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  • 特許-フィルム付き紙容器及び包装物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】フィルム付き紙容器及び包装物
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/36 20060101AFI20230511BHJP
   B65D 5/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B65D85/36 100
B65D5/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022027578
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2022-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】井上 順二
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-174069(JP,U)
【文献】国際公開第2021/131164(WO,A1)
【文献】特開2012-091809(JP,A)
【文献】特開2014-051327(JP,A)
【文献】特表2020-500793(JP,A)
【文献】特表2022-513450(JP,A)
【文献】特開2002-012213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/36
B65D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部がそれぞれ平面状をなすとともに前記複数の壁面部が複数の角部で突き合わせられた多面体形状をなす紙製の容器本体と、前記容器本体に内装された耐水性のフィルムと、を備えたフィルム付き紙容器であって、
前記容器本体における前記複数の角部のうち少なくとも一つの角部をなす一部以外の他部に対して前記フィルムのうち前記少なくとも一つの角部に対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部と、
前記容器本体の前記一部において前記収容空間で内容物が収容される空間側である内側を向いた面に対して前記フィルムの前記一部が離間した状態で内装された非密着部と、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙容器。
【請求項2】
前記フィルムが真空吸引により前記容器本体に内装されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項3】
前記非密着部は、前記容器本体の前記一部と前記フィルムの前記一部とに挟まれた間隙をなす部位である隙間部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項4】
前記容器本体の前記一部において隣接して配置された前記壁面部どうしの境界に沿う領域に、前記容器本体の内側と外側とを連通しない押し込み罫線が設けられている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項5】
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち前記容器本体に向かい合う層が前記容器本体からの分離が容易なイージーピール層をなす
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項6】
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち中間層にバリア性を有するバリア層が設けられている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項7】
前記複数の壁面部において前記開口の周囲を囲繞する各辺から外側へ向かって延出したフランジ部が設けられており、
前記フランジ部は、前記容器本体の前記一部以外の前記他部に含まれる
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載のフィルム付き紙容器と、
前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物として食品が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えた
ことを特徴とする包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製の容器形状に成形された容器本体の内面にフィルムを設けたフィルム付き紙容器及びフィルム付き紙容器に内容物を収容した包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物を収納する容器として、紙製の容器本体に対して内面に樹脂製のフィルムが積層されたフィルム付き紙容器(以下、単に「容器」ともいう)が知られている。このような容器の一例を示す特許文献1には、底壁部と底壁部から折り立てられた姿勢をなす複数の側壁部とで成形された多面体形状をなす容器本体の内面に対してフィルム全体の密着した容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-172339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように容器本体に対してフィルム全体が密着した状態で内装された特許文献1の容器では、容器本体の角部に対してフィルムが角張った形状で密着している。そのため、容器に収容された内容物が容器本体の角部に対して角張った形状でフィルムが密着している箇所に突き当たった際には、内容物の損傷を招くおそれがある。
よって、フィルム付き紙容器に収容される内容物の保護性を確保するうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、内容物の保護性を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件のフィルム付き紙容器は、開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部がそれぞれ平面状をなすとともに前記複数の壁面部が複数の角部で突き合わせられた多面体形状をなす紙製の容器本体と、前記容器本体に内装されたフィルムと、を備えたフィルム付き紙容器であって、前記容器本体における前記複数の角部のうち少なくとも一つの角部をなす一部以外の他部に対して前記フィルムのうち前記少なくとも一つの角部に対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部と、前記容器本体の前記一部に対して前記フィルムの前記一部が離間した状態で内装された非密着部と、を備えている。
【0007】
また、本件の包装物は、上記のフィルム付き紙容器と、前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物として食品が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、内容物の保護性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のフィルム付き紙容器の斜視図である。
図2図1の容器をX-X線から視た断面図である。
図3図2において一点鎖線で示す囲み部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、フィルム付き紙容器を実施するための形態を説明する。
本実施形態では、フィルム付き紙容器が水平面に載置された姿勢を例示する。
説明に用いる方向は、次のように定義する。鉛直方向のうち重力の作用方向を下方(図面では「D」と記す)とし、下方の反対方向を上方(図面では「U」と記す)とする。水平方向は、前方(図面では「F」と記す),後方(図面では「B」と記す),左方(図面では「L」と記す)及び右方(図面では「R」と記す)の四方向に沿う方向である。前方と後方とは互いに反対を向く方向であり、左方と右方とは互いに反対を向く方向であり、前後方向と左右方向とは互いに直交(交差)する。
さらに、フィルム付き紙容器の収容空間で内容物が収容される空間側を内側とし、内側の反対側を外側とする。
【0011】
[1.構成]
図1図3を参照して、本実施形態に係るフィルム付き紙容器1(以下、単に「容器1」とも言う)の構成を説明する。
容器1は、紙製の容器本体2に対してフィルム3が内装された包装容器である。容器1には、開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間が設けられている。容器1は、内容物として食品を収容する食品用包装容器を例に挙げることができ、食品としては略直角二等辺三角形状のサンドイッチを例に挙げることができる。容器1の形状やプロポーションは、容器1に収容する内容物の形状や性状等に応じて適宜に設定可能である。
内容物としてサンドイッチを想定した容器1は、互いに向かい合う一対の壁面部22L,22Rがサンドイッチの形状に対応した直角二等辺三角形状をなす三角柱状の容器として形成される。
【0012】
容器1は、収容空間内に内容物が収容された状態で、例えば容器1の収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aが蓋体5で閉塞される。
蓋体5は、収容空間内の密閉するためのリッド部材であり、例えばフィルムシートで形成される。上記のように開口2Aが閉塞された状態をなす容器1は、ガス置換包装で内容物を収容した包装物である。
【0013】
容器本体2は、平面状をなす複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rが複数の角部23,24A,24B,25A、25Bで突き合わせられて三角柱状(多面体形状)に成形されたものである。各壁面部21X,21Y,22L,22Rは、容器1の収容空間を囲む部位である。
本実施形態では、壁面部21X,21Y,22L,22Rのうち、互いに向かい合う一対の壁面部22L,22Rは同一形状の直角二等辺三角形状をなす。
壁面部21X,21Yは、壁面部22L,22Rの間で壁面部22L,22Rに対して交差する向きに配置されている。壁面部21X,21Yは、同一形状の長方形状をなし、互いの一辺で突き合わせられ、一方が他方に対して略90°の角度をなす。
【0014】
図1の例では、壁面部22L,22Rで直角二等辺三角形の二等辺(底辺以外の辺)にあたる各辺に対して壁面部21X,21Yの各長辺が突き合わせられて角部24A,24B,25A及び25Bをなす。また、壁面部21Xの一方の短辺と壁面部21Xの一方の短辺とが突き合わせられて角部23をなす。
【0015】
各壁面部21X,21Y,22L,22Rにおいて他の壁面部に突き合わせていない辺で囲まれた領域が容器1の開口2Aを囲繞している。
壁面部21X,21Y,22L,22Rにおいて開口2Aの周囲を囲繞する各辺から外側へ向かってフランジ部26が延出している。フランジ部26は、蓋体5を貼合するための貼合面をなす。
【0016】
容器本体2は、一例として、一枚の紙製シートを所定の折り目で折り曲げて成形されたものが挙げられる。一枚の紙製シートでは、壁面部21X,21Y,22L,22Rのうち隣接して配置されたもの同士の一部が折目を介して接続されている。
例えば、容器本体2を成形するための一枚の紙製シートとして、壁面部21X及び21Yに対応するシートどうしが折目を介して接続されるとともに、壁面部21Xに対応するシートに対して壁面部22L,22Rに対応するシートが折目を介して接続されたものを例に挙げることができる。この場合、壁面部21Xに対応するシートに対して壁面部21Y,22L,22Rに対応するシートがそれぞれ折り立てられ、且つ、壁面部21Yに対応するシートの端縁に対し、壁面部22L,22Rに対応するシートの端縁が突き合わせられて、三角柱状に成形される。
【0017】
なお、上記の一枚の紙製シートから成形された容器本体2では、角部23,24A,24Bは壁面部21Xに対して壁面部21Y,22L,22Rが折目で折り立てられて形成される一方、角部25A,25Bは壁面部21Yに対して壁面部22L,壁面部22Rが突き合わされた(又は、近接された)ものである。本明細書で、壁面部が突き合わせられた角部との表現は、壁面部が折目で折り立てられた角部23,24A,24Bを含むものとする。すなわち、容器本体2は、壁面部21X,21Y,22L,22Rに対応するシートの端縁どうしが突き合わせられており、壁面部21X,21Y,22L,22Rが角部23,24A,24B,25A,25Bで突き合わせられた多面体形状をなす。
【0018】
以下の説明では、図1に示すように、二つの壁面部21X,21Yの一方が下方に配置され、他方が後方に配置された姿勢を前提とし、壁面部の一方21Xを「底壁面部」、他方21Yを「後壁面部」と言う。底壁面部21X及び後壁面部21Yに対して左右に設けられた壁面部22L,22Rを「側壁面部」と言う。
底壁面部21X及び後壁面部21Yが突き合わせられた角部23は、左右方向から視た容器1を直角二等辺三角形と看做すと、直角二等辺三角形の頂角をなす部分に相当する。以下、角部23を「頂角部」と言う。
【0019】
フィルム3は、容器本体2の内面側の全域をフィルムシートで被覆(内装)したフィルム層であり、容器本体2の容器形状を維持する機能をはじめ、容器本体2の内面に耐水性や耐熱性,バリア性といった機能を付与する機能層である。
容器本体2の内面に積層されたフィルムシートが例えば公知の真空吸引により吸着(密着)されることで、フィルム3が容器本体2に内装される。
【0020】
従来のフィルム付き紙容器では、フィルム全体が容器本体に密着している。
これに対し、本実施形態の容器1では、フィルム3全体が容器本体2に密着しているのではなく、フィルム3の一部が容器本体2の一部に対して離間した状態で、フィルム3が容器本体2に内装されている。
【0021】
具体的には、容器1には、下記の密着部と非密着部とが設けられている。
密着部は、容器本体2のうち頂角部23をなす一部以外の他部(少なくとも一つの角部をなす一部以外の他部)に対し、フィルム3のうち頂角部23に対向した一部以外の他部が密着した状態で、フィルム3が内装された部分である。
非密着部は、容器本体2のうち頂角部23をなす一部に対し、フィルム3のうち頂角部23に対向した一部が離間した状態で、フィルム3が内装された部分である。
【0022】
頂角部23をなす一部とは、具体的には、底壁面部21Xと後壁面部21Yとが突き合わせられた境界を跨ぐとともにこの境界に沿って延びた所定領域である。この所定領域に頂角部23が設けられており、容器本体2のうち頂角部23をなす一部が所定領域である。
この所定領域に対して内側に対向する部位が、フィルム3のうち頂角部23に対向した一部である。すなわち、フィルム3のうち頂角部23に対向した一部とは、上記の頂角部23に対向する部位である。
【0023】
頂角部23以外の部分をなす他部とは、容器本体2のうち、頂角部23をなす部分(すなわち所定領域)を除く部分である。具体的に言えば、底壁面部21X及び後壁面部21Yにおいて上記の所定領域を除く非所定領域と、側壁面部22L,22Rと、角部24A,24B,25A及び25Bと、フランジ部26とが、頂角部23以外の部分をなす他部である。
フィルム3のうち頂角部23に対向した一部以外の他部は、フィルム3において上記の頂角部23以外の部分をなす他部に対向する部位である。
【0024】
図2において一点鎖線で示す円は、非密着部の設けられた部分を示す。図3は、図2の一点鎖線で示す円で囲まれた部分、すなわち、非密着部の設けられた部分の拡大図である。
図3に示すように、非密着部では、容器本体2のうち頂角部23をなす部分で内側を向いた面(以下「角面部」という)23aに対し、フィルム3において角面部23aに対向した面部3Aが離間した状態をなす。頂角部23の角面部23aは角張った形状をなす。一方、角面部23aに対して離間したフィルム3の面部3Aは、丸みを帯びた角形状をなす。
【0025】
頂角部23の角面部23aとフィルム3の面部3Aとの間には隙間部4が形成されている。隙間部4は、非密着部において互いに離間した容器本体2の一部とフィルム3の一部とに挟まれた間隙をなす部位である。隙間部4は、底壁面部21X及び後壁面部21Yの境界に沿って延在している。
隙間部4には、真空吸引で吸引されずに残った空気が存在している。
【0026】
上記のように、本実施形態の容器本体2では、底壁面部21Xとこれに隣接した後壁面部21Yとは折目を介して接続されており、底壁面部21Xに対して後壁面部21Yを折り立てて頂角部23が形成されている。
この頂角部23をなす底壁面部21X及び後壁面部21Yの境界(隣接して配置された壁面部どうしの境界)には、押し込み罫線23K(図1参照)が設けられている。なお、図1において押し込み罫線23Kの一部を二点鎖線で示す。
【0027】
押し込み罫線23Kは、底壁面部21X及び後壁面部21Yの境界が折り曲げ易くなるように、紙製シートを押圧して形成されており、容器本体2の内側と外側とを連通しない折線である。押し込み罫線23Kは、底壁面部21X及び後壁面部21Yの境界に沿う領域に延設されている。
押し込み罫線23Kは、容器本体2の内側と外側とを連通しないため、真空吸引(容器1の製造過程)の際にフィルム3を吸着しにくくする構造と言える。押し込み罫線23Kの設けられた頂角部23の部分は、吸引性が抑えられているため、フィルム3を容器本体2にあえて密着させないようにすることができる。
【0028】
角部24A,24Bにおける底壁面部21Xと各側壁面部22L,22Rとの境界には、ミシン目24Mが設けられている。ミシン目24Mは、底壁面部21Xと各側壁面部22L,22Rとの境界に沿う領域に断続的に形成され、容器本体2の内側と外側とを連通する貫通孔が前後方向に沿って断続的に設けられた貫通構造である。
角部25A及び25Bにおける後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界には、切込み25Sが設けられている。切込み25Sは、後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界に沿って連続的に形成され、容器本体2の内側と外側とを連通する隙間構造である。切込み25Sは、後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界で、突き合わせられた辺どうしの間に生じたものである。
【0029】
ミシン目24Mや切込み25Sは、容器本体2の内側と外側とを連通するため、真空吸引の際に吸引しやすい構造と言える。
ミシン目24Mや切込み25Sの設けられた角部24A,24B,25A及び25Bの部分は、吸引性が確保されているため、フィルム3を容器本体2に対して確実に密着させることができる。
【0030】
容器本体2の内面にフィルム3を内装する製法は、公知の金型を用いた手法を適用できる。
金型は、容器本体2の外面形状に沿う窪みが凹設されたメス型と、容器本体2に対しフィルム3を押し込むための突出部が凸設されたオス型とを含んで構成される。この金型のうちオス型に非密着部を形成するための構造を設けることが好ましい。具体的には、オス型では、フィルム3のうち頂角部23に対向する一部を押し込むため突出部の寸法を小さくする(又は突出部を設けない)。これにより、オス型は、フィルム3のうち頂角部23に対向する一部を押し込みにくくなる。
【0031】
なお、金型を用いた製法は以下の通りである。
まず、メス型に容器本体2に用いる紙製シートが装填される。
次に、紙製シートの上面にフィルム3に用いるフィルムシートが積層される。
それから、フィルムシートが延伸しやすいように、公知の加熱手段でフィルムシートを加熱する。
そして、オス型で紙製シートに対してフィルムシートを押し込みつつ、真空吸引が行われる。
【0032】
[2.材料]
次に、容器本体2の材料と、フィルム3の材料とについて述べる。
容器本体2の材料としては、一般的に用いられている紙であればとくに限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙,グラファン紙等が挙げられる。これらのなかでもクラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、板紙(白板紙)の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙は、晒クラフト紙,未晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が挙げられ、印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が好ましい。
【0033】
また、ライナと中芯とライナの三層で構成された段ボールを使用しても良く、特に容器本体2の強度と成形加工性の両立の観点から、段ボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。紙の坪量は、好ましくは200~800g/m2であり、より好ましくは200~700g/m2であり、さらに好ましくは200~500g/m2であり、よりさらに好ましくは300~500g/m2である。紙の密度や、段ボールに用いるライナ及び中芯の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.5~1.2g/cm3であり、より好ましくは0.6~1.0g/cm3であり、さらに好ましくは0.7~0.9g/cm3であり、よりさらに好ましくは0.8~0.9g/cm3である。
【0034】
紙や、段ボールの厚さは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは250~1000μmであり、さらに好ましくは300~700μmであり、よりさらに好ましくは340~500μmである。紙には、種々の添加剤が含有されてよく、内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン-アクリル系,高級脂肪酸系,石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料等が挙げられる。
【0035】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウム等が挙げられる。紙の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機等が挙げられる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。また、前記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。なお、容器本体2に用いる材料は上記に限らず種々の紙製資材を用いることができる。
【0036】
フィルム3に用いるフィルムシートには、付与する機能に応じた性質を有するシート材が用いられる。例えば、容器本体2にフィルム3を密着する際にフィルム3が伸長することを加味した延伸性や、バリア性,耐水性,耐熱性,熱融着性などの機能をもつプラスチックシートがフィルムシートに採用される。
【0037】
フィルムシートは、少なくとも三層以上の複数層で構成されることが好ましく、この場合、複数層のうち容器本体2の内面に接する層が、容器本体2からの分離が容易なイージーピール層をなすことが好ましい。このフィルムシートは、延伸性やバリア性を含む樹脂積層体であることが好ましい。樹脂積層体は、中間層にバリア性を有するバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層は、容器本体2にヒートシールされる必要があるため、熱可塑性樹脂からなる層を含むことがより好ましい。すなわち、樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層に熱可塑性樹脂からなる層を含むフィルムであることがより好ましい。この熱可塑性樹脂からなる層が、上記のイージーピール層をなす。
【0038】
前記バリア層は、樹脂に限られず、金属箔等でもよいが、紙基材層の印刷面を視認できるようにし、意匠性を高める観点から、樹脂から構成されることが好ましく、透明の樹脂から構成されることがより好ましい。バリア層を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つがより好ましい。ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。
【0039】
樹脂積層体の容器本体2の内面に接する層を構成する樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6等の脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。収容空間の内側を向いた層は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン,ランダムポリプピレン共重合体,ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0040】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体,ナイロン6-66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する),ナイロン6-10,ナイロン6-12,ナイロン6-69,ナイロン6-610,ナイロン66-69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6-66,ナイロン6-10又はナイロン6-12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0041】
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート),ポリ(ブチレンテレフタレート),ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート),ポリ(エチレングリコール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられる。更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール,ブチレングリコール,シクロヘキサンジメタノール,ネオペンチルグリコール,ペンタンジオールなどのジオール類,あるいはイソフタール類,ベンゾフェノンジカルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルメタンジカルボン酸,プロピレンビス(フェニルカルボン酸),ジフェニルオキサイドジカルボン酸,シュウ酸,マレイン酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,サバチン酸,ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂,ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂,プロピレン-エチレン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,アイオノマー樹脂,エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン-(メタ)アクリル酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。フィルム3に用いるフィルムシートは、上記の構成の他、種々を組み合わせた多層構成としてもよい。
【0043】
また、フィルム3に用いるフィルムシートは、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性樹脂を用いることも好ましい。フィルム3の厚さは、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは15~250μmであり、より好ましくは20~200μmであり、さらに好ましくは30~150μmである。フィルム3に用いるフィルムシートは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成したフィルムが好ましい。
【0044】
[3.作用及び効果]
本実施形態のフィルム付き紙容器1は上述の構成を備えるため、下記のような作用及び効果を得ることができる。
(1)非密着部では、複数の角部23,24A,24B,25A、25Bのうち少なくとも一つの頂角部23において、容器本体2の頂角部23に対向したフィルム3の面部3Aは、頂角部23の角面部23a(容器本体2)に密着しておらず、浮いた状態で内装される。そのため、容器1に収容された内容物が容器本体2の頂角部23に対向するフィルム3の面部3Aに突き当たったとしても、容器本体2から離間したフィルム3が内容物と容器本体2との間で緩衝作用を果たし、内容物の破損を抑制することができる。よって、内容物の保護性を確保することができる。
【0045】
例えば、直角二等辺三角形状のサンドイッチが内容物として容器1に収容された場合には、サンドイッチの直角部分が頂角部23に対向する姿勢でサンドイッチは容器1に収容される。
容器本体の頂角部に対してフィルムが角張った形状で密着する従来技術では、容器本体の角部に対して角張った形状でフィルムが密着している箇所にサンドイッチの直角部分が突き当たった際には、サンドイッチの直角部分がつぶれるおそれがあった。
これに対し、本実施形態の容器1によれば、頂角部23に対して離間したフィルム3が緩衝作用を果たすので、サンドイッチの直角部分がつぶれにくくなる。このようにして、容器1に内容物として収容されるサンドイッチの保護性を確保することができる。
【0046】
また、本実施形態の容器1によれば、頂角部23に対して離間したフィルム3が丸みを帯びた角形状をなす。この形状は、内容物が粒状物や糸状物である場合に、内容物の取り出しやすさ(取り出し性)の確保に寄与する。頂角部23に対してフィルムが角張った形状で密着する従来技術では、内容物が粒状物や糸状物である場合には、角部に内容物が詰まりやすいため、内容物が取り出しきれずに残存するおそれがある。
これに対し、本実施形態の容器1によれば、頂角部23に対して離間したフィルム3が丸みを帯びた角形状をなすため、粒状物や糸状物の内容物が詰まりにくく、取り残しが抑制される。よって、本実施形態の容器1によれば内容物の取り出し性を確保することもできる。
【0047】
(2)本実施形態の容器1によれば、頂角部23の角面部23aとフィルム3の面部3Aと間に挟まれた隙間部4が緩衝作用を果たすので、より確実に内容物の保護性を確保することができる。
(3)非密着部が設けられた頂角部23には、容器本体2の内外を連通しない押し込み罫線23Kが設けられているため、非密着部におけるフィルム3の容器本体2への吸着を抑えつつ、容器本体2の成形性を確保することができる。
【0048】
(4)フィルム3をなす複数層のうち容器本体2に向かい合う層がイージーピール層をなすため、容器本体2からフィルム3を容易に分離することができる。容器1の使用後にリサイクル目的で容器本体2からフィルム3を容易に分離できるので、リサイクル性が向上する。
(5)フィルム3をなす複数層のうち中間層にバリア層が設けられているため、内容物として食品を収容した際、食品の劣化を防止することができる。
(6)容器1の収容空間内に内容物として食品を収容した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した食品が収容空間からこぼれることを防いだり、外部から異物の混入を防いだりすることができる。また、容器1の収容空間内に食品を収容した状態であって収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した食品の品質保持期間(賞味期限)を延長することができる。
かかる包装物は、柔なフィルム3でサンドイッチの角の破損を抑制する一方で、剛な容器本体2で外側の保護性を確保しうる包装物と言える。
【0049】
[4.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0050】
隙間部4は、頂角部23に限らず、他の何れの角部24A,24B,25A,25Bに設けられていてもよい。また、隙間部4は、二以上の複数の角部に設けられていてもよい。
例えば、容器1の全ての角部23,24A,24B,25A,25Bに隙間部4が設けられていてもよい。この場合も、上述と同様な内容物の保護性を確保する効果を得ることができる。
【0051】
非密着部及び密着部は、押し込み罫線(吸引しにくい構造)や、ミシン目あるいは切込み(吸引しやすい構造)を用いて形成されたものに限らず、容器1の製造工程で真空吸引性を調節することによって形成されてもよい。製造工程で真空吸引を調節し、非密着部や密着部が形成された容器1では、例えば、非密着部をなす頂角部23に対してミシン目が形成されていた場合であってもこのミシン目からの吸引性を抑えることによって頂角部23に非密着部を設けることができる。また、密着部をなす角部24A,24Bに押し込み罫線のみが設けられている場合であっても角部24A,24Bの吸引性を高めることによって密着部を設けることができる。
隙間部4には空気に替えて、任意の緩衝材が充填されていてもよい。緩衝材の例としては、例えばスポンジや粒状物等が挙げられる。
【0052】
容器本体2の形状は、複数の壁面部がそれぞれ平面状をなすとともに前記複数の壁面部が複数の角部で突き合わせられた多面体形状であれば、図1の三角柱状に限らず、どのような形状であってもよい。
容器本体2は、一枚の紙製シートを折り曲げて形成されたものに限らず、複数枚の紙製シートを組み合わせて形成されたものであってもよい。
また、包装物は、容器1の収容空間内に内容物が収容された状態で収容空間内の空気を不活性ガスに置換せずに、開口2Aを閉塞したものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルム付き紙容器
2 容器本体
2A 開口
3 フィルム
3A 面部
4 隙間部
5 蓋体
21X,21Y 壁面部
22L,22R 壁面部
23 頂角部
23K 罫線
24A,24B 角部
24M ミシン目
25A,25B 角部
25S 切込み
26 フランジ部
23a 角面部
【要約】
【課題】フィルム付き紙容器において内容物の保護性を確保する。
【解決手段】フィルム付き紙容器1は、開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rがそれぞれ平面状をなすとともに複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rが複数の角部23,24A,24B,25A、25Bで突き合わせられた多面体形状をなす紙製の容器本体2と、容器本体2に内装されたフィルム3と、を備えている。このフィルム付き紙容器1は、容器本体2における一つの角部23をなす一部以外の他部に対してフィルム3のうち角部23に対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部と、容器本体2の一部に対してフィルム3の一部が離間した状態で内装された非密着部と、を備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3