(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電力変換システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230511BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230511BHJP
G05F 1/62 20060101ALI20230511BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/35 K
G05F1/62
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2022000384
(22)【出願日】2022-01-05
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】202110061168.3
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268432
【氏名又は名称】台達電子企業管理(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1F&7F&8F, Building 1, No.1675, Huadong Road, Pudong, Shanghai, 201209, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】沈 国 橋
(72)【発明者】
【氏名】何 ▲にん▼
(72)【発明者】
【氏名】王 長 永
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/102587(WO,A1)
【文献】特開2012-165615(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047698(WO,A1)
【文献】特開2007-166783(JP,A)
【文献】特開2015-144510(JP,A)
【文献】特開2015-195674(JP,A)
【文献】特表2013-520947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G05F 1/62
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個のチョッパ、及びn個の直流素子を備える電力変換システムであって、
前記n個のチョッパ各々は、スイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンス、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタを備え、
前記n個の直流素子は、前記n個のチョッパ各々に対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子の第1端が互いに連結され、第2端が対応するチョッパの前記インダクタンスの第2端にそれぞれ接続され、
前記チョッパ各々のスイッチングブリッジレグは並列接続され、nは2以上の自然数であ
り、
前記n個の直流素子のうち少なくとも1つの直流素子は直流電源であり、かつ少なくとも1つの直流素子は直流負荷であることを特徴とする、電力変換システム。
【請求項2】
前記スイッチングブリッジレグは、直列接続される第1スイッチと第2スイッチを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチの共通接続点は、前記スイッチングブリッジレグの中性点である、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記スイッチングブリッジレグは、直列接続される第3スイッチ、第4スイッチ、第5スイッチおよび第6スイッチを備え、
前記各チョッパは、1つのフライングキャパシタを更に備え、
前記フライングキャパシタは、前記第3スイッチと前記第4スイッチの共通接続点と、前記第5スイッチと前記第6スイッチの共通接続点との間に電気的に結合され、前記第4スイッチと前記第5スイッチの共通接続点は、前記スイッチングブリッジレグの中性点である、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記直流電源は、電池、整流電源及びスーパーキャパシタのうち少なくとも1種である、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記直流電源は、DC/DCコンバータを更に備え、かつ前記インダクタンスと前記電池、前記整流電源又は前記スーパーキャパシタとの間に電気的に結合される、
請求項4に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記直流負荷は、電池、スーパーキャパシタ、抵抗、DC/DCコンバータ及びDC/ACコンバータの直流端のうち少なくとも1つの直流端である、
請求項1、2、4又は5に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記チョッパ各々は、第2キャパシタを更に備え、前記第2キャパシタは、前記スイッチングブリッジレグの第1端及び/又は第2端と前記インダクタンスの第2端との間に電気的に結合される、
請求項1~5の何れか1項に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記第1キャパシタの電圧は、前記直流素子の電圧より低い、
請求項1~5の何れか1項に記載の電力変換システム。
【請求項9】
補償電源を更に備え、前記補償電源と前記スイッチングブリッジレグは並列接続される、
請求項1~5の何れか1項に記載の電力変換システム。
【請求項10】
前記n個の直流素子のうち1つの直流素子は、インバータの直流端である、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項11】
前記スイッチングブリッジレグを制御する制御手段を更に備える、
請求項10に記載の電力変換システム。
【請求項12】
前記インバータの直流端電圧値は、残り(n-1)個の直流素子の電圧の加重平均に等しい、
請求項10に記載の電力変換システム。
【請求項13】
前記加重平均において、前記残り(n-1)個の直流素子それぞれの電圧算術重みは、該直流素子を流れる電流と前記残り(n-1)個の直流素子を流れる総電流との比である、
請求項12に記載の電力変換システム。
【請求項14】
残り(n-1)個の直流素子は、電池パックであり、前記制御手段は、前記残り(n-1)個の直流素子を流れる電流を制御する、
請求項11に記載の電力変換システム。
【請求項15】
前記第1キャパシタの電圧は、対応する前記電池パックの定格電圧の50%より低い、
請求項14に記載の電力変換システム。
【請求項16】
残り(n-1)個の直流素子は、太陽電池ストリングである、
請求項11に記載の電力変換システム。
【請求項17】
前記インバータの直流端電圧が前記(n-1)個の前記太陽電池ストリングの最大電力点(MPP)電圧の平均値近傍にあるとき、前記制御手段は、各太陽電池ストリングのMPP電圧を目標値として各インダクタンスの第2端電圧を制御する、
請求項16に記載の電力変換システム。
【請求項18】
電力変換システムに適用される制御方法であって、該制御方法は、
各々が、スイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンス、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタを備えたn個のチョッパを提供するステップ、
n個の直流素子を提供するステップ、及び
前記スイッチングブリッジレグを制御することにより、前記直流素子を流れる電流又は前記直流素子の電圧を調節するステップを含み、
前記n個の直流素子は、前記n個のチョッパ各々に対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子の第1端が互いに連結され、第2端が対応するチョッパの前記インダクタンスの第2端にそれぞれ接続され、
前記チョッパ各々のスイッチングブリッジレグは並列接続され、nは2以上の自然数であ
り、
前記n個の直流素子のうち少なくとも1つの直流素子は直流電源であり、かつ少なくとも1つの直流素子は直流負荷であることを特徴とする、制御方法。
【請求項19】
前記n個の直流素子のうち1つの直流素子は、インバータの直流端である、
請求項18に記載の制御方法。
【請求項20】
前記インバータの直流端電圧を制御して残り(n-1)個の直流素子の電圧の加重平均となるようにする、
請求項19に記載の制御方法。
【請求項21】
前記加重平均において、前記残り(n-1)個の直流素子それぞれの電圧算術重みは、該直流素子を流れる電流と前記残り(n-1)個の直流素子を流れる総電流との比である、
請求項20に記載の制御方法。
【請求項22】
残り(n-1)個の直流素子は、電池パックである、
請求項19に記載の制御方法。
【請求項23】
前記第1キャパシタの電圧を制御して一定値になるようにする、
請求項22に記載の制御方法。
【請求項24】
前記一定値は、前記電池パック及び前記インバータの直流端の電圧より低い値である、
請求項23に記載の制御方法。
【請求項25】
前記一定値は、前記電池パックの定格電圧の50%より低い値である、
請求項24に記載の制御方法。
【請求項26】
残り(n-1)個の直流素子は、太陽電池ストリングである、
請求項19に記載の制御方法。
【請求項27】
前記インバータの直流端電圧を制御して前記残り(n-1)個の前記太陽電池ストリングのMPP電圧の平均値に近づけ、かつ各太陽電池ストリングのMPP電圧を目標値として各インダクタンスの第2端電圧を制御する、
請求項26に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換の分野に属し、特に電力変換システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大電力のエネルギー貯蔵に用いられる電池やスーパーキャパシタは、一般に数千~数万単位の低電圧セルで構成され、複数の組を直列接続又は並列接続してから始めてシステムの需要に対応できる高電圧・大電流が得られる。ところが、直列電圧のバラつきや並列電池の循環電流によってはシステムの安定性及び実用性が制限され、投資収益及びシステムの安全性に大きな影響を与える。近年、エネルギー貯蔵施設で発火事故が多発し、電気エネルギー貯蔵システムにとってシステムの保護性と安全性への要求が益々高まり、安全性を高める観点から、多くのエネルギー貯蔵システムでは電池充放電時の充電率(state of charge,SOC)を例えば20%~80%の範囲に制限し、電池パックの電圧差と循環電流を考慮して10%~20%の余裕を予め確保せざるを得なくなり、結果として投資コストが向上してしまう。
【0003】
上述の技術課題を解決するため、現在、主に1)双方向DC/DCコンバータ(以下、「チョッパ」とも称する)を利用して各組の電池パックを入力とし、電源や負荷の直流母線を出力とすることにより、両側の電気エネルギーに対して電圧、電流を両方向へ変換し、および2)直列電圧補償によって直流電圧と電流を調節し、直流電源システムに電圧補償用の2ポートDC/DCコンバータを導入する試みが行われている。そのうち、上記1)の方法では双方向DC/DCコンバータが電圧及び電流の調節能力、入力及び出力電圧の変換能力を備え、加えてより迅速に電流を遮断することができるが、高電圧大電流の直流へ変換する際の素子コストと電力損失が増えるという問題を抱える。一方、上記2)の方法では電圧補償用のDC/DCコンバータに入力ポート及び出力ポートを備え、出力端が電源システムの電源回路に直列接続されて電圧を重ね合わせて補償し、入力端に補償用の電気エネルギーが提供され、電源電圧に対して電圧調節の幅が小さいとき、低電力の電圧補償用DC/DCコンバータを利用して総出力電圧や電流を調節するができ、補償用コンバータの電力容量が大幅に低下するため、最大電力で入出力するチョッパに比べて小型化とコスト削減が可能となり、かつ電力変換時の消耗を減らすことができ、このような方法を部分的電力変換とも称する。上述の補償用DC/DCコンバータには絶縁型のコンバータが採用されており、高周波トランス及び直流から高周波交流、さらに直流へ変換する一連の動作を含むため、使用素子数が多くなり、小型化が難しく、コストも向上する。
【0004】
したがって、上述の技術課題を解決しうる電力変換システム及びその制御方法が特に期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされ、特定構造を有する低電力非絶縁型のチョッパを利用した電力変換システムを提供することを目的とする。本発明の電力変換システムによれば、直流電源又は直流負荷の電圧及び/又は電流を調節することができ、使用素子の数と体積を更に減らし、コストと電力消耗を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく、本発明の1つの側面ではn個のチョッパ、及びn個の直流素子を備える電力変換システムを提供し、前記n個のチョッパ各々は、スイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンス、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタを備え、前記n個の直流素子は、前記n個のチョッパ各々に対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子の第1端が互いに連結され、第2端が対応するチョッパの前記インダクタンスの第2端にそれぞれ接続され、前記チョッパ各々のスイッチングブリッジレグは並列接続され、nは2以上の自然数である。
【0007】
本発明のもう1つの側面において、前記n個の直流素子のうち少なくとも1つの直流素子が直流電源であり、かつ少なくとも1つの直流素子が直流負荷である。
【0008】
本発明のもう1つの側面において、前記スイッチングブリッジレグは、直列接続される第1スイッチと第2スイッチを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチの共通接続点は、前記スイッチングブリッジレグの中性点である。
【0009】
本発明のもう1つの側面において、前記スイッチングブリッジレグは、直列接続される第3スイッチ、第4スイッチ、第5スイッチおよび第6スイッチを備え、前記チョッパ各々は1つのフライングキャパシタを更に備え、前記フライングキャパシタは、前記第3スイッチと前記第4スイッチの共通接続点と、前記第5スイッチと前記第6スイッチの共通接続点との間に電気的に結合され、前記第4スイッチと前記第5スイッチの共通接続点は、前記スイッチングブリッジレグの中性点である。
【0010】
本発明のもう1つの側面において、前記直流電源は、電池、整流電源及びスーパーキャパシタのうち少なくとも1種である。
【0011】
本発明のもう1つの側面において、前記直流電源は、DC/DCコンバータを更に備え、かつ前記インダクタンスと、前記電池、前記整流電源又は前記スーパーキャパシタとの間に電気的に結合される。
【0012】
本発明のもう1つの側面において、前記直流負荷は、電池、スーパーキャパシタ、抵抗、DC/DCコンバータ及びDC/ACコンバータの直流端のうち少なくとも1つの直流端である。
【0013】
本発明のもう1つの側面において、前記チョッパ各々は、第2キャパシタを更に備え、前記第2キャパシタは、前記スイッチングブリッジレグの第1端及び/又は第2端と前記インダクタンスの第2端との間に電気的に結合される。
【0014】
本発明のもう1つの側面において、前記第1キャパシタの電圧は、前記直流素子の電圧より低い。
【0015】
本発明のもう1つの側面において、前記電力変換システムは、補償電源を更に備え、前記補償電源と前記スイッチングブリッジレグは並列接続される。
【0016】
本発明のもう1つの側面において、前記n個の直流素子のうち1つの直流素子は、インバータの直流端である。
【0017】
本発明のもう1つの側面において、前記電力変換システムは、前記スイッチングブリッジレグを制御する制御手段を更に備える。
【0018】
本発明のもう1つの側面において、前記インバータの直流端電圧値は、残り(n-1)個の直流素子の電圧の加重平均に等しい。
【0019】
本発明のもう1つの側面において、前記加重平均において、前記残り(n-1)個の直流素子それぞれの電圧算術重みは、該直流素子を流れる電流と前記残り(n-1)個の直流素子を流れる総電流との比である。
【0020】
本発明のもう1つの側面において、残り(n-1)個の直流素子は電池パックであり、前記制御手段は、前記残り(n-1)個の直流素子を流れる電流を制御する。
【0021】
本発明のもう1つの側面において、前記第1キャパシタの電圧は、対応する前記電池パックの定格電圧の50%より低い。
【0022】
本発明のもう1つの側面において、残り(n-1)個の直流素子は、太陽電池ストリングである。
【0023】
本発明のもう1つの側面において、前記インバータの直流端電圧が前記残り(n-1)個の前記太陽電池ストリングの最大電力点(maximum power point,MPP)電圧(以下、「MPP電圧」とも称する)の平均値近傍にあるとき、前記制御手段は、各太陽電池ストリングのMPP電圧を目標値として各インダクタンスの第2端電圧を制御する。
【0024】
本発明は、さらに、電力変換システムに適用される制御方法を提供し、該制御方法は、各々が、スイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンス、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタを備えたn個のチョッパを提供するステップ、n個の直流素子を提供するステップ、及びスイッチングブリッジレグを制御することにより、前記直流素子を流れる電流又は前記直流素子の電圧を調節するステップを含み、前記n個の直流素子は、前記n個のチョッパ各々に対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子の第1端が互いに連結され、第2端が対応するチョッパの前記インダクタンスの第2端にそれぞれ接続され、前記各チョッパのスイッチングブリッジレグは並列接続され、nは2以上の自然数である。
【0025】
本発明のもう1つの側面において、前記n個の直流素子のうち1つの直流素子は、インバータの直流端である。
【0026】
本発明のもう1つの側面において、前記インバータの直流端電圧を制御して残り(n-1)個の直流素子の電圧の加重平均となるようにする。
【0027】
本発明のもう1つの側面において、前記加重平均において、前記残り(n-1)個の直流素子それぞれの電圧算術重みは、該直流素子を流れる電流と前記残り(n-1)個の直流素子を流れる総電流との比である。
【0028】
本発明のもう1つの側面において、残り(n-1)個の直流素子は、電池パックである。
【0029】
本発明のもう1つの側面において、前記第1キャパシタの電圧を制御して一定値になるようにする。
【0030】
本発明のもう1つの側面において、前記一定値は、前記電池パック及び前記インバータの直流端の電圧より低い値である。
【0031】
本発明のもう1つの側面において、前記一定値は、前記電池パックの定格電圧の50%より低い値である。
【0032】
本発明のもう1つの側面において、残り(n-1)個の直流素子は、太陽電池ストリングである。
【0033】
本発明のもう1つの側面において、前記インバータの直流端電圧を制御して前記残り(n-1)個の前記太陽電池ストリングのMPP電圧の平均値に近づけ、かつ各太陽電池ストリングのMPP電圧を目標値として各インダクタンスの第2端電圧を制御する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の電力変換システムでは、n個のチョッパを低電力非絶縁型のコンバータとすることにより、大電力変流器に代わって電池パック又はスーパーキャパシタに配備される直流素子の電流を調節し、並びに循環電流を抑制することができる。そのため、本発明は電池パックを2組以上並列接続したエネルギー貯蔵システムに適用可能であり、低コストで循環電流の抑制、電流の調節及び充電率の最適化と維持管理を実現でき、安全性を確保して電池の使用寿命を15%程度高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換システムの回路模式図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る(数種類の直流電源又は直流負荷を備える)電力変換システムの回路模式図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る(フィルタキャパシタが異なる位置に配置される)電力変換システムの回路模式図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る(チョッパのインダクタンスが直流電源又は負荷の負極に接続され、電源又は負荷の正極が互いに並列接続される)電力変換システムの回路模式図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る(局部直流母線が1つの補償電源に接続される)電力変換システムの回路模式図である。
【
図6】本発明の第6実施形態に係る電力変換システムの回路模式図である。
【
図7】本発明の第7実施形態に係る電力変換システムの回路模式図である。
【
図8】本発明の第8実施形態に係る電力変換システムの回路模式図である。
【
図9】本発明の好適な一実施形態に係る電力変換システムの制御方法を示す流れ図である。
【
図10】本発明の第9実施形態に係る電力変換システムの回路模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の目的、技術案および優勢をより深く理解できるよう、図面と実施形態を参照しながら本発明をより詳しく説明する。以下の実施形態は本発明を例示したに過ぎず、本発明はこれらの実施形態に制限されない点に留意されたい。各実施形態において、同じ素子については同じ符号を付与して重複説明を省略し、これらの符号は各実施形態及び/又は構成の関係を制限するものでない。
【0037】
本発明の好適な一実施形態では、
図1に示された通り、n個のチョッパCH1~CHn、及びn個の直流素子B1~Bnを備える電力変換システムを提供し、そのうちnは2以上の自然数である。各チョッパは、スイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンスL1、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタCB1を備え、そのうち各チョッパのスイッチングブリッジレグは並列接続される。さらに、各チョッパは、直列接続される第1スイッチQ1と第2スイッチQ2を備えるスイッチングブリッジレグ、第1端が前記スイッチングブリッジレグの中性点に、すなわち第1スイッチQ1と第2スイッチQ2の共通接続点に接続されるインダクタンスL1、及び前記スイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタCB1を備える。n個の直流素子B1~Bnは、前記n個のチョッパCH1~CHn各々と対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子B1~Bnの第1端は互いに連結され、第2端は対応するチョッパのインダクタンスL1の第2端にそれぞれ接続され、前記n個の直流素子B1~Bnのうち少なくとも1つの直流素子が直流電源であり、かつ少なくとも1つの直流素子が直流負荷である。本発明の一部の実施形態において、チョッパは一方向に単一化して動作するが、一部の実施形態に係るチョッパは双方向に分かれて動作する。本発明の別の実施形態では、一部のチョッパが一方向に単一化して動作し、一部のチョッパが双方向に分かれて動作する。さらに、各スイッチングブリッジレグは、局部直流母線BUSの両端LB+、LB-の間に並列接続される。直流素子B1~Bnは、第1キャパシタCB1に、すなわち局部直流母線BUSに直接接続されることはない。
【0038】
具体的には、前記直流電源は、電池、整流電源及びスーパーキャパシタのうち少なくとも1種である。前記直流電源は、DC/DCコンバータを更に備えてもよく、該DC/DCコンバータは、インダクタンスL1と電池との間に電気的に結合され、又はインダクタンスL1と整流電源との間に電気的に結合され、又はインダクタンスL1とスーパーキャパシタとの間に電気的に結合される。
【0039】
さらに、該直流負荷は、電池、スーパーキャパシタ、抵抗、DC/DCコンバータ又はDC/ACコンバータの直流端のうち少なくとも1種である。
【0040】
図2~3に示すように、各チョッパは第2キャパシタを更に備え、該第2キャパシタCf1は、スイッチングブリッジレグの第1端又は第2端とインダクタンスL1の第2端との間に電気的に結合される。さらに、スイッチングブリッジレグの第1端とインダクタンスL1の第2端との間に第2キャパシタCf1が結合され、スイッチングブリッジレグの第2端とインダクタンスL1の第2端との間に第2キャパシタCf2がそれぞれ電気的に結合される。
【0041】
さらに、第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2の定格作動電圧は、直流素子の電圧より低く、第1キャパシタCB1の電圧は、直流素子の電圧より低い。
【0042】
図4に示すように、チョッパのインダクタンスL1は直流素子の負極Bn-に接続され、直流素子の正極Bn+は互いに並列接続される。このような接続形態に代わって、
図1~
図3に示すように、チョッパのインダクタンスL1を直流素子の正極Bn+に接続し、直流素子の負極Bn-を互いに並列接続してもよい。
【0043】
本発明のもう1つの実施形態によれば、
図5に示すように、該電力変換システムは、補償電源を更に備え、該補償電源はスイッチングブリッジレグに並列接続される。具体的には、該補償電源は局部直流母線BUSに接続される。
【0044】
本発明のもう1つの実施形態によれば、
図6に示すように、該n個の直流素子B1~Bnのうち1つの直流素子はインバータ10の直流端であり、残り(n-1)個の直流素子は電池パックB1~Bn-1である。
図6は、n=7の場合を示す。本発明の一部の実施形態では、インバータ10が一方向に単一化して電力を伝送し、一部の実施形態では、インバータ10が両方向に電力を伝送することができる。本発明の一部の実施形態において、インバータ10は1つのパワーコンディショナー(power conditioning system、以下では「PCS」とも称する)である。該電力変換システムは、更に第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2を制御するための制御手段11を備える。制御手段11は、マルチ回路制御器112及びフィールド制御器111を備え、マルチ回路制御器112は、インバータ10の直流端以外の残り(n-1)個の直流素子にそれぞれ通信可能に接続され、かつ各チョッパの第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2にそれぞれ電気的に接続される。マルチ回路制御器112は、フィールド制御器111を介してインバータ10に接続される。さらに、インバータ10の直流端電圧値は、残り(n-1)個の直流素子の電圧の加重平均に等しい値である。該加重平均において、残り(n-1)個の直流素子のうち各直流素子の電圧算術重みが、該直流素子を流れる電流と残り(n-1)個の直流素子を流れる総電流の比であることは当分野の技術者にとって容易に理解できる。
【0045】
本発明の一部の実施形態において、残り(n-1)個の直流素子は電池パックであり、前記制御手段11は、残り(n-1)個の直流素子を流れる電流を制御する。
【0046】
具体的には、
図6に示すように、電池エネルギー貯蔵システムに複数の電池パックが並列接続され、これら電池パックの定格電圧が同じである。電池充放電時の充電率(SOC)/劣化率(state of health,SOH)などの差に対しては、制御手段11を利用して電池パックの充放電電流を調節することによって遂行される。具体的には、
図6に示すように、n=7であり、そのうち6つのチョッパ(すなわち、第1~第6番目のチョッパ)が電池パックB1~B6にそれぞれ接続され、残り1つのチョッパ(すなわち、第7番目のチョッパはインバータ10の直流ポートに接続される。局部直流母線BUSの電圧は、電池パックB1~B6及びインバータ10の直流端電圧に比べて遥かに低い数値である。マルチ回路制御器112は、各電池パックのSOC及びSOHに基づいて各電池の電流を制御し、上記第7番目のチョッパはインバータ10の直流端電圧を制御し、インバータ10の直流端電圧値は、各電池パックの電圧の加重平均に等しい値である。電池パックB1~B6の電圧とインバータ10の直流端電圧は差が小さく、局部直流母線BUSの電圧が低いため、システムの効率が飛躍的に向上する。例えば、定格電圧1000Vの電池パックである場合、ランダムに抽出した2組の電池パックの間に8%の電圧差、すなわち最大で80Vの電圧差があるため、局部直流母線BUSの電圧を電池パックの定格電圧に比して遥かに低くなるように100V~120Vの範囲にすることができる。
【0047】
本発明の一部の実施形態において、局部直流母線BUSの電圧を、すなわち第1キャパシタCB1の電圧を一定値になるようにし、該一定値は、電池パック及びインバータの直流端の電圧値に比べて低い数値である。本発明の一部の実施形態において、該一定値は、電池パックの定格電圧の50%より低い数値である。
【0048】
本発明のもう1つの実施形態によれば、
図7に示すように、前記n個の直流素子B1~Bnのうち1つの直流素子は、インバータ10の直流端であり、残り(n-1)個の直流素子は、
図7に示すような太陽電池ストリングPV1、PV2及びPV3である。さらに、インバータ10の直流端電圧が該(n-1)個の太陽電池ストリングのMPP電圧の平均値近傍に、例えば、MPP電圧の平均値の85%~115%の範囲内にあるとき、前記制御手段は、各太陽電池ストリングのMPP電圧を目標値として各インダクタンスL1の第2端電圧を制御する。
【0049】
具体的には、インバータ10は、分散型太陽光発電(PV)システムにおいてインバータ直流端の電圧をマルチ回路太陽電池ストリングのMPP電圧の平均値に近づけ、例えば太陽電池ストリングの開路電圧の82%程度になるようにし、そして各チョッパを利用してインダクタンスL1の第2端電圧とインバータ10の直流端電圧の差を調節することにより、各組の太陽電池ストリングの電圧がMPP動作点に達するようにする。
【0050】
図7に示すように、n=4であり、そのうち3つのチョッパ(すなわち、第1~第3番目のチョッパ)は太陽電池ストリングPV1、PV2及びPV3にそれぞれ接続され、第4番目のチョッパはインバータ10の直流端に接続される。スイッチングブリッジレグ両端の電圧は太陽電池ストリングPV1、PV2及びPV3、並びにインバータ10直流端の電圧に比べて遥かに低く、インバータ10は、各太陽電池ストリングの開路電圧に基づいて、インバータ直流端の電圧を、太陽電池ストリングの開路電圧値の0.82に近づけるようにする。マルチ回路制御器112は、各チョッパのインダクタンスL1の第2端電圧とインバータ10の直流端電圧との差を調節することにより、太陽電池ストリングの電圧がMPPに追従できるようにする。太陽電池ストリングPV1、PV2及びPV3のMPP電圧とインバータ10の直流端電圧との差が小さく、局部直流母線BUSの電圧が低いため、システムの效率が飛躍的に向上する。また、各チョッパによって各太陽電池ストリングPV1、PV2及びPV3に補償される総電力は、1つの補償電源によって、例えば絶縁された両方向又は一方向DC/DCコンバータによって平衡化される。例えば、局部直流母線BUSの電圧を直流電源又は負荷作動電圧の50%となるようにした場合、全電圧チョッパに比べて作動電圧が50%低いスイッチング素子を利用することができ、同じ電流条件下でコンバータの損耗を低減することができる。
【0051】
さらに、
図8に示すように、一部の電池エネルギー貯蔵システムにおいて、電池パックの電圧範囲とインバータ10の直流端の電圧範囲は多少なりとも一定の差があり、マルチ回路チョッパ及び外部からの補償電源を利用し、低電圧の局部直流母線BUSを経由して各組の電池の充放電電流を調節することができる。具体的には、n=4であり、そのうち3つのチョッパ(すなわち、第1~第3番目のチョッパ)は電池パックB1、B2及びB3にそれぞれ接続され、第4番目のチョッパはインバータ10の直流端に接続される。インバータ10の直流端電圧が電池パックB1、B2及びB3の電圧に比べてやや高い場合を想定すると、インバータ10の直流端電圧と電池パックB1、B2及びB3の電圧との差が電池パックB1、B2及びB3の電圧に比べて遥かに低い数値であるため、局部直流母線BUSの電圧を該電圧差よりやや高く設定することができる。制御手段は、電池パックB1、B2及びB3の充放電電流が各自それぞれのSOC及びSOHの管理要求に対応できるように、各チョッパのインダクタンスL1の電流を調節する。このとき、局部直流母線BUSの電圧が低いため、システムの效率が飛躍的に向上する。各チョッパによって電池パックB1、B2及びB3の充放電回路に補償される電力は、1つの補償電源によって、例えば絶縁された双方向DC/DCコンバータによって平衡化される。例えば、インバータ10の直流端電圧が1000Vであり、電池パックB1、B2及びB3の電圧が700V~920Vの範囲にある場合、局部直流母線BUSの電圧を350Vとすることにより最低電圧700Vから最高電圧920Vまでの電池パックB1、B2及びB3の電圧上昇需要に対応することができる。
【0052】
本発明のもう1つの側面では、電力変換システムに適用される制御方法を提供する。
図1~
図9に示すように、前記制御方法は、以下のステップS1~S3を含んでなる。
【0053】
ステップS1:n個のチョッパCH1~CHnを提供し、各チョッパは、直列接続される第1スイッチQ1と第2スイッチQ2を備えるスイッチングブリッジレグ、第1端がスイッチングブリッジレグの中性点に接続されるインダクタンスL1、及びスイッチングブリッジレグに並列接続される第1キャパシタCB1を備え、そのうち、各チョッパのスイッチングブリッジレグは並列接続される。
【0054】
ステップS2:n個の直流素子B1~Bnを提供し、かかる直流素子は、前記n個のチョッパ各々に対応する直流電源又は直流負荷であり、前記n個の直流素子B1~Bnの第1端が互いに連結され、第2端が対応するチョッパのインダクタンスL1の第2端にそれぞれ接続され、前記n個の直流素子B1~Bnのうち少なくとも1つの直流素子が直流電源であり、かつ少なくとも1つの直流素子が直流負荷であり、nは2以上の自然数である。
【0055】
ステップS3:前記第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2を制御することにより、前記直流素子を流れる電流又は前記直流素子の電圧を調節する。
【0056】
本発明の一部の実施形態において、第1スイッチQ1と第2スイッチQ2が相補型スイッチとして動作するよう制御を行う。
【0057】
上述の実施形態に係るチョッパは、何れもハーフブリッジ構造を有するチョッパであるが、高電圧の需要に対応できる観点から、チョッパは3レベル構造を有するチョッパを採用することもできる。例えば、
図1に示す実施形態とは異なり、
図10に示す実施形態に係る各スイッチングブリッジレグは、直列接続される第3スイッチQ3、第4スイッチQ4、第5スイッチQ5及び第6スイッチQ6を備える。スイッチングブリッジレグの中性点、すなわち第4スイッチQ4と第5スイッチQ5の共通接続点はインダクタンスL1の第1端に接続される。各チョッパはフライングキャパシタC1を更に備え、フライングキャパシタC1は、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4の共通接続点と、第5スイッチQ5と第6スイッチQ6の共通接続点との間に電気的に結合される。言うまでもないが、ハーフブリッジ構造を採用した実施形態に係る直流素子の種々の変形やスイッチングブリッジレグの制御方法は、3レベル構造を採用する実施形態にも適用可能である。
【0058】
本発明では、n個のチョッパを低電力非絶縁型のコンバータとすることにより、大電力変流器に代わって直流素子の電流を調節し、並びに循環電流を抑制することができる。そのため、本発明は電池パックを2組以上並列接続したエネルギー貯蔵システムに適用可能であり、低コストで循環電流の抑制、電流の調節及び充電率の最適化と維持管理を実現でき、安全性を確保して電池の使用寿命を15%程度高めることができる。
【0059】
上述の実施形態は本発明を例示したに過ぎず、本発明はこれらの実施形態に制限されない。なお、本発明の趣旨から逸脱しない前提で当業者が本発明に対して種々の変更や変化を施してもよく、これらの変更や変化も本発明の範囲内である点に留意されたい。