに、これらの表現型のほぼすべてが、ニトロシナプシンによる長時間治療によって回復または軽減された。さらに、レット症候群および結節性硬化症のヒト疾患の追加のマウスモデルは、ニトロシナプシンがこれらの他の形態のASD/IDDに関連する表現型およびE/I不均衡に関連するてんかんの修正にも同様に有効であることを示した。メカニズムにもかかわらず、ニトロシナプシンは、ASD/IDDおよびてんかんの複数のマウスモデルにおいて効果的な治療法として示されたため、ヒトASD/IDDおよびてんかんの治療に効果的であるはずである。
【0008】
メマンチンのような他のNMDAR拮抗薬がこの目的のためのヒト臨床試験において失敗したため、ニトロシナプシンが、MCHSならびに他の形態のASD/IDDおよびてんかん症候群に対する効能を持っていたことは、我々にとって驚くべきことであった(Fung LK,Hardan AY.Developing medications targeting glutamatergic dysfunction in autism:Progress to date.CNS Drugs 29,453-463(2015);Tu S,Lipton SA,Nakanishi N,et al.NitroSynapsin therapy for the mouse MEF2C haploinsufficiency model of human autism.Nature Commun 8,1488(2017))。ニトロシナプシンは、この点において、シナプス伝達および長期増強(LTP)の遮断を回避する臨床的に許容可能な特性を持ちながら、優れた効能を発揮するため、機能する。
【0009】
図1は、ニトロシナプシンにより回復されたE/I不均衡およびMCHS様表現型につながるMef2cハプロ不全の要約図を示している。Mef2cハプロ不全は、VGATの減少およびVGLUT2タンパク質レベルの増加につながり、E/Iの不均衡(過剰興奮性)およびシナプス機能障害をもたらす。Mef2cハプロ不全は、神経細胞の損失、特にPV+抑制性介在神経細胞の数の減少も引き起こす。これらのシナプスおよび細胞の異常は、Mef2c-hetマウスにおいて観察されるMCHS様行動表現型の根本的な原因である可能性が高い。組織学的および行動的表現型は、FDA承認薬であるメマンチン(Mem)よりも有意に大きい程度まで、ニトロシナプシン(NitroMem)による長期治療によって改善される。
神経学的疾患
【0010】
いくつかの態様では、対象における少なくとも1つの神経学的疾患を治療する方法を本明細書に提供する。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物の組み合わせを対象に送達することを含み得る。当業者であればどのように評価するのかを知っているので、神経学的疾患を、E/I不均衡に関連づけることができる。簡単に言えば、E/Iは、いくつかの方法、例えば、抑制性伝達の興奮性亢進または欠損を示すパッチクランプ電気記録によって評価することができる(Tu et al.,2017、同上)。Tu et al.,2017(同上)に記載されている興奮性および抑制性シナプスの組織学的評価は、E/I不均衡の評価にも部分的に使用することができる。本明細書に開示される方法に従って治療され得るヒトまたは他の動物における神経学的疾患には、任意の形態の自閉症(ASD)、MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)、知的発達障害(IDD)、てんかん、レット症候群、および結節性硬化症が含まれるがこれらに限定されない。
【0011】
本明細書に開示される治療方法は、若年発症神経学的疾患を治療することを含む。若年発症神経学的疾患は、小児期に1つ以上の神経学的または行動異常が現れる疾患である。いくつかの例では、小児期は、年齢が0~18歳とみなされる。いくつかの例では、小児の年齢は、0~12歳である。神経学的および行動異常の非限定的な例には、手の握り、アイコンタクトの欠如、頭部成長の遅れ、発作、反復運動、言語の減少または喪失、手すり、拍手、タッピング、ランダムな把持および解放、呼吸異常、社会的相互作用の減少または喪失、コミュニケーションスキルの社会的相互作用の減少または喪失、不安定な歩行、失行、運動障害、筋力低下、硬直、痙縮、精神運動遅延、全身性筋緊張低下、アイコンタクトの不良、手口ステレオタイプ、斜視、および顔の二形性が含まれる。若年発症神経学的疾患の非限定的な例には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的発達障害(IDD)、てんかん、MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)、および結節性硬化症が含まれる。いくつかの例では、IDDは、自閉症自体を含むASDに該当する状態を含む。自閉症スペクトラム障害には、自閉症、アスペルガー症候群、およびレット症候群が含まれるがこれらに限定されない。若年発症神経学的疾患と考えられ得る追加の状態には、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、広汎性発達障害、および強迫性障害が含まれる。いくつかの例では、若年発症神経学的疾患は、病気/感染、頭部外傷、または毒性によって引き起こされる脳損傷によるものである。
【0012】
本明細書に開示される治療方法は、シナプス可塑性の回復をもたらし、E/I不均衡を改善し得る。本明細書に開示される治療方法は、神経細胞の損失の予防をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、シナプスマーカの増加をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、長期増強(LTP)をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、神経細胞数の増加をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、E/I不均衡の修正をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、自閉症/MCHS様行動障害の改善をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、抑制性介在神経細胞/パルブアルブミン(PV)+シナプスの増加をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、VGATおよび/またはVGLUT2レベルの正常化をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、VGLUT1のVGATに対する比率、VGLUT2のVGATに対する比率、またはそれらの組み合わせの正常化をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、アポトーシス神経細胞を回復し得る。本明細書に開示される治療方法は、対象の脳において観察されるアポトーシス性神経細胞の数を減少させ得る。本明細書に開示される治療方法は、認知障害の低減または防止をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、反復的な行動の低減または防止をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、社会的相互作用の障害の低減または防止をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、不安の低減または防止をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、異常な運動行動の低減または防止をもたらし得る。本明細書に開示される治療方法は、手の握りを低減または防止し得る。本明細書に開示される治療方法は、異常な社会的行動を低減または防止し得る。本明細書に開示される治療方法は、記憶を改善し得る。本明細書に開示される治療方法は、学習を改善し得る。
【0013】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を有する対象を治療することを含む。ASDに該当する対象には、自閉症、アスペルガー症候群、および特に指定のない広汎性発達障害(PDD-NOS)、ならびに小児崩壊性障害と診断された対象が含まれる。これらの対象は、社会的コミュニケーションおよび相互作用に困難を示す。また、反復的な行動を示す場合がある。ASDの診断は、精神障害の最新の診断および統計マニュアルおよび/または疾病および関連する健康問題(ICD)の国際統計分類に公開されている基準に基づいて行うことができる。開業医は、自閉症診断面接改訂版および自閉症診断観察スケジュールなどの評価を実施することができる。てんかん、結節性硬化症(非悪性腫瘍)、不安、うつ病、統合失調症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および感覚処理障害などの他の状態が、ASDと併存することが多い。本明細書に開示される方法は、ASDの重症度またはASDと併存する状態を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達する前に、ASDの1つ以上の症状またはASDと併存する状態の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達した後に、ASDの1つ以上の症状またはASDと併存する状態の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、ASDまたはASDと併存する状態の1つ以上の症状の重症度を低下させる可能性がある。いくつかの例では、方法は、本明細書に開示される化合物を、ASDを有する対象に送達することと、発話および言語療法ならびに作業療法などの行動療法を対象に提供することと、を含む。
【0014】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、知的発達障害(IDD)を有する対象を治療することを含む。IDDは、対象の身体的、認知的、および/または感情的な発達に影響を与える状態である。IDDを有する対象は、学習、推論、問題解決、および/または社交の困難を有し得る。IDDを有する対象は、1つ以上の行動障害、発話障害、言語の問題、発作、および身体障害を示し得る。IDDを有する対象は、視力の障害を有し得る。IDDを有する対象は、聴覚の障害を有し得る。IDDを有する患者は、代謝障害を有し得る。いくつかの例では、これらの問題は、年齢と共に悪化する。IDDまたはIDDに関連する状態の例には、脳性麻痺、ダウン症候群、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害(ASD)、フェニルケトン尿症(PKU)、および先天性甲状腺機能低下症が含まれるがこれらに限定されない。本明細書に開示される方法は、IDDの重症度またはIDDと併存する状態を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示されている化合物を対象に送達する前に、IDDの1つ以上の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達した後に、IDDの1つ以上の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、IDDの1つ以上の症状の重症度を低減し得る。いくつかの例では、方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達することと、発話および言語療法ならびに作業療法などのIDDを有する対象に行動療法を提供することと、を含む。
【0015】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、てんかんを有する対象を治療することを含む。てんかんは、てんかん発作によって特徴づけられる様々な神経障害を記載するための用語である。これらの発作は、脳の過剰な活動および/または異常な活動によって引き起こされると考えられている。多くの場合、発作は、投薬、手術、神経刺激、食事制限、またはそれらの組み合わせにより制御され得る。方法は、投薬、手術、神経刺激、食事制限、またはそれらの組み合わせと組み合わせて、本明細書に開示される1つ以上の化合物を、てんかんを有する対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達する前に、対象の発作の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を対象に送達した後に、対象の発作の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、対象の発作の重症度の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、対象の発作の発生回数の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、対象の発作の頻度の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、対象の発作の持続時間の低減をもたらし得る。
【0016】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、レット症候群を有する対象を治療することを含む。レット症候群は、言語および協調の問題、ならびに反復運動を特徴とする神経障害である。いくつかの例では、レット症候群を有する対象は、発作、脊柱側弯症、および睡眠障害を有する。他の症状には、頭部成長の低下(4歳未満)、手の制御の低下または喪失、言語の低下または喪失、手すり、拍手、タッピング、ランダムな把持および解放、呼吸異常、社会的相互作用の減少または喪失、コミュニケーションスキルの社会的相互作用の減少または喪失、不安定な歩行、失行、運動障害、筋力低下、硬直、および痙縮が含まれる。方法は、睡眠補助薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、抗精神病薬、およびベータ遮断薬、ならびにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、レット症候群の治療に使用される薬品と組み合わせて、本明細書に開示される1つ以上の化合物をレット症候群の対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を、レット症候群を有する対象に送達する前に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を、レット症候群を有する対象に送達した後に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、レット症候群の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の重症度の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、レット症候群の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の緩和をもたらし得る。
【0017】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、結節性硬化症を有する対象を治療することを含む。結節性硬化症(TSC)は、TSC1またはTSC2遺伝子におけるヘテロ接合変異によって引き起こされる常染色体優性疾患である。TSCは、神経学的、認知的、および行動障害に関連づけられることが多い。TSC患者は、不安および気分障害との併存疾患を発現する場合がある。TSC関連の神経学的症状には、過剰なグルタミン酸作動性活動およびシナプスの脊椎構造の変化が伴う場合がある。結節性硬化症は、典型的に良性腫瘍を特徴とする状態である。これらの腫瘍は、脳、心臓、腎臓、肝臓、目、肺、皮膚などの臓器に現れることがある。症状には、ASDの徴候、発作、認知障害、行動異常(例えば、攻撃性、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、自傷)、皮膚疾患、肺疾患、および腎疾患が含まれるがこれらに限定されない。この疾患に対する治療の選択肢はほとんどないが、エベロリムスは、脳および腎臓における腫瘍の治療薬として承認されている。方法は、エベロリムス、神経外科的介入、またはそれらの組み合わせと組み合わせて、本明細書に開示される1つ以上の化合物を、結節性硬化症を有する対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を、結節性硬化症を有する対象に送達する前に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を結節性硬化症の対象に送達した後に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、結節性硬化症の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の重症度の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、結節性硬化症の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の緩和をもたらし得る。
【0018】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、MEF2Cハプロ不全を有する対象を治療することを含む。MEF2Cハプロ不全症候群(MCHS)は、知的障害、自閉症の特徴、てんかん、および異常な運動に関連する神経発達障害である。症状には、精神運動遅延、全身性筋緊張低下、アイコンタクト不良、手口のステレオタイプ、斜視、および軽度の顔の二形性が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの症状は、脳における正常な電気活動の興奮性と抑制性との比(E/I比)の変化に起因する場合がある。本明細書に開示される方法は、E/I比を正常範囲(例えば、MEF2Cハプロ不全のない人のもの)に向かって回復させることと、ASDの徴候を改善することと、を含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を、MEF2Cハプロ不全を有する対象に送達する前に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。方法は、本明細書に開示される化合物を、MEF2Cハプロ不全を有する対象に送達した後に、対象の症状の存在および/または重症度を評価することを含み得る。本明細書に開示される方法は、MEF2Cハプロ不全の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の重症度の低減をもたらし得る。本明細書に開示される方法は、MEF2Cハプロ不全の症状を有する対象の症状のうちの1つ以上の緩和をもたらし得る。
【0019】
いくつかの例では、本明細書に開示される方法は、対象を治療することを含み、対象は、小児である。小児は、約14歳未満、約13歳未満、約12歳未満、または約10歳未満であり得る。いくつかの例では、対象は、1歳超、2歳超、3歳超、4歳超、または5歳超である。
【0020】
本明細書に開示される方法は、治療対象を選択することを含み得る。いくつかの例では、対象は、対象における遺伝子の発現に基づいて選択される。いくつかの例では、対象は、対象における遺伝子の配列に基づいて選択される。いくつかの例では、対象は、対象の遺伝子の変異に基づいて選択される。変異は、欠失変異であり得る。欠失変異は、ハプロ不全(例えば、MEF2Cハプロ不全)であり得る。変異は、フレームシフト変異であり得る。変異は、一塩基多型であり得る。いくつかの例では、対象は、遺伝子によってコードされるタンパク質の対象の発現に基づいて選択される。いくつかの例では、対象は、遺伝子によってコードされるタンパク質の活性に基づいて選択される。遺伝子は、筋細胞エンハンサ因子2C(MEF2C)をコードするMEF2Cであり得る。遺伝子は、小胞性γ-アミノ酪酸(GABA)輸送体(VGAT)をコードするSLC32A1であり得る。遺伝子は、小胞性グルタミン酸輸送体2(VGLUT2)をコードするSLC17A6であり得る。遺伝子は、主要なシナプス小胞タンパク質p38としても知られる、タンパク質シナプトフィシンをコードするSYPであり得る。遺伝子は、グルタミン酸デカルボキシラーゼをコードするGAD65であり得る。
【0021】
方法は、本明細書に開示される遺伝子の発現レベルを得ることを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の発現レベルを得ることを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の活性に関する情報を得ることを含み得る。方法は、本明細書に開示される遺伝子の発現レベルを分析することを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の発現レベルを分析することを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の活性に関する情報を分析することを含み得る。方法は、本明細書に開示される遺伝子の発現レベルを定量化することを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の発現レベルを定量化することを含み得る。方法は、本明細書に開示されるタンパク質の活性に関する情報を定量化することを含み得る。遺伝子およびタンパク質の発現および活性をそれぞれ定量化および分析することは、当該技術分野でよく知られている。遺伝子発現の定量化および分析の非限定的な例は、q-PCR、マイクロアレイ、配列決定、およびノーザンブロットである。方法は、対立遺伝子特異的発現を分析することを含み得る。タンパク質の発現および活性の定量化および分析の非限定的な例は、免疫組織化学、ウエスタンブロット、免疫沈降、フローサイトメトリ、免疫蛍光、およびそれらの組み合わせである。方法は、本明細書に開示されている遺伝子の配列決定を含み得る。
【0022】
方法は、本明細書に開示される遺伝子の発現レベルを得ることを含み得、ここで、発現レベルは、対象の細胞の発現レベルである。方法は、対象から細胞を得ることを含み得る。方法は、対象から細胞を単離することを含み得る。細胞は、脳細胞であり得る。細胞は、循環細胞であり得る。細胞は、脳脊髄液中を循環する細胞であり得る。細胞は、血球であり得る。細胞は、皮膚細胞であり得る。細胞は、上皮細胞であり得る。細胞は、患者の皮膚生検に由来し、神経細胞または他の脳細胞(例えば、星状細胞、乏突起膠細胞、およびミクログリア)に分化し、二次元(2D)培養システムまたは3D脳オルガノイドにおいてアッセイされたヒト誘導多能性幹細胞であり、生体外で生成され、よって「ディシュ内の病気」をモデル化することができる小さな脳様構造であり得る。
【0023】
遺伝子の発現レベルを得ることは、対象から無細胞核酸を単離することを含み得る。無細胞核酸は、RNAを含み得る。無細胞核酸は、メッセンジャRNAを含み得る。無細胞核酸は、本質的にメッセンジャRNAからなり得る。無細胞核酸は、DNAを含み得る。DNAは、メチル化DNAであり得る。遺伝子の発現レベルを得ることは、対象から無細胞核酸を単離することを含み得る。無細胞核酸は、循環する無細胞核酸であり得る。方法は、対象から試料を得ることを含み得、ここで、試料は、無細胞核酸を含有する。このような試料の非限定的な例は、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、および唾液である。
【0024】
本明細書に開示される方法は、対象、またはその細胞、またはその生体液におけるSLC32A1の発現レベルを定量化することを含み得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有し得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有しない場合がある。対象は、MEF2C遺伝子の2つのコピーを有する複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したSLC32A1発現レベルを有し得る。対象は、神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したSLC32A1発現レベルを有し得る。対象は、本明細書に開示される神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したSLC32A1発現レベルを有し得る。有意に低下したとは、少なくとも約10%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約75%の低下、または約100%の低下であり得る。
【0025】
本明細書に開示される方法は、対象、またはその細胞、またはその生体液におけるSLC17A6の発現レベルを定量化することを含み得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有し得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有しない場合がある。対象は、MEF2C遺伝子の2つのコピーを有する複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に増加したSLC17A6発現レベルを有し得る。対象は、神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に増加したSLC17A6発現レベルを有し得る。対象は、本明細書に開示される神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均のレベルと比較して、有意に増加したSLC17A6発現レベルを有し得る。有意に増加したとは、少なくとも約10%の増加、少なくとも約20%の増加、少なくとも約30%の増加、少なくとも約40%の増加、少なくとも約50%の増加、少なくとも約75%の増加、または約100%であり得る。
【0026】
本明細書に開示される方法は、対象、またはその細胞、またはその生体液における、シナプス前タンパク質であるシナプトフィシン(SYP)の発現レベルを定量化することを含み得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有し得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有しない場合がある。対象は、MEF2C遺伝子の2つのコピーを有する複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したSYP発現レベルを有し得る。対象は、神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したSYP発現レベルを有し得る。対象は、本明細書に開示される神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均のレベルと比較して、有意に低下したSYP発現レベルを有し得る。有意に低下したとは、少なくとも約10%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約75%の低下、または約100%の低下であり得る。
【0027】
本明細書に開示される方法は、対象、またはその細胞、またはその生体液におけるGAD65の発現レベルを定量化することを含み得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有し得る。対象は、MEF2Cハプロ不全を有しない場合がある。対象は、MEF2C遺伝子の2つのコピーを有する複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したGAD65発現レベルを有し得る。対象は、神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したGAD65発現レベルを有し得る。対象は、本明細書に開示される神経障害の兆候または症状を示さない複数の対照対象の平均レベルと比較して、有意に低下したGAD65発現レベルを有し得る。有意に低下したとは、少なくとも約10%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約75%の低下、または約100%の低下であり得る。
化合物
【0028】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩による自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的発達障害(IDD)、てんかん、レット症候群、および/または結節性硬化症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、
【化4】
式I
式中、
各Rは、-CHおよび-CHCHから独立して選択され、
は、水素および-ONOから選択される、方法を本明細書に開示する。
【0029】
式Iの化合物、またはその医薬的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、-ONOである。
【0030】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、各Rは、異なる。いくつかの実施形態では、各Rは、同じである。いくつかの実施形態では、各Rは、-CHである。いくつかの実施形態では、各Rは、-CHCHである。
【0031】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、各Rは、-CHCHであり、Rは、-ONOである。
【0032】
また、式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩による他の形態の自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的発達障害(IDD)、てんかん、レット症候群、および/または結節性硬化症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、
【化5】
式II
式中、
各Rは、水素、C-Cアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択され、
は、水素、C-Cアルキル、および-ONOから選択され、
およびRは各々、水素およびC-Cアルキルから独立して選択されるか、
または、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキルを形成する、方法を本明細書に開示する。
【0033】
式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、RおよびRは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、水素およびメチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、同じである。いくつかの実施形態では、RとRは、異なる。いくつかの実施形態では、RおよびRは、水素である。
【0034】
式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキルを形成する。いくつかの実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、単環式ヘテロシクロアルキルを形成する。
【0035】
式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩のいくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、-ONOである。いくつかの実施形態では、Rは、水素または-ONOである。
【0036】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、式IIIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【化6】
式III.
【0037】
式IIまたは式III、またはその薬学的に許容可能な塩の化合物のいくつかの実施形態では、各Rは、水素、C-Cアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびアリールから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、水素およびC-Cアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、C-Cアルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、メチル、エチル、およびn-プロピルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、メチルおよびエチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、同じである。いくつかの実施形態では、各Rは、異なる。いくつかの実施形態では、各Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、各Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、各Rは、n-プロピルである。
製剤
【0038】
方法は、本明細書に開示される約1mg~約25mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約1mg~約20mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約1mg~約5mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約5mg~約10mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約10mg~約15mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約15mg~約20mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約1mg~約10mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される約10mg~約20mgの用量の化合物を対象に送達することを含み得る。小児(小児患者)に対して1日あたり1~5mgの用量の化合物で十分であり得る。用量は、分割用量で1日あたり最大約20mgまで許容可能であるため、ゆっくりと増加させることができる。用量は、1週間以上かけてゆっくりと増加させることができる。
【0039】
方法は、本明細書に開示される用量の化合物を1日1回送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される用量を1日1回送達することを含み得る。方法は、本明細書に開示される用量を1日2回送達することを含み得る。方法は、日中の第1の時点で第1の用量を送達し、日中の第2の時点で第2の用量を送達することを含み得る。第1の用量および第2の用量は、同じであり得る。第1の用量および第2の用量は、異なり得る。
【0040】
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される化合物の日用量を経時的に増加させることを含み得る。例えば、方法は、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を第1週に第1の用量で送達することと、少なくとも1つの化合物を第2の週に第2の用量で送達することと、を含み得る。いくつかの例では、第2の用量は、第1の用量よりも多くなる。いくつかの例では、第2の用量は、第1の用量未満である。
【0041】
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を対象に経口的に送達することを含み得る。化合物は、錠剤またはカプセルを介して経口的に送達され得る。化合物は、液体溶液として経口的に送達され得る。液体溶液を、飲み込む場合がある。液体溶液は、スポイトまたはピペットを介して送達され得る。代替的または追加的に、送達は、化合物の注射(非経口投与)、化合物の局所投与、化合物の吸入、化合物の脳への経鼻投与、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0042】
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物を送達することを含み得る。医薬組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、担体、またはそれらの組み合わせを含み得る。本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、本明細書に記載の化合物の生物活性または特性を無効にせず、比較的非毒性である材料を指す(すなわち、材料の毒性は、材料の利益を著しく上回る)。いくつかの例では、薬学的に許容可能な材料は、重大な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の成分のうちのいずれかと有害な方法で有意に相互作用することなく、個体に投与され得る。
【0043】
本明細書の医薬組成物は、薬学的に使用される製剤への活性薬剤の加工を促進する賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用して製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。医薬組成物の要約は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)、Hoover,John E.,Remington´s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980、およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams&Wilkins,1999)において見られる。
【0044】
本明細書に開示される医薬組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤(複数可)、賦形剤(複数可)、または担体(複数可)を含み得る。医薬組成物は、他の医療薬剤または医薬品、担体、保存剤、安定剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含み得る。加えて、医薬組成物は、他の治療的に価値のある物質も含有する。
【0045】
本明細書に開示される医薬組成物は、非経口(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、くも膜下、硝子体内、注入、または局所)、局所、経口、または経鼻投与を含むがこれらに限定されない、任意の好適な投与経路によって対象に投与され得る。
【0046】
筋肉内、皮下、腫瘍周囲、または静脈内注射に好適な製剤には、生理学的に許容可能な無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、および無菌の注射可能な溶液または分散液に再構成するための無菌の粉末が含まれ得る。水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、クレモホールなど)、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む、好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持される。皮下注射に好適な製剤には、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および調剤などの任意選択的な添加剤も含有される。
【0047】
静脈内注射について、活性剤は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液で任意選択的に製剤化することができる。
【0048】
非経口注射は、任意選択的に、ボーラス注射または持続注入を伴う。注射用製剤は、任意選択的に、保存剤を加えたアンプルまたは複数用量用容器などの単位剤形で提示される。本明細書に記載の医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の無菌懸濁液、溶液、またはエマルジョンとして非経口注射に好適な形態であり得、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有し得る。非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態の活性薬剤の水溶液が含まれる。さらに、懸濁液は、任意選択的に、適切な油性注射懸濁液として調製される。
【実施例
【0049】
以下の例示的な例は、本明細書に記載のソフトウェアアプリケーション、システム、および方法の実施形態の代表例であり、いかなる方法でも限定することを意図しない。
実施例1 Mef2c-hetマウスは、MCHS様行動を示し、生存率を低減する
【0050】
MEF2Cタンパク質の発現は、図2の野生型(WT)同腹仔よりもMef2c-hetマウスにおいて有意に低く(P<0.01)、Mef2c-hetマウスにおいて、有意な数の早期死亡が観察された(図3A)。WT親およびMef2c-het親との間の交配からの生存可能な動物の数を数えた。WTおよびMef2c-hetの子孫の数は、胎生期(E)18(それぞれ28対23)でほぼ等しかったが、生存しているMef2c-hetのWTマウスに対する比率は、生後日(P)21および90日までに、それぞれ、44%および40%であった。E18と成人との間の生存率の差は、有意であった(カイ2乗でP<0.05)。生存率の減少に加えて、生後3か月まで生存したMef2c-hetマウスは、それらのWT同等物と比較して、体重の減少(約14%)を示した(WTについて31.9±1.0gm対Mef2c-hetについて27.4±0.8gm、スチューデントのt検定でP<0.001)。
【0051】
成体のMef2c-hetマウスがMCHS様表現型を示すかどうかを判定するために、オスのMef2c-hetマウスとそれらのWT同腹仔(≧3か月齢)で行動試験を行った。認知障害を示すヒト患者と同様に、Mef2c-hetマウスは、空間学習および記憶機能を測定する試験であるバーンズ迷路における成績が低かった。Mef2c-hetマウスは、訓練セッション中に脱出トンネルを見つけるのに有意に長い時間を要した(図3B)。その後のプローブ試験では、Mef2c-hetマウスではなくWTマウスが、反対側の象限と比較して、標的象限に対する選好を示し(図3C)、これは、Mef2c-hetマウスにおける空間記憶障害を示唆している。Mef2c-hetマウスは、異常な足を握る行動(図3D)および穴ボード探査試験での反復的な頭部突っ込み(図2E)を含むステレオタイプを示した。総合すると、これらの結果は、Mef2c-hetマウスが、MCHSをモデル化した幅広い範囲のMCHS様表現型を示すことを示唆している。
実施例2 神経新生およびシナプス機能を調節する遺伝子は、Mef2c-hetマウスにおいて下方制御される
【0052】
MCHSの病因の根底にある分子経路を識別するために、Mef2c-hetマウス対WT同腹仔の遺伝子発現をマイクロアレイによって調査した。Mef2c-hetマウスにおける394の下方制御および389の上方制御を含む、海馬における発現レベルが有意に変化した合計783個の遺伝子が特定された(図4A、緑線の上)。これらのデータを用いて、NextBio経路分析を使用して、マウスにおけるMef2cハプロ不全によって下方制御された、神経新生、神経細胞分化、およびシナプス機能についてのバイオグループを含む、上位神経細胞バイオグループを特定した(図4B)。同時に、神経細胞死の制御のためのバイオグループを上方制御した(図4B)。マイクロアレイの結果は、3か月齢のマウスから抽出されたRNAを使用したqPCRによって確認された(図4C)。NextBio分析と一致して、抑制性シナプス前マーカを表す小胞性γ-アミノ酪酸(GABA)輸送体VGAT(Slc32a1によってコードされる)のmRNAレベルは、Mef2c-hetマウスにおいて有意に低下した。興奮性シナプスマーカを表す小胞性グルタミン酸輸送体1/2(VGLUT1/2)のmRNAレベルも調査し、VGLUT1ではなくVGLUT2のレベルが、Mef2c-hetマウスにおいて有意に増加していることが分かり、これは、これらのマウスにおける興奮性神経伝達および抑制性神経伝達の両方の機能障害を示している。
実施例3.Mef2c-hetマウスにおける神経細胞の減少および興奮性/抑制性(E/I)シナプス伝達の障害
【0053】
不偏立体解析学的計数法として光学ディセクタを使用した組織学的実験では、NeuN+細胞(すなわち、神経細胞)の総数は、海馬(WT制御値の69.5±1.6%、スチューデントのt検定でP<0.01)および前頭皮質(WT制御の79.8±5.1%、P<0.05)において、WTと比較して、Mef2c-hetマウスにおいて有意に減少した(図5A図5B)。NeuN+細胞とは対照的に、グリア線維酸タンパク質(GFAP)+細胞の数は、海馬(WT制御の123.0±6.8%、P<0.01)および前頭皮質(WT制御の135.16±11.70%、P<0.05)の両方において、WTと比較して、Mef2c-hetマウスにおいて有意に増加した(図5C図5D)。
【0054】
Mef2c-het脳およびWT脳の両方においてゴルジ染色を行って、3Dモンタージュ画像上でNeurolucidaソフトウェアを使用して、大脳皮質のV層における錐体細胞の樹状分岐パターンを判定した(図5E)。Sholl分析は、樹状相互作用の減少(図5F)、総樹状長さの減少(図5G)によって実証されるように、MEF2c-het神経細胞の樹状突起の複雑さが著しく減少したことを示した。
【0055】
神経細胞数の減少をさらに説明するために、MEF2C欠乏によって媒介される胚性神経新生の既知の減少に加えて、2~3か月齢のMef2c-hetマウスの歯状回(DG)の顆粒下ゾーン(SGZ)において、成人の神経新生が特徴づけられ、増殖細胞(PCNA+、図6A図6B)および発達中の神経細胞の数の両方の減少が観察された(DCX+、図6A図6C)。DGでは、BrdU標識NeuN+細胞の数も減少した(図6D図6E)。これらの結果は、Mef2c-hetマウスの成体神経新生の減少が神経細胞の減少に寄与することを示唆している。さらに、mCherryのレトロウイルス媒介遺伝子伝達を介して視覚化された、新たに形成された神経細胞の発達および複雑さも、体細胞サイズおよび樹状突起長の減少によって示されるように、Mef2c-het DGにおいて減少した(図6F~I)。したがって、Mef2cハプロ不全は、神経細胞数の減少、成体の神経新生の障害、およびマウスの樹状突起の複雑性の減少をもたらす。
【0056】
その後、Mef2c-hetマウスのシナプスを調査した。シナプスタンパク質の変化を予測するマイクロアレイ分析と一致して、定量的共焦点免疫組織化学は、シナプス前マーカであるシナプトフィシン(SYP)の発現がMef2c-hetマウスの海馬において有意に減少することを示した(図7A図7B)。シナプス欠損をより明確に定義するために、海馬における定量的な共焦点免疫組織化学によって、支配的な興奮性シナプスタンパク質VGLUT1および抑制性シナプスタンパク質VGATの発現レベルを調査した(図7A)。VGLUT1ではなくVGATの発現は、Mef2c-hetマウスにおいて有意に減少した(図7B)。さらに、海馬シナプトソーム濃縮溶解物において免疫ブロット実験を行ったところ、VGLUT1ではなくSYPおよびGAD65(別の抑制性神経細胞マーカ)のレベルが、Mef2c-hetマウスにおいて下方制御されていることが分かった(図8A)。VGLUT1(興奮性神経細胞)とGAD65(抑制性神経細胞)との比率は、E/I不均衡の兆候であるMef2c-hetマウス(図8B)において有意に増加した。さらに、VGLUT1とは対照的に、mRNAの所見と一致して、通常、成人海馬において非常に低いレベルでのみ発現されるVGLUT2タンパク質が、Mef2c-het対WTにおいて有意に上方制御された(図8C)。総合すると、これらの発見は、Mef2c-het海馬における異常な興奮性および抑制性シナプスタンパク質の発現を示している。
【0057】
E/Iマーカ発現におけるこれらの変化が機能的シナプス伝達の異常を伴うかどうかを判定するために、Mef2c-hetマウスおよびWTマウスの海馬スライスからの自発的な小型興奮性および抑制性シナプス後電流(mEPSCs/mIPSCs)を記録した。量子放出の理論から、小型周波数の変化は、シナプス前神経伝達物質の放出またはシナプスの数の変化を反映しているが、小型振幅の変化は、シナプス後機能の変化、例えば、シナプス後受容体の数を表すと考えられる。Mef2c-hetマウスは、シナプス前VGAT、樹状突起、およびシナプスにおける全体的な減少と一致して、mIPSC頻度の減少を示した(図7C図7Gでは、イベント間間隔の増加として現れている)。mIPSC振幅の減少も観察され(図7C図7E)、これは、おそらく、MEF2レベルが特定のGABA受容体サブユニットの発現と相関することが知られているという事実を反映している。興味深いことに、これらのマウスは、脳特異的Mef2c-KOマウスにおけるmEPSC頻度の増加に関する以前の報告と同様に、mEPSC頻度の増加(イベント間間隔の減少として現れる、図7D図7F)も示した。この結果は、Mef2c-het海馬におけるシナプス前VGLUT2の発現の増加の発見とも一致した。mEPSC振幅のわずかな減少(図7D図7H)は、MEF2が、通常、転写的に、グルタミン酸受容体の発現を上方制御するという事実に関連している。mIPSCおよびmEPSCの全体的な変化は、Mef2c-hetマウスのE/I比の上昇をもたらすと予想される。実際、平均mEPSCとmIPSC値との割合によって決定されるように、Mef2c-hetマウスはWTマウスと比較して、E/I周波数比が116.2%増加し、E/I振幅比が25.7%増加したことを示し、機能的なE/I不均衡の存在を確認している。
【0058】
これらの神経細胞およびシナプスの欠陥が、シナプス可塑性および神経細胞回路に有害な影響を与えるかどうかを判定するために、海馬のLTPを記録した。Mef2c-hetマウスは、海馬のCA1領域においてLTPの低下を示した(図9A)。ペアパルス促進(PPF)は、最初の刺激後のシナプス前末端における残留Ca2+によって引き起こされる2つのペア刺激のうちの2番目に応答するシナプス前機能の短期増強を表している。例えば、PPFの減少は、神経伝達物質放出の可能性の増加と関連している。WTマウスと比較して、Mef2c-hetにおけるPPFの統計的な減少が観察され(図9B)、mEPSC頻度において観察されたわずかな増加と一致した(図7D図7F)。まとめると、これらの結果は、Mef2c-hetマウスが神経細胞数の減少を示し、抑制性の低下および興奮性シナプス神経伝達の増加と共にシナプス欠損を伴うため、E/Iの不均衡につながることを示している。
実施例4 ニトロシナプシンは、Mef2c-hetマウスにおける自閉症様行動を回復させる
【0059】
オスのMef2c-hetマウスまたはWTマウスを、ニトロシナプシンまたはPBSビヒクルで3か月間治療した。次に、行動、電気生理学、および組織学的分析を行って、この薬物の効果を判定した。重要なことに、WTマウスのニトロシナプシン治療は、モリス水迷路、EPSC、またはLTPに対する影響を示さなかった。
【0060】
Mef2c-hetマウスをニトロシナプシンで治療すると、自閉症/MCHS様行動表現型を回復することができるかどうかを判定するために、神経行動試験を使用した。最初に、モリス水迷路を行って、空間学習および記憶に対する効果を試験した(図10A図10B)。隠されたプラットフォームの訓練セッション中に、ビヒクルで治療されたMef2c-het(Het/V)マウスは、最初の2日間で、ビヒクルで治療されたWT(WT/V)マウスよりも隠れたプラットフォームを見つけるのに時間がかかり、空間学習障害を示した(図10A)。しかしながら、ニトロシナプシン(Het/N)で治療されたMef2c-hetマウスは、これらの試験中に、ビヒクルと比較して、能力の改善を示した。この改善は、水泳速度自体の増加に起因するものではなく、Mef2cヘテロ接合性もニトロシナプシン治療も、水泳速度に影響を与えなかった(図11)。すべてのグループのマウスが基準に到達してから24時間(隠されたプラットフォームを見つけるために20秒)後に、記憶保持を調査するためのプローブ試験を行った。図10Bに示すように、WT/Vマウスは、隠されたプラットフォームが以前に位置していた標的象限で有意に長い時間を過ごすことによって、通常の記憶保持を示した。対照的に、Het/Vマウスは、反対側の象限よりも標的象限への選好を示さないことによって、記憶障害を示した。興味深いことに、Het/Nマウスは、反対象限よりも標的象限において有意に長い時間を過ごし、これは、ニトロシナプシン治療が記憶機能を正常化した兆候である(図10A図10B)。次に、一般的な自発運動をアッセイするための30分間の試験であるオープンフィールド試験を行った。Het/Vマウスは、中心活動の増強を示したが(図10C)、総活動の増強は示さなかった(図10D)。この異常な行動は、ニトロシナプシンによる長期治療によって回復された。薬物はまた、穴ボード探査試験におけるMef2c-hetマウスの頭部突っ込みの増加の異常な反復的行動を修正した(図10E)。さらに、社会的相互作用の行動試験を行った。WT/Vマウスは、類似しているが空のケージのある部屋よりも、見知らぬマウス1(S1)のいる部屋で有意に長い時間を過ごした(図10E)。しかしながら、Het/Vマウスは、どちらの部屋で過ごす時間にも選好を示さず(図10F図10G)、これは、社会的能力の障害の兆候である。さらに、Het/Vマウスは、WT/VマウスよりもS1への訪問数が有意に少なく、1回の訪問あたりの時間がより短かった(図10H図10I)。ニトロシナプシンによる治療は、この異常な社会的行動を改善した。重要なことに、Mef2c hetマウスを、直接比較において等モルメマンチンまたはニトロシナプシンにより治療した最初の実行可能性実験では、これらの行動パラダイムにおけるニトロシナプシンの優位性が実証された(図12A)。さらに、ニトロシナプシン治療は、WTマウスの社会的行動を有意に変化させなかった(図13)。
【0061】
総合すると、これらの結果は、ニトロシナプシンによるMef2c-hetマウスの長時間治療が、認知障害、反復的な行動、社会的相互作用の障害、およびおそらく不安の変化を有意に改善したことを示している。注目すべきことに、Mef2c-hetマウスは、手足の握りを除いて異常な運動行動を示さなかった(図14A~E)。しかしながら、ニトロシナプシン治療は、手足の握り表現型を改善しなかった(図14F)。
実施例5 Mef2c-hetマウスにおける神経細胞の損失、E/Iマーカの変化、およびLTPの障害に対するニトロシナプシンの有益な効果
【0062】
Mef2c-hetマウスの海馬における神経細胞の損失およびVGATまたはVGLUT2の発現の変化に対する薬物治療の効果を判定するために、免疫組織化学を行った(図15A~G)。具体的には、光学ディセクタ法を使用した立体解析学によってモニタすると、Het/Nマウスの海馬のNeuN+細胞の総数は、Het/Vマウスよりも有意に多く(図15B)、以前の行動におけるニトロシナプシンの効能と一致した。さらに、初期の実現可能性実験では、NeuN+細胞数においてメマンチンを超えるニトロシナプシンの有意に大きい効果が観察された(図12B)。
【0063】
海馬のCA3領域における、活性カスパーゼ3および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)に対する神経細胞染色の数は、WTと比較して、Mef2c-hetマウスにおいて有意に増加した(P<0.012、図16)ため、Mef2c-hetマウスにおけるNeuN+細胞の減少は、少なくとも部分的にはアポトーシス細胞の損失によって説明することができる。さらに、活性化されたカスパーゼ3陽性およびTUNEL陽性細胞の数は、Het/Vでは増加したが、Het/Nマウスでは正常に戻った(図16)。この結果は、Mef2c-hetマウスにおいて観察されたアポトーシス神経細胞が、ニトロシナプシンによって著しく回復されたという考えと一致していた。さらに、ニトロシナプシンによる治療は、Mef2c-hetマウスにおける星状細胞形態を有するGFAP+細胞の数も正常化した(図17)。
【0064】
Mef2c-hetマウスにおけるE/Iマーカの発現の変化に対するニトロシナプシンの効果を、定量的な共焦点免疫組織化学によって判定した。VGLUT1免疫反応性のレベルは、ニトロシナプシン治療によって変化しなかったが、VGATおよびVGLUT2レベルならびにVGLUT1/VGATまたはVGLUT2/VGATの比率は、Mef2c-hetマウスにおけるニトロシナプシン治療によって正常化された(図15C~G)。パルブアルブミン(PV)を発現するバスケット介在神経細胞およびPV陽性シナプスの両方の数が、Mef2c-hetマウスにおいて有意に減少し(図18)、一方、ニトロシナプシンはPV+シナプスを有意に増加させた(面積%)(図18)。これらの結果は、ニトロシナプシンが、Mef2c-hetマウスにおいてE/I均衡を回復させることを示唆している。最後に、ニトロシナプシンによる長時間治療は、Mef2c-hetマウスにおける海馬LTPの障害も有意に回復させた(図15H図19)。
【0065】
図1に要約されるように、Mef2c-hetマウスは、MCHS様行動障害を示し、したがって、疾患の病態生理学を研究するためのモデルを表した。Mef2c-hetマウスは、生存率の低下を示したが、その原因は現在のところ不明である。成人期まで生存したMef2c-hetマウスは、神経細胞数およびシナプス障害の減少、特に抑制性および興奮性神経伝達の低下によって引き起こされるE/I不均衡を示す。驚くべきことに、新しい改善されたNMDAR拮抗薬ニトロシナプシンによるMef2c-hetマウスの治療は、E/I不均衡を修正するだけでなく、自閉症/MCHS様行動障害も改善し、よって標的の検証および潜在的な疾患治療を提供する。
【0066】
本明細書で提供された結果は、VGATがMef2c-hetマウスの海馬において有意に減少することを示した。この発見と一致して、自発的mIPSCの記録において実証されているように、機能的抑制性シナプス伝達が減少した。さらに、VGLUT2は、異常に上方制御され、興奮性神経伝達の増加と一致しており、これは、mEPSC頻度の増加によって実証されている。その結果、機能不全の抑制性および興奮性神経伝達は、Mef2c-hetマウスの海馬におけるE/I不均衡に寄与する。驚くべきことに、ニトロシナプシンは、Mef2c-hetマウスにおける3つのパラメータすべてを有意に改善し、シナプスマーカ、LTP、および神経細胞数を増加させた。最も重要なことに、ニトロシナプシンは、Mef2c-hetマウスにおける自閉症/MCHS様行動を有意に改善した。
実施例6 結節性硬化症のTSC+/-マウスモデルにおけるニトロシナプシンの有益な効果
【0067】
結節性硬化症(TSC)は、知的障害、てんかん/電気生理学的障害、および神経行動異常によって明らかにされる常染色体優性障害であり、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴を生成することが多い。この障害は、2つの遺伝子、Tsc1またはTsc2のうちの一方を不活性化するヘテロ接合変異によって引き起こされる。TSCタンパク質は、TSC1/2複合体を形成し、これは、ラパマイシン複合体1(mTORC1)の哺乳動物の標的を活性化するGTPアーゼであるRhebを阻害する。mTORC1は、mRNAの翻訳および細胞増殖を刺激し、TSC1/2複合体が不活性であるために、この経路が過剰に活性化されると、シナプスでの異常なシグナル伝達、および様々な神経細胞型におけるAMPA受容体の異常なサブユニット組成など、TSCの病理学的特徴が生じる場合がある。1つの重要な病因経路には、mTORの過剰刺激が含まれる。TSCにおけるmTORの過剰活性化により、マクロオートファジーが阻害され、その結果、シナプス棘および行動異常が喪失され、ラパマイシンによるmTORの阻害は、これらの表現型を回復させることができる。
【0068】
この例では、eNMDARで強壮活性を優先的に遮断する拮抗薬、特に新薬ニトロシナプシンが、Tsc2+/-(het)マウス表現型における生物学的かつ統計的に有意な改善を提供することが分かった。これらの研究では、結節性硬化症のTsc2+/-マウスモデルを使用した。この改善に伴って、p38 MAPK-TSC-Rheb-mTORC1-S6K1経路における活動が修正された(図20)。Tsc2+/-マウスにおける海馬長期増強(LTP)、シナプスの組織学的な喪失、および行動恐怖条件付けにおける欠損はすべて、ニトロシナプシンによる治療後に改善された。総合すると、これらの結果は、過剰なeNMDAR活動を制限することによる興奮性/抑制性(E/I)の不均衡の改善が、TSCに対する新しい治療アプローチを示し得ることを示唆している。
ニトロシナプシンは、Tsc2ヘテロ接合マウスにおける長期海馬可塑性の欠損を回復させる
【0069】
興奮性入力に応答して誘発されるシナプス可塑性の一形態であり、海馬における学習および記憶の電気的相関を表すと考えられる、長期増強(LTP)を調査した。海馬スライスのCA1領域におけるフィールド記録を使用して、この形態のシナプス可塑性に対するTsc2変異の影響を調査した。この目的のために、生後1か月のマウスからの急性海馬スライスを準備し、人工脳脊髄液(ACSF)を灌流した微小電極アレイ(MEA)部屋でフィールド記録を行った。fEPSP(フィールド興奮性シナプス後電位)を、シャッファー側枝の刺激を介してLTPを誘発した後、CA1領域において記録した(各1秒間に100Hzパルスの4回の繰り返し)。fEPSPの初期勾配を分析して、LTPを評価した。しかしながら、ここで使用されているより強力な誘導プロトコルでは、誘導後60分でモニタされたLTPの減少が観察された。驚くべきことに、1~2μMの、メマンチンではなく、より効果的なeNMDAR拮抗薬ニトロシナプシンによる4時間の治療が、ビヒクル対照治療と比較して、Tsc2+´-マウスにおけるLTPを改善する(55~65分でP<0.001)ことが分かった。図21~23に示すように、ニトロシナプシン(別名、ニトロメマンチン)は、シナプス、長期増強(LTP)、およびADD/IDDの結節性硬化症複合体(TSC)hetモデルにおける神経行動を、メマンチンよりも有意に良好な程度に保護した。
Tsc2ヘテロ接合マウスのニトロシナプシン治療は、シナプス喪失を減少させる
【0070】
Tsc2+/-マウスの脳組織学に対するeNMDAR拮抗薬の効果を判定するために、定量的共焦点免疫組織化学を使用して、ビヒクル、メマンチン、またはニトロシナプシンにより2日半治療された3か月齢の野生型(WT)およびTsc2+/-マウスからの冠状脳スライスを分析した。C57Bl/6J背景上のTsc2+/-マウスに、腹腔内経路を介して、ビヒクルまたは92μmol/kgの負荷用量のメマンチンもしくはニトロシナプシンのいずれかを投与し、続いて、4.6μmol/kgの薬剤を、2日半の間1日2回投与し、最後は、行動訓練セッションの3時間前に投与した(合計5回の薬物注射について)。この投与計画により、脳内のNMDARで1~10μMの有効濃度の薬物が得られる。
【0071】
TSCの重要な特徴は、シナプスの喪失を伴うと考えられている。重要なことに、ニトロシナプシン(ニトロメマンチン)で治療したTsc2+/-マウスは、海馬におけるシナプス前マーカシナプトフィシン(SY38)に対する染色が、未治療のヘテロ接合同腹仔よりも有意に多かったのに対し、メマンチンの効果は、統計的に有意ではなかった(図21Aおよび21Bを参照されたい)。
【0072】
追加のマーカ分析には、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP、これらの条件下での星状細胞マーカ)、NeuN(神経細胞核および細胞体マーカ)、および微小管関連タンパク質2(MAP2、神経細胞樹状突起棘を標識する)が含まれた。海馬の共焦点免疫組織化学画像は、WT対Tsc2+/-マウスにおけるNeuN、MAP2、またはGFAPの発現に差がないことを明らかにした。まとめると、これらの組織学的結果は、シナプスの喪失とは対照的に、海馬における疾患のこの段階で神経細胞/神経線維網の有意な喪失または反応性星状細胞の増加の増加がなかったことを示している。
ニトロシナプシンは、Tsc2ヘテロ接合マウスにおける神経行動表現型を改善する
【0073】
恐怖条件付け試験を、3か月齢のTSC2+/+およびTSC2+/+マウスに対して行い、TSC2+/-マウスにおける不安、ならびに学習および記憶障害に対するeNMDAR拮抗薬の効果を探査した。ビヒクル、メマンチン、またはニトロシナプシンを2日半の間投与し、最後の用量の薬物は、最初の訓練セッションの3時間前に行った。恐怖条件付け試験(図23を参照されたい)において、WT同腹仔マウスは、新しいコンテキスト(P=0.032)を超える訓練コンテキストで身動き停止時間の有意な増加量を示し、これは、これらの動物が2つの条件を区別することができることを示している。図23は、恐怖条件付け試験によって評価されたTsc2+/-マウスにおけるコンテキスト識別に対するメマンチンまたはニトロシナプシンによる治療の効果を示している。恐怖条件付け試行において、ビヒクル、メマンチン、またはニトロシナプシンで治療した3か月齢のWTおよびTsc2+/-遺伝子導入マウスの身動き停止時間。試験されたマウスの4つすべてのグループ(WTビヒクル、Hetビヒクル、Hetメマンチン、およびHetニトロシナプシン)は、「訓練コンテキスト」および「新規コンテキスト+キュー」において身動き停止を示し、これは、条件付けられた恐怖反応は遺伝子型または薬物によって影響を受けなかったことを示している。さらに、WTマウスは、訓練コンテキストと新規コンテキストとの間のコンテキスト識別を表示した(*P=0.032)。対照的に、ビヒクルまたはメマンチンで治療されたTsc2+/-マウスは、この行動において欠陥を示し、訓練コンテキストと新しいコンテキストとの間の識別の欠如(n.s.=有意差なし)をもたらした。ニトロシナプシン治療は、この表現型を改善し、Tsc2+/-マウスにおけるコンテキスト識別を正常化した(**P=0.023)。値は、平均+標準誤差である(グループあたりn=7~12匹のマウス)。略語:訓練コンテキスト=音声キューが先行するショックによりマウスが以前に訓練された訓練環境。新しいコンテキスト=試験部屋内の新しいフローリングおよび壁。新規コンテキスト+キュー=音声キューを備えた新規コンテキスト。
【0074】
対照的に、Tsc2+/-(het)マウスは、この形式のコンテキスト識別が欠落していた。驚くべきことに、メマンチンは、この欠陥を緩和することができなかったが、ニトロシナプシンは、Tsc2+/-マウスにおけるコンテキストを正常なWTレベルに対して識別する能力を改善した(P=0.023)。対照として、試験されたマウスの4つすべてのグループ(WTビヒクル、Hetビヒクル、Hetメマンチン、およびHetニトロシナプシン)が、新規コンテキストにおいて条件付きキューに対して身動き停止を示し、これは、海馬に依存しない恐怖反応が、遺伝子型または薬物の影響を受けなかったことを示している。
【0075】
要約すると、CA1海馬におけるLTPの誘導から約1時間後にモニタされたように、メマンチンではなく、新しい改善された薬物であるニトロシナプシンの短期(4時間)の適用により、シナプス可塑性の欠損を回復させることができた。重要なことに、ニトロシナプシンによる2日半の治療は、シナプトフィジン染色によってモニタされるように、Tsc2+/-マウスの海馬においてモニタされたシナプス喪失を逆転させた。ニトロシナプシンによる2日半の治療は、Tsc2+/-マウスにおけるコンテキスト識別を正常化したが、メマンチンによる治療ではそうならなかった。ニトロシナプシンは、シナプス可塑性の電気生理学的読み出し、シナプスの神経組織学的分析、ならびに不安および記憶の神経行動学的評価において、メマンチンよりも大きな利点を提供した。これらの結果は、生活の質を改善するための努力において、TSCの神経学的側面に対する潜在的な治療薬としてニトロシナプシンを試験する必要があることを示唆している。
実施例7 レット症候群のMeCP2ヌルマウスモデルにおけるニトロシナプシンの有益な効果
【0076】
図24に示すように、ニトロシナプシンは、別の型のADD/IDDであるレット症候群のMeCP2ノックアウト(KO)マウスモデルにおける運動行動を改善した(当業者によく知られているロータロッド試験において)。
【0077】
本出願は、Mef2c-hetマウスが、ヒトMCHSに対する有用なモデルであることを実証しており、E/I不均衡は、MCHSの病因においてある役割を果たす可能性がある。適切なNMDAR拮抗薬によるシナプス可塑性の回復および神経細胞損失の防止は、Mef2c-hetマウスにおける自閉症/MCHS様表現型を回復または改善した。ここでの結果は、ニトロシナプシン(ニトロメマンチンYQW-036またはNMI-6979としても知られている、構造1を参照されたい)の投与による、ヒトMCHSならびに他の形態のASD、IDD、およびてんかん(例えば、本明細書に示すような、TSCおよびレット症候群)の治療を記載している。
実施例8.方法
【0078】
実施例1~7は、記載されている以下の方法を用いた。当業者は、以下の説明が例示であり、実施例1~7で同じまたは類似の結果を得ながらも、些細な変形を行うことができることを理解している。
マウス、薬物治療、および行動試験
【0079】
Mef2cヘテロ接合ノックアウト(Mef2c-het)マウスは、それらのWT同腹仔とMef2c(Mef2cΔ2)の従来のエキソン2欠失対立遺伝子を保有するマウスを交配することによって作成された。これらのマウスを維持および使用するためのすべての手順は、Sanford Burnham Prebys Medical Discovery InstituteのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。この研究では、(薬物治療の有無にかかわらず)均一性を保証するために、行動アッセイについてオスのマウスのみを使用した。メマンチン、ニトロシナプシン(両方とも4.6μmol/kg体重)またはビヒクル(PBS)による長時間治療を、約2.5週齢から開始して、少なくとも3か月間、1日2回、腹腔内注射で投与した。この年齢が選択されたのは、マウスがまだ幼いため、治療がヒトと同等の段階で始まる可能性があるためである。薬物治療のこの用量および持続期間は、ニトロシナプシンが神経細胞およびシナプスに対して有意な保護効果を示した、以前の研究に基づいて選択された。
【0080】
遺伝子型を決定する前に、マウスを、メマンチン、ニトロシナプシン、またはビヒクルグループにランダムに分配した。腹腔内注射および行動試験を行う実験室研究者は、遺伝子型を知らされていなかった。行動試験の後、以下に記載するように、マウスを免疫組織化学または電気生理学のいずれかのために使用し、盲検法で研究した。
自発運動
【0081】
自発運動は、ケージの底から2cmおよび7cmの位置に、2つのレベルのフォトセルビームを取り付けたフレーム(25.5×47cm)内に置かれたポリカーボネートケージ(42×22×20cm)において測定された(San Diego Instruments,San Diego,CA)。これら2つのビームセットにより、水平(移動)および垂直(後ろ足立ち)の両方の動作を記録することができた。薄い層の寝床材料をケージの底に適用した。マウスは、正確な試験に応じて、30分間または120分間試験された。
手足の握り
【0082】
手足の握り試験のために、マウスの尾の遠位3分の1でマウスを取り上げ、10秒間観察した。それらは、前足および/または後足の握りに基づく遺伝子型に関して盲検法で評価された:0-前足の握りなし、1-前足の時々の握り、ならびに3-前足の絶え間ない握りおよび後足の時々の握り。
バーンズ迷路
【0083】
バーンズ迷路は、直径75cmの不透明なプレキシガラス製ディスクで構成され、三脚によって床から58cm高くなっている。直径5cmの20個の穴は、周囲から5cmのところに位置し、黒いプレキシガラス脱出ボックス(19×8×7cm)は、穴のうちの1つの下に置かれた。迷路の周りに明確な空間的キューが配置され、それらは研究全体を通じて一定に保たれた。試験の初日に、マウスを脱出ボックスに入れて1分間そのままにしておくことからなる訓練セッションを行った。1分後、最初のセッションが開始された。各セッションの開始時に、マウスを、高さ10cmの円筒形の黒い開始部屋内の迷路の中央に置いた。10秒後、開始部屋を取り外し、ブザー(80dB)およびライト(400ルクス)をオンにし、マウスは迷路を探査させるため自由にされた。マウスが脱出トンネルに入ったとき、または3分が経過した後、セッションは終了した。マウスが脱出トンネルに入ると、ブザーがオフになり、マウスを1分間暗所に留まらせた。マウスが単独でトンネルに入らなかった場合、マウスを1分間優しく脱出ボックスに入れた。トンネルは常に同じ穴(空間環境内で安定)の下に位置し、各マウスについてランダムに決定された。マウスは、研究の取得部分について12日間にわたって1日1回試験された。一般に、マウスは、バーンズ迷路をストレスが少ないためモリス水迷路よりも好むことが多いことに留意されたい。しかしながら、げっ歯類はモリス水迷路を使用して他の適応症についてニトロシナプシンで試験されたため、比較のために、ここで薬物試験についても使用された。
モリス水迷路
【0084】
従来のバージョンのモリス水迷路を使用して、空間参照学習および記憶を試験した。マウスは、直径14cmのプラットフォームまで泳ぐように訓練され、水面下1.5cmに沈められた。プラットフォームは、泳いでいる間、マウスには見えなかった。マウスが60秒以内にプラットフォームを見つけることができなかった場合、マウスを手動でプラットフォームに誘導し、10秒間そこに留まらせた。マウスには、基準に到達するのに必要な日数の間、1日4回の試行が行われた(20秒未満の平均脱出待ち時間)。最後の訓練試行の24時間後に、空間訓練の保持を評価した。両方のプローブ試行が、プラットフォームなしのプールにおける60秒間の自由水泳で構成された。ANY-mazeビデオトラッキングシステム(Stoelting Co.)を使用して、自動分析についてのすべての試行をビデオテープに記録した。
3部屋社会的相互作用
【0085】
この試験は、もともと、自閉症の動物モデルのためにクローリーグループによって開発された。自閉症の個体は、低レベルの社会的アプローチおよび異常な相互作用を含む、異常な互恵的社会的相互作用を示す。各部屋が20cm(長さ)×40.5cm(幅)×22cm(高さ)の長方形の3部屋プレキシグラスボックスで構成される社会的相互作用装置を使用した。部屋を分割する壁は透明で、小さな半円形の開口部(半径3.5cm)があり、各部屋にアクセスすることができた。中間の部屋は空で、2つの外側の部屋には小さな丸いワイヤーケージが含まれていた(Galaxy Cup,Spectrum Diversified Designs,Inc.,Streetsboro,OH)。マウスを装置全体に5分間馴化させた。社会的相互作用を評価するために、今度は見知らぬマウス(ワイヤーケージにつながれた同性のC57BL/6J)と共に、マウスを中間の部屋に戻した。見知らぬマウスと一緒に部屋で過ごした時間と、空のワイヤーケージを含む部屋で過ごした時間を、各々5分間記録し、各部屋への進入回数も記録した。実験マウスを1回試験し、見知らぬC57BL/6Jマウスを最大6回の試験に使用した。
穴ボード探査
【0086】
装置は、プレキシガラス製ケージ(32×32×30cm)で構成され、高床上に等間隔で4×4(各々直径3cm)の形式で16個の穴があった。頭部突っ込みの数および頭部突っ込みに費やされた時間を含む探査活動を、5分間測定した。
海馬スライスの準備および電気生理学
【0087】
1~6か月齢のマウスにイソフルランの過剰投与で麻酔をかけ、断頭した。脳を迅速に解剖し、海馬スライス(厚さ350μm)を、以下(mM中):212スクロース、3KCl、5MgCl、0.5CaCl、1NaHPO、26NaHCO、および10グルコース(pH7.4)を含有する氷冷解剖緩衝液中に回収した。てんかん様活動を避けるために、CA3領域を切断した。スライスを、以下(mM中):124NaCl、5KCl、26NaHCO、1.25NaHPO、2CaCl、1MgCl、および10グルコース(pH7.4)を含有する人工脳脊髄液(ACSF)中に30℃で置いた。ACSFおよび解剖緩衝液を、95%のO/5%のCOで泡立てた。記録する前に、スライスを水没記録部屋に入れ、30℃に維持し、ACSFで≧1時間灌流した。
【0088】
細胞外フィールドの記録には、同心の双極タングステン電極を使用して、海馬CA1領域におけるシャッファー側枝/交連(SC)線維を活性化した。ACSFで満たされた細胞外ガラス微小電極(抵抗約1~3MΩ)を放射状層に置き、フィールド興奮性シナプス後電位(fEPSP)を測定した。ベースラインの記録では、スライスは、測定された最大のfEPSP振幅を引き出すために使用された刺激強度の30~40%の刺激強度で0.033Hzで20分間刺激された。長期増強(LTP)は、3つの100Hzパルス(持続時間:1秒、間隔:20秒)で構成される高周波刺激(HFS)を適用することによって誘発された。ペアパルス促進(PPF)は、刺激間隔(ISI)が20~200ミリ秒の2つのパルスを適用することで試験された。実験には、Multiclamp 700Bアンプ(Molecular Devices)を使用した。5kHzでデータをサンプリングし、Clampfit 10プログラム(Molecular Devices)を使用して分析した。
【0089】
シナプス活動は、全細胞電圧クランプ技術を使用して、歯状回(DG)顆粒神経細胞から記録された。データは、Multiclamp 700BアンプおよびClampe×10.2ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して取得された。記録は200μsでサンプリングされ、2kHzでフィルタリングされた。ACSFを外部浴液として使用し、50μMのピクロトキシンおよび1μMのテトロドトキシン(TTX)を用いて、自発的な小型興奮性シナプス後電流(mEPSC)を分離するか、または10μMの6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン(CNQX)、50μMの(2R)-アミノ-5-ホスホノペンタン酸(AP5)、および1μMのTTXを用いて、自発的な微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)を分離した。すべての溶液を、記録を開始する前に少なくとも20分間平衡化させた。電圧クランプ実験用ピペット内部溶液は、以下(mM中):120K-グルコン酸塩、15KCl、1MgCl、5HEPES、5EGTA、2Mg-ATP、pH7.4(300ミリオスモル)を含有した。典型的には、mEPSCおよびmIPSCは、少なくとも3~5分間記録され、ミニ分析プログラムバージョン6.0.3(Synaptosoft)を使用して分析された。
免疫組織化学および不偏立体細胞計数
【0090】
マウスをPBS緩衝液で灌流し、次に、PBS中に2%のパラホルムアルデヒド(PFA)で灌流した。灌流後、脳を摘出し、固定後のために2%のPFAに一晩置いてから、凍結する前にPBS中の30%のスクロースに沈めた。クライオスタット切片を、15μmの厚さに切断した。切片を、Antigen Unmasking Solution(Vector)に浸し、30秒間マイクロ波照射した後、PBS中の0.25%のTriton X-100で15分間透過処理した。一次抗体を4℃で16時間、蛍光標識二次抗体を25℃で2時間インキュベートした。各フィールドの多くの未染色細胞は、染色特異性に対する内部制御として機能した。一次抗体には、NeuN(マウス、EMD ミリポア)、活性化カスパーゼ3(ウサギ、細胞シグナル伝達)、VGLUT1(モルモット、SYSY)、VGLUT2(ウサギ、SYSY)、VGAT(マウス、SYSY)、シナプトフィシン(マウス、シグマ)、GFAP(マウス、シグマ)、PCNA(マウス、サンタクルス)、DCX(ヤギ、サンタクルス)が含まれた。TUNELアッセイは、ベンダーの指示に従ってRoche In Situ Cell Death Detection Kitを使用してアポトーシスを評価するために行われた。NeuN、活性化カスパーゼ3、TUNEL、GFAP、PCNA、またはDCXによって占有される陽性またはパーセント領域の細胞数は、光学ディセクタを使用して特定の脳領域において計数されるか、または前述のように定量的共焦点免疫組織化学もしくは光学密度によって推定された。
脳溶解物の調製およびウエスタンブロッティング
【0091】
脳組織を、10容量の冷スクロース緩衝液(0.32Mのスクロース、25mMのHepes、pH7.4)で均質化した。3,000gで4℃で5分間の短時間の遠心分離を行った後、上清を回収し、10,000gで4℃で12分間の遠心分離を行った。ペレットの外側の3分の4を回収し、穏やかなピペッティングによって同じスクロース緩衝液を使用して再懸濁したが、ミトコンドリアを含む暗い中心は避けた。10,000gで4℃で12分間の2回目の遠心分離を行った後、暗い中心のないペレットを、シナプトソーム濃縮脳溶解物として冷HBS(25mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl)中に回収し、ウエスタンブロット実験のために使用した。免疫ブロットの一次抗体には、VGLUT1(モルモット、SYSY)、VGLUT2(ウサギ、SYSY)、GAD65(ウサギ、ミリポア)、シナプトフィシン(マウス、ミリポア)、MEF2C(ウサギ、プロテインテック)、α-チューブリン(マウス、シグマ)、β-アクチン(マウス、シグマ)、およびその後に適切な二次抗体52が含まれた。GAD65の抗体がウエスタンブロットに対して優れていることが証明されたため、免疫ブロットには、VGATの代わりにGAD65が使用されたことに留意されたい。免疫シグナルは、コダックX線フィルムでキャプチャされ、Image Jバージョン1.45sを使用して定量化された。
ゴルジ染色およびSholl分析
【0092】
製造元の指示に従って、FD Rapid GolgiStainキット(FD NeuroTechnologies,Inc.)を使用して、WTおよびMef2c-het脳を用いて標準的なゴルジコックス含浸を行った。細胞全体の3Dモンタージュをデコンボリューション顕微鏡によって40倍で撮影し、SlideBook 5.0ソフトウェア(Intelligent Imaging Innovations)で再構築した後、いずれかに詳細に記載されているように、Neurolucida神経細胞追跡ソフトウェア(MBF Bioscience)を使用して、全細胞プロファイルを描写し、Sholl分析を行った。累積樹状突起交差および樹状突起長を分析した。
成人の神経新生
【0093】
成体の神経新生を研究するために、8週齢のマウスに、BrdU(50mg/kg体重)を連続5日間毎日2回腹腔内注射し、最後の注射の4週間後に4%のPFAで灌流した。次に、脳を解剖し、4%のPFA中に一晩固定し、すすぎ、凍結保護し、液体Nで凍結した。凍結切片(厚さ30または40μm)をクライオスタットでスライスした。適切な共役二次抗体と共に一次抗体に対して、標準的な免疫染色手順を使用した。BrdU免疫染色では、切片を2N HCLで30分間前治療した。PCNA、DCX、BrdU、NeuN、またはmCherryに対して陽性の細胞を、Mef2c-hetおよびWTマウスの海馬DGを通した連続切片において分析した。SlideBookソフトウェアを使用して、63倍の対物レンズの下で陽性細胞を計数した。細胞の総数は、光学ディセクタ技術を使用して計数された。同じ露光時間およびコントラスト/輝度パラメータで写真を撮影した。特定のマーカに対する平均強度は、ImageJソフトウェアを使用して決定され、DG顆粒神経細胞の平均強度に正規化された。各マーカについて、少なくとも40個の細胞を含有する最低6枚の写真を分析した。
運動行動試験
【0094】
均衡は、4回の20秒間の試行において、高架(40cm)水平ロッド(長さ50cm)から落ちるまでの待ち時間によって測定された。試行1~2では平らな木製のロッド(幅9mm)を使用し、試行3~4では円筒状のアルミニウムロッド(直径1cm)を使用した。各試行において、動物を高架ロッド上のマーク付き中央ゾーン(10cm)に置いた。動物が20秒以内に落ちた場合は0、中央ゾーン内に20秒間滞在した場合は1、中央ゾーンを離れた場合は2、バーの両端のうちの一方に到達した場合は3のスコアが与えられた。引き上げられた水平バー(直径2mm)の周りで握った前足によって吊るされたまま、後肢を上げる動物の能力として、牽引力を3回の5秒間の試行にわたって測定した。動物が手足を上げていない場合は0、1つの手足を上げている場合は1、2つの手足を上げている場合は2のスコアが与えられた。筋力は、マウスを上下逆さまの位置で水平バーの中央に置き、転倒するまでの待ち時間を測定した、60秒間の1回の試行によって判定された。垂直ポール試験では、布テープ(直径1cm、高さ:試行1において75cm、試行2~3において55cm)で覆われた木製の垂直ポールの上に頭を上向きにしてマウスを置いた。下向きになるまでの待ち時間および3回の試行にわたって床に降りるまでの合計時間を記録した。マウスが下向きにならない、落下する、または滑り落ちる場合、デフォルト値の60秒が記録された。
マイクロアレイおよびNextBio遺伝子ネットワーク分析
【0095】
Qiagen miRNAキットを使用して、出生後30日目にWTおよびMef2c-hetマウスの海馬から調製した凍結組織から総RNAを抽出した。ナノドロップ分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用してRNA濃度を判定し、Agilent Bioanalyzerを使用してRNAの品質を評価した。発現分析に含まれるすべてのRNA試料のRNA完全性番号(RIN)は、8を超えていた。MouseRef-8 v2発現ビーズチップ(Illumina)を、遺伝子発現マイクロアレイに使用した。RソフトウェアおよびBioconductorパッケージを使用して、マイクロアレイデータ分析を行った。生の発現データを、log2変換し、分位数正規化によって正規化した。データ品質管理基準には、高いアレイ間相関(ピアソン相関係数>0.85)ならびに平均アレイ間相関および階層的クラスタリングに基づく異常値アレイの検出が含まれた。
【0096】
経路濃縮分析では、WTマウスと比較して、Mef2c-hetマウスにおいて発現が統計的に変化した(P<0.05)すべての遺伝子を、NextBio(Illumina,Inc.)の経路濃縮アプリケーションを使用して、GOタームについてクラスター化した。使用された遺伝子の背景セットは、ヒトゲノム全体であった。ランクスコアは、前述の方法に基づいて、NextBioによって割り当てられた。神経発達に関連するGOタームにクラスター化された遺伝子は、遺伝子発現の変化の検証のために優先順位が付けられた。
統計分析
【0097】
データは、平均±標準誤差として報告される各実験の統計的試験は、ここ、図の凡例またはテキストに列挙されている。すべてのデータは、Prism 6プログラム(GraphPad Software,Inc.)を使用して分析された。正常分布のデータの場合、ペアワイズ比較のスチューデントのt検定によって統計的有意性が判定された。複数の比較のために、Tukey、Dunnett、またはNewman-Keulsの事後分析によるANOVAを使用した。カテゴリデータでは、2×2分割表でのカイ2乗検定またはフィッシャーの正確検定を用いた。正常分布に適合しないデータについては、ノンパラメトリック検定が使用された。P<0.05は、統計的に有意とみなされた。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22A
図22B
図23
図24