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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】肺送達用ラパマイシン粉末
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230511BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20230511BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20230511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20230511BHJP
   A61P 31/10 20060101ALN20230511BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20230511BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A61K31/436
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/02
A61K47/18
A61K9/72
A61P37/06
A61P29/00
A61P35/00
A61P31/10
A61P35/02
A61P9/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021004679
(22)【出願日】2021-01-15
(62)【分割の表示】P 2017522659の分割
【原出願日】2015-11-06
(65)【公開番号】P2021054870
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】62/076,651
(32)【優先日】2014-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515108912
【氏名又は名称】サイヴィタス セラピューティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リップ,マイケル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】カマーカー,アブヒジト
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/074797(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0166869(US,A1)
【文献】特表2005-520843(JP,A)
【文献】特表2004-501183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/436
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質型のラパマイシンと薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、患者の気道へのラパマイシンの肺送達のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、0.075g/cm未満のタップ密度を有する噴霧乾燥粒子を含み、
前記医薬組成物は、ラパマイシン、リン脂質、塩、及びアミノ酸からなり、
前記医薬組成物中には、乾燥固形分のパーセントで測定して、それぞれ、5~40%のラパマイシン、5~20%のリン脂質、及び1~10%の塩化ナトリウムを含む、医薬組成物。
【請求項2】
患者の肺系統にラパマイシンを送達するための噴霧乾燥粒子製剤であって、
前記噴霧乾燥粒子製剤は、吸入器を用いて前記噴霧乾燥粒子製剤を散布することにより使用され、
前記噴霧乾燥粒子製剤は、コンパートメントに入れられた請求項1に記載の医薬組成物からなる、噴霧乾燥粒子製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年11月7日出願の、米国特許仮出願第62/076,651号の利益を主張する。上記出願の全教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシン(シロリムスとしても知られる)は、放線菌により産生される大環状ラクトンである。ラパマイシンの構造式を以下に示す。
【化1】
【0003】
ラパマイシンは、免疫抑制のためならびに移植拒絶反応、宿主対移植片疾患、自己免疫疾患、および炎症疾患、固形腫瘍、真菌感染、成人T細胞白血病/リンパ腫および過増殖血管疾患を処置するための治療薬としての使用により知られる。ラパマイシンは、リンパ脈管筋腫症(LAM)の処置にも有用である。LAMは、主として女性に認められ、リンパ節および腎臓を含む他の臓器に影響を及ぼすことが多い希な肺疾患である。
【0004】
ラパマイシンは、結晶質粉末の形態で入手可能で、水に不溶性であることが知られている。当業者には、低溶解度薬物の結晶質型から非晶質型への変換によりその溶解度を大きく増加させることができることが知られており、このことはラパマイシンにも当てはまる。しかし、非晶質ラパマイシンは、化学的に極めて不安定であり、そのために、どのような医薬品剤形としても容易には処方されない。本発明は、患者に肺内投与するための、安定なラパマイシンの噴霧乾燥粒子製剤を提供することにより上記の問題を克服する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ラパマイシン、またはラパマイシンの薬学的に許容可能な塩を含む安定な噴霧乾燥粒子製剤を提供し、これは、免疫抑制を誘導するためのおよび移植拒絶反応、宿主対移植片疾患、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍、真菌感染、成人T細胞白血病/リンパ腫、過増殖血管疾患およびLAMの処置のための、気道への肺内投与に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】種々のロットのラパマイシン噴霧乾燥粉末のX線回折パターンを示す図である。
図2】種々のロットの噴霧乾燥ラパマイシンの相互に重ねあわせたX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態では、本発明は、肺送達用に配合されたラパマイシンの安定な医薬組成物であって、該組成物は、ラパマイシンを含む噴霧乾燥粒子(本明細書においては、「粉末」または「乾燥粉末」としても参照される)を含み、ラパマイシンは、非晶質型、結晶質型、または非晶質型と結晶質型の混合物の粒子として存在する。
【0008】
一実施形態では、本発明は、肺送達用のラパマイシン医薬組成物であって、該組成物は、ラパマイシンを含み、約0.075g/cm未満のタップ密度を有する噴霧乾燥粒子を含む。本発明の一態様では、タップ密度は、約0.02~0.075g/cmである。本発明の別の態様では、タップ密度は、約0.02~0.05g/cmである。本発明のさらなる態様では、タップ密度は、約0.03~0.06g/cmである。本発明の一態様では、タップ密度は、約0.03~0.04g/cmである。本発明の別の態様では、メジアン幾何学径は、約5μm~30μm、5μm~10μm、7μm~15μm、または7μm~12μmである。
【0009】
一実施形態では、本発明は、肺送達用の医薬組成物であって、該組成物は、医薬品を含み、約5ミクロン(μm)を超えるメジアン幾何学径および約0.075g/cm未満のタップ密度を有する粒子を含む。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、患者の肺系統にラパマイシンを送達する方法であって、該方法は、
コンパートメントに入ったラパマイシンの噴霧乾燥粒子製剤および患者への吸入器を用意するステップであって、前記粉末がラパマイシンの粒子を含むステップと、
患者の呼吸動作により粉末を散布するステップと、
粒子を患者の呼吸器系に送達するステップと、を含む。
【0011】
本発明の一態様では、吸入器はドライパウダー吸入器である。Aerolizer、Diskus、Flexhaler、Handihaler、Neohaler、Pressair、Rotahaler、Turbohaler、およびTwisthalerを含む種々の吸入器を使うことができる。使用可能なその他のドライパウダー吸入器は、米国特許第6,766,799号、同第7,278,425号および同第8,496,002号に記載されている。これらの特許は、そこに記載されている吸入装置に関してそれらを開示するために、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の一態様では、コンパートメントはカプセルまたはブリスター包装である。本発明の一態様では、吸入器は、約0.05~約0.25、約0.15~約0.25、0.05~約0.15、0.2~約0.25、または約0.2の抵抗を有する。本明細書では、抵抗は、CmH2O/リットル/分の平方根である。
【0012】
本発明の別の態様では、前記コンパートメント中のラパマイシン粉末は、約5μm、約5μm~約30μm、約5μm~約15μm、または約7μm~約12μmより大きいメジアン幾何学径を有する。特定の一実施形態では、前記コンパートメント中の粒子は、10~12μmのメジアン幾何学径を有し、患者の気道に送達される粒子は、8~9μmのメジアン幾何学径を有する。別の実施形態では、患者の気道に送達される粒子は、前記コンパートメント中の粒子より5~20%小さい、5~10%小さい、または8~15%小さいメジアン幾何学径を有する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、肺送達用の医薬組成物であって、該組成物は、約5μmを超える幾何学径および約0.075g/cm未満のタップ密度を有するラパマイシンの粒子を含む。
【0014】
一実施形態では、粒子は、ラパマイシン、リン脂質および塩を含む。本発明の別の態様では、粒子は、ラパマイシン、リン脂質、塩、任意のアミノ酸および任意の糖を含む。
【0015】
本発明の組成物における使用に好適な塩の例としては、塩化ナトリウム(NaCl)、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、および塩化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物における使用に好適なリン脂質の例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、二飽和ホスファチジルコリン(DSPC)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物における使用に好適なアミノ酸の例としては、ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、フェニルアラニンおよびグリシンなどの疎水性アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物における使用に好適な糖類の例としては、ラクトースおよびマルトデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
一実施形態では、医薬組成物は、粉末中の乾燥固形分のパーセントで測定して、5~50%のラパマイシン、5~20%のリン脂質、および1~10%の塩化ナトリウムを含む粉末を含む。一実施形態では、医薬組成物は表1に示す配合物を有する。
【表1】
【0017】
一実施形態では、本発明の粒子は、10m/gを超える外表面積を有する。別の実施形態では、外表面積は、15m/g超、20m/g超、または約10~約50m/gである。
【0018】
カスケードインパクターを使った重量分析は、浮遊粒子の粒度分布を測定する方法である。アンダーセンカスケードインパクター(ACI)は、空気力学的サイズに基づいて、エアロゾルを9種の別々の画分に分離できる8ステージインパクターである。それぞれのステージのカットオフサイズは、ACIが稼働される流速に依存する。好ましくは、ACIは、60L/分で較正される。一実施形態では、粒子最適化のために2ステージ式縮小ACIを使用する。2ステージ式縮小ACIは、8ステージACIの内のステージ0、2およびFから構成され、2つの別々の粉末画分を収集可能とする。各ステージで、エアロゾル流は、一連のノズルを通過し、表面に衝突する。十分大きな慣性を有するエアロゾル流れ中の粒子は、プレートに衝突するであろう。プレートに衝突するために必要な十分な慣性を持たないより小さい粒子は、エアロゾル流れ中に残り、つぎにステージに運ばれる。
【0019】
第1のステージで収集される粉末の画分が、本明細書で「微粒子画分」または「FPF」と呼ばれる画分となるようにACIが較正される。FPFは、5.6μm未満の空気力学的径を有する粒子のパーセンテージに相当する。ACIの第1のステージを通過し、収集フィルターに沈着した粉末の画分は、「FPF(3.4)」と呼ばれる。これは、3.4μm未満の空気力学的径を有する粒子のパーセンテージに相当する。
【0020】
FPF画分は、患者の肺に沈着する粉末の画分と相関することが示され、一方、FPF(3.4)は、患者の肺深部に到達する粉末の画分と相関することが示されている。本発明では、カプセル中の公称用量の吸入可能粉末のFPF(すなわち、カプセル中に含まれる粉末中の、5.6μm未満の空気力学的径を有する粒子のパーセンテージ)は、約40%またはそれ超である。一実施形態では、カプセル中に含まれる吸入可能粉末の公称用量のFPFは、約50%、60%、または70%、または80%、または90%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約50%~約60%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約55%~約65%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約50%~約70%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約57%~約62%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約50%~約69%である。一実施形態では、FPFは、吸入器中に含まれる吸入可能粉末の公称用量の約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、または65%である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語の「公称粉末用量」は、カプセルに保持される粉末の合計量である。本明細書で使用される場合、用語の「公称薬物用量」は、公称粉末用量中に含まれるラパマイシンの合計量である。公称粉末用量は、粉末中の薬物の添加パーセントによる公称薬物用量に関連する。
【0022】
一実施形態では、公称粉末用量は、25~50mg乾燥重量である。さらなる実施形態では、公称粉末用量は、25~40mg乾燥重量である。またさらなる実施形態では、公称粉末用量は、30~35mg乾燥重量または32~38mg乾燥重量である。
【0023】
浮遊粒子の粒度分布を測定する別の方法は、多段液体インピンジャー(MSLI)によるものである。多段液体インピンジャー(MSLI)は、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)と同じ原理で動作するが、8ステージではなく、MSLIでは5ステージがある。さらに追加して、固体プレートからなるそれぞれのステージでの代わりに、それぞれのMSLIステージは、メタノール湿潤ガラスフリットからなる。湿潤ステージは、ACIを使う場合に起こることがある、跳ねて、再飛散するのを防ぐために使用される。MSLIは、粉末の流速依存性の指標を得るために使用される。これは、MSLIを、30、60、および90L/分で操作し、ステージ1および収集フィルター上に集まった粉末の画分を測定することにより実現できる。それぞれのステージの画分が異なる流量の間で比較的一定に残る場合には、粉末は流速非依存性粉末に匹敵すると考えられる。
【0024】
一実施形態では、本発明の吸入可能粉末は、約0.075g/cm未満のタップ密度を有する。例えば、粒子は、0.02~0.075g/cm、0.02~0.05g/cm、0.03~0.06g/cm、0.03~0.04g/cmのタップ密度、または約0.05g/cm未満のタップ密度、または約0.04g/cm未満のタップ密度、0.03g/cm未満のタップ密度を有する。タップ密度は、Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester(Vankel,NC)またはGEOPYCTM(商標)装置(Micrometrics Instrument Corp.,Norcross,GA,30093)などの当業者に公知の装置を用いて測定できる。タップ密度は、エンベロープ質量密度の標準測定値である。タップ密度は、米国薬局方Bulk Density and Tapped Density,United States Pharmacopia convention,Rockville,Md.,10th Supplement,4950-4951,1999の方法を使って測定できる。低タップ密度の原因となり得る特性としては、不規則な表面テクスチャーと多孔質構造が挙げられる。等方性粒子のエンベロープ質量密度は、それを内部に包み込むことができる最小球体エンベロープ体積で割った粒子の質量と定義される。本発明の一実施形態では、粒子は、約0.4g/cm未満のエンベロープ質量密度を有する。
【0025】
本発明の吸入可能粉末は、好ましい粒径、例えば、少なくとも近傍の1ミクロン(μm)の体積メジアン幾何学径(VMGD)を有する。一実施形態では、VMGDは、5μmより大きい。他の実施形態では、VMGDは、約5μm~30μm、約5μm~10μm、約7μm~15μmおよび約7μm~12μmである。噴霧乾燥粒子の直径、例えば、VMGDは、レーザー回折装置(例えば、Sympatec,Princeton,N.J.で製造されたHelos)を使って測定できる。粒径を測定するための他の装置は当該技術分野において周知である。サンプル中の粒子の直径は、粒子組成および合成の方法などの因子に応じて変化するであろう。サンプル中の粒子の粒径分布は、気道内の標的部位への至適沈着を可能にするように選択できる。
【0026】
本発明の吸入可能粉末の粒子は、約1μm~約5μmまたは約1μm~約5μmの範囲に包含される任意の部分範囲の、本明細書においては、「空気力学的径」とも呼ばれる「質量メジアン空気力学的径」(MMAD)を有するのが好ましい。例えば、限定されないが、MMADは、約1μm~約3μm、またはMMADは約3μm~約5μmである。一実施形態では、MMADは1.5μm~2.5μmである。実験的には、空気力学的直径は、重力沈降法を用いて測定することができ、それにより、粉末粒子全体が一定の距離を沈降するのに要する時間を使用して、直接粒子の空気力学的径が推定される。質量メジアン空気力学的径(MMAD)を測定するための間接的方法は、多段液体インピンジャー(MSLI)である。空気力学的径、daerは、式:
から計算できる。
【0027】
本発明のカプセルに使用するための粉末は通常、噴霧乾燥により作製される。場合によっては、噴霧乾燥は、極端に乾燥した粒子を生成することがあり、これは取り扱い性がよくない場合があり、また、緻密にカプセル中に詰め込むのが難しいことがある。指定湿気レベルを有する窒素源を乾燥粉末の上を、乾燥粉末を横切って、または乾燥粉末中を通過させることによって、指定含水量を乾燥粉末に与えてもよい。このような湿気により、所望の作業粉末密度を付与することができる。本発明における噴霧乾燥法は、本明細書の実施例中、および米国特許第6,848,197号および同第8,197,845号に記載されている。
【0028】
上述のようなラパマイシンを含む吸入可能粉末は、吸入器での使用に好適なカプセルに充填するために使用される。本明細書で使用される場合、「カプセル材料」という用語は、吸入用のカプセルの殻を構成する材料を意味する。一実施形態では、本発明によるカプセル材料は、ゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサンおよび合成プラスチックの中から選択される。
【0029】
ゼラチンがカプセル材料として使用される場合は、本発明による例には、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG3350、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、PEO-PPOブロックコポリマーならびにその他の多価アルコールおよびポリエーテルの中から選択してよい。セルロース誘導体がカプセル材料として使用される場合は、本発明による例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースから選択してよい。合成プラスチックがカプセル材料として使用される場合は、本発明による例には、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートから選択してよい。一実施形態では、カプセル材料には、二酸化チタンがさらに含まれる。好ましい一実施形態では、カプセルはHPMCおよび二酸化チタンを含む。一実施形態では、カプセルはカラギーナンを含む。さらなる実施形態では、カプセルは塩化カリウムを含む。またさらなる実施形態では、カプセルはHPMC、カラギーナン、塩化カリウム、および二酸化チタンを含む。一実施形態では、カプセルサイズは、000、00、0、1、または2から選択される。特定の実施形態では、カプセルサイズは00である。
【0030】
特定の一実施形態では、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。別の特定の実施形態では、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロースのサイズ00カプセルである。特定の一実施形態では、カプセル材料は、HPMCおよび二酸化チタンを含み、カプセルサイズは00である。
【0031】
一実施形態では、00カプセルは、15~50g乾燥重量のラパマイシンを含む。別の実施形態では、00カプセルは、20~40g乾燥重量のラパマイシンを含む。別の実施形態では、00カプセルは、25~35g乾燥重量のラパマイシンを含む。別の実施形態では、00カプセルは、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40g乾燥重量のラパマイシンを含む。
【0032】
本発明の一態様では、粉末は低静電荷を有し、カプセルからの高分散を可能とする。
【0033】
本発明のカプセルは、乾燥粉末組成物の送達用のドライパウダー吸入器中での使用に特に好適し、該組成物は、例えば、移植拒絶反応、宿主対移植片疾患、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍、真菌感染、成人T細胞白血病/リンパ腫および過増殖血管疾患ならびにLAMを処置するために、ラパマイシンを、それを必要としている患者に対する有効量で含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語の「有効量」は、所望の効果または効力を達成するのに必要な量を意味する。薬物の実際の有効量は、利用される具体的な薬物またはその組合せ、処方される特定の組成物、投与の形態、患者の年齢、体重、状態、ならびに処置される症状の発現の重篤度により変化する可能性がある。
【0035】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、さらに理解されるであろう。
【0036】
実施例
実施例1
1.噴霧溶液の配合
ラパマイシンおよびDPPCを、秤量前に30分間、室温で平衡化させる。水およびエタノールの必要量を秤量し、それぞれ水性および有機相供給容器に移し、両容器中の撹拌子のスイッチを入れる。必要量のラクトース、L-ロイシン、マルトデキストリン、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムを個々に秤量し(必要に応じ)、水性相容器に加え、渦の形成を起こさせずに溶解させる。必要量のDPPC(必要に応じ)、およびラパマイシンを秤量し、有機相容器に加え、溶解させる。
【0037】
2.噴霧乾燥の開始
a.マルトデキストリンを含む配合物
乾燥ガス流を流し始めることにより(100kg/時間に設定)、噴霧乾燥を開始する。乾燥ガス入口温度を130℃に設定する。噴霧乾燥機出口温度が80℃に達した後、窒素(噴霧ガス流=20g/分)を使用して、ブランク溶媒(水性流=28mL/分および有機流=42mL/分)を噴霧乾燥機中に霧状に吹くことが可能となるように液体スキッド入口を設定し、システムを冷却させて、55℃の出口温度に安定化させる。
b.マルトデキストリン不含配合物
乾燥ガス流を流し始めることにより(100kg/時間に設定)、噴霧乾燥を開始する。乾燥ガス入口温度を110℃に設定する。噴霧乾燥機出口温度が80℃に達した後、窒素(噴霧ガス流=20g/分)を使用して、ブランク溶媒(水性流=10mL/分および有機流=60mL/分)を噴霧乾燥機中に霧状に吹くことが可能となるように液体スキッド入口を設定し、システムを冷却させて、55℃の出口温度に安定化させる。
【0038】
3.両タイプの配合物に対し噴霧乾燥の継続
生成物フィルターのパルシングを開始し、生成物フィルターパージ流を15scfhに設定する。55℃でシステムを安定化させた後、液体スキッド入口を上記で調製した溶媒の供給に切り替え、供給材料がなくなるまで、プロセスを継続する。供給溶媒がなくなる時点で、液体スキッド入口をブランク溶媒に戻し、溶媒を約10分間噴霧させる。この時点で、生成物フィルターの底部で収集した粉末を15%のRH下で維持されたグローブボックス中の最終収集容器に移す。ブランク溶媒を10分間噴霧後、液体ライン、噴霧ガス、乾燥ガスヒーター、乾燥ガス入口および最終的に排気装置を停止することによりシステムを停止する。
【0039】
4.プロセスパラメータの要約
【表2】
【0040】
5.結果
噴霧乾燥配合物およびそれらの粒子特性を表2に示す。種々のロットのX線粉末回折図を図1に示す。図1に示すものと同じパターンを図2では相互に重ね合わせて示す。
【表3】
【0041】
本発明はその好ましい実施形態に言及しながら具体的に示し記載してきたが、添付した特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その形態や詳細を様々に変更してよいことを当業者なら理解するであろう。本明細書で記載の実施形態は、相互に排他的ではなく、種々の実施形態からの特徴の全部または一部を本発明に従って組み合わし得ることも理解されたい。

図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図2