(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】抗VEGF-A抗体ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230511BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230511BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230511BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230511BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230511BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230511BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20230511BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230511BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230511BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/22
C12P21/08
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P9/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021152836
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2019510850の分割
【原出願日】2017-08-22
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオウ,チン チン
(72)【発明者】
【氏名】ディマシ,ナッザレノ
(72)【発明者】
【氏名】コフマン,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チャンショウ
(72)【発明者】
【氏名】セペダ,マリオ,エー
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ ミッテルマン,エイドリアン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-509817(JP,A)
【文献】特表2011-518546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0302038(US,A1)
【文献】Applied Biochemistry and Biotechnology,2008年01月,Vol 144, No. 1,p. 15-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)並びに軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、VEGF-Aに結合するモノクローナル抗体であって、HCDR1、HCDR2及びHCDR3並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3が各々、配列番号51~56を含み、前記抗体は、配列番号45及び49を各々含む重鎖及び軽鎖を含
み、
前記抗体はVEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する、前記抗体。
【請求項2】
重鎖アミノ酸配列が配列番号43を含み、且つ軽鎖アミノ酸配列が配列番号47を含む、請求項1
に記載の抗体。
【請求項3】
重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)並びに軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、VEGF-Aに結合するモノクローナル抗体であって、HCDR1、HCDR2及びHCDR3並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3が各々、配列番号107~112を含み、前記抗体は、配列番号101及び105を各々含む重鎖及び軽鎖を含
み、
前記抗体はVEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する、前記抗体。
【請求項4】
重鎖アミノ酸配列が配列番号99を含み、且つ軽鎖アミノ酸配列が配列番号103を含む、請求項3
に記載の抗体。
【請求項5】
請求項1又は3
に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含む
、核酸。
【請求項6】
請求項5
に記載の核酸を含む
、ベクター。
【請求項7】
請求項6
に記載のベクターを含む
、細胞。
【請求項8】
請求項1又は3
に記載の抗体を作製する方法であって、請求項6
に記載のベクターを含む細胞を培養するステップを含む、前記方法。
【請求項9】
血管新生の低減を含む治療方法において使用するための
、請求項1又は3
に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する活性を有する抗体、ならびにかかる抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、既存の脈管構造からの新たな血管の形成であり、実質的にすべての臓器の形成および生理学的機能に必要とされる複雑な生物学的プロセスである。それは、胚形成、正常な生理学的増殖、修復、および腫瘍拡大などの病理学的プロセスに必須の要素である。通常、血管新生は、内皮細胞による血管出芽、分岐、および細管形成を含む多段階プロセス(内皮細胞(EC)の活性化、血管の脱安定化、分解酵素の合成および放出、EC遊走、EC増殖、EC組織化および分化、ならびに血管成熟などのプロセスを含む)において、血管新生因子と血管新生抑制因子の局所的平衡により密に調節される。
【0003】
成体では、生理学的血管新生は、創傷治癒ならびに雌の生殖機能および胚発生の幾つかの要素に主に限定される。任意の異常な、望ましくないまたは病理学的な血管新生を含む疾患関連性の血管新生では、血管新生因子と血管新生抑制因子との間の局所的平衡が調節不全になり、不適切な、および/または構造的に異常な血管形成をもたらす。病理学的血管新生は、糖尿病性網膜症、乾癬、がん、関節リウマチ、アテローマ、カポジ肉腫、および血管腫を含む病態と関連づけられている(Fan et al,1995,Trends Pharmacology.Science.16:57-66;Folkman,1995,Nature Medicine 1:27-31)。がんでは、原発性および続発性腫瘍の1~2mm3を上回る増殖には血管新生が必要とされる(Folkman,J.New England Journal of Medicine 1995;33,1757-1763)。
【0004】
VEGFは、強力な広範に分布する血管増殖因子である。内皮細胞のための分泌マイトジェンとしてのVEGFの役割の同定に先立ち、それは血管透過性因子として同定された、増殖、遊走、特殊化、および生存を含む、内皮細胞挙動の多くの異なる側面を制御するVEGFの能力が強調された(Ruhrberg,2003 BioEssays 25:1052-1060)。VEGF-Aは、同定対象としての血小板由来増殖因子スーパーファミリーに属する構造的に関連した二量体糖タンパク質のVEGFファミリーの最初のメンバーであった。当初のメンバーのVEGF-Aは別にして、VEGFファミリーは、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤増殖因子(PIGF)および内分泌腺由来VEGF(EG-VEGF)を含む。VEGFの活性型は、他のVEGFファミリーメンバーとのホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれかとして合成される。ヒトVEGF-Aは、選択的スプライシングによって作製される6つのアイソフォーム:VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF183、VEGF189およびVEGF206で存在する。これらのアイソフォームは、主にそれらのバイオアベイラビリティにおいて異なり、ここでVEGF165は主要なアイソフォームであるが(Podar,et al.2005 Blood 105(4):1383-1395)、それ以外もまた生物学的活性を有する。様々なアイソフォームの段階および組織に特異的な比をもたらす胚形成の間でのスプライシングの調節により、VEGFに応答しての内皮細胞の異なる状況依存的な挙動に向けての豊かな潜在性が創出される。
【0005】
VEGFは、正常と疾患関連性双方の血管新生(Jakeman,et al.1993 Endocrinology:133,848-859;Kolch,et al.1995 Breast Cancer Research and Treatment:36,139-155)および血管透過性(Connolly,et al.1989 J.Biol.Chem:264,20017-20024)の重要な刺激因子であると考えられる。抗体を用いたVEGFの隔離によるVEGF作用の拮抗は、腫瘍増殖における低下をもたらし得る(Kim,et al.1993 Nature:362,841-844)。VEGF遺伝子のヘテロ接合性破壊は、脈管形成における致命的欠損をもたらした(Carmeliet,et al.1996 Nature380:435-439;Ferrara,et al.1996 Nature 380:439-442)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Avastin(登録商標)という、少なくとも1つの商業的に市販されている抗VEGF-A抗体が存在する。しかし、その使用に伴う重篤な、時として致死性のある毒性、例えば非胃腸性の瘻(non-gastrointestinal fistulas)、血栓塞栓症、高血圧症、可逆性後部白質脳症症候群などが認められる。そのように、それがVEGF-Aの標的化に関連した安全性を改善することに関連することから、少なくとも満たされない需要がある。このため、本発明の抗体は、これらの抗体がVEGF-Aアイソフォームに別々に結合する能力を含む、当該技術分野全体に及ぶかかる改善を支持する結合特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、VEGF-Aに結合する、抗体を含む結合分子に関する。本発明はまた、1つ以上のVEGF-Aアイソフォームに、1つ以上の他のVEGF-Aアイソフォームと比較される場合により高い親和性で結合する、抗体を含む結合分子に関する。本発明はまた、VEGF-Aに結合し、VEGF-Aの少なくとも1つの生物学的活性についての活性を低下させる、抗体を含む結合分子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ヒトVEGF165およびマウスVEGF164への結合を示す代表的データである。
【
図2】VEGF121への結合の欠如を示す代表的データである。
【
図3】クローンE06および最も配列相同性の高い生殖系列遺伝子の配列アラインメントである。
【
図4】親和性最適化変異体(affinity optimized variants)の改善された結合を示す代表的データである。
【
図5】FabおよびIgGとしての親和性最適化変異体の改善された結合を示す代表的データである。Fabは、上の2つのグラフで示される。IgGは、下の2つのグラフで示される。
【
図6】親和性最適化変異体のマウスVEGF164への結合を示す代表的データである。
【
図7】親和性最適化変異体のVEGF121への結合の欠如を示す代表的データである。
【
図8A-B】機能細胞に基づくアッセイにおける親和性最適化変異体の活性を示す代表的データである。
【
図9】網膜脈管形成モデルにおける親和性最適化変異体の活性を示す代表的データである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
定義
本発明を詳述する前に、本発明が特定の組成物またはプロセスステップに限定されず、それ故に変更可能であるがことは理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲にて用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上特に明示されない限り、複数の参照対象を含む。用語「a」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書中で交換可能に用いることができる。さらに、態様が用語「含む(comprising)」とともに本明細書に記載される場合は常に、「~からなる(consisting of)」および/または「本質的に~からなる(consisting essentially of)」の観点で記載される他の類似する態様もまた提供されることが理解される。
【0010】
本明細書で用いられるとき、用語「結合分子」は、標的分子または抗原に、抗原に結合する抗体の場合と同様に結合する能力がある分子を指す。結合分子の例として、完全長抗体および抗原結合断片が挙げられる。抗体の「抗原結合断片」の例として、(i)抗体のVL、VH、CLおよびCH1ドメインを含む一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインを含むFd断片;(iv)抗体の単一群のVLおよびVHドメインを含むFv断片、(v)VHドメインを含むdAb断片(Ward et al.,(1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、が挙げられる。抗原結合断片は、組換えDNA技術により、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断により作製され得る。一実施形態では、抗原結合断片は、例えば「一本鎖可変断片」すなわち「scFv」を含む一本鎖抗体を含む。scFvは、免疫グロブリンの重鎖の少なくとも1つの可変領域(VH)および軽鎖の少なくとも1つの可変領域(VL)を含む融合タンパク質を指す。これらの一本鎖抗体断片は、当業者に公知の通常の技術を用いて得ることができる。例えば、別々の遺伝子によってコードされる、Fv断片のVHおよびVLドメインは、VHおよびVL領域が対をなして一価分子を形成するような単一のポリペプチド鎖としての作製を可能にする合成リンカーにより、組換え方法を用いて連結され得る(Bird et al.(1988) Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照)。
【0011】
相補性決定領域(CDR)は、抗体であってその抗原に結合するものに関与する。CDRは、(Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991));Chothia(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));IMGT(ImMunoGeneTics)(Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003));および他の方法を含む)当該技術分野における幾つかの方法により決定される。具体的なCDR配列が本明細書中に記載され、請求されるが、本発明はまた、当該技術分野で公知の任意の方法によって定義されるCDR配列を包含する。
【0012】
本明細書中で用いられるように、用語「対象」は、脊索動物亜門の任意のメンバーを指す。例えば限定はされないが、ヒトおよび他の霊長類、例えば非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ;家畜哺乳類、例えば、イヌおよびネコ;実験動物、例えば齧歯類、例えば、マウス、ラットおよびモルモット;鳥類、例えば、飼育、野生および狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽、アヒル、ガチョウなどもまた非限定例である。
【0013】
結合分子
結合分子は、完全長またはインタクト抗体、抗体断片、例えば、抗原結合断片、ヒト、ヒト化、翻訳後修飾、キメラまたは融合抗体、免疫複合体、またはその機能断片などを含み得る。
【0014】
本発明の好適な免疫グロブリン分子またはその一部(すなわち結合分子)は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、aまたはx)、G2m(n)、G3m(g、b、またはc)、Am、Em、およびKm(1、2または3))であり得る、またはそれに由来する。免疫グロブリン分子は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてλ鎖またはκ鎖のいずれかとして分類される軽鎖を含み得る。
【0015】
結合分子の作製
ポリペプチド、例えば本明細書に記載の結合分子について作製し、スクリーニングするための組換えDNA方法は、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,816,567号明細書)。結合分子を得るため、結合分子またはその断片をコードするDNA、例えば、VHドメイン、VLドメイン、scFv、またはそれらの組み合わせをコードするDNAが、好適な発現ベクターに挿入され得、次に、通常は抗体タンパク質を産生することがない、好適な宿主細胞、例えば、大腸菌(E.Coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞にトランスフェクトされ得る。
【0016】
好適な発現ベクターは、当該技術分野で公知である。発現ベクターは、プロモーターに連結された抗体をコードするポリヌクレオチドを含み得る。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、米国特許第5,981,216号明細書;米国特許第5,591,639号明細書;米国特許第5,658,759号明細書および米国特許第5,122,464号明細書を参照)、該抗体の可変ドメインは、全重鎖、全軽鎖、または全重鎖および全軽鎖の双方の発現を意図したようなベクターにクローン化されてもよい。結合分子を産生するため、発現ベクターは、通常の技術により宿主細胞に導入され得、トランスフェクト細胞は、通常の技術により培養され得る。
【0017】
組換え抗体の発現用宿主として好適な哺乳動物細胞株は、当該技術分野で公知であり、限定はされないが、CHO細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞のがん細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、および幾つかの他の細胞株を含む、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から入手可能な多数の不死化細胞株を含む。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴および特定の機構を有する。結合分子の正確な修飾およびプロセシングを保証するため、適切な細胞株または宿主系が選択され得る。このため、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられてもよい。かかる哺乳類宿主細胞は、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(機能的免疫グロブリン鎖を全く内因性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3OおよびHsS78Bst細胞を含む。モノクローナル抗体を組換え的に産生するため、ヒトリンパ球を不死化することにより発生されるヒト細胞株を用いることができる。モノクローナル抗体を組換え的に産生するため、ヒト細胞株PER.C6(登録商標)(Crucell,Netherlands)を用いることができる。組換え抗体の発現用宿主として用いられてもよいさらなる細胞株は、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5b1-4)、または酵母細胞(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、ピキア(Pichia)、米国特許第7326681号明細書など)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号明細書)、またはニワトリ細胞(国際公開第2008142124号パンフレット)を含む。
【0018】
抗体は、当該技術分野で公知の方法を用いて細胞株で安定発現され得る。組換えタンパク質の長期にわたる高収率産生のため、安定発現を用いることができる。安定発現のため、宿主細胞は、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択可能マーカー遺伝子を含む適切に設計されたベクターを用いて形質転換され得る。外来DNAの導入後、細胞は、濃縮培地中で1~2日間、増殖が許容され、次に選択培地に交換される。組換えプラスミドにおける選択可能マーカーは、選択に対して耐性を付与し、プラスミドを自らの染色体に安定に組み込んでいる細胞が増殖し、フォーカスを形成することを可能にし、次にそのフォーカスは細胞株にクローン化および拡大され得る。安定細胞株を高収率で作製するための方法は当該技術分野で公知であり、試薬は一般に市販されている。一過性発現もまた、当該技術分野で公知の方法を用いることにより実施することができる。一過性遺伝子導入は、細胞に導入される核酸がその細胞のゲノムまたは染色体DNAに組み込まれることがなく、細胞における染色体外因子として(例えばエピソームとして)維持される場合のプロセスである。
【0019】
細胞株は、安定にまたは一過性のいずれかでトランスフェクトされるものであり、結合分子の発現および産生をもたらす、当該技術分野で公知の細胞培地および条件で維持される。細胞培地は、例えばDMEMまたはハムF12を含む市販の培地製剤に基づき得る。さらに、細胞培地は、細胞増殖および生物学的タンパク質発現の双方における増強を支持するため、修飾され得る。本明細書で用いられるとき、用語「細胞培地」、「培地」および「培地製剤」は、多細胞生物または組織以外の人工的インビトロ環境下での細胞の維持、成長、増殖、または拡大のための栄養液を指す。細胞培地は、細胞増殖を促進するために配合される細胞培養増殖培地または組換えタンパク質産生を促進するために配合される細胞培養産生培地を含む、特定の細胞培養用途のため、最適化されてもよい。栄養素、原料、および成分という用語は、細胞培地を構成する成分を指すように本明細書で交換可能に用いられる。細胞株は、流加培養法を用いて維持され得る。本明細書で用いられるとき、「流加培養法」は、細胞培養物が最初に基礎培地とともにインキュベートされてから追加的な栄養分の供給を受けるための方法を指す。例えば、流加培養法は、所与の期間内の決められた供給スケジュールに従って補充培地を添加することを含んでもよい。したがって、「流加細胞培養」は、培養終結前の周期的な細胞および/または生成物の収集の有無にかかわらず、細胞(典型的には哺乳類)、および培地が培養中の血管に最初に供給され、追加的な培養栄養分が培養中の培養物に継続的にまたは不連続増分で供給されるような細胞培養を指す。
【0020】
細胞培地およびそれに含有される栄養分は、当業者に公知である。細胞培地は、基礎培地と、修飾基礎培地をもたらす、少なくとも1つの加水分解物、例えば、大豆に基づく加水分解物、酵母に基づく加水分解物、または2種の加水分解物の組み合わせとを含んでもよい。追加的な栄養分は、専ら基礎培地、例えば濃縮基礎培地を含んでもよい、または専ら加水分解物、もしくは濃縮加水分解物を含んでもよい。好適な基礎培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、基礎培地イーグル(BME)、RPMI1640、F-10、F-12、α-最小必須培地(α-MEM)、グラスゴー最少必須培地(G-MEM)、PF CHO(例えば、CHOタンパク質不含培地(Sigma)またはEX-CELL(商標)325 PF CHO Serum-Free Medium for CHO Cells Protein-Free(SAFC Bioscience)参照、およびイスコフ改変ダルベッコ培地を含むが、それらに限定されない。本発明において用いてもよい基礎培地の他の例として、BME基礎培地(Gibco-Invitrogen;Eagle,H(1965)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.89,36も参照);ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、粉末)(Gibco-Invitrogen(#31600);Dulbecco and Freeman(1959)Virology.8:396;Smith et al.(1960)Virology 12:185.Tissue Culture Standards Committee,In Vitro 6:2,93も参照);CMRL 1066培地(Gibco-Invitrogen(#11530);Parker et al.(1957)Special Publications,N.Y.Academy of Sciences,5:303も参照)が挙げられる。
【0021】
基礎培地は無血清であってもよく、これは、培地が血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、または当業者に公知の任意の他の動物由来血清)を含有しないこと、または動物タンパク質不含培地または合成培地であることを意味する。
【0022】
基礎培地は、標準の基礎培地中に見出される特定の非栄養成分、例えば様々な無機および有機緩衝液、界面活性剤、および塩化ナトリウムを除去するため、修飾されてもよい。かかる成分を基本細胞培地から除去することは、残存する栄養成分の濃度増加を可能にし、全体的な細胞増殖およびタンパク質発現を改善することがある。さらに、除去された成分は、細胞培養条件の要求に従って修飾された基本細胞培地を含有する細胞培地に再び添加されてもよい。細胞培地は、修飾された基本細胞培地と、以下の栄養分、鉄供給源、組換え増殖因子;緩衝液;界面活性剤;容積モル浸透圧濃度調節剤;エネルギー源;および非動物加水分解物の少なくとも1つとを含有してもよい。さらに、修飾された基本細胞培地は、任意選択的には、アミノ酸、ビタミン、またはアミノ酸とビタミン双方の組み合わせを含有してもよい。修飾された基礎培地は、グルタミン、例えばL-グルタミン、および/またはメトトレキサートをさらに含有してもよい。
【0023】
精製および単離
一旦結合分子が作製されていると、それは、免疫グロブリン分子を精製するための当該技術分野で公知の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性(特に特異抗原プロテインAまたはプロテインGに対する親和性によるもの)、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差次的溶解度により、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準的技術により精製されてもよい。さらに、本発明の結合分子は、精製を容易にするため、異種ポリペプチド配列(本明細書中で「タグ」と称される)と融合されてもよい。
【0024】
使用
本発明の結合分子は、幾つかの方法で用いることができる。例えば、本発明の抗体は、VEGF-Aに結合させ、それによりVEGF-Aの少なくとも1つの生物学的活性を低減するため、用いることができる。より詳細には、本発明の抗体は、VEGF-165に結合させ、それにより、その受容体の活性化もしくはリン酸化における低下、細胞調節不全に関連した血管新生における低下、腫瘍増殖における低下、腫瘍体積における減少、ならびに/または腫瘍増殖および腫瘍体積における低減を含んでもよい、VEGF-165の少なくとも1つの生物学的活性を低減するため、用いることができる。
【0025】
例示的実施形態
本発明の実施形態は、本明細書に記載の抗体の重鎖相補性決定領域1~3(すなわち、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域1~3(すなわち、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む結合分子に関する。
【0026】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165に結合する。
【0027】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。
【0028】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF189と比べてより高い親和性でVEGF165に結合する。
【0029】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性でVEGF165に結合する。
【0030】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化を低下させる。
【0031】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、血管新生を低下させる。
【0032】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させる、腫瘍体積を減少させる、または腫瘍増殖および腫瘍体積を低減する。
【0033】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、VEGF165への結合、VEGF165へのVEGF121と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF189と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性での結合、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、もしくはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化の低下、血管新生の低下、または腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減を含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。
【0034】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関する。
【0035】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165に結合する。
【0036】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。
【0037】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0038】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0039】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化を低下させる。
【0040】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメインを含み、かつLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、血管新生を低下させる。
【0041】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメインを含み、かつLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させる、腫瘍体積を減少させる、または腫瘍増殖および腫瘍体積を低減する。
【0042】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変ドメインを含み、かつLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、VEGF165への結合、VEGF165へのVEGF121と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF189と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性での結合、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、もしくはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化の低下、血管新生の低下、または腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減を含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。
【0043】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関する。
【0044】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165に結合する。
【0045】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。
【0046】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0047】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0048】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化を低下させる。
【0049】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、血管新生を低下させる。
【0050】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させる、腫瘍体積を減少させる、または腫瘍増殖および腫瘍体積を低減する。
【0051】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、VEGF165への結合、VEGF165へのVEGF121と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF189と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性での結合、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、もしくはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化の低下、血管新生の低下、または腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減を含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。
【0052】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関する。
【0053】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165結合する。
【0054】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。
【0055】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0056】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0057】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化を低下させる。
【0058】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、血管新生を低下させる。
【0059】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させ、腫瘍体積を減少させ、または腫瘍増殖および腫瘍体積を低減する。
【0060】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、VEGF165への結合、VEGF165へのVEGF121と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF189と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性での結合、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、もしくはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化の低下、血管新生の低下、または腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減を含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。
【0061】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関する。
【0062】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165に結合する。
【0063】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。
【0064】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0065】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、VEGF165にVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。
【0066】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化を低下させる。
【0067】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、血管新生を低下させる。
【0068】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させ、腫瘍体積を減少させ、または腫瘍増殖および腫瘍体積を低減する。
【0069】
別の実施形態は、本明細書に記載の抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む完全長IgG1抗体を含む完全長抗体である結合分子に関し、ここで結合分子は、腫瘍を有する被験者に提供されている結果として、VEGF165への結合、VEGF165へのVEGF121と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF189と比べてより高い親和性での結合、VEGF165へのVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性での結合、ヒトVEGFR2のリン酸化、マウスVEGFR2のリン酸化、もしくはヒトおよびマウス双方のVEGFR2のリン酸化の低下、血管新生の低下、または腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減を含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。
【0070】
具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体が存在し、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む。
【0071】
別の具体的な実施形態では、配列番号73および77を各々含む重鎖および軽鎖を含む抗体が存在する。
【0072】
別の具体的な実施形態では、配列番号71を含む重鎖アミノ酸配列および配列番号75を含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体が存在する。
【0073】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体が存在し、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含み、また該抗体はモノクローナル抗体である。
【0074】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸配列が存在し、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む。
【0075】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが存在し、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む。
【0076】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞が存在し、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む。
【0077】
別の具体的な実施形態では、抗体を作製する方法であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞を培養することを含み、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む、方法である。
【0078】
別の具体的な実施形態では、血管新生を低下させる方法であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体を被験者に提供することを含み、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は各々、配列番号79~84を含む、方法である。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【実施例】
【0090】
本明細書に記載の実験においては、必要に応じての単一特異性または二重特異性抗体として、Avastin(登録商標)(Ferrara,N et al.Biochem Biophys Res Comm,333:328-335,2005)、G6-31(Liang,WC et al.J Biol Chem,281:951-961,2006)、B20-4.1(Liang,WC et al.J Biol Chem,281:951-961,2006)、およびR347と名付けたアイソタイプ対照を含む様々な抗体を用いた。一部の結合および機能試験において、マウスと交差反応性がないすべてのVEGFアイソフォームに結合する能力がある抗VEGF IgG1抗体を陽性対照として用いることができる。マウスVEGFに対する交差反応が必要である場合、抗体G6-31およびB20-4.1を陽性対照として用いることができる。
【0091】
実施例1:抗VEGF抗体のファージ抗体ディスプレイライブラリーからの同定
ファージパニング溶液を適用し、抗VEGF抗体を抗体ファージライブラリーから単離した。ファージライブラリーを、4μg/mlの最終濃度で、ビオチン化VEGF165(PeproTech,NJ)(第1回および第3回パニング用にヒトVEGF165、第2回および第4回パニング用にmVEGF164)とともにインキュベートした。30分間のインキュベーション後、VEGFに結合したファージを、ストレプトアビジンビーズ(Invitrogen)を添加することにより溶液から捕捉し、リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で予洗し、PBS中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングした。ビーズに捕捉されたファージを100mMのTEA緩衝液で溶出させ、1Mトリス-HCI(pH8.0)で中和し、次に溶出したファージ1mlを用いて、ファージ増幅のため、5mlの対数期TG1および4mlの2YT培地(Teknova)に感染させた。ウォーターバス内、37℃で30分間のインキュベーション後、細胞を4000gで遠心沈殿させ、2YTに再懸濁し、100μg/mlのカルベニシリンおよび2%グルコースを有する2YT寒天プレート(Teknova)上に広げ、30℃で一晩インキュベートした。2日目、コロニーを寒天プレートから収集し、OD600=0.1の最終密度で2YT培地に接種し、37℃で対数期まで増殖させ、ヘルパーファージ(Invitrogen)に感染させ、次にカルベニシリン(Invitrogen)およびカナマイシン(Sigma)を有する2YT中、30℃で一晩増殖させておき、高力価のファージを作製した。増幅したファージをPEG8000で沈殿させ、PBSに再懸濁し、標準的手順を用いて次回のパニング用に用いた。4回全部のパニングを適用し、VEGF特異抗体を単離した。パニングの初回における2×105pfuから第4回における4×107pfuにかけての結果的なファージ数の有意な増加が認められた。
【0092】
実施例2:VEGF特異抗体のスクリーニング
4回目のパニングからの個別のファージFabの特異性をファージELISAにより評価した。96ウェルマイクロタイタープレートを、40℃、PBS中、5μg/mlの濃度のヒトVEGF165で一晩コーティングした。ウェルを、PBSで3回洗浄後、37℃、ブロッキング緩衝液(PBS中、4%スキムミルク)で1時間ブロッキングした。次に、50μl/ウェルのファージを添加し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、1:1,000に希釈したブロッキング緩衝液中の西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートマウス抗M13(Amersham Pharmacia)50μlを37℃で30分間添加した。検出のため、50μl/ウェルのSureBlue Reserve TMB基質(KPL)を室温で5分間添加し、TMB停止溶液(KPL)50μLを添加することにより反応を停止させた。450nmで吸光度を読み取った。4回のパニング後、クローンの50%超が、約0.05の非特異的なバックグラウンド読み取り値よりも20倍高い、1より高い吸光度で、VEGFに特異的である。代表的データを表1に示す。
【0093】
【0094】
実施例3-クローンE06のヒトおよびマウスVEGFへの結合
初期のファージスクリーニング後、マウスVEGF164との交差反応性を有する1つのクローン(E06)を、標準的な分子生物学の材料および方法を用いて、さらに変換し、完全長IgGとして発現させた。96ウェルマイクロタイタープレート(Corning)を、4℃、PBS中、5μg/mlの濃度、50μl/ウェルのヒトおよびマウスのVEGF165またはVEGF121で一晩コーティングした。ウェルを、0.1%ツイーン20を含有するPBS(PBST)で3回洗浄後、ブロッキング緩衝液(PBS中、4%スキムミルク)でブロッキングした。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをPBSTで洗浄し、ブロッキング緩衝液中の抗体の2倍連続希釈物(8nMから開始)を添加し、室温で1時間インキュベートした。抗体溶液をPBSTでの洗浄により除去し、その後、PBST中で調製した抗ヒト-Fc-HRP抗体(Thermo Scientific)の1:3000希釈物とともに室温で1時間インキュベートした。SureBlue Reserve TMB基質(KPL)50μLの室温で5分間の添加により結合を可視化し、TMB停止溶液(KPL)50μLを添加することにより反応を停止させた。450nmでの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーを用いて測定した。Prism 5ソフトウェア(GraphPad)を用いて、データを分析した。
【0095】
抗体E06においては、ヒトVEGF165およびマウスVEGF164に対して同様の結合活性が認められ、EC50は各々、0.048nMおよび0.049nMであった。予想通り、Avastin(登録商標)(抗VEGF抗体)は、ヒトVEGF165に対して強力な結合を示したが、マウスVEGF164に対して検出可能な結合を示さなかった。アイソタイプ対照抗体R347は、VEGFのヒトまたはマウス形態のいずれにも結合しなかった。代表的データを
図1に示す。
【0096】
抗体E06がAvastin(登録商標)(抗VEGF抗体)よりも異なるエピトープに結合するか否かを評価するため、ヒトVEGF121を用いてELISAアッセイを実施した。Avastin(登録商標)(抗VEGF抗体)は、ヒトVEGF121に対して非常に強力な結合を示した。しかし、E06については、結合は検出されず、これは抗体E06がAvastin(登録商標)(抗VEGF抗体)よりも異なるエピトープに結合することを示す。アイソタイプ対照抗体R347もまた、ヒトVEGF121に対する結合を全く示さなかった。代表的データを
図2に示す。
【0097】
実施例4-クローンE06の生殖系列
クローンE06のフレームワーク配列を、その最も近い生殖系列配列に一致するように設計した。IgG生殖系列遺伝子データベースに対する配列分析によると、E06 VL配列が生殖系列遺伝子VK3-NL5
*01に最もよく一致し、VLの1、3、4および86位に4つのアミノ酸差異を伴うことが示された。VH配列は生殖系列遺伝子VH3-23
*2と同一であるが、T98は、この位置でRまたはKの最も保存された生殖系列アミノ酸と異なる。生殖系列E06に対して、4つの変異体を設計し、発現させた。これらの変異体は、E06配列が最もよく一致した生殖系列遺伝子と異なる位置で、生殖系列遺伝子にコードされるアミノ酸と部分的または全体的に置換される。例えば、M1は、VLにおけるD1E/Q3V/M4L置換およびVHにおけるT98R置換を有し;M4は、VLにおけるD1E/Q3V/M4L/T86V置換を有し;M7は、VLにおけるD1E/Q3V/M4L/T86V置換およびVHにおけるT98R置換を有し;またF1は、VLにおけるD1E/Q3V/M4L置換を有し、ここで最初の文字は元の1文字アミノ酸コードを表し、2番目の文字は、生殖系列配列の1文字アミノ酸コードを表す。
図3は、親E06および最も相同な生殖系列遺伝子の配列アラインメントを示す。
【0098】
生殖系列変異体をFabとして発現させ、精製し、それらの組換えVEGF165への結合をELISAにより判定した。結合結果は、完全または部分VL生殖系列アミノ酸置換を有する生殖系列変異体M4およびF1がE06 WT Fab結合活性を保持することを示した。さらに、M4は、HUVECを用いるpVEGFR2アッセイにおいて、WT E06 Fabと比べて類似した活性を示した。他方、T98位にVH生殖系列アミノ酸置換を有する生殖系列変異体M1およびM7が結合およびpVEGFR2のリン酸化を著しく低下させたが、これはT98が結合および活性に関与し、保持される必要があることを示す。生殖系列クローンM4は、さらなる親和性最適化のための鋳型として用いた。
【0099】
実施例5-親和性最適化
ハイブリダイゼーション突然変異誘発方法(Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.82,pp.488-492,1985)を用いて、生殖系列クローンM4の6つ全部のCDRの各アミノ酸を、その他の20のアミノ酸に個別に突然変異させた。2つのDNAプライマーセット(一方は8つのアミノ酸をコードするNSSコドンを有し、他方は12の異なるアミノ酸をコードするNWSコドンを有する)を用いて、標的化される各CDR位置に突然変異を導入した。ハイブリダイゼーション突然変異誘発反応において、個別の縮重プライマーを用いた。つまり、各縮重プライマーをリン酸化し、ウリジニレーテッド(uridinylated)M4 Fab ssDNAとともに10:1の比で用いた。混合物を95℃に加熱し、次に1時間かけて55℃まで冷却した。その後、T4リガーゼおよびT7 DNAポリメラーゼを添加し、混合物を37℃で1.5時間インキュベートした。VHおよびVL CDRにおける合成生成物を各々プールしたが、NSSおよびNWSライブラリーを別々に維持し、独立的にスクリーニングした。典型的には、XL1-Blue菌叢上でのプラーク形成のため、またはFab断片の作製のため、プールしたライブラリーDNA1μLをXL1-Blueに電気穿孔した(Wu H,AnLL.Tailoring kinetics of antibodies using focused combinatorial libraries.Methods Mol Biol 2003;207:213-33)。次に、これらの突然変異体を活性についてスクリーニングした。
【0100】
一次スクリーニングは、他の箇所に記載の通り、96ウェルプレート(ディープウェル)内で増殖され、個別の組換えM13クローンに感染した細菌の培養上清を用いて実施される単一点ELISA(SPE)アッセイからなった(Wu H,AnLL.Tailoring kinetics of antibodies using focused combinatorial libraries.Methods Mol Biol 2003;207:213-33)。つまり、この捕獲ELISAは、96ウェルMaxisorp Immunoplateの各ウェルを、pH8.5の炭酸塩緩衝液中、約50ngのヒツジ抗ヒトFd抗体(Biodesign International,ME)で、4℃で一晩コーティングすることを含んだ。翌日、プレートを、PBS緩衝液中3%BSAで、室温で1時間ブロッキングした。次に、Fab上清をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化VEGF165タンパク質をウェルに添加し、混合物を室温で1.5時間インキュベートした。この後、ニュートラアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(Pierce,IL)とともに室温で約40分間インキュベートとした。HRPの活性をテトラメチルベンジジン(TMB)基質で検出し、反応物を0.2M H2SO4でクエンチした。プレートを450nmで読み取った。
【0101】
親クローンM4 Fabよりも大きい450nmでの光学密度(OD)シグナルを示すクローンを選別し、再増殖させ(15mL)(Wu H,AnLL.Tailoring kinetics of antibodies using focused combinatorial libraries.Methods Mol Biol 2003;207:213-33)、(上記の)ELISAにより二通りに再アッセイし、陽性結果を確認した。M4 Fabの場合よりも大きいシグナルを繰り返し示すクローンを配列決定した。次に、CDR変化を有する各クローンのFabタンパク質濃度を定量FabのELISAにより判定し、ここでは既知の濃度を有するFabを参照として用いた。Fab濃度は、ELISAシグナルを参照Fabによって生成されるシグナルと比較することにより判定した。突然変異体Fabと親M4 Fabとの相対的結合親和性を判定するため、すべての陽性変異体について、正規化されたFab濃度下で結合アッセイをもう一回反復した。
【0102】
多数の点突然変異が、VEGF165に対する結合でM4を上回る改善を示した。それら突然変異体の中で、D04、J05、およびI20は、Fabとして生殖系列E06と比べてEC50における10倍を超える改善を示した。代表的データを
図4に示す。配列分析によると、VEGF165結合に利点をもたらすアミノ酸置換が、VL、特にVL-CDR3中に見出されることが示された。例えば、突然変異体J05における点突然変異S94Rが結合をE06よりも約25倍改善したが、結合におけるこのアミノ酸の重要な寄与が示される。
【0103】
次に、改善された結合を示す点突然変異体を、部位特異的変異誘発方法を用いて組み合わせた。組み合わせ突然変異体をFabおよびIgGとして発現させ、VEGF165のELISAにて試験した。代表的データを
図5に示す。
【0104】
組み合わせ突然変異体は、ELISAアッセイにて、点突然変異体J05よりも有意に高い結合を示した。組み合わせ突然変異体の見かけ上の結合親和性が、FabとしてJ05よりも約3~10倍改善された。同様に、IgGとして試験したすべての組み合わせ突然変異体が、結合における親クローンE06と比べて有意な改善を示した。親和性最適化クローンの平衡結合定数(KD)は、KinExAを用いる尺度であった。代表的データを表2に示す。点突然変異体および組み合わせ突然変異体の配列を表3に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
実施例6-ヒトVEGF165に対するAvastin、E06および親和性最適化E06変異体の結合におけるKDの測定
平衡結合定数(KD)測定を、KinExA 3000および3200機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)で実施した。ヒトVEGF165(huVEGF)タンパク質を、コーティング緩衝液(50mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH9)中、2ug/mL、3ug/mL、および30ug/mLの濃度で、UltraLink(登録商標)Biosupportビーズ(PIERCE,Rockford,IL)上にコーティングした。次に、コーティングされたビーズを未反応のhuVEGFタンパク質溶液から分離し(スピン)、室温、BSAを10mg/mLで含有する)1Mトリス(pH8)で約15分間ブロッキングした。この後、ブロッキング溶液を除去するため、ビーズスラリーを回転させ、次にブロッキングステップを、新しいブロッキング緩衝液を用いて約2時間反復し、使用まで4℃で貯蔵した。使用前、huVEGFでコーティングされたビーズをビーズバイアルに移し、約27mLの機器緩衝液(10mMヘペス+300mM NaCl+5mM CaCl2+0.05%P20+0.02%NaN3,pH8)に再懸濁し、KinExA機器にかけた。KD測定のため、抗体の個別の溶液を、BSA(mg/mL)を含有する機器緩衝液中、100pMおよび2.5nMの濃度で調製し、2つの別々の一連の13チューブに分注した。mAbのこれらの濃度は、受容体およびKDの双方が制御される条件下で各KDの測定ができるように選択し、それにより試薬の活性および親和性各々のより厳密な推定につながった。その比較的弱いKDのおかげで、mAb EO6-wtにおける3番目の濃度シリーズ(50nM)もまた調製し、完全に受容体が制御される測定における要件を満たした。次に、huVEGタンパク質の2倍連続希釈物を各mAbシリーズにおけるチューブの9つを通じて、その後2つのさらなる10倍希釈物を滴定し、1つのチューブをmAbのみの「ゼロ」対照として残した。そのように行うことで、これにより、huVEGFタンパク質の488fM~25nM(100pMのmAb実験)、3.91pM~200nM(2.5nMのmAb実験)、および9.77pM~500nM(50nMのmAb実験)を範囲とする一連の濃度が得られた。ソフトウェアベンダー(Sapidyne Instruments,Boise,Idaho)を通じて利用可能な理論曲線のシミュレーションに基づき、混合物を室温で1~4日インキュベートし、結合を平衡に到達できた。この期間の終了時、各測定セットにおける適切な稼動条件を決定するため、シグナル試験の実験を行った。BSAを1mg/mLで含有する機器緩衝液中、0.75μg/mL、1.0μg/mLまたは2μg/mLで用いる種特異的な二次抗体試薬(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-DyLight649、パート番号109-495-088、Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、遊離抗体の検出が可能になった。次に、平衡KDを得るため、各mAb/huVEGF相互作用において得られたデータを、該ベンダーのソフトウェアを用いて1サイト結合モデルに同時にフィッティングした。親和性最適化クローンのKDをKinExAを用いて測定した結果を表2にまとめた。
【0108】
実施例7-親和性最適化変異体のマウスVEGF164への結合についてのアッセイ
マウスVEGF164以外でVEGF165のELISAについて前述したように、マウスVEGF164への結合を確認するため、親和性最適化変異体をスクリーニングした。GraphPad Prism、バージョン5.01(San Diego,CA)における非線形回帰分析(ログ用量反応、4パラメータフィット曲線)を用いて、EC50値を判定した。代表的データを
図6に示す。すべての親和性最適化変異体が、親E06抗体と同様、マウスVEGF164に対する強力な結合を示した。
【0109】
実施例8-親和性最適化変異体のVEGF121への結合についてのアッセイ
VEGF165のELISAについて前述したように、ELISAにおけるヒトVEGF121への結合低下を確認するため、親和性最適化変異体をスクリーニングした。GraphPad Prism、バージョン5.01(San Diego,CA)における非線形回帰分析(ログ用量反応、4パラメータフィット曲線)を用いて、EC50値を判定した。代表的データを
図7に示す。VEGF121結合は、J05、H1R、およびH1DRについて、VEGF121への強力な結合(0.0063nMのEC50)を有するVEGF陽性対照抗体と比べて低下した。
【0110】
実施例9-親和性最適化変異体のVEGF189への結合についてのアッセイ
親和性最適化変異体のVEGF189への結合についてスクリーニングは、ELISAフォーマットである。96ウェルハーフウェルのマキシソーププレートを、Ca++またはMg++の不在下、PBSで希釈した2μg/mLのヒトVEGF189(R&D Systems)25μlでコーティングし、一晩冷蔵する。プレートをデカントし、次に180μlの3%BSAを含有するブロッキング緩衝液(Sigma、カタログ番号A-3059)および1倍PBS中0.1%ツイーン20で、37℃で1.5時間ブロッキングする。プレートを、0.1%ツイーン20を含有する1倍PBSで3回洗浄する。ブロッキング緩衝液中、50μlの6.7nMおよび連続希釈物の親和性最適化変異体、陽性対照、および陰性対照を二通りに添加し、37℃で1時間インキュベートする。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次に50μlの1:5000のヤギ抗ヒトHRP IgG H+L(Jackson Immunoresearch)を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートする。プレートを50μlのTMB溶液(KPL)を各ウェルに添加することにより展開し、次に反応を50μlの1Mリン酸で停止させる。マイクロプレートリーダーを用いて、プレートを450nmで読み取る。親和性最適化変異体は、VEGF189への結合における低下を示す。
【0111】
実施例10-親和性最適化変異体の効力を比較するための機能細胞に基づくアッセイ
親和性最適化変異体の効力を確認するため、ヒトおよびマウスpVEGFR2細胞に基づくアッセイを前述のように実施した。GraphPad Prism、バージョン5.01(San Diego,CA)における非線形回帰分析(ログ用量反応、4パラメータフィット曲線)を用いて、EC50値を判定した。GraphPad Prism、バージョン5.01(San Diego,CA)における非線形回帰分析(ログ用量反応、4パラメータフィット曲線)を用いて、EC50値を判定した。代表的データを
図8Aおよび8Bに示す。クローンJ05、H1R、およびH1DRが、ヒトpVEGFR2アッセイにおいて最大で20倍の改善を示した(EC50範囲が2.6~10.15nM)対E06親対照(EC50=52.25nM)(
図8A)一方で、マウスpVEGFR2アッセイにおける改善は、親抗体と比べて最大で2倍であった(EC50範囲が2.38~3.57nM対5.34nM(
図8B))。
【0112】
実施例11-インビボ活性OF親和性最適化E06変異体.
親和性最適化変異体のインビボ活性についての試験を網膜脈管形成モデル、ならびに786-0腎細胞がんおよびBxPC3膵がんモデルにて実施する。これらのモデルに加えて、血小板減少症モデルにおける評価を実施する。
【0113】
網膜脈管形成モデルにおいては、CD1マウスに対し、出生時、1、3、および5日目に腹腔内に投与した。8日目、マウスに対し、麻酔し、フルオレセイン標識デキストランを注入した。眼を取り除き、フラットマウントの調製前に10%ホルマリンで固定した。フラットマウントを蛍光顕微鏡により試験した。新生児網膜血管新生は、2つのプロセス、すなわち視神経から網膜の縁への血管遊走および分岐からなる。未治療群と比べて、H1RKの存在下での分岐における低下が認められる。代表的データを
図9に示す。H1RKは、軽鎖が107位(107での生殖系列が改変された位置)にリジンの代わりにトレオニンを有する点でH1Rと異なる。
【0114】
786-0腎細胞がんモデルにおいては、786-0断片を右側腹部に皮下移植する。腫瘍体積が約200mm3に達してから、マウスに治療を施す。マウスを週に2回、全部で6回用量にわたり治療する。親和性最適化変異体は、腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減において有効性を示す。腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減に加えて、親和性最適化変異体はまた、腫瘍脈管構造を減少させる。つまり、マウスに対し、血液凝固を防止するため、安楽死の15分前にヘパリンで前処置する。0.1mMナトリウムニトロプルシドの溶液を、約6mL/分の速度で灌流する。Microfil MV-122を、ラテックス8mL、希釈剤10mLおよび治療剤900uLを混合することにより調製する。混合物が定着後(1分)、17mLの総体積が投与されるまで、それを約2mL/分の速度で灌流する。60~90分後、腫瘍を切断し、10%NBF中に24時間浸漬する。次に、試料を各々、24時間で、25%ETOH/PBS、50%ETOH/PBS、75%ETOH/PBS、95%ETOH、そして次に100%ETOHに移行させる。最終のインキュベーション後、光学顕微鏡によるイメージング前に脱水した腫瘍試料を清澄化するため、試料をサリチル酸メチルに浸漬する。
【0115】
BxPC3膵がんモデルにおいては、雌の重症複合免疫不全マウスの右側腹部に皮下移植する。腫瘍体積が約200mm3に達してから、マウスに治療を施す。マウスに週に2回、全部で6回用量にわたり治療する。親和性最適化変異体は、腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減において有効性を示す。腫瘍増殖の低下、腫瘍体積の減少、または腫瘍増殖および腫瘍体積の低減に加えて、親和性最適化変異体はまた、腫瘍脈管構造を減少させる。
【0116】
血小板減少症モデルにおいては、Meyerら、2009年(J Thromb Haemost 7:171-81,2009)から採用される方法を用いる。つまり、8~16週齢のFCγ受容体2Aトランスジェニックマウスに対し、予備混合したVEGF165、0.6単位のヘパリン、および親和性最適化変異体を側方尾静脈に注射する。次に、マウスを窮迫の行動徴候について観察し、(-)コーナー間を常に停止および移動、正常な呼吸、(+)嗜眠の徴候、より長い持続時間での停止および移動、浅い呼吸、(++)非常に嗜眠的、移動の停止、ボックスの概ね片側に滞在、深い呼吸、(+++)重度の血栓事象-攣縮およびトワリング(twirling)、(++++)死亡、としてスコア化する。親和性最適化変異体は、抗VEGF対照と比べて血小板減少症における低下を示す。
【0117】
参照による援用
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書中に引用されるすべての参考文献、およびそれらに引用される参考文献は、あらゆる目的でそれらの全体が参照により本明細書中に援用されることがまだなされていないが、ここでなされる。
【0118】
均等物
前述の明細書文書は、当業者が実施形態を実行することを可能にするのに十分であると考えられている。しかし、上文がテキストでいかに詳細に述べられていても、実施形態が多くの方法で実行されてもよく、特許請求の範囲がその任意の均等物を含むことは理解されるべきである。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む抗体であって、ここでHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号79~84を含む、抗体。
(2)配列番号73および77を各々含む重鎖および軽鎖を含む、(1)に記載の抗体。(3)前記重鎖アミノ酸配列が配列番号71を含み、かつ前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号75を含む、(1)に記載の抗体。
(4)モノクローナル抗体である、(1)に記載の抗体。
(5)(1)に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸配列。
(6)(5)に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
(7)(6)に記載のベクターを含む細胞。
(8)(1)に記載の抗体を作製する方法であって、(6)に記載のベクターを含む細胞を培養するステップを含む、方法。
(9)血管新生を低減する方法であって、(1)に記載の抗体を対象に提供するステップを含む、方法。
【配列表】