(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ブレーキアセンブリの遊びを調整するための方法およびブレーキアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20230511BHJP
F16D 66/02 20060101ALI20230511BHJP
F16D 65/38 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
F16D66/02 H
F16D65/38
(21)【出願番号】P 2021538900
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2019072974
(87)【国際公開番号】W WO2020057920
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノシュ サボ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブレッシング
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト トリンペ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング パーレ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス クリングナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブーフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドラス スィポス
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】チャバ コクレヘル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ティハニー
(72)【発明者】
【氏名】チャバ ムリナールチェク
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19850384(DE,A1)
【文献】特開2012-240632(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10228115(DE,A1)
【文献】特開2000-055093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスク(9)と、ブレーキパッド(11)と、前進方向(F)に駆動されて前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とを摩擦係合の状態にもたらして制動位置を規定し、かつ後退方向(R)に駆動されて前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との係合を解除するとともに前記ブレーキパッド(11)を休止位置に移動させる出力軸(2)を有するアクチュエータ(1)と、前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との間の所定の軸方向遊び間隔を調整するための遊び調整器と、を備えるブレーキアセンブリ(100)の遊びを調整するための方法であって、
前記ブレーキパッド(11)を前記休止位置から前記後退方向(R)で所定の基準位置に移動させ、
前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との間の前記軸方向遊び間隔の調整を開始し、
望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値が検出された場合に調整過程を開始する、
方法。
【請求項2】
軸方向遊び値、ならびに/もしくは前記ブレーキパッド(11)および/または前記ブレーキディスク(9)の摩耗レベルを測定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記調整過程において前記ブレーキパッド(11)を前記後退方向(R)に移動させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ブレーキパッド(11)および/または前記ブレーキディスク(9)の測定された前記摩耗レベル、ならびに/もしくは測定された前記遊び値を、それぞれの所定の閾値と比較し、測定された前記値と、それぞれの所定の前記閾値との間の偏差が検出された場合に前記調整過程を開始する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
所定の動作状況の場合に前記出力軸(2)に前記後退方向(R)で作用する力を吸収するために配置されたエネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)に抗して、前記ブレーキパッド(11)を前記後退方向(R)に移動させる、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ブレーキアセンブリ(100)であって、
車両のホイールに回転係合しているブレーキディスク(9)と、
アクチュエータ力が加えられると、前記ブレーキディスク(9)に摩擦係合するブレーキパッド(11)と、
前進方向(F)に駆動されて前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とを前記摩擦係合の状態にもたらして制動位置を規定し、かつ後退方向(R)に駆動されて前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との係合を解除するとともに前記ブレーキパッド(11)を休止位置に移動させる出力軸(2)を有するアクチュエータ(1)と、
前記ブレーキパッド(11)の前記休止位置での前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との間の所定の軸方向遊び間隔を調整する遊び調整器と、
軸方向遊び値を測定するためのセンサユニットと、
を備え、
前記遊び調整器は、調整過程を開始するために、前記ブレーキパッド(11)が前記アクチュエータ(1)によって前記後退方向(R)で所定の基準位置に移動させられるよう構成されており、
前記ブレーキアセンブリは、前記センサユニットが望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値を検出した場合に、前記アクチュエータ(1)が前記調整過程を開始するように、前記センサユニットに接続された制御ユニットを備えている、ブレーキアセンブリ(100)。
【請求項7】
前記ブレーキパッド(11)を前記基準位置に移動させるために必要なアクチュエータ力は、前記出力軸(2)を前記前進方向(F)に駆動して前記摩擦係合の状態にもたらし、かつ前記出力軸(2)を前記後退方向(R)に駆動して前記摩擦係合の解除状態にもたらすために必要なアクチュエータ力よりも高い、請求項6記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項8】
前記センサユニットは、前記アクチュエータ(1)に関して配置され、かつ/または前記センサユニットが前記ブレーキパッド(11)および/または前記ブレーキディスクの摩耗レベルを測定するように適合させられる、請求項7記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項9】
前記センサユニットは、光学センサおよび/または音響センサを備える、請求項7または
8記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記ブレーキパッド(11)および/または前記ブレーキディスク(9)の測定された前記摩耗レベル、ならびに/もしくは測定された前記遊び値を、それぞれの所定の閾値と比較し、測定された前記値と、それぞれの所定の前記閾値との間の偏差の場合に前記調整過程を開始する、請求項6記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項11】
所定の動作状況の場合に前記出力軸(2)に前記後退方向で作用する力を吸収するためのエネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記ブレーキパッド(11)が前記後退方向(R)で前記所定の基準位置に移動させられたときに、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)が、前記前進方向に向けられた力を前記出力軸に加えるように配置される、請求項6から
10までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項12】
前記基準位置は、前記エネルギー吸収
および/または蓄積ユニット
(33)によって加えられる所定の力値によって規定される、請求項
11記載のブレーキアセンブリ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキアセンブリの遊びを調整するための方法に関する。さらに、本発明はブレーキアセンブリを提供する。
【0002】
一般に、電気的に作動するブレーキアセンブリは、互いに摩擦係合して制動力を発生させるためのブレーキパッドおよびブレーキディスクを備える。ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦接触は、通常、アクチュエータがブレーキパッドにアクチュエータ力を加えてブレーキパッドをブレーキディスクの方向に移動させることによって発生させられる。ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦接触により、ブレーキパッド摩耗およびブレーキディスク摩耗が発生し、これらの摩耗は、アクチュエータ力が加えられていないために制動力が発生させられないアイドル位置または休止位置でのブレーキパッドとブレーキディスクとの間の間隔を変化させる。摩耗が増加すると、第一に、最大制動力にもはや到達できなくなる可能性があり、第二に、所望の制動力が、実際に加えられている制動力とは異なる。
【0003】
米国特許出願公開第2008/0156593号明細書から、パッド摩耗を補償する機械式の調整機構が知られている。この機械式の調整は、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合ブレーキ状況、もしくは代替的には制動力が加えられず、各制動動作状況後にブレーキパッドがブレーキディスクに対して移動する休止位置であるアイドル位置のどちらかで継続的にトリガされる。
【0004】
しかし、そのような機械式の調整機構は、多くのブレーキアセンブリ用途または環境には適していない。
【0005】
例えば、特にホイールブレーキアクチュエータが高速で動作し、誤作動または電力損失が発生した場合のブレーキ部品の損傷を回避するために、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況の場合にアクチュエータ力を吸収するように配置され得る。
【0006】
これらのエネルギー吸収装置は、作動力または制動力がホイールブレーキアクチュエータによって加えられないアクチュエータ休止位置またはアイドル点が、正確に規定されず、むしろブレーキ動特性に依存するという結果を招く。特に、アクチュエータの出力軸は、ブレーキ作動後に都度わずかに異なる軸方向位置に戻され、その結果、通常は遊び調整をトリガするために使用されるアイドル点が軸方向に変化し、したがって規定されない。
【0007】
したがって、既知の機械式の遊び調整手段は、エネルギー吸収ユニットを有するホイールブレーキアクチュエータ、およびアイドル点を正確に規定できない他の用途には適していない。さらに、ブレーキアセンブリの信頼できる機能を提供するために、ブレーキ作動の都度、調整工程を継続的に実行する必要がないことが見出された。
【0008】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服すること、特にブレーキアセンブリの遊びを調整するためのより効率的な方法、特にアイドル点を正確に規定することができないかつ/またはエネルギー吸収ユニットが要求される用途に適した方法を提供することである。
【0009】
この目的は、独立請求項1および6の主題によって解決される。
【0010】
本発明の一態様によれば、ブレーキアセンブリの遊びを調整するための方法が提供される。ブレーキアセンブリは、ブレーキディスクと、ブレーキパッドと、前進方向に駆動されてブレーキパッドとブレーキディスクとを摩擦係合の状態にもたらす出力軸を有するアクチュエータと、を備える。ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦係合の位置は、制動位置と呼ばれる。出力軸は、後退方向に駆動されて、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合を解除し、ブレーキパッドを休止位置に移動させてもよい。休止位置は、アクチュエータ力または制動力が加えられない位置と呼ばれ、また、特にダイナミックまたは常用制動動作中の制動動作後にブレーキパッドが戻るアイドル位置と呼ばれる場合もある。
【0011】
ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の所定の軸方向遊び間隔を調整するための遊び調整器をさらに備える。所定の軸方向遊び間隔は、車両の製造業者もしくは車両を修理するためのガレージ従業員によって、最適な制動動作特性が達成され得るように、特に最大制動力が与えられ得るように、かつ/またはユーザもしくはドライバによるブレーキペダルの作動とブレーキパッドによるブレーキディスクへの制動力の伝達との間の遅延が最適化されるように設定される。遊び調整器は、ブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの摩耗が増加しているにもかかわらず、ブレーキアセンブリの信頼性の高いブレーキ機能を保証するのに役立つ。言い換えれば、遊び調整器は、特にブレーキパッドとブレーキディスクとの間の軸方向遊び間隔を減少させかつ/または増加させることによって、ブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの摩耗を補償する。
【0012】
本発明によれば、ブレーキパッドが休止位置から後退方向に移動させられ、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の軸方向遊び間隔の調整が開始される。負のストロークと呼ばれることがある、休止位置から始まる後退方向へのブレーキパッドの運動によって、好ましくは、後退方向に向けられたアクチュエータ力を出力軸に加えるアクチュエータによって実行されるブレーキパッドの運動によって、遊び調整過程は、望まれた場合または必要な場合にのみ実行されることが保証される。さらに、好ましくは、ブレーキパッドを休止位置を越えて後退方向に所定の基準位置に能動的に移動させることによって、実際の軸方向遊び間隔を決定するための一定の基準点が提供される。
【0013】
本発明の例示的な実施形態では、軸方向遊び値、ならびに/またはブレーキパッドおよび/もしくはブレーキディスクの摩耗レベルが測定される。好ましくは、軸方向遊び値は、制動位置と休止位置との間でのブレーキパッドの軸方向移動振幅として、特に制動位置と基準位置との間でのブレーキパッドの軸方向移動振幅として規定され得る。これらの測定を実行するために、適切な測定装置が設けられていてよく、かつ遊び調整過程が開始され得るようにブレーキアセンブリに、特にアクチュエータに連結されていてよい。言い換えれば、遊び調整過程の開始後、遊び値および/または摩耗値が測定される。
【0014】
本発明の更なる発展によれば、望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値が検出された場合に調整過程が開始される。好ましくは、そのような望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値が測定された場合、ブレーキパッドが休止位置から所定の基準位置に後退方向で移動させられる。好ましくは、遊び調整の量は、ブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの測定された摩耗レベルに依存する。
【0015】
本発明の例示的な実施形態では、ブレーキパッドおよび/もしくはブレーキディスクの測定された摩耗レベル、ならびに/または測定された遊び値は、それぞれの所定の閾値と比較され、好ましくは、ブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの摩耗レベルの閾値ならびに軸方向遊び間隔の閾値が提供される。測定された値と、それぞれの所定の閾値との間の偏差が検出された場合に、特にブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの測定された摩耗レベルに所定の摩耗レベル閾値から偏差が生じた場合にかつ/または測定された遊び値に遊び閾値から偏差が生じた場合に、調整過程、好ましくはブレーキパッドを休止位置から後退方向に移動させることが開始され得る。本発明の更なる発展によれば、調整過程は、測定された値と、それぞれの所定の閾値との間の偏差が所定の許容偏差を超えた場合にのみ開始される。例えば、許容偏差は±5%、±7%、±10%、±15%未満であり得る。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、ブレーキパッドは、所定の動作状況の場合に、出力軸に後退方向で作用する力を吸収するために配置されかつ/または吸収するように適合させられたエネルギー吸収および/または蓄積ユニットに抗して後退方向に移動させられる。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、再利用のために、エネルギー、好ましくは吸収されたエネルギーを蓄積するように適合させられている。エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは保護ユニットと呼ばれることもある。なぜならば、ブレーキアセンブリまたはブレーキアセンブリ部品への損傷が防止されるからである。
【0017】
所定の動作状況は、例えば、エネルギー供給の予期せぬ停止またはブレーキアクチュエータの内部故障の際など、ブレーキアセンブリの制御されていない状況で生じる場合がある。制動中、ブレーキアセンブリの力伝達部品には、制動力レベルによって予荷重が加えられる。制御された状況では、アクチュエータは、初期の無圧位置、好ましくは休止位置に力伝達部品を戻し、力伝達部品の運動を円滑に制動して抑える。保護ユニットを使用しないブレーキダウン運動中に故障や電力喪失などのエラーが生じた場合、ブレーキアクチュエータ部品は、予圧ブレーキアセンブリ部品、好ましくはキャリパユニットによってさらに加速され、運動終端位置で打撃のような衝突または衝撃によって停止され、それにより、ブレーキアセンブリ部品、好ましくはアクチュエータが損傷する。
【0018】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、吸収された力、好ましくは、所定の動作状況の場合に出力軸に作用する力に関連する吸収されたエネルギーを散逸させるように適合させられる。例えば、吸収された力または吸収されたエネルギーは、摩擦、電子抵抗または粘性減衰によって散逸させられ得る。損傷を防ぐために、エネルギー吸収ユニットの配置および機能により、特に、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向に作用する力の散逸により、過剰な力または過剰なエネルギーがブレーキアセンブリシステムから除去される。
【0019】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、吸収された力を蓄積するように適合させられる。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、ばね部材、アキュムレータまたはバッテリを備える。蓄積された力、特に蓄積された吸収エネルギーは、車両のエネルギー回生システム、好ましくはブレーキアセンブリのエネルギー回生システムに供給されてもよい。この場合、蓄積された吸収エネルギーは、その後の制動動作において、アクチュエータのためのエネルギー入力として使用されてもよい。
【0020】
本発明の更なる例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況において出力軸に後退方向で作用する力を打ち消すように適合させられる。更なる発展では、打ち消す力は、出力軸に後退方向で作用する力によって生じた出力軸の運動エネルギーが、吸収ユニットの運動エネルギー、熱および/または電気的エネルギーに転換されるように作用する。したがって、利用可能なエネルギー蓄積スペースまたは後続の制動動作に必要となるエネルギーに応じて、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を蓄積し、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を散逸させることが可能である。
【0021】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、アクチュエータが、出力軸を後退方向および前進方向に駆動するための電気機械を備えることで実現される。電気機械は、所定の動作状況において出力軸の力を吸収するように適合させられた発電機モードで動作可能であってもよい。発電機モードは、機械的エネルギー、好ましくは、例えば出力軸またはアクチュエータの別の駆動する出力軸の運動エネルギーが、電力または電気的エネルギーに変換される動作モードとして理解されてもよい。したがって、所定の動作状況において存在する過剰なエネルギーは、発電機モードに供給するために使用されてもよく、エネルギー吸収ユニットによって吸収されたエネルギーを車両の更なる電気部品に供給するために使用されてもよい。
【0022】
本発明の別の例示的な実施形態では、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとが摩擦係合される制動終端位置を有する。さらに、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合が解除される、ブレーキアセンブリの休止終端位置が与えられる。休止位置を越える後退方向への出力軸の軸方向運動を制限するように、停止要素が配置されてもよい。このことは、停止要素が、後退方向において休止位置に対してずらして配置されることを意味する。さらに、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、停止要素への出力軸の衝突を防止し、それによって、ブレーキアセンブリの損傷を防止するように配置されてもよい。
【0023】
本発明の更なる発展では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、休止位置から後退方向への出力軸の移動に際して、好ましくは逆向きのばね力および/または減衰力が出力軸に加えられるように、停止要素に関連付けられたばね部材または粘性減衰器を備える。発生したばね力および/または減衰力は、所定の動作状況の出力軸に後退方向で作用する限界力を打ち消す。それゆえ、出力軸の後退方向の軸方向運動が減速され、好ましくは停止される。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニットである。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況の場合に、出力軸の力を吸収するために自動的に作動させられるように、電気的に作動させられるかまたは停止されかつ/またはアクチュエータに連結される。本発明の更なる発展によれば、所定の動作状況の場合に、アクチュエータにエネルギーが供給されていなくても、アクチュエータは、対応する保護回路(すなわち、吸収されたエネルギーの少なくとも一部を散逸させるための電子抵抗器の点でかつ/または吸収されたエネルギーの少なくとも一部を蓄積するための電子アキュムレータの点で)に係合する。
【0025】
本発明の別の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、例えば、出力軸の運動エネルギーを熱として散逸させることにより、出力軸の軸方向運動を減速または停止させる渦電流ブレーキ(誘導ブレーキ、電気ブレーキまたは電気リターダとしても知られている)を備える。好ましくは休止位置を越える、所定の動作状況において出力軸が後退方向に移動する際に、好ましくは、エネルギー吸収ユニット、好ましくは渦電流ブレーキのコイルによって電流が誘導され、特に、誘導電流が、エネルギー吸収ユニットによって蓄積されるかまたは散逸させられてもよい。渦電流ブレーキの機能原理によれば、アクチュエータの移動部品、例えば出力軸に作用する外部磁界のため、電流が誘導され、誘導電流は外部磁界とは逆向きの磁界を誘導する。元の磁界とは逆向きの磁界により、出力軸の運動は減速され、好ましくは停止され、それにより、ブレーキアクチュエータの大きな慣性と大きな動力によるブレーキ部品の損傷が防止される。電気抵抗器は、アクチュエータ自体によって内部的に実現されてもよいし、別個の電子抵抗器部品によって外部的に実現されてもよいことが可能である。
【0026】
本発明の例示的な実施形態では、アクチュエータは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットに連結され、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットによって吸収された力がアクチュエータによって散逸させられるように構成されており、特に、アクチュエータは電気抵抗器を備える。例えば、本実施形態によれば、デフォルトでは常閉電気回路に接続され、通常動作モード、好ましくは所定の動作状況が生じない場合には、スイッチによって能動的に切断され得るブレーキ抵抗器が設けられる。代替的または付加的に、吸収されたエネルギーを好ましくは再利用のために蓄積するために、回路にコンデンサを接続してもよい。
【0027】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、アクチュエータは、空気圧式、電気機械式または液圧式のアクチュエータであってよい。したがって、本発明による発明概念が、対応するブレーキアセンブリに使用される特定のタイプのアクチュエータに限定されないことは明らかである。
【0028】
本発明の別の態様によれば、ブレーキアセンブリは、車両のホイールに回転係合しているブレーキディスクを備える。したがって、ブレーキディスクは、車の走行中に車両のホイールの回転によって回転運動する。さらに、ブレーキパッドは、好ましくは、ダイナミック制動動作または常用制動動作を行うために、アクチュエータの力がブレーキパッドに加えられると、ブレーキディスクに摩擦係合する。また、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとを、ブレーキアセンブリの制動位置を規定する摩擦係合の状態にするために、前進方向に駆動される出力軸を有するアクチュエータを備える。アクチュエータは、例えば、電気モータと、伝達部材であって、電気モータの、好ましくは電気モータのロータの回転運動が、伝達部材によって出力軸の軸方向の並進運動に変換されるように、出力軸に連結された伝達部材とを備えてもよい。また、出力軸は、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合を解除し、ブレーキパッドを休止位置に移動させるために、前進方向とは反対の後退方向に駆動されてもよい。休止位置は、アクチュエータ力または制動力が加えられない位置および/または制動動作、好ましくはダイナミック制動動作の後にブレーキパッドが移動する位置として規定されてもよい。ブレーキパッドの移動方向は、出力軸の移動方向と必ずしも同軸上に定められないが、出力軸の前進方向運動が、好ましくは、ブレーキディスクとの摩擦係合へのブレーキパッドの前進方向運動につながり、出力軸の後退方向運動が、好ましくは、ブレーキディスクとの摩擦接触の係合を解除するためのブレーキディスクの後退方向運動につながる。
【0029】
本発明によれば、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドの休止位置での、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の所定の軸方向遊び間隔を調整するように適合させられた、または調整する遊び調整器を備える。遊び調整器は、調整過程を開始するために、アクチュエータによってブレーキパッドが後退方向に所定の基準位置に移動させられるように構成され得る。したがって、基準位置は、休止位置に対して後退方向に軸方向にオフセットされている。
【0030】
本発明の実施形態の例では、ブレーキパッドを基準位置に、好ましくは休止位置から開始して基準位置に移動させるために必要なアクチュエータ力は、出力軸を前進方向に駆動してブレーキパッドとブレーキディスクとを前記摩擦係合の状態にもたらし、かつ出力軸を後退方向に駆動してブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦係合の解除状態にもたらすために必要なアクチュエータ力よりも高く、好ましくは5%、10%、20%、30%、40%または50%超高い。ブレーキアセンブリの通常の動作中、特にダイナミック制動動作中または常用制動動作中、ブレーキアセンブリは、出力軸が高速で前後方向に駆動されるように高い動特性を実行しなければならず、しかも、特に作動時にブレーキアセンブリの移動する部品の慣性により、ブレーキパッドは、短時間の間および短距離だけ休止位置を越えて後退方向に移動させられることがある。しかし、これらの制動動作中は、ブレーキパッドが基準位置に到達しないため、調整過程は開始されない。特にブレーキパッドは、休止位置から後退方向に少なくとも10mmおよび/または最大で100mm移動させられる。
【0031】
本発明の更なる発展によれば、ブレーキアセンブリは、軸方向遊び値、好ましくは制動位置と休止位置との間でのブレーキパッドの軸方向振幅、特に制動位置と基準位置との間でのブレーキパッドの軸方向振幅を測定するためのセンサユニットを備える。軸方向遊び値は、ブレーキディスクと休止位置にあるブレーキパッドとの間の間隔としても規定され得る。
【0032】
別の例示的な実施形態では、センサユニットは、アクチュエータに関して配置され、かつ/またはセンサユニットがブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの摩耗レベルを測定するように適合させられる。センサユニットが、車両(図示せず)の電子システム(図示せず)に電子的に接続され得ることは明らかである。
【0033】
本発明の更なる開発によれば、センサユニットは、光学センサおよび/または音響センサ、好ましくは摩耗レベルおよび/または軸方向遊び値を独立して測定するための光学センサおよび/または音響センサを備える。代替的に、光学および音響センサは、冗長センサシステムとして実現され得る。
【0034】
本発明の別の例示的な実施形態では、ブレーキアセンブリ、特にアクチュエータは、センサが望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値を検出した場合に、アクチュエータが調整過程を開始するように、好ましくはアクチュエータがブレーキパッドを所定の基準位置に移動させるように、センサユニットに接続された制御ユニットを備える。この制御ユニットは、物理的にかつ/または電子的にセンサユニットに接続され得る。制御ユニットとセンサユニットとが無線通信システムを介して通信することも可能である。代替的に、制御ユニットとセンサユニットとは、例えば、ケーブルを介して、または車両の電子システムに連結され得る共通のプリント回路基板(PCB)の導電路を介して直接的に接続され得る。
【0035】
本発明の更なる発展によれば、制御ユニットは、ブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの測定された摩耗レベル、ならびに/もしくは測定された遊び値を、それぞれの所定の閾値と比較する。さらに、制御ユニットは、測定された値と、それぞれの所定の閾値との間の偏差の場合に調整過程を開始し得る。好ましくは、制御ユニットは、測定された値と、それぞれの所定の閾値との間の偏差が、例えば、最大で3%、5%、7%または最大で10%の所定の許容偏差を超えた場合にのみ調整過程を開始する。
【0036】
本発明の別の例示的な実施形態では、ブレーキアセンブリは、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向で作用する力を吸収するように適合させられたエネルギー吸収および/または蓄積ユニットを備え得る。所定の動作状況は、例えば、エネルギー供給の予期せぬ停止またはブレーキアクチュエータの内部故障の際など、ブレーキアセンブリの制御されていない状況で生じる場合がある。制動中、ブレーキアセンブリの力伝達部品には、制動力レベルによって予荷重が加えられる。制御された状況では、アクチュエータは、初期の無圧位置、好ましくは休止位置に力伝達部品を戻し、力伝達部品の運動を円滑に制動して抑える。保護ユニットを使用しないブレーキダウン運動中に故障や電力喪失などのエラーが生じた場合、ブレーキアクチュエータ部品は、予圧ブレーキアセンブリ部品、好ましくはキャリパユニットによってさらに加速され、運動終端位置で打撃のような衝突または衝撃によって停止され、それにより、ブレーキアセンブリ部品、好ましくはアクチュエータが損傷する。
【0037】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、吸収された力、好ましくは、所定の動作状況の場合に出力軸に作用する力に関連する吸収されたエネルギーを散逸させるように適合させられる。例えば、吸収された力または吸収されたエネルギーは、摩擦、電子抵抗または粘性減衰によって散逸させられ得る。損傷を防ぐために、エネルギー吸収ユニットの配置および機能により、特に、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向に作用する力の散逸により、過剰な力または過剰なエネルギーがブレーキアセンブリシステムから除去される。
【0038】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、吸収された力を蓄積するように適合させられる。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、ばね部材、アキュムレータまたはバッテリを備える。蓄積された力、特に蓄積された吸収エネルギーは、車両のエネルギー回生システム、好ましくはブレーキアセンブリのエネルギー回生システムに供給されてもよい。この場合、蓄積された吸収エネルギーは、その後の制動動作において、アクチュエータのためのエネルギー入力として使用されてもよい。
【0039】
本発明の更なる例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況において出力軸に後退方向で作用する力を打ち消すように適合させられる。更なる発展では、打ち消す力は、出力軸に後退方向で作用する力によって生じた出力軸の運動エネルギーが、吸収ユニットの運動エネルギー、熱および/または電気的エネルギーに転換されるように作用する。したがって、利用可能なエネルギー蓄積スペースまたは後続の制動動作に必要となるエネルギーに応じて、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を蓄積し、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を散逸させることが可能である。
【0040】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、アクチュエータが、出力軸を後退方向および前進方向に駆動するための電気機械を備えることで実現される。電気機械は、所定の動作状況において出力軸の力を吸収するように適合させられた発電機モードで動作可能であってもよい。発電機モードは、機械的エネルギー、好ましくは、例えば出力軸またはアクチュエータの別の駆動する出力軸の運動エネルギーが、電力または電気的エネルギーに変換される動作モードとして理解されてもよい。したがって、所定の動作状況において存在する過剰なエネルギーは、発電機モードに供給するために使用されてもよく、エネルギー吸収ユニットによって吸収されたエネルギーを車両の更なる電気部品に供給するために使用されてもよい。
【0041】
本発明の別の例示的な実施形態では、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとが摩擦係合される制動終端位置を有する。さらに、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合が解除される、ブレーキアセンブリの休止終端位置が与えられる。休止位置を越える後退方向への出力軸の軸方向運動を制限するように、停止要素が配置されてもよい。このことは、停止要素が、後退方向において休止位置に対してずらして配置されることを意味する。さらに、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、停止要素への出力軸の衝突を防止し、それによって、ブレーキアセンブリの損傷を防止するように配置されてもよい。
【0042】
本発明の更なる発展では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、休止位置から後退方向への出力軸の移動に際して、好ましくは逆向きのばね力および/または減衰力が出力軸に加えられるように、停止要素に関連付けられたばね部材または粘性減衰器を備える。発生したばね力および/または減衰力は、所定の動作状況の出力軸に後退方向で作用する限界力を打ち消す。それゆえ、出力軸の後退方向の軸方向運動が減速され、好ましくは停止される。
【0043】
本発明の例示的な実施形態によれば、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニットである。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況の場合に、出力軸の力を吸収するために自動的に作動させられるように、電気的に作動させられるかまたは停止されかつ/またはアクチュエータに連結される。本発明の更なる発展によれば、所定の動作状況の場合に、アクチュエータにエネルギーが供給されていなくても、アクチュエータは、対応する保護回路(すなわち、吸収されたエネルギーの少なくとも一部を散逸させるための電子抵抗器の点でかつ/または吸収されたエネルギーの少なくとも一部を蓄積するための電子アキュムレータの点で)に係合する。
【0044】
本発明の別の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、例えば、出力軸の運動エネルギーを熱として散逸させることにより、出力軸の軸方向運動を減速または停止させる渦電流ブレーキ(誘導ブレーキ、電気ブレーキまたは電気リターダとしても知られている)を備える。好ましくは休止位置を越える、所定の動作状況において出力軸が後退方向に移動する際に、好ましくは、エネルギー吸収ユニット、好ましくは渦電流ブレーキのコイルによって電流が誘導され、特に、誘導電流が、エネルギー吸収ユニットによって蓄積されるかまたは散逸させられてもよい。渦電流ブレーキの機能原理によれば、アクチュエータの移動部品、例えば出力軸に作用する外部磁界のため、電流が誘導され、誘導電流は外部磁界とは逆向きの磁界を誘導する。元の磁界とは逆向きの磁界により、出力軸の運動は減速され、好ましくは停止され、それにより、ブレーキアクチュエータの大きな慣性と大きな動力によるブレーキ部品の損傷が防止される。電気抵抗器は、アクチュエータ自体によって内部的に実現されてもよいし、別個の電子抵抗器部品によって外部的に実現されてもよいことが可能である。
【0045】
本発明の例示的な実施形態では、アクチュエータは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットに連結され、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットによって吸収された力がアクチュエータによって散逸させられるように構成されており、特に、アクチュエータは電気抵抗器を備える。例えば、本実施形態によれば、デフォルトでは常閉電気回路に接続され、通常動作モード、好ましくは所定の動作状況が生じない場合には、スイッチによって能動的に切断され得るブレーキ抵抗器が設けられる。代替的または付加的に、吸収されたエネルギーを好ましくは再利用のために蓄積するために、回路にコンデンサを接続してもよい。
【0046】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、アクチュエータは、空気圧式、電気機械式または液圧式のアクチュエータであってよい。したがって、本発明による発明概念が、対応するブレーキアセンブリに使用される特定のタイプのアクチュエータに限定されないことは明らかである。
【0047】
特に、ホイールブレーキアセンブリの部品への損傷を防ぐためにそのようなエネルギー吸収および/または蓄積ユニットが必要であるホイールブレーキ用途では、休止位置は遊び調整過程を開始するために適しておらず、なぜならば、ブレーキアセンブリによるダイナミック制動動作中、それぞれのブレーキ適用の動特性および力に応じて、アクチュエータまたは出力軸は、各制動動作の後にわずかに異なる軸方向に戻されるからである。したがって、遊び調整過程を確実にトリガまたは開始する別の基準位置が規定されることは、本発明の利点である。
【0048】
軸方向遊び間隔ならびに/もしくはブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの実際の摩耗レベルは、軸方向遊び間隔を調整するために、センサユニットによって測定され、アクチュエータの制御ユニットに伝達される。遊び調整過程をいつ実施するかを決定するため、測定はセンサユニットおよび制御ユニットを介して継続的に実行され、評価され得る。有利なことに、遊び調整過程は、必要な場合に開始されまたはトリガされるだけである。この決定は、所定の軸方向遊び間隔閾値ならびにブレーキパッドおよび/またはブレーキディスクの所定の摩耗レベル閾値に従って行われる。
【0049】
例示的な実施形態では、基準位置は、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットによって加えられる所定の力値によって規定される。これは、ブレーキパッドが休止位置から基準位置に移動させられ、それによって反対方向、すなわち前進方向に向けられたエネルギー吸収および/または蓄積ユニット力が引き起こされるとき、所定の基準位置を確実に規定するために、例えば力計がその力値を測定することによってブレーキパッドの後退方向への軸方向運動を制限するよう構成され得ることを意味する。代替的に、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットがばね部材によって実現される場合、基準位置は、ばね部材が完全に押し込まれた位置または完全に変形した位置として規定することができる。
【0050】
本発明による方法は、本発明の説明された態様によるブレーキアセンブリを実現するように規定することができ、またその逆も可能であることに留意されたい。
【0051】
好ましい実施形態は、従属請求項によって与えられる。
【0052】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照している。同じ参照番号が、同一または類似の要素を特定するために異なる図面で使用される場合がある。以下の説明では、限定ではなく説明の目的で、請求項に記載された本発明の様々な態様を完全に理解するために、特定の構造、機能性などの具体的な詳細について記載する。
【0053】
しかし、請求項に記載された本発明の様々な態様が、これらの具体的な詳細から外れた他の例で実施され得ることは、本開示の恩恵を受ける当業者にとって明らかであろう。特定の例では、不要な詳細によって本発明の説明を不明瞭にしないように、周知の装置および方法の説明を省略している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】第1の動作状況における本発明によるブレーキアセンブリを示す概略図である。
【
図2】更なる動作状況における本発明によるブレーキアセンブリを示す概略図である。
【
図3】別の動作状況における本発明によるブレーキアセンブリを示す別の概略図である。
【0055】
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明では、本発明によるブレーキアセンブリが一般に参照番号100で示される。
【0056】
図1には、ブレーキアセンブリ100の能動的な制動動作が示されている。制動動作中、ブレーキパッド11が、車両のホイール(図示せず)に回転係合しているブレーキディスク9に摩擦係合している。制動動作では、ブレーキパッド11によってブレーキディスク9に締付け力が加えられる。ブレーキパッド11の作動は、レバー機構13によって実現される。レバー機構13は、アクチュエータ1によって作動され得る出力軸2に連結される。レバー機構13は、出力軸2の末端部15に配置された連結部材6によって、出力軸に形状嵌合および/または力嵌合で連結されてもよい。レバー機構13は、レバー7の一方の端部19によって、通常は車両のシャーシ(図示せず)に固定的に配置された取付け部17に、枢動可能に取り付けられた枢動部材7を備える。端部19とは正反対に配置されたレバー7の別の端部21において、レバー7は、レバー7が取付け部17に対して枢動し得るように、また、出力軸2が前進方向Fおよび後退方向Rに並進運動し得るように、好ましくは連結部材6により、出力軸2に連結される。本発明の目的で、前進方向Fは、ブレーキパッド9を、制動動作位置にする、またはブレーキディスク9に摩擦係合の状態にする、移動方向を規定する。さらに、後退方向Rは、反対の方向、すなわち、ブレーキディスク9の係合を解除して、制動力が加えられない休止位置に移動させるときのブレーキパッド11の移動方向を規定する。
【0057】
一般に、ブレーキアセンブリ100の動作中、例えば電気機械式のアクチュエータであり得るアクチュエータ1は、アクチュエータ力を発生させ、このアクチュエータ力は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9とを、制動位置を規定する摩擦係合の状態にするために出力軸2を前進方向Fに駆動し、また、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との係合を解除して摩擦係合を解除するために出力軸2を後退方向Rに駆動する。出力軸2の一方の軸方向終端位置は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との摩擦係合によって、または
図1に示すような制動位置によって規定される。出力軸2は、前進方向Fに駆動されて取付け部17に対してレバー7を枢動させ、これにより、一方の端部25が枢動レバー7に接続され、他方の端部27がブレーキパッド11に接続されたシフトレバー23に、前進方向Fでの出力軸2の軸方向運動を、前進方向Fでのブレーキパッド9の軸方向運動に転換させ、ブレーキディスク9との摩擦係合に転換させる。
図1からは、取付け部17に対して枢動レバー7を枢動させることにより、レバー23ひいてはブレーキパッド11が軸方向運動することが明らかである。
【0058】
ブレーキアセンブリ100は、好ましくは機械式の遊び調整器である遊び調整器29をさらに備えてもよく、この遊び調整器は、ブレーキパッド11の休止位置におけるブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の所定の軸方向遊び間隔を調整するように適合させられる。遊び調整器29は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の軸方向遊び間隔を調整するのに適した任意の調整装置であってもよい。説明の目的で、遊び調整器29は、シフトレバー23に配置されている。しかし、遊び調整器29をブレーキアセンブリ100の他の部品に関連付けてもよいことは明らかであろう。遊び調整過程の機能、特に開始については、
図2および
図3を参照してより詳細に説明する。
【0059】
図1では、ブレーキパッド11または出力軸2の他方の軸方向終端位置が、好ましくは車両のシャーシ(図示せず)に固定的に取り付けられた、固定式のエンドストップ3によって示されている。エンドストップ3は、好ましくは金属製である、薄肉のプレートまたはディスクであってもよい。エンドストップ3は、アクチュエータ1による作動に際して、出力軸がエンドストップ3に対して前進方向Fおよび後退方向Rで相対的に並進運動するように、また、後退方向Rで出力軸の軸方向運動がエンドストップ3によって制限されるように、出力軸2に対して配置される。例えば、エンドストップ3は、出力軸2の前進方向および後退方向の運動方向と同心状に配置された貫通孔1を備えてもよい。図示するように、所定の動作状況の場合に出力軸2に後退方向Rに作用する力を吸収するために、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33が設けられる。エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、ブレーキアセンブリ100の通常動作中またはダイナミック制動動作中に、ブレーキパッド11または出力軸2がエンドストップ3に到達しないように配置される。エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、出力軸2が休止位置を越えて後退方向Rに移動する場合に、前進方向Fに向けた力を出力軸2に加える。
【0060】
遊び調整過程を実行するために、ブレーキパッド11および出力軸2は、
図2に示されるブレーキパッド11の休止位置に移動させられる。ブレーキアセンブリ100のこの動作状態では、
図2に示すように、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との間に前後方向F,Rで軸方向遊び間隔sが存在する。さらに、出力軸2は、連結部材6がエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33に接触するように後退方向Rに移動させられ、このエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、図示の実施形態によれば、ばねユニット4によって実現される。ばねユニット4は、固定式のエンドストップ3にて一方の端部が支持され、ばねユニット4の変形によって移動し得る作動プレート5にて他方の端部が支持される。休止位置は、アクチュエータの制動力が加わらない、またはブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の摩擦係合が生じない、受動位置とも呼ばれ、アクチュエータ1が制動動作するために出力軸2に作動力を加えるときのブレーキパッド11の開始位置を規定する。また、例えば、ブレーキパッド11および/またはブレーキディスク9の望ましくない実際の遊び値および/または望ましくない摩耗レベルにより、遊び調整が必要である場合に、ブレーキパッド11は、まず休止位置にもたらされる。ブレーキアセンブリ100は、例えば、ブレーキパッド11および/またはブレーキディスク9の実際の遊び値および/または実際の摩耗レベルを測定するためのセンサユニット(図示せず)を備えてもよい。さらに、ブレーキアセンブリ100またはアクチュエータ1は、遊び調整過程を電子的に引き起こすための制御ユニット35を備える。制御ユニット35は、センサユニットが望ましくない摩耗レベルおよび/または望ましくない遊び値を検出した場合に、アクチュエータ1の制御ユニット35が調整過程を開始するように、センサユニットに接続されてもよい。したがって、遊び調整過程は、必要な場合にのみ開始される。不要な調整は防止される。
【0061】
遊び調整過程を開始するために、好ましくは遊び調整過程をスタートさせるために、ブレーキパッド11または出力軸2を、ブレーキパッド11の休止位置を越えて後退方向Rにさらに移動させ、それによって負のストロークを実行する。したがって、遊び調整過程は、ブレーキパッド11がそのような負のストロークを実行した場合にのみ、すなわちブレーキパッド11が休止位置を越えて後退方向Rに移動させされた場合のみに開始される。休止位置に対する後退方向Rへの振幅または間隔は、ブレーキアセンブリ100の通常動作中またはダイナミック制動動作中に、ブレーキパッド11が
図3に示されている基準位置に到達しないように決定されるべきである。
図3に示されるように、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33が設けられている場合、ブレーキパッド11がその基準位置に到達するように出力軸2を作動させるアクチュエータ1は、出力軸2に前進方向Fに向けて加えられたエネルギー吸収および/または蓄積ユニットの力を、すなわちブレーキパッド11または出力軸2の運動方向に抗して、克服しなければならない。例示的に、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、連結部材6が固定式に取り付けられるとともに出力軸2が休止位置においてエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33に当接するばね部材4および作動プレート5を備え、それによって、所定の基準位置に到達させるために、後退方向Rへの休止位置を越える出力軸2の軸方向運動によって引き起こされるばね部材4の変形時に該ばね部材4によってばね力が発生させられる。
【0062】
特に、ホイールブレーキアセンブリ100の部品への損傷を防ぐためにそのようなエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33が必要であるホイールブレーキ用途では、休止位置は遊び調整過程を開始するために適しておらず、なぜならば、ブレーキアセンブリ100によるダイナミック制動動作中、それぞれのブレーキ適用の動特性および力に応じて、アクチュエータ1または出力軸2は、各制動動作の後にわずかに異なる軸方向に戻されるからである。したがって、遊び調整過程をトリガまたは開始する別の基準位置が規定されることは、本発明の利点である。
【0063】
図3に示されるように、基準位置は、後退方向Rで休止位置を越えてオフセットされ、かつブレーキパッド11または出力軸2を基準位置にもたらすためにアクチュエータ1によって発生させられる所定の作動力によって規定される。
図3に見られるように、基準位置では、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の軸方向間隔は、休止位置での軸方向遊び間隔よりも大きい。基準位置に到達した後、アクチュエータ力は解放され、ブレーキパッド11または出力軸2が所定の休止位置に戻り、この所定の休止位置はその後、遊び調整過程に使用される。軸方向遊び間隔sならびに/またはブレーキパッド11および/もしくはブレーキディスク9の実際の摩耗レベルは、軸方向遊び間隔sを調整するために、センサユニット(図示せず)によって測定され、アクチュエータ1の制御ユニット35に伝達される。遊び調整過程をいつ実施するかを決定するため、測定はセンサユニットおよび制御ユニット35を介して継続的に実行され、評価され得る。有利なことに、遊び調整過程は、必要な場合に開始されまたはトリガされるだけである。この決定は、所定の軸方向遊び間隔閾値ならびにブレーキパッド9および/またはブレーキディスク11の所定の摩耗レベル閾値に従って行われる。
【0064】
上記の説明、図、および特許請求の範囲に開示される特徴は、本発明の異なる実施形態を個別に、または任意の組み合わせで実現するために重要となり得る。
【符号の説明】
【0065】
1 アクチュエータ
2 出力軸
3 エンドストップ
4 ばね部材
5 作動プレート
6 連結部材
7 レバー
9 ブレーキディスク
11 ブレーキパッド
13 レバー機構
15 端部
17 取付け部
19,21 端部
23 レバー
25,27 端部
29 遊び調整器
31 貫通孔
33 エネルギー吸収および/または蓄積ユニット
35 制御ユニット
100 ブレーキアセンブリ
F 前進方向
R 後退方向
s 軸方向遊び間隔