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特許7277663水性顔料調製物、ならびに調色システム(Abtoensysteme)のためのおよびコーティング材料の着色のためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】水性顔料調製物、ならびに調色システム(Abtoensysteme)のためのおよびコーティング材料の着色のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
C09D17/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022501286
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020069374
(87)【国際公開番号】W WO2021008994
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】102019210457.6
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シャインハルト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ベヒトルト・ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ガーベル・ドロテー
(72)【発明者】
【氏名】ヘーヴェルマン・フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】クプファー・ライナー
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7185055(JP,B2)
【文献】特表2022-517822(JP,A)
【文献】特表2009-523868(JP,A)
【文献】特表2009-534506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然または合成材料の着色のための顔料調製物の使用であって、前記顔料調製物が、
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料および/またはフィラー、
(B)式(I)または(II)の少なくとも1種の分散剤、あるいは式(I)および(II)の分散剤の混合物
【化1】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
zは、1以上の整数であり、
R1は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状または分岐状炭化水素残基、または水素原子、または構造単位-O-X、または構造単位-CH-O-Xであり、
そして、構造単位Xは、式(III)に一致する
【化2】
(式中、
aは、1~50整数であり、
bは、0~50整数であり、
cは、1~100整数であり、
mは、1~50整数であり、
R2は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、-SOM、-SOM、-PO、-CHCOOMであり、そして
Mは、水素、またはカチオンあるいはそれらの組み合わせである)]、および水、
を含み、
前記顔料調製物が、調色システムにおいて着色成分として使用され、そして、調色ベースの着色が、前記顔料調製物のソフトウェア制御された計量添加によって達成され、ここで、前記の調色ベースは、白色もしくは透明もしくは有色の形態で存在する液体のバインダー系である、
前記の使用。
【請求項2】
前記カチオンが、Na 、K 、NH およびトリエタノールアンモニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(C)1種または複数の湿潤剤、
(D)および/またはさらに別の界面活性剤および/または分散剤、
(E)および/または1種または複数のヒドロトロープ物質および/または1種または複数の有機溶媒および/またはそれらの混合物、
(F)および/または1種または複数のバインダーおよび/またはコバインダー、
(G)および/または水性顔料分散体の製造のための通例のさらに別の添加剤、および
(H)
が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
5~80重量%の成分(A)が含まれる、請求項1~3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項5】
0.1~30重量%の成分(B)が含まれる、請求項1~のいずれか1つに記載の使用。
【請求項6】
成分(A)~(H)の以下の組成を特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の使用:
(A)5~80重量%
(B)0.1~30重量%
(C)0~10重量%
(D)0~20重量%
(E)0~30重量%
(F)0~30重量%
(G)0~20重量%
(H)残部の水
(各々、顔料調製物の全重量(100重量%)を基準とする)。
【請求項7】
成分(A)の有機顔料が、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、レーキ化アゾ系顔料、β-ナフトール系顔料、ナフトールAS系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料、アゾ金属錯体系顔料、またはフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンタントロン系顔料、アントラキノン系顔料、フラバントロン系顔料、インダントロン系顔料、イソビオラントロン系顔料、ピラントロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料及びジケトピロロピロール系顔料の群からの多環式系顔料、またはカーボンブラック類であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の使用。
【請求項8】
成分(B)の構造単位(I)および(II)が、アルコキシル化可能な三価またはより多価のポリオールからの反応生成物であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
成分(B)の構造単位(I)および(II)が、ジグリセロール、エリスリトール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ポリグリセロール、ソルビトール、トリメチロールプロパンまたはキシリトールからの反応生成物であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記顔料調製物が、5s-1のせん断速度で10.0Pa*s未満の粘度を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の使用。
【請求項11】
前記顔料調製物が、4~14の範囲のpH値を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1つに記載の使用。
【請求項12】
前記の天然または合成材料が、プラスターまたはコンクリートであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水性顔料調製物または分散体、ならびに調色システムのための、およびコーティング材料、バインダー系、塗料、プラスター、ラッカーおよびあらゆる種類のペイントの着色のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性または溶媒含有コーティング材料、バインダー系、塗料、ラッカーおよびペイントの着色のために、例えば建築用塗料セグメントにおいて、ready to use顔料調製物がしばしば使用される。顔料調製物は、顔料が連続媒体中に微細に分布して存在する、液体の物質混合物である。多くの使用領域において、水が連続媒体として使用される水性顔料調製物が、溶媒ベースの顔料調製物に比べて広く用いられているかまたは好ましい。これは、例えば、ブルーエンジェルまたは欧州エコラベルなどの現代の環境マークの規制規定および裁定ガイドラインに起因し、これらは、多くの施与媒体において、およびそれによる最終的な結果として、使用される顔料調製物においても、揮発性有機物質、いわゆるVOC(volatile organic compounds)の使用をますます制限する。
【0003】
顔料分散のためには、通常、界面活性物質、例えば湿潤剤および分散助剤が使用され、これらは、顔料の濡れを促進させ、顔料粒子を、それらの微細粒子形態で連続媒体中に物理的に安定化させる。これらは、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の性質であり得、ならびに、界面活性剤もしくは高分子特性を有し得る。顔料調製物の特性は、含有される分散剤によって著しく影響される。
【0004】
顔料調製物は、しばしば、調色システム(Toensystemen)(色混合-もしくはティンティングシステム(Farbmisch- oder Tintingsysteme)とも呼ばれる)において、着色成分として使用される。ここで、いわゆる調色ベース(Abtoenbasis)(白色もしくは透明もしくは有色の形態で存在することができ、全てのタイプの液体バインダー系であり得る)の着色は、1種の顔料調製物または異なる顔料調製物の組み合わせのソフトウェア制御された計量添加によって達成される。これは、例えば、大量の色調の製造のためにプラント調色(プラント内調色(In-Plant-Tinting))においてしばしば使用される。多くの場合に、ポイントオブセール(Point-of-Sale)のみでの調色ベースの調色が、より経済的であり、なぜなら、この場合はユーザーに、多種多様な色相を、大量に貯蔵させる必要なく、提供できるからである。この場合、顔料調製物の計量添加は、しばしば、ポイントオブセールにおいて設置された調色機(Abtoenmaschinen)を用いて行われる。
【0005】
調色システムにおける使用は、十分なポンプ能力(Pumpbarkeit)および計量添加性(Dosierbarkeit)を保証するために、顔料調製物が適切なレオロジープロファイルを有することを必要とする。目標の色調からの逸脱を回避または最小限に抑えるために、高い計量添加精度が必要とされる。これはとりわけ、<0.1mLの非常に小さい体積でも正確に計量添加しなければならないポイントオブセール領域における調色機における使用にあてはまる。多くの顔料調製物は、非ニュートン流体であり、すなわち、それらの粘度は、それらに作用するせん断力に依存する。必要とされるポンプ能力および計量添加性を達成するためには、典型的には、5s-1のせん断速度における<10Pa*sの粘度、および30s-1のせん断速度における<3Pa*sの粘度、ならびに可能な限り低いチキソトロピーおよびレオペクシーが必要とされる。ここで、このレオロジー挙動は、これらの用途においてしばしば顔料調製物に影響を及ぼす著しい負荷下(例えば繰り返しの激しい撹拌またはポンプ送りによる)においても、典型的には5~40℃の広い温度範囲で、1年超というより長い期間にわたって維持されたままでなければならない。30重量%を超える高い顔料含有量を有する顔料調製物については、これは非常に大きな技術的挑戦であり、優れた粘度低下および安定化作用を有する分散剤を必要とする。可能な限り高い顔料含有量は、例えば、所定の色調の達成のために必要な、調色ベースに添加されるべき顔料調製物の量をできるだけ低く保ち、それと同時に調色ベースの特性の望ましくない変化を最小限に抑えるために、非常に多くの場合に技術的理由から好ましく、そして、しばしば経済的および生態学的利点ももたらす。
【0006】
顔料調製物は、せん断、上昇した温度および圧力変動下で、例えば、ポンプ送り、ノズルを通した計量添加、スプレー施与または脱ガス/脱気の際に、安定でなければならない。
【0007】
上記の用途のためには、発泡または密度の変化を防止するために、低い発泡傾向を有する顔料調製物が必要とされる。これは調色機における使用において必須であり、なぜなら、顔料調製物の計量添加は通常、容量測定的に行われ、密度の変化は標的の色調からの逸脱をもたらし得るからである。顔料調製物の発泡傾向は、決定的に使用される分散剤によって決まるので、適切な低発泡分散剤が必要とされる。
【0008】
調色システムにおける使用のために、顔料調製物は、多数の異なる調色ベースおよびバインダー系と相容性および適合性でなければならず、すなわち、それらは顔料粒子のフロキュレーションまたは再凝集を伴わずに、任意の割合で容易かつ効率的にそこに組み入れることができなければならない。いわゆるユニバーサル顔料調製物の場合、これらは、水性の施与系とも、溶媒含有施与系とも相容性でなければならない。ここで、顔料調製物と施用媒体との相容性は、使用される分散剤によって決定的に影響を受ける。多種多様な組成で市販されている多数のバインダー系は、大きな課題を示し、広範囲の相容性を有する顔料調製物を必要とする。
【0009】
コーティング材料の着色に関しては、しばしば、それらの特性プロファイルに、使用される顔料調製物が不利に影響を及ぼさないことが必要とされる。例えば、顔料調製物は、乾燥されたフィルムにおいて表面欠陥、例えばくぼみ(Krater)を引き起こしてはならず、または乾燥挙動もしくは吸水性を変化させてはならない。これは、顔料調製物中で使用される分散剤によって著しく影響される。ファサード塗装(Fassadenfarben)の場合、露、霧、噴霧水または雨による風化によって水溶性成分、例えば界面活性剤または分散剤によって引き起こされ得る表面効果、例えば流れの跡またはウォッシュアウト(いわゆるステイルトラック(Schneckenspuren))は、非常に望ましくない。ここで、ポリマーまたは高分子量分散剤は、そのような望ましくない表面効果を生成する傾向が少ない。
【0010】
調色システムではよく、しばしば>1000という大きな数の色相を採用できることが要求される。これは、使用される顔料調製物が互いに相容性であり、任意の割合で良好に混合可能であることを前提としている。これは、例えば、調色システムに使用される顔料調製物が同じ分散剤をベースとすることによって達成することができる。このためには、多数の異なる有機および無機顔料に適し、上記の特性を有する対応の顔料調製物の製造を可能にする分散剤が必要とされる。これらの顔料調製物の大規模生産のために、多数の異なる顔料のための1種の分散剤の使用は同様に、例えば、ロジスティックス、備蓄および複雑性に関して、大きな利点をもたらし、従って望ましい。
【0011】
このことは、異なる顔料の種々の特性のために、分散剤に関して特有の挑戦である。例えば、異なる顔料の表面極性は大きく異なり得、その結果、分散剤と多数の異なる顔料表面との間に十分な親和性を達成すること、および従って、異なる顔料について十分な粘度低下および粒子安定化作用を達成することは困難である。同様に、異なる顔料は、それらの粒度および粒子形態が大きく異なり得る。従って、多数の異なる顔料に関して同じように適しているべき分散剤は、比較的小さい顔料粒子も大きな顔料粒子も同じように安定化できなければならない。従って、有機顔料、無機顔料およびカーボンブラックに同じように適した分散剤を提供することは大きな挑戦である。
【0012】
環境マークの規制規定または裁定ガイドラインの継続的な強化は、顔料調製物のための通例の処方成分が、いくつもの使用分野でもはや使用できないか、または限られた範囲でしか使用できないことをますます確実にする。例えば、産業界では、古典的なポット内防腐剤(Topf-Konservierungsmittel)、例えばイソチアゾリノン類の使用を制限するか、またはそれらを全く使用しないで済ませる強い傾向がある。それにもかかわらずに十分な微生物学的安定性を達成するための代替的なコンセプトは、しばしば、保存に十分なアルカリ度を調節することをベースとする。従って、>10のアルカリ性pH値下でも化学的に安定であり、十分な粒子安定化および粘度低下を維持する分散剤が必要とされる。
【0013】
同じ理由から、現在、使用できる湿潤剤および分散剤の選択は非常に限定されている。例えば、アルキルフェノールエトキシレート類(APEO)は、現在、生物蓄積性およびホルモン作用性分解生成物のために、厳格に規制されており、多くの用途では禁止されている。トリスチリルフェノールエトキシレート類(TSPEO)の使用は、依然として可能であるが、産業界では不利な生態毒性学的プロファイルのために、これらの原料なしで済ませる強い傾向がある。過去に使用されたノボラック-またはビスフェノールAをベースとする分散剤の使用は、同じ理由で徐々に制限されている。第一級および第二級アミンをベースとする反応生成物を分散剤として使用することも、規制上および適用技術上の理由からいくつかの用途にとって批判的であり、従って限られた範囲でしか可能ではない。
【0014】
高い技術的要件に加えて、規制上の要件(例えば毒性学的および生態毒性学的プロファイルに関する)も満たす、上述の用途のための水性顔料調製物の提供は、産業においてますます挑戦となっており、技術水準に基づくと不十分にしか解決することができない。
【0015】
先行技術において、様々な分散助剤をベースとする水性顔料調製物が記載されている。
【0016】
EP1078946(特許文献1)は、顔料湿潤剤としての、ブロックコポリマー性スチレンオキシド含有ポリアルキレンオキシドをベースとする水性顔料ペーストを開示している。
【0017】
EP1805270(特許文献2)には、オリゴエステルをベースとする水系顔料調製物が記載されている。
【0018】
DE102006002800(特許文献3)は、スチレンオキシド、アルキレンオキシドおよび二価または多価アミンおよびアルコールからのコポリマーをベースとする水性顔料調製物を開示している。しかしながら、上述の用途に必要とされる特性プロファイルを有する顔料調製物は、ここには記載されていない。例えば、顔料調製物と多数の異なるバインダー系との必要な相容性は、ここでは認識されていない。さらに、規制上のおよび適用技術上の要件のために、アミンをベースとする分散剤の使用は、多くの場合に、上記の用途において望ましくなく、これは、DE102006002800に記載される顔料調製物を厳しく制限する。前記顔料調製物の開示された粘度は、所望の範囲内にあるが、そこに記載される顔料含有量および前記顔料調製物のそれに伴う着色力は比較的低く、上記用途に必要な顔料含有量での顔料調製物のレオロジーおよび貯蔵安定性は記載されていない。調色システム、特にPoint-of-Sale領域における調色システムに関する適性も記載されていない。
【0019】
EP2147066(特許文献4)は、ポリエチレン/ポリプロピレン-グリコール-モノ(メタ)アクリル酸エステルからのマクロモノマーを用いて製造される非イオン性コポリマーをベースとする水性顔料調製物を記載している。
【0020】
先行技術に記載された水性顔料調製物は、多くの場合に、上記の用途ために要求される毒物学的および生態毒性学的プロファイルを満たさない。さらに、それらはしばしば、異なる水性または溶媒含有バインダー系との相容性が不十分である。さらに、必要とされる顔料含有量でのそれらのレオロジー挙動および貯蔵安定性は、しばしば、強く改善が必要とされている。
【0021】
欠点を甘受する必要なしに、上記に挙げられる用途のための全ての条件を満たす水性顔料調製物は、これまでに記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】EP1078946
【文献】EP1805270
【文献】DE102006002800
【文献】EP2147066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明は、毒性学的および生態毒性学的に申し分がなく、アルキルフェノール-、トリスチリルフェノール-、ノボラック-およびビスフェノールA誘導体を含まない水性顔料調製物を提供するという課題に基づいた。さらに、前記顔料調製物は、互いに、および多数の異なるバインダー系と幅広い相容性を有するべきであり、施与系において望ましくない表面欠陥もしくは効果を引き起こさないべきである。水性顔料調製物は、高い着色力、低い発泡傾向を有するべきであり、通常の市販の調色機上での十分な計量添加性を可能にするために、可能な限り高い顔料含有量で適切なレオロジープロファイルを有するべきである。さらに、前記調製物は、貯蔵安定性およびせん断安定性であるべきであり、すなわち、上記の特性が、より長い期間にわたって貯蔵された場合、またはせん断下でも、安定に保持されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
驚くべきことに、この課題は、顔料を、3価またはそれより多価のポリオール類、スチレンオキシドおよびアルキレンオキシド類からの特定の以下に定義される非イオン性またはアニオン性修飾コポリマーを用いて分散させることによって解決することができた。スチレンオキシドおよびアルキレンオキシド類からの別のコポリマーを使用する場合、上記の特性プロファイルの全てを有しない(特に所望の色特性、顔料含有量、相容性、レオロジー、発泡傾向および安定性に関して)水性顔料調製物が得られる。
【0025】
従って、本発明の対象は、以下を含む水性顔料調製物である
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料および/またはフィラー、
(B)式(I)または(II)の少なくとも1種の分散剤、あるいは式(I)および(II)の分散剤の混合物
【0026】
【化1】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
zは、1以上の整数であり、
R1は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状または分岐状炭化水素残基、または水素原子、または構造単位-O-X、または構造単位-CH-O-Xであり、
そして、構造単位Xは、式(III)に一致し
【0027】
【化2】
(式中、
aは、1~50、好ましくは1~20、殊に好ましくは1~10の整数であり、
bは、0~50、好ましくは0~20、殊に好ましくは0~10の整数であり、
cは、1~100、好ましくは10~50の整数であり、
mは、1~50、好ましくは1~10の整数であり、
R2は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SOM、-SOM、-PO、-CHCOOMであり、そして
Mは、水素、またはカチオン、好ましくはNa、K、NH 、トリエタノールアンモニウムの群からのカチオン、あるいはそれらの組み合わせである)]。
【0028】
さらに、本発明による顔料調製物はまた、以下のさらに別の添加剤を含むことができる:
(C)任意選択的に湿潤剤、
(D)および/または任意選択的にさらに別の界面活性剤および/または分散剤、
(E)および/または任意選択的に1種または複数のヒドロトロープ物質および/または1種または複数の有機溶媒および/またはそれらの混合物、
(F)および/または任意選択的に1種または複数のバインダーおよび/またはコバインダー(Co-Bindemittel)、
(G)および/または任意選択的に水性顔料分散体の製造のための通例のさらに別の添加剤、および
(H)水。
【0029】
好ましい顔料調製物は、5~80重量%、特に10~70重量%、とりわけ好ましくは30~70重量%の成分(A)を含む。
【0030】
好ましい顔料調製物は、0.1~30重量%、特に2~20重量%、とりわけ好ましくは5~15重量%の成分(B)を含む。
【0031】
殊に好ましい顔料調製物は成分
(A)5~80重量%、とりわけ10~70重量%、
(B)0.1~30重量%、とりわけ2~20重量%、
(C)0~10重量%、とりわけ0.1~5重量%、
(D)0~20重量%、とりわけ1~10重量%、
(E)0~30重量%、とりわけ5~20重量%、
(F)0~30重量%、とりわけ1~10重量%、
(G)0~20重量%、とりわけ0.1~5重量%、
(H)残部の水
を含み、各々、顔料調製物の全重量(100重量%)を基準とする。
【0032】
本発明による顔料調製物が成分(C)、(D)、(E)、(F)および(G)のうちの1種または複数を含む場合、それらの最小濃度は、互いに独立して、顔料調製物の全重量を基準にして、特に少なくとも0.01重量%、とりわけ少なくとも0.1重量%である。
【0033】
本発明の顔料調製物の成分(A)は、微細な有機もしくは無機顔料またはフィラー、又は異なる有機及び/又は無機顔料及び/又はフィラーの混合物である。成分(A)はまた、所定の溶媒中では可溶性であり、かつ、別の溶媒中では顔料特性を有する染料であることもできる。顔料は、乾燥粉末の形態でだけでなく、水で湿ったプレスケークとしても使用することができる。
【0034】
有機顔料としては、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、レーキ化アゾ系顔料、β-ナフトール系顔料、ナフトールAS系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料、アゾ-金属錯体系顔料、及び多環式系顔料、例えばフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンタントロン系顔料、アントラキノン系顔料、フラバントロン系顔料、インダントロン系顔料、イソビオラントロン系顔料、ピラントロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料及びジケトピロロピロール系顔料、又はカーボンブラック類が挙げられる。
【0035】
ここで、殊に好ましい有機顔料の代表的な選択としては、例えばカーボンブラック顔料、例えばガスカーボンブラックまたはファーネスカーボンブラック;モノアゾ系顔料およびジスアゾ系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー87、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー111、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー191、ピグメントイエロー213、ピグメントイエロー214、ピグメントイエロー219、ピグメントレッド38、ピグメントレッド144、ピグメントレッド214、ピグメントレッド242、ピグメントレッド262、ピグメントレッド266、ピグメントレッド269、ピグメントレッド274、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ34またはピグメントブラウン41;βーナフトール系顔料およびナフトールAS系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド2、ピグメントレッド3、ピグメントレッド4、ピグメントレッド5、ピグメントレッド9、ピグメントレッド12、ピグメントレッド14、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド146、ピグメントレッド147、ピグメントレッド170、ピグメントレッド184、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド210、ピグメントレッド247、ピグメントレッド253、ピグメントレッド256、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ38またはピグメントブラウン1;レーキ化アゾ系顔料および金属錯体顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド48:4、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド257、ピグメントオレンジ68またはピグメントオレンジ70;ベンズイミダゾリン系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー120、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー175、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントイエロー194、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド185、ピグメントレッド208、ピグメントバイオレット32、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ72またはピグメントブラウン25;イソインドリノン系顔料およびイソインドリン系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー139またはピグメントイエロー173;フタロシアニン系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー16、ピグメントグリーン7またはピグメントグリーン36;アンサントロン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、インダントロン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料およびチオインジゴ系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー196、ピグメントレッド122、ピグメントレッド149、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド179、ピグメントレッド181、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド263、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23またはピグメントオレンジ43;トリアリールカルボニウム系顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド169、ピグメントブルー56またはピグメントブルー61;ジケトピロロピロール系顔料(Diketopyrrolopyrrolpigmente)、とりわけカラーインデックス顔料のピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド270、ピグメントレッド272、ピグメントオレンジ71、ピグメントオレンジ73、ピグメントオレンジ81が挙げられる。
【0036】
さらに、レーキ化染料、例えば、スルホン酸-及び/又はカルボン酸基含有染料のCa-レーキ、Mg-レーキ、及びAl-レーキが好適である。
【0037】
適切な無機顔料としては、例えば二酸化チタン類、硫化亜鉛類、酸化亜鉛類、酸化鉄類、磁鉄鉱類、酸化鉄マンガン類、酸化クロム類、ウルトラマリン、ニッケル-もしくはクロムアンチモンチタン酸化物類、マンガンチタンルチル類、酸化コバルト類、コバルトおよびアルミニウムの混合酸化物、ルチル混相顔料、希土類の硫化物、ニッケルおよび亜鉛を含むコバルトのスピネル類、銅、亜鉛およびマンガンを含む鉄およびクロムをベースとするスピネル類、バナジン酸ビスマス類および体質顔料が挙げられる。とりわけ、カラーインデックス顔料のピグメントイエロー184、ピグメントイエロー53、ピグメントイエロー42、ピグメントイエローブラウン24、ピグメントレッド101、ピグメントブルー28、ピグメントブルー36、ピグメントグリーン50、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック11、ピグメントブラック33およびピグメントホワイト6が使用される。好ましくは、無機顔料の混合物も多くの場合に使用される。有機顔料と無機顔料の混合物も同様に、多くの場合に使用される。
【0038】
適切なフィラーは、例えば、微細粒子の鉱石、鉱物および難溶性もしくは不溶性の塩、例えば、カーボネート類、炭酸カルシウム、方解石および/または霰石、ドロマイト、二酸化ケイ素、石英、クリストバライト、珪藻土、シリケート、ケイ酸アルミニウム、シリカ、タルク、カオリン、雲母、長石および硫酸バリウムである。好ましくは、フィラーの混合物も多くの場合に使用される。有機および/または無機顔料とフィラーの混合物も同様に、多くの場合に使用される。専ら1種または複数のフィラーを含む調合物が、例えば、所望の特性プロファイルの(例えば、顔料含有量、レオロジー、密度または相容性の)調節のための顔料調製物の混合に使用される。
【0039】
成分(B)の構造単位(I)および(II)は、アルコキシル化可能な三価またはより多価のポリオール、特にジグリセロール、エリスリトール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ポリグリセロール、ソルビトール、トリメチロールプロパンまたはキシリトールからの反応生成物である。好ましい実施形態において、Yは、Hまたは-POである。
【0040】
成分(C)としては、例えば、顔料の濡れを促進させる、カチオン性、アニオン性、両性もしくは非イオン性の化合物(湿潤剤、ウェッター(Benetzter))が使用される。
【0041】
本発明の顔料調製物の成分(D)としては、水性顔料分散体を製造するのに適した通例の分散剤および界面活性剤、あるいはそれら物質の混合物が使用される。概して、このために、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の界面活性化合物が使用される。殊に、1つまたは複数の中鎖又は長鎖炭化水素鎖を有する分散剤、一部では、芳香族環基を有するものも有用であることが分かっていた。多数の化合物のうちのほんの一選択例を挙げるが、本発明の調製物の利用可能性はこれらの例に限定されるものではない。例としては、アルキルスルフェート類、例えばラウリルスルフェート、ステアリルスルフェートまたはオクタデシルスルフェート、第一級アルキルスルホネート類、例えばドデシルスルホネート、および第二級アルキルスルホネート類、とりわけC13-C17-アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルホスフェート類、アルキルベンゼンスルホネート類、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、同様にこれらの化合物の全ての塩が挙げられる。さらに、大豆レシチンも適しており、又は脂肪酸とタウリン又はヒドロキシエタンスルホン酸との縮合生成物、同様にヒマシ油ロジンエステル類、脂肪アルコール類、脂肪アミン類、脂肪酸、及び脂肪酸アミド類のアルコキシル化生成物が使用され、それらアルコキシル化生成物は、同様に、イオン性末端基を備えることができ、例えば、スルホコハク酸半エステルとして、又はスルホン酸エステル、硫酸エステル、及びリン酸エステルとして、並びにそれらの塩、スルホネート、スルフェート又はホスフェートとしてイオン性末端基を備えることができる。また、ポリエチレン/ポリプロピレン-グリコール-モノ(メタ)アクリル酸エステルからのマクロモノマーを用いて製造される非イオン性またはアニオン性変性コポリマー、同様に非イオン性またはアニオン性変性ブロックコポリマー、スチレンオキシド含有ポリアルキレンオキシド類も適している。
【0042】
成分(E)は、有機溶媒またはヒドロトロープ物質に相当する。ここでそれらは、例えば、以下の化合物またはそれらの混合物であり得る:一価または多価アルコール、それらのエーテルおよびエステル、例えばアルカノール類、とりわけ1~4個の炭素原子を有するアルカノール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;二価または三価アルコール、とりわけ2~5個の炭素原子を有する二価または三価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール;多価アルコールの低級アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノ-メチル-、-エチル-または-ブチル-エーテル、トリエチレングリコールモノ-メチル-または-エチル-エーテル;ケトンおよびケトンアルコール、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール;エチレン-およびプロピレングリコールからのコポリマー;ポリエチレングリコール、とりわけ250~1000g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリエチレングリコールの低級アルキルエーテル、例えばアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(とりわけ250~1000g/molの平均モル質量を有する)。
【0043】
成分(F)は、有機もしくは無機バインダーもしくはコバインダーに一致する。ここでそれらは、例えば、以下の化合物またはそれらの混合物であり得る:水ガラス、特に式NaO x nSiOまたはKO x nSiO(式中、n=2.8~3.5を意味する)のケイ酸ナトリウムおよびケイ酸カリウム;シリカゾル;アルキルシリコネート、特に式HO-[Si(R)(OM)-O-]H(式中、Rは、1~8個のC原子を有するアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル)であり、Mは、カチオン、とりわけアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)のカチオンであり、nは、1~6の範囲の数を意味する))のアルキルシリコネート、例えばナトリウム-またはカリウムメチルシリコネート;アクリレート、アルキルアクリレート、例えばメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン、ビニルアセテートおよび/またはスチレンを含む、ホモポリマーおよび/またはコポリマーならびのそれらの分散体。
【0044】
成分(G)としては、例えば、増粘剤、防腐剤、粘度安定剤および粉砕助剤が使用される。さらに別の慣用の添加剤は、沈降防止剤、光保護剤、酸化防止剤、消泡剤/脱ガス剤/脱気剤(Entschaeumer/Entgaser/Entluefter)、泡低減剤、ケーキング防止剤並びに粘度とレオロジーに良好な影響を与える添加剤であることができる。粘度を調節するための剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、多糖類、例えばセルロース、マイクロ-もしくはナノ結晶セルロース、セルロースエーテルおよび改質セルロースエーテル、特に疎水性改質セルロースエーテル、キサンタン、フュームドシリカ、例えばAerosil、ポリアクリレート-および/またはポリウレタン-および/またはポリ尿素-増粘剤(特に10~10g/molの分子量を有するもの)、粘土鉱物および層状シリケート、特にスメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライトおよびベントナイトまたはそれらの混合物からなるもの、ならびに有機的に改質され層剥離された層状シリケートが挙げられる。水溶性の天然樹脂または合成樹脂及びポリマーは、接着性及び耐磨耗性を増強するための、皮膜形成剤またはバインダーとしても考慮される。pH調節剤としては、有機または無機塩基および酸が使用される。好ましい無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムである。成分(G)はまた、植物由来及び動物由来の脂肪および油、例えば牛脂、パーム核脂肪(Palmkernfett)、ヤシ脂肪(Kokosfett)、ナタネ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム油、ダイズ油(Soyaoel)、ピーナッツ油、綿実油、トウモロコシ油、ケシ油、オリーブ油、ヒマシ油、コルザ油(Rueboel)、サフラワー油、大豆油(Sojabohnenoel)、アザミ油、ヒマワリ油、ニシン油、イワシ油に一致し得る。また、飽和および不飽和高級脂肪酸、例えば、パルミチン酸、シプリル酸(Cyprylsaeure)、カプリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリル酸、アラキン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸およびリシノール酸、ならびにそれらの塩も一般的な添加剤である。
【0045】
顔料調製物の製造のために使用される水、すなわち、成分(H)、は、特に、蒸留水または脱塩水の形態で使用される。飲料水(水道水)および/または天然源の水もまた使用することができる。
【0046】
本発明による顔料調製物は、5s-1のせん断速度で<10Pa*s、好ましくは<8Pa*s、特に好ましくは<6Pa*sの粘度、ならびに30s-1のせん断速度で<3Pa*s、好ましくは<2.5Pa*s、特に好ましくは<2Pa*sの粘度を有することを特徴とする。ここで本発明による顔料調製物のレオロジープロファイルは、典型的には、成分(A)および(B)の比の選択によって制御することができる。成分(C)、(D)および(G)の追加的な使用もまた、上記のレオロジープロファイルの達成のために利用することができる。
【0047】
本発明の水性顔料調製物に関して、それらが多数のコーティング材料およびバインダー系との非常に良好な相容性、低い発泡傾向および良好なせん断安定性を有し、そしてより長い期間にわたって非常に安定であることが特に有利であることが見出された。本発明による水性顔料調製物が、高い着色力を有し、30重量%を超える高い顔料含有量でさえ、所望のレオロジープロファイルおよび際立った貯蔵安定性を有することも、非常に有利であることが判明した。
【0048】
さらに、本発明による顔料調製物は、アルキルフェノール-、トリスチリルフェノール-、ノボラック-およびビスフェノールA-誘導体を含まない。
【0049】
本発明の顔料調製物は、4~14、好ましくは6~13、殊に好ましくは6.5~12.5のpH値を有する。
【0050】
本発明の対象はまた、上記の顔料調製物を製造するための方法であって、成分(A)を、粉末、粒状物もしくは水性のプレスケークの形態で、水(G)並びに成分(B)及び任意選択的に(C)、(D)、(E)および(F)の存在下で、分散させ、引き続き、任意選択的に水(G)並びに任意選択的に成分(C)、(D)、(E)および(F)のうちの1つまたは複数と混合し、ならびに任意選択的に、得られた水性の顔料分散体を水(G)で希釈することを特徴とする、前記方法である。
【0051】
ここで、顔料、式(I)または(II)の分散助剤あるいは式(I)および(II)の分散剤の混合物を、分散ユニットまたは異なる分散ユニットの組み合わせ、特にディゾルバー(鋸歯撹拌機)および/またが撹拌ボールミルを用いて、2mm以下の直径の金属性もしくは非金属性の粉砕媒体の作用下で、水の存在下で、微分散または微細化させる。その他の添加剤は、微細化中におよび/または後で添加することができる。
【0052】
本発明の対象はまた、全ての種類の天然および合成材料の、とりわけ水性もしくは溶媒含有コーティング材料、バインダー系、塗料、エマルションペイントおよび艶出しペイント(Lackfarben)(分散ラッカー(Dispersionslacken))、グレーズ、石灰塗料、シリケート塗料、シリコーン樹脂塗料およびプラスターの顔料着色または着色のための着色剤としての、本発明の顔料調製物の使用である。本発明の意味におけるコーティング材料は、DIN EN ISO 4618:2015-01に従う組成物を含むべきである。
【0053】
本発明の対象はさらに、A)少なくとも1種の本発明の顔料調製物、好ましくは少なくとも2種の本発明の顔料調製物、殊に好ましくは少なくとも3種の本発明の顔料調製物、ならびにB)少なくとも1種の調色ベース組成物を含む調色システムにおける本発明による顔料調製物の使用に関する。前記調色ベースは、例えば、エマルションペイント、艶出しペイント(Lackfarben)、石灰塗料、シリケート塗料、シリコーン樹脂塗料、エマルションシリケートペイント(Dispersionssilikatfarbe)、軽量プラスター、床コーティング、プラスター、水性グレーズ、溶媒含有グレーズであり、あるいは、上記のシステムのためのベースの処方を形成する。
【0054】
さらに、本発明による顔料調製物は、全てのタイプの高分子材料、例えば天然および合成繊維材料、ソーセージケーシング、種子、肥料、ガラス、絶縁物質、例えばガラスウール、コンクリート、木材着色液、ワックス、パラフィン類、製図用インキ、ボールペン用ペースト、チョーク、洗剤および洗浄剤、靴用手入れ剤、ラテックス製品、研磨材の着色、ビスコースの原着(Viskose-Spinnfaerbungen)において、および全ての種類のプラスチック類や高分子材料の着色に適している。高分子有機材料は、例えば、セルロースエーテル及びセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート又はセルロースブチレート、天然樹脂又は合成樹脂、例えば重合樹脂又は縮合樹脂、例えばアミノプラスト類、とりわけ尿素-及びメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノプラスト類、ポリカーボネート類、ポリオレフィン類、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド類、ポリウレタン類又はポリエステル、ゴム、カゼイン、ラテックス類、シリコーン、シリコーン樹脂の個々であるか又は混合物である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.以下:
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料および/またはフィラー、
(B)式(I)または(II)の少なくとも1種の分散剤、あるいは式(I)および(II)の分散剤の混合物
【化3】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
zは、1以上の整数であり、
R1は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状または分岐状炭化水素残基、または水素原子、または構造単位-O-X、または構造単位-CH -O-Xであり、
そして、構造単位Xは、式(III)に一致する
【化4】
(式中、
aは、1~50、好ましくは1~20、殊に好ましくは1~10の整数であり、
bは、0~50、好ましくは0~20、殊に好ましくは0~10の整数であり、
cは、1~100、好ましくは10~50の整数であり、
mは、1~50、好ましくは1~10の整数であり、
R2は、1~30個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖状もしくは分岐状炭化水素残基であり、
Yは、水素、-SO M、-SO M、-PO 、-CH COOMであり、そして
Mは、水素、またはカチオン、好ましくはNa 、K 、NH 、トリエタノールアンモニウムの群からのカチオン、あるいはそれらの組み合わせである)]、
を含む水性顔料調製物。
2.さらに、
(C)1種または複数の湿潤剤、
(D)および/またはさらに別の界面活性剤および/または分散剤、
(E)および/または1種または複数のヒドロトロープ物質および/または1種または複数の有機溶媒および/またはそれらの混合物、
(F)および/または1種または複数のバインダーおよび/またはコバインダー、
(G)および/または水性顔料分散体の製造のための通例のさらに別の添加剤、および
(H)任意選択的に水、
を含むことを特徴とする、上記1に記載の組成物。
3.5~80重量%の成分(A)を含む、上記1または2に記載の顔料調製物。
4.0.1~30重量%の成分(B)を含む、上記1~3のいずれか1つに記載の顔料調製物。
5.成分(A)~(H)の以下の組成を特徴とする、上記1~4のいずれか1つに記載の顔料調製物:
(A)5~80重量%、とりわけ10~70重量%、
(B)0.1~30重量%、とりわけ2~20重量%、
(C)0~10重量%、とりわけ0.1~5重量%、
(D)0~20重量%、とりわけ1~10重量%、
(E)0~30重量%、とりわけ5~20重量%、
(F)0~30重量%、とりわけ1~10重量%、
(G)0~20重量%、とりわけ0.1~5重量%、
(H)残部の水
(各々、顔料調製物の全重量(100重量%)を基準とする)。
6.成分(A)の有機顔料が、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、レーキ化アゾ系顔料、β-ナフトール系顔料、ナフトールAS系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料、アゾ金属錯体系顔料、またはフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンタントロン系顔料、アントラキノン系顔料、フラバントロン系顔料、インダントロン系顔料、イソビオラントロン系顔料、ピラントロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料及びジケトピロロピロール系顔料の群からの多環式系顔料、またはカーボンブラック類であることを特徴とする、上記1~5のいずれか1つに記載の顔料調製物。
7.成分(B)の構造単位(I)および(II)が、アルコキシル化可能な三価またはより多価のポリオールからの、特にジグリセロール、エリスリトール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ポリグリセロール、ソルビトール、トリメチロールプロパンまたはキシリトールからの反応生成物であることを特徴とする、上記1~6のいずれか1つに記載の顔料調製物。
8.5s -1 のせん断速度で10.0Pa*s未満の粘度を有することを特徴とする、上記1~7のいずれか1つに記載の顔料調製物。
9.4~14の範囲のpH値を有することを特徴とする、上記1~8のいずれか1つに記載の顔料調製物。
10.上記1~9のいずれか1つに記載の顔料調製物を製造するための方法であって、成分(A)を粉末、粒状物もしくは水性のプレスケークの形態で、水(G)並びに成分(B)及び任意選択的に(C)、(D)、(E)および(F)の存在下で分散させ、引き続き、任意選択的に水(G)並びに任意選択的に成分(C)、(D)、(E)および(F)のうちの1つまたは複数と混合し、ならびに任意選択的に、得られた水性の顔料分散体を水(G)で希釈することを特徴とする、前記方法。
11.分散が、10m/sを超える撹拌円周速度で操作される撹拌ボールミルを用いて行われることを特徴とする、上記10に記載の顔料調製物の製造方法。
12.分散が、1.2mm以下の直径の非金属性の粉砕媒体の作用下で行われることを特徴とする、上記10または11に記載の顔料調製物の製造方法。
13.天然または合成材料の着色のための、上記1~9のいずれか1つに記載の顔料調製物の使用。
14.DIN EN ISO 4618.2015-01に従うコーティング材料のコーティングのための、上記13に記載の顔料調製物の使用。
15.水性コーティング材料、塗料、エマルションペイントおよび艶出しペイント、水で希釈が可能なラッカー、グレーズ、ワニスおよび木材防腐系の着色のための、上記13に記載の使用。
16.筆記用具、色鉛筆の芯、サインペン、ファインライナー、フェルトペン、ゲルローラー、テキスト-およびホワイトボードマーカー用インキの製造のための、上記13に記載の使用。
17.インキ、印刷インキ、インクジェットインキ、マイクロエマルションインキ、UV硬化性インキの製造のための、ならびにホットメルト方式で機能するインキ、カラーフィルター、電子インキおよび「電子ペーパー(Electronic Paper)」における、上記13に記載の使用。
18.電子写真トナーおよび現像剤、単一もしくは二成分粉末トナー、磁性トナー、液体トナー、ラテックストナー、重合トナーおよび特殊トナーの製造のための、上記13に記載の使用。
19.天然及び合成繊維材料、絶縁物質、ガラスウール、ソーセージケーシング、種子、肥料、ガラス、ガラス瓶、プラスター、コンクリート、木材着色液、ワックス、パラフィン類、製図用インキ、ボールペン用ペースト、チョーク、洗剤および洗浄剤、靴用手入れ剤、ラテックス製品、研磨材の着色のための、ビスコースの原着における、ならびにプラスチックの着色のための、上記13に記載の使用。
【実施例
【0055】

本発明の顔料調製物において使用される分散剤の例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0056】
【表1】
【0057】
顔料調製物の製造:
粉末、粒状物またはプレスケーキのいずれかとしての顔料を、分散剤および他の添加剤と一緒に、脱イオン水においてペーストにし、その後、ディゾルバー(例えばVMAGetzmann GmbH製の型式AE3-M1)または他の適切な装置を用いて、均一化し、予備分散化させた。後続の微分散を、ビーズミル(例えば、VMA-Getzmann GmbHのAE3-M1)、または別の適当な分散装置を用いて行い、ここで粉砕(Mahlung)は、d=1.0~1.2mmのサイズのガラスビーズを用いて冷却下で、所望の色特性(Koloristik)を達成するまで行った。引き続いて、分散体を所望する顔料最終濃度に脱イオン水で調節し、粉砕媒体を取り出し、顔料調製物を単離した。
【0058】
以下の例に記載される顔料調製物を、上記の方法に従って製造し、成分は、それぞれの顔料調製物が100部生成されるような所与の量で使用された。以下の例において、部とは重量部を意味する。
【0059】
顔料調製物の評価:
着色力および色調の決定は、規定の量の顔料調製物をエマルションペイントで均質化し、引き続き、この調色された塗料を、規定の層厚でペイントカード(Lackkarte)上に施与することにより、DIN 55986に従って行った、乾燥したフィルムの色特性を、分光光度計(例えば、コニカミノルタ社のベンチトップ型分光光度計CM-3700A)で調べた。
【0060】
「Rub-Out試験(Rub-Out-Test)」を用いた相容性の決定のために、エマルションペイントまたはラッカーを、顔料分散体と混合した後に、ペイントカード上に施与した。引き続き、ペイントカードの下部を後で指でこすった。後でこすった表面が、隣接する後処理されていない表面よりも強く着色された場合、非適合性であった(「Rub-Out試験」はDE2638946に記載されている)。適合性の評価のために、異なる一般的な市販のバインダーをベースとする異なる組成の6つの従来の水性および溶媒含有コーティング系を使用した。
【0061】
粘度は、Anton Paar GmbH社製のコーンプレート型粘度計(MCR 72)を用いて20℃で決定し(チタンコーン:φ60mm、1°)、0~200s-1の範囲におけるせん断速度への粘度の依存性を調べた。
【0062】
調製物の泡挙動を評価するために、まず、試料を、遠心分離機を用いて2000rpmで60秒間脱気し、この脱気した試料の密度(ρ脱気)を、DIN EN ISO 2811-1に従って、塗料ピクノメーター(Lackpyknometer)(例えば、Erichsen GmbH & Co. KGのモデル290)で決定した。引き続き、この試料を、3分間、150mLのHDPEビーカー(75%充填レベル)において、振とう機(例えば、Lau GmbH社からのDisperser DAS 200-K)により、660rpmの振とう頻度で振とうし、この試料の密度を、再び上記のように決定した(ρ振とう)。このようにして測定した振とうしたおよび脱気した試料の密度からの商であるρ振とう/ρ脱気は、>0.90であるべきである。
【0063】
分散体の貯蔵安定性を評価するために、調製物の製造直後、および50℃で28日間貯蔵した後に、粘度を測定した。さらに、このようにして貯蔵したサンプルの着色力を、室温で保存したサンプルに対して決定した。さらに、貯蔵したサンプルの均一性および沈降挙動を、形成した沈降物および上清(Serums)を測定することによって評価した。貯蔵安定性は、貯蔵した試料の粘度が、60s-1のせん断速度で、製造直後に測定された粘度から150mPa*s未満だけ逸脱し、貯蔵した試料の着色力が、室温で貯蔵した試料に対して3%未満だけ逸脱し、貯蔵した試料が沈降の兆候を示さない場合に、「非常に良好」と評価された。貯蔵安定性は、粘度が150~300mPa*sだけ逸脱し、および/または着色力が3~5%だけ逸脱し、および/または貯蔵した試料が沈降の兆候をわずかに示すが、簡単な撹拌によって再び完全に均質化できた場合に、「良好」と評価された。貯蔵安定性は、粘度が600mPa*s超だけ逸脱し、および/または着色力が7%超だけ逸脱し、および/または貯蔵した試料が激しく沈降した場合に、「不良」と評価された。
【0064】
調色機における計量添加性に関する試験を、この目的のために機械(例えば、Fast & Fluid社のHarbil HA400)の所定の着色剤容器に、2~3Lの試験材料を充填し、最初の較正の後4週間にわたって定期的な間隔で計量添加の結果を観察することによって行った。適性を評価するための主要な基準は、試験材料の出発密度の安定性、装置上での試験材料の較正の安定性、計量添加試験での達成可能な精度および再現性、ならびに視覚的な外観(とりわけ発泡およびレオロジーに関する)であった。
【0065】
以下の例に記載される顔料調製物を、上記の方法に従って製造した。ここで、以下の成分を、示された量でそれぞれの顔料調製物100部が製造されるように使用した。以下の例において、部は重量部を意味する。
【0066】
例1
30.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントバイオレット023
8.0部の成分(B)、すなわちサンプル1に相当する分散剤
10.0部の成分(E)、すなわちプロピレングリコール
0.6部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0067】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、1~200s-1の範囲の全てのせん断速度にわたって<0.1Pa*sの粘度を有する、ほぼニュートンレオロジープロファイルを示す。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0068】
例2
45.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブルー015:3
12.0部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
7.5部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0069】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で2.30Pa*s、30s-1のせん断速度で1.02Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.75Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0070】
C.I.ピグメントブルー015:3をベースとするDE102006002800に記載の顔料調製物は、所望の範囲の粘度を有するが、それらの顔料含有量は30重量%に過ぎない。これとは対照的に、上記の例2における顔料含有量は45重量%であり、これは、良好な貯蔵安定性および粘度を維持しながら50%の顔料含有量の増加に相当する。
【0071】
例3
40.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブルー015:1
13.6部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
9.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
1.0部の成分(G)、すなわち消泡剤
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0072】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で1.37Pa*s、30s-1のせん断速度で0.67Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.51Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。顔料調製物は、調色機で良好に計量添加可能であり、4週間の期間にわたって安定である。
【0073】
例4
50.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントグリーン007
7.2部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
0.7部の成分(D)、すなわちカルボキシメチル化アルコールポリグリコールエーテルのナトリウム塩
10.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
1.0部の成分(G)、すなわち消泡剤
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0074】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で0.81Pa*s、30s-1のせん断速度で0.54Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.45Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0075】
例5
41.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントイエロー074
9.6部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
0.2部の成分(D)、すなわちセチルトリメチルアンモニウムクロリド
11.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0076】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で0.80Pa*s、30s-1のせん断速度で0.28Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.18Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。顔料調製物は、調色機で良好に計量添加可能であり、4週間の期間にわたって安定である。
【0077】
例6
38.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントイエロー097
8.0部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
10.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
2.0部の成分(G)、すなわちオレイン酸
1.0部の成分(G)、すなわち消泡剤
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0078】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で0.74Pa*s、30s-1のせん断速度で0.28Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.19Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0079】
例7
62.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブルー028
3.2部の成分(B)、すなわちサンプル2に相当する分散剤
0.5部の成分(D)、すなわちベンゼンスルホン酸,4-C 10-13-sec-アルキル誘導体
0.8部の成分(D)、すなわちテトラナトリウム-N-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシナメート(Tetranatrium-N-(1,2-Dicarboxyethyl)-N-Octadecylsulfosuccinamat)
5.0部の成分(D)、すなわち脂肪アルコールポリグリコールエーテル
5.0部の成分(E)、すなわちエチレンオキシド-プロピレンオキシド-混合重合体(分岐)
2.0部の成分(G)、すなわちオレイン酸
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0080】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で4.84Pa*s、30s-1のせん断速度で1.95Pa*s、および60s-1のせん断速度で1.23Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0081】
例8
41.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントイエロー074
11.5部の成分(B)、すなわちサンプル3に相当する分散剤
0.2部の成分(D)、すなわちセチルトリメチルアンモニウムクロリド
11.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0082】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で4.10Pa*s、30s-1のせん断速度で0.62Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.46Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0083】
例9
40.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブルー015:3
8.0部の成分(B)、すなわちサンプル3に相当する分散剤
10.0部の成分(E)、すなわちプロピレングリコール
0.6部の成分(F)、すなわち防腐剤
残部の成分(G)、すなわち水
【0084】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で1.90Pa*s、30s-1のせん断速度で0.43Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.28Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0085】
C.I.ピグメントブルー015:3をベースとするDE102006002800に記載の顔料調製物は、所望の範囲の粘度を有するが、それらの顔料含有量は30重量%に過ぎない。これとは対照的に、上記の例9における顔料含有量は40重量%であり、これは、良好な貯蔵安定性および粘度を維持しながら>33%の顔料含有量の増加に相当する。
【0086】
例10
30.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントレッド254
6.0部の成分(B)、すなわちサンプル4に相当する分散剤
1.5部の成分(D)、すなわちココアミドプロピルベタイン
5.0部の成分(D)、すなわち脂肪アルコールポリグリコールエーテル
12.5部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
2.0部の成分(G)、すなわちオレイン酸
1.0部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0087】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で0.42Pa*s、30s-1のせん断速度で0.35Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.31Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0088】
例11
41.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントイエロー074
11.5部の成分(B)、すなわちサンプル4に相当する分散剤
11.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0089】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で1.67Pa*s、30s-1のせん断速度で0.44Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.28Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0090】
例12
43.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブラック007
18.0部の成分(B)、すなわちサンプル4に相当する分散剤
0.3部の成分(D)、すなわちスルホコハク酸ジエステルナトリウム塩
8.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0091】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で1.85Pa*s、30s-1のせん断速度で0.82Pa*s、および60s-1のせん断速度で0.62Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0092】
C.I.ピグメントブラック007をベースとするDE102006002800に記載の顔料調製物は、所望の範囲の粘度を有するが、その顔料含有量は25重量%に過ぎない。これとは対照的に、上記の例12における顔料含有量は43重量%であり、これは、良好な貯蔵安定性および粘度にもかかわらず72%の顔料含有量の増加に相当する。
【0093】
例13
70.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントレッド101
5.0部の成分(B)、すなわちサンプル4に相当する分散剤
5.0部の成分(D)、すなわち脂肪アルコールポリグリコールエーテル
5.0部の成分(E)、すなわちエチレンオキシド-プロピレンオキシド-混合重合体(分岐)
2.0部の成分(G)、すなわちオレイン酸
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0094】
前記顔料調製物は、異なる組成の6つのコーティング系において、一貫して高い着色力を有し、Rub-Outなしかつ望ましくない表面欠陥の形成なしで広範囲の相容性を有する。調製物は、非常に低い発泡傾向を示す(ρ振とう/ρ脱気>0.95)。調製物は、製造後、5s-1のせん断速度で6.83Pa*s、30s-1のせん断速度で2.94Pa*s、および60s-1のせん断速度で2.55Pa*sの粘度を有する。該調製物は、貯蔵-およびせん断安定性である。
【0095】
C.I.ピグメントレッド102をベースとするDE102006002800に記載の顔料調製物は、所望の範囲の粘度を有するが、その顔料含有量は60重量%に過ぎない。これとは対照的に、上記の例13における顔料含有量は70重量%であり、これは、良好な貯蔵安定性および粘度にもかかわらず>16%の顔料含有量の増加に相当する。
【0096】
比較例1
41.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントイエロー074
10.0部の成分(B)、すなわち比較サンプル1に相当する分散剤
0.2部の成分(D)、すなわちセチルトリメチルアンモニウムクロリド
11.0部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0097】
顔料調製物は、低い着色力を有する。例5と比較して、着色力は80%にすぎない。Rub-Out試験は、6つのコーティング系のうちの2つにおいて非適合性を示す。50℃で28日間貯蔵した後、着色力が貯蔵前の着色力と比較して88%に低下したので、当該調製物は貯蔵安定性でない。これは、不十分な顔料濡れおよび顔料安定化に起因し得る。
【0098】
比較例2
45.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントブルー015:3
12.0部の成分(B)、すなわち比較サンプル1に相当する分散剤
7.5部の成分(E)、すなわちアルファ-メチル-オメガ-ヒドロキシ-ポリエチレングリコールエーテル(平均分子量500g/mol)
0.9部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0099】
顔料調製物は、低い着色力を有する。例2と比較して、着色力は94%にすぎない。Rub-Out試験は、全6つのコーティング系のうちの2つにおいて強い非適合性を、1つにおいて軽い非適合性を示す。粘度は、例2における、5s-1のせん断速度で2.30Pa*s、30s-1のせん断速度で1.02Pa*sおよび60s-1のせん断速度で0.75 Pa*sの粘度と比較して、5s-1のせん断速度で8.10Pa*s、30s-1のせん断速度で2.21Pa*sおよび60s-1のせん断速度で1.52Pa*sである。これは、不十分な粘度低下および粒子安定化に起因し得る。
【0100】
比較例3
30.0部の成分(A)、すなわちC.I.ピグメントバイオレット023
8.0部の成分(B)、すなわち比較サンプル1に相当する分散剤
10.0部の成分(E)、すなわちプロピレングリコール
0.6部の成分(G)、すなわち防腐剤
残部の成分(H)、すなわち水
【0101】
顔料調製物は、非常に低い着色力を有する。例1と比較して、着色力は90%にすぎない。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】