IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エービービー シュヴァイツ エージーの特許一覧

特許7277549送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置
<>
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図1
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図2
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図3
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図4
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図5
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図6
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図6A
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図7
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図8
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図9
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図10
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図11
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図12
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図13
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図14
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図15
  • 特許-送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】送電グリッド用ハイブリッドスイッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20230511BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230511BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01H33/59 D
H02J1/00 301D
H02J1/00 304H
H02J1/00 309Q
H02H3/087
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021191292
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2022094931
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20214048.9
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521515481
【氏名又は名称】エービービー シュヴァイツ エージー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, CH-5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン ストラッセル
(72)【発明者】
【氏名】アントネッロ アントニアッツィ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス アッブラナルプ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー デラショー
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195565(JP,A)
【文献】特開2016-181383(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087558(WO,A1)
【文献】特開2016-162713(JP,A)
【文献】特開2017-130391(JP,A)
【文献】中国実用新案第210927083(CN,U)
【文献】国際公開第2020/061547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54 - 9/56
33/28 - 33/59
H02J 1/00 - 1/16
H02H 1/00 - 3/07
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電グリッドのためのスイッチング装置であって、
前記スイッチング装置は、対応するグリッド部分と電気的に接続するための第1電気端子および第2電気端子と、電気機械式の複数のスイッチングデバイスを含む第1電気ブランチと、ソリッドステートタイプの1つ以上のスイッチングデバイスを含む第2電気ブランチとを備え、
電気機械式の各スイッチングデバイスは、電流を導通するために機械的に結合することができ電流を遮断するために機械的に切り離すことができる電気接点を有し、
ソリッドステートタイプの各スイッチングデバイスは、半導体材料に基づく1つ以上のスイッチングコンポーネントを含み、かつ、前記スイッチングデバイスが電流を流すオン状態と、前記スイッチングデバイスが電流を遮断するオフ状態との間で切り替わるように設けられ、
第2電気ブランチは、第1電気端子と第2電気端子との間で第1電気ブランチと並列に電気的に接続され、
第1電気ブランチは、電気機械式の第1スイッチングデバイスと、第1スイッチングデバイスと電気的に直列に接続された電気機械式の第2スイッチングデバイスとを備え、
電気機械式の第1スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスが電流を流す閉状態と、第1スイッチングデバイスが電流を遮断する開状態とを切り替えることができ、
第1スイッチングデバイスの閉状態から開状態への移行は、前記スイッチング装置に沿って流れる電流によって発生する電気力学的な力を引き出すことにより起こり第1スイッチングデバイスは外部からの制御信号や外部からの電力供給を受けることなく、閉状態から開状態に切り替えることができる自動式スイッチングデバイスであり、
前記外部からの制御信号は第1スイッチングデバイスの外部からの制御信号であり、前記外部からの電力供給は第1スイッチングデバイスの外部からの電力供給であり、
第1スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って流れる電流が対応する所定のしきい値を超えたとき、または前記スイッチング装置に沿って流れる電流の変化率が対応する所定のしきい値を超えたとき、またはこれら2つの条件の組み合わせにより、閉状態から開状態へと切り替わり、
第2スイッチングデバイスは、第2スイッチングデバイスが電流を流す閉状態と、第2スイッチングデバイスが電流を遮断する開状態との間で切り替え可能であり、
第2スイッチングデバイスは、対応する入力制御信号を受信すると、閉状態と開状態との間で切り替えられることを特徴とするスイッチング装置。
【請求項2】
第1スイッチングデバイスは、第1アクチュエータを含み、
第1アクチュエータは、前記スイッチング装置に沿った電流の流れによって発生する電気力学的な力を利用して第1スイッチングデバイスの電気接点を作動させ、第1スイッチングデバイスを閉状態から開状態に切り替えることができるように設けられた請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項3】
第1アクチュエータは、第1スイッチングデバイスの電気接点に動作可能に繋がったトムソンコイル作動装置を含む請求項2に記載のスイッチング装置。
【請求項4】
第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる電流を遮断するように設けられた電流遮断回路を備え、
前記電流遮断回路は、ソリッドステートタイプの第3スイッチングデバイスと、第3スイッチングデバイスに電気的に並列に接続された第1電子回路とを含む請求項1~3のいずれか1つに記載のスイッチング装置。
【請求項5】
第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる電流を制限するように設けられた電流制限回路を備え、
前記電流制限回路は、前記電流遮断回路と電気的に直列に接続され、かつ、ソリッドステートタイプの第4スイッチングデバイスと、第4スイッチングデバイスと電気的に並列に接続された第2電子回路とを含む請求項4に記載のスイッチング装置。
【請求項6】
第3スイッチングデバイスは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向電流の制御を可能にするために、逆並列の構成または逆直列の構成に従って配置された、半導体材料に基づく一対のスイッチングコンポーネントを備える請求項4又は5に記載のスイッチング装置。
【請求項7】
第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、前記電流遮断回路に動作的に関連する第1ダイオードブリッジを備える請求項4又は5に記載のスイッチング装置。
【請求項8】
第4スイッチングデバイスが、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、逆並列の構成または逆直列の構成に従って配置された、半導体材料に基づく一対のスイッチングコンポーネントを備える請求項5に記載のスイッチング装置。
【請求項9】
第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、前記電流制限回路に動作的に関連する第2ダイオードブリッジを備える請求項5に記載のスイッチング装置。
【請求項10】
第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、前記電流制限回路および前記電流遮断回路に動作的に関連する第3ダイオードブリッジ回路を備える請求項5に記載のスイッチング装置。
【請求項11】
第1スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って短絡電流が流れると、閉状態から開状態に切り替わるように設けられている請求項1~10のいずれか1つに記載のスイッチング装置。
【請求項12】
第1スイッチングデバイスは、過負荷電流または通常電流が前記スイッチング装置に沿って流れる場合に、閉状態から開状態に切り替わらないように設けられている請求項1~11のいずれか1つに記載のスイッチング装置。
【請求項13】
第3スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスの開ける操作により第1電気ブランチから第2電気ブランチに短絡電流が切り替えられた瞬間から時間間隔が経過した後に、オン状態からオフ状態に切り替えるように指令される請求項4又は5に記載のスイッチング装置。
【請求項14】
第3スイッチングデバイスは、第2スイッチングデバイスの開ける操作により、第1電気ブランチから第2電気ブランチに過負荷電流または通常電流が切り替えられた瞬間から時間間隔が経過した後に、オン状態からオフ状態に切り替えるように設けられている請求項4又は5に記載のスイッチング装置。
【請求項15】
第4スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスの開ける操作または第2スイッチングデバイスの開ける操作により第1電気ブランチから第2電気ブランチに電流が切り替えられた後、オン状態からオフ状態に切り替わるように指令される請求項5に記載のスイッチング装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載のスイッチング装置を少なくとも備える送電グリッド。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1つに記載のスイッチング装置と、前記スイッチング装置に電気的に直列に接続された断路器とを備えるスイッチンググループ。
【請求項18】
送電グリッドの保護方法であって、
前記送電グリッドは、前記送電グリッドの異なる複数のグリッド部分を電気的に接続または電気的に切り離すための複数のスイッチンググループを含み、
各スイッチンググループは、双方向の電流を制御可能な請求項5に記載のスイッチング装置と、前記スイッチング装置と電気的に直列に接続された断路器とを備え、
前記スイッチング装置は、前記スイッチング装置が電流を流す閉状態と、前記スイッチング装置が電流を遮断する開状態と、前記スイッチング装置が第1電気ブランチから第2電気ブランチに切り替えられた電流を制限する電流制限モードとを切り替え可能であり、
前記断路器は、前記断路器が電流を流す閉状態と、前記断路器が電流を遮断する開状態とを切り替え可能であり、
各スイッチンググループは、前記スイッチング装置が閉状態であり前記断路器が閉状態である閉状態と、前記スイッチング装置が開状態であり前記断路器が開状態である開状態と、前記スイッチング装置が電流制限モードであり前記断路器が閉状態である電流制限モードとを切り替え可能であり、
前記送電グリッドの保護方法は、
前記送電グリッドに電気故障が発生した場合、前記スイッチンググループを電流制限モードに切り替えるステップと、
前記電気故障に最も近いスイッチンググループを開状態に切り替え、前記送電グリッドの残りのスイッチンググループを電流制限モードに維持するステップと、
前記電気故障に最も近いスイッチンググループが開状態であるときに、前記電気故障が予め定められた期間内に電気的に絶縁される場合には、前記電気故障に最も近いスイッチンググループを開状態に維持し、前記送電グリッドの残りのスイッチンググループを閉状態に戻し、前記電気故障に最も近いスイッチンググループが開状態にあるときに、前記電気故障が前記所定の期間内に電気的に絶縁されない場合には、前記送電グリッドのすべてのスイッチンググループを開状態に切り替えるステップとを含む保護方法。
【請求項19】
前記送電グリッドは、複数のバッテリーユニットを含む電池エネルギー貯蔵システムと、前記バッテリーユニットを電力変換器に電気的に接続するためのDCバスと、前記バッテリーユニットを前記DCバスに電気的に接続または電気的に切断するための複数の前記スイッチンググループとを備える請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電グリッド分野に関連している。より詳細には、本発明は、送電グリッド、例えばDC送電グリッド、において回路保護機能を提供するためのハイブリッドスイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC送電グリッドは、太陽光発電システム、海軍システム、バッテリーを用いた蓄電システム(BESS)など、さまざまな用途に広く採用されている。知られているように、DC送電線に障害事象(過負荷や短絡など)が発生すると、送電線に電気的に接続されている多くの電気部品が、大変な電気故障を引き起こす可能性がある。明らかに、このような事態は致命的な結果を招く可能性があり、特に、発電システム(太陽光発電パネルなど)や蓄電システム(バッテリーなど)が送電グリッド内に設置されている場合、致命的な結果を招く可能性がある。このような事態を防ぐために、DC送電グリッドでは、通常、故障発生時に送電グリッドの一部を選択的に切り離すことができるように構成された複数のスイッチング装置が設置されている。
【0003】
現在の技術水準のいくつかのスイッチング装置は、電気機械式のサーキットブレーカーを含む。一般的に、これらのデバイスは、切断されたグリッド部分間の直流的絶縁を保証するという利点がある。加えて、これらのデバイスは、産業レベルにおいて実現するために比較的安価である。しかし、これらのデバイスの動作原理から、これらのデバイスは一般的に満足のいく遮断定格を提供しない。例えば、比較的高い電圧(例えば、DC1.5kVまで又はそれ以上)では、開いている時間が非常に長くなる。通常、分離した状態の機械的な接点間で発生する電気アークは、結果的に比較的長い時間続くことがある。当然、このことは、信頼性やメンテナンスコストの面で関連する問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
現在の技術水準の他のスイッチング装置は、半導体材料をベースにしたスイッチングコンポーネントを含んでいるソリッドステートタイプのスイッチングデバイスを含む。ソリッドステートスイッチングデバイスの主な利点は、アークレスのスイッチング動作により、無限の電気的耐久性を持つ可能性があることである。さらに、これらのデバイスは、電気機械式のスイッチングデバイスと比較して、動作が速く、中断時間が著しく短い。しかし、一般的には、閉状態のときに電流による発熱を除去するためにこれらのデバイスをしっかりと冷却する必要がある。
【0005】
このような問題を解決するために、電気機械式スイッチングデバイスとソリッドステートスイッチングデバイスの両方を用いたハイブリッドスイッチング装置が開発されている。これらの保護デバイスの例は、特許文献1および特許文献2に開示されている。
一般的に、特に短絡の場合、このタイプの公知のスイッチング装置は、用いていた電気機械式スイッチングデバイスからソリッドステートデバイスに電流を切り替えるのに比較的長い時間を必要とするために、ソリッドステートスイッチングデバイスだけを用いた装置のように速く介入することはできない。さらに、ハイブリッドスイッチング装置は、多くの場合、大きくなり、産業レベルで製造するには比較的高価になり、特に、比較的長い時間比較的大きい電流に耐えられるように設計された、用いているソリッドステートスイッチングデバイスは大きく比較的高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO 2017/186262 A1
【文献】WO 2011/057675 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、送電グリッド、例えばDC送電グリッド、のためのハイブリッドスイッチング装置を提供することであり、この装置により上述の課題を克服または軽減することができる。より具体的には、本発明の目的は、電気故障において、特に短絡電流の存在下において、性能の高い遮断定格を保証するハイブリッドスイッチング装置を提供することである。
さらなる目的として、本発明は、現在の技術水準の対応するソリューションに対して、より安価で小型のソリッドステートスイッチングデバイスを用いることができるハイブリッドスイッチング装置を提供することを目的とする。
また、本発明のもう一つの目的は、産業レベルにおいて現在の技術水準のソリューションに対して競争力のあるコストで容易に製造することができるハイブリッドスイッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的を達成するために、本発明は、以下の請求項1および関連する従属請求項に記載のスイッチング装置を提供する。
本発明に係るハイブリッドスイッチング装置は、対応するグリッド部分と電気的に接続するための第1電気端子および第2電気端子と、複数の電気機械式のスイッチングデバイスを含む第1電気ブランチと、ソリッドステートタイプの1つ以上のスイッチングデバイスを含む第2電気ブランチとを備える。電気機械式の各スイッチングデバイスは、電流を導通するために機械的に結合し電流を遮断するために機械的に切り離される電気接点を有する。ソリッドステートタイプの各スイッチングデバイスは、半導体材料に基づく1つ以上のスイッチングコンポーネントを含む。各ソリッドステートスイッチングデバイスは、前記スイッチングデバイスが電流を流すオン状態と、前記スイッチングデバイスが電流を遮断するオフ状態との間で切り替わるように設けられる。上記の第2電気ブランチは、第1電気端子と第2電気端子との間で第1電気ブランチと電気的に並列に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記スイッチング装置の第1電気ブランチは、電気機械式の第1スイッチングデバイスを備えており、第1スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスが電流を流す閉状態と、第1スイッチングデバイスが電流を遮断する開状態とを可逆的に切り替えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図2】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図3】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図4】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図5】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図6】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図6A】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図7】本発明によるスイッチング装置の一実施形態を模式的に示す。
図8】本発明によるスイッチング装置を含むDC送電グリッドを模式的に示す。
図9】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図10】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図11】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図12】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図13】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図14】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図15】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
図16】本発明による多数のスイッチング装置を含むDC送電グリッドの電池エネルギー貯蔵システムの動作を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って流れる電流によって駆動され、外部からの制御信号や外部からの電力供給を受けることなく、前記閉状態から前記開状態に高速で切り替えることができる自動式スイッチングデバイスである。第1スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って流れる電流が対応する所定のしきい値を超えたとき、または、前記スイッチング装置に沿って流れる電流の変化率が対応する所定のしきい値を超えたとき、または、これらの条件の組み合わせにより、前記閉状態から前記開状態に切り替わる。
【0012】
本発明によれば、スイッチング装置の第1電気ブランチは、電気機械式の第2スイッチングデバイスを備え、この第2スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスと電気的に直列に接続され、第2スイッチングデバイスが電流を流す閉状態と、第2スイッチングデバイスが電流を遮断する開状態との間で切り替わるように設けられている。第2スイッチングデバイスは、対応する入力制御信号を受信すると、前記閉状態と前記開状態との間を可逆的に切り替わることができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、第1スイッチングデバイスは第1アクチュエータを含み、第1アクチュエータは、前記スイッチング装置に沿った電流の流れによって発生する電気力学的な力を利用して第1スイッチングデバイスの電気接点を作動させることができ、それによって第1スイッチングデバイスを前記閉状態から前記開状態に切り替えることができる。好ましくは、第1アクチュエータは、第1スイッチングデバイスの電気接点に動作可能に接続されたトムソンコイル作動装置を含む。
【0014】
本発明の一態様によれば、第2スイッチングデバイスは、対応する入力制御信号を受信したときに第2スイッチングデバイスの電気接点を作動させることができる電気機械式の第2アクチュエータを含む。
【0015】
本発明の一態様によれば、スイッチング装置の第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる電流を遮断するように設けられた電流遮断回路を含む。前記遮断回路は、半導体材料に基づく1つまたは複数のスイッチングコンポーネントを含むソリッドステートタイプの第3スイッチングデバイスと、第3スイッチングデバイスに電気的に並列に接続された第1電子回路とを含む。第3スイッチングデバイスは、一方向型または双方向型のいずれかになるように配置することができ、すなわち、DCネットワークにおいて一方向に流れる電流のみを伝導および遮断することができ、または、DCネットワークまたはACネットワークにおいて任意の方向の電流を伝導および遮断することができる。
【0016】
変形実施形態によれば、第3スイッチングデバイスは、逆並列の構成または逆直列の構成に従って配置された、半導体材料に基づく一対のスイッチングコンポーネントを含む。動作時には、前記半導体スイッチングコンポーネントは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流を制御することを可能にするために、電流を交互に流す。
【0017】
別の変形実施形態によれば、スイッチング装置の第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、前記電流遮断回路に動作可能に関連付けられた第1ダイオードブリッジを備える。
【0018】
本発明の一態様によれば、スイッチング装置の第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる電流を制限するように設けられた電流制限回路を備える。前記電流制限回路は、第2電気ブランチの電流遮断回路と電気的に直列に接続されている。前記電流制限回路は、ソリッドステートタイプの第4スイッチングデバイスと、第4スイッチングデバイスに電気的に並列に接続された第2電子回路とを備える。また、第4スイッチングデバイスは、一方向型または双方向型のいずれかになるように配置することができる。
【0019】
変形実施形態によれば、第4スイッチングデバイスは、逆並列の構成または逆直列の構成に従って配置された、半導体材料に基づく一対のスイッチングコンポーネントを含む。動作時には、前記半導体スイッチングコンポーネントが交互に電流を流し、このような第2電子回路を迂回する双方向の電流の制御を可能にする。
【0020】
別の変形実施形態によれば、スイッチング装置の第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、前記電流制限回路に動作可能に関連付けられた第2ダイオードブリッジを備える。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、スイッチング装置の第2電気ブランチは、第2電気ブランチに沿って流れる双方向の電流の制御を可能にするために、第2電気ブランチの他のコンポーネント(例えば、前記電流遮断回路と、場合によっては前記電流制限回路との直列集合体)に電気的に接続された第3ダイオードブリッジ回路を備える。
前記スイッチング装置の動作において、第1スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って短絡電流が流れると、閉状態から開状態に切り替わる。前記スイッチング装置の動作において、前記スイッチング装置に過負荷電流または通常電流が流れても、第1スイッチングデバイスは閉状態から開状態に切り替わらない。
前記スイッチング装置の動作において、第2スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に沿って短絡電流が流れた場合に、閉状態から開状態に切り替えるように指令される。しかし、第2スイッチングデバイスは、前記スイッチング装置に過負荷電流または通常の電流が流れた場合にも、閉状態から開状態に切り替えるように指令されてもよい。
【0022】
前記スイッチング装置の動作において、第3スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスの開ける操作により第1電気ブランチから第2電気ブランチに短絡電流が切り替わった瞬間から第1の時間間隔が経過した後に、オン状態からオフ状態に切り替わるように指令される。前記スイッチング装置の動作において、第3スイッチングデバイスは、第2スイッチングデバイスの開ける操作により、第1電気ブランチから第2電気ブランチに過負荷電流または通常電流が切り替えられた瞬間から、第3の時間間隔が経過した後に、オン状態からオフ状態に切り替えるように指令される。このような第3の時間間隔は、第1の時間間隔と異なっていてもよいし、一致していてもよい。
前記スイッチング装置の動作において、第4スイッチングデバイスは、第1スイッチングデバイスの開ける操作または第2スイッチングデバイスの開ける操作により第1電気ブランチから第2電気ブランチに電流が切り替えられた後に、オン状態からオフ状態に切り替えるように指令される。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、以下の請求項18および関連する従属請求項による、送電グリッドの保護方法に関するものである。一般に、前記送電グリッドは、前記送電グリッドの異なるグリッド部分を電気的に接続する又は電気的に切り離すための複数のスイッチンググループを備える。好ましくは、前記送電グリッドは、複数のバッテリーユニットを含む電池エネルギー貯蔵システムと、前記バッテリーユニットを電力変換器に電気的に接続するためのDCバスと、前記バッテリーユニットを前記DCバスに電気的に接続または電気的に切断するための複数のスイッチンググループとを備える。
【0024】
各スイッチンググループは、第1遮断回路および前記電流制限回路を含み双方向の電流を制御可能な本発明のスイッチング装置と、前記スイッチング装置と直列に電気的に接続された断路器とを備える。前記スイッチング装置は、前記スイッチング装置が電流を流す閉状態と、前記スイッチング装置が電流を遮断する開状態と、第1電気ブランチから第2電気ブランチに切り替えられた電流を前記スイッチング装置が制限する電流制限モードとを切り替えることができる。前記断路器は、前記断路器が電流を流す閉状態と、前記断路器が電流を遮断する開状態とを切り替えことができる。各スイッチンググループは、前記スイッチング装置が閉状態で前記断路器が閉状態である閉状態と、前記スイッチング装置が開状態で前記断路器が開状態である開状態と、前記スイッチング装置が電流制限モードで前記断路器が閉状態である電流制限モードとを切り替えることができる。
【0025】
本発明の方法は、前記送電グリッドに電気故障が発生した場合、前記スイッチンググループを電流制限モードに切り替えるステップと、前記電気故障に最も近いスイッチンググループを開状態に切り替え、前記送電グリッドの残りのスイッチンググループを電流制限モードに維持するステップと、前記電気故障に最も近いスイッチンググループが開状態であるときに前記電気故障が所定の時間間隔内に電気的に絶縁された場合には前記電気故障に最も近いスイッチンググループを開状態に維持し前記送電グリッドの残りのスイッチンググループを閉状態に切り替え、前記電気故障に最も近いスイッチンググループが開状態にあるときに前記電気故障が所定の時間間隔内に電気的に絶縁されない場合には前記電力グリッドのすべてのスイッチンググループを開状態に切り替えるステップとを含む。
【0026】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明による接触器の好ましいが排他的ではない実施形態の説明から明らかになり、その非限定的な例が添付の図面に記載されている。
【0027】
前述の図面を参照すると、本発明は、送電グリッド用のハイブリッドスイッチング装置1に関する。
本発明のスイッチング装置は、特に低電圧DC送電グリッドでの使用に適しており、このスイッチング装置が、本発明の範囲をいかなる形でも限定する意図はなく、簡潔にするためだけに、特にこれらの用途に関連して以下に説明される。
本発明のスイッチング装置は、実際には、低電圧AC送電グリッドまたは中電圧AC送電グリッドまたは中電圧DC送電グリッドのような異なるタイプの電気システムでうまく使用することもできる。
本願において、「低電圧」(LV)という用語は、AC1kVよりも低い動作電圧およびDC1.5kVよりも低い動作電圧に関し、一方、「中電圧」(MV)という用語は、AC1kVよりも高く数十kV、例えばAC72kV、までの動作電圧及びDC1.5kVよりも高く数十kV、例えばDC100kV、までの動作電圧に関する。
【0028】
スイッチング装置1は、対応するグリッド部分(図示せず)、例えば、DCリンクバスおよび電気負荷、と電気的に接続するための第1電気端子11および第2電気端子12を備える。好ましくは、電気端子11、12のうちの1つにおいて、断路器150(または他の等価なスイッチングデバイス)がスイッチング装置1に動作可能に関連付けられ、スイッチンググループ110を形成する。
【0029】
断路器150は、スイッチング装置を送電グリッドの別の回路部分と電気的に接続または電気的に切断するために配置されている。従って、断路器150は、必要に応じて、異なる複数の回路部分(そのうちの1つにスイッチング装置1が含まれる)の間でガルバニック絶縁を行うことができる。この目的のために、断路器150は、断路器が電流を伝導する閉状態と、断路器が電流を遮断する開状態との間で可逆的に切り替わるように設けられている。断路器150は、スイッチング装置の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。一般に、断路器150は、既知のタイプであってよい。したがって、その機能性は、本発明に関係する側面に関連してのみ、以下で説明される。
【0030】
スイッチング装置1は、電気端子11、12の間に電気的に並列接続された第1電気ブランチ3と第2電気ブランチ4とを備える。
第1電気ブランチ3は、電気的に直列に接続された電気機械式の一対のスイッチングデバイス31、32を備える。第1電気ブランチ3の各電気機械式のスイッチングデバイス31、32は、機械的に結合し電流を導通させることができる又は機械的に切り離され電流を遮断することができる電気接点を有する。より詳細には、第1電気ブランチ3の各スイッチングデバイス31、32は、1つ以上の固定接点と、1つ以上の可動接点とを有し、この可動接点は、前記固定接点に結合し電流を導通させることができる又は前記固定接点から切り離され電流を遮断することができる。第1電気ブランチ3の各スイッチングデバイス31、32は、その電気接点が相互に結合していて電流を導通させているときには閉状態にあり、一方、その電気接点が互いに切り離されており電流を遮断しているときには開状態にある。
【0031】
第1電気ブランチ3のスイッチングデバイス31は、開ける操作の実行に関しては自動式である。この場合、閉状態から開状態への移行(開ける操作)は、スイッチング装置に沿った(例えば、第1電気ブランチ3に沿ってまたは端子11、12において)電流の流れによって発生する電気力学的な力を引き出すことにより起こり、可動接点を動かす又は前記可動接点の動作を始動させる。したがって、このタイプのスイッチングデバイスの開ける操作は、入力制御信号や外部電力供給を受け取ることなく、非常に短い開ける時間で行われる(高速スイッチング)(非制御式の開ける操作)。
【0032】
第1電気ブランチ3のもう一方のスイッチングデバイス32は、代わりに、完全に制御可能なタイプである。この場合、閉状態から開状態への移行(開ける操作)、または開状態から閉状態への移行(閉める操作)は、適切な入力制御信号の受信に応じて起こり、この入力制御信号は、可動接点を動かす又は前記可動接点の動作を始動させる駆動機構の起動を引き起こす。
【0033】
一般に、第1電気ブランチ3のスイッチングデバイスは、既知のタイプのソリューションに従って実現することができる。従って、これらのスイッチングデバイスについては、本発明に関係する側面に関連してのみ、以下で説明する。
【0034】
本発明によれば、第1電気ブランチ3は、電気機械式の第1スイッチングデバイス31を備えており、この第1スイッチングデバイスは、当該第1スイッチングデバイスが電流を流す閉状態と、当該第1スイッチングデバイスが電流を遮断する開状態との間で高速にスイッチングすることができる。第1スイッチングデバイス31は、スイッチング装置に沿って流れる電流によって駆動されると、閉状態から開状態に高速で切り替わることができる自動式のスイッチングデバイスである。従って、第1スイッチングデバイス31は、開ける操作を指令する外部制御信号を受信することなく、又は、外部電力供給を受けることなく、開ける操作を実行することができる。明確にするために、本発明の範囲内では、電気接点の開いている時間が1msよりも短く、より好ましくは500μsよりも短い場合、スイッチングデバイスは「高速スイッチング」であるとみなされる。
【0035】
スイッチングデバイス31は、スイッチング装置に沿って流れる電流が対応するしきい値(例えば短絡値、典型的には公称値の10~20倍)を超えたとき、または電流の変化率が対応するしきい値(例えば10kA/msより大きい)を超えたとき、またはこれら2つの条件の組み合わせが発生したときに、閉状態から開状態に高速で切り替わる(開ける操作)ように設けられている。好ましくは、第1スイッチングデバイス31は、短絡電流がスイッチング装置に沿って流れるときは常に、閉状態から開状態に(開ける操作)高速で切り替えるように設けられている。好ましくは、第1スイッチングデバイス31は、過負荷電流または通常の電流がスイッチング装置に沿って流れるときに、閉状態から開状態に(開ける操作)切り替わらないように設けられている。
【0036】
本願の目的において、「通常電流」とは、通常、公称値程度(例えば、公称値の1.1倍まで)又はそれ以下の動作値を有する電流であり、「過負荷電流」とは、通常、より高い動作値を有する電流であり、例えば、公称値の1.1倍から10倍までの動作値を有する電流であり、「短絡電流」とは、通常、さらに高い動作値を有する電流であり、例えば、公称値の10倍から公称値の数十倍までの動作値を有する電流である。
【0037】
好ましくは、スイッチングデバイス31は、開ける操作において、スイッチング装置に沿って電流が流れることによって発生する電気力学的な力を、電気接点を作動させるために利用することができる第1アクチュエータ(図示せず)を備えている。好ましくは、スイッチングデバイス31は、開ける操作において電気接点を作動させるように電気接点に動作可能に繋がった(例えば、適切な運動連鎖を介して)トムソンコイル作動装置(図示せず)を備える。トムソンコイル作動装置は、流れる電流が対応するしきい値を超えたとき、および/または、電流の変化率が対応するしきい値を超えたとき、特に流れる電流が短絡電流であるときに、第1スイッチングデバイス31の電気接点を切り離すのに十分な作動力を提供するように設けられている。一般に、トムソンコイル作動装置は、適切な運動連鎖を介して、(第1電気ブランチに沿って配置されている)第1スイッチングデバイス31の電気接点に動作可能に接続されている。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トムソンコイル作動装置は、スイッチング装置の第1端子11または第2端子12に電気的に直列に接続される。一例として、トムソンコイルは、第1端子11または第2端子12と、第1電気ブランチ3および第2電気ブランチ4の共通ノード(第1及び第2電気ブランチが互いに分けられる位置)との間に配置されてもよい。
本発明の他の実施形態によれば、トムソンコイル作動装置は、第1電気ブランチ3に沿って配置され、第1スイッチングデバイス31の電気接点と直列に電気的に接続される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1スイッチングデバイス31は、第1電気ブランチ3に沿って電流がもう流れない場合、または、何らかの理由で電流がより低い強度の値に戻った場合、開ける操作に続いて直ちに閉状態に戻るように設けられている。この目的のために、第1スイッチングデバイス31は、開ける操作の間に蓄積された弾性エネルギーを引き出すことにより電気接点を作動させる適切なバネ作動式構造(図示せず)を含むことができる。
【0040】
本発明の他の実施形態によれば、第1スイッチングデバイス31は、いったん開ける操作を実行すると、開状態を維持するように設けられている。この目的のために、第1スイッチングデバイス31は、電気接点を切り離して維持することができる適切なラッチ機構(図示せず)と、対応する入力制御信号を受信したときに電気接点を結合する作動機構(図示せず)とを含むことができる。
【0041】
本発明の追加の変形例(図示せず)によれば、電子回路(例えば、スナバ回路、スパークギャップ、放電管、金属酸化物バリスタ、または半導体部品を含む)が第1スイッチングデバイス31に電気的に並列に接続され、前記スイッチングデバイスを開ける操作中に第1スイッチングデバイス31を(例えば、電圧過渡を制限することによって)保護し、および/または、必要に応じて電気エネルギーを散逸させる。
【0042】
本発明によれば、第1電気ブランチ3は、電気機械式の第2スイッチングデバイス32を備え、この第2スイッチングデバイス32は、第1スイッチングデバイス31と直列に電気的に接続される。スイッチングデバイス32は、完全に制御可能であり、操作の実行を指令する対応する入力制御信号を受信すると、閉状態と開状態との間で可逆的に切り替わる。
【0043】
以下に説明されるように、スイッチングデバイス32の動作を制御するための制御信号は、制御ユニット90によってタイミングよく提供されてもよい、制御ユニット90はスイッチング装置の一部であってもよくなくてもよい。一般に、第2スイッチングデバイス32は、第1スイッチングデバイスよりもかなり長い開いている時間を有し、例えば数ms(例えば約5~20ms)である。
好ましくは、第2スイッチングデバイス32は、対応する入力制御信号を受けて第2スイッチングデバイスの電気接点を作動させる電気機械式の第2アクチュエータを含む。
好ましくは、第1スイッチングデバイス31が閉状態から開状態に切り替わるとすぐに、特に第1電気ブランチ3に沿って(例えば、公称値の10~20倍の値を有する)短絡電流が流れるときに、第2スイッチングデバイス32は閉状態から開状態に切り替わるように指令される。しかし、第1スイッチングデバイス31とは異なり、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流が上記の短絡値よりも低い値をとる場合であっても、第2スイッチングデバイス32は閉状態から開状態に切り替わる(開ける操作)ように指令されてもよい。
【0044】
好ましくは、(例えば、公称値の2~3倍の値を有する)過負荷電流が第1電気ブランチ3に沿って流れる場合に、第2スイッチングデバイス32は開ける操作を実行するように指令される。ハイブリッドスイッチング装置の開ける操作を実行する必要がある場合、例えばオペレータの要求があった場合、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流が通常の値(例えば、公称値程度またはそれ以下)をとる場合であっても、第2スイッチングデバイス32は閉状態から開状態に切り替えるように指令されてもよい。上述したように、第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32は、電気的に直列に接続されている。このようにして、これらのスイッチングデバイスは、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流を、その電流の性質に応じて適切な方法で制御することができる。
【0045】
例えば、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流が短絡電流である場合、第1スイッチングデバイス31は高速で介入して開ける操作を実行し、入力制御信号を受信する必要なく前記電流を遮断する。この場合、第2スイッチングデバイス32は、同様に開ける操作を実行するように指令される。しかし、その開ける操作は第1スイッチングデバイス31よりもゆっくりなので、第2スイッチングデバイス32は、第1スイッチングデバイス31よりも遅くそのような開ける操作を行う、典型的には、電流がすでに前記第2電気ブランチ4に切り替えられているときに、開ける操作を行う。
【0046】
第1電気ブランチ3に沿って流れる電流が通常の電流または過負荷電流である場合、第1スイッチングデバイス31は介入せず、第2スイッチングデバイス32は、入力された適切な制御信号を受信することにより、開ける操作を実行しそのような電流を遮断するように指令されてもよい。
【0047】
本発明によれば、第2電気ブランチ4は、ソリッドステートタイプのスイッチングデバイス41、42を1つ以上備えている。各スイッチングデバイス41、42は、半導体材料に基づく1つまたは複数のスイッチングコンポーネントを含む。一般に、前記半導体スイッチングコンポーネントは、例えば、パワーMOSFET、JFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(「IGBT」)、ゲートターンオフサイリスタ(「GTO」)、集積化ゲート転流サイリスタ(「IGCT」)などの従来型のものであってよい。
適切な入力制御信号を受信することに応答して、第2電気ブランチ4の各ソリッドステートスイッチングデバイス41、42は、電流を伝導するオン状態と、電流を遮断するオフ状態との間で可逆的に切り替えることができる。ソリッドステートスイッチングデバイスは、オン状態からオフ状態に切り替わるとオフになり、オフ状態からオン状態に切り替わるとオンになる。
【0048】
以下に説明されるように、スイッチングデバイス41、42の動作を制御するための制御信号は、制御ユニット90によってタイミングよく提供されてもよい、制御ユニット90はスイッチング装置の一部であってもよくなくてもよい。
【0049】
本発明の重要な態様によれば、第2電気ブランチ4は、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流を遮断するように設けられた電流遮断回路40Aを備える。遮断回路40Aは、ソリッドステートタイプの第3スイッチングデバイス41と、第1電子回路48とを含み、第1電子回路は、必要に応じて前記第3スイッチングデバイスを(例えば、電圧過渡から)保護し、エネルギーを散逸させるように設けられる。第1電子回路48は、第3スイッチングデバイス41に並列に電気的に接続されており、スナバ回路、スパークギャップ、放電管、金属酸化物バリスタ、または半導体部品を含んでいてもよい。
一般的に、第3スイッチングデバイス41は、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流の挙動に応じて動作し、また、第1電気ブランチ3のスイッチングデバイス31、32の挙動に応じて動作する。
以下の説明からより明らかになるように、このソリューションにより、過負荷電流または短絡電流が流れる動作状態を効率的に管理することができる。
【0050】
好ましくは、何らかの理由で第3スイッチングデバイス41がオフ状態にある場合、第3スイッチングデバイス41は、第1スイッチングデバイス31または第2スイッチングデバイス32が開ける操作を実行するとすぐに、またはその前に、オン状態に切り替えるように指令される。このようにして、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流を、第2電気ブランチ4に切り替えることができる。
【0051】
好ましくは、第1スイッチングデバイス31による開ける操作により、短絡電流(すなわち、所定の短絡しきい値よりも高い)が第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に完全に切り替えられた瞬間から第1の時間間隔が経過した後に第3スイッチングデバイス41がオフにされる。
好ましくは、再点弧の可能性を回避するために、第1スイッチングデバイス31の電気接点間のギャップの絶縁耐力を回復するために要求される最小時間(このような最小時間は、しばしば「ギャップクリア時間」と呼ばれる)に応じて上記の第1の時間間隔が計算される。
【0052】
好都合には、送電グリッドのスイッチング装置間の通信が可能な場合、それらのスイッチング装置の動作をよりよく協調させるために、第1の時間間隔を変更することができる。実際には、上記の第1の時間間隔は、第1スイッチングデバイス31の電気接点間の再点弧現象を防止するのに十分な長さであって、第3スイッチングデバイス41の過熱損傷を防止するのに十分な短さとなるように選択される。
【0053】
第2電気ブランチ4に短絡電流が流れ、その短絡を発生させている故障が上記第1の時間間隔を経過するまでに解消できない場合、第3スイッチングデバイス41をオフにする。短絡電流が第2電気ブランチ4へと完全に切り替えられた瞬間から一定の時間遅れて第3スイッチングデバイス41がオフにされるので、初期に短絡電流が存在していたとしても、条件によっては、第3スイッチングデバイス41はオンのままである場合もある。短絡電流が第2電気ブランチ4へと切り替えられ、そのような短絡を発生させる故障が、上記の第1の時間間隔が経過する前に何らかの方法で(例えば、外部のサーキットブレーカーの介入により)解消できる場合、第2電気ブランチ4に沿って初期に短絡電流が流れていたとしても、第3スイッチングデバイス41はオフにならずオン状態のままである。
【0054】
好ましくは(ただし、上で説明したソリューションの代替案である必要はない)、以下の条件のうち1つ以上が実現された場合、第3スイッチングデバイス41は、自己保護の目的でオフになるように指令されてもよい。
-電気ブランチ4に沿って流れる電流が、所定の閾値電流値を超える。
-第3スイッチングデバイス41の温度が所定の閾値温度値を超える。
-第3スイッチングデバイス41にかかる電圧が所定の閾値を超えている。
-第3スイッチングデバイス41で消費される電力が所定のしきい値を超える。
また、このソリューションはいくつかの顕著な利点をもたらす。例えば、第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32が開状態である状態で電気保護装置1が送電線に再接続され、既存の故障の存在により第2電気ブランチ4に沿って短絡電流が流れると、第2の時間間隔(実際には、上述の物理量を示す検出信号を適切に処理することにより故障の存在を検出するのに必要な時間)が経過するとすぐに第3スイッチングデバイス41がオフにされるので、過熱被害が防止される。
【0055】
好ましくは、第3スイッチングデバイス41は、過負荷電流(すなわち、所定の過負荷しきい値よりも高い)または通常電流(すなわち、公称値以下の値を有する)が、第2スイッチングデバイス32の開ける操作に伴って第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた瞬間から第3の時間間隔が経過した後にも、オフにするように指令される(この場合、第1スイッチングデバイス31は介入しない)。
好都合には、上記の第3の時間間隔は、その基準が明らかに第2スイッチングデバイス32を参照している場合でも、上記の第1の時間間隔と同様の基準に基づいて算出される。一般に、上記第3の時間間隔は、必要に応じて、上記第1の時間間隔とは異なってもよく、または同等であってもよい。
【0056】
本発明の別の重要な態様によれば、第2電気ブランチ4は、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流を制限するように設けられた電流制限回路40も備える。電流制限回路40は、上述の電流遮断回路40Aと直列に電気的に接続されている。電流制限回路40は、ソリッドステートタイプの第4スイッチングデバイス42と、第2電子回路49とを含み、第2電子回路49は、必要に応じて、電流を制限し、前記第4スイッチングデバイスを(例えば、電圧過渡から)保護し、電気エネルギーを散逸させるように設けられる。第2電子回路49は、第4スイッチングデバイス42に電気的に並列に接続されており、好ましくは、バリスタまたは抵抗デバイスまたはその両方を含む。
【0057】
一般に、第4スイッチングデバイス42は、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流の挙動に応じて動作する。例えば、第4スイッチングデバイス42は、スイッチオンされ第2電子回路49をバイパスして第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4への電流の切り替えを容易にしてもよい。
【0058】
別の例として、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流を制限しなければならない場合には、第4スイッチングデバイス42をオフにしてもよい。このようにして、第3スイッチングデバイス41を大きくする必要なく、第2電気ブランチ4に沿って故障電流を伝導させることができる。
好ましくは、それが何らかの理由でオン状態にある場合、第4スイッチングデバイス42は、第1スイッチングデバイス31または第2スイッチングデバイス32が開ける操作を実行するとすぐに、またはその前に、第3スイッチングデバイス41と同時にオン状態に切り替えるように指令される。このようにして、第1電気ブランチ3に沿って流れる電流を、第2電気ブランチ4へ切り替えることが可能になる。
【0059】
好ましくは、第4スイッチングデバイス42は、前記第1スイッチングデバイス31の開ける操作により第1電気ブランチ3から短絡電流(すなわち、所定の短絡しきい値よりも高い)が切り替えられた後にオフにされる。
好ましくは、(第1電気ブランチ3からの切り替えが完了した後において)第2電気ブランチ4に沿って短絡電流が流れ、そのような短絡を発生させる故障がどのようにしても解消されない場合、(第2電子回路49によりバイパスされている)第4スイッチングデバイス42をオフにして、第2電子回路49に沿って電流を強制的に流し、当該電流を制限する。
【0060】
好ましくは、第2電気ブランチ4に沿って短絡電流が流れ、そのような短絡を発生させる故障が何らかの方法で解消されると(例えば、外部のサーキットブレーカーの介入により)、第4スイッチングデバイス42は、(上で説明したように)初期には電流制限機能を提供するためにオフにされるが、故障が解消されて電流が低い値に戻ると再びオンにされる。第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32が閉状態に戻ると、電流は元の第1電気ブランチ3へと切り替わる。
【0061】
好都合には、第2スイッチングデバイス32の開ける操作により過負荷電流が第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた後にも、第4スイッチングデバイス42はオフにするように指令されることがある(この場合、第1スイッチングデバイス31は介入しない)。
好都合には、何らかの理由で第2スイッチングデバイス32の開ける操作が実行され、正常な電流(すなわち、公称値以下の値を有する)が第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた後にも、第4スイッチングデバイス42はオフにするように指令されてもよい。
【0062】
図1は、本発明のスイッチング装置1の可能な実施形態を示している。この場合、第1電気ブランチ3は、電気的に直列に接続された第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32で構成され、第2電気ブランチ3は、電流遮断回路40Aのみで構成されている。
本発明のこの実施形態によれば、スイッチング装置1は、通常、端子11と端子12の間に電流が流れることを許可する(閉状態)。しかし、必要に応じて、当該スイッチング装置は、送電線に沿って流れる幅広い電流について電気的に絶縁(開状態)することができる。以下に、図1の実施形態に係るスイッチング装置の動作を詳細に説明する。
【0063】
閉状態(通常動作)
通常の動作(すなわち、公称値程度またはそれ以下の電流が流れている場合)では、スイッチングデバイス31及び32は閉状態であり、第3スイッチングデバイス41はオン状態でもオフ状態でもよい。第3スイッチングデバイス41がオン状態であっても、第1電気ブランチ3がより低い等価抵抗を示すため、電流は自然に第1電気ブランチ3に沿って優勢に流れる。断路器150は閉状態である。
【0064】
過負荷電流または通常電流の遮断
第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32は、通常、閉状態である。通常の電流または過負荷電流が存在する場合、第1スイッチングデバイス31は介入しない(従って閉状態のままである)のに対し、第2スイッチングデバイス32は開ける操作を実行するように指令される。まだオン状態になっていない場合は、第3スイッチングデバイス41がオンになるように指令される。第2スイッチングデバイス32の電気接点が切り離されるとすぐに、電流が第2電気ブランチ4に沿って流れ始める。第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4へ電流が完全に切り替わることにより、第2スイッチングデバイス32の電気接点間のアーク現象が消滅する。
【0065】
電流が切り替えられた瞬間から第3の時間間隔が経過すると、第2スイッチングデバイス32が再点弧を避けるのに十分な絶縁耐力を有し、第3スイッチングデバイス41をオフにするように指令される。電流は、消滅するまで強制的に第1電子回路48(グリッドの誘導エネルギーを散逸させる)に沿って流れる。第2スイッチングデバイス32が開状態であるため、電流が第1電気ブランチ3に沿って流れ始めることができないことは明らかである。
好都合には、断路器150は開ける操作を行うように指令され、それによって、スイッチング装置を含むグリッド部分をガルバニック絶縁とすることができる。スイッチング装置1は、何らかの理由で通常の電流を遮断するように要求された場合にも、実質的に同じように動作する。
【0066】
短絡電流の遮断
第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32は、通常、閉状態にある。短絡電流が存在する場合、第1スイッチングデバイス31は、入力制御信号や外部電力供給を受け取ることなく、直ちに開ける操作(高速スイッチング)を実行する。まだオン状態でなければ、第3スイッチングデバイス41はオンになるように指令される。また、第2スイッチングデバイス32は、開ける操作を実行するように指令される。しかし、第1スイッチングデバイス31の介入は、第2スイッチングデバイス32の介入よりもかなり前に起こる。
第1スイッチングデバイス31の電気接点の切り離しにより、短絡電流が第2電気ブランチ4に切り替えられる。第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に電流が完全に切り替えられることで、第1スイッチングデバイス31の電気接点間のアーク現象が消滅する。
【0067】
第2電気ブランチ4に沿って流れる電流は、第3スイッチングデバイス41を流れる。電流が第2電気ブランチ4に切り替えられた瞬間から、上記の第1の時間間隔が経過した後に、第3スイッチングデバイスはオフになるように指令されることが望ましい。しかし、上記の第1の時間間隔が経過する前に、短絡電流を発生させる故障が何らかの方法で(例えば、外部スイッチング装置の介入により)解消された場合、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流がより低い値に戻るため、第3スイッチングデバイス41はオフを指令されずオン状態のままとなる。その間に、第1スイッチングデバイス31は閉状態に戻り、第2スイッチングデバイス32は閉める操作を実行するように指令される。
【0068】
第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32が最終的に閉状態に戻ると、スイッチング装置1は新たに通常の状態で動作し、電流は第2電気ブランチ4から第1電気ブランチ3へと自然に切り替えられる。一方、短絡電流を発生させる故障が上記の第1の時間間隔が経過する前に解消されない場合、第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令される。電流は、消滅するまで第1電子回路48に沿って強制的に流れる。上で説明したように、電流は、第1電気ブランチ3に沿って再び流れ始めることはできない。続いて、断路器150は開ける操作を実行するように指令され、それによって、スイッチング装置を含むグリッド部分をガルバニック絶縁にする。
【0069】
送電線への再接続
第1スイッチングデバイス31は電流が流れていないので閉状態となっており、第2スイッチングデバイス32は開状態となっており、第3スイッチングデバイス41はオフ状態となっている。
断路器150は、閉める操作を実行するように指令されている。そのため、スイッチング装置を含むグリッド部分は、もはや(スイッチング装置を含まない)他のグリッド部分からガルバニック絶縁となっていない。
第3スイッチングデバイス41は、オンになるように指令される。電流は、第2半導体ブランチ4に沿って流れる。この電流が第2の時間間隔(短絡が存在するかどうかを確認するのに必要な時間)の間、正常な範囲内に留まっている場合、第2スイッチングデバイス32は、閉める操作を実行するように指令される。
第2スイッチングデバイス32が閉める操作を完了するとすぐに(第1スイッチングデバイス31は既に閉状態にある)、電流は自然に第1電気ブランチ3に切り替えられ、スイッチング装置1は通常の状態で動作を開始する。
【0070】
短絡故障が発生している場合の送電線への再接続
第1スイッチングデバイス31は電流が流れていないため閉状態となっており、第2スイッチングデバイス32は開状態となっており、第3スイッチングデバイス41はオフ状態になっている。
断路器150は、閉める操作を行うように指令される。スイッチング装置を含むグリッド部分と他のグリッド部分(スイッチング装置を含まない)とのガルバニック絶縁はもはや確保されない。
第3スイッチングデバイス41は、オンになるように指令される。短絡電流が第2半導体ブランチ4に沿って流れ始める。
上記の第2の時間間隔内に制御ユニット90によって故障が検出されると、第3スイッチングデバイス41は再びオフになるように指令される。第2スイッチングデバイス32は、閉じる操作を実行するように指令されず、開状態のままである。電流は、消滅するまで、第1電子回路48に沿って強制的に流れる。
続いて、断路器150は開ける操作を実行するように指令され、それによってスイッチング装置を含むグリッド部分がガルバニック絶縁となる。
【0071】
上記から明らかなように、図1の実施形態に従って配置されているスイッチング装置1は、閉状態(通常状態)と開状態との2つの異なる状態で動作することができ、閉状態ではスイッチング装置1に電流を伝導しており、開状態ではスイッチング装置1は電流(すなわち、第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた電流)を遮断している。
さらに、スイッチング装置1と直列に電気的に接続された断路器150によって形成されたスイッチンググループ110が、2つの異なる状態に従って動作することができることも証明されている、2つの異なる状態は、スイッチング装置1と断路器150の両方が閉状態にある閉状態と、スイッチング装置1と断路器150の両方が開状態にある開状態である。
【0072】
図2は、本発明のスイッチング装置1の可能な実施形態を示している。この場合、第1電気ブランチ3は、直列に電気的に接続された第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32で構成され、第2電気ブランチ4は、電流遮断回路40Aおよび電流制限回路40で構成されている。
【0073】
本発明のこの実施形態によれば、スイッチング装置1は、通常、端子11と端子12と間に電流を流すことができる。しかし、必要に応じて、送電線に沿って流れる広範囲の電流に対して電気的な絶縁(開状態)を提供することが可能である。図1の実施形態とは異なり、スイッチング装置1は、特に短絡電流が存在する場合に、電流制限機能(電流制限モード)を提供することもできる。
以下、図2の実施形態におけるスイッチング装置の動作についてより詳細に説明する。
【0074】
閉状態(通常動作)
通常の動作(すなわち、公称値程度またはそれ以下の電流が存在する場合)では、スイッチングデバイス31及びスイッチングデバイス32は閉状態にあり、一方、第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42は、必要に応じてオンまたはオフにすることができる。また、断路器150も閉状態である。何らかの理由で第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42がオンになったとしても、第1電気ブランチ3の方が等価抵抗が低いため、電流の大部分は自然と第1電気ブランチ3に沿って流れる。
【0075】
過負荷電流または通常電流の遮断
第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32は、通常、閉状態となっている。
過負荷電流が存在する場合、第1スイッチングデバイス31は介入しない(それによって閉状態のままである)、一方、第2スイッチングデバイス32は開ける操作を行うように指令される。第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42が、まだオン状態でなければ、オンになるように指令される。第2スイッチングデバイス32の電気接点が切り離されるとすぐに、電流が第2電気ブランチ4に沿って流れ始める。第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4への電流の完全な切り替えにより、第2スイッチングデバイス32の電気接点間のアーク現象が消滅する。
(第2スイッチングデバイス32が再点弧を回避するのに十分な絶縁耐力を有するように)電流が第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた瞬間から第3の時間間隔が経過した後、第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42はオフになるように指令される。過負荷電流は、消滅するまで第1電子回路48および第2電子回路49に沿って強制的に流れる。
【0076】
別の方法としては、第2電気ブランチ4へ電流が完全に切り替わった後、第4スイッチングデバイス42はオフになるように指令され、電流は第2電子回路49および第3スイッチングデバイス41に沿って強制的に流れる。この状況では、スイッチング装置1は、過負荷電流の電流制限機能(電流制限モード)を提供する。
第3スイッチングデバイス41は、過負荷電流が第2電気ブランチ4に切り替えられた瞬間から上記第3の時間間隔が経過した後に、オフにするように指令される。
【0077】
さらに別の方法として、第2電気ブランチ4へ電流が完全に切り替えられた後において、上記の第3の時間間隔が経過した後に第3スイッチングデバイス41のみがオフになるように指令される。この場合、電流は、消滅するまで第1電子回路48に沿って強制的に流れる。第2スイッチングデバイス32が開状態であるため、電流は第1電気ブランチ3に沿って再び流れ始めることができない。
好都合には、電流の遮断後、断路器150は開ける操作を行うように指令され、それにより、スイッチング装置を含むグリッド部分をガルバニック絶縁することができる。
スイッチング装置は、何らかの理由で通常の電流を遮断するよう要求された場合も、同様の動作を行う。
【0078】
短絡電流の遮断
第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32は、通常、閉状態になっている。短絡電流が存在する場合、第1スイッチングデバイス31は、入力制御信号や外部電力供給を受け取ることなく、直ちに開ける操作を実行する(高速スイッチング)。第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42は、すでに伝導状態でなければ、オンになるように指令される。
【0079】
また、第2スイッチングデバイス32は、開ける操作を実行するように指令される。しかし、第1スイッチングデバイス31の介入は、第2スイッチングデバイス32のかなり前に起こる。第1スイッチングデバイス31の電気接点の切り離しは、電流を第2電気ブランチ4へ強制的に切り替える。第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4への電流の完全な切り替えは、第1スイッチングデバイス31の電気接点間のアーク現象を消滅させる。第2電気ブランチ4に切り替えられた短絡電流は、初期において第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42の両方を流れる。電流が第2電気ブランチ4に完全に切り替えられるとすぐに、第4スイッチングデバイス42はオフになるように指令され、電流は第2電子回路49および第3スイッチングデバイス41に沿って強制的に流れる。この状況では、スイッチング装置1は、短絡電流の電流制限機能性(電流制限モード)を提供する。
【0080】
短絡電流が第2電気ブランチ4に切り替えられた瞬間から上記第1の時間間隔が経過した後に第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令されるべきである。しかし、上記の第1の時間間隔が経過する前に、短絡電流を発生させている故障が何らかの方法(例えば、外部のサーキットブレーカーの介入により)で解消された場合、第2電気ブランチ4に沿って流れる電流が低い値に戻っているため、第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令されず、オン状態のままとなる。この場合、第4スイッチングデバイス42は、オフ状態に維持されてもよい。別の方法として、第4スイッチングデバイス42が新たにオンになるように指令され、電気ブランチ4に沿って流れる電流が新たに第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42に沿って流れるようになってもよい。いずれにしても、そのうちに、第1スイッチングデバイス31は閉状態へと戻り、第2スイッチングデバイス32は閉める操作を実行するように指令される。第1スイッチングデバイス31および第2スイッチングデバイス32の両方が最終的に閉状態に戻ると、電流が第2電気ブランチ4から第1電気ブランチ3に自然に切り替わるので、スイッチング装置1は新たに通常の状態で動作する。
【0081】
そうではなく、短絡電流を発生させる故障が上記の第1の時間間隔が経過する前に解消されない場合、第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令される。電流は、消滅するまで第1電子回路48および第2電子回路49に沿って強制的に流れる。上で説明したように、電流は、第1電気ブランチ3に沿って流れ始めることはできない。
その後、断路器150は、開ける操作を実行するように指令され、それにより、スイッチング装置を含むグリッド部分にガルバニック絶縁を提供する。
【0082】
配電線への再接続
第1スイッチングデバイス31は既に閉状態にあり、第2スイッチングデバイス32は開状態にあり、第3スイッチングデバイス41及び第4スイッチングデバイス42はオフ状態にあるものとする。
断路器150は、閉める操作を実行するように指令される。スイッチング装置を含むグリッド部分と(スイッチング装置を含まない)他のグリッド部分とのガルバニック絶縁はもはや確保されない。
第3スイッチングデバイス41は、オンになるように指令される。別の方法としては、第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42の両方がオンになるように指令される。電流は、第2半導体ブランチ4に沿って流れる。第3スイッチングデバイス41のみがオンになると、電流は第2電子回路49および第3スイッチングデバイス41に沿って流れる。第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42の両方がオンになると、電流はこれらのスイッチングデバイスの両方に沿って流れる。(短絡が存在するかどうかを確認するために必要な)第2の所定時間間隔内に短絡が検出されない場合、第2スイッチングデバイス32は、閉じる操作を実行するように指令される。
【0083】
上述したように、第4スイッチングデバイス42は、オン状態であってもオフ状態であってもよい。第4スイッチングデバイス42がオン状態である場合、その状態で維持されてもよいし、オフにされてもよい。第4スイッチングデバイス42がオフ状態である場合、その状態で維持されてもよいし、オンにされてもよい。
第2スイッチングデバイス32が閉める操作を完了するとすぐに(第1スイッチングデバイス31は既に閉状態にある)、スイッチング装置1は通常の状態で動作を開始し、電流は自然に第1電気ブランチ3に切り替わる。
【0084】
短絡故障が発生している場合の配電線への再接続
第1スイッチングデバイス31は既に閉状態にあり、第2スイッチングデバイス32は開状態にあり、第3スイッチングデバイス41及び第4スイッチングデバイス42はオフ状態にあるものとする。
断路器150は、閉める操作を実行するように指令される。スイッチング装置を含むグリッド部分と(スイッチング装置を含まない)他のグリッド部分とのガルバニック絶縁はもはや確保されない。
第3スイッチングデバイス41は、第4スイッチングデバイス42がオフ状態に維持されている間にオンになるように指令され、第4スイッチングデバイス42は第3スイッチングデバイス41よりも遅れてオンになる。別の方法としては、第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42の両方が同時にオンになるように指令される。 短絡電流は、最初に第2半導体ブランチ4に沿って流れる。
【0085】
第3スイッチングデバイス41のみがオンになると、電流は第2電子回路49および第3スイッチングデバイス41に沿って流れる(電流制限モード)。(短絡状態を識別するのに必要な)第1の所定時間間隔の後、第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令される。電流は、消滅するまで第1電子回路48に沿って強制的に流れる。
第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42の両方が同時にオンになると、電流はこれらのスイッチングデバイスの両方に沿って流れる。第1の所定時間間隔の後、第3スイッチングデバイス41はオフになるように指令される、一方、第4スイッチングデバイス42はオフになってもよく、オン状態に維持されてもよい。電流は、消滅するまで第1電子回路48に沿って強制的に流れる。第2スイッチングデバイス32は、閉める操作を実行するように命令されておらず、開状態のままである。
続いて、断路器150は、開ける操作を実行するように指令され、それによって、スイッチング装置を含むグリッド部分がガルバニック絶縁となる。
【0086】
上記から明らかなように、図2の実施形態に従って配置されているスイッチング装置1は、3つの異なる状態で動作することができる、3つの異なる状態とは、電流を伝導する閉状態(通常動作)と、電流(すなわち、第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた電流)を遮断する開状態と、第1電気ブランチ3から第2電気ブランチ4に切り替えられた電流を制限する電流制限モード(過渡状態)とである。
さらに、スイッチング装置1と断路器150とが電気的に直列接続されて形成されたスイッチンググループ110が、異なる状態に応じて動作することができることも明らかになった、この異なる状態とは、スイッチング装置1が閉状態で断路器150が閉状態である閉状態と、スイッチング装置1が開状態で断路器150が開状態である開状態と、スイッチング装置1が電流制限モードで断路器150が閉状態である電流制限モードとである。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態(図1図2)によれば、スイッチング装置1は、1つまたは複数の制御ロジックを含む制御ユニット90(既知のタイプであってもよい)を含む、この制御ロジックは、スイッチング装置の制御可能なスイッチングデバイス32、スイッチングデバイス41、および存在する場合にはスイッチング装置のスイッチングデバイス42の動作を制御するように構成されている。
好ましくは、制御ユニット90は、断路器150の動作も制御することができる。制御ユニット90は、スイッチング装置の適切な位置に配置された1つまたは複数のセンサ93から検知信号Sを受信するように設けられ、第1電気ブランチ3および第2電気ブランチ4に沿った電流および/または他の物理量の挙動を監視する。
【0088】
制御ユニット90は、上述のセンサ93から提供された検知信号Sを処理するように設けられ、上述の動作モードに従って第2スイッチングデバイス32、第3スイッチングデバイス41、および場合によっては断路器150および第4スイッチングデバイス42を動作させるための制御信号Cを提供するように設けられている。制御ユニット90は、適切なデータ処理アルゴリズムを実行して、センサ93から提供された情報を処理し、スイッチングデバイス32、スイッチングデバイス41、および場合によっては断路器150、スイッチングデバイス42を動作させるために、特定の動作基準が満たされているかどうかを確認してもよい。
オペレータが手動で実行すべき動作を要求した場合、または外部からの動作要求がスイッチング装置に送信された場合、制御ユニット90は、制御信号を提供しスイッチングデバイス32、スイッチングデバイス41、および場合によっては断路器150、スイッチングデバイス42を動作させてもよい。
【0089】
本発明の変形実施形態(図示せず)によれば、制御ユニット90は、スイッチング装置1に搭載されていない。一例として、制御ユニット90は、スイッチング装置に動作可能に関連付けられたデジタルリレーに搭載されてもよいし、別のスイッチング装置に搭載されてもよいし、遠隔のコンピュータ化されたプラットフォームに搭載されてもよい。この場合、スイッチング装置1は、制御ユニット90と通信するための通信インターフェースを含んでもよい。
【0090】
図3~7は本発明の変形実施形態を示し、この変形実施形態では、スイッチング装置1が双方向の電流を制御することができる。これらのソリューションは、スイッチング装置がAC送電グリッドに組み込まれている場合に、特に有利であると考えられる。
【0091】
図3は、図1に示した実施形態の変形ソリューションを示している。この実施形態によれば、第2電気ブランチ4は、電流遮断回路40Aと動作可能に接続された第1ブリッジ回路47を含む。
本発明のこの実施形態の動作は、図1の実施形態について上述したものと同じである。
【0092】
図4は、図2に示す実施形態の変形ソリューションを示す。この実施形態によれば、第2電気ブランチ4は、電流遮断回路40Aに動作可能に接続された第1ブリッジ回路45と、電流制限回路40に動作可能に接続された第2ブリッジ回路46とを備えている。
本発明のこの実施形態の動作は、図2の実施形態について上述したものと同じである。
【0093】
図5は、図3に示す実施形態の変形ソリューションを示す。この実施形態によれば、第2電気ブランチ4は第3ブリッジ回路47を含み、第3ブリッジ回路47は第2電気ブランチ4の残りの構成要素に動作可能に接続されている、この残りの構成要素は、例えば電流制限回路40と電流遮断回路40Aによって形成される直列回路である。第2電気ブランチ4が電流遮断回路40Aのみを含む場合、本発明のこの実施形態は、図3に示されたものと一致する。
本発明のこれらの実施形態の動作は、図1または図2の実施形態について上述したものと同じである。
好ましくは、図3~5に図示された実施形態では、各ブリッジ回路45、46、47は、Graetzブリッジの構成に従って配置された複数のダイオードを含む。
【0094】
図6は、図1に示した実施形態の追加の変形ソリューションを示している。この実施形態によれば、第3スイッチングデバイス41は、逆並列の構成に従って相互に接続された一対の半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bを含む。この構成において、各半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bは、逆阻止型であるか、ダイオードに直列に配置されている必要がある。電流の方向に応じて、一度に1つの半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bのみを動作させ、他の半導体スイッチングコンポーネントはオフ状態のままとすることができる。半導体スイッチ41A、41Bは、いずれも第1電子回路48に電気的に並列に接続されている。
本発明のこの実施形態の動作は、図1の実施形態について上述したものと同様である。
【0095】
図6Aは、図1に示した実施形態の追加の変形ソリューションを示している。この実施形態によれば、第3スイッチングデバイス41は、逆直列の構成に従って相互に接続された一対の半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bを含む。この構成において、各半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bは、逆導電型であるか、ダイオードと並列に配置されている必要がある。半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bによって形成された直列集合体は、第1電子回路48に電気的に並列に接続されている。
本発明のこの実施形態の動作は、図1の実施形態について上述したものと同様である。
【0096】
図7は、図2に示した実施形態の追加の変形ソリューションを示している。この実施形態によれば、電流遮断回路40Aは逆並列の構成で相互に接続された一対の半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bを含み、電流制限回路40は逆並列の構成で相互に接続された一対の半導体スイッチングコンポーネント42A、42Bを含む。このような構成において、各半導体スイッチコンポーネント41A、41Bおよび42A、42Bは、逆阻止型であるか、又はダイオードに直列に接続されている必要がある。半導体スイッチ41A、41Bはいずれも第1電子回路48に電気的に並列に接続されており、一方、半導体スイッチコンポーネント42A、42Bはいずれも第2電子回路49に電気的に並列に接続されている。
本発明のこの実施形態の動作は、図2の実施形態について上述したものと同様である。
【0097】
本発明のさらなる変形実施形態(図示せず)によれば、第3スイッチングデバイス41および第4スイッチングデバイス42のそれぞれが半導体スイッチングコンポーネントの対応するペアを含んでもよい、この半導体スイッチングコンポーネントのペアは逆直列の構成に従って相互に接続されている。この構成において、各半導体スイッチングコンポーネント41A、41Bおよび42A、42Bは、逆導電型であるか、またはダイオードと並列に配置されている必要がある。
本発明のこの実施形態の動作は、図2の実施形態について上述したものと同様である。
【0098】
図8は、DC送電グリッド100の一例を示す図である。DC送電グリッドは、DCバス101(DCリンク)と、当該DCバスに電気的に接続された複数のコンポーネントとを含む。いくつかのコンポーネントは、電気供給を受ける必要のある電気負荷または装置(例えば、電気モーター)によって構成されてもよい。また、他のコンポーネントは、エネルギー貯蔵装置(キャパシタバンクやバッテリーなど)や発電装置(太陽光発電所など)によって構成されてもよい、これらは電気エネルギーを供給することが可能である。
【0099】
DC送電グリッド100には、多数の本発明によるスイッチング装置が適切に導入され、上述のコンポーネントとDC電気バスとの電気的な接続を管理する。好都合には、上述の説明のように、各スイッチング装置1は、断路器150と直列に電気的に接続されて、スイッチンググループ110を形成する。上述の図から、DCバスに連結されたコンポーネントを介して流れるDC電流は、双方向になり得ることが明らかである。
電気故障が発生した場合、DC送電グリッドの多くのコンポーネントは、それらに沿って逆方向の電流が流れる可能性があるため、生じえる短絡電流に寄与する場合がある。最悪の場合、DCバスにおいて電気故障が発生した場合、多くのコンポーネントが直接電気故障を引き起こす可能性がある。
【0100】
本発明によるスイッチング装置をDC送電グリッドに採用することで、起こり得る電気故障に素早く反応することができ、適切な保護機能と選択機能を実装し起こり得る電気故障を管理することができる。さらに、送電グリッドの異なるブランチにおける回路保護介入を管理および調整するための効率的な戦略を実行することが可能になる。
【0101】
図9図16は、簡略化されたDC送電グリッド100Aにおける電気故障を管理するための実行可能な戦略のいくつかの例を示す。DC送電グリッド100Aは、電池エネルギー貯蔵システム(BESS)を含んでおり、このBESSでは、一群の電池ユニットが、DCバス101Aを介して電力変換器(図示せず)に電気的に接続されている。各電池ユニットは、スイッチンググループ110によって、DCバス101Aに電気的に接続されたり、DCバス101Aから電気的に切り離されたりする。各スイッチンググループ110は、本発明によるスイッチング装置1(例えば、図2の実施形態と同様であるが、双方向の電流を流すことができる)と、スイッチング装置1に直列に電気的に接続された断路器150とを含む。DCバス101Aは、(例えば電気機械式の)サーキットブレーカー160を介して、上記の電力変換器に電気的に接続され、または電力変換器から電気的に切り離される。
【0102】
別の方法として、DCバス101Aは、双方向の電流を伝導することができる図2の実施形態における本発明のスイッチング装置を含む追加のスイッチンググループによって、上記電力変換器に電気的に接続されたり、上記電力変換器から電気的に切り離されたりしてもよい。
【0103】
以上に説明したように、スイッチンググループは図2の実施形態における本発明のスイッチング装置を含むので、各スイッチンググループ110は、スイッチング装置1が閉状態であり断路器150が閉状態である閉状態と、スイッチング装置1が開状態であり断路器150が開状態である開状態と、スイッチング装置1が電流制限モードであり断路器150が閉状態である電流制限モードとの複数の状態で動作することができる。
スイッチンググループが閉状態のときには、各スイッチンググループ110が電流を流すことで、対応するバッテリーユニットとDCバスとが電気的に接続される。
スイッチンググループが開状態のときには、各スイッチンググループ110が電流を遮断することで、対応するバッテリーユニットがDCバスから電気的に切り離される。
スイッチンググループが電流制限モードであるときは、各スイッチンググループ110が電流制限機能を提供することで、対応するバッテリーユニットとDCバスとの間を流れる電流が制限される。
【0104】
電力変換器をDCバス101Aに電気的に接続したりDCバス101Aから電気的に切断したりするためにサーキットブレーカー160が使用される場合、当該サーキットブレーカーは、電流を伝導して電力変換器をDCバスに電気的に接続する閉状態と、電流を遮断して電力変換器をDCバスから電気的に切り離す開状態とに切り替わることができる。
サーキットブレーカー160の代わりに、図2の実施形態に係る本発明の(双方向の電流を導通させることができる)スイッチング装置を含む追加のスイッチンググループが使用される場合、当該スイッチンググループは上述のように動作する、つまり、閉状態にある場合には電力変換器をDCバスに電気的に接続し、開状態にある場合には電力変換器をDCバスから電気的に切り離し、または電流制限モードにある場合には電力変換器とDCバスとの間を流れる電流を制限する。
【0105】
通常動作
図9は、通常時の送電グリッド100Aの動作を模式的に示したものである。この状態では、サーキットブレーカー160が閉状態であり、各スイッチンググループ110が閉状態である(通常動作)。サーキットブレーカー160の代わりに追加のスイッチンググループが使用された場合、そのスイッチンググループは閉状態である。
電流IN1、IN2、IN3は上記のバッテリーユニットに沿って流れ、電流INCは電力変換器に沿って流れる。電流INCは、実質的に電流IN1、IN2、IN3の総和である。バッテリーユニットと電力変換器の間を流れる電流IN1、IN2、IN3、INCは、いずれも当該バッテリーユニットについて予測される公称電流を超えない値をとり、同じ方向を向いている、この方向は基本的にはバッテリーユニットの動作モード(充電または放電)に依存する。
【0106】
図9の例では、バッテリーユニットは放電モードであると想定されている。電流IN1、IN2、IN3、INCは、バッテリーユニットが充電モードで動作している場合、逆の方向になる。しかし、送電グリッドの動作は実質的に同じである。
【0107】
バッテリーユニットの短絡
図10は,バッテリーユニットに短絡が発生した場合の状況を模式的に示している。電気故障が発生したバッテリーユニットには、短絡電流IS1が流れる。この電気故障は、他のバッテリーユニットから流れる短絡電流IS2、IS3と、電力変換器を介して流れる短絡電流ISCに影響を与える。電力変換器を流れる短絡電流ISCは、電力変換器が放電モードになっているときの対応する電流INCとは逆向きになっている。
【0108】
図11に示すように、送電グリッド100Aに短絡電流ISC、IS1、IS2、IS3が流れるとすぐに、バッテリーユニットに動作的に関連付けられたスイッチンググループ110は、電流制限モードに切り替わる。サーキットブレーカー160は、閉状態に維持され、電気故障の解消の可能性を待つ。サーキットブレーカー160の代わりに追加のスイッチンググループが使用された場合、そのスイッチンググループは同様に電流制限モードで切り替わる。スイッチンググループ110が介入すると、電気故障に供給される短絡電流IS1が制限される。
その後、短絡電流ISC、IS1、IS2、IS3が電力グリッド100内を流れ続けるため、電気故障が発生したバッテリーユニットに最も近いスイッチンググループ110は、開状態に切り替わる。実際には、電気故障が発生したバッテリーユニットに最も近いスイッチンググループ110にはより大きな大きさの短絡電流が発生するため、このスイッチンググループは、他のスイッチンググループに比べてより短い時間、電流制限モードに留まることになる。
【0109】
この対応するスイッチンググループ110が開状態に切り替わると、電気故障が発生したバッテリーユニットは、送電グリッドの残りの部分から電気的に絶縁される。この状況では、他のバッテリーユニットに動作的に関連するスイッチンググループ110は、電流制限モードのままであり、比較的小さな電流(例えば、公称値よりもさらに低い値を有する電流)が当該スイッチンググループを流れることになる(図12)。サーキットブレーカー160は、依然として閉状態に維持される。
最後に、スイッチンググループ110を開状態で動作させることによって電気故障が解消されたので、電気故障が発生していないバッテリーユニットに動作的に関連付けられたスイッチンググループ110は、閉状態に切り替わり、通常の状態で再び動作することができる(図13)。
【0110】
サーキットブレーカー160の代わりに追加のスイッチンググループが使用された場合、そのようなスイッチンググループも同様に閉状態に切り替わる。送電グリッド100内を流れる電流は、再び正常な値INC、IN2、IN3となり、同じ方向に流れる。明らかに、電気故障が発生したバッテリーユニットは、送電グリッド100Aの残りの部分からガルバニック絶縁されたままである。明らかに、電力変換器に沿って流れる電流INCはそれに応じて減少する。
バッテリーユニットが充電モードで動作している場合、送電グリッドの動作は実質的に同じである。
【0111】
DCバスの短絡
図14は,DCバス101Aで短絡が発生したときの状況を模式的に示している。
短絡電流ISC、IS1、IS2、IS3がバッテリーユニットや電力変換器に沿って流れ、電気故障を増大させる。また、この場合、電力変換器が放電モードであるため、電力変換器を流れる短絡電流ISCは、対応する電流INCに対して方向が逆になる。また、電気故障がDCバスに発生するため、バッテリーユニットに沿って流れる短絡電流IS1、IS2、IS3は同一方向となり、この方向は電力変換器を流れる短絡電流ISCとは逆方向となる。
【0112】
図15に示したように、短絡電流ISC、IS1、IS2、IS3が送電グリッド100内を流れるとすぐに、バッテリーユニットに動作的に関連付けられたスイッチンググループ110は、電流制限モードに切り替わる。サーキットブレーカー160は、一時的に閉状態に維持され、電気故障の解消の可能性を待つ。サーキットブレーカー160の代わりにスイッチンググループ110が使用された場合、そのスイッチンググループは同様に電流制限モードで動作する。電気故障はDCバスに発生しているため、(電気故障に最も近い)1つのスイッチンググループ110を開状態で動作させても、電気故障を解消することはできない。電気故障が解消されていないので、上記第1の時間間隔が経過した後、すべてのスイッチンググループ110およびサーキットブレーカー160は開状態に切り替えられる。サーキットブレーカー160の代わりに追加のスイッチンググループが使用された場合、そのようなスイッチンググループも同様に開状態に切り替わる。
以上の結果、直流送電グリッド100全体がシャットダウンする(図16)。
バッテリーユニットが充電モードで動作している場合も、送電グリッドの動作は実質的に同じである。
【0113】
異なるタイプ(例えばACタイプ)の送電グリッドであって、当該送電グリッドの異なるグリッド部分を電気的に接続または切断するために複数の(上述のように構成されている)スイッチンググループ110を一般的に備える送電グリッドは、変更すべきところは変更して、上述のDC送電グリッド100Aと実質的に同様に動作するであろうことが明らかになった。
したがって、さらなる態様において、本発明は、前記送電グリッドの異なるグリッド部分を電気的に接続または切断するための複数の(上述のように構成される)スイッチンググループ110を含む送電グリッドを動作させるための方法に関することが明らかである。
【0114】
送電グリッドに電気故障(即ち、短絡)がある場合、本発明に係る方法はスイッチンググループ110を電流制限モードで切り替えるステップを備える。そして、本発明に係る方法は、前記電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態に切り替え、前記送電グリッドの残りのスイッチンググループを電流制限モードに維持するステップを備える。そして、電気故障に最も近いスイッチンググループ110は、他のスイッチンググループに比べ、より短い時間、電流制限モードに留まることがなる、これは、このようなスイッチンググループにはより大きな大きさを有する短絡電流が発生するためである。
【0115】
前記電気故障に最も近いスイッチンググループ110を動作させることにより、前記電気故障が(基本的には前記第1の時間間隔と一致する)所定の期間内に電気的に絶縁された場合、本発明の方法は、前記電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態に維持し、前記送電グリッドの残りのスイッチンググループ110を閉状態に戻すステップを備える。
前記電気故障に最も近いスイッチンググループ110を動作させることにより、前記電気故障が前記所定の期間内に電気的に絶縁されない場合、本発明の方法は、前記送電グリッドのすべてのスイッチンググループ110を開状態に切り替えるステップを備える。
【0116】
図9図16の上述の例に示されるように、本発明の方法は、DC送電グリッド100Aを保護するのに特に適しており、このDC送電グリッド100Aは複数のバッテリーユニットを含む電池エネルギー貯蔵システムと、前記バッテリーユニットを電力変換器に電気的に接続するためのDCバス101Aと、前記バッテリーユニットを前記DCバスに電気的に接続または前記DCバスから電気的に切り離すための複数の(上述のように構成される)スイッチンググループ110とを備える。
この場合、本発明による方法は、電池エネルギー貯蔵システムに電気故障(即ち、短絡)が発生した場合に、スイッチンググループ110を電流制限モードで切り替えるステップを備える。
【0117】
DCバス101Aが、(例えば電気機械式の)サーキットブレーカー160を介して上記電力変換器に電気的に接続されているか、または上記電力変換器から電気的に切り離されている場合、本発明に係る方法は、サーキットブレーカー160を閉状態に維持するステップをさらに備える。
DCバス101Aが追加のスイッチンググループ(スイッチンググループ110と同様のもの)を介して上記電力変換器に電気的に接続されているか、または上記電力変換器から電気的に切り離されている場合、本発明の方法は、当該追加のスイッチンググループを電流制限モードで切り替えるステップをさらに備える。
本発明に係る方法は、電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態に切り替え、電池エネルギー貯蔵システムの残りのスイッチンググループ110を電流制限モードに維持するステップを備える。
【0118】
電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態に切り替えることにより、所定の期間(上記第1の時間間隔)内に電気故障が電気的に絶縁された場合、本発明の方法は、電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態に維持し、電池エネルギー貯蔵システムの残りのスイッチンググループ110を閉状態に戻すステップを備える。
DCバス101Aが、(例えば電気機械式の)サーキットブレーカー160を介して上記電力変換器に電気的に接続されているか、または上記電力変換器から電気的に切り離されている場合、本発明の方法は、サーキットブレーカー160を閉状態に維持するステップをさらに備える。
DCバス101Aが追加のスイッチンググループ(スイッチンググループ110と同様のもの)を介して上記電力変換器に電気的に接続されているか、または上記電力変換器から電気的に切り離されている場合、本発明の方法は、当該追加のスイッチンググループを閉状態に切り替えるステップをさらに備える。
【0119】
電気故障に最も近いスイッチンググループ110を開状態で動作させることにより、前記所定の期間内に電気故障を電気的に絶縁できない場合、本発明による方法は、電池エネルギー貯蔵システムの全てのスイッチンググループ110を開状態にスイッチングするステップを備える。
DCバス101Aが、(例えば電気機械式の)サーキットブレーカー160、または追加のスイッチンググループ(スイッチンググループ110と同様のもの)によって、上記電力変換器に電気的に接続されるか、または上記電力変換器から電気的に切り離されている場合、本発明に係る方法は、サーキットブレーカー160または当該追加のスイッチンググループを開状態に切り替えるステップをさらに備える。
【0120】
本発明の方法は、電気故障が電気的に絶縁できるか否かに応じて、送電グリッドにおける電気故障(すなわち、短絡)を選択的に管理することを可能にする。
本発明の方法は、まず、送電グリッドの様々な部分に沿って流れる故障電流を制限する。
特定のスイッチンググループ110(短絡に最も近いもの)を開状態で動作させることにより電気故障を所定の期間内に解消することができる場合、本発明の方法は、送電グリッドのうち、電気故障に関与していない部分を通常の導通モードに戻すことを提供する。
前記特定のスイッチンググループ110を開状態で動作させても、前記所定の期間内に電気故障を解消できない場合、本発明の方法は、送電グリッドをシャットダウンすることを提供する。
【0121】
本発明の方法により、送電グリッドの使用における柔軟性を向上させることができる。さらに、短絡が存在している送電グリッドのサービス期間の停止の可能性を低減することができる。実際には、電気障害がどのようにしても解消されない厳密に必要な場合にのみ、送電グリッドはシャットダウンされる。
本発明のスイッチング装置は、請求項に記載の発明の概念の範囲内にある多くの変形が可能である。スイッチング装置1は、独立した装置として、または、(例えば、機械式サーキットブレーカー(MCCB)の各電極のための)アドオンモジュールとして、工業的に実現することができる。
【0122】
更なる変形例によれば、スイッチング装置1は、上述の特許文献WO2017/186262に開示されているような、既知のタイプの付加的な切り替えブースター回路を含むことができる。
本発明によるスイッチング装置は、最先端の同様の既知のソリューションに関して、顕著な利点を提供する。
本発明によるスイッチング装置は、送電線に電気故障が発生したときに、可能性のある短絡電流を遮断するための迅速な介入を実行することができる。
【0123】
さらに、いくつかの実施形態(図2)では、本発明によるスイッチング装置は、ソリッドステートスイッチングデバイスを流れる可能性のある短絡電流についての制限機能を提供することができる。
上記の機能により、所定の公称電流に対してより小さなサイズのソリッドステートデバイスを使用することができる。これにより、明らかにスイッチング装置のサイズとコストを大幅に削減することができる。
【0124】
本発明によるスイッチング装置は、送電線に沿って流れる公称電流および可能な過負荷電流を信頼できる方法で管理することができる。
本発明によるスイッチング装置は、特に電流制限機能が実行される場合、搭載されたソリッドステートスイッチングデバイスの改善された動作条件を利用することにより、改善された選択機能を実行することができる。
さらに、送電グリッドの異なるブランチに沿って回路保護介入を管理および調整するための効率的な戦略を実施することができる。
本発明によるスイッチング装置は、比較的容易で安価に、工業生産することができ現場への設置することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16