(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】熱風式焙煎機
(51)【国際特許分類】
A23N 12/10 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A23N12/10 Z
(21)【出願番号】P 2021080677
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020086326
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519449943
【氏名又は名称】青木 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に開口を有するすり鉢状に形成された窯本体を備えた焙煎窯と、
加熱気体を生成する加熱装置と、
前記加熱装置で生成された前記加熱気体を前記開口から前記窯本体内に向けて案内する案内管と、
前記開口上に配置されて前記案内管の前記加熱気体の噴出口側の端部を覆うカップと、
前記カップを上下動可能に支持し且つ前記焙煎窯の深さ方向に延び前記カップを回転可能に軸支する軸部材を有する支持部と、を備え、
前記開口の位置に下方向に延設された筒状部と、
前記筒状部の内周面と前記案内管の外周面との間に焙煎物排出部が形成されており、
前記カップは、前記案内管の前記噴出口側の端部を受け入れ可能に形成された開口部を有する下面部と、該下面部から立設された周壁部と、該周壁部の上端側に設けられた上面部を備え、且つ、前記周壁部に該カップの内部と外部を連通する複数の孔部を形成しており、
前記複数の孔部は、前記焙煎窯の平面視上、前記カップの回転軸を中心とした回転対称となる位置を避けた位置に形成されており、
前記カップの前記上面部は、前記上面部の外周縁から前記上面部の中央に向かって肉厚になるように形成されており、前記中央から前記外周縁に向かって下り傾斜する下り傾斜面を有しており、
前記周壁部の外壁面は、傾斜面を有し、
前記カップの前記下面部には、底栓が取り付けられ、
前記底栓は、上下方向に重なりあう互いに異なる複数
個の円環部材を有し、
前記互いに異なる複数
個の円環部材として、前記下面部の上側に位置する前記円環部材と、前記下面部の内周面に向かい合う前記円環部材と、前記下面部の下側に位置し板状の部材で形成された上下に重なる2つの前記円環部材の組み合わせと、を有し、
前記2つの前記円環部材の組み合わせは、
互いに別体の前記円環部材を上下に重ねた構造として定められ、前記焙煎物排出部を閉鎖することができるように配置されており、
前記別体の前記円環部材のそれぞれの外側端面が非凹凸状に形成されている、
熱風式焙煎機。
【請求項2】
前記複数の孔部として、第1の孔部と、該第1の孔部よりも開口面積の小さな第2の孔部を有する、請求項1に記載の熱風式焙煎機。
【請求項3】
前記第2の孔部の上下方向の開口径が、前記第1の孔部の上下方向の開口径よりも小さい、請求項2に記載の熱風式焙煎機。
【請求項4】
前記焙煎窯には、該窯本体の外周面をとりまくように窯加熱装置が設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱風式焙煎機。
【請求項5】
前記底栓は、前記カップの前記下面部に吊り下げられており、
前記2つの前記円環部材の組み合わせは、前記底栓の外周面側に露出している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の熱風式焙煎機。
【請求項6】
複数
個の前記円環部材の少なくとも1つは、他の前記円環部材とは異なる材質で形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱風式焙煎機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風式焙煎機に関し、特に、コーヒーの生豆を焙煎する熱風式焙煎機に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーの生豆を焙煎する熱風式焙煎機は、速やかに生豆を均一焙煎できることが望まれる。例えば、特許文献1には、焙煎窯の外周面にヒーターを直接設けて焙煎窯自体を加熱し、焙煎窯自体の熱と熱風の両方で速やかで均一な生豆の焙煎を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、生豆の量が多くても少なくても同様の焙煎状態とするという、生豆の量による焙煎状態の均質化の点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、生豆の量による焙煎状態の均質化を向上させつつ、速やかにコーヒーの生豆を均一な焙煎状態とする熱風式焙煎機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)底部に開口を有するすり鉢状に形成された窯本体を備えた焙煎窯と、
加熱気体を生成する加熱装置と、
前記加熱装置で生成された前記加熱気体を前記開口から前記窯本体内に向けて案内する案内管と、
前記開口上に配置されて前記案内管の前記加熱気体の噴出口側の端部を覆うカップと、
前記カップを上下動可能に支持し且つ前記焙煎窯の深さ方向に延び前記カップを回転可能に軸支する軸部材を有する支持部と、を備え、
前記開口の位置に下方向に延設された筒状部と、
前記筒状部の内周面と前記案内管の外周面との間に焙煎物排出部が形成されており、
前記カップは、前記案内管の噴出口側の端部を受け入れ可能に形成された開口部を有する下面部と、該下面部から立設された周壁部と、該周壁部の上端側に設けられた上面部を備え、且つ、前記周壁部に該カップの内部と外部を連通する複数の孔部を形成しており、
前記複数の孔部は、前記焙煎窯の平面視上、前記カップの回転軸を中心とした回転対称となる位置を避けた位置に形成されており、
前記カップの前記上面部は、前記上面部の外周縁から前記上面部の中央に向かって肉厚になるように形成されており、前記中央から前記外周縁に向かって下り傾斜する下り傾斜面を有しており、
前記周壁部の外壁面は、傾斜面を有し、
前記カップの前記下面部には、底栓が取り付けられ、
前記底栓は、上下方向に重なりあう互いに異なる複数個の円環部材を有し、
前記互いに異なる複数個の円環部材として、前記下面部の上側に位置する前記円環部材と、前記下面部の内周面に向かい合う前記円環部材と、前記下面部の下側に位置し板状の部材で形成された上下に重なる2つの前記円環部材の組み合わせと、を有し、
前記2つの前記円環部材の組み合わせは、互いに別体の前記円環部材を上下に重ねた構造として定められ、前記焙煎物排出部を閉鎖することができるように配置されており、
前記別体の前記円環部材のそれぞれの外側端面が非凹凸状に形成されている、
熱風式焙煎機、
(2)前記複数の孔部として、第1の孔部と、該第1の孔部よりも開口面積の小さな第2の孔部を有する、上記(1)に記載の熱風式焙煎機、
(3)前記第2の孔部の上下方向の開口径が、前記第1の孔部の上下方向の開口径よりも小さい、上記(2)に記載の熱風式焙煎機、
(4)前記焙煎窯には、該窯本体の外周面をとりまくように窯加熱装置が設けられている、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の熱風式焙煎機、
(5)前記底栓は、前記カップの前記下面部に吊り下げられており、
前記2つの前記円環部材の組み合わせは、前記底栓の外周面側に露出している、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の熱風式焙煎機、
(6) 複数個の前記円環部材の少なくとも1つは、他の前記円環部材とは異なる材質で形成されている、
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の熱風式焙煎機、を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生豆の量による焙煎状態の均質化を向上させつつ、速やかにコーヒーの生豆を均一な焙煎状態とする熱風式焙煎機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明にかかる熱風式焙煎機の一実施例の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる熱風式焙煎機の一実施例の概要を説明するための図であり、一部を断面にした図である。
【
図3】
図3は、
図2の領域Sの部分を拡大した状態を説明するための概略断面拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2の領域Sの部分について、カップが上方向に移動した状態を説明するための概略断面拡大図である。
【
図5】
図5Aは、カップの概略を説明するための平面図である。
図5Bは、カップを
図5Aの矢印F1方向から見た場合の側面図である。
図5Cは、カップを
図5Aの矢印F2方向から見た場合の側面図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる熱風式焙煎機について焙煎時における焙煎窯の状態一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、底栓の一実施例について、底栓をカップに取り付けた状態を説明するための平面図である。
【
図8】
図8Aは、カップの一実施例を示す平面図である。
図8Bは、
図8AのA-A線縦断面の状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、底栓の一実施例について、カップに底栓を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる一実施例等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
1.熱風式焙煎機
2.焙煎方法
【0010】
以下の説明は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容は、これらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
[1.熱風式焙煎機]
熱風式焙煎機(以下、単に焙煎機1と呼ぶ。)は、
図1、
図2、
図3、
図4等に示すように、粒状の材料を焙煎する焙煎窯2と、加熱気体を生成する加熱装置3と、加熱気体を焙煎窯2に案内する案内管4を備える。
図1、
図2に示す焙煎機1では、焙煎窯2、加熱装置3、案内管4が筐体5内に備えられている。
図1は、熱風式焙煎機の一実施例の概要を説明するための図である。
図2は、熱風式焙煎機の一実施例の概要を説明するための図であり、一部を断面にした図である。
図2では、焙煎窯2、案内管4、カップ18、底栓9、シューター32について断面で示す。
図3は、
図2の一点鎖線で囲まれた領域Sの部分を拡大した状態の概略を示す拡大図である。
図3では、説明の便宜上、窯加熱装置11、第1の回収管16、ホッパー13の記載を省略する。これは、
図4についても同様である。
【0012】
なお、以下では、粒状の材料がコーヒーの生豆(以下、単に豆と呼ぶ場合がある)である場合を例として説明する。また、コーヒーの生豆を焙煎したものを焙煎豆と呼ぶことがある。また、加熱装置3で生成する加熱気体が加熱空気であり、後述の冷却装置40の冷却管を通される気体が空気である場合を例として説明を続ける。
【0013】
(筐体)
筐体5の形状や構造は、特に限定されないが、焙煎窯2などの各種機器・部品を取り付けることができるような強度と焙煎温度に耐えられる耐熱性とを兼ね備えるような形状及び構造であることが好ましい。この観点から、筐体5の素材としては、ステンレス、鉄など金属を好適に採用することができ、さらに防錆の観点もあわせると、ステンレスを好ましく採用することができる。
図1等の例では、筐体5として、焙煎窯2の蓋12を取り付けるための開口部や、豆受け部35の引き出し37を出し入れするための開口などの各種の開口を形成したものが例示されている。
【0014】
(焙煎窯)
焙煎窯2は、窯本体6と、窯本体6の上面側の開口を覆う蓋12を備える。
【0015】
(窯本体)
窯本体6は、底部7に開口7aを有するすり鉢状に形成され、その底部7の開口7aには上下に開口した筒状部8が下方(-Z方向)に向かって延設されている。窯本体6の上面側は、開かれている。
図1の例では、筒状部8は、焙煎窯2の平面視上、円筒状に形成されている。焙煎窯2の平面視上、筒状部8の内周面形状及び内径は、後述する底栓9の外周形状及び外径に対応して定められる。窯本体6の筒状部8には、後述する案内管4が挿通され、筒状部8の延設端側(下端側)に後述するシューター32が接続されている。筒状部8に挿通された案内管4の先端(加熱空気の排出口側の端部4b)は、底部7の開口7aから後述のカップ18の受入空間48に向けられている。筒状部8の内周面8aと、案内管4の外周面4aとの間には空間が形成されており、この空間が、焙煎物排出部10をなす。なお、焙煎窯2の平面視上とは、窯本体6の上面中央から底部7中央に向かう方向を視線方向とした場合に認められる状態を示し、
図1等の例では-Z方向を視線方向とした場合を示すものとする。また、
図1等におけるZ方向を上下方向とし、-Z方向を下方向、+Z方向を上方向とする。
【0016】
窯本体6は、耐熱性と熱伝導性を有する材質のもので形成されていることが好ましい。具体的に窯本体6の材質としてステンレスや鉄等の金属等を挙げることができる。また、窯本体6には、窯本体6を直接加熱する窯加熱装置11が、窯本体6の外周面を取り巻くように窯本体6の外周面に直接設けられていることが好ましい。窯加熱装置11としては、ヒーターを挙げることができ、ヒーターとしては、マントルヒーターなどを例示することができる。窯加熱装置11が設けられていることで、窯本体6内に導入される加熱気体としての加熱空気及び窯本体6自体の熱の両方によって豆の焙煎を行うことができる。
【0017】
(蓋)
焙煎窯2には、蓋12が窯本体6に対して開閉自在に取り付けられている。蓋12を閉じた状態で、蓋12は、窯本体6の上面側を被覆し、窯本体6と蓋12とで空間部60を形成する。蓋12の上面側には、生豆を焙煎窯2の空間部60に投入させるホッパー13が取り付けられている。ホッパー13の底部には、材料排出口14が形成されている。ホッパー13は、材料排出口14で窯本体6内の空間部60に連通している。材料排出口14は、開閉部材(図示しない)で開閉され、生豆を窯本体6内に投入する際には、開閉部材が開放状態となる。また、蓋12は、後述するチャフ回収装置15の導入管46につながる回収管(第1の回収管16)を貫通させている。窯本体6に対する蓋12の取付方法は特に限定されず、例えば、ヒンジ部材(図示しない)を介して蓋12を窯本体6に取り付けることができる。
【0018】
(カップ)
焙煎機1には、
図3に示すように、窯本体6の底部7の開口7a上に配置されて案内管4の加熱空気の噴出口側の端部4bを覆うカップ18が備えられている。カップ18は、焙煎窯2の空間部60に配置される。カップ18の材質は、耐熱性と剛性の観点から、ステンレス等の金属であることが好ましい。
【0019】
カップ18は、
図5A、
図5B、
図5C(Fig.5A、Fig.5B、Fig.5C)に示すように、下面部21と、周壁部19と、上面部20を備える。カップ18の内部には、下面部21と周壁部19と上面部20で下側に開口した空間が形成されている。この空間は、案内管から送り出された加熱空気を受け入れる受入空間48となる。
図5Aは、カップ18の概要を示す平面図である。
図5Bは、
図5Aの矢印F1方向を視線方向としたカップ18の概要を示す側面図である。
図5Cは、
図5Aの矢印F2方向を視線方向としたカップ18の概要を示す側面図である。なお、
図5Aでは、説明の便宜上、上面部20の記載を省略している。
【0020】
下面部21には、
図3、
図4、
図5Aから
図5Cに示すように、開口部22が形成されており、開口部22は、案内管4の噴出口側の端部4bを受け入れ可能に形成される。
図3、
図5Aから
図5Cの例に示すように、下面部21は、略円環状に形成された環状部21aを備え、環状部21aの内側に開口部22が形成されている。下面部21には、開口部22の周端縁に沿って底栓9が嵌めつけられており、底栓9の内側の開口領域で、案内管4の噴出口側の端部4bを受入空間48に受け入れる受入口49が形成される。底栓9をカップ18に取り付ける方法は、特に限定されない。
図3、
図4の例では、底栓9の外周端面に凹部90が形成されており、その凹部90を下面部21の内周端縁(開口部22の周端縁)に嵌合させた状態が形成されることで下面部21に底栓9を取り付けた状態が形成される。凹部90と下面部21との嵌合は、下面部21の上下面の両面に凹部90が接触してもよいし、
図3、
図4に示すように下面部21の下面側で凹部90との間に隙間を生じてもよい。底栓9は凹部90で下面部21に接合されてもよいが、接合されていないことが好ましい。
【0021】
周壁部19は、下面部21から上方向(+Z方向)に立設されている。
図3、
図4、
図5Aから
図5Cの例では、周壁部19は、下面部21の外周端から上方向に立設された形状に形成されている。また、
図5Aの例では、周壁部19は、略円筒状に形成されている。周壁部19の肉厚は特に限定されるものではないが、周壁部19の上端部で上面部20と固定することを実施しやすくする観点からは、周壁部19の上端部の近傍位置で肉厚になるように形成されていることが好ましい。周壁部19は、下面部21と別体で形成されもよいし、
図5B、
図5Cの例のように下面部21と一体的に形成されてもよい。周壁部19の外壁面の所定の領域には、
図8Bに示すように、周壁部19の上端縁19aから下端縁19b側に向かって周壁部19の外周の口径の方が小さくなるように傾斜した傾斜面AR2が形成されていることが好ましい。
図8Bの例では、孔部23の上側の所定領域に傾斜面AR2が形成されており、周壁部19がテーパ形状に形成された部分を有する。周壁部19がこのような傾斜面AR2を有することで、傾斜面AR2の下側に形成された孔部23から焙煎窯2内に噴き出した加熱空気を、豆を回転移動させやすい気流の状態とさせやすくなる。
【0022】
上面部20は、
図3、
図4、
図5B、
図5C等に示すように、カップ18の平面視上、略円形状の外周形状を呈しており、周壁部19の上端側に形成されている。上面部20には、支持部25の軸部材24が取り付けられる。上面部20において、符号183は軸部材24を通すための貫通孔である。
図3等に示すように、上面部20の上面側で貫通孔183の形成部分の周囲に補強部184が設けられて、軸部材24と上面部20が一層しっかりと繋げられてよい。なお、
図5では、説明の便宜上、補強部184の記載は省略される。また、カップ18の平面視上とは、回転軸Lに沿って上面部20から下面部21に向かう方向を視線方向とした場合を示すものとする。
図5Bに示す貫通孔183の寸法は軸部材24に応じて適宜設定され、
図3や、
図8A、
図8Bに示す貫通孔183のように通孔181等よりも大きく口径を太くしてもよい。
【0023】
上面部20は、
図5B、
図5Cの例のように周壁部19と別体で形成されもよいし、周壁部19と一体的に形成されてもよい。周壁部19と別体で形成されている場合、上面部20を形成する部材と、周壁部19を形成する部材とを互いに位置合わせして、上面部20と周壁部19が互いに固定される。上面部20は、
図8A、
図8Bに示すように、上面部20の外周縁20aから上面部20の中央にむかって(
図8Aの例では、貫通孔183に向かって)肉厚になる厚み変化部を有するように形成されていることが好ましい。すなわち、上面部20の2箇所のうち外周縁20aに近い方の位置(外側寄りの位置)における上面部20の肉厚K1よりも外周縁20aから遠い位置(中央寄りの位置)における上面部20の肉厚K2の方が大きいことが好ましい。この場合、カップ18を高速回転させても軸部材24の回転ブレが生じにくい。また、上面部20は、その上面AR1が上面部20の中央(貫通孔183の位置)から外周縁20aに向かって下り傾斜する下り傾斜面を有することが好ましい。この場合、焙煎時に空間部60内の豆が舞ってカップ18の上面部20の上に落ちてもそのまま上面部20から転がり落ちやすくなり、豆の滞留を抑制することができる。
図8Aは、上面部20を省略せずにカップ18の平面図を示す図である。
図8Bは、
図8AのA-A線断面の状態を示す縦断面図である。
図8Bにおいて、符号185は、補強部184を固定するビスなどを通す孔部である。
【0024】
上面部20と周壁部19の固定方法は、特に限定されるものではないが、カップ18を高速回転させても上面部20と周壁部19が分離せず、カップ18の温度が加熱空気で高温となる場合にあっても上面部20と周壁部19との固定状態が適切に保持されるようにする観点からは、ビスなどの固定部材によって物理力で固定する方法が好ましい。
図5B、
図5Cの例では、上面部20にビス止め用の貫通孔181を設け、周壁部19に貫通孔181に向かい合う一に受け孔180を設け、上面部20上からビス182を通して周壁部19の受け孔180までビス182を螺号している。ビス182などの固定部材で固定する場合、上述したように周壁部19の上端部の近傍位置で肉厚になるように形成されていると、幅太なビスで上面部20と周壁部19とを強固に固定することが容易となる点で好ましい。
【0025】
カップ18は、
図3の例にも示すように、窯本体6の開口上(筒状部8の上側)に配置される。また、カップ18は、案内管4の噴出口側の端部4bを上方側から覆っている。このとき、カップ18に取り付けられる底栓9は、案内管4の外周面4aと筒状部8の内周面8aとの間に形成された空間上に配置される。
【0026】
カップ18が上下に移動した場合のいずれにおいても、カップ18は案内管4の噴出口側の端部4bの上方側に位置する。また、カップ18が下方へ移動した場合に、カップ18の下面部21に取り付けられた底栓9で筒状部8の焙煎物排出部10が閉鎖された状態が形成される。カップ18が上側に移動した場合、端部4bは、底栓9よりも上方に位置してもよいし、
図4に示すように底栓9よりも下方に位置してもよい。
【0027】
(孔部)
周壁部19には、カップ18の内部(受入空間48)と外部(空間部60)を連通する孔部23が形成されている。孔部23は、案内管4からカップ18内の受入空間48に送り込まれた加熱空気を焙煎窯2内に導入する際における加熱空気の噴出口となる。孔部23は、周壁部19に複数個設けられる。複数の孔部23は、カップ18の回転軸Lを中心とした回転対称となる位置を避けた位置(回転非対称位置と呼ぶ)に形成される。回転対称は、対称性の一群を示しており、nを2以上の整数とし、回転軸の周りを(360/n)°回転させると自らと重なる性質を示すものとする。ここにおいて、nは、孔部23の数に対応する。したがって、
図5Aに示すように、孔部23が2つの場合(すなわち、n=2の場合)には、焙煎窯2の平面視上、個々の孔部23を基準にして回転軸Lを中心に周壁部19に沿って180°回転させた位置を避けた位置、すなわち回転軸Lを中心にして向かい合う位置を避けた位置に、複数の孔部23が形成される。このような位置関係に形成された孔部23から加熱空気が焙煎窯2内に導入されることで、加熱空気の気流により焙煎窯2内で豆を回転移動させやすくなり、豆表面全面に加熱空気をあてやすくなる。
【0028】
加熱空気の気流を適切に焙煎窯2内に形成する観点から、個々の孔部23は、回転軸Lを中心に周壁部19に沿って約60°から約120°回転させた回転非対称位置(
図5Aにおいて、回転角αが約60°以上約120°以下となる位置)に他の孔部23が形成されることが好ましく、90°回転させた回転非対称位置(
図5Aにおいて、回転角αが90°となる位置)に他の孔部23が形成されることがより好ましい。
【0029】
なお、回転角αとは、回転軸Lの周りに回転させる角度のうち、180°以下となるほうの角度を示すものとする。例えば、所定位置から回転軸Lの周りに時計周りに90°回転させた位置は、同じ所定位置から反時計周りに270°回転させた位置に一致するが、この場合、回転角αは、180°以下となるほうの角度である角度90°とされる。
【0030】
(孔部の形成位置)
カップ18の周壁部19における孔部23の上下方向の位置は、特に限定されるものではないが、底栓9で筒状部8の焙煎物排出部10が閉鎖された状態になるまでカップ18が下方に移動した場合に、孔部23の下端が窯本体6の底部7の開口7a位置、または底部7の開口7aの位置よりも上方側(+Z方向側)の位置となるように、カップ18の周壁部19に対する孔部23の上下方向の形成位置が定められることが好ましい。
【0031】
(孔部の形状)
孔部23の形状は、矩形状、面取り矩形状、多角形上、円形状、楕円形状等、特に限定されるものではないが、焙煎窯2内に噴出される加熱空気の状態を制御しやすい形状で形成される。
図1から
図5の例では、孔部23は、ほぼ面取り矩形状に形成される。孔部23が矩形状に形成されていることで焙煎窯2の空間部60内に回転流を形成しやすくなる。
【0032】
(孔部の数)
孔部23の数は、特に限定されるものではないが、加熱空気の回転流で効率的な焙煎を実現する観点から、2個以上4個以下が好ましく、2個であることがより好ましい。
図5A、
図5B,
図5Cに示すカップ18の例では、複数の孔部23として、第1の孔部23aと、第2の孔部23bが設けられている。また、
図5Aの例では、第1の孔部23aと第2の孔部23bの位置関係は、第1の孔部23aの位置に対して回転角αが90度となる位置に第2の孔部23bが形成されている。
【0033】
(孔部の面積・開口径)
第2の孔部23bの開口面積は、第1の孔部23aの開口面積よりも小さいことが好ましい。複数の孔部23の間で加熱空気の噴出口となる面積の大きさが異なることで、孔部23ごとに強さ(勢い)などの状態を異にする加熱空気を焙煎窯2の空間部60内に導入することができ、焙煎窯2内で豆を内外方向に回転移動させやすくなり、投入された豆全体にまんべんなく加熱空気を当てやすくすることができる。
【0034】
また、第2の孔部23bの上下方向の開口径H2が、第1の孔部23aの上下方向の開口径H1よりも小さいことが好ましい。複数の孔部23が上下方向の開口径を互いに異にすることで、窯本体6の内周面に接触している豆とその豆よりも内周面から離れた位置にある豆とを入れ替えやすくなり、焙煎窯2内の豆の流動性を向上させることができる。
【0035】
また、第1の孔部23aと第2の孔部23bが上下方向の開口径を互いに異にする場合、焙煎窯2内の豆の流動性を向上させる観点からは、孔部23の上下方向の位置はそろっていることが好ましい。
【0036】
(底栓)
上述したように、カップ18の下面部21には、底栓9が取り付けられている。底栓9は、カップ18の動きとともに上下動及び回転する。
図3の例では、カップ18が下側に移動した場合に、底栓9は、筒状部8の内周面8aと案内管4の外周面4aとの間に形成された空間で構成される焙煎物排出部10を閉鎖する。カップ18が回転する場合には、底栓9は、カップ18の動きとともに筒状部8内の空間を上下動及び回転可能に配置されている。
【0037】
底栓9は、円環状に形成されている。底栓9の内周径は、案内管4を挿通できる程度の大きさであり、具体的に案内管4の外周径よりも大きい。
【0038】
図5B、
図5Cの例では、底栓9の外周径は、カップ18の外側に位置している部分(後述の円環部材17c、17d)について、焙煎物排出部10を塞ぎつつ筒状部8内を上下に移動できる程度の大きさであり、具体的に筒状部8の内周径よりもやや小さい程度の大きさとされていることが好適である。
【0039】
なお、底栓9の外周径のうち、カップ18の内側に位置している部分(後述の円環部材17a)の外周径については、カップ18の周壁部19の内径よりもやや小さい程度であることが好適である。さらに、底栓9の外周径のうち、カップ18の下面部21の環状部21aの内周端面に向かい合う部分(後述の円環部材17b)の外周径については、環状部21aの内径よりもやや小さい程度であることが好適である。
【0040】
底栓9は、単一の円環部材で構成されてもよいし、複数の円環部材を積層させたものであってもよい。底栓9が円環部材の積層体で形成される場合、積層体を形成する複数の円環部材は、材質の異なる2種類以上の組み合わせで構成されていることが好ましい。この場合、底栓9となる円環部材の積層体は、シリコンなどの樹脂からなる円環部材と金属製の円環部材を重ね合わせた積層体で構成されていることが好ましい。底栓9がこのような積層体で構成されていることで、滑り性と剛性に優れたものとなる。
【0041】
図3、
図4の例では、底栓9は、シリコンなどの樹脂からなる円環部材17b、17cと金属製の円環部材17a、17bを重ね合わせた積層体で構成されており、円環部材17a、17b、17c、17dの外周径の寸法差によって底栓9の外周面に凹部90を形成している。底栓9は、カップ18の下面部21の上面側の一部を覆う円環部材17aと、下面部21の環状部21aの内周端面に向かい合う円環部材17bと、カップ18の外側に位置して下面部21の下面側を覆う円環部材17c、17dとの積層体として構成されている。これらの円環部材17a、17b、17c、17dは、固定部材(図示しない)で互いに固定されている。固定部材による固定により、複数の円環部材17a、17b、17c、17dがまとめられて底栓9をなし、カップ18に底栓9を嵌めつけた状態が形成される。
【0042】
図3の例に示すように、底栓9においては、カップ18が下方側(-Z方向)に移動した場合に、カップ18の下面部21の下面側を覆う円環部材17c、17dが、焙煎窯2の平面視上、筒状部8の内周面8aと案内管4の外周面4aとの間の空間を覆う。こうして底栓9は、焙煎物排出部10を閉鎖する。なお、
図4に示すように、カップ18が上方側(+Z方向)に移動した場合には、円環部材17c、17dが、カップ18とともに上方側に移動し、筒状部8の内周面8aと案内管4の外周面4aとの間の空間よりも上側に位置する。この場合、底栓9が焙煎物排出部10を開放状態にすることとなる。したがって、カップ18の上下動にあわせて焙煎物排出部10の開閉が実現される。
【0043】
なお、ここに示す複数の円環部材の組み合わせ、数、大きさは、一例であり、底栓9を形成する円環部材の例を限定するものではない。
【0044】
(底栓の変形例)
底栓9は、
図3等に示すようなものに限定されず、例えば
図7、
図9に示すような複数の円環部材を組み合わせた複合材であってもよい。
図7は、
図9に示す底栓9の一実施例(変形例)について、底栓9をカップ18に取り付けた状態を模式的に説明するための平面図である。
図9は、底栓の一実施例において、底栓9をカップ18に取り付けた状態を説明するための断面図である。ただし、
図7においては、説明の便宜上、上面部20の記載を省略している。
図7においては、案内管4の端部4bを記載している。
図7、
図9に示す底栓9の例では、上下方向に重ねた円環部材170a、170b、170c、170d、170e、170f、170g及び170hを有している。円環部材170a、170b、170c、170d、170e、170f、170g及び170hは、固定部材172で互いに分離することを抑制されている。固定部材172としては、ビス等を例示することができる。
【0045】
(底栓による焙煎物排出部の閉鎖)
図7、
図9の例に示す底栓9では、円環部材170fが、筒状部8の内周面8a側を閉鎖し、焙煎物排出部10が閉鎖される。円環部材170eと170gは、円環部材170fを上下に挟んで円環部材170fの形状を安定化させる。円環部材170dは、カップ18の下面部21に向かい合っており、円環部材170eで形状安定化される。円環部材170a、170hは、そのほかの円環部材の分離を抑える抑え材としての部分を兼ねる。
【0046】
(カップに対する底栓の取り付け状態)
図7、
図9の例に示す底栓9はカップ18に対して非接着状態(非接合状態)で取り付けられる。この底栓9では、カップ18が上側に移動した状態で底栓9がカップ18に対して吊り下げられるように、カップ18に底栓9が取り付けられている。この場合、
図7、
図9の他、
図3、
図4の例にも示すように、底栓9と下面部21との間ではやや隙間が形成されて、カップ18と底栓9との接触面積が抑制されていることが、カップ18と底栓9との摩擦を軽減できて好ましい。例えば、
図7、
図9に示す底栓9の例では、円環部材170bがカップ18の下面部21の上面側に向い合せとなるように底栓9がカップ18に吊り下げられている。円環部材170dがカップ18の下面部21の下面側に間隔を開けて向い合せに配置される。円環部材170cは、下面部21の内周面に向かいあうとともに、円環部材170bと円環部材170dとの間でスペーサーとしての機能を発揮することができる。
【0047】
図7、
図9に示す底栓9は、カップ18に吊り下げられた状態でカップ18の上下移動に合わせて上下に移動する。底栓9が下側に移動した際、円環部材170fは、焙煎物排出部10の開閉を行う部分を形成する。カップ18が回転した場合に、
図7、
図9に示す底栓9はカップ18に接合されていないため、底栓9の回転が抑制される。このとき、円環部材170dと下面部21との間にはやや隙間が形成されているため、カップ18と底栓9との接触面積が抑制されており(滑りやすくなり)、カップ18の回転に追従した底栓9の回転が抑制される。そのため、焙煎時の熱で円環部材170fが膨張して円環部材170fが筒状部8の内周面8aに強く接触して底栓9の回転が停止しても、カップ18と底栓9との摩擦による底栓9の摩耗が抑制され、カップ18の回転を適切な状態で維持しやすくなり、カップ18の孔部23からの加熱空気の流れの状態を適切な状態で維持しやすくなる。
【0048】
図7、
図9に示す底栓9は、材質の異なる2種類以上の組み合わせで構成されている。例えば、円環部材170a、170e、170g及び170hは、硬質の部材(例えば、ステンレスやアルミニウム合金等の金属材料)で形成されていることが好ましい。円環部材170b、170c、170d、170fについては、金属よりも軟質であるが耐熱性に優れた部材(例えば、フッ素樹脂等)で形成されることが好ましい。
【0049】
(支持部)
焙煎機1には、
図1、
図2等に示すように、軸部材24を有する支持部25が設けられている。軸部材24は、カップ18を上下動可能に支持し且つカップ18を回転可能に軸支する。軸部材24は、
図1から
図4に示すように、蓋12の外側から蓋12を貫通して焙煎窯2の深さ方向に焙煎窯2の空間部60まで延びており、下端側でカップ18の上面部20の中央位置に接合されている。軸部材24とカップ18との接合方法は限定されず、ビス止めや溶接などの固定方法を使用されてよい。
図3、
図4、
図5B、
図5Cの例では、軸部材24は、カップ18の上面部20の中央位置で貫通孔183を貫通しており、軸部材24と上面部20とが互いに固定されている。軸部材24の回転軸は、カップ18の回転軸Lに一致しており、軸部材24の上下の動作に応じて、カップ18も上下動する。軸部材24の上端側には、次に述べる駆動系が接続されている。
【0050】
(駆動系)
支持部25には、軸部材24を動作させる駆動系が搭載されており、駆動系は、軸部材24を回転軸回りに回転させる第1の駆動部26と、軸部材24を上下動させる第2の駆動部27を備える。
【0051】
第1の駆動部26は、軸部材24を回転軸回りに回転させることができるように構成されていればよく、例えば、軸部材24を回転させるモーターやモーターとギアの組合せなどの回転機構を例示することができる。第1の駆動部26により軸部材24が回転駆動し、この回転駆動に伴い、カップ18は軸部材を回転軸とした回転をする。
【0052】
また、第2の駆動部27は、軸部材24を上下動させるように構成されていればよく、例えば、モーターで駆動するラック・アンド・ピニオン機構などを挙げることができる。第2の駆動部27により軸部材24が上下に駆動し、この上下動に伴ってカップ18が上下動する。
【0053】
(加熱装置)
焙煎機1には、加熱気体としての加熱空気を生成する加熱装置3が備えられている。加熱装置3は、加熱器29と熱風管28とブロワ31とを備える。ブロワ31は、取入部30に取り付けられたフィルタ30aを通して取り込まれた空気を熱風管28に送り出し、熱風管28に向かう気流を形成する。熱風管28は、一方端(受入口)をブロワ31に接続されており、熱風管28は、他方端(送出口)を案内管4に接続している。熱風管28には加熱器29が取り付けられており、加熱器29は、熱風管28内を流れる空気を加熱する。加熱器29としては、電熱ヒーターなどが例示される。
【0054】
図1の例では、ブロワ31から送り出された空気の流れ(気流A0)が熱風管28を通る。このとき加熱器29によって空気が加熱される。熱風管28を通過した空気は加熱された状態で、熱風管28の他方端から案内管4へと送りだされる加熱空気の流れ(加熱気流A1)となる。
【0055】
(取入部)
取入部30は、ブロワ31、42を接続する接続口と外気を取り入れる空気取入口を有し、空気取入口から取り入れられた空気がブロワ31、42から送り出されるように構成されている。空気取入口にはフィルタ30aが設けられており、外部の空気に含まれる微細な塵やほこりはフィルタ30aで取り除かれる。
【0056】
上記したブロワ31が作動すると、取入部30から加熱装置3に向かう気流が生じる。これに伴い、取入部30では、外部の空気がフィルタ30aを通して取り込まれ、取り込まれた空気がブロワ31に移動するようになる。これと同様に、ブロワ42が作動すると、取入部30では取り込まれた空気がブロワ42に移動するようになる。
【0057】
(案内管)
焙煎機1には、加熱装置3で生成された加熱空気で構成される加熱気流A1を焙煎窯2へ導く案内管4が設けられている。案内管4は、一方端を加熱装置3の熱風管28の送出口に接続されている。案内管4の他方端は、加熱気流A1の噴出口側の端部4bとなる。また、案内管4の端部4bは、カップ18が下方に移動した状態でカップ18の受入空間48内の位置となるように位置決めされている。これにより、案内管4は、その端部4bを焙煎窯2の開口7aからカップ18の受入空間48の方向に向けられている。そして端部4bは、焙煎窯2内に備えられたカップ18で上方側から覆われている。
【0058】
このように案内管4が設けられていることで、
図1、
図2に示すように、加熱装置3で生成された加熱気流A1が、案内管4とカップ18を経由してカップ18の孔部23から焙煎窯2の空間部60へと導かれる。なお、
図6の例に示すように、案内管4の端部4bには、焙煎窯2から豆が誤って流入しないように網目状構造が形成されていることが好ましい。この例では、案内管4の端部4bの網目状構造の隙間から加熱空気が噴き出される。
【0059】
図1、
図2の例では、案内管4は、後述のシューター32の所定位置にてシューター32の外側からシューター32の内部に向かって貫通しており、さらにシューター32内をシューター32の上端側まで延びている。
【0060】
(シューター)
焙煎窯2の筒状部8の下端側には、焙煎豆を転動流下させながら豆受け部35に送るシューター32が連結されている。シューター32は、その上端から下端に向かって斜め下方に延びる筒型形状に形成されており、上端と下端を開口した状態で形成されている。シューター32の上端は、焙煎窯2の筒状部8の下端側に連結されている。シューター32の下端は、豆受け部35の上面側の中継部に連結されている。これにより、焙煎窯2の焙煎物排出部10とシューター32と豆受け部35が連通した状態となる。
【0061】
(豆受け部)
豆受け部35は、上面を開口させた引き出し37を設けた収容箱38を備えている。
図1、
図2の例では、収容箱38の上面側には、2箇所の開口部が形成されており、それぞれの開口部から筒状の中継部として第1中継部39aと第2中継部39bが延設されている。第1中継部39aには、シューター32の下端が接続されており、第2中継部39bには、冷却装置40の冷風管41の一方端(噴出口側の端部)が接続されている。
【0062】
収容箱38の底面側は開口しており、その開口の下方に濾斗状のチャフ受け部36が設けられている。チャフ受け部36は、その下方端を開口させており、チャフ受け部36の下方端の開口に回収管(第2の回収管50)が連結されている。したがって収容箱38は、その底面側に接続されたチャフ受け部36と第2の回収管50を経由してチャフ回収装置15に接続されている。
【0063】
引き出し37は、上方に開口した収容空間37aを形成しており、引き出し37の底面側に多数の小孔(図示しない)を形成している。小孔の大きさは、焙煎豆の大きさよりも十分に小さい大きさであり且つチャフを通過させることができる程度の大きさを選択されていれば特に限定されるものではない。
【0064】
豆受け部35では、焙煎後に焙煎窯2からシューター32内を流下した焙煎豆が第1中継部39aから引き出し37に向かって落下し、そして引き出し37の収容空間37aに収容される。焙煎豆とともに引き出し37内の収容空間37aに落下してくるチャフは、引き出し37の小孔を通って収容箱38の開口からチャフ受け部36に落下し、第2の回収管50を通ってチャフ回収装置15へと送り出される。引き出し37の収容空間37a内に収容された焙煎豆は、
図1等に示すように収容箱38から外部に向けて引き出し37を矢印P方向に移動させて収容空間37aを外部に露出させることで、外部に取り出される。
【0065】
(冷却装置)
冷却装置40は、ブロワ42と、ブロワ42に接続された冷風管41とを備える。ブロワ42は、空気を冷風管41に送りだす機能を有する。冷風管41は、加熱空気よりも低い温度の空気が流れる管である。
図1、
図2の例では、冷却装置40において、ブロワ42が送り出す空気および冷風管41内を流れる空気として、いずれも同じ取入部30で取り込まれた空気が採用される。
【0066】
冷却装置40では、取入部30で外部から取り込まれた空気がブロワ42により冷風管41内へと送りだされる気流A2を形成する。冷風管41は、噴出口側(ブロワ42との接続端側とは逆側の端部)を豆受け部35の収容箱38の第2中継部39bに接続している。このため冷風管41に送り込まれた空気で形成される気流A2は、冷風管41内を通過して豆受け部35へと導かれる。冷風管41を通って豆受け部35に到達した気流A2は、豆受け部35からさらに第2の回収管50に向かう空気で構成される排気流B2となる。豆受け部35に流下してきた焙煎豆にチャフが混在している場合には、排気流B2には、豆受け部35から落下したチャフが含まれる。したがって、排気流B2は、第2の回収管50内においては豆受け部35で焙煎豆から分離されたチャフをチャフ回収装置15に送り出す排気流となっている。
【0067】
なお、上述したように
図1、
図2等の例では、冷却装置40のブロワ42に送られる空気は、加熱装置3のブロワ31に送られる空気と同じ取入部30の空気であるが、このことは、取入部30を複数設けて、それぞれの取入部30から冷却装置40や加熱装置3に空気が送られるように構成されることを規制するものではない。
【0068】
(チャフ回収装置)
焙煎時に焙煎窯2の空間部60内で生じた豆の皮や豆カスや微細なゴミなどのチャフは、チャフ回収装置15で回収される。チャフ回収装置15は、サイクロン部43と回収部44とを備える。
【0069】
(サイクロン部)
サイクロン部43は、分離器45、導入管46、排気管47を備える。分離器45は、
図1、
図2に示すように、下方向に向かって先細りしている円錐筒状の周壁部45aと上端側に天板部45bを備えて空間部45cを形成しており、下端側を開口させている。
【0070】
分離器45は、周壁部45aの上部及び天板部45bの中央に通孔51を形成している。分離器45の周壁部45aの形状をなす円錐筒形状の軸心M1は、天板部45bの通孔51のおおよそ中心を通過している。
【0071】
分離器45においては、周壁部45aの通孔51に導入管46の一方端を接続させている。導入管46の軸長方向M2が軸心M1と非平行且つ非交差となるように、導入管46が周壁部45aに接続されている。導入管46の他方端側は、第2の回収管50につながっている。また、導入管46には、所定の位置で第1の回収管16が接続されており、導入管46を介して第1の回収管16が分離器45に連通する。したがって、第1の回収管16内の排気流B1は、第2の回収管50内の排気流B2に対して導入管46の位置で合流し排気流Cを形成し、排気流Cが分離器45内に送り出される。ところで上述したように第2の回収管50内においては豆受け部35のチャフをチャフ回収装置15の分離器45に送られうる排気流B2が形成されている。第1の回収管16内の排気流B1は、第2の回収管50内の排気流B2に引き込まれるように、第1の回収管16から導入管46を通って分離器45へと流れる気流をスムーズに形成するようになる。
【0072】
分離器45においては、天板部45bに排気管47を接続させている。排気管47の一方の先端は、天板部45bの通孔51を通過して空間部45c内に延びている。排気管47の他方端は焙煎機1の筐体5の外部に向かって延びている。
【0073】
分離器45の周壁部45aの外周面には円盤状の容器支持板52が設けられており、分離器45は、容器支持板52の中央の貫通孔から貫通孔の下側に分離器45の下端側が突き出ているように配置されている。
【0074】
(回収部)
回収部44は、上面側を開口した有底筒状の回収容器53を有する。回収容器53の上面側の開口を覆うように容器支持板52が配置されており、回収容器53の内部空間53aと分離器45の空間部45cが連通している。
【0075】
焙煎窯2で焙煎中に生じたチャフは、チャフを含む空気(加熱空気)構成される排気流B1の状態で第1の回収管16から導入管46で排気流B2に合流して分離器45に導入され、豆受け部35で分離されたチャフは、チャフを含む排気流B2で構成される気流の状態で第2の回収管50から導入管46を介して分離器45に導入される。第1の回収管16及び/または第2の回収管50から導入管46を介してチャフを含む排気流B1、B2で形成される排気流Cが分離器45内に導入されると、分離器45内で回転流(渦流)となる。この回転流によりチャフが回収部44に落下し、チャフを分離された空気で構成される気流は気圧差によって排気管47から外部に排出される。
【0076】
[2.焙煎方法]
焙煎機1によるコーヒーの生豆の焙煎は、例えば次のように実施することができる。焙煎機1のホッパーに生豆を投入する。ホッパー13から焙煎窯2内に生豆が落下する。焙煎窯2内においては、第2の駆動部27からの動力を受けてカップ18が下方向に移動し、カップ18の動きに伴って底栓9が下方向に移動して筒状部8の焙煎物排出部10を閉鎖する。カップ18の受入空間48内に案内管4の噴出口が位置しており、案内管4から加熱気流A1が噴出し、さらに加熱気流A1は、受入空間48から、孔部23を通り、焙煎窯2の空間部60内へと流れ出ていく。第1の駆動部26からの動力を受けてカップ18が回転する。このとき焙煎窯2内では孔部23から噴出する加熱気流A1で外方向に向かう回転流が形成される。焙煎窯2に投入された生豆は、回転流の作用を受けて焙煎窯2の空間部60内を転動する。また、
図1、
図2の例では、焙煎機1は、窯加熱装置11により焙煎窯2自体も加熱されており、生豆は、焙煎窯2の加熱によっても焙煎が促進される。なお、焙煎中に生じたチャフは軽いため加熱気流A1による回転流の作用で巻き上がり、チャフを巻き上げた空気が第1の回収管16内に入って排気流B1をなし、さらに排気流B1は第1の回収管16内をチャフ回収装置15へと進む。
【0077】
焙煎が終了し、生豆が焙煎豆になると、第2の駆動部27からの動力を受けてカップ18が上方向に移動し、底栓9とカップ18が筒状部8の焙煎物排出部10を開放する。このとき、焙煎豆は、窯本体6のすり鉢状の斜面から焙煎物排出部10へと流下し、さらにシューター32内を流下して、豆受け部35に送られる。豆受け部35の引き出し37に収納された焙煎豆は、冷風管41から豆受け部35内へと進む気流A2を形成する空気によって冷却される。このとき、焙煎豆とともに混入することがあるチャフは、冷風管41から吹き込まれる気流A2によって下方向に押し出される。このとき、下方向に押し出された空気はチャフの混ざった排気流B2を形成する。さらに、排気流B2は、チャフ受け部36から第2の回収管50へ、そして第2の回収管50からチャフ回収装置15へと進む。チャフ回収装置15では、上述したようにサイクロン部43でチャフと空気に分離され、チャフは回収部44で回収され、空気は排気管47から外部に放出される。
【0078】
(作用及び効果)
焙煎機1によれば、焙煎窯2内に配置されたカップ18に複数の孔部23が形成されている。
図6に示すように、これら複数の孔部23の形成位置は、回転非対称位置となり、好適には回転角αが90°となるような回転非対称位置となっている。焙煎機1では、案内管4の端部4bから噴出した加熱気流A1が、カップ18の受入空間48に入る。そして
図6に示すようにR方向に回転するカップ18の孔部23から受入空間48の加熱空気が噴き出して孔部23の付近で気流(AS、AL)が形成されるため、焙煎窯2の空間部60に加熱空気の回転流が生じる。焙煎窯2内のそれぞれの位置にある豆BEは、孔部23が通過するタイミングで強い加熱空気の気流(AS、AL)を受ける。そして焙煎機1においては、上記したように複数の孔部23が回転非対称位置に配置されているため、焙煎窯2内のそれぞれの位置にある豆BEに対して複数のタイミングで強い気流AS、ALが当てられるようになる。このため、焙煎窯2中の豆BEは、例えば短い時間間隔(T1)で複数の強い気流ASと気流ALを受けて焙煎窯2内を焙煎窯2の内外側方向に大きく移動し及び気流(AS、AL)とカップ18の回転に伴う回転流により焙煎窯2の円周方向に移動し、そのあと次の気流ASを受けるまでの時間間隔としてT1よりも長い時間間隔(T2)を利用して焙煎窯2内を流下することができるようになる。そのため、焙煎窯2中の豆BEは、焙煎窯2内の全体にわたって大きく移動しやすくなる。なお、
図6中の、気流(AS、AL)の方向を示す矢印の方向は、一例であり、カップ18の回転速度や、加熱気流A1の速度、孔部23などの諸条件に応じて変更されうる。
【0079】
このように、焙煎機1によれば、焙煎窯2内の豆BEが、焙煎窯の内外側方向に転がりながら、焙煎窯2の円周方向にも転がりやすくなり、豆BEの量がある程度多量になっても豆BE全体が攪拌されながら焙煎されるようになる。このため、多数の豆BE全体に均一に加熱空気をあてることが容易となり、また個々の豆BEの全表面に加熱空気をあてることができ、焙煎しようとする生豆の量が多くても少なくても同様の焙煎状態を実現することが容易となる。
【0080】
また、複数の孔部23の大きさが異なっていることで、焙煎時に、相対的に多くの加熱空気を噴出させる孔部23と相対的に少なく加熱空気を噴出させる孔部23とを設けることができて、豆BEを焙煎窯2で効率的に転がらせることができるようになる。
図6に示す例では、第1の孔部23aは第2の孔部23bよりも大きく、第1の孔部23aから噴出する加熱空気で形成される気流ALにより、第2の孔部23bから気流ASよりも多くの加熱気体を噴出させることができる。この場合、カップ18がR方向に回転すると、相対的に少ない加熱空気で形成される気流ASで豆BEを窯本体6の外方向で斜面上方向にむけて小さく転動させ、さらに比較的短い時間間隔で相対的に多くの加熱空気で形成される気流ALで豆BEをさらに窯本体6の外方向で斜面上方向にむけて大きく転動させることができ、豆BEを焙煎窯2の円周方向に一層効率的に転がらせることができるようになる。
【0081】
焙煎機1において、焙煎窯2自体も加熱されている場合、豆BEが焙煎窯2内を転がりながら窯本体6の内面(豆の転動面)との接触面においても焙煎されるため、個々の豆の全面に対して、一層効率的に熱を与えやすくすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 焙煎機
2 焙煎窯
3 加熱装置
4 案内管
4a 案内管の外周面
4b 案内管の噴出口側の端部
5 筐体
6 窯本体
7 底部
7a 開口
8 筒状部
8a 筒状部の内周面
9 底栓
10 焙煎物排出部
11 窯加熱装置
12 蓋
15 チャフ回収装置
16 第1の回収管
17a、17b、17c、17d 円環部材
18 カップ
19 周壁部
20 上面部
21 下面部
22 開口部
23 孔部
23a 第1の孔部
23b 第2の孔部
24 軸部材
25 支持部
26 第1の駆動部
27 第2の駆動部
28 熱風管
29 加熱器
30 取入部
30a フィルタ
31 ブロワ
60 空間部
90 凹部