(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】尿素仕上げからのアンモニア除去
(51)【国際特許分類】
C07C 273/14 20060101AFI20230511BHJP
C07C 275/00 20060101ALI20230511BHJP
B01D 53/58 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C07C273/14
C07C275/00
B01D53/58 ZAB
(21)【出願番号】P 2022540533
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 NL2020050825
(87)【国際公開番号】W WO2021137700
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-25
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512061836
【氏名又は名称】スタミカーボン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラフル・パティル
(72)【発明者】
【氏名】ブラニスラヴ・マニック
(72)【発明者】
【氏名】ペトルス・アンナ・マリア・ロベルトゥス・シモンズ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509833(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03020702(EP,A1)
【文献】特開昭56-110663(JP,A)
【文献】POTTHOFF M,Innovative ammonia emission reductions,INTERNET CITATION,2008年07月01日,pp. 39-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素製造プラントの仕上げセクションのオフガスからアンモニアを除去するための方法であって、前記仕上げセクションが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換し、それによってアンモニア含有オフガスが生成されるように動作し;
前記尿素溶融物が、第1段蒸発セクションで尿素水溶液から水を蒸発させて濃縮された尿素溶液を形成することと、少なくとも1つの第2段蒸発セクションで前記濃縮された尿素溶液から水を更に蒸発させて前記尿素溶融物を形成することと、によって得られ;
前記方法が、前記オフガスを酸性スクラブ液と接触させ、スクラブされたオフガス、及びアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液を提供することを含み、
前記方法が、利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達し、それによって利用されたスクラブ液を前記濃縮された尿素溶液と一緒に水の蒸発に供することを含む、方法。
【請求項2】
固体尿素生成物の製造方法であって、尿素水溶液を生成することと、第1段蒸発セクションで前記水溶液から水を蒸発させて、濃縮された尿素溶液を形成することと、第2段蒸発セクションで前記濃縮された尿素溶液から水を更に蒸発させて尿素溶融物を得ることと、前記尿素溶融物を仕上げに供して、それを固体尿素生成物に変換し、それによってアンモニア含有オフガスを生成することと、
前記オフガスを酸性スクラブ液と接触させ、スクラブされたオフガス、及びアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液を提供することと、を含み、
前記方法が、利用されたスクラブ液を前記第2段蒸発セクションに送達し、それによって利用されたスクラブ液を前記濃縮された尿素溶液と一緒に水の蒸発に供することを含む、方法。
【請求項3】
前記第2段蒸発セクションから得られた蒸気凝縮物を前記仕上げセクションのスクラブシステムに送達することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
CO
2
及びNH
3
が尿素に変換される尿素合成セクションと、残留CO
2
及びNH
3
が回収され、合成セクションに再循環されるカルバメート回収セクションと、前記合成セクションの下流にある蒸発セクションと、前記蒸発セクションからの蒸気凝縮の下流にある水精製セクションと、を備える尿素製造プラント内で前記尿素水溶液を生成することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記尿素溶融物の固体尿素生成物への前記変換が、前記溶融物を造
粒に供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
すべての濃縮された尿素溶液が、前記第2段蒸発セクションに供給される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
既存の尿素プラントを改造する方法であって、
前記既存のプラントが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する前記尿素溶融物の生成セクションを備え、前記生成セクションが、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、前記蒸発セクションの下流にある水精製セクションと、を備え、前記蒸発セクションが、凝縮蒸気を前記水精製セクションへ送達するための液体導出口を備える、方法であって、
前記方法が、濃縮された尿素溶液用の液体導出口及び第1段凝縮器へのガス導出口を有する第1段蒸発セクションと、前記第1段蒸発セクションの下流にある第2段蒸発セクションと、を提供するように前記蒸発セクションを適合させることであって、前記第2段蒸発セクションが対応する第2段凝縮器へのガス導出口を有する第2段蒸発器を備え、前記第1段凝縮器が凝縮蒸気を前記水精製セクションに送達するための液体導出口を有する、適合させることを含み、
前記方法が、前記第2段蒸発セクションに、前記仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ
液用の導出口への接続部を設けることと、前記対応する第2段凝縮器に、凝縮蒸気を前記仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための接続部を設けることと、を更に含む、方法。
【請求項8】
前記既存のプラントが直列の少なくとも2つの蒸発器を備え、前記蒸発器がそれぞれ対応する凝縮器へのガス導出口を有し、前記凝縮器が凝縮蒸気を前記水精製セクションの液体導入口に送達するための液体導出口を有する、方法であって、
前記方法が、前記蒸発セクションを第1段上流蒸発セクションと第2段下流蒸発セクションとに分割し、前記第1段蒸発セクションにおいて、前記対応する凝縮器の前記液体導出口が、前記水精製セクションの液体導入口への接続部を保持することを含み、
前記方法が、前記第2段蒸発セクションに、前記仕上げセクションのスクラブシステムから利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を設けることと、前記対応する第2段凝縮器の前記液体導出口を、前記水精製セクションへの接続部から、凝縮蒸気を前記仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための接続部へと変更することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記仕上げセクションが造粒機である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
固体尿素生成物を製造するためのプラントであって、
前記プラントが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する前記尿素溶融物の生成セクションを備え、前記生成セクションが、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、前記蒸発セクションの下流にある水精製セクションとを備え、
前記蒸発セクションが、濃縮された尿素溶液用の液体導出口及び第1段凝縮器へのガス導出口を有する第1段蒸発器を備える第1段蒸発セクションと、前記第1段蒸発セクションの下流にあり、第2段蒸発器及び第2段凝縮器を備える第2段蒸発セクションとを備え、
前記第1段凝縮器が、凝縮蒸気を前記水精製セクションに送達するための液体導出口を有し、前記第2段蒸発器が、前記仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を有し、
前記第2段蒸発器が、第2段凝縮器へのガス導出口を有し、前記第2段凝縮器が、凝縮蒸気を前記仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための液体接続部を有する、プラント。
【請求項11】
前記生成セクションが、CO
2
及びNH
3
を尿素に変換するための尿素合成セクションと、残留CO
2
及びNH
3
が回収され再循環するためのカルバメート回収セクションと、を備える、請求項10に記載のプラント。
【請求項12】
前記合成セクションが、反応器、CO
2
ストリッパー、及びカルバメート凝縮器を含む尿素合成ループを備え、前記CO
2
ストリッパーが、前記反応器の液体導出口に接続された導入口を有し、前記凝縮器が、前記ストリッパーのガス導出口に接続された導入口を有し、前記反応器が、前記凝縮器の液体導出口に接続された導入口を有する、請求項11に記載のプラント。
【請求項13】
前記仕上げセクションの前記スクラブシステムが、直列に少なくとも2つのスクラバーを備え、上流スクラバーがダストスクラバーであり、下流スクラバーが酸スクラバーである、請求項11又は12に記載のプラント。
【請求項14】
前記仕上げセクションが、造粒
機を備える、請求項10~13のいずれか一項に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素製造プラントの仕上げセクションのオフガスからのアンモニアの除去の分野におけるものである。特に、本発明は、そのようなアンモニア除去から生じるアンモニウム塩溶液の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素は、アンモニア及び二酸化炭素から製造される。現在の尿素製造には、比較的清浄なプロセス、特に尿素ダスト及びアンモニアの排出が少ないプロセスが必要とされる。しかしながら、尿素の化学合成に加えて、工業規模での尿素の製造では、尿素を好適な固体の粒状形態で提供する必要がある。このため、尿素製造では、一般にプリル化、造粒、又はペレット化のいずれか1つを伴う、尿素溶融物を所望の粒状形態にする仕上げステップが行われる。これらのプロセスの結果として、アンモニアが放出され、したがって尿素仕上げのオフガス流となる。従来、スクラブシステムで洗浄された後、この空気は大気中へ排気される。
【0003】
尿素製造の需要拡大と、アンモニアの排出レベルを低下させるための法的要件及び環境的要件の拡大を考慮すると、特に尿素仕上げにおいて排出されるアンモニアを阻止又は除去することが望まれている。これは、一般に、水でスクラブするだけで行うことはできない。更に、これらの仕上げプロセスの一部、特に造粒及びプリル化では、大量の周囲空気が冷却材として使用される。結果として、そのように通気された空気流中のアンモニアの濃度は低く、アンモニアの除去が更に困難になる。例えば、大型プラント(生産量3500メトリックトン超/日)の場合、典型的な空気流は約750000Nm3/時である。その中のアンモニアの典型的な濃度は、100mg/Nm3である。本分野における最新技術は、酸スクラブによるアンモニアの除去である。一般に、これは、水によるスクラブの下流に追加のスクラブセクションを含む。それにより、硫酸又は硝酸などの酸を使用してアンモニアを洗い流し、アンモニウム塩溶液が形成される。この溶液は、バッテリーリミットからパージされ得るが、好ましくは、尿素プロセス内で再加工することによって処理される。後者の場合、水の除去後、塩は、未使用の尿素溶融物と共に尿素仕上げセクションで再処理される。
【0004】
しかしながら、尿素プロセスにおけるアンモニウム塩の再加工は、簡単ではない。
【0005】
背景技術の参考文献は、M Potthoff,Nitrogen+Syngas,[online],July.August 2008,39-41頁である。
図1では、ダストスクラバー及び酸性スクラバーの複合システムが示されている。アンモニアは、酸性スクラブセクションで吸収され、硫酸アンモニウムに変換される。硫酸アンモニウム溶液は再循環流に添加して、蒸発セクションに戻される。その中で硫酸アンモニウム溶液は、尿素合成セクションから尿素溶融物と混合される。蒸発セクションから得られた凝縮物は、ダストスクラバー及び酸性スクラバーの複合システムに送達される。
【0006】
このプロセスにはいくつかの欠点がある。これらは、国際公開第2010/060535号で扱われており、とりわけ、前述の開示では、システム内の水バランスが重要なパラメータであると忠告されている。乱れると、尿素合成がアンモニウム塩で汚染されることとなる。あるいは、大量の廃水を処理することが必要となる。実際、前述の
図1のプロセスでは、アンモニウム塩で汚染された大量の凝縮物の生成が生じる。これは、典型的には、凝縮蒸気内の塩の同伴によって引き起こされる。国際公開第2010/060535号で認識されているように、アンモニウム塩は、尿素プロセスで回避されるべきであり、既存の尿素施設では容易に処理することができない。例えば、尿素溶融プラントの既存の蒸発セクションでアンモニウム塩溶液を濃縮することは、実行不可能であると考えられている。その結果、尿素プラント内のプロセス流が塩により汚染され、腐食問題が発生する。更に、これらの問題は、プロセス流に限定されず、尿素プラントの蒸気回路内の機器にも影響を与え得る。尿素プラントでは、通常、水精製セクションが存在する。再加工されたアンモニウム塩はまた、そのような水精製から生じる精製されたプロセス凝縮物(スチーム生成ボイラー用の補給水として使用されることが多い)に最終的に送られる。したがって、アンモニウム塩の存在に関連する腐食問題は、これらのボイラーにまで及ぶおそれがある。
【0007】
実際、国際公開第2010/060535号で説明されているように、従来の尿素製造施設には、造粒プラントからのガス状のアンモニア排出を低減するために限られた選択肢しかない。すなわち、希釈されたアンモニウム塩溶液を廃水流に排出すること;希釈されたアンモニウム塩溶液を、他の植物によって、例えば肥料(NPK)中で利用可能な濃度まで濃縮すること;高硫黄含有量を有するUAS(尿素/硫酸アンモニウム)肥料を製造すること;UAN(尿素/硝酸アンモニウム)溶液を製造すること、である。
【0008】
これらの代替手段はすべて、多額の投資及び作業条件の変更を必要とする、又は製品の組成及び特性の変更を伴う。上記のどの選択肢も、輸送及び取り扱いのための追加施設と、高価な量のエネルギーユーティリティを必要とする新たな製品を生み出すこととなる。
【0009】
前述のPotthoff 2008の開示では、仕上げセクションで生成される硫酸アンモニウムを含有する必然的に多量の水をどのように処理するかという解決策は提示されていない。この問題を解決するために、国際公開第2010/060535号は、別個の蒸発セクションを含む尿素プラントの仕上げセクションにおける比較的複雑なスクラブシステムを提案している。本質的に、スクラブシステムはそれ自体が完全閉鎖系であり、したがって尿素合成から完全に分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】M Potthoff,Nitrogen+Syngas,[online],July.August 2008,39-41頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書の欠点は、尿素仕上げセクション又は別個の尿素仕上げプラントが、アンモニウム塩溶液の蒸発(一般に尿素溶液を使用)専用の追加の装置を設ける必要があることである。
【0013】
本発明は、尿素仕上げからアンモニアを除去するための方法であって、現在の標準であるアンモニアを酸で中和することを含む方法に関する。これにより、本発明は、追加の蒸発セクションの設置を回避することができ、また、尿素製造設備におけるプロセス流の汚染も回避することができる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の問題のうちの1つ以上によりよく対処するために、本発明は、一態様では、尿素製造プラントの仕上げセクションのオフガスからアンモニアを除去するための方法であって、該仕上げセクションが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換し、それによってアンモニア含有オフガスが生成されるように動作し;該尿素溶融物が、第1段蒸発セクションで尿素水溶液から水を蒸発させて濃縮された尿素溶液を形成することと、第2段蒸発セクションで濃縮された尿素溶液から水を更に蒸発させて尿素溶融物を形成することと、によって得られ;該方法が、オフガスを酸性スクラブ液と接触させ、スクラブされたオフガス、及びアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液を提供することを含み、該方法が、利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達し、それによって該利用されたスクラブ液を濃縮された尿素溶液と一緒に水の蒸発に供することを含む、方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、固体尿素の製造方法であって、尿素水溶液を生成することと、第1段蒸発セクションで該水溶液から水を蒸発させて、濃縮された尿素溶液を形成することと、第2段蒸発セクションで濃縮された尿素溶液から水を更に蒸発させて尿素溶融物を得ることと、尿素溶融物を仕上げに供して、それを固体尿素生成物に変換し、それによってアンモニア含有オフガスを生成することと;該オフガスを酸性スクラブ液と接触させ、スクラブされたオフガス、及びアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液を提供することと、を含み;該方法が、利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達し、それによって該利用されたスクラブ液を濃縮された尿素溶液と一緒に水の蒸発に供することを含む、方法を提示する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、既存の尿素プラントを改造する方法であって、既存のプラントが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する尿素溶融物の生成セクションを備え、該生成セクションが、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、該蒸発セクションの下流にある水精製セクションと、を備え、該蒸発セクションが、凝縮蒸気を水精製セクションへ送達するための液体導出口を備え、該方法が、濃縮された尿素溶液用の液体導出口及び第1段凝縮器へのガス導出口を有する第1段蒸発セクションと、第1段蒸発セクションの下流にある第2段蒸発セクションと、を提供するように該蒸発セクションを適合させることであって、該第2段蒸発セクションが対応する第2段凝縮器へのガス導出口を有する第2段蒸発器を備え、該第1段凝縮器が凝縮蒸気を水精製セクションに送達するための液体導出口を有する、適合させることを含み、該方法が、該第2段蒸発セクションに、仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ液、特にアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を設けることと、対応する第2段凝縮器に、凝縮蒸気を仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための接続部を設けることと、を更に含む、方法である。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、固体尿素生成物を製造するためのプラントであって、該プラントが、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する尿素溶融物のための生成セクションを備え、該生成セクションが、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、蒸発セクションの下流にある水精製セクションとを備え、該蒸発セクションが、濃縮された尿素溶液用の液体導出口及び第1段凝縮器へのガス導出口を有する第1段蒸発器を備える第1段蒸発セクションと、第1段蒸発セクションの下流にあり、第2段蒸発器及び第2段凝縮器を備える第2段蒸発セクションとを含み、該第1段凝縮器が、凝縮蒸気を水精製セクションに送達するための液体導出口を有し、第2段蒸発器が、仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を有し、該第2段蒸発器が、第2段凝縮器へのガス導出口を有し、該第2段凝縮器が、凝縮蒸気を仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための液体接続部を有する、プラントを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による尿素仕上げからのアンモニウム塩溶液を処理するためのスキームを示す。
【
図2】
図1と同様の処理を、蒸発からの凝縮蒸気を尿素仕上げオフガス処理セクションへ再循環させる実施形態で行った場合のスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、広義には、尿素仕上げのオフガス処理からのアンモニウム塩溶液を、尿素溶融プラントの既存の蒸発セクションに再循環させる一方で、溶融プラント中のプロセス流を塩で汚染するリスクを低減、好ましくは回避することを可能にする。
【0020】
以下、本開示は、最初に、本発明の方法に言及する。これは、一般に、アンモニアを除去するための前述の方法と、固体尿素の製造方法に関する。特に明記しない限り、それによって記載された実施形態は、本明細書に開示されるすべての方法、並びに本発明のプラント及びプラントの改造方法に適用可能である。これらの実施形態がプロセスステップに関して言及される限り、これは、そのようなプロセスステップを実施するのに好適なプラントの対応する特徴に関することが理解されよう。
【0021】
ここで、本明細書において、「流体連結」という場合、これは、液体及び気体を含む流体がプラントの第1の部分からプラントの第2の部分に流れることができる、プラントの第1の部分又はセクションとプラントの第2の部分又はセクションとの間のあらゆる連結を表す。液体の場合、そのような流体連結は、典型的には、配管システム、ホース、又は流体の輸送のための当業者に公知の他の装置によって提供される。気体の場合、そのような流体連結は、典型的には、ガスフローラインによって提供される。このようなガスフローラインは、典型的には、配管システム、ダクト、又は必要に応じて大気圧より高い若しくは低い(真空)圧力下で気体を輸送するための当業者に公知の他の装置を備える。「液体導入口」は、液体が入るのに好適な導入口である。「液体導出口」は、液体が出るのに好適な導出口である。同様に、「ガス導入口」及び「ガス導出口」は、それぞれガスが入ること、出ることを可能にする。「ガス」及び「蒸気」という用語は、互換的に使用され、「蒸気」は、一般に、気体状態で水の存在を示すために使用される。
【0022】
一般に、固体尿素生成物は、汚染物及び/又は尿素以外の固体成分が最大5重量%まで含有されることが認められており、これは、UASなどの複合生成物を意図的に生成しない限り、アンモニウム塩の混入を妨げている。
【0023】
本発明の方法は、尿素製造プラントの尿素生成物流にアンモニウム塩が混入される結果となることが理解されよう。しかしながら、これは、尿素生成物流が濃縮された尿素水溶液、すなわち、尿素合成で生成される尿素水溶液よりも高濃度の尿素を有する水溶液の形態である、蒸発に供される前の段階において行われることが賢明である。結果として、尿素生成物流に混入した塩の量は、そのような生成物流中の尿素に対して比較的低量を形成する。本発明の固体尿素生成物は、例えば、少なくとも46重量%のNを含み、例えば、0.10~5重量%のアンモニウム塩を含む。固体尿素生成物は、例えば、微量栄養素を含むなど、尿素以外の固形成分を最大5.0重量%含み得る。いくつかの実施形態では、固体尿素生成物は、UAS肥料(尿素硫酸アンモニウム(urea ammonium sulphate)肥料)として説明され得る。
【0024】
これは、アンモニウム塩を完全な蒸発セクションの上流に再循環させないが、その下流の蒸発器に再循環させるという賢明な洞察に基づくものである。したがって、上述のように、本発明の方法は、利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達することを含む。利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達することは、この液体が第1段蒸発セクションを通過することなく、第2段蒸発セクションに送達されることを意味することが理解されよう。実際、第2段蒸発セクションは、定義によって、アンモニウム塩溶液が送達される蒸発器と、その下流にある任意の蒸発器によって形成される。利用されたスクラブ液は、尿素及び硫酸アンモニウムを含む。
【0025】
この方法は、利用されたスクラブ液を、例えば、第1段蒸発セクションで形成された90~98重量%の尿素を含む濃縮された尿素溶液に添加することによって、利用されたスクラブ液の少なくとも一部、好ましくはそのすべてを第2段蒸発セクションに送達することを含み、ここで、第1段蒸発セクションは、好ましくは1.0バール未満(絶対バール)の圧力で動作する。この方法は、好ましくは、濃縮された尿素溶液を第1段蒸発セクションから第2段蒸発セクションへフローラインを通して送達することと、利用されたスクラブ液を、例えば第1段蒸発セクションと第2段蒸発セクションとの間のフローラインの内側で、濃縮された尿素溶液に添加することと、を含む。この方法は、好ましくは、例えば高圧ストリッパーからの尿素溶液を蒸発による水分除去によって濃縮し、少なくとも10%のパーセンテージポイントで水分含有量を減少させて濃縮された尿素溶液を得ることと、アンモニウム塩を含有する利用されたスクラブ液の少なくとも一部、好ましくはそのすべてを更なる蒸発ステップの上流で濃縮された尿素溶液に添加して尿素溶液を更に濃縮することを含み、ここで、更なる蒸発ステップは20kPa以下又は10kPa以下などの低圧で実施される。
【0026】
本発明の利益を得るために、アンモニウム塩を含有する利用されたスクラブ液のすべてが、記載されるように再循環される必要はない。利用されたスクラブ液の一部は、別の場所で回収される、例えば、バッテリーリミットに送達されることも考えられる。通常、酸性スクラブからの利用されたスクラブ液の少なくとも25%は、例えば少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、例えば95重量%~100重量%などで、第2段蒸発セクションに送達される。より好ましくは、実質的にすべての利用されたスクラブ液が第2段蒸発セクションに送達される。
【0027】
好ましくは、本方法は、利用されたスクラブ液を、第1段蒸発器から得られた濃縮された尿素溶液に添加することを含む。別の選好では、利用されたスクラブ液は、第1段蒸発器から第2段蒸発器までの濃縮された尿素溶液用のフローラインに添加される。
【0028】
そのような蒸発セクションは、直列に配置された少なくとも2つの蒸発器を備えることが通例であり、これは、本方法で作動するプラントに必然的に当てはまる。2つのそのような蒸発器を有する尿素製造プラントで本発明の方法を実施する際に、第1の上流の蒸発器は、第1段蒸発セクションとして機能する。その場合、第2の下流の蒸発器は、第2段蒸発セクションとして機能する。本発明による第1段及び第2段蒸発セクションは、好ましくは真空蒸発器を含むことに留意されたい。尿素プラントでは、回収セクション、より典型的には低圧回収セクションは、蒸発器、典型的には予備蒸発器を含み得る。予備蒸発器は、例えば80℃~100℃で作動し、及び/又は例えば70~85重量%の尿素、例えば75~85重量%の尿素(ビウレットを含む)を含む濃縮された尿素溶液をもたらす。そのような蒸発器は、蒸発セクションの一部として機能しないことが理解されるであろう。本発明の第1及び第2段蒸発セクションを含む蒸発セクションは、一般に、尿素合成(尿素水溶液の生成)の下流に配置され、尿素溶融物を生成するように機能し、尿素仕上げ(尿素溶融物の固化)の上流に配置される。
【0029】
いずれか又は両方の段階での本発明による蒸発セクションは、任意選択的に、直列に配置された3つ以上の蒸発器を備える。次いで、本発明の方法は、第1の蒸発器の下流にある蒸発器のうちのいずれか1つにアンモニウム塩溶液を送達することによって適用することができる。これにより、1つ以上の蒸発器が、アンモニウム塩溶液が送達される蒸発器の上流にあることとなる。したがって、これらの1つ以上の上流の蒸発器は、第1段蒸発セクションを形成する。第2段蒸発セクションは、定義によって、アンモニウム塩溶液が送達される蒸発器と、その下流にある任意の蒸発器によって形成される。
【0030】
通例では、尿素溶融プラントの蒸発セクションで蒸発した水は凝縮に供される。凝縮蒸気は、一般に水精製セクションに再循環される。上述のように、尿素製造プロセスにアンモニウム塩が存在すると、尿素プラントの蒸気回路に影響を与えるリスクがある。アンモニウム塩溶液を第2段蒸発セクションに送達することによって、第1段蒸発セクションで除去された水は、かかるリスクを伴わずに従来の方法で再循環することができる。
【0031】
本明細書では、液体(硫酸アンモニウム又は硝酸アンモニウムなど)中の(無機)アンモニウム塩の存在は、同伴のために凝縮蒸気中にアンモニウム塩をもたらす可能性があることが留意される。このように、アンモニウム塩は、処理されない場合、排水処理システムに最終的に送られる。本発明は、第2段蒸発セクションで除去された水の量が第1段蒸発セクションにおけるものよりも大幅に低いという賢明な洞察に基づくものである。仕上げセクションからのスクラブ液を第2の蒸発段階に添加することにより、本発明者らは、水バランスが機能し、また、アンモニウム塩による尿素プロセスの汚染を回避することができることを見出した。
【0032】
本質的に、第2段蒸発セクションは、仕上げセクションの一体化部分でありながら、尿素合成プラント(すなわち、尿素溶融プラント)の一部でもある。第2段蒸発セクション及び仕上げセクションは、アンモニウム塩含有流に関して閉ループを形成する。
【0033】
それにより、本発明は、尿素製造、特に肥料の分野において追加の利点を有する。尿素肥料には、追加の栄養素が添加されることが多い。本洞察の結果として、これらの栄養素は、これを仕上げセクションに送達する前に尿素溶融物に添加されることができるようになった。従来の尿素プラントでは、これは実行できなかった。本発明は、水に容易に溶解する任意の栄養素をこれに添加することを可能にする。実際、有利には、尿素合成プロセスに影響を及ぼすことなく、任意の仕上げプロセス向上剤を添加することができる。
【0034】
更なる利点は、この分野で通例である、造粒添加剤としてのホルムアルデヒドの使用に関する。従来の溶融/造粒プラント構成では、尿素溶液を造粒から尿素合成プラント(尿素溶融プラント)に再循環させる。この溶液は、造粒中にホルムアルデヒドを使用する結果として、少量の尿素ホルムアルデヒド(UF)を必然的に含有する。この尿素溶液を蒸発器上で処理した後、少量のUFも尿素溶融プラントの水精製セクションに最終的に送られる。そこで、UFの一部は加水分解器上で分解され、ギ酸が得られる。ギ酸はアンモニアと反応し、ギ酸アンモニウムをもたらす。水精製セクションにギ酸アンモニウムが存在することにより、精製されたプロセス凝縮物において到達され得る最低アンモニウム濃度が制限される。本発明はこの問題も解決し、本発明では、アンモニウム塩を含有するが少量のUFも含有する造粒からの尿素溶液が、第2段蒸発セクションに再循環される。
【0035】
上記を考慮して、第2段蒸発セクション、すなわちアンモニウム塩溶液が送達される蒸発セクションから得られた凝縮蒸気の水精製セクションへの再循環は回避することが好ましい。この目的のために、本発明の方法は、好ましくは、第2段蒸発セクションから得られた蒸気凝縮物を、仕上げセクションのスクラブシステム、好ましくはオフガスが酸性スクラブ液と接触するスクラバーに送達することを含む。
【0036】
上述のように、第2段蒸発セクションは、任意選択的に、直列に2つ以上の蒸発器を含む。本実施形態では、好ましくは、少なくとも第2段蒸発セクションの最後の下流の蒸発器の蒸気凝縮物は、仕上げセクションのスクラブシステムに送達される。好ましくは、第2段蒸発セクションの複数、好ましくはすべての蒸発器からの蒸気凝縮物は、仕上げセクションのスクラブシステムに送達される。これは、アンモニウム塩残留物が尿素製造プラントの水及び蒸気回路に最終的に送られにくいことを保証するという利点を有する。
【0037】
本発明の方法は、該方法が実施される装置の対応する配置を必要とすることが理解されよう。したがって、第2段蒸発セクション、又は少なくとも1つの第2段蒸発器は、仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ液用の導入口、又はそうでなければ、利用されたスクラブ液、特に酸性スクラブからの利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を有する。第2段蒸発セクションの蒸気凝縮物が仕上げセクションのスクラブシステムに送達される実施形態を考慮すると、第2段蒸発セクションは、凝縮蒸気を仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための液体接続部を有する。より具体的には、そのような実施形態では、少なくとも1つの第2段蒸発器は、第2段凝縮器へのガス導出口を有し、該第2段凝縮器は、凝縮蒸気を仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための液体接続部を有する。
【0038】
本発明はまた、前述の固体尿素の製造方法に関する。尿素製造プラントの仕上げセクションのオフガスからアンモニアを除去するための方法について記載された実施形態はすべて、例えばプリル化、造粒、又はペレット化などの固体尿素を製造する方法にも適用可能である。固体尿素は、好ましくは、プリル又は顆粒の形態である。アンモニアを除去するための方法では、仕上げセクションは、例えばペレタイザーであり、好ましくは、プリル塔、又は噴流層造粒機、若しくは好ましくは流動層造粒機などの造粒機である。
【0039】
尿素のプリルでは、尿素溶融物がプリル塔の上部に供給され、液滴として分配される。尿素溶融物の液滴は、上向きに移動する大量の空気に逆らって冷却しながら落下すると固化させる。尿素の小粒は下部から回収される。新鮮な冷却空気がプリル塔の下部に入る。尿素とアンモニアを含むオフガスは、上部近くのプリル塔を離れる。
【0040】
排出量は、例えば、尿素プリル1トン当たり0.5~2.5kgの尿素ダスト(35~125mg/Nm3)及び1トン当たり約0.5~2.7kgのNH3(35~245mg/Nm3)であり得る。尿素プリル塔の指標となる空気の流れの例は、500000Nm3/時である。より大きな尿素プリル塔では、例えば、1時間当たり75~100メートルトンの尿素容量で900000Nm3/時間のオフガスを有し得る。
【0041】
興味深い実施形態では、仕上げセクションはプリル塔を備え、下流の第2段凝縮器は、冷却凝縮器又は冷却凝縮セクションである。
【0042】
冷却凝縮器又は凝縮セクションは、好ましくは、水以外の冷却媒体(冷却流体)を使用する、又は例えば冷却媒体として冷水を使用する。典型的には、冷却凝縮器は、第1の側面と、少なくとも1つの熱交換壁によって、任意選択で熱伝達流体のための更なる区画によって分離された第2の側面を有する熱交換器を備える。一実施形態では、凝縮蒸気は、第1の側面に提供され、冷却された冷却媒体は、第2の側面で受容される。第1の側面及び第2の側面は、上記の壁によって分離されることに加えて、水などの熱伝達流体のための更なる区画によって分離され得る。冷却された冷却媒体は、典型的には、冷却器から、第2の側面で凝縮器の導入口に供給される。冷却器では、冷却媒体は、例えば、少なくとも5℃又は少なくとも10℃、及び/又は25℃未満の温度に冷却される。冷却凝縮器の導入口の冷却された冷却媒体は、典型的には、尿素プラント及び尿素製造プロセスの他の場所で使用される冷却水よりも低い温度を有し、例えば、少なくとも5℃低い、又は少なくとも10℃低い。冷却水は、例えば、第1の蒸発器の上流に配置された第2の蒸発器に接続された第1の凝縮器で使用される。冷却凝縮器の導入口の冷却された冷却媒体は、典型的には、周囲温度よりも低い温度を有し、例えば、少なくとも5℃低い、又は少なくとも10℃低い。
【0043】
本明細書で使用される「冷却媒体」という用語は、一般に、冷却流体を指す。
【0044】
いくつかの実施形態では、冷却媒体の温度は、例えば、凝縮器のプロセス側での水の凍結を回避するために0℃よりも高く、好ましくは冷却媒体の温度は、少なくとも5℃、例えば5~10℃、例えば、約5℃である。
【0045】
冷却器は、例えば、冷却媒体のためのループによって接続された圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を含む蒸気圧縮冷凍システムである。好ましい実施形態では、冷却器内での冷却媒体の冷却は、冷却凝縮器の冷却流体側から蒸気相で受容された冷却媒体を高圧で圧縮させることと、該高圧で熱を引くことにより凝縮させることと、冷却された液体冷却媒体が得られるように、より低圧まで膨張させることと、を含む。
【0046】
有利には、冷却凝縮器は、ブースターエジェクターを使用することなく、スチームを第2の蒸気に加えることなく、下流の第2段蒸発器から第2段凝縮器に蒸気を効率的に輸送するために使用することができる。これにより、第2段蒸発器が10kPa未満などの低圧で動作する場合でも、下流の第2の凝縮器から得られた液体の量は、有利なことに少ないままである。
【0047】
冷却凝縮セクションで使用されることが好ましい水以外の冷却媒体は、例えば、NH3又はハロゲン化炭化水素である。
【0048】
一般に、好ましくは、プリル塔による尿素仕上げの場合、蒸発セクションは2つの段階での蒸発を含み、ここで、第2の蒸発器は深真空(20kPa未満)で動作する。このことは、望ましくは2.5重量%未満の水を含有する尿素溶融物の生成を促進する。本開示によれば、第2の蒸発器は、第2段蒸発セクションを形成し得るか、又はそれに含まれ得る。利用されたスクラブ液の第2段蒸発セクションへの再循環の結果として、前述の第2の蒸発器は、より多くの水を受容することとなる。結果として、比較的多量の極低圧蒸気が生成される。これを凝縮させるために、好ましくは冷却凝縮器を使用する。別の方法としてブースターエジェクターを使用することもできるが、これにより、第2の凝縮器から排出される水の量が更に増加する。この水量(第2段蒸発からの凝縮蒸気)は、特に、そのような水がオフガススクラバーでスクラブ液の水として使用される可能性を考慮して、制限されることが望ましい。
【0049】
流動層造粒機では、粒子の流動層は、流動化プレートを通して流動化ガス、多くの場合は空気を供給することにより、1つ以上の造粒区画内に維持される。このプレートは上記区画の底部に配置され、流動化ガス用の多数の開口部を有する。装置の動作中、造粒液(例えば、90重量%超又は95重量%超の尿素を含む尿素溶融物)が、流動化プレートのノズルを使用して流動層内に供給される。ノズルは更に、二次ガス、多くの場合空気を使用する。このガスは、例えば造粒液を霧化して噴霧するため、又は造粒液のフィルムを介して粒子を輸送するため(このフィルムはフィルム形成ノズルにより形成される)に、ノズルで使用される。各造粒機区画において、ノズルは、典型的には、流動化プレート内に配列で設けられる。動作中、流動化ガスは流動化プレートの開口部を通って上昇し、造粒区画中の粒子を確実に流動化させ、結晶化熱を奪う。
【0050】
本発明の前述の態様は、尿素水溶液の提供に基づいて実施される。好ましくは、本発明の方法は、したがって尿素合成プラントで尿素水溶液を生成することを含む。そのような尿素合成プラントは、尿素そのもの、又は尿素硝酸アンモニウム(urea ammonium nitrate)若しくは尿素硫酸アンモニウムなどの尿素系製品を製造するためのプラントの一部であり得る。
【0051】
尿素は、一般に、アンモニア及び二酸化炭素から生成される。これは、12~40MPaの圧力で、150℃~250℃の温度で過剰のアンモニアを二酸化炭素と一緒に尿素合成セクションに導入することにより調製することができる。典型的な尿素製造プラントは、回収セクションと仕上げセクションを更に含む。回収セクションでは、非変換アンモニア及び二酸化炭素が回収され、合成セクションに再循環される。回収セクションの下流には、一般に、蒸発セクションが続く。そこでは、水の蒸発によって尿素濃度が更に上昇し、一般に尿素溶融物と呼ばれる高濃度の溶液が生じる。一般に、尿素溶融物は、90重量%超の尿素、より典型的には95重量%超の尿素の濃度を有する。蒸発前の尿素プラントによって生成された水溶液中での濃度は、一般に60~90重量%の尿素、例えば65~85重量%の尿素である。
【0052】
仕上げセクションでは、典型的には、尿素溶融物は、一般に、プリル化、造粒、又はペレット化などの技術によって、所望の固体の粒子状形態にされる。仕上げセクションで処理された溶融物は、一般に、5重量%未満の含水量を有する。例えば、造粒機では、典型的には、尿素溶融物が少なくとも97.5重量%の尿素含有量を有することが必要とされる。仕上げがプリル化を伴う場合、通常、尿素溶融物が1.0重量%未満又は0.50重量%未満の含水量を有することが必要とされる。
【0053】
蒸発セクションでは、依然としてかなりの量のCO2及び特にNH3が除去される。スクラバー内での蒸発セクションからの未凝縮蒸気の処理により、アンモニアが除去される。凝縮蒸気は排水処理ユニット(本明細書では水精製セクションとも呼ばれる)に送られるが、これは非常にコストとエネルギーのかかる作業である。このセクションでは、尿素(凝縮蒸気に同伴された)は、最終的にはアンモニア及びCO2に加水分解され(典型的には180~230℃の温度で)、続いてアンモニア及び二酸化炭素が脱離される。
【0054】
したがって、本質的に、尿素プラントは、従来、CO2及びNH3が尿素に変換される尿素合成セクションと、残留CO2及びNH3が回収され、合成セクションに再循環されるカルバメート回収セクションと、蒸発セクションの下流にある水精製セクションと、を含む。一般に、本発明は、このタイプのプラントで実施される。
【0055】
尿素製造プロセス(例えば、合成セクション及び回収セクション設計)は特に制限されず、例えば、高圧ストリッパーを用いたプロセスを使用することができ、高圧ストリッパーは、ストリップガスとして例えばCO2又はNH3を使用するか、又はセルフストリッピングを使用する。高圧ストリッパーを使用しないトータルリサイクル設計又は部分リサイクル設計、更にはワンススルー設計も使用することができる。このような設計は当該技術分野において周知であり、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,chapter Urea(2010)に記載されている。
【0056】
好ましくは、尿素製造プラントは、いわゆるCO2ストリッピングプラントである。そこでは、合成セクションは、反応器と、反応器の下流にあるCO2ストリッパーと、ストリッパーからガスを凝縮するためのカルバメート凝縮器と、を含む尿素合成ループを含み、該反応器は凝縮器の下流にある。
【0057】
本発明では、同伴された尿素及び同伴されたアンモニウム塩を含有しやすい第2段蒸発セクションのプロセス凝縮物は、好ましくは、尿素製造プラントの水精製セクションではなく、仕上げセクションのスクラブシステムに送達される。これは、慣用されているように、最初に水精製セクションで加水分解器を使用して尿素を解離し、得られたアンモニア及び二酸化炭素を溶融プラント(すなわち、尿素溶融物が得られる尿素製造プラント)の合成セクションに再循環させるのではなく、得られた量の尿素(アンモニウム塩含有)を最終生成物流に直接混入させる機会を提供する。
【0058】
第2段蒸発セクションからの蒸気凝縮物を、尿素製造プラントに再循環させるのではなく、仕上げセクションに送達することで、更なる予想外の利益がもたらされる。従来の尿素製造プラント及びプロセスと比較して、効果的に、蒸発からの比較的少量の水が尿素製造プラントの水精製セクションに最終的に送られることとなる。その結果、後者のセクションは実質的に取り外される。したがって、本発明の方法が新しくプラントを建設する際に実施される場合(すなわち、いわゆるグラスルーツ状況)、水精製セクションは、従来よりも小さく設計することができる。これは、空間とコストの両方の観点から明らかな利点を有する。それは、既存の尿素製造プラントを改造する場合(すなわち、いわゆる改修状況)、プラントの他の場所で大容量化及び/又は高効率化しても、水精製セクションの容量を対応して拡大する必要がないという利点を有する。水精製セクションはコストが高く、プラントの大部分を形成するため、一般に拡張に利用可能な空間が限られているため、これは本発明の方法の大きな利点である。更なる利点として、スクラブシステム内で利用される補給水の量が大幅に削減される。補給水は、仕上げセクションからの高温の不飽和排気/排ガスと接触させたときに再循環するスクラブ溶液が蒸発することによる水の損失を補うために使用される。典型的には、精製されたプロセス凝縮物は、補給水として使用される。精製されたプロセス凝縮物は、例えば、ボイラー供給水としても使用することができる。
【0059】
前述の蒸発セクションからの蒸気凝縮のアウトプットの分割は、更なる利点を有する。上記のように、比較的少量の尿素は、水精製セクション(すなわち、廃水処理セクション)で分解(加水分解)される必要がある。これは、本質的に、合成セクションで最初に生成され、次いで水精製セクションで分解され、その後、再循環したアンモニア及び二酸化炭素から効果的に合成セクションで再び作成された尿素の量を指す。したがって、本実施形態では、本開示によるプラントは、本開示より前のプラントよりも効果的に尿素原料を使用する。
【0060】
好ましい実施形態では、プラントは、尿素仕上げセクションからアンモニアを除去する上記の方法を実施する際に操作される。このために、仕上げセクションのスクラブシステムは、典型的には、直列に少なくとも2つのスクラバーを備え、上流スクラバーはダストスクラバーであり、下流スクラバーは酸スクラバーである。本明細書で上流及び下流は、オフガス流の方向を指す。スクラブシステム、好ましくは酸スクラバーは、第2段蒸発セクションに提供される利用されたスクラブ液用の導入口への液体接続部を有することが理解されよう。利用されたスクラブ液は、例えば、ダストスクラバーでオフガスから補足された尿素、又は酸スクラバーからのアンモニウム塩を含有する。アンモニウム塩は、酸スクラバーでの酸とNH3との反応によって形成される。NH3は、酸スクラバーでオフガスからスクラブされる。利用されたスクラブ液は、例えば、少なくとも10重量%又は少なくとも30重量%の尿素、例えば、最大60重量%の尿素を含む。利用されたスクラブ液は、例えば、スクラブシステムからパージされ、例えば、該スクラブ液は、スクラブシステム内で再循環される。
【0061】
ダストスクラブシステムの周知の供給業者としてはEnvirocare(登録商標)、Hamon、Waterleauなどである。これらのスクラバーシステムの仕組みは、当業者に周知である。これらのスクラブシステムでは、循環する比較的低濃度の尿素溶液でオフガス(空気)を洗浄することは、かなり一般的である。これにより、典型的には45重量%の尿素溶液が、尿素プラント中にパージされる前に制御される。スクラブシステムの内部には、尿素溶液の2つ以上の循環が存在することが可能である。得られた尿素溶液は部分的にパージされ、典型的には溶融プラントからの新鮮な尿素溶液と合体される。一般に、これは蒸発セクションの上流で行われ、一般に、そこから生じる凝縮蒸気は、尿素製造プラントの水精製セクションに送達される(吸収器を介して)。
【0062】
本発明によれば、スクラブシステムから生じる尿素溶液は、上で説明したように第2段蒸発セクションに送達されることが理解されよう。この配置の更なる利点は、仕上げセクションにおける追加の専用の蒸発セクションの設置を回避することができることである。
【0063】
所望のアンモニア除去の観点から、仕上げセクションのダストスクラブシステムに、アンモニアを洗い流すための追加のセクションが設けられることが理解されるであろう。アンモニアを効率的に洗浄するために、好ましくは硫酸又は硝酸のような鉱酸が適用される。他の好適な酸としては、例えば、リン酸、クエン酸、酢酸が挙げられる。酸はアンモニアと反応して、水中のアンモニウム塩を形成する。得られたアンモニウム塩溶液は、依然として部分的にパージされ得る。好ましくは、アンモニウム塩溶液のすべては、前述のように第2段蒸発セクションを介して処理される。
【0064】
これらのダスト及びアンモニアスクラブ段階は、直列の2つ以上のスクラバーで行うことができる。好ましくは、両方のスクラブ段階は、単一装置内で行われる。本明細書に関与する2つのスクラブ液の循環は、別々であることができる。単一ユニットで実装される場合、上部(酸)スクラブ液は、下部(ダスト)スクラブセクションをオーバーフローする。
【0065】
本発明は、既存の尿素プラントを改造するのに有利である。一般に、そのような既存のプラントは、尿素溶融物の生成セクションを備える。この生成セクションは、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する。これにより、生成セクションは、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、蒸発セクションの下流にある水精製セクションを備える。既存のプラントの蒸発セクションは、典型的には、直列に少なくとも2つの蒸発器を備え、各々が対応する凝縮器へのガス導出口を有する。凝縮器は、凝縮蒸気を水精製セクションの液体導入口に送達するための液体導出口を有する。
【0066】
本発明の改造方法は、仕上げセクションのスクラブシステムから利用されたスクラブ液のための導出口への接続部を備える少なくとも1つの第2段蒸発器を提供することと、水精製セクションへの接続部から仕上げセクションのスクラブシステムに凝縮蒸気を送達するための接続部へ、対応する第2段凝縮器の液体導出口を変更することと、を含む。この改造により、この仕上げセクションのオフガスからアンモニアを除去する前述の方法と、対応する固体尿素の製造を、改造プラントで実施することが可能になる。
【0067】
前述の方法はまた、新たに建設されたプラントで行うことができる。このプラントは、一般に、改造プラントと同じ特徴を有することとなる。したがって、プラントは、尿素溶融物を固体尿素生成物に変換するための仕上げセクションへの液体尿素接続部を有する尿素溶融物の生成セクションを備える。これにより、生成セクションは、生成された尿素水溶液を尿素溶融物に変換するための蒸発セクションと、蒸発セクションの下流にある水精製セクションを備える。蒸発セクションは、濃縮された尿素溶液用の液体導出口及び第1段凝縮器へのガス導出口を有する第1段蒸発器と、第1の蒸発器の下流にある少なくとも1つの第2段蒸発器とを備え、該第1段凝縮器は、凝縮蒸気を水精製セクションに送達するための液体導出口を有し、少なくとも1つの第2段蒸発器は、仕上げセクションのスクラブシステムからの利用されたスクラブ液用の導入口、又はそうでなければ、該利用されたスクラブ液用の導出口への接続部を有し、該第2段蒸発器は、第2段凝縮器へのガス導出口を有し、該第2段凝縮器は、凝縮蒸気を仕上げセクションのスクラブシステムに送達するための液体接続部を有する。
【0068】
以下、図面を参照して本発明を更に説明する。
【0069】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、尿素仕上げからのアンモニウム塩溶液の処理のためのスキームを示す。
【0070】
例えば、70重量%の尿素濃度の尿素水溶液(U1)は、第1段蒸発セクション(EV1)、例えば単一の蒸発器に送達される。この蒸発器は、例えば、90~98重量%の尿素濃度の濃縮された尿素溶液(U2)を生成する。蒸発セクションは、蒸発の結果として必然的に得られる蒸気(V1)(「水」として図に示される)のための導出口を有する。
【0071】
濃縮された尿素溶液は、第2段蒸発セクション(EV2)、例えば単一の蒸発器に供給される。ここでは、蒸発による水の除去下で(そのために蒸発セクションは、示されるような水(蒸気)出口(V2)を有する)、尿素溶融物(UM)は、少なくとも95重量%、典型的には95重量%超、例えば95重量%~99.7重量%の尿素濃度である。第2段蒸発セクションからの尿素溶融物は、仕上げセクション(F)に送達される。ここでは、固体尿素生成物(US)が形成され、それにより、典型的には空気流による冷却の結果として、アンモニア含有オフガス流(G1)が生成される。この流れは、スクラブセクション(AS)で酸性スクラブされ、それによりアンモニウム塩の形態でアンモニアが除去される。スクラブセクションは、スクラブされたオフガス(G2)、及びアンモニウム塩を含有する利用されたスクラブ液(SL)を生成する。本発明によれば、利用されたスクラブ液は、第2段蒸発セクションの液体導入口に送達される。第2段蒸発セクション、又は図示されるようにその導入口の上流では、利用されたスクラブ液は、第1段蒸発セクションから得られた濃縮された尿素溶液と混合される。
【0072】
図2は、
図1と同様の処理を、蒸発からの凝縮蒸気を尿素仕上げオフガス処理セクションへ追加的に再循環させるスキームを示す。この目的のために、蒸発からの蒸気の処理が示されている。第1段蒸発セクション(EV1)は、蒸発セクションから第1段凝縮セクション(C1)、典型的には単一シェル-チューブ凝縮器へと、蒸気(V1)を送達するように機能するガス導出口を有する。従来行われているように、それにより得られた水(凝縮蒸気又はプロセス凝縮物)(PC1)は、水精製セクション(廃水処理セクション、WWTとしても知られる)に送達される。
【0073】
第2段蒸発セクション(EV2)は、第2段凝縮セクション(C2)、同様に典型的にはシェル-チューブ凝縮器へのガス導出口(V2)を有する。本発明によれば、第2段凝縮セクションから得られた水(凝縮蒸気又はプロセス凝縮物、PC2)は、慣例から逸脱して、水精製セクション(WWT)に送達されない。むしろ、これらの凝縮蒸気は、尿素仕上げセクションのスクラブシステム(AS)の液体導入口に送達される。これらの凝縮蒸気(水)は、当該スクラブセクションで使用されるスクラブ液と混合されることが理解されるであろう。
【0074】
更に、以下の点を注意する。凝縮器では、すべての蒸気が凝縮され得るわけではない。一般的好みとして、本開示全体に適用可能であるが、非凝縮蒸気もまたスクラブシステムに送達される。これは一般に、凝縮器のガス導出口からスクラブシステムのガス導入口までである。
【0075】
要約すると、尿素製造プラントの仕上げセクションのオフガスからアンモニアを除去するための方法が開示される。また、対応する尿素プラント、及び既存の尿素プラントを改造する方法も開示される。スクラブセクションでは、オフガスを酸性スクラブ液と接触させて、スクラブされたオフガス、及びアンモニウム塩を含む利用されたスクラブ液が提供される。この方法は、第1段と第2段に分割された、尿素溶融物を生成する尿素プラントの一部である蒸発セクションを規定する。第1段は、尿素溶融物生成プラントの一部である。第2段は、尿素生成物流以外の液体の再循環に関連し、尿素溶融物生成プラントから分離されている。これは、アンモニウム塩を含有する利用されたスクラブ液を第2段蒸発セクションに送達することと、第2段蒸発セクションからスクラブセクションに凝縮蒸気を送達することによって達成される。
【0076】
本発明は、以下の表1を参照して更に説明される。本明細書では、モデル計算に基づいて、様々なタイプの尿素プラントにおける
図2の実施形態の効果が示されている。
【0077】
【0078】
表1から、水精製セクション(WWT)の負荷量は、本発明の実施後に相当に低減されることが明らかである。明らかに、尿素溶融プラントにおいて吸収器を循環する精製された水が減少している。
【0079】
より少量の水が吸収器を循環するが、この量の水は有利なことに依然として低いNH3排出を保証するのに十分であるため、本発明の実施後、溶融プラントからのアンモニア排出に影響を与えない。
【0080】
反応器の導出口での合成操作パラメータによって示されるように、より少量の水が合成にリサイクルされる。H/C(出発混合物に基づく水対炭素モル比)及びH/U(実際の混合物に基づく水対尿素モル比)の両方が、本発明を実施した後に減少する。その結果、本発明の実施後に、尿素に対する反応器の収率がわずかに増加する。