(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】光学位相符号化距離検知のドップラー検知とドップラー補正のための方法とシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20230511BHJP
【FI】
G01S17/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118743
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2019538482の分割
【原出願日】2018-02-02
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519174791
【氏名又は名称】ブラックモア センサーズ アンド アナリティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】クラウチ,ステファン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】レイベル,ランディ,アール.
(72)【発明者】
【氏名】カリー,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ミルビッチ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ループアバターラム,クリシュナ
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125062(JP,A)
【文献】特開2000-338244(JP,A)
【文献】国際公開第2011/102130(WO,A1)
【文献】特開2009-291294(JP,A)
【文献】特開2011-107165(JP,A)
【文献】米国特許第04620192(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光による検知と測距(LIDAR)システムであって、
送信器と、受信器と、プロセッサとを備え、
前記送信器は、レーザーからのレーザー信号を変調することによって生成された位相符号化信号を送信するように構成されており、
前記受信器は、前記位相符号化信号の送信に応じて、帰還信号を受信するように構成されており、
前記プロセッサは、
前記帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルを判定し、前記交差スペクトルのピークに基づいて、前記帰還信号のドップラー周波数シフトを判定し、
送信された前記位相符号化信号と前記帰還信号の相互相関をフーリエ変換に基づいて求め、
前記ドップラー周波数シフトに基づいて、前記相互相関を補正し、
補正された前記相互相関のピークのタイムラグに基づいて距離を判定し、
データに基づいて車両が操作されるように距離を含むデータを自動運転車両に提供するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
前記プロセッサは、基準スペクトルに対する前記帰還信号の前記ドップラー周波数シフトを判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
前記位相符号化信号は、位相符号化無線周波数信号に関する位相の配列を示すコードに基づいて、前記レーザー信号を変調することにより生成される、
LIDARシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
光学混合器を備え、
前記プロセッサは、位相符号化無線周波数信号の第1のフーリエ変換を判定するように構成されており、
前記光学混合器は、電気信号を生成するために、前記帰還信号を、前記レーザー信号に基づいて生成された基準信号と混合するように構成され、
前記プロセッサは、前記電気信号の第2のフーリエ変換を判定するように構成されており、
前記プロセッサは、前記第1のフーリエ変換および前記第2のフーリエ変換に基づいて前記相互相関を判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
光学混合器を備え、
前記光学混合器は、電気信号を生成するために、前記帰還信号を、前記レーザー信号に基づいて生成された基準信号と混合するように構成され、
前記プロセッサは、前記電気信号の同相成分と前記電気信号の直交成分との間の交差スペクトルを判定するように、さらに構成され、
前記プロセッサは、前記交差スペクトルに基づいて、前記帰還信号の前記ドップラー周波数シフトを判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のLIDARシステムにおいて、
前記プロセッサは、前記帰還信号の前記ドップラー周波数シフトを判定する際に、前記交差スペクトルのピークに基づいて、前記帰還信号の前記ドップラー周波数シフトを判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のLIDARシステムにおいて、
前記プロセッサは、前記交差スペクトルに基づいて前記ドップラー周波数シフトを判定する際に、前記交差スペクトルの虚数部のピークに基づいて、前記ドップラー周波数シフトを判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項8】
請求項5に記載のLIDARシステムにおいて、
前記電気信号を生成するために、混合信号を検出するように構成される光検知器を備える、
LIDARシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のLIDARシステムにおいて、
前記光学混合器は、同相光信号および直交光信号を生成するように前記帰還信号を前記基準信号と混合するように構成されており、
前記光検知器は、第1の電気信号および第2の電気信号を生成して、前記同相光信号および前記直交光信号を検知するようにそれぞれ構成されており、
前記プロセッサは、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との間の前記交差スペクトルを判定するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
ディスプレイ装置を備え、
前記送信器は、前記位相符号化信号を複数のスポットに送信するように構成され、
前記プロセッサは、前記複数のスポットに位置する少なくとも1つの物体のドップラー補正位置を示す画像を前記ディスプレイ装置に提示するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
前記送信器は、前記位相符号化信号を、複数のスポットに送信するように構成されており、
前記プロセッサは、前記複数のスポットにおけるドップラー補正位置の点群に基づいて、少なくとも1つの物体を識別するデータを前記車両に通信するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のLIDARシステムにおいて、
ディスプレイ装置を備え、
前記送信器は、前記位相符号化信号を複数のスポットに送信するように構成されており、
前記プロセッサは、移動物体が静止物体と区別されるように、前記複数のスポットのうちの対応するスポットにマッピングされた前記ドップラー周波数シフトを示す画像を前記ディスプレイ装置に提示するように構成される、
LIDARシステム。
【請求項13】
光による検知と測距(LIDAR)システムの使用方法であって、
レーザーからのレーザー信号を変調することによって生成された位相符号化信号を送信するステップと、
前記位相符号化信号の送信に応じて、帰還信号を受信するステップと、
前記帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルを判定し、前記交差スペクトルのピークに基づいて、前記帰還信号のドップラー周波数シフトを判定するステップと、
送信された前記位相符号化信号と前記帰還信号の相互相関をフーリエ変換に基づいて求めるステップと、
前記ドップラー周波数シフトに基づいて、前記相互相関を補正するステップと、
補正された前記相互相関のピークのタイムラグに基づいて距離を判定するステップと、
データに基づいて車両が操作されるように距離を含むデータを自動運転車両に提供するステップと、を備える、
LIDARシステムの使用方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のLIDARシステムを備える自律車両制御システム。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載のLIDARシステムを備える自律車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、35 U.S.C.§119(e)のもと、2017年2月3日に出願され
た米国特許出願第15/423,978号の利益を主張し、その内容の全体が、本明細書
に完全に明記されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光検知測距のための、しばしばニーモニック、LIDARと呼ばれる、レーザーを使用
する距離の光学検知は、高度測定から画像化、衡突防止までの様々な用途に使用される。
LIDARは、レーダー(RADAR)等の、従来のマイクロ波測距システムよりも小さ
な光線サイズで、より細かい縮尺距離分解能を提供する。光検知測距は、いくつかの異な
る技術を用いて行うことができ、これには、物体までの光パルスの往復旅行時間に基づい
た直接測距、送信されたチャープ光信号と物体からの散乱された帰還信号との間の周波数
差に基づいたチャープ検知、および自然信号から区別可能な信号周波数位相変化の配列に
基づいた位相符号化検知が含まれる。
【0003】
許容域の精度と検知感度を達成するために、長距離LIDARシステムは、低いパルス
反復率と非常に高いパルスピーク電力を有する短いパルスレーザーを使用する。高いパル
ス電力は、光学要素の急速な劣化をもたらし得る。チャープされた位相符号化LIDAR
システムは、比較的低いピークの光出力を伴う長い光パルスを使用する。この構成では、
距離精度は、パルス持続時間ではなくチャープバンド幅または位相コードの長さと共に増
加し、したがって優れた距離精度を依然として得ることができる。
【0004】
有用な光学チャープバンド幅は、光搬送を調節するために広帯域の無線周波数(RF)
電気信号を使用して達成される。チャープLIDARにおける最近の進歩は、基準信号と
帰還光信号との間の周波数または位相の違いに比例する、RFバンドでの比較的低いうな
り周波数で生じる電気信号を生成するために、光検知器において帰還信号と混合される基
準信号としての、同じ調節された光搬送の使用を含む。検知器における周波数差のこの種
のうなり周波数検波は、ヘテロダイン検波と呼ばれる。これは、即時かつ安価に利用可能
なRFコンポーネントを使用するという利点等の、当技術分野で既知のいくつかの利点を
有する。特許第7,742,152号に記載された最近の研究は、本明細書で使用される
用語と一致しない用語を別にすれば、本明細書に完全に明記されているかのごとくその全
内容が参照により本明細書に組み込まれ、基準光信号、つまり送信光信号から分割された
光信号として使用する光学要素の新規でより単純な構成を示す。この構成は、該特許にお
いてホモダイン検波と呼ばれる。
【0005】
光搬送上で調節された位相符号化マイクロ波信号を用いたLIDAR検知もまた、使用
されてきた。ここで、バンド幅Bは、各位相(B=1/τ)を運ぶパルスの持続時間の逆
数に比例し、任意の位相符号化信号は多くの数のそのようなパルスから構成される。この
技術は、帰還信号における特定の周波数の位相(または位相変化)の配列を、送信信号の
それと相関させることに依存する。相関におけるピークに関係した時間遅延は、媒体にお
ける光速度による距離に関係する。距離分解能は、パルス幅τに比例する。この技術の利
点として、より少ないコンポーネントの必要、および位相符号化マイクロ波と光通信のた
めに開発された大量生産ハードウェアコンポーネントの使用があげられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、物体までの距離が光学位相符号化を使用して検知され、該物体の動きが
、ドップラー周波数シフトゆえにそのような用途に顕著に影響を与えるという状況と用途
を認識している。物体の速度を判定するためにドップラー効果を検知し、次にそのような
光学位相符号化から距離測定におけるドップラー効果を補償するための技術が提供される
。
【0007】
実施形態の第1のセットにおいて、方法は、位相符号化無線周波数信号に関する位相の
配列を指示する符号をプロセッサにおいて判定する工程と、位相符号化無線周波数信号の
第1のフーリエ変換を判定する工程を含む。該方法はさらに、位相符号化光信号を生成す
るために符号に基づいてレーザーからの光信号を調節する工程と、位相符号化光信号を送
信する工程を含む。さらに、該方法は、位相符号化光信号の送信に応じて、帰還光信号を
受信する工程と、レーザーからの光信号に基づいて帰還光信号を基準光信号と混合する工
程を含む。またさらに、該方法は、電気信号を生成するために光検知器において混合光信
号を検知する工程を含む。さらに加えて、該方法は、電気信号の同相分と電気信号の直角
分との間の交差スペクトルをプロセッサにおいて判定する工程、交差スペクトルのピーク
に基づいて、帰還光信号のドップラー周波数シフトを判定する工程を含む。またさらに、
該方法は、ドップラー周波数シフトに基づいてデバイスを操作する工程を含む。
【0008】
第1のセットのいくつかの実施形態では、帰還光信号を基準光信号と混合する工程は、
同相光信号と直角光信号を生成するために、帰還光信号を基準光信号と混合する工程を含
む。さらに、光検知器で混合光信号を検知する工程は、第一の電気信号を生成するために
第1の検知器で同相光信号を検知し、および第2の電気信号を生成するために第2の光検
知器で直角光信号を検知する工程を含む。さらに、交差スペクトルを判定する工程は、第
1の電気信号と第2の電気信号との間の交差スペクトルを判定する工程を含む。
【0009】
これらの実施形態のいくつかでは、同相光信号と直角光信号を生成するために帰還光信
号を基準光信号と混合する工程は、同相の帰還光信号と基準信号の和である第1の光信号
、同相の帰還光信号と基準信号の差である第2の光信号、直角の帰還光信号と基準信号の
和である第3の光信号、直角の帰還光信号と基準信号の差である第4の光信号を生成する
ために、帰還光信号を基準光信号と混合する工程を含む。これらの実施形態では、第1の
電気信号を生成するために第1の検知器で同相光信号を検知する工程は、第1の検知器で
第1の光信号と第2の光信号を検知する工程を含む。さらにこれらの実施形態では、第2
の電気信号を生成するために第2の光検知器で直角光信号を検知する工程は、第2の光検
知器で第3および第4の光信号を検知する工程を含む。
【0010】
第1のセットのいくつかの実施形態では、該方法はまた、電気信号の第2のフーリエ変
換をプロセッサにおいて判定する工程、および第2のフーリエ変換とドップラー周波数シ
フトに基づいて第3のフーリエ変換を判定する工程を含む。またさらに該方法は、第1の
フーリエ変換と第3のフーリエ変換に基づいて、プロセッサにおいて相互相関を判定する
工程、および相互相関における第1のピークのタイムラグに基づいて第1の距離を判定す
る工程を含む。これらの実施形態では、ドップラー周波数シフトに基づいたデバイスの操
作は、第1の距離に基づいてデバイスを操作する工程を含む。
【0011】
他の実施形態において、システムまたは装置またはコンピュータ可読媒体は、上記の方
法の1つ以上の工程を行うように構成される。
【0012】
さらに他の態様、特徴、および利点は、本発明を実行するために熟考された最良の様式
を含む、多くの特定の実施形態および実装を単に例示することによって、以下の詳細な説
明から容易に明らかになる。他の実施形態もまた、他の異なる特徴と利点が可能であり、
およびそのいくつかの詳細は、すべてが本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々
な明確な点で変更が可能である。したがって、図面と説明は、本質的に例示であるとみな
され、限定とは見なされない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
同様の参照符号が類似の要素を指す添付図面の図において、例として、および限定とし
てではなく、実施形態が例示される。
【
図1A】一実施形態に係る、距離測定のための送信された光学位相符号化信号の例を例示する概略的なグラフである。
【
図1B】一実施形態に係る、距離測定のための帰還光信号と共に、一連の2進数字として
図1Aの送信信号の例を例示する概略的なグラフである。
【
図1C】一実施形態に係る、2つの帰還信号との基準信号の相互相関の例を例示する概略的なグラフである。
【
図1D】一実施形態に係る、基準信号のスペクトルの例と、ドップラーシフト帰還信号のスペクトルの例を例示する概略的なグラフである。
【
図1E】一実施形態に係る、ドップラーシフト帰還信号の位相成分の交差スペクトルの例を例示する概略的なグラフである。
【
図2】一実施形態に係る、高分解能LIDARシステムのコンポーネントの例を例示するブロック図である。
【
図3A】一実施形態に係る、位相符号化LIDARシステムのコンポーネントの例を例示するブロック図である。
【
図3B】一実施形態に係る、ドップラー補償位相符号化LIDARシステムのコンポーネントの例を例示するブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る、距離に対するドップラー効果に関して判定と補償を行うための、ドップラー補償位相符号化LIDARシステムを使用する方法の例を例示するフローチャートである。
【
図5A】一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない実質的に静止した物体のための光検知器により出力された、同相と直角の電気的増幅の例を例示するグラフである。
【
図5B】一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入する移動物体のための光検知器により出力された、同相と直角の電気的増幅の例を例示するグラフである。
【
図6A】一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない、実質的に静止した物体に関する帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルの例を例示するグラフである。
【
図6B】一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない、実質的に静止した物体に関する帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルの例を例示するグラフである。
【
図6C】一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない、移動物体に関する帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルの例を例示するグラフである。
【
図7A】一実施形態に係る、送信信号のいくつかのブロックに対して平均していない、実質的に静止した物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図7B】一実施形態に係る、送信信号のいくつかのブロックに対して平均していない、実質的に静止した物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図7C】一実施形態に係る、送信信号のいくつかのブロックに対して平均した、実質的に静止した物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図7D】一実施形態に係る、送信信号のいくつかのブロックに対して平均した、実質的に静止した物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図8A】一実施形態に係る、ドップラー補償を伴う、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図8B】一実施形態に係る、ドップラー補償を伴う、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図9A】一実施形態に係る、同相光信号と直角光信号へ分離されない混合光信号に基づいたドップラー補償で、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。
【
図9B】一実施形態に係る、同相光信号と直角光信号へ分離される混合光信号に基づいたドップラー補償で、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)の上位トレースの例を例示するグラフである。
【
図10】一実施形態に係る、容易に識別されるドップラー効果を示すための、ドップラーアンビギュイティスペースの例を例示するグラフである。
【
図11】一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための多地点平均化の例を例示するブロック図である。
【
図12A】一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための補正の前と後の距離信号の例を例示するグラフである。
【
図12B】一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための補正の前と後の距離信号の例を例示するグラフである。
【
図12C】一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための補正の前と後の距離信号の例を例示するグラフである。
【
図12D】一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための補正の前と後の距離信号の例を例示するグラフである。
【
図13】一実施形態に係る、成功裡に処理された多数の異なるドップラーシフトを伴う多数の距離帰還の例を例示する画像である。
【
図14】本発明の実施形態が実施され得るコンピュータシステムを例示するブロック図である。
【
図15】本発明の実施形態が実装され得るチップセットを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
方法と装置とシステムとコンピュータ可読媒体が、光学位相符号化距離検知のドップラ
ー補正に関して記載される。以下の記載では、説明目的で、本発明の徹底的な理解を提供
するために、多数の具体的な詳細が明記される。しかしながら、本発明がこれらの具体的
な詳細なしで実施され得ることは、当業者に明白となる。他の事例では、本発明を不必要
に不明瞭化しないように、周知の構造およびデバイスがブロック図の形態で示される。
【0015】
広い範囲を明記する数値の範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体
的な非限定的例において明記された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら
数値は、本明細書の執筆時点でそれぞれの試験測定値に見られた標準偏差に必然的に起因
する特定の誤差を本質的に含んでいる。さらに、文脈から明白でない限り、本明細書に示
される数値は、最下位の数字によって与えられる暗黙の精度を有する。したがって値1.
1は、1.05~1.15の値を意味する。用語「約」は、所与の値を中心としてより広
い範囲を指すために使用され、文脈から明白でない限り、最下位の数字付近のより広い範
囲を意味し、「約1.1」は1.0~1.2の範囲を意味する等である。最下位の数字が
明確でない場合、用語「約」は、2倍を意味し、例えば「約X」は0.5X~2Xの範囲
の値を意味し、例えば約100は50~200の範囲の値を意味する。さらに、本明細書
に開示される範囲はすべて、包含される任意のおよびすべての部分範囲を含むことが理解
されるべきである。例えば、「10未満」の範囲は、最小値0と最大値10の間の(およ
びそれらを含む)、すなわち0以上の最小値および10以下の最大値、例えば1~4を有
する任意のおよびすべての部分範囲を含むことができる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、光信号上で調節された無線周波数の2進法(90度)
位相符号化の文脈で以下に記載される;しかし、実施形態はこの文脈に限定されない。他
の実施形態において、他の位相符号化は、異なる位相差(例えば30、60または180
度)または3つ以上の異なる位相での符号化を用いて使用される。実施形態は、単一の検
知器または対になった検知器での単一の光線とその帰還の文脈で記載され、他の実施形態
では、次に任意の既知の走査手段、リニアステッピングまたは回転式の光学要素、または
送信器のアレイまたは検知器のアレイまたは複数対の検知器等を使用して走査され得る。
【0017】
<1.位相符号化検知の概略>
図1Aは、一実施形態に係る、距離測定のための送信された光学位相符号化信号の例を
例示する概略的なグラフ(110)である。横軸(112)は、0の開始時刻から任意の
単位で時間を示す。左の縦軸(114a)は、任意の単位で送信信号中の電力を示す;お
よび右の縦軸(114b)は、任意の単位で送信信号の位相を示す。最も単純に位相符号
化LIDARの技術を例示するために、2進法の位相符号化が実証される。トレース(1
15)は、左の軸(114a)に関連する電力を示し、送信信号中で一定であり、および
送信信号外で0まで落ちる。点状のトレース(116)は、持続波信号に関連する信号の
位相を示す。
【0018】
以上のように、トレースは、送信信号の部分のための搬送(位相=0)と同相にあり、
次に短期間の間Δφ(位相=Δφ)だけ変化し、省略符号(117)によって示されるよ
うに送信信号上で繰り返し2つの位相間で切り替わる。一定位相の最短の間隔はパルス持
続時間τと呼ばれる符号化のパラメータであり、典型的にはバンドにおける最低の周波数
のいくつかの期間の持続時間である。逆数、1/τはボーレートであり、各ボーはシンボ
ルを示す。送信信号の時間中のそのような一定の位相パルスの数Nは、シンボルの数Nで
あり、符号化の長さを表す。2進法の符号化には二相値があり、および最短の間隔の位相
は、1つの値に関して0、および他の値に対して1と見なすことができ、したがってシン
ボルは1ビットであり、ボーレートはビットレートと呼ばれる。多相符号化には、多数の
位相値がある。例えば、Δφ*{0、1、2および3}等の4位相値、これはΔφ=π/
2(90度)に関しては、{0、π/2、πおよび3π/2}とそれぞれ同等であり;し
たがって、4位相値は、それぞれ0、1、2、3を表すことができる。この例では、各シ
ンボルは2ビットであり、ビットレートはボーレートの2倍である。
【0019】
位相偏移キーイング(PSK)は、
図1Aに例示されるように、基準信号(搬送波)の
位相を変更(調節)することによってデータを運ぶデジタル変調スキームを指す。変調は
、正確な時点でサインとコサインの入力を変えることによって刻み込まれる。無線周波数
(RF)において、PSKは、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)、RF識別(
RFID)、およびブルートゥース通信に広く使用される。代替的に、一定の基準波に関
して動作する代わりに、伝達はそれ自体に関して動作することができる。単一の送信波形
の位相における変化は、シンボルと見なすことができる。このシステムでは、デモジュレ
ータは、(基準波に関する)位相自体ではなく受信信号の位相における変化を判定する。
このスキームは連続位相間の違いに左右されるため、差動位相偏移変調(DPSK)と名
付けられる。デモジュレータは、受信信号の正確な位相を判定するために基準信号のコピ
ーを有する必要がないため(非コヒーレントスキーム)、DPSKは、通常のPSKより
もかなり単純に実施することができる。
【0020】
光学測距の用途では、搬送周波数は光周波数fCであり、およびRF f0は光搬送上
で調節される。数Nと持続時間τのシンボルは、望ましい距離精度と分解能を達成するた
めに選択される。シンボルのパターンは、符号化された信号と雑音の他の源から識別可能
なように選択される。したがって、送信信号と帰還信号との間の強い相関は、反射または
後方散乱された信号の強い徴候である。送信信号は、シンボルの1つ以上のブロックから
構成され、各ブロックは、雑音が存在する状態でさえ、反射または後方散乱された帰還と
の強い相関を提供するのに十分に長い。以下の論考では、MとNが負の整数でない場合、
送信信号は、1つのブロック当たりのNシンボルのMブロックから構成されると仮定され
る。
【0021】
図1Bは、一実施形態に係る、距離測定のための帰還光信号と共に、一連の2進数字と
して
図1Aの送信信号の例を例示する概略的なグラフ(120)である。横軸(122)
は、任意の単位で0の開始時刻後の時間を示す。縦軸(124a)は、0に対して任意の
単位で周波数f
c+f
0での光送信信号の振幅を示す。縦軸(124b)は、0に対して
任意の単位で周波数f
c+f
0での光帰還信号の振幅を示し、トレースを分離するために
軸(124a)からオフセットされる。トレース(125)は、00011010から始
まり、省略符号によって示されるように続くコードを生成するために
図1Aに示される位
相変化を伴う、M
*Nの2進法シンボルの送信信号を表す。トレース(126)は、動い
ていない物体から散乱された理想的な(雑音のない)帰還信号を示す(したがって、帰還
はドップラーシフトされていない)。振幅は縮小されるが、コード00011010は認
識可能である。トレース(127)は、移動しており、したがってドップラーシフトされ
ている物体から散乱された理想的な(雑音のない)帰還信号を表す。帰還は、適切な光周
波数f
c+f
0ではなく、かつ期待される周波数バンドでは十分に検出されないため、振
幅は縮小される。
【0022】
観察された帰還周波数f’は、方程式1によって得られるドップラー効果による帰還の
正確な周波数f=fc+f0とは異なる。
【0023】
【数1】
式中、cは媒体における光速度である。観察者と源が同じ速度で同じ方向に、2者間のベ
クトル上で移動している場合、2つの周波数は同じであることに留意されたい。2つの周
波数の違い、Δf=f’-fはドップラーシフト(Δf
D)であり、これは距離測定に関
する問題を引き起こし、および方程式2から得られる。
【0024】
【数2】
エラーの大きさは、信号の周波数fに伴って増加することに留意されたい。静止したLI
DARシステム(v
o=0)では、毎秒10メートル(v
o=10)で移動する物体と約
500THzの周波数の可視光線の場合、エラーのサイズは、約16メガヘルツ(MHz
、1MHz=10
6ヘルツ、Hz、1Hz=1サイクル/秒)であることに留意されたい
。以下に記載の様々な実施形態では、ドップラーシフトのエラーが検出され、処理の計算
用データを処理するために使用される。
【0025】
図1Cは、一実施形態に係る、2つの帰還信号との送信信号の相互相関の例を例示する
概略的なグラフ(130)である。位相符号化距離において、位相符号化反射の到着は、
送信信号または他の基準信号を帰還信号と相互相関させることによって帰還において検出
され、ヘテロダイン検波を使用し、しがってダウンミックスしてRFバンドへ戻すことに
よって、RF信号に関するコードを光検知器からの電気信号と相互相関させることにより
実際的に実施される。横軸(132)は、帰還信号との相互相関を計算する前に、符号化
された信号に適用された任意の単位の遅延時間を示す。縦軸(134)は、相互相関計算
の振幅を示す。1つの任意のラグに関する相互相関は、2つのトレースをたたみ込むこと
によって、すなわち2つのトレースにおける対応値を掛け、トレースの全ポイントにわた
って合計し、次に各タイムラグを反復することによって、計算される。代替的に、相互相
関は、各2つのトレースのフーリエ変換の乗算、続いてフーリエ逆変換によって行うこと
ができる。高速フーリエ変換(FFT)用の効果的なハードウェアとソフトウェアの実装
は、フーリエ(forward)変換とフーリエ逆変換の両方に広く利用可能である。相
互相関を行なうためのより正確な数学式は、以下で、いくつかの実施形態例に関して提供
される。
【0026】
相互相関計算は典型的に、帰還の振幅と位相が光検知器で検出された後に、アナログま
たはデジタルの電気信号を用いて行われることに留意されたい。容易にデジタル化できる
RF周波数範囲に光検知器の信号を移動させるために、光帰還信号は、検知器にぶつかる
前に基準信号と光学的に混合される。位相符号化送信光信号のコピーは基準信号として使
用可能であるが、基準信号としてレーザーによる持続波搬送周波数光信号出力を使用し、
検知器による電気信号出力の振幅と位相の両方を捕らえることも可能であり、多くの場合
望ましい。
【0027】
トレース(136)は、動いていない物体から反射された理想的な(雑音のない)帰還
信号との相互相関を示す(したがって、帰還はドップラーシフトされていない)。ピーク
は、送信信号の開始後に時間Δtにおいて生じる。これは、帰還信号が時間Δtで始まる
送信位相符号の1つのバージョンを含むことを示す。反射する(または後方散乱する)物
体の距離Rは、方程式3により提供されるように、媒体における光速度cに基づいた往復
走時遅延から計算される。
R=c*Δt/2 (3)
【0028】
点線のトレース(137)は、移動物体から散乱された理想的な(雑音のない)帰還信
号との相互相関を示す(したがって、帰還はドップラーシフトされている)。帰還信号は
、適切な周波数ビンへの位相符号化を含まず、相関はすべてのタイムラグに関して低いま
まであり、およびピークは容易に検出されない。したがって、Δtは容易には判定されず
、距離Rは容易には生成されない。
【0029】
より詳細に以下に記載される様々な実施形態によれば、ドップラーシフトは帰還信号の
電気的処理で判定され;およびドップラーシフトは、相互相関算定を修正するために使用
される。したがってピークは、より容易に見つけられ、および距離はより容易に判定され
得る。
図1Dは、一実施形態に係る、送信信号のスペクトルの例と、ドップラーシフト帰
還信号のスペクトルの例を例示する概略的なグラフである。横軸(142)は、任意の単
位の光搬送f
CからのRF周波数オフセットを示す。縦軸(144a)は、0に対して任
意の単位で、スペクトル密度と呼ばれる特定の狭い周波数ビンの振幅を示す。縦軸(14
4b)は、0に対して任意の単位のスペクトル密度を示し、およびトレースを分離するた
めに軸(144a)からオフセットされる。トレース(145)は、送信信号を表す;お
よびピークは、適切なRF f
0で生じる。トレース(146)は、移動しており、した
がってドップラーシフトされている物体からの後方散乱である理想的な(雑音のない)帰
還信号を表す。帰還は、適切なRF f
0にピークを有さない;しかし代わりに、Δf
D
によってシフト周波数f
Sへと青色シフトされている。
【0030】
いくつかのドップラー補正の実施形態では、
図1Dに例示されるように、送信信号と帰
還信号の両方のスペクトルをとることによりΔf
Dを見つけ、かつ各々におけるピークを
探し、次に対応するピークの周波数を引くよりもむしろ、RFバンドのミックスダウンさ
れた帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルをとるのがより効果的である。
図1Eは
、一実施形態に係る、交差スペクトルの例を例示する概略的なグラフ(150)である。
横軸(152)は、基準スペクトルに対する任意の単位の周波数シフトを示す;および縦
軸(154)は、0に対する任意の単位の交差スペクトルの振幅を示す。トレース(15
5)は、LIDARシステムに向かって移動する1つの物体(
図1の青色シフトΔf
D1
=Δf
D)、およびLIDARシステムから遠ざかる第2の物体(赤色シフトΔf
D2)
によって生成された理想的な(雑音のない)帰還信号との交差スペクトルを表す。要素の
1つが青色シフトΔf
D1である場合、ピークが生じる;および要素の1つが赤色シフト
Δf
D2である場合、他のピークが生じる。こうしてドップラーシフトが判定される。こ
れらのシフトは、衡突防止の用途に重要であり得る、LIDARに接近する物体の接近速
度を判定するために使用することができる。
【0031】
より詳細に以下に記載されるように、交差スペクトルで検出されるドップラーシフトは
、ピーク(135)が遅延Δtでドップラー補償ドップラーシフトされた帰還において明
白であり、かつ距離Rが判定可能なように、相互相関を補正するために使用される。ドッ
プラーシフトを判定し補償するために必要な情報は収集されず、先の位相符号化LIDA
Rシステムで使用されることもない。
【0032】
<2.光学位相符号化検知ハードウェアの概略>
どのように位相符号化検知アプローチが実施されるかを示すために、いくつかの一般的
かつ特異的なハードウェアアプローチが記載される。
図2は、一実施形態に係る、高分解
能LIDARシステムのコンポーネントの例を例示するブロック図である。レーザー源(
212)は、シンボル長さM
*Nと持続時間D=M
*N
*τを有する位相符号化光信号(
203)を生成するために、位相モジュレータ(282)で変調された搬送波(201)
を発する。スプリッタ(216)は、本明細書で送信信号とも呼ばれる標的ビーム(20
5)へと光信号を分割し、ビーム(203)およびはるかに少量のエネルギーを有する基
準ビーム(207a)のほとんどのエネルギーを用いて、物体(図示せず)から散乱され
た帰還光(291)との十分な混合が行われる。いくつかの実施形態では、スプリッタ(
216)は、位相モジュレータ(282)の上流に配置される。基準ビーム(207a)
は基準経路(220)を通過し、および基準ビーム(207b)として1つ以上の検知器
に向けられる。いくつかの実施形態では、基準経路(220)は、基準ビーム(207b
)が散乱光を伴って検知器アレイ(230)に達するのに十分な既知の遅延を導入する。
いくつかの実施形態では、基準ビーム(207b)は、別個の発振器から基準ビーム(2
07b)を局所的に生成する、より古いアプローチを指す、局部発振器(LO)信号と呼
ばれる。様々な実施形態では、より少ない柔軟性からより大きな柔軟性のアプローチへと
、基準は以下によって散乱または反射された場を伴って到達される:1)経路の長さが十
分に一致するように、検知器アレイで送信ビームの一部が反射するように鏡をその場に置
く;2)
図2に示唆されるように、特定の距離に対して観察または予想される位相差を補
償するために経路の長さを調節するかどうかに関わらず、検知器アレイ近くの光学素子を
用いて、経路の長さをぴったりと一致させ、かつ基準信号を散布するために、ファイバー
遅延を使用する;または3)経路の長さのミスマッチを補償する個別の変調を生成するた
めに、局部発振器波形変調周波数の偏移デバイス(音響光学変調器)または時間遅延を使
用する;またはいくつかの組み合わせ。いくつかの実施形態では、物体は、帰還が遅延な
く基準信号に十分にオーバーラップするのに十分なだけ接近し、かつ十分に長く伝達され
る。
【0033】
検知器アレイは、物体からの帰還ビーム(291)におおよそ垂直な平面に配置された
、対になった、または対になっていない単一の検知器、または対になった、または対にな
っていない検知器の1次元(1D)または2次元(2D)のアレイである。基準ビーム(
207b)と帰還ビーム(291)は、適切に検出される特性の光信号を生成するために
、0以上の光学混合器で結合される。干渉パターンの位相または振幅、またはいくつかの
組み合わせは、信号の持続時間Dの多数の時点で、各検知器の収集システム(240)に
よって記録される。信号の持続時間あたりの一時的なサンプルの数は、ダウンレンジの範
囲に影響を与える。数は多くの場合、信号あたりのシンボルの数、信号の反復度、および
利用可能なカメラフレームレートに基づいて選択された実際的な考察である。フレームレ
ートは、しばしば「デジタイザ周波数」と呼ばれるサンプリング帯域幅である。距離範囲
の基本的な限度のみが、レーザーのコヒーレンス長、および(明白な距離測定のための)
反復前のユニークコードの長さである。帰還ビットのデジタル記録が、先の伝達履歴から
の送信ビットの任意の部分と相関するため、これは可能である。収集されたデータは、図
14に関連して以下に記載されるコンピュータシステム、または
図15に関連して以下に
記載されるチップセット等の、処理システム(250)に利用可能になる。ドップラー補
償モジュール(270)は、ドップラーシフトのサイズ、および本明細書に記載される他
の補正と共にそれに基づいた補正範囲を決定する。既知の装置またはシステムが、レーザ
ー源(212)、位相モジュレータ(282)、ビームスプリッタ(216)、基準経路
(220)、光学混合器(284)、検知器アレイ(230)、または収集システム(2
40)を実装するために使用されてもよい。標的上での氾濫または焦点への光結合、また
は瞳面を経た焦点は示されない。本明細書で使用されるように、オプティカルカプラは、
とりわけ真空、空気、ガラス、結晶、鏡、レンズ、光サーキュレータ、ビームスプリッタ
、位相板、偏光子、光ファイバー等の単独または組み合わせ等の、1つのコンポーネント
から別のコンポーネントへと光を配向するために空間座標内の光の伝播に影響を与える任
意のコンポーネントである。
【0034】
いくつかの実施形態では、電気光学モジュレータは変調を提供する。システムは、様々
な実施形態に関して以下により詳細に記載されるように、望ましいダウンレンジ分解能に
適した長さM
*Nの位相コードとシンボル持続時間τを生成するように構成される。例え
ば、3D画像化の用途では、パルスM
*Nの総数は、約500~約4000の範囲にある
。処理がデジタルドメインで行われるため、2の累乗として、例えば512~4096の
間隔で、M
*Nを選択すると有利である。平均化が行われない場合、Mは1である。不規
則雑音が寄与する場合、Mが約10であると有利である。その結果、Nは、M=1では5
12~4096の範囲にあり、およびM=10では約50~約400の範囲にある。50
0Mbps~1Gbpsのボーレートでは、これらのコードの持続時間は、したがって約
500ns~8マイクロセカンドである。距離ウィンドウは、これらの条件下で数キロメ
ートル拡張可能であり、およびドップラー分解能はまた極めて高くなり得ることに留意さ
れたい(送信信号の持続時間に依存)。プロセスと機器とデータ構造は、例示の目的で特
定の配置の一体型ブロックとして
図2に示されるが、他の実施形態では、1つ以上のプロ
セスまたはデータ構造、またはそれらの一部は、異なる方式で、同じまたは異なるホスト
上に、または1つ以上のデータベースに配置され、または省略され、または1つ以上の異
なるプロセスまたはデータ構造が同じまたは異なるホストに含まれる。例えば、スプリッ
タ(216)と基準経路(220)は、0以上のオプティカルカプラを含む。
【0035】
図3Aは、位相符号化LIDARシステム(300a)のコンポーネントの例を例示す
るブロック図である。物体(390)は、システム(300a)の動作を例示するために
描かれるが、物体(390)はシステム(300a)の一部ではない。システムは、レー
ザー源(310)、ビームスプリッタ(312)、位相モジュレータ(320)、極性ビ
ームスプリッタ(322)、光学混合器(360)、光検知器(330)、および処理シ
ステム(350)を含み、後者はデジタルコードモジュール(372)とドップラー補正
モジュール(370)を含む。光信号は太い矢印で、電気信号は細い矢印で描かれる。
【0036】
電気工学では、位相変調(数学関数exp(iωt)の実数部と虚数部との間の角度変
調に対応)を伴うシヌソイドは、4分の1サイクル(π/2ラジアン)まで位相において
オフセットされる2つの振幅変調シヌソイドへと分解され、またはそれから合成され得る
。3つのすべての関数が同じ周波数を有している。振幅変調シヌソイドは、0位相での同
相分(I)として知られ、かつπ/2位相での直角分(Q)として知られる。レーザー(
310)は、搬送周波数fCで光信号を生成する。レーザー光信号Lは、方程式4によっ
て数学的に表される。
L=I0exp(iωt) (4)
式中、I0はレーザーによる強度出力であり、exp()はexp(x)=ex等の指数
関数であり、iは、-1の平方根の特性を有する虚数であり、tは時間であり、およびω
=2πfCは光学搬送周波数fCに対応する角周波数である。数学的には、この式は、実
数部=I0Rcos(ωt)と虚数部=I0Isin(ωt)を有し、ここでI0Rは強
度(同相)の実数部であり、およびI0Iは虚数部である。振動の位相は、実数部と虚数
部との間の角度から得られる。したがって、L=I0Rcos(ωt)+iI0Isin
(ωt)、およびI0は、実数部と虚数部の二乗の合計の根であり、I0
2=I0R
2+
I0I
2である。スプリッタ(312)は、方程式5から得られる基準信号(局部発振器
と呼ばれる)LOとして使用するための信号の強度の小さな部分を対象とする。
LO=ALO exp(iωt)=AR cos(ωt)+i AIsin(ωt)(
5a)
式中、Aはスプリッタ(312)の強度効果を表す定数である。電界ELOは、したがっ
て方程式5bとして書くことができる。
ELO=ALOeiωt (5b)
基準信号(LO)が未変調のレーザー信号である場合、全信号は同相であり、および虚数
成分は0であり、したがって以下である。
LO=A cos(ωt) (5c)
【0037】
処理システム(350)のデジタルコードモジュール(372)は、B(t)として表
される、光搬送上に位相変化として課されるシンボルのデジタルコードを示す電気信号を
送り、ここでb(t)は、tの関数として0~π/2の間で切り替わる。位相モジュレー
タ(320)は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)からデジタル回線
を取り出し、それらを増幅し、そしてEO位相モジュレータを駆動することによって、光
搬送上に位相変化を課す。送信された光信号(T)がその後、方程式6から得られる。
T=C exp(i[ωt+B(t)]) (6)
式中、Cは、フラクションAの散乱、および位相モジュレータ(320)によって課され
た増幅またはさらなる低減による、I0における低減を説明する定数である。
【0038】
任意の位相モジュレータをモジュレータ(320)として使用してもよい。例えば、ニ
オブ酸リチウム等の結晶を含む電気光学モジュレーター(EOM)が使用され、その屈折
率は、局所電場の強度の関数である。それは、ニオブ酸リチウムが電場に露出している場
合、光がそれをよりゆっくりと通過するであろうことを意味する。しかし、結晶を去る光
の位相は、光がそれを通過するのにかかる時間の長さと正比例する。したがって、EOM
を出るレーザー光ビームの位相は、デジタルコードモジュール(372)によって提供さ
れるデジタルコードに従い、結晶における電界の変化によって制御することができる。位
相変化は、ボーレート、1/τとほぼ等しいバンド幅(B)を用いて、広帯域の周波数信
号を引き起こす。
【0039】
位相モジュレータ(320)による位相符号化光信号出力は、極性ビームスプリッタ(
PBS)(322)または他のサーキュレータ光学素子等の、いくつかのオプティカルカ
プラを通じて伝達され、その後、送信信号を運ぶビームにおいて任意の物体(390)に
よって散乱される。例えば、ファイバー連結極性ビームスプリッタコンバイナーは、この
光学部品としてファイバーベースのサーキュレータよりもポート間のよりよい分離を提供
する。これは、送信と受信の間で十分に分離されない信号が距離プロファイルにおいて望
ましくない大きなピークとして現れるため、重要である。したがって、送信信号はポート
1に注入され、ポート2から放射され、そして後方散乱帰還信号はポート2で受信され、
ポート3を出る。いくつかの標的(例えば金属標的)は、ビームの偏波を保全し、および
いくつかの標的(例えば散乱標的)は、帰還ビームを脱偏波する。いくつかの実施形態で
は、脱分極されない標的を適切に補償するために4/1波長板が送信光学に含まれている
。
【0040】
帰還信号(324)は、オプティカルカプラ、例えばPBS(322)によって光学混
合器(360)に配向され、ここで帰還光信号(324)は、方程式5によって得られる
基準光信号(LO)(314)と混合される。透過ビームによって遮られたk番目の物体
からの帰還信号Rは、方程式7aから得られる。
Rk=Ak exp(i[(ω+ωDk)(t+Δtk)+B(t+Δtk)])(
7a)
式中、Akは、物体(390)への、および物体(390)からの伝播と、k番目の物体
(390)での散乱に起因する強度の損失を説明する定数であり、Δtkは、LIDAR
システムとk番目の物体(390)との間の往復旅行時間であり、およびωDk=2πΔ
fDは、k番目の物体のドップラー周波数シフト(便宜上、本明細書ではドップラーシフ
トと呼ばれる)の角周波数である。次に、すべての標的に関して合計された帰還信号、E
Rの電界は、方程式7bから得られる。
【0041】
【0042】
光学混合器(360)において一致する信号(324)と(314)は、混合されてい
る2つの光信号の周波数と位相と振幅における違いに関係するうなり周波数を有する混合
光信号(362)と、光学混合器(360)の機能に応じた出力を生成する。本明細書で
使用されるように、ダウンミックスは光ヘテロダイン検波を指し、これは非線形の光学プ
ロセスを使用したヘテロダイン検波原則の実装である。本明細書において「ダウンミック
ス」と呼ばれる光ヘテロダイン検波では、いくつかの光周波数における対象の光信号は、
すぐ近くの周波数に設定されている基準「局部発振器」(LO)と非直線的に混合される
。望ましい結果は差周波数であり、これは、もとの光周波数信号の情報(振幅、位相、お
よび周波数変調)を伝えるが、RFバンドで好都合にも、本明細書でうなり周波数と呼ば
れる、より低くより容易に処理された周波数で振動する。生の信号とも呼ばれるそのよう
な混合光信号の例は、
図5Aに関連して以下に示される。いくつかの実施形態では、この
うなり周波数は、RFアナログデジタル変換器(ADC)によって容易にデジタル化する
ことができる電気アナログ信号等の、電気信号(332)として光検知器から出力するこ
とができるRFバンドにある。デジタル電気信号(332)は、処理システム(350)
へ入力され、相互相関と距離を判定するために、およびいくつかの実施形態では速度とド
ップラーシフトを判定するために、ドップラー補償モジュール(370)によって、モジ
ュール(372)からのデジタルコードと共に使用される。
【0043】
いくつかの実施形態では、生の信号は、ドップラーピークを見つけるために処理され、
およびその周波数ωDは、相関計算を修正し、かつ正確な距離を判定するために使用され
る。他の実施形態において、光学混合器と処理が、同相分と直角分を判定し、および、ま
ずωDを推定し、次にωDを使用して相互相関計算を修正してΔtを導くために、その分
離を使用するように構成されると有利であることがわかった。ωDの値もまた、物体の速
度を示すために使用される。Δtの値はその後、上記の方程式3を使用して物体への距離
を判定して提示するために使用される。光学混合器によるI信号とQ信号の分離は、ドッ
プラーシフトの徴候を明確に判定することを可能にする。
【0044】
ここで、一実施形態に従い、ハードウェアの実施形態の例は、位相符号化信号の同相と
直角(I/Q)信号の同期検波を支持するように設計されている。このアプローチの利点
は、非常に安いが高帯域の、波形生産必要高(2進法のデジタルまたはポリ位相デジタル
コード)、および最小限の変調要件(単一の電気光学位相モジュレータ)である。90度
の光ハイブリッド光学混合器は、その後にデジタル化される2つのチャネル上の光学的ダ
ウンミックス信号のI/Q検出を可能にする。このシステムは、非常に柔軟な「定義され
たソフトウェア」測定アーキテクチャが生じるのを可能にする。
【0045】
図3Bは、一実施形態に係る、ドップラー補償位相符号化LIDARシステム(300
b)のコンポーネントの例を例示するブロック図である。この実施形態は、π/2によっ
て分離された二相での、しかし電気的分離ではなく同相分と直角分の光学的分離での、2
進法位相符号化を使用する。物体(390)は、システム(300a)の動作を例示する
ために描かれるが、物体(390)はシステム(300a)の一部ではない。システムは
、レーザー源(310)、ビームスプリッタ(312)、位相モジュレータ(320)、
極性ビームスプリッタ(322)、
図3Aの一般的な光学混合器(360)の代わりに9
0度ハイブリッド混合器(361)、
図3Aの光検知器(330)の代わりに平衡光検知
器(331)、および処理システム(350)を含み、処理システム(350)はデジタ
ルコードモジュール(372)とドップラー補償モジュール(371)を含む。光信号は
細い矢印で、および電気信号は細い矢印で表される。レーザー(310)は、光搬送周波
数f
Cで光信号を生成する。スプリッタ(312)は、基準信号(局部発振器と呼ばれる
)LO(314)として使用する信号の電力の小部分を配向する。処理システム(350
)のデジタルコードモジュール(372)は、位相変化として光搬送に課されるシンボル
のデジタルコードを指示する電気信号を送る。位相モジュレータ(320)は、上記のよ
うに、光搬送に位相変化を課す。
【0046】
位相モジュレータ(320)による位相符号化光信号出力は、極性ビームスプリッタ(
PBS)(322)等の、いくつかのオプティカルカプラを通じて伝達され、その後、送
信信号を運ぶビームによって遮られた任意の物体(390)によって散乱される。帰還信
号(324)は、オプティカルカプラ、例えばPBS(322)によって90度ハイブリ
ッド光学混合器(361)に配向され、ここで帰還光信号(324)は、方程式5bによ
って得られる基準光信号LO(314)と混合される。帰還信号Rは、方程式7aから得
られる。ハイブリッド混合器は、それぞれI+、I-、Q+、およびQ-と名付けられた
4つの光信号を出力し、方程式8a~8dに定義されるように、RIとして示される帰還
信号Rの同相分、RQとして示される帰還信号Rの直角分をLOと組み合わせる。
I+=LO+RI (8a)
I-=LO-RI (8b)
Q+=LO+RQ (8c)
Q-=LO-RQ (8d)
式中、RIは、帰還信号RのAC成分の同相コヒーレント交差項であり、およびRQは、
帰還信号RのAC成分の90度外れた位相コヒーレント交差項である。例えば、上記の関
係の電界は、上記の方程式5bと方程式7b、および方程式8h~8kを導く以下の方程
式8e~8kに基づいて表現され得る。
【0047】
【数4】
式中、
*は複素数の複素共役を示し、Imag()は複素数の虚数部を返す関数であり、
およびReal()は複素数の実数部を返す関数である。AC項
【0048】
【数5】
は、信号の光周波数部分の全てを取り消し、帰還信号のRF部分を伴うLOのRF「うな
り」(この場合はドップラーシフトとコード関数)のみを残す。項|E
LO|
2と|E
R
|
2は、一定の(直流、DC)項である。後者は前者に関して無視できる;したがって、
後者の項は、方程式8aから方程式8dの特定の形態として、方程式8hから方程式8k
に表される組み合わせにおいて無視される。
【0049】
【0050】
方程式9aと9bに従い、2つの同相分I+とI-は、チャネル1(Ch1)上でRF
電気信号を生成するために平衡検知器ペアにおいて結合され、および2つの直角分Q+と
Q-は、チャネル2(Ch2)上でRF電気信号Qを生成するために第2の平衡検知器ペ
アにおいて結合される。
I=I+ -I- (9a)
Q=Q+ -Q- (9b)
平衡検知器(光検知器の平衡ペアを備える)の使用は、同相雑音の抹殺という利点を備え
、これは、高い信号対雑音比(SNR)を備えた信頼できる測定値を提供する。いくつか
の実施例では、そのような同相雑音は無視してもよく、またはそうでなければ重要ではな
い;したがって、単純な光検知器または不平衡ペアが、平衡ペアの代わりに使用される。
その後、ドップラー補償モジュール(371)は、対応する速度で、信号IとQを使用し
て1つ以上のドップラーシフトωDを判定し、次にデジタルコードモジュール(372)
と信号IおよびQからの値ωDと値B(t)を使用して、補正された相関トレースを生成
し、該トレースにおいてピークは1つ以上の速度の各々で1つ以上のΔtを示す。多数の
速度が検出される場合、各々は対応する多重相関トレースのピークに関係する。いくつか
の実施例では、これは、どの電流の速度/位置ペアリングが、同様の速度/位置の先のペ
アリングと最も関係する可能性があるかを判定するために、一致処理によって行われる。
1つ以上のΔtはその後、上記の方程式3を使用して1つ以上の距離を判定するために使
用される。
【0051】
最初に相関に使用され、そして走査時に各測定点のために再度使用されるコードの周波
数領域表示を準備すると有利である;したがって、これはいくつかの実施形態で行われる
。持続時間D=(M*N)*τの長いコードは、透過光上に符号化され、および同じ持続
時間の帰還信号は、データ収集エレクトロニクスによって収集される。同じデータストリ
ーム、および信号対雑音比(SNR)を改善するために平均された結果において、相関を
複数回導くことができるように、コードと信号の両方が、長さNのMより短いブロックへ
と解読される。Nシンボルの各ブロックは、Nシンボルの異なるブロックとは異なり、し
たがって各ブロックは独立した測定値である。したがって、平均は、帰還信号の雑音を減
らす。入力I/Q信号はπ/2によって位相に分割される。いくつかの実施形態では、よ
り詳細に以下に記載されるように、さらなる平均化が、内部光学から純粋に反射の効果を
取り除くために、照らされたいくつかのスポットに対して行なわれる。
【0052】
<3.光学位相符号化検知法>
示されたアプローチは、I/Q信号(電気信号または光信号のいずれか)を使用した交
差スペクトルの計算のために位相差を利用し、これはドップラー周波数における明確なピ
ークを提供する。アプローチはまた、距離を判定するための相関に関する複雑な信号を構
成するためにI/Q信号の位相差を利用する。ドップラー補償は、複素帰還信号のFFT
をまずとり、次に周波数ビンのアレイ内のFFTの値を偏移させることにより行われる。
補正された信号は、逆FFTを偏移FFTに適用することにより回復可能であるが、偏移
FFTがいくつかの実施形態ではコードFFTとの相関に直接使用されるため、これは必
要ではない。他の実施形態において、複素帰還信号は、交差スペクトルで測定されたドッ
プラー周波数から形成された複素指数関数により掛け算され、および補正された信号のF
FTはコードとの相関に使用される。いくつかの実施形態では、相関は、有限のインパル
ス応答(FIR)フィルタを使用して判定される。相関(本明細書では距離プロファイル
とも呼ばれる)が各コード/信号ブロックごとに計算された後、結果がMブロックに関し
て平均され、および標的への距離が、平均距離プロファイルにおけるピークの時間遅延か
ら計算される。距離プロファイルに複数のピークがあれば、アプローチは次に、複数の標
的への距離を記録する。
【0053】
図4は、一実施形態に係る、距離に対するドップラー効果に関して判定と補償を行うた
めの、ドップラー補償位相符号化LIDARシステムを使用する方法例(400)を例示
するフローチャートである。行程は、例示目的のために特定の順序で不可欠な工程として
図4に描かれるが、他の実施形態では、1つ以上の工程またはそれらの一部が、異なる順
序で、時間的に重なり合って、連続して、または平行して実行され、または省略され、あ
るいは1つ以上の追加の工程が加えられ、または方法が、方法のいくつかの組み合わせに
より変更される。いくつかの実施形態では、行程(403)を介する工程(433)と(
410)は、処理システム(350)によって行なわれる。例えば、行程(403)およ
び工程(410)から(433)のすべてにおけるデジタルコードのFFTの判定は、図
3Aのドップラー補償モジュール(370)または
図3Bのモジュール(371)によっ
て行われる。
【0054】
工程(401)では、トランシーバー、例えばLIDARシステムは、位相コード配列
の入力に基づいて位相符号化光信号を送信するように構成される。レーザーからの未変調
入力光信号の一部(例えば1%~10%)、または位相符号化送信信号もまた、基準光学
経路へと配向される。トランシーバーもまた、送信信号によって照らされた外部物体から
後方散乱された光信号を受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、工程(4
01)は、例えば
図3Aまたは
図3Bに例示されるように、または同等に、以下の行程の
1つ以上の関数をも提供するためにハードウェアにある他の光学コンポーネントを構成す
る行程を含む。送信信号がビームである必要はないことに留意されたい。分岐信号は確か
に、単一の距離プロファイル内に多くの異なる距離とドップラー値を見せるだろう;しか
し、照らされたスポット内に交差距離分解能を提供しない。しかしながら、物体を識別す
るのに有用な交差距離分解能を提供するために、逐一の走査を備えた固有の稀薄性を提供
する細いビームを使用すると有利である。
【0055】
行程(403)において、M*Nシンボルの配列で構成されたコードは、レンジングに
使用するために生成され、Mブロック間の重複なくNシンボルのMブロックを表わす。い
くつかの実施形態では、そのような位相符号化によるRF信号のフーリエ変換もまた、工
程(403)の間に判定され、なぜなら変換は、以下に記載されるように工程(423)
で繰り返し使用可能であり、および各送信ごとに個別にフーリエ変換を計算する必要がな
いのは有利であるからである。例えば、複素(実際成分と虚数成分)デジタル信号はRF
角周波数ωで生成され、およびコードによる位相π/2が生成され、そして複素デジタル
高速フーリエ変換(FFT)は、この複素デジタル信号に関して計算される。結果として
生じる複素FFT関数は、複素信号の複素共役をとることにより工程(423)での動作
のために準備される。例えば、複素FFT、CodeFFTの複素共役は、コードのMブ
ロックの各々に関して方程式10により表される。
CodeFFT=conj(FFT(exp(iBt)) (10)
式中、conj()は複素共役動作を表し、すなわちconj(x+iy)=x-iyで
ある。この複素FFTは、以下に記載されるように、工程(423)での続く使用のため
に、例えばコンピュータ可読媒体に保存される。
【0056】
工程(405)において、方程式4によって表される、レーザー出力の第1の部分は、
方程式6によって表される、送信された位相符号化信号を生成するためにデジタルコード
モジュール(372)から受信したコードを使用して位相符号化され、物体または物体の
一部が存在し得る、または存在しないであろう場所のスポットに向けられる。加えて、工
程(405)において、レーザー出力の第2の部分は、方程式5aまたは方程式5bによ
って表されるように、局部発振器(LO)信号とも呼ばれ、基準経路に沿って、基準信号
として配向される。
【0057】
工程(407)において、方程式7によって表されるように、なんらかの旅行時間遅延
Δtとドップラーシフトω
Dを伴う後方散乱帰還信号Rは、1つ以上の混合光信号(36
2)を出力するために、方程式5aまたは方程式5bによって表されるように、基準信号
LOと混合される。混合信号は、同相分と直角分に通知する。例えば、
図3Bに例示され
る実施形態では、混合光信号(362)は、同相分と直角分を通知する4つの光信号、つ
まり方程式8a~8dで定義されるI+、I-、Q+、Q-を含む。他の実施形態では、
他の光学混合器が使用される。例えば、いくつかの実施形態では、依然としてI/Q検出
を支持するために、3×3カプラが90度の光学ハイブリッドの代わりに使用される。
【0058】
工程(408)において、混合光信号は、光信号を1つ以上の対応する電気信号に変換
するために、1つ以上の光検知器に向けられ、および光検知器によって検知される。例え
ば、
図3Bに例示される実施形態では、2つの電気信号が検知器によって生成される。1
つのチャネル(Ch1)上の1つの電気信号は、方程式9aから得られるダウンミックス
同相分Iを示す;および、異なるチャネル(CH2)上の別の電気信号は、方程式9bに
より得られるダウンミックス直角分Qを示す。タウンミックス複素信号Sは、方程式11
により得られるように、2つの電気信号に基づいて計算される。
S=I+iQ (11a)
信号SとIとQは、少なくとも持続時間D=M
*N
*τの時間tの関数であることに留意
されたい。
【0059】
いくつかの実施形態では、PBS(322)等の、帰還信号経路に沿った内部光学コン
ポーネントで生成された位相符号化信号の偽造コピーを取り除くために、いくつかの異な
る帰還信号S(t)に対して平均化が行なわれる。そのような偽造コピーは、外部物体か
らの実際の帰還との相関を減らし、したがってかろうじて検出できる実際の帰還を遮断す
ることができる。単一の物体がすべてのそれらの照らされたスポットにないように、異な
る照明スポットの数Pと帰還に対して平均化が行われると、次に平均は、内部光学部品に
よって生成されたコードの偽造コピーによって支配される。コードのこの偽造コピーはそ
の後、補正された複素電気信号S(t)における実際の帰還のみを残して、帰還信号から
除去され得る。Pは、同じ物体がすべてのスポットで照らされていないことを保証するの
に十分に大きい数である。P=100と同等に低い値は、グラフィカル処理ユニット(G
PU)の実装にとって計算上有利である;他方で、P=1000と同等に高い値は、フィ
ールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の実装にとって好ましく、かつ適用可能
である。実施形態の例では、Pは約100である。他の実施形態では、用途に応じて、P
は約10~約5000の範囲にあり得る。
図11は、一実施形態に係る、内部光からの帰
還を取り除くための多地点平均化の例を例示するブロック図である。工程(409)と(
410)はこの補正を行なう。
【0060】
工程(409)では、P帰還が受信されたかどうかを判定する。否であれば、制御は、
他のスポットを照らすために工程(405)に戻る。是であれば、次に制御は工程(41
0)に移る。工程(410)において、平均信号SS(t)が方程式11bに従って計算
され、ここで持続時間Dの各受信信号は、Sp(t)と呼ばれる。
【0061】
【数7】
この平均信号は、方程式(11c)により得られるように、後の工程で受信信号S(t)
として使用する補正信号S
pC(t)を生成するために、受信信号S
p(t)の各々を補
正するために使用される。
S(t)=S
pC(t)=S
p(t)-S
S(t) (11c)
いくつかの実施形態では、内部光は、システムの多くの続く展開のために保存されるS
S
(t)に関する固定値を生成するために、抑制された条件下で一旦較正される。したがっ
て工程(410)は、方程式(11c)を適用する工程のみを含む。いくつかの実施形態
では、内部光によって生成されたコードの偽のコピーは、十分に小さく、または外部物体
への距離とは十分に異なる関連距離であり、その場合、工程(409)と(410)は省
略することができる。したがって、いくつかの実施形態では、工程(409)と(410
)は省略され、および制御は、工程(410)の方程式11cではなく工程(408)か
らのS(t)を使用して、工程(408)から工程(411)へと直接向かう。
【0062】
工程(411)において、交差スペクトルは、ドップラーシフトを検知するために使用
される。以下の説明は、例示の目的で提供される;しかしながら、様々な技術の特徴と有
用性は、この説明の正確性または完全性によって制限されることはない。IとQの周波数
成分は、ドップラー(シヌソイド)とコード(方形波)を含む。ドップラー成分に関して
、Iは、それがシヌソイドであるため90度ずつQを遅らせる、または進ませると予想さ
れる。遅延または進行は、ドップラーシフトの徴候に依存する。コード成分は、この効果
(時間の関数として帰還ビットを示すIとQのレベルが、同相または180度外れた位相
のいずれでも移動する)を実証しない。XS動作のブラケット内の動作は、任意の周波数
でのIとQの間の複素振幅差を計算する。任意の周波数においてIとQの間に90度の位
相差がある場合(ドップラー成分等の場合)、これは結果の虚数部にあらわれる。コード
周波数成分は、逆に結果の虚数部には現われず、なぜなら上記のように、コードのIとQ
の態様は、同相または選ばれた2進コードに対して180度外れた位相のいずれかであり
、したがって各周波数における複素振幅差は常に真である。交差スペクトル動作、XS(
)は、ドロップアウトするコードを伴い、ドップラーに関する信号スペクトルのそれらの
態様のみを明らかにする方法として見ることができる。これは、ドップラー周波数成分を
見つけることをより容易にする。対照的に、帰還信号の通常のスペクトルでは、コード周
波数成分は、十分なドップラー推定/補正を行うのに望ましいドップラー周波数成分を曖
昧にし得る。
【0063】
例えば、交差スペクトルは方程式12によって得られるように算出される。
XS(S)=FFF(I)*conj[FFT(Q)] (12)
方程式12から得られるXS(S)は、複素値アレイである。この交差スペクトルにおけ
るピークは、帰還信号における1つ以上のドップラーシフトωDを表す。任意のピーク検
出法が、交差スペクトルXS(S)におけるピークを自動的に判定するために使用されて
もよい。一般に、交差スペクトルの虚数成分の大きな正または負のピークの識別は、ドッ
プラーシフトについての情報を明らかにするだろう。しかしながら、いくつかの特殊事情
の下では、実数部もまたそのような情報を明らかにし得る。そのような状況の一例は、類
似するドップラー値を有する多数の距離帰還の存在であろう。実数部における平面振幅は
、そのような状況を示すことができる。いくつかの実施形態では、交差スペクトル動作は
、各データブロック上で別々に行なわれ、およびMブロック上で平均化される。これらの
ドップラーシフトと対応する相対速度は、さらなる使用のために、例えば1つ以上のコン
ピュータ可読媒体に保存される。
【0064】
工程(413)において、ダウンミックス帰還複素信号Sの複素フーリエ変換が、例え
ばハードウェアまたはソフトウェアに実装された複素FFT関数FFT(S)を使用して
判定される。
【0065】
工程(421)において、FFT(S)は、以下に記載の方程式14aまたは14bか
ら得られるように、補正スペクトル、現在の0ドップラーシフトまたは工程(411)で
観察されるより多くのドップラーシフトに関して、SFFTを生成するためにドップラー
シフトによってシフトされる。Foucras 2014に示されるように、方程式27
、時間的推移の定理は、ドップラーコード補償を達成するために適用することができる。
実際、時間的推移の周波数定理は方程式13から得られる。
F(x(t+δ))=exp(iζδ)F(ζ) (13)
式中、Fはフーリエオペレーターを示し、x(t)は時間tの関数であり、δは時間的推
移であり、およびF(ζ)はx(t)のフーリエ変換を示す。次に、FFTベースの取得
方法については、コードドップラーによって引き起こされたコード遅延は、周波数領域で
局所的に広がるコードのFFTに複雑な指数関数を掛けることにより償うことができる。
この方法の利点は、拡散コード配列のフーリエ変換が構築され、メモリに保存されている
場合、後退した(拡張した)拡散コードのフーリエ変換は、単純な方法で周波数領域へと
変換することができるということである。そして正確な拡散コードを素早く生成すること
ができる。この技術は、Krasner 1998により特許取得された。ドップラーの
効果は、コードのスペクトルを周波数シフトすることである。したがって、素早く相互相
関を計算するために重畳積分定理を使用する場合、測定されたコードの周波数成分は、基
準の周波数成分と一致しない。ドップラー補償によって、周波数スペクトルは整列(一直
線)に戻され、相互相関が再び効果的になる。
【0066】
いくつかの実施形態では、正確なスペクトルは方程式14aを使用して計算される。
SFFT=circshift(FFT(S),ωD) (14a)
式中、circshift(x,y)は、自変数の量yによって有限領域上の自変数の関
数xをシフトし、それによって、有限領域の一方端からシフトされたものは何であれ、有
限領域の反対の端へとシフトされる。いくつかの実施形態では、正確なスペクトルは方程
式14bを使用して計算され、方程式13に示されるように、複素指数関数に乗算し、次
にFFTを計算することによって、ドップラー効果が取り除かれる。
SFFT=FFT(S*exp(-i ωDt)) (14b)
【0067】
工程(423)において、補正された複素信号、Scorrを用いた、位相符号化、e
xp(iB(t))の相互相関、XCが判定され、Nシンボルの独立したMブロックの各
々に対してXC(Code,Scorr)を指定し、そして平均化する。いくつかの実施
形態では、これは、方程式15aで得られるように、補正された複素スペクトルSFFT
の逆高速フーリエ変換(invFFT)と、その補正された複素帰還Scorrを、コー
ドを表すデジタル信号exp(iB(t))と相関させることによって行われる。
【0068】
【数8】
式中、correl(x,y)は、シリーズyとシリーズxの相関を決定する関数であり
、およびB
m(t)は、m番目のブロックに関するコードである。invFFTとcor
rel関数の両者が、シリーズの各メンバーに対する複数の操作を含む。いくつかの実施
形態では、計算資源は、工程(421)で既に決定されたS
FFTを使用してフーリエ空
間での掛け算を行い、次に、方程式15bから得られるように、逆FFTをとることによ
って節約される。
【0069】
【数9】
XC(Code,Scorr)における任意のピークが、現在のドップラーシフトでの遅
延時間Δtを判定するために使用され、および0以上の遅延時間が、現在のドップラーシ
フトでの0以上の対応する距離を計算するために使用される。
【0070】
いくつかの実施形態では、相互相関(XC)を判定するためのFFTベースのたたみ込
みもまた、方程式15c得られる有限インパルス応答(FIR)フィルタベースのたたみ
込みを用いて効率的に行なうことができる。これは、いくつかのより短いコード長、およ
びいくつかの計算ハードウェア環境(FPGA)にとってより効果的なポテンシャルを有
する。各距離ビン、kに関し、相互相関において、
【0071】
【数10】
ドット掛け算(
*)は、基準コードB
mと補正信号Sとの間の異なるシフト(k)での一
連の内積を意味することに留意されたい。以上のように、
図15cのFIRアプローチは
、単純なレジスタシフト操作と、
図15bのより複雑なFFT法と比較して単純な掛け算
を意味する。FIRアプローチの繰り返しのシフトと掛け算は、より短いコード、Bにと
って計算上より効果的であり得る。
【0072】
工程(425)において、例えば1つ以上のドップラーシフトが工程(411)で検出
される場合、他のドップラーシフトがあるかどうかが判定される。そうであれば、制御は
、次のドップラーシフトで複素帰還スペクトルFFT(S)を補正するために工程(42
1)に戻される。そうでなければ、制御は工程(427)に進む。工程(427)で、ド
ップラーアンビギュイティは、もしあれば、例えば上記の一致処理によって除去される。
走査中に生じる、いわゆる「分離画素」のシナリオに関するいくつかの可能性が存在する
。そのようなシナリオでは、ビームは、その一部がある距離とドップラーの面を測定し、
別の部分が異なる距離とドップラーを測定するように、切り取られてもよい。そのような
シナリオでは、すべての関連情報を抽出するために効果的な処理戦略が求められる。例え
ば、交差スペクトルは多数の0でないドップラー値を検知し得る。これは、多数のドップ
ラー補正および相互相関をもたらすだろう。1つの戦略は、単交差相関に先立って、ドッ
プラー補正された時間領域信号をコヒーレントに合計することである。これは、距離-ド
ップラーの組み合わせにおけるいくらかのアンビギュイティ、および最終的な距離プロフ
ァイルへの各補正信号の雑音成分の付加を犠牲にして、多数の相互相関の計算上の重荷を
回避する。アンビギュイティは、アンビギュイティでない(単一の距離-ドップラー)ポ
イントへの空間的近接に基づいて「最も有望な」距離-ドップラーの組み合わせを見つけ
るように設計された空間一致アルゴリズムを用いて分類されてもよい。相加性雑音は、さ
ほど重要ではないかもしれない。多数の帰還性能が幾人かのユーザーにとって望ましい場
合もあるため、この処理戦略は考慮に値する。いくつかの実施形態では、工程(427)
は省略され、制御は直接、工程(431)に向かう。
【0073】
工程(431)において、例えば物体の場所に新たなスポットを見るための走査によっ
て、物体の場所に照らされるべき別のスポットがあるかどうかが判定される。もしあれば
、制御は、次のスポットを照らし、そして帰還を処理するために、工程(405)および
続く工程に戻される。多地点平均を使用するいくつかの実施形態では、新たなスポットが
平均に加えられ、および最も古いスポットが除去され、またはPの新たなスポットが、工
程(405)から(409)によって形成されたループにおいて回収される。他に照らす
べきスポットがない場合、その結果が使用され、および制御は工程(433)に向かう。
【0074】
工程(433)において、デバイスは、ドップラー効果または補正距離に基づいて操作
される。いくつかの実施形態では、これは、送信光信号によって照らされた複数のスポッ
トにある任意の物体のドップラー補正された位置を示す画像を、ディスプレイ装置に提示
することを含む。いくつかの実施形態では、これは、デバイスに、送信光信号によって照
らされた複数のスポットにドップラー補正された位置の点群に基づいて少なくとも1つの
物体を識別するデータを通信することを含む。いくつかの実施形態では、これは、送信光
信号によって照らされた複数のスポットにおけるドップラー効果のサイズを示す画像をデ
ィスプレイ装置に提示する工程を含み、これによって、移動物体は静止物体と不在物体か
ら区別される。いくつかの実施形態では、これは、物体との衝突を回避するために車両を
移動させることを含み、ここで車両と物体との閉止速度は、送信光信号によって照らされ
た複数のスポットにおけるドップラー効果のサイズに基づいて判定される。いくつかの実
施形態では、これは、送信光信号によって照らされる複数のスポットにおけるドップラー
補正位置の点群に基づいた、車両の識別、または衝突進路上の物体の識別を含む。ドップ
ラーに基づいた点群データのフィルタリングは、そよ風で動いていることもある植物を識
別し、除去する効果を有する。固い物体、人工の物体、あるいは高密度の物体がその後、
フィルタリングプロセスによってよりよく明らかにされる。これは、保護と監視のシナリ
オにおいて有利になり得る。車両シナリオでは、ドップラーは、物体(つまり道路表面と
移動車両)を分離するために使用され得る。
【0075】
単一の帰還に対して多数のドップラーシフトを有するいくつかの実施形態では、工程(
433)は、ドップラーシフトの1つに各遅延時間を関連づけ、特定の帰還が、1つの送
信信号の持続時間にわたって特定の平均速度で移動している物体または物体の一部に基づ
くと仮定することを含む。任意のドップラー補正に関して、そのドップラー補正に関連す
るそれらの距離ピークのみが、相互相関に存在する。したがって、多数の実例において、
任意の距離とドップラーを不正確に組み合わせることは起こりそうもない。言い換えれば
、このアプローチのアンビギュイティ関数は、混乱がありえないことを保証する。これは
、「ドップラーアンビギュイティスペース」を示す
図10に関して、以下の実施形態例で
実証される。この画像は、可能性のあるドップラー補正の幅広いセットに及ぶ相互相関を
計算することにより、距離-ドップラースペースをマッピングして生成された。点は帰還
を示し、およびスペースは実際に非常にまばらである。
【0076】
<4.実例となる実施形態>
これらの例実施形態では、LIDARシステムは、位相符号化光送信信号を生成するた
めに上記に例示されるコンポーネントを使用した。これらの実施形態では、シンボル時間
(パルス幅)は2ナノセカンド(ns、1ns=10~9秒)であり、1ブロック当たり
のシンボルの数Nは2048であり、およびブロックの数は5であった。約0~約250
メートルの範囲の様々な標的が使用され、直径約5~約20mmのビームスポットサイズ
で照らされた。
【0077】
図5Aは、一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない実質的に静止した
物体のための光検知器による、電気的な同相(I)と直角(Q)の出力の例を例示するグ
ラフである。横軸は、マイクロセカンド(μ、1μs=10~6秒)で0の開始時間から
の到着時間を示す。縦軸は、ボルトで電気信号を示す。図は、IをCh1、QをCh2、
およびμsをusとして標識する。データは、2048パルスの単一ブロックごとにプロ
ットされる。
図5Bは、一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入する移動物体
のための光検知器による、電気的増幅の直角の出力の例を例示するグラフである。横軸は
、μsでの0の開始時間からの到着時間を示す。垂直軸は、ボルトで電気信号を示す。図
は、IをCh1、QをCh2、およびμsをusとして標識する。帰還のドップラー成分
は、約3MHzのドップラーシフトに対応する、同相Ch1および直角位相Ch2信号の
両方における約0.3μsの期間の正弦波パターンとして明白である。この例は1.55
ミクロンの波長(193.414489THz)を使用し、したがってこれは約4.7m
/sの速度を示した。このドップラー効果は、符号化位相exp(iB(t))と生の信
号の相関に干渉する。
【0078】
図6Aは、一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない、実質的に静止し
た物体に関する帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルの例を例示するグラフである
。横軸は、0~450MHzのスパンを超えるメガヘルツ単位の周波数を示す。縦軸は、
任意の単位で交差スペクトルの虚数成分の振幅を示し、-20~+20まで拡張する。方
程式12によって示されるように、例えばこの振幅は、ドップラーシフト周波数でピーク
を現わすと予想される;したがって図の垂直軸は、ドップラー帰還と呼ばれる。
図6Aの
トレースは明白なピークを示さない;したがって、標的はLIDARシステムに対して移
動せず、およびドップラー補償は必要ではなく、または適用されない。
【0079】
図6Bと
図6Cは、一実施形態に係る、有意なドップラーシフトを導入しない、移動物
体に関する帰還信号の同相分と直角分の交差スペクトルの例を例示するグラフである。図
6Bでは、横軸はメガヘルツで周波数を示し、および
図6Aと同じ範囲に及ぶ。縦軸は、
任意の単位で(ドップラー帰還を示す)交差スペクトルの虚数成分の振幅を示し、さらに
図6Aと同じ範囲に及ぶ。
図6Bのトレースは、約10MHzより低い低周波でかなりの
振幅を示す;したがって、いくつかの物体は、LIDARシステムに対して動いており、
およびいくつかのドップラー補償は様々な実施形態で適用される。
図6Cでは、トレース
の低周波部分が拡大されている。横軸はメガヘルツで周波数を示し、
図6Aにおける距離
の1/45に及び、10MHzのみまで拡張する。縦軸は、任意の単位で(ドップラー帰
還を示す)交差スペクトルの虚数成分の振幅を示す;および、0~120、
図6Aと
図6
Bの垂直軸の範囲の3倍、および以前のプロットの縦軸の正の部分の6倍まで拡張する。
トレースは、110の任意のユニットを超える値を有する3MHzでの明確なピークを示
す。
【0080】
Mブロックに対するインコヒーレント平均化は、静止物体に関して
図7Aから
図7Dに
例示されるように雑音を減らす。
図7Aと
図7Bは、一実施形態に係る、送信信号のいく
つかのブロックに対して平均されることなく、実質的に静止した物体に関する帰還信号の
相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例示するグラフである。図
7Aでは、横軸は、マイクロセカンド(μs、usと標識)で旅行時間を示し、および0
~2マイクロセカンドの旅行時間に及ぶ。縦軸は、任意の単位で(後方散乱された帰還信
号を示す)相互相関の振幅を示す。
図7Aのトレースは、2つの旅行時間、0および約0
.2μsにおいてかなりの振幅を示す。時間=0近くの大きなピークは、偏光ビームスプ
リッタ(322)からの帰還であり、および時間=0.2μs(us)近くのより短いピ
ークは、標的物体からの帰還である。
図7Bでは、トレースの短い旅行時間部分が拡大さ
れている。横軸はマイクロセカンド(us)で時間を示し、および
図7Aの距離の1/5
に及び、0.4μs(us)だけ拡張する。縦軸は
図7Aの縦軸と同じである。両トレー
スは、0.2μsで後方散乱された帰還を示しているが、トレースには少々、雑音が多く
、これによってピークの自動検出と特性評価を困難にする。旅行時間遅延Δt=0.2μ
sのピークは、光速度に関する約30メートル(m)の距離、方程式3に係る、秒速(m
/s)あたりc=3×10
8メートルに対応する。
【0081】
図7Cと
図7Dは、一実施形態に係る、送信信号のいくつかのブロックに対して平均し
た、実質的に静止した物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル
)のトレースの例を例示するグラフである。横軸と縦軸はそれぞれ
図7Aと
図7Bと同様
である。ここでも、両トレースは、0.2μsで後方散乱された帰還を示す。しかしなが
ら、
図7Aと
図7Bと比較して、
図7Cと
図7Dのトレースはそれぞれ、明らかに雑音が
少なく、これによってピークの自動検出と特性評価はより容易になる。
【0082】
本明細書に記載されるように、平均化とドップラー補償を用いて、物体への正確な距離
が判定され得る。
図8Aと
図8Bは、一実施形態に係る、ドップラー補償を用いた、移動
物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロファイル)のトレースの例を例
示するグラフである。
図8Aでは、横軸は、マイクロセカンド(us)で旅行時間を示し
、および0~4マイクロセカンド(us標識)の旅行時間に及び、
図7Aと
図7Cの横軸
の2倍のスパンである。縦軸は、任意の単位で(後方散乱された帰還信号を示す)相互相
関の振幅を示し、0~25、
図7Aから
図7Dの縦軸のスパンの3倍以上に及ぶ。
図8A
のトレースは、1つの旅行時間、約0.1でかなりの振幅を示す。
図8Bでは、トレース
の短い旅行時間部分が拡大されている。横軸はマイクロセカンド(us)で時間を示し、
および
図8Aの距離の1/19に及び、0.4μs(us)だけ拡張する。縦軸は
図8A
の縦軸と同じである。往復旅行時間を示すピークは、約0.05μsで
図8Bのトレース
に明確に示され、これは、方程式3に従い、光速度に関し約7.5メートル(m)の距離
、秒速(m/s)c=3×10
8メートルに対応する。
図8Aと
図8Bでは、PBS(3
22)からの帰還は、ドップラー保守ゆえに距離プロファイルに存在しない。
【0083】
図9Aは、一実施形態に係る、同相光信号と直角光信号へ分離されない混合光信号に基
づいたドップラー補償で、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロ
ファイル)のトレースの例を例示するグラフである。横軸は、マイクロセカンドで時間を
示す(μs、略語で示す);および垂直軸は、検出された帰還信号を示す相互相関を示す
。本実施形態において、標的は、活発に回転するファンブレードであった。該構成は、図
3Aに描かれる混合光信号(362)の実数部だけを使用し、これは同相分(I)と直角
分(Q)を分離させない。トレースは、帰還が約0.2μsで検出されることを示す。
【0084】
図9Bは、一実施形態に係る、同相光信号と直角光信号へ分離される混合光信号に基づ
いたドップラー補償で、移動物体に関する帰還信号の相互相関振幅 対 時間(距離プロフ
ァイル)の上位トレースの例を例示するグラフである。横軸はマイクロセカンド単位で時
間を示す(μs、略語usによって示す);および垂直軸は、帰還信号を示す相互相関が
検出されたことを示す。本実施形態において、標的は、
図9Aのデータに使用されたもの
と同じ活発に回転するファンブレードであった。この構成は、
図3Bで光信号(364)
として示される分離された同相分(I)と直角分(Q)を使用する。トレースは、帰還が
約0.2μsで再度検出されることを示す;しかし本実施形態において、相互相関ははる
かに高い。これは、光学混合器から同相および直角の光信号を分離することを使用する技
術が、騒音に対してより堅調であり、かつより長い距離で十分な検知を提供する可能性が
より高いことを示す。
【0085】
図10は、一実施形態に係る、容易に識別されるドップラー効果を示すための、ドップ
ラーアンビギュイティスペースの例を例示するグラフである。この画像は、可能性のある
ドップラー補正の幅広いセットに及ぶ相互相関を計算することにより、距離-ドップラー
スペースをマッピングして生成された。横軸は、MHzでドップラー周波数を示す;およ
び垂直軸は、メートルで距離を示す。相互相関の強度は画素の暗さによって示される。ダ
ーク画素のみが、デバイスを離れず、したがってドップラーのないサーキュレータ出力を
示す領域(1015)、および約27メートルの距離で約17MHzのドップラーを示す
領域(1016)に存在する。スペースは実際、非常にまばらである。
【0086】
システムにおいて物体表面からの後方反射は、距離プロファイルにおける一連の非常に
大きな距離帰還に寄与することが実験でわかった。これらの大きな帰還は、現実の標的か
らのより小さな距離帰還を不明瞭にし得る、距離プロファイルにおける大きなサイドロー
ブ構造をもたらす(位相コードとの相互相関のパワー 対 距離ビンに対応する時間区間)
。この問題と闘うために、コヒーレント処理スキームが、サーキュレータ光学に関する信
号の部分の推定値を引くために考案された(
図4の工程(409)と(410)に関連し
て上記されるように)。このアプローチは、いくつかの(約32より多くの)続くコード
に対する、サーキュレータ光学からの帰還のコヒーレンスに依存する。早晩、これは少な
くとも数十マイクロセカンドになるだろう。サーキュレータ帰還がビームの走査中に安定
しているため、安定性の持続期間にわたる時間のブロックのコヒーレント平均(複素数を
使用)は、サーキュレータ光学に関する信号の部分を推定するのに十分である。ビームが
走査していると、真の標的に関する信号は一貫しない;および、これらのコンポーネント
は、この操作において平均的な線に落ち着く。進行中の補正、S
S(t)により、それは
、コードブロックのサブセットから複素ベクトルをコヒーレントに引くことによって適用
される。結果は、サーキュレータ距離の帰還と関連するサイドローブの強度における極め
て効果的な減少である。
【0087】
図12Aから
図12Dは、一実施形態に係る、内部光からの帰還を取り除くための補正
の前と後の距離信号の例を例示するグラフである。
図12Aでは、横軸は、0~4000
m以上のメートルで、距離ビンを示す;および縦軸は、基準に対するデシベル(dB、1
dB=log(y/y
0))で相互相関電力を示す。トレースは、32のスポットの平均
を引く前の相関ピークを示す。大きなピークは約100mで現れ、および約2000mで
より小さなピークが現われる。
図12Bでは、軸は同じであるが、トレースは、平均32
のスポットを引くことにより補正された後に相関ピークを示す。内部光学コンポーネント
(ここでは、PBS(322)の代わりに使用されるサーキュレータ)に起因する約10
0mの偽ピークは大幅に縮小され、および実際の外部物体に起因する約2000mのピー
クは、いくらか高められる。これは
図12Cと
図12Dにより明確に示され、前者は、内
部光学コンポーネントからの帰還に近いゾーンAの領域を拡大しており、および後者は、
外部物体からの実際の帰還近くのゾーンAの領域を拡大している。
図12Cは、60~9
0メートルの多数の偽反射を示す実線のトレースを示し、これは、補正距離プロファイル
を示す破線のトレースでほぼ完全に取り除かれる。
図12Dは、約1850mでの実際の
ピークを示す実線のトレースを示し、これは、補正距離プロファイルを示す破線のトレー
スにおいて約10%高められている。この補正は、
図13の歩行者の画像を生成するため
に使用された。
【0088】
図13は、一実施形態に係る、成功裡に処理された多数の異なるドップラーシフトを伴
う多数の距離帰還の例を例示する画像である。この画像は、水平方向に+/-25度(5
0度の水平視野)と、10度を超える垂直視野との間で収集された。場所は、垂直のジッ
パーパターンを伴う10Hzのフレーム速度で走査された。2048のコードが利用され
た。これは、625Mbpsの速度で行われ、および信号は1.25Gspsでサンプリ
ングされた。データは処理され、記載されるアルゴリズムのCUDA実装を使用してリア
ルタイムで保存された。場面は、数人が歩き回っている駐車場であった。10度の頂角は
歩行者の脚と足を捕らえた。示されたいくつかのフレームの合成物が、センサーに向かっ
て、およびセンサーから離れるように異なる速度で歩く人々の追跡を示すように、採色は
ドップラー値を示す。
【0089】
様々な実施形態では、標的識別、空間の分解能と精度、および対象速度の分解能と精度
の望ましいタイプは、上記のシステムの1つ以上のパラメータに関する値を選択するため
に使用される。そのようなパラメータは、コード長、コードブロック長、平均用のコード
ブロックの数、(設計されたコードを調べる)コード自体、長距離でのより良好な検知の
ための信号とコード間のシフト、速度の最適化、データ収集レート、位相変調の深度、伝
達されたレーザパワー、レーザースポットサイズ、走査方法および走査パターンの1つ以
上を含む。
【0090】
<5.コンピュータハードウェアの概略>
図14は、本発明の実施形態が実施され得るコンピューターシステム(1400)を例
示するブロック図である。コンピュータシステム(1400)は、コンピュータシステム
(1400)の他の内部コンポーネントと外部コンポーネントとの間の情報を送信するた
めのバス(1410)等の通信メカニズムを含む。情報は、測定可能な現象の物理的な信
号として表され、典型的には電気の電圧であり、他の実施形態では、磁気、電磁気、圧力
、化学薬品、分子の原子と量子の相互作用等の現象が含まれる。例えば、北と南の磁場、
または0および0でない電気的電圧は、2進数字(ビット)の2つの状態(0,1)を表
す。他の現象は、より高い基数のデジットを表すことができる。測定前の多数の同時量子
状態の重ね合せは、量子ビット(キュービット)を表す。1つ以上の数字列は、文字のた
めの数またはコードを表すために使用されるデジタルデータを構成する。いくつかの実施
形態では、アナログデータと呼ばれる情報は、特定の範囲内の測定可能な値の近い連続体
によって表される。コンピュータシステム(1400)またはその一部は、本明細書に記
載される1つ以上の方法の1つ以上の工程を行うための手段を構成する。
【0091】
2進数字の配列は、文字のための数またはコードを表すために使用されるデジタルデー
タを構成する。バス(1410)は、バス(1410)に接続されたデバイス間を情報が
素早く運ばれるように、多くの平行する情報のコンダクタを含む。情報を処理するための
1つ以上のプロセッサ(1402)は、バス(1410)に接続される。プロセッサ(1
402)は、情報に1セットの動作を行なう。動作のセットは、バス(1410)から情
報を持ち込み、およびバス(1410)に情報を配置することを含む。動作のセットはさ
らに、典型的には、情報の2つ以上のユニットを比較し、情報のユニットの位置を変え、
および加算または乗算等によって情報の2つ以上のユニットを結合することを含む。プロ
セッサ(1402)によって実行される動作の配列は、コンピュータ命令を構成する。
【0092】
コンピュータシステム(1400)はまた、バス(1410)に接続されたメモリ(1
404)を含む。ランダムアクセスメモリ(RAM)または他のダイナミックストレージ
デバイス等のメモリ(1404)は、コンピュータ命令を含む情報を保存する。ダイナミ
ックメモリは、そこに保存された情報が、コンピュータシステム(1400)によって変
更されることを許可する。RAMは、メモリアドレスと呼ばれる場所に保存された情報の
ユニットが、隣接アドレスに保存された情報とは無関係に保存され、かつ取り出されるこ
とを許可する。メモリ(1404)はまた、コンピュータ命令の実行中に一時的に値を保
存するために、プロセッサ(1402)によって使用される。コンピュータシステム(1
400)はまた、コンピュータシステム(1400)によって変更されない、命令を含む
静的な情報を保存するための、リードオンリーメモリ(ROM)(1406)、またはバ
ス(1410)に接続された他の静的記憶装置を含む。さらにバス(1410)に接続さ
れるのは、コンピュータシステム(1400)が切れら、またはそうでなければ電力を失
った場合でさえも持続する、命令を含む情報を保存するための磁気ディスクまたは光ディ
スク等の不揮発性の(持続的)記憶装置(1408)である。
【0093】
命令を含む情報は、人間のユーザーによって操作される英数字キーを含むキーボードま
たはセンサー等の外部入力装置(1412)から、プロセッサによって使用されるバス(
1410)に提供される。センサーは、その近位の状態を検出し、およびコンピュータシ
ステム(1400)に情報を表示するために使用される信号と互換性のある信号に、その
ような検出を変換する。主にヒトとのインタラクトに使用される、バス(1410)に接
続された他の外部デバイスは、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)
等の、画像を提示するためのディスプレイ装置(1414)、およびマウスまたはトラッ
クボールまたはカーソル指令キー等の、ディスプレイ(1414)上に提示される小さな
カーソル画像の位置を制御するための、およびディスプレイ(1414)に提示されるグ
ラフィカル要素に関連するコマンドを発するための、ポインティングディバイス(141
6)を含む。
【0094】
例示された実施形態では、特定用途向け集積回路(IC)(1420)等の専用ハード
ウェアが、バス(1410)に接続される。専用ハードウェアは、特定の目的のためにプ
ロセッサ(1402)によって十分な速度では行われない動作を行うように構成される。
特定用途向けICの例として、ディスプレイ(1414)に画像を生成するためのグラフ
ィックスアクセラレータカード、ネットワーク経由で送信されたメッセージの暗号化と解
読のための暗号ボード、および、ハードウェアにより効果的に実装されるいくつかの複雑
な配列の動作を繰り返し行うロボットアームおよび医療走査機器等の、特別な外部デバイ
スへのインタフェースがあげられる。
【0095】
コンピュータシステム(1400)はまた、バス(1410)に接続された通信インタ
ーフェース(1470)の1つ以上の実例を含む。通信インターフェース(1470)は
、プリンタ、スキャナ、および外付けディスク等の、それ自体のプロセッサにより動作す
る様々な外部デバイスへの双方向通信での接続を提供する。一般に、接続は、それ自体の
プロセッサを有する様々な外部デバイスが接続されるローカルネットワーク(1480)
に接続されたネットワークリンク(1478)を用いる。例えば、通信インターフェース
(1470)は、パソコンにあるパラレルポートまたはシリアルポートまたはユニバーサ
ルシリアルバス(USB)であってもよい。いくつかの実施形態では、通信インターフェ
ース(1470)は、対応するタイプの電話線に情報通信接続を提供する、ISDN(n
tegrated services digital network)カード、また
はデジタル加入者線(DSL)カード、または電話モデムである。いくつかの実施形態で
は、通信インターフェース(1470)は、バス(1410)上の信号を同軸ケーブルを
経由した通信接続のための信号、または光ファイバーケーブルを経由した通信接続のため
の光信号に変換するケーブルモデムである。他の例として、通信インターフェース(14
70)は、Ethernet等の、互換性のあるLANへのデータ通信接続を提供するロ
ーカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよい。無線リンクもまた、実装さ
れてもよい。電波と光波と赤外線波を含む、音波と電磁波等の光搬送波は、ワイヤまたは
ケーブルのない空間を移動する。信号は、振幅、周波数、位相、偏波、または搬送波の他
の物理的性質に人工的な変動を含む。無線リンクについては、通信インターフェース(1
470)は、デジタルデータ等の情報の流れを運ぶ、赤外線信号と光信号を含む電気信号
、聴覚信号、または電磁気信号を送受信する。
【0096】
コンピュータ可読媒体という用語は、実行のための命令を含む、プロセッサ(1402
)への情報の提供に関与するあらゆる媒体を指して、本明細書において使用される。その
ような媒体は、限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む形態
であってもよい。不揮発性媒体として、例えば記憶装置(1408)等の光学ディスクま
たは磁気ディスクがあげられる。揮発性媒体として、例えばダイナミックメモリ(140
4)があげられる。伝送媒体として、例えば、光波と電波と赤外線波を含む音波および電
磁波等の、ワイヤまたはケーブルなしで空間内を移動する同軸ケーブル、銅線、光ファイ
バーケーブル、および電波があげられる。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、伝送
媒体を除き、プロセッサ(1402)への情報の提供に関与するあらゆる媒体を指して、
本明細書において使用される。
【0097】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態として、例えば、フロッピーディスク、フレキシ
ブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または他の磁気メディア、コンパクトディ
スクROM(CD-ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)、または他の光学媒体
、パンチカード、紙テープ、または穴のパターンを有する他の物理的媒体、RAM、プロ
グラマブルROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、FLASH-EP
ROM、または他のメモリチップまたはカートリッジ、搬送波、またはコンピュータによ
る読み取りが可能な他の媒体があげられる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、搬送
波と他の信号を除き、プロセッサ(1402)への情報の提供に関与するあらゆる媒体を
指し、本明細書において使用される。
【0098】
1つ以上の触知可能な媒体に符号化された論理は、ASIC(1420)等の、コンピ
ュータ可読記憶媒体および専用ハードウェアにある一方または両方のプロセッサ命令を含
む。
【0099】
ネットワークリンク(1478)は典型的に、情報を使用し、または処理する他のデバ
イスに1つ以上のネットワークを通じた情報通信を提供する。例えば、ネットワークリン
ク(1478)は、ローカルネットワーク(1480)経由の接続をホストコンピュータ
(1482)、またはインターネットサービスプロバイダー(ISP)によって操作され
る機器(1484)に提供してもよい。ISP機器(1484)は次に、今日では一般に
インターネット(1490)と呼ばれるネットワークの、公共の、ワールドワイドなパケ
ット交換通信網を通じたデータ通信サービスを提供する。インターネットに接続されたサ
ーバー(1492)と呼ばれるコンピュータは、インターネット経由で受信された情報に
応じてサービスを提供する。例えば、サーバー(1492)は、ディスプレイ(1414
)に提示するために、ビデオデータを表す情報を提供する。
【0100】
本発明は、本明細書に記載の技術を実施するためのコンピュータシステム(1400)
の使用に関する。本発明の一実施形態によれば、それらの技術は、メモリ(1404)に
含まれる1つ以上の命令の1つ以上の配列を実行するプロセッサ(1402)に応答して
コンピュータシステム(1400)によって行なわれる。ソフトウェアおよびプログラム
コードとも呼ばれるそのような命令は、記憶装置(1408)等の他のコンピュータ可読
媒体からメモリ(1404)に読み込まれてもよい。メモリ(1404)に含まれる命令
の配列の実行により、プロセッサ(1402)は本明細書に記載される方法の工程を行な
う。代替的な実施形態では、特定用途向け集積回路(1420)等のハードウェアは、本
発明を実行するためにソフトウェアの代わりに、またはそのソフトウェアと組み合わせて
使用されてもよい。したがって、本発明の実施形態は、ハードウェアとソフトウェアの特
定の組み合わせに制限されない。
【0101】
通信インターフェース(1470)を介したネットワークリンク(1478)および他
のネットワークを経由して送信された信号は、コンピュータシステム(1400)を行き
交う情報を運ぶ。コンピュータシステム(1400)は、とりわけネットワーク(148
0)(1490)を通じて、ネットワークリンク(1478)と通信インターフェース(
1470)を通じて、プログラムコードを含む情報を送受信することができる。インター
ネット(1490)を使用する例では、サーバー(1492)は、インターネット(14
90)、ISP機器(1484)、ローカルネットワーク(1480)、および通信イン
ターフェース(1470)を通じて、コンピュータ(1400)から送信されたメッセー
ジによって要求される特定のアプリケーション用のプログラムコードを伝達する。受信さ
れたコードは、それが受信されると、または後の実行のために記憶装置(1408)また
は他の不揮発性記憶装置に保存され得ると、またはその両方であると、プロセッサ(14
02)によって実行され得る。このように、コンピュータシステム(1400)は、搬送
波上の信号の形でアプリケーションプログラムコードを獲得してもよい。
【0102】
コンピュータ可読媒体の様々な形態が、実行のためのプロセッサ(1402)に対する
命令またはデータの配列の1つ以上またはそれらの両方を運ぶことに関与する場合もある
。例えば、命令とデータはまず、ホスト(1482)等の遠隔コンピュータの磁気ディス
ク上で運ばれてもよい。遠隔コンピュータは、そのダイナミックメモリに命令とデータを
ロードし、そしてモデムを使用し、電話線を通じて命令とデータを送る。コンピュータシ
ステム(1400)に局所的なモデムは、電話線経由で命令とデータを受信し、および命
令とデータを、ネットワークリンク(1478)の役目を担う赤外線搬送波上の信号に変
換するために赤外線送信器を使用する。通信インターフェース(1470)として機能す
る赤外線検出器は、赤外線信号において搬送される命令とデータを受信し、および命令と
データを表す情報をバス(1410)に配置する。バス(1410)は、メモリ(140
4)に情報を運び、命令と共に送信されたデータのいくつかを使用してプロセッサ(14
02)はメモリ(1404)から命令を取り出し実行する。メモリ(1404)で受信さ
れる命令とデータは随意に、プロセッサ(1402)による実行の前または後に、記憶装
置(1408)に保存され得る。
【0103】
図15は、本発明の実施形態が実装され得るチップセット(1500)を例示する。チ
ップセット(1500)は、本明細書に記載される方法の1つ以上の工程を行なうように
プログラムされ、例えば、1つ以上の物理的なパッケージ(例えばチップ)に組み込まれ
た
図14に関して記載されるプロセッサとメモリコンポーネントを含む。例えば、物理的
なパッケージは、物理強度、サイズの保存、および/または電気的な相互作用の限界等の
1つ以上の特性を提供するために、構造アセンブリ(例えばベースボード)上に1つ以上
の物質、コンポーネント、および/またはワイヤの構成を含む。特定の実施形態では、チ
ップセットが単一のチップに実装可能であることが熟考される。チップセット(1500
)またはその一部は、本明細書に記載される方法の1つ以上の工程を行なうための手段を
構成する。
【0104】
一実施形態では、チップセット(1500)は、チップセット(1500)のコンポー
ネント間で情報を送信するためのバス(1501)等の通信メカニズムを含む。プロセッ
サ(1503)は、命令を実行し、かつ例えばメモリ(1505)に保存された情報を処
理するために、バス(1501)への接続性を有している。プロセッサ(1503)は、
独立して動作するように構成された各コアを有する1つ以上の処理コアを含んでもよい。
マルチコアプロセッサは、単一の物理的なパッケージ内で多重プロセッシングを可能にす
る。マルチコアプロセッサの例には、2、4、8、またはより多くの処理コアが含まれる
。代替的にまたは付加的に、プロセッサ(1503)は、命令の独立した実行、パイプラ
イン方式、およびマルチスレッディングを可能にするために、バス(1501)を介して
縦並びに構成された1つ以上のマイクロプロセッサを含んでもよい。プロセッサ(150
3)はまた、1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)(1507)または1つ
以上の特定用途向け集積回路(ASIC)(1509)等の、特定の処理機能とタスクを
行うための1つ以上の専用コンポーネントを伴ってもよい。DSP(1507)は典型的
に、プロセッサ(1503)と無関係にリアルタイムで現実世界の信号(例えば音)を処
理するように構成される。同様に、ASIC(1509)は、一般的な目的のためのプロ
セッサによって容易には行なわれない特殊な機能を行うように構成することができる。本
明細書に記載される創造性のある機能を行なうのを助ける他の専用コンポーネントは、1
つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(図示せず)、1つ以上の
コントローラ(図示せず)、または1つ以上の他の専用計算機チップを含む。
【0105】
プロセッサ(1503)と付随するコンポーネントは、バス(1501)経由でのメモ
リ(1505)への接続性を有している。メモリ(1505)は、実行された時に本明細
書に記載の1つ以上の工程を行う実行可能な命令を保存するための、ダイナミックメモリ
(例えばRAM、磁気ディスク、書き込み可能な光ディスク等)とスタティックメモリ(
例えばROM、CD-ROM等)の両方を含む。メモリ(1505)はまた、本明細書に
記載の方法の1つ以上の工程に関連する、またはその実行によって生成されるデータを保
存する。
【0106】
<6.変更、拡張、および修正>
前述の詳細な説明において、本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されてきた
。しかしながら、様々な修正および変更が、本発明のより広い精神と範囲から逸脱するこ
となくなされ得ることは明らかであろう。明細書および図面は、したがって、限定的意味
ではなく例示的意味でとらえられる。この明細書と特許請求の範囲の全体にわたって、文
脈が他で要求しない限り、単語「含む(comprise)」および「含む(compr
ises)」と「含んでいる(comprising)」等のその変化形は、記載される
アイテム、要素または工程、あるいはアイテム、要素または工程のグループを包含するが
、他のアイテム、要素または工程、あるいはアイテム、要素または工程のグループを除外
しないことを意味すると理解される。さらに、不定冠詞「a」または「an」は、冠詞に
よって修飾されたアイテム、要素または工程の1つ以上を示すことを意味する。本明細書
で使用されるように、文脈から明確でない限り、値は、他の値の2倍(2倍または1/2
)の範囲にあれば、「約」別の値である。範囲の例が提供されるが、文脈から明確でない
限り、包含される範囲が様々な実施形態でも意図される。したがって、0~10の範囲は
、いくつかの実施形態では範囲1~4を含む。
【0107】
<7.参考文献>
以下の参考文献が本明細書に引用され、本明細書で使用されるものと一致しない用語を
除いて、本明細書で完全に明記されているかのように、その各々の全内容が参照により本
明細書に組み込まれる。
Foucras,M.et al.,2014,“Detailed Analysis
of the Impact of the Code Doppler on the Acq
uisition Performance of New GNSS Signals,”
ION ITM 2014,International Technical Meeti
ng of The Institute of Navigation,San Diego
,United States.Jan 2014.
Kachelmyer,A.L.,1990,“Range-Doppler Ima
ging with a Laser Radar,”The Lincoln Labora
tory Journal,v3(1),pp87-118.Krasner,N.F.
,1998,“GPS Receiver and Method for Process
ing GPS Signals,”US Patent 5,781,156,Jul-1
998.