(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】抗凝固因子XI抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/36 20060101AFI20230511BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230511BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230511BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230511BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C07K16/36 ZNA
C12N15/13
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P7/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021053470
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2018565042の分割
【原出願日】2017-06-12
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(73)【特許権者】
【識別番号】513010789
【氏名又は名称】アディマブ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュー
(72)【発明者】
【氏名】エルスワース,ケネス、ピー
(72)【発明者】
【氏名】ミリガン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】オールドハム,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】シーファー,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】ガンティ,ヴィシュナビ
(72)【発明者】
【氏名】タブリージファード,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ,ビアンカ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504371(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049280(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/018404(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/056997(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/072740(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/054007(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093395(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0330103(US,A1)
【文献】特表2013-510164(JP,A)
【文献】Y. Sun and D. Gailani,Identification of a Factor IX Binding Site on the Third Apple Domain of Activated Factor XI,J. Biol. Chem.,1996年11月15日,Vol.271, No.46,p.29023-29028,doi: 10.1074/jbc.271.46.29023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
A61K 39/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および配列番号3または4に示すアミノ酸配列を有するHC-CDR3、ならびに
(b)配列番号5に示すアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するLC-CDR2、配列番号7に示すアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含
み、凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号21、22、23または24に示すアミノ酸配列を有するHC可変ドメイン、および配列番号25に示すアミノ酸配列を有するLC可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
抗体または抗原結合性フラグメントが、
(c)配列番号21に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(d)配列番号22に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(e)配列番号23に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、または
(f)配列番号24に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメインを含む、請求項1に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
抗体が更に、配列番号16、17、18、19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、請求項5に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
抗体が更に、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、請求項5に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、請求項
7に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、請求項
1に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
抗体が、
配列番号33、35、37、39、45、47、49、51、57、59、61、63、69、71、73または75に示されているアミノ酸配列を有するHC、ならびに
配列番号26に示されているアミノ酸配列を有するLCを含み、
ここで、抗体または抗原結合性フラグメントが凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する、請求項1に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性フラグメントと医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物。
【請求項13】
血栓塞栓性障害または疾患の治療のための、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
(i)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号3もしくは4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または配列番号8に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
(ii)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む
、凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法であって、
該重鎖をコードする核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主細胞を準備し、該抗体または抗原結合性フラグメントを産生させるのに十分な条件下、それを産生させるのに十分な時間にわたって該宿主細胞を培養することを含む、製造方法。
【請求項15】
重鎖可変領域が配列番号21、22、23または24のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項16】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項17】
抗体がIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項18】
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項19】
軽鎖がヒトカッパ軽鎖またはヒトラムダ軽鎖を含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項20】
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項21】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項22】
宿主細胞が酵母または糸状真菌細胞である、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項23】
凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体または抗原結合性フラグメント
であって、配列番号21、22、23または24のアミノ酸配列を含む重鎖
可変領域をコードする核酸分子と
配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖
可変領域をコードする核酸分子とを含む宿主細胞から得られる
抗体または抗原結合性フラグメントを含む組成物。
【請求項24】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項25】
抗体がIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項26】
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項27】
軽鎖がヒトカッパ軽鎖またはヒトラムダ軽鎖を含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項28】
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む、請求項
23に記載の組成物。
【請求項29】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である、請求項
23に記載の組成物。
【請求項30】
宿主細胞が酵母または糸状真菌細胞である、請求項
23に記載の組成物。
【請求項31】
配列番号21、22、23または24に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む、凝固因子XI(FXI)のアップル(apple)3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項32】
抗体が更に、配列番号16または17に示されているアミノ酸配列を有する重鎖定常ドメインと、配列番号20に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖定常ドメインとを含む、請求項
31に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項33】
抗体が更に、297位のアスパラギン残基のN-グリコシル化を欠くIgG1アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、請求項
31に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項34】
請求項
31に記載の抗体または抗原結合性フラグメントと医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物。
【請求項35】
配列番号33、
35、
37、39、45、47、49または51に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号26に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、凝固因子XI(FXI)のアップル(apple)3ドメインに結合する抗体であって、
凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体。
【請求項36】
配列番号33、
35、
37、39、45、47、49または51に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号26に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、凝固因子XI(FXI)のアップル(apple)3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する抗体、並びに、医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は2016年6月14日付け出願の米国仮特許出願第62/349,888号(
その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0002】
(1)発明の分野
本発明は、ヒト凝固因子XI(FXI)のアップル(apple)3ドメインに結合し
、凝固因子XIIaによるFXIの活性化および因子IX(FIX)に対するFXIaの
活性を阻害する抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
(2)関連技術の説明
静脈血栓症および動脈血栓症の両方を含む血栓塞栓性障害は、ビタミンKアンタゴニス
ト(VKA)、ヘパリンおよび直接トロンビンインヒビターのような多数のクラスの抗凝
固剤が利用可能であるにもかかわらず、依然として西欧諸国における罹患および死亡の主
要原因である(Weitzら,Chest 2008,133:234S-256S;H
awkins,Pharmacotherapy 2004,24:62S-65S)。
これらの薬物は、血栓症のリスクを低減するのに有効ではあるが、それらは多数の制約を
伴う。例えば、VKA(例えば、ワルファリン)は経口抗凝固療法の主流であるが、その
重大な出血リスク、遅い作用発現および作用相殺ならびに食事と薬物との多数の相互作用
ゆえに、VKA療法の管理は複雑である(Hawkins,前掲;Ansell Jら,
Chest 2008,133:160S-198S)。非ビタミンKアンタゴニスト経
口抗凝固剤(リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバンおよびダビガトランを含むN
OAC)は、ワルファリンと比較して少なくとも劣っていない有効性を示し、食物と薬物
との相互作用が少なく、モニタリングの必要もない。しかし、NOACは、心房細動にお
ける脳卒中予防に関するその登録治験において主要または非主要臨床関連出血の年間発生
率が15%に近いことによって示されるように、出血のリスクを尚も増加させる(Con
nollyら,N Engl J Med 2009,361:1139-1151;P
atelら,N Engl J Med 2011,365:883-891;Gran
gerら,N Engl J Med 2011,365:981-992;Giugl
ianoら,N Engl J Med 2013,369:2093-2104)。こ
れは、NOACが、正常な凝固(止血)に必須であるタンパク質(凝固因子Xa(FXa
)およびトロンビン)を標的とするという事実に主に起因する。したがって、血栓性疾患
または障害の予防および治療におけるより良好な安全性プロファイルを有する新規療法が
依然として必要とされている。
【0004】
血液凝固カスケードの古典的なウォーターフォールモデル(
図1A)においては、凝固
は外因性(組織因子(TF)活性化)経路または内因性(接触活性化)経路のいずれかに
よって始動され、両者は、トロンビン生成およびフィブリン形成を最終的にもたらす共通
の経路に入る(Furie & Furie,Cell 1988,53:505-51
8;Gailani & Renne,J Thromb Haemost 2007,
5:1106-1112)。内皮下およびアテローム硬化性病変に存在するTFが流動血
液にさらされ、凝固因子VIIa(FVIIa)との複合体を形成すると、外因性カスケ
ードが開始される。ついで、TF-FVIIa複合体(外因性テナーゼ複合体)は共通経
路を始動させ、すなわち、FXを活性化してFXaを形成し、今度はこれがプロトロンビ
ンをトロンビンに変換する。また、TF-FVIIa複合体は凝固因子IX(FIX)を
活性化してFIXaを形成しうる。凝固因子VIII(FVIIIa)と複合体(内因性
テナーゼ複合体)を形成したFIXaもFX基質を切断しうる。内因性カスケードは、負
荷電表面(例えば、コラーゲンおよびグリコサミノグリカン)からの接触活性化によりF
XIIaが形成されると開始され、FXI、FIX、FXおよびプロトロンビンの逐次的
活性化によりトロンビン生成を伝播する。凝固カスケードにおける最終プロテアーゼであ
るトロンビンは更に、フィードバックメカニズムにおけるFXIの直接活性化によるFX
Ia生成に寄与しうる。全血中のもう1つの重要な止血成分である血小板はトロンビンに
より活性化されることが可能であり、ついでFXIa形成をも援助しうる。トロンビン生
成のFXI依存的増幅は、トロンビン活性化線溶抑制因子(TAFI)の活性化により、
フィブリン溶解(線溶)を間接的に調節しうる。したがって、FXIは止血系における幾
つかの成分と相互作用し、血液凝固および血栓症において重要な役割を果たす(Gail
ani & Renne,前掲;Emsleyら,Blood 2010,115:25
69-2577)。
【0005】
凝固因子XI(FXI)は、80KDaの同一サブユニットから構成される二量体であ
り、N末端から始まる各サブユニットは4つのアップルドメイン(A1、A2、A3およ
びA4)および触媒ドメインからなる(
図1Bを参照されたい)。FXIは、高分子量キ
ニノーゲン(HK)と複合体形成して循環するチモーゲンである。HKはFXIにおける
A2ドメインに結合し、FXIからFXIaへのFXIIa活性化のための生理学的補因
子である。FXIにおける残りのアップルドメインも重要な生理的機能をもたらす。例え
ば、FIX結合エキソサイトはA3に位置し、FXIIa結合部位はA4に位置する。F
XI二量体化に決定的に重要な残基もA4に位置する(Emsleyら,前掲)。
【0006】
FXIは、止血に対する寄与が比較的小さい一方で、血栓形成の病理学的過程において
は重要な役割を果たしており、したがって、血栓症に対する有望な標的であることが、近
年、多種多様な努力によって実証されている。この見解を裏付ける重要なデータが以下の
ものにおいて要約されている。(1)Ionis Pharmaceuticals I
nc.のFXIアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のフェーズII治験(Bul
lerら,N Engl J Med 2015,372:232-240)において、
FXI ASOは、膝関節全置換術を受けている患者において、エノキサパリンと比較し
て、より低い出血傾向を伴って、静脈血栓塞栓症(VTE)の有意な軽減を示した。(2
)ヒトの遺伝学および疫学的研究(Dugaら,Semin Thromb Hemos
t 2013;Chenら,Drug Discov Today 2014;Key,
Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2
014,2014:66-70)は、重度のFXI欠損(血友病C)は虚血性脳卒中およ
び深部静脈血栓症のリスクの低減をもたらし、逆に、FXIのレベルの上昇は、VTEお
よび虚血性脳卒中の、より高いリスクに関連していることを示した。(3)多種多様な前
臨床試験は、FXI(a)阻害または機能喪失が、止血を妨げることなく、顕著な血栓症
予防(thromboprotection)をもたらすことを示した(Chenら,前
掲)。注目すべきことに、モノクローナル抗体14E11および1A6はヒヒAVシャン
ト血栓症モデルにおいて有意な血栓減少をもたらした(米国特許第8,388,959号
;米国特許第8,236,316号;Tuckerら,Blood 2009,113:
936-944;Chengら,Blood 2010,116:3981-3989)
。更に、14E11(マウスFXIと交差反応するもの)は、マウスの急性虚血性脳卒中
の実験モデルにおいて保護をもたらした(Leungら,Transl Stroke
Res 2012,3:381-389)。最小の出血リスクを伴う抗血栓標的としての
FXIを検証する前臨床モデルにおいて、追加的なFXI標的化mAbも報告されている
(van Montfoortら,Thromb Haemost 2013,110;
Takahashiら,Thromb Res 2010,125:464-470;v
an Montfoort,Ph.D.Thesis,University of A
msterdam,Amsterdam,Netherlands,14 Novemb
er 2014)。したがって、FXIの阻害は、現在の標準治療の抗凝固剤と比較して
改善された利益-リスクプロファイルを有する新規抗血栓療法のための有望な戦略である
。
【0007】
現在、重症腎疾患または末期腎疾患(ESRD)を有する患者に対する抗血栓療法に対
する、満たされていない大きな医学的要求性が存在する。米国においては約65万人の患
者が重症腎疾患またはESRDを有しており、これらの患者は極めて高い発生率の血栓性
および血栓塞栓性合併症(MI、卒中/TIA、末梢動脈疾患(PAD)、血管アクセス
不全)に罹患する。ESRD患者は、出血性イベントを示す可能性も、一般集団より高い
。ESRD患者にはいかなる種類の抗凝固療法も一般には処方されないため(出血リスク
、およびESRDにおける非ビタミンKアンタゴニスト経口抗凝固薬(NOAC)に関す
るデータの欠如による)、これらの患者における許容される利益-リスクプロファイルを
有する抗血栓療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
発明の簡潔な概要
本発明は、凝固因子XIに選択的に結合することが可能であり(抗FXI抗体)、好ま
しくは止血を妨げることなく、血液凝固および関連血栓症を抑制することが可能であるヒ
ト抗体を提供する。組成物は、凝固因子XIのアップル(apple)3(A3)ドメイ
ンの一定のエピトープに結合しうる抗凝固因子XI抗体を含む。これらの抗体は、FXI
Iaの作用によるチモーゲン形態FXIからその活性型凝固因子FXIaへの変換を阻害
することにより、およびFIXのFXIa媒介性活性化を阻害することにより、中和活性
を示す。該抗体はFXI阻害に有用であり、これは、低い出血合併症リスクを伴って、臨
床的に重要な抗血栓作用をもたすことが可能であり、したがって、より下流の凝固因子、
例えばFXaおよびトロンビンと比較して増大した治療指数をもたらしうる。したがって
、これらの抗体は、血栓塞栓性合併症の予防、例えば、心房細動における脳卒中予防(S
PAF)のための治療アプローチをもたらす。
【0009】
FXI阻害から利益を受けうる血管血栓症のリスクを有する未対処コホートの1つは重
症腎疾患および末期腎疾患(ESRD)集団であり、該集団においては、出血に関する懸
念ゆえに非ビタミンKアンタゴニスト経口抗凝固薬(NOAC)が典型的には使用されず
、このことが臨床試験の経験の欠如につながっている。本発明における抗体はESRD患
者における血栓性合併症の予防のための新規抗凝固療法を提供する。本発明における抗体
は、ESRD患者における許容可能な出血リスクを伴う臨床的に重要な抗血栓効果をもた
らしうる。
【0010】
ESRDおよびSPAFに加えて、FXI阻害は、高い血栓症リスクを有する追加的な
患者集団にも適応しうる。これらには以下のものが含まれる:1)整形外科手術における
静脈血栓塞栓症(VTE)の予防および/またはVTEの二次予防;2)PADにおける
主有害四肢イベント(MALE)の低減および/または血管再生の低減;3)ACSにお
ける補助療法。
【0011】
本発明は、αFXI-18623pファミリー、αFXI-18611pファミリーま
たはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体の、6個の相補性決定領域(CDR
)を少なくとも含む、あるいは6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換
、付加、欠失またはそれらの組合せを有する、αFXI-18623pファミリー、αF
XI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体の
、6個の相補性決定領域(CDR)を少なくとも含む抗体または抗原結合性フラグメント
を提供し、ここで、αFXI-18623ファミリーの抗体は、配列番号28または29
に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変領域と、配列番号30に示されて
いるアミノ酸配列を有するLC可変領域とを含み、αFXI-18611pファミリーの
抗体は、配列番号21または22に示されているアミノ酸配列を有するHC可変領域と、
配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変領域とを含み、αF
XI-18611ファミリーの抗体は、配列番号23または24に示されているアミノ酸
配列を有するHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するLC可
変領域とを含む。更なる実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝
固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因
子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0012】
本発明の更なる態様または実施形態においては、前記の6個のCDRはFXI-186
23pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファ
ミリーの抗FXI抗体のHCのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにFXI-1
8623pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611
ファミリーのLCのCDR1、CDR2およびCDR3を含み、またはそれらからなり、
ここで、αFXI-18623ファミリーの抗体は、配列番号28または29に示されて
いるアミノ酸配列を有するHC可変領域と、配列番号30に示されているアミノ酸配列を
有するLC可変領域とを含み、αFXI-18611pファミリーの抗体は、配列番号2
1または22に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変領域と、配列番号2
5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変領域とを含み、αFXI-18
611ファミリーの抗体は、配列番号23または24に示されているアミノ酸配列を有す
るHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するLC可変領域とを
含む。更なる実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI
(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因
子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0013】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号21、22、23および24からなるアミノ酸配列の群から選択されるアミ
ノ酸配列を有するHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するL
C可変領域とを含み、ここで、HC可変領域フレームワークは1、2、3、4、5、6、
7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが
可能であり、LC可変領域フレームワークは1、2、3、4、5、6、7、8、9または
10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが可能である。
【0014】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号21、22、23および24からなるアミノ酸配列の群から選択されるアミ
ノ酸配列を有するHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するL
C可変領域とを含む。
【0015】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号28および29からなるアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有
するHC可変領域と、配列番号30に示されているアミノ酸配列を有するLC可変領域と
を含み、ここで、HC可変領域フレームワークは1、2、3、4、5、6、7、8、9ま
たは10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが可能であり、
LC可変領域フレームワークは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミ
ノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが可能である。
【0016】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号28および29からなるアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有
するHC可変領域と、配列番号30に示されているアミノ酸配列を有するLC可変領域と
を含む。
【0017】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はヒトIgG1、IgG2、I
gG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。更なる態様においては、
該定常ドメインは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付
加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。特定の態様においては、該定常ドメインはC
末端リジンを含むことが可能であり、またはC末端リジンを欠くことが可能である。
【0018】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はヒトIgG1またはIgG4
アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。もう1つの態様においては、該重鎖定常ドメイ
ンはIgG4アイソタイプのものであり、更に、228位(EU番号付け)のセリン残基
[これは、配列番号16または17の108位(108位のセリン)に対応する]の、プ
ロリンによる置換を含む。
【0019】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は配列番号16、17、18ま
たは19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む。
【0020】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はヒトカッパまたはラムダ型の
軽鎖定常ドメインを含む。
【0021】
本発明の更なる態様または実施形態では、該抗体は、配列番号20に示されているアミ
ノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む。
【0022】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号33、35、37、39、45、47、49、51、57、59、61、6
3、69、71、73および75からなるアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列
を有するHCと、配列番号26に示されているアミノ酸配列を有するLCとを含む。
【0023】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメント
は、配列番号41、43、53、55、65、67、77および79からなるアミノ酸配
列の群から選択されるアミノ酸配列を有するHCと、配列番号31に示されているアミノ
酸配列を有するLCとを含む。
【0024】
本発明は更に、(a)配列番号28に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)
可変ドメインおよび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変
ドメイン、(b)配列番号29に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ド
メインおよび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイ
ン、(b)配列番号21に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメイン
および配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(
c)配列番号22に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび
配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(d)配
列番号23に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番
号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、または(e)配
列番号24に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番
号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメインを含む抗体または
抗原結合性フラグメントを提供する。
【0025】
更なる実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0026】
特定の実施形態においては、HCおよびLC可変領域は1、2、3、4、5、6、7、
8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。
【0027】
特定の実施形態においては、HCおよびLC定常ドメインは1、2、3、4、5、6、
7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。
特定の態様においては、該定常ドメインはC末端リジンを含むことが可能であり、または
C末端リジンを欠くことが可能である。
【0028】
特定の実施形態においては、HCおよびLC可変領域は1、2、3、4、5、6、7、
8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが可能
であり、HCおよびLC定常ドメインは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10
個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むことが可能である。特定の態
様においては、該定常ドメインはC末端リジンを含むことが可能であり、またはC末端リ
ジンを欠くことが可能である。
【0029】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は更に、配列番号16、17、
18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメイン、あるいは1、2、
3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組
合せを含むその変異体を含む。
【0030】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は更に、配列番号20に示され
ているアミノ酸配列を含むLC定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8
、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を
含む。
【0031】
本発明のもう1つの態様または実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメ
ントは、(a)配列番号28に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメ
インおよび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン
、(b)配列番号29に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインお
よび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(c
)配列番号21に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配
列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(d)配列
番号22に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号
25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(e)配列番号2
3に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に
示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(f)配列番号24に示
されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示され
ているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、(g)HC可変領域フレームワ
ークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失ま
たはそれらの組合せを含む、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の変
異体、あるいは(h)LC可変領域フレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、
9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(a)、(b
)、(c)、(d)、(e)、(f)または(g)の変異体を含む。
【0032】
本発明は更に、(a)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定
領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR
2および配列番号3に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメ
インと定常ドメインとを有する重鎖(HC)、(b)配列番号1に示されているアミノ酸
配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ
酸配列を有するHC-CDR2および配列番号4に示されているアミノ酸配列を有するH
C-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する重鎖(HC)、または(c)
配列番号8に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1
、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に
示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインと
を有する重鎖(HC)を含む抗体を提供する。更なる実施形態においては、該抗体または
抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FX
Iの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0033】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はヒトIgG1、IgG2、I
gG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。更なる態様においては、
該定常ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの天
然重鎖定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9また
は10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。特定の態様にお
いては、該定常ドメインはC末端リジンを含むことが可能であり、またはC末端リジンを
欠くことが可能である。
【0034】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はヒトIgG1またはIgG4
アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。もう1つの態様においては、該重鎖定常ドメイ
ンはIgG4アイソタイプのものであり、更に、228位(EU番号付け)のセリン残基
[これは、配列番号16または17の108位(108位のセリン)に対応する]の、プ
ロリンによる置換を含む。
【0035】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16または17に
示されているアミノ酸配列を含むIgG4重鎖定常ドメインを含む。もう1つの態様にお
いては、該定常ドメインは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸
置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。
【0036】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号18または19に
示されているアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常ドメインを含む。更なる態様において
は、該定常ドメインは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換
、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。
【0037】
本発明は更に、
(a)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-
CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列
番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ド
メインとを有する軽鎖(LC)、または
(b)配列番号11に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC
-CDR)1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および
配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと
定常ドメインとを有する軽鎖(LC)
を含む抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。更なる実施形態においては、該抗
体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0038】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該軽鎖(LC)はヒトカッパ軽鎖また
はヒトラムダ軽鎖、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ
酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むそれらの変異体を含み、ここで、該抗体
または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し
、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。本発明
の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されているアミノ
酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0039】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16または17に
示されているアミノ酸配列を含むIgG4重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は
、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0040】
発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号18または19に示
されているアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、5
、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む
その変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FX
I)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XI
a媒介性活性化を阻害する。
【0041】
本発明は更に、
(a)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-
CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列
番号3に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメインと定常ド
メインとを有する重鎖(HC)、ならびに
(b)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-
CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列
番7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメ
インとを有する軽鎖(LC)
を含む抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。更なる実施形態においては、該抗
体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0042】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラ
ムダ軽鎖、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、
付加、欠失またはそれらの組合せを含むそれらの変異体を含み、ここで、該抗体または抗
原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXI
の活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。本発明の更なる
態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されているアミノ酸配列を
含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0043】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、IgG1、IgG2、Ig
G3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは天然IgG1、IgG2
、IgG3またはIgG4アイソタイプのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むそ
の変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI
)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa
媒介性活性化を阻害する。更なる態様においては、該定常ドメインはC末端リジンを含む
ことが可能であり、またはC末端リジンを欠くことが可能である。
【0044】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、ヒトIgG1またはIgG
4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9また
は10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を含み、こ
こで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメ
インに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害
する。もう1つの態様においては、該重鎖定常ドメインはIgG4アイソタイプのもので
あり、更に、228位(EU番号付け)のセリン残基[これは、配列番号16または17
の108位(108位のセリン)に対応する]の、プロリンによる置換を含む。
【0045】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16または17に
示されているアミノ酸配列を含むIgG4重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0046】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号18または19に
示されているアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0047】
本発明は更に、
(a)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-
CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列
番号4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメインと定常ド
メインとを有する重鎖(HC)、ならびに
(b)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-
CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列
番7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメ
インとを有する軽鎖(LC)
を含む抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。更なる実施形態においては、該抗
体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0048】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラ
ムダ軽鎖、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、
付加、欠失またはそれらの組合せを含むそれらの変異体を含み、ここで、該抗体または抗
原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXI
の活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。本発明の更なる
態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されているアミノ酸配列を
含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0049】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、IgG1、IgG2、Ig
G3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは天然IgG1、IgG2
、IgG3またはIgG4アイソタイプのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むそ
の変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI
)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa
媒介性活性化を阻害する。更なる態様においては、該定常ドメインはC末端リジンを含む
ことが可能であり、またはC末端リジンを欠くことが可能である。
【0050】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、ヒトIgG1またはIgG
4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9また
は10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を含み、こ
こで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメ
インに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害
する。もう1つの態様においては、該重鎖定常ドメインはIgG4アイソタイプのもので
あり、更に、228位(EU番号付け)のセリン残基[これは、配列番号16または17
の108位(108位のセリン)に対応する]の、プロリンによる置換を含む。
【0051】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16または17に
示されているアミノ酸配列を含むIgG4重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0052】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号18または19に
示されているアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0053】
本発明は更に、
(a)配列番号8に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-
CDR)1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列
番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメインと定常
ドメインとを有する重鎖(HC)、ならびに
(b)配列番号11に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC
-CDR)1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および
配列番13に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定
常ドメインとを有する軽鎖(LC)
を含む抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。更なる実施形態においては、該抗
体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合
し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0054】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラ
ムダ軽鎖、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、
付加、欠失またはそれらの組合せを含むそれらの変異体を含み、ここで、該抗体または抗
原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXI
の活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。本発明の更なる
態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されているアミノ酸配列を
含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0055】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、IgG1、IgG2、Ig
G3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは天然IgG1、IgG2
、IgG3またはIgG4アイソタイプのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むそ
の変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI
)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa
媒介性活性化を阻害する。更なる態様においては、該定常ドメインはC末端リジンを含む
ことが可能であり、またはC末端リジンを欠くことが可能である。
【0056】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、ヒトIgG1またはIgG
4アイソタイプの重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9また
は10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を含み、こ
こで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメ
インに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害
する。もう1つの態様においては、該重鎖定常ドメインはIgG4アイソタイプのもので
あり、更に、228位(EU番号付け)のセリン残基[これは、配列番号16または17
の108位(108位のセリン)に対応する]の、プロリンによる置換を含む。
【0057】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16または17に
示されているアミノ酸配列を含むIgG4重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0058】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号18または19に
示されているアミノ酸配列を含むIgG1重鎖定常ドメイン、あるいは1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその変異体を含み、ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントは凝固因子XI(F
XI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子X
Ia媒介性活性化を阻害する。
【0059】
本発明の更なる態様または実施形態においては、本発明は、(a)(i)HCフレーム
ワークおよび配列番号8に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC
-CDR)1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配
列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;(ii)HCフレーム
ワークおよび配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC
-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配
列番号3に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;(iii)HCフレーム
ワークおよび配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC
-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配
列番号4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;(iv)HC CDR1
、HC CDR2またはCDR3の少なくとも1つが1、2または3個のアミノ酸置換、
付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)、(ii)または(iii)の変異体;
あるいは(v)HCフレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個
のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)、(ii)、(iii
)または(iv)の変異体を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する重鎖(HC);
(b)(i)LCフレームワークおよび配列番号11に示されているアミノ酸配列を有す
る軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を
有するLC-CDR2および配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するLC-C
DR3;(ii)LCフレームワークおよび配列番号5に示されているアミノ酸配列を有
する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を
有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CD
R3;(iii)LC CDR1、LC CDR2またはLC-CDR3の少なくとも1
つが1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)
または(ii)の変異体;あるいは(iv)LCフレームワークが1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、
(i)、(ii)または(iii)の変異体を含む可変ドメインと定常ドメインとを有す
る軽鎖(LC);あるいは(c)(a)からのHCおよび(b)からのLCを含む抗体を
提供し、ここで、該抗体は凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FX
Iの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する。
【0060】
本発明の更なる態様または実施形態においては、HC定常ドメインが、配列番号16、
17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む、請求項18記載の抗体。
【0061】
本発明の更なる態様または実施形態においては、LC定常ドメインが、配列番号20に
示されているアミノ酸配列を含む、請求項18または19記載の抗体。
【0062】
本発明は更に、配列番号33に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0063】
本発明は更に、配列番号35に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0064】
本発明は更に、配列番号45に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0065】
本発明は更に、配列番号47に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0066】
本発明は更に、配列番号49に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0067】
本発明は更に、配列番号51に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0068】
本発明は更に、配列番号59に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0069】
本発明は更に、配列番号61に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0070】
本発明は更に、配列番号63に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0071】
本発明は更に、配列番号69に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0072】
本発明は更に、配列番号33に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0073】
本発明は更に、配列番号71に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0074】
本発明は更に、配列番号73に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0075】
本発明は更に、配列番号75に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号2
6に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0076】
本発明は更に、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0077】
本発明は更に、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0078】
本発明は更に、配列番号43に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0079】
本発明は更に、配列番号53に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0080】
本発明は更に、配列番号55に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0081】
本発明は更に、配列番号57に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0082】
本発明は更に、配列番号65に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0083】
本発明は更に、配列番号67に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0084】
本発明は更に、配列番号69に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0085】
本発明は更に、配列番号77に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0086】
本発明は更に、配列番号79に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号3
1に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0087】
本発明は更に、配列番号33、35、37、45、47、49、51、59、61、6
3、69、71、73もしくは75に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号
26に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体または配列番号39、41、
43、53、55、57、65、67、69、77もしくは79に示されているアミノ酸
配列を有する重鎖と配列番号31に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体
を交差遮断し又は該抗体の結合と競合する抗体または抗原結合性フラグメントを提供し、
ここで、該抗体または抗原結合性フラグメントはマウスまたはラットアミノ酸配列を含ま
ない。
【0088】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは非ヒトアミノ
酸配列を含まない。
【0089】
もう1つの実施形態においては、該抗体は、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはそ
の変異体もしくは修飾誘導体、あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変
異体もしくは修飾変異体を含む。
【0090】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0091】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0092】
もう1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインは、少なくとも、228位(E
U番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン
による置換を含む変異体である。
【0093】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
、C末端のリジンを欠く変異体である。
【0094】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト抗体に
特徴的なフレームワークを含む可変ドメイン配列を含む。
【0095】
本発明は更に、配列番号33、35、37、45、47、49、51、59、61、6
3、69、71、73もしくは75に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号
26に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体または配列番号39、41、
43、53、55、57、65、67、69、77もしくは79に示されているアミノ酸
配列を有する重鎖と配列番号31に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体
を交差遮断し又は該抗体の結合と競合するヒト抗体または抗原結合性フラグメントを提供
する。
【0096】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは非ヒトアミノ
酸配列を含まない。
【0097】
もう1つの実施形態においては、該抗体は、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはそ
の変異体もしくは修飾誘導体、あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変
異体もしくは修飾変異体を含む。
【0098】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0099】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0100】
もう1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインは、少なくとも、228位(E
U番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン
による置換を含む変異体である。
【0101】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
、C末端のリジンを欠く変異体である。
【0102】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト抗体に
特徴的なフレームワークを含む可変ドメイン配列を含む。
【0103】
本発明は更に、アミノ酸配列YATRQFPSLEHRNICL(配列番号82)およ
びアミノ酸配列HTQTGTPTRITKL(配列番号83)を含む凝固因子XI(FX
I)上のエピトープに結合する抗体または抗原結合性フラグメントを提供し、ここで、該
抗体または抗原結合性フラグメントはマウスまたはラットアミノ酸配列を含まない。特定
の実施形態においては、該エピトープへの結合は水素重水素交換質量分析により決定され
る。
【0104】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは非ヒトアミノ
酸配列を含まない。
【0105】
もう1つの実施形態においては、該抗体は、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはそ
の変異体もしくは修飾誘導体、あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変
異体もしくは修飾変異体を含む。
【0106】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0107】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3または4個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む変異体で
ある。
【0108】
もう1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインは、少なくとも、228位(E
U番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン
による置換を含む変異体である。
【0109】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
、C末端のリジンを欠く変異体である。
【0110】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト抗体に
特徴的なフレームワークを含む可変ドメイン配列を含む。
【0111】
本発明は更に、アミノ酸配列YATRQFPSLEHRNICL(配列番号82)およ
びアミノ酸配列HTQTGTPTRITKL(配列番号83)を含む凝固因子XI(FX
I)上のエピトープに結合するヒト抗体または抗原結合性フラグメントを提供し、ここで
、該抗体は、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾誘導体、あ
るいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾変異体を含む。
特定の実施形態においては、該エピトープへの結合は水素重水素交換質量分析により決定
される。
【0112】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0113】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0114】
もう1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインは、少なくとも、228位(E
U番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン
による置換を含む変異体である。
【0115】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
、C末端のリジンを欠く変異体である。
【0116】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト抗体に
特徴的なフレームワークを含む可変ドメイン配列を含む。
【0117】
本発明は更に、前記抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの軽鎖可変ドメイン
または重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0118】
本発明は更に、アミノ酸配列YATRQFPSLEHRNICL(配列番号82)およ
びアミノ酸配列HTQTGTPTRITKL(配列番号83)を含む凝固因子XI(FX
I)上のエピトープに結合するヒト化抗体または抗原結合性フラグメントを提供し、ここ
で、該抗体は、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾誘導体、
あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾変異体を含む
。特定の実施形態においては、該エピトープへの結合は水素重水素交換質量分析により決
定される。
【0119】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0120】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含む変異体である。
【0121】
もう1つの実施形態においては、IgG4定常ドメインは、少なくとも、228位(E
U番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン
による置換を含む変異体である。
【0122】
もう1つの実施形態においては、IgG1またはIgG4定常ドメインは、少なくとも
、C末端のリジンを欠く変異体である。
【0123】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト抗体に
特徴的なフレームワークを含む可変ドメイン配列を含む。
【0124】
本発明は更に、前記抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの軽鎖可変ドメイン
または重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0125】
本発明は更に、前記抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの抗体または抗原結
合性フラグメントと医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0126】
本発明は更に、前記抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの抗体または抗原結
合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、対象における血栓塞栓性障害ま
たは疾患の治療方法を提供する。
【0127】
本発明は更に、前記抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの抗体または抗原結
合性フラグメントの有効量を、血栓塞栓性障害または疾患の治療を要する対象に投与する
ことを含む、対象における血栓塞栓性障害または疾患の治療方法を提供する。
【0128】
本発明は更に、血栓塞栓性障害または疾患を治療するための医薬の製造のための、前記
抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの抗体の使用を提供する。
【0129】
本発明は更に、血栓塞栓性障害または疾患の治療のための、前記抗体または抗原結合性
フラグメントのいずれかの抗体を提供する。
【0130】
本発明は更に、(i)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定
領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR
2および配列番号3または4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む
重鎖を構成する可変ドメインと定常ドメインとを有する重鎖、ならびに(ii)配列番号
5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番
号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されてい
るアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する軽
鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法を提供し、該製造方法は、該重鎖
をコードする核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主細胞を準備し、該抗体
または抗原結合性フラグメントを産生させるのに十分な条件下、それを産生させるのに十
分な時間にわたって該宿主細胞を培養することを含む。
【0131】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG1、IgG2、IgG
3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。
【0132】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG4アイソタイプの重鎖
定常ドメインを含む。
【0133】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16、17、18
または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む。
【0134】
本発明の更なる態様または実施形態においては、軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラム
ダ軽鎖を含む。
【0135】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0136】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵
巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である。
【0137】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞は酵母または糸状真菌細胞で
ある。
【0138】
本発明は更に、(i)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定
領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR
2および配列番号3または4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む
重鎖を構成する可変ドメインと定常ドメインとを有する重鎖、ならびに(ii)配列番号
5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番
号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されてい
るアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する軽
鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法を提供し、該製造方法は、該重鎖
をコードする核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主細胞を準備し、該抗体
または抗原結合性フラグメントを産生させるのに十分な条件下、それを産生させるのに十
分な時間にわたって該宿主細胞を培養することを含む。
【0139】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG1、IgG2、IgG
3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。
【0140】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG4アイソタイプの重鎖
定常ドメインを含む。
【0141】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16、17、18
または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む。
【0142】
本発明の更なる態様または実施形態においては、軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラム
ダ軽鎖を含む。
【0143】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0144】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵
巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である。
【0145】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞は酵母または糸状真菌細胞で
ある。
【0146】
(i)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-C
DR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番
号3もしくは4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または配列番号8
に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR1、配列番号9に示されているアミノ
酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に示されているアミノ酸配列を有する
HC-CDR3を含む重鎖可変ドメインと、(ii)配列番号5に示されているアミノ酸
配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ
酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するL
C-CDR3、または配列番号11に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR1
、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号13
に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗
体または抗原結合性フラグメントの製造方法を提供し、該製造方法は、該重鎖をコードす
る核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主細胞を準備し、該抗体または抗原
結合性フラグメントを産生させるのに十分な条件下、それを産生させるのに十分な時間に
わたって該宿主細胞を培養することを含む。
【0147】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG1、IgG2、IgG
3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む。
【0148】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体はIgG4アイソタイプの重鎖
定常ドメインを含む。
【0149】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号16、17、18
または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む。
【0150】
本発明の更なる態様または実施形態においては、軽鎖はヒトカッパ軽鎖またはヒトラム
ダ軽鎖を含む。
【0151】
本発明の更なる態様または実施形態においては、該抗体は、配列番号20に示されてい
るアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む。
【0152】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵
巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である。
【0153】
本発明の更なる態様または実施形態においては、宿主細胞は酵母または糸状真菌細胞で
ある。
【0154】
本発明は更に、前記抗体のいずれかと医薬上許容される担体とを含む組成物を提供する
。特定の実施形態においては、該組成物は、C末端リジンを有する重鎖を含む抗体と、C
末端リジンを欠く重鎖を含む抗体との混合物を含む。特定の実施形態においては、該組成
物は、主要抗体形態が、C末端リジンを有する重鎖を含む、本明細書に開示されている抗
体を含む。特定の実施形態においては、該組成物は、主要抗体形態が、C末端リジンを欠
く重鎖を含む、本明細書に開示されている抗体を含む。特定の実施形態においては、該組
成物は、該組成物中の抗体の約100%が、C末端リジンを欠く重鎖を含む、本明細書に
開示されている抗体を含む。
【0155】
定義
本明細書中で用いる「抗体」は、組換え製造形態を含む完全免疫グロブリンを意味し、
所望の生物活性を示す任意の形態の抗体を含む。したがって、それは最も広い意味で用い
られ、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル
抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、バイパ
ラトピック(biparatopic;二重パラトープ)抗体およびキメラ抗体を含むが
、これらに限定されるものではない。「親抗体」は、意図される使用のための抗体の修飾
(例えば、ヒト治療用抗体としての使用のための抗体のヒト化)の前の、抗体への免疫系
の暴露により得られる抗体である。
【0156】
「抗体」は、1つの実施形態においては、ジスルフィド結合により相互連結された少な
くとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質またはその抗原結合
性部分を意味する。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてはVHと略される)および
重鎖定常領域から構成される。ある天然に存在するIgG、IgDおよびIgA抗体にお
いては、重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2およびCH3から
構成される。ある天然に存在する抗体においては、各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書にお
いてはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメ
イン、すなわち、CLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(F
R)と称される、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される
超可変性の領域に更に細分されうる。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFR
から構成され、それらはアミノ末端からカルボキシ末端の方向に以下の順序で位置してい
る:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖
の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系
の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を
含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合をもたらしうる。
【0157】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の、2つ
の同一ペアを含み、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約
50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識をもたらす約10
0~110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は
、エフェクター機能を主にもたらす定常領域を定めうる。典型的には、ヒト軽鎖はカッパ
およびラムダ軽鎖として分類される。更に、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、
ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、
IgAおよびIgEとしての、抗体のアイソタイプを定める。軽鎖および重鎖においては
、可変領域および定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結されており
、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域をも含む。全般的には、Fundamen
tal Immunology Ch.7(Paul,W.編,2nd ed.Rave
n Press,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0158】
抗体の重鎖は、末端リジン(K)、または末端グリシンおよびリジン(GK)を含む又
は含まないことが可能である。したがって、末端リジンを欠くがグリシン残基で終結する
本明細書に示されている重鎖定常領域アミノ酸配列を含む本発明における抗体の特定の実
施形態は、末端グリシン残基も存在しない実施形態を更に含む。これは、末端リジン、そ
して時にはグリシンおよびリジンが、抗体の発現中に、一緒に切断されるからである。
【0159】
本明細書中で用いる「抗原結合性フラグメント」は、抗体のフラグメント、すなわち、
完全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保有する抗体フラグメント、
例えば、1以上のCDR領域を保有するフラグメントを意味する。抗体結合性フラグメン
トの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;ジアボディ;
一本鎖抗体分子、例えばsc-Fv;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異
性抗体およびナノボディが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
本明細書中で用いる「Fabフラグメント」は1個の軽鎖ならびに1個の重鎖の可変領
域およびCH1から構成される。Fab分子の重鎖は別の重鎖分子とはジスルフィド結合
を形成し得ない。「Fabフラグメント」は抗体のパパイン切断の産物でありうる。
【0161】
本明細書中で用いる「Fab’フラグメント」は1個の軽鎖、ならびにVHドメインお
よびCH1ドメインを含有する1個の重鎖の部分または断片、そしてまた、CH1および
CH2ドメイン間の領域を含有し、その結果、2個のFab’フラグメントの、2個の重
鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)2分子を形成しうる。
【0162】
本明細書中で用いる「F(ab’)2フラグメント」は、2個の軽鎖、ならびにCH1
およびCH2ドメイン間の定常領域の部分およびVHドメインを含有する2個の重鎖を含
有し、その結果、それらの2個の重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合が形成される。したが
って、F(ab’)2フラグメントは、それらの2個の重鎖の間のジスルフィド結合によ
り連結された2個のFab’フラグメントから構成される。「F(ab’)2フラグメン
ト」は抗体のペプシン切断の産物でありうる。
【0163】
本明細書中で用いる「Fv領域」は重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定
常領域を欠いている。
【0164】
これらの及び他の潜在的構築物はChan & Carter(2010)Nat.R
ev.Immunol.10:301に記載されている。これらの抗体フラグメントは、
当業者に公知の通常の技術を用いて得られ、該フラグメントは、無傷抗体の場合と同様に
して有用性に関して選別(スクリーニング)される。抗原結合性部分は、組換えDNA技
術により、または無傷免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断により製造されうる。
【0165】
本明細書中で用いる「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2個の
重鎖フラグメントを含有する。それらの2個の重鎖フラグメントは2以上のジスルフィド
結合により、およびCH3ドメインの疎水性相互作用により結合している。
【0166】
本明細書中で用いる「ジアボディ」は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体フラグ
メントを意味し、該フラグメントは、同一ポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)
に連結された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VLまたはVL-VH)を含む。同一鎖
上で2個のドメイン間のペア形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによ
り、それらのドメインは別の鎖の相補的ドメインとペア形成することを強要され、2個の
抗原結合部位を生成する。ジアボディは、例えばEP 404,097;WO 93/1
1161;およびHollingerら(1993)Proc.Natl.Acad S
ci.USA 90:6444-6448に、より詳細に記載されている。操作された抗
体変異体の総説としては、全般的には、HolligerおよびHudson(2005
)Nat.Biotechnol.23:1126-1136を参照されたい。
【0167】
本明細書中で用いる「二重特異性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペア、したがって
2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。例えば、二重特異性抗体は
、抗体αFXI-13654p、αFXI-13716pもしくはαFXI-13716
の6個のCDRを少なくとも含む第1抗体または変異体実施形態(ここで、前記の6個の
CDRの1以上は1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを
有する)の1つの重鎖と1つの軽鎖とを含む第1重鎖/軽鎖ペアを、FXI以外の関心抗
原に対する特異性を有する第2抗体の1つの重鎖と1つの軽鎖とを含む第2重鎖/軽鎖ペ
アと共に含みうる。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメン
トの連結を含む種々の方法により製造されうる。例えば、Songsivilaiら(1
990)Clin.Exp.Immunol.79:315-321;Kostelny
ら(1992)J.Immunol.148,1547-1553を参照されたい。また
、二重特異性抗体は「ジアボディ」(Holligerら(1993)PNAS USA
90:6444-6448)または「ジャヌシン(Janusin)」(Traune
ckerら(1991)EMBO J.10:3655-3659およびTraunec
kerら(1992)Int.J.Cancer Suppl.7:51-52)として
形成されうる。
【0168】
本明細書中で用いる「単離(された)」抗体またはその抗原結合性フラグメントは、そ
れらが産生された細胞または細胞培養からの他の生物学的分子を少なくとも部分的に含有
しない。そのような生物学的分子には、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞
残渣および増殖培地のような他の物質が含まれる。単離された抗体または抗原結合性フラ
グメントは更に、宿主細胞からの又はその増殖培地の生物学的分子のような発現系成分を
少なくとも部分的に含有しないことが可能である。一般に、「単離(された)」なる語は
、そのような生物学的分子の完全な非存在、または水、バッファーもしくは塩の非存在、
または該抗体もしくはフラグメントを含む医薬製剤の成分を指すものではない。
【0169】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」は実質的に均一な抗体の集団を意味し、す
なわち、該集団を構成する抗体分子は、僅かな量で存在しうる考えられうる自然突然変異
以外は、アミノ酸配列において同一である。これとは対照的に、通常の(ポリクローナル
)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープに対して特異的であることが多い可変ド
メインに異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語「モノクローナル
」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという該抗体の特性を示しており、いずれか
の特定の方法による該抗体の製造を要するとは解釈されるべきではない。例えば、本発明
に従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 2
56,495により最初に記載されたハイブリドーマ法により製造可能であり、あるいは
組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により製造
可能である。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(1991
)Nature 352:624-628およびMarksら(1991)J.Mol.
Biol 222:581-597に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブ
ラリーから単離されうる。Presta(2005)J.Allergy Clin.I
mmunol.116:731も参照されたい。
【0170】
本明細書中で用いる「キメラ抗体」は、第1抗体からの可変ドメインと第2抗体からの
定常ドメインとを有する抗体であり、ここで、(i)第1抗体および第2抗体は異なる種
からのものであり(米国特許第4,816,567号およびMorrisonら,(19
84)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855)、
または(ii)第1抗体および第2抗体は異なるアイソタイプからのものである(例えば
、IgG1抗体からの可変ドメインおよびIgG4抗体からの定常ドメイン、例えば、α
FXI-13465p-IgG4(S228P))。1つの実施形態においては、可変ド
メインはヒト抗体(「親抗体」)から得られ、定常ドメイン配列は非ヒト抗体(例えば、
マウス、ラット、イヌ、サル、ゴリラ、ウマ)から得られる。もう1つの態様においては
、可変ドメインは非ヒト抗体(「親抗体」)(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ゴ
リラ、ウマ)から得られ、定常ドメイン配列はヒト抗体から得られる。もう1つの態様に
おいては、可変ドメインはヒトIgG1抗体(「親抗体」)から得られ、定常ドメイン配
列はヒトIgG4抗体から得られる。
【0171】
本明細書中で用いる「ヒト化抗体」は、ヒト抗体および非ヒト(例えば、マウスまたは
ラット)抗体の両方からの配列を含有する抗体の形態を意味する。一般に、ヒト化抗体は
、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全部を含み、ここで、超可変ループ
は非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全部または実質
的に全部はヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、所望により、ヒト免疫
グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含みうる。
【0172】
本明細書中で用いる「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列またはその
変異体配列(突然変異を欠く抗体と比較して修飾された機能または効力を有する完全ヒト
抗体を得るために組換え的に導入された該突然変異を含むもの)を含む抗体を意味する。
完全ヒト抗体は非ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を含まず、例えば、定常ドメインおよ
び可変ドメイン(CDRを含む)は、前記の突然変異から生じたもの以外のヒト配列を含
む。完全ヒト抗体は、インシリコでライブラリーにおける多様性が生成される完全ヒト抗
体ライブラリー(例えば、米国特許第8,877,688号または第8,691,730
号を参照されたい)から得られる抗体または免疫グロブリンのアミノ酸配列を含みうる。
完全ヒト抗体は、非ヒト生物において産生されたそのような抗体を含み、例えば、完全ヒ
ト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、あるいはマウス細胞に由来するハイブ
リドーマにおいて産生された場合には、マウス炭水化物鎖を含有しうる。同様に、「マウ
スまたはネズミ抗体」は、マウスまたはネズミ免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味
する。あるいは、完全ヒト抗体は、ラットにおいて、ラット細胞において、あるいはラッ
ト細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合には、ラット炭水化物鎖を含有
しうる。同様に、「ラット抗体」は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味す
る。
【0173】
本明細書中で用いる、抗体または免疫グロブリンに関する「非ヒトアミノ酸配列」は、
非ヒト哺乳動物のアミノ酸配列に特徴的なアミノ酸配列を意味する。この語は、インシリ
コでライブラリーにおける多様性が生成される完全ヒト抗体ライブラリー(例えば、米国
特許第8,877,688号または第8,691,730号を参照されたい)から得られ
る抗体または免疫グロブリンのアミノ酸配列を含まない。
【0174】
本明細書中で用いる「エフェクター機能」は、抗体イソタイプによって様々である、抗
体のFc領域に起因する生物活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、Clq結
合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞性細胞傷害(
ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーショ
ン;ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0175】
各軽/重鎖ペアの可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体
は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体の場合を除き、それらの2つ
の結合部位は一般に同じである。
【0176】
典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワー
ク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域
を含む。CDRは、通常、特定のエピトープへの結合が可能になるように、フレームワー
ク領域により整列されている。一般に、N末端からC末端方向に、軽鎖および重鎖可変ド
メインの両方はFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を
含む。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Prot
eins of Immunological Interest,Kabatら;Na
tional Institutes of Health,Bethesda,Md.
;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat
(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)
J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987)
J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら(1989)N
ature 342:878-883の定義に基づいている。
【0177】
本明細書中で用いる「超可変領域」は、抗原結合をもたらす、抗体のアミノ酸残基を意
味する。超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメイ
ン内のCDRL1、CDRL2およびCDRL3ならびに重鎖可変ドメイン内のCDRH
1、CDRH2およびCDRH3)からのアミノ酸残基を含む。Kabatら(1991
)Sequences of Proteins of Immunological
Interest,5th Ed.Public Health Service,Na
tional Institutes of Health,Bethesda,Md.
(配列により抗体のCDR領域を定めている)を参照されたい。また、Chothiaお
よびLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917(構造により
抗体のCDR領域を定めている)も参照されたい。
【0178】
本明細書中で用いる「フレームワーク」または「FR」残基は、CDR残基として本明
細書中で定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。
【0179】
本明細書中で用いる「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、アミノ酸
が、類似特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、バックボーンコンホメーシ
ョンおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換されることを意味し、ここで、該変化
は、しばしば、タンパク質の生物活性を改変することなく施されうる。一般に、ポリペプ
チドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業
者は認識している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biol
ogy of the Gene,The Benjamin/Cummings Pu
b.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。また、構造的または機能
的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を損なう可能性が低い。典型的な保存的置換を
以下の表に示す。
【表1】
【0180】
本明細書中で用いる「エピトープ」または「抗原決定基」なる語は、免疫グロブリンま
たは抗体が特異的に結合する抗原(例えば、FXI)上の部位を意味する。タンパク質抗
原内のエピトープは、連続的(隣接)アミノ酸(通常は直線状エピトープ)、またはタン
パク質の三次フォールディングよって並置された不連続的アミノ酸(通常はコンホメーシ
ョンエピトープ)の両方から形成されうる。連続的アミノ酸から形成されるエピトープは
、常にというわけではないが典型的には、変性溶媒にさらされても保持され、一方、三次
フォールディングにより形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒で処理されると
消失する。エピトープは、典型的には、特有の空間的コンホメーションで、少なくとも3
、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含
む。与えられた抗体がどのエピトープに結合するのかを決定するための方法(すなわち、
エピトープマッピング)は当技術分野においてよく知られており、例えば、イムノブロッ
ティングおよび免疫沈降アッセイを包含し、それらにおいては、重複または連続的ペプチ
ド(例えば、FXIからのもの)を、与えられた抗体(例えば、抗FXI抗体)との反応
性に関して試験する。エピトープの空間的コンホメーションを決定する方法には、当技術
分野における技術および本明細書に記載されている技術、例えば、X線結晶学、2次元核
磁気共鳴およびHDX-MSが含まれる(例えば、Epitope Mapping P
rotocols in Methods in Molecular Biology
,Vol.66,G.E.Morris編,(1996)を参照されたい)。
【0181】
「エピトープマッピング」なる語は、抗体-抗原認識に関与する抗原上の分子決定基を
特定する方法を意味する。
【0182】
2つ以上の抗体に関する「同一エピトープに結合する」なる語は、与えられた方法によ
り判定された場合の、抗体がアミノ酸残基の同一セグメントに結合することを意味する。
抗体が、本明細書に記載されている抗体との「FXI上の同一エピトープ」に結合するか
どうかを決定するための技術には、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトー
プの原子分解能をもたらす、抗原:抗体複合体の結晶のX線解析、および水素/重水素交
換質量分析(HDX-MS)が含まれる。抗原断片(例えば、タンパク質分解断片)への
抗体の結合および抗原の突然変異体への抗体の結合をモニターする他の方法もあり、この
場合、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の喪失は、しばしば、エピトープ成分
の指標とみなされる(例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発-Cunningha
m & Wells(1985)Science 244:1081)。また、エピトー
プマッピングのためのコンピューター利用コンビナトリアル法も用いられうる。これらの
方法は、特定の短いペプチドをコンビナトリアル・ファージ・ディスプレイ・ペプチドラ
イブラリーから関心抗体がアフィニティ分離する能力に基づいている。
【0183】
「FXIのような標的への結合に関して他の抗体と競合する」抗体は、該標的への前記
の他の抗体の結合を(部分的または完全に)阻害する抗体を意味する。2つの抗体が標的
への結合に関して互いに競合するかどうか、すなわち、一方の抗体が標的への他方の抗体
の結合を阻害するかどうか及びその阻害の度合は、公知の競合実験を用いて決定されうる
。ある実施形態においては、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50
%、60%、70%、80%、90%または100%、標的への別の抗体の結合と競合し
、該結合を阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」(すなわち、
標的と共に最初にインキュベートされるコールド(cold)抗体)であるかによって異
なりうる。競合アッセイは、例えば、Ed HarlowおよびDavid Lane,
Cold Spring Harb Protoc;2006;doi:10.1101
/pdb.prot4277または“Using Antibodies”(Ed Ha
rlowおよびDavid Lane,Cold Spring Harbor Lab
oratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,US
A 1999)の第11章に記載されているとおりに行われうる。競合抗体は同一エピト
ープ、重複エピトープまたは隣接エピトープ(例えば、立体障害により実証されるもの)
に結合する。
【0184】
他の競合結合アッセイには以下のものが含まれる:固相直接または間接ラジオイムノア
ッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競
合アッセイ(Stahliら,Methods in Enzymology 9:24
2(1983)を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirklan
dら,J.Immunol.137:3614(1986)を参照されたい);固相直接
標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowおよびLane,An
tibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring
Harbor Press(1988)を参照されたい);1-125標識を用いる固
相直接標識RIA(Morelら,Mol.Immunol.25(1):7(1988
)を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheungら,Virol
ogy 176:546(1990));および直接標識RIA(Moldenhaue
rら,Scand.J.Immunol.32:77(1990))。
【0185】
本明細書中で用いる、FXIのような抗原に対して「特異的に結合する」は、抗体また
は他のリガンドが、全体的または部分的に、FXIとは優先的に会合し、他の分子、特に
、ヒト血液または血清中で見出される分子とは会合しないことを意味する。抗体は、典型
的には、10-7~10-11M以下の解離定数(KD)により表される高いアフィニテ
ィで、その同種(cognate)抗原に特異的に結合する。約10-6Mを超えるいず
れのKDも非特異的結合を示すとみなされる。本明細書中で用いる、抗原に「特異的に結
合する」抗体は、10-7M以下のKD、特定の実施形態においては10-8M以下もし
くは5×10-9M以下、または10-8M~10-11M以下のKDを有することを意
味する高いアフィニティで、該抗原および実質的に同じ抗原に結合するが、無関係な抗原
には高いアフィニティでは結合しない抗体を意味する。結合の動力学は、本明細書におけ
る実施例1に記載されている表面プラズモン共鳴により測定されうる。
【0186】
抗原が、与えられた抗原と「実質的に同一」であると言えるのは、それが、その与えら
れた抗原に対して高度のアミノ酸配列同一性を示す場合、例えば、それが、その与えられ
た抗原のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%
、少なくとも97%または少なくとも99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を示す
場合である。例えば、ヒトFXIに特異的に結合する抗体はまた、ある非ヒト霊長類種(
例えば、カニクイザル)からのFXIとは交差反応しうるが、他の種からのFXIまたは
FXI以外の抗原とは交差反応しないであろう。
【0187】
本明細書中で用いる「単離された核酸分子」は、該単離ポリヌクレオチドが天然で見出
される場合のポリヌクレオチドの全部または一部を伴っておらず、あるいはそれが天然で
連結していないポリヌクレオチドに連結している、ゲノム、mRNA、cDNAまたは合
成由来のDNAまたはRNAあるいはそれらの何らかの組合せを意味する。本開示の目的
においては、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は無傷染色体を含まない、と理
解されるべきである。特定されている核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、特定さ
れている配列に加えて、10個まで又は更には20個まで又はそれ以上の他のタンパク質
またはその一部もしくは断片のコード配列を含むことが可能であり、あるいは、挙げられ
ている核酸配列のコード領域の発現を制御する機能的に連結された調節配列を含むことが
可能であり、および/あるいは、ベクター配列を含むことが可能である。
【0188】
本明細書中で用いる「治療する」または「治療」は、本発明の抗体または抗原結合性フ
ラグメントのいずれかを含有する組成物のような治療剤を、該治療剤が治療活性または予
防活性を示す疾患の症状の1以上を有する又は該疾患を有する疑いのある対象または患者
に内的または外的に投与することを意味する。典型的には、該治療剤は、いずれかの臨床
的に測定可能な度合によるそのような症状の退縮の誘導またはそのような症状の進行の抑
制により、治療対象または集団における1以上の疾患症状を軽減するのに有効な量で投与
される。いずれかの特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療剤の量は患者の病態、年齢
および体重、ならびに対象において所望の応答を惹起する薬物の能力のような要因によっ
て変動しうる。疾患症状が軽減したかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価
するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に用いられるいずれかの臨
床的尺度により評価されうる。この語は更に、障害に関連した症状の発生の遅延および/
またはそのような障害の症状の重症度の軽減を含む。この語は更に、既存の無制御の又は
望ましくない症状の改善、追加的な症状の予防、およびそのような症状の根本原因の改善
または予防を含む。したがって、この語は、障害、疾患もしくは症状を有するヒトまたは
動物対象、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発生する可能性を有するヒトまた
は動物対象に、有益な結果がもたらされていることを示す。
【0189】
本明細書中で用いる「治療」は、それがヒトまたは獣医対象に適用される場合には、治
療的処置および診断的適用を意味する。「治療」は、それがヒトまたは獣医対象に適用さ
れる場合には、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントの、ヒトまたは動物対象との
接触を含む。
【0190】
本明細書中で用いる「治療的有効量」は、治療されている対象において所望の効果を達
成するのに十分な特定の物質の量を意味する。例えば、これは、aPTTアッセイにおけ
る判定で少なくとも192~288時間にわたって凝固を抑制するのに必要な量、または
FXIの活性化を抑制するのに必要な量でありうる。対象に投与される場合、所望のイン
ビトロ効果を達成することが示されている目標組織濃度を達成する投与量が一般に用いら
れる。
【0191】
本明細書で用いる「血栓症」は、循環系を通る血液の流れを妨げる、血管内の血餅(「
血栓」とも称される)の形成または存在を意味する。血栓症は、通常、血液組成、血管壁
の質および/または血流の性質の異常により引き起こされる。血餅の形成は、しばしば、
血管壁の損傷(外傷または感染などによるもの)および損傷点を過ぎた位置における血流
の減速または停滞により引き起こされる。幾つかの場合には、凝固異常が血栓症を引き起
こす。
【0192】
本明細書中で用いる「止血を妨げることなく」は、本明細書に開示されている抗体また
は抗体フラグメントを対象または患者に投与した後、検出可能な出血が対象または患者に
おいてほとんど又は全く認められないことを意味する。因子XIを標的化する場合、因子
XIから因子XIaへの変換または因子Xiaによる因子IXの活性化を阻害することは
、出血を伴うことなく凝固および関連血栓症を抑制する。これとは対照的に、因子XIの
変換または活性を阻害することは凝固を抑制するが、出血をも誘発し、または出血のリス
クを増加させる。
【0193】
発明の詳細な説明
本発明は、凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合する抗凝固因子XI抗
体を提供する。これらの抗FXI抗体および抗原結合性フラグメントは因子XIIaによ
るFXI活性化のインヒビターであり、止血を妨げることなく血液凝固および関連血栓症
(すなわち、抗血栓性適応症)を抑制するのに有用である。例えば、該抗FXI抗体は静
脈血栓塞栓症(VTE)の治療および予防、心房細動における脳卒中予防(SPAF)、
または或る医療装置関連血栓塞栓性障害(例えば、ステント、血管内ステントグラフト、
カテーテル(心臓または静脈)、連続流心室補助装置(CF-LVADS)、血液透析、
心肺バイパスおよび体外膜酸素供給(ECMO)、心室補助装置(VADS))の治療お
よび予防に用いられうる。したがって、本明細書に開示されている抗FXI抗体は、血栓
塞栓性障害または疾患を治療するための療法を、そのような療法を要する患者または対象
において行うのに有用である。
【0194】
FXIは、
図1Bに示されているドメイン構造および凝固カスケードの内因性経路の必
須成分を有するホモ二量体セリンプロテアーゼである。FXIチモーゲンは因子XIIa
により、その活性化形態であるFXIaへと切断されうる。ついでFXIaは因子IXを
活性化し、最終的にトロンビン生成および血餅形成を誘発する。本明細書に開示されてい
る抗FXI抗体はFXIからFXIaへの変換を阻害する(
図1Aを参照されたい)。
【0195】
操作された酵母株の表面に提示された完全ヒト合成IgG1/カッパライブラリーから
、抗FXI抗体分子を得た。ヒトFXIおよび非ヒト霊長類(NHP)FXIにはサブナ
ノモルのアフィニティで結合しうるが、ヒトおよびNHP血漿カリクレイン(FXIに対
して56%のアミノ酸同一性を示すタンパク質)または他のヒト凝固カスケードタンパク
質(FII//IIa、FVII/VIIa、FIX/IXa、FX/XaおよびFXI
I/XIIa)に対しては結合を示さない抗体を特定するために、該ライブラリーをFX
IまたはFXIaでスクリーニングした。これらの特性を有する2つの抗体、すなわち、
αFXI-18611pおよびαFXI-18623pが特定された。これらの抗体は、
ヒトカッパ(κ)軽鎖とヒトIgG1(γ1)アイソタイプ重鎖とを含む完全ヒト抗体で
ある。該抗体は、FXIのアップル3ドメイン内に位置する配列番号82および83を含
むFXIチモーゲンのエピトープに結合する。また、これらの抗体は、FXIチモーゲン
と同等のアフィニティで、FXIaに結合する。
【0196】
αFXI-18611pファミリーの抗体は、それぞれ配列番号1、配列番号2および
配列番号3に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)
1、2および3と、それぞれ配列番号5、配列番号6および配列番号7に示されているア
ミノ酸配列を有する軽鎖(LC)CDR1、2および3とを含む。αFXI-18611
pファミリーは、配列番号21または22に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC
)可変ドメインと、配列番号25におけるアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)可変ドメイン
とを含む抗体を含む。
【0197】
αFXI-18611ファミリーの抗体は、それぞれ配列番号1、配列番号2および配
列番号4に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1
、2および3と、それぞれ配列番号5、配列番号6および配列番号7に示されているアミ
ノ酸配列を有する軽鎖(LC)CDR1、2および3とを含む。αFXI-18611フ
ァミリーは、配列番号23または24に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)可
変ドメインと、配列番号25におけるアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)可変ドメインとを
含む抗体を含む。
【0198】
αFXI-18623pファミリーの抗体は、それぞれ配列番号8、配列番号9および
配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC CDR1、2および3と、それ
ぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13に示されているアミノ酸配列を有す
るLC CDR1、2および3とを含む。αFXI-13716pファミリーは、配列番
号28または29に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)可変ドメインと、配列
番号30におけるアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)可変ドメインとを含む抗体を含む。こ
のファミリーの抗体は、前のファミリーとは異なる生殖系列から得られた。
【0199】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDRを少なくとも
含む抗FXI抗体、または前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置
換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態、および抗血栓性適応症、例
えばSPAFを治療するための、該抗体の使用方法を提供する。
【0200】
特定の態様においては、抗FXI抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFX
I-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のH
C可変ドメイン、あるいは、該HC可変ドメインが1、2、3、4、5、6、7、8、9
または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を少な
くとも含む。
【0201】
特定の態様においては、抗FXI抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFX
I-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のL
C可変ドメイン、あるいは、該LC可変ドメインが1、2、3、4、5、6、7、8、9
または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を少な
くとも含む。
【0202】
特定の態様においては、抗FXI抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFX
I-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のH
C可変ドメイン、あるいは、該HC可変ドメインが1、2、3、4、5、6、7、8、9
または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体と、α
FXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-1
8623pファミリーの抗FXI抗体のLC可変ドメイン、あるいは、該LC可変ドメイ
ンが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失また
はそれらの組合せを含むその変異体とを少なくとも含む。
【0203】
特定の実施形態においては、本発明における抗体は、αFXI-18611pファミリ
ー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FX
I抗体の、6個のCDR、あるいは前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のア
ミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含み、
更に、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものである重鎖
(HC)、およびカッパ型またはラムダ型のものでありうる軽鎖(LC)を含む。他の実
施形態においては、該抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFXI-1861
1ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR
、あるいは、前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠
失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含み、更に、IgM、IgD
、IgAまたはIgEクラスのものでありうる。特定の実施形態においては、ヒトIgG
1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプは1、2、3、4、5、6、7、8
、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含みうる。
【0204】
特定の実施形態においては、該抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFXI
-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6
個のCDR、あるいは、前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換
、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含むことが可能で
あり、更に、IgG4アイソタイプのものであるHC定常ドメインを含むことが可能であ
る。IgG4フレームワークは、エフェクター機能をほとんど又は全く有さない抗体をも
たらす。本発明のもう1つの態様においては、該抗体は、αFXI-18611pファミ
リー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗F
XI抗体の、6個のCDR、あるいは、前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個
のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含
むことが可能であり、更に、IgG1アイソタイプのものであるHC可変ドメインに融合
したIgG4アイソタイプのものであるHC定常ドメインを含むことが可能である。本発
明のもう1つの態様においては、該抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFX
I-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のH
C可変ドメインおよびLC可変ドメイン、あるいは、該HCおよびLC可変ドメインが、
独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠
失またはそれらの組合せを含むその変異体を含むことが可能であり、更に、IgG4アイ
ソタイプのものであるHC定常ドメインを含むことが可能である。本発明のもう1つの態
様においては、該抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611フ
ァミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHC可変ドメインお
よびLC、あるいは、該HCおよびLCが、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8
、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体を
含むことが可能であり、更に、IgG4アイソタイプのものであるHC定常ドメインを含
むことが可能である。
【0205】
本発明の抗体は更に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリ
クローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、バイパラトピック(bi
paratopic;二重パラトープ)抗体、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を含むが、
これらに限定されるものではない。
【0206】
一般に、IgG1またはIgG4のような抗体の重鎖のアミノ酸配列は重鎖定常ドメイ
ンのC末端にリジンを有する。幾つかの場合には、抗体産物の均一性を改善するために、
C末端リジンを欠いた抗体を産生させることが可能である。本発明の抗FXI抗体は、C
末端リジンが存在する実施形態、およびC末端リジンが存在しない実施形態を含む。例え
ば、IgG1 HC定常ドメインは、配列番号18または19に示されているアミノ酸配
列を有することが可能であり、IgG4 HC定常ドメインは、配列番号16または17
に示されているアミノ酸配列を有することが可能である。
【0207】
特定の実施形態においては、HCのN末端アミノ酸はグルタミン残基でありうる。特定
の実施形態においては、HCのN末端アミノ酸はグルタミン酸残基でありうる。特定の態
様においては、N末端アミノ酸は、グルタミン酸残基となるように修飾される。
【0208】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI抗原結合性フラグメントを提
供する。
【0209】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI Fabフラグメントを提供
する。
【0210】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI抗体、およびFc領域を含む
その抗原結合性フラグメント、ならびにそれらの使用方法を提供する。
【0211】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI Fab’フラグメントを提
供する。
【0212】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI F(ab’)2を提供する
。
【0213】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI Fvフラグメントを提供す
る。
【0214】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI scFvフラグメントを提
供する。
【0215】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、3個のHC CDRまたは
3個のLC CDR、あるいは、該HCまたはLC CDRの1以上が1、2または3個
のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含
む抗FXIドメイン抗体を提供する。本発明の1つの実施形態においては、該ドメイン抗
体は単一ドメイン抗体またはナノボディである。本発明の1つの実施形態においては、ド
メイン抗体は、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリーま
たはαFXI-18623pファミリーのCDR、あるいは、該CDRの1以上が1、2
または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少
なくとも含むナノボディである。
【0216】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI二価抗体を提供する。
【0217】
本発明は更に、FXIおよび別の関心抗原に対する結合特異性を有する二重特異性抗体
および抗原結合性フラグメント、ならびにそれらの使用方法を提供する。
【0218】
バイパラトピック(biparatopic;二重パラトープ)抗体は、同一抗原上の
異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。本発明は更に、αFXI-1
8611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623p
ファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、該CDRの1以上が1、2また
は3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なく
とも含む第1抗体の第1重/軽鎖ペアと、第1重/軽鎖ペアにより認識されるエピトープ
とは異なるFXIエピトープに対する特異性を有する第2抗体の第2重/軽鎖ペアとを有
するバイパラトピック抗体を提供する。
【0219】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミ
リーの抗FXI抗体の6個のCDR、あるいは該CDRの1以上が1、2または3個のア
ミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗
体の第1重/軽鎖ペアと、αFXI-18623pファミリーの6個のCDR、あるいは
該CDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せ
を有するその実施形態を少なくとも含む抗体の第2重/軽鎖ペアとを有する抗FXI抗体
およびその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0220】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXIジアボディを提供する。
【0221】
αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI
-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、該CDRの1以
上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するその実
施形態を少なくとも含む抗体は何らかの方法で修飾されることが可能であり、この場合、
それは、活性がモル基準で表された場合、(親抗体、すなわち、それぞれのαFXI-1
8611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623p
ファミリーの抗体と比較した場合に)そのFXI結合活性の少なくとも10%を保有する
。好ましくは、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは親抗体としてのFXI結合
アフィニティの少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%または10
0%またはそれ以上を保有する。また、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、
その生物活性を実質的に改変しない保存的または非保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的
変異体」または「機能保存変異体」と称される)を含みうると意図される。
【0222】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む単離された抗FXI抗体、およびその
抗原結合性フラグメント、ならびにそれらの使用方法を提供し、また、その単離されたポ
リペプチド免疫グロブリン鎖、ならびにそのようなポリペプチドをコードする単離された
ポリヌクレオチド、ならびにそのようなポリヌクレオチドを含む単離されたベクターを提
供する。
【0223】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含むモノクローナル抗FXI抗体、および
その抗原結合性フラグメント、ならびに複数の単離されたモノクローナル抗体を含むモノ
クローナル組成物を提供する。
【0224】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXIキメラ抗体、およびその使用
方法を提供する。
【0225】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の、6個のCDR、あるいは、
前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれ
らの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI完全ヒト抗体、およびその抗
原結合性フラグメント、ならびにそれらの使用方法を含む。本発明の1つの実施形態にお
いては、完全ヒト抗FXI抗体またはその抗原結合性フラグメントは、完全ヒト免疫グロ
ブリン遺伝子を有するように遺伝的に修飾されたトランスジェニック動物、例えばマウス
(例えば、HUMABマウス、例えば、米国特許第5,545,806号、第5,569
,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016
号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5
,874,299号および第5,877,397号、ならびにHardingら,(19
95)Ann.NY Acad.Sci.764:536 546を参照されたい;また
はXENOMOUSE、例えば、Greenら,1999,J.Immunol.Met
hods 231:11-23を参照されたい)からの単離産物、または抗FXI完全ヒ
ト抗体もしくはその抗原結合性フラグメントの免疫グロブリン鎖を発現するファージもし
くはウイルスからの単離産物である。
【0226】
幾つかの実施形態においては、種々の定常ドメインが、本発明で提供されるCDRに由
来するVLおよびVH領域に連結されうる。例えば、本発明の抗体(またはフラグメント
)の個々の意図される使用がエフェクター機能の改変を求めるものである場合には、ヒト
IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用可能であり、あるいはハイブリッドIgG1/I
gG4が使用可能である。
【0227】
ヒトIgG1抗体は長い半減期およびエフェクター機能、例えば補体活性化および抗体
依存性細胞傷害性をもたらすが、そのような活性は該抗体の全ての用途に望ましいとは限
らない可能性がある。そのような場合、例えばヒトIgG4定常ドメインが使用されうる
。本発明は、IgG4定常ドメインを含む抗FXI抗体およびその抗原結合性フラグメン
ト、例えば、アンタゴニストヒト抗FXI抗体およびフラグメント、ならびにそれらの使
用方法を含む。1つの実施形態においては、該IgG4定常ドメインはEU系における2
28位およびKABAT系における241位に対応する位置において天然ヒトIgG4定
常ドメイン(Swiss-Protアクセッション番号P01861.1)とは異なるこ
とが可能であり、この場合、適切な鎖内ジスルフィド結合形成を妨げうる106位のシス
テイン(Cys106)および109位のシステイン(Cys109)(EU系における
Cys226およびCys229位ならびにKABAT系におけるCys239およびC
ys242位に対応する)間の潜在的鎖間ジスルフィド結合を妨げるために、HC定常ド
メインの108位の天然セリン(Ser108)がプロリン(Pro)で置換される。A
ngalら,Mol.Imunol.30:105(1993)を参照されたい。Sch
uurmanら,Mol.Immunol.38:1-8,(2001);配列番号14
および41も参照されたい。他の場合においては、エフェクター機能を低減するために修
飾された修飾IgG1定常ドメインが使用されうる。例えば、ADCCおよびCDCを著
しく低減するために、IgG1アイソタイプは233~236位のIgG2残基ならびに
327、330および331位のIgG4残基の置換を含みうる(Armourら,Eu
r J Immunol.29(8):2613-24(1999);Shieldsら
,J Biol Chem.276(9):6591-604(2001))。もう1つ
の実施形態においては、IgG HCは、297位付近のアスパラギン(Asn)残基の
N-グリコシル化を欠くように遺伝的に修飾される。N-グリコシル化のコンセンサス配
列はAsn-Xaa-Ser/Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸で
ある)であり、IgG1においては、N-グリコシル化コンセンサス配列はAsn-Se
r-Thrである。該修飾は、HCをコードする核酸分子における297位のAsnのコ
ドンを別のアミノ酸、例えばGlnのコドンで置換することにより達成されうる。あるい
は、SerのコドンをProのコドンで置換することが可能であり、ThrのコドンをS
erのコドン以外の任意のコドンで置換することが可能である。そのような修飾IgG1
分子は、検出可能なエフェクター機能をほとんど又は全く有さない。あるいは、3つ全て
のコドンが修飾される。
【0228】
本発明の1つの実施形態においては、αFXI-18611pファミリー、αFXI-
18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体の6個の
CDR、あるいは前記の6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加
、欠失またはそれらの組合せを有するその実施形態を少なくとも含む抗FXI抗体は、2
個の軽鎖および2個の重鎖(定常領域を含む)を有する完全四量体構造を含む。各軽/重
鎖ペアの可変領域が抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体は2つの結
合部位を有する。二重特異性抗体の場合を除き、それらの2つの結合部位は一般に同じで
ある。
【0229】
特定の実施形態においては、本発明は、表1に示されている抗FXI抗体を提供する。
【表2】
【0230】
実施例3に記載されている水素-重水素交換質量分析(HDX-MS)によるエピトー
プマッピングは、前記HCおよびLC CDRを含む抗FXI抗体が、配列番号82およ
び配列番号83を含むアップル3ドメイン上の特定のエピトープに結合することを示した
。
【0231】
したがって、本明細書に開示されている抗体はFXIのアップル3ドメインに結合し、
FXIIaによるFXI活性化を阻害し、そしてまた、FXIaによるFIX活性化のア
ロステリック競合インヒビターとして挙動する。エピトープマッピングの結果は、アップ
ル3上のαFXI-18623pファミリーの「フットプリント」がFXIaにおけるF
IX結合性エクソサイトと重複していることを示唆している。
【0232】
医薬組成物および投与
抗FXI抗体またはその抗原結合性フラグメントの医薬組成物または無菌組成物を製造
するためには、該抗体またはその抗原結合性フラグメントを医薬上許容される担体または
賦形剤と混合する。例えば、Remington’s Pharmaceutical
SciencesおよびU.S. Pharmacopeia:National Fo
rmulary,Mack Publishing Company,Easton,P
A(1984)、およびU.S.Pharmacopeial Convention(
USP)12601 Twinbrook Parkway,Rockville,MD
20852-1790,USAによるインターネット上の継続的更新を参照されたい。
【0233】
治療用および診断用物質の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液または懸
濁液の形態で、許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより製造されうる
(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s
The Pharmacological Basis of Therapeutic
s,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)R
emington:The Science and Practice of Pha
rmacy,Lippincott,WilliamsおよびWilkins,New
York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dos
age Forms:Parenteral Medications,Marcel
Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceuti
cal Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,N
Y;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosa
ge Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,
NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Tox
icity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New
York,NYを参照されたい)。
【0234】
もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラ
グメントを含む組成物を、Physicians’ Desk Reference 2
017(Thomson Healthcare;75st edition(2002
年11月1日))に従い、対象に投与する。
【0235】
投与方法は様々でありうる。適切な投与経路は、好ましくは、非経口または皮下である
。他の投与経路には、経口、経粘膜、皮内、直接心室内、静脈内、鼻腔内、吸入、吹送ま
たは動脈内が含まれうる。
【0236】
特定の実施形態においては、該抗FXI抗体またはその抗原結合性フラグメントは、侵
襲的経路、例えば注射により投与されうる。本発明の更なる実施形態においては、抗FX
I抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物は静脈内、皮下、動脈
内、または吸入、エアゾール運搬により投与されうる。非侵襲性経路(例えば、経口的、
例えば、丸剤、カプセル剤または錠剤)による投与も本発明の範囲内である。
【0237】
組成物は、当技術分野で公知の医療装置で投与されうる。例えば、本発明の医薬組成物
は、例えば予め充填されたシリンジまたは自動注入装置を含む、皮下針を使用する注射に
より投与されうる。
【0238】
本明細書に開示されている医薬組成物は、例えば米国特許第6,620,135号、第
6,096,002号、第5,399,163号、第5,383,851号、第5,31
2,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,82
4号または第4,596,556号に開示されている装置のような無針(needlel
ess)皮下注射装置によっても投与されうる。
【0239】
本明細書に開示されている医薬組成物は注入によっても投与されうる。医薬組成物を投
与するための良く知られたインプラントおよびモジュールの例には、米国特許第4,48
7,603号(これは、制御された速度で医薬を分注するための移植可能な微量注入ポン
プを開示している)、米国特許第4,447,233号(これは、正確な注入速度で医薬
を運搬するための医薬注入ポンプを開示している)、米国特許第4,447,224号(
これは、連続的薬物運搬のための可変流量移植可能注入装置を開示している)、米国特許
第4,439,196号(これは、マルチチャンバ・コンパートメントを有する浸透性薬
物運搬系を開示している)に開示されているものが含まれる。多数の他のそのようなイン
プラント、運搬系およびモジュールは当業者によく知られている。
【0240】
投与レジメンは、該治療用抗体の血清または組織代謝回転速度、症状の程度、治療用抗
体の免疫原性、および生物学的マトリックスにおける標的細胞の接近可能性を含む幾つか
の要因に左右される。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を最小にすると
同時に標的罹患状態の改善をもたらす十分な治療用抗体を運搬する。したがって、運搬さ
れる生物学的物質の量は、部分的には、個々の治療用抗体および治療される状態の重症度
に左右される。治療量抗体の適当な用量を選択する際の指針が利用可能である(例えば、
Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios S
cientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina
(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines
and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY
;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and
Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,M
arcel Dekker,New York,NY;Baertら,2003,New
Engl.J.Med.348:601-608;Milgromら,1999,Ne
w Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamonら,2001,
New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz
ら,2000,New Engl.J.Med.342:613-619;Ghoshら
,2003,New Engl.J.Med.348:24-32;Lipskyら,2
000,New Engl.J.Med.343:1594-1602を参照されたい)
。
【0241】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が得られるように調節される
。例えば、単回ボーラスを投与することが可能であり、幾つかの分割量を経時的に投与す
ることが可能であり、あるいは、治療状況の緊急性により示されるとおりに用量を比例的
に減少または増加させることが可能である。投与の容易さおよび投与量の均一性のために
、非経口組成物を投与単位形態で処方することが特に有利である。本明細書中で用いる投
与単位形態は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を
意味する。各単位は、所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を
、必要とされる医薬担体と共に含む。本明細書に記載されている投与単位形態の詳細は、
(a)抗体または抗体結合性フラグメントの特有の特徴および達成されるべき個々の治療
効果、ならびに(b)個体における感受性の治療のためにそのような活性分子を配合する
分野に固有の制約によって決まり、それらに直接左右される(例えば、Yangら(20
03)New Engl.J.Med.349:427-434;Heroldら(20
02)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liuら(199
9)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Po
rtieljiら(2003)Cancer Immunol.Immunother.
52:133-144を参照されたい)。
【0242】
キット
更に、本明細書に記載されているもう1つの治療剤(これらに限定されるものではない
)を含む1以上の追加的成分と共に、本明細書に記載されている抗FXI抗体または抗原
結合性フラグメント(これらに限定されるものではない)を含む1以上の成分を含むキッ
トを提供する。該抗体もしくはフラグメントおよび/または該治療剤は、純粋な組成物と
して、または医薬組成物において医薬上許容される担体と組合せて製剤化されうる。
【0243】
1つの実施形態においては、該キットは、抗FXI抗体もしくはその抗原結合性フラグ
メントまたはその医薬組成物を1つの容器(例えば、無菌ガラスまたはプラスチックバイ
アル)内に、そしてもう1つの治療剤をもう1つの容器(例えば、無菌ガラスまたはプラ
スチックバイアル)内に含む。
【0244】
もう1つの実施形態においては、該キットは、単一の共通の容器内に、所望により医薬
組成物において、一緒に製剤化される1以上の治療剤と組合された、本発明の抗FXI抗
体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物を含む、本発明の組合せを
含む。
【0245】
該キットが対象への非経口投与のための医薬組成物を含む場合、該キットは、そのよう
な投与を行うための装置を含みうる。例えば、該キットは前記の1以上の皮下針または他
の注射装置を含みうる。したがって、本発明は、注射装置と該抗FXI抗体またはその抗
原結合性フラグメントとを含むキットを含み、例えば、ここで、該注射装置は該抗体また
はフラグメントを含み、あるいは該抗体またはフラグメントは別個の容器内に存在する。
【0246】
該キットは、該キットにおける医薬組成物および剤形に関する情報を含む添付文書を含
みうる。一般に、そのような情報は、封入されている医薬組成物および剤形を有効かつ安
全に使用することにおいて患者および医師を補助する。例えば、本発明の組合せに関する
以下の情報が添付文書(インサート)において供給されうる:薬物動態、薬力学、臨床試
験、有効性パラメータ、適応症および用法、禁忌、警告、予防策、有害反応、過剰投薬、
適切な投与量および投与、供給方法、適切な保存条件、参考資料、製造業者/流通業者情
報ならびに特許情報。
【0247】
抗体およびその抗原結合性フラグメントの製造方法
本明細書に開示されている抗FXI抗体およびそのフラグメントは組換え法によっても
製造されうる。この実施形態においては、該抗体分子をコードする核酸をベクター(プラ
スミドまたはウイルス)内に挿入し、宿主細胞内にトランスフェクトまたは形質転換し、
該宿主細胞においてそれを発現させ、該宿主細胞から分泌させることが可能である。当技
術分野で公知である組換え抗体を製造するための幾つかの方法が存在する。
【0248】
本明細書に開示されている抗体またはフラグメントの発現のための宿主として利用可能
な哺乳類細胞系は当技術分野でよく知られており、American Type Cul
ture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系を包含
する。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP
2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒ
ト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、ヒト胎児腎29
3(HEK-293)細胞および多数の他の細胞系を包含する。特に好ましい細胞系は、
どの細胞系が高い発現レベルを有するのかを決定することにより選択される。使用されう
る他の細胞系としては、昆虫細胞系、例えばSf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細
胞、糸状真菌細胞[例えば、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma ree
sei)]および酵母細胞[例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharom
yces cerevisiae)またはピチア・パストリス(Pichia past
oris)]が挙げられる。特定の態様においては、宿主細胞は原核宿主細胞、例えば大
腸菌(E.coli)でありうる。
【0249】
重鎖またはその抗原結合性部分もしくはフラグメント、軽鎖および/またはその抗原結
合性フラグメントをコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを宿主細胞内に導入す
る場合、該宿主細胞における該抗体の発現、またはより好ましくは、該宿主細胞が培養さ
れる培地内への該抗体の分泌を可能にするのに十分な条件下および時間にわたって、該宿
主細胞を培養することにより、該抗体を製造する。該抗体を培地から回収し、更に精製ま
たは加工して、本発明の抗体を得ることが可能である。
【0250】
特定の態様においては、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611フ
ァミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHCおよびLC C
DRを少なくとも含むHCおよびLCをコードする核酸分子、あるいは、6個のCDRの
1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有し、お
よび/または、HCおよび/またはLC可変領域フレームワークが0、1、2、3、4、
5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含
むその実施形態を少なくとも含むHCおよびLCをコードする核酸分子を含む発現ベクタ
ーで、宿主細胞をトランスフェクトする。
【0251】
特定の態様においては、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611フ
ァミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHC CDRを少な
くとも含むHCをコードする核酸分子、あるいは、6個のCDRの1以上が1、2または
3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有し、および/または、HCお
よび/またはLC可変領域フレームワークが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9ま
たは10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその実施形態を少な
くとも含むHCをコードする核酸分子を含む第1発現ベクターと、αFXI-18611
pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリ
ーの抗FXI抗体のLC CDRを少なくとも含むLCをコードする核酸分子、あるいは
、6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの
組合せを有し、および/または、HCおよび/またはLC可変領域フレームワークが0、
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそ
れらの組合せを含むその実施形態を少なくとも含むLCをコードする核酸分子を含む第2
発現ベクターとで、宿主細胞をトランスフェクトする。
【0252】
特定の実施形態においては、HCおよびLCは融合タンパク質として発現され、該融合
タンパク質においては、HCおよびLCのN末端は、分泌経路を介した抗体の輸送を容易
にするリーダー配列に融合している。使用されうるリーダー配列の例には、MSVPTQ
VLGLLLLWLTDARC(配列番号14)またはMEWSWVFLFFLSVTT
GVHS(配列番号15)が含まれる。
【0253】
本発明における典型的な抗体のHCは、配列番号34、36、38、40、42、44
、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、
72、74、76、78または80に示されているヌクレオチド配列を有する核酸分子に
よりコードされうる。
【0254】
本発明における典型的な抗体のLCは、配列番号27または32に示されているヌクレ
オチド配列を有する核酸分子によりコードされうる。
【0255】
本発明は更に、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、5
2、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78
または80のアミノ酸配列を有する核酸分子を含むプラスミドまたはウイルスベクターを
提供する。本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611フ
ァミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHCをコードする核
酸分子、あるいは、6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠
失またはそれらの組合せを有し、および/または、HCおよび/またはLC可変領域フレ
ームワークが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付
加、欠失またはそれらの組合せを含むその実施形態のHCをコードする核酸分子と、αF
XI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18
623pファミリーの抗FXI抗体のLCをコードする核酸分子、あるいは、6個のCD
Rの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有し
、および/または、HCおよび/またはLC可変領域フレームワークが0、1、2、3、
4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せ
を含むその実施形態のLCをコードする核酸分子とを含むプラスミドまたはウイルスベク
ターを提供する。
【0256】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHCをコードする核酸分子を
含むプラスミドまたはウイルスベクター、およびαFXI-18611pファミリー、α
FXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体
のLCをコードする核酸分子を含むプラスミドまたはウイルスベクターを提供する。
【0257】
本発明は更に、αFXI-18611pファミリー、αFXI-18611ファミリー
またはαFXI-18623pファミリーの抗FXI抗体のHCをコードする核酸分子、
あるいは、6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失または
それらの組合せを有し、および/または、HCおよび/またはLC可変領域フレームワー
クが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失
またはそれらの組合せを含むその実施形態のHCをコードする核酸分子と、αFXI-1
8611pファミリー、αFXI-18611ファミリーまたはαFXI-18623p
ファミリーの抗FXI抗体のLCをコードする核酸分子、あるいは、6個のCDRの1以
上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有し、および
/または、HCおよび/またはLC可変領域フレームワークが0、1、2、3、4、5、
6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むそ
の実施形態のLCをコードする核酸分子とを含む1以上のプラスミドまたはウイルスベク
ターを含む宿主細胞を提供する。特定の実施形態においては、該宿主細胞はCHOまたは
HEK-293宿主細胞である。
【0258】
抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収されうる。更に、生産細胞
系からの本発明の抗体(またはそれからの他の部分)の発現は、幾つかの公知技術を用い
て増強されうる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、一定条件
下で発現を増強するための一般的アプローチである。
【0259】
一般に、個々の細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質
は、該細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質に特徴的な
グリコシル化パターンを有する(例えば、Crosetら,J.Biotechnol.
161:336-348(2012)を参照されたい)。したがって、抗体の個々のグリ
コシル化パターンは、該抗体を製造するために使用される個々の細胞系またはトランスジ
ェニック動物に左右される。しかし、本発明で提供される核酸分子によりコードされる、
または本発明で提供されるアミノ酸配列を含む全ての抗体は、該抗体が有しうるグリコシ
ル化パターンには無関係に、本発明を構成する。
【0260】
以下の実施例は本発明の更なる理解を促すことを意図したものである。
【0261】
一般的方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,FritschおよびMan
iatis(1982 & 1989 2nd Edition,2001 3rd E
dition)Molecular Cloning,A Laboratory Ma
nual,Cold Spring Harbor Laboratory Press
,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussel
l(2001)Molecular Cloning,3rded,Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press,Cold Spring H
arbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217
,Academic Press,San Diego,CA.に記載されている。標準
的な方法は、Ausbelら(2001)Current Protocols in
Molecular Biology,VoIs.1-4,John Wiley an
d Sons,Inc.New York,NYにも記載されており、これは、細菌細胞
におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞および酵母
におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、
ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載している。
【0262】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含むタンパク質精
製のための方法が記載されている(Coliganら(2000)Current Pr
otocols in Protein Science,Vol.1,John Wi
ley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳
後修飾、融合タンパク質の製造、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、
Coliganら(2000)Current Protocols in Prote
in Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc
.,New York;Ausubelら(2001)Current Protoco
ls in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley
and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;
Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life
Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;A
mersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirect
ory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい)。ポ
リクローナルおよびモノクローナル抗体の製造、精製およびフラグメント化が記載されて
いる(Coliganら(2001)Current Protcols in Imm
unology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,N
ew York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibod
ies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,
Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane,前掲)。
リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技術が利用可能である(例えば、
Coliganら(2001)Current Protcols in Immuno
logy,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照され
たい)。
【0263】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体は製造可能である(例えば
、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antib
odies,Oxford Univ.Press,New York,NY;Kont
ermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineer
ing,Springer-Verlag,New York;HarlowおよびLa
ne(1988)Antibodies A Laboratory Manual,C
old Spring Harbor Laboratory Press,Cold
Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenterら(2
000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immuno
l.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27
371-27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:106
78-10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877-88
3;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487
-499;米国特許第6,329,511号を参照されたい)。
【0264】
ヒト化に代わる手段は、ファージ上で提示されるヒト抗体ライブラリー、またはトラン
スジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーを使用することである(Vaugha
nら(1996)Nature Biotechnol.14:309-314;Bar
bas(1995)Nature Medicine 1:837-839;Mende
zら(1997)Nature Genetics 15:146-156;Hooge
nboomおよびChames(2000)Immunol.Today 21:371
-377;Barbasら(2001)Phage Display:A Labora
tory Manual,Cold Spring Harbor Laborator
y Press,Cold Spring Harbor,New York;Kayら
(1996)Phage Display of Peptides and Prot
eins:A Laboratory Manual,Academic Press,
San Diego,CA;de Bruinら(1999)Nature Biote
chnol.17:397-399)。
【0265】
抗体は例えば小薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)にコ
ンジュゲート化されうる。抗体は治療、診断、キットまたは他の目的に有用であり、例え
ば色素、放射性同位体、酵素または金属、例えばコロイド金に結合した抗体を包含する(
例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169-1
75;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891-38
98;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:280
4-2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883-88
9を参照されたい)。
【0266】
蛍光標識細胞分取検出系(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が利用
可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Pri
nciples for Clinical Laboratory Practice
,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(20
01)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hob
oken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cyto
metry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照さ
れたい)。例えば診断試薬としての使用のための、核酸プライマーおよびプローブを含む
核酸、ポリペプチドおよび抗体を修飾するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Mol
ecular Probes(2003)Catalogue,Molecular P
robes,Inc.,Eugene,OR;Sigma-Aldrich(2003)
Catalogue,St.Louis,MO)。
【0267】
免疫系の標準的な組織学的方法が記載されている(例えば、Muller-Harme
link(編)(1986)Human Thymus:Histopathology
and Pathology,Springer Verlag,New York,
NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,
Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA
;Louisら(2002)Basic Histology:Text and At
las,McGraw-Hill,New York,NYを参照されたい)。
【0268】
例えば抗原フラグメント、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイ
ン、グリコシル化部位および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージ
およびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI
(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GC
G Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Di
ego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,C
rystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinform
atics 16:741-742;Menneら(2000)Bioinformat
ics Applications Note 16:741-742;Wrenら(2
002)Comput.Methods Programs Biomed.68:17
7-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:
17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.
14:4683-4690を参照されたい)。
【0269】
ヒトFXIおよびFIXチモーゲンはHaematologic Technolog
ies,Inc.Essex Junction,VTから入手可能であり、高分子量(
HMW)キニノーゲンはEnzyme Research Laboratories,
South Bend,INから入手可能であり、エラグ酸はPacific Hemo
stasis,ThermoFisher,Waltham,MAから入手可能である。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【
図1A】
図1Aおよび
図1Bは凝固カスケード、FXI、FXI mAbおよび4つ新経口抗凝固剤(NOAC)を示す。
図1Aは、凝固カスケード(内因性経路および外因性経路から構成されるもの)におけるFXIを示す図である。FXI標的化mAbは、XIIaおよび/もしくはトロンビンによるFXI活性化、またはFIXに対するFXIa活性を遮断することにより、機能的中和をもたらしうる。本発明における抗体は、FIXのFXIa媒介性活性化と、少なくともFXIIaにより媒介されるFXIからFXIaへの変換とに対する二重遮断をもたらしうる。FXaまたはトロンビンのいずれかを標的とする4つのNOAC(リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン)が示されている。
【
図1B】
図1Aおよび
図1Bは凝固カスケード、FXI、FXI mAbおよび4つ新経口抗凝固剤(NOAC)を示す。
図1BはFXIのドメイン構造を示す。FXIは、同一の80kDaサブユニットから構成される二量体であり、N末端から始まる各サブユニットは4つのアップルドメイン(1、2、3および4)および触媒ドメイン(CAT)からなる。本明細書に開示されている抗体はアップル3ドメインに結合する。
【
図2】
図2は因子XIおよびアップル3ドメインの構造を示し、αFXI-18611およびαFXI-18623pファミリー抗FXI抗体により重水素化から保護されたペプチドが特定されている。FIX結合エクソサイト(exocite)における決定的に重要な残基であるアルギニン184残基が示されている。重水素化の差異を示さないアップル3ドメインにおけるペプチドは薄灰色で示されている。データが入手できなかったペプチドは濃灰色で着色されている。触媒ドメインは示されていない。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、それぞれ、抗FXI抗体αFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパにより結合されたFXIアミノ酸残基の重水素標識差ヒートマップを示す。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、それぞれ、抗FXI抗体αFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパにより結合されたFXIアミノ酸残基の重水素標識差ヒートマップを示す。
【
図4A】
図4A、4Bおよび4CはαFXI 18611pおよびαFXI 18611ファミリー抗体のHCおよびLCドメインのアミノ酸配列を示す。重鎖および軽鎖CDRが、それぞれ、HC-CDR1、HC-CDR-2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3として特定されている。
【
図4B】
図4A、4Bおよび4CはαFXI 18611pおよびαFXI 18611ファミリー抗体のHCおよびLCドメインのアミノ酸配列を示す。重鎖および軽鎖CDRが、それぞれ、HC-CDR1、HC-CDR-2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3として特定されている。
【
図4C】
図4A、4Bおよび4CはαFXI 18611pおよびαFXI 18611ファミリー抗体のHCおよびLCドメインのアミノ酸配列を示す。重鎖および軽鎖CDRが、それぞれ、HC-CDR1、HC-CDR-2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3として特定されている。
【
図5A】
図5Aおよび5BはαFXI 18623pファミリー抗体のHCおよびLCドメインのアミノ酸配列を示す。重鎖および軽鎖CDRが、それぞれ、HC-CDR1、HC-CDR-2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3として特定されている。
【
図5B】
図5Aおよび5BはαFXI 18623pファミリー抗体のHCおよびLCドメインのアミノ酸配列を示す。重鎖および軽鎖CDRが、それぞれ、HC-CDR1、HC-CDR-2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3として特定されている。
【
図6】
図6は、ヒト血漿におけるαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパ(A)およびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパ(B)の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイの結果を示し、これはベースラインに対する増加率(%)として表されている。
【
図7】
図7は、カニクイザル血漿におけるαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパ(A)およびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパ(B)の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイの結果を示し、これはベースラインに対する増加率(%)として表されている。
【
図8】
図8は、アカゲザル血漿におけるαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパ(A)およびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパ(B)の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイの結果を示し、これはベースラインに対する増加率(%)として表されている。
【
図9】
図9は、ヒト血漿、カニクイザルおよびアカゲザル血漿におけるαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパに関するaPTT結果の比較を示し、これらはベースラインに対する増加率(%)として表されている。
【
図10】
図10は、ヒト血漿、カニクイザルおよびアカゲザル血漿におけるαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパに関するaPTT結果の比較を示し、これらはベースラインに対する増加率(%)として表されている。
【
図11】
図11は、ヒト、カニクイザルおよびアカゲザルFXIならびに他のヒトおよびNHP凝固カスケードタンパク質へのαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの結合の動力学を示すBIAcoreセンサグラムを示す。
【
図12】
図12は、ヒト、カニクイザルおよびアカゲザルFXIならびに他のヒトおよびNHP凝固カスケードタンパク質へのαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパの結合の動力学を示すBIAcoreセンサグラムを示す。
【
図13】
図13はカニクイザルAVシャント試験法の概要図を示す。大腿動脈および静脈のカテーテルが予め取り付けられた麻酔されたサルにビヒクルまたはαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(抗体)(0.01~1.0mg/kg)を静脈内ボーラスにより投与した(試験物質投与)。本明細書に記載されているとおりにAVシャントを挿入した(AVシャントの挿入)。AVシャントを経由して血液を40分間流した。チューブの内側に吊るされた絹糸と血液との接触は血餅を形成させた。本明細書に記載されているとおりに血餅を秤量した。抗体の循環レベル、aPTTおよびPTを測定するために、血液サンプルを得た(星印)。
【
図14A】
図14A~DはカニクイザルAVシャントモデルにおけるAVシャント血餅形成、aPTTおよびPTに対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(抗体)の効果を示す。
図14Aは、同じ動物において2回の連続的AVシャントの後で測定された血餅重量を示す。第1シャント(シャント#1)中に動物にビヒクルを投与し、ついで、第2シャント(シャント#2)中に、示されているとおりに、抗体(0.01~1.0mg/kg IV)を投与した。抗体の用量の増加はより小さな血餅の形成をもたらした。
【
図14B】
図14A~DはカニクイザルAVシャントモデルにおけるAVシャント血餅形成、aPTTおよびPTに対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(抗体)の効果を示す。血餅重量の抑制率(
図14B)およびaPTTの変化率(
図14C)は抗体の血漿濃度の増加と共に増加した。これとは対照的に、PT(
図14D)は抗体の全濃度において比較的不変のままであった。
【
図14C】
図14A~DはカニクイザルAVシャントモデルにおけるAVシャント血餅形成、aPTTおよびPTに対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(抗体)の効果を示す。血餅重量の抑制率(
図14B)およびaPTTの変化率(
図14C)は抗体の血漿濃度の増加と共に増加した。これとは対照的に、PT(
図14D)は抗体の全濃度において比較的不変のままであった。
【
図14D】
図14A~DはカニクイザルAVシャントモデルにおけるAVシャント血餅形成、aPTTおよびPTに対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(抗体)の効果を示す。血餅重量の抑制率(
図14B)およびaPTTの変化率(
図14C)は抗体の血漿濃度の増加と共に増加した。これとは対照的に、PT(
図14D)は抗体の全濃度において比較的不変のままであった。
【
図15】
図15はカニクイザルのテンプレート出血時間法の概略図を示す。頬粘膜(内唇)、指肉趾および遠位尾部におけるテンプレート出血時間を、麻酔したカニクイザルにおいて、ベースライン時(処置前)ならびに処理#1(ビヒクル)および処理#2(ビヒクルまたはαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ、10mg/kg IV)の投与の後で測定した。αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの循環レベル、aPTTおよびPTを測定するための血液サンプルを、示されているとおりに採取した。
【
図16A】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図16B】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図16C】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図16D】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図16E】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図16F】
図16A~Fは、カニクイザルにおいて測定されたテンプレート出血時間に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの効果を示す。テンプレート出血時間は、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)および遠位尾部(
図16C、
図16F)において測定した。片側対応スチューデントt検定を用いて、研究セッション1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2における処理1および2としてのビヒクル-αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時間の変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する処理効果(αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ対ビヒクル)を評価した。
【
図17A】
図17AはアカゲザルにおけるαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパIV投与の後の濃度-時間プロファイルを示す。アカゲザルにおけるαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの血漿濃度-時間プロファイルが示されている。各用量群には4頭の動物がいた。各線は個々の群に関する平均を表す。
【
図17B】
図17BはアカゲザルにおけるaPTT-時間プロファイルを示す。αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパに関するaPTT-時間プロファイルが各用量群に関して示されている。各用量群には4頭の動物がいた。各記号は各時点における個々の動物のaPTT時間プロファイルを表す。各線は個々の群に関する平均を表す。
【0271】
実施例1
本実施例においては、抗FXI抗体αFXI-18611 IgG4 HC(S228
P)(E1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC
(S228P)(Q1)/LCカッパならびにヒトFXIチモーゲンまたは非ヒト霊長類
(NHP)FXIチモーゲンのいずれかの結合動力学を、以下のアッセイを用いて測定し
た。
【0272】
ヒトFXIおよびFXIa結合動力学アッセイプロトコール
抗FXI抗体およびヒトFXIチモーゲンまたはFXIaの間のタンパク質-タンパク
質相互作用の結合動力学およびアフィニティを、実質的に以下のとおりに、SPR(表面
プラズモン共鳴)に基づく光学バイオセンサーであるProteOn XPR36(Bi
o-Rad)を使用して測定した。
【0273】
GLC低密度センサーチップを、0.5% ドデシル硫酸ナトリウム、50mM 水酸
化ナトリウムおよび100mM 塩酸で、30μL/秒の流速で60秒間、全ての垂直お
よび水平流路にわたって洗浄した。ついで6つ全ての垂直流路(L1~L6)のアルギナ
ートチップ表面を1×EDC/sNHSで30μL/秒の流速で150秒間活性化した。
ついで、10mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)中で1.25μg/mLに希釈された
マウスFc指向性抗ヒトIgGポリクローナル抗体(捕捉抗体)を6つ全ての垂直流路に
わたって25μL/秒の流速で300秒間注入して、内因性リジンへのアミンカップリン
グにより、流路当たり約300応答単位(RU)の捕捉抗体を該活性化チップ表面に結合
させた。ついで1M エタノールアミンHClを6つ全ての垂直流路にわたって注入して
、残りの反応性表面アミンを中和した。ついで約80RUの飽和捕捉レベルを達成するた
めに、10mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)中の5μg/mLの濃度で、捕捉抗体(
L2、L3、L4、L5またはL6)でコーティングされた別個の垂直流路内に、抗FX
I抗体をそれぞれ、25μL/分で60秒間注入した。垂直流路L1には10mM 酢酸
ナトリウム(pH5.0)(バッファーのみ)を基準対照として注入した。
【0274】
抗FXI抗体の捕捉の後、ランニングバッファー(1×HBS-N、5mM CaCl
2、0.005% P20、pH7.4)を全ての水平流路(A1~A6)に5分間注入
し、25μL/分で20分間解離させて、チップ表面から非特異的結合抗FXI抗体を除
去した。ついで、捕捉抗FXI抗体に対するヒトFXIまたはFXaのオン・レート(o
n-rate)(ka)を測定するために、6点滴定のヒトFXIまたはFXIa(ラン
ニングバッファー中で希釈された0、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0nM)
を6つ全ての垂直流路にわたって水平に8分間注入した。ついで結合チモーゲンをランニ
ングバッファー中で25μL/分で60分間解離させて、オフ・レート(off-rat
e)(kd)を測定した。結合動力学およびアフィニティ(KD)を、装置に特有のソフ
トウェア(Bio-Rad)を使用して決定した。それらを表2に示す。
【0275】
非ヒト霊長類FXIチモーゲン/FXIa結合動力学アッセイプロトコール
抗FXI抗体および非ヒト霊長類(NHP;カニクイザルおよびアカゲザル)FXIチ
モーゲンまたはFXIaの間のタンパク質-タンパク質相互作用の結合動力学およびアフ
ィニティを、SPR(表面プラズモン共鳴)に基づく光学バイオセンサーであるProt
eOn XPR36(Bio-Rad)を使用して測定した。
【0276】
GLC低密度センサーチップを、0.5% ドデシル硫酸ナトリウム、50mM 水酸
化ナトリウムおよび100mM 塩酸で、30μL/秒の流速で60秒間、全ての垂直お
よび水平流路にわたって洗浄した。ついで6つ全ての垂直流路(L1~L6)のアルギナ
ートチップ表面を1×EDC/sNHSで30μL/秒の流速で150秒間活性化した。
ついで、10mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)中で30μg/mLに希釈されたマウ
スFc指向性抗ヒトIgGポリクローナル抗体(捕捉抗体)を6つ全ての垂直流路にわた
って25μL/秒の流速で150秒間注入して、内因性リジンへのアミンカップリングに
より、流路当たり、該活性化チップ表面への約4500応答単位(RU)の捕捉抗体の飽
和結合を達成した。ついで1M エタノールアミンHClを6つ全ての垂直流路にわたっ
て注入して、残りの反応性表面アミンを中和した。ついで約40RUの飽和捕捉レベルを
達成するために、ランニングバッファー(1×HBS-N、5mM CaCl
2、0.0
05% P20、pH7.4)中の0.415μg/mLの濃度で、捕捉抗体(L2、L
3、L4、L5またはL6)でコーティングされた別個の垂直流路内に、抗FXI抗体を
それぞれ、25μL/分で60秒間注入した。垂直流路L1にはランニングバッファーの
みを基準対照として注入した。抗FXI抗体の捕捉の後、ランニングバッファーを全ての
水平流路(A1~A6)に5分間注入し、25μL/分で20分間解離させて、チップ表
面から非特異的結合抗FXI抗体を除去した。ついで、捕捉抗FXI抗体に対するNHP
FXIのオン・レート(on-rate)(k
a)を測定するために、6点滴定のNH
P FXIまたはFXIa(ランニングバッファー中で希釈された0、0.25、0.5
、1.0、2.0、4.0nM)を6つ全ての垂直流路にわたって水平に8分間注入した
。ついで結合FXIチモーゲンまたはFXIaをランニングバッファー中で25μL/分
で60分間解離させて、オフ・レート(off-rate)(k
d)を測定した。結合動
力学およびアフィニティ(K
D)を、装置に特有のソフトウェア(Bio-Rad)を使
用して決定した。それらを表2に示す。
【表3】
【0277】
実施例2
高分子量(HMW)キニノーゲンおよびエラグ酸の存在下のFXIIaによるFXIか
らFXIaへの活性化に対する抗FXI抗体の効果
FXIチモーゲン活性化に対する抗FXI抗体αFXI-18611 IgG4 HC
(S228P)(E1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p Ig
G4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパの効果を測定するために、トリペプチド
発蛍光団(GPR-AFC)のFXIa媒介性タンパク質分解を測定する共役酵素アッセ
イを用いて、該抗体がFXI活性化自体を阻害するかどうかを決定することが可能である
。これらの実験のために、抗FXI抗体をFXIチモーゲンと共に1時間プレインキュベ
ートする。FXIaへのFXIの活性化は、HMWキニノーゲンおよびエラグ酸の存在下
、FXIIaの添加により誘導される。ついでトリペプチド発蛍光団基質に対するFXI
a触媒活性をチモーゲン活性化の読取結果として測定する。該共役アッセイは、対照とし
て、HMWキニノーゲンの非存在下においても行われる。3倍希釈系列で1μMの濃度か
ら開始する11点用量滴定の抗FXI抗体を、Corning 3575非結合表面マイ
クロプレート内で、50mM HEPES、150mM NaCl、5mM CaCl2
、0.1% PEG-8000(pH7.4)中、ヒトFXI(Haematologi
c Technologies,Inc.,Cat # HCXI-0150,最終濃度
30nM)およびHMWキニノーゲン(Enzyme Research Labora
tories,Cat # HK,最終濃度280nM)と共に25℃で2時間プレイン
キュベートした。ついで、エラグ酸含有Pacific Hemostasis APT
T-XL試薬(Thermo Scientific,Cat # 100403,10
0μM ストック濃度,最終濃度2μM)および新たに希釈された凝固因子XIIa(E
nzyme Research Laboratories,Cat # HFXIIa
,最終濃度50pM)の添加により、活性化反応を開始させた。該反応を25℃で1時間
進行させ、このとき、1μM コーントリプシンインヒビター(Haematologi
c Technologies,Inc.,Cat # CTI-01)の添加により、
それをクエンチした。Tecan Infinite M200プレートリーダーを使用
して400/505nmの蛍光を10分間連続的にモニターすることにより、Z-GPR
-AFC基質(Sigma,Cat#C0980-10MG,最終濃度150μM)の切
断の速度を測定することにより、新たに活性化されたFXIa酵素活性を検出した。各デ
ータ点に関する阻害率(%)をRFU/分データから再計算し、GraphPad Pr
ismソフトウェアで、log(インヒビター)対応答の4パラメーター式を使用して分
析した。結果を表3に示す。
【0278】
HMWキニノーゲンおよびエラグ酸の非存在下のFXIIaによるFXIからFXIa
への活性化に対する抗FXI抗体の効果
3倍希釈系列で1μMの濃度から開始する11点用量滴定の本発明の抗FXI抗体を、
Corning 3575非結合表面マイクロプレート内で、50mM HEPES、1
50mM NaCl、5mM CaCl
2、0.1% PEG-8000(pH7.4)
中、ヒトFXI(Haematologic Technologies,Inc.,C
at # HCXI-0150,最終濃度30nM)と共に25℃で2時間プレインキュ
ベートした。ついで、新たに希釈された凝固因子XIIa(Enzyme Resear
ch Laboratories,Cat # HFXIIa,最終濃度15nM)の添
加により、活性化反応を開始させた。該反応を25℃で1時間進行させ、このとき、1μ
M コーントリプシンインヒビター(Haematologic Technologi
es,Inc.,Cat # CTI-01)の添加により、それをクエンチした。Te
can Infinite M200プレートリーダーを使用して400/505nmの
蛍光を10分間連続的にモニターすることにより、Z-GPR-AFC基質(Sigma
,Cat#C0980-10MG,最終濃度150μM)の切断の速度を測定することに
より、新たに活性化されたFXIa酵素活性を検出した。各データ点に関する阻害率(%
)をRFU/分データから再計算し、GraphPad Prismソフトウェアで、l
og(インヒビター)対応答の4パラメーター式を使用して分析した。結果を表3に示す
。
【表4】
【0279】
総合すると、これらのメカニズム研究は、これらの抗FXI抗体が、FXIIaによる
FXI活性化を妨げることにより、および天然基質に対するFXIa触媒活性を阻害する
ことにより、FXIを機能的に中和することを示している。
【0280】
実施例3
水素重水素交換質量分析による抗FXI抗体のエピトープマッピング
ヒトFXIに対するαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)(
L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p-IgG4(S228P)(Q1
)/LCカッパの接触領域を、水素重水素交換質量分析(HDX-MS)を用いて決定し
た。HDX-MSはタンパク質のアミド骨格内への重水素の取り込みを測定し、この取り
込みの変化は水素の溶媒暴露の影響を受ける。抗原のみのサンプルおよび抗体結合サンプ
ルにおける重水素交換レベルの比較を行って、抗体と接触しうる抗原領域を特定した。ヒ
ト因子XIは、配列番号81に示されているアミノ酸配列を有する。二量体因子XIを該
抗体と共にプレインキュベートした後、重水素バッファー中のインキュベーションを行っ
た。因子XI内への重水素の取り込みを質量分析により測定した。
【0281】
抗体により重水素化から保護されたヒト因子XI領域はエピトープ-A DIFPNT
VF(因子XIの残基185~192;配列番号82)およびエピトープ-B PSTR
IKKSKALSG(因子XIの残基247~259;配列番号83)である。
図3Aお
よび3Bは、それぞれ、抗体αFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E
1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC(S22
8P)(Q1)/LCカッパにより結合された因子XIアミノ酸残基の重水素標識差ヒー
トマップを示す。これらのアミノ酸配列は因子XIのアップル3ドメイン上に位置する(
図3)。アップル1、2、4または触媒ドメインにおいては有意な重水素化変化は観察さ
れなかった。このことは、それらがαFXI-18623結合に関与していないことを示
している。したがって、αFXI-18623p-IgG4(S228P)/カッパによ
り認識されるエピトープはエピトープAおよびエピトープBを含む。
【0282】
実施例4
FIXは、FXIチモーゲンの活性プロテアーゼであるFXIaの内因性タンパク質基
質である。FXIaはFIXをFIXaへと活性化し、凝固カスケードを永続させる。F
IXのFXIa媒介性活性化の阻害はFXI mAbに関する1つの可能な作用メカニズ
ム(MOA)である。このMOAを調べるために、全長FIXチモーゲンを使用するFX
Ia酵素アッセイを開発した。
【0283】
小さなトリペプチド基質に対するFXIaプロテアーゼ活性
抗FXI抗体を、Corning 3575非結合表面マイクロプレート内で、50m
M HEPES、150mM NaCl、5mM CaCl2、0.1% PEG-80
00(pH7.4)中、ヒトFXIa(Sekisui Diagnostics,Ex
ton,PA,Cat # 4011A,最終濃度100pM)と共に25℃で2時間プ
レインキュベートした。Tecan Infinite M200プレートリーダーを使
用して400/505nmの蛍光を10分間連続的にモニターすることにより、Z-GP
R-AFC基質(Sigma,Cat#C0980-10MG,最終濃度100μM)の
切断の速度を測定することにより、新たに活性化されたFXIa酵素活性を決定した。3
倍希釈系列で1μMから開始する11点用量滴定の該抗体の最終濃度。各データ点に関す
る阻害率(%)をRFU/分データから再計算し、GraphPad Prismソフト
ウェアで、log(インヒビター)対応答の4パラメーター式を使用して分析した。結果
を表4に示す。
【0284】
FXIaによるFIXからFIXaへの活性化
FIXは、FXIチモーゲンの活性プロテアーゼであるFXIaの内因性タンパク質基
質である。FXIaはFIXをFIXaへと活性化し、凝固カスケードを永続させる。F
IXのFXIa媒介性活性化の阻害はFXI mAbに関する1つの可能な作用メカニズ
ム(MOA)である。このMOAを調べるために、全長FIXを使用するFXIa酵素ア
ッセイを開発した。
【0285】
3倍希釈系列で1μMの濃度から開始する11点用量滴定の抗FXI抗体を、Corn
ing 3575非結合表面マイクロプレート内で、50mM HEPES、150mM
NaCl、5mM CaCl
2、0.1% PEG-8000(pH7.4)中、ヒト
FXIa(Sekisui Diagnostics,Cat # 4011A,最終濃
度100pM)と共に25℃で2時間プレインキュベートした。ついでFIX(Haem
atologic Technologies,Inc.,Cat # HCIX-00
40-C,最終濃度300nM)の添加により、活性化反応を開始させ、25℃で1時間
進行させ、このとき、FXIの軽鎖の触媒部位に対する抗FXI抗体(WO201316
7669に開示されている抗FXI抗体076D-M007-H04)100nMの添加
により、それをクエンチした。Tecan Infinite M200プレートリーダ
ーを使用して400/505nmの蛍光を10分間連続的にモニターすることにより、シ
クロヘキシル-GGR-AFC基質(CPC Scientific,Cat # 83
9493,最終濃度300μM)の切断の速度を測定することにより、新たに活性化され
たFIXa酵素活性を検出した。各データ点に関する阻害率(%)をRFU/分データか
ら再計算し、GraphPad Prismソフトウェアで、log(インヒビター)対
応答の4パラメーター式を使用して分析した。結果を表4に示す。
【表5】
【0286】
表4に示されているとおり、合成トリペプチドフルオロフォア基質を使用する酵素アッ
セイにおいては、該抗体はFXIa触媒活性を阻害しなかったが、両方の抗体は、天然全
長基質を使用するアッセイの強力なインヒビターであった。このデータは、FXIaによ
るFIX活性化のアロステリック競合インヒビターとして挙動する抗体と合致しており、
アップル3上の抗体の「フットプリント」がFXIaにおけるFIX結合エキソサイトと
重複することを示唆する実施例3のエピトープマッピングの結果と合致している。
【0287】
実施例5
デキストラン硫酸上のFXIからFXIaへの自己活性化
3倍希釈系列で1μMの濃度から開始する11点用量滴定の本発明の抗FXI抗体を、
Corning 3575非結合表面マイクロプレート内で、50mM HEPES、1
50mM NaCl、5mM CaCl
2、0.1% PEG-8000(pH7.4)
中、ヒトFXI(Haematologic Technologies,Inc.,C
at # HCXI-0150,最終濃度30nM)と共に25℃で2時間プレインキュ
ベートした。ついで、デキストラン硫酸(ACROS,Cat#433240250,分
子量約800kDa,最終濃度1nM)の添加により、該自己活性化反応を開始させた。
該反応を25℃で1時間進行させ、このとき、Tecan Infinite M200
プレートリーダーを使用して400/505nmの蛍光を10分間連続的にモニターする
ことにより、新たに活性化されたFXIa酵素活性を、Z-GPR-AFC基質(Sig
ma,Cat#C0980-10MG,最終濃度150μM)の切断の速度により検出し
た。各データ点に関する阻害率(%)をRFU/分データから再計算し、GraphPa
d Prismソフトウェアで、log(インヒビター)対応答の4パラメーター式を使
用して分析した。結果を表5に示す。
【表6】
【0288】
実施例6
抗FXI抗体がインビトロ凝固を遮断する能力を、活性化部分トロンボプラスチン時間
(aPTT)アッセイを用いて評価した。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT
)は、内因性および共通の凝固経路の活性を測定する凝固試験である。
【0289】
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ
該試験はクエン酸ナトリウム血漿中で行う。ヒト血漿を、両性の健常ドナーからの血液
をクエン酸Naチューブ(Sarstedt coagulation 9NC/10m
L)内に採取することにより得る。血液を1500×gで遠心分離し、血漿を収集する。
aPTTを各ドナーに関して調べ、正常範囲(28~40秒)内のものをプールし、分注
し、-80℃で保存する。他の種からの血漿は商業的に入手される(Innovativ
e Research,Novi,MI)。インヒビターまたはビヒクルを血漿中に添加
(スパイク)することにより試験サンプルを調製する。これらの添加サンプルをインキュ
ベート(60分間、室温(RT))し、ついで凝固分析装置(STA-R Evolut
ion,Stago Diagnostica,Parsippany,NJ)にかける
。一般に、該分析装置は以下の工程を行う。エラグ酸(Pacific Hemosta
sis,ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)の
添加によりFXIIを活性化し、ついで、サンプルのカルシウム再添加の後、凝固までの
時間を測定する。FXIの阻害はaPTT凝固時間を延長させる。結果を表6に示す。デ
ータはビヒクル対照の凝固時間に対する増加率(%)として表されており、100%(2
×)または50%(1.5×)の凝固時間増加率をもたらす濃度が示されている。aPT
Tの結果を
図6、7、8、9および10に示す。
【表7】
【0290】
実施例7
ヒトおよびNHP凝固カスケードタンパク質への抗FXIモノクローナル抗体のオフタ
ーゲット結合の評価のための表面プラズモン共鳴アッセイ
抗因子FXI mAb αFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1
)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC(S228
P)(Q1)/LCカッパの、他のヒトおよびNHP凝固カスケードタンパク質(表7)
への潜在的な非特異的相互作用を決定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づ
くアッセイ(Biacore T200)を用いた。血漿由来タンパク質における同時精
製Igからの潜在的バックグラウンドを最小にするために、約500RUで抗ヒトIgG
(Fc)捕捉キット(GE Healthcare)を用いて固定化されたCM5センサ
ーチップ上に抗FXI mAbを捕捉した。陰性対照抗体である抗呼吸器合抱体ウイルス
(RSV)モノクローナル抗体(mAb)を、基準体として、そして血漿由来タンパク質
のバックグラウンド結合の低減を補助するために使用した。5nMのFXIのアナライト
濃度を用いて、結合動力学を測定した。全ての他の凝固カスケードタンパク質は500n
Mのアナライト濃度で使用した。単一濃度注入(n=2)を30μL/分、25℃、HB
S-EP+、pH7.4で行った。
【表8】
【0291】
ヒト、カニクイザルおよびアカゲザルFXIならびに他のヒトおよびNHP凝固カスケ
ードタンパク質への抗因子FXI mAb mAb αFXI-18611 IgG4
HC(S228P)(E1)(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p
IgG4 HC(S228P)(Q1)/LCカッパの結合の動力学を前記のとおりに測
定した。それを
図11および
図12に示す。Biacore T200評価ソフトウェア
を使用して、1:1結合モデルにデータをフィットさせて、会合速度定数ka(M
-1s
-1;ここで、「M」はモル濃度であり、「s」は秒である)および解離速度定数k
d(
s
-1)を決定した。これらの速度定数を使用して平衡解離定数KD(M)を計算した。
【0292】
チップ上に捕捉されたαFXI-18611 IgG4 HC(S228P)(E1)
(L105)/LCカッパおよびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P
)(Q1)/LCカッパは非FXI凝固カスケードタンパク質に対して交差反応性を示さ
なかった(
図11および
図12)。これらのモノクローナル抗体は、予想されたレベルの
、ヒトおよびカニクイザル(およびアカゲザル)FXIタンパク質への強力な結合を示し
た。
【0293】
実施例8
カニクイザル大腿動静脈(AV)シャント血栓症モデル
αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ抗体の
抗血栓効力を、Merck,Sharp & Dohme Corp.Research
Laboratories,Kenilworh,NJ USAおよびPalo Al
to,CA USAにおいて開発されたカニクイザル大腿動静脈(AV)シャントモデル
においてインビボで特徴づけした。
【0294】
研究設計:これらの研究は反復法を用い、この場合、各動物は2回の連続的試験期間に
わたって2つのシャントを受けた(
図13の研究概要図を参照されたい)。それぞれ第1
試験期間および第2試験期間中に、非抗体含有ビヒクル(20mM 酢酸ナトリウム、9
% スクロース、pH5.5)またはαFXI-18623p IgG4 HC(S22
8P)(E1)/LCカッパ抗体(用量範囲0.01~1.0mg/kg)を該サルに投
与した。第1(ビヒクル)試験セッションおよび第2(抗体)試験セッション中に測定さ
れた血餅重量の差が抗血栓症効力を決定した。すなわち、ビヒクル暴露中と比較した場合
のαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ抗体暴
露中の、血餅重量の、より大きな減少は、より大きな抗血栓症効果を示すであろう。前記
の反復ペア法の使用は抗血栓症効力の動物内の処理前対処理後の評価を可能にする。
【0295】
AVシャント配置操作の詳細:このモデルを実施するために、麻酔したカニクイザルに
大腿動脈および静脈カテーテルを取り付けた。これらのカテーテルはAVシャントの挿入
および除去を可能にした。AVシャントはタイゴン(TYGON)管から構成され、該管
は、該管の開口部を貫通し該開口部にわたって吊るされた1本の絹縫合糸を有していた。
AVシャントを配置するために、動脈カテーテルおよび静脈カテーテルの両方を閉じて血
流を止めた。ついで、それらの2つのカテーテルの間にAVシャントを配置した。カテー
テルの配置および除去の時機を
図13に示す。シャントを所定位置に配置したら、カテー
テルを開け、血液を、絹縫合糸と接触するシャント回路を通して流動させた。縫合糸と接
触する血液の作用は血餅形成を促進した。AVシャントを40分間、定位置に留めた。A
Vシャントを取り出すために、動脈カテーテルおよび静脈カテーテルの両方を閉じて、A
Vシャントを通る血流を止めた。ついでシャントを取り出し、切り開いて、絹縫合糸およ
び血餅を得た。血餅を秤量した。データは正味血餅重量として示されており、これは、全
血餅重量から絹縫合糸重量を差し引いたものとして定義される。
【0296】
凝固バイオマーカーである活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびプロ
トロンビン時間(PT)、ならびにαFXI-18623p IgG4 HC(S228
P)(E1)/LCカッパ抗体の循環血漿レベルを、
図13に示されている実験を通して
収集した血液サンプルから測定した。Sta Compact Max凝固分析装置(S
tago Diagnostic,Inc)を使用してカニクイザルから採取した解凍(
-80℃)クエン酸塩添加血漿からaPTTおよびPTを測定した。Stago分析装置
は、電磁機械的血餅検出システムを使用して血餅形成の時間を測定する。aPTTアッセ
イのために、50マイクロリットルの血漿を50μLのエラグ酸混合物(APTT-XL
,Pacific Hemostasis;Fisher Diagnostics c
at#10-0402)と37℃で3分間混合した。50μlの0.025M 塩化カル
シウム(Sta-CaCl
2 0.025M、Stago Diagnostic,In
c.,cat#00367)を該混合物に加え、血餅形成までの時間を測定した。PTア
ッセイのために、50マイクロリットルの血漿を37℃で4分間インキュベートした。1
00μLのトロンボプラスチン試薬(Neoplastine Cl Plus 10,
Stago Diagnostic,Inc.,cat#00667)を加えることによ
り、血餅形成に関する計時(タイミング)を開始した。血漿は以下のとおりに測定した。
電気化学発光に基づく一般的なhIgG4イムノアッセイを用いて、カニクイザル血漿中
の抗体を定量した。捕捉試薬としてのBethyl(cat#A80-319B)からの
ビオチン化ヤギ抗ヒトIgG(H+L)、および検出試薬用のSouthern Bio
tech(cat#9190-01)からのスルホTAG標識マウス抗ヒトIgG(Fc
特異的)を使用して、該アッセイを確立した。このアッセイは認定され、該アッセイの定
量下限は100の最小必要希釈度で40ng/mLであると決定された。
【0297】
図14A~Dは、血栓形成(
図14A、
図14B)、aPTT(
図14C)およびPT
(
図14D)に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)
/LCカッパ抗体の投与の効果を要約している。表8はカニクイザルAVシャントモデル
における血餅重量に対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E
1)/LCカッパ抗体の効果を要約している。表9はカニクイザルAVシャントモデルに
おけるaPTTおよびPTに対するαFXI-18623p IgG4 HC(S228
P)(E1)/LCカッパ抗体の効果を要約している。
【表9】
【表10】
【0298】
図14A、14Bおよび表8に示されているとおり、αFXI-18623p IgG
4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ抗体は血餅重量における用量依存的および
血漿濃度依存的減少を示し、完全な効力(90~100%の血餅減少)は、1μg/mL
(約10nM)を超える血漿[抗体]において観察された。
図14Cおよび表9に示され
ているとおり、該抗体はaPTTにおける用量依存的および血漿濃度依存的増加を示した
。2.4μg/mL(~17nM)の血漿濃度のαFXI-18623p IgG4 H
C(S228P)(E1)/LCカッパ抗体はaPTTにおける93%の増加をもたらし
、一方、29μg/mL(~200nM)(試験した最高用量)のαFXI-18623
p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ抗体はaPTTにおける143
%の増加をもたらした。
図14Dおよび表9に示されているとおり、aPTTとは異なり
、PTは、評価された該抗体の濃度にわたって10%未満で変化し、これは内因性凝固経
路に対するFXI阻害の選択的効果に合致していた。
【0299】
実施例9
カニクイザルテンプレート出血時間モデル
Merck,Sharp & Dohme Corp.Research Labor
atories,Kenilworh,NJ USAおよびPalo Alto,CA
USAにおいて開発されたカニクイザルテンプレート出血時間モデルにおいて、抗FXI
mAb αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッ
パの出血傾向をインビボで特徴づけした。このモデルは、三重(triple)抗血小板
療法における複数の解剖学的部位のテンプレート出血時間の有意な増加を示すために既に
使用されている(Caiら,Eur J Pharmacol 758:107-114
(2015))。
【0300】
このモデルを実施するために、種々の時点で頬粘膜(内唇)、指肉趾および遠位尾部に
おいてバネ式ランセットを使用して出血を誘発させて、テンプレート出血時間を決定した
。
【0301】
出血時間試験:麻酔したカニクイザルにおいて出血時間試験を以下のとおりに行った。
【0302】
・出血誘発のための適切な切開部位を特定するために、各試験領域(頬粘膜、指肉趾ま
たは遠位尾部)を調べた。
【0303】
・出血を誘発するために、バネ式ランセットを、選択された試験部位にしっかりと配置
し、作動させて、均一な直線切開を生じさせた。ランセットの仕様が切開寸法を決定した
。
【0304】
・切開部位からの血液を自由流動させ、出血が連続的に30秒間停止するまでモニター
した。これは出血時間(BT)を定めた。各BT部位に関してBTを記録した。BT測定
中、遠位尾部切開部位を温かい滅菌乳酸リンゲル液で灌流し、指肉趾部位を温かい滅菌乳
酸リンゲル液に浸漬した。乳酸リンゲル液の適用は、これらの部位の血流を観察する能力
を改善した。
【0305】
研究設計:各研究は、3つの試験領域における3回の30分間のテンプレート出血時間
試験(BT)から構成されるものであった(
図15の研究概要図を参照されたい)。1回
目のBTはベースライン出血を決定した。2回目のBTは、化合物非含有ビヒクル(20
mM 酢酸ナトリウム、9% スクロース、pH5.5)の3分間のIV注射(4.17
ml/kg)(処理1)の70分後に行った。3回目のBTは、化合物非含有ビヒクルま
たはαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ(1
0mg/kg)の3分間のIV注入(4.17ml/kg)(処理2)の70分後に行っ
た。前記のとおりに出血をモニターし、出血時間を記録した。出血が停止した時間を各部
位に関して記録した。定期的に血液サンプルを採取して、αFXI-18623p Ig
G4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの循環血漿レベル、aPTTおよびPT
を決定した。
【0306】
各試験動物を2つの研究セッションに付した。研究セッション1においては、ビヒクル
およびそれに続くビヒクルが、それぞれ、処理1および処理2を構成した。研究セッショ
ン2においては、ビヒクルおよびそれに続く10mg/kg IV αFXI-1862
3p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパが、それぞれ、処理1および
処理2を構成した。
【0307】
試験物質注入の終了と出血時間の評価の開始との間の70分間は血栓質量測定のための
AVシャントモデルにおけるタイミングを表していた(処理の30分後のシャント配置+
シャントを通る40分間の血流)。既に記載されているPK/PD霊長類モデリング研究
に基づけば、αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカ
ッパの10mg/kg IVの試験用量は、αFXI-18623p IgG4 HC(
S228P)(E1)/LCカッパの予想されるヒトCmaxの10倍を達成すると推定
された。
【0308】
凝固バイオマーカーである活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびプロ
トロンビン時間(PT)、ならびにαFXI-18623p IgG4 HC(S228
P)(E1)/LCカッパの循環血漿レベルを、
図15に示されている実験を通して収集
した血液サンプルから測定した。Sta-R Evolution凝固分析装置(Sta
go Diagnostic,Inc)を使用して動物から採取した解凍(-80℃)ク
エン酸塩添加血漿からaPTTおよびPTを測定した。該凝固分析装置は、電磁機械的血
餅検出システムを使用して血餅形成まで時間を測定する。aPTTアッセイのために、該
分析装置は50μLの血漿を50μLのエラグ酸(APTT-XL,Pacific H
emostasis;Fisher Diagnostics cat#10-0402
)とキュベット内で混合し、ついでこれを37℃で3分間インキュベートする。ついで5
0μLの0.025M 塩化カルシウム(Sta-CaCl
2 0.025M,Stag
o Diagnostic,Inc.,cat#00367)を該混合物に加えて、凝固
を開始させ、血餅形成までの時間を測定する。PTアッセイのために、50μLの血漿を
キュベット内で37℃で4分間インキュベートした。100μLの可溶化トロンボプラス
チン試薬(Triniclot PT Excel,TCoag,Inc.,cat#
T1106)を加えることにより、血餅形成を開始させた。
【0309】
電気化学発光に基づく一般的なhIgG4イムノアッセイを用いて、アカゲザル血漿中
のαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパを定量
した。捕捉試薬としてのBethyl(cat#A80-319B)からのビオチン化ヤ
ギ抗ヒトIgG(H+L)、および検出試薬用のSouthern Biotech(c
at#9190-01)からのスルホTAG標識マウス抗huIgG(Fc特異的)を使
用して、該アッセイを確立した。このアッセイは認定され、該アッセイの定量下限は10
0の最小必要希釈度で41ng/mLであると決定された。
【0310】
図16A~16Fは、頬粘膜(
図16A、
図16D)、指肉趾(
図16B、
図16E)
および遠位尾部(
図16C、
図16F)テンプレート出血時間に対する6頭のカニクイザ
ルにおけるビヒクルおよび10mg/kg IV αFXI-18623p IgG4
HC(S228P)(E1)/LCカッパの投与の効果を要約している。研究セッション
1における処理1および処理2としてのビヒクル-ビヒクル、ならびに研究セッション2
における処理1および2としてのビヒクル- αFXI-18623p IgG4 HC
(S228P)(E1)/LCカッパに関して、絶対出血時間(左パネル)および出血時
間における変化率(%)(右パネル)を比較することにより、出血時間に対する効果を評
価した。ビヒクル対αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/
LCカッパの絶対出血時間およびビヒクル-ビヒクル対ビヒクル- αFXI-1862
3p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの出血時間における変化率の
両方の比較は、この試験用量でのαFXI-18623p IgG4 HC(S228P
)(E1)/LCカッパの投与では、試験部位のいずれにおいても出血時間における統計
的に有意な変化を検出しなかった。
【0311】
カニクイザル出血時間試験において10mg/kg IV試験用量で得られたαFXI
-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの血漿濃度は29
0.7±17.2(平均±SEM)μg/mL(~1938.2nM)であった。血漿a
PTT値はベースラインにおいては31.0±0.5秒であり、一方、10mg/kg
IVのαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの
投与後には71.3±1.6秒(2.3倍の増加)であった。血漿PT値はベースライン
においては12.7±0.1秒であり、一方、10mg/kg IVのαFXI-186
23p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの投与後には12.8±0
.24秒(明らかな増加は認められなかった)であった。
【0312】
実施例10
アカゲザルにおける複数回の静脈内投与の後のαFXI-18623p IgG4 H
C(S228P)(E1)/LCカッパの薬物動態(PK)および薬力学(PD)評価
αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパのPK
PD特性をアカゲザルにおいてインビボで特徴づけした。その目的は、PK特性を評価す
ること、および合計2回の毎週の投与の後のPK/PD関係を確立することであった。
【0313】
研究設計:非化合物ビヒクル(10mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)、7% スク
ロース、0.02% PS-80)またはαFXI-18623p IgG4 HC(S
228P)(E1)/LCカッパを0.1、0.3、1、3および6mg/kgの5つの
用量レベルでアカゲザル(用量群当たり4頭の動物)に投与(IV)した。この研究の期
間は22日であり、薬物レベルおよび活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の
決定のために1.5mLの血液を採取した。
【0314】
表10に示されているとおり、該実験を通して収集した血液サンプルから凝固バイオマ
ーカー(aPTT)およびαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E
1)/LCカッパの循環血漿レベルを測定した。
【表11】
【0315】
Sta-R Evolution凝固分析装置(Stago Diagnostic,
Inc)を使用して動物から採取した解凍(-80℃)クエン酸塩添加血漿からaPTT
を測定した。該凝固分析装置は、電磁機械的血餅検出システムを使用して血餅形成まで時
間を測定する。aPTTアッセイのために、該分析装置は50μLの血漿を50μLのエ
ラグ酸(APTT-XL,Pacific Hemostasis;Fisher Di
agnostics cat#10-0402)とキュベット内で混合し、ついでこれを
37℃で3分間インキュベートする。ついで50μLの0.025M 塩化カルシウム(
Sta-CaCl2 0.025M,Stago Diagnostic,Inc.,c
at#00367)を該混合物に加えて、凝固を開始させ、血餅形成までの時間を測定す
る。
【0316】
電気化学発光に基づく一般的なhIgG4イムノアッセイを用いて、アカゲザル血漿中
のαFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパを定量
した。捕捉試薬としてのBethyl(cat#A80-319B)からのビオチン化ヤ
ギ抗huIgG(H+L)、および検出試薬用のSouthern Biotech(c
at#9190-01)からのスルホTAG標識マウス抗huIgG(Fc特異的)を使
用して、該アッセイを確立した。このアッセイは認定され、該アッセイの定量下限は10
0の最小必要希釈度で41ng/mLであると決定された。
【0317】
非コンパートメント(NCA)法(GabrielssonおよびWeiner,20
00)を用いて、αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/L
Cカッパに関する個々の動物血漿濃度-時間データを分析した。Phoenix 32
WinNonlin 6.3(バージョン6.3.0.395,Certara L.P
.St.Louis,MO,2012)を使用して、全てのPKパラメータを推定し、ま
たは計算した。非コンパートメント分析はModel 201(IV)を使用した。全て
の濃度データおよびPKパラメータを3桁の有効数字に丸めた。定量下限未満(<LLO
Q)の濃度値を有するサンプルをPK分析および平均データ計算から除外した。グラフ化
の目的には、LLOQ未満の値を、個々の動物の濃度-時間プロットに関して、最小報告
可能濃度の1/2に設定した。
【0318】
GraphPad Prismバージョン7.00(GraphPad Softwa
re Inc)を使用して、暴露とaPTTとの関係を特徴づけるために、S字状Ema
x応答(PK/PD)モデルを使用した。このモデルにおいては、Emax値は、ベース
ラインから得られたaPTTの最大増加に対応し、EC50値は半数効果濃度に相当する
。変動性は、該ソフトウェアにより得られたEC50値に関する95%信頼区間(CI)
として示された。
【0319】
結果:αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパ
に関する個々の濃度-時間プロファイルを
図17Aに示す。全てのPKパラメーターに関
して非線形性が認められた。平均クリアランス値は、試験した最低用量(0.1mg/k
g)に関する約8mL/kg・日から、試験した最高用量(6mg/kg)に関する約4
mL/kg・日へと減少した。aPTTの濃度-時間プロファイルを
図17Bに示す。a
PTTの用量依存的増加が認められた。S字状E
maxモデルによって最も良く示される
αFXI-18623p IgG4 HC(S228P)(E1)/LCカッパの血漿濃
度とaPTTとの関係はこの関係を適切に示した。αFXI-18623p IgG4
HC(S228P)(E1)/LCカッパに関する推定EC
50値は約3.6μg/mL
であった。
【表12】
【0320】
本発明は例示実施形態に関して本明細書に記載されているが、本発明はそれらに限定されないと理解されるべきである。当業者および本教示を利用する者は本発明の範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は本明細書における特許請求の範囲のみによって限定される。
本発明は一態様において、以下を提供する。
[項目1]
(i)αFXI-18623pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体の、6個の相補性決定領域(CDR)を少なくとも含む、あるいは
(ii)6個のCDRの1以上が1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有する、αFXI-18623pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体の、6個の相補性決定領域(CDR)を少なくとも含む抗体または抗原結合性フラグメントであって、ここで、
αFXI-18623ファミリーの抗体は、配列番号28または29に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変領域と、配列番号30に示されているアミノ酸配列を有するLC可変領域とを含み、
αFXI-18611pファミリーの抗体は、配列番号21または22に示されているアミノ酸配列を有するHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変領域とを含み、
αFXI-18611ファミリーの抗体は、配列番号23または24に示されているアミノ酸配列を有するHC可変領域と、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するLC可変領域とを含む、抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目2]
6個のCDRがFXI-18623pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体のHCのCDR1、CDR2およびCDR3と、FXI-18623pファミリー、αFXI-18611pファミリーまたはαFXI-18611ファミリーの抗FXI抗体のLCのCDR1、CDR2およびCDR3とを含む、項目1記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目3]
抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号28または29に示されているアミノ酸配列を有するHC可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号30に示されているアミノ酸配列を有するLC可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3;あるいは配列番号21、22、23または24に示されているアミノ酸配列を有するHC可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するLC可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3を含む、項目2記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目4]
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、項目1~3のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目5]
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、項目1~4のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目6]
抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号28に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(b)配列番号29に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号30に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(c)配列番号21に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(d)配列番号22に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(e)配列番号23に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(f)配列番号24に示されているアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変ドメインおよび配列番号25に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変ドメイン、
(g)HC可変領域フレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の変異体、あるいは
(h)LC可変領域フレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)または(g)の変異体
を含む、項目1または3記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目7]
抗体が更に、配列番号16、17、18、19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、項目6記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目8]
抗体が更に、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、項目6記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目9]
抗体または抗原結合性フラグメントが凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する、項目1、2、3、4、5、6、7または8記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目10]
抗体が、
(a)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号3または4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有するHC、ならびに
(b)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有するLC
を含む、項目1または3記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目11]
抗体が更に、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、項目10記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目12]
抗体が更に、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、項目10記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目13]
抗体が、
(a)配列番号8に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む重鎖を構成する可変ドメインと定常ドメインとを有するHC、ならびに
(b)配列番号11に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む可変ドメインと定常ドメインとを有するLC
を含む、項目1または3記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目14]
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含むHC定常ドメインを含む、項目13記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目15]
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むLC定常ドメインを含む、項目13記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目16]
抗体が、
配列番号33、35、37、39、45、47、49、51、57、59、61、63、69、71、73または75に示されているアミノ酸配列を有するHC、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体、ならびに
配列番号26に示されているアミノ酸配列を有するLC、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体
を含み、ここで、抗体または抗原結合性フラグメントが凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する、項目1または3記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目17]
抗体が、
配列番号41、43、53、55、65、67、77または79に示されているアミノ酸配列を有するHC、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体、ならびに
配列番号31に示されているアミノ酸配列を有するLC、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含むその変異体
を含み、ここで、抗体または抗原結合性フラグメントが凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する、項目1または3記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目18]
(a)(i)重鎖(HC)フレームワークおよび配列番号8に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;
(ii)HCフレームワークおよび配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号3に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;
(iii)HCフレームワークおよび配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3;
(iv)HC CDR1、HC-CDR2またはCDR3の少なくとも1つが1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)、(ii)または(iii)の変異体;あるいは
(v)HCフレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)、(ii)、(iii)または(iv)の変異体
を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する重鎖(HC);
(b)(i)軽鎖(LC)フレームワークおよび配列番号11に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3;
(ii)LCフレームワークおよび配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3;
(iii)LC CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の少なくとも1つが1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)または(ii)の変異体;あるいは
(iv)LCフレームワークが1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを含む、(i)、(ii)または(iii)の変異体
を含む可変ドメインと定常ドメインとを有する軽鎖(LC);あるいは
(c)(a)からのHCおよび(b)からのLC
を含む抗体であって、ここで、抗体が凝固因子XI(FXI)のアップル3ドメインに結合し、FXIの活性化および/または因子IXの因子XIa媒介性活性化を阻害する、抗体。
[項目19]
HC定常ドメインが、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む、項目18記載の抗体。
[項目20]
LC定常ドメインが、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む、項目18または19記載の抗体。
[項目21]
項目1~20のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかの軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子。
[項目22]
項目1~20のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメントと医薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物。
[項目23]
項目1~20のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、対象における血栓塞栓性障害または疾患の治療方法。
[項目24]
血栓塞栓性障害または疾患を治療するための医薬の製造のための、項目1~20のいずれか1項記載の抗体の使用。
[項目25]
血栓塞栓性障害または疾患の治療のための、項目1~20のいずれか1項記載の抗体。
[項目26]
凝固因子XI(FXI)上のエピトープに結合するヒト抗体または抗原結合性フラグメントであって、該エピトープが、水素重水素交換質量分析(HDX-MS)の使用により決定されたアミノ酸配列DIFPNTVF(配列番号82)およびアミノ酸配列PSTRIKKSKALSG(配列番号83)を含む、ヒト抗体または抗原結合性フラグメント。[項目27]
抗体が、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾誘導体、あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾変異体を含む、項目26記載のヒト抗体。
[項目28]
抗体が、228位(EU番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン残基による置換を含むIgG4定常ドメインを含む、項目26記載のヒト抗体。
[項目29]
配列番号33、35、37、39、45、47、49、51、57、59、61、63、69、71、73もしくは75に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号26に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体または配列番号41、43、53、55、65、67、77もしくは79に示されているアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号31に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗体を交差遮断し又は該抗体の結合と競合する抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目30]
抗体が、(i)ヒトIgG1定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾誘導体、あるいは(ii)ヒトIgG4定常ドメインまたはその変異体もしくは修飾変異体を含む、項目29記載のヒト抗体。
[項目31]
抗体が、228位(EU番号付け)または108位(本明細書に示されているもの)のセリン残基の、プロリン残基による置換を含むIgG4定常ドメインを含む、項目30記載のヒト抗体。
[項目32]
(i)配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号2に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号3もしくは4に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または配列番号8に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR1、配列番号9に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2および配列番号10に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびに
(ii)配列番号5に示されているアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号7に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または配列番号11に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR1、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2および配列番号13に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含む抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法であって、該重鎖をコードする核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主細胞を準備し、該抗体または抗原結合性フラグメントを産生させるのに十分な条件下、それを産生させるのに十分な時間にわたって該宿主細胞を培養することを含む、製造方法。
[項目33]
重鎖可変領域が配列番号21、22、23または24のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号25のアミノ酸配列を含む、項目32記載の製造方法。
[項目34]
抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、項目32記載の製造方法。
[項目35]
抗体がIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、項目32記載の製造方法。[項目36]
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む、項目32記載の製造方法。
[項目37]
軽鎖がヒトカッパ軽鎖またはヒトラムダ軽鎖を含む、項目32記載の製造方法。
[項目38]
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む、項目32記載の製造方法。
[項目39]
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である、項目32記載の製造方法。
[項目40]
宿主細胞が酵母または糸状真菌細胞である、項目32記載の製造方法。
[項目41]
抗体または抗原結合性フラグメントが、該重鎖をコードする核酸分子と該軽鎖をコードする核酸分子とを含む宿主から得られる、項目1~20のいずれか1項記載の組成物。[項目42]
抗体がIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、項目41記載の組成物。
[項目43]
抗体がIgG4アイソタイプの重鎖定常ドメインを含む、項目41記載の組成物。
[項目44]
抗体が、配列番号16、17、18または19に示されているアミノ酸配列を含む重鎖定常ドメインを含む、項目41記載の組成物。
[項目45]
軽鎖がヒトカッパ軽鎖またはヒトラムダ軽鎖を含む、項目41記載の組成物。
[項目46]
抗体が、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖定常ドメインを含む、項目41記載の組成物。
[項目47]
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胎児腎293細胞である、項目41記載の組成物。
[項目48]
宿主細胞が酵母または糸状真菌細胞である、項目41記載の組成物。
【配列表】