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特許7277571イノトジオール化合物を有効成分として含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】イノトジオール化合物を有効成分として含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20230511BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230511BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230511BHJP
   A61K 36/07 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P11/06
A61P17/04
A61P37/08
A23L33/10
A61K36/07
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021516338
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 KR2018005906
(87)【国際公開番号】W WO2019225783
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520460889
【氏名又は名称】カーボエキスパート インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARBOEXPERT INC.
【住所又は居所原語表記】99, Daehak-ro Yuseong-gu, Daejeon 34134 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン インキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】ニュエン ティ ミングエット
(72)【発明者】
【氏名】カン ジョンソン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347991(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0003002(KR,A)
【文献】International Immunopharmacology, 2017.11.24, Vol.54, pp.286-295
【文献】International Immunopharmacology, 2013, Vol.15, pp.666-670
【文献】China Journal of Chinese Materia Medica(中国中薬雑誌), 2011, Vol.36, No.8, pp. 1067-1070
【文献】日本未病システム学会雑誌, 2002, Vol.8, No.1, pp.46-49
【文献】Journal of Ethnopharmacology, 2011, Vol.137, pp.1077-1082
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のイノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含む、血清中のIgE濃度を低下させずTh2 CD4 T細胞の活性を調節しないアレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物であって、
前記アレルギー疾患は、管支喘息又はアトピー性皮膚炎あることを特徴とする、アレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物。

【請求項2】
前記医薬組成物は、肥満細胞の脱顆粒を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のアレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記アレルギーは、花粉、薬物、植物繊維、細菌、食物、染毛剤、化学物質からなる群から選択される1種以上によって誘導されることを特徴とする、請求項1に記載のアレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記アレルギーは、食物によって誘導されるアレルギーであることを特徴とする、請求項3に記載のアレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項5】
下記化学式1のイノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含む、血清中のIgE濃度を低下させずTh2 CD4 T細胞の活性を調節しないアレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物であって、
前記アレルギー疾患は、管支喘息又はアトピー性皮膚炎あることを特徴とする、アレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物。

【請求項6】
前記健康機能食品組成物は、肥満細胞の脱顆粒を抑制することを特徴とする、請求項5に記載のアレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物。
【請求項7】
前記アレルギーは、花粉、薬物、植物繊維、細菌、食物、染毛剤、化学物質からなる群から選択される1種以上によって誘導されることを特徴とする、請求項5に記載のアレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物。
【請求項8】
前記アレルギーは、食物によって誘導されるアレルギーであることを特徴とする、請求項7に記載のアレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物又はイノトジオール化合物を含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー(allergy)とは、過敏反応(hypersensitivity)という意味で、生物が、ある外来性物質に接し、抗原抗体反応により生体内で急激な反応が起こる現象をいう。アレルギー反応を誘発する抗原をアレルゲン(allergen)といい、典型的なアレルゲンは、花粉、薬物、植物繊維、細菌、食物、染毛剤、化学物質などである。
【0003】
現代文明の発達とともに、各種アレルゲンにさらされる機会が多くなり、アレルギー症状を訴える患者が急増している。アレルギー患者は、先進化した国であるほど、その程度が激しいと把握されており、韓国の場合にも、正確な統計データはないが、毎年、その患者数が増加しており、特に小児患者の数が急増していることが知られている。これらの理由から、国内外の有数の製薬会社や研究機関などで、アレルギー疾患による経済的、生理的、心理的負担を軽減させることができる原因的治療薬の開発に多くの財源を投資しているものの、根本的治療薬の開発には未だ至っていない。
【0004】
これまで知られている免疫過敏反応は、大きく4つの形態に分類される。I型過敏反応は、特異IgE抗体によって媒介されるアレルギー性過敏反応であり、特異IgE抗体が肥満細胞(mast cell)又は好塩基性細胞(basophil)の表面受容体と結合し、細胞内の様々な媒介物質が細胞外に分泌され、喘息、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーなどの即時型過敏反応が引き起こされる。II型過敏反応は、特異IgG抗体による媒介性反応であり、細胞の表面にある抗原成分と反応する抗体によって開始される。III型過敏反応は、抗原が多い状態で抗原と抗体が複合体を形成して補体を活性化させ、細胞毒性が現れる反応であり、最後に、IV型過敏反応は、T細胞によって媒介される細胞媒介性過敏反応である。
【0005】
肥満細胞(mast cell)は、アレルギー反応を引き起こす主な細胞であり、IgE(immunoglobulin E)とアレルゲンの結合により活性化され、様々な媒介物質を分泌して粘膜浮腫、気管支平滑筋収縮、粘液分泌の増加などを引き起こすことによってアレルギー反応に寄与する。これらの肥満細胞は、呼吸器、消化器、泌尿生殖器、真皮、血管を取り囲んでいる組織に位置しており、人体における免疫系の維持及び防御に重要な役割を果たすことが知られている(Rivera,J.,et al.,2008:Moon,T.C.,et al.,2010;Blank,U.,et al.,2013;Boyce,J.A.,2004)。
【0006】
肥満細胞は、外部からの刺激によってアレルギー炎症反応を引き起こす媒介物質を産生・分泌するようになる。これらの媒介物質は、刺激を受ける前にすでに生成され、顆粒に貯蔵されている物質(preformed mediators)と、刺激を受けた後に新たに生成・遊離される物質(newly synthesized mediators)がある(Schwartz,L.B.,et al.,1998)。
【0007】
肥満細胞の顆粒内には、ヒスタミン(histamine)、プロテオグリカン(proteoglycan)、セリンプロテアーゼ(serine-proteases)、カルボキシペプチダーゼA(carboxypeptidase A)、スルファターゼ(sulfatase)、エキソグリコシダーゼ(exoglycosidase)などがすでに生成され、存在しており、刺激を受けると、これらの物質が細胞外に遊離される。肥満細胞が刺激を受けた後、新たに生成・分泌される最も重要な物質は、アラキドン酸(arachidonic acid)由来の代謝産物であり、プロスタグランジンD2(prostagliadin D2、PGD2)、ロイコトリエンC4(leukotriene C4、LTC4)、LTD4、LTE4などがある。そのほか、血小板活性化因子(platelet activating factor;PAF)がある(アン・ガンモ,2004)。
【0008】
肥満細胞は、アレルギーの早期反応に限って作用するのではなく、後期反応や慢性アレルギー反応にも深く関係していることが明らかになった。つまり、肥満細胞から生成・分泌されるTNF-α(tumor necrosis factor-α)は、血管内皮細胞の接着分子(adhesion molecules)の発現を増加させて好酸球(eosinophil)及びTリンパ球(T lymphocyte)の標的器官への流入を促進させる。また、肥満細胞から産生されるIL(interleukin)-4、IL-13、IL-6などは、Th2(T helper type 2)細胞の反応を増加させ、最終的にはIgEの産生を増加させることによって慢性アレルギー反応に寄与する。このように、肥満細胞は、アレルギー炎症反応を引き起こし、持続させることに中心的な役割を果たしている(アン・ガンモ,2004)。
【0009】
伝統的に、アレルギー疾患の治療として、アレルギー誘発物質(アレルゲン)に対する回避用法、薬物療法、アレルゲン免疫療法の3つの治療が主な治療法として知られている。実際に、アレルギー疾患の治療のために、現在の臨床において最も一般的に用いられている薬物療法の場合、アレルギー反応に関与する化学媒介物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)に対する抑制薬(抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬など)、あるいはアレルギー反応による組織の炎症を抑える抗炎症薬(ステロイド薬、免疫抑制薬など)が主に使用されている。しかし、これらの薬物療法は、薬物を継続的に投与する場合にのみ、臨床症状が好転した状態に維持させることができるという欠点がある(Nahm,D.H.,2015)。ステロイド薬は、長期間使用した場合、様々な副作用を起こすということがよく知られており、使用に多くの注意が要求される。
【0010】
近年、アレルギー疾患の治療薬として、肥満細胞の脱顆粒(degranulation)を抑制する肥満細胞安定化薬(mast cell stabilizer)への関心が高まっている。肥満細胞安定化薬は、肥満細胞の脱顆粒を抑制し、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の効果を同時に得ることができるという利点を持っているが、他の医薬品に比べて開発は未だに不十分な状態である。クロモグリケート(cromoglycate)、ネドクロミル(nedocromil)などのクロモン(chromone)系物質が肥満細胞安定化薬として開発されているが、経口投与時の低いバイオアベイラビリティによる使用の不便さと機序の曖昧さのため、使用は限定的である(Finn,D.F.,et al.,2013)。したがって、肥満細胞に選択的であり、効果的かつ安全な、新しい概念の肥満細胞安定化薬の開発が求められている。
【0011】
カバノアナタケ(Inototus obliquus、Chaga mushroom)は、担子菌類(Basidiomycota)のヒダナシタケ目(Aphyllophorales)、タバコウロコタケ科(Hymenochaetaceae)に属し、ロシアのシベリア、フィンランド、ノルウェー、ウクライナ、日本の北海道及び韓国の五台山などの寒冷多湿な北半球でカバノキ、ハンノキ、ナナカマドなどの幹や切り株に自生するキノコである。カバノアナタケは、リグニン(lignin)、セルロース(cellulose)、ヘミセルロース(hemicellulose)などを分解する白色腐朽菌(white rot fungus)であり、野生で黒色の菌核をカバノキなどの寄主の幹に形成して寄生すると知られている(Guk M.H.,et al.,2013)。
【0012】
1950年代末から、ロシアで研究が開始され、カバノアナタケの子実体(fruit body)から抽出したβ-グルカン(β-glucan)、ポリフェノール(polyphenol)、ステロール(sterol)などの物質が人体に生理活性効果を与えることが報告された。これまで明らかになったカバノアナタケの効果としては、抗がん作用(Youn M.J.,et al.,2008; Nomura M.,et al.,2008)だけでなく、抗酸化作用(Park Y.K.,et al.,2004)、抗高脂血症、抗糖尿(Kim M.A.,et al.,2009)、抗真菌、抗ウイルス、抗炎症、鎮痛作用などがある。
【0013】
これらの様々な生理活性を持つカバノアナタケから有用な化合物を分離するための研究が進められてきており、イノトジオール(Inotodiol)、トラメテノール酸(trametenolic acid)、ラノステロール(lanosterol)、イノノツリド(inonotsulide)などの様々な化合物が分離された(Ma L.,et al.,2013)。 このうち、イノトジオール(Inotodiol)化合物の場合には、抗がん、抗炎症、メラニン形成阻害などの活性があることが明らかになっている。
【0014】
そこで、本発明者らは、カバノアナタケ抽出物から分離したイノトジオール化合物又はこれを有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物が、食物アレルギーを誘導したマウスモデルにおいて、アレルギーによる症状を改善・治療し、かつ肥満細胞の免疫活性を抑制する効果があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0015】
先行技術として、日本公開特許第2006-347991号には、カバノアナタケを含むキノコ菌糸体由来物質がアレルギー誘発物質であるヒスタミンの放出を抑制することが記載されており、本発明の構成と類似しているが、本発明のイノトジオール化合物は記載されていない。また、韓国登録特許第1351054号には、カバノアナタケを含む生薬組成物のアトピー性皮膚炎の治療効果、及びカバノアナタケが全体的な免疫力を強化し、アトピー性皮膚炎の根本的な治療に役立つことが記載されているが、本発明のイノトジオール化合物は記載されていない。韓国公開特許第2018-0003002号には、カバノアナタケ抽出物から分離したイノトジオール化合物が炎症の予防又は治療に効果があることが記載されているが、本発明のアレルギー予防又は治療、及び肥満細胞の免疫活性抑制効果は全く記載又は暗示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、イノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物又はイノトジオール化合物を含む、有効かつ安全で経口投与可能なアレルギー疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、下記化学式1のイノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ(Inototus obliquus)抽出物を含む、アレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0018】
【化1】
【0019】
前記カバノアナタケ抽出物は、カバノアナタケを70%エタノールを溶媒として抽出した抽出物に、ジクロロメタン(dichloromethane)又はクロロホルム(chloroform)を加えて分画したジクロロメタン画分又はクロロホルム画分からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0020】
また、本発明は、前記化学式1のイノトジオール化合物を有効成分として含む、アレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0021】
前記医薬組成物は、肥満細胞の脱顆粒(degranulation)を抑制することができる。
【0022】
前記アレルギーは、花粉、薬物、植物繊維、細菌、食物、染毛剤、化学物質からなる群から選択される1種以上のアレルゲンによって誘導されるものであり得、好ましくは、食物によって誘導されるアレルギーである。
【0023】
前記アレルギー疾患は、蕁麻疹、アナフィラキシー(anaphylaxis)、アレルギー性鼻炎、気管支喘息及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0024】
別の一面において、本発明は、前記化学式1のイノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ(Inototus obliquus)抽出物を含む、アレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物に関する。
【0025】
また、本発明は、前記化学式1のイノトジオール化合物を有効成分として含む、アレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物に関する。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明は、前記化学式1のイノトジオール(Inotodiol)化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ(Inototus obliquus)抽出物を含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【0028】
前記カバノアナタケ抽出物は、カバノアナタケを70%エタノールを溶媒として抽出した抽出物に、有機溶媒を加えて分画した画分であり得る。
【0029】
前記有機溶媒は、C1~C4の低級アルコール、ジクロロメタン(dichloromethane)、クロロホルム(chloroform)、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジ酢酸エチル(diethylacetate)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、アセトン(acetone)、ヘキサン(hexane)からなる群から選択される1種以上であり得る。しかし、これに限定されるものではない。前記C1~C4の低級アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどであり得る。
【0030】
前記カバノアナタケ抽出物は、好ましくは、カバノアナタケを70%エタノールを溶媒として抽出した抽出物に、ジクロロメタン又はクロロホルムを加えて分画したジクロロメタン画分又はクロロホルム画分からなる群から選択される1種以上である。
【0031】
また、本発明は、イノトジオール化合物を有効成分として含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【0032】
前記イノトジオール化合物は、通常の方法によって合成することができ、薬学的に許容可能な塩から製造してもよく、又はカバノアナタケ抽出物から分離・精製してもよい。
【0033】
前記カバノアナタケから分離されたイノトジオール化合物は、カラムクロマトグラフィーを用いて精製することができる。前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(silica gel column chromatography)、HP-20カラムクロマトグラフィー(HP-20 column chromatography)、RP-18カラムクロマトグラフィー(RP-18 column chromatography)、LH-20カラムクロマトグラフィー( LH-20 column chromatography)、高性能液体クロマトグラフィー(High-performance liquid chromatography)などから選択することができる。
【0034】
前記アレルギーとは、アレルギー誘発物質であるアレルゲンと接触した後、抗原抗体反応により生体内で急激な反応が起こる現象を意味するものであり、前記アレルゲンは、花粉、薬物、植物繊維、細菌、食物、染毛剤、化学物質からなる群から選択される1種以上であり得、好ましくは食物である。しかし、これに限定されるものではない。
【0035】
また、前記アレルギー疾患は、アレルギーによって生じる疾患であり、主な疾患としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギー、薬疹、薬剤アレルギー、血清病などがあり、かつアレルゲンの種類やアレルギー反応を引き起こす組織に応じて様々な症状が現れる。
【0036】
前記アレルギー疾患は、蕁麻疹、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択される1種以上であり得る。しかし、これに限定されるものではない。
【0037】
前記イノトジオール化合物又はこれを有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物は、肥満細胞の脱顆粒を抑制することができる。
【0038】
前記肥満細胞は、アレルゲンによって刺激を受けると、ヒスタミン、セリンプロテアーゼ、プロテオグリカン、プロスタグランジンD2、ロイコトリエンなどのアレルギー炎症反応誘発物質を細胞外に遊離し、このような反応を「肥満細胞の脱顆粒(degranulation)反応」という。 したがって、前記イノトジオール化合物又はこれを有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物の肥満細胞の脱顆粒抑制は、アレルゲン刺激によるアレルギー炎症反応誘発物質の分泌を抑制することによって、アレルギーを予防又は治療することができ、これを「 肥満細胞安定化薬(mast cell stabilizer)」という。
【0039】
特に、本発明のイノトジオール化合物は、アレルギーの治療と関連しているCD4+T細胞、CD8+細胞、B細胞、マクロファージと肥満細胞のうち、CD4+T細胞、CD8+細胞、B細胞、及びマクロファージ活性の調節には全く影響を与えない反面、肥満細胞の脱顆粒のみを選択的に抑制する。
【0040】
また、本発明は、イノトジオール化合物又はこれを有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物を含む、アレルギー疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0041】
前記医薬組成物は、イノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物を0.001重量%~100重量%含むことができる。
【0042】
前記医薬組成物は、それぞれ通常の方法に従って散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に製剤化して用いることができる。前記医薬組成物に含んでもよい担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製する。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などがあり、これらの固形製剤は、本発明のイノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤する。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用できる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などがあり、通常使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含んでもよい。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤がある。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられる。
【0043】
本発明の医薬組成物の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定の疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路、及び処方者の判断に応じて異なるであろう。これらの因子に基づいた投与量の決定は、当業者のレベル内にあり、通常の投与量は、0.01mg/kg/日~2000mg/kg/日の範囲である。より好ましい投与量は、1mg/kg/日~500mg/kg/日である。投与は、一日一回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
本発明の医薬組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与することができる。投与のすべての方式は予想でき、例えば、経口、直腸、又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜、脳血管内注射によって投与することができる。本発明の化合物は、毒性や副作用がほとんどないため、予防目的で長期間服用する場合にも安心して使用できる薬剤である。
【0045】
また、本発明は、イノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む、アレルギー疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0046】
前記イノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物は、本発明の健康機能食品組成物に0.001~100重量%で添加することができる。
【0047】
本発明の健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、丸剤又は液剤などの形態であり、本発明の抽出物を添加できる食品としては、例えば、各種食品類、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤などがある。
【発明の効果】
【0048】
本発明は、イノトジオール化合物又はこれを有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物を含む、アレルギー疾患の予防又は治療用組成物に関し、食物アレルギーが誘導されたマウスモデルに、イノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物を投与することによって、アレルギーによる症状が緩和又は治療され、かつ肥満細胞の免疫活性を抑制することを確認した。
【0049】
これにより、本発明のイノトジオール化合物とイノトジオール化合物を有効成分として含有するカバノアナタケ抽出物は、アレルギー疾患の予防又は治療組成物として有用であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】食物アレルギー誘導、並びに、イノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケ画分処理によるアレルギー症状の改善効果を示す図である。図1(A)は、直腸の温度変化を、図1(B)は、アナフィラキシー症状の緩和又は治療の程度を、図1(C)は、下痢症状のスコアをそれぞれ示す。
図2】食物アレルギー誘導、並びに、イノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケ画分処理による小腸に浸潤した好酸球数(図2(A))及び小腸における肥満細胞数(図2(B))の変化を示す。
図3】食物アレルギー誘導、並びに、イノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケ画分処理によるアレルギー関連IgE(図3(A))及びMCPT-1(図3(B))の血清中濃度の変化を示す。
図4】食物アレルギー誘導、並びに、イノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケ画分のCD4+T細胞の免疫活性を確認した結果を示す図であり、(図4(A))は、Th2 CD4+T細胞によって生成されるサイトカインであるIL-13、IL-5及びIFN-γの発現量の変化を、(図4(B))は、卵白アルブミン由来ペプチドに特異的なT細胞受容体であるDO11.00 TCRが発現されるCD4+T細胞の卵白アルブミンによる活性化及びそれに伴う細胞分裂程度を確認した結果をそれぞれ示す。
図5】食物アレルギー誘導、並びに、イノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケ画分の肥満細胞の免疫活性を確認した結果を示す図であり、受動全身アナフィラキシー(passive systemic anaphylaxis)によって肥満細胞の脱顆粒を誘導したマウスにおける直腸内の温度(図5(A))及び血中MCPT-1(図5(B))の変化を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明する実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介する内容が徹底かつ完全になるように、そして当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0052】
<実施例1. イノトジオール(Inotodiol)化合物の分離>
実施例1-1. カバノアナタケ抽出物の製造及びイノトジオール化合物の含有量の確認
本発明のイノトジオール化合物は、カバノアナタケ(Inonotus obliquus)抽出物から分離した。
【0053】
カバノアナタケ630gを微細粒子に粉砕し、70%(v/v)エタノール3,000mlを加え、40℃、90Hzの超音波攪拌下で抽出することを3回繰り返して70%エタノール抽出物(3×3.0L)を得た後、これをロータリーエバポレーター(rotary evaporator)を用いて乾燥した褐色の70%エタノール抽出物58gを得た。
【0054】
カバノアナタケの70%エタノール抽出物58gを水に溶かし、ジクロロメタン(dichloromethane;CHCl)を加えてジクロロメタン画分6.0gを得、ジクロロメタン画分を分離して残った画分に、再び酢酸エチル(ethyl acetate;EtOAc)を加えて酢酸エチル画分3.2gと水画分48.5gとを得た。
【0055】
上記で得られたカバノアナタケ抽出物及び画分に含まれているイノトジオール化合物の含有量を確認するために、高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)を行った。HPLCは、アセトニトリル(acetonitrile)の濃度勾配(0~30分;60→95%(v/v)、30~60分;95%(v/v)保持)条件で、LC-10AD(Shimadzu Co.Kyoto、Japan)を用いて行い、それぞれのカバノアナタケ抽出物及び画分の濃度が2mg/mlになるようにメタノールで溶解し、0.2μmシリンジフィルター(syringe filter)でろ過した後、10μlずつ注入した。カラムは、HECTOR-MC18(4.6×250mm、5μm粒子サイズ、RStech、Korea)を用いて行い、流速1ml/分、UV検出(210nm)でイノトジオール化合物の含有量を確認した結果、70%エタノール抽出物(EtOH Ext.)に約1%、ジクロロメタン画分(CHCl Frac.)に7.8%、酢酸エチル画分(EtOAc Frac.)に0.9%、水画分(HO Frac.)に0.05%と、水画分のイノトジオール化合物の含有量が最も低いことを確認した。
【0056】
前記分画溶媒のうち、ジクロロメタンの代わりにクロロホルムを用いて分画したクロロホルム画分の場合にも、ジクロロメタン画分と同様の量のイノトジオール化合物が含有されていることを確認した。
【0057】
実施例1-2. イノトジオール化合物の分離
前記実施例1-1で得られたカバノアナタケのジクロロメタン画分からイノトジオール化合物を分離した。
【0058】
ジクロロメタン画分2.5gを、n-ヘキサン:酢酸エチルが20:1、9:1、4:1、2:1及び1:2(v/v)の割合で混合された混合溶媒をそれぞれ1Lずつ用いて濃度勾配溶出条件によるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(silica gel column chromatography)で分画して13個の小画分を得た(Frac.C1~C13)。前記小画分のうち、Frac. C6及びFrac. C7を混合した後、n-ヘキサン:酢酸エチルが20:1(v/v)で混合された混合溶液のアイソクラティック条件によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、イノトジオール化合物210mgを分離した。
【0059】
<実施例2. イノトジオール化合物の物理化学的構造の確認>
Inotodiol;
白色アモルファス粉末;
ESI―MS:[M+ Na]+ 465.37m/z(C3050:442.27);
H NMR及び13C NMRデータは表1参照;
ESI―MS分析の結果と13C NMRデータによって分子式がC3050であることが確認された。
【0060】
イノトジオールの13C―NMRで炭素30個のピーク(peak)が確認でき、δ121.2、134.0、134.4、134.8ピークで2つの二重結合(double bond)があり、δ73.2、78.7ピークによって2つのヒドロキシル基(hydroxyl group)があると推定することができた(表2参照)。 また、H―NMRスペクトル(表2参照)において、δ0.67、0.76、0.82、0.88、0.93、1.60、1.69(3H、s)における一重項(singlet)のメチルピーク(methyl peak)と、δ0.88における二重項(doublet )のメチルピークを確認することができた。また、δ5.16(1H,t,J=7.2Hz)でH-24に該当するオレフィン(olefinic)のピークが現れ、δ3.18(1H,m,H-3)とδ3.65(1H,H-22)で酸素に結合しているオキシメチン(oxymethine)のピークが現れることを確認した。
以上の結果を論文に報告されたデータ(Du.D.,et al.,2011)と比較してイノトジオール化合物の構造を確証することができた。
【0061】
【表1】
【0062】
<実験例1. アレルギーマウスモデルの作製及び抽出物の投与>
アレルギーマウスモデルを作製するために、5週齢の雄BALB/Cマウスを用いた。アレルギー誘導物質(アレルゲン、allergen)として鶏の卵白アルブミン(ovalbumin)を用いて食物アレルギーモデルを作製した。
【0063】
マウスの免疫を誘導(immunization)するために20μgの卵白アルブミンを2mgのミョウバン(alum)と混合し、2週間間隔で2回、マウスの腹腔内に注射した。食物アレルギー誘導は、2回免疫誘導物質を注射してから2週間後に50mgの卵白アルブミンを3日間隔で5回経口投与することにより、アレルギー反応が起こるようにした。また、アレルギーの治療効果を確認するために、前記実施例1で得られたカバノアナタケの抽出物、画分及びイノトジオール化合物を卵白アルブミンを投与する間、毎日、マウスに経口投与した。このとき、陽性対照群としてデキサメタゾン(dexamethasone)を毎日投与したマウス群を用いた。50mgの卵白アルブミンを単独又はカバノアナタケ抽出物、画分又はイノトジオール化合物を最後に投与し、1時間後にアレルギーによる症状を観察した。実験群当たり6匹のマウスを用い、それぞれの実験群を下記の表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
<実験例2. アレルギー症状の改善効果の確認>
実験例2-1. 直腸(rectal)温度変化の確認
食物アレルギー誘発及び薬物処理による直腸の温度変化を確認するために、各群のマウスを用いて直腸の温度を測定した。直腸の温度は、直腸体温計のセンサーの先端を直腸に挿入して測定し、その結果を図1(A)に示す。
【0066】
図1(A)に示すように、アレルギー誘導群(allergy)の場合には、正常群(Normal)に比べて、直腸の温度が低くなることを確認した。一方、デキサメタゾン(Dexa.)又は本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物(Inotodiol)とこれを含むカバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)及びジクロロメタン画分(CH Cl Frac.)を処理した群では、食物アレルギー誘導群(allergy)に比べて、直腸の温度が高いことを確認し、特に、イノトジオール化合物及びカバノアナタケのジクロロメタン画分を処理した群の場合には、正常群と同様のレベルの直腸温度を示すことを確認した。一方、カバノアナタケの水画分(HO Frac.)を処理した場合の直腸温度は、食物アレルギー誘導群と同様のレベルの直腸温度を示した。
【0067】
これにより、本発明のイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分が、アレルギー誘発によって現れる症状の一つである、直腸の温度低下を改善するということが分かった。
【0068】
実験例2-2. アナフィラキシー(anaphylaxis)の観察
本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分の食物アレルギーによるアナフィラキシー症状の改善又は治療効果を確認するために、各実験群のマウスの反応を観察し、下記表3に基づいてアナフィラキシー症状を点数化し、その結果を図1(B)に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
図1(B)に示すように、食物アレルギー誘導群(allergy)の場合には、正常群(Normal)に比べてアナフィラキシースコアが高い反面、デキサメタゾン(Dexa.)、カバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)、ジクロロメタン画分(CHCl Frac.)及びイノトジオール化合物(Inotodiol)を処理した群のアナフィラキシースコアは、食物アレルギー誘導群に比べて低くなることを確認した。特に、カバノアナタケのジクロロメタン画分及びイノトジオール化合物を処理した群のアナフィラキシースコアがより低くなることを確認した。一方、カバノアナタケの水画分(HO Frac.)の場合には、食物アレルギーの誘導群と同様のレベルのアナフィラキシースコアを示した。
【0071】
これにより、本発明のイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分がアレルギー誘発によるアナフィラキシー症状を改善するということが分かった。
【0072】
実験例2-3. 大腸における糞便(stool)の観察
本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分の食物アレルギーによる糞便の形態変化を観察した。各実験群のマウスの大腸内便の形を肉眼で観察し、下記の表4に基づいて下痢症状を点数化し、その結果を図1(C)に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
図1(C)に示すように、食物アレルギー誘導群(allergy)の場合には、正常群(Normal)に比べて下痢症状のスコアが高いことを確認した。しかし、デキサメタゾン(Dexa.)又はカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物(Inotodiol)及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分(CHCl Frac.)を処理した群の下痢症状のスコアは、食物アレルギー誘導群に比べて低いことを確認した。一方、カバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)及び水画分(HO Frac.)を処理した群は、下痢症状の緩和効果がカバノアナタケのジクロロメタン画分に比べて低く、水画分の場合には、アレルギー誘導群と同様のレベルであることを確認した。
【0075】
これにより、本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分がアレルギー誘発による下痢症状を改善するということが分かった。
【0076】
また、図1には示していないが、カバノアナタケのクロロホルム画分を処理した場合にも、本発明のジクロロメタン画分を処理した場合と同様の直腸温度、アナフィラキシースコア及び糞便の症状のスコアを示すことを確認した。一方、イノトジオール化合物と類似の構造式を有するコレステロール(cholestero)20mg/kgを処理した場合には、イノトジオール化合物とは異なり、アレルギー誘導群と同様のレベルの直腸温度、アナフィラキシースコア及び糞便の症状のスコアを示すことを確認した。
【0077】
したがって、前記直腸温度、アナフィラキシー症状及び糞便の観察によりカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物がアレルギー症状を緩和する主要有効成分の一つであるということが分かり、さらに、イノトジオール化合物を有効成分の一部として含有しているカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分の場合にも、アレルギー症状を緩和する効果に優れていることが分かった。
【0078】
<実験例3. 食物アレルギーによる小腸の細胞変化の観察>
実験例3-1. 小腸の好酸球(eosinophils)の観察
好酸球は、食物アレルギーに重要な役割を果たすと知られている。つまり、好酸球は、小腸でアレルギー性炎症を引き起こす。そこで、小腸における好酸球の変化を観察することによって、本発明のイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分のアレルギー予防及び治療効果を確認した。
【0079】
上記実験例1における各実験群のマウスを麻酔した後、開腹して小腸を取り出てから、ホルマリン(formalin)で固定した後、パラフィン(paraffin)で処理して組織にパラフィンを浸透させ、包埋した後、ミクロトームで薄切することによって組織切片を得た。得られた小腸の組織切片を用いてH&E(hematoxylin and eosin)染色を行った後、好酸球細胞を観察した。その結果を図2(A)に示す。
【0080】
図2(A)の組織染色を用いて染色された好酸球の細胞数を測定した結果から分かるように、食物アレルギー誘導群(allergy)が正常群(Normal)に比べて小腸内の好酸球の浸潤が増加し、デキサメタゾン(Dexa.)とカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物(Inotodiol)及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分(CHCl Frac.)を処理した群の場合には、好酸球の浸潤が減少した。一方、カバノアナタケの水画分(HO Frac.)の場合には、その減少効果がほとんどないことが分かった。
【0081】
これにより、本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分がアレルギーによる炎症を緩和させることで、アレルギーを予防又は治療するということが分かった。
【0082】
実験例3-2. 小腸の肥満細胞の観察
アレルギー反応を誘発すると知られている肥満細胞(mast cell)を観察することによって、本発明のイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分のアレルギー予防及び治療効果を確認した。
【0083】
上記実験例3-1で得られた小腸の組織切片を用いて肥満細胞を観察するために、トルイジン(toluidine)で染色した後、顕微鏡で観察し、肥満細胞数を測定し、その結果を図2(B)に示す。
【0084】
図2(B)のトルイジンで染色された肥満細胞の数を測定した結果から分かるように、食物アレルギー誘導群(allergy)が正常群(Normal)に比べて小腸内の肥満細胞の数が増加し、デキサメタゾン(Dexa.)とカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物(Inotodiol)及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分(CHCl Frac.)を処理した場合には、肥満細胞の数が減少した。一方、水画分(HO Frac.)の場合には、その減少効果がほとんどないことが分かった。
【0085】
また、図2には示していないが、カバノアナタケのクロロホルム画分を処理した場合にも、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分を処理した場合と同様に、好酸球、及び肥満細胞の減少効果があることを確認した。一方、イノトジオール化合物と類似の構造式を有するコレステロール20mg/kgを処理した場合には、イノトジオール化合物とは異なり、好酸球と肥満細胞の減少効果がないことを確認した。
【0086】
これにより、本発明のカバノアナタケから分離したイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分がアレルギーの予防又は治療効果があるということが分かった。
【0087】
<実験例4. アレルギーによるIgE及びMCPT-1発現量の確認>
アレルギー反応は、アレルゲンに反応するIgEの発現に起因してアレルゲンとIgEの結合により、肥満細胞がヒスタミン(histamine)、セリンプロテアーゼ(serine protease)、プロテオグリカン(proteoglycan)などのアレルギー炎症に関連する顆粒物質を分泌するようになる。したがって、本発明のイノトジオール化合物及びこれを含むカバノアナタケのジクロロメタン画分のアレルギー予防及び治療効果を確認するために、マウスの血清中のIgE及び肥満細胞の特異的セリンプロテアーゼであるMCPT-1(mast cell protease- 1)の濃度を測定した。
【0088】
血清は、上記実験例1において50mgの卵白アルブミンを単独又はカバノアナタケ抽出物、画分又はイノトジオール化合物を最後に投与し、1日後にマウスの血液を採取することにより得た。得られた血清を100倍希釈して用いた。
【0089】
血清中のIgE濃度は、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)キットを用いて測定した。96ウェルプレートに2μg/mlの卵白アルブミンが含まれている炭酸塩コーティングバッファー(carbonate coating buffer、pH9.5)をウェル当たり100μlずつ入れ、4℃で一晩反応させてコーティングした。反応後の洗浄バッファー(washing buffer)(0.05% tween 20 in PBS)で3回洗浄した後、1%BSA(bovine serum albumin)が含まれているPBS(phosphate buffered saline)をウェル当たり200μlずつ入れ、室温で1時間処理してブロッキングさせた後、洗浄バッファーで3回洗浄した。洗浄後、血清をウェル当たり100μlずつ添加し、室温で2時間反応させて洗浄バッファーで洗浄した。1μg/mlのビオチンで標識された抗-マウスIgE(biotin conjugated anti-mouse IgE)を、ウェル当たり100μlずつ入れて1時間反応させた後、洗浄バッファーで洗浄し、再びHRP(horseradish peroxidase)が付いているストレプトアビジン(streptavidin-HRP)を30分間処理した。プレートを洗浄バッファーで5回洗浄した後、テトラメチレンベンジジン(tetramethylenbenzidine)100μlを処理して呈色させた。呈色すると、2N硫酸(HSO)を100μlずつ処理して呈色反応を停止させた後、450nmで吸光度を測定し、血清中のIgEの濃度を分析し、その結果を図3(A)に示す。
【0090】
また、セリンプロテアーゼであるMCPT-1(mast cell protease-1)の濃度は、mMCP-1 ELISAキット(eBioscience社製)を用い、メーカーから提供される方法に従って実験を行うことで測定し、その結果を図3(B)に示す。
【0091】
図3に示すように、食物アレルギー誘導群(allergy)が正常群(Normal)に比べて血清中の卵白タンパク質に特異的なIgE(図3(A))及びMCPT-1(図3(B))の濃度が増加し、カバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)とジクロロメタン画分(CHCl Frac.)を処理した群の場合には、IgE及びMCPT-1の濃度が両方とも大幅に減少した。 カバノアナタケの水画分(HO Frac.)を処理した場合には、IgE及びMCPT-1の濃度の変化がほとんどないことが分かった。一方、デキサメタゾン(Dexa.)とイノトジオール(Inotodiol)を処理した場合には、IgEの濃度はほぼ変わらなかったが、MCPT-1の濃度は大幅に減少することが分かった。
【0092】
また、図3には示していないが、カバノアナタケのクロロホルム画分を処理した場合にも、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分を処理した場合と同様に、血清中のIgE及びMCPT-1の濃度を減少させることを確認した。
【0093】
これらの結果は、アレルゲンに特異的なIgE発現の低減効果よりも、肥満細胞の活性調節・抑制効果がアレルギー症状の予防又は治療と、より直接的な関係があることを示していると言える。
【0094】
<実験例5. 肥満細胞特異的抑制効果の確認>
実験例5-1. CD4+T細胞活性調節効果の確認
Th2(T helper 2)CD4+T細胞によって生成されるサイトカインがIgEの生成を増進し、かつ肥満細胞と好酸球の分化(differentiation)を促進し、アレルギー症状を深めると知られている。また、抗アレルギー効果があると報告されている植物抽出物の場合、CD4+T細胞の活性化とTh2 CD4+T細胞のサイトカイン生成を抑制する効果を同時に持つと多数報告されている。
【0095】
そこで、本発明のイノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を含有するカバノアナタケ抽出物のCD4+T細胞活性調節の効果を確認するために、Th2 CD4+T細胞によって生成されるサイトカインの発現量分析実験と卵白アルブミン由来ペプチドに特異的なT細胞受容体(T cell receptor;TCR)のDO11.00 TCRを発現するCD4+ TCRトランスジェニックT細胞(transgenic T cell)を用いた養子移入(adoptive transfer)実験を行った。
【0096】
サイトカインの発現分析のために、上記実験例1の方法と同様の方法で試料を処理し、1日後に各群のマウスの腸間膜リンパ節(mesenteric lymph node;mLN)から細胞を分離した。このとき、デキサメタゾンは10mg/kgを処理し、肥満細胞増多症の治療薬として用いられているイマチニブ(imatinib;グリベック)20mg/kgと、イノトジオール化合物と類似の構造式を有するコレステロール20mg/kgとを処理した群を追加した。分離した細胞を、96ウェルプレートにウェル当たり1×10個ずつ分注した後、卵白アルブミンが含まれているRPMI完全培地(10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミンが含まれているRPMI培地)又は100μg/mlの卵白アルブミンが含まれているRPMI完全培地を入れ、37℃、5%COの条件の細胞培養器で3日間培養した。3日経過後に細胞培養液を集めた後、細胞培養液に分泌されたIL-5、IL-13及びIFN-γの量を、それぞれのサイトカインに該当するELISAキットとメーカーから提供された実験方法を用いて分析し、その結果を図4(A)に示す。
【0097】
卵白アルブミン由来ペプチドに特異的なT細胞免疫反応の程度を、動物実験によって測定するための実験を以下のように行った。DO11.10 TCRを発現するトランスジェニックマウス(transgenic mouse)のリンパ節からの細胞を分離した。分離した細胞をCFSE(carboxyfluorescein succinimidyl ester)という蛍光物質で染色した後、2×10個の細胞をBALB/Cマウスに静脈注射した。細胞注射一日後に卵白アルブミン50μgをミョウバンと共に腹腔内注射してDO11.00 TCR発現CD4+T細胞の分裂を誘導した。卵白アルブミン注射1日後から4日間、1日1回、イノトジオール化合物20mg/kg、カバノアナタケのエタノール抽出物320mg/kg、デキサメタゾン10mg/kg、イマチニブ10mg/kg又はコレステロール20mg/kgを経口投与した。卵白アルブミン注射5日後にBALB/Cのリンパ節から細胞を分離した後、抗-CD4抗体及び抗-DO11.10抗体を用いて細胞を染色し、フローサイトメトリー(flow cytometry)を用いて、DO11.00 TCRが発現されるCD4+T細胞におけるCFSF蛍光強度を測定して細胞分裂の程度を決定し、かつ細胞数を測定し、その結果を図4(B)にそれぞれ示す。このとき、細胞の分裂が増加するほど、CFSF蛍光強度は減少する。
【0098】
図4(A)に示すように、卵白アルブミンが含まれていないRPMI完全培地で培養した細胞(No OVA)の場合には、すべての群において、IL-5、IL-13及びIFN-γの発現がないか、又は同様に現れた。一方、卵白アルブミンが含まれているRPMI完全培地で培養した細胞(OVA)の場合には、IL-5、IL-13及びIFN-γがすべてアレルギー誘導群(allergy)で顕著に増加した。しかし、カバノアナタケのエタノール抽出物を処理した群(EtOH Ext.)の場合には、サイトカインの量が正常群(Normal)と同様のレベルであることを確認した。しかし、イノトジオール化合物を処理した群(Inotodiol)の場合には、IL-5、IL-13及びIFN-γ発現量がすべてアレルギー誘導群の発現量と有意差がないことを確認した。
【0099】
また、図4(B)の卵白アルブミン由来ペプチドに特異的なTCRであるDO11.00 TCR発現CD4+T細胞を分析した結果から分かるように、卵白アルブミンを投与した群(allergy)におけるDO11.00 TCRを発現するCD4+T細胞のCFSE蛍光強度が卵白アルブミン非免疫群(Normal)の細胞と比較して格段に減少すると共に、CD4+T細胞の数が顕著に増加したが、カバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)及びイマチニブ(Imat.)を処理した場合には、CFSEの蛍光強度が非免疫群と比較して差がないだけでなく、細胞の数も増加しなかった。一方、イノトジオール化合物を処理した群(Inotodiol)の場合には、DO11.00 TCRが発現されたCD4+T細胞のCFSE蛍光強度が、卵白アルブミンのみを注射した群と同様のレベルで減少し、CD4+T細胞数も著しく増加することを確認した。
【0100】
また、図4には示していないが、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分を処理した場合にも、カバノアナタケ抽出物のようにTh2 CD4+T細胞によるサイトカイン発現を抑制することを確認した。
【0101】
上記の結果により、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分は、アレルゲンによって誘導される格段のTh2 CD4+T細胞活性調節能を持つ反面、イノトジオールは、そのような効能がないことが分かった。
【0102】
実験例5-2. 肥満細胞の免疫活性調節効果の確認
上記実験例4におけるイノトジオール化合物又はこれを含有するカバノアナタケ抽出物のMCPT-1発現の減少は、イノトジオール化合物による肥満細胞の免疫活性抑制と関連していることが分かった。
【0103】
そこで、本発明のイノトジオール化合物又はイノトジオール化合物を含有するカバノアナタケ抽出物の肥満細胞の脱顆粒抑制効果を直接確認するために、受動全身アナフィラキシー(passive systemic anaphylaxis)実験を行った。
【0104】
上記実験例1における5週齢の雄BALB/Cマウスにイノトジオール化合物(20mg/kg)、カバノアナタケのエタノール抽出物(320mg/kg)、イノトジオール化合物の対照群として類似の構造式を有するコレステロール20mg/kg、陽性対照群としてデキサメタゾン10mg/kg及びイマチニブ20mg/kgを1日1回、3日間経口投与した。経口投与して3日目に、抗-DNP(dinitrophenol)-IgE3μgを静脈注射してから、24時間後に、抗原としてDNPが結合されたBSA(bovine serum albumin)80μgを静脈注射し、肥満細胞の脱顆粒を誘導した。肥満細胞の脱顆粒を誘導したマウスの直腸温度を測定し、血中MCPT-1の量を分析し、その結果を図5に示す。
【0105】
図5に示すように、マウスの直腸温度を測定した結果(図5(A))において、肥満細胞の脱顆粒を誘導した場合(DNP-BSA処理)には、直腸の温度が低下している反面、イノトジオール化合物( Inotodiol)及びカバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)を処理した場合には、直腸の温度が低下していないことを確認した。
【0106】
また、肥満細胞の脱顆粒過程で排出されるMCPT-1の量を分析した結果(図5(B))においては、肥満細胞の脱顆粒を誘導した場合(DNP-BSA処理)には、マウスの血中MCPT-1の濃度が増加され、デキサメタゾン(Dexa.)、イマチニブ(Imat.)、イノトジオール化合物(Inotodiol)及びカバノアナタケのエタノール抽出物(EtOH Ext.)を処理した場合には、MCPT-1の濃度の増加が顕著に減少することを確認した。一方、イノトジオール化合物と類似の構造式を有するコレステロール(Chol.)を処理した場合には、イノトジオール化合物とは異なり、MCPT-1の減少効果がないことを確認した。
【0107】
図5にはその結果を示していないが、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分の場合にも、イノトジオール化合物と同様にMCPT-1の量を減少させることを確認した。
【0108】
これにより、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分、クロロホルム画分及びイノトジオール化合物が肥満細胞の脱顆粒を抑制することを確認した。
【0109】
上記の結果により、本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分及びクロロホルム画分の場合には、CD4+T細胞活性を調節すると共に、肥満細胞の脱顆粒を抑制することにより、複合的な免疫阻害機能を持っている反面、本発明のイノトジオール化合物は、複合的な免疫阻害機能を持っているデキサメタゾンやジクロロメタン画分及びクロロホルム画分とは異なり、肥満細胞の脱顆粒のみを選択的に抑制する効能によって、より選択的かつ安全にアレルギー疾患を治療できることが分かった。
【0110】
<製剤例1. 薬学的製剤>
製剤例1-1. 錠剤の製造
本発明のカバノアナタケのジクロロメタン画分200gを、ラクトース175.9g、ジャガイモデンプン180g及びコロイド性ケイ酸32gと混合した。この混合物に10%ゼラチン溶液を添加した後、粉砕して14メッシュのふるいに通した。これを乾燥させ、ここにジャガイモデンプン160g、タルク50g及びステアリン酸マグネシウム5gを添加して得られた混合物を錠剤にした。
【0111】
製剤例1-2. 注射液の製造
本発明のイノトジオール化合物1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを作った。この溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱して滅菌した。
【0112】
<製剤例2. 食品の製造>
製剤例2-1. 調理用調味料の製造
本発明のイノトジオール化合物を調理用調味料の1重量%で添加して健康増進のための調理用調味料を製造した。
【0113】
製剤例2-2. 小麦粉食品の製造
本発明のイノトジオール化合物を小麦粉に0.1重量%で添加し、この混合物を用いてパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を作ることのよって健康増進用食品を製造した。
【0114】
製剤例2-3. スープ及び肉汁(gravies)の製造
本発明のイノトジオール化合物をスープ及び肉汁に0.1重量%で添加して健康増進用スープと肉汁を製造した。
【0115】
製剤例2-4. 乳製品(dairy products)の製造
本発明のイノトジオール化合物を牛乳に0.1重量%で添加し、前記牛乳を用いてバター、アイスクリームなどの様々な乳製品を製造した。
【0116】
製剤例2-5. 野菜ジュースの製造
本発明のイノトジオール化合物0.5gをトマトジュース又はニンジンジュース1,000mlに加え、健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0117】
製剤例2-6. フルーツジュースの製造
本発明のイノトジオール化合物0.1gをリンゴジュース又はグレープジュース1,000mlに加え、健康増進用フルーツジュースを製造した。
図1
図2
図3
図4
図5