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特許7277512繊維材からなるロッドを形成するためのダイ、ダイ集成体、装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】繊維材からなるロッドを形成するためのダイ、ダイ集成体、装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/62 20060101AFI20230511BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20230511BHJP
   A24D 3/02 20060101ALI20230511BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B29C70/62
B29C70/06
A24D3/02
B29L23:00
【請求項の数】 33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021104032
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2019552044の分割
【原出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2021154747
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】1704692.1
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1704700.2
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ファロン、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルホルト、アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ル ルー、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、ジョン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-104577(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011830(WO,A1)
【文献】米国特許第03095343(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/62
B29C 70/06
A24D 3/02
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の束をロッド状に成形するためのダイ集成体であって、ダイ集成体はダイを含み、ダイは、流入口から流出口までその中を通る繊維の束を案内する経路を画定し、ダイは、流入口セクションと成形セクションを含み、流入口セクションは、上流円錐状セクションと、中間円筒状セクションと、下流円錐状セクションとを含み、下流円錐状セクションは、繊維束が成形セクションへとダイの流入口セクションの該下流円錐状セクションを通過する際に束の繊維を所望の構造に形成するような形になっており、
ダイは、繊維の束を硬化させるための処理流体が経路内に導入される際に通過する少なくとも1つの導管を含み、前記導管は成形セクション内へダイを通る繊維束の移動方向に対向しない方向に処理流体を放出するように配置されており、
且つ、ダイは、ダイの中の繊維を処理するために流体を経路内に導入することができるさらなる別の導管を含み、前記別の導管は、下流円錐状セクションの上流の経路の流入口セクションの中間円筒状セクション内に流体を放出するために構成され、配置されている、ダイ集成体。
【請求項2】
前記別の導管は前記上流円錐状セクションと前記中間円筒状セクションとの間の接合部の近傍で前記経路内に流体を放出するように構成され、配置されていることを特徴とする請求項1記載のダイ集成体。
【請求項3】
前記上流円錐状セクションと前記中間円筒状セクションとの接合部が、前記流入口セクションに収縮部を形成していることを特徴とする請求項2記載のダイ集成体。
【請求項4】
前記別の導管は、ダイの中間円筒状セクションの軸に対して直角の共通の半径方向の面でダイの中間円筒状セクションの中央軸の方へと延びていることを特徴とする請求項3記載のダイ集成体。
【請求項5】
前記共通の半径方向の面は、前記上流円錐状セクションと前記中間円筒状セクションとの接合部のすぐ下流に位置していることを特徴とする請求項4記載のダイ集成体。
【請求項6】
前記別の導管の前記共通の半径方向の面は、前記接合部からの距離が、前記流入口セクションの前記中間円筒状セクションの長さの20%以下の距離でダイの流入口から離れて位置していることを特徴とする請求項5記載のダイ集成体。
【請求項7】
前記別の導管の前記共通の半径方向の面は、前記上流円錐状セクションと前記中間円筒状セクションとの間の前記接合部の面から前記別の導管の直径の2.5乃至3.5倍離れて間隔が軸方向に空けられていることを特徴とする請求項5または6記載のダイ集成体。
【請求項8】
前記下流円錐状セクションは、前記中間円筒状セクションを成形セクションに接続し、前記経路に収縮部を形成することを特徴とする請求項3乃至7いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項9】
前記上流円錐状セクションは、ダイの中央軸に対して比較的小さい角度でテーパーしていることを特徴とする請求項3乃至8いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項10】
前記上流円錐状セクションは、ダイの中央軸に対して9度乃至27度の角度でテーパーしていることを特徴とする請求項9記載のダイ集成体。
【請求項11】
前記下流円錐状セクションは、前記上流円錐状セクションよりもダイの中央軸に対してより小さい角度でテーパーしていることを特徴とする請求項9または10記載のダイ集成体。
【請求項12】
前記下流円錐状セクションは、ダイの中央軸に対して3度乃至15度の角度でテーパーしていることを特徴とする請求項11記載のダイ集成体。
【請求項13】
前記別の導管は、前記導管よりも小さい直径であることを特徴とする請求項1乃至12いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項14】
前記導管は、ダイを通る繊維の束の移動方向に対して90度以下の角度で前記経路内に流体を案内するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至13いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項15】
前記経路は、経路の流出口を含み、これは経路の成形セクションと連通している流出口セクションを含むことを特徴とする請求項3乃至14いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項16】
前記流出口セクションは、収縮部によって画定された円周輪郭より大きい円周輪郭を画定することを特徴とする請求項15記載のダイ集成体。
【請求項17】
前記ダイは、熱が経路の隣接するセクションへ選択された割合で伝えられるように経路へダイを介して熱を伝えるように構成されていることを特徴とする請求項3乃至16いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項18】
主に収縮部を含む経路のセクションを介して経路に熱を伝えるように構成されていることを特徴とする請求項17記載のダイ集成体。
【請求項19】
主に収縮部と流入口セクションを含む経路のセクションを介して熱を伝えるように構成されていることを特徴とする請求項17記載のダイ集成体。
【請求項20】
主に収縮部と流出口を含む経路のセクションを介して熱を伝えるように構成されていることを特徴とする請求項17記載のダイ集成体。
【請求項21】
ダイのセクションの相対的な長さは、所望の割合でこれらセクションへ熱を伝えるように選択されることを特徴とする請求項17乃至20いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項22】
請求項1乃至21いずれか1項記載のダイを組み込んだダイ集成体。
【請求項23】
ダイを加熱するための1つ以上の構造部品を含むことを特徴とする請求項22記載のダイ集成体。
【請求項24】
1つ以上の構造部品を含み、これを用いて処理流体をダイに供給することを特徴とする請求項22または23記載のダイ集成体。
【請求項25】
処理流体が導入されるチェンバーを画定するハウジングを含み、ダイの導管の少なくとも1つがチェンバーとダイの経路を連通させ、これにより処理流体がチェンバーから経路内に導入されることを特徴とする請求項24記載のダイ集成体。
【請求項26】
繊維の束を管に形成するために繊維の束の経路に配置されるように構成されたマンドレルをさらに含むことを特徴とする請求項22乃至25いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項27】
前記マンドレルは、ダイに隣接するマンドレル集成体に取り付けられ、そこからダイの経路内に突出するように構成され、マンドレル集成体は、繊維の束をマンドレル上におよびダイの経路内に案内するように構成されていることを特徴とする請求項26記載のダイ集成体。
【請求項28】
ダイの収縮部は、マンドレルと経路の壁の間に形成されていることを特徴とする請求項26または27記載のダイ集成体。
【請求項29】
前記マンドレルは、繊維束がマンドレル上を通過する際に繊維束に処理流体を送出するための導管を画定していることを特徴とする請求項26乃至28いずれか1項記載のダイ集成体。
【請求項30】
前記マンドレルの導管は、マンドレル上の繊維材の束に処理流体をマンドレル上の束の移動方向に対向しない方向に送出するように配置されていることを特徴とする請求項29記載のダイ集成体。
【請求項31】
前記マンドレルの導管は、繊維束内に流体を束の移動方向に対して鋭角で放出するように配置されていることを特徴とする請求項30記載のダイまたはダイ集成体。
【請求項32】
繊維の束をロッド状に形成する方法であって、この方法は、繊維を長尺の束状に収集することと、繊維の束のための所望の円周輪郭を画定する収縮部を通過するように、流入口から流出口までダイの経路を通過する繊維の束を案内することにより、束を前進させることとを含み、ダイは、流入口セクションと成形セクションを含み、流入口セクションは、上流円錐状セクションと、中間円筒状セクションと、下流円錐状セクションとを含み、下流円錐状セクションは、繊維束が成形セクションへとダイの流入口セクションの該下流円錐状セクションを通過する際に束の繊維を所望の構造に形成するような形になっており、
前記方法は、ダイの少なくとも1つの導管を通して、ダイを通る繊維束の移動方向に対向しない方向に、成形セクション内へ処理流体を導入することと、
下流円錐状セクションの上流の経路の流入口セクションの中間円筒状セクション内へ流体を導入することと、
を含む方法。
【請求項33】
繊維の束をマンドレルの周囲で管状構造に閉じることと、繊維をマンドレルから管状ロッドとして分離することとをさらに含むことを特徴とする請求項32記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許明細書は、繊維材からなるロッド、特に紙巻きタバコに使用するためのフィルターロッドを形成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維材からなるロッドは、繊維を長尺の束に収集し、収集された繊維をダイの中を通過させて繊維を所望の形および大きさのロッドに圧縮または成形し、次に繊維の束を所望の形状に固定するために繊維を処理流体に晒して硬化させることによって形成することができる。例えば、繊維が熱を加えることによって軟化させることが可能な熱可塑性材で構成されている場合、そのロッドは、例えばダイの中の繊維を繊維同士の接触点で溶解させて安定構造に形成するために充分な温度のスチームと接触させることによって硬化させることができる。
【0003】
この技術は、中実の断面のロッドまたは管状ロッドを製造するために使用できる。管状ロッドを形成するためにダイおよび周囲で繊維を管状に形成することができるマンドレルを含むダイ集成体を使用してもよい。例えば、ダイは、その中を通る中央経路を有してもよく、マンドレルをその中央経路内に位置させて、ダイとマンドレルの間に繊維の束を通過させる環状の空間を画定する。
【0004】
ロッドまたは管の製造用出発原料は、繊維からなるトウなどの比較的低密度の繊維束である。高速で高密度のロッドまたは管を製造するために、製品を形成するために高供給量および圧縮力がダイ集成体に必要とされ、その結果として製造工程がダイ集成体内が塞がれることによる不具合が生じやすくなる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書は、繊維の束をロッド状に形成する方法を開示し、この方法は大まかに、繊維を長尺の束状に収集することと、繊維の束のための所望の円周輪郭を画定する収縮部を通過するように繊維を前進させることと、繊維を硬化させる処理流体を繊維が収縮部に入った際におよび/または繊維の束がダイを通る際の進行方向に対向しない方向に束内に導入することとを含む。
【0006】
収縮部への入り口でまたはその近くで処理流体を導入することで特に管状のロッドの製造の場合に繊維の圧縮および成形を容易にすることができる。
【0007】
また繊維の成形は、収縮部を通る束の移動方向に対向しない方向に処理流体を導入することによって容易になる。
【0008】
また本明細書は、ダイおよび繊維の束をロッド状に成形するためのダイの使用を開示し、ダイは、流入口から流出口へとダイを通る経路を画定する本体と、束がダイを通過する際に所望の構造に繊維の束を成形するような形の入り口を有し、経路内に配置された収縮部と、繊維の束を硬化させる処理流体が経路内に導入される際に通過する1つ以上の導管とを含み、その内の少なくとも1つの導管は、収縮部への入り口の間近におよび/またはダイを通る繊維の束の移動方向に対向しない方向に流体を放出するように配置されている。
【0009】
また本明細書は、繊維の束をロッド状に成形するための装置を開示し、この装置は、連続する繊維の供給を受け、繊維が装置内を進む際に繊維を束に収集するように構成された収集装置と、繊維の束を受け、束をロッド状に成形するために配置された本明細書に開示するダイとを含む。
【0010】
本明細書に開示するダイは、ダイおよび他の部品を含むダイ集成体に組み入れてもよい。例えば、ダイ集成体は、追加の構造部品を含んでもよく、これを用いてダイに処理流体を供給してもよい。これとは別にまたは加えてダイ集成体は、ダイを加熱するための構造部品を含んでもよい。
【0011】
1つの実施態様ではダイ集成体は、処理流体が導入されるチェンバーを画定するハウジングと、チェンバーに取り付けられた本明細書に開示するダイとを含み、導管の少なくとも1つがチェンバーと経路を連通させ、これにより流体が収縮部への入り口の間近でチェンバーから経路内に導入される。
【0012】
処理流体は、高温流体、例えばスチームまたは水蒸気または加熱された気体または蒸気であってもよい。ダイは、ダイの本体がチェンバーからダイを通る通路へ熱を伝えるように集成体に取り付けてもよい。例えば、チェンバーは、チェンバー内に高温流体を導入することによってダイが加熱されるようにダイの周囲にジャケットを形成するように構成されてもよい。ダイは、金属または他の伝熱材料で構成されてもよく、熱をダイの本体を通して経路へ伝えるために取り付けてもよい。
【0013】
1つの実施態様ではダイを通る経路は、経路への流入口を含む流入口セクションと、収縮部を含む成形セクションとを含み、収縮部への入り口は、成形セクションと流入口セクションとの接合部にある。
【0014】
成形セクションは、一般に収縮部から下流に延び、繊維束を硬化させながら所望の形、大きさまたは構造に繊維束を維持する形になっている。成形セクションは、繊維を所望の構造に半径方向に圧縮し、繊維の束がダイ内を進む際に繊維を圧縮された状態に保持するように構成されてもよい。成形セクションは、例えば流入口より小さい断面積の領域を画定してもよい。
【0015】
一部の実施態様ではダイを通る通路は、流出口セクションをさらに含んでもよく、これは経路からの流出口を含み、収縮部を含む経路のセクションと連通している。流出口セクションは、一般に成形セクションから下流に延び、硬化した繊維束を成形セクションと流出口の間で案内または支持する形になっている。流出口セクションは、成形セクションの収縮部によって画定された輪郭に等しいまたはそれより大きい円周輪郭を画定してもよい。流出口セクションが成形セクションより大きな内部円周輪郭を有する場合、このような実施態様で形成されたロッドは、ダイの流出口セクションの壁とあまり接触せず、従って成形セクションで処理流体と接触した後、より速く冷える。
【0016】
1つの実施態様では流入口セクションは、流入口から収縮部への入り口へと延びた経路の一部を画定し、成形セクションは、入り口から流出口の方に延びた経路の一部を画定し、収縮部を組み入れ、任意の流出口セクションは、成形セクションから流出口へと延びている経路の一部を画定している。
【0017】
ダイは、ダイを通る熱を選択された割合で経路のセクション、特に流入口セクション、成形セクション、流出口セクションおよびこれらの組み合わせに伝えるように構成してもよい。例えば、1つの実施態様ではダイは、主に成形セクションを通る経路または収縮部を含む経路のセクションに熱を伝えるように構成してもよい。別の実施態様ではダイは、収縮部および流入口を含む経路のセクションを主に通る経路または成形セクションおよび流入口セクションの両方を通る経路に熱を伝えるように構成してもよい。別の実施態様ではダイは、成形セクションおよび流出口セクションを主に通る経路または収縮部および流出口を含む経路のセクションを介して熱を伝えるように構成してもよい。
【0018】
経路の種々のセクションへ熱を所望の割合で伝えることは、流入口セクション、成形セクションおよび流出口セクションの相対的な長さを選択することによってロッドまたは管の製造に使用される特定の繊維に適した熱の移動の所望の相対比率を供することで実行してもよい。1つの実施態様では流入口セクションは、成形セクションより軸方向に長くてもよい。例えば、成形セクションの長さと流入口セクションの長さの比は、1:1から1:5以上の範囲、例えば1:1~1:2、1:1~1:2.5、1:1~1:3、1:1~1:3.5、1:1~1:4または1:1~1:1.5の範囲内であってもよい。
【0019】
他の実施態様では流出口セクションは、成形セクションと同じまたはそれより短くてもよい。例えば、流出口セクションの長さに対する成形セクションの長さの比は、1:1から1:0.1の範囲、例えば1:1~1:0.1、1:1~1:0.2、1:1~1:0.4、1:1~1:0.6、1:1~1:0.8または1:1~1:0.9の範囲内であってもよい。一部の実施態様では流出口セクションは、成形セクションより長くてもよい。例えば、流出口セクションに対する成形セクションの長さの比は、1:1~1:5以上、例えば1:1~1:2、1:1~1:2.5、1:1~1:3、1:1~1:3.5または1:1~1:1.4または1:1~1:1.5の範囲内であってもよい。
【0020】
ダイの個々のセクションへ伝える熱の割合は、種々の温度の種々のセクションに外部熱を加えるまたは除去する、例えば種々の割合で種々のセクションを外部から加熱するまたは冷却する、または種々のセクションに異なる材料を使用する、またはセクションを別々に絶縁することによって選択的に変えてもよい。
【0021】
流入口セクションまたは少なくともその一部は、繊維を収集し、束を成形セクション内に案内するために成形セクションの入り口で収縮部の方にテーパーしてもよい。テーパーしたセクションの円錐角(即ち、流入口セクションのテーパーした内面が位置する円錐の頂角)は、ダイを通る繊維の軸方向の移動に対する抵抗に影響を与える。円錐角が小さい面は抵抗が小さいが、長く延び、ダイ集成体または装置内の利用可能なスペース内に納めることが難しくなる。テーパーしたセクションには、例えば10°、20°、25°、30°、35°40°、50°、70°、80°、90°、120°、140°または160°、最大で180°のいずれかからいずれかまでの範囲の円錐角を設けてもよい。同じ特徴をテーパーしたセクションの半円錐角、即ち経路の中央軸と同じ軸方向の面の流入口の上のラインとの間の角度についても説明することができる。半円錐角度は、対応する円錐角の値の半分、即ち5°、10°、15°、20°、25°、35°、40°、45°などで最大で90°のいずれかの値からいずれかの値の範囲の内にある値になる。
【0022】
ダイの導管内の少なくとも1つ、通常は2つ以上の導管が収縮部への入り口の間近に流体を放出するように配置されている。繊維束が収縮を受ける経路の領域へ処理流体を送出することで、例えば繊維の可塑化、潤滑、改良された熱伝導または収縮部を通る材料の流れに対する動的な補助の結果としてダイを通る繊維の流れを良くすることができる。
【0023】
導管からの流出口は、収縮部の入り口、例えばダイを通過する際に繊維束がその所望の構造に収縮される領域と一致する経路の軸方向の長さに沿ったポイント、例えば成形セクションへの入り口に配置してもよい。これとは別に導管流出口は、収縮部への入り口の近く、例えばその僅かに上流または僅かに下流に配置されてもよい。成形セクションへの入り口に対する導管流出口の最適位置は、ダイの大きさ、導管の数、導管とダイの成形セクションの相対的な大きさなどの因子によって変わる。流出口は、繊維が入り口を通過する際に繊維にスチームまたは他の硬化流体を送出するために入り口に充分近くなければならない。
【0024】
入り口の間近に流出口を配置することは、繊維束内に流体、例えばスチームを束への圧縮力が最大になるポイントで送出することになる。この圧縮力は、入り口を通るダイ内の繊維の通過を妨げ、繊維束を後退させるまたはダイへの入り口のすぐ上流でダイが繊維束で塞がれてしまう場合がある。この領域でダイ内に処理流体を案内することによって、ダイ内を繊維が通過しやすくなり、ダイの封鎖の発生率を小さくする。
【0025】
入り口までの流出口の近さは、ダイの経路と交差する流出口の中央と成形セクションへの入り口との間の距離を成形セクションの長さの割合として表すことによって数量化してもよい。
【0026】
目安として、流出口の中央が成形セクションへの入り口と一致する場合、近さは、0と表される。流出口の中央が入り口の下流にある場合、近さは、通常形成セクションの長さの0~20%、例えば成形セクションの長さの0~20%、0~18%、0~15%、0~12%、0~10%、0~8%または0~3%になる。
【0027】
また入り口までの流出口の近さは、流出口の中央と成形セクションへの入り口の間の経路に沿った軸方向の距離を導管の幅の倍数として表すことによって数値化してもよい。例えば、流出口の中央が成形セクションへの入り口と一致する場合、近さは、0となる。流出口の中央が入り口から上流または下流方向に離れている場合、流出口の中央と収縮部への入り口の間の距離は、流出口での導管の幅または横断面の0.5倍以下、1倍以下、1.5倍以下、2倍以下、2.5倍以下、3倍以下、3.5倍以下または5倍以下、6倍以下、7倍以下、8倍以下、9倍以下、10倍以下、12倍以下、15倍以下、18倍以下、20倍以下であってもよい。
【0028】
また収縮部を通る束の移動方向に対向しない方向に処理流体が導入されれば、繊維をロッドまたは管状に形成しやすくなる。例えば、導管の流出口は、ダイを通る通路内に流体を経路の軸に対して大まかに半径方向にまたは直角に放出するように配置されてもよく、または導管は、経路内に流体を経路の軸に対して鋭角で、例えばダイを通る繊維の束の移動方向に対して90度を大きく超えない角度で、場合により移動方向に対して10、20、30、40、50、60、70または80度で放出するように配置されてもよい。これらの構造において導管の流出口は、流体を経路の流出口の方へほぼ下流方向に導く。もし90度を僅かに超える角度(例えば移動方向に対して95~100°以下)で案内されると、流体の流れは、まだダイを通る繊維の束の移動を著しく妨害せず、まだ流体の流れの運動エネルギーは、繊維の束の圧縮および成形そしてダイ内の繊維の移動を補助する。90°を大幅に超える、例えば100~180°の方向では、束によって繊維に及ぼされる力のかなりの成分が収縮部を通る繊維の移動に反し、繊維束の圧縮および成形を妨げる。
【0029】
収縮部の近傍でのまたは収縮部でのまたはそのそばでの導管の正確な最適構造は、そのポイントでのダイ集成体自体の構造およびダイ集成体を通る通路およびあらゆるマンドレルの構造に依存する。
【0030】
さらに別の導管を設けて、そこを介して成形セクションへの入り口の上流または下流の経路別の位置で繊維を処理するために流体が経路内に導入されるようにしてもよい。特に1つ以上の別の導管を設けて、収縮部に入る前に繊維の予備処理を行うために例えば繊維の可塑性を上げるために収縮部の上流の流入口セクション内に流体を放出するようにしてもよい。1つの実施態様では流入口セクションは、上流セクションおよびそれより断面積の小さい下流セクションを含み、別の導管は、上流および下流セクションの接合部の近傍で経路内に流体を放出するように配置される。
【0031】
管の製造用にダイまたはダイ集成体は、繊維の経路に位置するマンドレルをさらに含み、繊維の束がマンドレル上を進む際にマンドレルの周囲で繊維を管状構造に形成するようにしてもよい。マンドレルは、束がマンドレル上を進む際にそれが管状構造に形成されるようにダイの経路に配置してもよい。収縮部は、マンドレルと経路の壁の間の環状の空間に形成され、これは経路と比較して小さい断面積を有する。
【0032】
マンドレルは、均一な半径方向の断面を有してもよく、経路の長さの一部に沿って経路を収縮するために経路の一部を通って延びるように経路内に同心に取り付けられる。別の実施態様ではマンドレルに1つのセグメントを設け、これは隣接するセグメントより大きな断面を有し、この断面の大きなセグメントは、その隣接するセグメントより経路を大きく収縮するようにしてもよい。
【0033】
1つの実施態様ではマンドレルは、ダイに隣接するマンドレル集成体に取り付けられ、そこからダイの経路内に突出し、マンドレル集成体は、繊維の束をマンドレル上にそしてダイ集成体の経路内に案内するように構成されている。ロッドを形成するための装置に組み込まれる場合、マンドレル集成体は、ダイ集成体の上流で繊維束の経路に配置してもよく、マンドレルはそこから下流にダイ集成体を通る経路内に突出してもよい。
【0034】
装置がマンドレルを含む場合、導管の1つ以上を束がマンドレルを通過する際に繊維束に処理流体を送出するためにマンドレル内に設けてもよい。例えば、マンドレルに処理流体を導入するための流入口とマンドレルの表面と連通する流出口を有する経路を設けてもよい。
【0035】
従って、本明細書の開示は、具体的にはマンドレルを含む、繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置を含み、このマンドレルは、繊維の束がマンドレル上を進む際に繊維の束を通る経路を形成するように構成され、このマンドレルには処理流体を導入するための流入口とマンドレルの表面と連通する流出口を有する経路が設けられている。
【0036】
また本明細書は、繊維材からなる管状ロッドを形成する方法を開示し、この方法は、繊維を長尺の束に収集することと、束の繊維をマンドレルの周囲で閉じて管状構造にすることと、マンドレルから繊維を分離して管状ロッドとすることとを含み、処理流体がマンドレルを介して束内に導入される。
【0037】
処理流体がマンドレル上の繊維の移動方向に対向しない方向に導入されれば、マンドレルの周囲に繊維をロッドまたは管状にさらに形成しやすくなる。例えば、マンドレルの経路は、マンドレル上を繊維が移動する方向に対して大まかに半径方向にまたは直角にまたはその方向に対して鋭角に、例えば繊維束の移動方向に対して90度を大きく超えない角度で、場合により移動方向に対して10、20、30、40、50、60、70または80度で流体を放出するように配置されてもよい。これらの構造において流体は、移動方向の下流で繊維束内に案内される。90°を僅かに超える角度(例えば、移動方向に対して95°以下)で案内されたとしても、流体の流れはマンドレル上の繊維の束の移動に著しく対向せず、まだ流体の流れの運動エネルギーは、それでもマンドレルの周囲またはマンドレル上での繊維の束の圧縮および成形を補助する。90°を大幅に超える、例えば100~180°の方向では、流体によって繊維に及ぼされる力のかなりの成分がマンドレル上の繊維の移動に著しく反し、繊維束の圧縮および成形に対して有益でなくなる。
【0038】
管を形成するためマンドレル上の繊維は、繊維の経路にあり、繊維がマンドレルおよびダイ集成体の方へ前進する際に繊維の束の長さに沿って割れ目を形成するように構成された分割器を設けることによって流れやすくなる。長尺の束の収集された繊維は、分けられて束の長さに沿って割れ目を形成し、マンドレルは割れ目内に導入され、束の繊維は管状構造のマンドレルの周囲で閉じられ、束はマンドレル上で支持されながらダイ内を進められ、繊維は硬化させられ、繊維の束はマンドレルから管状ロッドとして取り外される。
【0039】
マンドレルの導入前に繊維束に割れ目を形成することで、管が形成しやすくなり、マンドレルと繊維の束とのずれによる不具合のリスクを軽減することができる。割れ目は、束を別々の部分、例えば2つの個別の束に分割してもよく、またはこれとは別に割れ目は、束の一部、例えば束の厚みの20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を延びた凹部の形状であってもよい。
【0040】
分割器は、マンドレルの上流で装置を通る繊維の経路に取り付けられた壁、ピン、ブレード、すきまたは他の形状のものであってもよい。分割器は、束になった繊維に例えば繊維の束に湾曲またはV字状の面または縁部を呈する割れ目を形成しやすい形状にその上流端部で形成されてもよい。
【0041】
1つの実施態様ではダイおよびダイ集成体は、繊維の束をロッド状に成形するための装置に使用され、この装置は、連続して供給される繊維を受け、繊維が装置内を進む際に繊維を束状に収集するように構成された収集ステーションを含む。本発明の装置は、成形錐体を含んでもよく、これは、繊維を収容するための流入口と繊維のウェブが束として引き抜かれる流出口の間でテーパーした構造の長手方向に延びた経路を画定する。この実施態様では分割器は、繊維の束に長手方向に延びた割れ目を形成するために流出口を横断して突出するように経路内に配置してもよい。
【0042】
ここに開示する方法および装置は、繊維材の原料、例えば繊維トウのベールからまたは連続的な製造工程または装置、例えばメルトブロー、溶融紡糸、電解紡糸法によってまたは当業者に知られている繊維を作製する他の工程によってまたは装置から直接的に供給される繊維から繊維を加工するために使用してもよい。
【0043】
繊維トウは、例えばセルロースアセテートなどの捲縮繊維から形成される。繊維の捲縮によってその繊維から得られる繊維束の弾力性(即ち、繊維が破断せずに延伸できる度合い)を高めることになる。次にこれは、その繊維から形成された管またはロッドの弾力性
に影響を与える。トウのベールにおいて、繊維は高度に捲縮される。使用前、トウを「開花」させてもよく、または捲縮を小さくする処理をし、繊維が互いに解放されるようにしてもよい。しかしながら、捲縮は繊維全体からは取り除かれない。繊維をある程度捲縮させることでトウ材料に弾力性を与え、繊維束をロッドまたは管などの所望の形状に成形しやすくなる。
【0044】
ここに開示する方法および装置は、メルトブローによる繊維の製造が例示される。通常のメルトブロー処理では繊維形成ポリマーが1つ以上のオリフィスから高温気体(例えば空気または場合によっては不活性ガス)の収束した流れ内に押し出される。この気体流は
、オリフィスから出たポリマーを溶融したポリマーの薄い流れになるように吹きつけ、次にポリマーは固まり、直径の小さいフィラメント繊維を形成する。繊維は、気体の流れに同伴され、例えば気体と繊維の流れを収集面に案内することによって集められてもよい。トウ繊維とは対照的にメルトブローされた繊維は、基本的には線状で、捲縮されていない。従って、メルトブローされた繊維の束は、比較的低い弾力性を有し、個々の繊維は、よりちぎれやすくなる。メルトブローされた繊維の束の弾力性は、繊維をウェブ、マットまたは束に堆積することによって製せられるもつれた束のウェブ構造から主に発生する。
【0045】
ウェブに、例えば空気または不活性ガス中でスチームまたは水蒸気などの加熱された処理流体によって熱を加えることで、ロッドまたは管などの所望の直線状の構造に形成するために繊維を滑らかにし、繊維を解きほぐしやすくし、より規則正しく配列された繊維のウェブを形成しやすくなる。
【0046】
束になった繊維がダイを通過する際、熱を加えることによって繊維束を延伸させる。繊維がダイの成形セクションに長く留まるほど、繊維束は、より延伸する。繊維束がダイの中で延伸される度合いは、最終製品の最終的な密度、形、大きさおよび構造に影響を与える。
【0047】
可塑剤を使用して、繊維束を繊維同士の接触点で接着させることによって成形され形状に硬化させやすくしてもよい。可塑剤は、繊維束に例えば噴霧することによって塗布してもよい。この技術は、捲縮させた繊維トウに一般に使用されている。メルトブローされた繊維の場合可塑剤は、一般に繊維が形成されるポリマー材料に組み込まれ、ポリマーを軟化させるまたは溶融させるのに充分な熱を繊維に加えることによって繊維から放出される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明のダイ、ダイ集成体、装置および方法の実施態様をここで添付図面を参照し、あくまで例示として詳しく説明する。
図1】繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置の実施態様の略式側面図であり、一部を縦断面にて示し、途中切断し、幅を短く示している。
図2図1の装置の略式平面図である。
図3図1および2の装置に使用される成形錐体の実施態様の分解図である。
図3A図3の成形錐体の1つの部品を拡大して示した斜視図である。
図4A】一端から見た図3の成形錐体の上部の立面図である。
図4B図4Aに示した部分を下から見た平面図である。
図4C図4Aに示した部分を反対の端部から見た立面図である。
図5A図1および2の装置に使用されるマンドレル集成体とダイ集成体の実施態様の上方および一端から見た拡大斜視図である。
図5B図5Aの集成体の長手方向縦断面図である。、
図5C】集成体が互いに離されている図5Aおよび5Bに示した装置の側面図である。
図5D】マンドレル集成体の別の実施態様を支持する図1の装置の図5Bに類似する長手方向縦断面図である。
図5E】装置に取り付けられた図5Dのマンドレル集成体を上流から見た端部立面図である。
図6A】マンドレル集成体から分離された図5Aのダイ集成体の上方および一端から見た分解斜視図である。、
図6B図6Aのダイ集成体の矢印6B-6Bの方向における縦断面である。
図6C図1の装置に使用するためのダイ集成体の別の実施態様の図6Bと同様な断面図である。
図6D図1の装置に使用するためのダイ集成体の別の実施態様の図6Bと同様な断面図であり、図6Bおよび6Fより拡大して示している。
図6E図1の装置に使用するためのダイ集成体の別の実施態様の図6Bと同様な断面図であり、図6Bおよび6Fより拡大して示している。
図6F図1の装置に使用するためのダイ集成体の別の実施態様の図6Bと同様な断面図である。
図7A図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7A線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形を示す。
図7B図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7B線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の断面図であり、繊維材の束および図4A~4Cより拡大して成形錐体を示している。
図7C図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7C線に沿ってその矢印で示す上流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7D~7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7D図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7D線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7E~7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7E図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7E線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7F、7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7F図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7F線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7E、7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7G図1~6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7G線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7E、7Fとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1および2を参照して例示する装置は、モジュラー構造であり、連続的に作動可能な繊維供給モジュール1と、繊維が連続したウェブの形体の束状に収集される繊維収集モジュール2と、繊維の束が中空管の形状のロッド5に連続的に形成される成形モジュール3とを含む。この例において製造される繊維の管は、紙巻きタバコのフィルターの製造に好適に使用される。
【0050】
繊維供給モジュール
繊維供給モジュール1は、メルトブローヘッド10を含み、その構造および作動は当業者に知られており、ここでは詳しく説明しない。他の実施態様では繊維供給モジュールは、例えば融解紡糸または電解紡糸ユニット、またはフィルタートウ材のベールから繊維の膨張したウェブを供給する供給システムを含んでもよい。
【0051】
例示するメルトブロー装置では溶融したポリマー材がポリマー吸入マニホルド12を介してメルトブローヘッド10に供給され、噴射列13を介してヘッドから出てくる。熱い加圧された気体、通常空気が、ポリマー吸入マニホルド12の両側にある空気吸入マニホルド14、14を介してメルトブローヘッド10内に導入され、2つの収束した高速気体流の状態でヘッドから出てくる。熱い気体の流れは、噴射列13から出たポリマーに吹き付けられ、溶融したポリマーの薄い流れを形成し、これは2、3センチメートルの噴流内で固まり、多様な連続した小さい径の繊維15を形成する。これによりもつれた繊維の複雑なパターンが高速気体流中に形成される。
【0052】
繊維収集モジュール2
繊維収集モジュール2は、メルトブローヘッド10の垂直方向下方に配置され、ヘッドから出た空気流に同伴した繊維15を受ける。メルトブローヘッドと繊維収集モジュールとの間の垂直距離は、分かりやすくするために図1では誇張されている。
【0053】
収集モジュール2は、剛性フレーム20を含み、これはフレーム20に溶接またはボルト留めされ、これに固定された金属プレートから形成された中空のケーシング22を支持する。ケーシング22は、図1の右側の上流端から図1の左側の下流端へと長手方向に水平に延びた主軸を有する平面においてほぼ矩形である。
【0054】
ケーシング22に取り付けられたコンベアー24は、繊維15をメルトブローヘッド10から進路25(その枠は図1および図2に部分的に破線で示されている)の途中までそして繊維収集モジュール2を介してロッド成形モジュール3へと移動させる移送システムを供する。コンベアー24は、ケーシング22の上流端に固定されたベアリングに取り付けられ、ケーシングの横手方向に延びた水平軸を中心に回転するための比較的径の大きいテンションローラー26を含む。ケーシング22の下流端で、テンションローラー26の軸に平行な水平軸を中心に回転するためのそれぞれテンションローラーより直径に小さい遊動ローラー27および駆動ローラー28がケーシング22に固定されたベアリングに取り付けられており、遊動ローラー27は、駆動ローラー28の上で上流に取り付けられている。電気駆動モーター(図示せず)がケーシング22の下流端に取り付けられていて、駆動ローラー28をその軸を中心に図1で見て反時計方向に回転させる。
【0055】
これら3つのローラー26、27、28は、エンドレス構造のコンベアーベルト29を支持し、テンションローラー26からケーシング22の上面に沿って遊動ローラー27へとケーシングの長手方向に延び、次に駆動ローラー28の方に下方へとそしてその周囲を延び、次に上部走路に平行な下方走路でテンションローラー26へと戻る上部走路を有する。遊動ローラーとテンションローラーは、それらのベアリングで調節され、ケーシング22の上面と正確に上部走路を位置合わせし、コンベアーベルトに充分なテンションを与えるようにしてもよい。
【0056】
コンベアーベルト29は、それを気体が通過できるように構成され、気体と同伴する繊維材が絡み合った繊維のウェブとしてその表面に堆積し、保持される。例えば、コンベアーベルト29またはその少なくとも一部、特にベルトの長さ方向に延びる中央領域にミシン目、スロットまたは開口部を設けてもよく、または多孔性にして気体がそれを通過できるようにしつつ、その表面上で繊維15を支持するようにしてもよい。このためにコンベアーベルトは、例えば加圧下で気体の所望の流れが得られるように充分な密度に織られた布製材であってもよい。
【0057】
ケーシング22の上面にはコンベアーベルト29の上部走路の下に位置する開口部またはスロットが設けられており、これにより気体がコンベアーベルトを通ってケーシング22の内部に移動できるようにし、そこから空気が真空ポンプ(図示せず)によって抜かれ、装置から放出される。スロットまたは開口部を直に囲むケーシングの上面の部分は、コンベアーベルト29の上部走路を支持する。
【0058】
繊維成形モジュール
成形モジュール3は、繊維15の束を中空の管5に変形させるためのロッド形成装置の多くの部品を支持するための剛性フレーム40と、そのための中央パネル42とを含む。ロッドを形成する装置は、成形錐体50と、マンドレル集成体60と、ダイ集成体80とを含む。成形錐体50は、収集モジュール2のコンベアー24と位置合わせされているフレーム40に固定されている。マンドレル集成体60とダイ集成体80は、上部が開口した溝の形状のレール43上に調節自在に取り付けられており、これは繊維収集モジュール2を通る繊維の直線状の経路と位置合わせされてフレーム40に固定されている。レールに沿ったマンドレル集成体60およびダイ集成体80の長手方向位置は、本発明発明の装置の一般的な作動条件に一致することが必要とされるので互いに対しておよび成形錐体に対して調節される。
【0059】
成形錐体
図3、3A、4A、4Bおよび4Cを参照すると成形錐体50は、上半分および下半分のシェル51、52を含み、それぞれ平面においてほぼ三角形であり、平坦な外面および凹みのある内面を有する。それぞれが錐体の半分を構成するシェルは、互いにボルト53によって固定される。これらシェルの内面同士で滑らかにテーパーした中央軸経路55を画定し、これはほぼ矩形の上流流入口56から円形断面の円筒状の管の形状の下流流出口57へと延びている。管状の流出口延長部品58(図3Aおよび3A)は、流出口57と軸方向に整列されて、半分のシェル51、52にボルトで固定される。
【0060】
流入口56は、平らにされたマットまたはウェブの形状の収集された繊維15を繊維収集モジュールのコンベアー24から直接受け取るように構成されている。テーパーした中央経路が繊維が流出口57の方へと成形錐体を通って進む際に繊維を圧縮し、ウェブを円筒状の形に成形するように形成、配置されている。
【0061】
上半分のシェル51の内面にはリブ59の形状の分割器が設けられており、これは中央経路55の軸の方に半径方向内方に成形錐体を通る繊維の経路内に突出し、流入口56と流出口57の間を長手方向に延びている。分割リブ59は、繊維の束が成形錐体を通過する際に分割器が束の長さに沿って隙間または割れ目を形成するように成形錐体の出口の直径と比較して狭くなっている。分割器に亘って繊維束を流れやすくするためにリブの上流端59aは、リブ59が半径方向に経路の軸の方に突出する程度がリブに沿って滑らかにそして分割器の全長の約10~20%離れて流入口56の内方に位置するポイントAへと徐々に大きくなるように湾曲している。このポイントAおよびその下流からリブは、成形錐体を通る経路の中央を僅かに越えて延びている。リブは、例えば繊維から形成された最終形状の管の所望の内径に応じて、流出口の直径の50%よりわずかに大きい、例えば55%、60%または65%以下の直径より大きい半径方向の突起を有してもよい。
【0062】
流出口延長部品58にも軸方向に延びた内部リブ59aが形成されており、これは上半分のシェル内のリブ59と同じ半径方向の長さを有し、それと同じ面に位置し、これにより上半分のシェル51の分割器59と連続することになる。
【0063】
マンドレル集成体
図5A、5Bおよび5Cを参照するとマンドレル集成体60は、レール43の上流部に沿ってスライド移動するように取り付けられ、レール43の各側に取り付けられた平行なガイド48、48によって支持された台車61を含み、台車は棚62を含み、これはレール43によって形成された溝内に受けられ、ハンドホイール64によって横方向に延びた軸を中心に回転するようにレール43に取り付けられたピニオンホイール63と係合し、これによりダイ集成体80と成形錐体50に対して所望の位置にマンドレル集成体をレール43に沿って長手方向に前後に移動できるようにしている。
【0064】
また台車61は、第1スライドブロック65aのための水平方向に延びたガイド65を含み、ブロックは台車61に対する横方向の移動のためにガイドに取り付けられている。水平ガイド内の第1スライドブロックの横方向位置は、締め付けボルト66で調節し、固定してもよい。第1スライドブロック65aは、第2スライドブロック67a用の垂直ガイド67を支持し、第2スライドブロックは、台車61に対する垂直方向の移動のためにガイドに取り付けられている。垂直ガイド67内の第2スライドブロック67aの垂直方向位置は、締め付けボルト68で調節し、固定してもよい。第2スライドブロック67aは、ブラケット69を搬送し、これは両端が開口した軸方向に配向された管状のケーシング71を支持する。ケーシングは、符号73で示されているケーシング71の中央軸に沿って延びた長尺のロッド形状のマンドレルを収容する。従って、マンドレルの長手方向、垂直方向および水平方向の位置は、成形錐体およびダイ集成体80に対してトラックに沿った長手方向の台車の移動によっておよび第1および第2スライドブロック65a、65bの調節によって正確に設定される。
【0065】
マンドレル73用の管状のケーシング71は、外方断面においてほぼ方形であり、その長さに沿って面取りされた縁部を有し、内部断面においてほぼ円筒状であり、ケーシングの下流端より大きな内径の上流端にカウンターボア75を有する。ケーシング71は、2本のボルトによってブラケット69に固定され、長手方向に位置合わせされ、即ちその中央軸は本発明の装置を通る繊維の束の移動方向に配置されている。
【0066】
管状のマンドレル支持体72は、ケーシング71のカウンターボア75内に取り付けられている。マンドレル支持体は、カウンターボア75の内径に一致する外径を有し、内部にはマンドレル73用のブラケットまたはキャリアが設けられている。この実施態様ではブラケットは、分割プレート78の形体であり、これはマンドレル支持体72の内面から半径方向内方に突出し、支持体内でその上流端から軸方向に延びている。ケーシング71内のマンドレル支持体72の回転位置は、プレート78が所望の半径方向の向き、この場合には垂直に位置するように調節される。分割プレート78の半径方向の先端は、マンドレル73に接続され、例えば鋳造でプレートと一体に形成されてもよい。
【0067】
マンドレル73は、長尺の円筒状ロッドを含み、組み立てを簡単にするために同軸に配置された2つの部分、上方マンドレルロッド73aおよび下方マンドレルロッド73bからなる。上方ロッド73aは、それが接続される分割器プレートの厚さより大きい直径の均一の半径方向断面を有し、支持体72内に下流に突出するようにプレートのそばでマンドレル支持体72の中央軸に沿って位置する。上方マンドレルロッドの上流端は、繊維の束の移動路内にマンドレル支持体を越えて上流に突出したドーム状部分またはボスで終結している。上方マンドレルロッド73aの下流端には内部がねじ切りされた開口部が設けられており、これはロッドの中央軸と平行に延びている。
【0068】
下方マンドレルロッド72bは、その上流端に上方マンドレルロッド73aに対応する直径の円筒状セグメントを有し、その下流端に完成したフィルターロッド5の所望の内径に対応する小さい直径の円筒状セグメント73cを有する。下方マンドレルロッドの2つの円筒状セグメントは、図5Bおよび5Cに例示するようにテーパーした中間セグメントによって互いに滑らかに接続される。下方マンドレルロッド73bの上流端は、ねじ切りされた軸方向ボルトを支持し、これは上方マンドレルロッド73aの下流端の開口部に収容され、これによりマンドレルの2つの部分をマンドレル支持体72およびケーシング71内で同軸に位置合わせした状態で固定している。下方マンドレルロッド73bは、取り外し、完成した管状ロッド5の所望の寸法に応じて種々の直径の下流端を有する類似の部材と交換してもよい。
【0069】
マンドレル集成体60は、成形錐体50の流出口から出た繊維の束を収容するように配置され、構成されている。マンドレル支持体72の分割プレート78は、成形錐体50と出口延長部品58の分割リブ59、59aと半径方向に位置合わせされ、これにより繊維の束がケーシングを通過する際、分割プレート78は、マンドレルプレート73の上流先端部のドーム状部分76が繊維の束の中央で割れ目内に挿入されるので、束の長さに沿って割れ目を維持することになる。従って、分割プレート78は、マンドレルを支持するブラケットそしてその上流で形成された繊維の割れ目を開いた状態に維持するための分割器としての二つの機能を果たす。分割器の下流で繊維の束の割れ目が閉じ、繊維の束はマンドレルの周囲で連続した管状構造になる。
【0070】
別のマンドレル集成体
本発明の装置に使用するための別のマンドレル集成体160を図5Dおよび5Eを参照して以下に説明する。マンドレル集成体160は、図5A、5Bおよび5Cを参照して説明したのと類似の構造であり、図中、同様の部品は同じ参照番号で示している。
【0071】
図5Dおよび5Eのマンドレル集成体160ではマンドレル73は、束がマンドレルを通過する際に気体または液体処理流体、例えばスチームまたは水蒸気を繊維束に送出でき
るように変更されている。このためにケーシング71の上流端は、その上面にスチームライン用の流入口(図示せず)が設けられている。流入口は、分割プレート78の半径方向の穴192と連通する中央経路を有する気密接続部190を含む。穴192は、半径方向下方にマンドレルの中心線へと延び、そこで貫通孔は、上方マンドレルロッド73aの中央軸方向経路194と連通している。軸方向経路194は、上方マンドレルロッド73aの下流端にあるねじ切りされた開口部に延びている。同様に下方マンドレルロッド73bには中央軸方向経路195が設けられており、上方マンドレルロッド73aの経路194と位置合わせされている。軸方向経路195は、軸方向に下方ロッドの上流端のねじ切りされたボルト77を介して延び、マンドレルのテーパーした中間セグメント74の中央で終結している。中間セグメント74にはマンドレル73上に支持された繊維内に処理流体を排出するためにマンドレルの中央穴をマンドレルの外面に接続する4つの流出口通気口79が設けられている。これらの通気口はマンドレルの軸を中心に等角度間隔(90°)で配置され、マンドレル上の繊維束の移動方向にマンドレルの中央軸に対して20~70°の角度で下流端方向に傾斜している。
【0072】
この実施態様ではスチームまたは処理流体は、接続部190を介してマンドレル73内に供給される。その後スチームは、通気口79へと移動し、そこでスチームは、繊維束が本発明の装置内を前進し、マンドレルの表面上を通過する際に繊維束と接触する。この段階でのスチームで繊維を処理することによって繊維の可撓性および柔軟性を高め、これにより処理ユニット80でのさらなる処理のための前処理を繊維に施すことができる。
【0073】
ダイ集成体
マンドレル集成体60の下流に位置するダイ集成体80は、スチームブロックの形状であり、図6Aおよび6Bにより詳しく示されている。ダイ集成体は、繊維束がその最終構造に形成される場所であるダイ84と、ダイを加熱し、成形された繊維束を硬化させるために繊維をスチームで処理するための構造部品とを含む。
【0074】
ダイは、内部スチームチェンバー81aを画定する中空の立方体状ハウジング81に取り付けられている。ハウジング81には取り付けブラケット82が設けられており、これによって集成体は、レール43の下流部に沿って前後にスライド移動するように取り付けられる。ハウジングは、ボルト穴の列44によって画定されたレールに沿ったいくつかの個別の位置のいずれか1つに係止されてもよい。取り付けブラケット82の係止ピンは、ボルト穴と係合することができ、ダイ集成体をレール43上の選択された位置に固定することができる。
【0075】
ハウジング81の各側面にはスチームがハウジング内に導入される際に通過するスチームコネクタ(図示せず)を収容する開口部83aが設けられている。集成体の下流面には取り外し可能な閉鎖プレート77が設けられており、これはハウジングの開口部内にボルト留めされ、ワッシャーによって封止されてもよい。閉鎖プレート77とハウジングの上流面には対向する開口部77a、83bが設けられており、それによってダイ84はハウジングに取り付けられ、ワッシャーによって封止されている。
【0076】
ダイ84は、管状体であり、それを通る符号86で示す中央の軸方向に延びた経路を有する。ダイの本体を通る中央経路は、外面に密閉カラー87が設けられたソケットの形状の流入口セクション85を有する。流入口セクション85は、その下流端で経路86の中央の成形セクション89と連通し、流入口セクション85と成形セクション89との接合部は、成形セクションへの入り口91を供する。成形セクションは、繊維束が形成されるロッドの所望の外部輪郭(この実施態様では円形)に対応する内部の円周方向の輪郭を有する。
【0077】
この実施態様では流入口セクションは、中央経路の全長の約1/3、例えば30~50%(図示の実施態様では33%)に亘って延びている。流入口セクション85の内部面は、円錐状および下流方向にマンドレル支持体72からの下流流出口に等しいまたはそれより小さい直径(例えば70%、60%、50%または40%小さい)から完成した管状フィ
ルターロッドの所望の外径に等しい直径へとテーパーしている。成形セクションへの入り口91によって供される収縮部に繊維の束が近づいた際に繊維の束を収集しやすくするおよび繊維が入り口を塞ぐ可能性を減少させるために円錐状面は、ダイの中央軸に対して比較的小さい角度、例えばダイの中央軸に対して9~27度、例えば12~20度、この実施態様では約18度の角度でテーパーしている。
【0078】
成形セクション89は、その軸方向の長さに沿って均一な円形の内部断面輪郭であり、繊維がそれを通過する際に完成した管の所望の外部の円周輪郭を有する構造に繊維15を形成するための形になっている。成形セクションは、中央経路の長さの約1/4、例えば20~30%(この場合26%)に亘って延びている。
【0079】
成形セクションの下流端は、中央経路86の流出口セクション88と連通しており、この流出口セクションもその長さに沿って均一な円形断面輪郭を有しているが、成形セクションの直径より大きな直径を有し、完成したロッドの所望の外部輪郭のものより大きな内部周方向輪郭を有する。流出口セクションは、中央経路の残りの部分、例えば中央経路の全長の35~50%(この例では41%)を形成している。ダイの流出口セクション88の外面は、密閉カラー94によって囲まれた栓90の形状である。
【0080】
ダイ84は、ダイの下流端にある栓90がハウジング81の下流面の閉鎖プレート77内の開口部83bにプレート77および栓の密閉カラー94の間にある密閉ワッシャーと共に収容される。ダイの上流端のソケット85は、ハウジングの上流面の開口部83bにハウジングとソケットの密閉カラー87の間にある別の密閉Oリングと共に収容される。
【0081】
本発明の装置の使用中、マンドレルロッド73cの下流端(図6Bの破線で示す)は、マンドレルが成形セクションの全長またはほぼ全長または僅かに越えて延びるように中央経路86内に挿入される。マンドレル73の先端は、成形セクション89と流出口セクション88の上流端の接合部にまたはその近く、この例ではそのすぐ上流に位置する。成形セクション89とマンドレル73は、共同で繊維の管の所望の環状の厚みに等しい環状の収縮部をマンドレル73と経路の円筒状壁の間に画定する。
【0082】
ダイ84の円筒状の壁にはこの例では直径が2mmの導管92が4つ設けられており、これらの導管はダイの外面から中央の軸方向経路86へとダイの本体を通って延び、これによりスチームチェンバー81aと連通する中央経路を設置する。導管は、共通の半径方向の面でダイの軸の方へとダイの軸に対して直角に延びており、2つの導管が垂直に2つの導管が水平になるように90°の等間隔に配置されている。導管の共通の半径方向の面は、流入口セクションと成形セクションの接合部91のすぐ下流に位置し、これにより導管の出口は、スチームチェンバー81から成形セクション89への入り口91の直近のダイの中央経路86内にスチームを放出することができる。この実施態様では流出口は、入り口91のすぐ下流、入り口から形成セクションの長さの約5%以下の距離に位置している。流出口の中心は、入り口の下流の共通の円上に位置し、入り口91の面から軸方向に導管の直径の約半分(0.5倍または50%)の距離の間隔を空けて配置されている。
【0083】
使用時、過熱スチームが開口部83を介してコントロールパネル42から制御されたバルブ(図示せず)によって供給ラインからスチームチェンバー内に送られる。スチームからの熱は、ダイの中の繊維に伝えられ、繊維が互いに接触点で結合する硬化温度にまで繊維を加熱し、これにより繊維の束を管状構造に固定する。
【0084】
熱は、ダイ本体を介した中央経路への伝導によってその中の経路の内壁と接触している繊維に伝えられる。この実施態様では熱は、主に全体がスチームチェンバー81a内に位置する成形セクションへ伝導によって伝えられる。流入口セクション85は、ソケット85の一部がハウジング81の壁内に位置し、スチームチェンバー内のスチームと直接接触しないので成形セクションより冷えている。同様に密閉カラー94の下流の流出口セクションの領域は、それが閉鎖プレート77内に位置し、チェンバー81aのスチームと直接接触しないのでその上流の領域より冷えている。
【0085】
加えて熱は、ダイの中央経路へ導管92を介して通過し、マンドレル75の下流端に支持された繊維と接触するスチームによって伝えられる。
【0086】
束が成形セクション内を通過する際、繊維の圧縮率は、成形セクション89への入り口91で最大になり、束の繊維の密度は最大まで増加する。その結果、ダイを通過する際の繊維の抵抗はこの領域で最大になる。導管92の出口を成形セクションへの入り口と同じ半径方向の面またはその近くに配置することによって、スチームは、繊維束を硬化させる効果だけでなく、繊維を可塑化する、繊維を成形セクションの入り口を滑らかに通過させるそして繊維の引きずりを減少させる効果を有し、これにより繊維をマンドレルの周囲で管状構造に形成しやすくなり、繊維によって入り口が塞がれるリスクを減らすことができる。4つの導管92は、ダイを通過する繊維の束の移動方向に対して90°であるので、導管から出るスチーム噴射は、実質的に同じ力を繊維に流および下流の両方向から加えることができ、従って繊維の束がダイを通過する際に束の移動を大きく妨げない。
【0087】
流出口セクション88は、成形セクションより大きな断面積を有し、その結果として成形セクションから出た硬化した繊維ロッドは、それが流出口セクションを通過する際に中央経路86の内壁と接触していない。これによりロッドを流出口セクションの中でより早く冷やすることができる。
【0088】
繊維束は、処理ユニットの下流に位置する従来構造の引き取りローラー(図示せず)によって本発明の装置内を牽引される。例えば成形セクション50とマンドレル集成体60の間に位置するスタッファージェット(図示せず)を用いて、本発明の装置内の繊維の移
動を補助してもよい。
【0089】
別のダイおよびダイ集成体
ダイ集成体の別の実施態様を図6C、6D、6Eおよび6Fに示す。図6C~6Dに示す実施態様は、図6Bに示したものと構造が類似しており、同じ参照番号を使用してこれらダイ集成体の同様の特徴を示している。簡単にするためにこれら実施態様の共通の特徴は再度説明しない。
【0090】
図6Cに示す実施態様を参照するとダイ84の流入口セクション85は、図6Bに示した実施態様の対応する流入口セクションより軸方向の長さが長く、ソケット85の上流端から成形セクション89への入り口91へと中央経路の全長の約70%、例えば65~75%(この場合には67%)に亘って延びている。流入口セクション85の円錐状の内面
は、図6Bの実施態様よりダイの中央軸に対して小さい角度で、例えば4~15度の角度、例えば8~12度、この実施態様ではダイの中央軸に対して9°の角度で下流方向にテーパーしている。
【0091】
成形セクション89は、その軸方向の長さに沿って均一な円形の内部断面輪郭を有し、流入口セクション85との成形セクションの接合部から栓90の密閉カラー94の軸方向位置へと中央経路の長さの約25%、例えば20~30%(この例では24%)に亘って延びている。
【0092】
中央経路86の流出口セクション88は、ダイの下流端で栓90の内面を形成し、この実施態様ではその長さに沿って形成セクション89と同じ円形の断面輪郭を有する。流出口セクションは、中央経路の残りのセクション、全長の約15%、例えば5~15%(この例では9%)を形成している。
【0093】
この実施態様では熱は、成形セクションより長く、スチームチェンバー81内にその内部面の多くの部分を有する流入口セクションへ主に最初に伝導することにより中央経路に伝えられる。成形セクションの外面は、全体的にスチームチェンバー内に位置し、またかなりの割合の熱を中央経路へと伝導する。しかしながら、チェンバー内に位置する流入口セクションの部分より短いことで相対的に少ない熱を流入口セクションより中央経路に伝える。流出口セクションは、最も少ない割合の熱を中央経路に伝え、その外部面は、チェンバー81a内のスチームと直接接触してなく、閉鎖プレート77内にほとんど全体が位置しているので最も冷たくなる。
【0094】
V字状の溝95がダイ84の外壁の周囲に形成されており、その最も深い円周囲は流入口セクションとの接合部にある経路の成形セクションへの入り口の上流で位置合わせされている。6つの導管、この場合直径2mmの導管がダイの本体に形成されており、V溝の下流の面から中央の軸方向に延びた経路86の壁を通って延び、これによりダイの中央経路と連通するスチームチェンバー81aが設置される。導管92は、一直線に延び、ダイの軸の方へと下流方向に経路の軸に対して90°未満の角度、この例ではダイの軸に約30°の角度で収束している。導管は、軸を中心に60°の等間隔に配置されている。導管の出口は、流入口セクションと成形セクションとの接合部のすぐ下流で経路の軸を横断する共通の円上に位置し、スチームチェンバー81aから成形セクション89への入り口91のすぐ隣のダイの中央経路86内に流体を放出する。この実施態様では導管は、成形セクションの長さの約15%、入り口から離れて成形セクション内に放出する。流出口の中心が位置する共通の円は、導管の直径の約1.5倍(約150%)離れて入り口の面から軸方向に間隔が空けられている。
【0095】
本発明の装置の使用中、マンドレル73の下流セグメント73cは、中央経路86内に挿入され、マンドレル73と経路の円筒状壁の間に繊維からなる管の所望の環状の厚さに等しい環状の隙間を画定している。マンドレルロッドの先端は、閉鎖プレート77の内部面のそばで栓90の密閉カラーの半径方向の面にまたはその近くに位置する。これは出口経路内の温度が繊維束の硬化が実質的に完了する成形セクションの温度より低くなり始める領域である。
【0096】
使用時、過熱スチームは、図6Bに示した実施態様を参照して説明したように供給ラインから開口部83を介してハウジング81内に送られる。スチームは、導管92を通過してダイの成形セクション内に移動し、束を管状構造に硬化させる。比較的長い流入口セクションによってマンドレルの周囲で繊維を形成する時間を長くすることができ、その結果としてより均一な管状構造にすることができる。また流入口セクションおよびその長尺の円錐面を長くすることは、ダイの壁を介した熱移動を向上させる。成形セクションへの入り口の間近に導管92の出口を配置することによりスチームが繊維束を硬化させることができるだけでなく、繊維を可塑化する、繊維を成形セクションの入り口を滑らかに通過させるそして繊維の引きずりを減少させることができ、これにより繊維をマンドレルの周囲で管状構造に形成しやすくなり、繊維によって入り口が塞がれるリスクを減らすことができる。6つの導管92はダイを通る繊維の束の移動方向に対して30°であるので、導管から発せられるスチーム噴射は、繊維に下流方向に力を加え、上流方向に力が加わらず、繊維束ダイを通って移動する際に繊維の束の移動を妨げない。下流方向で繊維に圧縮力を加えることで特に繊維がメルトブロー処理によって作製される場合完成したロッドの弾力性を向上させる。
【0097】
図6Dに示す実施態様を参照すると、ハウジング81とダイ84の全体構造は、下流方向に対する上流のスチームチェンバーの内部の長さが図6Cの実施態様の長さ約40%に減少し、ダイの長さ図6Cに示したものの約60%に減少していること以外、図6Cに示した実施態様のものと類似している。
【0098】
ダイの流入口セクション85は、図6Cに示した実施態様の対応する流入口セクションとほぼ同じ軸方向の長さの比率であり、ダイの全長の約70%、例えば65~75%に亘って延びている。流入口セクションは、スチームチェンバーの実質的に全長を横断して延び、スチームチェンバー81a内のその外部面領域の大きな部分は、繊維ロッドがダイを通って流入口セクションと成形セクションの接合部にある成形セクションの入り口91へと前進する際に繊維ロッドへの熱の伝導性伝達の主な原因になる。流入口セクション85の円錐状の内面は、図6Cの実施態様のダイの中央軸に対してより大きな角度で、例えばダイの中央経路の軸に対して7~21度、例えばこの実施態様では10~18度の角度で下流方向にテーパーしている。
【0099】
成形セクション89は、中央経路の長さの残りに亘って延び、ダイの栓90内に全体が位置し、栓自体は、ハウジングの閉鎖プレート77内に位置する。流入口セクションとの接合部での成形セクションへの入り口は、スチームチェンバーの内壁と同じ面に位置する。従って、成形セクションを囲んでいるダイの壁は、スチームチェンバー81と直接接触しない。従って、成形セクションは、図6Bおよび6Dを参照して説明した集成体の成形セクションより冷えている。
【0100】
成形セクション89は、その軸方向の長さに沿って均一な円形内部断面輪郭を有し、中央経路の長さの約30%、例えば25~35%を構成する。成形セクションは、ハウジングを囲む空間内に直接的に放出する出口で終わり、ここで説明したダイ集成体の他の実施態様とは異なり、中央経路は、明確な流出口セクションを含まない。
【0101】
V字状の溝95がダイ84の外壁の周囲に形成されており、その最も深い円周囲は経路の流入口セクションと成形セクションとの接合部91の上流で位置合わせされている。直径が約2mmの6つの導管92がダイの壁に形成され、溝の下流面から中央の軸方向経路86の方へと延び、これによりダイの中央経路と連通するスチームチェンバー81aを設置する。導管92は、一直線に延び、ダイの軸の方へ下流方向に90°未満の角度、この例ではダイの軸に約45°の角度で収束している。導管は、軸を中心に60°の等間隔に配置されている。中央経路内への導管92の流出口は、流入口セクションと成形セクションとの間の接合部91の収縮部のすぐ下流で経路の軸を横断する共通の円上に位置し、成形セクション89への入り口の直近のダイの中央経路86内にスチームチェンバー81aから流体を放出するようになっている。導管は、入り口91から成形セクションの長さの約15%未満(この例では約14%)離れて成形セクション内に放出する。流出口の中心の共通の円は、導管の直径とほぼ同じ(約100%の)距離の間隔を入り口の面から軸方向に空けられている。
【0102】
本発明の装置の使用中、マンドレルロッド73bの下流端は中央経路86内に挿入され、マンドレル73と経路の円筒状壁の間に繊維の管の所望の環状の厚さに等しい環状の隙間形状の収縮部を画定している。マンドレルロッドの先端は、経路26の下流端のハウジング81の外側で成形セクションの流出口に位置する。成形セクションから出た硬化した繊維束は、装置の周囲の雰囲気によって冷やされる。
【0103】
使用時、過熱スチームが供給ラインから開口部83を介してハウジング81内に送られ、形成セクション内の繊維を管状構造に硬化させる。図6Dの実施態様の長い流入口セクションによりダイ内でマンドレルの周囲で繊維を形成する時間を長くすることができ、その結果としてより均一な管状構造にすることができる。また流入口セクションおよびその長尺の円錐面を長くすることは、ダイの壁を介した繊維への熱移動を向上させる。成形セクションへの入り口の間近に導管を配置することによりスチームが繊維束を硬化させることができるだけでなく、繊維を可塑化する、繊維を成形セクションの入り口を滑らかに通過させ、そして繊維の引きずりを減少させることができ、これにより繊維をマンドレルの周囲で管状構造に形成しやすくなり、繊維によって入り口が塞がれるリスクを減らすことができる。スチームチェンバーの内壁のすぐ下流に成形セクションを配置し、周囲雰囲気に放出することで確実にロッドは成形セクションで硬化させた後すぐに冷まされ、これはロッドに安定性を付与し、ダイを通った形成されたロッドの離脱を容易にする。導管の下流に向けられた45°の角度によって装置内の繊維の移動方向にスチーム噴射が案内され、これはダイ集成体内のロッドの進行を補助する。その結果としてのスチームによる下流方向でのメルトブローされた繊維の追加の圧縮により完成したロッドの弾力性が向上する。
【0104】
図6Eに示す実施態様を参照すると、ハウジング81の全体構造は、図6Dに示した実施態様のものと類似しており、図6Bおよび6Cに示した実施態様のものより内部長さの短いスチームチェンバー81を有する。
【0105】
ダイ84の全体構造は、ダイの長さが図6Bのダイの長さの約60%に減少していること以外、図6Bに示した実施態様のものと類似している。ダイの流入口セクション85は、中央経路の全長の約30%、例えば30~35%(この例では32%)に亘って延びている。流入口セクション85の円錐状の内面は、図6Cの実施態様よりダイの中央軸に対して大きな角度で、例えばダイの中央軸に対して15~45度、例えば20~40度、この実施態様では約30°の角度で下流方向にテーパーしている。
【0106】
成形セクション89は、流入口セクションのすぐ下流で、全体的にスチームチェンバー81内に位置し、中央経路の長さの約33%、例えば30~35%、この例では32%に亘って延びている。成形セクションと流入口セクションとの接合部にある成形セクションへの入り口91は、スチームチェンバーの上流の内壁と同じ面に位置する。
【0107】
成形セクションの下流端は、中央経路86の流出口セクション88と連通し、これもまたその長さに沿って均一な断面輪郭を有するが、成形セクションの直径より大きな直径を有し、完成したロッドの所望の輪郭のものより大きな内部周方向輪郭を有する。流出口セクションは、中央経路の残りの長さ、例えば全長の約30~40%(この例では36%)を形成する。経路の流出口セクションは、ほとんど全体がダイの栓90内に位置し、これは閉鎖プレート77の下流開口部内に収容されている。
【0108】
この実施態様では熱は、主にスチームチェンバーのスチームチェンバー81aの実質的に全長を横断して延びている成形セクションへ伝導によって伝えられる。流入口セクション85および流出口セクション88は、それらの外面がチェンバー81aのスチームと直接接触せず、ハウジング81または閉鎖プレート77の壁内に全体が位置するので両方とも成形セクションも冷めている。
【0109】
本発明の装置の使用中、マンドレルロッド73bの下流端は、マンドレルロッドの先端が成形セクション89と流出口セクション88の上流端の接合部にまたはその近くに位置するように中央経路86内に挿入される。成形セクション89およびマンドレル73は、協働して、マンドレル73と経路の円筒状壁の間に繊維の管の所望の環状の厚さに等しい環状の隙間を画定している。
【0110】
ダイ84の円筒状の外壁には中央の軸方向に延びた経路86へとダイ84の外面から延びた6つの導管92が設けられており、これによりスチームチェンバー81と連通する中央経路を設置する。導管は、先の実施態様のものより直径が小さく、1.5mmの直径である。導管は、共通の半径方向の面でダイの軸の方へとダイの軸に対して直角に延びており、下流方向に収束しながら60°の等間隔に配置されており、一組の導管は、垂直に対向している。導管の共通の面は、流入口セクションと成形セクションの接合部91のすぐ下流に位置し、その流出口は、スチームチェンバー81からダイの中央経路86内に成形セクション89への入り口の間近でスチームを放出するように配置されている。導管は、成形セクション内に入り口のそばで、入り口91からの成形セクションの長さの5%未満下流(ここでは2%または3%)の距離を離れた所で放出する。出口の中心の共通の円は、導管の直径とほぼ同じ(約100%の)距離の間隔を入り口の面から軸方向に空けられている。
【0111】
使用時、スチームチェンバー81内の過熱スチームは、ダイ84の導管92を通過し、繊維が互いに接触点で結合する温度にまで繊維を加熱しながら、マンドレル75の下流端で支持された繊維と接触し、これにより繊維の束を管状構造に固定する。繊維に掛かる圧縮力は、成形セクション89の入り口で最大であり、繊維束の密度は最大になる。6つの導管を成形セクションの入り口のすぐ下流の同じ垂直方向の半径方向の面に配置することによってこれら6つすべての導管は、ダイを通過する繊維の束の移動方向に対して90°である。導管から発せされるスチーム噴射は、繊維へ効果的に同じ力を上流および下流の両方向で加え、従って、繊維の束がダイを通過する際に束の移動を大きく妨げない。繊維にスチームを送出することは、繊維束を硬化することに効果的だけでなく、繊維を可塑化する、繊維を成形セクションの入り口を滑らかに通過させるそして繊維の引きずりを減少させることにも効果的であり、これにより繊維をマンドレルの周囲で管状構造に形成しやすくなり、繊維によって入り口が塞がれるリスクを減らすことができる。
【0112】
流出口セクション88は、成形セクションより大きな断面積を有し、その結果として成形セクションから出た硬化した繊維ロッドは、それが流出口セクションを通過する際に経路26の内壁と大部分が接触しない。従って、このロッドは、流出口セクションにおいてより速く冷え、安定する。
【0113】
図6Fに示す実施態様を参照するとハウジング81の全体構造は、図6Bおよび6Cに示した実施態様のものと類似しているが、図6Dおよび6Eのものより長い。
【0114】
ダイ84の構造は、ダイの流入口セクションが延長され、流体を流入口セクション85内に放出するために配置された別の組の導管96を成形セクションの上流に組み込むように変更されていること以外、図6Cに示した実施態様のものと類似している。これらの追加の導管96は図6B~6Dの実施態様より直径が小さく、この例では1.5mmである。流入口セクション85は、中央経路の全長の約60%、例えば55~65%に亘って延びている。従って、流入口セクションは、スチームチェンバーの長さのかなりの部分と接触し、繊維ロッドがダイを通って成形セクションの入り口91へと前進する際に繊維ロッドにかなりの割合の熱を伝えることになる。
【0115】
流入口セクション85の内面は、それを通過する繊維の束の断面積をマンドレル支持体72からの下流出口と等しいまたはそれより小さい流入口セクションの下流端での直径から完成した管状フィルターロッドの所望の外径に等しい流入口セクションと成形セクションとの接合部での直径といった2段階で減少させるように形成されている。このために流入口セクションは、上流円錐状セクション97と、中間円筒状セクション98と、下流円錐状セクション99とを含む。
【0116】
上流円錐状セクションは、経路の上流端の直径の約50%の直径にテーパーしている。上流円錐状セクションと中間セクションとの接合部は、成形セクション89への入り口91で形成された収縮部から上流で流入口セクションに収縮部100を形成している。下流円錐状セクション99は、中間セクション98を成形セクション89に接続して、成形セクションへの入り口で中央経路に収縮部を設けている。
【0117】
上流円錐状セクション97は、ダイの中央軸に対して比較的小さい角度、例えばダイの中央軸に対して9~27°、例えば12~20°、この実施態様では18°の角度でテーパーしてもよい。下流円錐状セクション99は、ダイの中央軸に対して比較的小さい角度、例えばダイの中央軸に対して3~15°、例えば7~12°、この実施態様では10°の角度でテーパーしてもよい。
【0118】
成形セクション89は、中央経路86の長さの約25%、例えば20~30%に亘って延び、流入口セクションのすぐ下流に位置している。流入口セクションとの接合部での成形セクションへの入り口は、中央およびハウジングブロックの下流面の間でスチームチェンバーの中央に向かって位置している。成形セクション89は、その軸方向の長さに沿って均一な円形の内部断面輪郭を有し、中央経路の全長の約20%(この場合には22%)を占める。
【0119】
成形セクション89の下流端は、中央経路86の流出口セクション88と連通し、これもまたその長さに沿って均一な断面形状を有しているが、成形セクションの直径より大きな直径を有し、完成したロッドの所望の外部輪郭のものより大きな内部円周輪郭を有する。流出口セクションは、中央経路の全長の約20%、例えば10~25%(この例では18%)を形成している。流出口セクション88の外面は、密閉カラー94によって囲まれた栓90の形状であり、従って、スチームチェンバーと直接接触しない。
【0120】
この実施態様では熱は、主に流入口セクションと成形セクションへの伝導によって伝えられる。かなりの長さの流入口セクションがスチームチェンバー81a内に位置し、成形セクションは、全体的にスチームチェンバー内に位置している。流出口セクションは、閉鎖プレート77内に位置し、チェンバー81aのスチームと直接接触しないので成形セクションより冷えている。
【0121】
V字状の溝95がダイ84の外壁の周囲に形成されており、その最も深い円周部は、経路の入り口と成形セクションとの接合部の上流に位置合わせされている。直径約1.5mmの4つの導管92がダイの壁に形成され、溝の下流面から中央の軸方向経路86の方へと延び、これによりダイの中央経路と連通するスチームチェンバー81aを設置する。導管92は、一直線に延び、ダイの軸の方へと下流方向に軸に対して40°の角度で収束し、中央経路の軸を中心に90°の等間隔に配置されている。導管の出口は、成形セクションへの入り口91のすぐ下流の経路の軸を横断する共通の円に位置し、放出するスチームチェンバー81からスチームを成形セクション89への入り口91の直近のダイの中央経路86内に放出するようになっている。出口の共通の円は、入り口91から下流に成形セクションの長さの約10%離れて位置し、および導管の直径の100~150%、この例では133%離れて入り口の面から軸方向に間隔が空けられている。
【0122】
さらに流入口セクションの中間セクションを囲むダイ84の円筒状の外壁にはダイ84の外面から中央の軸方向に延びた経路86へと延びたが2つの別の導管96が設けられており、これにより成形セクションの上流にスチームチェンバー81と連通する中央経路を設置する。上流の導管96は、ダイの軸に対して直角の共通の半径方向の面で中央経路の軸の方へと延び、180°の間隔を置いて配置され、垂直方向に整列している。導管の共通の面は、上流円錐状セクション97流入口セクションの中間セクションとの接合部100のすぐ下流で、接合部100から流入口セクションの中間セクション98の長さの20%以下(この例では16%)または中間セクションと下流円錐状セクション99を合わせた長さの15%未満(この例では12%)離れて下流に位置している。これら追加の導管の出口の共通の円は、接合部100の面から導管の直径の2.5~3.5倍、この例ではその300%離れて間隔が軸方向に空けられている。従って、導管96は、流入口セクションの中間セクション98の入り口のそばで接合部100にある収縮部の直近のダイの中央通路86内にスチームをスチームチェンバーから放出するために配置されている。
【0123】
成形セクションへの入り口での導管および流入口セクションのさらなる導管の数および大きさは、ダイの2つのセクションへ調整された量のスチームを送出するために選択される。一般に流入口セクションでは成形セクションより少量のスチームが必要とされる。従って、各セクションの導管の数および大きさは、これら2つの位置で異なってもよい。
【0124】
本発明の装置の使用中、マンドレルロッド73cの下流端は、図6Fに示すように中央経路86内に挿入され、マンドレル73と成形セクションの円筒状の壁との間に繊維の管の所望の環状の厚みに等しい環状の隙間を画定する。マンドレルロッドの先端は、成形セクション89と流出口セクション88の上流端の接合部にまたはその近く、この場合成形セクションからの出口のすぐ上流に位置している。
【0125】
使用時、過熱スチームは、例示した他の実施態様を参照して説明したように開口部83を介して供給ラインからハウジング81内に送られ、成形セクション内の繊維を管状構造に硬化させる。図6Dの実施態様の長い流入口セクションにより繊維がマンドレルの周囲での形成時間を長くすることが可能になり、結果としてより均一な管状構造になる。成形セクションの上流で流入口セクションに追加の収縮部を設けることで繊維を圧縮しやすくし、圧縮力をより均一に流入口セクションの長さに沿って配分する。流入口セクションを通る繊維束は、流入口セクションの2つの円錐状セクションの間の追加の導管を介して上流収縮部100でまたはその近くでスチームを導入することによって通過しやすくなる。成形セクションの上流のこのポイントで繊維に導入されるスチームは、成形段階前に繊維を予備加熱し、可塑化し、そして成形セクションに入る前に束を滑りやすくし、これにより繊維の引きずりが軽減される。
【0126】
スチームチェンバーの内壁のすぐ下流に成形セクションを配置することは、ロッドが成形セクションでの硬化後すぐに確実に冷やされ、これがロッドに安定性を付与し、硬くなったロッドをダイから離脱させやすくする。導管92の下流に向いた角度は、装置内の繊維の移動方向にスチーム噴射を導き、これはダイ集成体内のロッドの前進を補助する。4つの導管がダイ内の繊維の束の移動方向に対して40°であるので、導管から発せされるスチーム噴射は、力を繊維に下流方向に加え、繊維束がダイを移動する際に繊維束に抗する上流方向の力がほとんどまたは全く加えられない。下流方向で繊維に圧縮力を加えることで特に繊維がメルトブロー処理によって作製される場合に完成したロッドの弾力性を向上させる。
【0127】
流出口セクション88は、成形セクションより大きな断面積を有し、その結果として成形セクションから出た硬化した繊維ロッドは、それが流出口セクションを通過する際に経路26の内壁と大部分が接触しない。従って、この実施態様ではロッドは、流出口セクションにおいてより速く冷え、安定する。
【0128】
装置の使用および操作並びに製造工程
繊維材からなるロッドを製造するための連続した製造工程での本発明の装置の使用についてここで説明する。ここで大まかに説明する工程は、繊維を長尺の束に収集することと、繊維の束のための所望の円周輪郭を画定する収縮部通過するように繊維を前進させることと、繊維を束に収集する収縮部の間近でそして繊維束がダイを通って経路の出口の方へ進む際に繊維の束の移動方向に逆らわない方向に繊維を硬化させる処理流体を束内に導入することとを含む。
【0129】
繊維供給モジュール1ではメルトブローヘッド10に溶融したポリマーと熱い気体が供給される。この溶融ポリマーは、噴射列13を介して液体として出て、熱い空気によって薄い流れの中に吹き込まれ、これは固まって小径の繊維15を形成し、気体流に同伴される。
【0130】
メルトブローヘッドは、単独のポリマー材から単一成分の繊維または第1のポリマーから形成された芯とこの芯を包みこれとは別のポリマーで形成された鞘を有する2成分繊維を製するように構成されてもよい。管状フィルターロッドの製造では単一成分繊維は、例えば必要であればポリマーの特徴を変えるための他の材料、例えばトリアセチンなどの可塑剤を組み込んだポリエステル、ポリアミド、エチルビニルアセテート、ポリビニルアルコールまたはセルロースアセテートから形成されてもよい。2成分繊維は、例えばポリプロピレンの芯とセルロースアセテートの鞘を有し、任意にトリアセチン可塑剤を組み込んだ任意の組み合わせの混合可能なポリマーから形成してもよい。
【0131】
噴射ガスとして空気を使用してダイヘッドは、通常はコンベアーベルト29の上部走路から25~65cm上に位置し、および250~350℃、例えば300~320℃の空気温度、500~600立方フィートまたは14,000~17,000リットル/分の空気流速度および噴射口1つあたり0.3~0.5g/分のポリマー処理量で動作する。その結果として得られた繊維は、通常は5~10ミクロン、例えば約7ミクロンの直径を有し、5~10mm、例えば7~9mm、約8mm(特に7.7mm)の外径、1~6mm、例えば2~5mmの内径およびロッドの長さ1mm当たり5mg、通常8~12mg/mm、例えば約10mg/mmの重量を有する環状フィルターロッド5を形成するように収集される。
【0132】
気体および同伴された繊維15の流れは、コンベアー24上に案内され、繊維は、コンベアーベルト29の上部走路上でもつれたマット状に集まる。コンベアー24は、図2に示すように反時計方向にベルト29を移動させるように動作し、これにより繊維を気体流から出るように移動させ、成形モジュール3へと下流に移動させる。
【0133】
収集された繊維のウェブ30は、成形錐体50内そしてそれを通過するように連続的に引き込まれる。図7Aは、成形錐体50に入る直前の繊維15のウェブのほぼ矩形の断面形状を示している。例えば、ウェブは、幅が150mmで厚さまたは「ロフト」が20mmであってもよい。ウェブが成形錐体内を移動する際、繊維15は、案内され、徐々に円筒状形状に圧縮される。図1の切断線7Bで示す錐体50を約半分通過した時点でのウェブの断面形状を図7Bに略式に示す。この時点でウェブが成形錐体内を進む際、ウェブの長手方向縁部は、成形錐体の中央軸の方へと圧縮され、繊維は複雑な曲げ操作中に横方向および垂直方向の両方に互いの方へ重なるように移動し、円形の半径方向断面の管状流出口57に近づくと分割リブ59の両側で下方に位置する。
【0134】
成形錐体内において束内の繊維の密度は、成形錐体の軸に沿って流入口での比較的低密度から流出口57での高密度へと次第に大きくなる。束の断面密度は、均一ではない。束の長さに沿った各ポイントで繊維密度は、半径方向に束の中央で空隙または低密度領域から束の周囲での高密度領域へと大きくなる。
【0135】
繊維の束が成形錐体内を進む際、分割リブ59が束の上方部分の繊維を分割し、束の長さに沿って割れ目35を形成する。例示した実施態様では分割リブは、束の中心へ、それを僅かに越えて到達する割れ目を形成し、割れ目の深さを束の直径の50~60%、例えば約50%にする。
【0136】
図7Cに例示するように繊維15の束が成形錐体の流出口延長部品58から出ると、その形状は、繊維の束が成形錐体に入った際のウェブの幅の約15~25%、例えば約20%の直径を有する円筒形状であり、その長さに沿って割れ目35が形成されている。
【0137】
次に束は、成形錐体から下流にマンドレル集成体60に移動する。図7Dは、繊維15の束がマンドレル集成体に入る際の繊維束の構造を下流方向に見た略図であり、束の形状は、破線で示されている。分割プレート78は、上流で成形錐体の分割器によって繊維の束に形成された割れ目35と位置合わせされており、繊維が分割プレートの両側を通過する際に割れ目を開いた状態に保持する。上方マンドレルロッド73aの先端の突起76は、上部マンドレルロッド73aのために道を作るために束の中央で繊維の開口移動を開始し、ロッド73aは束の中央に挿入され、繊維を広げ、繊維の束に中央に位置する軸方向経路36を形成する。
【0138】
束が分割プレート78から下流に上部マンドレルに亘ってそして下方マンドレルロッド73上へと進むと、繊維束の割れ目は、マンドレルの周囲で閉じ始め、繊維は、図7Eに示すように連続した周辺層を下方マンドレル73bの直径の広い部分の周囲に形成する。この時点で中央経路36は、完成した管の所望の内径より大きな直径、例えばその内径の10%、15%、20%または30%以上大きい直径を有する。
【0139】
束がマンドレル支持体72およびケーシング71を出てダイ集成体80の方へと下流に進む際、束は、上方マンドレルロッドの大きい直径の部分73bから下方マンドレルロッドの直径の小さい部分へと移動し、この部分は、完成した管状ロッドの所望の内径に対応する直径を有する。束がダイ80に近づき、これに入る際、ダイ84のテーパーしたソケット85がマンドレルの下流セグメントに周囲で繊維の束を圧縮し、割れ目を完全に閉じ、完成した管の所望の外径に対応する外径を有するマンドレルの周囲で管状構造体を作製する。図7Fは、ダイのソケット85に入る時点での繊維の束の構造を示し、図7Gは、マンドレルの下流端を通過した後のダイ84のすぐ下流での管状ロッドの構造を示している。通常ロッドの外径は、図7Eに示すマンドレル集成体の下流端での繊維の束の直径の10~20%、例えば15%になる。ダイから出た管状構造体は、完成品の所望の内径および外径を有する。異なる大きさおよび異なる内径および外径の組み合わせの管は異なる直径のマンドレルと異なる内径のダイを組み合わせて使用することによって製造してもよい。
【0140】
束がマンドレルによって支持されながらダイ集成体80を通過する際、例えば1~3バール、通常は約1.5バールの圧力で、例えばスチームを150~200℃の範囲の温度に加熱することによって製せられた過熱スチームと束は接触する。この処理により繊維がそれらの接触点で接着し合い、これにより図7Gに示すように管状ロッド5の形体の接着された自立構造体を形成する。
【0141】
図5Dおよび5Eによる構造のマンドレルが使用される場合、処理流体は繊維束がマンドレル73に亘って移動し、束がマンドレルの周囲で閉じる際にマンドレル内に送られ、繊維束に加えられてもよく、これにより繊維の束を前処理し、繊維束がダイ84に入る際に下方マンドレルロッド73bの周囲で圧縮しやすくなる。
【0142】
次にロッド5は、マンドレルから過剰な水分をロッドから取り除くための例えばエアー
ブロックなどの別の装置および図7Fに示すように所望の長さの連続した管状セグメントにロッドを裁断する切断装置内を通って牽引される。
【0143】
ここに開示した工程の実施態様では繊維は、最終製品に必要とされる密度にダイで圧縮され、最終製品の所望の安定性を得るために硬化される。これは繊維をダイの収縮部を通過させ、繊維の圧縮および硬化を簡単にするためにさせるスチームまたは繊維を硬化させる処理流体を収縮部の間近で束内に導入することによって実行される。繊維束の移動方向と同じ方向にまたは繊維束に対して90°以下の角度で流体を導入することも繊維の束の圧縮および成形を容易にし、収縮部を通る繊維の移動も容易にする。90°を大きく上回る方向で束によって繊維に及ぼされる力の成分は、収縮部を通る繊維の移動を妨げ、そして繊維束の圧縮および成形を妨げる。この位置での流体の導入は、繊維を硬化させるだけでなく、収縮部内で圧縮しやすくし、繊維による閉塞を妨げる。繊維束が処理流体と共にダイ集成体を通過する際に熱および圧縮エネルギーが繊維に加えられる条件は、ダイ集成体の設計によって調節してもよい。特に流入口セクション、成形セクションおよび流出口セクションの構造は、使用される繊維に最適な熱の総出量のための実験を繰り返すことによって変更、選択してもよい。
【0144】
管の形成のためにマンドレルは、管状構造体を周囲に形成することができる中央支持体を形成することを目的として繊維束の中央に導入される。マンドレルは、束がマンドレル上を通過する際に処理流体を繊維束に送出するための経路を含んでもよい。ここで説明する実施態様では繊維束がマンドレル上を通過する前に繊維束に割れ目を形成することは、繊維の移動を制御し、繊維を管状構造に安定させ、管状構造体を形成しやすくし、管状構造の崩壊の発生を減少させる。
図1
図2
図3
図3A
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G