(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ピンチロックシース保持機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230511BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61B17/12
A61M25/00 510
(21)【出願番号】P 2021553002
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 US2020021428
(87)【国際公開番号】W WO2020185577
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-29
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マコーネル、ケビン
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具システムにおいて、
近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に配置された中間領域と、前記近位端から前記遠位端まで延びる管腔とを有するシースであって、前記シースは、前記近位端に隣接する第1の外径と、前記中間領域に隣接する第2の外径とを有し、前記第2の外径が前記第1の外径よりも大きい、前記シースと、
前記シースの前記管腔内に摺動可能に配置されたプッシャーワイヤと、
近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端の間に配置された中間領域と、前記近位端から前記遠位端まで延びる管腔とを有するロック要素であって、前記ロック要素は、前記遠位端に隣接する第1の内径と、前記中間領域に隣接する第2の内径とを有し、前記第2の内径は前記第1の
内径よりも小さい、前記ロック要素とを備え、
前記ロック要素は、
前記シースの前記第1の
外径を有する領域
に被さって自由に摺動するように構成され、かつ
前記ロック要素が前記第2の外径を有するシースのより大きな外径領域
に被さって配置される場合、前記ロック要素は、
前記第2の内径を有する前記中間領域が、前記第2の外径を有する前記シース
のより大きな外径領域を半径方向内側に
たわませるように構成される、医療器具システム。
【請求項2】
前記ロック要素が前記シースのより大きな外径領域
に被さって配置されるとき、前記シースの内面が前記プッシャーワイヤの外面と摩擦的に係合する、請求項1に記載の医療器具システム。
【請求項3】
前記第2の内径及び前記第1の内径がフレア表面によって結合されている、請求項1~2のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項4】
前記第2の内径が、前記ロック要素の全長よりも短い長さにわたって延びる、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項5】
前記ロック要素の管腔は、概して砂時計の形状を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項6】
前記ロック要素の前記管腔の断面形状が、前記管腔の長さに沿って同じ形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項7】
前記ロック要素の管腔の断面形状が円形である、請求項6に記載の医療器具システム。
【請求項8】
前記ロック要素の管腔の断面形状が楕円形である、請求項6に記載の医療器具システム。
【請求項9】
前記ロック要素の前記管腔の断面形状は、前記管腔の長さに沿って変化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項10】
前記ロック要素の管腔の断面形状は、前記近位端及び前記遠位端に隣接する場所では円形であり、前記ロック要素の管腔の断面形状は、前記中間領域に隣接する場所では楕円形である、請求項9に記載の医療
器具システム。
【請求項11】
前記シースのより大きな外径領域が、前記シースの全長よりも短い長さに沿って延びる、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項12】
前記シースのより大きな外径領域が、近位ウエスト、中間領域、及び遠位ウエストを含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項13】
前記近位ウエストは、前記シースの外径を前記第1の外径から前記第2の外径に徐々に移行させるように構成される、請求項12に記載の医療器具システム。
【請求項14】
前記シースの内径が前記近位端から前記遠位端まで一定である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【請求項15】
前記ロック要素は、前記シースよりも剛性の高い材料から形成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の医療器具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具及び、医療器具を製造及び/又は使用するための方法に関する。より詳細には、本発明は、医療器具をシース内に固定するためのシステムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な体内医療器具が、医療用途、例えば、外科的及び/又は血管内用途のために開発されてきた。これらのデバイスのいくつかには、ガイドワイヤ、カテーテル、医療器具送達システム(例えば、ステント、移植片、交換弁などのための)などが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの器具は、様々な異なる製造方法のいずれかによって製造され、様々な方法のいずれかに従って使用できる。代替器具、及び医療器具を製造及び使用するための代替方法を提供する継続的なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の例では、医療器具システムは、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間に配置された中間領域、及び近位端から遠位端まで延びる管腔を有するシースを含み得る。シースは、近位端に隣接する第1の外径と、中間領域に隣接してより大きな第2の外径を有する外径領域とを有し得、第2の外径は、第1の外径よりも大きい。プッシャーワイヤは、シースの内腔内にスライド可能に配置することができる。ロック要素は、近位端、遠位端、及び近位端と遠位端との間に配置された中間領域、及び近位端から遠位端まで延びる管腔を有し得る。ロック要素は、遠位端に隣接する第1の内径及び中間領域に隣接する第2の内径を有し得、第2の内径は、第1の外径よりも小さい。ロック要素は、第1の直径を有するシースの領域の上方を自由に摺動できるように形成され、ロック要素が、第2の外径を有するシースの、より大きな外径領域の上方に配置される場合、ロック要素は、半径方向内側にシースを押し下げ得る。
【0005】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素がシースのより大きな外径領域の上方に配置される場合、シースの内面がプッシャーワイヤの外面と摩擦的に係合し得る。
【0006】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、第2の内径及び第1の内径は、フレア表面によって結合され得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、第2の内径は、ロック要素の全長よりも短い長さにわたって延びることができる。
【0007】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔は、概して砂時計の形状を有し得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は、管腔の長さに沿って同一の形状であり得る。
【0008】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は円形であり得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は楕円体であり得る。
【0009】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は、管腔の長さに沿って変化し得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は、近位端及び遠位端に隣接する場所では円形であり得、ロック要素の管腔の断面形状は、要素は、中間領域に隣接する場所では楕円体であってもよい。
【0010】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、シースのより大きな外径領域は、シースの全長よりも短い長さに沿って延びることができる。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、シースのより大きな外径領域は、近位ウエスト、中間領域、及び遠位ウエストを含み得る。
【0011】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、近位ウエストは、シースの外径を第1の外径から第2の外径に徐々に移行するように構成され得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、シースの内径は、近位端から遠位端まで一定であり得る。
【0012】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素は、シースよりも剛性の高い材料から形成され得る。
別の例では、医療器具システムは、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間に配置された中間領域、及び近位端から遠位端まで延びる管腔を有するシースを含み得る。シースは、近位端に隣接する第1の外径と、近位ウエスト、第1の外径よりも大きい第2の外径を有する中間領域、及び遠位ウエストを有する、より大きな外径領域とを有し得る。プッシャーワイヤは、シースの内腔内にスライド可能に配置することができる。ロック要素は、近位端、遠位端、及び近位端と遠位端との間に配置された中間領域、及び近位端から遠位端まで延びる管腔を有し得る。ロック要素の管腔は、中間領域に隣接する箇所では近位端又は遠位端よりもより小さい内径を含む、概ね砂時計の形状を有し得る。ロック要素は、第1の直径を有するシースの領域の上方を自由にスライドするように構成され、ロック要素が、第2の外径を有する、シースのより大きな外径領域の上方に配置される場合、ロック要素は、シースの内面が半径方向内側に押し下げられ、プッシャーワイヤの外面と摩擦的に係合するように形成され得る。
【0013】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は、管腔の長さに沿って同一の形状であり得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素の管腔の断面形状は、管腔の長さに沿って変化し得る。
【0014】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素は、シースよりも剛性の高い材料から形成され得る。
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、システムは、プッシャーワイヤに解放可能に結合されたインプラントをさらに含み得る。
【0015】
別の例では、ワイヤとシースとの間の動きを抑制する方法は、ワイヤを管状シースの管腔に挿入することを含み得、管状シースは、外径が増加した局所領域を有する。ロック要素が増加した外径の局所領域上に配置され得るまで、ロック要素を管状シースの外径の上方で遠位へとスライドさせることができる。ロック要素は管状シースの近位端領域上を自由にスライドするように構成される。ロック要素は、外径が増加した局所領域上に配置されたとき、及びロック要素が管状シースの外径が増加した局所領域上に配置されたときに、管状シースを半径方向内側に押し下げるように構成することができる。管状シースの内面は、ワイヤの外面と摩擦的に係合し得る。
【0016】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、管状シースの外径が増加した局所領域を超えて遠位方向にロック要素を遠位方向に前進させると、管状シースから半径方向内向きの力を取り除くことができる。
【0017】
上記の例のいずれかに代替的又は追加的に、別の例では、ロック要素は、管状シースよりも剛性の高い材料から形成され得る。いくつかの実施形態、態様、及び/又は例の上記の要約は、本開示の各実施形態又はすべての実装を説明することを意図するものではない。以下の図及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示している。
【0018】
本開示は、添付の図面に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の構成における例示的な医療器具システムを示す斜視図。
【
図4】
図2の例示的なロック機構を示す別の断面図。
【
図5】
図1の例示的な医療器具システムを第2の構成において示す斜視図。
【
図6】
図5の例示的な医療器具システムの部分断面図。
【
図7】
図1,5の例示的な医療器具システムを第3の構成において示す斜視図。
【
図8】
図7の例示的な医療器具システムの部分断面図。
【
図11】
図9の例示的なロック機構を示す別の断面図。
【
図12】
図9の例示的なロック機構を示す別の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、様々な修正及び代替形態に適用可能であるが、その詳細は、例として図面に示され、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本開示を限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、開示の精神と範囲に含まれるすべての修正、同等物、及び代替案を網羅することにある。
【0021】
以下の説明は、必ずしも縮尺どおりではない図面を参照して読む必要があり、同様の参照番号は、いくつかの図面の全体で同様の要素を示す。詳細な説明及び図面は、特許請求の範囲の発明を説明することを意図しているが、限定することを意図していない。当業者は、記載及び/又は示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせ及び構成で配置され得ることを認識するであろう。詳細な説明及び図面は、特許請求の範囲の発明の例示的な実施形態を示している。しかしながら、明確さと理解の容易さのために、すべての特徴及び/又は要素が各図面に示されているわけではないが、特徴及び/又は要素は、特に明記しない限り、関係なく存在すると理解され得る。
【0022】
以下の定義された用語については、特許請求の範囲又は本明細書の他の場所で異なる定義が与えられていない限り、これらの定義が適用されるものである。
本明細書では、すべての数値は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語によって変更されることが想定されている。「約」という用語は、数値の文脈において、一般に、当業者が列挙された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と見なすであろう数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入された数値が含まれる場合がある。「約」という用語の他の使用(例えば、数値以外の文脈での使用)は、特に明記されていない限り、明細書の文脈から理解され、一貫しているため、通常の慣習的な定義を有するものと見なされる。
【0023】
終端による数値範囲の列挙には、終端を含む、その範囲内のすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,5が含まれる)。
様々な構成要素、特徴及び/又は仕様に関連するいくつかの適切な寸法、範囲及び/又は値が開示されているが、本開示を読む当業者は、所望の寸法、範囲及び/又は値が明示的に開示されている値から逸脱する可能性があることを理解するであろう。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに他に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「又は」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使用される。理解を容易にするために、開示された実施形態内でそれらの特徴が複数形又は繰り返しであっても、開示の特定の特徴は単数形で記述され得ることに留意されたい。機能の各インスタンスは、特に反対の記載がない限り、単一の開示を含む、及び/又はそれらに含まれる場合がある。単純化及び明確化の目的で、開示された発明のすべての要素が必ずしも各図に示されている、又は以下で詳細に論じられているわけではない。ただし、以下の説明は、特に明記されていない限り、複数の要件が存在する場合に、要件のいずれか及び/又はすべてに等しく適用される場合があることを理解されたい。さらに、わかりやすくするために、一部の要素又は機能のすべてのインスタンスが各図に示されているわけではない。
【0025】
「近位」、「遠位」、「前進」、「後退」、それらの変形などの相対的な用語は、一般に、デバイスのユーザ/オペレータ/操作者に相対する様々な要素の配置、方向、及び/又は操作に関して考慮され得る。ここで、「近位」及び「後退」は、ユーザに近いこと、又はユーザに向かうことを示し、「遠位」及び「前進」は、ユーザから遠いこと、又は遠ざかることを示す。場合によっては、「近位」及び「遠位」という用語は、開示の理解を容易にするために任意に割り当てられ得、そのような場合は、当業者には容易に明らかになるであろう。「上流」、「下流」、「流入」、及び「流出」などの他の相対的な用語は、体の内腔、血管などの内腔内、又はデバイス内の流体の流れの方向を指す。「軸方向」、「円周方向」、「長さ方向」、「横方向」、「半径方向」などのさらに他の相対的な用語、及び/又はそれらの変形は、一般に、開示された構造又は装置の中央の長手方向軸に相対した方向及び/又は向きを示す。
【0026】
本明細書における「実施形態」、「一部の実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得ることを示すが、すべての実施形態において、特定の機能、構造、又は特性が含まれているとは限らない。さらに、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して説明されている場合、明示的であろうとなかろうと、反対に明確に述べられていない限り、他の実施形態に関連して特定の特徴、構造、又は特性をもたらすことは当業者の知識の範囲内にあることが説明されているものとする。換言すると、特定の組み合わせで明示的に示されていない場合でも、以下で説明するさまざまな個々の要素は、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するため、又は説明した実施形態を補完及び/又は強化するために互いに組み合わせる又は配置可能であると考えられる。
【0027】
説明を明確にするために、特定の数値による識別や命名の方法(例えば、第1、第2、第3、第4など)を、明細書及び/又は特許請求の範囲全体を通して使用して、様々な記載及び/又はクレームされた特徴に名前を付け、及び/又は区別することができる。数値による命名の方法は、発明を限定することを意図するものではなく、単なる例示であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、簡潔さと明快さのために、以前に使用された数値による命名の方法の変更及び逸脱を行うことができる。すなわち、「第1の」要素として識別された特徴は、後に「第2の」要素、「第3の」要素などと呼ばれるか、又は完全に省略され、及び/又は、異なる特徴が 「第1の」要素と呼ばれ得る。それぞれの場合の意味及び/又は指定は、当業者には明らかであろう。
【0028】
心血管系に影響を与え、及び/又は影響を受ける疾患及び/又は病状は、世界中で蔓延している。例えば、動静脈奇形(AVM)のいくつかの形態は、血管系を通る正常な血流を「供給」から外す場合があります。理論に拘束されることなく、動脈静脈奇形及び/又は他の疾患又は状態を、正常な、酸素及び/又は栄養が豊富な血流を枯渇させ、それによってそれらを成長及び/又は広がる能力を制限することによって、少なくとも部分的に治療することが可能であると考えられている。血管閉塞の恩恵を受ける可能性のある疾患又は状態の他の例には、出血、動脈瘤、静脈不全、臓器切除前の血流の遮断、又は肝臓の分枝血管への塞栓性ビーズの逆流の防止が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示されるのは、いくつかの動脈静脈奇形及び/又は他の疾患又は状態を治療及び/又は修復するために、心臓血管系の一部の内で使用され得る医療器具である。本明細書に開示されるデバイスはまた、以下により詳細に説明されるように、いくつかの追加の望ましい特徴及び利点を提供し得る。
【0029】
図1は、部分的に分解してある構成の例示的な医療器具システム100を示す斜視図である。医療器具システム100は、プッシャーワイヤ102、塞栓コイルなどであるがこれらに限定されないインプラント104(例えば、
図6及び8を参照)、導入シース106、及びロック要素108を有し得る。簡単にするために、インプラント104は塞栓コイルとして説明されるが、血管閉塞デバイスコイル、ステント、塞栓フィルター、交換用心臓弁、その他の閉塞デバイス、及び/又はその他の医療用インプラントなどを含むがこれらに限定されない、同様の方法で輸送、送達、使用、解放などされる他の適切な医療器具も企図される。
【0030】
塞栓コイル104は、典型的には、患者の体の外側の近位点から塞栓部位の近くの遠位点まで延びるマイクロカテーテル(明示的に示されていない)を使用することによって血管に導入され得る。コイル104を収容する導入シース106を使用して、患者に挿入する前にコイル104を運び、保護することができる。さらに、導入シース106を使用して、コイルをマイクロカテーテルに移送し、及び/又は選択された塞栓部位へのコイルの配備を支援することができる。シース106は、インプラント104を保護し、インプラント104が配備されるまで、インプラント104を送達可能な方向に維持するように構成され得る。本明細書でより詳細に説明するように、ロック要素108は、ユーザがインプラント104をシース106から外に前進させる準備ができるまで、シース106内のプッシャーワイヤ102及びインプラント104の移動(例えば、軸方向及び回転)を制限するように構成することができる。
【0031】
シース106は、近位端112、遠位端114、及びそれらの間に配置された中間領域116を含む管状部材であり得る。シース106に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば、ポリマー材料、複合材料などを以下に説明する。シース106は、近位端112から遠位端114まで延びる管腔110を規定することができる。プッシャーワイヤ102及びインプラント104は、プッシャーワイヤ102及びインプラント104がシース106の半径方向内側にあるように、シース106の管腔110内に摺動可能に配置され得る。インプラント104は、シース106の遠位端114に近接して配置され得る。プッシャーワイヤ102は、インターロック位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能である。プッシャーワイヤ102は、インプラント104に解放可能に取り付けられるように構成することができる。インプラント104は、送達構成から配備構成に拡張するように形成され得る。プッシャーワイヤ102は、一般に、中実のワイヤ又はシャフトであり得るが、いくつかの実施形態では、管状であり得る。プッシャーワイヤ102に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば、金属材料、ポリマー材料、複合材料などを以下に説明する。本明細書でより詳細に説明するように、プッシャーワイヤ102は、ロック要素108を介してシース106に解放可能に固定されて、シース106内のプッシャーワイヤ102の軸方向及び/又は回転方向の動きを制限することができる。
【0032】
シース106は、本明細書でより詳細に論じられるように、内径が一定のままであり、かつ、シース106の全長よりも短く延びる中間領域116の範囲で局所的な隆起又は拡大された外径領域126を有し得る。シース106は、必要に応じて、単一の一体構造として形成され得るか、又は一緒に結合された別個の構成要素から形成され得ることが企図される。例えば、シース106は、単一の部品として押し出されるか、又は成形され得る。他の場合には、一定直径のシース106が形成され得、拡大された外径領域126が一定直径の管状部材上に形成され得る(例えば、リフローにより)。シース106は、必要に応じて、単一の材料又は材料の組み合わせから形成され得ることが企図される。場合によっては、拡大された外径領域126は、シース106の残りの部分とは異なる特性(例えば、より柔らかい、より硬いなど)を有する材料から形成され得る。
【0033】
場合によっては、より大きな外径領域126は、遠位端114よりも近位端112の近くに配置され得るが、これは必須ではない。より大きな外径領域126は、近位ウエスト128、遠位ウエスト130、及び近位ウエスト128と遠位ウエスト130との間に配置された中間部分132を有し得る。場合によっては、より大きな外径領域126は、異なる材料から形成され得る。例えば、中間部分132は、ウエスト128,130の一方又は両方よりも柔らかく又は硬くてもよい。これはほんの一例である。必要に応じて、他の材料の組み合わせ及び構成を使用することができる。近位ウエスト128は、第1の外径134から第2の外径136まで遠位方向に外径が増加し得る。第1の外径134から第2の外径136への変化は、必要に応じて、漸進的かつ傾斜的であり得るか、又は急激かつ段階的であり得ることが企図される。近位ウエスト128での先細のランプ状の漸進的変化は、ロック要素108の位置決めを容易にし得るが、これは必須ではないことが企図される。遠位ウエストは、第2の外径136から第3の外径138への遠位方向の外径が減少し得る。第2の外径136から第3の外径138への変化は、必要に応じて、漸進的かつ傾斜的であり得るか、又は急激かつ段階的であり得ることが企図される。遠位ウエスト130における先細りの傾斜路のような漸進的な変化は、ロック要素108の位置決めを容易にし得るが、これは必須ではないことが企図される。場合によっては、第1及び第3の外径134,138は、実質的に同じであり得るが、これが必須ではない。例えば、シース106は、拡大された外径領域126を除いて、近位端112から遠位端114までほぼ一定の外径を有し得る。別の言い方をすれば、シース106は、近位端112から近位ウエスト128まで延在し、比較的一定の外径134を有した第1の領域、又は近位端領域113と、遠位ウエスト130から遠位端114まで延在し、第1の外径134にほぼ等しい比較的一定の外径138を有した第2の領域、又は遠位端領域115とを有し得る。しかしながら、近位端領域113又は遠位端領域115のいずれかが他方よりも大きい外径を有する構成もまた企図される。
【0034】
さらに、ロック要素108の斜視図を示す
図2を参照すると、ロック要素108は、近位端118、遠位端120、及びそれらの間に配置された中間領域122を有する管状部材であり得る。ロック要素108は、近位端118から遠位端120まで、ほぼ一定又は均一な外径140を有することができるが、これは必須ではない。ロック要素108は、近位端118から遠位端120まで延びる管腔124を規定することができる。本明細書でより詳細に論じられるように、ロック要素108の管腔124は、
図5及び6に示されるように、シース106の少なくとも近位端領域113の上方を自由に摺動するようにサイズ決定され得る。ロック要素108の管腔124はまた、少なくとも拡大された直径領域126よりも遠位のシース106の領域上を自由に摺動するようにサイズ決定され得る。したがって、いくつかの構成では、シース106の少なくとも一部は、ロック要素108の半径方向内側にあり得る。
【0035】
図3は、
図2の線3-3で取られたロック要素108の断面図である。ロック要素108は、様々の内径を有することができる。いくつかの実施形態では、ロック要素108は、内径が、近位端及び遠位端118,120にそれぞれ隣接するより大きな内径142,146から、ロック要素108の中間領域122に隣接するより小さな内径144まで先細になるような砂時計形状を有し得る。例えば、内径は、ロック要素108の近位長さ148にわたって、近位端118に隣接する第1の内径142から第2のより小さな内径144まで徐々に先細りになり得る。他の実施形態では、第1の内径142から第2の内径への移行は、段階的又は急激な遷移であり得る。第2以下の内径144は、ロック要素の第2又は中央の長さ150にわたってほぼ一定又は均一であり得る。内径は、ロック要素108の遠位長さ152にわたって、遠位端120に隣接する第2の小さい内径144から大きい第3の内径146まで徐々にフレア状になることができる。他の実施形態では、第2の内径144から第3の内径146への遷移は、段階的又は急激な移行であり得る。いくつかの実施形態では、より小さな内径144を有するロック要素108の中心長さ150は、シース106のより大きな外径領域126の中間部分132の長さとほぼ同じであり得るが、これは必須ではない。第2のより小さな内径144は、ロック要素108がシース106の近位端領域113及び/又は遠位端領域115上を自由に摺動できるようなサイズにすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、ロック要素108の内径は変化するが、管腔124の断面形状は同じままである。例えば、
図2の線4-4で取られたロック要素108の断面図を示す
図4をさらに参照すると、管腔124は、近位端118に隣接してほぼ円形の断面形状を有し、中間領域122に隣接して、ほぼ円形の断面形状を有することができる。しかしながら、ロック要素108の壁の厚さは、内径に反比例して変化する。例えば、ロック要素108は、近位端に隣接する第1の壁厚154と、中間領域122に隣接する第2のより大きな壁厚156とを有し得る。
【0037】
ロック要素108の構成は、所望の効果を生み出すように調整され得ることが企図される。例えば、内径142,144,146のうちの1つ以上は、異なるサイズのシース106に対応するために、より大きく又はより小さくすることができる。さらに、近位及び/又は遠位の長さ148、152は、より長く、より短く、より角度が少なく、より角度が付けられているなどであり得る。別の例では、ロック要素108の外径は、取り扱いを容易にするために増加又は減少され得る。さらに、ロック要素108の外面は、把持性を改善するための隆起、波、テクスチャリング、又はくぼみなどであるがこれらに限定されない、人間工学的取り扱いを改善するための形状を含み得ることが企図される。場合によっては、シース106及び/又はロック要素108は、ロック要素108の操作においてユーザを案内するための視覚的な印を含み得る。場合によっては、中央の長さ150及び/又はロック要素108の全長を、必要に応じて増加又は減少させることができる。
【0038】
図5は、ロック解除された、又は第1の組み立てられた構成の例示的な医療器具システム100の斜視図であり、
図6は、
図5の線6-6で取られた例示的な医療器具システム100の部分断面図である。
図1に示される部分的に分解した構成から、プッシャーワイヤ102を固定するために使用できるようにロック要素108を配置するために、ロック要素108は、近位端112からシース106の近位端領域113の上方を遠位方向に前進する。この構成では、プッシャーワイヤ102は、軸方向に(例えば、近位及び遠位に)自由にスライドし、及び/又はシース106の管腔110内で回転する。上記のように、シース106の内径は、近位端112から遠位端114まで一定、又は実質的に一定のままであり得る。より大きな外径領域126の壁の厚さは、局所的な隆起を作り出すために、近位端領域113及び/又は遠位端領域115の壁の厚さよりも大きくてもよい。
【0039】
プッシャーワイヤ102をシースに相対してロックするために、ロック要素108の中心長さ150がシース106のより大きな外径領域126の中間領域132の上方に配置されるまで、ロック要素108を遠位方向にさらに前進させる。
図5は、より大きな外径領域126の近位にあるロック要素108を示しているが、場合によっては、ロック要素108は、より大きな外径領域126の遠位に最初に配置され得る。そのような場合、ロック要素108は、ロック要素108をロック構成された(例えば、より大きな外径領域126上に配置された)状態にもたらすために、近位に引っ込められ得る。
図7は、ロックされた構成又は第2の組み立てられた構成における例示的な医療器具システム100の斜視図であり、
図8は、
図7の線8-8における例示的な医療器具システム100の部分断面図である。上記のように、ロック要素108は、シースの近位端領域113(及び/又は遠位端領域115)上を自由にスライドすることができる。ロック要素108がより大きな外径領域126に到達すると、シース106のより大きな外径領域126を押し下げて、ロック要素108がより大きな外径領域126上を前進できるようにすることができる。ロック要素108は、
図8に示すように、より大きな外径領域126の外径が減少し、かつ、半径方向内側にバイアスされるように、より大きな外径領域126の内径が減少するように挟み、又は、より大きな外径領域126の外面に半径方向内向きのバイアス力を加えることができる。より大きな外径領域126の内径が減少すると、中間部分132は、プッシャーワイヤ102の外面に接触し、摩擦的に係合する。
図7及び8に示されるロックされた構成では、シース106の内面とプッシャーワイヤ102の外面との間の摩擦係合は、シース106の管腔110内のプッシャーワイヤ102の軸方向(例えば、近位及び遠位)運動及び/又は回転運動を排除又は阻害し得る。いくつかの実施形態では、より大きな外径領域126は、その内向きのたわみを促進するための特徴を含み得る。例えば、より大きな外径領域126は、その内部に形成されたスロットを有し得る。一実施形態では、たわみを促進するために約180度離れて2つのスロットが形成され得る。これはほんの一例である。必要に応じて、たわみを容易にするために、2つより少ないスロット又は2つより多いスロットを設けることができる。さらに、スロットは、より大きな外径領域126の円周の周りに均一に又は偏心して分布され得る。
【0040】
より大きな外径領域126の近位ウエスト128の外径の漸進的な増加及びロック要素108の近位長さ148の内径の漸進的な減少は、ロック要素108が遠位方向に移動するときのより大きな外径領域126でのロック要素108の位置決めを容易にし得ることが企図される。遠位ウエスト130及び遠位長さ152の傾斜は、同様に、より大きな外径領域126の遠位の位置からのロック要素108の近位移動を容易にすることができる。ユーザがインプラント104を前進させる準備ができているとき、ロック要素108は、遠位に前進させるか、又はより大きな外径領域126から近位に除去することができる。これにより、より大きな外径領域126に隣接するシース106の内径が元の構成に拡張され、プッシャーワイヤ102が自由に動くことが可能になり得る。したがって、シース106がプッシャーワイヤ102から取り外されると、シース106は、プッシャーワイヤ102のどの部分にも係合したり、ぶら下がったりすることはない。
【0041】
より大きな外径領域126の中間部分132の外径136及びロック要素108の中央長さ150の内径144は、ロック要素108がロック構成にあるとき(例えば、より大きな外径領域126上に配置される)、より大きな外径領域126がプッシャーワイヤ102に接触することができるように選択され得ることが企図される。例えば、プッシャーワイヤ102は、約0.016インチ(0.406ミリメートル(mm))の外径を有し得、シース106は、約0.025インチ(0.635mm)の内径を有し得る。近位端領域113におけるシース106の外径134が約0.034インチ(0.864mm)である場合、ロック要素108の最小内径144は、ロック要素108が近位端領域113上を自由にスライドすることを可能にするために約0.037インチ(0.940mm)であり得る。したがって、より大きな外径領域126の最大外径136は、約0.046インチ(1.168mm)であり得る。したがって、より大きな外径領域126は、ロック要素108が通過することを可能にするために、直径の0.009インチ(0.229mm)の縮小を必要とするであろう。シース106の内径に移されたときの0.009インチ(0.229mm)の減少は、シース106の内径を、0.025インチ(0.635mm)から0.016インチ(0.406mm)に減少させ、これは、プッシャーワイヤ102の外径である。これはほんの一例である。ロック要素108及び/又はシース106の内径及び/又は外径は、固定されるワイヤ又は他の構成要素の直径に対応するように変えることができる。
【0042】
さらに、ロック要素108は、外側シース106よりも剛性が高いか、又はより剛性である材料から形成され得ることが企図される。例えば、ロック要素108の材料は、ロック要素108がより大きな外径部分126上を前進するときにロック要素がたわまず、むしろシース106を内側にたわませるように選択され得る。場合によっては、ロック要素108は、射出成形、3Dプリントなどであり得る。いくつかの実施形態では、ロック要素108は、ユーザが容易に気付くことができる明るい(又は他の)色から形成することができる。場合によっては、シース106の外面上の、ロック要素108とほぼ等しい長さであり、より大きな外径領域126の遠位にある部分を、同じ色(又は必要に応じて異なる色)にすることができる。これは、ロック要素108をスライドさせて、シース106の同様の色の(又は異なる色の)セグメントと重なるようにユーザに示し、ロック解除機構を作動させる方法を明確に示してもよい。これはまた、ロック要素108を遠位にスライドさせる際の明瞭さを改善し得る。必須ではないが、ロック要素108を遠位方向にスライドさせることにより、必要な移動運動を低減し、手術台上に緩い構成要素(例えば、ロック要素108)を有しないようにすることができる。場合によっては、シース106の近位端領域113は、近位端112に隣接する外径(例えば、機械的停止点)の増加を含み得、ロック要素108が構成要素のロックを解除するために近位に引っ込められる場合には、ロック要素108がシース106から分離するのを防止するために提供され得る。
【0043】
図9は、別の例示的なロック要素200の斜視図を示している。ロック要素200は、近位端202、遠位端204、及びそれらの間に配置された中間領域206を有する管状部材であり得る。ロック要素200は、近位端202から遠位端204まで、ほぼ一定又は均一な外径210を有することができるが、これは必須ではない。ロック要素200は、近位端202から遠位端204まで延びる管腔208を規定することができる。上記のように、ロック要素200の管腔208は、上記のシース106などのシースの少なくとも近位端領域上を自由にスライドするようなサイズにすることができる。
【0044】
上記のロック要素108と同様に、ロック要素200は、可変の内径を有することができる。しかしながら、中間領域206に隣接するより小さな内径を有することに加えて、管腔208の断面形状は、直径が減少するにつれて変化し得る。
図10は、
図9の線10-10で取られたロック要素200の断面図である。図示の実施形態では、断面形状は、近位端202及び遠位端204に隣接する円形から、中間領域206に隣接する楕円体に変化し得る。中間領域206の長径212は、近位端202(及び/又は遠位端204)に隣接する円形断面の内径216とほぼ同じであり得、一方、中間領域206の短径214は、近位端202(及び/又は遠位端204)に隣接する円形断面の内径216よりも小さくてもよいことが企図される。これは、(ロック要素200、シース106、及びプッシャーワイヤ102の)ロック機構を、フープ応力ではなく、円周の周りの2点での圧縮ロックに変更することができる。場合によっては、明示的に示されていないが、管腔208の断面形状は、近位端202から遠位端204まで楕円形であり得る。
【0045】
図11は、
図9の線11-11で取られたロック要素200の断面図である。上記のように、ロック要素200は、可変の内径を有し得る。いくつかの実施形態では、ロック要素200は、内径が少なくとも1つの次元(例えば、楕円の短軸)で、それぞれ、近位端及び遠位端202,204に隣接するより大きな内径216,218から、ロック要素200の中間領域206に隣接するより小さな内径214へと先細になるような砂時計形状を有し得る。例えば、内径は、近位端202に隣接する第1の内径216から第2のより小さな内径214まで、ロック要素200の近位長さ220にわたって徐々に先細りになり得る。他の実施形態では、第1の内径216から第2の内径214への移行は、段階的又は急激な移行であり得る。第2の、より小さい内径214は、ロック要素の第2の中央の長さ222にわたってほぼ一定又は均一であり得る。内径は、ロック要素200の遠位長さ224にわたって、遠位端204に隣接する第2の小さい内径214から大きい第3の内径218まで徐々にフレア状になることができる。他の実施形態では、第2の内径214から第3の内径218への移行は、段階的又は急激な移行であり得る。いくつかの実施形態では、より小さな内径214を有するロック要素200の中心長さ222は、シース106のより大きな外径領域126の中間部分132の長さとほぼ同じであり得るが、これは必須ではない。第2のより小さな内径214は、ロック要素200がシース106の近位端領域113及び/又は遠位端領域115上を自由に摺動できるようなサイズにすることができる。上記のように、管腔208の形状が変化するにつれて、楕円の短径210はサイズが減少し、長径212は減少する可能性がある。
図12は、
図9の線12-12で取られたロック要素200の断面図であり、ロック要素200の長さに沿った一定の主直径を示している。
【0046】
ロック要素200の構成は、所望の効果を生み出すように調整され得ることが企図される。例えば、内径216,214,218のうちの1つ以上は、異なるサイズのシース106に対応するために、より大きく又はより小さくすることができる。さらに、近位及び/又は遠位の長さ220,224は、より長く、より短く、より角度が少なく、より角度が付けられているなどであり得る。別の例では、ロック要素200の外径は、取り扱いを容易にするために増加又は減少され得る。さらに、ロック要素200の外面は、把持性を改善するための隆起、波、テクスチャリング、又はくぼみなどであるがこれらに限定されない、人間工学的取り扱いを改善するための表面形状を含み得ることが企図される。場合によっては、ロック要素200は、ロック要素200の操作においてユーザを案内するための視覚的な印を含み得る。場合によっては、ロック要素200の中央の長さ222及び/又は全長を、必要に応じて増加又は減少させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はそれらの構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(以下にいくつかの例を示す)、金属-ポリマー複合材料、セラミック、それらの組み合わせなど、又は他の適切な材料から作製され得る。適切な金属及び金属合金のいくつかの例には、444V、444L、314LVステンレス鋼などのステンレス鋼;軟鋼;線形弾性及び/又は超弾性ニチノールなどのニッケルチタン合金;ニッケル-クロム-モリブデン合金などの他のニッケル合金(例:INCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C-276(登録商標)などのUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金、ニッケル-銅合金(例:MONEL(登録商標)、NICKELVAC(登録商標)400,NICORROS(登録商標)400等などのUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム--リブデン合金(例:MP35-N(登録商標)などのUNS:R44035)、ニッケル-モリブデン合金(例:HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665)、その他のニッケル-クロム合金、その他のニッケル-モリブデン合金、その他のニッケル-コバルト合金、その他のニッケル-鉄合金、その他のニッケル-銅合金、その他のニッケル-タングステン又はタングステン合金等;コバルトクロム合金;コバルト-クロム-モリブデン合金(例:ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R44003);プラチナ強化ステンレス鋼;チタン;白金;パラジウム;金;それらの組み合わせなど、又は他の適切な材料が含まれる。
【0048】
本明細書で暗示されるように、市販のニッケル-チタン又はニチノール合金の群には、「線形弾性」又は「非超弾性」と呼ばれるカテゴリーがあり、これは、化学的には従来の形状記憶及び超弾性品種と類似している可能性があるが、明確で有用な機械的特性を示す場合がある。線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールは、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールがその応力においてひずみ曲線で超弾性ニチノールのような実質的な「超弾性プラトー」又は「フラグ領域」を示さないという点で、超弾性ニチノールと区別され得る。代わりに、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールでは、回復可能なひずみが増加するにつれて、応力は実質的に線形、又はある程度線形の関係で増加し続けるが、塑性変形が始まるまで、又は少なくとも超弾性ニチノールで見られる可能性のある超弾性プラトー及び/又はフラグ領域よりも線形である関係であり続ける。したがって、本発明の目的のために、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールはまた、「実質的に」線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールと呼ばれ得る。
【0049】
場合によっては、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールはまた、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールが実質的に弾性を維持しながら(例えば、塑性変形する前に)最大約2~5%のひずみを受け入れることができるという点で、超弾性ニチノールと区別でき、超弾性ニチノールは、塑性変形する前に最大約8%のひずみを受け入れる可能性がある。これらの材料は両方とも、塑性変形する前に約0.2~0.44パーセントのひずみしか受け入れないステンレス鋼(その組成に基づいて区別することも)などの他の線形弾性材料と区別できる。
【0050】
いくつかの実施形態において、線状弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲での示差走査熱量測定(DSC)及び動的金属熱分析(DMTA)によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金において、摂氏約-60度(℃)~約120℃の範囲で、DSC及びDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化がない場合がある。したがって、そのような材料の機械的曲げ特性は、一般に、この非常に広い温度範囲にわたる温度の影響に対して不活性であり得る。いくつかの実施形態では、周囲温度又は室温での線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的曲げ特性は、例えば、超弾性プラトー及び/又はフラグ領域が示されないという点で、体温での機械的特性と実質的に同じである。例えば、広い温度範囲にわたって、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性及び/又は非超弾性特性及び/又は特性を維持する。
【0051】
いくつかの実施形態では、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケルチタン合金において、約50~約60重量パーセントはニッケルであり得、残りは概ねチタンである。いくつかの実施形態では、組成物は、約54~約57重量パーセントの範囲のニッケルを有する。適切なニッケルチタン合金の一例は、神奈川県の古河テクノマテリアル株式会社から市販されているFHP-NT合金である。他の適切な材料には、ULTANIUM(登録商標、Neo-Metrics社から入手可能)及びGUMMETAL(登録商標、トヨタから入手可能)が含まれる。いくつかの他の実施形態では、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールを使用して、所望の特性を達成することができる。
【0052】
少なくともいくつかの実施形態では、医療器具システム100の一部又は全部、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はそれらの構成要素はまた、放射線不透過性材料がドープされるか、放射線不透過性材料から形成されるか、さもなければ放射線不透過性材料を含み得る。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン又は別の画像化技術上で比較的明るい画像を生成できる材料であると理解されている。この比較的明るい画像は、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、及び/又はそれらの構成要素などの位置を決定する際にユーザを支援する。放射線不透過性材料のいくつかの例には、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤が充填されたポリマー材料などが含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、他の放射線不透過性マーカーバンド及び/又はコイルもまた、同じ結果を達成するために医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、及び/又はそれらの構成要素の設計に組み込まれ得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴画像法(MRI)適合性が、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はそれらの構成要素などに与えられる。例えば、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はそれらの構成要素又はその一部は、画像を実質的に歪めず、実質的なアーチファクト(例えば、画像のギャップ)を生成しない材料で形成され得る。例えば、特定の強磁性体は、MRI画像にアーチファクトを作成する可能性があるため、適切でない場合がある。医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200など、又はそれらの部分もまた、MRI装置が画像化することができる材料から作製され得る。これらの特性を示すいくつかの材料には、例えば、タングステン、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、UNS:ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのR44003)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例:UNS:MP35-N(登録商標)などのR44035)、ニチノールなどが含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200など、及び/又はその構成要素、及び/又はその一部は、ポリマー又は他の適切な材料から作製され得るか、又はそれらを含み得る。適切なポリマーのいくつかの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、デュポン社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えば、DSMエンジニアリングプラスティック社から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル又はエステルベースのコポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/又は他のポリエステルエラストマー(例えばデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標))、ポリアミド(例えば、バイエルから入手可能なデュレタン(登録商標)又はエルフアトケムから入手可能なクリスタミド(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標)の商品名で入手可能なPEBA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス高密度ポリエチレン、マーレックス低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(REXELL(登録商標)など)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタラミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMSアメリカングリロン社から入手可能なGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリビニリデンクロリド(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS 50A)、ポリカーボネート、イオノマー、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、又は混合物、組み合わせ、それらのコポリマー、ポリマー/金属複合材料などが含まれ得る。 いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP)とブレンドすることができる。例えば、混合物には最大約6パーセントのLCPを含有してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はその構成要素などは、構造の上又は中に布材料が配置されていてもよい。布材料は、組織の内部成長を促進するように適合された、ポリマー材料又は生体材料などの生体適合性材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、布材料は、生体吸収性材料を含み得る。適切な布材料のいくつかの例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、ePTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどのポリオレフィン材料、及び/又はブレンド又は組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態では、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はそれらの構成要素などは、繊維材料を含み、及び/又は繊維材料から形成され得る。適切な繊維材料のいくつかの例には、平坦、成形、ねじれ、織り目加工、事前収縮又は非収縮の合成糸が含まれ得る。本発明での使用に適した合成生体適合性糸には、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリメチルアセテート、ポリアミド、ナフタレンジカルボキシレン誘導体、天然シルク、及びポリテトラフルオロエチレンなどのポリエステルが含まれるが、これらに限定されない。さらに、合成糸の少なくとも1つは、金属糸又はガラス又はセラミック糸又は繊維であり得る。有用な金属糸には、ステンレス鋼、プラチナ、金、チタン、タンタル、又はニッケル-コバルト-クロム-ベースの合金から作られた、又はそれらを含む糸が含まれる。糸は、さらに炭素、ガラス又はセラミック繊維を含有してもよい。糸は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレンなどを含むがこれらに限定されない熱可塑性材料から作られることが望ましい。糸は、マルチフィラメント、モノフィラメント、又はスパンタイプのものであり得る。選択される糸のタイプ及びデニールは、生体適合性で移植可能なプロテーゼ、より詳細には、好適な特性を有する血管構造を形成する方法で選択することができる。
いくつかの実施形態では、医療器具システム100、プッシャーワイヤ102、インプラント104、シース106、ロック要素108,200、及び/又はその構成要素などは、適切な治療薬を含み、及び/又はそれらで処理され得る。適切な治療薬のいくつかの例には、抗血栓形成薬(ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)など);抗増殖剤(エノキサパリン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻止できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸など);抗炎症剤(デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミンなど);抗腫瘍剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤(パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤など);麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなど);抗凝固剤(D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、及びダニ抗血小板ペプチドなど);血管細胞増殖プロモーター(成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子、及び翻訳プロモーターなど);血管細胞増殖阻害剤(増殖因子阻害剤、増殖因子受容体アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二機能性分子、抗体と細胞毒素);コレステロール低下剤;血管拡張剤;及び内因性血管作用メカニズムを妨害する薬剤が含まれ得る。
【0057】
この開示は、多くの点で、例示にすぎないことを理解されたい。発明の範囲を超えることなく、特に形状、サイズ、及び工程の配置に関して、詳細に変更を加えることができる。これは、適切な範囲で、他の実施形態で使用されている一例の実施形態の特徴のいずれかの使用を含み得る。言うまでもなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。