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特許7277498微生物の自動化された選択およびMALDIを使用した同定
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  • 特許-微生物の自動化された選択およびMALDIを使用した同定 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】微生物の自動化された選択およびMALDIを使用した同定
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20230511BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230511BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20230511BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/26
G01N1/04 H
G01N35/10 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021034607
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2018073211の分割
【原出願日】2013-04-02
(65)【公開番号】P2021107815
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】61/618,003
(32)【優先日】2012-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513165469
【氏名又は名称】ビーディー キエストラ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェッジ ボトマ
(72)【発明者】
【氏名】マルテイン クリーフストラ
(72)【発明者】
【氏名】ティーノ ウォルター ファン デル ジー
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-254806(JP,A)
【文献】特開2018-157818(JP,A)
【文献】特開2011-103779(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
G01N 1/00-1/44
G01N 27/60-27/70;27/92
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(1)の自動懸濁液媒質分与器(12)を用いて、前記装置(1)の懸濁液管ホルダ(10)内に保持された懸濁液管(11)に、懸濁液媒質(14)の初期量を分与するステップと、
前記装置(1)の移送デバイス(15)を用いて、前記懸濁液媒質(14)内に、第1の採取ツール()を浸すことによって、前記懸濁液管(11)内に微生物のコロニー(4)の試料を置くステップであって、前記第1の採取ツール()は、前記移送デバイス(15)の移送ホルダ(16)内に位置決めされる、前記置くステップと、
前記第1の採取ツール()が前記懸濁液媒質(14)内に浸される間に、前記移送デバイス(15)を用いて、前記第1の採取ツール()を、一定の期間、直線垂直運動するように振動させるステップと、
前記第1の採取ツール()が振動させられる、前記一定の期間が経過した後に、前記装置(1)の濁度計(20)を用いて、前記懸濁液管(11)内に含まれる前記懸濁液媒質(14)の濁度を測定するステップと、
測定された濁度に応じて、(a)前記自動懸濁液媒質分与器(12)を用いて、前記懸濁液媒質(14)の追加の量を、前記懸濁液管(11)内に分与するステップ、(b)前記移送デバイス(15)を用いて、前記第1の採取ツール()、または、前記移送デバイス(15)の前記移送ホルダ(16)に位置決めされた第2の採取ツール()を、垂直に振動させることによって、前記懸濁液管(11)内に、前記微生物のコロニーの追加の試料を置くステップ、または、(c)コントローラを用いて、前記装置(1)の構成要素に、前記懸濁液管(11)は、更なる使用の準備ができているとの信号を提供するステップ、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記濁度計(20)は、前記第1の採取ツール()が振動させられる前記一定の期間の間に、前記コントローラに、前記測定された濁度を表すオンライン測定値を提供するように配置されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、前記懸濁液管(11)内に含まれる前記懸濁液媒質(14)の濁度を測定するステップは、前記第1の採取ツール()が振動させられる前記一定の期間の間に実行されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3の方法であって、オンライン測定値が、(a)第1の閾値と等しいか、それより小さい場合、および、(b)第2の閾値と等しいか、それよりも大きい場合、前記第1の採取ツール()は、前記移送デバイス(15)によって待機位置に引き上げられ、前記懸濁液管(11)は更なる使用の準備ができている、との信号が提供され、前記第1の閾値は、前記第2の閾値と等しいか、前記第2の閾値より大きいことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの方法であって、前記懸濁液管(11)内に含まれる前記懸濁液媒質(14)の前記濁度を測定する前記ステップは、前記第1の採取ツール()が、前記懸濁液管(11)内に含まれる前記懸濁液媒質(14)に浸される前に開始されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの方法であって、前記懸濁液管ホルダ(10)は、さらに、前記懸濁液管(11)を回転させるように構成され、前記懸濁液管(11)は、前記懸濁液管(11)内に含まれる前記懸濁液媒質(14)の前記濁度を測定する前記ステップの間、前記懸濁液管ホルダ(10)によって回転させられることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの方法であって、前記測定された濁度が、閾値よりも大きいときに、前記懸濁液媒質(14)の追加の量が、前記懸濁液管(11)に追加され、前記懸濁液媒質(14)の前記追加の量は、懸濁液媒質(14)の前記初期量、前記測定された濁度、および、前記閾値の値に基いて決定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの方法であって、前記懸濁液媒質(14)の前記初期量は、0.5~2mlであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの方法であって、前記第1の採取ツール()は、5Hz~120Hzの振動数で振動させられることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかの方法であって、前記第1の採取ツール()は、0.5mm~4mmの振幅で振動させられることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかの方法であって、前記第1の採取ツール()が振動させられる前記期間は、3秒~10秒であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかの方法であって、前記懸濁液管(11)は、6mm~12mmの直径を有する、実質的に円形断面を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかの方法であって、さらに、前記装置(1)の自動培養皿配置/除去装置(24)を用いて、前記微生物のコロニー(4)を含む培養皿(3)を、それぞれ、ステージに配置すること、および、前記ステージから除去することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記懸濁液管(11)は更なる使用の準備ができている、との信号が提供された後にのみ、前記培養皿(3)は、前記自動培養皿配置/除去装置(24)によって、前記ステージから除去されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかの方法であって、さらに、前記装置(1)の自動懸濁液管配置/取り外し装置(25)を用いて、前記懸濁液管(11)を、それぞれ、前記懸濁液管ホルダ(10)に配置すること、および、前記懸濁液管ホルダ(10)から取り外すことを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記懸濁液管(11)は更なる使用の準備ができている、との信号が提供された後にのみ、前記懸濁液管(11)は、前記自動懸濁液管配置/取り外し装置(25)によって、前記懸濁液管ホルダ(10)から取り外されることを特徴とする方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、微生物のコロニーの位置を決定し、そのコロニーを選択し、MALDI、特にMALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間質量分析法)(Matrix Assisted Laser Desorption and Ionization Time-of-Flight Mass Spectroscopy)を使用して微生物を同定する方法、およびそのような方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
MALDI分析法は、生化学、免疫学、遺伝学および生物学における構造上の問題を解明するための有用なツールである。試料は気相でイオン化され、飛行時間(TOF)分析器が使用されてイオン質量が測定される。TOF分析法は、イオンが形成され、それらがドリフト領域に入り一定の運動エネルギーまで加速されたときに始まる。それらは、それらの質量の平方根に比例した飛行時間の後に検出器に到達する。異なる質量のイオンは異なる時刻に検出器に到達するため、質量スペクトルが生成される。
【0003】
質量分析法は、薬物発見および開発、ジェノタイピング(genotyping)ならびにプロテオーム(proteome)研究の分野において強力なツールとなりうる。加えて、MALDIは、細菌および微生物の特性評価および同定に対して既に使用されている。研究における現在の趨勢は、マイクロモル(micro-mole)レベルからアトモル(ato-mole)レベルまでの範囲の量の個々の試料を使用して、ますます多数の試料を分析することである。その結果、試料もより小さくなっており、微生物の適切な量を効率的にかつ高い信頼性で取得し、この取得された量の試料を、MALDI機器内で使用されるターゲットプレート上に正確に付着させる必要性が存在する。
【0004】
典型的なMALDI TOF MS操作では、分析する試料を、金属プレート(ターゲットプレート(target plate)またはMALDIプレートとも呼ばれる)上にスポットとして配置し、または付着させ、イオン化を支援する試薬を加え(マトリックス)、次いでそれらを乾燥させて結晶を形成する。これらの機器では、MALDI機器内の固定された位置にターゲットプレートが配置される。ターゲットプレートは複数の付着スポット(例えば単一のターゲットプレート上に24から384個の付着スポット)を有し、これらの付着スポットは、ターゲットプレートの縁に関して固定された向きを有する。微生物のコロニーの得られた試料を選択された付着スポット上に付着させることができるように、ターゲットプレートはX-Yステージ上に配置される。ターゲットプレートと金属グリッド(grid)の間の高い電圧電位が維持される。所望の結果に応じて、この電圧を維持しまたはパルスとして印加することができ、チャンバ(chamber)内に真空が生み出される。試料/マトリックス中にレーザが照射され、イオンのプルーム(plume)が形成される。この電圧差を使用してイオンを飛行管に沿って加速させ、それらを分析することができるようにする。この分析法は、飛行時間を、イオン化された成分の質量に直接関係づける。
【0005】
ターゲットの平面度、マトリックスの量およびタイプ、試料の濃度、試料ターゲットの導電率、付着スポット上への配置の正確さ、ならびに他の変量を含む、いくつかのパラメータが結果の質に影響を及ぼしうる。
【0006】
特に、重要な態様は、試料の取扱いおよび試料の濃度である。微生物のコロニーの試料から懸濁液が生成されること、および研究者が、ピペットを使用して、試料を含む得られた懸濁液の滴を、ターゲットプレートの付着スポット上に、手で移すことが知られている。しかしながら、適切な分析を提供するためには、懸濁液が、始めから、十分な濃度の試料を含んでいなければならない。
【0007】
微生物の試料のこのような懸濁液を調製する際には、駆動装置を備える手持ち式デバイス。この駆動装置は、回転駆動モータがその内部に含まれるハウジングと、駆動装置に試料取得デバイスを解放可能に取り付けるように構成されたコネクタとを備える。試料取得デバイスは試料採集領域を備える。最初に、その試料採集領域を、分析する生物物質(一般に培養皿上で成長させたもの)と接触させる。その後、試料採集領域を回転駆動装置に取り付け、管内に含まれる液体媒質と接触させ、回転駆動装置を、試料取得デバイス内の生物物質の試料が液体媒質中に放出されるような態様で、ある期間、起動する。試料採集領域が管から取り出された後、懸濁液管は、試料を含む懸濁液を保持し、例えばこれを使用して、MALDI分析を実行することができる。
【0008】
しかしながら、場合によっては、試料取得領域からの試料の放出の効率が、液体媒質に懸濁させた微生物の適切な分析を実行するのには不十分なことがある。これによって、調製された懸濁液を使用できないことがあり、その結果、時間および金銭の損失につながることがある。加えて、管の中で試料採集領域が回転するため、管の寸法は、液体媒質中への微生物の放出にとって有害であることがある試料取得領域と管の内壁との接触を引き起こすことなくこのような回転を可能にする十分なものでなければならない。このような比較的大寸法の管はしたがって、比較的大体積の液体媒質を含み、これに対応して、このような懸濁液媒質をさらに処理する時間が長くなる。例えば、試料を含む懸濁液をインキュベータ内でインキュベートしなければならない時間は、懸濁液の量に比例する。したがって、微生物の試料の懸濁液の調製が自動的に実行される方法であって、このような懸濁液をはるかに高い再現性で調製することができる方法が求められている。加えて、ターゲットプレートの付着スポット上の試料を、高い信頼性および高い再現性で放出することも求められている。
【発明の概要】
【0009】
上記の課題のうちの少なくとも1つの課題を解決するため、本発明は、培養皿上の微生物のコロニーの位置を決定し、前記コロニーを選択し、前記選択されたコロニー内の微生物をMALDIを使用して同定する方法であって、培養皿上の微生物のコロニーの位置を決定し、前記コロニーを選択する自動化されたステップと、微生物の前記選択されたコロニーの試料を得る自動化されたステップと、微生物の前記選択されたコロニーの前記試料の少なくとも一部をターゲットプレート上に付着させる自動化されたステップと、微生物の前記選択されたコロニーの前記試料の同定のために、前記試料を有する前記ターゲットプレートを、MALDIを実行する装置内に移送する自動化されたステップとを含む方法を提供する。上記の課題の多くは、ステップが手動で実行され、したがって、それらのステップは望ましくない変動および誤りを被りやすく、それが、MALDI機器からの不正確な結果、追加の費用および時間の損失につながることに原因があるように思われる。それぞれのステップを自動化することにより、これらの課題を少なくとも大幅に解決することができる。本発明の分野では、これらのステップのうちの少なくともいくつかのステップだけを手動で実行することができることは当然のこととして思われてきたが、これとは対照的に、本発明は、微生物のコロニーの位置を決定し、前記コロニーを選択し、前記選択されたコロニー内の微生物をMALDIを使用して同定するのに必要な全てのステップを自動化する可能性を初めて提供する。
【0010】
本発明に基づく方法の実施形態において、微生物の前記選択されたコロニーの前記試料の少なくとも一部をターゲットプレート上に付着させる前記ステップは、微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた試料を前記ターゲットプレート上に直接置くことによって実行される。ターゲットプレート上に試料を直接置くことによって、最初に前記試料の懸濁液を調製する必要がなく、それによってこのような懸濁液を調製することによって生じうるあらゆる問題が回避される。この方法は、前記ターゲットプレート上に付着させた前記試料の前記部分の上に、MALDIマトリックス溶液の滴を置く自動化されたさらなるステップを含むことが好ましい。
【0011】
本発明に基づく方法の代替的実施形態において、微生物の前記選択されたコロニーの前記試料の少なくとも一部をターゲットプレート上に付着させる前記ステップは、前記得られた試料を、ある量の懸濁液媒質を含む懸濁液管内に移す自動化されたステップと、前記得られた試料の少なくとも一部分を前記懸濁液媒質中へ移すことによって試料懸濁液を調製する自動化されたステップと、前記試料懸濁液の滴を得る自動化されたステップと、試料懸濁液の前記滴を前記ターゲットプレート上に移す自動化されたステップとによって実行される。懸濁液の調製を完全に自動化することによって、本発明は、MALDIを使用して微生物を同定するために懸濁液を使用する正確で再現可能な方法を提供する。特に、この方法が、前記ターゲットプレート上に付着させた試料懸濁液の前記滴の上に、MALDIマトリックス溶液の滴を置く自動化されたステップをさらに含むとき、本発明の方法は、微生物の特性評価に極めて適する。最良の分析結果は、MALDIマトリックス溶液の前記滴がその上に置かれる前に、前記ターゲットプレート上に付着させた試料懸濁液の前記滴を乾燥させるようにする本発明に基づく方法の他の実施形態で得ることができる。懸濁液を使用するこの代替法はさらに、微生物の前記コロニーの前記試料上で別の試験または分析が実行される場合に極めて有用である。このような追加の分析は、この方法が、前記試料懸濁液の第2の滴を得る自動化されたステップと、試料懸濁液の前記第2の滴を試験培養皿上に付着させる自動化されたステップと、前記試験培養皿を、感受性試験または他の追加の分析を実行する装置へ移送する自動化されたステップとをさらに含む本発明に基づく方法の実施形態において、特に高い再現性および効率で実現することができる。その結果として、本発明の方法を使用して、限定はされないがBACTEC(商標)、Phoenix、MGIT、BacT/Alertを含む使用可能なID/AST機器に供給することができる試料を、自動的に獲得しまたは自動的に採取することができる。
【0012】
本発明はさらに、得られた試料から懸濁液が生成されない場合にこのような追加の分析を実行する可能性を提供する。この状況において、本発明に基づく方法の特定の有利な実施形態は、前記培養皿から微生物のコロニーの第2の試料を得る自動化されたステップと、微生物の前記選択されたコロニーの前記第2の試料を移す自動化されたステップと、微生物の前記選択されたコロニーの前記第2の試料の少なくとも一部を試験培養皿上に付着させる自動化されたステップと、前記試験培養皿を、感受性試験または他の追加の試験を実行する装置へ移送する自動化されたステップとをさらに含む。
【0013】
さらに、微生物の特性評価および同定を実行するためには通常、培養皿上で複数のコロニーを増殖させるため、関心のコロニーから試料が得られることが重要である。関心のコロニー以外のコロニーから試料が採取された場合には、時間およびMALDI機器の効率的使用が損なわれる。本出願の出願人の現在までの知識によれば、関心のコロニーをそれ以外のコロニーから区別する自動化された処理または装置は存在しない。しかしながら、この方法が、培養皿上の微生物のコロニーの位置を決定し、前記コロニーを選択する自動化された前記ステップの前に、微生物のいくつかのコロニーを含む培養皿を用意し、微生物の前記コロニーを全て含む前記培養皿の初期画像を得、微生物の前記コロニーを全て含む前記培養皿の前記初期画像を表示装置上に表示し、前記初期画像中の微生物の少なくとも1つのコロニーを選択するステップを含む本発明に基づく方法の実施形態では、コロニーを区別する処理を少なくとも部分的に自動化することができ、誤りのない非常に確実な区別が維持される。このようにすると、研究者または分析者は、周到な教育および知識に基づいて、関心のコロニーを選択することができる。特定の実施形態において、前記培養皿は、前記培養皿を識別するバーコードなどの個別の識別子を有し、前記方法は、中央制御コンピュータの記憶装置に、全てのコロニーを含む前記培養皿の前記初期画像を記憶し、微生物の前記選択された少なくとも1つのコロニーに関する情報を記憶し、前記培養皿の前記識別子を記憶するステップを含む。追加の実施形態において、研究者または分析者は、前記培養皿の微生物の選択されたコロニーがかけられる処理に関する処理命令を手動で入力することができ、前記処理命令は、後の使用のために、前記中央制御コンピュータの前記記憶装置に記憶される。
【0014】
本発明の追加的な実施形態において、この方法は、培養皿用のステージ上に前記培養皿を配置する自動化されたステップと、前記ステージ内に配置された前記培養皿の画像を得る自動化されたステップと、前記培養皿の前記識別子を得る自動化されたステップと、前記採取ツールデバイスの前記画像化デバイスによって得られた前記画像を、前記培養皿の前記記憶された初期画像と比較して、微生物の前記選択されたコロニーの位置に関する情報を得、任意選択で、微生物の前記選択されたコロニー上で実行される処理に関する処理命令を得る自動化されたステップとを含む。前記採取ツールデバイス内にそれが置かれているときの前記培養皿の画像を前記初期画像と比較することにより、前記選択されたコロニーの位置を、例えばコンピュータ化された画像比較によって自動的に得ることができる。
【0015】
本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、この方法は、微生物の試料の懸濁液を自動調製するステップを含み、微生物の試料の懸濁液を自動調製する前記ステップは、
- 第1の採取ツールを用意し、採取ツールを保持する採取ツールホルダを備える位置決めデバイスを用意するステップであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、前記培養皿上の微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた位置の上方の開始位置に採取ツールを配置し、採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、採取ツールを自動的に上げて前記培養皿から離し、採取ツールを移送位置に配置するように構成されているステップと、
- 前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記第1の採取ツールを配置するステップと、
- 前記位置決めデバイスによって、前記第1の採取ツールを、前記培養皿上の微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた位置の上方の前記開始位置に配置し、前記第1の採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置くステップと、
- 懸濁液管を保持する懸濁液管ホルダを用意するステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に懸濁液管を配置するステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に懸濁液媒質を自動的に分与する自動懸濁液媒質分与器を用意するステップと、
- 前記自動分与器によって、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に、懸濁液媒質の初期量を自動的に供給するステップと、
- それぞれ、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の位置へ、採取ツールを自動的に移送し、採取ツールを下げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の中に入れ、採取ツールを上げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質から離し、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の待機位置に採取ツールを配置する移送デバイスを用意するステップと、
- 前記移送デバイスによって、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管の上方の位置へ自動的に移送し、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを下げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に入れ、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールが前記懸濁液媒質の中に浸されている間に、前記移送デバイスによって、前記第1の採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させ、前記期間が経過した後に、前記第1の採取ツールを上げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質から離し、前記待機位置に置くステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の濁度の測定を実行する濁度計を用意するステップと、
- 少なくとも前記採取ツールが振動している前記期間が経過した後に、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定し、測定された濁度を示す最終的な測定値(以後、最終測定値)を提供するステップと、
- 前記位置決めデバイス、前記移送デバイス、前記自動懸濁液媒質分与器および前記濁度計に通信可能に接続されて、それぞれ、前記位置決めデバイスの移動、前記移送デバイスの移動、前記自動懸濁液媒質分与器の動作および前記濁度計の動作を自動的に制御するコントローラを用意するステップと、
- 前記コントローラによって、
a)前記最終測定値が、前記コントローラの記憶装置に予め記憶された第1のしきい値よりも大きいかどうかを判定し、そうである場合にはステップb)を実行し、または前記最終測定値が、前記第1のしきい値と同一であるかもしくは前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記コントローラの前記記憶装置に予め記憶された第2のしきい値と同一であるかもしくは前記第2のしきい値よりも大きいかどうか(ただし前記第1のしきい値は、前記第2のしきい値に等しいかもしくは前記第2のしきい値よりも大きい)を判定し、そうである場合にはステップc)を実行し、または前記最終測定値が前記第2のしきい値よりも小さいかどうかを判定し、そうである場合にはステップd)を実行し、
b)前記自動懸濁液媒質分与器を制御して、前記懸濁液管内に、懸濁液媒質の追加の量を供給し、
c)さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号を提供し、または
d)追加的な採取ツールを用意し、前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に配置し、前記位置決めデバイスによって、前記追加的な採取ツールを、前記培養皿の上方の前記開始位置に配置し、前記追加的な採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の追加の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記追加的な採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置き、前記移送デバイスによって、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管の上方の位置へ自動的に移送し、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを下げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に入れ、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールが前記懸濁液媒質の中に浸されている間に、前記移送デバイスによって、前記追加的な採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させ、前記期間が経過した後に、前記追加的な採取ツールを上げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質から離し、前記待機位置に置き、少なくとも前記追加的な採取ツールが振動している前記期間が経過した後に、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定し、測定された濁度を示す追加の最終測定値を提供し、ステップa)を実行するステップとを含む。このようにすると、先進の自動方式で、微生物の試料の懸濁液を調製することが可能であり、前記コントローラおよび前記濁度計によって、前記微生物の適切な分析を実行するのに常に十分な(および再現可能な)量の微生物を含んだ懸濁液媒質を含む懸濁液管を提供することが可能である。
【0016】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法の実施形態において、前記コントローラは、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定する前記ステップがさらに、前記採取ツールが振動している前記期間にも実行されるように構成されており、前記濁度計は、前記採取ツールが振動している前記期間の測定された濁度を示すオンライン測定値を前記コントローラに提供するように構成されている。このようにすると、前記懸濁液中の微生物の量の極めて迅速な自動決定を達成することができる。特に、振動中、濁度の前記オンライン測定値が、前記第1のしきい値に等しいかまたは前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記第2のしきい値に等しいかまたは前記第2のしきい値よりも大きい場合に、前記コントローラは、前記採取ツールが前記待機位置まで上げられるような態様で前記移送デバイスの移動を制御し、前記コントローラは、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号をさらに提供する。このようにすると、前記懸濁液媒質が十分な量の微生物を含むときに、前記採取ツールの前記振動が停止され、その結果、極めて高い時間効率でこの方法を実行することができる。
【0017】
前記採取ツールと濁度計のセンサの相互配置は、前記採取ツールの前記振動中に前記採取ツールが前記濁度計の経路を遮らないような配置である。
【0018】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法の追加的な実施形態において、前記コントローラは、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定する前記ステップが、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に前記採取ツールが浸される前に開始されるような態様で前記濁度計を制御するように構成されている。このようにすると、例えば、使用される初期懸濁液媒質が汚染されていないかどうかを調べることが可能である。さらに、これは、最終測定値を決定する際に有用な濁度の出発値の指示を提供する。
【0019】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、この方法は、回転可能な懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管を回転させる前記回転可能な懸濁液管ホルダを、懸濁液管を保持する懸濁液管ホルダとして用意するステップと、前記回転可能な懸濁液管ホルダに前記コントローラが通信可能に接続されて前記懸濁液管ホルダの回転を制御するように前記コントローラを構成するステップと、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度の測定中に前記懸濁液管が回転するように前記コントローラを構成するステップとをさらに備える。前記懸濁液管のこのような回転は、互いから回転可能に間隔を置いて配置された前記懸濁液管内のいくつかの位置で濁度測定を実行することができ、それによって前記懸濁液の濁度のより適切な最終測定を達成することを可能にする。このような回転は、前記採取ツールから前記試料を放出する目的には必要ではなく、前記試料を放出する目的には前記採取ツールの前記振動直線垂直運動で十分である。
【0020】
前記第1の採取ツールとは異なる追加的な採取ツールを使用することができるが、この方法は、ステップd)で、前記第1の採取ツールが追加的な採取ツールとして提供されたときに経済的に実行することができ、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記追加的な採取ツールを配置するステップは、前記コントローラの制御下で前記移送デバイスによって実行される。
【0021】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、懸濁液媒質の前記追加の量は、前記コントローラによって、懸濁液媒質の前記初期量、前記最終測定値、ならびに前記第1および/または第2のしきい値の値に基づいて決定される。これは、必要に応じたちょうど十分な追加の懸濁液媒質の使用を可能にし、したがってこの実施形態では、可能な限り少量の懸濁液媒質を使用することができる。
【0022】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明の方法によれば、前記採取ツールは、前記懸濁液管に対して垂直直線運動するように振動するため、前記懸濁液管の寸法を比較的小さくすることができる。これは、本発明に基づく方法の実施形態において、前記供給される初期量が約0.5~2ml、好ましくは約1mlになるような態様で前記自動懸濁液媒質分与器を制御するように、前記コントローラを構成することができることを可能にする。このような比較的少量の懸濁液媒質は、微生物の試料の適切な懸濁液を調製するのに十分である。微生物の試料の懸濁液を自動調製するこのような方法では、懸濁液管として、直径が約6から約12mm、好ましくは約10mmの実質的に円形の断面を有する懸濁液管を使用することが可能である。この直径は、約16mmの直径を有する伝統的な管と比較すると比較的小さい。このような比較的小さな懸濁液管を使用する場合、前記採取ツールからの前記試料の適切な放出は、前記コントローラが、約5Hzから約120Hzの間、好ましくは約30Hzから約90Hzの間、最も好ましくは約50Hzの振動数で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されているときに得られる。前記コントローラは、約0.5mmから約4mm、好ましくは約2mmから約3mmの振幅で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されていることが好ましく、その結果、前記採取ツールからの前記試料の最適な放出が得られる。前記コントローラが、前記採取ツールが振動する期間が約3秒から約10秒、好ましくは約6秒になるような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されている場合、実質的に全てのケースで、前記採取ツールから試料が完全に放出されるようである。
【0023】
振動数、振幅および持続時間の値は、特定の微生物の前記特性および、例えば前記採取ツールに対するそれの付着性に依存する。上記の好ましい値を最初に使用することによって少なくとも大部分の試料が前記採取ツールから放出されたかどうかは、画像化による検査から推測することができる。前記採取ツール上に依然として物質が残っている場合には、所与の範囲内の異なる値で前記垂直振動が繰り返される。
【0024】
この方法が、前記微生物を含む培養皿を前記ステージ上に自動的に配置し、前記ステージから自動的に除去する自動培養皿配置/除去デバイスを用意するステップをさらに含むときに、微生物の試料の懸濁液を調製する本発明に基づく自動化された方法を得ることができる。前記コントローラは次いで、前記自動培養皿配置/除去デバイスにそれが通信可能に接続されて前記自動培養皿配置/除去デバイスの動作を制御するように構成される。このようにすると、前記微生物を含む培養皿を前記ステージ上に配置するステップを、前記コントローラの制御下で自動的に実行することができる。懸濁液管を前記懸濁液管ホルダ内に自動的に配置し、前記懸濁液管ホルダから自動的に取り外す自動懸濁液管配置/取外しデバイスを用意することによって、さらなる自動化が実現される。前記コントローラは次いで、前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスに前記コントローラが通信可能に接続されて前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスの動作を制御するように構成され、その結果、懸濁液管を前記懸濁液管ホルダ内に配置するステップを、前記コントローラの制御下で自動的に実行することができる。前記コントローラは次いで、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる前記信号が提供された後にのみ、前記自動培養皿配置/除去デバイスによって培養皿が前記ステージから自動的に除去されることが許されるように構成されると有利である。さらに、前記コントローラは、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる前記信号が提供された後にのみ、前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスによって懸濁液管ホルダが前記懸濁液管ホルダから自動的に取り外されるように構成されることが好ましい。
【0025】
本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、この方法は、前記懸濁液管上に識別マークを提供するステップと、前記懸濁液管の前記識別マークを、微生物の前記選択されたコロニーがそれから得られた前記培養皿のアイデンティティ(identity)へのリンク(link)を有する前記懸濁液の特性とともに、前記中央制御コンピュータの前記記憶装置に記憶するステップとを含み、この方法が、極めて効率的に自動的に操作されうるだけでなく、得られた分析結果の適切かつ迅速な処理も改良される。
【0026】
微生物の選択されたコロニーに対する処理命令が、微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた試料を前記ターゲットプレート上に直接置くことを示している本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、この方法は、以下の自動化されたステップを含む:第1の採取ツールを用意し、採取ツールを保持する採取ツールホルダを備える位置決めデバイスを用意する自動化されたステップであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、前記培養皿上の微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた位置の上方の開始位置に採取ツールを配置し、採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、採取ツールを自動的に上げて前記培養皿から離し、採取ツールを移送位置に配置するように構成されている自動化されたステップ、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記第1の採取ツールを配置する自動化されたステップ、前記位置決めデバイスによって、前記第1の採取ツールを、前記培養皿上の微生物の前記選択されたコロニーの前記得られた位置の上方の前記開始位置に配置し、前記第1の採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置く自動化されたステップ、ターゲットプレートを保持するターゲットプレートホルダを用意する自動化されたステップであり、前記ターゲットプレートは複数の付着スポットを有する自動化されたステップ、前記ターゲットプレートホルダ内にターゲットプレートを配置する自動化されたステップ、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの1つの付着スポットの上方の位置へ、前記採取ツールを自動的に移送し、前記採取ツールを、前記採取ツール上に存在する微生物の前記コロニーの前記試料が前記ターゲットプレートと接触するような態様で下げ、前記採取ツールを、微生物の前記コロニーの前記試料が前記付着スポット上に付着するような態様で、特に、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を覆うような態様で、前記ターゲットプレートの平面に平行な平面内で移動させる移送デバイスを用意する自動化されたステップ、および前記採取ツールを前記ターゲットプレートから上げる自動化されたステップ。前記試料の前記付着を自動的に実行することによって、前記付着スポット上への前記試料の付着を、試料を手動で付着させるよりも高い再現性でかつより正確に達成することができる。さらに、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を前記試料が覆うとき、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの初めは前記試料で覆われていなかった部分の分析結果は、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの最初から前記試料で覆われていた部分の分析結果よりも驚くほど極めて正確であるようである。本発明の発明者は特定の理論に拘束されたくないが、前記付着スポットの部分を覆う試料の上にマトリックス材料の滴が置かれた後に起こる結晶化は、前記付着スポットの覆われなかった部分も、ある量の試料物質を含むこと、および、この量が、優れた分析結果を提供するのに極めて適していることを保証すると考えられる。微生物の選択されたコロニーに対する処理命令が、前記試料懸濁液から滴を得、前記ターゲットプレート上へ前記滴を移すことを示している本発明に基づく方法の代替的実施形態において、この方法は、以下の自動化されたステップを含む:前記採取ツールデバイス内にピペッティングツール(pipetting tool)を提供し、前記ピペッティングツールを保持するためのピペッティングツールホルダを備える位置決めデバイスを用意する自動化されたステップであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、前記懸濁液管の上方の開始位置に前記ピペッティングツールを配置し、前記ピペッティングツールを自動的に下げて前記懸濁液の中に入れ、前記ピペッティングツールを自動的に上げて前記懸濁液の外に出し、前記ピペッティングツールを移送位置に配置するように構成されている自動化されたステップ、前記位置決めデバイスの前記ピペッティングツールホルダ内に前記ピペッティングツールを配置する自動化されたステップ、前記位置決めデバイスによって、前記懸濁液管の上方の前記開始位置に前記ピペッティングツールを配置し、前記ピペッティングツールを下げて前記懸濁液管内の前記懸濁液の中に入れ、前記ピペッティングツールを操作してある量の懸濁液を採取し、前記ある量の懸濁液を含む前記ピペッティングツールを前記移送位置まで上げる自動化されたステップであり、前記ピペッティングツールは、制御された弁によって閉じられて前記ある量の懸濁液媒質を収容する加圧可能なチャンバを備える自動化されたステップ、ターゲットプレートを保持するターゲットプレートホルダを用意する自動化されたステップであり、前記ターゲットプレートは複数の付着スポットを有する自動化されたステップ、前記ターゲットプレートホルダ内にターゲットプレートを配置する自動化されたステップ、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの1つの付着スポットの上方の位置へ、前記ピペッティングツールを自動的に移送し、前記ピペッティングツールを、前記ターゲットプレートの上方の決められた距離まで下げ、前記チャンバを、約0.5バールから1.1バールの範囲の圧力に加圧し、前記弁を、約0.5から3.0μlの範囲の体積を有する懸濁液の滴が前記付着スポット上に付着するような時間、特に、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を覆うような時間、開く移送デバイスを用意する自動化されたステップ、および、前記ピペッティングツールを前記ターゲットプレートから上げる自動化されたステップ。特定の微生物の特性、例えばその粘着性に応じて、前記圧力値および前記開放時間を調整して、再現可能に調製することができ、自動化された処理の結果として前記ターゲットプレート上に正確に付着させることができる懸濁液の小滴を得ることができる。
【0027】
相互汚染を回避するため、本発明に基づく方法の好ましい実施形態において、前記ピペッティングツールの形状、特にその分与先端の形状は、懸濁液の前記滴が、液はねを生じることなく前記ターゲットプレート上に付着するような形状である。使用される微生物の種類、特にその粘着性によっては、前述の範囲の適切な圧力および前述の範囲の前記弁の開放時間を選択することに加えて、前記ピペッティングツールの適当な形状が、液はねを生じることなく懸濁液の滴を付着させることができることを保証するようであった。
【0028】
この方法が、前記ターゲットプレート上に識別マークを提供し、任意選択で、前記ターゲットプレートの前記付着スポット上に識別マークを提供するステップと、前記ターゲットプレートおよび前記付着スポットの前記識別マークを、微生物の前記選択されたコロニーがそれから得られた前記培養皿のアイデンティティへのリンクを有する前記懸濁液の特性とともに、前記中央制御コンピュータの前記記憶装置に記憶するステップとを備える本発明に基づく方法の追加的な実施形態では、この方法を、極めて効率的に自動的に操作することができるだけでなく、得られた分析結果の適切かつ迅速な処理も改良される。
【0029】
本発明はさらに、微生物の試料の懸濁液を自動調製する方法であって、
- 前記微生物を含む培養皿用のステージを用意するステップと、
- 前記微生物を含む培養皿を前記ステージ上に配置するステップと、
- 第1の採取ツールを用意し、採取ツールを保持する採取ツールホルダを備える位置決めデバイスを用意するステップであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、前記培養皿の上方の開始位置に採取ツールを配置し、採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、採取ツールを自動的に上げて前記培養皿から離し、採取ツールを移送位置に配置するように構成されているステップと、
- 前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記第1の採取ツールを配置するステップと、
- 前記位置決めデバイスによって、前記第1の採取ツールを、前記培養皿の上方の前記開始位置に配置し、前記第1の採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置くステップと、
- 懸濁液管を保持する懸濁液管ホルダを用意するステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に懸濁液管を配置するステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に懸濁液媒質を自動的に分与する自動懸濁液媒質分与器を用意するステップと、
- 前記自動分与器によって、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に、懸濁液媒質の初期量を自動的に供給するステップと、
- それぞれ、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の位置へ、採取ツールを自動的に移送し、採取ツールを下げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の中に入れ、採取ツールを上げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質から離し、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の待機位置に採取ツールを配置する移送デバイスを用意するステップと、
- 前記移送デバイスによって、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管の上方の位置へ自動的に移送し、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールを下げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に入れ、前記微生物の前記試料を有する前記第1の採取ツールが前記懸濁液媒質の中に浸されている間に、前記移送デバイスによって、前記第1の採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させ、前記期間が経過した後に、前記第1の採取ツールを上げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質から離し、前記待機位置に置くステップと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の濁度の測定を実行する濁度計を用意するステップと、
- 少なくとも前記採取ツールが振動している前記期間が経過した後に、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定し、測定された濁度を示す最終測定値を提供するステップと、
- 前記位置決めデバイス、前記移送デバイス、前記自動懸濁液媒質分与器および前記濁度計に通信可能に接続されて、それぞれ、前記位置決めデバイスの移動、前記移送デバイスの移動、前記自動懸濁液媒質分与器の動作および前記濁度計の動作を自動的に制御するコントローラを用意するステップと、
- 前記コントローラによって、
a)前記最終測定値が、前記コントローラの記憶装置に予め記憶された第1のしきい値よりも大きいかどうかを判定し、そうである場合にはステップb)を実行し、または前記最終測定値が、前記第1のしきい値と同一であるかもしくは前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記コントローラの前記記憶装置に予め記憶された第2のしきい値と同一であるかもしくは前記第2のしきい値よりも大きいかどうか(ただし、前記第1のしきい値は、前記第2のしきい値に等しいかもしくは前記第2のしきい値よりも大きい)を判定し、そうである場合にはステップc)を実行し、または前記最終測定値が前記第2のしきい値よりも小さいかどうかを判定し、そうである場合にはステップd)を実行し、
b)前記自動懸濁液媒質分与器を制御して、前記懸濁液管内に、懸濁液媒質の追加の量を供給し、
c)さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号を提供し、または
d)追加的な採取ツールを用意し、前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に配置し、前記位置決めデバイスによって、前記追加的な採取ツールを、前記培養皿の上方の前記開始位置に配置し、前記追加的な採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の追加の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記追加的な採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置き、前記移送デバイスによって、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管の上方の位置へ自動的に移送し、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを下げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に入れ、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールが前記懸濁液媒質の中に浸されている間に、前記移送デバイスによって、前記追加的な採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させ、前記期間が経過した後に、前記追加的な採取ツールを上げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質から離し、前記待機位置に置き、少なくとも前記追加的な採取ツールが振動している前記期間が経過した後に、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定し、測定された濁度を示す追加の最終測定値を提供し、ステップa)を実行するステップとを含む方法に関する。このようにすると、先進の自動方式で、微生物の試料の懸濁液を調製することが可能であり、前記コントローラおよび前記濁度計によって、前記微生物の適切な分析を実行するのに常に十分な(および再現可能な)量の微生物を含んだ懸濁液媒質を含む懸濁液管を提供することが可能である。
【0030】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法の実施形態において、前記コントローラは、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定する前記ステップがさらに、前記採取ツールが振動している前記期間に追加で実行されるように構成されており、前記濁度計は、前記採取ツールが振動している前記期間の測定された濁度を示すオンライン測定値を前記コントローラに提供するように構成されている。このようにすると、前記懸濁液中の微生物の量の極めて迅速な自動決定を達成することができる。特に、振動中、濁度の前記オンライン測定値が、前記第1のしきい値に等しいかまたは前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記第2のしきい値に等しいかまたは前記第2のしきい値よりも大きい場合に、前記コントローラは、前記採取ツールが前記待機位置まで上げられるような態様で前記移送デバイスの移動を制御し、前記コントローラは、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号をさらに提供する。
【0031】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法の追加的な実施形態において、前記コントローラは、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定する前記ステップが、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に前記採取ツールが浸される前に開始されるような態様で前記濁度計を制御するように構成されている。このようにすると、例えば、使用される初期懸濁液媒質が汚染されていないかどうかを調べることが可能である。これは例えば、懸濁液管の濁度測定を実行し、得られた値を、懸濁液が汚染されていないことを示す所定の値と比較することによって実施することができる。この差がしきい値よりも大きい場合には、例えば、懸濁液が汚染されていることを示す警告信号を与えられることができる。
【0032】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、この方法は、回転可能な懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管を回転させる前記回転可能な懸濁液管ホルダを、懸濁液管を保持する懸濁液管ホルダとして用意するステップと、前記回転可能な懸濁液管ホルダに前記コントローラが通信可能に接続されて前記懸濁液管ホルダの回転を制御するように前記コントローラを構成するステップと、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度の測定中に前記懸濁液管が回転されるように前記コントローラを構成するステップとをさらに備える。前記懸濁液管のこのような回転は、互いから回転可能に間隔を置いて配置された前記懸濁液管内のいくつかの位置で濁度測定を実行することができ、それによって前記懸濁液の濁度のより適切な最終測定を達成することを可能にする。このような回転は、前記採取ツールから前記試料を放出する目的には必要ではなく、前記試料を放出する目的には前記採取ツールの前記振動直線垂直運動で十分である。
【0033】
前記第1の採取ツールとは異なる追加的な採取ツールを使用することができるが、この方法は、ステップd)で、前記第1の採取ツールが追加的な採取ツールとして提供されたときに経済的に実行することができ、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記追加的な採取ツールを配置するステップは、前記コントローラの制御下で前記移送デバイスによって実行される。
【0034】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく方法のさらに追加的な実施形態において、懸濁液媒質の前記追加の量は、前記コントローラによって、懸濁液媒質の前記初期量、前記最終測定値、ならびに前記第1および/または第2のしきい値の値に基づいて決定される。これは、必要に応じたちょうど十分な追加の懸濁液媒質の使用を可能にし、したがってこの実施形態では、可能な限り少量の懸濁液媒質を使用することができる。測定された値が、微生物の量が少なすぎることを示している場合、制御システムは、前記採取ツールを制御して、選択された同じコロニーから追加の試料を得、前記処理が繰り返される。
【0035】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明の方法によれば、前記採取ツールは、垂直直線運動だけをするように振動するため、前記懸濁液管の寸法を比較的小さくすることができる。これは、本発明に基づく方法の実施形態において、前記供給される初期量が約0.5~2ml、好ましくは約1mlになるような態様で前記自動懸濁液媒質分与器を制御するように、前記コントローラを構成することができることを可能にする。このような比較的少量の懸濁液媒質は、微生物の試料の適切な懸濁液を調製するのに十分である。微生物の試料の懸濁液を自動調製するこのような方法では、懸濁液管として、直径が約6から約12mm、好ましくは約10mmの実質的に円形の断面を有する懸濁液管を使用することが可能である。この直径は、約16mmの直径を有する伝統的な管と比較すると比較的小さい。このような比較的小さな懸濁液管を使用する場合、前記採取ツールからの前記試料の適切な放出は、前記コントローラが、約5Hzから約120Hzの間、好ましくは約30Hzから約90Hzの間、最も好ましくは約50Hzの振動数で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されているときに得られる。前記コントローラは、約0.5mmから約4mm、好ましくは約2mmから約3mmの振幅で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されていることが好ましく、その結果、前記採取ツールからの前記試料の最適な放出が得られる。前記コントローラが、前記採取ツールが振動する期間が約3秒から約10秒、好ましくは約6秒になるような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されている場合、実質的に全てのケースで、前記採取ツールから試料が完全に放出され得るようである。
【0036】
本発明はさらに、培養皿上の微生物のコロニーの位置を決定し、前記コロニーを選択し、前記選択されたコロニー内の微生物をMALDIを使用して同定する方法を実行し、または微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明の方法に基づく方法のステップを実行する、微生物の試料の懸濁液の自動調製装置であって、
- 前記微生物を含む培養皿用のステージと、
- 第1の採取ツールおよび追加的な採取ツール、ならびに採取ツールを保持する採取ツールホルダを備える位置決めデバイスであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、前記培養皿の上方の開始位置に採取ツールを配置し、採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、採取ツールを自動的に上げて前記培養皿から離し、採取ツールを移送位置に配置するように構成されている第1の採取ツールおよび追加的な採取ツールならびに位置決めデバイスと、
- 懸濁液管を保持する懸濁液管ホルダと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に懸濁液媒質を自動的に分与する自動懸濁液媒質分与器と、
- それぞれ、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の位置へ、採取ツールを自動的に移送し、採取ツールを下げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の中に入れ、採取ツールを上げて懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質から離し、前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管の上方の待機位置に採取ツールを配置する移送デバイスであり、採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させるように構成された移送デバイスと、
- 前記懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管内に含まれる懸濁液媒質の濁度の測定を実行し、測定された濁度を示す最終測定値を提供する濁度計と、
- 前記位置決めデバイス、前記移送デバイス、前記自動懸濁液媒質分与器および前記濁度計に通信可能に接続されて、それぞれ、前記位置決めデバイスの移動、前記移送デバイスの移動、前記自動懸濁液媒質分与器の動作および前記濁度計の動作を自動的に制御するコントローラとを備え、
- 前記コントローラは、
a)前記最終測定値が、前記コントローラの記憶装置に予め記憶された第1のしきい値よりも大きいかどうかを判定するように構成されており、そうである場合には前記コントローラはステップb)を実行するように構成されており、または、前記最終測定値が、前記第1のしきい値と同一であるかもしくは前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記コントローラの前記記憶装置に予め記憶された第2のしきい値と同一であるかもしくは前記第2のしきい値よりも大きいかどうか(ただし、前記第1のしきい値は、前記第2のしきい値に等しいかもしくは前記第2のしきい値よりも大きい)を判定するように構成されており、そうである場合には前記コントローラはステップc)を実行するように構成されており、または前記最終測定値が前記第2のしきい値よりも小さいかどうかを判定するように構成されており、そうである場合には前記コントローラはステップd)を実行するように構成されており、
b)前記自動懸濁液媒質分与器を制御して、前記懸濁液管内に、懸濁液媒質の追加の量を供給するように構成されており、
c)さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号を提供するように構成されており、または
d)前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に配置し、前記位置決めデバイスによって、前記追加的な採取ツールを、前記培養皿の上方の前記開始位置に配置し、前記追加的な採取ツールを前記培養皿に向かって自動的に下げ、前記微生物と接触させて、前記微生物の追加の試料を採取し、前記微生物の前記試料を有する前記追加的な採取ツールを自動的に上げて、前記培養皿から離し、前記移送位置に置き、前記移送デバイスによって、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを、前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管の上方の位置へ自動的に移送し、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールを下げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に入れ、前記微生物の前記追加の試料を有する前記追加的な採取ツールが前記懸濁液媒質の中に浸されている間に、前記移送デバイスによって、前記追加的な採取ツールを、ある期間、直線垂直運動するように振動させ、前記期間が経過した後に、前記追加的な採取ツールを上げて、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質から離し、前記待機位置に置き、少なくとも前記追加的な採取ツールが振動している前記期間が経過した後に、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定し、測定された濁度を示す追加の最終測定値を提供し、ステップa)を実行するように構成されている自動調製装置に関する。
【0037】
本発明に基づく装置の追加的な実施形態において、前記コントローラは、前記懸濁液管ホルダ内に保持された前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度を前記濁度計によって測定することが、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の中に前記採取ツールが浸される前に開始されるような態様で前記濁度計を制御するように構成されている。
【0038】
本発明に基づく装置のさらに追加的な実施形態において、懸濁液管を保持する前記懸濁液管ホルダは、回転可能な懸濁液管ホルダ内に保持された懸濁液管を回転させる前記回転可能な懸濁液管ホルダであり、前記コントローラは、前記回転可能な懸濁液管ホルダに通信可能に接続されて前記懸濁液管ホルダの回転を制御するように構成されており、前記コントローラは、前記懸濁液管内に含まれる前記懸濁液媒質の濁度の測定中に前記懸濁液管を回転するように構成されている。
【0039】
本発明に基づく装置の有利な実施形態において、ステップd)で、前記第1の採取ツールが追加的な採取ツールとして提供され、前記コントローラは、前記移送デバイスを制御して、前記位置決めデバイスの前記採取ツールホルダ内に前記追加的な採取ツールを配置するように構成されている。
【0040】
前記コントローラは、懸濁液媒質の前記追加の量を、懸濁液媒質の前記初期量、前記最終測定値、ならびに前記第1および/または第2のしきい値の値に基づいて決定するように構成されていることが好ましい。特に、前記コントローラは、前記供給される初期量が約0.5~2ml、好ましくは約1mlになるような態様で前記自動懸濁液媒質分与器を制御するように構成される。本発明に基づく装置の追加的な実施形態において、前記コントローラは、約5Hzから約120Hzの間、好ましくは約30Hzから約90Hzの間、最も好ましくは約50Hzの振動数で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成されている。さらに、前記コントローラは、約0.5mmから約4mm、好ましくは約2mmから約3mmの振幅で前記採取ツールが振動するような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成することができ、前記採取ツールが振動する期間が約3秒から約10秒、好ましくは約6秒になるような態様で、前記移送デバイスの前記振動を制御するように構成することができる。
【0041】
微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明のデバイスにおいて、前記懸濁液管は、直径が約6から約12mm、好ましくは約10mmの実質的に円形の断面を有することができる。
【0042】
本発明に基づく完全自動デバイス。前記装置が、前記微生物を含む培養皿を前記ステージ上に自動的に配置し、前記ステージから自動的に除去する自動培養皿配置/除去デバイスを備え、前記コントローラが、前記自動培養皿配置/除去デバイスに通信可能に接続されて、前記自動培養皿配置/除去デバイスの動作を制御し、前記微生物を含む培養皿を前記ステージ上に自動的に配置するように構成されているとき、および、前記装置が、懸濁液管を前記懸濁液管ホルダ内に自動的に配置し、前記懸濁液管ホルダから自動的に取り外す自動懸濁液管配置/取外しデバイスを備え、前記コントローラが、前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスに通信可能に接続されて前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスの動作を制御し、懸濁液管を前記懸濁液管ホルダ内に自動的に配置するように構成されているとき。この場合、前記コントローラは、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる前記信号が提供された後にのみ、前記自動培養皿配置/除去デバイスによって培養皿が前記ステージから自動的に除去されることを許すように構成されることが好ましい。加えて、前記コントローラは、さらなる処理のために前記懸濁液を含む前記懸濁液管を前記懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる前記信号が提供された後にのみ、前記自動懸濁液管配置/取外しデバイスによって懸濁液管ホルダが前記懸濁液管ホルダから自動的に取り外されるように構成されることが好ましい。
【0043】
本発明はさらに、MALDI用のターゲットプレートの付着スポット上に微生物のコロニーの試料を自動的に付着させる方法であって、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を前記試料が覆うような態様で、微生物のコロニーの試料を前記付着スポット上に付着させるステップを含む方法に関する。前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を前記試料が覆うとき、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの初めは前記試料で覆われていなかった部分の分析結果は、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの最初から前記試料で覆われていた部分の分析結果よりも驚くほど極めて正確であることが見出された。前記付着スポットの部分を覆う試料の上にマトリックス材料の滴が置かれた後に起こる結晶化は、前記付着スポットの覆われなかった部分も、ある量の試料物質を含むこと、および、この量が、優れた分析結果を提供するのに極めて適していることを保証すると考えられる。この効果の原因である物理的または化学的過程は、現時点において明らかではないが、おそらくは、MALDIの基礎をなす基本的過程が判明したときに、より明白になるであろう。このような方法の実施形態において、微生物のコロニーの前記試料は懸濁液の形態をとり、前記懸濁液の前記試料を、約0.5から3.0μlの範囲の体積を有する滴の形態で、前記ターゲットプレートの付着スポット上に付着させる。
【0044】
本発明はさらに、MALDI用のターゲットプレートの付着スポット上に、微生物のコロニーの試料を含む懸濁液の滴を自動的に付着させる方法であって、以下の自動化されたステップを含む方法に関する:
- 採取ツールデバイス内にピペッティングツールを提供し、前記ピペッティングツールを保持するピペッティングツールホルダを備える位置決めデバイスを用意する自動化されたステップであり、前記位置決めデバイスは、それぞれ、微生物のコロニーの試料を含む前記懸濁液を保持する懸濁液管の上方の開始位置に前記ピペッティングツールを配置し、前記ピペッティングツールを自動的に下げて前記懸濁液の中に入れ、前記ピペッティングツールを自動的に上げて前記懸濁液の外に出し、前記ピペッティングツールを移送位置に配置するように構成されている自動化されたステップ、
- 前記位置決めデバイスの前記ピペッティングツールホルダ内に前記ピペッティングツールを配置する自動化されたステップ、
- 前記位置決めデバイスによって、前記懸濁液管の上方の前記開始位置に前記ピペッティングツールを配置し、前記ピペッティングツールを下げて前記懸濁液管内の前記懸濁液の中に入れ、前記ピペッティングツールを操作してある量の懸濁液を採取し、前記ある量の懸濁液を含む前記ピペッティングツールを前記移送位置まで上げる自動化されたステップであり、前記ピペッティングツールは、制御された弁によって閉じられて前記ある量の懸濁液媒質を収容する加圧可能なチャンバを備える自動化されたステップ、
- ターゲットプレートを保持するターゲットプレートホルダを用意する自動化されたステップであり、前記ターゲットプレートは複数の付着スポットを有する自動化されたステップ、
- 前記ターゲットプレートホルダ内に前記ターゲットプレートを配置する自動化されたステップ、
- 前記位置決めデバイスの前記移送位置から、前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの1つの付着スポットの上方の位置へ、前記ピペッティングツールを自動的に移送し、前記ピペッティングツールを、前記ターゲットプレートの上方の決められた距離まで下げ、前記チャンバを、約0.5バールから1.1バールの範囲の圧力に加圧し、前記弁を、約0.5から3.0μlの範囲の体積を有する懸濁液の滴が前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポット上に付着するような時間、開く移送デバイスを用意する自動化されたステップ、および、
- 前記ピペッティングツールを前記ターゲットプレートから上げる自動化されたステップ。前記ピペッティングツールの形状は、懸濁液の前記滴の前記ターゲットプレートへの付着が、液はねを生じることなく行われるような形状であることが好ましい。特に、この方法は、前記チャンバを、約0.5バールから1.1バールの範囲の圧力に加圧し、前記弁を、約0.5から3.0μlの範囲の体積を有する懸濁液の滴が前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大で半分の上に付着するような時間、開くステップを含む。前記ターゲットプレートの前記付着スポットのうちの前記1つの付着スポットの最大でほぼ半分を前記試料が覆うとき、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの初めは前記試料で覆われていなかった部分の分析結果は、MALDI機器から得られる、前記付着スポットの最初から前記試料で覆われていた部分の分析結果よりも驚くほど極めて正確であることが見出された。前記付着スポットの部分を覆う試料の上にマトリックス材料の滴が置かれた後に起こる結晶化は、前記付着スポットの覆われなかった部分も、ある量の試料物質を含むこと、および、この量が、優れた分析結果を提供するのに極めて適していることを保証すると考えられる。この効果の原因である物理的または化学的過程は、現時点において明らかではないが、おそらくは、MALDIの基礎をなす基本的過程が判明したときに、より明白になるであろう。
次に、本発明の装置の非限定的な例示的実施形態が示された図1を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に基づく方法の例示的実施形態を説明する目的にも使用される図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明では、MALDIまたはMALDI-TOF-MSを使用して微生物を同定する。MALDI TOF MS操作では、MALDI機器内の固定された位置に保持されたターゲットプレート上に、微生物のコロニーの試料をスポットとして配置し、または付着させる。このようなターゲットプレートは、複数の付着スポット(例えば単一のターゲットプレート上に24から384個の付着スポット)を有し、これらの付着スポットは、ターゲットプレートの縁に関して固定された向きを有する。微生物のコロニーの得られた試料を選択された付着スポット上に付着させることができるように、ターゲットプレートはX-Yステージ上に配置され、特定の試料を付着させた位置はX-Yパラメータによって示され、中央制御コンピュータの記憶装置に記憶される。
【0047】
図1には詳細には示されていないが、ターゲットプレートは、移送トラック18のBによって示された位置の下方に配置されている。移送トラック18に沿って、培養皿3および/または懸濁液管11から、位置Bにあるターゲットプレートの上方まで試料を移送することができ、位置Bで、試料は下げられて、ターゲットプレートの付着スポット上に付着する。
【0048】
以下において、本発明は、試料を含む懸濁液を調製すること、およびターゲットプレートの付着スポット上に懸濁液の滴を付着させることに関して詳述されるが、本発明は、培養皿から得られた(採取された)試料を、ターゲットプレートの付着スポット上に直接付着させることにも関する。
【0049】
一般に、後者の方法では、培養皿上で、微生物のコロニーの位置が自動的に決定され、微生物のコロニーが自動的に検出される。自動化された方式で、例えば採取ツールをコロニーと接触させることによって、微生物の選択されたコロニーの試料が得られる。採取ツールを、採取ツール上に存在する微生物のコロニーの試料がターゲットプレートと接触するような態様で下げ、採取ツールを、微生物のコロニーの試料が付着スポット上に付着するような態様で、特に、ターゲットプレートの付着スポットのうちの1つの付着スポットの最大でほぼ半分を覆うような態様で、ターゲットプレートの平面に平行な平面内で移動させることによって、微生物の選択されたコロニーの試料の少なくとも一部を、自動化された方式で、ターゲットプレート上に直接付着させる。その後、微生物の選択されたコロニーの試料の同定のため、試料を有するターゲットプレートが、MALDIを実行する装置内へ自動的に移送される。
【0050】
より詳細には、この方法は、以下の自動化されたステップを含む:
- 第1の採取ツールを用意し、採取ツールを保持する採取ツールホルダを備える位置決めデバイスを用意する自動化されたステップであり、位置決めデバイスは、それぞれ、培養皿上の微生物の選択されたコロニーの得られた位置の上方の開始位置に採取ツールを配置し、採取ツールを培養皿に向かって自動的に下げ、採取ツールを自動的に上げて培養皿から離し、採取ツールを移送位置に配置するように構成されている自動化されたステップ、
- 位置決めデバイスの採取ツールホルダ内に第1の採取ツールを配置する自動化されたステップ、
- 位置決めデバイスによって、第1の採取ツールを、培養皿上の微生物の選択されたコロニーの得られた位置の上方の開始位置に配置し、第1の採取ツールを培養皿に向かって自動的に下げ、微生物と接触させて、微生物の試料を採取し、微生物の試料を有する第1の採取ツールを自動的に上げて、培養皿から離し、移送位置に置く自動化されたステップ、
- ターゲットプレートを保持するターゲットプレートホルダを用意する自動化されたステップであり、ターゲットプレートは複数の付着スポットを有する自動化されたステップ、
- ターゲットプレートホルダ内にターゲットプレートを配置する自動化されたステップ、
- 位置決めデバイスの移送位置から、ターゲットプレートの付着スポットのうちの1つの付着スポットの上方の位置へ、採取ツールを自動的に移送し、採取ツールを、採取ツール上に存在する微生物のコロニーの試料がターゲットプレートと接触するような態様で下げ、採取ツールを、微生物のコロニーの試料が付着スポット上に付着するような態様で、特に、ターゲットプレートの付着スポットのうちの1つの付着スポットの最大でほぼ半分を覆うような態様で、ターゲットプレートの平面に平行な平面内で移動させる移送デバイスを用意する自動化されたステップ、および採取ツールをターゲットプレートから上げる自動化されたステップ。次いで、ターゲットプレート上に付着させたある量の試料の上に、MALDIマトリックス溶液の滴が自動的に置かれる。
【0051】
微生物の同じコロニーが、限定はされないが抗生感受性試験(Antibiotic Susceptibility Test)(AST)などの他の分析または試験にかけられる場合、微生物の選択されたコロニーの第2の試料を、最初の試料を得た方式と同様の方式で得ることができる。培養皿上の微生物のコロニーの位置は既に選択されており、したがって中央制御コンピュータには「分かっている」ため、同じコロニーから第2の試料を容易かつ再現可能に得ることが可能である。次いで、微生物の選択されたコロニーの第2の試料の少なくとも一部を試験培養皿上に移し、付着させる。試験培養皿は例えば、移送トラック18の下方の別の位置に自動的に配置することができる。その後、試験培養皿は、感受性試験または他の追加の分析を実行する装置へ自動的に移送される。
【0052】
微生物の特性評価および同定を実行するためには通常、培養皿上で複数のコロニーを増殖させ、加えて、複数の異なる培養皿が使用されるため、本発明は、例えばバーコードによってそれぞれの培養皿を別々に識別する可能性を提供し、さらに、単一の培養皿上の関心のそれぞれのコロニーが選択され、それぞれのコロニーに識別マークが与えられる。この点に関して、培養皿上の微生物のコロニーの位置を決定し、そのコロニーを選択する自動化されたステップの前に、本発明に基づく方法は、微生物のいくつかのコロニーを含む培養皿を用意し、微生物のコロニーを全て含む培養皿の初期画像を得、微生物のコロニーを全て含む培養皿の初期画像を表示装置上に表示し、初期画像中の微生物の少なくとも1つのコロニーを選択するステップを含む。このようにすると、研究者または分析者は、周到な教育および知識に基づいて、関心のコロニーを選択することができる。それぞれの培養皿は、培養皿を識別するバーコードなどの個別の識別子を有し、全てのコロニーを含む培養皿の初期画像が記憶され、微生物の選択された少なくとも1つのコロニーに関する情報((電子)初期画像内に与えられたリンクを有することが好ましい)が記憶されるため、全ての情報および培養皿の識別子を中央制御コンピュータの記憶装置に記憶することは、非常に適切なさらなる処理を可能にする。このようにすると、唯一の手動操作は、関心のコロニーを選択する行為となり、全ての関連データは、自動化された方式で処理される。任意選択で、研究者または分析者は、培養皿の微生物の選択されたコロニーがかけられる処理に関する処理命令を手動で入力することができ、処理命令も、後の使用のために、中央制御コンピュータの記憶装置に記憶される。この手動行為の後、残りの全てのステップは、完全に自動化されて、高い信頼性および効率で実行される。この自動化されたさらなる処理のため、培養皿は、画像化デバイスを備える採取ツールデバイスの培養皿用のステージ上に自動的に配置される。採取ツールデバイス内に配置された培養皿の画像が得られ、培養皿の識別子を用いて、採取ツールデバイスの画像化デバイスによって得られたこの画像を培養皿の記憶された初期画像と比較すること、したがって微生物の選択されたコロニーの位置に関する情報、および任意選択で、微生物の選択されたコロニー上で実行される処理に関する処理命令に関する情報を得ることが可能である。採取ツールデバイス内に置かれているときの培養皿の画像を初期画像と比較することにより、選択されたコロニーの位置を、例えばコンピュータ化された画像比較によって自動的に得ることができる。さらに、それぞれのターゲットプレートは識別マークを備え、任意選択で、ターゲットプレートのそれぞれの付着スポットは個別の識別マークまたは位置識別子を有し、そのため、ターゲットプレートおよび付着スポットの識別マークを、微生物の選択されたコロニーがそれから得られた培養皿のアイデンティティへのリンクを有する懸濁液の特性とともに、中央制御コンピュータの記憶装置に記憶した後では、得られたMALDI結果の、試験中の微生物の特定のコロニーへの適切なリンクが、適切な自動化された方式で可能である。
【0053】
次に、培養皿から採取された微生物のコロニーの試料から懸濁液が生成される本発明の方法の実施形態、およびこのような方法を実行する装置の実施形態を説明する。
【0054】
図1は、微生物の試料の懸濁液を自動調製する本発明に基づく装置1の実施形態を概略的に示す。装置1は、寒天ゲルの層などの栄養層5上に微生物4を含む培養皿3用のステージ2を備える。
【0055】
装置1は、第1の採取ツール6および追加的な採取ツール7をさらに備える。位置決めデバイス8は、示された実施形態では採取ツールを解放可能に保持する採取ツールホルダ9を備え、図1に示された実施形態では採取ツールホルダ9が第1の採取ツール6を保持する。位置決めデバイス8は、培養皿3の上方の開始位置(図1では実線で示されている)に第1の採取ツール6を配置するように構成されており、さらに、第1の採取ツール6が微生物4と接触し微生物の試料を採取する位置(破線6’で示されている)に第1の採取ツール6を配置することができるような態様で、第1の採取ツール6を培養皿3に向かって自動的に下げ、自動的に上げて培養皿3から離すように構成されている。第1の採取ツール6が試料を採取した後、位置決めデバイス8は第1の採取ツール6を上げ、移送位置に配置する。図1に示された実施形態では、移送位置が開始位置と全く同じである。他の実施形態では、開始位置と移送位置を互いに異なる位置とすることができる。
【0056】
本発明に基づく装置1は、自動懸濁液媒質分与器12から分与された懸濁液媒質を含むことができる懸濁液管11を保持する懸濁液管ホルダ10をさらに備え、示された実施形態では、自動懸濁液媒質分与器12が、懸濁液管ホルダ10内に保持された懸濁液管11に懸濁液媒質14を自動的に分与する分与ノズル13を有する。この実施形態では、懸濁液管ホルダ10は、垂直軸Aを軸に懸濁液管11を回転させる回転可能な懸濁液管ホルダである。
【0057】
本発明の装置1には、位置決めデバイス8の移送位置から、懸濁液管ホルダ10内に保持された懸濁液管11の上方の位置へ、採取ツールを自動的に移送する移送デバイス15が組み込まれている。示された実施形態では、移送デバイス15が、採取ツールを解放可能に保持する握持手段17を備える移送ホルダ16を備える。移送デバイス15は、それ自体が知られている方式で、レールなどの移送トラック18上に、矢印で示されているようにその上で直線運動するように、装着することができる。このようにすると、握持手段17が位置決めデバイス8から採取ツールを引き継ぐことができるような態様で、移送デバイス15を位置決めデバイス8まで移動させることができる。握持手段17が採取ツールを握持した後に、それの採取ツールホルダ9が採取ツールを解放する。図1に示された実施形態では、微生物4の試料19を以前に採取した第2の採取ツールまたは追加的な採取ツール7が、移送デバイス15によって、懸濁液管11の上方の実線で示された開始位置に配置されている。移送デバイス15は、懸濁液管11内に含まれる懸濁液媒質14の中まで第2の採取ツール7を下げるように構成されている。この位置では、図1の破線によって示されているように、試料19を有する第2の採取ツール7’が懸濁液媒質14の中に浸されている。この位置で、移送デバイス15が、第2の採取ツール7を振動させるように起動されて、第2の採取ツール7から試料19が放出されるのに十分な期間、第2の採取ツール7を直線垂直運動させる。その後、移送デバイス15は、懸濁液管11の上方の待機位置に第2の採取ツール7を配置する。図1に示された実施形態では、待機位置が開始位置と全く同じである。他の実施形態では、待機位置と開始位置を互いに異なる位置とすることができる。
【0058】
本発明の装置1は、懸濁液管ホルダ10内に保持された懸濁液管11内に含まれる懸濁液媒質14の濁度の測定を実行する濁度計20をさらに備える。当技術分野では広く知られているとおり、濁度計は、物質の濃度、このケースでは懸濁液媒質中に懸濁した微生物の濃度の尺度である測定値を提供することができる。図1に示された実施形態では、濁度計20が、懸濁液媒質に向かってレーザ光を送り、懸濁液媒質に通すレーザ21と、懸濁液媒質を透過したレーザ光の量を検出するセンサ22とを備える。加えて、例えばレーザ光の経路に対して直角に配置されて、懸濁液によって散乱されたレーザ光の量を検出する追加的なセンサもある(図面には示されていない)。
【0059】
本発明のデバイスの動作は、例えばマイクロプロセッサを備えるコントローラ23によって制御される。コントローラ23は、(信号線によって示されているように)位置決めデバイス8、移送デバイス15、自動懸濁液媒質分与器12および濁度計20に通信可能に接続されて、それぞれ、位置決めデバイス8の移動、移送デバイス15の移動、自動懸濁液媒質分与器12の動作および濁度計20の動作を自動的に制御する。加えて、コントローラ23を、例えば採取ツールホルダ9、移送ホルダ16、レーザ21、センサ22などの装置の他の部分に通信可能に直接接続することもできる。
【0060】
図1に示された実施形態では、第2の採取ツール7が懸濁液媒質14の中に浸される前に懸濁液媒質14の濁度測定が開始されるような態様で濁度計20を制御するように、コントローラ23が構成されている。加えて、コントローラ23は、第2の採取ツール7が懸濁液媒質14の中に浸される前に、ホルダ10内に保持された懸濁液管11の回転を開始し、懸濁液媒質14の濁度を測定している間は懸濁液管11の回転を維持するように、回転可能な懸濁液管ホルダ10を制御する。示された実施形態では、第2の採取ツール7が振動している全期間に濁度の測定が実行されるように、コントローラ23が濁度計20を制御する。このようにすると、濁度計20は、第2の採取ツール7が振動している期間中、測定された濁度、したがって微生物の濃度を示すオンライン測定値をコントローラ23に提供する。
【0061】
コントローラ23は、第1および第2のしきい値が記憶された記憶装置を備える。第1のしきい値は、第2のしきい値に等しいかまたは第2のしきい値よりも大きい。濁度計によって提供された濁度測定値が、第1および第2のしきい値に等しいかまたは第1のしきい値と第2のしきい値の間にある場合、懸濁液媒質中の微生物の濃度/量は、懸濁液を含む懸濁液管をさらに処理することを許すのに十分である。その場合、コントローラ23は、懸濁液管をさらに処理することができることを知らせる信号を提供する。加えて、この状況では、例えば第2の採取ツール7を解放するように握持手段17が起動される位置Cへ移送デバイスを移すことによって、第2の採取ツール7を廃棄することができる。
【0062】
濁度計の最終測定値が、コントローラ23の記憶装置に予め記憶されている第1のしきい値よりも大きい場合、微生物の濃度は、懸濁液管をさらに処理することを許すには高すぎる。その状況では、コントローラ23が、追加の量の懸濁液媒質を懸濁液管11内に供給するように自動懸濁液媒質分与器12を制御する。この追加の量の懸濁液媒質は、懸濁液媒質の初期量、最終測定値、ならびに第1および/または第2のしきい値の値に基づいており、この追加の量の懸濁液媒質を懸濁液管11内に既に存在する懸濁液媒質に加えると、懸濁液媒質中の微生物の濃度が、さらに処理するための要件を満たすものとなる。その要件が満たされたことは、濁度計20による濁度の追加のまたはさらなる測定によって確認することができる。
【0063】
濁度計20の最終測定値が第2のしきい値よりも小さい場合、このことは、懸濁液媒質中の微生物の濃度が低すぎることを意味し、その場合には、コントローラ23が、第1の採取ツール6によって微生物の追加の試料が採取されるように装置1を制御する(あるいは、第2のまたは別の採取ツールを使用して追加の試料を採取することもできる)。したがって、この場合、コントローラ23は、第2の採取ツール7が前述のとおりに廃棄されるように、移送デバイス15の位置決めを制御する。次いで(または同時に)、位置決めデバイス8の採取ツールホルダ9内の第1の採取ツール6が、培養皿3の上方の開始位置から培養皿に向かって下げられ、微生物4と接触して、微生物の追加の試料を採取する。その後、第1の採取ツール6は、微生物の追加の試料と一緒に自動的に上げられ、培養皿から離されて移送位置に達する。次いで、移送デバイスが、微生物の追加の試料を含む第1の採取ツールを、位置決めデバイス8の移送位置から、懸濁液管11の上方の位置へ自動的に移送する。微生物の追加の試料を含む第1の採取ツール6は懸濁液媒質14の中まで下げられ、微生物の追加の試料を懸濁液媒質中に放出するための期間、移送デバイス15によって振動して直線垂直運動する。振動中に再び濁度が測定され、測定された値が、コントローラ23の記憶装置に記憶された第1および第2のしきい値と比較される。この場合、振動中に濁度計20によって実行された濁度のオンライン測定値が、第1のしきい値に等しいかまたは第1のしきい値よりも小さく、かつ第2のしきい値に等しいかまたは第2のしきい値よりも大きい場合に、第1の採取ツール6が待機位置まで上げられるような態様で、移送デバイス15の移動を制御するように、コントローラ23を構成することができる。
【0064】
本発明の装置内において特に有用な懸濁液管は、直径が約6から約12mm、好ましくは約10mmの実質的に円形の断面を有する。これらの比較的小さな懸濁液管では、懸濁液媒質の供給される初期量が約0.5~2ml、好ましくは約1mlになるように、コントローラ23が自動懸濁液媒質分与器12を制御することができる。
【0065】
移送デバイス15の振動は、約5Hzから約120Hzの間、好ましくは約30Hzから約90Hzの間、最も好ましくは約50Hzの振動数、約0.5mmから約4mm、好ましくは約2mmから約3mmの振幅で採取ツールが振動するように、コントローラ23によって制御される。コントローラはさらに、採取ツールが振動する期間が約3秒から約10秒、好ましくは約6秒になるような態様で、移送デバイス15の振動を制御するように構成されている。
【0066】
本発明の装置1は、その端部位置が培養皿用のステージ2を形成することができるコンベヤ24をさらに備え、または、図1に示されているように、コンベヤ24の適当な動作によって培養ディスクをステージ上に運び、ステージから除去することができるように相互に位置決めされたコンベヤ24およびステージ2をさらに備える。コンベヤ24は、コントローラ23によって、微生物を含む培養皿をステージ上に自動的に配置し、ステージから自動的に除去するように制御される。図示されていない他の実施形態では、培養皿をステージ上に自動的に配置し、ステージから自動的に除去する別の手段を使用することができることに留意されたい。特に、コントローラ23は、さらなる処理のために懸濁液を含む懸濁液管を懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号が提供された後にのみ、自動培養皿配置/除去デバイスによって培養皿がステージから自動的に除去されることを許すように構成されている。このことは、必要な場合に追加の試料を採取することが常に可能であることを保証する。
【0067】
図1に示されているように、本発明の装置1は、懸濁液管ホルダ内に懸濁液管を自動的に配置し、懸濁液管ホルダから懸濁液管を自動的に取り外す自動懸濁液管配置/取外しデバイス25をさらに備える。示された実施形態では、自動懸濁液管配置/取外しデバイス25が、懸濁液管11’を解放可能に握持する握持手段26を備える。ここでも同様に、コントローラ23は、自動懸濁液管配置/取外しデバイス25、26に通信可能に接続されて、自動懸濁液管配置/取外しデバイスの動作を制御し、懸濁液管を懸濁液管ホルダ内に自動的に配置するように構成されている。コントローラ23は特に、さらなる処理のために懸濁液を含む懸濁液管を懸濁液管ホルダから取り外すことができることを知らせる信号が提供された後にのみ、自動懸濁液管配置/取外しデバイス25、26によって懸濁液管ホルダを懸濁液管ホルダから自動的に取り外すように構成されている。示された実施形態では、自動懸濁液管配置/取外しデバイス25が、移送デバイス15の移動から独立して、レール18に沿って移動可能である。Cによって示された位置で、空の懸濁液管を取り込むこと、および十分な濃度の微生物を含んだ懸濁液媒質を含む懸濁液管を、さらなる処理のためにインキュベータなどの機器に引き渡すことができる。位置Cは例えば、懸濁液管配置/取外しデバイス25および移送デバイス15を、異なる構成要素が存在するかまたは異なる処理を実行することができる異なる位置へ導くことができるマルチトラックシステムによって形成することができることに留意されたい。
【0068】
このようにして調製された試料懸濁液は、MALDIを使用した微生物の特性評価または同定を実行するために使用され、任意選択で、ASTなどの他の分析法に対しても使用される。MALDIを使用して微生物を同定するため、試料懸濁液の滴が得られ、この滴が、ターゲットプレート上に移される。滴は、握持手段17によって保持され、自動的に下げられて懸濁液の中に入る別の採取ツールを使用することによって得ることができる。この採取ツールが上げられて懸濁液の外へ出るときに、この採取ツールの先端に懸濁液の滴が付き、この採取ツールを、トラックに沿って位置Bまで移送することができ、そこで、この滴がターゲットプレート上の付着スポットと接触するまで、滴が付いた採取ツールが下げられ、採取ツールが上げられてターゲットプレートから離れた後に、滴の少なくとも一部が付着スポット上に残る。あるいは、後述するピペッティングツールを使用して、懸濁液管からある量の懸濁液を採取し、この量を位置Bへ移し、懸濁液の滴をターゲットプレート上に付着させることもできる。ターゲットプレート上に懸濁液の滴を付着させた後、特にこの滴を乾燥させたときに、ターゲットプレート上に付着させたある量の試料または試料の部分の上に、MALDIマトリックス溶液の滴が自動的に置かれる。他の試験または他の分析を実行するために、試料懸濁液の第2の滴を同様の方式で得ることができ、このような滴を、例えば試験培養皿まで自動的に移送し、試験培養皿上に自動的に付着させることができる。この試験培養皿は、感受性試験または他の追加の分析を実行するために、自動化された方式でさらに移送される。
【0069】
懸濁液管はそれぞれ固有の識別マークを備え、この識別マークは、とりわけ、得られた分析結果を、その結果に関連する培養皿およびコロニーに、正確かつ速やかに結びつけるために、微生物の選択されたコロニーがそれから得られた培養皿のアイデンティティへのリンクを有する懸濁液の特性とともに、中央制御コンピュータの記憶装置に記憶されている。
【0070】
図1には示されていないが、ピペッティングツールによって、懸濁液管内の懸濁液からある量の懸濁液を採取することができる。ピペッティングツールは、採取ツールと同じ方式で、(ピペッティングツールホルダとして機能する)握持手段17および移送または位置決めデバイス15によって自動的に保持され、自動的に位置決めされることができる。位置決めデバイス15は、それぞれ、懸濁液管の上方の開始位置にピペッティングツールを配置し、ピペッティングツールを自動的に下げて懸濁液の中に入れ、ピペッティングツールを自動的に上げて懸濁液の外に出し、ピペッティングツールを移送位置に配置するように構成されている。ピペッティングツールが下げられて懸濁液管内の懸濁液の中に入ると、ピペッティングツールが、それ自体が知られている(例えば陰圧を使用する)方式で操作されて、ある量の懸濁液を採取する。その後、このある量の懸濁液を含むピペッティングツールが移送位置まで上げられる。この量を保持するため、ピペッティングツールは、制御された弁によって閉じられた加圧可能なチャンバを備える。ピペッティングツールは、移送デバイス15によって、ターゲットプレートの付着スポットのうちの1つの付着スポットの上方の位置Bに自動的に移送される。この位置で、ピペッティングツールは、ターゲットプレートの上方の予め決められた距離まで下げられ、その後、約0.5バールから1.1バールの範囲の圧力にチャンバが加圧される。次いで、約0.5から3.0μlの範囲の体積を有する懸濁液の滴が付着スポット上に付着するような時間、特に、ターゲットプレートの付着スポットのうちの1つの付着スポットの最大でほぼ半分を覆うような時間、弁が開かれる。滴を付着させた後、ピペッティングツールはターゲットプレートから上げられる。ピペッティングツールを位置Cへ移送することができ、そこでそれを廃棄し、または再使用のために洗浄することができる。
図1