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特許7277685ラミネート積層体用グラビアインキ、それを用いた印刷物、ラミネート積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ラミネート積層体用グラビアインキ、それを用いた印刷物、ラミネート積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20230512BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230512BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230512BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230512BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230512BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C09D11/10
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/26
B32B27/30 101
B32B27/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122612
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019057
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 里穂
(72)【発明者】
【氏名】新保 雄基
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】東 裕子
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-16708(JP,A)
【文献】特開2012-125978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/00-13/00
B32B27/00-27/40
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、キレート架橋剤、イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含有するラミネート積層体用グラビアインキであって、
ポリウレタン樹脂および/または塩化ビニル共重合樹脂が、キレート架橋剤と反応できる活性水素基を有し、キレート架橋剤とイソシアネート系硬化剤との質量比が、1:2~1:25である、ラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂が、アミン価および/または水酸基価を有し、前記アミン価は、1~15mgKOH/g、前記水酸基価は、1~20mg/KOHgである、請求項1記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項3】
塩化ビニル共重合樹脂が、水酸基を有する、請求項1または2に記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項4】
キレート架橋剤が、チタニウムキレートを含む、請求項1~3のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項5】
イソシアネート系硬化剤が、ビウレット系イソシアネート化合物、イソシアヌレート系イソシアネート化合物およびアダクト系イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~4のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項6】
ポリウレタン樹脂および塩化ビニル共重合樹脂の合計100質量%に対して、キレート架橋剤およびイソシアネート系硬化剤の合計質量が、3~40質量%である、請求項1~5のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項7】
顔料が、有機顔料を含む、請求項1~のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキ。
【請求項8】
基材1上に請求項1~のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキにより形成された印刷層を有する印刷物。
【請求項9】
基材1、請求項1~のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキからなる印刷層、接着剤層、および基材2をこの順に有するラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート積層体用グラビアインキ、および当該ラミネート積層体用グラビアインキにより形成された印刷層を有する印刷物、並びに、当該印刷層上に、接着剤層、シーラント基材を有するラミネート積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、包装袋は絵柄等の模様を付すことがあり、また内容物を不可視化するためにインキからなる印刷層が設けられ、当該印刷層は包装袋を構成する積層体の中の中間層として使用される場合が多い。それらインキは、オフセットインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキおよびグラビアインキその他の印刷インキが挙げられる。中でもグラビアインキはその印刷速度や高精細な絵柄を作成可能ということから生産性が良く、グラビア印刷で使用される場合が多い。
【0003】
一方、グラビアインキからなる印刷層は、当該印刷層上に更に接着剤層および熱可塑性基材等が順に貼り合され(ラミネート)積層体となる。当該積層体は最外層の熱可塑性基材どうしを熱融着(ヒートシール)されて包装袋となる。このような包装袋は食品包装分野に多く用いられる。食品包装の包装袋場合、例えば液体子袋などでは内容物を取り出すために包装袋を直接手で引き裂いて開封する場合が多い。その際に鋏などの器具を用いずに包装袋を引裂いて開封できることは利便性の面で大きなメリットとなるため、より市場価値を与える。しかしながら、包装袋の引裂き性が悪い場合、特に包装袋の中身が液体であると、開封時に過剰な力が必要となる、あるいは思わぬ方向に引裂かれてしまい内容物がこぼれてしまうといった問題が生じるため、食品包装分野のラミネート積層体では良好な引裂き性が求められる。
【0004】
従来技術として、例えば、フィルム端面に切り込みを入れる等の工夫をすることで引裂けるきっかけを作る方法があるが、このような方法では引裂き始めの改善にはなるものの、フィルムそのものが引裂きにくいと途中で引っかかる/直線的に引裂けないという事態を生じる。また、例えば、上記したように包装袋の模様によっては、絵柄層有する部分と絵柄層を有さない部分(無地部)ができる場合がある。このように同一の包装袋において絵柄部および無地部が混在する場合、接着剤層の硬さを絵柄層で引裂ける硬さに調整すると、無地部とで引裂き性のバランスが取れず、逆に無地部に接着剤層の硬さを合わせると、絵柄部で引裂き性が劣る不具合が知られている(特許文献1)。
【0005】
引裂き性を改善するために、例えばポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を併用した印刷インキにおいて更にイソシアネート硬化剤を使用したグラビアインキが提案されているが、硬化時にインキ被膜が硬くなりすぎてラミネート強度が経時劣化する場合があることや、残留溶剤が多くなってしまうこと・引裂き性の発現のために多量のイソシアネート化合物が入ることによる印刷適性や物性バランスの崩れが起こることがある(特許文献2)。
【0006】
これらの問題を解決するため、イソシアネート系硬化剤およびアミノ基含有シランカップリング剤を含有する白色ラミネート積層体用グラビアインキが提案されている(特許文献3)。しかし、白色のインキの易引き裂き性はさらなる向上が望まれており、特には、有機顔料を含有する有彩色のグラビアインキをも用いた場合には、ポリウレタン樹脂の構造や、イソシアネート系硬化剤等を含有させる従来の技術では易引裂き性の発現が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-274061号公報
【文献】特開2017-31298号公報
【文献】特開2019-199509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ラミネート強度および引裂き性が良好である、ラミネート積層体用グラビアインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のラミネート積層体用グラビアインキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、キレート架橋剤、イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含有するラミネート積層体用グラビアインキであって、
ポリウレタン樹脂および/または塩化ビニル共重合樹脂が、キレート架橋剤と反応できる活性水素基を有し、キレート架橋剤とイソシアネート系硬化剤との質量比が、1:2~1:25である、ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0011】
また、本発明は、ポリウレタン樹脂が、アミン価および/または水酸基価を有し、前記アミン価は、1~15mgKOH/g、前記水酸基価は、1~20mg/KOHgである、上記ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0012】
また、本発明は、塩化ビニル共重合樹脂が、水酸基を有する、上記ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0013】
また、本発明は、キレート架橋剤が、チタニウムキレートを含む、上記ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0014】
また、本発明は、イソシアネート系硬化剤が、ビウレット系イソシアネート化合物、イソシアヌレート系イソシアネート化合物およびアダクト系イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0015】
また、本発明は、顔料が、有機顔料を含む、上記ラミネート積層体用グラビアインキに関する。
【0016】
また、本発明は、基材1上に上記ラミネート積層体用グラビアインキにより形成された印刷層を有する印刷物に関する。
【0017】
また、本発明は、基材1、請求項1~6のいずれかに記載のラミネート積層体用グラビアインキからなる印刷層、接着剤層、および基材2をこの順に有するラミネート積層体に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ラミネート強度および引裂き性が良好である、ラミネート積層体用グラビアインキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
本発明のラミネート積層体用グラビアインキについて説明する。なお以下でラミネート積層体用グラビアインキは単に「グラビアインキ」、「インキ」と略称する場合があるがラミネート積層体用グラビアインキと同義である。また、ラミネート積層体用グラビアインキにより形成された印刷層は、「印刷層」、「インキ層」あるいは「インキ被膜」と称する場合があるがラミネート積層体用グラビアインキにより形成された印刷層と同義である。
【0021】
本発明は、顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、キレート架橋剤、イソシアネート系硬化剤、および有機溶剤を含有するラミネート積層体用グラビアインキであって、ポリウレタン樹脂および/または塩化ビニル共重合樹脂が、キレートと反応できる活性水素基を有し、キレート架橋剤とイソシアネート系硬化剤を、質量比1:5~1:25で含有する、ラミネート積層体用グラビアインキである。当該活性水素基とは、例えば、水酸基、アミノ基その他の基をいい、これらに限定されない。
【0022】
顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂からなるグラビアインキにキレート架橋剤を使用することで、前記樹脂成分とキレート架橋剤の相互作用が起こり、インキ層が強固になるため、たとえ有機顔料を使用した場合であってもラミネート積層体において良好な引裂き性を発現する。また、イソシアネート系硬化剤を使用することでその効果は促進され、更に易引裂き性が良好となる。
【0023】
<顔料>
本発明において使用できる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わない。有機顔料を含む形態であるとき、本発明の顕著な効果を奏する。顔料が有機顔料を含む場合は、顔料全質量のうち、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
当該有機顔料としては、カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを任意に使用できる。中でも好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。顔料系でいえば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、ジクトピロロピロール系顔料、イソインドリン系顔料などが好適に挙げられる。顔料の含有量は、インキ総質量中、1~45質量%であることが好ましい。また複数種の有機顔料を併用してもよい。
【0024】
有機顔料の色相としては、黒色有機顔料、藍色有機顔料、緑色有機顔料、赤色有機顔料、紫色有機顔料、黄色有機顔料、橙色有機顔料、茶色有機顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種または二種以上が好ましい。また更には、黒色有機顔料、藍色有機顔料、赤色有機顔料、黄色有機顔料、からなる群より選ばれる少なくとも一種または二種以上が好ましい。藍色有機顔料および/または赤色有機顔料を含むものが特に好ましい。これら有機顔料の使用において易引き裂き性などの効果が発揮されるためである。
【0025】
本発明のグラビアインキは、プロセス色(基本色)として、黄、紅、藍、墨、の合計4色、プロセス外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色、更に透明黄、牡丹、朱、茶、をそれぞれ単独もしくは混合して使用してもよい。
【0026】
本発明のグラビアインキにおいて使用する顔料は、酸化チタンその他の無機顔料の適用を除外するものではない。当該酸化チタンとしては、JIS K5101に規定されている測定法による吸油量が14~35ml/100gであることが好ましく、17~32ml/100gであることがより好ましい。また、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.2~0.3μmであることが好ましい。また、酸化チタンの合計含有量は、インキ100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。また複数種の酸化チタンを併用しても良い。
本発明のグラビアインキにおいて、酸化チタンの他に、その他の無機顔料、有機顔料も更に併用することができる。
【0027】
また、上記有機顔料を含む場合、有機顔料とバインダー樹脂の固形分質量比は、5:10~30:10であることが好ましく、5:10~20:10であることがより好ましい。上記無機顔料を含む場合では、無機顔料とバインダー樹脂の固形分質量比は、15:10~50:10であることが好ましく、15:10~40:10であることがより好ましい。ここで、バインダー樹脂とは、インキ中の結着樹脂をいい、ポリウレタン樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含む樹脂である。
【0028】
<ポリウレタン樹脂>
本発明で用いるポリウレタン樹脂は、バインダー樹脂としての作用を目的としたポリウレタン樹脂をいう。当該ポリウレタン樹脂は、キレート架橋剤と反応できる活性水素基を有することが好ましく、多くの実施形態において、水酸基またはアミノ基を有するため、アミン価および/または水酸基価を有する。アミン価は、1~15mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがより好ましい。また、水酸基価は、1~20mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがより好ましい。また、一実施形態においてアミン価を有し、水酸基価は0である場合もまた好ましい。キレート架橋剤および/またはイソシアネート硬化剤と反応して易引き裂き性が向上するためである。
また、当該ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール由来の構造単位を含有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0029】
上記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、上記ポリエステルポリオールを含むポリオールとの反応物であるポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリイソシアネートと当該ポリオールによりウレタンプレポリマーとして、更にポリアミンを用いて鎖延長されたポリウレタン樹脂であることがより好ましい。
なお当該ポリエステルポリオール由来の構造単位は、ポリウレタン樹脂総質量中に20~75質量%含有することが好ましく、40~75質量%含有することがより好ましい。また、ポリオール総質量中に50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれていることがより好ましい。積層体における引裂き性が良好となり、印刷物の残量溶剤を低減できるためである。ポリエステルポリオール由来の構造単位の含有量は、合成時の配合量より算出できる。
【0030】
ポリオールは、上記ポリエステルポリオールを含有することが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を併用することが好適である。
【0031】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールは、下記一般式(1)および/または(2)で表される構造を有する形態が好ましい。下記一般式(1)で表される構造であることがなお好ましい。
一般式(1)
-OCO-R1-COO-
一般式(2)
-COO-R2-COO-
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数2~20の置換もしくは未置換のアルキレン基または炭素数2~20の置換もしくは未置換のアルケニレン基を表す。ただし、前記炭素数2~20は、置換基がアルキル基の場合は、置換基のアルキル基の炭素数は含まない。)
上記ポリエステルポリオールは数平均分子量が500~10,000であることが好ましい。なお、数平均分子量は以下の式(1)で得られ、価数とはポリオール一分子に有する水酸基の平均個数であり、水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数をいう。なおポリエステルポリオール以外のポリオールの数平均分子量も同様である。
式(1)数平均分子量=1000×56.1×水酸基の価数/水酸基価
【0032】
上記一般式(1)において、-OCO-R1-COO-は二塩基酸のジエステル構造単位であり、HOCO-R1-COOHで表される二塩基酸とジオールの脱水縮合で得られる。かかる二塩基酸としてはアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、タプシン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸等が挙げられ、物性のバランスをとれるアジピン酸および/またはセバシン酸が好ましい。またジオールとしてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられ、物性のバランスが取りやすいプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0033】
上記一般式(2)において、-COO-R2-COO-はヒドロキシカルボン酸の縮合物として得られる構造単位であり、ヒドロキシカルボン酸としては15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、リシノレイン酸、水添リシノレイン酸、trans-ヒドロキシ-2-デセン酸等が挙げられ、物性のバランスからリシノレイン酸または水添リシノレイン酸が好ましい。なおポリエステルポリオールとするために、ジオールを開始剤として得られるものが好ましい。
【0034】
一般式(1)および/または(2)において、R1およびR2における置換基としてはアルキル基であることが好ましい。置換基のアルキル基は炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が4~10がより好ましい。
【0035】
ポリイソシアネートは芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートを含むことが好ましい。当該ジイソシアネートは例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート
ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートや
ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていてもよい。これらのポリイソシアネート種は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
ポリアミンは、イソシアネート基との反応でウレア結合を形成し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどが好適に挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることも好ましい。これらの有機ジアミンは単独または2種以上を混合して用いることができるが、イソホロンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミンが好ましい。さらに、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等のアミノ基数が3以上の多官能アミンを、上記有機ジアミンと併用することもできる。
【0037】
<ポリエーテルポリオール>
上記ポリウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を含有することも好ましく、当該ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、およびそれらの共重合物が挙げられる。数平均分子量としては500~10,000であることが好ましい。
【0038】
本発明において使用するポリウレタン樹脂の製造は特段限定されるものではなく、例えば特開2016-150942号公報、特開2016-150944号公報、特開2013-213109または特開2017-31298号公報に記載の製造方法等を適宜使用することができる。
【0039】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂などが好ましい。塩化ビニル共重合樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000のものが好ましく5,000~50,000が更に好ましい。塩化ビニル共重合樹脂が塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂である場合、固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
また、塩化ビニル共重合樹脂は、キレート架橋剤と反応できる活性水素基を有することが好ましく、水酸基を有することが好ましく、水酸基価として10~200mgKOH/gであることが好ましい。キレート架橋剤やポリイソシアネート系硬化剤との反応性および顔料分散性が向上するためであり、当該水酸基は、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基あるいは水酸基を有するアクリルモノマーに由来することが好ましい。塩化ビニル共重合樹脂が水酸基を有する場合、その作用効果は後述のキレート架橋剤と間で顕著である。
【0040】
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル共重合樹脂の質量比(ポリウレタン樹脂:塩化ビニル共重合樹脂)は95:5~30:70であることが好ましく、90:10~40:60であることがより好ましい。有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0041】
<キレート架橋剤>
本発明で用いるキレート架橋剤は、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレートおよびチタニウムキレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。中でもチタニウムキレートを含むことがより好ましい。これらのキレート架橋剤を使用することによって、塩化ビニル共重合樹脂が水酸基を有する場合には印刷層内を架橋でき、基材に対する密着性が高くなるとともに、印刷層がより強固になるため、積層体においてラミネート強度および易引き裂き性が良好となる。また、2液安定性も良好となり、経時劣化を抑制できる。
(チタニウムキレート)
当該チタニウムキレートとしては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテトナート、チタニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシチタン、チタニウムエチルアセトアセテテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、n-ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)などを好適に挙げることができる。チタニウムキレートは、リン酸、リン酸エステル及びアセチルアセトナートから選ばれる少なくとも一種を配位子に含むものが好ましい。作用として同質であるためである。
バインダー樹脂の有する活性水素と反応するため、キレート架橋剤の含有量はグラビアインキ中、0.1~5質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0042】
<イソシアネート系硬化剤>
本発明のグラビアインキにおいて、引き裂き性を向上させるため、イソシアネート系硬化剤を使用する。ポリウレタン樹脂および/または塩化ビニル共重合樹脂の有する水酸基アミノ基その他の活性水素基と架橋して、ラミネート強度、易引き裂き性等が向上するためである。
以下にイソシアネート系硬化剤の実施形態として好ましい態様を示す。当該イソシアネート系硬化剤としては、アダクト系イソシアネート(アダクト体)、ビウレット系イソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート系イソシアネート(イソシアヌレート体)等を含むポリイソシアネートが好適である。
アダクト系ポリイソシアネートは例えば、トリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるアダクト体、エチレングリコール1モルとジイソシアネート2モルとの反応から得られるアダクト体、ジトリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート4モルのアダクト体などが挙げられ、
ビウレット系ポリイソシアネートは例えば、水1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体、水0.5モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体、水1モルとジイソシアネート5モルとの反応から得られるビウレット体、などが挙げられ、
イソシアヌレート系ポリイソシアネートは例えば、ジイソシアネートの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体、およびその誘導体等が挙げられる。
ポリイソシアネート系硬化剤の添加量はインキ総質量に対して、0.5~5質量%が好ましい。
また、イソシアネート硬化剤の分子量は100~2,000であることが好ましい。当該ジイソシアネートとしては上記したジイソシアネートを任意に選択して使用してもよく、中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)が好適に挙げられる。
アダクト型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは併用してもよく、更にその他のポリイソシアネートと併用してもよい。
【0043】
なお、上記キレート架橋剤と上記イソシアネート系硬化剤の使用比率は、質量比1:2~1:25であることが好ましく、1:2~1:15であることがより好ましい。また、インキ中のポリウレタン樹脂および塩化ビニル共重合樹脂の合計質量100に対して、上記キレート架橋剤と上記イソシアネート系硬化剤の合計質量は、3~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがなお好ましく、5~20質量%であることが更に好ましい。易引き裂き性を良好とするためである。
【0044】
<有機溶剤>
本発明のグラビアインキは、液状媒体として有機溶剤を含む。使用される有機溶剤としては、二種以上の有機溶剤からなる混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤が更に好ましい。また、印刷適性が向上するため、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の好ましい質量比(エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤)は40/60~90/10である。
【0045】
<その他の添加剤>
その他、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などの添加剤を含むこともできる。
【0046】
<その他樹脂>
本発明におけるグラビアインキには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他樹脂を併用することができる。用いられる樹脂の例としては、上記記載以外の塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
<グラビアインキの製造>
本発明におけるグラビアインキは、顔料をポリウレタン樹脂および塩化ビニル共重合樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にその他樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としてはサンドミルの使用が好ましい。また、本発明のグラビアインキは粘度が40~400mPa・sであることが好ましい。
【0048】
なお当該グラビアインキは、インキの製造時に上記キレート架橋剤を含めて製造しておき、印刷時においてイソシアネート系硬化剤を含ませて印刷する使用形態が好ましい。なおこの使用形態において、イソシアネート系硬化剤はイソシアネート基を有するため、徐々に反応するのでそのキレート架橋剤を含めたグラビアインキとイソシアネート系硬化剤とのインキ安定性(2液安定性ともいう)が必要であるが、本願発明におけるグラビアインキの安定性は良好である。
【0049】
<グラビアインキの印刷、グラビアインキからなる印刷層、印刷物>
本発明における印刷物は、グラビアインキを基材1上にグラビア印刷機で印刷して印刷層を形成し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで得られる。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0050】
<基材1>
本発明のグラビアインキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。引裂き性を発現しやすくするためである。
【0051】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0052】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0053】
<積層体>
本発明における積層体とは、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有する易引裂き性を有する積層体をいう。少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する積層体の使用形態であることが好ましい。
本発明の積層体はグラビアインキを印刷した印刷物の印刷層上に、接着剤層を設け、基材2と貼り合わせる(ラミネートする)ことで得られる。ラミネート加工の代表例として、ドライラミネート法等が挙げられる。ドライラミネート法とは、接着剤を印刷物の印刷層上に塗布・乾燥し、シーラントと圧着して積層する方法である。
【0054】
<接着剤層>
接着剤層は接着剤を塗布、乾燥して得られる。当該接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【実施例
【0055】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
【0056】
(水酸基価)
JISK0070に従って求めた。
(酸価)
JISK0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0057】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0058】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂PU1]
数平均分子量2000の、メチルペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物であるポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)90.0部、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(以下「PPG」)10.0部、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BD」)1.0部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)30.9部を110℃窒素雰囲気下で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーを得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)14.5部、ジブチルアミン(以下「DBA」)1.0部に、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、固形分30%、アミン価4.0mgKOH/g、水酸基価0mgKOH/g、重量平均分子量48000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0059】
(合成例2~4)[ポリウレタン樹脂PU2~PU4]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂溶液PU2~PU4を得た。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・MPD/AA:メチルペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・AEA:2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール
【0060】
(比較合成例1)[ポリウレタン樹脂PU5]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂溶液PU5を得た。
【0061】
(実施例1)[グラビアインキS1の作成]
ポリウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を20質量部、塩化ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11(固形分30%酢酸エチル溶液))20質量部、藍顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製 製品名:LIONOL BLUE FG-7330)を10質量部、キレート架橋剤(チタニウムアセチルアセトナート、固形分40質量%酢酸エチル溶液)0.5質量部、n-プロピルアセテート(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30の混合溶剤48.5質量部を混合し、アイガーミルで20分間分散したものに、アダクト系イソシアネート化合物(トリメチロールプロパンにヘキサメチレンジイソシアネートが付加した化合物 イソシアネート基3官能 固形分65質量%)1部を混合し、グラビアインキS1を得た。なお、当該アダクト系イソシアネート化合物5質量部は、印刷する直前に添加して使用した。
【0062】
(実施例2~15)[グラビアインキS2~S15の作成]
表2に示す原料を用いた以外は実施例1と同様の方法により、グラビアインキS2~S15を得た。なお、表2中の略称は以下を表す。
・ソルバインCL:塩化ビニル:酢酸ビニル=86:14(日信化学社製)の固形分30%酢酸エチル溶液
・アルミニウムアセチルアセトナート
(固形分40質量%酢酸エチル溶液)
・ビュレット系イソシアネート化合物
(水1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体 イソシアネート基2官能 固形分65質量% 旭化成社製 デュラネート24A-100)
・イソシアヌレート系イソシアネート化合物
(ジイソシアネート3モルが環化したイソシアヌレート体 イソシアネート基3官能 固形分65質量%旭化成社製 デュラネートTPA-100)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0063】
(比較例1~7)[グラビアインキT1~T7の作成]
表3に示す原料を使用する以外は、上記実施例1~15に記載の方法と同様の方法にてグラビアインキT1~T7を得た。
【0064】
<グラビアインキの印刷>
上記で得られたグラビアインキS1~15、T1~7を、混合溶剤(メチルエチルケトン「MEK」:Nプロピルアセテート「NPAC」:イソプロパノール「IPA」=30:40:30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、ヘリオ175線ベタ版(版式コンプレスト、100%ベタ柄)により、透明蒸着層が設けられたポリエステル基材(テックバリアVX、三菱ケミカル社製、膜厚12μm)の蒸着層を有する面に印刷速度100m/分で印刷し、印刷物SS1~SS15、TT1~7を得た。
【0065】
<ドライラミネート加工>
印刷物SS1~15、TT1~7の印刷面に、ポリエステルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM-550/CAT-RT37)を固形分30%の酢酸エチル溶液を、乾燥後の接着剤層が3.0g/mとなるように塗工・乾燥した後、接着剤層に厚さ50μmの未延伸ポリエチレン(PE)を貼り合わせてドライラミネート加工を行って積層体SL1~15、TL1~7を得た。
【0066】
<評価>
実施例および比較例のグラビアインキ、印刷物および積層体を用いて、以下の評価を行った。表2及び表3に結果を示した。
【0067】
<引き裂き性>
積層体SL1~15、TL1~7について、JISK7128-1:1998に従ってサンプルを作成し、インテスコ社製201万能引張り試験機で引裂いた際の抵抗で評価した。
[評価基準]
A:0.5N未満(良好)
B:0.5N以上1.0N未満(やや良好)
C:1.0N以上1.5N未満(実用可)
D:1.5N以上2.0N未満(やや不良)
E:2.0N以上(不良)
なお実用可能である評価はA、B、Cである。
【0068】
<ラミネート強度>
積層体SL1~15、TL1~7積層体について、40℃48時間経過した後、印刷部分を巾15mmで裁断し、インキ面と基材面で剥離させた後、剥離強度(ラミネート強度)をインテスコ社製201万能引張り試験機にて測定した。
[評価基準]
A:1.6N以上(良好)
B:1.2N以上1.6N未満(やや良好)
C:0.8N以上1.2N未満(実用可)
D:0.4N以上0.8N未満(やや不良)
E:0.4N未満(不良)
なお実用可能である評価はA、B、Cである。
【0069】
<耐ブロッキング性>
印刷物SS1~15、TT1~7について、透明蒸着層が設けられたポリエステル基材(テックバリアVX、三菱ケミカル社製、膜厚12μm)のコロナ放電処理面と印刷層の面を40℃・5kg/cm2の条件で24時間圧着させ、剥がした際の印刷層の面の挙動を評価した。
[評価基準]
A:剥離はなく、抵抗も感じられない(良好)
B:剥離はないものの、抵抗が感じられる(やや良好)
C:20%未満の薄い剥離あり(実用可)
D:20%以上薄い剥離および/または濃い剥離有り(やや不良)
E:50%以上剥離有り(不良)
なお実用可能である評価はA、B、Cである。
【0070】
<2液安定性>
グラビアインキS1~15、T1~7について、25℃下で1日間放置し、経過時間による粘度測定データを離合社製ザーンカップで測定し、インキの仕上り直後と経過時間後の粘度の差からインキの保存安定性の評価を行った。
[評価基準]
A:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2倍未満であるもの。(良好)
B:経時粘度変化が仕上がり直後の1.2~1.5倍未満であるもの。(やや良好)
C:経時粘度変化が仕上がり直後の1.5倍~2倍未満であるもの。(実用可)
D:経時粘度変化が仕上がり直後の2倍以上であるもの。(やや不良)
E:分離・沈殿・分離を起こしているもの。(不良)
なお実用可能である評価はA、B、Cである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の易引裂き積層体用グラビアインキは液体小袋やボイル・レトルト包材などの易引裂き性が不可欠な包装袋の用途に適用できる。