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特許7277575炭化タングステンから作られた焼結されたボール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】炭化タングステンから作られた焼結されたボール
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/08 20060101AFI20230511BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230511BHJP
   C01B 32/949 20170101ALI20230511BHJP
   C04B 35/56 20060101ALI20230511BHJP
   C22C 1/051 20230101ALI20230511BHJP
【FI】
C22C29/08
B22F1/00 P
B22F1/00 Q
C01B32/949
C04B35/56 260
C22C1/051 G
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021519616
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2019077410
(87)【国際公開番号】W WO2020074609
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】1859340
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ブッテ,ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブーサン-ルー,イヴ,マルセル,レオン
(72)【発明者】
【氏名】ノネ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ロッシケ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ボッティリエーリ,スティーヴン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/152448(WO,A1)
【文献】特開2004-339591(JP,A)
【文献】特表2006-528550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0168038(US,A1)
【文献】特開2005-279559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 29/08
B22F 1/00
C01B 32/949
C04B 35/56
C22C 1/051
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
90質量%超の焼結されたボールを含有する粉末であって、該焼結されたボールが、
焼結されたボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
89%≦W≦97%、
5%≦C≦8%、
Co≦0.5%、
Ni≦0.5%、
W、C、Co及びNi以外の元素、すなわち他の元素≦3%
の化学組成、
結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、55%超の1以上の炭化タングステンの含量、及び
14g/cm以上のバルク密度
を有し、
前記粉末が、0.5未満の(D 90 +D 10 )/D 50 比を有し、
50 、D 10 及びD 90 は、前記ボールのサイズの累積粒子径分布曲線における、50質量%、10質量%及び90質量%にそれぞれ等しい百分率に対応する前記ボールのサイズを云い、前記ボールサイズが昇順でランク付けされている、
前記粉末
【請求項2】
前記焼結されたボールの前記1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、80%超である、請求項1に記載の粉末
【請求項3】
前記焼結されたボールにおいて、0.01%<Ti+Ta+B+Cr+Nb+Mo+V<2.5%である、請求項1又は2に記載の粉末
【請求項4】
前記焼結されたボールにおいて、
W>90%且つW<96%、及び/又は
C>5.5%且つC<7.5%、及び/又は
Co<0.3%、及び/又は
Ni<0.3%、及び/又は
Fe<0.5%、及び/又は
他の元素<2.5%、及び/又は
前記1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、85%超である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の粉末
【請求項5】
前記焼結されたボールにおいて、
W<95%、及び/又は
C>5.9%且つC<7.0%、及び/又は
Co<0.1%、及び/又は
Ni<0.1%、及び/又は
他の元素<2%、及び/又は
前記1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、95%超である、
請求項4に記載の粉末
【請求項6】
前記焼結されたボールが、14.3g/cm以上のバルク密度を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末
【請求項7】
前記焼結されたボールが、14.6g/cm以上のバルク密度を有する、請求項6に記載の粉末
【請求項8】
前記焼結されたボールにおいて、Zr<0.17%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粉末
【請求項9】
前記焼結されたボールにおいて、Zr<0.1%である、請求項8に記載の粉末
【請求項10】
前記焼結されたボールにおいて、0.2%<Ti<2.5%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の粉末
【請求項11】
前記焼結されたボールにおいて、0.2%<Ta<2.5%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の粉末
【請求項12】
前記焼結されたボールにおいて、0.1%<Ti<1.5%且つ0.2%<Ta<2%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の粉末
【請求項13】
前記焼結されたボールにおいて、0.01%<B<2.5%である、請求項1~12のいずれか1項に記載の粉末
【請求項14】
前記焼結されたボールが、0.90超の真球度を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の粉末
【請求項15】
前記焼結されたボールにおいて、WC及びWCは合計で、該ボールの結晶化された全ての相の質量の85%超を表す、請求項1~14のいずれか1項に記載の粉末
【請求項16】
前記焼結されたボールが、0.1μm以上及び/又は30μm以下の平均グレインサイズを有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の粉末
【請求項17】
1.8mm未満且つ10μm超のメジアン径D50を有する、請求項16に記載の粉末。
【請求項18】
a)下記の工程c)の最後に得られるボール粉末が請求項1~17のいずれか1項に記載の粉末の組成を有するように、原料を用意すること、
b)該原料を原料ボール粉末に成形すること、
c)1700℃超の温度で焼結して、焼結されたボール粉末を得ること
の工程を含む製造方法。
【請求項19】
前記焼結温度が1800℃超である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記焼結が大気圧で行われる、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記原料が、WC粉末、並びに任意的に、炭素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ホウ素、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化ニオブ及び酸化タングステンの1以上の粉末を含み、該粉末は、等量の導入された前駆体粉末によって少なくとも部分的に置き換えられ得、該粉末の全粒子のメジアン径が2μm未満である、請求項1820のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記原料が、WC粉末、並びに任意的に、炭素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ホウ素、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化ニオブ及び酸化タングステンの1以上の粉末を含み、該粉末は、等量の導入された前駆体粉末によって少なくとも部分的に置き換えられ得、該粉末の各々のメジアン径が2μm未満である、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末の全粒子のメジアン径が1μm未満である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末の各々のメジアン径が1μm未満である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記原料の前記組成が、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
Co<0.3%、及び/又は
Ni<0.3%、
の化学組成を有する焼結されたボール粉末を得るように適合されている、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記原料の前記組成が、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
Co≦0.1%、及び/又は
Ni≦0.1%、
の化学組成を有する焼結されたボール粉末を得るように適合されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記原料の前記組成が、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
Co≦0.05%、及び/又は
Ni≦0.05%、
の化学組成を有する焼結されたボール粉末を得るように適合されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
粉砕剤、湿式分散剤として、又は表面処理の為に、請求項1~17のいずれか1項に記載の粉末を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の炭化タングステンから作られた焼結されたボール、90質量%超のボールを含有する粉末、該ボールを製造する方法、及び特に粉砕剤として、該ボールを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物又は採掘産業は、慣用的な方法によって最初に乾燥粉砕されうる材料の微粉砕の為に、特に、炭酸カルシウム、酸化チタン、石膏、カオリン及び一般に組み合わされた形の金属を含有する鉱石(酸化物、硫化物、ケイ酸塩等)の微粉砕の為に、ボールを使用し、これらの方法はまた、従来の精製方法、例えば浮遊選鉱による従来の精製方法、を伴いうる。
【0003】
全てのこれらのボールは慣用的に、0.03~数mmのサイズを有し、特に良好な耐摩耗性を有していなければならない。
【0004】
粉砕効率を更に改善する為には、高密度を有する材料、例えば炭化タングステン、から作られた焼結されたボールの使用が、考慮されることができる。より高い密度はまた、粉砕されるべき懸濁物からの粒子の分離を容易にする。
【0005】
コバルト及び/又はニッケルは一般的に、1以上の炭化タングステンから作られた焼結されたボールの製造における金属結合剤として使用され、且つ焼結温度が下げられることを可能にする。
【0006】
上記ボールの使用中に生じた摩耗は、特に、コバルト及び/又はニッケル化合物を放出する効果を有し、上記化合物は、粉砕若しくは均質化された材料の汚染の問題、又は更には衛生及び環境の問題を生じうる。同様に、衛生及び環境の問題は、該ボールの製造中に引き起こされうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、粉砕用ボールとして使用するのに好適であり、及びその使用が衛生及び環境の問題及び/又は粉砕された材料の汚染の問題を制限する、1以上の炭化タングステンから作られた新規な焼結されたボールが必要とされている。
【0008】
実施するのが簡単であり且つ経済的な、そのようなボールを製造する為の方法がまた必要とされている。
【0009】
本発明の一つの目的は、これらの必要性に少なくとも部分的に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、焼結されたボールであって、
該焼結されたボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
89%≦W≦97%、
5%≦C≦8%、
Co≦0.5%、
Ni≦0.5%、
W、C、Co及びNi以外の元素、すなわち他の元素≦3%
の化学組成、
結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、55%超の1以上の炭化タングステンの含量、及び
14g/cm以上のバルク密度
を有する、上記焼結されたボールを提案する。
【0011】
好ましくは、該1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、80%超である。
【0012】
好ましくは、該化学組成物は、0.01%未満のホウ素を有し、好ましくはホウ素を有さず、及び、該1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、80%超である。
【0013】
本明細書の以下でより詳細に説明される通り、本発明者等は、この特性の組み合わせが、引き起こされる技術的な問題を解決可能にすることを予想外に発見した。
【0014】
従って、本発明に従うボールは特に、マイクロ粉砕適用に特によく適している。本発明に従うボールはまた、湿式分散適用及び表面処理において使用されることができる。
【0015】
本発明に従うボールは、以下の任意的な特性の1以上を更に含みうる。
W>90%及び/又はW<96%又はW<95%、及び/又は
C>5.5%又はC>5.9%及び/又はC<7.5%又はC<7.0%、及び/又は
Co<0.3%又はCo<0.1%、及び/又は
Ni<0.3%又はNi<0.1%、及び/又は
Fe<0.5%、及び/又は
他の元素<2.5%又は<2%、及び/又は
1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、85%超又は95%超であり、
0.01%<Ti+Ta+B+Cr+Nb+Mo+V<2.5%、
バルク密度は、14.3g/cm以上又は14.6g/cm以上であり、
Zr<0.17%又はZr<0.1%、
0.2%<Ti<2.5%、
0.2%<Ta<2.5%、
一つの実施態様において、0.1%<Ti<1.5%且つ0.2%<Ta<2%、
0.01%<B<2.5%、
該ボールは、0.90超の真球度を有し、
一つの実施態様において、WC及びWCは合計で、該ボールの結晶化された全ての相の質量の85%超を表し、
該ボールは、グレインから作られ、且つ、0.1μm以上及び/又は30μm以下の平均グレインサイズを有する。
【0016】
本発明はまた、本発明に従う90質量%超の上記焼結されたボール、好ましくは本発明に従う実質的に100%の上記焼結されたボール、を含有する粉末に関する。
【0017】
本発明はまた、本発明に従う粉末を製造する為の方法であって、
a)下記の工程c)の最後に得られるボール粉末が本発明に適合するように、原料を用意すること、
b)該原料を原料ボール粉末に成形すること、
c)焼結して、焼結されたボール粉末を得ること
の工程を含む、上記方法に関する。
【0018】
本発明に従う方法は、以下の任意的な特性の1以上を更に含みうる。
工程a)において、該原料が、WC粉末、並びに任意的に、炭素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ホウ素、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化ニオブ及び酸化タングステンの1以上の粉末を含み、該粉末は、当量の導入された前駆体粉末によって少なくとも部分的に置き換えられ得、該粉末の全粒子のメジアン径、好ましくは該粉末の各々のメジアン径が、2μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.5μm未満、であり、
好ましくは、該原料において、該原料に基づく質量パーセンテージで、Co<0.2%、好ましくはCo<0.1%、好ましくはCo<0.05%、であり、好ましくはCo含量が、実質的に0であり、
好ましくは、該原料において、該原料に基づく質量パーセンテージで、Ni<0.2%、好ましくはNi<0.1%、好ましくはNi<0.05%、であり、好ましくはNi含量が、実質的に0であり、
好ましくは、該原料において、該原料に基づく質量パーセンテージで、Fe<0.5%、好ましくはFe<0.4%、好ましくはFe<0.3%、好ましくはFe<0.2%、好ましくはFe<0.1%、であり、
好ましくは、工程b)における該成形は、2バール未満、1.5バール未満、1.1バール未満、好ましくは1バールの圧力、好ましくは大気圧、で行われ、
好ましくは、工程c)における焼結温度は、1700℃超、好ましくは1800℃超、好ましくは1900℃超、且つ好ましくは2300℃未満、であり、
好ましくは、工程c)における該焼結は、2バール未満、1.5バール未満、1.1バール未満、好ましくは1バールの圧力、好ましくは大気圧、で行われ、
好ましくは、工程c)における焼結段階の期間は、0.5時間超、好ましくは1時間超及び/又は5時間未満、好ましくは4時間未満、好ましくは3時間未満、又は更には2時間未満、であり、
好ましくは、工程c)において、該焼結は、不活性雰囲気又は還元雰囲気中で行われる。
【0019】
注目すべきことには、非常に低い、又は0でさえの、ニッケル及び/又はコバルトの含量で、
工程b)において該原料を強力に加圧する必要なしに、且つ
該焼結工程c)中、高圧熱処理、例えば熱間等方圧加圧(HIP:hot isostatic pressing)又は熱間加圧(HP:hot pressing)、に頼る必要なしに、
該原料の全粒子についての2μm未満のメジアン径が、14.0g/cm以上、好ましくは14.3g/cm以上、好ましくは14.5g/cm以上、好ましくは14.6g/cm以上、好ましくは15g/cm以上、のバルク密度を有する焼結されたボールを得ることを可能にする。
【0020】
一つの実施態様において、本発明に従う方法は、工程b)において又は工程c)において、好ましくは工程b)且つ工程c)において、加圧操作を含まない。
【0021】
該製造方法は、特にボールの生成について、大幅に簡略化される。
【0022】
最後に本発明は、粉砕剤、湿式分散剤として、又は表面の処理の為の、特にセラミック若しくは金属の表面の処理の為の、本発明に従う粉末の使用に関する。
【0023】
定義
「ボール」は、真球度、すなわち、この真球度が得られたやり方に関わらず、その最小フェレット径とその最大フェレット径との比が0.75以上である粒子を意味する。
【0024】
「ボール粉末」は、90質量%超のボールを含有する粉末を意味する。
【0025】
「焼結されたボール」は、適切な原材料を混合し、そして次に、この原料混合物を成形し、結果として生じた原料ボールを、この原料ボールを焼結する為に十分な温度且つ時間で焼結することによって得られたボールを意味する。焼結されたボールは、焼結中に一緒になって結合された「グレイン」(grains)から構成される。
【0026】
本願の文脈において、「1以上の炭化タングステン」は、75質量%超の元素W、特にWC、WC、を含む任意の炭化物、並びに、結晶学的な立方晶構造(cubic crystallographic structure)を有する、タングステン及びチタンの炭化物、並びに結晶学的な立方晶構造を有する、タングステン及びタンタルの炭化物を云う。
【0027】
粉末粒子の「サイズ」は慣用的に、レーザー粒子径分析器によって測定された粉末粒子の寸法である。
【0028】
「パーセンタイル」50(D50と示される)、10(D10と示される)、90(D90と示される)及び99.5(D99.5と示される)は、粉末粒子又はボールのサイズの累積粒子径分布曲線における、50質量%、10質量%、90質量%及び99.5質量%にそれぞれ等しい百分率に対応する該粒子又はボールのサイズを云い、該粒子又はボールのサイズは、昇順でランク付けされる。この定義に従って、99.5質量%の該粉末粒子又はボールは、D99.5未満のサイズを有し、0.5質量%の該粒子又はボールは、D99.5以上のサイズを有する。該ボール粉末についてのパーセンタイルは、Horiba社から販売されているCamsizer(商標)XTを用いて調製された粒子径分布を使用して決定されることができる。
【0029】
粒子又はボール粉末の「メジアン径」は、50パーセンタイルと呼ばれている。従って、メジアン径は、該粉末粒子又はボールを、質量が等しい第1の集団と第2の集団とに分割し、これらの第1の集団及び第2の集団は、それぞれメジアン径以上又はメジアン径未満のサイズを有する粒子又はボールだけを含む。
【0030】
粒子又はボール粉末の「最大サイズ」は、99.5パーセンタイルと呼ばれている。
【0031】
粉末の「メジアン真球度」は、この粉末の粒子を、質量が等しい第1の集団と第2の集団とに分割し、これらの第1の集団及び第2の集団は、それぞれメジアン真球度を超える、それに等しい又はそれ未満の真球度を有する粒子だけを含む。
【0032】
幾つかの炭化物、例えばWC+WC、の総含有量は、たとえ一つの実施態様において上記炭化物のそれぞれが存在するとしても、該炭化物のそれぞれが存在することを意味しない。
【0033】
粉末の「バルク密度」は、該粉末の質量と粉末粒子の累積体積との比を意味し、従って、これらの粒子内に位置する密閉気孔を含む。
【0034】
元素の「前駆体」は、本発明に従うボールの製造中に上記元素に変換する構成物である。
【0035】
焼結されたボールのグレインの「平均サイズ」は、「平均線形切片」寸法に従って測定された寸法である。このタイプの測定方法は、ASTM規格E1382に記載されている。該測定は、実施例に記載されている通り、ボールの断面において実施されることができる。一般的に、本発明に従うボール及び粉末の特性は、以下の実施例について記載される方法に従って測定されることができる。
【0036】
「有する」(contain)、「含む」(comprise)、又は「有する」(have)は、限定的に解釈されるべきでない。
【0037】
別段に記載されない限り、組成物を特徴付ける為に使用されるパーセンテージは常に、上記組成物に基づく質量パーセンテージを云う。
【0038】
相(WC、WC等)の質量含量は、結晶化された相の総質量に基づいて測定される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
焼結されたボールを製造する方法
本発明に従う焼結されたボールを製造する為に、前述の及び以下に詳説される工程a)~c)を含む方法に従って進めることが可能である。
【0040】
工程a)において、工程b)の成形方法に好適な原料は、当業者に周知である通り、好ましくは室温で用意される。該原料は、工程c)の最後に得られる該ボール粉末が本発明に適合するように適応される。この目的を達成する為に、該原料は好ましくは、WC粉末、並びに任意的に、炭素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ホウ素、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化ニオブ及び酸化タングステンの1以上の粉末からなる、無機粉末の微粒子混合物を含む。
【0041】
これらの粉末はまた、当量の導入された前駆体粉末によって少なくとも部分的に置き換えられることができる。
【0042】
不純物は、該原料に意図的には導入されない元素からなる。該粉末は好ましくは、酸素を除く不純物の総含量が、該原料の該微粒子混合物に基づく質量パーセンテージで、0.5%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.1%未満、であるように選択される。
【0043】
該粉末は好ましくは、それらのメジアン径が、2μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.5μm未満、であるように選択される。該粉末は、この目的の為に、例えば衝撃及び/又は摩擦粉砕によって、工程a)の前に粉砕又は同時粉砕されることができる。
【0044】
好ましくは、該原料は、炭化チタン粉末、炭化タンタル粉末、炭化ホウ素粉末、炭化バナジウム粉末、炭化モリブデン粉末、炭化クロム粉末、炭化ニオブ粉末、及びこれらの化合物の前駆体粉末のうちの1以上の粉末を含む。好ましくは、該粉末のそれぞれ、好ましくは上記粉末の全て、のメジアン径と、炭化タングステン粉末のメジアン径との比が、5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2未満、好ましくは1未満、好ましくは0.9未満、好ましくは0.8未満、好ましくは0.7未満、好ましくは0.6未満、好ましくは0.5未満、である。
【0045】
一つの実施態様において、WCは、該原料に導入される唯一の炭化タングステンである。
【0046】
好ましくは、該原料は、Ti+Ta+B+Cr+Nb+Mo+V含量に対するW含量の質量比が、35.6超、好ましくは44.5超、好ましくは59超、且つ9700未満、好ましくは1940未満、好ましくは970未満、好ましくは485未満、である。
【0047】
一つの実施態様において、該原料は、B含量に対するW含量の質量比が、8900超であり、Ti+Ta+Cr+Nb+Mo+V含量に対するW含量の質量比が、35.6超、好ましくは44.5超、好ましくは59超、且つ485未満、好ましくは323未満、好ましくは243未満、好ましくは194未満、である。
【0048】
好ましくはこの実施態様において、WCが該原料に導入される唯一の炭化タングステンである場合、該原料が炭化チタン粉末を有する場合、及び該原料が炭化タンタル、炭化クロム、炭化ニオブ、炭化モリブデン又は炭化バナジウムを実質的に有しない場合、該原料は、炭化チタン粉末の量に対するWC粉末の量の質量比が、30.3超、好ましくは38超、好ましくは51超、且つ413未満、好ましくは275未満、好ましくは207未満、好ましくは165未満、である。
【0049】
一つの実施態様において、該原料は、Ti+Ta+Cr+Nb+Mo+V含量に対するW含量の質量比が、890超であり、B含量に対するW含量の質量比が、28超、好ましくは35超、好ましくは47超、好ましくは70超、好ましくは141超、且つ7663未満、好ましくは1533未満、好ましくは766未満、好ましくは383未満、である。
【0050】
好ましくはこの実施態様において、WCが該原料に導入される唯一の炭化タングステンである場合、該原料がBC粉末を有する場合、及び該原料が炭化チタン、炭化タンタル、炭化クロム、炭化ニオブ、炭化モリブデン又は炭化バナジウムを実質的に有しない場合、該原料は、BC粉末の量に対するWC粉末の量の質量比が、23超、好ましくは29超、好ましくは39超、好ましくは59超、好ましくは117超、且つ6389未満、好ましくは1278未満、好ましくは639未満、好ましくは319未満、である。
【0051】
該焼結されたボールにおけるWC含量は、該原料における炭素含量によって調整されることができる。該焼結されたボールにおける該WC含量を増大する為に、該原料における該炭素含量は、例えば炭素供給源、例えばカーボンブラック粉末、好ましくは酸素を殆ど又は全く有しない、粉末又は液体形態の有機化合物、例えばパラフィン、を添加することによって、増大されることができる。
【0052】
該焼結されたボールにおけるWC含量を増大し、及び/又は遊離炭素含量を低減する為に、より高い酸素含量を含むタングステン金属粉末及び/又は炭化タングステン粉末、及び/又は酸化タングステン粉末が、該原料に添加されることができる。
【0053】
該原料は、該微粒子混合物に加えて、溶媒、好ましくは水、を含み得、その量は、工程b)の該成形方法に好適な量である。該原料はまた、分散剤、可塑剤、表面張力調整剤、ゲル化剤及び/又は消泡剤を含みうる。当業者に周知であるこれらの添加剤は、工程b)において使用される該成形方法に好適である。
【0054】
工程b)において、焼結されたボールの製造について既知の慣用的な任意の成形方法が使用されることができる。これらの方法の中でも、以下が挙げられうる。
例えば造粒機、流動床造粒機、又は造粒ディスク、を使用する造粒方法、
スラリーの噴霧乾燥方法、
ゲル化方法、
射出成型又は押出し方法、及び
加圧方法。
【0055】
一つの実施態様において、工程a)及び工程b)は、特に溶媒が成形中に徐々に添加される場合、少なくとも部分的に併合される。
【0056】
好ましい実施態様において、工程b)は、加圧を含まない。
【0057】
工程c)において、該原料ボールは、不活性雰囲気中、例えばアルゴン若しくは窒素中、又は還元雰囲気中、例えば水素及び/又は一酸化炭素雰囲気中、又は真空中で焼結される。
【0058】
好ましくは、焼結は、電気炉中、好ましくは大気圧で、行われる。
【0059】
周知である通り、焼結時間及び温度は、結果として生じるボールのバルク密度の調整を可能にする。焼結中の圧力の適用は、結果として生じるボールのバルク密度を増大することができることがまた周知である。しかしながら、以下の実施例に示されている通り、小さいメジアン径は、室内圧力での成形及び焼結によって、本発明に従うバルク密度を得ることを可能にする。
【0060】
好ましくは、該焼結時間は、0.5時間超及び/又は5時間未満である。好ましくは、該焼結時間は、1~2時間である。
【0061】
工程c)における該焼結は、1700℃超、好ましくは1800℃超、好ましくは1900℃超、且つ好ましくは2300℃未満、の温度で行われる。
【0062】
該焼結工程c)の後、得られた焼結されたボール粉末は、意図された使用の為に好適な粒子径分布を得るように構成された、例えばふるい分け及び/又は空気分離によって、任意的な粒子径選別工程に付されることができる。該焼結されたボール粉末はまた、例えばスパイラル式分離器によって、形態学的選別を受けることができる。
【0063】
焼結されたボール
本発明に従う焼結されたボール、好ましくは本発明に従う粉末、は、以下の任意的な化学組成特性の1以上を有しうる。
タングステンW含量は、89.5%超、好ましくは90%超、好ましくは90.8%超、好ましくは91%超及び/又は96%未満、好ましくは95%未満、好ましくは94.5%未満、好ましくは94.1%未満、であり、
炭素C含量は、5.5%超、好ましくは5.8%超、好ましくは5.9%超及び/又は7.5%未満、好ましくは7%未満、好ましくは6.5%未満、であり、
コバルトCo含量は、0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、であり、
ニッケルNi含量は、0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、であり、
W、C、Co、Ni以外の元素の含量は、2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、であり、
一つの実施態様において、ジルコニウムZr含量は、0.17%未満、好ましくは0.16%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.08%未満、好ましくは0.05%未満、である。有利には、該焼結されたボールのバルク密度が増大され、
一つの実施態様において、鉄Fe含量は、0.5%未満、好ましくは0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満、であり、
好ましくは、Ti+Ta+B+Cr+Nb+Mo+V質量含量は、0.01%超、好ましくは0.05%超、好ましくは0.1%超、好ましくは0.2%超、且つ2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、であり、
一つの実施態様において、B質量含量は、0.01%未満、好ましくは実質的に0であり、及びTi+Ta+Cr+Nb+Mo+V質量含量は、0.2%超、好ましくは0.3%超、好ましくは0.4%超、好ましくは0.5%超、且つ2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、であり、
一つの実施態様において、特にTiC粉末が、工程b)における該原料中に存在する場合、Ti質量含量は、0.2%超、好ましくは0.3%超、好ましくは0.4%超、好ましくは0.5%超、且つ2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、の含量であり、
一つの実施態様において、特にTaC粉末が工程b)における該原料中に存在する場合、Ta質量含量は、0.2%超、好ましくは0.3%超、好ましくは0.4%超、好ましくは0.5%超、且つ2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、の含量であり、
一つの実施態様において、特にTiC粉末及びTaC粉末が、工程b)における該原料中に存在する場合、Ti質量含量は、0.1%超、好ましくは0.2%超、好ましくは0.3%超、好ましくは0.4%超、且つ1.5%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.8%未満、であり、及びTaは、他の元素中に、0.2%超、好ましくは0.3%超、好ましくは0.4%超、好ましくは0.5%超、且つ2%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1.2%未満、の含量で存在し、総Ti+Ta含量は好ましくは、2.5%未満であり、
一つの実施態様において、特にBC粉末が、工程b)における該原料中に存在する場合、Bは、他の元素中に、0.01%超、好ましくは0.05%超、好ましくは0.1%超、好ましくは0.2%超、且つ2.5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、の含量で存在する。
【0064】
好ましくは、該焼結されたボールは、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
89%≦W≦95%、
5%≦C≦8%、
Co≦0.5%、
Ni≦0.5%、
他の元素≦3%
の化学組成を有する。
【0065】
好ましくは、該焼結されたボールは、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
W>90%且つW<94.5%、及び/又は
C>5.5%及びC<7.5%、及び/又は
Co<0.3%、及び/又は
Ni<0.3%、及び/又は
Fe<0.5%、及び/又は
他の元素<2.5%
の化学組成を有し、及び/又は
1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、85%超である。
【0066】
好ましくは、該焼結されたボールは、該ボールの質量に基づく質量パーセンテージで、
90.8%<W<94.1%、及び/又は
C>5.9%及びC<7%、及び/又は
Co<0.1%、及び/又は
Ni<0.1%、及び/又は
他の元素<2%
の化学組成を有し、及び/又は
1以上の炭化タングステンの含量は、結晶化された相に基づく質量パーセンテージで、95%超である。
【0067】
好ましくない実施態様において、コバルトCoの含量及び/又はニッケルNiの含量、及び/又はW、C、Co、Ni、Ti、Ta、B、Cr、Nb、Mo及びV以外の元素の含量、及び/又はジルコニウムZr及び/又は鉄Feの含量は、0.01%超、又は更には0.05%超、である。
【0068】
好ましくは、本発明に従うボールは、0.80超、好ましくは0.85超、好ましくは0.90超、好ましくは0.92超、好ましくは0.94超、好ましくは0.95超、の真球度を有する。
【0069】
本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、は、結晶化された相の質量に基づく質量パーセンテージで、好ましくは60%超、好ましくは65%超、好ましくは70%超、好ましくは75%超、好ましくは80%超、好ましくは85%超、好ましくは87%超、好ましくは90%超、好ましくは92%超、好ましくは94%超、好ましくは95%超、好ましくは97%超、好ましくは98%超、の1以上の炭化タングステンの含量を有する。
【0070】
一つの実施態様において、特に工程b)においてBC粉末が、該原料の質量に基づく質量パーセンテージで、0.01%超、好ましくは0.1%超、の量で該原料中に存在する場合、並びに該原料が、該原料の質量に基づく質量パーセンテージで、0.1%未満の総含量の炭化チタン粉末、炭化タンタル粉末、炭化クロム粉末、炭化ニオブ粉末、炭化モリブデン粉末及び炭化バナジウム粉末を有する場合、本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、は、それぞれ該ボール、好ましくは該粉末、の結晶化された相の質量に基づく質量パーセンテージで、好ましくは60%超、好ましくは65%超、の1以上の炭化タングステンの含量を有し、ここで、1以上の炭化タングステンを除いた残りは、その質量の70%超、好ましくは90%超、について、ホウ化タングステンから構成される。
【0071】
一つの実施態様において、特に工程b)において該原料が、該原料の質量に基づく質量パーセンテージで、0.2%超の総含量の炭化チタン粉末、炭化タンタル粉末、炭化クロム粉末、炭化ニオブ粉末、炭化モリブデン粉末及び炭化バナジウム粉末を有し、該原料が、該原料の質量に基づく質量パーセンテージで、0.01%未満のBC粉末を有する場合、本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、は、それぞれ該ボール、好ましくは該粉末、の結晶化された相の質量に基づく質量パーセンテージで、好ましくは80%超、好ましくは85%超、好ましくは87%超、好ましくは90%超、好ましくは92%超、好ましくは94%超、好ましくは95%超、好ましくは97%超、好ましくは98%超、の1以上の炭化タングステンの含量を有する。
【0072】
WC相及びWC相は合計で、本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、の全ての結晶化された相の質量の、好ましくは55%超、好ましくは60%超、好ましくは65%超、好ましくは70%超、好ましくは75%超、好ましくは80%超、好ましくは85%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、を表す。
【0073】
WC相は好ましくは、本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、の全ての結晶化された相の質量の、50%超、好ましくは55%超、好ましくは60%超、好ましくは65%超、好ましくは70%超、好ましくは75%超、好ましくは80%超、好ましくは85%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、を表す。
【0074】
本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、の全ての結晶化された相に基づくWC相及びWC相の質量含量の比であるWC/WCは好ましくは、2超、好ましくは3超、好ましくは4超、である。
【0075】
一つの実施態様において、該WC/WC比は好ましくは、40未満、好ましくは35未満、又は更には30未満、又は更には25未満、又は更には20未満、又は更には15未満、である。
【0076】
本発明に従うボールは、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、0.5μm以上及び/又は30μm以下、好ましくは20μm以下、好ましくは17μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは12μm以下、の平均グレインサイズを有する。一つの実施態様において、該ボールは、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、0.5μm以上、且つ4μm以下、好ましくは3μm以下、好ましくは2μm以下、好ましくは1.5μm以下、の平均グレインサイズを有する。一つの実施態様において、該ボールは、4μm超、好ましくは5μm以上、且つ30μm以下、好ましくは20μm以下、好ましくは17μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは12μm以下、の平均グレインサイズを有する。
【0077】
本発明に従うボールは、走査電子顕微鏡法によって撮影された画像で測定された、6%未満、好ましくは4%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、の表面孔密度(surface pore density)を有する。
【0078】
本発明に従うボール、好ましくは本発明に従う粉末、は好ましくは、14.3g/cm以上、好ましくは14.6g/cm以上、好ましくは15g/cm以上、のバルク密度を有する。
【0079】
本発明に従うボールは好ましくは、2mm未満、好ましくは1.5mm未満、好ましくは1mm未満、好ましくは800μm未満、の最大フェレット径を有する。
【0080】
ボール粉末
本発明はまた、質量パーセンテージで、90%超、好ましくは93%超、好ましくは95%超、好ましくは97%超、好ましくは99%超、好ましくは実質的に100%、のボールを含有する粉末に関する。
【0081】
該ボール粉末のメジアン真球度は好ましくは、0.80超、好ましくは0.85超、好ましくは0.90超、好ましくは0.92超、好ましくは0.94超、好ましくは0.95超、好ましくは0.97超、好ましくは0.98超、である。有利には、粉砕の為に必要とされるエネルギーが低減される。
【0082】
該ボール粉末は好ましくは、2mm未満、好ましくは1.5mm未満、好ましくは1mm未満、好ましくは800μm未満、の最大サイズを有する。
【0083】
該ボール粉末は好ましくは、1.8mm未満、好ましくは1.5mm未満、好ましくは1mm未満、好ましくは600μm未満、及び/又は好ましくは10μm超、好ましくは20μm超、好ましくは30μm超、のメジアン径D50を有する。そのようなメジアン径は特に、湿式分散適の為に特によく適している。
【0084】
該ボール粉末は好ましくは、0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.2未満、好ましくは0.1未満、の(D90+D10)/D50比を有する。有利には、該ボールと粉砕される懸濁物との分離が容易にされる。
【実施例
【0085】
下記の非限定的な実施例は、本発明を例示する目的の為に与えられている。
【0086】
測定プロトコル
下記の方法は、様々な焼結されたボール粉末の或る特性を決定する為に使用された。
【0087】
ボールの真球度を決定する為に、最小及び最大のフェレット径が、Horiba社によって販売されているCamsizer(商標)XTにおいて測定される。
【0088】
本発明に従う焼結されたボールの化学組成物に存在する元素の定量化は、下記を使用して行われる:
炭素については、HORIBA社によって販売されている炭素-硫黄分析器モデルEMIA-820Vを使用して行われ、
酸素については、LECO社によって販売されている酸素-窒素分析器モデルON836を使用して行われ、
ホウ素については、以下の方法に従って得られた溶液の誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)によって行われる。分析されるべき該焼結されたボールは最初に、空気中650℃で4時間か焼を受ける。次に、該焼成ボール700mgが、炭酸ナトリウム3gと混合され、そして950℃に加熱され、この温度で15分間保持される。冷却の後、得られた混合物は、脱塩水200cm及び30容量%の塩酸溶液10cmに添加され、次に、撹拌下で全体が200℃にされて、該混合物を溶解した。次に、得られた溶液が濾過され、脱塩水を使用して500mlにして、ICPによってアッセイされる為の溶液を得た。
ホウ素、酸素及び炭素以外の元素については、最初に、空気中650℃で24時間か焼を受けた、四ホウ酸リチウム5gと分析されるべき焼結されたボール500mgとの混合物を融解することによって得られたビーズに対して蛍光X線によって行われ、ここで、元素含量の決定は、該か焼が、分析されるべき該ボール中に存在する全ての元素を酸化し且つ該ボールが該か焼後にもはや炭素を有していないと仮定して行われる。
【0089】
本発明に従う焼結されたボール中に存在する結晶化された相の定量化が、該ボールにおいて直接的に行われ、ここで、該ボールは自己接着性炭素ペレット上に結合され、その結果、該ペレットの表面が該ボールで最大限に覆われる。
【0090】
本発明に従う焼結されたボール中に存在する該結晶化された相は、例えば銅DX管を備えたPanalytical社製のX’Pert PRO回折計タイプの装置によって、X線回折によって測定される。回折パターンの獲得は、この装置から、5°~80°で構成された角度範囲2θにわたってピッチ0.017°及び計数時間150秒/ピッチで行われる。前方光学素子は、使用される1/4°の固定されたプログラム可能な発散スリット、0.04ラジアンのソーラースリット、10mmに等しいマスク及び1/2°の固定散乱防止スリットを備えている。試料は、優越方位を制限する為に試料自体が回転させられる。後方光学素子は、使用される1/4°の固定されたプログラム可能な散乱防止スリット、0.04ラジアンのソーラースリット及びNiフィルターを備えている。
【0091】
次に、該回折パターンが、EVAソフトウェア及びICDD2016データベースを使用して定性的に分析された。
【0092】
存在する相が検出されると、High Score Plusソフトウェアを用いて、以下の慣用的な戦略に従ってリートベルト精密化法(Rietveld refinement)によって該回折パターンが定量的に分析され、ここで、該炭素ペレットから生じるありうるピークは、精密化には考慮されなかった。
バックグラウンドシグナルの精密化は、下記の選択肢:すなわち、0に等しい「屈曲因子」及び40に等しい「粒度」、とともに、「処理」、「バックグラウンドの決定」機能を使用して行われ、
慣用的に、検出され且つ定量化可能な存在する相のICDDシートが選択され、従って該精密化において考慮され、
次に、「利用可能なバックグラウンドを使用する」と予め決定されたバックグラウンドシグナルを選択し、及び「自動:オプション相フィット-デフォルトリートベルト」モードを選択することによって、自動精密化が行われ、
次に、少ない方の相が該自動精密化に考慮されていなかった場合には、手動精密化が行われ、
WC相が主な相である場合には、該WCの相の「ピーク形状1」パラメーターの手動精密化が行われ、
最後に、選択された全ての相の「B全体」パラメーターが、手動で同時に行われる。
【0093】
該ボールのバルク密度は、ヘリウムピクノメーター(Micromeritics(商標)社製のAccuPyc 1330)を使用し、置き換えられたヘリウムの体積の測定に基づく慣用的な方法を使用し、ボール粉末において決定された。
【0094】
粒子径分析は、Horiba社によって販売されているCamsizer(商標)XTを使用して実施された。
【0095】
該焼結されたボールの平均グレインサイズは、平均線形切片方法(Mean Linear Intercept method)によって測定された。このタイプの方法は、ASTM規格E1382に記載されている。この規格に従うと、複数の分析線が該ボールの画像上に引かれ、そして次に、各分析線に沿って、上記分析線を交差するグレインの2つの連続する境界間の、「切片」と呼ばれている長さが測定される。
【0096】
次に、該切片「I」の平均長「l’」が決定される。
【0097】
該粉末の該焼結されたボールの平均グレインサイズ「d」は、下記の関係式によって与えられる:d=1.56・l’。この式は、''Average Grain Size in Polycrystalline Ceramics'' M. I. Mendelson, J. Am. Cerm. Soc. Vol. 52, No.8, pp 443-446の式(13)に由来する。
【0098】
該焼結されたボールの表面孔密度は、以下の方法によって測定された。該焼結されたボールの切片の研磨表面の複数の画像は、各画像が20~50個のグレインを有するように、走査電子顕微鏡を使用して作られる。撮影される画像の数は、覆われた表面全体が約100個のグレインを表示するような数である。該グレインによって覆われた表面SGi、及び該細孔によって覆われた表面SPiが、画像iのそれぞれについて計算される。該グレインによって覆われた全表面SGTは、該画像iのそれぞれの、該グレインによって覆われた表面の合計SGiに等しい。該細孔によって覆われた全表面SPTは、各画像iにおける、該細孔によって覆われた表面の合計SPiに等しい。百分率として表される該表面孔密度は、SPT/(SGT+SPT)に等しい。
【0099】
製造プロトコル
実施例1の焼結されたボールは、「炭化タングステン」比重15の「WC」ボールであり、GlenMills(商標)社から流通されており、500μmに等しいメジアン径を有する。
【0100】
実施例2の焼結されたボールは、99%超の炭化タングステンWCを有し且つレーザー粒子径分析器を用いることによって測定された0.4μmに等しいメジアン径を有する炭化タングステン粉末から調製された。
【0101】
炭化タングステン粉末300gからなる原料が、40cmに等しい直径を有し且つ30rpmで回転する造粒機プレートに導入される。回転中に、脱塩水及び1%ポリビニルアルコール(PVA)の溶液20gが、種が形成されるまで徐々にスプレーされる。該種が形成されると、所望のサイズの原料ボールが得られるまで該種が成長するように、タングステン粉末500gが徐々に添加され、同時にその上に脱塩水と1%ポリビニルアルコール(PVA)との40gの溶液が徐々にスプレーされる。
【0102】
次に、得られた原料ボールが取り出され、110℃で24時間風乾させられ、その後、300℃/時に等しい温度上昇速度及び温度低下速度で、アルゴン下で2時間のプラトー時間にわたって2200℃で焼結される。焼結の後、該焼結されたボールはふるいにかけられ、そして400~600μmのグレインサイズ範囲が保持される。
【0103】
実施例3~実施例6の焼結されたボールは、下記から調製される:
実施例3~実施例5については、99%超の炭化タングステンWCを含み且つレーザー粒子径分析器を用いることによって測定された0.4μmに等しいメジアン径を有する炭化タングステン粉末から、
実施例6については、99%超の炭化タングステンWCを含み且つレーザー粒子径分析器を用いることによって測定された1.5μmに等しいメジアン径を有する炭化タングステン粉末から、
実施例4については、0.7%に等しいO元素含量、19.4%に等しい全炭素含量、並びに0.3%未満のO、Ti及びC以外の元素含量を有し且つレーザー粒子径分析器を用いることによって測定された2.5μmに等しいメジアン径を有するTiC粉末から、
実施例5及び実施例6については、2.3%に等しいO元素含量、21.8%に等しい全炭素含量、並びに0.4%未満のO、B及びC以外の元素含量を有し且つレーザー粒子径分析器を用いることによって測定された2.8μmに等しいメジアン径を有するBC粉末から
調製される。
【0104】
実施例3については、WC粉末200gが、0.5lに等しい体積且つ10cmに等しい直径を有する高密度ポリエチレン瓶に入れられる。該瓶は、60rpmに等しい速度で48時間、瓶回転装置(turner)上で回転させられる。形成された顆粒は回収され、そして300℃/時に等しい温度上昇速度及び温度低下速度で、アルゴン下で2時間のプラトー時間にわたって2250℃で焼結される。焼結の後、該焼結されたボールはふるいにかけられ、そして100~600μmのグレインサイズ範囲が保持される。
【0105】
実施例4については、WC粉末198g、TiC粉末2g及び脱塩水60gが、パドルミキサーで1時間混合されて、懸濁物を得る。次に、該懸濁物は、高密度ポリエチレン瓶に移され、そして該瓶は、液体窒素浴に浸漬されて、該懸濁物を凍結させる。
【0106】
凍結の後、水は、真空昇華(凍結乾燥)によって除去される。
【0107】
次に、回収された粉末は、メノウ乳鉢で解凝集される(deagglomerated)。該粉末200gが、10cmに等しい直径を有する0.5lの高密度ポリエチレン瓶に入れられる。該瓶は、60rpmに等しい速度で48時間、瓶回転装置上で回転させられる。形成された顆粒は回収され、そして300℃/時に等しい温度上昇速度及び温度低下速度で、アルゴン下で2時間のプラトー時間にわたって2250℃で焼結される。焼結の後、該焼結されたボールはふるいにかけられ、そして100μm~600μmのグレインサイズ範囲が保持される。
【0108】
実施例5及び実施例6のボールは、実施例4のボールを得る為に実施された方法と同じ方法に従って作られ、WC粉末198gとTiC粉末2gとの混合物は、WC粉末199gとBC粉末1gとの混合物によって置き換えられ、実施例6に従うボールは、2100℃に等しい温度で焼結される。
【0109】
結果
得られた結果が、下記の表1にまとめられている。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例3のボールの微細構造は、細長い形状を有する大きなグレインの存在を示す。
【0112】
その上、試験は、溶融炭化タングステンボール(融解によって得られた)が、空洞のような欠損を有することができ、使用中に、それらのボールがより破壊されやすくなることを示している。本発明に従う焼結されたボールは、溶融ボールとは完全に異なる微細構造を有しており、それ故に好ましい。試験は、粉砕中の、本発明に従うボールの良好な挙動を示している。
【0113】
本発明に従うボールの使用は、物質の粉砕に限定されない。本発明に従うボールは、塗料、インク、染料、磁気ラッカー、液体及び固体構成物の分散及び均質化の為の農芸化学的化合物の産業において、又は表面処理方法におけるスプレーされた媒体として使用されることもできる。