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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】光演算装置及び光演算方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20230511BHJP
   G06G 7/60 20060101ALI20230511BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   G06N 3/067 20060101ALI20230511BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G02F3/00 501
G06G7/60
G06E3/00
G06N3/067
G02F1/13 505
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022505627
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022686
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
(72)【発明者】
【氏名】九内 雄一朗
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-294984(JP,A)
【文献】特開2002-269532(JP,A)
【文献】特表2003-500698(JP,A)
【文献】特開平06-130444(JP,A)
【文献】特開2000-314858(JP,A)
【文献】特開平04-354076(JP,A)
【文献】特開平04-328726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0085496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G06N 3/067
G06E 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調量を独立に設定可能な複数のセルを含む光変調素子と反射体とを備え、
前記光変調素子には、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定されており、
演算領域A1は、入射光を変調及び反射することによって光演算を行い、
演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)は、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、前記反射体にて反射された信号光を変調及び反射することによって光演算を行い、
各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)による前記光演算は、前記光変調素子を構成する前記複数のセルのうち、該演算領域Ajを構成する複数のセルの各々にて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって実現される、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項2】
少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)にて変調及び反射された信号光に応じて、前記光変調素子に含まれるセルにおける変調量を制御する制御部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光演算装置。
【請求項3】
前記光変調素子と前記反射体との間に配置された媒質であって、空気よりも屈折率の高い又は低い媒質を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光演算装置。
【請求項4】
前記光変調素子と前記反射体との間に配置された媒質であって、各演算領域Aiにて変調及び反射された信号光が通過する領域の屈折率が、演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光が通過する領域の屈折率よりも高い又は低い媒質を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光演算装置。
【請求項5】
前記反射体は、各演算領域Aiにて変調及び反射された信号光が通過する領域における前記反射体から前記光変調素子までの距離が、演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光が通過する領域における前記反射体から前記光変調素子までの距離よりも大きく又は小さくなるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光演算装置。
【請求項6】
少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)は、当該演算領域Anに入射する入射光又は信号光を、前記光変調素子の表面の法線に対する入射角と反射角とが異なるように、又は、前記法線及び入射光軸を含む入射平面と前記法線及び反射光軸を含む反射平面とが異なるように反射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光演算装置。
【請求項7】
前記入射光は、入力信号により変調された信号光である、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項8】
前記入射光は、入力信号により変調されていない搬送光であり、
演算領域A1は、前記搬送光を入力信号により変調することによって、信号光を生成する光演算を行う、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項9】
前記入射光を波長に応じて分波する分波器を更に備えており、
各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)は、異なる波長の信号光を変調及び反射する小領域に分割されている、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項10】
前記分波器は、前記光変調素子上に形成された回折格子である、
ことを特徴とする請求項9に記載の光演算装置。
【請求項11】
演算領域ANを構成する各小領域にて変調及び反射された異なる波長の信号光を合波する合波器を更に備えている、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の光演算装置。
【請求項12】
前記合波器は、前記光変調素子上に形成された回折格子である、
ことを特徴とする請求項11に記載の光演算装置。
【請求項13】
前記光変調素子と前記反射体との距離が可変である、
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項14】
少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)は、入射光又は信号光のうち、特定の偏光方向を有する偏光成分を選択的に透過する偏光フィルタに覆われている、
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項15】
少なくとも1組の演算領域Am,Am+1(mは1以上N-1以下の自然数の何れか)について、演算領域Amにて変調及び反射された信号光が演算領域Am+1を構成するセル以外のセルに入射することを妨げる光吸収体を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項16】
前記反射体は、演算領域AN以外の各演算領域Ak(kは1以上N-1以下の自然数の各々)にて変調及び反射された信号光を、変調せずに反射するミラーである、
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項17】
演算領域ANにて変調及び反射された信号光を検出する受光部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項16に記載の光演算装置。
【請求項18】
前記ミラーは、少なくとも1つの演算領域Am(mは1以上N-1以下の自然数の何れか)にて変調及び反射された信号光の一部を透過するハーフミラーであり、
前記受光部が、演算領域Amにて変調及び反射され、前記ハーフミラーを透過した信号光を更に検出するか、又は、当該光演算装置が、演算領域Amにて変調及び反射され、前記ハーフミラーを透過した信号光を検出する他の受光部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項17に記載の光演算装置。
【請求項19】
前記複数のセルの各々は、スピン注入型位相変調器、又は、スピン注入型強度変調器である、
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項20】
前記複数のセルの各々は、LCOS型位相変調器、又は、LCOS型強度変調器である、
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項21】
前記複数のセルの各々は、DMD型強度変調器である、
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項22】
変調量を独立に設定可能な複数のセルを含み、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定された光変調素子を用いた光演算方法であって、
入射光を、演算領域A1を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、
演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、反射体にて反射された信号光を、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、を含んでおり、
各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)による前記光演算は、前記光変調素子を構成する前記複数のセルのうち、該演算領域Ajを構成する複数のセルの各々にて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって実現される、
ことを特徴とする光演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数段光演算を行う光演算装置及び光演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルを有し、各セルを透過した信号光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行するように設計された光学素子が知られている。このような光学素子を用いた光学的な演算には、プロセッサを用いた電気的な演算と比べて高速且つ低消費電力であるという利点がある。また、信号光に対して、並べて配置された2つ以上の光学素子を順に作用させることによって、複数段光演算(2段以上の光演算)を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光学素子は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7847225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数段光演算を行う従来の光演算装置は、各々が単一の演算領域を有する複数の光変調素子(上述した光学素子に相当)を備えている。したがって、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整に、各光変調素子の物理的な位置調整を要する。このため、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが困難である、という問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが容易な光演算装置及び光演算方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するべく、本発明の一態様に係る光演算装置は、変調量を独立に設定可能な複数のセルを含む光変調素子と反射体とを備え、前記光変調素子には、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定されており、演算領域A1は、入射光を変調及び反射することによって光演算を行い、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)は、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、前記反射体にて反射された信号光を変調及び反射することによって光演算を行う。
【0008】
上記の課題を解決するべく、本発明の一態様に係る光演算方法は、変調量を独立に設定可能な複数のセルを含み、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定された光変調素子を用いた光演算方法であって、入射光を、演算領域A1を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、反射体にて反射された信号光を、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整に、光変調素子の物理的な位置調整を要さない。このため、本発明の一態様によれば、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、第1の実施形態に係る光演算装置の構成を示す断面図である。(b)及び(c)は、(a)に示す光演算装置が備える光変調素子の平面図である。
図2図1に示す光演算装置の第1の変形例を示す断面図である。
図3図1に示す光演算装置の第2の変形例を示す断面図である。
図4図1に示す光演算装置の第3の変形例を示す断面図である。
図5図1に示す光演算装置の第4の変形例を示す断面図である。
図6図1に示す光演算装置の第5の変形例を示す断面図である。
図7図1に示す光演算装置の第6の変形例を示す断面図である。
図8図1に示す光演算装置の第7の変形例を示す断面図である。
図9図1に示す光演算装置の第8の変形例を示す断面図である。
図10図1に示す光演算装置の第9の変形例を示す断面図である。
図11図1に示す光演算装置の第10の変形例を示す断面図である。
図12図1に示す光演算装置の第11の変形例を示す断面図である。
図13図1に示す光演算装置の第12の変形例を示す断面図である。
図14】(a)は、第2の実施形態に係る光演算装置の構成を示す断面図である。(b)及び(c)は、(a)に示す光演算装置が備える光変調素子の平面図である。
図15図14に示す光演算装置の第1の変形例を示す断面図である。
図16図14に示す光演算装置の第2の変形例を示す断面図である。
図17図14に示す光演算装置の第3の変形例を示す断面図である。
図18】セルの第1の具体例の斜視図である。
図19】(a)は、セルの第1の具体例の断面図である。(b)は、偏光板の平面図である。
図20】(a)は、セルの第2の具体例の斜視図である。(b)は、偏光板の平面図である。
図21】セルの第3の具体例の斜視図である。
図22】(a)は、偏光板の平面図である。(b)は、セルの第3の具体例の断面図である。
図23】セルの第4の具体例の断面図である。
図24】(a)及び(b)は、セルの第5の具体例の断面図である。(c)及び(d)は、セルの第5の具体例の平面図である。(e)及び(f)は、偏光板の平面図である。
図25】(a)及び(b)は、セルの第6の具体例の断面図である。(c)及び(d)は、セルの第6の具体例の平面図である。(e)及び(f)は、偏光板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1の実施形態〕
(光演算装置の構成)
本発明の第1の実施形態に係る光演算装置1について、図1を参照して説明する。図1において、(a)は、光演算装置1の断面図であり、(b)及び(c)は、光演算装置1が備える光変調素子11の平面図である。
【0012】
光演算装置1は、図1に示すように、光変調素子11と、ミラー12(請求の範囲における「反射体」の一例)と、を備えている。光変調素子11及びミラー12は、光変調素子11の一方の主面(図1において紙面上方の主面)とミラー12の一方の主面(図1において紙面下方の主面)とが互いに平行に対向するように配置されている。
【0013】
光変調素子11は、変調量を独立に設定可能な複数のセルCを含んでいる。各セルCは、位相変調機能又は強度変調機能を有する反射型の変調器である。本実施形態においては、マトリックス状に配置された複数のセルCを含む基板を、光変調素子11として用いている。各セルCは、サイズがマイクロメートルオーダー以下、すなわち、10μm未満のマイクロセルである。各セルCのサイズの下限は、特に限定されないが、例えば、1nmである。各セルCの具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0014】
光変調素子11には、N個の演算領域A1,A2,…,ANが設定されている。ここで、Nは、2以上の自然数である。各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)は、光変調素子1の主面上の領域であり、マトリックス状に配置された複数のセルCにより構成される。図1においては、各演算領域Ajを構成するセルCを、ハッチングを付すことによって、それ以外のセルCと区別している。以下の説明においては、N=4であると仮定するが、この仮定は、本発明を限定するものではない。
【0015】
第1演算領域A1は、入射光L0を変調及び反射することによって、第1光演算を行う。ここで、第1光演算を行うとは、第1演算領域A1を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、空間強度分布が第1光演算の結果を表す第1信号光L1を生成することを指す。ここで、第1光演算の内容は、第1演算領域A1を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第1演算領域A1にて生成された第1信号光L1は、ミラー12にて反射された後、第2演算領域A2に入射する。
【0016】
第2演算領域A2は、第1信号光L1を変調及び反射することによって、第2光演算を行う。ここで、第2光演算を行うとは、第2演算領域A2を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第2光演算の結果を表す第2信号光L2を生成することを指す。ここで、第2光演算の内容は、第2演算領域A2を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第2演算領域A2にて生成された第2信号光L2は、ミラー12にて反射された後、第3演算領域A3に入射する。
【0017】
第3演算領域A3は、第2信号光L2を変調及び反射することによって、第3光演算を行う。ここで、第3光演算を行うとは、第3演算領域A3を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第3光演算の結果を表す第3信号光L3を生成することを指す。ここで、第3光演算の内容は、第3演算領域A3を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第3演算領域A3にて生成された第3信号光L3は、ミラー12にて反射された後、第4演算領域A4に入射する。
【0018】
第4演算領域A4は、第3信号光L3を変調及び反射することによって、第4光演算を行う。ここで、第4光演算を行うとは、第4演算領域A4を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第4光演算の結果を表す第4信号光L4を生成することを指す。ここで、第4光演算の内容は、第4演算領域A4を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第4演算領域A4にて生成された第4信号光L4は、例えば、後述する受光部14に入射する。
【0019】
光変調素子11を構成するセルCの個数は、各演算領域Ajを構成するセルCの個数の和よりも多く、どのセルCを各演算領域Ajとして機能させるかは、光演算装置1の製造時又は使用時に自由に設定することができる。換言すれば、光演算装置1の製造時又は使用時に、各演算領域Ajの位置調整を行うことができる。図1の(b)は、各演算領域Ajの位置調整前を行う前の光変調素子11の一例であり、図1の(c)は、各演算領域Ajの位置調整を行った後の光変調素子11の一例である。ここでは、第2演算領域A2及び第3演算領域A3を、それぞれ、紙面右方に1セル分移動している。また、第4演算領域A4を、紙面右方に1セル分かつ紙面上方に1セル分移動している。このような各演算領域Ajの位置調整は、演算領域間のアライメント調整に利用することができる。
【0020】
従来の光演算装置は、各々が単一の演算領域を有する複数の光変調素子(透過型)を備えている。したがって、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整に、各光変調素子の物理的な位置調整を要する。このため、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが相対的に困難であり、その結果、所期の複数段光演算を実現することが困難になる。
【0021】
これに対して、本実施形態の光演算装置1は、複数の演算領域A1,A2,…,ANを有する単一の光変調素子11(反射型)を備えている。したがって、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整に、光変調素子11の物理的な位置調整を要さない。このため、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが相対的に容易であり、その結果、所期の複数段光演算を実現することが相対的に容易になる。
【0022】
なお、入射光L0は、入力信号により空間強度変調された信号光であってもよいし、入力信号により空間強度変調されていない搬送光であってもよい。前者の場合、第N信号光LNを復調して得られる出力信号の空間強度分布は、入力信号に対して第1光演算、第2光演算、…、第N光演算を順に適用した結果を表す。後者の場合、第1演算領域A1において、入力信号により空間強度変調された信号光L1を生成する。この場合、第N信号光LNを復調して得られる出力信号の空間強度分布は、入力信号に対して第2光演算、第3光演算、…、第N光演算を順に適用した結果を表す。
【0023】
また、光演算装置1は、図1に点線で示すように、発光部13を更に備えていてもよい。発光部13は、上述した入射光L0を生成する(例えば、入力信号を表す電気信号を、入射光L0に変換する)ための構成である。発光部13としては、例えば、マトリックス状に配置された複数の発光セルを含む2次元ディスプレイを用いることができる。
【0024】
また、光演算装置1は、図1に点線で示すように、受光部14を更に備えていてもよい。受光部14は、第N信号光LNを検出する(例えば、第N信号光LNを、出力信号を表す電気信号に変換する)ための構成である。受光部14としては、例えば、マトリックス状に配置された受光セルを含む2次元イメージセンサを用いることができる。
【0025】
また、光演算装置1は、図1に点線で示すように、制御部15を更に備えていてもよい。制御部15は、第N信号光LNに応じて、光変調素子11に含まれるセルCの変調量を制御するための構成である。制御部15は、例えば、受光部14にて得られた電気信号に基づいて動作するIC(Integrated Circuit)によって構成することができる。制御の内容は特に限定されないが、例えば、所期の出力信号を表す第N信号光LNが得られるように、演算領域間のアライメントを調整する制御などが挙げられる。光演算装置1を学習済モデルとして利用する場合、この制御は、その学習済モデルを構築するための学習に利用することもできる。
【0026】
(光演算装置の第1の変形例)
光演算装置1の第1の変形例(以下、光演算装置1Aと記載する)について、図2を参照して説明する。図2は、光演算装置1Aの断面図である。
【0027】
光演算装置1Aにおける光演算装置1からの変更点は、光変調素子11とミラー12との間に配置された媒質16aが追加されている点である。ここで、媒質16aは、空気よりも屈折率が高い、又は、空気よりも屈折率の低い媒質である。以下、媒質16aの屈折率が空気の屈折率よりも高い構成を「構成α1」と記載する。また、媒質16aの屈折率が空気の屈折率よりも低い構成を「構成α2」と記載する。
【0028】
構成α1を採用した場合、光変調素子11とミラー12との物理的距離を変えずに、光変調素子11とミラー12との光学的距離を大きくすることができる。逆に、構成α2を採用した場合、光変調素子11とミラー12との物理的距離を変えずに、光変調素子11とミラー12との光学的距離を小さくすることができる。すなわち、媒質16aの屈折率を適宜設定することによって、光変調素子11とミラー12との物理的距離を変えずに、演算領域間の光学的間隔を調整することができる。
【0029】
なお、構成α1を採用した場合には、光変調素子11とミラー12との光学的距離を変えずに、光変調素子11とミラー12との物理的距離を小さくすることができる。したがって、光演算装置1Aを薄型化することができる。
【0030】
(光演算装置の第2の変形例)
光演算装置1の第2の変形例(以下、光演算装置1Bと記載する)について、図3を参照して説明する。図3は、光演算装置1Bの断面図である。
【0031】
光演算装置1Bにおける光演算装置1からの変更点は、光変調素子11とミラー12との間に配置された媒質16bが追加されている点である。媒質16bは、第i信号光Li(iは2以上N以下の自然数の各々)の通過する領域の屈折率が、第i-1信号光Li-1の通過する領域の屈折率よりも高い又は低い媒質である。ここで、第i信号光Liは、第i演算領域Aiにて変調及び反射された信号光であり、第i-1信号光Li-1は、第i-1演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光である。以下、第i信号光Liの通過する領域の屈折率が第i-1信号光Li-1の通過する領域の屈折率よりも高い構成を「構成β1」と記載する。また、第i信号光Liの通過する領域の屈折率が第i-1信号光Li-1の通過する領域の屈折率よりも低い構成を「構成β2」と記載する。
【0032】
構成β1を採用した場合、第i演算領域Aiから第i+1演算領域Ai+1までの光学的距離を、第i-1演算領域Ai-1から第i演算領域Aiまでの光学的距離よりも大きくすることができる。逆に、構成β2を採用した場合、第i演算領域Aiから第i+1演算領域Ai+1までの光学的距離を、第i-1演算領域Ai-1から第i演算領域Aiまでの光学的距離よりも小さくすることができる。すなわち、媒質16bの屈折率の増減を適宜設定することによって、演算領域間の光学的距離の増減を調整することができる。
【0033】
(光演算装置の第3の変形例)
光演算装置1の第3の変形例(以下、光演算装置1Cと記載する)について、図4を参照して説明する。図4は、光演算装置1Cの断面図である。
【0034】
光演算装置1Cにおける光演算装置1からの変更点は、ミラー12が傾いて配置されている点である。これにより、第i信号光Li(iは2以上N以下の自然数の各々)の通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離は、第i-1信号光Li-1の通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離よりも大きく又は小さくなる。ここで、第i信号光Liは、第i演算領域Aiにて変調及び反射された信号光であり、第i-1信号光Li-1は、第i-1演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光である。以下、第i信号光Liの通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離が第i-1信号光Li-1の通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離よりも大きくなる構成を、「構成γ1」と記載する。また、第i信号光Liの通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離が第i-1信号光Li-1の通過する領域におけるミラー12から光変調素子11までの物理的距離よりも小さくなる構成を、「構成γ2」と記載する。
【0035】
構成γ1を採用した場合、第i演算領域Aiから第i+1演算領域Ai+1までの光学的距離を、第i-1演算領域Ai-1から第i演算領域Aiまでの光学的距離よりも大きくすることができる。逆に、構成γ2を採用した場合、第i演算領域Aiから第i+1演算領域Ai+1までの光学的距離を、第i-1演算領域Ai-1から第i演算領域Aiまでの光学的距離よりも小さくすることができる。すなわち、ミラー12の傾きを適宜設定することによって、演算領域間の光学的距離の増減を調整することができる。
【0036】
なお、本変形例においては、光変調素子11における第i演算領域Aiの位置が、ミラー12にて反射された第i-1信号光Li-1が入射する位置に調整されている点に留意されたい。このようなアライメント調整が可能な理由は、光変調素子11が変調量を独立に設定可能な複数のセルCにより構成されているためである。
【0037】
(光演算装置の第4の変形例)
光演算装置1の第4の変形例(以下、光演算装置1Dと記載する)について、図5を参照して説明する。図5は、光演算装置1Dの断面図である。
【0038】
光演算装置1Dにおける光演算装置1からの変更点は、少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)が、光変調素子11の表面の法線に対して入射角θn-1で入射した第n-1信号光Ln-1(n=1の場合は入射光L0)を、当該法線に対して入射角θn-1とは異なる反射角θnで反射するように構成されている点である。
【0039】
図5に示した例においては、第1演算領域A1が、入射角θ0で入射した入射光L0を、入射角θ0よりも大きい反射角θ1で反射するように構成されている。また、第2演算領域A2が、入射角θ1で入射した第1信号光L1を、入射角θ1よりも小さい反射角θ2で反射するように構成されている。また、第3演算領域A3が、入射角θ2で入射した第2信号光L2を、入射角θ2よりも大きい反射角θ3で反射するように構成されている。
【0040】
第n演算領域Anが、入射角θn-1で入射した第n信号光Ln-1(n=1の場合は入射光L0)を入射角θn-1よりも大きい反射角θnで反射する場合、第n演算領域Anから第n+1演算領域An+1までの光学的距離を、相対的に大きくすることができる。逆に、第n演算領域Anが、入射角θn-1で入射した第n信号光Ln-1(n=1の場合は入射光L0)を入射角θn-1よりも小さい反射角θnで反射する場合、第n演算領域Anから第n+1演算領域An+1までの光学的距離を、相対的に小さくすることができる。すなわち、第n演算領域Anにおける反射角θnを適宜設定することによって、第n演算領域Anから第n+1演算領域An+1までの光学的距離を自由に調整することができる。
【0041】
なお、本変形例においては、第n演算領域Anが、第n-1信号光Ln-1を、入射角θn-1と反射角θnとが異なるように反射する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、第n演算領域Anは、第n-1信号光Ln-1を、入射平面と反射平面とが異なるように反射する構成を採用してもよい。ここで、入射平面とは、光変調素子11の表面の法線と入射光軸(第n-1信号光Ln-1の光軸)とを含む平面のことを指す。また、反射平面とは、光変調素子11の表面の法線と入射光軸(第n信号光Lnの光軸)とを含む平面のことを指す。
【0042】
なお、本変形例においては、光変調素子11における第i演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)の位置が、ミラー12にて反射された第i-1信号光Li-1が入射する位置に調整されている点に留意されたい。このようなアライメント調整が可能な理由は、光変調素子11が変調量を独立に設定可能な複数のセルCにより構成されているためである。
【0043】
(光演算装置の第5の変形例)
光演算装置1の第5の変形例(以下、光演算装置1Eと記載する)について、図6を参照して説明する。図6は、光演算装置1Eの断面図である。
【0044】
光演算装置1Eにおける光演算装置1からの第1の変更点は、入射光L0を波長に応じて分波する分波器17が追加されている点である。光演算装置1Eにおける光演算装置1からの第2の変更点は、各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)は、異なる波長の信号光を変調及び反射する小領域Aja,Ajb,Ajcに分割されている点である。なお、分波器17としては、例えば、プリズムを用いることができる。
【0045】
ここで、小領域Ajaは、第j-1信号光Aj-1(j=1の場合は入射光L0)に含まれる波長成分のうち、短波長成分に対して第i光演算を行うための領域である。また、小領域Ajbは、第j-1信号光Aj-1(j=1の場合は入射光L0)に含まれる波長成分のうち、中波長成分に対して第i光演算を行うための領域である。また、小領域Ajcは、第j-1信号光Aj-1(j=1の場合は入射光L0)に含まれる波長成分のうち、長波長成分に対して第i光演算を行うための領域である。各演算領域Ajに含まれる3つの小領域Aja,Ajb,Ajcは、互いに等しい光演算を行うように設計されていてもよいし、互いに異なる光演算を行うように設計されていてもよい。また、入射光L0に含まれる3つの成分(短波長成分、中波長成分、長波長成分)は、互いに等しい入力信号により変調されていてもよいし、互いに異なる入力信号により変調されていてもよい。
【0046】
第N演算領域ANにて変調及び反射された第N信号光LNの各波長成分は、それぞれ独立に受光部14に入射する。したがって、光演算装置1Eによれば、短波長帯、中波長帯、長波長帯における光演算を並列的に実行し、それらの光演算の結果をそれぞれ独立に取得することができる。
【0047】
(光演算装置の第6の変形例)
光演算装置1の第6の変形例(以下、光演算装置1Fと記載する)について、図7を参照して説明する。図7は、光演算装置1Fの断面図である。
【0048】
光演算装置1Fにおける光演算装置1Eからの第1の変更点は、第N演算領域ANを構成する各小領域ANa,ANb,ANcにて変調及び反射された異なる波長の第N信号光LNを合波する合波器18が追加されている点である。光演算装置1Fにおける光演算装置1Eからの第2の変更点は、受光部14が、合波器18にて合波された第N信号光LNを受光するように構成されている点である。なお、合波器18としては、例えば、プリズムを用いることができる。
【0049】
合波器18にて合波された第N信号光Nは、短波長帯、中波長帯、長波長帯における光演算の結果の和を表す。したがって、光演算装置1Eによれば、短波長帯、中波長帯、長波長帯における光演算を並列的に実行し、それらの光演算の結果の和を取得することができる。
【0050】
(光演算装置の第7の変形例)
光演算装置1の第7の変形例(以下、光演算装置1Gと記載する)について、図8を参照して説明する。図8は、光演算装置1Gの断面図である。なお、本変形例においては、N=2であると仮定する。
【0051】
光演算装置1Gおける光演算装置1Fからの第1の変更点は、光変調素子11上の一領域を、入射光L0を波長に応じて分波する回折格子として機能させ、上述した分波器17として用いている点である。光演算装置1Gにおける光演算装置1Fからの第2の変更点は、光変調素子11上の一領域を、第N演算領域ANを構成する各小領域ANa,ANb,ANcにて変調及び反射された異なる波長の第N信号光LNを合波する回折格子として機能させ、上述した合波器18として用いている点である。これにより、プリズム等の構成を追加することなく、光演算装置1Fと同等の機能を有する光演算装置1Gを実現することができる。
【0052】
なお、本変形例では、分波器17及び合波器18の両方を省略し、分波器17及び合波器18の両方の機能を光変調素子11に担わせたが、これに限定されない。すなわち、分波器17のみを省略し、分波器17のみの機能を光変調素子11に担わせてもよいし、合波器18のみを省略し、合波器18のみの機能を光変調素子11に担わせてもよい。
【0053】
(光演算装置の第8の変形例)
光演算装置1の第8の変形例(以下、光演算装置1Hと記載する)について、図9を参照して説明する。図9は、光演算装置1Hの断面図である。
【0054】
光演算装置1Hおける光演算装置1からの変更点は、ミラー12が昇降可能、すなわち、光変調素子11とミラー12との距離が可変である点である。したがって、光変調素子11とミラー12との距離を適宜設定することによって、演算領域間の光学的距離を調整することができる。
【0055】
なお、ミラー12の昇降に伴って、入射光L0が第1演算領域A1に入射する入射角を調整する機能を更に有していることが好ましい。或いは、ミラー12の昇降に伴って、各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)の位置を調整する機能を更に有していることが好ましい。これにより、ミラー12を昇降しても第i-1信号光Li-1が第i領域Aiに正しく入射する光演算装置1Hを実現することができる。
【0056】
(光演算装置の第9の変形例)
光演算装置1の第9の変形例(以下、光演算装置1Iと記載する)について、図10を参照して説明する。図10は、光演算装置1Iの断面図である。
【0057】
光演算装置1Iおける光演算装置1からの変更点は、少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)が偏光フィルタ19に覆われている点である。偏光フィルタ19は、第n演算領域Anに入射する第n-1信号光Ln-1(n=1の場合は入射光L0)及び第n演算領域Anから出射する第n信号光Lnのうち、特定の偏光方向を有する偏光成分を選択的に透過する。図10に示した例においては、全ての演算領域A1~ANが偏光フィルタ19により覆われている。
【0058】
セルCは、特定の偏光方向を有する偏光成分が入射したときには、所期の光演算を実行できるが、それ以外の偏光方向を有する偏光成分が入射したときには、所期の光演算を実行できない場合がある。光演算装置1Iによれば、このようなセルCにより第n演算領域Anが構成されている場合であっても、所期の光演算を実現することが可能である。
【0059】
なお、偏光フィルタ19は、光変調素子11の表面に接触するように配置されていてもよいし、光変調素子11の表面から離間するように配置されていてもよい。いずれの場合であっても、上記の効果が得られることに変わりはない。
【0060】
(光演算装置の第10の変形例)
光演算装置1の第10の変形例(以下、光演算装置1Jと記載する)について、図11を参照して説明する。図11は、光演算装置1Jの断面図である。
【0061】
光演算装置1Jおける光演算装置1からの変更点は、少なくとも1組の演算領域Am,Am+1(mは1以上N-1以下の自然数の何れか)について、第m演算領域Amにて変調及び反射された第m信号光Lmが第m+1演算領域Am+1を構成するセルC以外のセルCに入射することを妨げる光吸収体が追加されている点である。
【0062】
図11に示した例では、第1信号光L1が第2演算領域A2を構成するセルC以外のセルに入射することを妨げる光吸収体として、光吸収体10a1、10a2、10b1が追加されている。また、第2信号光L2が第3演算領域A3を構成するセルC以外のセルCに入射することを妨げる光吸収体として、光吸収体10a2、10a3、10b2が追加されている。また、第3信号光L3が第4演算領域A4を構成するセルC以外のセルCに入射することを妨げる光吸収体として、光吸収体10a3、10a4、10b3が追加されている。ここで、光吸収体10a1~10a4は、ミラー12の表面に貼り付けられた四角柱状の構造体である。また、光吸収体10b1~10b3は、光変調素子11の表面に貼り付けられた四角柱状の構造体である。
【0063】
光演算装置1Jによれば、第m信号光が第m演算領域Am以外の演算領域に入射することによって、演算結果に誤りが生じる可能性を低減することができる。なお、本変形例においては、光吸収体10a1~10a4及び光吸収体10b1~10b3として、四角柱状の構造体を用いているが、これに限定されない。例えば、平板状の光吸収体を光変調素子11及びミラー12の一方又は両方の表面に立設する構成を採用しても、同様の効果が得られる。
【0064】
(光演算装置の第11の変形例)
光演算装置1の第11の変形例(以下、光演算装置1Kと記載する)について、図12を参照して説明する。図12は、光演算装置1Kの断面図である。
【0065】
光演算装置1Kにおける光演算装置1からの第1の変更点は、ミラー12をハーフミラー12a(請求の範囲における「反射体」の一例)に置き換えた点である。また、光演算装置1Kにおける光演算装置1からの第2の変更点は、少なくとも1つの演算領域Am(mは1以上N-1以下の自然数)について、第m演算領域Amにて変調及び反射され、ハーフミラー12aを透過した第m信号光Lmを検出する受光部14a(請求の範囲における「他の受光部」の一例)を追加した点である。
【0066】
図12に示した例では、第1演算領域A1、第2演算領域A2、及び第3演算領域A3にて変調及び反射され、ハーフミラー12aを透過した第1信号光L1、第2信号光L2、及び第3信号光L3を検出する受光部14aが追加されている。
【0067】
光演算装置1Kによれば、第m演算領域Amにて変調及び反射された第m信号光Lmを、中間結果としてモニタすることが可能になる。なお、第m信号光Lmのモニタ結果は、例えば、第m演算領域の位置調整に利用することができる。
【0068】
(光演算装置の第12の変形例)
光演算装置1の第12の変形例(以下、光演算装置1Lと記載する)について、図13を参照して説明する。図13は、光演算装置1Lの断面図である。
【0069】
光演算装置1Lにおける光演算装置1Kからの第1の変更点は、受光部14を省略した点である。光演算装置1Lにおける光演算装置1Kからの第2の変更点は、第N演算領域ANにて変調及び反射された第N信号光を受光するように、受光部14aを拡張した点である。
【0070】
図13に示した例では、第1演算領域A1、第2演算領域A2、第3演算領域A3、及び第4演算領域A4にて変調及び反射され、ハーフミラー12aを透過した第1信号光L1、第2信号光L2、第3信号光L3、及び第4信号光L4を受光するように、受光部14aが拡張されている。
【0071】
光演算装置1Kによれば、単一の受光部14aを用いて、第m演算領域Amにて変調及び反射された第m信号光Lmを、中間結果としてモニタすると共に、第N演算領域ANにて変調及び反射された第N信号光を、最終結果としてモニタすることが可能になる。したがって、光演算装置1Kと同等の機能を、光演算装置1Kよりも簡単な構成で実現することができる。
【0072】
〔第2の実施形態〕
(光演算装置の構成)
本発明の第2の実施形態に係る光演算装置2について、図14を参照して説明する。図14において、(a)は、光演算装置2の断面図であり、(b)は、光演算装置2が備える第1光変調素子21の平面図であり、(c)は、光演算装置2が備える第2光変調素子22の平面図である。
【0073】
光演算装置2は、図14に示すように、第1光変調素子21(請求の範囲における「光変調素子」の一例)と、第2光変調素子22(請求の範囲における「他の光変調素子」の一例)と、を備えている。第1光変調素子21及び第2光変調素子22は、第1光変調素子21の一方の主面(図14の(a)のおける紙面上側の主面)と第2光変調素子22の一方の主面(図14の(a)における紙面下側の主面)とが互いに平行に対向するように配置されている。
【0074】
第1光変調素子21は、変調量を独立に設定可能な複数のセルCを含んでいる。本実施形態においては、マトリックス状に配置された複数のセルCを含む基板を、第1光変調素子21として用いている。第2光変調素子22は、変調量を独立に設定可能な複数のセルC’を含んでいる。本実施形態においては、マトリックス状に配置された複数のセルC’を含む基板を、第2光変調素子22として用いている。セルC及びセルC’は、位相変調機能又は強度変調機能を有する反射型の変調器である。セルC及びセルC’は、サイズがマイクロメートルオーダー以下、すなわち、10μm未満のマイクロセルである。各セルCのサイズの下限は、特に限定されないが、例えば、1nmである。セルC及びセルC’の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0075】
第1光変調素子21には、N個の演算領域A1,A2,…,ANが設けられている。各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)は、第1光変調素子21の主面上の領域であり、マトリックス状に配置された複数のセルCにより構成される。第2光変調素子22には、N-1個の演算領域A1’,A2’,…,AN-1’が設けられている。各演算領域Ak’(kは1以上N-1以下の自然数の各々)は、第2光変調素子22の主面上の領域であり、マトリックス状に配置された複数のセルC’により構成される。図14においては、各演算領域Ajを構成するセルCを、ハッチングを付すことによって、それ以外のセルCと区別している。また、図14においては、各演算領域Aj’を構成するセルC’を、ハッチングを付すことによって、それ以外のセルC’と区別している。なお、以下の説明においては、N=4であると仮定するが、この仮定は、本発明を限定するものではない。
【0076】
第1光変調素子21の第1演算領域A1は、入射光L0を変調及び反射することによって、第1光演算を行う。ここで、第1光演算を行うとは、第1演算領域A1を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、空間強度分布が第1光演算の結果を表す信号光L1を生成することを指す。ここで、第1光演算の内容は、第1演算領域A1を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第1演算領域A1にて生成された信号光L1は、第2光変調素子22の第1演算領域A1’に入射する。
【0077】
第2光変調素子22の第1演算領域A1’は、信号光L1を変調及び反射することによって、第2光演算を行う。ここで、第2光演算を行うとは、第1演算領域A1’を構成する各セルC’にて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、空間強度分布が第2光演算の結果を表す信号光L1’を生成することを指す。ここで、第2光演算の内容は、第1演算領域A1’を構成する各セルC’の変調量に応じて決まる。第1演算領域A1’にて生成された信号光L1’は、第1光変調素子21の第2演算領域A2に入射する。
【0078】
第1光変調素子21の第2演算領域A2は、信号光L1’を変調及び反射することによって、第3光演算を行う。ここで、第3光演算を行うとは、第2演算領域A2を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第3光演算の結果を表す信号光L2を生成することを指す。ここで、第3光演算の内容は、第2演算領域A2を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第2演算領域A2にて生成された信号光L2は、第2光変調素子22の第2演算領域A2’に入射する。
【0079】
第2光変調素子22の第2演算領域A2’は、信号光L2を変調及び反射することによって、第4光演算を行う。ここで、第4光演算を行うとは、第2演算領域A2’を構成する各セルC’にて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第4光演算の結果を表す信号光L2’を生成することを指す。ここで、第4光演算の内容は、第2演算領域A2’を構成する各セルC’の変調量に応じて決まる。第2演算領域A2’にて生成された信号光L2’は、第1光変調素子21の第3演算領域A3に入射する。
【0080】
第1光変調素子21の第3演算領域A3は、信号光L2’を変調及び反射することによって、第5光演算を行う。ここで、第5光演算を行うとは、第3演算領域A3を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第5光演算の結果を表す信号光L3を生成することを指す。ここで、第5光演算の内容は、第3演算領域A3を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第3演算領域A3にて生成された信号光L3は、第2光変調素子22の第3演算領域A3’に入射する。
【0081】
第2光変調素子22の第3演算領域A3’は、信号光L3を変調及び反射することによって、第6光演算を行う。ここで、第6光演算を行うとは、第3演算領域A3’を構成する各セルC’にて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第6光演算の結果を表す信号光L3’を生成することを指す。ここで、第6光演算の内容は、第3演算領域A3’を構成する各セルC’の変調量に応じて決まる。第3演算領域A3’にて生成された信号光L3’は、第1光変調素子21の第4演算領域A4に入射する。
【0082】
第1光変調素子21の第4演算領域A4は、信号光L3’を変調及び反射することによって、第7光演算を行う。ここで、第7光演算を行うとは、第4演算領域A4を構成する各セルCにて変調及び反射された光を相互に干渉させることによって、第7光演算の結果を表す信号光L4を生成することを指す。ここで、第7光演算の内容は、第4演算領域A4を構成する各セルCの変調量に応じて決まる。第4演算領域A4にて生成された信号光L4は、例えば、後述する受光部24に入射する。
【0083】
従来の光演算装置は、各々が単一の演算領域を有する複数の光変調素子(透過型)を備えている。したがって、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整に、各光変調素子の物理的な位置調整を要する。このため、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが相対的に困難であり、その結果、所期の複数段光演算を実現することが困難になる。
【0084】
これに対して、本実施形態の光演算装置2は、複数の演算領域A1,A2,…,ANを有する第1光変調素子21(反射型)と、複数の演算領域A1’,A2’,…,AN-1を有する第2光変調素子22(反射型)と、を備えている。したがって、第1光変調素子21と第2光変調素子22との物理的な位置調整を行うだけで、所期の複数段光演算を実現するために必要な演算領域間のアライメント調整を行い得る。このため、演算領域間のアライメント調整を精度良く行うことが相対的に容易であり、その結果、所期の複数段光演算を実現することが相対的に容易になる。
【0085】
なお、入射光L0は、入力信号により空間強度変調された信号光であってもよいし、入力信号により空間強度変調されていない搬送光であってもよい。前者の場合、信号光LNを復調して得られる出力信号の空間強度分布は、入力信号に対して第1光演算、第2光演算、…、第2N-1光演算を順に適用した結果を表す。後者の場合、第1演算領域A1において、入力信号により空間強度変調された信号光L1を生成する。この場合、信号光LNを復調して得られる出力信号の空間強度分布は、入力信号に対して第2光演算、第3光演算、…、第2N-1光演算を順に適用した結果を表す。
【0086】
また、光演算装置2は、図14に点線で示すように、発光部23を更に備えていてもよい。発光部23は、上述した入射光L0を生成する(例えば、入力信号を表す電気信号を入射光L0に変換する)ための構成である。発光部23としては、例えば、マトリックス状に配置された複数の発光セルを含む2次元ディスプレイを用いることができる。
【0087】
また、光演算装置2は、図14に点線で示すように、受光部24を更に備えていてもよい。受光部24は、信号光LNを検出する(例えば、信号光LNを出力信号を表す電気信号に変換する)ための構成である。受光部24としては、例えば、マトリックス状に配置された受光セルを含む2次元イメージセンサを用いることができる。
【0088】
また、光演算装置2は、図1に点線で示すように、制御部25を更に備えていてもよい。制御部25は、信号光LNに応じて、それぞれ光変調素子21及び光変調素子22に含まれるセルC及びセルC’の変調量を制御するための構成である。制御部25は、例えば、受光部24にて得られた電気信号に基づいて動作するIC(Integrated Circuit)によって構成することができる。制御の内容は特に限定されないが、例えば、所期の出力信号を表す信号光LNが得られるように、演算領域間のアライメントを調整する制御などが挙げられる。光演算装置2を学習済モデルとして利用する場合、この制御は、その学習済モデルを構築するための学習にも利用することもできる。
【0089】
また、第1の実施形態の第1~第10の変形例と同様の変形を光演算装置2に対して適用することが可能である。これらの変形を光演算装置2に適用するに際しては、第1の実施形態における光変調素子11を本実施形態における第1光変調素子21に読み替えると共に、第1の実施形態におけるミラー12を本実施形態における第2光変調素子22に読み替えればよい。
【0090】
(光演算装置の第1の変形例)
光演算装置2の第1の変形例(以下、光演算装置2Aと記載する)について、図15を参照して説明する。図15は、光演算装置2Aの断面図である。
【0091】
光演算装置2Aにおける光演算装置2からの変更点は、少なくとも1つの演算領域An’(nは1以上N-1以下の自然数の何れか)が、光変調素子21の表面の法線に対して入射角θnで入射した信号光Lnを、当該法線に対して入射角θnとは異なる反射角θn’で反射するように構成されている点である。
【0092】
図15に示した例においては、第1演算領域A1’が、入射角θ1で入射した信号光L1を、入射角θ1よりも大きい反射角θ1’で反射するように構成されている。また、第2演算領域A2’が、入射角θ2で入射した信号光L2を、入射角θ2よりも小さい反射角θ2’で反射するように構成されている。
【0093】
第n演算領域An’が、入射角θnで入射した信号光Lnを入射角θnよりも大きい反射角θn’で反射する場合、第n演算領域An’から第n+1演算領域An+1までの光学的距離を、相対的に大きくすることができる。逆に、第n演算領域An’が、入射角θnで入射し信号光Lnを入射角θnよりも小さい反射角θn’で反射する場合、第n演算領域An’から第n+1演算領域An+1までの光学的距離を、相対的に小さくすることができる。すなわち、第n演算領域An’における反射角θn’を適宜設定することによって、第n演算領域An’から第n+1演算領域An+1までの光学的距離を自由に調整することができる。
【0094】
(光演算装置の第2の変形例)
光演算装置2の第2の変形例(以下、光演算装置2Bと記載する)について、図16を参照して説明する。図16は、光演算装置2Bの断面図である。
【0095】
光演算装置2Bにおける光演算装置2からの第1の変更点は、三角柱状のプリズム26を備えている点である。光演算装置2Bにおける光演算装置2からの第2の変更点は、(1)第1光変調素子21がプリズム26の第1側面26a(請求の範囲における「第1面」の一例)に対向するように配置され、(2)第2光変調素子22がプリズム26の第2側面26b(請求の範囲における「第2面」の一例)に対向するように配置されている点である。
【0096】
プリズム26の第3側面26cは、(1)第1光変調素子21の第k演算領域Akにて変調及び反射された信号光Lkの一部を反射し、第2光変調素子22の第k演算領域Ak’に導き、(2)第2光変調素子22の第k演算領域Ak’にて変調及び反射された信号光Lk’の一部を反射し、第1光変調素子21の第k+1演算領域Ak+1に導く。なお、プリズム26の第3側面26cは、第1光変調素子21の第N演算領域ANにて変調及び反射された第N信号光LNの一部を反射する。プリズム26の第3側面26cにて反射された第N信号光LNは、光吸収体27に吸収されるようになっている。
【0097】
光演算装置2Bにおける光演算装置2からの第3の変更点は、受光部24が受光部24aに置き換えられている点である。受光部24aは、(1)第1光変調素子21の第k演算領域Akにて変調及び反射され、プリズム26の第3側面26cを透過した信号光Lkを検出し、(2)第2光変調素子22の第k演算領域Ak’にて変調及び反射され、プリズム26の第3側面26cを透過した信号光Lk’を検出する。
【0098】
これにより、光演算装置2Bによれば、第1光変調素子21の第k演算領域Akにて変調及び反射された信号光Lk、及び、第2光変調素子22の第k演算領域Akにて変調及び反射された信号光Lk’を、中間結果としてモニタすることができる。また、第1光変調素子21の第N演算領域ANにて変調及び反射された信号光LNを、最終結果としてモニタすることができる。
【0099】
なお、本変形例においては、プリズム26として、直角二等辺三角形の底面を有するプリズムを用いている。このようなプリズム26において、上述した第1側面26a及び第2側面26bは、互いに直交する2つの側面であり、上述した第3側面26cは、これら2つの側面と鋭角的に交わる1つの側面である。
【0100】
(光演算装置の第3の変形例)
光演算装置2の第3の変形例(以下、光演算装置2Cと記載する)について、図17を参照して説明する。図17は、光演算装置2Cの断面図である。
【0101】
光演算装置2Cにおける光演算装置2Bからの第1の変更点は、第3光変調素子28が追加されている点である。第3光変調素子28は、変調量を独立に設定可能な複数のセルC”を含んでいる。本実施形態においては、マトリックス状に配置された複数のセルC”を含む基板を、第3光変調素子28として用いている。セルC”は、位相変調機能又は強度変調機能を有する反射型の変調器である。セルC”は、サイズがマイクロメートルオーダー以下、すなわち、10μm未満のマイクロセルである。各セルCのサイズの下限は、特に限定されないが、例えば、1nmである。セルC”の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0102】
第3光変調素子28には、N-1個の演算領域A1”,A2”,…,AN-1”が設けられている。各演算領域Ak”(kは1以上N-1以下の自然数の各々)は、第3光変調素子28の主面上の領域であり、マトリックス状に配置された複数のセルC”により構成される。
【0103】
光演算装置2Cにおける光演算装置2Bからの第2の変更点は、三角柱状のプリズム26が四角柱状のプリズムに29に置き換えられている点である。光演算装置2Cにおける光演算装置2Bからの第3の変更点は、(1)第1光変調素子21がプリズム29の第1側面29a(請求の範囲における「第1面」の一例)に対向するように配置され、(2)第2光変調素子22(請求の範囲における「一方の他の光変調素子」の一例)がプリズム29の第2側面29b(請求の範囲における「第2面」の一例)に対向するように配置され、(3)第3光変調素子28(請求の範囲における「他方の他の光変調素子」の一例)がプリズム29の第3側面29c(請求の範囲における「第3面」の一例)に対向するように配置されている点である。
【0104】
プリズム29の第4側面29dは、(1)第1光変調素子21の第k演算領域Aにて変調及び反射された信号光Lkの一部を反射し、第2光変調素子22の第、演算領域A’に導き、(2)第2光変調素子22の第k演算領域A’にて変調及び反射された信号光Lk’の一部を反射し、第3光変調素子28の第k演算領域A”に導き、(3)第3光変調素子28の第k演算領域A”にて変調及び反射された信号光Lk”の一部を反射し、第1光変調素子21の第k+1演算領域Ak+1に導く。なお、プリズム29の第4側面29dは、第1光変調素子21の第N演算領域ANにて変調及び反射された第N信号光LNの一部を反射する。プリズム29の第4側面29dにて反射された第N信号光LNは、光吸収体27に吸収されるようになっている。
【0105】
光演算装置2Cにおける光演算装置2Bからの第4の変更点は、受光部24aがプリズム29の第4側面29d(請求の範囲における「第4面」の一例)に対向するように配置されている点である。受光部24aは、(1)第1光変調素子21の第k演算領域Aにて変調及び反射され、プリズム29の第4側面29dを透過した信号光Lkを検出し、(2)第2光変調素子の第k演算領域A’にて変調及び反射され、プリズム29の第4側面29dを透過した信号光Lk’を検出し、(3)第3光変調素子28の第k演算領域A”にて変調及び反射され、プリズム29の第4側面29dを透過した信号光Lk”を検出する。
【0106】
これにより、光演算装置2Cによれば、第1光変調素子21の第k演算領域Akにて変調及び反射された信号光Lk、第2光変調素子22の第k演算領域Akにて変調及び反射された信号光Lk’、及び、第3光変調素子28の第k演算領域Ak”にて変調及び反射された信号光Lk”を、中間結果としてモニタすることができる。また、第1光変調素子21の第N演算領域ANにて変調及び反射された信号光LNを、最終結果としてモニタすることができる。
【0107】
なお、本変形例においては、プリズム29として、等脚台形の底面を有するプリズムを用いている。このようなプリズム29において、上述した第2側面29b及び第4側面29dは、互いに平行な2つの側面である。また、上述した第1側面29a及び第3側面29cは、第2側面29bと鈍角的に交わり、第4側面29dと鋭角的に交わる2つの側面である。
【0108】
また、第1光変調素子21の各演算領域Akにおいては、信号光の入射角と反射角とが異なっている。これは、第1の実施形態の第4の変形例と同様、信号光の入射角と反射角とが異なるように演算領域Akが設計されているためである。第2光変調素子22の各演算領域Ak’及び第3光変調素子28の各演算領域Ak”についても、同様のことが言える。
【0109】
〔セルの第1の具体例及び第2の具体例〕
セルC,C’,C”の第1の具体例であるセルC1について、図18及び図19を参照して説明する。図18は、セルC1の斜視図である。図19の(a)は、セルC1の断面図である。図19の(b)は、偏光板P11の平面図であって、偏光板P11の透過軸A11の向きを示す平面図である。また、セルCの第2の具体例であるセルC2について、図20を参照して説明する。図20の(a)は、セルC2の断面図である。図20の(b)は、偏光板P21,P22の平面図であって、偏光板P21,P22の透過軸A21,A22の向きを示す平面図である。
【0110】
なお、詳しくは後述するように、セルC1及びセルC2の各々は、それぞれ、面内磁化型の磁化固定層C15及び磁化固定層C25を採用している。ただし、磁化固定層C15と磁化固定層C25とでは、同じ面内磁化型であっても磁化の方向が面内において直交している。この磁化固定層の構成以外については、セルC1とセルC2とは同様に構成されている。すなわち、セルC1のブロックC13、スペーサ層C14、磁化固定層C15、電極C16、及び、電極C17の各々と、セルC2のブロックC23、スペーサ層C24、磁化固定層C25、電極C26、及び、電極C27の各々とは、それぞれ、対応している。したがって、本具体例では、セルC1を用いてセルCの具体例について説明し、セルC2については、磁化固定層C25における磁化の方向と、それに起因するブロックC23の磁化の勧誘方法について説明する。
【0111】
なお、本具体例においては、セルC1に入射させる光L11(図19参照)及びセルC2に入射させる光L12の各々として、波長が400~800nmである可視光を採用している。ただし、光L11,L12の波長は、可視光に限定されるものではなく、紫外域及び近赤外域などからも適宜選択することができる。
【0112】
(セルの構成)
セルC1は、図18に示すように、基板C12と、ブロックC13と、スペーサ層C14と、磁化固定層C15と、電極C16と、電極C17と、を備えている。
【0113】
なお、図18及び図19において、ブロックC13の光学有効面C133の法線方向のうち、光学有効面C133からブロックC13の外部へ向かう方向をx軸正方向としている。また、ブロックC13の面C131及び面C132の法線方向であって、面C131から面132に向かう方向をz軸正方向としている。また、x軸正方向とz軸正方向とともに右手系の直交座標系を構成する方向をy軸正方向としている。
【0114】
図19の(a)に示すように、セルC1において、光L11は、光学有効面C133に対して垂直なx軸方向から入射角の分だけz軸正方向に傾いた方向から、光学有効面C133に入射する。なお、光L11からみてブロックC13の前段には偏光板P11が設けられている。光学有効面C133に入射した光は、ブロックC13の内部を基板C12に向かう方向(およそx軸負方向)に伝搬し、ブロックC13と基板C12との界面において反射され、ブロックC13の内部を光学有効面C133に向う方向(およそx軸正方向)に向かって伝搬し、光学有効面C133から光L12として出射される。光L12は、光学有効面C133に対して垂直なx軸方向から、入射角に対応した出射角の分だけz軸負方向に傾いた方向に向かって、光学有効面C133から出射される。なお、図19の(a)においては、ブロックC13の内部における光路の図示を省略している。第1の具体例において、入射角及び出射角は、10°である。ただし、入射角及び出射角は、10°に限定されず、適宜定めることができる。
【0115】
(基板)
基板C12は、ブロックC13と接する主面(x軸正方向側の主面)が光を正反射するように構成された板状部材である。基板C12の材料は、特に限定されないが、少なくとも主面は、光を反射する材料により構成されている。主面は、光を正反射するために、平坦に構成されていることが好ましい。第1の具体例では、基板C12として、主面にアルミニウムの薄膜が形成された石英ガラスを採用しているが、反射部材はアルミニウムに限定されず、アルミニウム以外の金属膜であってもよいし、誘電体多層膜であってもよい。また、基板C12は、これに限定されず、主面が鏡面になるように仕上げられた金属製又は半導体製の板状部材であってもよい。基板C12を構成する金属の例としては、アルミニウム及び銅が挙げられ、半導体の例としてはシリコンが挙げられる。
【0116】
基板C12のx軸正方向側の主面には、ブロックC13の反射面C134が固定されている。本実施形態では、基板C12とブロックC13とを固定する固定部材として、樹脂を用いている。ただし、この固定部材は、これに限定されない。
【0117】
(ブロック)
ブロックC13は、光L11に対して透光性を有する材料により構成されている。また、ブロックC13は、磁性原子を含んでいる。ブロックC13は、その磁化の状態が固定されていない。このためブロックC13は、スピンの注入によって容易に磁化率を変化させられる材料により構成されていればよい。ブロックC13を構成する材料としては、常磁性体や強磁性体などの種々の材料を用いることができる。より高い磁化率を達成するためには、室温(例えば25℃)において強磁性を示すように構成することが好ましく、スピン分極率が比較的高い強磁性体が好適に用いられる。スピン分極率は例えば50%以上であることが好ましい。本実施形態においては、ブロックC13を構成する材料としてCoFeBを採用している。しかし、これに限らず、CoFe、NiFe、Fe、Ni、Co等も好適に用いることが出来る。また、単一組成から成るブロックである必要はなく、上述の微粒子を添加した絶縁体(例えばアルミナやガラス)も採用することができる。
【0118】
なお、後述するように、磁化固定層C15も強磁性(より詳しくは硬磁性)を示す材料により構成されている。ここで、ブロックC13の保磁力は、磁化固定層C15の保磁力よりも小さい。これにより、磁化固定層C15における磁化M15の方向を固定したまま、ブロックC13の磁化M13の方向を変化させることができる。磁化M13は、磁化M15と平行又は略平行な方向のうち、磁化M15と同じ向きと逆の向きをとり得る。
【0119】
第1の具体例においてブロックC13の材料として採用しているCoFeBは、室温における保磁力及び残留磁化が、十分に小さい強磁性体(すなわち軟磁性体)の一例である。ブロックC13の材料は、軟磁性体に限定されない。ただし、軟磁性体を用いてブロックC13を構成することによって、偏極した電子の注入をやめた場合にブロックC13に残留する残留磁化が室温における飽和磁化に対して十分に小さくなる。そのため、揮発性を有するブロックC13を用いる場合、ブロックC13の材料として、室温における残留磁化が、室温における飽和磁化に対して十分に小さい強磁性体を用いることが好ましい。ここで、室温における残留磁化が、室温における飽和磁化に対して十分に小さいとは、例えば、室温における飽和磁化に対して、室温における残留磁化が0%以上10%未満であることを意味する。
【0120】
この構成によれば、スピン偏極した電子をブロックC13の内部に注入した場合、ブロックC13に含まれる磁性原子間に磁気的な相互作用が生じ、磁化M13が生じる。また、スピン偏極した電子のブロックC13への注入を停止した場合、ブロックC13に含まれる磁性原子間に働いていた相互作用が消失し、磁化M13も消失する。したがって、この構成によれば、スピン偏極した電子の注入を用いて、揮発的に磁化M13を発生させたり消失させたりすることができる。その結果、セルC1は、ブロックC13の内部を伝搬している光のうち、偏光面がzx平面と平行な成分における位相の遅れ度合いを制御することができる。
【0121】
なお、室温における残留磁化が、室温における飽和磁化に対して比較的大きい強磁性体(すなわち硬磁性体)をブロックC13に用いてもよい。ここで、室温における残留磁化が、室温における飽和磁化に対して比較的大きいとは、例えば、室温における飽和磁化に対して、室温における残留磁化が90%以上100%以下であることを意味する。
【0122】
この構成によれば、スピン偏極した電子の注入により生じた磁化M13は、スピン偏極した電子の注入を停止したあとに、消失せずに残る。したがって、この構成を採用した場合、スピン偏極した電子の注入を停止したあとにおいても、不揮発的に偏光面がzx平面と平行な成分における位相を遅らせることができる。
【0123】
なお、第1の具体例において、ブロックC13を構成する材料における室温における飽和磁化に対する室温における残留磁化の割合は、0%以上10%未満又は90%以上100%以下に限定されず、10%以上90%未満であってもよい。
【0124】
また、ブロックC13が常磁性を示す場合、磁化M13の向きは、さまざまな方向をとり得る。ただし、スピン偏極した電子がブロックC13に注入された場合、マクロにみた場合の磁化M13は、磁化M15と平行又は略平行な方向であって、磁化M15と同じ向き又は逆の向きをとる。
【0125】
ブロックC13の形状は、直方体である。したがって、ブロックC13の表面は、6つの面により構成されている。ただし、ブロックC13の形状は、直方体に限定されず、直方体状であってもよい。また、後述するように、光学有効面C133及び反射面C134の形状は、長方形あるいは長方形状に限定されない。
【0126】
ブロックC13において、xy平面と平行な2つの平面であって、互いに対向する面を面C131,C132とする(図18参照)。面C131,C132は、それぞれ、第1の面及び第2の面の一例である。また、yz平面と平行な2つの平面であって、互いに対向する面を光学有効面C133及び反射面C134とする。
【0127】
ブロックC13は、光学有効面C133及び反射面C134を一対の底面とした場合、柱状のマイクロセルともいえる。ここで、マイクロセルとは、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、光学有効面C133及び反射面C134の面積の平方根のことを指す。なお、光学有効面C133及び反射面C134の形状は、長方形あるいは長方形状であることが好ましい。なお、この形状は、少なくとも平行な一対の辺を含んでいることが好ましく、台形であってもよいし、平行四辺形であってもよい。
【0128】
以下において、ブロックC13を構成する各辺のうち、x軸方向に沿った辺の長さ(ブロックC13の厚み)を長さL1とし、y軸方向に沿った辺の長さ(光学有効面C133及び反射面C134の一辺の長さ)を長さL2とし、z軸方向に沿った辺の長さ(光学有効面C133及び反射面C134の他の一辺の長さ)を長さL3とする(図18参照)。
【0129】
第1の具体例において、長さL1は、およそ1μmであり、長さL2及びL3は、およそ800nmである。ただし、長さL1,L2,L3は、これに限定されない。長さL2及びL3は、セルサイズが10μm未満となる範囲内において適宜定めることができる。また、長さL1は、適宜定めることができる。また、ブロックC13においては、その材料を適宜調整することによって、屈折率が所望の値になるように定められていてもよい。
【0130】
第1の具体例において、光学有効面C133及び反射面C134は、何れも、平坦な面(すなわち平面)である。ただし、光学有効面C133及び反射面C134は、平面に限定されず、凹凸が設けられていてもよい。この凸凹の構造は、周期的な構造であってもよいし、ランダムな構造であってもよい。この凸凹の構造を適宜設計することによって、光学有効面C133及び反射面C134において生じ得る反射損失を低減することができる。
【0131】
(スペーサ層)
スペーサ層C14は、絶縁体により構成された層状部材である。スペーサ層C14は、ブロックC13と、後述する磁化固定層C15との間に介在し、ブロックC13と磁化固定層C15とを絶縁する。スペーサ層C14は、ブロックC13及び磁化固定層C15とともにトンネル接合を形成する。したがって、スペーサ層C14は、電流がトンネル可能な範囲内において、その厚みを適宜定めることができる。スペーサ層C14の典型的な厚みは、2nm以上3nm以下である。ただし、スペーサ層C14の厚みは、これに限定されない。スペーサ層C14は、良好なトンネル特性を示すために、ピンホールを含まず、且つ、厚みが均一な膜により構成されていることが好ましい。トンネル電流の担い手としてスピン偏極した電子を用いることにより、ブロックC13の磁化をより低い電力でより高速にスイッチングすることができる。このように、セルC1は、トンネル接合を用いたスピン注入型の位相変調器である。
【0132】
本実施形態では、スペーサ層C14を構成する絶縁体として、酸化アルミニウム(Al)を採用している。ただし、この絶縁体は、酸化アルミニウムに限定されない。この絶縁体としては、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)のスペーサ層を構成する絶縁体を用いることができる。なお、セルC1においては、スペーサ層C14を省略することもできる。
【0133】
(磁化固定層)
磁化固定層C15は、導電性を有する強磁性体により構成された層状部材である。本実施形態において、磁化固定層C15は、面C131に対してスペーサ層C14を介して間接に設けられている。ただし、磁化固定層C15は、面131に対して直接に設けられていてもよい。
【0134】
磁化固定層C15を構成する強磁性体は、室温において強磁性を示す。磁化固定層C15の保磁力は、ブロックC13の保磁力よりも大きい。第1の具体例においては、磁化固定層C15を構成する強磁性体として、ニッケルと鉄との合金であるパーマロイを採用している。ニッケルと鉄との組成比は、限定されないが、例えば、Ni81Fe19が挙げられる。また、この強磁性体は、パーマロイに限定されない。この強磁性体としては、例えば、酸化マグネシウムなど、MRAMの磁化固定層を構成する強磁性体を用いることができる。
【0135】
また、磁化固定層C15厚みも限定されず、適宜定めることができる。
【0136】
磁化固定層C15は、磁化M15の方向に応じて、面直磁化型と、面内磁化型とに大別される。
【0137】
面内磁化型の磁化固定層C15においては、磁化M15の方向は、図19に示すように、磁化固定層C15の主面の面内方向のうち、光L11の進行方向(x軸方向)に対して略直交する。セルC1においては、面内磁化型であって、磁化M15の方向がy軸負方向である磁化固定層C15を採用している。ブロックC13の磁化M13の方向は、磁化M15の方向に対して平行になるため、磁化M13の方向もy軸方向に対して平行になる。
【0138】
また、セルC1においては、入射光である光L11の光路上に偏光板P11を設けている。偏光板P11の透過軸A11は、図19の(b)に示すように、yz平面内においてz軸方向に対して平行に配向している。したがって、偏光板P11は、光L11の成分のうち偏光方向がz軸と平行な直線偏光のみを透過させ、光学有効面C133に入射させる。
【0139】
この構成によれば、磁化M13の方向(z軸方向)は、光L11の偏光方向(z軸方向)と直交又は略直交する(図19の(a)参照)。したがって、磁化M13との相互作用により光L11には横カー効果が生じるため、セルC1は、ブロックC13の内部をx軸方向と平行に伝搬する光L11よりも位相を遅らせた光L12を出射することができる。すなわち、セルC1は、光の位相を遅らせることができる。なお、ブロックC13が光L11の位相を遅らせる度合いは、ブロックC13の内部に形成される磁場に依存する。したがって、この度合いは、磁化M15の大きさと、ブロックC13へのスピン注入量に依存する。このように、セルC1は、入射光の位相を変調することができる。
【0140】
同様に、セルC2においても面内磁化型の磁化固定層C25を採用している。ただし、磁化固定層C25においては、磁化M25の方向は、図20の(a)に示すように、磁化固定層C25の主面の面内方向のうち、光L21の進行方向(x軸方向)と略平行になる。セルC2において、磁化固定層C25は、磁化M25の方向がx軸方向と平行になるように構成されている。ブロックC23の磁化M23の方向は、磁化M25の方向に対して平行になるため、磁化M23の方向もx軸方向に対して平行になる。
【0141】
この構成によれば、磁化M23の方向(x軸方向)は、光L21の進行方向(x軸方向)と平行又は略平行になる(図20の(a)参照)。したがって、磁化M23との相互作用により光L11には極カー効果が生じるため、セルC2は、ブロックC13の内部をx軸方向と平行に伝搬する光L11の偏光軸を回転させることができる。図20の(a)において、光学有効面C233から出射された光L22の偏光軸を示す矢印の長さが光L21の偏光軸を示す矢印の長さよりも短いのは、極カー効果により偏光軸が光軸回りに回転しており、zx平面に投影した場合に短くみえることを表す。したがって、セルC2は、偏光板P22を透過したあとの光L22の強度を減衰させることができる。極カー効果に起因する偏光軸の回転量は、ブロックC23の内部に形成される磁場に依存する。したがって、セルC2により光の減衰量は、磁化M25の大きさと、ブロックC23へのスピン注入量に依存する。このように、セルC2は、入射光の強度を変調することができる。すなわち、セルC2は、スピン注入型の強度変調器である。
【0142】
(一対の電極)
一対の電極である電極C16,C17は、何れも、導体により構成された層状部材である。本実施形態においては、電極C16,C17を構成する導体として銅を採用している。ただし、この導体は、銅に限定されない。この導体は、高い導電率を有することが好ましい。この導体の例としては、銅以外に、銀及び金が挙げられる。
【0143】
電極C16は、面C131に対してスペーサ層C14及び磁化固定層C15を介して設けられている。したがって、面C131には、スペーサ層C14、磁化固定層C15、及び電極C16がこの順番で積層されている。また、電極C17は、面C132に対して直接設けられている。このように、電極C16,C17は、互いに対向するように設けられており、且つ、電極C16、磁化固定層C15、スペーサ層C14、及び、電極C17の順番で配置されている。電極C16,C17は、ブロックC13、スペーサ層C14、及び磁化固定層C15を挟み込んでいるともいえる。電極C16,C17は、それぞれ、第1の電極及び第2の電極の一例である。
【0144】
電極C16,C17には、それぞれ、電源の正極及び負極の何れかが接続されており、電極間に電圧を印加可能である。電極C16,C17を用いてブロックC13にスピン偏極した電子を注入することによってブロックC13は、磁化する。ブロックC13は、光学有効面C133から反射面C134を経て再び光学有効面C133に向かって伝搬する光の光路として機能する。したがって、電極C16,C17は、ブロックC13の内部を伝搬する光の光路上の少なくとも一部に磁場が生じるように、ブロックC13に対してスピン偏極した電子を注入することができる。
【0145】
〔セルの第3の具体例及び第4の具体例〕
セルCの第3の具体例であるセルC3について、図21及び図22を参照して説明する。図21は、セルC3の斜視図である。図22の(a)は、偏光板P31の平面図であって、偏光板P31の透過軸A31の向きを示す平面図である。図21の(b)は、セルC3の断面図である。また、セルCの第4の具体例であるセルC4について、図23を参照して説明する。図23の(a)は、偏光板P41,P42の平面図であって、偏光板P41,P42の透過軸A41,A42の向きを示す平面図である。図23の(b)は、セルC4の断面図である。
【0146】
セルC3は、面内磁化型の磁化固定層C35を採用しており、セルC4は、面直磁化型の磁化固定層C45を採用している。この磁化固定層の構成以外については、セルC3とセルC4とは同様に構成されている。すなわち、セルC4のブロックC33、スペーサ層C34、磁化固定層C35、電極C36、及び、電極C37の各々と、セルC4のブロックC43、スペーサ層C44、磁化固定層C45、電極C46、及び、電極C47の各々とは、それぞれ、対応している。したがって、本具体例では、セルC3を用いてセルCの具体例について説明し、面直磁化型の磁化固定層C45を採用している点についてのみセルC4を用いて説明する。
【0147】
なお、図21図22、及び図23に図示している直交座標系は、図18及び図19に図示している直交座標系と同様に定められている。
【0148】
(セルの構成)
セルC3は、図21に示すように、基板C32と、ブロックC33と、スペーサ層C34と、磁化固定層C35と、電極C36と、電極C37と、を備えている。基板C32、ブロックC33、スペーサ層C34、磁化固定層C35、電極C36、及び、電極C37の各々は、それぞれ、セルC1の基板C12、ブロックC13、スペーサ層C14、磁化固定層C15、電極C16、及び、電極C17に対応している。ただし、セルC3においては、光L31が磁化固定層C35の主面と平行な光学有効面C371に入射する。したがって、セルC3は、面内磁化型の磁化固定層C35であって、磁化M35の方向が磁化固定層C35の主面の面内方向のうち、光L31の進行方向(z軸負方向)に対して略直交し、且つ、光L31の偏光方向(x軸方向)に対しても略直交する磁化固定層C35を備えている。このように、磁化固定層C35は、光L31が入射する方向を除けばセルC1の磁化固定層C15と同様に構成されている。光が入射する方向、換言すれば、光学有効面の法線方向がどの方向を向いているかについて、以下に説明する。
【0149】
セルC1及びセルC2においては、セルC1を例にすれば、基板C12の主面に対して反射面C134が固定されている(図18参照)。電極C16、磁化固定層C15、スペーサ層C14、ブロックC13、及び、電極C17がこの順番で積層されている積層方向は、基板C12の主面の面内方向に沿っている。そのうえで、反射面C134に対向する光学有効面C133を介して光が入射され、且つ、出射される。図18に示すように、光学有効面C133は、yz平面と平行になるように配置されている。
【0150】
一方、セルC3及びセルC4においては、セルC3を例にすれば、基板C32の主面に対して電極C36が固定されている(図21参照)。電極C36、磁化固定層C35、スペーサ層C34、ブロックC33、及び、電極C37がこの順番で基板C32の主面上に積層されている。すなわち、その積層方向は、基板C32の主面の法線方向に沿っている。そのうえで、セルC3及びセルC4においては、電極C37のz軸正方向側の主面である光学有効面C371を介して光が入射され、且つ、出射される。図21に示すように、光学有効面C371は、xy平面と平行になるように配置されている。
【0151】
したがって、セルC3及びセルC4においては、光を透過させるために、電極C37,C47を構成する材料として導電性と透光性とを併せ持つ材料を採用している。導電性と透光性とを併せ持つ材料により構成された膜は、透明導電膜と呼ばれる。本具体例では、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide, ITO)製の透明導電膜を電極C37,C47として採用している。なお、電極C37,C47を構成する材料は、導電性と透光性とを併せ持っていればよく、ITOに限定されない。
【0152】
以上のように、セルC3及びセルC4は、セルC1及びセルC2と比較して、電極C37,C47として透明導電膜を採用しており、光学有効面C371,C471を介して光を入射及び出射する構成が異なる。また、セルC4は、セルC2の磁化固定層C25とは異なり、面直磁化型の磁化固定層C45を用いている。これらの構成を除けば、セルC3及びセルC4は、セルC1及びセルC2と同様である。
【0153】
なお、磁化固定層の磁化方向に着目した場合、セルC3の磁化固定層C35は、面内磁化型であり、且つ、光L31の偏光方向と磁化M35の方向とが略直交しているので、セルC3は、セルC1に対応している。したがって、磁化M33との相互作用により光L31には横カー効果が生じる。また、セルC4の磁化固定層C45は、面直磁化型なので、磁化固定層C15,C25の何れとも異なる。面直磁化型の磁化固定層C45においては、磁化M45の方向は、図23に示すように、磁化固定層C45の主面の法線方向(z軸方向)に対して平行になる。すなわち、磁化M45の方向(z軸方向)は、光L41の進行方向に対して略平行になるため、磁化M23との相互作用により光L41には極カー効果が生じる。
【0154】
一方、セルC3及びセルC4の機能に着目した場合、セルC3は、横カー効果に起因して光の位相を変調することができる。したがって、セルC3は、セルC1に対応している。また、セルC4は、極カー効果に起因して偏光軸を回転させることができ、結果として光の強度を変調することができる。したがって、セルC4は、セルC2に対応している。
【0155】
以下においては、セルC3及びセルC4の各々を用いて、位相変調する場合及び強度変調する場合の各々について簡単に説明する。
【0156】
(位相変調)
図22の(b)に示すように、セルC3において、光L31は、光学有効面C371に対して垂直なz軸方向から入射角の分だけx軸負方向に傾いた方向から、光学有効面C371に入射する。なお、光L31からみてセルC3の前段には偏光板P31が設けられている。光学有効面C371に入射した光は、ブロックC33の内部をスペーサ層C34に向かう方向(およそz軸負方向)に向かって伝搬し、ブロックC33とスペーサ層C34との界面において反射され、ブロックC33の内部を光学有効面C371に向かう方向(およそz軸正方向)に向かって伝搬し、光学有効面C371から光L32として出射される。光L32は、光学有効面C371に対して垂直なz軸方向から、入射角に対応した出射角の分だけx軸負方向に傾いた方向に向かって、光学有効面C371から出射される。なお、図22の(b)においては、ブロックC33の内部における光路の図示を省略している。第3の具体例において、入射角及び出射角は、10°である。ただし、入射角及び出射角は、10°に限定されず、適宜定めることができる。
【0157】
セルC3を用いて光L31の位相を変調する場合、セルC1を用いて光L11の位相を変調する場合と同様に、入射光である光L31の光路上に偏光板P31を設ける。偏光板P31の透過軸A31は、図22の(a)に示すように、xy平面内においてx軸方向に対して平行に配向している。したがって、偏光板P31は、光L31の成分のうち偏光方向がx軸と平行な直線偏光のみを透過させ、光学有効面C371に入射させる。
【0158】
このように構成されたセルC3においては、セルC1と同様に、磁化M33の方向(y軸方向)と、光L31の偏光方向(x軸方向)とが直交又は略直交する(図22の(b)参照)。そのため、セルC3においては、磁化M33との相互作用により光L31には横カー効果が生じるため、セルC3は、光L31の位相を変調することができる。すなわち、セルC3は、スピン注入型の移相変調器である。
【0159】
(強度変調)
セルC4においては、入射光である光L41の光路上に偏光板P41を設けるとともに、出射光である光L42の光路上に偏光板P42を設けている。偏光板P41の透過軸A41、及び、偏光板P42の透過軸A42は、図20の(a)に示すように、xy平面内においてx軸方向に対して平行に配向している。したがって、偏光板P41は、光L41の成分のうち偏光方向がx軸と平行な直線偏光のみを透過させ、光学有効面C471に入射させる。同様に、偏光板P41は、光学有効面C471から出射した光L42の成分のうち、偏光方向がx軸と平行な直線偏光のみを透過させる。
【0160】
このように構成されたセルC4においては、セルC2と同様に、磁化M43の方向(z軸方向)と、光L41の偏光方向(x軸方向)とが略直交する(図23の(b)参照)。換言すれば、磁化M45の方向(z軸方向)は、光L41の進行方向に対して略平行になるため、磁化M43との相互作用により光L41には極カー効果が生じ、入射光の強度を変調することができる。すなわち、セルC4は、スピン注入型の強度変調器である。
【0161】
〔セルの第5の具体例及び第6の具体例〕
セルC,C’,C”の第5の具体例であるセルC5について、図24を参照して説明する。図24の(a)及び(b)は、セルC5の断面図である。図24の(c)及び(d)は、セルC5の平面図である。図24の(e)及び(f)は、偏光板P51の平面図であって、偏光板P51の透過軸A51の向きを示す平面図である。また、セルCの第6の具体例であるセルC6について、図25を参照して説明する。図25の(a)及び(b)は、セルC6の断面図である。図25の(c)及び(d)は、セルC6の平面図である。図25の(e)及び(f)は、偏光板P61,P62の平面図であって、偏光板P61,P62の透過軸A61,A62の向きを示す平面図である。なお、図25の(e)及び(f)には、光学有効面C571から出射され、且つ、偏光板P62を透過する前の光L62の偏光の様子を模式的に示している。
【0162】
(セルの構成)
セルC5は、図24に図示を省略しているシリコン製の基板と、液晶層C53と、電極C56と、電極C57と、を備えているLCOS(Liquid Crystal On Silicon)である。基板の一方の主面の上には、電極C56、液晶層C53、及び、電極C57がこの順番で積層されている。図24においては、基板上に積層された電極C56、液晶層C53、及び、電極C57のみを図示している。
【0163】
電極C56は、セルC1の電極C16と同様に、導体により構成された層状部材である。電極C56は、LCOSの下部電極として機能する。
【0164】
電極C57は、セルC3の電極C37と同様に、透明導電膜により構成されている。セルC5においては、電極C57のz軸正方向側の主面である光学有効面C571を介して光が入射され、且つ、出射される。
【0165】
液晶層C53は、図24の(a)~(d)に示すように、複数の液晶分子C53Lを含んでいる。液晶層C53は、電極C56と電極C57とに挟み込まれているため、電極C56及び電極C57を用いて印加する電界を制御することができる。セルC5においては、液晶層C53に印加する電界を制御することによって、液晶分子C53Lの配向方向を制御することができる。
【0166】
なお、図24に示すセルC5と、図25に示すセルC6とは、その用途及び使用方法が異なるだけで同一の構造を有する。すなわち、セルC6の液晶層C63、電極C66、及び、電極C57の各々は、それぞれ、セルC5の液晶層C53、電極C56、及び、電極C57と同一の構造を有する。
【0167】
(位相変調)
図24の(a)及び(c)には、液晶分子C53Lがx軸方向と平行に配向した第1の状態を示す。一方、図24の(b)及び(d)には、液晶分子C53Lがx軸方向から時計回り方向へ45°程度傾いて配向した第2の状態を示す。
【0168】
図24の(a)及び(b)に示すように、セルC5において、光L51は、光学有効面C571に対して垂直なz軸方向から入射角の分だけx軸負方向に傾いた方向から、光学有効面C571に入射する。なお、光L51からみてセルC5の前段には偏光板P51が設けられている。光学有効面571に入射した光は、液晶層C53の内部を電極C56に向かう方向(およそz軸負方向)に向かって伝搬し、液晶層C53と電極C56との界面において反射され、液晶層C53の内部を光学有効面C571に向かう方向(およそz軸正方向)に向かって伝搬し、光学有効面C571から光L52として出射される。光L52は、光学有効面C571に対して垂直なz軸方向から、入射角に対応した出射角の分だけx軸負方向に傾いた方向に向かって、光学有効面C571から出射される。なお、図24の(b)においては、液晶層C53の内部における光路の図示を省略している。第5の具体例において、入射角及び出射角は、10°である。ただし、入射角及び出射角は、10°に限定されず、適宜定めることができる。
【0169】
セルC5を用いて光L51の位相を変調する場合、セルC1を用いて光L11の位相を変調する場合と同様に、入射光である光L51の光路上に偏光板P51を設ける。偏光板P51の透過軸A51は、図24の(e)及び(f)に示すように、xy平面内においてx軸方向に対して平行に配向している。したがって、偏光板P51は、光L51の成分のうち偏光方向がx軸と平行な直線偏光のみを透過させ、光学有効面C571に入射させる。
【0170】
図24の(a)及び(c)に示した第1の状態においては、液晶層C53の内部を伝搬する光の偏光方向と、液晶分子C53Lの配向方向とがおよそ一致しているため、光の位相は、液晶分子C53Lの影響をほとんど受けない。
【0171】
一方、図24の(b)及び(d)に示した第2の状態においては、液晶層C53の内部を伝搬する光の偏光方向に対して液晶分子C53Lの配向方向が傾いているので、光の位相は、液晶分子C53Lの影響を受けることにより遅れる。
【0172】
このように構成されたセルC5においては、液晶層C53の内部を伝搬する光の偏光方向と、液晶分子C53Lの配向方向とがなす角の大きさを制御することによって、光の位相における位相の遅れ具合を制御することができる。すなわち、セルC5は、光L51の位相を変調することができるので、LCOS型の移相変調器である。
【0173】
(強度変調)
セルC6においては、入射光である光L61の光路上に偏光板P61を設けるとともに、出射光である光L62の光路上に偏光板P62を設けている。偏光板P61の透過軸A61は、図25の(e),(f)に示すように、xy平面内においてx軸方向から反時計回り方向に45°回転した方向に配向している。一方、偏光板P62の透過軸A62は、図25の(e),(f)に示すように、xy平面内においてx軸方向から時計回り方向に45°回転した方向に配向している。
【0174】
偏光板P61を透過した光L61が、第1の状態である液晶層C63の内部を伝搬することによって、図25の(e)に示すように、光は、直線偏光から楕円偏光に変化する。ここで、楕円偏光の長軸が偏光板P61の透過軸A61に平行であり、楕円偏光の短軸が偏光板P62の透過軸A62に平行であるとする。この場合、偏光板P62を透過できる光の成分は、透過軸A62に平行な短軸の成分である。そのため、セルC6は、液晶分子C63Lが第1の状態である場合、偏光板P62から出射される光L62の強度を大きく減衰させることができる。
【0175】
一方、偏光板P61を透過した光L61が、第2の状態である液晶層C63の内部を伝搬することによって、図25の(f)に示すように、光は、直線偏光から楕円偏光に変化する。ここで、楕円偏光の長軸が偏光板P61の透過軸A61に平行であり、楕円偏光の短軸が偏光板P62の透過軸A62に平行であるとする。この場合、偏光板P62を透過できる光の成分は、透過軸A62に平行な短軸の成分である。第1の状態である液晶層C63の内部を光が伝搬した場合と比較して、楕円偏光の偏光方向が90°回転しており、楕円偏光の長軸が偏光板P62の透過軸A62に平行であるとする。そのため、セルC6は、液晶分子C63Lが第2の状態である場合、偏光板P62から出射される光L62の強度をほとんど減衰させない。
【0176】
このように構成されたセルC6においては、液晶層C63の内部を伝搬することによって生成される楕円偏光における偏光方向を制御することによって、光L61の強度を変調することができるので、LCOS型の強度変調器である。
【0177】
〔セルの更なるの具体例〕
セルC,C’,C”の更なる具体例としては、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromiror Device, DMD)を用いたDMD型の強度変調器が挙げられる。DMDは、マイクロミラーの傾きを2つの状態に切り替えることができるので、所定の出射方向に着目した場合に、光の強度を変調することができる。
【0178】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る光演算装置は、変調量を独立に設定可能な複数のセルを含む光変調素子と反射体とを備えており、前記光変調素子には、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定されており、演算領域A1は、入射光を変調及び反射することによって光演算を行い、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)は、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、前記反射体にて反射された信号光を変調及び反射することによって光演算を行う。
【0179】
本発明の態様2に係る光演算装置においては、態様1の構成に加えて、少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)にて変調及び反射された信号光に応じて、前記光変調素子に含まれるセルにおける変調量を制御する制御部を更に備えている、という構成が採用されている。
【0180】
本発明の態様3に係る光演算装置においては、態様1又は2の構成に加えて、前記光変調素子と前記反射体との間に配置された媒質であって、空気よりも屈折率の高い又は低い媒質を更に備えている、という構成が採用されている。
【0181】
本発明の態様4に係る光演算装置においては、態様1又は2の構成に加えて、前記光変調素子と前記反射体との間に配置された媒質であって、各演算領域Aiにて変調及び反射された信号光が通過する領域の屈折率が、演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光が通過する領域の屈折率よりも高い又は低い媒質を更に備えている、という構成が採用されている。
【0182】
本発明の態様5に係る光演算装置においては、態様1又は2の構成に加えて、前記反射体は、各演算領域Aiにて変調及び反射された信号光が通過する領域における前記反射体から前記光変調素子までの距離が、演算領域Ai-1にて変調及び反射された信号光が通過する領域における前記反射体から前記光変調素子までの距離よりも大きく又は小さくなるように配置されている、という構成が採用されている。
【0183】
本発明の態様6に係る光演算装置においては、態様1又は2の構成に加えて、少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)は、当該演算領域Anに入射する入射光又は信号光を、前記光変調素子の表面の法線に対する入射角と反射角とが異なるように、又は、前記法線及び入射光軸を含む入射平面と前記法線及び反射光軸を含む反射平面とが異なるように反射する、という構成が採用されている。
【0184】
本発明の態様7に係る光演算装置においては、態様1~6の何れかの構成に加えて、前記入射光は、入力信号により変調された信号光である、という構成が採用されている。
【0185】
本発明の態様8に係る光演算装置においては、態様1~6の何れかの構成に加えて、前記入射光は、入力信号により変調されていない搬送光であり、演算領域A1は、前記搬送光を入力信号により変調することによって、信号光を生成する光演算を行う、という構成が採用されている。
【0186】
本発明の態様9に係る光演算装置においては、態様1~8の何れかの構成に加えて、前記入射光を波長に応じて分波する分波器を更に備えており、各演算領域Aj(jは1以上N以下の自然数の各々)は、異なる波長の信号光を変調及び反射する小領域に分割されている、という構成が採用されている。
【0187】
本発明の態様10に係る光演算装置においては、態様9の構成に加えて、前記分波器は、前記光変調素子上に形成された回折格子である、という構成が採用されている。
【0188】
本発明の態様11に係る光演算装置においては、態様9又は10の構成に加えて、演算領域ANを構成する各小領域にて変調及び反射された異なる波長の信号光を合波する合波器を更に備えている、という構成が採用されている。
【0189】
本発明の態様12に係る光演算装置においては、態様11の構成に加えて、前記合波器は、前記光変調素子上に形成された回折格子である、という構成が採用されている。
【0190】
本発明の態様13に係る光演算装置においては、態様1~12の何れかの構成に加えて、前記光変調素子と前記反射体との距離が可変である、という構成が採用されている。
【0191】
本発明の態様14に係る光演算装置においては、態様1~13の何れかの構成に加えて、少なくとも1つの演算領域An(nは1以上N以下の自然数の何れか)は、入射光又は信号光のうち、特定の偏光方向を有する偏光成分を選択的に透過する偏光フィルタに覆われている、という構成が採用されている。
【0192】
本発明の態様15に係る光演算装置においては、態様1~14の何れかの構成に加えて、少なくとも1組の演算領域Am,Am+1(mは1以上N-1以下の自然数の何れか)について、演算領域Amにて変調及び反射された信号光が演算領域Am+1を構成するセル以外のセルに入射することを妨げる光吸収体を更に備えている、という構成が採用されている。
【0193】
本発明の態様16に係る光演算装置においては、態様1~15の何れかの構成に加えて、前記反射体は、演算領域AN以外の各演算領域Ak(kは1以上N-1以下の自然数の各々)にて変調及び反射された信号光を、変調せずに反射するミラーである、という構成が採用されている。
【0194】
本発明の態様17に係る光演算装置においては、態様16に係る構成に加えて、演算領域ANにて変調及び反射された信号光を検出する受光部を更に備えている、という構成が採用されている。
【0195】
本発明の態様18に係る光演算装置においては、態様17の構成に加えて、前記ミラーは、少なくとも1つの演算領域Am(mは1以上N-1以下の自然数の何れか)にて変調及び反射された信号光の一部を透過するハーフミラーであり、前記受光部は、演算領域Amにて変調及び反射され、前記ハーフミラーを透過した信号光を更に検出するか、又は、当該光演算装置は、演算領域Amにて変調及び反射され、前記ハーフミラーを透過した信号光を検出する他の受光部を更に備えている、という構成が採用されている。
【0196】
本発明の態様19に係る光演算装置においては、態様1~15の何れかの構成に加えて、前記反射体は、変調量を互いに独立に設定可能な複数のセルを含む他の光変調素子であり、前記他の光変調素子には、N-1個の演算領域A1’,A2’,…,AN-1’が設定されており、前記他の光変調素子の各演算領域Ak’(kは1以上N-1以下の自然数の各々)は、前記光変調素子の演算領域Akにて変調及び反射された信号光を変調及び反射することによって、光演算を行う、という構成が採用されている。
【0197】
本発明の態様20に係る光演算装置においては、態様19の構成に加えて、プリズムと受光部とを更に備え、前記光変調素子は、前記プリズムの第1面に対向するように配置されており、前記他の光変調素子は、前記プリズムの第2面に対向するように配置されており、前記プリズムの第3面は、(1)前記光変調素子の各演算領域Akにて変調及び反射された信号光の一部を反射し、前記他の光変調素子の演算領域Ak’に導き、(2)前記他の光変調素子の各演算領域Ak’にて変調及び反射された信号光の一部を反射し、前記光変調素子の演算領域Ak+1に導き、前記受光部は、前記光変調素子の各演算領域Akにて変調及び反射され、前記第3面を透過した信号光、及び、前記他の光変調素子の各演算領域Ak’にて変調及び反射され、前記第3面を透過した信号を検出する、という構成が採用されている。
【0198】
本発明の態様21に係る光演算装置においては、態様1~15の何れかの構成に加えて、前記反射体は、変調量を互いに独立に設定可能な複数のセルを含む2つの他の光変調素子であり、一方の他の光変調素子には、N-1個の演算領域A1’,A2’,…,AN-1’が設定されており、前記一方の他の光変調素子の各演算領域Ak’(kは1以上N-1以下の自然数の各々)は、前記光変調素子の演算領域Akにて変調及び反射された信号光を変調及び反射することによって、光演算を行い、他方の他の光変調素子には、N-1個の演算領域A1”,A2”,…,AN-1”が設定されており、前記他方の他の光変調素子の各演算領域Ak”は、前記一方の他の光変調素子の演算領域Ak’にて変調及び反射された信号光を変調及び反射することによって、光演算を行う、という構成が採用されている。
【0199】
本発明の態様22に係る光演算装置においては、態様21の構成に加えて、プリズムと受光部とを更に備え、前記光変調素子は、前記プリズムの第1面に対向するように配置されており、前記一方の他の光変調素子は、前記プリズムの第2面に対向するように配置されており、前記他方の他の光変調素子は、前記プリズムの第3面に対向するように配置されており、前記プリズムの第4面は、(1)前記光変調素子の各演算領域Akにて変調及び反射された信号光の一部を反射し、前記一方の他の光変調素子の演算領域Ak’に導き、(2)前記一方の他の光変調素子の各演算領域Ak’にて変調及び反射された信号光の一部を反射し、前記他方の他の光変調素子の演算領域Ak”に導き、(3)前記他方の光変調素子の各演算領域Ak”にて変調及び反射された信号光の一部を反射し、前記光変調素子の演算領域Ak+1に導き、前記光検出器は、前記光変調素子の各演算領域Akにて変調及び反射され、前記第4面を透過した信号光、前記一方の他の光変調素子の各演算領域Ak’にて変調及び反射され、前記第4面を透過した信号光、及び、前記他方の他の光変調素子の各演算領域Ak”にて変調及び反射され、前記第4面を透過した信号光を検出する、という構成が採用されている。
【0200】
本発明の態様23に係る光演算装置においては、態様19~22の何れかの構成に加えて、前記他の光変調素子の少なくとも1つの演算領域An’(nは1以上N以下の自然数の何れか)を構成する各セルは、当該演算領域An’に入射する信号光を、前記光変調素子の表面の法線に対する入射角と反射角とが異なるように、又は、前記法線及び入射光軸を含む入射平面と前記法線及び反射光軸を含む反射平面とが異なるように反射する、という構成が採用されている。
【0201】
本発明の態様24に係る光演算装置においては、態様1~23の何れかの構成に加えて、前記複数のセルの各々は、スピン注入型位相変調器、又は、スピン注入型強度変調器である、という構成が採用されている。
【0202】
本発明の態様25に係る光演算装置においては、態様1~23の何れかの構成に加えて、前記複数のセルの各々は、LCOS型位相変調器、又は、LCOS型強度変調器である、という構成が採用されている。
【0203】
本発明の態様26に係る光演算装置においては、態様1~23の何れかの構成に加えて、前記複数のセルの各々は、DMD型強度変調器である、という構成が採用されている。
【0204】
本発明の態様27に係る光演算方法は、変調量を独立に設定可能な複数のセルを含み、N個(Nは2以上の自然数)の演算領域A1,A2,…,ANが設定された光変調素子を用いた光演算方法であって、入射光を、演算領域A1を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、反射体にて反射された信号光を、演算領域A1以外の各演算領域Ai(iは2以上N以下の自然数の各々)を用いて変調及び反射することによって光演算を行う工程と、を含んでいる。
【0205】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態に開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0206】
1 光演算装置
11 光変調素子
12 ミラー
12a ハーフミラー
13 発光部
14 受光部
15 制御部
16 媒質
17 分波器
18 合波器
19 偏光フィルタ
2 光演算装置
21 第1光変調素子
22 第2光変調素子
23 発光部
24 受光部
25 制御部
26 プリズム
27 光吸収体
28 第3光変調素子
29 プリズム
A1,A2,…,AN 演算領域
A1’,A2’,…,AN-1’ 演算領域
A1”,A2”,…,AN-1” 演算領域
L1,L2,…,LN 信号光
L1’,L2’,…,LN’ 信号光
L1”,L2”,…,LN” 信号光
【要約】
光演算装置(1)は、変調量を独立に設定可能な複数のセルを含む光変調素子(11)とミラー(12)とを備えている。光変調素子(11)には、N個の演算領域A1,A2,…,ANが設定されている。演算領域A1は、入射光を変調及び反射することによって光演算を行う。演算領域A1以外の各演算領域Aiは、演算領域Ai-1にて変調及び反射された後、ミラー(12)にて反射された信号光を変調及び反射することによって光演算を行う。
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