(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】玩具花火
(51)【国際特許分類】
F42B 4/00 20060101AFI20230512BHJP
A63H 33/36 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F42B4/00
A63H33/36
(21)【出願番号】P 2022510443
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011470
(87)【国際公開番号】W WO2021193460
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020058099
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592072551
【氏名又は名称】井上玩具煙火株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100216736
【氏名又は名称】竹井 啓
(74)【代理人】
【氏名又は名称】長野 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202706
【氏名又は名称】長野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 吉勝
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-21294(JP,A)
【文献】特開2005-273971(JP,A)
【文献】特開平7-63499(JP,A)
【文献】実開平2-122996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 4/00
A63H 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状であり、一方の端部である先端部及び他方の端部である手持部を有する可燃性の軸部と、
前記軸部の前記先端部に位置する可燃性の造形部と、
前記造形部の少なくとも一部を覆って位置する火薬部と、を備え、
前記造形部は、前記軸部の前記手持部及び前記火薬部より燃えにく
く、
前記造形部は表面に凹部を有し、
前記軸部の前記先端部は前記凹部に嵌め合わされており、
前記火薬部は、前記造形部及び前記先端部の少なくとも一部を覆って設けられている、
ことを特徴とする玩具花火。
【請求項2】
前記造形部の含水率は、前記軸部の前記手持部の含水率より高い、
ことを特徴とする請求項1に記載の玩具花火。
【請求項3】
前記造形部と前記火薬部との間に中間部をさらに備え、
前記中間部は前記造形部より燃えにくく、
前記中間部の厚みは前記火薬部の厚みより小さい、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玩具花火。
【請求項4】
前記火薬部及び前記中間部は樹脂系接着剤を含有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の玩具花火。
【請求項5】
前記火薬部のうちの前記先端部側の厚みは、前記手持部側の厚みより大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
4のうちの1つに記載の玩具花火。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具花火に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2001-21294号公報(特許文献1)がある。この公報には、「芯材に可燃物を固着し、該可燃物の表面に難燃物を固着し、該難燃物の表面に火薬を固着したことを特徴とする玩具花火。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
長尺状であり、一方の端部である先端部及び他方の端部である手持部を有する可燃性の軸部と、
前記軸部の前記先端部に位置する可燃性の造形部と、
前記造形部の少なくとも一部を覆って位置する火薬部と、を備え、
前記造形部は、前記軸部の前記手持部及び前記火薬部より燃えにくい、
ことを特徴とする玩具花火。
【0005】
前記造形部の含水率は、前記軸部の前記手持部の含水率より高い、
ことを特徴とする玩具花火。
【0006】
前記造形部と前記火薬部との間に中間部をさらに備え、
前記中間部は前記造形部より燃えにくく、
前記中間部の厚みは前記火薬部の厚みより小さい、
ことを特徴とする玩具花火。
【0007】
前記火薬部及び前記中間部は樹脂系接着剤を含有する
ことを特徴とする玩具花火。
【0008】
前記造形部は表面に凹部を有し、
前記軸部の前記先端部は前記凹部に嵌め合わされており、
前記火薬部は、前記造形部及び前記先端部の少なくとも一部を覆って設けられている、
ことを特徴とする玩具花火。
【0009】
前記火薬部のうちの前記先端部側の厚みは、前記手持部側の厚みより大きい、
ことを特徴とする玩具花火。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態における玩具花火の図である。
【
図3】第2の実施形態における玩具花火の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、第1の実施形態における玩具花火の図である。
図2は、
図1の玩具花火のA-A断面図である。
図1及び
図2で玩具花火の一例を説明する。
玩具花火1は、軸部2、造形部3、中間部4、及び火薬部5を備える。
【0012】
軸部2は、長尺状であり、例えば棒状であってもよい。
軸部2の断面は円状であってもよい。
軸部2は、可燃性であり、例えば木製であってもよく、特に、白樺(シラカバ)又はラミン等であってもよい。
軸部2は、一方の端部である先端部2Aと、他方の端部である手持部2Bと、を有する。
玩具花火1の使用者は手持部2Bを持って当該玩具花火1を使用することができる。
【0013】
造形部3は軸部2の先端部2Aに位置している。
造形部3は所望の形状を有する。
図1における第1の実施形態の造形部3は所望の厚み有する星形である。
造形部3は、可燃性であり、例えば木製であってもよく、特に、クヌギ、ナラ、シイノキ、ヤマザクラ又はマツ等であってもよい。
【0014】
中間部4は軸部2の先端部2A及び造形部3を覆うように位置している。
第1の実施形態において、中間部4は軸部2の先端部2A及び造形部3の全周を覆っている。
他の実施形態においては、中間部4は軸部2の先端部2A及び造形部3の一部のみを覆っていてもよい。
中間部4は軸部2の先端部2A又は造形部3の外表面に直接設けられている。
【0015】
火薬部5は、造形部3を覆うように位置する。
第1の実施形態においては、火薬部5は軸部2の先端部2A及び造形部3の全周を覆っている。
他の実施形態においては、火薬部5は軸部2の先端部2A及び造形部3の一部のみを覆っていてもよい。
火薬部5は、中間部4の外表面に直接設けられている。言い換えれば、中間部4は造形部3と火薬部5との間に位置する。
【0016】
火薬部5は、本実施形態においては、硝酸バリウム、鉄粉、天然樹脂、アルミニウム及び澱粉糊を少なくとも含んでいてもよい。
【0017】
所望の形状を有する造形部3の外表面に中間部4及び火薬部5を設けることで、火薬部5の燃焼時(使用時)及び燃焼前(使用前)の見映えが向上する。
【0018】
ところで、造形部3が燃えてしまうと、当該造形部3の形状が崩れる場合があるため、使用時における玩具花火1の見映えが悪くなるおそれがある。
そこで、本実施形態の玩具花火1における造形部3は、可燃性ではあるが、軸部2の手持部2B及び火薬部5より燃えにくく構成されている。
これにより、比較的容易に造形部3が燃えてしまうことを抑制できるとともに、火薬部5の燃焼後(使用後)には、飽くまで可燃性の造形部3であるため、処理も可能である玩具花火1を提供できる。
【0019】
具体的には、造形部3の含水率が、軸部2の手持部2Bの含水率より高くなっていてもよい。
これにより、造形部3を軸部2の手持部2Bより燃えにくくすることが可能となる。
【0020】
また、造形部3及び軸部2が木製である場合、造形部3の木材の気乾比重は、軸部2の木材の気乾比重より大きくてもよい。
また、造形部3の含脂率が、軸部2の含脂率より低くてもよい。
これによっても、造形部3を軸部2の手持部2Bより燃えにくくすることが可能となる。
【0021】
本実施形態において、中間部4は造形部3より燃えにくく構成されている。例えば、中間部4は珪藻土、活性炭又はゼオライトであってもよい。
これにより、造形部3が燃焼することを抑制できる。しかし、当該中間部4の厚みを大きくしすぎると、使用後の玩具花火1の処理が難しくなる。
したがって、本実施形態において、中間部4の厚みは比較的小さくてもよく、例えば、中間部4の厚みが火薬部5の厚みより小さくてもよい。
なお、本実施形態においては、造形部3を軸部2の手持部2Bより燃えにくく構成しているため、中間部4の厚みを小さくしたとしても、比較的容易に造形部3が燃えてしまうことを抑制できる。
【0022】
中間部4は造形部3より多孔質であってもよい。言い換えれば、中間部4の気孔率は造形部3の気孔率より高くてもよい。これにより、アンカー効果により、火薬部5を中間部4に強固に接着させることができる。
【0023】
造形部3は表面に凹部3Aを有している。
当該凹部3Aには軸部2の先端部2Aが嵌め合わされている。故に、凹部3Aは軸部2の形状に沿った長尺状である。
中間部4及び火薬部5は、造形部3及び造形部3に嵌め合わされた軸部2の先端部2Aを覆って設けられている。
本実施形態において、中間部4及び火薬部5は、造形部3及び造形部3に嵌め合わされた軸部2の先端部2Aの全周を覆って設けられている。
他の実施形態として、造形部3及び造形部3に嵌め合わされた軸部2の先端部2Aの少なくとも一部を覆って設けられていてもよい。
当該構造とすることで、第1の実施形態にかかる玩具花火1を容易に製造することができる。
【0024】
また、予め水を含侵させた造形部3を用いて当該玩具花火1を製造することで、造形部3の含水率を軸部2の手持部2Bの含水率より高くすることができる。含侵された水は、中間部4及び火薬部5に覆われており、蒸発が抑制されるため、造形部3の内部に残留する。
さらに、造形部3の内部に水をより残留させるために、造形部3を覆うように、蒸発抑制部(例えば、水ガラス(ケイ酸ナトリウム水溶液))を造形部3の表面に塗布してもよい。その後、蒸発抑制部を乾燥させた後、多孔質部(例えば、珪藻土)をさらにその表面に設けてもよい。この場合において、乾燥した蒸発抑制部及び多孔質部が中間部4である。
当該蒸発抑制部は多孔質部より緻密質(気孔率が低い)である。言い換えれば、中間部4の気孔率は外側(火薬部5側)が内側(造形部3側)より高くなっている。当該中間部4の構成により、造形部3に含くまれる水の蒸発を抑制するとともに、火薬部5を中間部4により強固に接着させることができる。
【0025】
造形部3はウッドチップで構成されていてもよい。これにより、造形部3の含水率をより高くできる。
【0026】
中間部4及び火薬部5は、樹脂系接着剤(例えば、酢酸ビニル系エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョンまたは塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤)を含有してもよい。
これにより、中間部4を造形部3により強固に接着させることができる。また、火薬部5を中間部4により強固に接着させることができる。
【0027】
なお、「燃えにくい」とは、「着火しにくい」と言い換えてもよい。造形部3が軸部2の手持部2Bより燃えにくいかを次の方法で判定してもよい。まず、全ての工程を経て製造された(完成された)玩具花火1の手持部2Bと、完成された玩具花火1から中間部4及び火薬部5を剥離させた直後の状態の造形部3と、を同時に同様の火力の炎にさらす。その後、手持部2Bが造形部3より早く着火した場合には、造形部3が軸部2の手持部2Bより燃えにくいと判定してもよい。
【0028】
造形部3は軸部2の先端部2Aより燃えにくくてもよい。また、軸部2の先端部2Aは手持部2Bより燃えにくくてもよい。
【0029】
また、造形部3を覆って設けられた火薬部5のうちの先端部2A側の厚みは、手持部2B側の厚みより大きくてもよい。
この構成により、火薬部5のうちの先端部2A側から着火されることが一般的な玩具花火において、火薬部5のうちの先端部2A側を経て手持部2B側まで着火した場合に、先端部2A側の花火が早く消火することを抑制できる。言い換えれば、より長い時間にわたって造形部3を覆う火薬部5の全体を同時に燃焼させることができるため、使用者は造形部3全体を模った花火をより長時間鑑賞することができる。
なお、造形部3を覆って設けられた中間部4のうちの先端部2A側の厚みが、手持部2B側の厚みより大きくてもよい。
【0030】
図3は、第2の実施形態における玩具花火の図である。
図4は、
図3の玩具花火のB-B断面図である。
図3及び
図4で玩具花火の一例を説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の部分及び同一に相当する部分は、同一符号を付して説明する。なお、第2の実施形態のうち第1の実施形態と同様の点は説明を省略する。
【0031】
第2の実施形態における、造形部3は複数個あり、それぞれ独立している。
当該実施形態にける造形部3のそれぞれは球状である。
球状の造形部3は軸部2の先端部2Aが貫通するための貫通口3Bを有している。
造形部3の貫通口3Bに軸部2の先端部2Aが貫通した状態で中間部4及び火薬部5を造形部3及び軸部2の先端部2Aの外表面に設けることで、当該玩具花火1を製造することができる。
【0032】
第2の実施形態においては、軸部2の先端部2Aの最先端が造形部3から突き出ている。玩具花火1の使用者は、当該最先端の軸部2を覆う火薬部5に着火させることで当該玩具花火1を使用することができる。
【0033】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 :玩具花火
2 :軸部
2A :先端部
2B :手持部
3 :造形部
3A :凹部
3B :貫通口
4 :中間部
5 :火薬部