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  • 特許-焼結排煙ガスの脱硝処理方法及び機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】焼結排煙ガスの脱硝処理方法及び機器
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20230511BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20230511BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20230511BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20230511BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F23C99/00 332
B01D53/56 300
B01D53/76 ZAB
C22B1/20 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021568689
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2019087613
(87)【国際公開番号】W WO2020232599
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】201910412942.3
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521500720
【氏名又は名称】秦皇▲島▼新特科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】高 彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219362(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104634097(CN,A)
【文献】国際公開第2018/074783(WO,A1)
【文献】特開昭53-080026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0175714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 7/00
F23C 99/00
B01D 53/56
B01D 53/76
C22B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結用原料を点火するステップS10と、
点火された焼結用原料の材料面に還元媒体をスプレーして、還元媒体を焼結用原料の周囲の酸化剤と反応させるステップS20とを含む、ことを特徴とする焼結排煙ガスの脱硝処理方法。
【請求項2】
前記還元媒体は、焼結用原料の周囲の酸素ガスと反応するための還元剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の脱硝処理方法。
【請求項3】
前記還元剤は、焼結用原料の燃焼によって発生した気体と反応するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の脱硝処理方法。
【請求項4】
前記還元剤は、焼結用原料の燃焼によって発生した窒素酸化物と還元反応するために用いられる、ことを特徴とする請求項3に記載の脱硝処理方法。
【請求項5】
前記還元剤は、可燃性物質を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の脱硝処理方法。
【請求項6】
前記還元剤は、メタン、プロパン、アセチレン、水素ガス、メタノール、エタノール、石炭ガス、天然ガス、ガソリン、重油、石炭粉、木炭、コークス、木屑、硫化水素、シアン化水素、ホスゲン、ノルマルブタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルペンタン、プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸ビニル、シラン、シクロヘキサン、塩化水素、ブチン、液化ガス、石油ガス、エーテル、トルエン、ベンゼン、アセトン、アリレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタン、石炭水スラリーのうちの1つ又は複数の物質を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の脱硝処理方法。
【請求項7】
前記還元剤は、水又は水蒸気を更に含む、ことを特徴とする請求項2に記載の脱硝処理方法。
【請求項8】
前記還元媒体は、助燃剤を更に含み、前記助燃剤は、酸素ガス、空気又は循環排ガスのうちの1つ又は複数を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の脱硝処理方法。
【請求項9】
焼結用原料(70)を搬送するための搬送機構(10)と、
前記搬送機構(10)に対応して設けられ、焼結用原料を点火するための点火装置(20)と、
前記搬送機構に対応して設けられ、焼結用原料(70)の搬送方向において前記点火装置(20)の下流に位置し、点火された焼結用原料(70)の材料面に還元媒体をスプレーするための反応制御装置(30)とを含む、ことを特徴とする焼結排煙ガスの脱硝処理機器。
【請求項10】
前記点火装置(20)は、前記搬送機構(10)の上方に設けられている、ことを特徴とする請求項9に記載の脱硝処理機器。
【請求項11】
前記反応制御装置(30)は、前記搬送機構(10)の上方に設けられたフィーダーを含み、前記フィーダーには、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている、ことを特徴とする請求項9に記載の脱硝処理機器。
【請求項12】
前記反応制御装置(30)は、前記搬送機構(10)の上方に設けられた管路を含み、前記管路には、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている、ことを特徴とする請求項9に記載の脱硝処理機器。
【請求項13】
前記搬送機構(10)の下方に設けられ、焼結用原料の燃焼後の排煙ガスを収集するための風箱(40)と、
前記風箱(40)と連通し、内部に送風ファン(60)が設けられている風道(50)とを更に含む、ことを特徴とする請求項9に記載の脱硝処理機器。
【請求項14】
前記搬送機構(10)は、搬送台車を含み、複数の前記搬送台車が焼結用原料(70)の搬送方向に順次に連接される、ことを特徴とする請求項9に記載の脱硝処理機器。
【請求項15】
前記風箱(40)は複数であり、複数の風箱(40)が間隔を空けて設けられる、ことを特徴とする請求項13に記載の脱硝処理機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製錬設備の技術分野に関し、特に焼結排煙ガスの脱硝処理方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
今までは、鉄鋼焼結工程における排煙ガスの浄化処理として、ほとんどエンド・オブ・パイプ方式の浄化処理を採用している。活性炭プロセスの他には、現在、国内外で幅広く使用されている同時脱硝技術がSCR技術である。選択的接触還元による脱硝とは、酸素含有雰囲気の下で、触媒によって排煙ガスにおけるNOをアンモニアを経てNと水に還元することである。反応温度が300~450℃であれば、脱硝率は70%~90%に達することができる。この技術は、成熟度及び信頼性の高いものであり、現在世界範囲で、特に各先進国で幅広く応用されている。しかしながら、当該技術は、そのプロセスに係る設備への投資が大きく、排煙ガスの予熱処理が必要とされ、触媒が高価で且つ使用寿命が短く、運営コストが高い上に、アンモニアの漏れ、設備の腐食され易さや危険廃棄物の処理などの課題を抱えている。国内外には、オゾン又は触媒を用いて窒素酸化物を酸化させてから、吸収剤によってそれを除去する脱硝プロセスも存在しているが、当該プロセスには、生じた大量の副産物をリサイクルできないという問題点があるため、政府関連部門に大きく注目・懸念されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、従来の使用寿命が短く、運営コストが高いという問題を解決した焼結排煙ガスの脱硝処理方法及び機器を開示している。
【0004】
本発明の一つの局面では、焼結用原料を点火するステップS10と、点火された焼結用原料に還元媒体をスプレーして、還元媒体を焼結用原料の周囲の酸化剤と反応させるステップS20とを含む、焼結排煙ガスの脱硝処理方法を開示している。
【0005】
さらには、前記還元媒体は、焼結用原料の周囲の酸素ガスと反応するための還元剤を含む。
【0006】
さらには、前記還元剤は、焼結用原料の燃焼によって発生した気体と反応するために用いられる。
【0007】
さらには、前記還元剤は、焼結用原料の燃焼によって発生した窒素酸化物と還元反応するために用いられる。
【0008】
さらには、前記還元剤は、可燃性物質を含む。
【0009】
さらには、前記還元剤は、メタン、プロパン、アセチレン、水素ガス、メタノール、エタノール、石炭ガス、天然ガス、ガソリン、重油、石炭粉、木炭、コークス、木屑、硫化水素、シアン化水素、ホスゲン、ノルマルブタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルペンタン、プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸ビニル、シラン、シクロヘキサン、塩化水素、ブチン、液化ガス、石油ガス、エーテル、トルエン、ベンゼン、アセトン、アリレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタン、石炭水スラリーのうちの1つ又は複数の物質を含む。
【0010】
さらには、前記還元剤は、水又は水蒸気を更に含む。
【0011】
さらには、前記還元媒体は、助燃剤を更に含み、前記助燃剤は、酸素ガス、空気又は循環排ガスのうちの1つ又は複数を含む。
【0012】
本発明のもう一つの局面では、焼結用原料を搬送するための搬送機構と、前記搬送機構に対応して設けられ、焼結用原料を点火するための点火装置と、前記搬送機構に対応して設けられ、焼結用原料搬送方向において前記点火装置の下流に位置し、点火された焼結用原料に還元媒体を添加するための反応制御装置とを含む、焼結排煙ガスの脱硝処理機器を更に開示している。
【0013】
さらには、前記点火装置は、前記搬送機構の上方に設けられている。
【0014】
さらには、前記反応制御装置は、前記搬送機構の上方に設けられたフィーダーを含み、前記フィーダーには、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている。
【0015】
さらには、前記反応制御装置は、前記搬送機構の上方に設けられた管路を含み、前記管路には、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている。
【0016】
さらには、前記脱硝処理機器は、前記搬送機構の下方に設けられ、焼結用原料の燃焼後の排煙ガスを収集するための風箱と、前記風箱と連通し、内部に送風ファンが設けられている風道とを更に含む。
【0017】
さらには、前記搬送機構は、搬送台車を含み、複数の前記搬送台車が焼結用原料搬送方向に順次に連接される。
【0018】
さらには、前記風箱は複数であり、複数の風箱が間隔を空けて設けられる。
【0019】
本発明による焼結排煙ガスの脱硝処理方法は、焼結生産時に焼結用原料の材料面に還元媒体をスプレーして、還元媒体を周囲の酸化剤と反応させることにより、焼結用原料の燃焼に入る雰囲気、例えば酸素含有量が制御されるため、窒素酸化物の生成を抑制することができるとともに、焼結中に既に発生した窒素酸化物と反応させて、窒素酸化物を窒素ガスに還元することもでき、その結果、窒素酸化物の排出量が低減され、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明実施例による脱硝処理機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を参照して本発明を詳しく説明するが、明細書の記載内容に限定されない。
【0022】
本発明は、焼結排煙ガスの脱硝処理方法を開示しており、当該脱硝処理方法は、
焼結用原料を点火するステップS10と、
点火された焼結用原料に還元媒体をスプレーして、還元媒体を焼結用原料の周囲の酸化剤と反応させるステップS20とを含む。
【0023】
本発明による焼結排煙ガスの脱硝処理方法は、焼結生産時に焼結用原料の材料面に還元媒体をスプレーして、還元媒体を周囲の酸化剤と反応させることにより、焼結用原料の燃焼に入る雰囲気、例えば酸素含有量が制御されるため、窒素酸化物の生成を抑制することができるとともに、焼結中に既に発生した窒素酸化物と反応させて、窒素酸化物を窒素ガスに還元することもでき、その結果、窒素酸化物の排出量が低減され、低コストである。
【0024】
上記実施例において、還元媒体は、焼結用原料の周囲の酸素ガスと反応するための還元剤を含む。焼結生産中には、還元剤は、直接酸素ガスと酸化還元反応することが可能であるため、窒素酸化物の生成が効果的に抑制され、窒素酸化物の排出が低減され、稼働コストが削減される。
【0025】
上記実施例において、還元剤は、焼結用原料の燃焼によって発生した気体と反応するために用いられ、焼結用原料の燃焼によって発生した窒素酸化物と酸化還元反応するために用いられる。焼結用原料の燃焼時には、窒素酸化物を含めて、一部の気体が依然として発生するが、還元剤は、これらの気体、特に窒素酸化物と酸化還元反応して、窒素酸化物を窒素ガスに還元することができるため、窒素酸化物の排出が低減されるとともに、危険な副産物が発生することもなく、安全で信頼性がある。
【0026】
上記実施例において、還元剤は、メタン、プロパン、アセチレン、水素ガス、メタノール、エタノール、石炭ガス、天然ガス、ガソリン、重油、石炭粉、木炭、コークス、木屑、硫化水素、シアン化水素、ホスゲン、ノルマルブタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルペンタン、プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸ビニル、シラン、シクロヘキサン、塩化水素、ブチン、液化ガス、石油ガス、エーテル、トルエン、ベンゼン、アセトン、アリレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタン、石炭水スラリー、コークス、木屑などの可燃性物質、又は高温で水素ガスに分解されることが可能な水、水蒸気のうちの1つ又は複数の物質を含み、水素ガスは、酸化剤又は窒素酸化物を酸化還元することができる。本発明において採用した還元剤は、上記材料のいずれか1つであってもよいし、複数の上記材料による混合物であってもよく、例えば、複数の気体の混合物、固体の混合物、気体と固体との混合物などは、いずれも実現可能であり、これらの混合物は、コストが低く、汚染を生じさせることもない。
【0027】
上記実施例において、還元剤は、助燃剤を更に含み、当該助燃剤は、酸素ガス、空気又は循環排ガスのうちの1つ又は複数を含み、可燃性物質と助燃性物質とは、所定割合で混合され、異なる気体雰囲気の要求に応じて適宜に配合される。助燃剤を加えることにより、反応効率を向上させることが可能となり、窒素酸化物の発生をより一層に抑えることに役立つ。
【0028】
本発明のもう一つの局面では、焼結される焼結用原料70を搬送するための搬送機構10と、搬送機構10に対応して設けられ、焼結用原料を点火するための点火装置20と、搬送機構に対応して設けられ、焼結用原料70の搬送方向において点火装置20の下流に位置し、点火された焼結用原料70に還元媒体を添加するための反応制御装置30とを含む、焼結排煙ガスの脱硝処理機器を更に開示している。本発明は、反応制御装置30を増設することにより、点火装置20が焼結用原料を点火した後、焼結用原料に還元媒体をスプレーして、還元媒体を燃焼させて周囲の酸化剤と反応させることができるため、窒素酸化物の生成を抑制することができるとともに、焼結中に既に発生した窒素酸化物と反応させて、窒素酸化物を窒素ガスに還元することもでき、その結果、窒素酸化物の排出量が低減され、低コストである。
【0029】
上記実施例において、点火装置20は、搬送機構10の上方に設けられている。こうして、搬送機構10内の焼結用原料を効果的に点火することが可能となる。
【0030】
上記実施例において、反応制御装置30は、搬送機構10の上方に設けられたフィーダーを含み、当該フィーダーには、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている。フィーダーが搬送機構10の上方に設けられることによって、還元媒体をスプレーし易くし、反応効率を向上させ、還元媒体の無駄使いを減少することができるとともに、制御弁によって還元媒体の添加量を制御し、焼結用原料の燃焼雰囲気、例えば酸素含有量及び温度に対する有効な制御を実現して、窒素酸化物の発生を抑制する役割を果たすことができる。
【0031】
上記実施例において、反応制御装置30は、搬送機構10の上方に設けられた管路を含み、当該管路には、還元媒体の添加量を制御するための制御弁が設けられている。フィーダーが搬送機構10の上方に設けられることによって、還元媒体をスプレーし易くし、反応効率を向上させ、還元媒体の無駄使いを減少することができるとともに、制御弁によって還元媒体の添加量を制御し、焼結用原料の燃焼雰囲気、例えば酸素含有量及び温度に対する有効な制御を実現して、窒素酸化物の発生を抑制する役割を果たすことができる。
【0032】
上記実施例において、脱硝処理機器は、搬送機構10の下方に設けられ、焼結用原料の燃焼後の排煙ガスを収集するための風箱40と、風箱40と連通し、内部に送風ファン60が設けられている風道50とを更に含む。送風ファン60から発生した負圧によって、風箱40を介して、焼結で生じた全ての気体を風道に吸い込んで、排煙ガスの外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0033】
上記実施例において、搬送機構10は、搬送台車を含み、複数の搬送台車が焼結用原料70の搬送方向に順次に連接される。風箱40は複数であり、複数の風箱40が間隔を空けて設けられる。搬送台車が設けられることによって、焼結用原料の生産性を向上させることができる。一方で、複数の風箱40が設けられることによって、排煙ガスの収集効果を大幅に向上させ、排煙ガスの外部への漏出による環境汚染を防止することができる。
【0034】
明らかなことに、本発明の上記実施形態は、あくまでも本発明を明確に説明するための例示に過ぎず、本発明の実施形態を制限するものではない。当業者にとっては、上記説明に基づいて他の様々な形の変更又は変形を更に行うことができる。ここで、全ての実施形態を取り上げ尽すことはできないが、本発明の技術案から導き出される明らかな変更又は変形は、依然として本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10 搬送機構、20 点火装置、30 反応制御装置、40 風箱、50 風道、60 送風ファン、70 焼結用原料
図1