(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】積層コア固定構造
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20230511BHJP
H02K 1/04 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2021506760
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2021072801
(87)【国際公開番号】W WO2021147881
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/073176
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521052034
【氏名又は名称】浙江川電鋼板加工有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG JFE SHOJI STEEL PRODUCTS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】五十子 直之
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037082(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125676(WO,A1)
【文献】特開2016-208622(JP,A)
【文献】特開2002-233090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接合状態の積層鋼板で形成された巻線部と、
前記巻線部に装着されることで前記積層鋼板を固定するインシュレータとを有
し、
前記インシュレータが、前記巻線部の積層方向両端面に沿って延在する2つの端面壁と、前記2つの端面壁間に亘って前記巻線部の両側面に沿って延在する2つの側面壁とを有し、
前記2つの側面壁の各々が、前記巻線部の積層方向に互いに係止する係止部を介して連結される2つの分割壁からなり、
前記2つの端面壁の一方から延在する前記分割壁の各々が、連結対象の前記分割壁よりも前記巻線部の積層方向に短く、且つ、前記係止部において前記巻線部から離れた側から連結対象の前記分割壁に対して重なり、
前記2つの側面壁の各々が、互いに係止する前記係止部からなる係合部を有し、
前記係合部の各々において、互いに係止する前記係止部の各々は爪で構成され、
前記爪の各々は、前記側面壁の厚みを先端に向けて低減させる第1傾斜面と、前記第1傾斜面の先端から厚み方向に突出する係止面と、前記係止面の突出端から前記側面壁の厚みを先端に向けて低減させる第2傾斜面とで構成される、積層コア固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コア固定構造に関し、詳しくは積層鋼板からなる一体型又は分割型積層コアを散けないように固定する積層コア固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鋼板からなる積層コアで構成される回転電機(つまり、電動機、発電機など)の電機子(つまり、固定子、回転子など)が知られている。積層コアには、特許文献1、2に記載されるような、環状の一体型ヨークと一体型ヨークから径方向に突出する複数のティースやスロットなどとも称される巻線部とを有する一体型積層コアと、特許文献3に記載されるような、一体型ヨークの一部を構成する分割型ヨークと分割型ヨークから突出する少なくとも1つの巻線部とを有する分割型積層コアとがある。
【0003】
一体型積層コアを用いる場合には、一体型積層コアの巻線部にインシュレータを装着することで一体型積層コア組立体が形成され、一体型積層コア組立体のインシュレータ上に電線などの導電体を巻くことで一体型電機子が形成され、一体型電機子によって回転電機が形成される。分割型積層コアを用いる場合には、分割型積層コアの巻線部にインシュレータを装着することで分割型積層コア組立体が形成される。その後、例えば、各々の分割型積層コア組立体のインシュレータ上に導電体を巻くことで分割型電機子が形成され、分割型電機子を環状に配列する工程を経て回転電機が形成される。
【0004】
一体型と分割型のいずれの場合でも、積層コアは一般的に、溶接、ダボかしめ、接着等の接合手段によって積層鋼板を接合することで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-136241号公報
【文献】特開2002-233090号公報
【文献】国際公開第2008/099659号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高効率、高出力の回転電機を得るために高透磁率、低鉄損の積層コアが求められている。しかし、前述したような溶接、ダボかしめ、接着等の接合手段は、溶接やダボかしめによる変形や絶縁層の損傷、異材料としての接着剤の介在などにより、透磁率の低下と鉄損の上昇を招く虞がある。そこで、積層鋼板を接合することなく、積層鋼板が散けることを防止できる積層コア固定構造を提供できれば望ましい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、高透磁率、低鉄損の積層コアを有する回転電機の電機子を実現できる積層コア固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、次の通りである。
【0009】
1.非接合状態の積層鋼板で形成された巻線部と、
前記巻線部に装着されることで前記積層鋼板を固定するインシュレータとを有する積層コア固定構造。
【0010】
2.前記インシュレータが、前記巻線部の積層方向両端面に沿って延在する2つの端面壁と、前記2つの端面壁間に亘って前記巻線部の両側面に沿って延在する2つの側面壁とを有する、前記1.に記載の積層コア固定構造。
【0011】
3.前記2つの側面壁の各々が、前記巻線部の積層方向に互いに係止する係止部を介して連結される2つの分割壁からなる、前記2.に記載の積層コア固定構造。
【0012】
4.前記2つの端面壁の一方から延在する前記分割壁の各々が、連結対象の前記分割壁よりも前記巻線部の積層方向に短い、前記3.に記載の積層コア固定構造。
【0013】
5.前記2つの端面壁の前記一方から延在する前記分割壁の各々が、前記係止部において前記巻線部から離れた側から連結対象の前記分割壁に対して重なる、前記4.に記載の積層コア固定構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高透磁率、低鉄損の積層コアを有する回転電機の電機子を実現できる積層コア固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層コア固定構造を有する一体型積層コア組立体を組立前の状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す一体型積層コア組立体を組立後の状態で示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る積層コア固定構造を有する分割型積層コア組立体を組立前の状態で示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す分割型積層コア組立体を組立後の状態で示す斜視図である。
【
図6】実施例1におけるカシメ積層品とバラコア積層品の写真である。
【
図7】実施例2におけるバラコア積層品の溶接前後での模式図である。
【
図8】実施例2の鉄損測定において使用される回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について例示説明する。
【0017】
まず、
図1、
図2及び
図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る積層コア固定構造について例示説明する。
【0018】
図1~
図2に示すように、本実施形態に係る積層コア固定構造1は、非接合状態の積層鋼板2からなる一体型である積層コア3を有している。積層コア3は、環状の一体型であるヨーク4と、ヨーク4から径方向内側に突出する複数のティースやスロットなどとも称される巻線部5とを有している。このように、積層コア3は、非接合状態の積層鋼板2で形成された複数の巻線部5を有している。また、積層コア固定構造1は、複数の巻線部5に装着されることで積層鋼板2を固定するインシュレータ6を有している。なお、ヨーク4は円環状であるがこれに限らない。また、巻線部5は9個設けられているが、巻線部5の数は適宜変更可能である。なお、
図1~
図2において、1つのみの巻線部5に符号を付している。インシュレータ6は例えば合成樹脂で形成され、絶縁性を有している。
【0019】
積層コア固定構造1は、インシュレータ6により非接合状態の積層鋼板2を散けないように固定した構造を有しているので、特別な部材や工程の追加を要さずに、高透磁率、低鉄損の積層コア3を有する回転電機の電機子を実現することができる。また、従来用いられていた積層鋼板2のための溶接、ダボかしめ、接着等の接合手段を不要としたことにより、製造工程の簡素化、製造コストの低減などの効果も享受することができる。なお、各々の巻線部5はヨーク4から径方向内側に突出しているが、これに限らず、ヨーク4から径方向外側に突出する構成であってもよい。また、積層コア3は、回転電機としての電動機における電機子としての固定子のためのものであるが、これに限らない。
【0020】
インシュレータ6は、各々の巻線部5に対し、巻線部5に装着される装着部7を有している。各々の装着部7は、巻線部5の積層方向両端面に沿って延在する2つの端面壁8と、2つの端面壁8間に亘って巻線部5の両側面に沿って延在する2つの側面壁9とを有している。したがって、2つの端面壁8と2つの側面壁9とで巻線部5を囲むことで、非接合状態の積層鋼板2をより確実に固定することができる。また、電機子を形成するためにインシュレータ6の装着部7上に巻かれる電線などの導電体(図示省略)と巻線部5との良好な絶縁を確保することができる。なお、
図1~
図2において、1つのみの装着部7及びこれを構成する端面壁8及び側面壁9に符号を付している。なお、装着部7の構成はこれに限らない。
【0021】
図5に示すように、各々の装着部7において、各々の側面壁9は、巻線部5の積層方向に互いに係止する係止部10を介して連結される2つの分割壁11からなっている。つまり、各々の装着部7は、端面壁8と2つの分割壁11とで構成される2つの分割装着部12からなっており、2つの分割装着部12は互いに係止部10を介して連結される。また、インシュレータ6は周方向に並ぶ全ての分割装着部12を連結する連結部13を有している。つまり、インシュレータ6は2つの分割インシュレータ14からなっている。したがって、これら分割インシュレータ14で積層コア3を挟み込むだけの簡単な手順で、
図2に示すような一体型である積層コア組立体15を形成することができる。なお、
図1~
図2においては係止部10の図示を省略している。係止部10は、各々の側面壁9に全幅に亘って連続又は断続して設けられてもよいし、各々の側面壁9に幅の一部のみに亘って設けられてもよい。なお、インシュレータ6はこれに限らず、例えば、2つ以上の分割部分で構成されてもよいし、連結部13を有していなくてもよい。また、装着部7の構成もこれに限らない。
【0022】
図1~
図2に示すように、各々の装着部7において、2つの端面壁8の一方8aから延在する分割壁11の各々は、連結対象の分割壁11よりも巻線部5の積層方向に短く形成されている。つまり、各々の装着部7において、2つの分割装着部12の一方12aにおける分割壁11の各々は、連結対象の分割壁11よりも巻線部5の積層方向に短く形成されている。したがって、積層コア組立体15を搬送する際に、例えば、各々の装着部7において2つの分割装着部12の一方12aではなく他方12bを支持して搬送することにより、支持側となる2つの分割装着部12の他方12bからはみだす積層鋼板2の量を低減できるので、このはみだした非接合状態の積層鋼板2の一部が搬送に伴って慣性力や重力などによって係止部10に作用する力を軽減できる。したがって、係止部10の係止状態を良好に保持し、もって、積層鋼板2の固定状態を良好に保持することができる。なお、装着部7の構成はこれに限らない。
【0023】
各々の装着部7において、2つの端面壁8の一方8aから延在する分割壁11の各々を、係止部10において巻線部5から離れた側から連結対象の分割壁11に対して重なるように構成してもよい。このような構成によれば、互いに連結する2つの分割壁11のうち、より短いことによって撓み変形がより生じ難い方の分割壁11が巻線部5の外側からもう一方の分割壁11に重なるので、係止部10の係止力を高め、積層鋼板2の固定状態をより良好に保持することができる。
【0024】
各々の側面壁9は、互いに係止する係止部10からなる係合部16を有している。各々の係合部16において、互いに係止する係止部10の各々は爪17で構成されている。爪17の各々は、側面壁9の厚みを先端に向けて低減させる第1傾斜面18と、第1傾斜面18の先端から厚み方向に突出する係止面19と、係止面19の突出端から側面壁9の厚みを先端に向けて低減させる第2傾斜面20とで構成されている。このような構成により、係止部10を互いにスムーズに係止させることができる。なお、爪17の構成はこれに限らない。また、係合部16は爪17で構成されるものに限らない。
【0025】
なお、各々の巻線部5は、
図1に示すように径方向内側端において周方向幅が拡大した拡大部21を有する形状とされているが、巻線部5の形状はこれに限らず、例えば、各々の巻線部5が径方向に一定の周方向幅を有する形状であってもよい。なお、
図1において、1つのみの拡大部21に符号を付している。また、各々の装着部7は、径方向内側端が巻線部5の拡大部21に沿うように周方向幅が拡大した形状を有しているが、装着部7の形状はこれに限らず、巻線部5の形状と合わせて適宜変更可能である。
【0026】
次に、
図3~
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る積層コア固定構造について例示説明する。
【0027】
図3~
図4に示すように、本実施形態に係る積層コア固定構造1は、非接合状態の積層鋼板2からなる分割型である積層コア3を有している。積層コア3は、分割型であるヨーク4と、ヨーク4から突出する複数のティースやスロットなどとも称される巻線部5とを有している。このように、積層コア3は、非接合状態の積層鋼板2で形成された巻線部5を有している。また、積層コア固定構造1は、巻線部5に装着されることで積層鋼板2を固定するインシュレータ6を有している。なお、
図3~
図4において、
図1~
図2に示した部材に対応する部材に同一の符号を付している。インシュレータ6は例えば合成樹脂で形成され、絶縁性を有している。
【0028】
積層コア固定構造1は、インシュレータ6により非接合状態の積層鋼板2を散けないように固定した構造を有しているので、特別な部材や工程の追加を要さずに、高透磁率、低鉄損の積層コア3を有する回転電機の電機子を実現することができる。また、従来用いられていた積層鋼板2のための溶接、ダボかしめ、接着等の接合手段を不要としたことにより、製造工程の簡素化、製造コストの低減などの効果も享受することができる。なお、積層コア3は、回転電機としての電動機における電機子としての固定子のためのものであるが、これに限らない。
【0029】
インシュレータ6は、巻線部5に装着される装着部7を有している。なお、積層コア3は、1つの巻線部5を有しているが、これに限らず、2つ以上の巻線部5を有していてもよい。また、インシュレータ6は、1つの装着部7を有しているが、これに限らず、巻線部5の数に合わせて2つ以上の装着部7を有していてもよい。
【0030】
装着部7は、巻線部5の積層方向両端面に沿って延在する2つの端面壁8と、2つの端面壁8間に亘って巻線部5の両側面に沿って延在する2つの側面壁9とを有している。したがって、2つの端面壁8と2つの側面壁9とで巻線部5を囲むことで、非接合状態の積層鋼板2をより確実に固定することができる。また、電機子を形成するためにインシュレータ6の装着部7上に巻かれる電線などの導電体(図示省略)と巻線部5との良好な絶縁を確保することができる。なお、装着部7の構成はこれに限らない。
【0031】
図5に示すように、各々の側面壁9は、巻線部5の積層方向に互いに係止する係止部10を介して連結される2つの分割壁11からなっている。つまり、装着部7は、端面壁8と2つの分割壁11とで構成される2つの分割装着部12からなっており、2つの分割装着部12は互いに係止部10を介して連結される。また、インシュレータ6は2つの分割インシュレータ14からなっている。したがって、これら分割インシュレータ14で積層コア3を挟み込むだけの簡単な手順で、
図4に示すような分割型である積層コア組立体15を形成することができる。なお、
図3~
図4においては係止部10の図示を省略している。係止部10は、各々の側面壁9に全幅に亘って連続又は断続して設けられてもよいし、各々の側面壁9に幅の一部のみに亘って設けられてもよい。なお、装着部7の構成はこれに限らない。
【0032】
図3~
図4に示すように、2つの端面壁8の一方8aから延在する分割壁11の各々は、連結対象の分割壁11よりも巻線部5の積層方向に短く形成されている。つまり、2つの分割装着部12の一方12aにおける分割壁11の各々は、連結対象の分割壁11よりも巻線部5の積層方向に短く形成されている。したがって、積層コア組立体15を搬送する際に、例えば、2つの分割装着部12の一方12aではなく他方12bを支持して搬送することにより、支持側となる2つの分割装着部12の他方12bからはみだす積層鋼板2の量を低減できるので、このはみだした非接合状態の積層鋼板2の一部が搬送に伴って慣性力や重力などによって係止部10に作用する力を軽減できる。したがって、係止部10の係止状態を良好に保持し、もって、積層鋼板2の固定状態を良好に保持することができる。なお、装着部7の構成はこれに限らない。
【0033】
2つの端面壁8の一方8aから延在する分割壁11の各々を、係止部10において巻線部5から離れた側から連結対象の分割壁11に対して重なるように構成してもよい。このような構成によれば、互いに連結する2つの分割壁11のうち、より短いことによって撓み変形がより生じ難い方の分割壁11が巻線部5の外側からもう一方の分割壁11に重なるので、係止部10の係止力を高め、積層鋼板2の固定状態をより良好に保持することができる。
【0034】
各々の側面壁9は、互いに係止する係止部10からなる係合部16を有している。各々の係合部16において、互いに係止する係止部10の各々は爪17で構成されている。爪17の各々は、側面壁9の厚みを先端に向けて低減させる第1傾斜面18と、第1傾斜面18の先端から厚み方向に突出する係止面19と、係止面19の突出端から側面壁9の厚みを先端に向けて低減させる第2傾斜面20とで構成されている。このような構成により、係止部10を互いにスムーズに係止させることができる。なお、爪17の構成はこれに限らない。また、係合部16は爪17で構成されるものに限らない。
【0035】
なお、巻線部5は、
図3に示すように径方向内側端において周方向幅が拡大した拡大部21を有する形状とされているが、巻線部5の形状はこれに限らず、例えば、巻線部5が径方向に一定の周方向幅を有する形状であってもよい。なお、装着部7は、径方向内側端が巻線部5の拡大部21に沿うように周方向幅が拡大した形状を有しているが、装着部7の形状はこれに限らず、巻線部5の形状と合わせて適宜変更可能である。
【0036】
なお、前述した第1実施形態及び第2実施形態に係る積層コア固定構造1において、互いに連結する2つの分割壁11のうち、より短い方の分割壁11とより長い方の分割壁11との長さの比は、例えば1:4であるが、これに限らない。また、前述した第1実施形態及び第2実施形態に係る積層コア固定構造1において、各々の側面壁9の厚みTは例えば0.5mmであり、この場合に各々の係止面19における側面壁9の厚み方向の幅Wは例えば0.20~0.25mmである。また、第1実施形態及び第2実施形態に係る積層コア固定構造1は、エアコンディショナー用電動機の固定子を構成する場合を例として説明している。しかし、その用途はエアコンディショナーに限らず、上述した積層コア固定構造1は種々の用途、サイズの電機子を構成するために用いることができる。
【実施例】
【0037】
実施例
以下、実施例を列挙して本発明について具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定されない。
【0038】
実施例1
T型コアについて、それぞれ
図6に示すカシメ積層品とバラコア積層品を使用し、以下のような測定条件下で渦電流を測定し、それにより材料の変化を数値化した。カシメ積層品とバラコア積層品について、それぞれ3つ測定して比較した。なお、そのバラコア積層品について、カシメ積層品と同じような積厚寸法で積み上げたバラコア積層品を測定した。また、使用された測定品は、材料グレードが同様な製品を利用して製造した測定サンプルである。測定条件について、測定機器は磁路長さを入力する必要がないため、記載されていない。
【0039】
(測定条件)
使用された渦電流センサー KEYENCE EX200
製品板厚 0.5mm
製品積厚 57mm
製品重量 0.104kg
材料グレード 470W/Kg
【0040】
【0041】
表1に示すように、カシメ積層品に比べて、バラコア積層品の渦電流が大幅に低下しており、鉄損特性が改善されている。
【0042】
実施例2
丸コアについて、鉄損測定器を使用して以下の測定条件でバラコア積層品の渦電流損と滞留損を測定し、それらの合計値を鉄損とした。そして、鉄損測定が行われたバラコア積層品について、
図7に示すように、4箇所で溶接した。得られた4ヵ所溶接品について、鉄損を測定し、溶接前後の鉄損を比較した。バラコア積層品と4ヵ所溶接品について、それぞれ3つ測定した。なお、使用した鉄損測定器は、JIS C2556電磁鋼板単板磁気特性試験方法に規定された(1)Hコイル法、(2)励磁電流法に基づいて製造された鉄損測定器である。また、同一製品を使用して3台溶接を行い、溶接前後に鉄損を測定した。
図7において、左側の点線の円は4ヵ所溶接部を表し、右側は溶接前製品を表す。
【0043】
(測定条件)
製品板厚 0.5mm
製品積厚 40mm
製品重量 1.01kg
磁路長さ 282mm
材料グレード 800W/Kg
【0044】
鉄損測定において、
図8に示す回路に所定条件の電流、電圧(例えば、電流3A、電圧1.6V)を印加して発生した滞留損と渦電流損を測定し、これらの合計を鉄損とした。
【0045】
【0046】
表2から分かるように、4ヵ所溶接品に比べ、バラコア積層品の鉄損が著しく低下している。
【0047】
以上、本実施形態と実施例を例示説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 積層コア固定構造
2 積層鋼板
3 積層コア
4 ヨーク
5 巻線部
6 インシュレータ
7 装着部
8 端面壁
8a 2つの端面壁の一方
9 側面壁
10 係止部
11 分割壁
12 分割装着部
12a 2つの分割装着部の一方
12b 2つの分割装着部の他方
13 連結部
14 分割インシュレータ
15 積層コア組立体
16 係合部
17 爪
18 第1傾斜面
19 係止面
20 第2傾斜面
21 拡大部
T 厚み
W 幅