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特許7277476アレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせを含む化学療法剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】アレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせを含む化学療法剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 33/22 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K31/155 ZMD
A61K33/22
A61P13/00
A61P35/00
A61K9/14
A61K47/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020548648
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 TR2019050152
(87)【国際公開番号】W WO2020018037
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】2018/03493
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン フィクレッティン
(72)【発明者】
【氏名】カシクジ エズギ
(72)【発明者】
【氏名】アイデミル チョバン エスラ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/200447(WO,A1)
【文献】特開2018-035151(JP,A)
【文献】Mol.Cancer Ther.,2006,5(9),p.2234-2240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 35/00-35/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vitroにおける膵臓癌細胞生存率の低減に使用されるアレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物化合物との組み合わせで製造された化学療法剤。
【請求項2】
請求項1に記載の化学療法剤であって
-アレキシジンジヒドロクロリド化合物を計量し、
-前記アレキシジンジヒドロクロリド化合物にジメチルスルホキシド化合物を添加し、10μMの濃度で原液を調製し、
-前記原液を-20℃の温度で暗い環境において使用時まで保管し、
-五硼酸ナトリウム五水和物溶液を供給し、該五硼酸ナトリウム五水和物溶液を培地に溶解させることで1000μMの濃度で五硼酸ナトリウム五水和物溶液を生成し、
-前記培地に溶解された五硼酸ナトリウム五水和物の前記溶液を250μMの濃度に希釈し、
-250μMに希釈された前記溶液をフィルタリングし、滅菌し、
-終濃度が2.5μMになるように、アレキシジンジヒドロクロリドを250μMの濃度を有する五硼酸ナトリウム五水和物溶液に添加する工程により得られる化学療法剤。
【請求項3】
2.9mgのアレキシジンジヒドロクロリド化合物を含む請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項4】
アレキシジンジヒドロクロリド化合物に0.5mlのジメチルスルホキシド化合物を添加することにより得られる請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項5】
2.5mgの五硼酸ナトリウム五水和物化合物を含む請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項6】
劣化せずに4℃の温度で72時間保管可能な請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項7】
膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)の生存率を60~80%低減する請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項8】
正常膵細胞(hTert-HPNE)の生存率を10~15%低減する請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項9】
正常椎間板細胞(HNPC)の生存率を10~15%低減する請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項10】
ヒト包皮間葉系幹細胞(hFSSCs)の生存率を10~15%低減する請求項1に記載の化学療法剤。
【請求項11】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の生存率を5~10%低減する請求項1に記載の化学療法剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌に対するアレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせの効果に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓は臓器であって、この臓器は約15cmの長さであり、腹部の最後部に位置し、胃、十二指腸、および大腸により完全に覆われた前面を有する。膵臓癌は癌の種類の中でも治療に対する反応が最も小さいことが知られている。膵臓癌の外科的療法の結果についての悲観的な予測は、80年代以降は比較的良好な結果になる余地を残した。
【0003】
膵臓癌の病因は正確には知られていないが、いくつかの危険因子は特定されている。年齢(50歳以降の上昇したリスク)、性別(男性における膵臓癌の上昇したリスク)、喫煙(膵臓癌症例の30%は喫煙に関連すると考えられる)、食事(食事および運動についての見解をまとめることは困難であるが、果物類、野菜類、および繊維食品の摂取が危険を低減する一方で、肉および脂肪性生産品の摂取はリスクを上昇させると考えられている)などの因子がある。
【0004】
膵臓における腫瘍の正確な位置、疾患のステージ、患者の身体的状態(年齢、体重など)が膵臓癌の治療のために評価され、その後、外科的療法、放射線療法、および化学療法から選択された1つまたは複数が使用される。
【0005】
化学療法は、抗癌剤を使用して癌細胞を殺すことである。膵臓癌は、手術前後に患者の全体的な状態を考慮して、化学療法と呼ばれる薬物療法により治療され得る。化学療法は、手術前に腫瘍を縮小させるために、または、手術の代わりの放射線療法との組み合わせで一次療法として適用され得る。手術および放射線療法は、進行したステージの転移疾患においては有用ではない。この群の患者に対する化学療法の適用によって患者の生活の質を大幅に向上できることが知られている。
【0006】
米国特許第9399032号明細書には、当技術分野では知られているように、アレキシジンジヒドロクロリドを含む一群の化学薬品はガラクトース中に溶解されると細胞の成長を選択的に阻止することが開示されている。
【0007】
2006年9月刊行の、Kenneth W. Yip、Emma Ito、Xinliang Mao、 P.Y. Billie Au、David W. Hedley、 Joseph D. Mocanu、 Carlo Bastianutto、 Aaron SchimmerおよびFei-Fei Liuにより刊行されたMolecular Cancer Therapeuticsという本の「Potentialuse of alexidine dihydrochloride as an apoptosis-promoting anticancer agent」という題名の記事の要約において、アレキシジンジヒドロクロリドが癌治療に使用されることが開示されている。
【0008】
David Katz、 EmmaIto、 Ken S. Lau、 Joseph D. Mocanu、 Carlo Bastianutto、 Aaron D. Schimmer、およびFei-Fei Liuにより2008年2月に刊行されたBio Techniquesという名前の本の「Increased efficiency for performing colony formation assays in 96-well plates: novel applications to combination therapies and high-throughputscreening」という題名の記事に、アレキシジンジヒドロクロリドを抗癌用途に使用できることが記載されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、アレキシジンジヒドロクロリド化合物に五硼酸ナトリウム五水和物を添加することにより製造された製品の治療効果を10~20%上昇させることである。
【0010】
本発明の別の目的は、アレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせを膵臓癌治療のための化学療法剤として使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、正常細胞および膵臓癌細胞の生存率に対するアレキシジンジヒドロクロリドの効果(比色テトラゾリウム(MTS)生存率検定)を説明するグラフを示す。
図2図2は、正常ヒト包皮幹細胞(hFSSCs)の細胞の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図3図3は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図4図4は、正常椎間板細胞(HNPC)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図5図5は、正常ヒト膵細胞(hTert-HPNE)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図6図6は、膵臓癌細胞(MIAPaCa-2)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図7図7は、膵臓癌細胞(Psn-l)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
図8図8は、膵臓癌細胞(AsPc-1)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明は、膵臓癌治療において使用され、
-2.9mgのアレキシジンジヒドロクロリド化合物を計量し、
-アレキシジンジヒドロクロリドにジメチルスルホキシド溶液を添加することにより200μM、100μM、50μM、25μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.6μM、0.3μM、0.15μM、0.078μM、および0.039μMの濃度をそれぞれ有するアレキシジンジヒドロクロリド溶液を調製し、
-膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)と、膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)と、正常椎間板細胞(HNPC)とを含む培地に、ジメチルスルホキシド比率が1/1000未満になるように溶液を個別に添加し、
-通常の細胞培養条件である37℃の温度で湿度85%のインキュベーターにおいて24時間、48時間、および72時間それぞれ培養し、
-比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定を行い、
-最適な結果が出るように分析の結果に基づいて決定された48時間培養された2.5μMのアレキシジンジヒドロクロリドを調製し、
-1000μM、500μM、250μM、100μMの濃度の五硼酸ナトリウム五水和物溶液をそれぞれ調製し、
-通常の細胞培養条件である37℃の温度で湿度85%のインキュベーターにおいて膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)、正常椎間板細胞(HNPC)、ヒト包皮間葉系幹細胞(hFSSCs)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、および膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)の培地に対して前記調製した五硼酸ナトリウム五水和物溶液を適用し、
-五硼酸ナトリウム五水和物溶液と細胞とを含む培地において比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定を行い、
-1000μM、500μM、250μM、100μMの濃度の五硼酸ナトリウム五水和物溶液をそれぞれ調製し、通常の細胞培養条件である37℃の温度で湿度85%のインキュベーターにおいて膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)、正常椎間板細胞(HNPC)、ヒト包皮間葉系幹細胞(hFSSCs)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、および膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-lおよびPsn-l)をそれぞれ含む培地に対して前記五硼酸ナトリウム五水和物溶液をアレキシジンジヒドロクロリドと共に適用し、
-アレキシジンジヒドロクロリドと、五硼酸ナトリウム五水和物溶液と、細胞との溶液を含む培地において比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定を行う工程により得られる化学療法剤である。
【0013】
本発明の化学療法剤は、アレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせを含み、膵臓癌細胞における細胞消滅を誘発する。アレキシジンジヒドロクロリドは、581.71グラム/モルの分子量とC265610・2HC1の化学式とを有する化合物であり、10mg/ml以上のジメチルスルホキシドに溶解する。膵臓癌に対するアレキシジンジヒドロクロリドの有効量は、膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)と、膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)と、正常椎間板細胞(HNPC)とに対して比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定を行うことにより決定される。
【0014】
アレキシジンジヒドロクロリドをジメチルスルホキシドに溶解させて200μM、100μM、50μM、25μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.6μM、0.3μM、0.15μM、0.078μM、および0.039μMの濃度のアレキシジンジヒドロクロリド溶液を調製し、ジメチルスルホキシド比率が1/1000未満であるように、膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)と、膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)と、正常椎間板細胞(HNPC)とを含む培地に添加した。72時間の培養後に行った比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定の結果、正常膵細胞と正常椎間板細胞とは影響を受けていないが、膵臓癌細胞の生存率は、中央毒性投与量(TD50)である2.5μMと48時間の培養とによって50%に低減されたと判断された。
【0015】
アレキシジンジヒドロクロリド溶液の化学療法的効果を上昇させるために、溶液に五硼酸ナトリウム五水和物化合物を添加することが計画されている。五硼酸ナトリウム五水和物は、295.107グラム/モルの分子量とB10NaO13の化学式とを有する化合物である。
【0016】
五硼酸ナトリウム五水和物化合物は、使用され滅菌を可能にするためにフィルタリングされた細胞のための適切な培地に溶解された。使用された濃度の五硼酸ナトリウム五水和物化合物は、何等かの追加の溶媒の添加を必要とすることなく培地に即座に溶解される。培地の通常のpH値は7.4であり、培地は、五硼酸ナトリウム五水和物沈殿物を72時間は形成しなかった。次に、五硼酸ナトリウム五水和物を1000μM、500μM、250μM、100μMの濃度でそれぞれ調製し、膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)と、正常椎間板細胞(HNPC)と、ヒト包皮間葉系幹細胞(hFSSCs)と、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とを含む培地に注入し、その後、48時間の間培養した。その後、毒性分析(比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定)を行った。48時間培養された1000μMの濃度の五硼酸ナトリウム五水和物の溶液は、70%の平均生存率という最適な結果を出した。
【0017】
次に、2.5μMのアレキシジンジヒドロクロリドを1000μM、500μM、250μM、100μMの濃度でそれぞれ調製した五硼酸ナトリウム五水和物溶液に添加し、膵臓の正常細胞(hTert-HPNE)と、正常椎間板細胞(HNPC)と、ヒト包皮間葉系幹細胞(hFSSCs)と、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とを含む培地に注入し、その後48時間培養した。その後、毒性分析(比色テトラゾリウム塩(MTS)生存率検定)を行った。分析の結果、正常細胞を損傷しない最適な組み合わせ結果は、250μMおよび100μMの五硼酸ナトリウム五水和物と2.5μMのアレキシジンジヒドロクロリドとの組み合わせであると判断された。
【0018】
同じ濃度の溶液を調製し、それらを膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)を含む培地に添加し、比色テトラゾリウム(MTS)生存率検定を行う際に、正常細胞にとっては非致死量である250μMの五硼酸ナトリウム五水和物と2.5μMのアレキシジンジヒドロクロリドとの組み合わせが膵臓癌細胞の生存率を48時間の培養の際に50%を超えて低減したことが観察された。この値は、アレキシジンジヒドロクロリド単独の化学療法的効果よりも10~20%高い。
【0019】
培地において調製されたアレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との溶液は、4℃で72時間を過ぎるとその効果を失い始めることが観察された。この溶液は、新鮮な状態で調製され、化学療法剤として一度に使用されるのがよい。
【0020】
実験解析データ
実験解析データを示すグラフにおいて、「NAB」は、五硼酸ナトリウム五水和物の省略形として使用され、「AD」は、アレキシジンジヒドロクロリドの省略形として使用される。陰性対照は、「NC」と省略され、細胞の培地が単独で使用されることを示す。
【0021】
図1は、正常細胞および膵臓癌細胞の生存率に対するアレキシジンジヒドロクロリドの効果(比色テトラゾリウム(MTS)生存率検定)を説明するグラフを示す。
【0022】
当該のグラフにおいて、ADと共に48時間培養された正常膵細胞(hTert-HPNE)、正常椎間板細胞(HNPC)、および膵臓癌細胞(MIAPaCa-2、AsPc-l、およびPsn-l)の生存率が分析された。得られた結果から、2.5μMの濃度のADと共に48時間培養することは正常細胞を損傷しないが、膵臓癌細胞の生存率をMIAPaCa-2については53%に、AsPc-lについては58%に、そして、Psn-lについては45%に低減したことが観察された。
【0023】
図2は、正常ヒト包皮幹細胞(hFSSCs)の細胞の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0024】
当該のグラフにおいて、正常ヒト包皮幹細胞(hFSSCs)の生存率プロファイルは、単独のNABと共に、および、ADと組み合わせられたNABと共に、48時間培養した際に観察された。得られた結果によると、hFSSC細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は低い(85%の生存率)ことが観察された。
【0025】
図3は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0026】
当該のグラフにおいて、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の生存率プロファイルは、単独のNABと共に、および、ADと組み合わせられたNABと共に48時間培養した際に観察された。得られた結果によると、HUVEC細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は低い(94%の生存率)ことが観察された。
【0027】
図4は、正常椎間板細胞(HNPC)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0028】
当該のグラフにおいて、正常椎間板細胞の生存率プロファイルは、NABの単独での、およびADとの組み合わせでの48時間培養の結果として観察された。得られた結果によると、HNPC細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は低い(86%の生存率)ことが観察された。
【0029】
図5は、正常ヒト膵細胞(hTert-HPNE)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0030】
当該のグラフにおいて、正常ヒト膵細胞の生存率プロファイルは、NABの単独での、およびADとの組み合わせでの48時間培養の結果として観察された。得られた結果によると、HNPC細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は低い(89%の生存率)ことが観察された。
【0031】
単独のNABと共に、および、ADと組み合わせられたNABと共に正常細胞に対して行われた分析の結果として、正常細胞および癌細胞に対して使用されることになる投与量は、250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせであると判断された。正常細胞に対して使用されたこの投与量および他の投与量を、膵臓癌細胞に注入し、48時間以内のそれらの効果を観察した。
【0032】
図6は、膵臓癌細胞(MIAPaCa-2)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0033】
当該のグラフにおいて、膵臓癌細胞(MIAPaCa-2)の生存率プロファイルは、NABの単独での、およびADとの組み合わせでの48時間培養の結果として観察された。得られた結果によると、MIAPaCa-2細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は、同じ投与量のADの単独での効果よりも高いと判断された(41%)。ADの単独での適用はMIAPaCa-2細胞の生存率を53%に低減した一方で、NABとADとが組み合わせて適用された場合、さらに12%の低減が生存率において観察された。
【0034】
図7は、膵臓癌細胞(Psn-l)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0035】
当該のグラフにおいて、膵臓癌細胞(Psn-l)の生存率プロファイルは、NABの単独での、およびADとの組み合わせでの48時間培養の結果として観察された。得られた結果によると、Psn-l細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は、同じ投与量のADの単独での効果よりも高いことが観察された(41.60%)。ADの単独での適用はPsn-l細胞の生存率を51.6%に低減した一方で、NABとADとが組み合わせで適用された場合は、さらに10%の低減が生存率において観察された。
【0036】
図8は、膵臓癌細胞(AsPc-1)の生存率に対する48時間培養の終了時のNABの単独での、およびADとの組み合わせでの効果のグラフを示す。
【0037】
当該のグラフにおいて、膵臓癌細胞(AsPc-l)の生存率プロファイルは、NABの単独での、およびADとの組み合わせでの48時間培養の結果として観察された。得られた結果によると、AsPC-l細胞に対する250μMのNABと2.5μMのADとの組み合わせの生存率破壊効果は、同じ投与量のADの単独での効果よりも高いことが観察された(39.2%)。ADの単独での適用はAsPC-l細胞の生存率を58.3%に低減した一方で、NABとADとが組み合わせで適用された場合は、さらに19%の低減が生存率において観察された。
【0038】
実施された解析法の結果として、アレキシジンジヒドロクロリドが膵臓癌細胞対して化学療法活性を有するということが証明された。正常細胞は膵臓癌細胞にとっての中央毒性投与量(TD50)である2.5μMのADにより死滅しないことが見出された。見出されたこの情報によると、アレキシジンジヒドロクロリドを膵臓癌治療における化学療法剤として使用することができる。
【0039】
本発明によると、アレキシジンジヒドロクロリドと五硼酸ナトリウム五水和物との組み合わせは、膵臓癌の治療における化学療法剤として得られ、かつ使用され得る。この組み合わせにより、膵臓癌細胞の生存率は少なくとも10%以上低減された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8