(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】軌道を走行可能な軌道整備用機械
(51)【国際特許分類】
B60L 50/75 20190101AFI20230511BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20230511BHJP
B60M 1/28 20060101ALI20230511BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60L50/75
B60L50/53
B60M1/28 C
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2020567597
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 AT2020060135
(87)【国際公開番号】W WO2020198774
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】520470512
【氏名又は名称】マーテ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼルシュタイナー・フィリップ
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528342(JP,A)
【文献】特表2013-515888(JP,A)
【文献】特開2006-325316(JP,A)
【文献】特開2011-036101(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210533(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0061307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288342(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0246717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60M 1/00- 1/36
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの駆動モータ(4)と軌道を整備するための少なくとも1つの作業ユニット(1)とを有する軌道を走行可能な軌道整備用機械であって、
常設エネルギー源と電気エネルギー貯蔵装置(3)と電車用電力を供給するための集電装置とが、前記駆動モータ(4)と前記作業ユニット(1)とに給電するために設けられていて、
前記常設エネルギー源と前記エネルギー貯蔵装置(3)と前記電車用電力を供給する前記集電装置と前記駆動モータ(4)と前記作業ユニット(1)とが、コンバータを介して共通の1つの直流電力網(9)に接続されている当該軌道を走行可能な軌道整備用機械において、
前記常設エネルギー源は、前記コンバータを介して前記作業ユニット(1)の少なくとも1つのベース負荷を前記直流電力網(9)に給電する燃料電池(2)であること、及び
少なくとも前記作業ユニット(1)のピーク負荷を賄うため、バッファ貯蔵装置として作用する前記エネルギー貯蔵装置(3)のバッファエネルギーが、当該付設されたコンバータを介して前記直流電力網(9)に給電可能であることを特徴とする軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項2】
前記ベース負荷は、記憶装置(12)に記憶された値であり、この値は、前記軌道整備用機械の走行速度と処理温度と必要な作業ユニット出力とに依存して制御装置(13)によって適合可能であることを特徴とする請求項1に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項3】
前記作業ユニット(1)は、軌道の軌道ヘッドの、マシニング加工のための少なくとも1つの工具、特にフライス工具及び/又は研磨工具、又は矯正加工のための工具、特に圧造工具又は打撃工具又はレーザー工具を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項4】
集電装置によってトロリー線(6)及び/又は給電用軌道(5)から供給される電車用電力(20)が、前記エネルギー貯蔵装置(3)を充電するために、及び/又は少なくとも1つの駆動モータ(4)に給電するために供給されている請求項1~3のいずれか1項に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項5】
前記バッファエネルギー又は前記集電装置によって供給される前記電車用電力の給電が、少なくとも前記作業ユニット(1)の必要な電力に依存してバッテリー監視システム(11)によって実行可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項6】
集電装置によって供給された電車用電力によって、及び/又はバッファエネルギーによって稼働可能である電解装置が、前記軌道整備用機械に付設されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項7】
前記電気エネルギー貯蔵装置(3)は、前記駆動モータ(4)の電動式ブレーキによって充電可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項8】
加熱抵抗(7)が、前記電動式ブレーキに付設されていて、この加熱抵抗の放熱が、軌道を事前に温度調節するために当該整備すべき軌道に供給されることを特徴とする請求項7に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項9】
前記燃料電池の放熱が、軌道を事前に温度調節するために当該整備すべき軌道に供給されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の軌道を走行可能な軌道整備用機械。
【請求項10】
軌道を走行可能な軌道整備用機械へのエネルギー供給を制御するための方法であって、
作業ユニット(1)のベース負荷が、常設エネルギー源によって賄われる当該方法において、
燃料電池(2)として構成された常設エネルギー源のベース負荷を超えるピーク負荷を賄うため、エネルギー貯蔵装置(3)が給電されること、及び、
ベース負荷とピーク負荷との間の限界を示す閾値が、先行する時点n-1の処理変数(15)と必要な作業ユニット出力(16)とに依存して時点nに対して予測的に決定されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの駆動モータと軌道を整備するための少なくとも1つの作業ユニットとを有する軌道を走行可能な軌道整備用機械に関する。この場合、常設エネルギー源と電気エネルギー貯蔵装置と電車用電力を供給するための集電装置とが、当該駆動モータと当該作業ユニットとに給電するために設けられている。この場合、当該常設エネルギー源と当該エネルギー貯蔵装置と当該電車用電力を供給する当該集電装置と当該駆動モータと当該作業ユニットとが、コンバータを介して共通の1つの直流電力網に接続されている。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路上で様々な保守作業を実行するための電動式の鉄道車両が、従来の技術から公知である。このため、国際公開第2018210533号パンフレットに開示された鉄道車両は、アキュムレータとして構成されたエネルギー貯蔵装置を有する。このエネルギー貯蔵装置は、保守作業を実行するための複数の作業用装置に給電する。当該エネルギー貯蔵装置は、例えば充電装置、トロリー線、又はエンジンと結合された発電機によって充電され得る。しかしながら、これの欠点は、当該エネルギー貯蔵装置の容量が制限されていることである。その結果、特に、例えばトロリー線のような架空線なしでの鉄道線路上の保守作業では、又は、エンジンがその有毒物放出に起因して全く適しない地下の鉄道線路での作業では、エネルギー消費が少なく且つピーク負荷が予測可能な作業ユニットだけが給電され得る。さらに、アキュムレータとして構成された当該エネルギー貯蔵装置の頻繁な充放電サイクルに起因して、このエネルギー貯蔵装置の寿命が著しく低下するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018210533号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、整備品質を損なうことなしに、激しく変化するピーク負荷を伴う作業ユニットの、低保守で且つ環境に優しい作業成果を可能にする、軌道を走行可能な軌道整備用機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のこの課題は、当該常設エネルギー源は、当該コンバータを介して当該作業ユニットの少なくとも1つのベース負荷を当該直流電力網に給電する燃料電池であること、及び、少なくとも当該作業ユニットのピーク負荷を賄うため、バッファ貯蔵装置として作用する当該エネルギー貯蔵装置のバッファエネルギーが、当該付設されたコンバータを介して当該直流電力網に給電可能であることによって解決される。
【0006】
例えばプロトン交換膜型の燃料電池は、常設エネルギー源として作用し、それ故にこの燃料電池が1つの作業ユニット又は複数の作業ユニットの少なくとも1つのベース負荷を賄えるように仕様設計されている。この場合、当該作業ユニットの予測される平均電力が、ベース負荷とみなされ得る。当該燃料電池は、場合によってはあり得る別のエネルギー貯蔵装置の中間接続なしに当該作業ユニット及び/又は駆動モータを直接に駆動させるために使用されるので、貯蔵装置又は環境に起因した効率損失が最小限にされ得る。特に整備工程の場合、電力需要が、非常に激しく変化する。何故なら、要求される整備品質を維持するために、追加のエネルギー源が、当該電力ピークを賄うために使用されるからである。本発明によれば、当該事項は、エネルギー貯蔵装置、例えばバッテリーモジュール又はコンデンサによって実行される。当該エネルギー貯蔵装置は、バッファ貯蔵装置として作用し、当該作業ユニットの電力需要が、ベース負荷を超えるときにだけ、又は、燃料電池の始動工程時に、エネルギーが、当該作業ユニットに供給される。当該電力ピークが一時的にだけ発生するという事実に基づいて、当該エネルギー貯蔵装置の一部だけが放電される。その結果、充電サイクルが著しく低下し、これにより当該エネルギー貯蔵装置の寿命が長くなる。当該燃料電池を適切に仕様設計した場合、駆動モータの給電も可能である。これにより、軌道を走行可能な軌道整備用機械が、別のエネルギー源、例えば電車用電力又は発電機に完全に依存しないで稼働され得る。これにより、当該軌道整備用機械は、鉄道・道路両用車両として構成されてもよい。これにより、移動が、鉄道線路上でも、電車用電力に依存せずに道路上でも実行され得る。依然として電車用電力が提供されるならば、当該電車用電力は、本発明の装置の集電装置によって取り入れられ得る。異なる複数のエネルギー源及び電力負荷が、異なる電圧レベルで相互に作用し、これらのエネルギー源及び電力負荷は、様々なコンバータを介してこれらのエネルギー源及び電力負荷を接続させる1つの直流電力網に接続されている。
【0007】
特に作業ユニットの作動時に、予測不可能な温度変動が、燃料電池内で起こり得る。その結果、このとき、当該燃料電池の定格出力を超えることなしに、当該燃料電池の過熱も起こり得る。それ故に、燃料電池をその最適な動作で稼働できるようにするため、及び、当該燃料電池の過熱による望まない停止を回避するため、ベース負荷は、軌道整備用機械の走行速度と処理温度と必要な作業ユニット電力とに依存して制御装置によって適合可能である、記憶装置に記憶された値であることが提唱される。したがって、当該ベース負荷は、固定値、例えば燃料電池の仕様書の出力電力である必要はなくて、方法の請求項の対象である数学モデルに基づいて、軌道整備用機械の走行速度、処理温度、例えば周囲温度及び/又は燃料電池の温度並びに必要な作業ユニットに依存して連続して計算される。
【0008】
作業ユニットが、軌道の軌道ヘッドの、マシニング加工のための少なくとも1つの工具、特にフライス工具及び/又は研磨工具、又は矯正加工のための工具、特に圧造工具又は打撃工具又はレーザー工具を有するときに、ピーク負荷を賄うための燃料電池とバッファ貯蔵装置とを有する本発明のエネルギー供給装置は、非常に効率的に使用され得る。すなわち、特に整備のマシニング工程及び矯正工程が、マシニングすべき又は処理すべき軌道層の厚さ、硬度又は表面特性に応じて様々な負荷を発生させる。バッファ貯蔵装置のバッファエネルギーを供給することによって、要求される整備品質が、非常に硬い材料の場合でも維持され得る。
【0009】
先行する作業ステップに依存しないで、軌道整備用機械の連続する使用を可能にするため、集電装置によってトロリー線及び/又は給電用軌道から供給される電車用電力が、当該エネルギー貯蔵装置を充電するために、及び/又は少なくとも1つの駆動モータに給電するために供給されていることが提唱される。こうして、当該適切なインフラストラクチャの存在により、当該エネルギー貯蔵装置は、持続して又は一時的に充電され得る。存在する複数のエネルギー源、すなわちバッファエネルギー及び電車用電力を様々に組み合わせることによって、軌道整備用機械を稼働させるための様々な可能性が得られる。すなわち、例えば運行又は営業走行時に、電車用電力が、駆動モータを駆動させるために使用され得る一方で、燃料電池及びバッファ貯蔵装置は、作業ユニットのベース負荷及びピーク負荷を賄うために使用される。別の駆動思想では、例えば作業ユニットのベース負荷及びピーク負荷も、電車用電力によって賄われ得る。例えばトンネル内での整備工程に対しては、全てのベース負荷、すなわち作業ユニットのベース負荷と駆動モータのベース負荷との双方が、燃料電池によって賄わられ、エネルギー貯蔵装置が、ピーク負荷時にそれぞれの電力負荷に給電することが望ましい。
【0010】
電力需要に応じて、異なる複数のエネルギー源が、それらの最適な動作範囲にしたがって互いに適応されて使用され得るように、本発明の装置の非常に実用的な実施の形態では、バッファエネルギー又は集電装置によって供給された電車用電力の給電が、少なくとも1つの作業ユニットの必要な電力に依存してバッテリー監視システムによって実行可能である、特に制御可能であり且つ調整可能であることが望ましい。このため、当該バッテリー監視システムは、例えばバスシステムを介して様々なエネルギー源と電力負荷とに接続されていて、電車用電力を供給するトロリー線及び/又は給電用軌道の支配的な電圧と、駆動モータの必要な電力と作業ユニットの必要な電力とを監視し、これらのエネルギー源間の切り換えを必要な電力に応じて制御又は調整する。燃料電池は、起動後にその全ての定格出力を即座に供給できないので、駆動モータ及び/又は作業ユニットの必要とされる電力は、一時的に電車用電力又はバッファ貯蔵装置によって賄われてもよい。基本的には、燃料電池は、始動時以外は常に定格出力で稼働される。当該定格出力は、少なくとも1つの作業ユニットのベース負荷を賄うのに十分である。しかしながら、電力負荷に起因するピーク負荷が、当該定格出力を超えると、バッテリー監視システムは、バッファ貯蔵装置又は(存在するならば)電車用電力を給電する。当該接続及び遮断は、燃料電池の電力を常に測定しながら実行される。当該燃料電池の電力が増大すると、バッファ貯蔵装置又は電車用電力の電力供給が、当該燃料電池の通電に依存して当該バッテリー監視システムによって減少される。当該バッテリー監視システムによって実行される中断のない切り換え(当該切り換えは、燃料電池又は電車用電力の故障時にはまだ機能可能な別のエネルギー源をその都度起動させる)を複数のエネルギー源間で達成するため、例えば、常開接点と常閉接点とを有する電磁開閉器が、それぞれのエネルギー源に設けられてもよい。この対策の結果として、特に連続して稼働するフライス工具及び/又は研磨工具を有する作業ユニットの場合に要求されている一定の整備品質が保証され得る。
【0011】
燃料電池用の外部のエネルギー源にほとんど依存しないで軌道整備用機械を持続して稼働できるようにするため、電解装置が、集電装置によって供給された電車用電力によって、及び/又はバッファエネルギーによって稼働可能である軌道整備用機械に付設されてもよい。こうして、燃料電池の稼働時に発生する水が、電車用電力によって電解生成物である水素及び酸素に分解され得る。当該水素及び酸素は、同様に燃料電池用に化学反応物質として使用され得るか、又はガス貯蔵装置内に貯蔵され得る。
【0012】
本発明の軌道整備用機械のエネルギーを自給できる改良された実施の形態では、電気エネルギー貯蔵装置が、駆動モータの電動式ブレーキによって充電可能であるというさらなる利点がある。これにより、運動エネルギーが、エネルギー貯蔵装置内に簡単に貯蔵され得て、例えば水素を生成するために再利用され得る。代わりに、加熱抵抗が、電動式ブレーキに付設されていて、この電動式ブレーキの放熱が、軌道を事前に温度調節するために当該処理すべき軌道に供給されてもよい。さらに、燃料電池の放熱が、軌道を事前に温度調節するために当該処理すべき軌道に供給されてもよい。こうして発生する放熱は、鉄道線路を乾燥若しくは除霜させるため、又は例えば除雪のために使用されてもよい。軌道整備用機械に必要な様々な測定システムが、当該天候に起因する阻害要因を排除することによって正確に使用され得る。これにより、冬でも又は雨の時でも、申し分のない整備品質が保証され得る。
【0013】
本発明の装置は、軌道を走行可能な軌道整備用機械へのエネルギー供給を制御するための方法によって制御され得る。この場合、作業ユニットのベース負荷が、常設エネルギー源によって賄えられる。ピーク負荷が激しく変化する場合でも、燃料電池の過熱を引き起こすことなしに、当該装置を環境に優しく且つ省資源に稼働できるようにするため、燃料電池として構成された常設エネルギー源のベース負荷を超えるピーク負荷を賄うため、エネルギー貯蔵装置が給電されること、及び、ベース負荷とピーク負荷との間の限界を示す閾値が、先行する時点n-1の処理変数と必要な作業ユニット出力とに依存して時点nに対して予測的に決定されることが提唱される。したがって、当該閾値は、固定値ではなくて、予測モデル計算によって連続して新たに確定される。したがって、ベース負荷も、連続して変化する値である。当該閾値の下にある所定の実際の電力が、軌道整備用機械によって到達されると、当該実際の電力は、燃料電池によって完全に賄われ得る。様々な処理変数が変化すると、当該新たに計算された閾値が、必要な実際の電力未満に低下され得る。最適な総合効率にとって有利な結果となるように、エネルギー貯蔵装置が給電される。したがって、当該閾値を変化させることによって、ベース負荷を賄う燃料電池から供給されるエネルギーとピーク負荷を賄うエネルギー貯蔵装置から供給されるエネルギーとの間の比が、必要な実際の電力に対して調整され得る。当該予測モデル計算は、所定の時点nに対する閾値を計算するため、時点n-1、すなわち時点nに先行する時点に測定される必要な作業ユニット電力と、例えば軌道整備用機械の走行速度、周囲温度、燃料電池の温度のような測定される処理変数とを使用する。さらに、任意の外乱変数が、当該モデル計算に入力されてもよい。特に現実的な実施の形態では、当該モデル計算は、一般的な機械学習アルゴリズムによって最適化され得る。当該モデル計算を用いたこの予測制御によって、当該燃料電池は、当該閾値を絶えず適合することで、総合効率の最大かにとって有利になるように、当該燃料電池の最適な動作で稼働され得る。
【0014】
図面には、本発明の対象のブロック線図が例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】軌道を走行可能な軌道整備用機械のブロック線図である。
【
図2】軌道を走行可能な軌道整備用機械へのエネルギー供給を制御するための方法のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の軌道を走行可能な軌道整備用機械は、軌道を整備するための作業ユニット1を有する。この作業ユニット1のベース負荷が、燃料電池2によって賄えられる。特にマシニング加工及び矯正加工用の作業ユニット1は、例えばフライス工具又は研磨工具及び圧造工具又は打撃工具又はレーザー工具のように、激しく変化するピーク負荷を有するので、バッファ貯蔵装置として作用するエネルギー貯蔵装置3が、当該ピーク負荷を賄うために設けられている。確かに、燃料電池の定格出力が、作業ユニット1と駆動モータ4との双方に給電できるように、当該定格出力は仕様設計されているものの、既存の適切なインフラストラクチャの場合は、さらに、電車用電力が、給電用軌道5又はトロリー線3から取り入れられてもよい。多様なエネルギー源(燃料電池2、エネルギー貯蔵装置3、給電用軌道5、トロリー線6)と、電力負荷(作業ユニット1、駆動モータ4、加熱抵抗7)とが、コンバータ8を介して直流電力網9に接続されている。この場合、当然に、異なるコンバータ8が、エネルギー源2,3,5,6又は電力負荷1,4,7に応じて使用される。その結果、直流電力網9の希望した電圧が取得され得る。したがって、最初に、トロリー線6の、例えば25kV/50Hzの通常の交流電圧が、コンバータ8によって直流電力網9の希望した直流電圧、例えば750Vに変圧される前に、当該交流電圧は、変圧器10によって例えば400V/50Hzの交流電圧に変圧される必要がある。好ましくは、燃料電池2が、中間接続された貯蔵装置なしに作業ユニット1又はアクチュエータに給電する。これにより、貯蔵装置又は変圧に起因した効率損失が最小限にされ得る。
【0017】
運行又は営業走行中にもエネルギー貯蔵装置3に充電できるようにするため、給電用軌道5及び/又はトロリー線6の電車用電力が、集電装置から給電される。
【0018】
燃料電池2は、その始動時にその定格出力を即座に提供できないので、場合によってはあり得る当該ベース負荷又はピーク負荷に達するまで、バッファ貯蔵装置として使用されるエネルギー貯蔵装置3によって、給電用軌道5によって又はトロリー線6によって賄えられる必要がある。これらのエネルギー源2,3,5,6の連続し且つ互いに適応された移行を達成するため、バッテリー監視システム11が使用される。このバッテリー監視システム11は、常に電力を測定しながら、例えばバスシステムを通じてエネルギー源2,3,5,6と電力負荷1,4,7とに接続されていて、これらのエネルギー源2,3,5,6とこれらの電力負荷1,4,7とを中断なしに接続又は遮断できる。これらのエネルギー源2,3,5,6のうちの1つのエネルギー源が故障したときに、例えば燃料電池2、給電用軌道5又はトロリー線6の故障時に、この自動切り換えは実行される。
【0019】
この場合、ベース負荷は、記憶装置12に記憶された値でもよい。この値は、軌道整備用機械の走行速度、処理温度、及び作業ユニットの必要な電力に依存して制御装置13によって適合可能である。この制御装置13は、バッテリー監視システム11に有効に接続され得るか、又はバッテリー監視システム11であってもよい。
【0020】
好ましくは、駆動モータ4は、電動式ブレーキとして作用でき、したがってエネルギー貯蔵装置3を充電する。このエネルギー貯蔵装置3が、既に完全に充電されているならば、余分なエネルギーは、加熱抵抗7に転送され得て、当該放熱が、軌道の温度調節に使用され得る。
【0021】
図2は、軌道を走行可能な軌道整備用機械へのエネルギー供給を制御するための方法のブロック線図である。最大の総合効率に関して最適な、燃料電池2から供給されるエネルギーとエネルギー貯蔵装置3から供給されるエネルギーとの間の比を計算できるようにするため、予測モデル計算14が、記憶装置13で計算される。この予測モデル計算14は、時点nに対してベース負荷とピーク負荷との間の限界を示す閾値を計算する。これは、所定の実負荷を必要とする場合に、当該閾値を変更することによって、燃料電池2から供給されるエネルギー成分とエネルギー貯蔵装置3から供給されるエネルギー成分との間の比が調整され得ることを意味する。この場合、時点nに対する閾値は、時点n-1に対する処理変数15と作業ユニット出力16とに依存して計算される。外乱変数17も、予測モデル計算14に入力され得る。当該外乱変数17は、機械学習アルゴリズム18によって連続して最適化される。この機械学習アルゴリズム18は、測定データ19を予測モデル計算14によって計算されたデータと比較する。特に好適な実施の形態では、トロリー線6又は給電用軌道5によって供給された電車用電力20が、電力供給のためにさらに接続されてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 作業ユニット
2 燃料電池
3 エネルギー貯蔵装置
4 駆動モータ
5 給電用軌道(第三軌条)
6 トロリー線
7 加熱抵抗
8 コンバータ
9 直流電力網
10 変圧器
11 バッテリー監視システム
12 記憶装置
13 制御装置
14 予測モデル計算
15 処理変数
16 作業ユニット出力
17 外乱変数
18 機械学習アルゴリズム
19 測定データ
20 電車用電力