(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20230511BHJP
C09D 101/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
D21H11/18
C09D101/00
(21)【出願番号】P 2021142488
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2020107518の分割
【原出願日】2011-11-09
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2010-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2011-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516341914
【氏名又は名称】ファイバーリーン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】ハズバンド ジョン クロード
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンディング ペル
(72)【発明者】
【氏名】スキューズ ディヴィッド ロバート
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-514137(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131016(WO,A2)
【文献】特表2012-522145(JP,A)
【文献】国際公開第2010/112519(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/113805(WO,A1)
【文献】特開2001-039010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
C09D1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、紙製品をコーティングするためのコーティング組成物であって、
前記ミクロフィブリル化セルロースが、20~50の繊維急峻性及び5~500μmのd
50を有し、
前記コーティング組成物が紙製品に適用された場合、コートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を除いて同じ組成を有する対照コーティング組成物でコートされた紙製品の引張強度よりも
大きい引張強度を有する、コーティング組成物。
【請求項2】
前記無機粒子材料が、炭酸カルシウムである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記無機粒子材料が、カオリンである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
1種以上の以下の添加剤:
a.硫酸カルシウム、サテンホワイト、及びいわゆる「プラスチック顔料」などの1種以上の
顔料;
b.1種以上の結合剤又は共結合剤;
c.1種以上の架橋剤;
d.1種以上の保水性改善剤;
e.1種以上の粘度調整剤及び/又は増粘剤;
f.1種以上の滑性/カレンダリング改善剤;
g.1種以上の分散剤;
h.1種以上の消泡剤及び脱泡剤;
i.1種以上の蛍光増白剤及び蛍光漂白剤;
j.1種以上の染料;
k.1種以上の殺生物剤/損傷抑制剤;
l.1種以上の平滑化剤;
m.1種以上の耐脂性及び耐油性添加剤
をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
コート紙製品を調製するための、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティング組成物の使用であって、
前記ミクロフィブリル化セルロースが、20~50の繊維急峻性及び5~500μmのd
50を有し、
前記コート紙製品が、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を除いて同じ組成を有する対照コーティング組成物でコートされた紙製品の引張強度よりも
大きい引張強度を有する、使用。
【請求項6】
前記無機粒子材料が、炭酸カルシウムである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記無機粒子材料が、カオリンである、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、1種以上の以下の添加剤:
a.硫酸カルシウム、サテンホワイト、及びいわゆる「プラスチック顔料」などの1種以上の
顔料;
b.1種以上の結合剤又は共結合剤;
c.1種以上の架橋剤;
d.1種以上の保水性改善剤;
e.1種以上の粘度調整剤及び/又は増粘剤;
f.1種以上の滑性/カレンダリング改善剤;
g.1種以上の分散剤;
h.1種以上の消泡剤及び脱泡剤;
i.1種以上の蛍光増白剤及び蛍光漂白剤;
j.1種以上の染料;
k.1種以上の殺生物剤/損傷抑制剤;
l.1種以上の平滑化剤;
m.1種以上の耐脂性及び耐油性添加剤
をさらに含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
コート紙製品であって、前記紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティング組成物でコートされており、
前記ミクロフィブリル化セルロースが、20~50の繊維急峻性及び5~500μmのd
50を有し、
前記コート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を除いて同じ組成を有する対照コーティング組成物でコートされた紙製品の引張強度よりも
大きい引張強度を有する、コート紙製品。
【請求項10】
前記無機粒子材料が、炭酸カルシウムである、請求項9に記載のコート紙製品。
【請求項11】
前記無機粒子材料が、カオリンである、請求項9に記載のコート紙製品。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、1種以上の以下の添加剤:
a.硫酸カルシウム、サテンホワイト、及びいわゆる「プラスチック顔料」などの1種以上の
顔料;
b.1種以上の結合剤又は共結合剤;
c.1種以上の架橋剤;
d.1種以上の保水性改善剤;
e.1種以上の粘度調整剤及び/又は増粘剤;
f.1種以上の滑性/カレンダリング改善剤;
g.1種以上の分散剤;
h.1種以上の消泡剤及び脱泡剤;
i.1種以上の蛍光増白剤及び蛍光漂白剤;
j.1種以上の染料;
k.1種以上の殺生物剤/損傷抑制剤;
l.1種以上の平滑化剤;
m.1種以上の耐脂性及び耐油性添加剤
をさらに含む、請求項9に記載のコート紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む、内添紙及びコート紙のような組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子材料、例えばアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)又はカオリンは、多くの用途において幅広く利用されている。これらには、製紙、紙コーティング又はポリマー組成物の製造に利用され得る鉱物含有組成物の製造が含まれる。紙製品及びポリマー製品において、このような填料は、典型的には、紙製品又はポリマー製品中の他の高価な成分の一部と置き換えるために添加される。填料は、紙製品及びポリマー製品の物理的、機械的及び/又は光学的要件を変化させるために添加される場合もある。明らかに、配合可能な填料の量が多ければ多いほど、コスト削減の可能性は高くなる。しかしながら、添加される填料の量及びそれに関連したコスト削減は、最終的な紙製品又はポリマー製品の物理的、機械的及び光学的要件に対してバランスがとれていなくてはならない。このため、紙製品又はポリマー製品の物理的、機械的及び/又は光学的要件に悪影響を与えることなく高配合レベルで使用可能な紙用又はポリマー用填料の開発が継続的に求められている。そのような填料を経済的に調製する方法の開発もまた必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、紙製品又はポリマー製品の物理的、機械的及び/又は光学的性質を維持し又は改善さえしながら比較的高配合レベルで紙製品又はポリマー製品に取り込むことができる、紙製品又はポリマー製品用の代替の及び/又は改良された填料を提供しようとするものである。本発明はまた、そのような填料を調製するための経済的な方法を提供しようとするものでもある。そのため、本発明者は驚くべきことに、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む填料が、経済的な方法で調製され得ること、並びに、紙製品の物理的、機械的及び/又は光学的性質を維持し又は改善さえしながら比較的高レベルで紙製品又はポリマー製品に配合され得ることを発見した。
【0004】
さらに、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを工業規模で経済的に調製する問題に取り組もうとするものである。現在のセルロース系材料のミクロフィブリル化法では、出発原料及びミクロフィブリル化物の粘度が比較的高いことを一因として比較的大量のエネルギーを必要とし、工業規模でミクロフィブリル化セルロースを調製するための商業的に実現可能な工程は、これまで達成し難かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品、並びに、該紙製品上の1種又はそれ以上の機能的コーティング、を含むことを特徴とする物品に向けられている。
【0006】
第2の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品であって、該紙製品が、i)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の引張強度より大きい第1の引張強度、ii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の引裂強度より大きい第1の引裂強度、及び/又は、iii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の破裂強度より大きい第1の破裂強度、及び/又は、iv)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2のシート光散乱係数より大きい第1のシート光散乱係数、及び/又は、v)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の空隙率より小さい第1の空隙率、及び/又は、vi)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2のz-方向(内部結合)強度より大きい第1のz-方向(内部結合)強度、を有することを特徴とする、紙製品に向けられている。
【0007】
第3の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品であって、該コート紙製品が、
i.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2の光沢より大きい第1の光沢、及び/又は、
ii.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2の剛性より大きい第1の剛性、及び/又は、
iii.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2のバリア特性と比較して向上した第1のバリア特性、
を有することを特徴とする、コート紙製品に向けられている。
【0008】
第4の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、ポリマー組成物に向けられている。
【0009】
第5の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた製紙用組成物の第2のカチオン要求性よりも低い第1のカチオン要求性を有する、製紙用組成物に向けられている。
【0010】
第6の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、歩留まり向上剤を実質的に欠いている、製紙用組成物に向けられている。
【0011】
第7の側面では、本発明は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の形成インデックスよりも低い第1の形成インデックスを有する、紙製品に向けられている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本明細書で用いられている「共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物」は、セルロースを含む繊維状基材を、本明細書に記載されているように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化する工程によって製造される組成物のことを意味している。
【0013】
特に指定のない限り、「機能的コーティング」は、紙製品の表面に、該紙製品の非図形特性(non-graphical properties)(すなわち、主として紙の図形特性(graphical properties)とは関連しない特性)を修正、強化、改良及び/又は最適化するために適用される1種又は複数のコーティングを意味している。ある態様では、該機能的コーティングは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むものではない。例えば、該機能的コーティングは、ポリマー、金属、水性組成物、液体バリア層又はプリント電子層であってもよい。
【0014】
紙製品
ある態様では、紙製品は、製紙用パルプの中に取り込まれた共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を(例えば、填料組成物としての紙ベース中に)含む。例えば、紙製品は、紙製品の総重量に基づいて、少なくとも約0.5質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、又は少なくとも約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含んでもよい。一般には、紙製品は、せいぜい約50質量%、例えばせいぜい約45質量%、又はせいぜい約40質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物しか含まないだろう。特定の態様においては、紙製品は、約25%~約35%質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む。共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物の繊維含有量は、少なくとも約2質量%、少なくとも約3質量%、少なくとも約4質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、少なくとも約8質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約11質量%、少なくとも約12質量%、少なくとも約13質量%、少なくとも約14質量%、又は少なくとも約15質量%であってもよい。一般には、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物の繊維含有量は、約25質量%に満たない、例えば約20質量%に満たないだろう。
【0015】
共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を形成するために共処理した後に、追加の無機粒子を(例えば、配合又は混合によって)添加し、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物の繊維含有量を減少させてもよい。
【0016】
特定の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物なしで(すなわち、これを欠いて)製造された紙製品と比較して低い空隙率を有している。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品の空隙率は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の空隙率よりも、多孔質性で約10%低いもの、約20%低いもの、約30%低いもの、約40%低いもの、又は約50%低いものであってもよい。そのような空隙率の低減は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含むコート紙製品を求めて、向上されたコーティングを提供し得る。そのような空隙率の低減は、コート紙製品の物理的及び/又は機械的特性を落とさずに、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含むコート紙製品のためのコート重量を低減させることが可能となり得る。
ある態様では、空隙率は、SCAN P21、SCAN P60、BS 4420及びTAPPI UM 535に従って、Bendtsen Model 5空隙率試験機を利用して決定される。
【0017】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の引張強度より、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%大きい引張強度を有している(例えば、該紙製品が同じ填料配合量(loading)である場合)。
さらなる態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の引裂強度より、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%大きい引裂強度を有している(例えば、該紙製品が同じ填料配合量である場合)。このように空隙率が低く丈夫な紙製品は、機能性紙、例えば、ガスケット、耐脂紙、石膏ボードのためのライナーボード、難燃性紙、壁紙、積層品、又は他の機能性紙製品を含んでもよい。
ある態様では、引張強度は、SCAN P16に従って、Testometrics引張試験機を利用して決定される。
【0018】
さらなる態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品のz-方向(内部結合)強度より、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%大きいz-方向(内部結合)強度を有している(例えば、該紙製品が同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、z-方向(内部結合)強度は、TAPPI T569に従って、Scottボンドテスターを利用して決定される。
【0019】
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、コーティングされてもよい。共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品の特定の態様は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品と比較して増加した光沢を有し得る。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品より、約5%、約10%、又は約20%大きい光沢を有してもよい。
ある態様では、光沢は、TAPPI法T480 om-05(75度での紙及び板紙鏡面光沢度)に従って決定される。
【0020】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、例えば、印刷光沢、スナップ写真、印刷濃度、ピッキング速度(picking speed)又はドット抜け率(percent missing dots)のような印刷特性を向上し得る。
【0021】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品と比較して低い水蒸気透過率(MVTR、乾燥剤としてシリカゲルを用い相対湿度50%でTAPPI T448の修正版に従って測定)を有する。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品より、約2%、約4%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、又は約20%小さいMVTRを有し得る(例えば、該紙製品が同じ填料配合量である場合)。
【0022】
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、例えば、液体包装のためのコーティング、バリアコーティング、及びプリント電子のためのコーティングのような機能的コーティングのためのベースとして役立ち得る。共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、上に適用される機能的コーティングのための平滑表面を提供する。例えば、紙製品は、ポリマー、金属、水性組成物(例えば、水性バリア層)、又はそれらの組み合わせを含むバリアコーティングを含んでもよい。
【0023】
水性組成物は、1種又はそれ以上の本明細書に記載されている無機粒子材料を含んでもよい。例えば、水性組成物は、板状カオリン又は高板状カオリンのようなカオリンを含んでもよい。「板状」カオリンという用語によって、カオリンは、高い形状係数を有するカオリン製品を意味する。板状カオリンの形状係数は、約20以上約60未満である。高板状カオリンの形状係数は、約60~100又は100を超えさえする。本明細書で用いられる「形状係数」は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5576617号明細書に記載された電気伝導度法、装置及び式を利用して測定されるような、大きさ及び形状を変化させる粒子の集団における、粒子の厚さに対する粒子径の比の尺度である。形状係数を決定する技術は‘617号特許にさらに記載されているが、試験用配向性粒子の水性懸濁液組成物の電気伝導度は、組成物が管を通って流れるように測定される。電気伝導度は、管のある方向及び第1の方向に対して横向きである管の他の方向に沿って測定される。2種類の伝導度の相違を利用して、試験用粒子材料の形状係数が決定される。
【0024】
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、紙製品への機能的コーティングの浸透が少ないか又はないというような機能的コーティングの用途のための、透過性が低い表面を提供する。したがって、薄く、少量の、及び/又は非ポリマー性の機能的コーティングが、所望の機能(例えば、バリア機能)を達成するために用いられる。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品と比較して、耐油性(IGT印刷ユニットを利用しフタル酸ブチル中のスーダンレッドIVの油性溶液を用いて測定)を向上し得る。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコート紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品より、約2%、約4%、約6%、約8%、又は約10%大きい耐油性を有し得る(例えば、該紙製品が同じ填料配合量である場合)。
【0025】
改善された製紙及びシート特性
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品は、そのような紙製品を製造するための改善された工程を可能にする。例えば、紙料中に共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含ませることによって、紙ベースのウエットエンド工程は前処理(例えば、カチオン性ポリマーの添加)を必要としなくてもよい。加えて、ミクロフィブリル化セルロースを含む紙料と比較して、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙料のカチオン要求性は低いか又は変化なく、歩留まりは改善され、形成性(formation)は改善される。 紙製品で使用される共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物によって歩留まりが改善されるような態様においては、歩留まり向上剤の使用は低減又は除去されてもよく、歩留まり向上剤によって生じる紙製品への損傷が回避され得る。
【0026】
製紙用紙料サンプルのカチオン要求性は、その表面を中和するのに必要な高度に荷電したカチオン性ポリマーの量によって示される。ゼロ信号に達するのに必要なカチオン性滴定剤(例えば、poly-DADMAC)の量に基づいてカチオン要求性を決定するために、ストリーミング電流試験を用いてもよい。エンドポイントを決定する他の方法としては、滴定剤の漸増的な各添加後にゼータ電位を評価する方法がある。カチオン要求性を決定する別の戦略には、サンプルを既知の過剰のカチオン性滴定剤と混合し、ろ過して固形物を除去した後、色エンドポイントまで逆滴定する(コロイド滴定)場合がある。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む製紙用紙料のカチオン要求性は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた製紙用紙料のカチオン要求性に相当するか又は満たない(例えば、該紙料が同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、カチオン要求性(別名「アニオン性荷電」)は、以下の「実施例」に記載されている方法に従って、Mutek PCD 03滴定装置を利用して測定される。
【0027】
歩留まりとは、紙の網が形成されるにつれて、その中に微粒子及び細繊維を維持する工程で用いられる一般用語である。初回通過歩留まりは、紙の網が形成されるにつれて、その中にこれらの微細物質が保持される効率の実用的な目安になる。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙料の初回通過歩留まりは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙料よりも大きく、例えば、少なくとも約2%、約5%、又は約10%大きい(例えば、該紙料が同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、初回通過歩留まりは、ヘッドボックス(HB)内及び白水(WW)トレイ内の固形物の計量に基づいて決定され、次式に従って計算される。
歩留まり=[(HB固形物-WW固形物)/HB固形物]×100
【0028】
紙形成中の灰分歩留まり(灰化によって決定)は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙料と比べて、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙料から形成された紙製品において改善され得る(例えば、該紙料が同じ填料配合量である場合)。ある態様においては、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙料からの紙形成中の歩留まりは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙料より、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約25%大きい(例えば、該紙料が同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、灰分歩留まりは、初回通過歩留まりと同様の原理に従って決定されるが、ヘッドボックス(HB)内及び白水(WW)トレイ内の灰分成分の重量に基づき、次式に従って計算される。
灰分歩留まり=[(HB灰分-WW灰分)/HB灰分]×100
【0029】
紙形成は、網を形成する紙上の繊維、繊維片、無機填料、及び化学添加剤の不均一な分布の結果生じるものである。形成は、紙シートの平面における小規模の坪量の変化によって特徴付けられ得る。形成を説明する別の方法は、紙の坪量の変動である。紙のでこぼこの構造は、ミリメートル画分から数センチの範囲の長さスケールで肉眼により見えるかもしれない。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙料の形成インデックス(PTS)は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙料より、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%小さい(例えば、該紙料が同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、形成インデックス(PTS)は、PTSによって開発されたDOMASソフトウェアを使用し、そのハンドブック「DOMAS 2.4 ユーザーガイド」のセクション10-1に記載された測定方法に従って決定される。
【0030】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む板紙製品は、折り曲げ適性及び/又は亀裂抵抗性を改善し得る。
共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品はまた、改善されたシート特性の組み合わせを有してもよい。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、改善された強度特性及び改善された形成性を有する。特定の理論に拘束されるわけではないが、追加の精選処理又はフィブリル化は、望ましくないことに凝集傾向をもたらす安定性の低減により紙形成に損傷を与えると信じられているので、そのような組み合わせは驚くべきことであるが、紙シート強度を向上し得る。
【0031】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、引張強度、引裂強度及びz-方向強度(内部結合)を改善した。通常パルプの精選においては、引張強度が上昇するにつれて引裂強度及び/又はz-方向強度は減少するので、このことは驚くべきことである。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約12%、少なくとも約15%、又は少なくとも約20%大きい引張強度を有し得る(例えば、該紙製品シートが同じ填料配合量である場合)。他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約25%大きい引裂強度を有し得る(例えば、該紙製品シートが同じ填料配合量である場合)。他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、改善された引張強度及び改善された引裂強度の組み合わせを有する。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、約2%~約10%大きい引張強度、及び、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、約5%~約25%大きい引裂強度を有し得る。
ある態様では、引裂強度は、TAPPI法T 414 om-04(紙の内部引裂抵抗(エルメンドルフ型方法))に従って決定される。
【0032】
他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、改善された引張強度、並びに、例えばシート光散乱及びシート光吸収のような改善された散乱(すなわち、視覚的な)特性を有する。先と同様に、通常は引張強度が上昇するにつれてシート光散乱は減少するので、このことは驚くべきことである。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、又は少なくとも約10%大きいシート光散乱係数(m2kg-1、フィルター8及び10を用いて測定)を有し得る(例えば、該紙製品シートが同じ填料配合量である場合)。他の態様においては、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、改善された引張強度及び/又は改善された引裂強度並びに改善された光散乱の組み合わせを有する。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより約2%~約10%大きい引張強度、及び/又は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより約5%~約25%大きい引裂強度、並びに、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより約2%~約10%、例えば約2%~約5%大きいシート光散乱係数(m2kg-1、フィルター8及び10を用いて測定)を有し得る(例えば、該紙製品シートが同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、シート光散乱及び吸収係数は、エルレフォ計器から得られる反射データ、すなわち、R inf=10シートの束の反射率、Ro=黒カップ上での1シートの反射率を利用して測定され、これらの値及びシートの実質(gm-2)は、「Paper Optics」(Lorentzen及びWettreにより発行、ISBN91-971-765-6-7)、p.29-36中でNils Paulerによって記載されているKubelka-Munkの式に入力される。
【0033】
破裂強度は、様々な紙における破裂抵抗性の尺度として広く用いられている。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品シートより、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約25%大きい破裂強度を有し得る(例えば、該紙製品シートが同じ填料配合量である場合)。
ある態様では、破裂強度は、SCAN P 24に従ってMessemer Buchnel破裂試験機を利用して決定される。
【0034】
ある態様では、そのような改善された紙製品シート特性は、約25μm~約250μm、より好ましくは約30μm~約150μm、さらに好ましくは約50μm~約140μm、いっそう好ましくは約70μm~約130μm、及びとりわけ好ましくは約50μm~約120μmの範囲のd50を有するミクロフィブリル化セルロースを含む共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品シートにおいて達成され得る。特定の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物のミクロフィブリル化セルロースは、所望のd50に向けられる(以下に定義するような)高い急峻性を有する。ある態様では、狭い粒径分布のミクロフィブリル化セルロースは、バッチ処理で、無機粒子材料の存在下におけるセルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化によって製造されてもよく、結果として生じる所望のミクロフィブリル化セルロース急峻性を有する共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物は、水又は何か他の液体によりミクロフィブリル化装置から洗い出されてもよい。
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物のミクロフィブリル化セルロースは、単モード粒径分布を有している。他の態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物のミクロフィブリル化セルロースは、例えば、無機粒子材料存在下におけるセルロースを含む繊維状基材の少ない又は部分的なミクロフィブリル化によって生み出される多モード粒径分布を有する。
【0035】
コーティング
ある態様では、コーティングは、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含んでもよい。共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングは、液体包装、バリアコーティング、又はプリント電子用途のために用いられるもののような機能性紙として使用されてもよい。例えば、機能的コーティングは、例えば液体バリア層のようなバリア層であるともいえるし、機能的コーティングはプリント電子層であるともいえる。
【0036】
共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングは、大きな強度特性(例えば、引張強度、引裂強度、及び剛性)、大きな光沢、及び/又は向上した印刷特性(例えば、印刷光沢、スナップ写真、印刷濃度、又はドット抜け率)を有する紙製品又は紙コーティングを製造するために、紙製品に適用されてもよい。例えば、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングでコートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティングでコートされた紙製品の引張強度より、約5%、約10%、又は約20%大きい引張強度を有し得る。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングでコートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティングでコートされた紙製品の引裂強度より、約5%、約10%、又は約20%大きい引裂強度を有し得る。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングでコートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティングでコートされた紙製品の剛性より、約5%、約10%、又は約20%大きい剛性を有し得る。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングでコートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティングでコートされた紙製品の光沢より、約5%、約10%、又は約20%大きい光沢を有し得る。ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングでコートされた紙製品は、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティングでコートされた紙製品のバリア特性と比較して改善されたバリア特性を有し得る。バリア特性は、酸素、水分、油脂及びアロマの1種又はそれ以上がコート紙製品を通過する(すなわち、伝わった)速度から選択されてもよい。したがって、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティングは、酸素、水分、油脂及びアロマの1種又はそれ以上がコート紙製品を通過する速度を減速又は改善(すなわち、低下)し得る。
ある態様では、引張強度、引裂強度及び光沢は、上述の方法に従って決定される。
【0037】
ある態様では、剛性(すなわち、弾性率)は、J.C.Husband、L.F.Gate、N.Norouzi、及びD.Blair、「The Influence of kaolin Shape Factor on the Stiffness of Coated Papers」、TAPPI Journal、June 2009、p.12-17(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)、並びに、J.C.Husband、J.S.Preston、L.F.Gate、A.Storer、及びP.Creaton、「The Influence of Pigment Particle Shape on the In-Plane tensile Strength Properties of Kaolin-based Coating Layers」、TAPPI Journal、December 2006、p.3-8(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)に記載されている剛性測定方法に従って決定される。
ある態様では、無機粒子材料はカオリンである。有利には、カオリンは板状カオリン又は高板状カオリンである。
【0038】
分散性組成物
ある態様では、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物は、本明細書に記載されている工程又は当技術分野で公知の何か他の乾燥工程(例えば、凍結乾燥)によって製造されるような、乾燥した又は実質的に乾燥した、再分散可能な組成物の形態であり得る。乾燥された共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物は、水性又は非水性溶媒(例えば、ポリマー)中に容易に分散され得る。
それゆえに、本発明の第3の態様に従って、本明細書に記載されている共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むポリマー組成物が提供される。
【0039】
該ポリマー組成物は、ポリマー組成物の全重量に基づいて、少なくとも約0.5質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、又は少なくとも約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含んでもよい。一般には、ポリマーは、せいぜい約50質量%、例えば、せいぜい約45質量%又はせいぜい約40質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物しか含まないだろう。特定の態様では、前記ポリマー組成物は、約25質量%~約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む。共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物の繊維含有量は、少なくとも約2質量%、少なくとも約3質量%、少なくとも約4質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、少なくとも約8質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約11質量%、少なくとも約12質量%、少なくとも約13質量%、少なくとも約14質量%、又は少なくとも約15質量%であり得る。一般には、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物の繊維含有量は、約25質量%未満、例えば、約20質量%未満だろう。
【0040】
前記ポリマーは、天然若しくは合成ポリマー又はそれらの混合のいずれを含んでもよい。該ポリマーは、例えば、熱可塑性物質又は熱硬化性樹脂であってもよい。本明細書で用いられている用語「ポリマー」は、ホモポリマー及び/又はコポリマー、並びに、架橋及び/又は絡み合った(entangled)ポリマーを含む。
本発明のポリマー組成物中のホモポリマー及び/又はコポリマーを含むポリマーは、次の単量体、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及び1~18個の炭素原子をアルキル基中に有するアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、ブタジエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸のエステル、テトラヒドロフタル酸又はその無水物、イタコン酸又はその無水物、及び、イタコン酸のエステルの1種又はそれ以上から調製してもよく、その際、架橋二量体、三量体、若しくは四量体、クロトン酸、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、シクロヘキサンジメタノール、1,6ヘキサンジオール、トリメチオールプロパン(trimethyolpropane)、ペンタエリスリトール、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アジピン酸若しくはコハク酸、アゼライン酸及び二量体脂肪酸、トルエンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートを使っても、使わなくてもよい。メタクリル酸メチル及びスチレン単量体を含むコポリマーが好ましい。
【0041】
前記ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、エポキシポリマー、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリシクロペンタジエン、及びそれらのコポリマーの1種又はそれ以上から選ばれてもよい。適切なポリマーはまた、シリコーンのような液状ゴムを含む。
【0042】
本発明のポリマー組成物の調製は、当技術分野で公知であり当業者にすぐに自明であるような任意の好適な混合方法によって達成することができる。
そのような方法は、個々の成分又はその前駆体を配合した後、従来の方法で処理することを含んでいる。成分の一部は、必要に応じて、配合混合物への添加前に予備混合することもできる。
熱可塑性ポリマー組成物の場合、そのような処理工程は、組成物から物品を製造するための押出機での直接混合又は別個の混合装置での予備混合のいずれかの溶融混合を含んでもよい。代わりに、各成分の乾燥配合物は、予備溶融混合することなく、直接射出成形されることもできる。
ポリマー組成物は、その成分を併せて密接に混合することによって調製され得る。前記共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物は、上述のように処理する前に、ポリマー及び任意の追加成分と適宜混合してもよい。
【0043】
架橋又は硬化ポリマー組成物の調製のために、未硬化成分又はその前駆体の配合物、並びに、必要に応じて、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物並びに任意の所望の非パーライト成分は、ポリマーを架橋及び/又は硬化するために、使用されるポリマーの性質又は量に応じて、熱、圧力及び/又は光の適切な条件下において、有効量の任意の好適な架橋剤又は硬化系と接触されるだろう。
共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物並びに任意の所望の他の成分がポリマー化の際にその場に存在するポリマー組成物の調製のためには、モノマー及び任意の所望の他のポリマー前駆体の配合物、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物並びに任意の他の成分は、モノマーをポリマー化するために、使用されるポリマーの性質又は量に応じて、熱、圧力及び/又は光の適切な条件下において、その場でパーライト及び任意の他の成分と接触されるだろう。
【0044】
セルロースを含む繊維状基材
セルロースを含む繊維状基材は、木材、草類(例えば、サトウキビ、タケ)又は布くず(例えば、織物くず、綿、ヘンプ、亜麻)等の任意の適切な原料由来のものでもよい。セルロースを含む繊維状基材は、任意の適切な化学的処理、機械的処理又はこれらの組み合わせによって調製され得るパルプの形態(すなわち、セルロース繊維の水中懸濁液)であってもよい。例えば、パルプは、化学パルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、機械パルプ、再生パルプ、製紙工場損紙、製紙工場廃棄物流(papermill waste stream)、若しくは製紙工場由来廃棄物、又はこれらの組み合わせでもよい。セルロースパルプは、当技術分野においてカナダ標準ろ水度(CSF)としてcm3で報告される既定のろ水度にまで、叩解(例えば、Valley beater内)及び/又は別の形で精選(例えば、コニカル又はプレートリファイナーによる処理)され得る。CSFは、パルプ懸濁液がはける速度によって評価されるパルプのろ水度又は排水速度の値を意味する。例えば、セルロースパルプは、ミクロフィブリル化前に約10cm3以上のカナダ標準ろ水度を有し得る。セルロースパルプは、約700cm3以下、例えば約650cm3以下、約600cm3以下、約550cm3以下、約500cm3以下、約450cm3以下、約400cm3以下、約350cm3以下、約300cm3以下、約250cm3以下、約200cm3以下、約150cm3以下、約100cm3以下又は約50cm3以下のCSFを有し得る。次に、セルロースパルプを当技術分野で周知の方法によって脱水し得る。例えば、パルプをスクリーンで濾過することによって、少なくとも約10%の固形分、例えば少なくとも約15%の固形分、少なくとも約20%の固形分、少なくとも約30%の固形分又は少なくとも約40%の固形分を含むウェットシートが得られる。パルプを、精選していない状態で、すなわち叩解又は脱水又は別の形での精選をすることなく利用してもよい。
セルロースを含む繊維状基材を、乾燥状態で粉砕槽又はホモジナイザーに加えてもよい。例えば、乾燥した損紙を直接、粉砕槽に加えてもよい。次に、粉砕槽内の水性環境によって、パルプ形成が促進される。
【0045】
無機粒子材料
無機粒子材料は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏のようなアルカリ土類金属炭酸塩若しくは硫酸塩、カオリン、ハロイサイト、若しくはボール粘土のような含水カンダイト粘土、メタカオリン若しくは十分に焼成されたカオリンのような無水(焼成)カンダイト粘土、タルク、マイカ、ハンタイト、ヒドロマグネサイト、粉末ガラス、パーライト若しくは珪藻土、若しくは水酸化マグネシウム、若しくは三水和アルミニウム、又はそれらの組み合わせであってもよい。
本発明の第1の側面による方法での使用が好ましい無機粒子材料は炭酸カルシウムである。以下、本発明は、炭酸カルシウムの観点、並びに、炭酸カルシウムが処理及び/又は処置される局面との関連で論じられる傾向があり得る。本発明は、このような態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0046】
本発明で使用される粒子状炭酸カルシウムは、天然原料を粉砕することによって取得され得る。粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、典型的には、鉱物原料(チョーク、大理石、石灰石等)を圧砕し粉砕することによって得られ、所望の微粉度を有する生成物を得るために、粒径分類工程に付してもよい。所望の微粉度及び/又は色を有する生成物を得るために、漂白、浮遊選鉱、磁力選鉱のようなその他の技法を用いてもよい。粒子状固形材料は自原的に(autogenously)、すなわち固形材料の粒子それ自体の磨滅によって、あるいは粉砕対象である炭酸カルシウムとは異なる材料の粒子を含む粒子状粉砕媒体の存在下で粉砕され得る。これらの工程は、分散剤及び殺生物剤の存在下又は不在下で行ってもよく、分散剤及び殺生物剤は工程のいずれの段階で添加してもよい。
【0047】
沈降炭酸カルシウム(PCC)は、本発明における粒子状炭酸カルシウムの原料として使用されてもよく、当技術分野で利用可能ないずれの公知の方法によっても製造され得る。TAPPI Monograph Series No.30、「Paper Coating Pigments」の第34~35頁には、製紙産業で使用する生成物の調製における使用に適した沈降炭酸カルシウムを調製するための3種類の主な商業的な工程が記載されているが、これらの工程は、本発明を実践する際にも使用することができる。これらの3種類の工程の全てにおいて、石灰石のような炭酸カルシウムの供給材料は、まず焼成されて生石灰を生成し、該生石灰は、水中で消和されて水酸化カルシウム又は石灰乳を与える。第1の工程においては、この石灰乳を、二酸化炭素ガスで直接、炭酸塩化する。この工程には副生成物が出ないという利点があり、また炭酸カルシウム生成物の性質及び純度の制御が比較的容易である。第2の工程においては、石灰乳をソーダ灰と接触させて、複分解によって炭酸カルシウムの沈殿物と水酸化ナトリウムの溶液を得る。この工程を商業的に利用すれば、この水酸化ナトリウムを、実質的に完全に炭酸カルシウムから分離し得る。第3の主要商業的工程においては、石灰乳はまず塩化アンモニウムと接触させられ、塩化カルシウム溶液及びアンモニアガスを与える。次に、この塩化カルシウム溶液はソーダ灰と接触させられ、複分解によって沈降炭酸カルシウム及び塩化ナトリウムの溶液を生成する。結晶は、様々な形状及びサイズで生成可能であり、採用する特定の反応工程に左右される。PCC結晶の3種類の主要形態はアラゴナイト、菱面体晶及び偏三角面体(scalenohedral)(例えば、方解石)であり、その混合物を含めてこれらは全て、本発明における使用に適している。
【0048】
炭酸カルシウムの湿式粉砕は、炭酸カルシウムの水性懸濁液の調製を伴い、次に任意の適切な分散剤の存在下で粉砕を行う。炭酸カルシウムの湿式粉砕に関する更なる情報については、例えば欧州特許出願公開第614948号明細書(その内容は、参照により全て本明細書に組み込まれる)を参照してもよい。
状況によっては、その他の鉱物を少量添加してもよく、例えばカオリン、焼成カオリン、珪灰石、ボーキサイト、タルク又はマイカの1種又はそれ以上が存在する場合もある。
本発明の無機粒子材料が天然原料から取得される場合、若干の鉱物質不純物が粉砕された材料を汚染する場合がある。例えば、天然の炭酸カルシウムは、その他の鉱物を伴って存在することがあり得る。このため、一部の態様においては、無機粒子材料はある量の不純物を含む。しかしながら、一般に、本発明で使用の無機粒子材料が含有するその他の鉱物質不純物は約5質量%未満、好ましくは約1質量%未満である。
【0049】
本発明の方法のミクロフィブリル化段階で使用される無機粒子材料は、好ましくは、粒子の少なくとも約10質量%が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%又は約100%が、2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有する。
【0050】
特に指定のない限り、無機粒子材料に関して本明細書で言及される粒径特性は、本明細書においてはMicromeritics Sedigraph 5100ユニットと称される、Micromeritics Instruments Corporation、Norcross、ジョージア州、米国(電話番号:+1 770 662 3620、ウェブサイト:www.micromeritics.com)から提供されるSedigraph 5100機器を使用して、水性媒体中に完全に分散させられた状態の粒子状材料の沈降による周知の方法で測定される。そのような機器によって、その測定結果、及び、当技術分野においては「等価球径」(e.s.d)と称されている大きさが、所定のe.s.d値に満たない粒子の累積重量率のプロットが提供される。平均粒径d50は、このようにして決定される粒子e.s.dの値であって、そのd50値に満たない等価粒径を有する粒子が50質量%であるときのものである。
【0051】
あるいは記載がある場合、無機粒子材料について本明細書で言及される粒径特性は、Malvern Instruments Ltd から提供されるMalvern Mastersizer S 機器(又は、本質的に同じ結果が得られる他の方法)を利用して、レーザー光散乱の分野で利用される周知の慣用方法によって測定される。レーザー光散乱法においては、粉末、懸濁液又はエマルジョン状の粒子の大きさが、ミー散乱理論の応用に基づいて、レーザービーム回析を利用して測定されてもよい。そのような機器によって、その測定結果、及び、当技術分野においては「等価球径」(e.s.d)と称されている大きさが、所定のe.s.d値に満たない粒子の累積体積率のプロットが提供される。平均粒径d50は、このようにして決定される粒子e.s.dの値であって、そのd50値に満たない等価粒径を有する粒子が50体積%であるときのものである。
【0052】
別の態様において、本発明の方法のミクロフィブリル化工程で使用される無機粒子材料は、好ましくは、Malvern Mastersizer S 機器を利用して測定した場合に、少なくとも約10体積%の粒子のe.s.dが2μm未満となる粒径分布を有し、例えば、少なくとも約20体積%、少なくとも約 30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約 50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%、又は約100体積%の粒子のe.s.dが2μm未満となる粒径分布を有するだろう。
【0053】
特に指定のない限り、ミクロフィブリル化セルロース材料の粒径特性は、Malvern Instruments Ltdから提供されるMalvern Mastersizer S機器を利用して(又は、本質的に同じ結果が得られるその他の方法によって)、レーザー光散乱の分野で利用される周知の慣用の方法によって測定される。
Malvern Mastersizer S機器を使用して無機粒子材料とミクロフィブリル化セルロースとの混合物の粒径分布を特徴付けるために用いられる手順の詳細が、以下に示される。
【0054】
本発明の第1の側面に係る方法で使用するための別の好ましい無機粒子材料は、カオリン粘土である。以下、本明細書のこのセクションは、カオリンの観点、並びに、カオリンが処理及び/又は処置される局面との関連で論じられる傾向があり得る。本発明は、このような態様に限定されると解釈されるべきではない。このため、一部の態様においては、カオリンは無加工の形態で使用される。
【0055】
本発明で使用されるカオリン粘土は、天然原料、すなわち原料天然カオリン粘土鉱物由来の加工済み材料であり得る。この加工カオリン粘土は、典型的には、少なくとも約50質量%のカオリナイトを含有し得る。例えば、最も商業的に加工が施されたカオリン粘土は、約75質量%より多いカオリナイトを含有し、また約90質量%より多く、場合によっては約95質量%を超えるカオリナイトを含有し得る。
本発明で使用されるカオリン粘土は、当業者に周知の1種以上のその他の工程、例えば公知の精選又は選鉱工程によって原料天然カオリン粘土鉱物から調製され得る。
例えば、粘土鉱物は、ハイドロサルファイトナトリウムのような還元漂白剤で漂白され得る。ハイドロサルファイトナトリウムを使用する場合、ハイドロサルファイトナトリウム漂白段階の後に、漂白された粘土鉱物は任意で脱水され、そして任意で洗浄され任意で再度脱水されてもよい。
粘土鉱物は、例えば当技術分野で周知のフロキュレーション、浮遊選鉱又は磁力選鉱法で処理することによって不純物を除去するために処置されてもよい。あるいは、本発明の第1の側面で使用される粘土鉱物は、固体又は水性懸濁液の形態の未処理のものであってよい。
【0056】
本発明で使用の粒子状カオリン粘土を調製するための工程は、1つ以上の細分化工程(例えば、粉砕、ミル粉砕)を含んでもよい。粗カオリンを軽く細分化することによって、カオリンを適切に剥離する。細分化は、プラスチック(例えば、ナイロン)のビーズ若しくは顆粒、砂又はセラミック粉砕若しくはミル粉砕補助物を使用して行われ得る。周知の手順で粗粒カオリンを精選することによって不純物を除去し、物理的性質を改善し得る。カオリン粘土を、公知の粒径分類手順(例えば、篩過、遠心分離(又はその両方))で処理することによって、望ましいd50値又は粒径分布を有する粒子が得られる。
【0057】
ミクロフィブリル化工程
本発明の第1の側面において、セルロースを含む繊維状基材を無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化する工程を含む、紙用填料又はコーティング層として使用するための組成物を調製する方法が提供される。本方法の特定の態様において、ミクロフィブリル化工程は、ミクロフィブリル化剤として機能する無機粒子材料の存在下で行われる。
【0058】
ミクロフィブリル化とは、セルロースのミクロフィブリルが、個々の種又は前ミクロフィブリル化パルプの繊維より小さい凝集物として、分離又は部分的に分離される工程のことである。製紙における使用に適した典型的なセルロース繊維(すなわち、前ミクロフィブリル化パルプ)には、数百又は数千の個々のセルロースミクロフィブリルから成るより大きな集合体が含まれる。セルロースがミクロフィブリル化されることによって、本明細書に記載の特徴及び性質を含むがこれらに限定されない特定の特徴及び性質が、ミクロフィブリル化セルロース及びこのミクロフィブリル化セルロースを含む組成物に付与される。
ミクロフィブリル化工程はいずれの適切な装置でも実行し得て、リファイナーを含むがこれに限定はされない。ある態様では、ミクロフィブリル化工程は、粉砕槽において湿式粉砕条件下で行われる。別の態様では、ミクロフィブリル化工程は、ホモジナイザーにおいて行われる。これらの態様のそれぞれについては、以下でより詳細に説明される。
【0059】
・湿式粉砕
粉砕は、適切には慣用のやり方で行われる。粉砕は、粒子状粉砕媒体の存在下での磨砕工程であっても、又は自生粉砕工程、すなわち粉砕媒体の不在下での工程であってもよい。粉砕媒体とは、セルロースを含む繊維状基材と共粉砕される無機粒子材料以外の媒体のことである。
粒子状粉砕媒体は、存在する場合、天然又は合成材料であってよい。粉砕媒体は、例えば、いずれの硬質鉱物、セラミック又は金属材料のボール、ビーズ又はペレットを含んでもよい。このような材料には、例えばアルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム又は、カオリン質粘土を約1300~約1800℃の範囲の温度で焼成することによって生成されるムライト高含有材料が含まれ得る。例えば、一部の態様においては、Carbolite(登録商標)粉砕媒体が好ましい。あるいは、適切な粒径の天然の砂の粒子が使用され得る。
【0060】
一般に、本発明で使用するために選択される粉砕媒体のタイプ及び粒径は、粉砕対象である材料の供給懸濁液の、例えば粒径及び化学組成のような特性に依存し得る。好ましくは、粒子状粉砕媒体は、約0.1~約6.0mmの範囲、より好ましくは約0.2~約4.0mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む。粉砕媒体(単一又は複数)は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0061】
粉砕は、1つ以上の段階において行われ得る。例えば、粗無機粒子材料は粉砕槽において既定の粒径分布にまで粉砕され得て、この後、セルロースを含む繊維状材料が添加され、粉砕は所望のレベルのミクロフィブリル化が達成されるまで継続される。本発明の第1の局面に従って使用される粗無機粒子材料は、初期において、粒子の約20質量%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の約15質量%未満又は約10質量%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有し得る。別の態様において、本発明の第1の態様に従って使用される粗無機粒子材料は、初期において、Malvern Mastersizer S機器で測定した場合に、粒子の約20体積%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の約15体積%未満又は約10体積%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有し得る。
【0062】
粗無機粒子材料は、粉砕媒体の不在下又は存在下で湿式又は乾式粉砕され得る。湿式粉砕段階の場合、粗無機粒子材料は、好ましくは、水性懸濁液中で粉砕媒体の存在下で粉砕される。このような懸濁液において、粗無機粒子材料は、好ましくは、懸濁液の約5~約85質量%、より好ましくは懸濁液の約20~約80質量%の量で存在し得る。最も好ましくは、粗無機粒子材料は、懸濁液の約30~約75質量%の量で存在し得る。上述したように、粗無機粒子材料は、粒子の少なくとも約10質量%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%又は約100質量%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布に粉砕され得る。この後、セルロースパルプを添加し、これら2種類の成分を共粉砕することによって、セルロースパルプの繊維をミクロフィブリル化する。別の態様において、粗無機粒子材料は、Malvern Mastersizer S機器で測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%又は約100体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布に粉砕される。この後、セルロースパルプを添加し、これら2種類の成分を共粉砕することによって、セルロースパルプの繊維をミクロフィブリル化する。
【0063】
ある態様では、無機粒子材料の平均粒径(d50)は、共粉砕工程中に低下する。例えば、無機粒子材料のd50は、(Malvern Mastersizer S機器で測定した場合に)少なくとも約10%低下し得て、例えば、無機粒子材料のd50は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%低下し得る。例えば、共粉砕前に2.5μmのd50を有し共粉砕後に1.5μmのd50を有する無機粒子材料は、40%の粒径の低下を経ている。態様において、無機粒子材料の平均粒径は、共粉砕工程中に大幅に低下しない。「大幅に低下しない」とは、無機粒子材料のd50の低下が約10%未満であることを意味し、例えば無機粒子材料のd50の低下は約5%未満である。
【0064】
セルロースを含む繊維状基材は、レーザー光散乱法によって測定した場合に約5~約500μmのd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、約400μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約125μm以下、約100μm以下、約90μm以下、約80μm以下、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、又は約10μm以下のd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0065】
セルロースを含む繊維状基材は、モード繊維粒径約0.1~500μmを有するミクロフィブリル化セルロース及びモード無機粒子材料粒径0.25~20μmが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、少なくとも約0.5μmのモード繊維粒径、例えば少なくとも約10μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm又は少なくとも約400μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0066】
セルロースを含む繊維状基材は、Malvernで測定した場合に約10以上の繊維急峻性(steepness)を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。繊維急峻性(すなわち、繊維の粒径分布の急峻性)は、次の式によって決定される。
急峻性=100×(d30/d70)
【0067】
ミクロフィブリル化セルロースは、約100以下の繊維急峻性を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約75以下、約50以下、約40以下又は約30以下の繊維急峻性を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約20~約50、約25~約40、約25~約35、又は約30~約40の繊維急峻性を有し得る。
粉砕は、適切には、回転ミル(例えば、ロッドミル、ボールミル、自生ミル)、撹拌ミル(例えば、SAM、IsaMill)、タワーミル、撹拌媒体デトライター(stirred media detritor)(SMD)のような粉砕槽、又は、粉砕対象である原料が間に供給される回転する平行粉砕プレートを備えた粉砕槽において、適切に行われる。
【0068】
ある態様では、粉砕槽はタワーミルである。このタワーミルは、1つ以上の粉砕域上に静止域を備え得る。静止域は、タワーミルの内部の最上部に向かって位置する領域であり、ここでは粉砕が最小限にしか又は全く行われず、またミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料が入っている。静止域は、粉砕媒体の粒子がタワーミルの1つ以上の粉砕域内へと沈降する領域である。
タワーミルは、1つ以上の粉砕域上に分級機を備え得る。ある態様において、この分級機は最上部に取り付けられ、また静止域に隣接する。分級機は液体サイクロンであってよい。
タワーミルは、1つ以上の粉砕域上にスクリーンを備え得る。ある態様において、スクリーンは静止域及び/又は分級機に隣接して配置される。このスクリーンは、ミクロフィブリル化セルロースと無機粒子材料とを含む生成物である水性懸濁液から粉砕媒体を分離し、また粉砕媒体の沈降を強化するように寸法設計され得る。
【0069】
ある態様では、粉砕はプラグ流れ条件下で行われる。プラグ流れ条件下で、タワーを通る流れは、タワー全体を通して粉砕材料の混合が制限されるようなものである。これはタワーミルの長さに沿った異なる地点において、ミクロフィブリル化セルロースの微粉度が上昇するにつれて水性環境の粘度が変化することを意味する。このため、事実上、タワーミル内の粉砕領域は、特徴的な粘度を有する1つ以上の粉砕域を含むとみなすことが可能である。当業者なら、隣接する粉砕域間において粘度にはっきりとした境界はないことがわかる。
【0070】
ある態様では、ミル内のこれらの区域でのミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の粘度を低下させるために、1つ以上の粉砕域の上の静止域、分級機又はスクリーンに近接したミルの最上部で水が加えられる。ミルにおけるこの地点で生成物であるミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を希釈することによって、静止域及び/又は分級機及び/又はスクリーンへの粉砕媒体のキャリーオーバーがより良好に防止されることが判明している。さらに、タワーでの混合が制限されることからタワー下での高固形分での加工が可能になり、また最上部での希釈を、希釈水がタワーを下って1つ以上の粉砕域内に逆流するのを抑えて行うことが可能になる。ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む生成物である水性懸濁液の粘度を低下させるのに効果的ないずれの適切な量の水も添加され得る。この水は、粉砕工程中に連続的に又は一定の間隔で又は不定期な間隔で添加され得る。
【0071】
別の態様において、水は1つ以上の粉砕域に1つ以上の注水点を経由して添加され得て、この注水点はタワーミルの長さに沿って位置決めされている。あるいは、各注水点は1つ以上の粉砕域に対応した位置に配置されている。有利には、タワーに沿った様々な位置での注水能によって、ミルに沿ったいずれの又は全ての位置での粉砕条件の更なる調節が可能になる。
タワーミルは、一連のインペラローターディスクを長さに沿って備えた垂直インペラシャフト(vertical impeller shaft)を備え得る。インペラローターディスクの作動によって、ミル全体にわたって一連の個別の粉砕域が形成される。
【0072】
別の態様において、粉砕はスクリーン粉砕機(screened grinder)、好ましくは撹拌媒体デトライターにおいて行われる。スクリーン粉砕機は、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備え得て、例えば、該1つ以上のスクリーンは、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約550μm、少なくとも約600μm、少なくとも約650μm、少なくとも約700μm、少なくとも約750μm、少なくとも約800μm、少なくとも約850μm、少なくとも約900μm、又は少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有し得る。
直前に述べたスクリーンサイズは、前述のタワーミルの態様にも適用可能である。
【0073】
上述したように、粉砕は、粉砕媒体の存在下で行われ得る。ある態様において、粉砕媒体は、約1~約6mm、例えば約2mm、約3mm、約4mm、又は約5mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む粗い媒体である。
別の態様において、粉砕媒体は、少なくとも約2.5、例えば少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、少なくとも約5.0、少なくとも約5.5又は少なくとも約6.0の比重を有する。
別の態様において、粉砕媒体は、約1~約6mmの範囲の平均直径を有する粒子を含み、また少なくとも約2.5の比重を有する。
別の態様において、粉砕媒体は、約3mmの平均直径及び約2.7の比重を有する粒子を含む。
【0074】
上述したように、粉砕媒体(単一又は複数)は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
ある態様では、粉砕媒体は装入物の約50体積%の量で存在する。
【0075】
「装入物(charge)」とは、粉砕槽に供給される供給原料である組成物を意味する。装入物には、水、粉砕媒体、セルロースを含む繊維状基材、無機粒子材料及び本明細書に記載されるようなその他の任意の添加剤が含まれる。
比較的粗い及び/又は高密度な媒体の使用には、改善された(すなわちより速い)沈降速度、静止域及び/又は分級機及び/又はスクリーンを通しての媒体のキャリーオーバーの軽減という利点がある。
【0076】
比較的粗い粉砕媒体の使用における更なる利点は、粉砕工程中に無機粒子材料の平均粒径(d50)が大幅に低下しないことから、粉砕システムに投入されるエネルギーが主にセルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化に費やされることである。
比較的粗いスクリーンを使用する更なる利点は、ミクロフィブリル化工程で比較的粗い又は高密度の粉砕媒体を使用可能なことである。加えて、比較的粗いスクリーン(すなわち、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有するもの)の使用によって、比較的高固形分の生成物の加工及び粉砕機からの取り出しが可能になり、これによって比較的高固形分の供給原料(セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料を含む)を採算の取れる工程で加工することが可能になる。後述するように、初期固形分含有量が高い供給原料がエネルギー効率について望ましいことが判明している。更に、低固形分で(所定のエネルギーで)生成された生成物はより粗い粒径分布を有することも判明している。
【0077】
前述の「背景技術」のセクションで説明したように、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを経済的に工業規模で調製する問題に取り組もうとするものである。
したがって、一態様において、セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料は、水性環境において少なくとも約4質量%の初期固形分含有量で存在し、このうちの少なくとも約2質量%がセルロースを含む繊維状基材である。初期固形分含有量は、少なくとも約10質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%又は少なくとも約40質量%であり得る。初期固形分含有量の少なくとも約5質量%がセルロースを含む繊維状基材であり得て、例えば初期固形分含有量の少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%又は少なくとも約20質量%が、セルロースを含む繊維状基材であり得る。
【0078】
別の態様において、粉砕は粉砕槽のカスケードにおいて行われ、その1つ以上の粉砕槽が1つ以上の粉砕域を備え得る。例えば、セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料は、2つ以上の粉砕槽のカスケード、例えば3つ以上の粉砕槽のカスケード、4つ以上の粉砕槽のカスケード、5つ以上の粉砕槽のカスケード、6つ以上の粉砕槽のカスケード、7つ以上の粉砕槽のカスケード、8つ以上の粉砕槽のカスケード、9つ以上の直列の粉砕槽のカスケード又は最高10個の粉砕槽を含むカスケードにおいて粉砕され得る。粉砕槽のカスケードは、直列若しくは並列又は直列と並列との組み合わせで作動可能に連結され得る。カスケードを構成する粉砕槽の1つ以上からの産出物及び/又は粉砕槽の1つ以上への投入物は、1つ以上の篩過工程及び/又は1つ以上の分級工程に供され得る。
【0079】
ミクロフィブリル化工程に費やされる総エネルギーは、カスケードを構成する粉砕槽のそれぞれに均等に分配され得る。あるいは、投入エネルギー量は、カスケードを構成する粉砕槽の一部又は全てにおいて異なり得る。
当業者であれば、1槽あたりの投入エネルギーが、各槽においてミクロフィブリル化されている繊維状基材の量、任意では各槽における粉砕速度、各槽における粉砕時間、各槽における粉砕媒体のタイプ、無機粒子材料のタイプ及び量に応じてカスケードを構成する槽間で異なり得ることを理解するだろう。ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料の両方の粒径分布を制御するために、カスケードを構成する槽毎に粉砕条件が変えられてもよい。例えば、無機粒子材料の粉砕を軽減し、セルロースを含む繊維状基材の粉砕をターゲットにするために、カスケードを構成する連続する槽間で粉砕媒体サイズが変えられてもよい。
【0080】
ある態様において、粉砕は閉回路で行われる。別の態様において、粉砕は開回路で行われる。粉砕は、バッチモードで行われ得る。粉砕は、再循環バッチモードで行われ得る。
上述したように、粉砕回路は予備粉砕工程を含み得て、この予備粉砕工程において粗無機粒子は粉砕槽において既定の粒径分布にまで粉砕され、その後、セルロースを含む繊維状材料がこの予備粉砕された無機粒子材料に加えられ、粉砕は、望ましいレベルのミクロフィブリル化が得られるまで同一又は異なる粉砕槽において継続される。
【0081】
粉砕対象である材料の懸濁液の粘度は比較的高くなり得ることから、好ましくは、適切な分散剤を粉砕前に懸濁液に添加してもよい。該分散剤は、例えば水溶性縮合リン酸塩、ポリケイ酸若しくはその塩又は高分子電解質、例えば80000以下の数平均分子量を有するポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸)の水溶性塩であってもよい。使用される分散剤の量は一般に、乾燥無機粒子固形材料の質量に対して0.1~2.0質量%の範囲内にある。懸濁液は、4~100℃の範囲の温度で適切に粉砕されてもよい。
【0082】
ミクロフィブリル化工程中に含まれてもよい他の添加剤には、カルボキシメチルセルロース、両性カルボキシメチルセルロース、酸化剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、TEMPO誘導体及び木材分解酵素が含まれる。
【0083】
粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7以上(すなわち、アルカリ性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約8、約9、約10又は約11であってもよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7未満(すなわち、酸性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約6、約5、約4又は約3であってもよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは、適切な量の酸又は塩基の添加によって調節されてもよい。適切な塩基には、例えばNaOHのようなアルカリ金属水酸化物が含まれた。その他の適切な塩基は、炭酸ナトリウム及びアンモニアである。適切な酸には、塩酸及び硫酸のような無機酸又は有機酸が含まれる。例示的な酸はオルトリン酸である。
【0084】
共粉砕対象である混合物中の無機粒子材料及びセルロースパルプの量は、無機粒子材料の乾燥質量とパルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5~約0.5:99.5の比で変化してもよく、例えば無機粒子材料の乾燥質量とパルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5~約50:50の比であってもよい。例えば、無機粒子材料と乾燥繊維の量の比は、約99.5:0.5~約70:30になってもよい。ある態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維比は、約80:20、例えば約85:15、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2、又は約99:1である。好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約95:5である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約90:10である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約85:15である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約80:20である。
【0085】
望ましい水性懸濁組成物を得るための、典型的な粉砕工程における総投入エネルギー量は、典型的には、無機粒子填料の総乾燥質量に基づいて約100~1500kWht-1であってよい。総投入エネルギー量は、約1000kWht-1未満、例えば約800kWht-1未満、約600kWht-1未満、約500kWht-1未満、約400kWht-1未満、約300kWht-1未満又は約200kWht-1未満であってよい。このため、本発明の発明者は、驚くべきことに、無機粒子材料の存在下で共粉砕すると、セルロースパルプを比較的低投入エネルギー量でミクロフィブリル化することができることを発見した。以下で明らかになるように、セルロースを含む繊維状基材における乾燥繊維1トンあたりの総投入エネルギー量は約10000kWht-1未満、例えば約9000kWht-1未満、約8000kWht-1未満、約7000kWht-1未満、約6000kWht-1未満、約5000kWht-1未満、例えば約4000kWht-1未満、約3000kWht-1未満、約2000kWht-1未満、約1500kWht-1未満、約1200kWht-1未満、約1000kWht-1未満又は約800kWht-1未満になる。総投入エネルギー量は、ミクロフィブリル化されている繊維状基材中の乾燥繊維の量、また任意で粉砕速度、粉砕時間に応じて変動する。
【0086】
・均質化
セルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化は、湿潤条件下で無機粒子材料の存在下、セルロースパルプと無機粒子材料との混合物に加圧し(例えば、圧力約500バールまで)、次により低い圧力の区域に送る方法によって行われ得る。混合物を低圧区域に送る速度は十分に速く、また低圧区域の圧力は、セルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こすに十分な低さである。例えば、狭い入口オリフィスとそれよりずっと広い出口オリフィスとを有する環状開口部に混合物を押し込むことによって圧力を低下させ得る。混合物が加速して広い容積内(すなわち、低圧区域)に進入する際の急激な圧力低下によって、ミクロフィブリル化を引き起こすキャビテーションが誘発される。ある態様において、セルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化は、湿潤条件下、無機粒子材料の存在下で、ホモジナイザーにおいてもたらされてもよい。ホモジナイザーにおいて、セルロースパルプ/無機粒子材料混合物は加圧され(例えば、圧力約500バールまで)、狭いノズル又はオリフィスに押し込まれる。該混合物は、約100~約1000バールの圧力、例えば300バール以上、約500バール以上、約200バール以上、約700バール以上の圧力に加圧され得る。均質化によって繊維は高せん断力にさらされることから、加圧されたセルロースパルプがノズル又はオリフィスから出る際に、キャビテーションがパルプ中のセルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こす。更に水を加えることによって、ホモジナイザー全体にわたって懸濁液の流動性が改善され得る。ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む得られた水性懸濁液をホモジナイザーの注入口に戻すことによって、ホモジナイザーを複数回通過させてもよい。好ましい態様において、無機粒子材料は天然で板状の鉱物(カオリン等)である。このため、均質化によってセルロースパルプのミクロフィブリル化が促進されるだけではなく、この板状粒子材料の剥離が促進される。
【0087】
カオリン等の板状粒子材料は、少なくとも約10、例えば少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90又は少なくとも約100の形状係数を有すると理解される。本明細書で用いられる形状係数とは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5576617号明細書に記載の電気伝導率法、装置及び式を使用して測定される、様々なサイズ及び形状の粒子群のための粒径対粒厚比の尺度である。
【0088】
カオリン等の板状無機粒子材料の懸濁液を、ホモジナイザーにおいて、セルロースを含む繊維状基材の不在下で既定の粒径分布にまで処理してよい。その後、セルロースを含む繊維状材料が無機粒子材料の水性スラリーに添加され、この混合懸濁液がホモジナイザーにおいて上述のようにして加工される。均質化工程は、ホモジナイザー内を1回以上通過させることを含め、望ましいレベルのミクロフィブリル化が得られるまで継続される。同様に、板状無機粒子材料を粉砕機において既定の粒径分布にまで処理し、次にセルロースを含む繊維状材料と混合し、続いてホモジナイザーにおいて加工し得る。
例示的なホモジナイザーはManton Gaulin(APV)ホモジナイザーである。
【0089】
ミクロフィブリル化工程を行った後、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を篩過することによって、特定のサイズより大きい繊維及び粉砕媒体を除去し得る。例えば、懸濁液を、選択された公称開口サイズを有する篩を使用した篩過に供することによって、この篩を通過しない繊維を除去することが可能である。公称開口サイズとは、矩形の開口部の対向する辺の公称中心距離又は円形の開口部の公称直径を意味する。篩は、公称開口サイズ150μm、例えば公称開口サイズ125μm、106μm、90μm、74μm、63μm、53μm、45μm又は38μmを有するBSS篩(BS 1796に準拠)であってもよい。一態様において、水性懸濁液は、公称開口サイズ125μmを有するBSS篩を使用して篩過される。次に、水性懸濁液は任意で脱水されてもよい。
【0090】
水性懸濁液
上述の方法に従って調製された本発明の水性懸濁液は、製紙又は紙コーティングの方法における使用に適している。
そのため、本発明は、ミクロフィブリル化セルロース、無機粒子材料及びその他の任意の添加剤を含む、これらから成る、又は本質的にこれらから成る水性懸濁液に向けられている。この水性懸濁液は、製紙又は紙コーティングの方法における使用に適している。その他の任意の添加剤には、分散剤、殺生物剤、懸濁助剤、塩及びその他の添加剤、例えばでんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリマーが含まれ、これらは粉砕中又は粉砕後の鉱物粒子と繊維との相互作用を促進し得る。
【0091】
無機粒子材料は、粒子の少なくとも約10質量%、例えば少なくとも約20質量%、例えば少なくとも約30質量%、例えば少なくとも約40質量%、例えば少なくとも約50質量%、例えば少なくとも約60質量%、例えば少なくとも約70質量%、例えば少なくとも約80質量%、例えば少なくとも約90質量%、例えば少なくとも約95質量%、又は例えば約100%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有し得る。
【0092】
別の態様において、無機粒子材料は、Malvern Mastersizer S機器で測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%、例えば少なくとも約20体積%、例えば少なくとも約30体積%、例えば少なくとも約40体積%、例えば少なくとも約50体積%、例えば少なくとも約60体積%、例えば少なくとも約70体積%、例えば少なくとも約80体積%、例えば少なくとも約90体積%、例えば少なくとも約95体積%、又は例えば約100体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有し得る。
【0093】
共粉砕される混合物中の無機粒子材料及びセルロースパルプの量は、無機粒子材料と乾燥質量パルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5~約0.5:99.5の比で変化してもよく、例えば無機粒子材料と乾燥質量パルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5~約50:50の比で変化してもよい。例えば、無機粒子材料と乾燥繊維の量の比は、約99.5:0.5~約70:30になり得る。ある態様において、無機粒子材料対乾燥繊維比は約80:20、例えば約85:15、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2、又は約99:1である。好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約95:5である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約90:10である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約85:15である。別の好ましい態様においては、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は、約80:20である。
【0094】
ある態様において、組成物は、公称開口サイズ150μm、例えば公称開口サイズ125μm、106μm、90μm、74μm、63μm、53μm、45μm、又は38μmを有するBSS篩(BS 1796に準拠)を通過するには大きすぎる繊維を含まない。一態様において、水性懸濁液は、公称開口サイズ125μmを有するBSS篩を使用して篩過される。
【0095】
したがって、粉砕又は均質化後の懸濁液を処理して選択されたサイズより大きい繊維を除去すると、粉砕又は均質化後の水性懸濁液中のミクロフィブリル化セルロースの量(すなわち、質量%)がパルプ中の乾燥繊維の量より少なくなることがわかる。このため、粉砕機又はホモジナイザーに供給されるパルプ及び無機粒子材料の相対量を、選択されたサイズより大きい繊維を除去した後の水性懸濁液に必要とされるミクロフィブリル化セルロース量に応じて調節可能である。
【0096】
ある態様において、無機粒子材料は、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムである。該無機粒子材料は、粉砕炭酸カルシウム(GCC)若しくは沈降炭酸カルシウム(PCC)又はGCCとPCCとの混合物であり得る。別の態様において、無機粒子材料は、天然で板状の鉱物、例えばカオリンである。該無機粒子材料は、カオリンと炭酸カルシウムとの混合物、例えばカオリンとGCCとの混合物、カオリンとPCCとの混合物、又はカオリンとGCCとPCCとの混合物であり得る。
【0097】
別の態様においては、水性懸濁液を処理して少なくとも一部又は実質的に全ての水を除去することによって、部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物を生成する。例えば、水性懸濁液中の少なくとも約10体積%の水を水性懸濁液から除去し得て、例えば水性懸濁液中の少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約100体積%の水を除去し得る。いずれの適切な技法を使用しても水を水性懸濁液から除去することが可能であり、例えば加圧下若しくは非加圧下での重力若しくは真空排水、蒸発、ろ過又はこれらの技法の組み合わせが含まれる。前記部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は、ミクロフィブリル化セルロース、無機粒子材料、及び乾燥前に水性懸濁液に添加され得る他の任意の添加剤を含むだろう。該部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は、保管又は販売用に包装されてもよい。本明細書に記載されるように、該部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は任意で再水和され、製紙用組成物及びその他の紙製品に取り込まれ得る。
【0098】
紙製品及びその製造工程
ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液は、製紙用組成物に取り込まれることができ、これは今度は紙製品の調製に使用される。本発明との関連で使用される用語、紙製品とは、全ての形態の紙を意味すると理解されるべきであり、厚紙、例えば白板紙、ライナ、段ボール、板紙、コートボール紙等が含まれる。本発明に従って形成され得る様々なタイプのコーティング紙又は非コーティング紙があり、本、雑誌、新聞等、また事務用紙に適した紙が含まれる。紙は必要に応じてカレンダリング又はスーパーカレンダリングさてもよく、例えば、スーパーカレンダリングされたグラビア印刷及びオフセット印刷用の雑誌用紙が、本発明の方法に従って形成されてもよい。軽量コーティング(LWC)、中量コーティング(MWC)又は機械仕上げ着色(machine finished pigmentisation)(MFP)に適した紙もまた、本発明の方法に従って形成され得る。食品包装等に適したバリア特性を有するコーティング紙及び厚紙もまた、本発明の方法に従って形成され得る。
【0099】
典型的な製紙工程において、セルロース含有パルプは、当技術分野で周知のいずれの適切な化学的又は機械的処理又はこれらの組み合わせによって調製される。パルプは、木材、草類(例えば、サトウキビ、タケ)又は布くず(例えば、織物くず、綿、ヘンプ、亜麻)のような任意の適切な原料に由来し得る。パルプは、当業者に周知の工程に従って漂白されてもよく、本発明の使用に適したそれらの工程はすぐに自明であろう。漂白されたセルロースパルプは、既定のろ水度(当技術分野においてカナダ標準ろ水度(CSF)としてcm3で報告されるもの)にまで叩解、精選又はその両方を施され得る。そして、適切な紙料は、漂白及び叩解したパルプから調製される。
【0100】
本発明の製紙用組成物は典型的には、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料の水性懸濁液に加えて、紙料及び当技術分野で公知のその他の慣用の添加剤を含む。本発明の製紙用組成物は、製紙用組成物の総乾燥成分量に対して、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液由来の無機粒子材料を最高約50質量%含み得る。例えば、製紙用組成物は、製紙用組成物の総乾燥成分量に対して、少なくとも約2質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約35質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%の、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液由来の無機粒子材料を含み得る。ミクロフィブリル化セルロース材料は、約10より大きい繊維急峻性、例えば約20~約50、約25~約40、約25~35又は約30~約40の繊維急峻性を有し得る。製紙用組成物は、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の乾燥質量に対して、非イオン性、カチオン性若しくはアニオン性歩留向上剤又は微粒子歩留向上系も約0.1~2質量%の範囲の量で含有し得る。製紙用組成物は、例えば長鎖アルキルケテンダイマー、ワックスエマルジョン又はコハク酸誘導体であってよいサイズ剤も含有し得る。製紙用組成物は、染料及び/又は蛍光増白剤も含有し得る。製紙用組成物は、例えばでんぷん、エピクロロヒドリンコポリマーのような乾燥及び湿潤強度補助剤も含み得る。
【0101】
上記の第8の側面に従って、本発明は紙製品を形成する工程を対象とし、この工程は、(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、(ii)工程(i)のパルプ、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む本発明の水性懸濁液、並びにその他の任意の添加剤(例えば、歩留向上剤、上述の他の添加剤)から製紙用組成物を調製し、(iii)該製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。上述したように、パルプ形成の工程を、セルロースを含む繊維状基材を乾燥した状態、例えば乾燥した損紙又は紙屑の形態で粉砕槽に直接加えることによって、粉砕槽又はホモジナイザー内で行ってもよい。そうすると、粉砕槽又はホモジナイザー内の水性環境によって、パルプ形成が促進される。
【0102】
一態様において、追加の填料成分(すなわち、セルロースを含む繊維状基材と共に共粉砕される無機粒子材料以外の填料成分)を、工程(ii)で調製した製紙用組成物に添加可能である。例示的な填料成分はPCC、GCC、カオリン又はこれらの混合物である。例示的なPCCは、偏三角面体PCCである。ある態様において、製紙用組成物中の無機粒子材料対追加填料成分質量比は、約1:1~約1:30、例えば約1:1~約1:20、例えば約1:1~約1:15、例えば約1:1~約1:10、例えば約1:1~約1:7、例えば約1:3~約1:6、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、又は約1:5である。このような製紙用組成物から形成された紙製品は、無機粒子材料だけ、例えばPCCだけを填料として含む紙製品より高い強度を示し得る。このような製紙用組成物から形成された紙製品は、無機粒子材料とセルロースを含む繊維状基材とが別々に調製(例えば粉砕)され、これらを混合することによって製紙用組成物を生成した場合の紙製品より高い強度を示し得る。同様に、本発明の製紙用組成物から調製された紙製品は、無機粒子材料の量が少ない紙製品に匹敵する強度を示し得る。すなわち、強度を失うことなく高い填料配合量で、本発明による製紙用組成物から紙製品が調製できる。
【0103】
製紙用組成物からの最終的な紙製品の形成における工程は慣用的なものであり、また当技術分野において周知である。また一般に、形成される紙のタイプに応じて、ターゲットとする坪量を有する紙シートの形成を含む。
【0104】
本発明の方法を通じて達成可能な更なる経済的な利点は、水性懸濁液を調製するためのセルロース基材を、製紙用組成物及び最終的な紙製品を調製するために形成された同じセルロースパルプ由来のものとすることが可能な点である。このため、上記の第9の側面に従って、本発明は、紙製品を形成するための総合工程を対象とし、この工程は、(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、(ii)本発明の第1の態様に従ってこのセルロースを含む繊維状基材の一部をミクロフィブリル化することによって、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製し、(iii)工程(i)のパルプ、工程(ii)で調製された水性懸濁液、及びその他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製し、(iv)その製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。
このように、水性懸濁液を調製するためのセルロース基材は既に製紙用組成物を作製することを目的として調製済であることから、水性懸濁液を形成する工程は必ずしも、セルロースを含む繊維状基材を調製する別の工程を必要としない。
【0105】
本発明の水性懸濁液を使用して調製された紙製品は、驚くべきことに、改善された物理的性質及び機械的性質を示し、また同時に無機粒子材料を比較的高配合レベルで取り込むことを可能にすることが判明した。このため、比較的低コストで質が向上した紙が調製可能である。例えば、本発明の水性懸濁液を含む製紙用組成物から調製された紙製品は、ミクロフィブリル化セルロースを全く含有していない紙製品よりも改善された無機粒子材料填料の歩留まりを示すことが判明した。本発明の水性懸濁液を含む製紙用組成物から調製された紙製品はまた、改善された破裂強度及び引張強度を示すことが判明した。更に、ミクロフィブリル化セルロースの取り込みによって、同じ量の填料を含むがミクロフィブリル化セルロースを含まない紙より空隙率が低下することが判明した。このことは、高填料配合レベルが一般に比較的高い空隙率に関連しており、印刷適性に悪影響をもたらすことから、有利である。
【0106】
紙コーティング組成物及びコーティング工程
本発明の水性懸濁液は、更に添加剤を添加することなくコーティング組成物として使用可能である。しかしながら、任意で、カルボキシメチルセルロース若しくはアルカリ膨潤性アクリル性増粘剤又は関連する増粘剤のような増粘剤が少量添加されてもよい。
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、1種以上の任意の追加成分を含有し得る。そのような追加成分は、存在する場合には、紙コーティング組成物のための公知の添加剤から適切に選択される。これらの任意の添加剤の一部は、コーティング組成物に1種以上の機能を付与し得る。公知の種類の任意の添加剤の例は以下のとおりである。
【0107】
(a)1種以上の追加の顔料。本明細書に記載の組成物は、紙コーティング組成物において唯一の顔料として使用可能である。あるいは、互いに組み合わせて又はその他の公知の顔料と共に使用してもよく、例えば硫酸カルシウム、サテンホワイト及びいわゆる「プラスチック顔料」が挙げられる。顔料の混合物を使用する場合、総顔料固形分は、好ましくは、コーティング組成物の乾燥成分の総質量の少なくとも約75質量%の量で組成物中に存在する。
(b)1種以上の結合剤又は共結合剤(cobinding agent)。例えば、任意でカルボキシル化され得るラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリルポリマーラテックス、ポリビニルアセテートラテックス、スチレンアクリルコポリマーラテックス、でんぷん誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール及びタンパク質が含まれる。
【0108】
(c)1種以上の架橋剤。例えば、最高約5質量%のレベルで、例えば、グリオキサール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アンモニウムジルコニウムカーボネート、1種以上の乾燥又は湿潤紙むけ改善剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、メラミン樹脂、ポリエチレンエマルジョン、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、ステアリン酸カルシウム、スチレン無水マレイン酸、及びその他、1種以上の乾燥又は湿潤耐摩擦/摩耗性改善剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、グリオキサール系樹脂、酸化ポリエチレン、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウム、及びその他、1種以上の耐水性改善剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、酸化ポリエチレン、ケトン樹脂、アニオン性ラテックス、ポリウレタン、SMA、グリオキサール、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、グリオキサール、ステアレート、及びこの機能のための他の市販の材料。
(d)1種以上の保水性改善剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、PVOH(ポリビニルアルコール)、でんぷん、タンパク質、ポリアクリレート、ゴム、アルギネート、ポリアクリルアミドベントナイト、及びこのような用途のために市販されているその他の製品。
【0109】
(e)1種以上の粘度調整剤及び/又は増粘剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、アクリル酸会合性増粘剤、ポリアクリレート、エマルジョンコポリマー、ジシアナミド、トリオール、ポリオキシエチレンエーテル、尿素、硫酸化ひまし油、ポリビニルピロリドン、CMC(カルボキシメチルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ケイ酸ナトリウム、アクリル酸コポリマー、HMC(ヒドロキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)その他。
(f)1種以上の滑性/カレンダリング改善剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸亜鉛、ワックスエマルジョン、ワックス、アルキルケテンダイマー、グリコール、1種以上のグロスインキホールドアウト剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、酸化ポリエチレン、ポリエチレンエマルジョン、ワックス、カゼイン、グアーガム、CMC、HMC、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、及びその他。
【0110】
(g)1種以上の分散剤。分散剤は、十分な量で存在する場合、粒子状無機材料の粒子に作用することによって、通常の加工要件に従って、粒子のフロキュレーション又は凝集を防止する又は望ましいレベルにまで効果的に制限することができる化学的添加剤である。分散剤は、最高で約1質量%までのレベルで存在してもよく、例えば、ポリアクリレート及びポリアクリレート種を含有するコポリマー、特にはポリアクリレート塩(例えば、ナトリウム、アルミニウム、任意で第II族との塩)のような高分子電解質、縮合リン酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤、アルカノールアミン並びにこの機能のために一般に使用されるその他の試薬を含む。分散剤は、例えば、無機粒子材料の加工及び粉砕に一般的に使用される慣用の分散剤材料から選択され得る。そのような分散剤は、当業者に周知である。それらは一般に、有効量では無機粒子の表面に吸着でき、それによって粒子の凝集を阻害することができるアニオン種を供給可能な、水溶性の塩である。非溶媒和塩は、適切には、ナトリウムのようなアルカリ金属カチオンを含む。場合によっては、溶媒和は、水性懸濁液を若干アルカリ性にすることによって支援され得る。適切な分散剤の例には、水溶性縮合リン酸塩、例えば、メタリン酸四ナトリウム若しくはいわゆる「ヘキサメタリン酸ナトリウム」(グラハム塩)のようなポリメタリン酸塩(ナトリウム塩の一般形態:(NaPO3)x)、ポリケイ酸の水溶性塩、高分子電解質、そして、適切には重量平均分子量が約20000未満の、アクリル酸若しくはメタクリル酸のホモポリマー若しくはコポリマーの塩又はアクリル酸のその他の誘導体のポリマーの塩が含まれる。ヘキサメタリン酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウム(後者は、適切には約1500~約10000の範囲の重量平均分子量を有する)が特に好ましい。
【0111】
(h)1種以上の消泡剤/脱泡剤。例えば、最高約1質量%のレベルで、例えば、界面活性剤のブレンド物、トリブチルホスフェート、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル及び脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、シリコーンエマルジョン、その他のシリコーン含有組成物、鉱物油中のワックス及び無機粒子、乳化炭化水素のブレンド物、並びにこの機能を果たす市販のその他の化合物。
(i)1種以上の蛍光増白剤(OBA)及び蛍光漂白剤(FWA)。例えば、最高約1質量%のレベルで、例えば、スチルベン誘導体。
(j)1種以上の染料。例えば、最高約0.5質量%のレベル。
【0112】
(k)1種以上の殺生物剤/損傷抑制剤。例えば、最高約1質量%のレベルで、例えば、塩素ガス、二酸化塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、水素、過酸化物、過酢酸酸化物(peracetic oxide)、臭化アンモニウム/次亜塩素酸ナトリウムのような酸化殺生物剤、又は、GLUT(グルタルアルデヒド、CAS番号90045-36-6)、ISO(CIT/MIT)(イソチアゾリノン、CAS番号55956-84-9及び96118-96-6)、ISO(BIT/MIT)(イソチアゾリノン)、ISO(BIT)(イソチアゾリノン、CAS番号2634-33-5)、DBNPA、BNPD(ブロノポール)、NaOPP、カルバメート、チオン(ダゾメット)、EDDM-ジメタノール(O-ホルマール)、HT-トリアジン(N-ホルマール)、THPS-テトラキス(O-ホルマール)、TMAD-ジウレア(N-ホルマール)、メタボレート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、チオシアネート、有機硫黄、安息香酸ナトリウムのような非酸化殺生物剤、及びこの機能のための他の市販の化合物、例えば、Nalcoが販売する殺生物剤ポリマー類。
(l)1種以上の平滑化剤(levelling and evening aid)。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば非イオン性ポリオール、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸、エステル及びアルコール誘導体、アルコール/エチレン酸化物、ステアリン酸カルシウム、並びにこの機能のための他の市販の化合物。
(m)1種以上の耐脂性/耐油性添加剤。例えば、最高約2質量%のレベルで、例えば、酸化ポリエチレン、ラテックス、SMA(スチレン/無水マレイン酸)、ポリアミド、ワックス、アルギネート、タンパク質、CMC、及びHMC。
【0113】
上記のいずれの添加剤及び添加剤タイプも、単独で、又は、互いに若しくは必要に応じて他の添加剤と混合して使用してもよい。
上記の添加剤の全てについて、記載の質量%は、組成物中に存在する無機粒子材料の乾燥質量(100%)を基準としたものである。添加剤が最小量で存在する場合、この最小量は、顔料の乾燥質量に対して約0.01質量%になり得る。
【0114】
コーティング工程は、当業者に周知の標準的な技術を使用して行われる。コーティング工程は、コーティング製品のカレンダリング又はスーパーカレンダリングも伴ってもよい。
紙及びその他のシート材料のコーティング方法並びにこの方法を実行するための装置には、広く公表されており周知である。そのような公知の方法及び装置を、コーティング紙の調製に便利に利用し得る。例えば、そのような方法の総括が、Pulp and Paper International、1994年5月、第18頁以降に公表されている。シートは、シート形成機上でのすなわち「オンマシン」で、又はコーター若しくはコーティング機上での「オフマシン」でコーティングされ得る。このコーティング方法においては高固形分組成物の使用が望ましいが、これは後に蒸発させる水の量が少なくなるからである。しかしながら、当技術分野において周知のように、固形分レベルは、高粘度及び平滑化問題が生じる程高くあるべきではない。このコーティング方法は、(i)コーティング組成物をコーティング対象である材料に塗布するための用途と、(ii)正確なレベルのコーティング組成物を塗布するための計量装置とを備えた装置を使用して行われ得る。過剰量のコーティング組成物がアプリケーターに適用される場合、計量装置はアプリケーターの下流側にある。あるいは、正確な量のコーティング組成物は、例えばフィルムプレスとして、計量装置によってアプリケーターに適用され得る。コーティング用途及び計量の時点において、ペーパーウェブ支持体は、バッキングロールから例えば1つ又は2つのアプリケーターを経由して何もないところ(すなわち、張力のみ)に広がっている。最終的に過剰分が除去されるまでコーティング層が紙と接触している時間が滞留時間であり、これは短くても長くても、又は変動してもよい。
【0115】
コーティングは通常、コーティングステーションでコーティングヘッドにより追加される。所望の質に応じて、紙のグレードは、非コーティング、単層コーティング、2層コーティング及び3層コーティングでさえある。2層以上のコーティングを施す場合、最初のコーティング層(プレコート)の処方は安価なものになり得て、任意で、コーティング組成物中の顔料の粒度は粗いものになる。コーティング層を紙の各面に塗布するコーターは2つ又は4つのコーティングヘッドを有し、各面に塗布するコーティング層の数に左右される。殆どのコーティングヘッドは、1度で片面のみのコーティングを行うが、一部のロールコーター(例えば、フィルムプレス、ゲートロール、サイズプレス)は1回の通過で両面のコーティングを行う。
【0116】
使用し得る公知のコーターの例には、以下に限定するものではないが、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、マルチヘッドコーター、ロールコーター、ロール又はブレードコーター、キャストコーター、ラボラトリーコーター、グラビアコーター、キスコーター、液体塗布システム、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、及び押出コーターが含まれる。
【0117】
コーティング組成物を構成する固形分に水を添加することによって、好ましくは、組成物を望ましいターゲットコーティング量にまでシート上にコーティングする場合に、組成物が、1~1.5バールの圧力(すなわち、ブレード圧力)でのコーティングを可能にするのに適切なレオロジーを有するような固形分濃度にする。
【0118】
カレンダリングは周知の工程であり、紙の平滑度及び光沢が改善され、またコーティング紙シートにカレンダーニップ又はローラー間を1回以上通過させることによってバルクが低下する。通常、エラストマーで被覆したロールを使用して、高固形分組成物のプレスを行う。温度を上昇させる場合もある。ニップを1回以上(例えば、最高約12回、又は場合によってはそれ以上)通過させてもよい。
【0119】
本発明に従って調製され且つコーティング層に蛍光増白剤を含有するコーティング紙製品は、ISO国際規格11475に準拠して測定した場合に、本発明に従って調製したミクロフィブリル化セルロースを含まないコーティング紙製品より、少なくとも2単位高い、例えば少なくとも3単位高い白色度を示し得る。本発明に従って調製されたコーティング紙製品は、本発明に従って調製されたミクロフィブリル化セルロースを含まないコーティング紙製品より、少なくとも0.5μm、例えば少なくとも約0.6μm又は少なくとも約0.7μm滑らかな、ISO国際規格8971-4(1992)に準拠して測定されたパーカープリントサーフ平滑度を示し得る。
【0120】
誤解を避けるために、本出願は、以下の番号付き段落に記載された主題に向けられている。
1. 共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含有する紙コーティング組成物を含む紙製品であって、該紙製品が、
i)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の引張強度より大きい第1の引張強度、
ii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の引裂強度より大きい第1の引裂強度、及び/又は、
iii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の光沢より大きい第1の光沢、及び/又は、
iv)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の破裂強度より大きい第1の破裂強度、及び/又は、
v)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2のシート光散乱係数より大きい第1のシート光散乱係数、及び/又は、
vi)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の空隙率より小さい第1の空隙率、
を有することを特徴とする、紙製品。
2. 前記紙コーティング 組成物が、液体包装のための機能的コーティング、バリアコーティング、又は、プリント電子用途を含む、段落1に記載の紙製品。
3. ポリマー、金属、水性組成物、又はそれらの組み合わせを含む第2のコーティングをさらに含む、段落1又は2に記載の紙製品。
4. 共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙コーティング組成物を含む紙製品の第2の水蒸気透過率(MVTR)より大きい第1のMVTRをさらに有する、段落1、2又は3に記載の紙製品。
5. 紙が約25質量%~約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、段落1~4のいずれか1つに記載の紙製品。
【0121】
粉砕可能な無機粒子材料の不在下でのミクロフィブリル化
別の側面では、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性懸濁液を調製する方法に向けられており、該方法は、粉砕完了後に除去される粉砕媒体の存在下での粉砕によって、セルロースを含む繊維状基材を水性環境中でミクロフィブリル化する工程を含み、該粉砕は、タワーミル又はスクリーン粉砕機で行われ、該粉砕は、粉砕可能な無機粒子材料の不在下で行われる。
粉砕可能な無機粒子材料とは、粉砕媒体の存在下で粉砕される材料である。
【0122】
粒子状粉砕媒体は、天然又は合成材料になり得る。粉砕媒体は、例えば、いずれの硬質鉱物、セラミック又は金属材料のボール、ビーズ又はペレットも含み得る。このような材料には、例えばアルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム又はカオリン質粘土を約1300~約1800℃の範囲の温度で焼成することによって生成されるムライト高含有材料が含まれ得る。例えば、一部の態様においては、Carbolite(登録商標)粉砕媒体が好ましい。あるいは、適切な粒径の天然の砂の粒子が使用され得る。
【0123】
一般に、本発明で使用するために選択される粉砕媒体のタイプ及び粒径は、粉砕対象である材料の供給懸濁液の例えば粒径や化学組成のような特性に依存し得る。好ましくは、粒子状粉砕媒体は、約0.5~約6.0mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む。一態様において、粒子は、少なくとも約3mmの平均直径を有する。
粉砕媒体は、少なくとも約2.5の比重を有する粒子を含み得る。粉砕媒体は、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、又は少なくとも約6の比重を有する粒子を含み得る。
粉砕媒体は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0124】
セルロースを含む繊維状基材は、レーザー光散乱法によって測定した場合に約5~約500μmのd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、約400μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約125μm以下、約100μm以下、約90μm以下、約80μm以下、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、又は約10μm以下のd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。
【0125】
セルロースを含む繊維状基材は、約0.1~500μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、少なくとも約0.5μmのモード繊維粒径、例えば少なくとも約10μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm又は少なくとも約400μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように存在下でミクロフィブリル化され得る。
セルロースを含む繊維状基材は、Malvern(レーザー光散乱)で測定した場合に約10以上の繊維急峻性を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。繊維急峻性(すなわち、繊維の粒径分布の急峻性)は、次の式によって決定される。
急峻性=100×(d30/d70)
【0126】
ミクロフィブリル化セルロースは、約100以下の繊維急峻性を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約75以下、約50以下、約40以下又は約30以下の繊維急峻性を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約20~約50、約25~約40、約25~約35、又は約30~約40の繊維急峻性を有し得る。
【0127】
ある態様では、粉砕槽はタワーミルである。このタワーミルは、1つ以上の粉砕域上に静止域を備え得る。静止域は、タワーミルの内部の最上部に向かって位置する領域であり、ここでは粉砕が最小限にしか又は全く行われず、またミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料が入っている。静止域は、粉砕媒体の粒子がタワーミルの1つ以上の粉砕域内へと沈降する領域である。
【0128】
タワーミルは、1つ以上の粉砕域上に分級機を備え得る。ある態様において、この分級機は最上部に取り付けられ、また静止域に隣接する。分級機は液体サイクロンであってよい。
タワーミルは、1つ以上の粉砕域上にスクリーンを備え得る。ある態様において、スクリーンは静止域及び/又は分級機に隣接して配置される。このスクリーンは、ミクロフィブリル化セルロースを含む生成物である水性懸濁液から粉砕媒体を分離し、また粉砕媒体の沈降を強化するように寸法設計され得る。
【0129】
ある態様では、粉砕はプラグ流れ条件下で行われる。プラグ流れ条件下で、タワーを通る流れは、タワー全体を通して粉砕材料の混合が制限されるようなものである。これはタワーミルの長さに沿った異なる地点において、ミクロフィブリル化セルロースの微粉度が上昇するにつれて水性環境の粘度が変化することを意味する。このため、事実上、タワーミル内の粉砕領域は、特徴的な粘度を有する1つ以上の粉砕域を含むとみなすことが可能である。当業者なら、隣接する粉砕域間において粘度にはっきりとした境界はないことがわかる。
【0130】
ある態様では、ミル内のこれらの区域でのミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の粘度を低下させるために、1つ以上の粉砕域の上の静止域、分級機又はスクリーンに近接したミルの最上部で水が加えられる。ミルにおけるこの地点で生成物であるミクロフィブリル化セルロースを希釈することによって、静止域及び/又は分級機及び/又はスクリーンへの粉砕媒体のキャリーオーバーがより良好に防止されることが判明している。さらに、タワーでの混合が制限されることからタワー下での高固形分での加工が可能になり、また最上部での希釈を、希釈水がタワーを下って1つ以上の粉砕域内に逆流するのを抑えて行うことが可能になる。ミクロフィブリル化セルロース含む生成物である水性懸濁液の粘度を低下させるのに効果的ないずれの適切な量の水も添加され得る。この水は、粉砕工程中に連続的に又は一定の間隔で又は不定期な間隔で添加され得る。
【0131】
別の態様において、水は1つ以上の粉砕域に1つ以上の注水点を経由して添加され得て、この注水点はタワーミルの長さに沿って位置決めされている。あるいは、各注水点は1つ以上の粉砕域に対応した位置に配置されている。有利には、タワーに沿った様々な位置での注水能によって、ミルに沿ったいずれの又は全ての位置での粉砕条件の更なる調節が可能になる。
タワーミルは、一連のインペラローターディスクを長さに沿って備えた垂直インペラシャフトを備え得る。インペラローターディスクの作動によって、ミル全体にわたって一連の個別の粉砕域が形成される。
【0132】
別の態様において、粉砕はスクリーン粉砕機、好ましくは撹拌媒体デトライターにおいて行われる。スクリーン粉砕機は、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備え得て、例えば、該1つ以上のスクリーンは、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約550μm、少なくとも約600μm、少なくとも約650μm、少なくとも約700μm、少なくとも約750μm、少なくとも約800μm、少なくとも約850μm、少なくとも約900μm、又は少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有し得る。
直前に述べたスクリーンサイズは、前述のタワーミルの態様にも適用可能である。
【0133】
上述したように、粉砕は、粉砕媒体の存在下で行われ得る。ある態様において、粉砕媒体は、約1~約6mm、例えば約2mm、約3mm、約4mm、又は約5mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む粗い媒体である。
別の態様において、粉砕媒体は、少なくとも約2.5、例えば少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、少なくとも約5.0、少なくとも約5.5、又は少なくとも約6.0の比重を有する。
上述したように、粉砕媒体(単一又は複数)は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%、又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
ある態様では、粉砕媒体は、装入物の約50体積%の量で存在する。
【0134】
「装入物(charge)」とは、粉砕槽に供給される供給原料である組成物を意味する。装入物には、水、粉砕媒体、セルロースを含む繊維状基材及び(本明細書に記載のもの以外の)その他の任意の添加剤が含まれる。
【0135】
比較的粗い及び/又は高密度な媒体の使用には、改善された(すなわちより速い)沈降速度、静止域及び/又は分級機及び/又はスクリーンを通しての媒体のキャリーオーバーの軽減という利点がある。
【0136】
比較的粗いスクリーンを使用する更なる利点は、ミクロフィブリル化工程で比較的粗い又は高密度の粉砕媒体を使用可能なことである。加えて、比較的粗いスクリーン(すなわち、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有するもの)の使用によって、比較的高固形分の生成物の加工及び粉砕機からの取り出しが可能になり、これによって比較的高固形分の供給原料(セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料を含む)を採算の取れる工程で加工することが可能になる。後述するように、初期固形分含有量が高い供給原料がエネルギー効率について望ましいことが判明している。更に、低固形分で(所定のエネルギーで)生成された生成物はより粗い粒径分布を有することも判明している。
【0137】
前述の「背景技術」のセクションで説明したように、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを経済的に工業規模で調製する問題に取り組もうとするものである。
したがって、ある態様に従うと、セルロースを含む繊維状基材は、水性環境において少なくとも約1質量%の初期固形分含有量で存在する。セルロースを含む繊維状基材は、水性環境において少なくとも約2質量%、例えば少なくとも約3質量%又は少なくとも約4質量%の初期固形分含有量で存在し得る。典型的には、初期固形分含有量は、約10質量%を越えない。
【0138】
別の態様において、粉砕は粉砕槽のカスケードにおいて行われ、その1つ以上の粉砕槽が1つ以上の粉砕域を備え得る。例えば、セルロースを含む繊維状基材は、2つ以上の粉砕槽のカスケード、例えば3つ以上の粉砕槽のカスケード、4つ以上の粉砕槽のカスケード、5つ以上の粉砕槽のカスケード、6つ以上の粉砕槽のカスケード、7つ以上の粉砕槽のカスケード、8つ以上の粉砕槽のカスケード、9つ以上の直列の粉砕槽のカスケード又は最高10個の粉砕槽を含むカスケードにおいて粉砕され得る。粉砕槽のカスケードは、直列若しくは並列又は直列と並列との組み合わせで作動可能に連結され得る。カスケードを構成する粉砕槽の1つ以上からの産出物及び/又は粉砕槽の1つ以上への投入物は、1つ以上の篩過工程及び/又は1つ以上の分級工程に供され得る。
【0139】
ミクロフィブリル化工程に費やされる総エネルギーは、カスケードを構成する粉砕槽のそれぞれに均等に分配され得る。あるいは、投入エネルギー量は、カスケードを構成する粉砕槽の一部又は全てにおいて異なり得る。
当業者であれば、1槽あたりの投入エネルギーが、各槽においてミクロフィブリル化されている繊維状基材の量、任意では各槽における粉砕速度、各槽における粉砕時間及び各槽における粉砕媒体のタイプに応じて、カスケードを構成する槽間で異なり得ることを理解するだろう。ミクロフィブリル化セルロースの粒径分布を制御するために、カスケードを構成する槽毎に粉砕条件が変えられてもよい。
【0140】
ある態様において、粉砕は閉回路で行われる。別の態様において、粉砕は開回路で行われる。
【0141】
粉砕対象である材料の懸濁液の粘度は比較的高くなり得ることから、好ましくは、適切な分散剤を粉砕前に懸濁液に添加してもよい。該分散剤は、例えば水溶性縮合リン酸塩、ポリケイ酸若しくはその塩又は高分子電解質、例えば80000以下の数平均分子量を有するポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸)の水溶性塩であってもよい。使用される分散剤の量は一般に、乾燥無機粒子固形材料の質量に対して0.1~2.0質量%の範囲内にある。懸濁液は、4~100℃の範囲の温度で適切に粉砕されてもよい。
【0142】
ミクロフィブリル化工程中に含まれてもよい他の添加剤には、カルボキシメチルセルロース、両性カルボキシメチルセルロース、酸化剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、TEMPO誘導体及び木材分解酵素が含まれる。
【0143】
粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7以上(すなわち、アルカリ性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約8、約9、約10又は約11であってもよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7未満(すなわち、酸性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約6、約5、約4又は約3であってもよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは、適切な量の酸又は塩基の添加によって調節され得る。適切な塩基には、例えばNaOHのようなアルカリ金属水酸化物が含まれた。その他の適切な塩基は、炭酸ナトリウム及びアンモニアである。適切な酸には、塩酸及び硫酸のような無機酸又は有機酸が含まれる。例示的な酸はオルトリン酸である。
【0144】
望ましい水性懸濁組成物を得るための、典型的な粉砕工程における総投入エネルギー量は、典型的には、無機粒子填料の総乾燥質量に基づいて約100~1500kWht-1であってよい。総投入エネルギー量は、約1000kWht-1未満、例えば約800kWht-1未満、約600kWht-1未満、約500kWht-1未満、約400kWht-1未満、約300kWht-1未満又は約200kWht-1未満であってよい。このため、本発明の発明者は、驚くべきことに、無機粒子材料の存在下で共粉砕すると、セルロースパルプを比較的低投入エネルギー量でミクロフィブリル化することができることを発見した。以下で明らかになるように、セルロースを含む繊維状基材における乾燥繊維1トンあたりの総投入エネルギー量は約10000kWht-1未満、例えば約9000kWht-1未満、約8000kWht-1未満、約7000kWht-1未満、約6000kWht-1未満、約5000kWht-1未満、例えば約4000kWht-1未満、約3000kWht-1未満、約2000kWht-1未満、約1500kWht-1未満、約1200kWht-1未満、約1000kWht-1未満又は約800kWht-1未満になる。総投入エネルギー量は、ミクロフィブリル化されている繊維状基材中の乾燥繊維の量、また任意で粉砕速度、粉砕時間に応じて変動する。
【0145】
以下の手順は、鉱物(GCCまたはカオリン)とミクロフィブリル化セルロースパルプ繊維の混合物の粒径分布を特徴付けるために使用されてもよい。
【0146】
-炭酸カルシウム
3gの乾燥材料を与えるのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、有効成分が1.5w/v%のポリアクリル酸ナトリウムの溶液5cm3と混合する。さらに、最終スラリー質量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
【0147】
-カオリン
5gの乾燥材料をあたえるのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、1.0質量%の炭酸ナトリウム及び0.5質量%のヘキサメタリン酸ナトリウムの溶液5cm3と混合する。さらに、最終スラリー質量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
次にこのスラリーを、最適レベルの不明瞭化(obscuration)が示されるまで(通常、10~15%)、Mastersizer Sに取り付けられたサンプル調製ユニット内の水に1cm3ずつ添加する。次に、光散乱分析手順を行う。選択された計器領域は300RF、0.05~900であり、ビーム長は2.4mmに設定された。
【0148】
炭酸カルシウム及び繊維を含有する共粉砕試料に関しては、炭酸カルシウムの屈折率(1.596)が用いられた。カオリン及び繊維の共粉砕試料に関しては、カオリンの屈折率(1.5295)が用いられた。
粒径分布はミー理論から計算され、体積差に基づいた分布として出力された。2つのはっきりとしたピークの存在は、鉱物(より微細なピーク)及び繊維(より粗いピーク)から生じるものと解釈された。
【0149】
より微細な鉱物ピークを測定されたデータポイントにフィットさせ、分布から数学的に減じることによって繊維ピークだけにし、この繊維ピークを累積分布に変換した。同様に、繊維ピークを元の分布から数学的に減じて鉱物ピークだけにし、この鉱物ピークも累積分布に変換した。次に、これらの両方の累積曲線を使用して平均粒径(d50)及び分布の急峻性(d30/d70×100)を計算した。鉱物及び繊維分の両方に関してのモード粒径を求めるために、微分曲線が利用された。
【実施例】
【0150】
特別の定めのない限り、紙の特性は、以下の方法に従って測定された。
・破裂強度:SCAN P 24に従いMessemer Buchnel破裂試験機で。
・引張強度:SCAN P16に従いTestometrics引張試験機で。
・Bendtsen空隙率:SCAN P21、SCAN P60、BS 4420及びTAPPI UM 535に従いBendtsen Model 5空隙率試験機で。
・バルク:これはSCAN P7に従い測定される見掛け密度の逆数である。
・ISO輝度:ハンドシート(handsheet)のISO輝度は、ISO2470:1999Eに従って、第8フィルター(波長457nm)を備えたエルレフォDatacolour 3300輝度メーターを利用して測定された。
【0151】
・不透明度:紙の試料の不透明度は、不透明度の測定に適した波長を利用して、エルレフォDatacolor 3300分光光度計を用いて測定される。標準的な試験方法は、ISO2471である。まず、反射された入射光の百分率の測定は、黒色空洞上紙のシート少なくとも10枚の束を用いて行われる(R無限)。そして、シートの束は紙のシート1枚と置換され、黒色カバー上の単一シートの反射率に関する第2の測定がなされる(R)。そして、不透明度の百分率は、次式から計算される。
不透明度の百分率=100×R/R無限
【0152】
・引裂強度:TAPPI法T 414 om-04(紙の内部引裂抵抗(エレメンドルフ型方法))。
・内部(z-方向)強度は、TAPPI T569に従い、Scottボンドテスターを利用して。
・光沢:TAPPI法T 480 om-05(75度での紙及び板紙の鏡面光沢度)が用いられてもよい。
・剛性:J.C.Husband、L.F.Gate、N.Norouzi、及びD.Blair、「The Influence of kaolin Shape Factor on the Stiffness of Coated Papers」、TAPPI Journal、2009年6月、p.12-17(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)、並びに、J.C.Husband、J.S.Preston、L.F.Gate、A.Storer、及びP.Creaton、「The Influence of Pigment Particle Shape on the In-Plane tensile Strength Properties of Kaolin-based Coating Layers」、TAPPI Journal、2006年12月、p.3-8(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)に記載されている剛性測定方法。
【0153】
・L&W剛軟度(mNで表される、所定の角度でシートを曲げるのに必要な力):SCAN-P29:84に従って測定される。
・カチオン要求性(又はアニオン性荷電):Mutek PCD 03で測定され、試料は濃度1mEq/LのPolydadmac(平均分子量約60000)(PTE AB/Selcuk Dolenより購入)で滴定された。パルプ混合物は、決定前にろ過されたが、白水試料はろ過されなかった。試料測定の前に、高分子電解質のおおよその消費量をチェックするために、校正試験が実行される。試料測定においては、高分子電解質は、30秒の間隔で分けて(約10回)投与される。
・シート光散乱及び吸収係数は、エルレフォ計器から得られる反射率データ、すなわち、R inf=10シートの束の反射率、Ro=黒カップ上での1シートの反射率を利用して測定される。これらの値及びシートの実質(gm-2)は、Nils Paulerの「Paper Optics」(Lorentzen及びWettreより発行、ISBN91-971-765-6-7)p.29-36に記載されているKubelka-Munk式に入力される。
【0154】
・初回通過歩留まりは、ヘッドボックス(HB)内及び白水(WW)トレイ内の固形物の計量に基づいて決定され、次式に従って計算される。
歩留まり=[(HB固形物-WW固形物)/HB固形物]×100
・灰分歩留まりは、初回通過歩留まりと同様の原理に従って決定されるが、ヘッドボックス(HB)内及び白水(WW)トレイ内の灰分成分の重量に基づき、次式に従って計算される。
灰分歩留まり=[(HB灰分-WW灰分)/HB灰分]×100
・形成インデックス(PTS)は、PTSによって開発されたDOMASソフトウェアを使用し、そのハンドブック「DOMAS 2.4 ユーザーガイド」のセクション10-1に記載された測定方法に従って決定される。
【0155】
実施例1
共処理された填料の調製
-組成物1
研削加工のための出発材料は、パルプのスラリー(漂白ノーザンクラフトマツ)、及び、2μm未満の粒子を約60質量%含む粉砕炭酸カルシウム(GCC)填料のIntracarb 60TMから成っている。該パルプは、公称6質量%パルプ添加となるように、Cellier混合機内で該GCCと配合された。そして、固形分26.5%であるこの懸濁液は、媒体体積濃度50%でセラミック粉砕媒体(King’s、3mm)を含む180kW撹拌媒体ミル内へ供された。該混合物は、2000~3000kWht-1の間の投入エネルギー(パルプ単独について示される)が消費されるまで粉砕されて、パルプ/鉱物の混合物は、1mmスクリーンを用いて媒体から分離された。その生成物は、6.5質量%の繊維含有量(灰化による)であり、Malvern Mastersizer STMを利用して測定すると129μmの平均繊維サイズ(D50)であった。繊維psd急峻性(fibre psd steepness)(D30/D70×100)は、31.7だった。
【0156】
-組成物2
この填料の調製は、組成物1で概説されている方法に従う。パルプは、20%パルプ添加となるように、Cellier混合機内でIntracarb 60と配合された。そして、固形分10~11%のこの懸濁液は、媒体体積濃度50%でセラミック粉砕媒体(King’s、3mm)を含む180kW撹拌媒体ミル内へ供された。該混合物は、2500~4000kWht-1の間の投入エネルギー(パルプ単独について示される)が消費されるまで粉砕されて、パルプ/鉱物の混合物は、1mmスクリーンを用いて媒体から分離された。生成物は、19.7質量%の繊維含有量(灰化による)であり、Malvern Mastersizer STMを利用して測定すると79.7μmの平均繊維サイズ(D50)であった。繊維psd急峻性(D30/D70×100)は、29.3だった。抄紙機に添加する前に、約50/50の比率でGCC(Intracarb 60TM)と配合することで、繊維含有量は11.4質量%に低下された。
【0157】
実施例2
原紙の調製
固形分4.5%で27°SRに精選された80質量%のユーカリパルプ(Sodra Tofte)と、3.5%固形分で26°SRに精選された20質量%の針葉樹クラフト(Sodra Monsteras)パルプの配合物は、パイロット規模の装置で調製された。このパルプ配合物は、800mmin-1で作動するパイロット規模の抄紙機を利用して、紙の連続リールを作製するために用いられた。原料は、UMV10ヘッドボックスから13mmスロットを通じて、ツインワイヤー式ロールフォーマーに供された。紙の坪量の目安は75gm-2であり、填料及び配合レベルは表1に示されている。
【0158】
表1.カレンダリング前の未コート原紙の特性
【表1】
【0159】
300~380gt-1の投与量でのカチオン性ポリアクリルアミド、Percol 47NSTM(BASF)と、2kgt-1での微粒子ベントナイト、Hydrocol SHTMとから成る、2成分の歩留まり向上剤系が用いられた。圧搾セクションは、10kNm-1の線形負荷で作動する1台のダブルフェルトロールプレスで構成され、それぞれ600及び800kNm-1で作動するシューの長さが250mmの2台のMetso SymBeltプレスに続く。前記2台のシュープレスのロールは、相互に関連して反転させられる。
紙は、加熱円柱を用いて乾燥された。
【0160】
バリアコーティングの適用
コーティングは、各原紙に対して適用された。その組成は、100部の高形状係数カオリン(Barrisurf HXTM)及び100部のスチレン-ブタジエンコポリマーゴム(DL930TM、Styron)から構成されていた。固形分は50.1質量%であり、Brookfieldの100rpm粘度は80mPa.sだった。コーティングは、コート重量が13~14gm-2となるように、適切な巻き線型ロッドを利用して手動で適用された。乾燥は、熱風乾燥器を利用して行われた。
【0161】
実施例3
実施例2のコート紙は、次に水蒸気透過率(MVTR)について2日間にわたって試験された。その方法は、TAPPI T448に基づくが、乾燥剤としてシリカゲルを用い、相対湿度を50%とした。紙を通過した水分量は、第1日及び第2日にわたって測定され、そして平均された。結果を表2にまとめる。
【0162】
前記紙はまた、IGT印刷ユニットを利用しフタル酸ブチル中のスーダンレッドIVの油性溶液を用いて、耐油性について試験された。調整された量の液体(5.8μl)はシリンジを利用して紙に適用され、圧力5kgf及び速度0.5ms-1で印刷ニップを通過した。染色液で覆われた領域は、画像解析を用いて測定され、油性液体による浸透に対して抵抗するコーティングの能力の指標として用いられた。結果を表2にまとめる。
【0163】
【0164】
これらの結果は、最高の繊維レベルで共粉砕填料を含む紙(組成物2)は、コントロールよりも低い水蒸気透過率を有することを示している。組成物1及び2の双方に基づくコート紙は、改善された流体抵抗を示す高い染色領域を有している。
【0165】
実施例4
共処理された填料の調製
-組成物 3
研削加工のための出発材料は、パルプのスラリー(Botnia Pine)及び粉砕炭酸カルシウム填料のIntracarb 60TMから成っている。該パルプは、公称20質量%パルプ添加となるように、Cellier混合機内でIntracarbと配合された。そして、固形分10~11%であるこの懸濁液は、媒体体積濃度50%でセラミック粉砕媒体(King’s、3mm)を含む180kW撹拌媒体ミル内へ供された。該混合物は、2500~4000kWht-1の間の投入エネルギーが消費されるまで粉砕されて、パルプ/鉱物の混合物は、1mmスクリーンを用いて媒体から分離された。その生成物は、19.7質量%の繊維含有量(灰化による)であり、Malvern Mastersizer STMを利用して測定すると79.7μmの平均繊維サイズ(D50)であった。繊維psd急峻性(D30/D70×100)は、29.3だった。抄紙機(後述の実施例5を参照)に添加する前に、9重量部の19.7 質量%の繊維を含む組成物を23重量部の新たなIntracarb 60と配合することで繊維含有量を低下させ、灰化によって測定される繊維含有量を5.8質量%とした。
【0166】
-組成物4
第2の填料組成物は、50重量部の19.7質量%の繊維を含む組成物3を50重量部の新たなIntracarb 60と配合することで調製し、灰化によって測定される繊維含有量を11.4質量%とした。
【0167】
実施例5
紙の調製
固形分4.5%で27°SRに精選された80質量%のユーカリパルプ(Sodra Tofte)と、3.5%固形分で26°SRに精選された20質量%の針葉樹クラフト(Sodra Monsteras)パルプの配合物は、パイロット規模の装置で調製された。このパルプ配合物は、800mmin-1で作動するパイロットスケールの抄紙機を利用して、紙の連続リールを作製するために用いられた。原料は、UMV10ヘッドボックスから13mmスロットを通じて、ツインワイヤー式ロールフォーマーに供された。紙の坪量の目安は75gm-2であり、填料及び配合レベルは表1に示されている。300~380gt-1の投与量でのカチオン性ポリアクリルアミド、Percol 47NSTM(BASF)と、2kgt-1での微粒子ベントナイト、Hydrocol SHTMとから成る、2成分の歩留まり向上剤系が用いられた。圧搾セクションは、10kNm-1の線形負荷で作動する1台のダブルフェルトロールプレスで構成され、それぞれ600及び800kNm-1で作動するシューの長さが250mmの2台のMetso SymBeltプレスに続く。前記2台のシュープレスのロールは、相互に関連して反転させられる。
紙は、加熱円柱を用いて乾燥された。
【0168】
以下の表3は、製紙段階中になされたウエットエンドの測定を示している。紙の特性を表4にまとめる。
これらのデータは、共粉砕填料は、白水循環中のアニオン性夾雑物には有意には寄与せず、全歩留まりには有害な影響を示さずに、灰分歩留まりを向上することを示す。最終的に、紙の形成は、共粉砕填料を添加することで改善された。
【0169】
【0170】
【0171】
これらの結果は、共粉砕填料(組成物3及び4)を含む紙が、強度特性の独特の組み合わせを有していることを示している。パルプ精選において通常は、引張強度が上昇する場合には、引裂強度は低下する。これらの実施例においては、引張強度と引裂強度の両方が同時に上昇する。Scottボンド内部強度もまた改善する。
通常は、引張強度が上昇する場合には、シート光散乱は低下する。今回の例では、どちらも上昇する。
【0172】
実施例6
共粉砕填料の調製
研削加工のための出発材料は、パルプのスラリー(Botnia Pine)及び粉砕炭酸カルシウム填料のIntracarb 60TMから成っている。該パルプは、20%パルプ添加となるように、Cellier混合機内でGCCと配合された。そして、固形分8.8%であるこの懸濁液は、媒体体積濃度50%でセラミック粉砕媒体(King’s、3mm)を含む180kW撹拌媒体ミル内へ供された。該混合物は、2500kWht-1の間の投入エネルギーが消費されるまで粉砕されて、パルプ/鉱物の混合物は、1mmスクリーンを用いて媒体から分離された。その生成物は、19.0質量%の繊維含有量(灰化による)であり、Malvern Mastersizer STMを利用して測定すると79μmの平均繊維サイズ(D50)であった。繊維psd急峻性(D30/D70×100)は、30.7だった。
【0173】
実施例7
原紙の調製
33SR(100kWh/t)に精選された56質量%のFibriaユーカリパルプと、31SRに叩解された14%のBotnia RMA 90針葉樹クラフトパルプと、50質量%のGCC(Royal Web Silk)を含む30質量%の上質コート損紙(coated woodfree broke)の配合物は、パイロットスケールのhydrapulperを用いて水中固形分3%で調製された。
このパルプ配合物は、12mmin-1で作動する長網抄紙機を利用して、紙の連続リールを作製するために用いられた。紙の坪量の目安は73~82gm-2であり、填料及び配合レベルは表1に示されている。カチオン性ポリマーの歩留まり向上剤(Percol E622、BASF)は、200gt-1(10%配合)又は300gt-1(15~20%配合)の用量で添加された。紙は、加熱円柱を用いて乾燥された。
【0174】
原紙は、20kN圧のスチールロールカレンダーを用いている機械上の1ニップにおいてカレンダー処理された。カレンダリング後の紙の特性を表5にまとめる。
これらの結果は、共粉砕填料を含む紙が、対照群よりも高い破裂強度及び引張強度を有していることを示している。剛軟度もまた上昇する。しかしながら、空隙率はずっと低下する。最大量の共粉砕填料を含むシートは、対照の石灰を含むものよりも表面平滑度が向上している。
【0175】
表5.カレンダリング後の非コート上質原紙の特性
【表5】
【0176】
実施例8
コーティング用混合液は、次の処方に従って調製された。
-85部の2μm未満の粒子を約95体積%含む超微細粉砕炭酸カルシウム(Carbital 95TM)
-15部の微細光沢カオリン(Hydragloss 90TM KaMin)
-11pphのスチレン-ブタジエン-アクリロニトリルゴム(DL920TM、Styron)
-0.3pphのCMC(Finnfix 、CP Kelco)
-1pphのステアリン酸カルシウム(Nopcote C104)
【0177】
pHはNaOHで8.0に調整され、固形分は65.5質量%に調整された。100rpmにおけるBrookfield粘度計を用いて測定される粘度は、270mPa.sだった。これは、表5の原紙の試料に対して、ラボラトリーコーター(Heli-CoaterTM)を用い速度600mmin-1で適用された。7.0~12.0gm-2の間のコート重量が適用され、ブレードの置換を制御することで調整された。
23℃及び50%RH条件に調節した後、製造されたすべてのコート紙試料は、Perkinsラボラトリーカレンダー機を利用して10ニップにおいてスーパーカレンダー処理された。圧力は、ロール温度65℃及び速度40mmin-1で50バールだった。
【0178】
次に、コーティング処理及びカレンダー処理されたストリップは、平滑度(パーカープリントサーフ、ISO8971-4)、75°TAPPI光沢度(T480)、及び、バーンアウト法(burn-out procedure)に続くグレーレベル画像の画像解析を用いた画線比率について試験された。その手順は、紙を塩化アンモニウムのアルコール溶液で処理し、200℃で10分加熱して原紙の繊維を炭化させることを含む。紙のグレーレベルは、焦げた繊維を被覆するコーティング層の能力の指標である。グレーレベルについての値が0に近いと、画線比率が乏しい(黒い)ことを意味するが、値が高くなると、白色度が高く、それゆえ画線比率が良好であることを意味する。
コーティング重量が12gm-2の場合の結果を表6にまとめる。
【0179】
コート紙の試料はまた、その印刷特性についても試験された。紙は、速度0.5ms-1及び圧力500Nで、IGT印刷ユニットを用いて印刷された。マゼンタ枚葉給紙オフセットインクが用いられ、体積0.1cm3が適用される。印刷されたインク層の光沢は、TAPPI T480規格に従いHunterlab 75°光沢計を用いて測定された。インク密度は、Gretag SpectroeyeTM濃度計を用いて測定された。コーティングのピッキング速度は、標準低粘度油を利用し加速モードのIGT印刷ユニットを用いて測定された。印刷速度は0~6ms-1に加速されて、最初に損傷が発生したときのコートストリップ上の距離が測定され印刷速度として見積もられた。値が高くなると、コーティングがより強いことを意味する。
【0180】
【0181】
結果は、標準的なGCC填料の代わりにミクロフィブリル化セルロースを含む共粉砕填料を使うと、紙が続いてコート処理される場合に、コートシートの質が向上することを示している。該コート紙の表面は、高い光沢、良好な平滑度を有し、コーティング層は、バーンアウト試験に従った良好な画線比率(高いグレーレベル値)を有している。印刷特性もまた、高い光沢を有するインク層によって改善される。また、ミクロフィブリル化セルロースを含む填料が原紙に用いられた場合には、乾燥ピック強度が上昇することもわかった。
【0182】
実施例9
共粉砕填料の調製
研削加工のための出発材料は、パルプのスラリー(Botnia Pine)、及び、2μm未満の粒子を約60体積%含む粉砕炭酸カルシウム填料のPolcarb 60TMから成っている。該パルプは、20%パルプ添加となるように、Cellier混合機内で該Polcarbと配合された。そして、固形分8.7%であるこの懸濁液は、媒体体積濃度50%でセラミック粉砕媒体(King’s、3mm)を含む180kW撹拌媒体ミル内へ供された。該混合物は、2500kWht-1の間の投入エネルギーが消費されるまで粉砕されて、パルプ/鉱物の混合物は、1mmスクリーンを用いて媒体から分離された。その生成物は、20.7質量%の繊維含有量(灰化による)であり、Malvern Mastersizer STMを利用して測定すると79μmの平均繊維サイズ(D50)であった。繊維psd急峻性(D30/D70×100)は、29.5だった。
【0183】
実施例10
原紙の調製
40質量%の加圧砕木パルプと、31SRに叩解された40%のBotnia RMA 90針葉樹クラフトパルプと、50/50の比でGCC/カオリンを含む20質量%のLWCコート損紙の配合物は、パイロットスケールのhydrapulperを用いて水中固形分3%で調製された。
このパルプ配合物は、16mmin-1で作動する長網抄紙機を利用して、紙の連続リールを作製するために用いられた。紙の坪量の目安は38~43gm-2であり、填料及び配合レベルは表7に示されている。カチオン性ポリマーの歩留まり向上剤(Percol 230L、BASF)は、200gt-1(10%配合)又は300gt-1(15~20%配合)の用量で添加された。紙は、加熱円柱を用いて乾燥された。
【0184】
原紙は、20kN圧のスチールロールカレンダーを用いている機械上の1ニップにおいてカレンダー処理された。カレンダリング後の紙の特性を表7にまとめる。
これらの結果は、共粉砕填料を含む紙が、対照群よりも高い破裂強度及び引張強度を有していることを示している。剛軟度もまた上昇する。しかしながら、空隙率はずっと低下する。最大量の共粉砕填料を含むシートは、対照の石灰を含むものよりも表面平滑度が向上している。
【0185】
表7.カレンダリング後の非コート原紙の特性
【表7】
【0186】
実施例11
コーティング用混合液は、次の処方に従って調製された。
-60部の2μm未満の粒子を約90体積%含む超微細粉砕炭酸カルシウム(Carbital 90TM)
-40部の微細ブラジル製カオリン(Capim DGTM)
-8pphのスチレン-ブタジエン-アクリロニトリルゴム(DL920TM、Styron)
-4pphのデンプン(Cargill C*film)
-1pphのステアリン酸カルシウム(Nopcote C104)
【0187】
pHはNaOHで8.0に調整され、固形分は67.5質量%に調整された。100rpmにおけるBrookfield粘度計を用いて測定される粘度は、270mPa.sだった。これは、表7の原紙の試料に対して、ラボラトリーコーター(Heli-CoaterTM)を用い速度600mmin-1で適用された。7.0~12.0gm-2の間のコート重量が適用され、ブレードの置換を制御することで調整された。
23℃及び50%RH条件に調節した後、実施例3及び4で製造されたすべてのコート紙試料は、Perkinsラボラトリーカレンダー機を利用して10ニップにおいてスーパーカレンダー処理された。圧力は、ロール温度65℃及び速度40mmin-1で50バールだった。
【0188】
次に、コーティング処理及びカレンダー処理されたストリップは、平滑度(パーカープリントサーフ、ISO8971-4)、75°TAPPI光沢度(T480)、及び、上述の実施例8に従った画線比率について試験された。
コート紙の試料はまた、その印刷特性についても上述の実施例8に従って試験された。
コート重量が10gm-2の場合の結果を表8にまとめる。
【0189】
【0190】
結果は、標準的な石灰填料の代わりにミクロフィブリル化セルロースを含む共粉砕填料を使うと、紙が続いてコート処理される場合に、コートシートの質が向上することを示している。該コート紙の表面は、高い光沢、良好な平滑度を有し、コーティング層は、バーンアウト試験に従った良好な画線比率(一般に高いグレーレベル値)を有している。印刷特性もまた、高い光沢を有するインク層によって改善される。
【0191】
実施例11
400gの非精選針葉樹さらしクラフトパルプ(Botnia Pine RM90)は、20リットルの水に6時間浸漬され、そして機械混合機内で離解された。そのようにして得られた原料は、次にlaboratory Valley beater内へ注ぎ入れられて、28分間の負荷の下で精選され、525cm3のカナダ標準ろ水度(CSF)となるまで叩解された精選パルプの試料を得た。
そして、該パルプは、パルプ濃度計(Testing Machines Inc.)を用いて脱水され、固形分が23.0~24.0質量%の間の湿潤パルプのパッドを得た。これは次に以下に記載された共粉砕試験で用いられた。
【0192】
143gのスラリー状Carbital 60HSTM(固形分77.7質量%、2μm未満の粒子約60体積%)が、粉砕ポット内に量り入れられた。そして、51.0gの湿潤パルプが加えられ、炭酸塩と混合された。次に、1485gのKing’sの3mm粉砕媒体が加えられ、媒体体積濃度が50%となるように423gの水が加えられた。該混合物は、5,000~12,500kWh/ton(繊維について示される)の投入エネルギーが消費されるまで、1000rpmで併せて粉砕された。その生成物は、600μmのBSSスクリーンを用いて媒体から分離された。生じたスラリーの固形分は22.0~25.0質量%の間であり、Brookfield粘度(100rpm)は1400~2930mPa.sだった。該生成物の繊維含有量は450℃での灰化によって解析され、鉱物及びパルプ片の大きさはMalvern Mastersizerを用いて測定された。
同じGCC及びパルプに基づくさらなる試料が、パルプ添加レベルを高くしたことを除いて同様の条件で調製された。試料の特性は表9に示される。
【0193】
表9.共粉砕MFC-GCCスラリーの条件及び特性
【表9】
【0194】
実施例12
131gのスラリー状のBarrisurf HXTM(固形分53.0質量%、形状係数=100)が、粉砕ポット内に量り入れられた。そして、33.0gの固形分22.5質量%の浸潤パルプが加えられ、カオリンと混合された。次に、1485gのKing’sの3mm粉砕媒体が加えられ、媒体体積濃度が50%となるように423gの水が加えられた。該混合物は、5,000~12,500kWh/ton(繊維について示される)の投入エネルギーが消費されるまで、1000rpmで併せて粉砕された。その生成物は、600μmのBSSスクリーンを用いて媒体から分離された。生じたスラリーの固形分は13.5~15.9質量%の間であり、Brookfield粘度(100rpm)は1940~2600mPa.sだった。該生成物の繊維含有量は450℃での灰化によって解析され、鉱物及びパルプ片の大きさはMalvern Mastersizerを用いて測定された。
同じカオリン及びパルプに基づくさらなる試料が、パルプ添加レベルを高くしたことを除いて同様の条件で調製された。試料の特性は表10に示される。
【0195】
表10.共粉砕MFC-カオリンスラリーの条件及び特性
【表10】
【0196】
実施例13
上記スラリーの一部は、フィルム厚150μmの巻き線型ロッド(Sheen Instruments Ltd、Kingston、UK)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(Terinex Ltd.)上に適用された。該コーティングは、ホットエアガンを適用して乾かされた。該乾燥コーティングは、PETフィルムから取り出され、ゴムテスト用に設計されたカッターを用いて幅4mmのバーベル状に切断された。該コーティングの引張特性は、引張試験機(Testometric 350、Rochdale、UK)を用いて測定された。その手順は、J.C.Husband、J.S.Preston、L.F.Gate、A.Storer及びP.Creatonによる論文、「The Influence of Pigment Particle Shape on the In-Plane tensile Strength Properties of Kaolin-based Coating Layers」、TAPPI Journal、2006年12月、p.3-8(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)に記載されている。コートフィルムの引張強度は、破断時の荷重と応力対歪み曲線の初期傾斜からの弾性率とから計算された。その手順は、J.C.Husband、L.F.Gate、N.Norouzi、及びD.Blairによる論文、「The Influence of kaolin Shape Factor on the Stiffness of Coated Papers」、TAPPI Journal、2009年6月、p.12-17(特に「Experimental Methods」という表題のセクションを参照)に記載されている。
機械的特性の結果を表11及び12にまとめる。
【0197】
表11.共粉砕MFC-GCCコーティングの機械的特性
【表11】
【0198】
これらの結果は、MFCと高アスペクト比のカオリンの組み合わせは、強度及び弾性率の値を生み出すことができることを示している。該弾性率は、例えば、改善されたコート紙の剛性と言い換えられるだろう。
【0199】
表12.共粉砕MFC-Barrisurf HXコーティングの条件及び特性
【表12】
【0200】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕i)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品、並びに、
ii)該紙製品上の1種又はそれ以上の機能的コーティング、
を含むことを特徴とする物品。
〔2〕前記機能的コーティングが、ポリマー、金属、水性組成物、又はそれらの組み合わせである、前記〔1〕に記載の物品。
〔3〕前記機能的コーティングが、板状又は高板状カオリンを含む水性組成物である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の物品。
〔4〕包装材料を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の物品。
〔5〕前記機能的コーティングが、液体バリア層、例えば、水性液体バリア層である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の物品。
〔6〕前記機能的コーティングが、プリント電子層である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の物品。
〔7〕前記紙製品が、約0.5質量%~約50質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の物品。
〔8〕前記紙製品が、約25質量%~約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、前記〔6〕に記載の物品。
〔9〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む紙製品であって、該紙製品が、
i)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の引張強度より大きい第1の引張強度、
ii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の引裂強度より大きい第1の引裂強度、及び/又は、
iii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の破裂強度より大きい第1の破裂強度、及び/又は、
iv)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2のシート光散乱係数より大きい第1のシート光散乱係数、及び/又は、
v)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の空隙率より小さい第1の空隙率、及び/又は、
vi)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2のz-方向(内部結合)強度より大きい第1のz-方向(内部結合)強度、
を有することを特徴とする、紙製品。
〔10〕液体包装のための機能的コーティング、バリアコーティング、又は、プリント電子用途を含む紙コーティング組成物をさらに含む、前記〔9〕に記載の紙製品。
〔11〕ポリマー、金属、水性組成物、又はそれらの組み合わせを含む第2のコーティングをさらに含む、前記〔10〕に記載の紙製品。
〔12〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の水蒸気透過率(MVTR)よりも低い第1のMVTRをさらに有する、前記〔9〕、〔10〕又は〔11〕に記載の紙製品。
〔13〕紙が約25質量%~約35質量%の共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、前記〔9〕~〔12〕のいずれか1項に記載の紙製品。
〔14〕紙コーティング組成物でコートされた紙製品であって、該コート紙製品が、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコート紙製品の第2の光沢より大きい第1の光沢を有する、前記〔9〕に記載の紙製品。
〔15〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含むコーティング組成物をさらに含み、任意で該無機粒子が、カオリン、例えば高板状カオリンである、前記〔9〕に記載の紙製品。
〔16〕コート紙製品であって、該コートが、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、該コート紙製品が、
i.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2の光沢より大きい第1の光沢、及び/又は、
ii.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2の剛性より大きい第1の剛性、及び/又は、
iii.共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いたコーティング組成物を含むコート紙製品の第2のバリア特性と比較して向上した第1のバリア特性、
を有することを特徴とする、コート紙製品。
〔17〕前記無機粒子が、カオリン、例えば高板状カオリンである、前記〔16〕に記載のコート紙製品。
〔18〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、ポリマー組成物。
〔19〕前記共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物が、前記ポリマー組成物中に実質的に均一に分散されている、前記〔18〕に記載のポリマー組成物。
〔20〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含む、製紙用組成物であって、該製紙用組成物が、
(i)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた製紙用組成物の第2のカチオン要求性よりも低い第1のカチオン要求性、及び/又は、
(ii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた製紙用組成物の第2の初回通過歩留まりより大きい第1の初回通過歩留まり、及び/又は、
(iii)共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた製紙用組成物第2の灰分歩留まりより大きい第1の灰分歩留まり、
を有することを特徴とする、製紙用組成物。
〔21〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、歩留まり向上剤を実質的に欠いている、製紙用組成物。
〔22〕共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を含み、共処理されたミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料組成物を欠いた紙製品の第2の形成インデックスよりも低い第1の形成インデックスを有する、紙製品。
〔23〕前記無機粒子材料が、アルカリ土類金属炭酸塩又は硫酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏、含水カンダイト粘土、例えば、カオリン、ハロイサイト若しくはボール粘土、無水(焼成)カンダイト粘土、例えば、メタカオリン若しくは十分に焼成されたカオリン、タルク、マイカ、ハンタイト、ヒドロマグネサイト、粉末ガラス、パーライト、若しくは珪藻土、又は、これらの組み合わせを含む、前記〔1〕~〔22〕のいずれか1項に記載の物品、紙製品、ポリマー組成物、又は、製紙用組成物。
〔24〕前記ミクロフィブリル化セルロースが、約25μm~約250μm、より好ましくは約30μm~約150μm、もっと好ましくは約50μm~約140μm、さらに好ましくは約70μm~130μm、及び、とりわけ好ましくは約50μm~約120μmの範囲のd50を有する、前記〔1〕~〔23〕のいずれか1項に記載の物品、紙製品、ポリマー組成物、又は、製紙用組成物。
〔25〕前記ミクロフィブリル化セルロースが、単モード粒径分布を有する、前記〔1〕~〔24〕のいずれか1項に記載の物品、紙製品、ポリマー組成物、又は、製紙用組成物。
〔26〕前記ミクロフィブリル化セルロースが、多モード粒径分布を有する、前記〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の物品、紙製品、ポリマー組成物、又は、製紙用組成物。