(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】新規な抗ヒトGPVI抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230512BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
(21)【出願番号】P 2021116845
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2018506340の分割
【原出願日】2016-08-05
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2015-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518038906
【氏名又は名称】アクティコー バイオテック
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】518038917
【氏名又は名称】ユニバーシティ パリ-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518037529
【氏名又は名称】インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル(インセルム)
(73)【特許権者】
【識別番号】321004758
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビリアード,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンドロット‐ペラス,マーチン
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-507383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
C12N 15
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質であって、
前記タンパク質は、
hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
、
hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む立体構造エピトープに結合
し、
前記hGPVIに結合するタンパク質は、ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する抗体分子または抗体断片であって、その重鎖の可変領域は、
VH-CDR1:GYTFTSYNMH(配列番号1)、
VH-CDR2:GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)、および
VH-CDR3:GTVVGDWYFDV(配列番号3)、
のCDRを含み、その軽鎖の可変領域は、
VL-CDR1:RSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、
VL-CDR2:RVSNRFS(配列番号5)、および
VL-CDR3:LQLTHVPWT(配列番号6)
のCDRを含む、タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗ヒト糖タンパク質VI抗体および心血管疾患を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、急性の冠動脈および脳血管障害は世界における主な死因である。また急性冠症候群に罹患してから治療後6ヶ月間における世界規模での再発および死亡の発生率はなお8~15%である。
【0003】
ST上昇を有する急性冠症候群の場合、冠動脈血管形成術およびステントの導入による機械的治療は冠状動脈の流れを緊急に回復させるには非常に効率的であるが、その後の6ヶ月間における患者の約15%の罹患率/死亡率を防止するものではない。長期間の線維素溶解薬、抗凝固薬および抗凝血薬の組み合わせを用いる血栓溶解治療でさえもそれほど有望な結果は得られない。実際に、血栓症の医学的治療における向上にも関わらず、6ヶ月後の罹患率/死亡率はST上昇を有しない急性冠症候群で観察されるものと同様である。
【0004】
虚血性脳血管障害に関する治療は一般に、大部分の患者の治療の遅れや現在入手可能な抗血栓治療の出血のリスクが原因でなお非常に限られている。
【0005】
従って、心血管疾患のための治療を向上させる臨床的必要性、特に入手可能な分子と比較して向上した特徴を有する新しい分子の臨床的必要性がなお存在する。直面する課題は、病的血栓症に対して優れた効率を有するが出血のリスクのない分子を得ることである。
【0006】
この要求に答えるために、その標的は健康な血管において出血を抑えることが求められる生理的止血よりも罹患した血管において生じる血栓形成でより大きな役割を有するものでなければならない。これは、脳卒中を含む実験的血栓症すなわち血管リモデリングにおいて役割を担い、かつアテローム血栓症において重要であることが動物において実証されている血小板糖タンパク質VI(GPVI)の場合である。
【0007】
血栓症治療において現在使用されており、かつ血小板の最終活性化段階、すなわち血小板凝集を阻害するαIIbβ3インテグリン拮抗薬および血小板動員拮抗薬(P2Y12 ADP受容体阻害剤およびアスピリン)とは異なり、GPVIは血小板血栓の形成のいくつかの工程、すなわち損傷した血管壁との相互作用による開始、二次作用物質の分泌を生じさせる最初の血小板活性化による増幅、インテグリンおよび血小板凝固促進活性の活性化、フィブリンとの相互作用による増殖および安定化に関わっている(Mammadovaら, Blood 2015)。従って、GPVI拮抗薬は血小板凝集だけでなく、血管の病変の発生を引き起こす二次作用物質の遊離ならびに増殖因子およびサイトカイン分泌も防止することができる。最後に、GPVI発現は血小板および巨核球に限定され、従って抗血栓治療の完全に特異的な標的であることを表している。
【0008】
そこで、心血管疾患を治療するためにGPVI拮抗薬が開発された。
【0009】
国際公開第2001/000810号および国際公開第2003/008454号はどちらもGPVI細胞外ドメインとヒトIgのFcドメインとの間の融合タンパク質である可溶性GPVI組換えタンパク質について記載している。この可溶性組換えGPVIタンパク質はコラーゲンに結合するために血小板GPVIと競合する。最初はこの可溶性GPVIタンパク質により血栓症マウスモデルにおいて有望な結果が得られたが、これらの結果は立証されなかった。また、この手法は構造上、機能上および薬理上の欠点を含む。第1に、この化合物は高分子量キメラタンパク質(約160kDa)である。GPVI-Fcは血管損傷部位において露出されたコラーゲンを標的にし、その量および到達性は予測可能性が不十分であり、従って注入される製品の量はGPVI-Fcの使用上の潜在的限界となる。別の限界は融合タンパク質上で潜在的に露出された新エピトープに対する免疫化のリスクである。
【0010】
ヒトGPVIに対する中和モノクローナル抗体についても当該技術分野において記載されたことがある。
【0011】
例えば、欧州特許第1224942号および欧州特許第1228768号は、血栓性疾患の治療のためのマウスGPVIに特異的に結合するラット抗GPVIモノクローナル抗体JAQ1を開示している。JAQ1抗体はマウス血小板上のGPVI受容体の不可逆的な内部移行を誘導する。
【0012】
欧州特許第1538165号は、別のラット抗GPVIモノクローナル抗体(hGP 5C4)について記載しており、そのFab断片はコラーゲン刺激によって誘導される血小板の主要な生理的機能に対して顕著な阻害効果を有することが分かった。すなわち、コラーゲンによって媒介される生理的活性化マーカーPAC-IおよびCD62P-セレクチンの刺激はhGP 5C4のFabによって完全に防止され、hGP 5C4のFabはどんな内因活性も引き起こすことなく生体外でヒト血小板凝集を強力に阻害した。しかし、5C4はラット抗体であり、従って非常に限られた治療可能性しか示さない。
【0013】
国際公開第2005/111083号は、4種類のマウス抗GPVIモノクローナル抗体OM1、OM2、OM3およびOM4について記載しており、これらは試験管内でのGPVIのコラーゲンへの結合、コラーゲンに誘導される分泌およびトロンボキサンA2(TXA2)形成ならびに生体外でのカニクイザルへの静脈内注射後のコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害することが分かった。OM4はラット血栓症モデルにおいて血栓形成を阻害するようにも見える。
【0014】
国際公開第2001/000810号は、8M14.3、3F8.1、9E18.3、3J24.2、6E12.3、1P10.2、4L7.3、7H4.6、9O12.2、7H14.1および9E18.2という名称の各種マウス抗GPVIモノクローナル抗体ならびにA9、A10、C9、A4、C10、B4、C3およびD11という名称のいくつかのヒトファージ抗体scFv断片についても記載している。抗体8M14.3、3F8.1、9E18.3、3J24.2、6E12.3、1P10.2、4L7.3、7H4.6および9O12.2ならびにscFv断片A10、A4、C10、B4、C3およびD11などのこれらの抗体およびscFv断片のいくつかは、GPVIのコラーゲンへの結合を阻害することが分かった。また、9O12.2Fab断片は、コラーゲン誘導性血小板凝集および分泌を完全に阻止して、フィブリン誘導性血小板凝集を阻止して、コラーゲン刺激性またはフィブリン刺激性血小板凝固促進活性および静的条件下でのコラーゲンまたはフィブリンへの血小板接着を阻害して血小板接着を減じて、動脈流条件下で血栓形成を防止することが分かった。
【0015】
国際公開第2008/049928号は、9O12.2に由来し、かつ(Gly4Ser)3ペプチドを介して結合された9O12.2モノクローナル抗体のVHおよびVLドメインからなるscFv断片について記載している。
【0016】
しかし、現在知られている抗GPVI抗体はどれも生体内において心血管疾患を予防および/または治療するのに効率的でないことが分かった。特に、報告されている抗GPVI抗体の大部分は、特にそれらが動物由来であるという理由でヒトにおける医学的使用のための抗血栓薬の開発には適していないように見えた。
【0017】
特に、ヒトGPVIに対するいくつかのヒトファージ抗体scFvは阻害性であることが報告されているが、それらの親和性は低いように見える。さらに、9O12.2全長IgGなどの二価または多価のリガンドによる血小板表面におけるGPVIの架橋結合により、GPVI二量体化およびGPVIの低親和性Fc受容体(FcγRIIA)への架橋結合を介して血小板の活性化が生じる。対照的に、一価の9O12.2FabおよびscFv断片は阻害性である。
【0018】
しかし、これらの断片はそれらのサイズおよびヒト患者においてそれらを免疫原性にさせるそれらの動物由来性により治療薬で使用することができなかった。さらに、scFv断片はそれらの治療可能性を制限する短い半減期を示す。
【0019】
従って、ヒトにおいて免疫原性を引き起こすことなくGPVI拮抗薬を中和することがなお必要とされている。
【0020】
米国特許第2006/0088531号は、約7.9×10-7MのヒトGPVIへの結合のためのKDを示すヒトscFv断片10B12について記載している。Smethurstら(2004年)は、ヒトGPVIのIg様C2型ドメイン1(D1)上の10B12によって結合されるエピトープについてさらに記載している。このエピトープは、ヒトGPVIの残基R58、K61、R66、K79およびR80(UniProtKB受入番号Q9HCN6に基づく番号付け)を含む。
【0021】
また、O’Connorら(2006年)は、GPVIに対して低い親和性(5.4×10-7M)を有するヒトscFv断片1C3について記載しており、これはコラーゲン誘導性血小板凝集もGPVIのコラーゲンへの結合も阻止しなかったが、10B12抗体の阻害効果を増強させた。GPVI中の1C3エピトープはアミノ酸I168を含み、このエピトープがマウスからヒトに高度に保存されている領域である残基S164とS182との間の領域を包含しているかもしれないとさらに仮定される。
【0022】
そこで、ヒトにおける心血管疾患を効率的かつ満足に予防および/または治療するための手段として、先行技術の拮抗薬と比較して向上した親和性、有効性および半減期を有するヒト化抗体(すなわち、ヒトにおいて免疫原性を有しない抗体)が必要とされている。さらに、これらの拮抗薬は好ましくは容易に精製されるものでなければならない。
【0023】
当該技術分野において、GPVI枯渇表現型を誘導する抗GPVI抗体が記載されたことがある(国際公開第2006/118350号、国際公開第2011/073954号、欧州特許第2363416号)。特に、国際公開第2006/118350号は、全ての哺乳類に対する抗GPVI抗体を開示している。この抗体によって結合されるGPVIのエピトープが記載されており、これはGPVIのIg様C2型ドメイン2のループ9および11に対応し、アミノ酸残基136~142および158~162にそれぞれ対応する。
【0024】
しかし、GPVI枯渇は制御できず、かつ不可逆的であるため望ましくない(すなわち、巨核球に対するGPVI枯渇により血小板の寿命を持続させたりさらに引き延ばしたりする)。
【0025】
治療においては迅速かつ安全な抗血小板効果が必要とされる。従って、GPVI枯渇表現型を誘導せず、かつ好ましくは生体内での血小板数の減少を誘導しない(すなわち可逆的な効果を有する)抗体を開発しなければならない。
【0026】
本出願人は、新規なこれまで記載されていない立体構造エピトープに結合する抗GPVI抗体を開発した。前記抗GPVI抗体はヒトGPVIに対して強力な親和性を有し、かつ生体内で血小板数を減少させたりGPVIを枯渇させたりすることなくGPVIのそのリガンド(コラーゲンおよびフィブリンを含む)との相互作用を阻止する。従って、本発明はヒトGPVIに特異的な向上したヒト化中和抗体に関する。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質であって、
- hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む立体構造エピトープに結合するタンパク質に関する。
【0028】
一実施形態では、本発明の単離されたヒト化タンパク質によって結合される立体構造エピトープは、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む。
【0029】
本発明は、ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質であって、15nM未満のhGPVIに結合するためのKDを有し、かつ前記KDは960~1071RUの可溶性ヒトGPVIおよび泳動用緩衝液としてのPBS(pH7.4)を用いる表面プラズモン共鳴によって測定されるタンパク質にも関する。一実施形態では、本発明の単離されたヒト化タンパク質は生体内でGPVI枯渇表現型を誘導しない。
【0030】
一実施形態では、本発明のタンパク質は、全抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fv、Fabからなる群から選択される抗体分子、またはユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、またはアフィボディー(affibody)、アフィリン(affilin)、アフィチン(affitin)、アドネクチン(adnectin)、アトリマー(atrimer)、エバシン(evasin)、DARPin、アンチカリン(anticalin)、アビマー(avimer)、フィノマー(fynomer)およびバーサボディー(versabody)からなる群から選択される単量体抗体模倣体である。
【0031】
一実施形態では、本発明の抗体は一価である。
【0032】
一実施形態では、重鎖の可変領域は、
VH-CDR1:GYTFTSYNMH(配列番号1)、
VH-CDR2:GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)、および
VH-CDR3:GTVVGDWYFDV(配列番号3)
のうちの少なくとも1つのCDR、または配列番号1~3と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む。
【0033】
一実施形態では、軽鎖の可変領域は、
VL-CDR1:RSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、
VL-CDR2:RVSNRFS(配列番号5)、および
VL-CDR3:LQLTHVPWT(配列番号6)
のうちの少なくとも1つのCDR、または配列番号4~6と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む。
【0034】
一実施形態では、重鎖の可変領域は本明細書の上に定義されているCDRのうちの少なくとも1つを含み、かつ軽鎖の可変領域は本明細書の上に定義されているCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
一実施形態では、重鎖の可変領域はGYTFTSYNMH(配列番号1)、GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)およびGTVVGDWYFDV(配列番号3)のCDRを含み、かつ軽鎖の可変領域はRSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、RVSNRFS(配列番号5)およびLQLTHVPWT(配列番号6)のCDRを含むか、あるいは前記配列番号1~6と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む。
【0036】
一実施形態では、重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号7であり、かつ軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号8であるか、あるいは前記配列番号7または8と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意の配列である。
【0037】
一実施形態では、重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号7であり、かつ軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号9であるか、あるいは前記配列番号7または9と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意の配列である。
【0038】
本発明はさらに、本明細書に上に定義されているヒトGPVIに結合するタンパク質を含む組成物に関する。
【0039】
本発明はさらに、本明細書に上に定義されているヒトGPVIに結合するタンパク質と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0040】
一実施形態では、本発明の医薬組成物はGPVIに関連する病気を治療するためのものであるかそれを治療するのに使用されるものである。
【0041】
一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は、動脈および静脈血栓症、再狭窄、急性冠症候群および虚血性脳血管障害から選択される心血管疾患である。
【0042】
本発明はさらに、生体試料中のGPVIを検出するための本発明のヒトGPVIに対する抗体の使用に関する。
【0043】
本発明の別の目的は、配列番号10、配列番号11および配列番号12のうちの少なくとも1つまたは前記配列番号10~12と少なくとも60%の同一性を共有する核酸配列を有する任意の配列を含む発現ベクターである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
「糖タンパク質VI(GPVI)」は、血小板とコラーゲンとの相互作用に関与する血小板膜糖タンパク質である。GPVIは血小板の表面で発現される膜貫通コラーゲン受容体である。一実施形態では、ヒトGPVIのアミノ酸配列は、配列番号13(受入番号:BAA89353.1)または配列番号13と少なくとも約90%の同一性、好ましくは配列番号13と少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の同一性を示す任意のアミノ酸配列である。
(配列番号13)
MSPSPTALFCLGLCLGRVPA(シグナルペプチド)
QSGPLPKPSLQALPSSLVPLEKPVTLRCQGPPGVDLYRLEKLSSSRYQDQAVLFIPAMKRSLAGRYRCSYQNGSLWSLPSDQLELVATGVFAKPSLSAQPGPAVSSGGDVTLQCQTRYGFDQFALYKEGDPAPYKNPERWYRASFPIITVTAAHSGTYRCYSFSSRDPYLWSAPSDPLELVVTGTSVTPSRLPTEPPSSVAEFSEATAELTVSFTNKVFTTETSRSITTSPKESDSPAGPARQYYTKGN(細胞外ドメイン)
LVRICLGAVILIILAGFLAEDWHSRRKRLRHRGRAVQRPLPPLPPLPQTRKSHGGQDGGRQDVHSRGLCS(膜貫通および細胞質ドメイン)
【0045】
GPVIの細胞外ドメインは2つのIg様C2型ドメイン、すなわちドメイン間ヒンジによって結合されたD1およびD2からなる。一実施形態では、D1は配列番号13のアミノ酸残基21~109を含む。一実施形態では、D1とD2とのドメイン間ヒンジは配列番号13のアミノ酸残基110~113を含む。一実施形態では、D2は配列番号13のアミノ酸残基114~207を含む。
【0046】
数字の前の「約」は前記数字の値の±10%を意味する。
【0047】
「抗体」または「免疫グロブリン」-本明細書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、あらゆる関連する特異的免疫反応性を有するか否かに関わらず2本の重鎖および2本の軽鎖の組み合わせを有するタンパク質を含む。「抗体」とは、目的の抗原(例えばヒトGPVI)に対する有意な公知の特異的免疫反応活性を有するそのような組立体を指す。「抗GPVI抗体」という用語は、ヒトGPVIタンパク質に対する免疫学的特異性を示す抗体を指すように本明細書で使用される。本明細書のどこかで説明されているように、ヒトGPVIに対する「特異性」はGPVIの種相同体との交差反応を除外しない。抗体および免疫グロブリンはそれらの間の鎖間共有結合の有無に関わらず軽鎖および重鎖を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている。「免疫グロブリン」という一般名称は、生化学的に識別することができる5つの異なるクラスの抗体を含む。5つの全てのクラスの抗体が本発明の範囲内であるが、以下の考察は一般にIgGクラスの免疫グロブリン分子に関するものである。IgGに関して、免疫グロブリンは、約23,000ダルトンの分子量の2本の同一のポリペプチド軽鎖と約53,000~70,000ダルトンの分子量の2本の同一の重鎖とを含む。4本の鎖はジスルフィド結合によって「Y字型」に結合されており、軽鎖は「Y字型」の口部から開始し、かつ可変領域を通してずっと続く重鎖を囲んでいる。抗体の軽鎖はカッパまたはラムダ([κ]、[λ])のいずれかとして分類される。各重鎖クラスはカッパまたはラムダ軽鎖のいずれかにより結合されていてもよい。一般に、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって産生される場合、軽鎖および重鎖は共有結合的に互いに結合されており、2本の重鎖の「尾部」領域は共有結合的ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合されている。重鎖におけるアミノ酸配列はY字型の分岐した端部にあるN末端から各鎖の底部にあるC末端まで続いている。当業者であれば、重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらの中にいくつかのサブクラス(例えばγ1~γ4)があることが分かるであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは十分に特性解析されており、機能特殊化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修正型は本開示を考慮すれば当業者には容易に識別可能であり、従って本発明の範囲内である。前述のとおり、抗体は抗体の可変領域によって抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することができる。すなわち、抗体の軽鎖可変領域(VLドメイン)および重鎖可変領域(VHドメイン)は一緒になって3次元抗原結合部位を画定する可変領域を形成する。この4つからなる抗体構造は「Y」の各アームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位はVHおよびVL鎖のそれぞれにある3つの相補性決定領域(CDR)によって画定される。
【0048】
「単離された抗体」-本明細書で使用される「単離された抗体」は、その自然環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その自然環境の夾雑成分は抗体の診断もしくは治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク性もしくは非タンパク性成分が挙げられる。好ましい実施形態では、上記抗体は、(1)ローリー法で測定した場合に抗体の80、85、90、91、92、93、94、95重量%またはそれ以上を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで精製されているか、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで精製されているか、あるいは(3)還元もしくは非還元条件下でクマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いるSDS-PAGEにより均質性が示されるまで精製されている。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1種の成分が存在していないため、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。但し、単離された抗体は通常、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0049】
「親和性変異体」-本明細書で使用される「親和性変異体」という用語は、参照抗GPVI抗体と比較した場合にアミノ酸配列において1つ以上の変化を示す変異体抗体を指し、親和性変異体は参照抗体と比較してヒトGPVIタンパク質との親和性の変化を示す。典型的には、親和性変異体は参照抗GPVI抗体と比較した場合にヒトGPVIに対して向上した親和性を示す。その向上は、ヒトGPVIに対するより低いKD、ヒトGPVIに対するより高いKA、ヒトGPVIに対するより速い結合速度(on-rate)またはヒトGPVIに対するより遅い解離速度(off-rate)のいずれか、あるいは非ヒトGPVI相同体との交差反応性のパターンにおける変化であってもよい。親和性変異体は典型的に参照抗GPVI抗体と比較した場合にCDRのアミノ酸配列における1つ以上の変化を示す。そのような置換により、天然に生じるアミノ酸残基または天然に生じないアミノ酸残基であってもよい異なるアミノ酸残基を有するCDR内の所与の位置に存在する元のアミノ酸の再配置が生じてもよい。アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。
【0050】
「結合部位」-本明細書で使用される「結合部位」という用語は、目的の標的抗原(例えばヒトGPVI)への選択的結合に関与するタンパク質の領域を含む。結合ドメインまたは結合領域は少なくとも1つ結合部位を含む。例示的な結合ドメインとしては抗体可変領域が挙げられる。本発明のタンパク質は、単一の抗原結合部位または複数の(例えば、2つ、3つまたは4つの)抗原結合部位を含んでいてもよい。但し、本発明のタンパク質は単一の抗原結合部位を含むことが好ましい。
【0051】
「保存的アミノ酸置換」-本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義されおり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐鎖側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。このように、免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換されていてもよい。別の実施形態では、アミノ酸の鎖は側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成において異なる構造的に同様の鎖で置換されていてもよい。
【0052】
「キメラ」-本明細書で使用される「キメラ」タンパク質は、本来は天然に結合されない第2のアミノ酸配列に結合された第1のアミノ酸配列を含む。そのアミノ酸配列は、通常は融合タンパク質において1つになる別個のタンパク質中に存在してもよく、あるいは通常は同じタンパク質中に存在してもよいが、融合タンパク質において新しい配列で配置されている。キメラタンパク質は例えば化学合成によって、あるいはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作製および翻訳することによって作り出してもよい。
【0053】
「CDR」-本明細書で使用される「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域に存在する非隣接抗原結合部位を意味する。Kabatら(1991)ならびにChotiaおよびLesk(1987)から推定される以下の規則に従ってCDRを同定した。
- CDR-L1:
開始-およそ残基24
前の残基は常にCys
後の残基は常にTrp。典型的にはTRP-TYR-GLNであるが、TRP-LEU-GLN、TRP-PHE-GLN、TRP-TYR-LEUであってもよい
長さは10~17残基
- CDR-L2:
開始-L1の終了後に常に16残基
前の残基は一般にILE-TYRであるが、VAL-TYR、ILE-LYS、ILE-PHEであってもよい
長さは常に7残基
- CDR-L3:
開始-L2の終了後に常に33残基
前の残基は常にCys
後の残基は常にPHE-GLY-XXX-GLY(配列番号21)
長さは7~11残基
- CDR-H1:
開始-およそ残基26(CYSの後に常に4残基)、[Chothia/AbM定義]Kabat定義は5残基後から開始
前の残基は常にCYS-XXX-XXX-XXX(配列番号22)
後の残基は常にTRP。典型的にはTRP-VALであるが、TRP-ILE、TRP-ALAであってもよい
長さは10~12残基(AbM定義)、Chothia定義は最後の4残基を除外する
- CDR-H2:
開始-CDR-H1の終了(Kabat/AbM定義)後に常に15残基
前の残基は典型的にLEU-GLU-TRP-ILE-GLY(配列番号23)であるが、多くの変形が可能である
後の残基はLYS/ARG-LEU/ILE/VAL/PHE/THR/ALA-THR/SER/ILE/ALA
長さはKabat定義の16~19残基(AbM定義は7残基前で終了)
- CDR-H3:
開始-CDR-H2の終了後に常に33残基(常にCYSの後に2残基)
前の残基は常にCYS-XXX-XXX(典型的にはCYS-ALA-ARG)
後の残基は常にTRP-GLY-XXX-GLY(配列番号24)
長さは3~25残基
【0054】
「CH2ドメイン」-本明細書で使用される「CH2ドメイン」という用語は、通常は約アミノ酸231から約アミノ酸340まで延在する重鎖分子の領域を含む。CH2ドメインは別のドメインと密接に対をなしていないという点で独特である。それどころか、2つのN結合された分岐鎖状炭水化物鎖がインタクトな天然のIgG分子の2つのCH2ドメイン間に挿入されている。この炭水化物はドメイン-ドメイン対の代わりとなってCH2ドメインの安定化を助けることができると推測されている(Burton, Molec. Immunol. 22 (1985) 161-206)。
【0055】
「~に由来する」-本明細書で使用される、指定のタンパク質(例えば抗GPVI抗体またはその抗原結合断片)「に由来する」という用語は、タンパク質の由来を指す。一実施形態では、特定の開始タンパク質に由来するタンパク質またはアミノ酸配列はCDR配列またはそれに関連する配列である。一実施形態では、特定の開始タンパク質に由来するアミノ酸配列は隣接していない。例えば、一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRは開始抗体に由来している。一実施形態では、特定の開始タンパク質またはアミノ酸配列に由来するタンパク質またはアミノ酸配列は、開始配列またはその領域のアミノ酸配列と本質的に同一のアミノ酸配列を有し、その領域は少なくとも3~5個のアミノ酸、少なくとも5~10個のアミノ酸、少なくとも10~20個のアミノ酸、少なくとも20~30個のアミノ酸または少なくとも30~50個のアミノ酸からなり、あるいはそれ以外に開始配列にその由来を有するものとして当業者によって同定可能である。一実施形態では、開始抗体に由来する1つ以上のCDR配列を変化させて、GPVI結合活性を維持する変異体CDR配列、例えば親和性変異体を作製する。
【0056】
「二重特異性抗体」-本明細書で使用される「二重特異性抗体」という用語は、Vドメインの鎖間であるが鎖内でない対形成が達成され、それにより二価の断片すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を有するsFv断片(sFvのパラグラフを参照)を構築して調製された小さい抗体断片を指す。二重特異性抗体は2つの「交差」sFv断片からなるヘテロ二量体であり、ここでは2つの抗体のVHドメインとVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。二重特異性抗体については、例えば欧州特許第0404097号、国際公開第1993/011161号および「Holligerら, Proc. Natl. Acad. Sci., 90:6444-6448 (1993)」により完全に記載されている。
【0057】
「操作された」-本明細書で使用される「操作された」という用語は、合成手段(例えば、組換え技術、ペプチドの酵素結合または化学的結合による試験管内でのペプチド合成、あるいはこれらの技術のいくつかの組み合わせ)による核酸またはポリペプチド分子の操作を含む。本発明の抗体は操作されていることが好ましく、例えば、ヒト化および/またはキメラ抗体、および抗原結合、安定性/半減期またはエフェクター機能などの1つ以上の特性を向上させるように操作されている抗体などが挙げられる。
【0058】
「エピトープ」-本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体が結合するタンパク質上に位置するアミノ酸の特異的配列を指す。エピトープは多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、特異的3次元構造特性ならびに特異的電荷特性を有する。エピトープは直鎖状であっても立体構造であってもよく、すなわち必ずしも隣接していなくてもよい抗原の様々な領域に2つ以上のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0059】
「フレームワーク領域」-本明細書で使用される「フレームワーク領域」または「FR領域」という用語は、可変領域の一部であるがCDRの一部ではないアミノ酸残基を含む(例えばCDRのKabat/Chothia定義を用いる)。従って、可変領域フレームワークは約100~120個のアミノ酸長であるがCDRの外側のアミノ酸のみを含む。重鎖可変領域の具体例およびKabat/Chothiaによって定義されるCDRでは、フレームワーク領域1はアミノ酸1~25を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、フレームワーク領域2はアミノ酸36~49を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、フレームワーク領域3はアミノ酸67~98を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、かつフレームワーク領域4はアミノ酸110から可変領域の終わりまでの可変領域のドメインに対応してもよい。軽鎖のフレームワーク領域は軽鎖可変領域CDRのそれぞれによって同様に分離されている。天然に生じる抗体では、各単量体抗体に存在する6つのCDRは、抗体が水性環境においてその3次元構成をとるにつれて抗原結合部位を形成するように特異的に配置されたアミノ酸の短い非隣接配列である。重鎖および軽鎖可変ドメインの残りの部分はアミノ酸配列において分子間の可変性をほとんど示さず、フレームワーク領域と呼ばれている。フレームワーク領域は大部分が[β]シート立体構造をなし、CDRは[β]シート構造に接続し、かつ場合によってはその一部を形成するループを形成する。このようにして、これらのフレームワーク領域は、6つのCDRを鎖間の非共有結合性相互作用によって正しい向きに位置決めを行う足場を形成するように機能する。位置決めされたCDRによって形成される抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的な表面は免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有結合を促進する。CDRの位置は当業者によって容易に特定することができる。
【0060】
「断片」-本明細書で使用される「断片」という用語は、インタクトすなわち完全抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または領域を指す。「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合するか抗原結合(すなわちヒトGPVIへの特異的結合)のためにインタクトな抗体(すなわち、由来元のインタクトな抗体)と競合する免疫グロブリンすなわち抗体のタンパク質断片を指す。本明細書で使用される抗体分子の「断片」という用語は、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、抗体重鎖可変(VH)ドメイン、一本鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体断片(DAb)、1アーム(一価)の抗体、二重特異性抗体あるいはそのような抗原結合断片の組み合わせ、組立体または結合によって形成されるあらゆる抗原結合分子を含む。例えばインタクトすなわち完全抗体または抗体鎖の化学処理または酵素処理あるいは組換え手段によって断片を得ることができる。
【0061】
「Fv」-本明細書で使用される「Fv」という用語は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密な非共有結合性会合状態の1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域ドメインからなる二量体で構成されている。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合に寄与し、かつ抗体に抗原結合特異性を与える6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖のそれぞれから3つのループ)が生じる。但し、単一の可変ドメイン(すなわち抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても結合部位全体よりも親和性は低いが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0062】
「重鎖領域」-本明細書で使用される「重鎖領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに由来するアミノ酸配列を含む。重鎖領域を含むタンパク質は、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上側、中央および/または下側ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインのうちの少なくとも1つあるいはその変異体または断片を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、免疫グロブリン重鎖のFc領域(例えば、ヒンジ部、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含んでいてもよい。別の実施形態では、本発明の結合分子は定常ドメインの少なくとも1つの領域(例えば、CH2ドメインの全てまたは一部)を欠失している。特定の実施形態では、定常ドメインの少なくとも1つおよび好ましくは全てがヒト免疫グロブリン重鎖に由来している。例えば、好ましい一実施形態では、重鎖領域は完全ヒトヒンジドメインを含む。他の好ましい実施形態では、重鎖領域は完全ヒトFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリンからのヒンジ、CH2およびCH3ドメイン配列)を含む。特定の実施形態では、重鎖領域の構成要素である定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子からのものである。例えば、タンパク質の重鎖領域は、IgG1分子に由来するCH2ドメインおよびIgG3またはIgG4分子に由来するヒンジ領域を含んでいてもよい。他の実施形態では、定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子の領域を含むキメラドメインである。例えばヒンジはIgG1分子からの第1の領域とIgG3またはIgG4分子からの第2の領域とを含んでいてもよい。上に記載したように、アミノ酸配列において天然に生じる(野生型)免疫グロブリン分子とは異なるように重鎖領域の定常ドメインを修正し得ることが当業者によって理解されるであろう。すなわち、本明細書に開示されている本発明のタンパク質は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2またはCH3)のうちの1つ以上および/または軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変化または修飾を含んでいてもよい。例示的な修飾としては、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換が挙げられる。
【0063】
「ヒンジ領域」-本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに結合する重鎖分子の領域を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、かつ柔軟であるため、2つのN末端抗原結合領域を独立して移動させることができる。ヒンジ領域を3つの異なるドメイン、すなわち上側、中央および下側ヒンジドメインに細分することができる(Rouxら, J. Immunol. 1998 161 :4083)。
【0064】
超可変ループ(HV)は構造に基づいて定められるが相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいて定められるため、「超可変ループ」および「相補性決定領域」という用語は厳密には同義ではなく(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫学的関心のあるタンパク質の配列), 第5版, 米国公衆衛生局, 国立衛生研究所, メリーランド州ベテスダ, 1983)、HVおよびCDRの限界はいくつかのVHおよびVLドメインにおいて異なってもよい。VLおよびVHドメインのCDRは典型的にKabat/Chothia定義(上を参照)によって定めることができる。一実施形態では、VLおよびVHドメインのCDRは、軽鎖可変ドメインに残基24~39(CDRのL1)、55~61(CDRのL2)および94~102(CDRのL3)、および重鎖可変ドメインに残基26~35(CDRのH1)、50~66(CDRのH2)および99~109(CDRのH3)のアミノ酸を含んでいてもよい。従って、HVは対応するCDR内に含まれていてもよく、本明細書においてVHおよびVLドメインの「超可変ループ」という場合、特に明記しない限り、対応するCDRも包含するものとして解釈されるべきであり、その逆もまた同様である。以下に定義するように可変ドメインのより高度に保存された領域をフレームワーク領域(FR)と呼ぶ。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR(それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4)を含み、大部分が3つの超可変ループによって接続された[β]シート構造をなしている。各鎖の超可変ループはFRによって他の鎖の超可変ループと非常に近接して一緒に保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。抗体の構造的分析により、配列と相補性決定領域によって形成された結合部位の形状との関係が明らかになった(Chothiaら, J. Mol. Biol. 227: 799-817 (1992)、Tramontanoら, J. Mol. Biol, 215: 175-182 (1990))。それらの高い配列可変性にも関わらず、6つのループのうちの5つは「カノニカル構造」と呼ばれる主鎖立体構造の小さいレパートリーのみを採用している。これらの立体構造は第一にループの長さによって決定され、第二に充填による立体構造、水素結合または普通でない主鎖立体構造をとる能力を決定するループ、およびフレームワーク領域内の特定の位置における重要な残基の存在によって決定される。
【0065】
「ヒト化」-本明細書で使用される「ヒト化」という用語とは、マウスの免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’または抗体の他の抗原結合部分配列など)を指す。例えば、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が元の抗体(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されているが元の抗体の所望の特異性、親和性および能力を維持しているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0066】
「ヒト化置換」-本明細書で使用される「ヒト化置換」という用語は、非ヒト抗GPVI抗体(例えばマウスの抗GPVI抗体)のVHまたはVLドメイン内の特定の位置に存在するアミノ酸残基が参照ヒトVHまたはVLドメイン内の同等の位置で生じるアミノ酸残基で置換されているアミノ酸置換を指す。参照ヒトVHまたはVLドメインはヒト生殖系列によってコードされるVHまたはVLドメインであってもよく、その場合、置換された残基を「生殖系列置換」と呼ぶことができる。ヒト化/生殖系列置換は、本明細書で定義されている抗GPVI抗体のフレームワーク領域および/またはCDRにおいてなされていてもよい。
【0067】
「高いヒト相同性」-重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインを含む抗体は、VHドメインおよびVLドメインが一緒になって最も近く一致するヒト生殖系列VHおよびVL配列と少なくとも70、75、80、85、90、95%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を示す場合に高いヒト相同性を有するものとしてみなされる。高いヒト相同性を有する抗体としては、ヒト生殖系列配列と十分に高い配列同一性の割合(%)を示す天然の非ヒト抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体ならびにそのような抗体の操作された特にヒト化変異体が挙げられ、「完全ヒト」抗体も挙げられる。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインは、ドメインフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上のヒトVHと75%、80%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性または配列相同性を示してもよい。他の実施形態では、本発明のタンパク質のVHドメインと最も近く一致するヒト生殖系列VHドメイン配列とのアミノ酸配列同一性または配列相同性は、85%以上、90%%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%であってもよい。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインは、最も近く一致するヒトVH配列と比較してフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上(例えば1~20個)のアミノ酸配列の不一致を含んでいてもよい。別の実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上のヒトVLドメインと80%以上の配列同一性または配列相同性を示してもよい。他の実施形態では、本発明のタンパク質のVLドメインと最も近く一致するヒト生殖系列VLドメイン配列とのアミノ酸配列同一性または配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%であってもよい。
【0068】
一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインは、最も近く一致するヒトVL配列と比較してフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1個以上(例えば1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個)のアミノ酸配列の不一致を含んでいてもよい。高いヒト相同性を有する抗体とヒト生殖系列VHおよびVLとの配列同一性の割合を分析する前に、カノニカルフォールドを決定してもよく、これによりH1およびH2またはL1およびL2(およびL3)についてカノニカルフォールドの同一の組み合わせを有するヒト生殖系列セグメントのファミリーの同定が可能になる。その後に、配列相同性をスコア化するために、目的の抗体の可変領域と最高度の配列相同性を有するヒト生殖系列ファミリーメンバーを選択する。超可変ループL1、L2、L3、H1およびH2のChothiaカノニカルクラスの決定は、ウェブページwww.bioinf.org.uk/abs/chothia.html.pageで公的に入手可能なバイオインフォマティクスツールを用いて行うことができる。そのプログラムの出力はデータファイル内の重要な残基要件を示す。これらのデータファイルでは、重要な残基の位置は各位置において許容されるアミノ酸と共に示される。目的の抗体の可変領域の配列は入力として与えられ、最初にコンセンサス抗体配列とアラインメントしてKabat/Chothia番号付けスキームを割り当てる。カノニカルフォールドの分析は、MartinおよびThorntonによって開発された自動化方法(Martinら, J. Mol. Biol. 263:800-815 (1996))によって得られる1セットの重要な残基テンプレートを使用する。H1およびH2またはL1およびL2(およびL3)についてカノニカルフォールドの同じ組み合わせを使用する公知の特定のヒト生殖系列Vセグメントを用いて、配列相同性の点で最も一致するファミリーメンバーを決定することができる。バイオインフォマティクスツールを用いて、目的の抗体のVHおよびVLドメインフレームワークアミノ酸配列とヒト生殖系列によってコードされる対応する配列との配列同一性の割合を決定することができるが、実際には当該配列の手動アラインメントも利用することができる。VBase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)またはPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)などのいくつかのタンパク質データベースからヒト免疫グロブリン配列を同定することができる。ヒト配列を目的の抗体のVHまたはVLドメインのV領域と比較するために、例えばwww.expasy.ch/tools/#alignのようなウェブサイトを介して入手可能な配列アラインメントアルゴリズムを使用することができるが、限られたセットの配列を用いて手動アラインメントも行うことができる。カノニカルフォールドの同じ組み合わせおよび各鎖のフレームワーク領域1、2および3と最高度の相同性を有するファミリーのヒト生殖系列軽鎖および重鎖配列を選択して目的の可変領域と比較し、FR4もヒト生殖系列JHおよびJKまたはJL領域に対して確認する。全体的な配列相同性の割合の計算において、FR1、FR2およびFR3の残基をカノニカルフォールドの同一の組み合わせを有するヒト生殖系列ファミリーからの最も近く一致する配列を用いて評価することに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組み合わせを有する同じファミリーの最も近く一致するものまたは他のメンバーとは異なる残基のみをスコア化する(注:あらゆるプライマーによってコードされる相違箇所を除外する)。但し、ヒト化のために、カノニカルフォールドの同じ組み合わせを有しない他のヒト生殖系列ファミリーのメンバーと同一のフレームワーク領域中の残基は、上記ストリンジェントな条件に従ってこれらが「マイナス」とスコア化されるという事実にも関わらず「ヒト」と見なすことができる。この仮定はヒト化のための「ミックスアンドマッチ」手法に基づいており、この手法では、Quおよび同僚(Quら, Clin. Cancer Res. 5:3095-3100 (1999))ならびにOnoおよび同僚(Onoら, Mol. Immunol. 36:387-395 (1999))によって行われたように、FR1、FR2、FR3およびFR4をそれぞれ別々にその最も近く一致するヒト生殖系列配列と比較するため、ヒト化分子は異なるFRの組み合わせを含む。Chothiaの番号付けスキームの改作であるIMGT番号付けスキーム(Lefrancら, Nucleic acid res 27: 209-212 (1999)、http://im.gt.cines.fr)を用いて個々のフレームワーク領域の境界を割り当ててもよい。高いヒト相同性を有する抗体は、以下で詳細に考察するように、ヒトもしくはヒト様カノニカルフォールドを有する超可変ループまたはCDRを含んでいてもよい。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインまたはVLドメインのいずれかにおける少なくとも1つの超可変ループまたはCDRは、非ヒト抗体のVHまたはVLドメインから得られるかそれらに由来していてもよく、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造に実質的に同一である予測または実際のカノニカルフォールド構造をなお示す。当該技術分野において、ヒト生殖系列によってコードされるVHドメインおよびVLドメインの両方に存在する超可変ループの一次アミノ酸配列は定義上は高度に可変であるが、VHドメインのCDR H3を除く全ての超可変ループは、カノニカルフォールドと呼ばれるたった数個の構造上異なる立体構造をとり(Chothiaら, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)、Tramontanoら, Proteins 6:382- 94 (1989))、これらは超可変ループの長さおよびいわゆるカノニカルアミノ酸残基の存在の両方に依存するということが十分に確立されている(Chothiaら, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。インタクトなVHまたはVLドメインの超可変ループの実際のカノニカル構造は、構造的分析(例えばX線結晶構造解析)によって決定することができるが、特定の構造に典型的な重要なアミノ酸残基に基づいてカノニカル構造を予測することもできる(以下でさらに考察する)。要するに、各カノニカル構造を決定する残基の特異的パターンは、未知の構造のVHまたはVLドメインの超可変ループにおいて認識されるカノニカル構造を可能にする「サイン(signature)」を形成し、従って一次アミノ酸配列のみに基づいてカノニカル構造を予測することができる。高いヒト相同性を有する抗体における任意の所与のVHまたはVL配列の超可変ループについて予測されるカノニカルフォールド構造は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html、www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.htmlおよびwww.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines/Vbase_hVk.htmlから公的に入手可能なアルゴリズムを用いて分析することができる。これらのツールにより、公知のカノニカル構造のヒトVHまたはVLドメイン配列に対してアラインメントされる問い合わせVHまたはVL配列ならびに問い合わせ配列の超可変ループについてなされるカノニカル構造の予測が可能になる。VHドメインの場合、以下の判断基準の少なくとも1つ目、好ましくは両方が満たされる場合に、H1およびH2ループをヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0069】
1.最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスと同一の長さ(残基数によって決定される)。
【0070】
2.対応するヒトH1およびH2カノニカル構造クラスについて記載されている重要なアミノ酸残基と少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性(上記分析のために、H1およびH2ループを別々に処理し、それぞれをその最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスに対して比較することに留意されたい)。上記分析は目的の抗体のH1およびH2ループのカノニカル構造の予測に依存する。目的の抗体のH1およびH2ループの実際の構造が例えばX線結晶構造解析に基づき公知である場合、ループの長さが最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスの長さとは異なる(典型的には+1または+2のアミノ酸だけ異なる)が目的の抗体のH1およびH2ループの実際の構造はヒトカノニカルフォールド構造に一致すれば、目的の抗体のH1およびH2ループをヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することもできる。ヒトVHドメインの第1および第2の超可変ループ(H1およびH2)のヒトカノニカル構造クラスに存在する重要なアミノ酸残基については、「Chothiaら, J. Mol. Biol. 227:799-817 (1992)」によって記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、Chothiaらの802頁の表3(これは参照により本明細書に明確に組み込まれる)は、ヒト生殖系列に存在するH1カノニカル構造の重要な部位における好ましいアミノ酸残基を列挙し、803頁の表4は(これも参照により明確に組み込まれる)はヒト生殖系列に存在するCDR H2カノニカル構造の重要な部位における好ましいアミノ酸残基を列挙している。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインにおけるH1およびH2はどちらも、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測または実際のカノニカルフォールド構造を示す。高いヒト相同性を有する抗体は、超可変ループH1およびH2が少なくとも1つのヒト生殖系列VHドメインにおいて生じることが知られているカノニカル構造の組み合わせと同一であるカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成するVHドメインを含んでいてもよい。H1およびH2におけるカノニカルフォールド構造の特定の組み合わせのみが実際にヒト生殖系列によってコードされるVHドメインにおいて生じることが観察されている。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインのH1およびH2は非ヒト生物種のVHドメインから得られたものであってもよく、ヒト生殖系列または体細胞変異したVHドメインにおいて生じることが知られているカノニカルフォールド構造の組み合わせに同一である予測または実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせをなお形成する。非限定的な実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインのH1およびH2は非ヒト生物種のVHドメインから得られたものであってもよく、1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1および3-5のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成する。高いヒト相同性を有する抗体は、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、かつヒトVHとの構造的相同性を示す超可変ループを含むVHドメインを含んでいてもよい。高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインのH1およびH2に存在するカノニカルフォールドおよびそれらの組み合わせが全体的一次アミノ酸配列同一性の点で高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインと最も近い一致を表すヒトVH生殖系列配列について「正しい」と有利であり得る。例として、最も近い配列の一致がヒト生殖系列VH3ドメインとの一致である場合、H1およびH2がヒトVH3ドメインにおいても天然に生じるカノニカルフォールドの組み合わせを形成すると有利であり得る。これは、非ヒト生物種に由来する高いヒト相同性を有する抗体、例えばラクダ科の従来の抗体に由来するVHおよびVLドメインを含む抗体、特にヒト化ラクダ科のVHおよびVLドメインを含む抗体の場合に特に重要であり得る。従って、一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗GPVI抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたってヒトVHドメインと70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、あるいは最大99%またはさらには100%の配列同一性または配列相同性を示してもよく、また同じ抗体のH1およびH2は非ヒトVHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天然に生じることが知られているカノニカルフォールドの組み合わせと同じである予測または実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成する。他の実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1およびL2はそれぞれ非ヒト生物種のVLドメインから得られ、それぞれがヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測または実際のカノニカルフォールド構造を示す。VHドメインと同様に、VλおよびVκの両型のVLドメインの超可変ループは一つには長さによって決まり、かつ特定のカノニカル位置における重要なアミノ酸残基の存在によっても決まる限られた数の立体構造またはカノニカル構造をとることができる。高いヒト相同性を有する目的の抗体における非ヒト生物種、例えばラクダ科種のVLドメインから得られたL1、L2およびL3ループは、以下の判断基準の少なくとも1つ目、好ましくは両方が満たされる場合にヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0071】
1.最も近く一致するヒト構造クラスと同一の長さ(残基数によって決定される)。
【0072】
2.VλまたはVκレパートリーのいずれかからの対応するヒトL1またはL2カノニカル構造クラスについて記載されている重要なアミノ酸残基と少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性(上記分析のために、L1およびL2ループを別々に処理し、それぞれをその最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスに対して比較することに留意されたい)。上記分析は目的の抗体のVLドメインのL1、L2およびL3ループのカノニカル構造の予測に依存する。L1、L2およびL3ループの実際の構造が例えばX線結晶構造解析に基づき公知である場合、目的の抗体に由来するL1、L2またはL3ループを、ループの長さが最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスの長さとは異なる(典型的には+1または+2のアミノ酸だけ異なる)が目的の抗体内のループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドに一致すれば、ヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することもできる。ヒトVλおよびVκドメインのCDRについてヒトカノニカル構造クラスに存在する重要なアミノ酸残基は、「Moreaら, Methods, 20: 267-279 (2000)」および「Martinら, J. Mol. Biol., 263:800-815 (1996)」に記載されている。ヒトVκドメインの構造的レパートリーは「Tomlinsonら, EMBO J. 14:4628-4638 (1995)」にも記載されており、Vλドメインの構造的レパートリーは「Williamsら, J. Mol. Biol., 264:220-232 (1996)」に記載されている。全てのこれらの文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1およびL2は、ヒト生殖系列VLドメインにおいて生じることが知られているカノニカルフォールド構造の組み合わせと同一である予測または実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成してもよい。非限定的な実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVλドメインのLIおよびL2は、11-7、13-7(A、B、C)、14-7(A、B)、12-11、14-11および12-12のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成してもよい(Williamsら, J. Mol. Biol. 264:220 -32 (1996)に定義され、かつhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVL.htmlに図示されている)。非限定的な実施形態では、VκドメインのL1およびL2は、2-1、3-1、4-1および6-1のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成してもよい(Tomlinsonら, EMBO J. 14:4628-38 (1995)に定義され、かつhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVK.htmlに図示されている)。
【0073】
さらなる実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1、L2およびL3の3つ全てが実質的にヒト構造を示してもよい。高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインがヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、かつVLドメインの超可変ループもヒトVLとの構造的相同性を示すことが好ましい。
【0074】
一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗GPVI抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたってヒトVLドメインと70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%の配列同一性を示してもよく、また超可変ループL1および超可変ループL2は同じヒトVLドメインにおいて天然に生じることが知られているカノニカルフォールドの組み合わせと同じである予測または実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成してもよい。当然ながら、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性を示し、かつヒトVHの超可変ループとの構造的相同性も示すVHドメインをヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性を示し、かつヒトVLの超可変ループとの構造的相同性も示すVLドメインと組み合わせて、ヒトにコードされるVH/VL対との最大の配列および構造的相同性を有するVH/VL対を含む高いヒト相同性を有する抗体を得ることが想定される。
【0075】
「免疫特異性である」「~に特異的である」または「~に特異的に結合する」-本明細書で使用されるように、抗体は、検出可能な濃度で好ましくは約106M-1以上、約107M-1以上、108M-1以上、1.5×108M-1以上、109M-1以上または5×109M-1以上の親和定数KAで抗原と反応する場合に、抗原に対して「免疫特異性である」「特異的である」または「特異的に結合する」という。また、抗体のその同種抗原に対する親和性は一般に解離定数KDとしても表され、特定の実施形態では、抗体は、10-6M以下、10-7M以下、1.5×10-8M以下、10-8M以下、5×10-9M以下または10-9M以下のKDで結合する場合に、抗原に特異的に結合する。抗体の親和性は、従来の技術、例えば、Scatchard Gらによって記載されている技術(The attractions of proteins for small molecules and ions(小分子およびイオンのためのタンパク質の引力). Ann NY Acad Sci 1949;51: 660-672)を用いて容易に決定することができる。抗体のその抗原、細胞または組織に対する結合特性は一般に、例えば、ELISA、免疫蛍光系アッセイ(免疫組織化学(IHC)など)などの免疫検出法および/または蛍光活性化細胞分類(FACS)または表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore)を用いて決定および評価することができる。
【0076】
「単離された核酸」-本明細書で使用される「単離された核酸」は、他のゲノムDNA配列ならびに天然配列に天然に付随するリボソームおよびポリメラーゼなどのタンパク質または複合体から実質的に分離された核酸である。この用語は、その天然に生じる環境から取り出された核酸配列を包含し、組換えもしくはクローン化DNA単離体および化学合成された類似体または異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸としては核酸の単離された形態が挙げられる。当然ながら、これは最初に単離された核酸を指すが、人為的に単離された核酸に後で追加された遺伝子または配列を除外するものではない。
【0077】
「ポリペプチド」という用語は、その従来の意味、すなわち100個未満のアミノ酸からなる配列という意味で使用される。ポリペプチドとは通常、単量体の実体を指す。「タンパク質」という用語は100個以上のアミノ酸配列および/または多量体の実体を指す。本発明のタンパク質は当該産物の特定の長さに限定されない。この用語は例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などのタンパク質の発現後修飾ならびに当該技術分野で知られている他の修飾(天然に生じるものと天然に生じないもの両方)を指さず、すなわちそれらを除外する。タンパク質は、タンパク質全体またはその部分配列であってもよい。本発明の文脈において目的の特定のタンパク質は、CDRを含み、かつ抗原に結合することができるアミノ酸部分配列である。「単離されたタンパク質」は、同定されてその自然環境の成分から分離および/または回収されたものである。好ましい実施形態では、単離されたタンパク質を、(1)ローリー法で測定した場合にタンパク質の80、85、90、95重量%を超え、最も好ましくは96、97、98または99重量%を超えるまで精製されているか、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで精製されているか、あるいは(3)還元もしくは非還元条件下でクマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いるSDS-PAGEにより均質性が示されるまで精製されている。単離されたタンパク質は、タンパク質の自然環境の少なくとも1種の成分が存在していないため、組換え細胞内の原位置のタンパク質を含む。但し、単離されたタンパク質は通常、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0078】
「同一性」または「同一」-本明細書で使用される「同一性」または「同一」という用語は、2つ以上のアミノ酸配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基からなる配列間の一致数によって決定されるアミノ酸配列間の配列関連性(sequence relatedness)の程度を指す。「同一性」とは、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメント(存在すれば)を有する2つ以上の配列のより短い配列間の完全な一致率の尺度である。関連するアミノ酸配列の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、「Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.,編, Oxford University Press, ニューヨーク, 1988」、「Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.,編, Academic Press, ニューヨーク, 1993」、「Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M.および Griffin, H. G.,編, Humana Press, ニュージャージー, 1994」、「Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987」、「Sequence Analysis Primer, Gribskov, M.およびDevereux, J., 編, M. Stockton Press, ニューヨーク, 1991」、および「Carilloら, SIAM J. Applied Math. 48, 1073 (1988)」に記載されているものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計されている。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記述されている。好ましいコンピュータプログラムによる2つの配列間の同一性の決定方法としては、GAP(Devereuxら, Nucl. Acid. Res. 12: 387 (1984)、ジェネティクスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン大学、ウィスコンシン州マディソン)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschulら, J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990))などのGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)および他の提供源(BLASTマニュアル, Altschulら, NCB/NLM/NIH, メリーランド州ベセズダ, 20894、Altschulら、上記)から公的に入手可能である。また、周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定してもよい。
【0079】
「修飾された抗体」-本明細書で使用される「修飾された抗体」という用語は、天然に生じないように変化させた合成型の抗体、例えば少なくとも2つの重鎖領域を含むが2本の完全な重鎖を含まない抗体(ドメイン欠失抗体またはミニボディなど)、2つ以上の異なる抗原または単一抗原上の異なるエピトープに結合するように変化させた多特異性抗体(例えば、二重特異性、三重特異性など)、scFv分子に接合された重鎖分子などを含む。ScFv分子は当該技術分野で知られており、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。また、「修飾された抗体」という用語は、多価型の抗体(例えば同じ抗原の3つ以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)を含む。別の実施形態では、本発明の修飾された抗体は、CH2ドメインを欠失している少なくとも1つの重鎖領域を含み、かつ受容体リガンド対の1つのメンバーの結合領域を含むタンパク質の結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0080】
「哺乳類」-本明細書で使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツ用動物またはペット用動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどのあらゆる哺乳類を指す。好ましくは哺乳類は霊長類であり、より好ましくはヒトである。
【0081】
「モノクローナル抗体」-本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体群から得られる抗体、すなわち、その群に含まれる個々の抗体が微量で存在し得る天然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である抗体を指す。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は他の抗体が混入することなく合成できるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法によって抗体を産生する必要があるものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明で有用なモノクローナル抗体は、「Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)」によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製してもよく、あるいは、細菌細胞、真核動物細胞または植物細胞における組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照)を用いて調製してもよい。また、「モノクローナル抗体」を、例えば、「Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)」および「Marksら, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)」に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0082】
「天然配列」-本明細書で使用される「天然配列」ヌクレオチドという用語は、自然由来のポリヌクレオチドと同じヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを指す。従って、「天然配列」タンパク質は、自然由来の(例えば任意の生物種に由来する)タンパク質(例えば抗体)と同じアミノ酸配列を有するタンパク質である。そのような天然配列ポリヌクレオチドおよびタンパク質は自然から単離したり、組換えもしくは合成手段によって産生したりすることができる。本明細書で使用されるポリヌクレオチド「変異体」という用語は1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入の点で本明細書に具体的に開示されているポリヌクレオチドとは典型的に異なるポリヌクレオチドである。そのような変異体は、天然に生じたものであってもよく、あるいは例えば本発明の1つ以上のポリヌクレオチド配列を修飾し、本明細書に記載されているようにコードされるタンパク質の1つ以上の生物活性を評価し、かつ/または当該技術分野で周知の複数の技術のいずれかを用いることによって合成により産生したものであってもよい。本明細書で使用されるタンパク質「変異体」という用語は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入の点で本明細書に具体的に開示されているタンパク質とは典型的に異なるタンパク質である。そのような変異体は、天然に生じたものであってもよく、あるいは例えば本発明の1つ以上の上記タンパク質配列を修飾し、本明細書に記載されているようにタンパク質の1つ以上の生物活性を評価し、かつ/または当該技術分野で周知の複数の技術のいずれかを用いることによって合成により産生したものであってもよい。修飾は本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質の構造においてなされていてもよく、望ましい特性を有するタンパク質変異体または誘導体をコードする機能性分子がなお得られる。タンパク質のアミノ酸配列を変化させて、本発明のタンパク質の均等物またはさらに改良された変異体または領域を産生したい場合、当業者は典型的に、コードするDNA配列のコドンの1つ以上を変化させる。例えば、他のタンパク質(例えば抗原)または細胞に結合するその能力を大きく損失することなく、特定のアミノ酸がタンパク質構造中の他のアミノ酸で置換されていてもよい。タンパク質の生物学的機能活性を定めるのはタンパク質の結合能力および性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換はタンパク質配列および当然ながらその基礎をなすDNAコード配列においてなされていてもよく、それにも関わらず同様の特性を有するタンパク質が得られる。従って、本開示の組成物のアミノ酸配列または前記タンパク質をコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性を大きく損失することなく様々な変更を加えることができるものと想定される。多くの例では、タンパク質変異体は1つ以上の保存的置換を含む。「保存的置換」とは、ペプチド化学の当業者がタンパク質の二次構造および親水性/疎水性(hydropathic nature)を実質的に変化させないことを期待するような、あるアミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸で置き換えられる置換である。従って、上に概説したように、アミノ酸置換は一般にアミノ酸側鎖置換基、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどの相対的類似性に基づいている。上記特性のいくつかを考慮した例示的な置換は当業者によく知られており、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびトレオニン、グルタミンおよびアスパラギンならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。さらに、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてアミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはリジンおよびアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する荷電していない極性の頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシンおよびバリン、グリシンおよびアラニン、アスパラギンおよびグルタミン、ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群としては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。変異体は、さらにまたは代わりとして、非保存的変化を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、タンパク質変異体は、5つ以下のアミノ酸の置換、欠失または付加によって天然配列とは異なる。変異体は、さらに(または代わりとして)、例えば、タンパク質の免疫原性、二次構造および親水性/疎水性に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって修飾されていてもよい。
【0083】
「薬学的に許容される賦形剤」-本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。前記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与した場合に副作用、アレルギー反応または他の有害反応を生じさせない。ヒトへの投与のために、製剤は例えばFDA局またはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
【0084】
「特異性」-本明細書で使用される「特異性」という用語は、所与の標的、例えばGPVIと特異的に結合する(例えば免疫反応する)能力を指す。タンパク質は単一特異性であってもよく、標的に特異的に結合する1つ以上の結合部位を含み、あるいはタンパク質は多特異性であってもよく、同じまたは異なる標的に特異的に結合する2つ以上の結合部位を含む。一実施形態では、本発明の抗体は2つ以上の標的に対して特異的である。例えば一実施形態では、本発明の多特異性結合分子はGPVIおよび第2の分子に結合する。
【0085】
「sFv」または「scFv」としても省略される「一本鎖Fv」-本明細書で使用される「一本鎖Fv」、「sFv」または「scFv」という用語は、単一のアミノ酸になるように結合されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。sFvアミノ酸配列は、sFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することができるペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含むことが好ましい。sFvの概説については、Pluckthunの「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(モノクローナル抗体の薬理作用), vol. 113, RosenburgおよびMoore編, Springer-Verlag, ニューヨーク, 269~315頁 (1994)」、「Borrebaeck 1995、以下」を参照されたい。
【0086】
「対象」-本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳類、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか受けている途中である、過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは疾患の発現について監視されている「患者」すなわち温血動物、より好ましくはヒトであってもよい。
【0087】
「合成」-本明細書で使用される、タンパク質に関する「合成」という用語は、天然に生じないアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。例えば、天然に生じないタンパク質は天然に生じるタンパク質の修飾された形態(例えば、付加、置換または欠失などの突然変異を含む)、あるいは直鎖状アミノ酸配列において本来はそこには天然に結合されない第2のアミノ酸配列(天然に生じても生じなくてもよい)に結合されている第1のアミノ酸配列(天然に生じても生じなくてもよい)を含むタンパク質である。
【0088】
「治療的有効量」とは、標的に対して有意なマイナスまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)GPVI関連疾患の発症を遅らせるか予防する、(2)GPVI関連疾患の1つ以上の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止する、(3)GPVI関連疾患の症状の寛解をもたらす、(4)GPVI関連疾患の重症度または発生率を低下させる、または(5)GPVI関連疾患を治癒させることを目的とした薬剤のレベルまたは量を意味する。予防処置のために、GPVI関連疾患の発症前に治療的有効量を投与してもよい。代わりまたは追加として、治療処置のためにGPVI関連疾患の開始後に治療的有効量を投与してもよい。
【0089】
「可変領域」または「可変ドメイン」-本明細書で使用される「可変」という用語は、可変ドメインVHおよびVLの特定の領域が抗体間で配列において広範囲に異なり、かつその標的抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を指す。但し、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分配されていない。それは抗原結合部位の一部を形成するVLドメインおよびVHドメインのそれぞれにある「超可変ループ」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。Vλ軽鎖ドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではL1(λ)、L2(λ)およびL3(λ)と呼び、VLドメインに残基24~33(9、10または11個のアミノ酸残基からなるL1(λ))、49~53(3個の残基からなるL2(λ))および90~96(6個の残基からなるL3(λ))を含むものとして定義してもよい(Moreaら, Methods 20:267-279 (2000))。Vκ軽鎖ドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではL1(κ)、L2(κ)およびL3(κ)と呼び、VLドメインに残基25~33(6、7、8、11、12または13個の残基からなるL1(κ))、49~53(3個の残基からなるL2(κ))および90~97(6個の残基からなるL3(κ))を含むものとして定義してもよい(Moreaら, Methods 20:267-279 (2000))。VHドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではH1、H2およびH3と呼び、VHドメインに残基25~33(7、8または9個の残基からなるH1)、52~56(3または4個の残基からなるH2)および91~105(長さにおいて非常に可変であるH3)を含むものとして定義してもよい(Moreaら, Methods 20:267-279 (2000))。特に明記しない限り、L1、L2およびL3という用語はそれぞれVLドメインの第1、第2および第3の超可変ループを指し、VκおよびVλアイソタイプの両方から得られる超可変ループを包含する。H1、H2およびH3という用語はそれぞれVHドメインの第1、第2および第3の超可変ループを指し、[ガンマ]、[イプシロン]、[デルタ]、[アルファ]または[ミュー]を含む公知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られる超可変ループを包含する。超可変ループL1、L2、L3、H1、H2およびH3はそれぞれ、本明細書に上に定義されている「相補性決定領域」すなわち「CDR」の一部を含んでいてもよい。
【0090】
「結合価」-本明細書で使用される「結合価」という用語は、タンパク質中の可能な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は1つの標的分子または標的分子上の特異的部位に特異的に結合する。タンパク質が2つ以上の標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は同じまたは異なる分子に特異的に結合することができる(例えば、異なるリガンドまたは異なる抗原あるいは同じ抗原上の異なるエピトープに結合することができる)。主題の結合分子はヒトGPVI分子に特異的な少なくとも1つの結合部位を有することが好ましい。本明細書に提供されているタンパク質は一価であることが好ましい。
【0091】
「治療する」または「治療」または「軽減」-本明細書で使用される「治療する」または「治療」または「軽減」という用語は、治療処置および予防処置の両方を指し、その目的は、標的とされる病理学的疾患または障害を予防するか減速させる(和らげる)ことである。治療を必要とするものとしては、既に障害に罹患しているものならびに障害に罹患しやすいものまたは障害が予防されるべきものが挙げられる。対象すなわち哺乳類は、本発明に係る治療量のタンパク質が投与された後に、その患者が、病原性細胞の数の減少、総病原性細胞の割合の減少および/または特定の疾患または病気に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下ならびに生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な減少または不存在を示す場合に、標的化された病的状態または障害に対する「治療」が成功となる。治療の成功をおよび疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0092】
本発明は、ヒトGPVIに結合する単離されたヒト化タンパク質、好ましくはヒトGPVIに対する単離されたヒト化抗体に関する。一実施形態では、本発明の単離されたタンパク質は精製されている。
【0093】
一実施形態では、本発明のタンパク質はGPVIの細胞外ドメインに結合する。
【0094】
一実施形態では、本発明のタンパク質はヒトGPVIのIg様C2型ドメイン2(D2)に結合する。
【0095】
従って一実施形態では、本発明のタンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~207またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~207と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。
【0096】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0097】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42,43、44、45,46、47、48、49、50個またはそれ以上アミノ酸残基を含む。
【0098】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0099】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基を含む。
【0100】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0101】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基を含む。
【0102】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0103】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基を含む。
【0104】
一実施形態では、本発明の単離されたタンパク質は立体構造エピトープに結合する。
【0105】
一実施形態では、前記立体構造エピトープはヒトGPVIの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0106】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVIのIg様C2型ドメイン2(D2)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0107】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~207からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0108】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0109】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0110】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0111】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基を含む。
【0112】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0113】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基を含む。
【0114】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0115】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基を含む。
【0116】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む。
【0117】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基と
を含む。
【0118】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む。
【0119】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基と
を含む。
【0120】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む。
【0121】
従って、一実施形態では、本発明のタンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む立体構造エピトープに結合する。
【0122】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む。
【0123】
従って、一実施形態では、本発明のタンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む立体構造エピトープに結合する。
【0124】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と
からなる。
【0125】
従って、一実施形態では、本発明のタンパク質は、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と
からなる立体構造エピトープに結合する。
【0126】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と
からなる。
【0127】
従って、一実施形態では、本発明のタンパク質は、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列と
からなる立体構造エピトープに結合する。
【0128】
本発明の別の目的は、15nM以下、好ましくは10nM以下、より好ましくは5nM以下のヒトGPVI、好ましくは可溶性ヒトGPVIに結合するためのKDを有する、ヒトGPVIに結合する単離されたタンパク質である。
【0129】
一実施形態では、本発明の単離されたタンパク質は、約8×10-4sec-1以下、好ましくは約6×10-4sec-1以下、より好ましくは約4×10-4sec-1以下のヒトGPVIに結合するためのkoffを有する。
【0130】
一実施形態では、本発明の単離されたタンパク質は、少なくとも約5×104M-1sec-1、好ましくは少なくとも約5.5×104M-1sec-1、より好ましくは少なくとも約5.9×104M-1sec-1、より好ましくは少なくとも約6×10-4sec-1のヒトGPVIに結合するためのkonを有する。
【0131】
一実施形態では、約700~約1600共鳴単位(RU)(約8.5~約11.3fmol/mm2に対応する)、好ましくは約850~約1200RU、より好ましくは約950~約1075RUの範囲の用量で固定化された可溶性GPVIおよび/または泳動用緩衝液としてのPBS(pH7.4)および/またはデータを分析するためのBIAevaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いる表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore)によってKDを決定してもよい。一実施形態では、可溶性GPVIは、hFc配列へのリンカーを介して(例えばGly-Gly-Argリンカーなどを介して)そのC末端において融合されたGPVIの細胞外ドメインに対応する。この可溶性GPVIを可溶性GPVI-Fcと呼ぶ場合もある。
【0132】
可溶性GPVIに対する本発明のタンパク質の親和性を決定する方法を以下に示す。
【0133】
可溶性ヒトGPVIへの本発明のタンパク質の結合は、BIAcore 2000システム(スウェーデンのウプサラ)を用いる表面プラズモン共鳴を用いて分析する。
【0134】
可溶性GPVI-Fcを約700~約1600RU(約8.5~約11.3fmol/mm2に対応する)、好ましくは約850~約1200RU、より好ましくは約950~約1075RU、さらにより好ましくは約960~約1071RUの範囲の用量で、アミンカップリング法(ウィザード(Wizard)法)を用いてカルボキシ-メチルデキストランCM5センサーチップ上に固定化させる。次いで、このタンパク質をPBS(pH7.4)(10mMのリン酸塩、138mMのNaCl、2.7mMのKCl、25.4℃でpH7.42)中で固定化されたGPVI-Fcの上を20μL/分の流速および25℃で移動させる。速度定数(kon、koff)および親和性はデータを結合モデルに当てはめることによってBIAevaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いて決定する。PBS(pH7.4)は泳動用緩衝液である。
【0135】
一実施形態では、前記タンパク質は、全抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、二量体一本鎖抗体、Fv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、双特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体および四重特異性抗体からなる群から選択される抗体分子である。
【0136】
別の実施形態では、前記タンパク質はユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片である。
【0137】
別の実施形態では、前記タンパク質は、アフィボディー、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディーおよびデュオカリン(Duocalin)からなる群から選択される抗体模倣体である。
【0138】
ドメイン抗体は当該技術分野でよく知られており、抗体の重鎖または軽鎖のいずれかの可変領域に対応する抗体の最も小さい機能的結合単位を指す。
【0139】
ナノボディは当該技術分野でよく知られており、天然に生じる重鎖抗体の独特な構造および機能特性を含む抗体由来の治療用タンパク質を指す。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含んでいてもよい。
【0140】
ユニボディは当該技術分野でよく知られており、IgG4抗体のヒンジ領域を欠失している抗体断片を指す。ヒンジ領域の欠失により、従来のIgG4抗体の本質的に半分の大きさであり、かつIgG4抗体の二価の結合領域ではなく一価の結合領域を有する分子が生じる。
【0141】
アフィボディーは当該技術分野でよく知られており、ブドウ球菌性プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58個のアミノ酸残基からなるタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質を指す。
【0142】
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質(Designed Ankyrin Repeat Protein))は当該技術分野でよく知られており、非抗体タンパク質の結合能力を十分に引き出すために開発された抗体模倣体DRP(設計反復タンパク質)技術を指す。
【0143】
アンチカリンは当該技術分野でよく知られており、結合特異性がリポカリンに由来する別の抗体模倣技術を指す。アンチカリンはデュオカリンと呼ばれる二重標的化タンパク質として作製されていてもよい。
【0144】
アビマーは当該技術分野でよく知られており、別の抗体模倣技術を指す。
【0145】
バーサボディーは当該技術分野でよく知られており、別の抗体模倣技術を指す。バーサボディーは15%超のシステインを有する3~5kDaの小さいタンパク質であり、高いジスルフィド密度の足場を形成し、典型的なタンパク質が有する疎水性コアの代わりとなる。
【0146】
一実施形態では、本発明のタンパク質は一価であり、一価の全抗体、一価のヒト化抗体、一本鎖抗体、Fv、Fabまたはユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、あるいはアフィボディー、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマーおよびバーサボディーからなる群から選択される単量体抗体模倣体から選択されることが好ましい。
【0147】
別の実施形態では、前記タンパク質は治療薬に結合された抗体またはその断片を含む免疫複合体である。
【0148】
別の実施形態では、前記タンパク質は造影剤に結合された本発明のタンパク質を含む複合体である。前記タンパク質を例えば画像診断用途のために使用することができる。
【0149】
一実施形態では、前記タンパク質はモノクローナル抗体である。
【0150】
別の実施形態では、前記タンパク質はポリクローナル抗体である。
【0151】
本発明の別の目的は、重鎖の可変領域が、
VH-CDR1:GYTFTSYNMH(配列番号1)、
VH-CDR2:GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)、および
VH-CDR3:GTVVGDWYFDV(配列番号3)
のうちの少なくとも1つのCDRを含む、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片である。
【0152】
CDRの番号付けおよび定義は、Kabat/Chothia定義に従っている。
【0153】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、
VL-CDR1:RSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、
VL-CDR2:RVSNRFS(配列番号5)、および
VL-CDR3:LQLTHVPWT(配列番号6)
のうちの少なくとも1つのCDRを含む、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片である。
【0154】
CDRの番号付けおよび定義は、Kabat/Chothia定義に従っている。
【0155】
一実施形態では、本発明の抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、
- 重鎖にGYTFTSYNMH(配列番号1)、GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)およびGTVVGDWYFDV(配列番号3)のうちの少なくとも1つのCDR、および/または
- 軽鎖にRSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、RVSNRFS(配列番号5)およびLQLTHVPWT(配列番号6)のうちの少なくとも1つのCDR
を含む。
【0156】
本発明の別の実施形態では、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDRを含む。
【0157】
本発明の別の実施形態では、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRを含む。
【0158】
本発明の別の実施形態では、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDR、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRを含む。
【0159】
本発明の別の実施形態では、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDR、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRを含み、任意で前記配列のいずれかにおけるアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0160】
本発明によれば、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のいずれかを、対応する配列番号に列挙されている特定のCDRまたはCDRセットと少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして特徴づけてもよい。
【0161】
本発明の別の実施形態では、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号1、2および3にそれぞれ示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3)アミノ酸配列と、
(ii)配列番号4、5および6にそれぞれ示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3(VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列と
を有する抗体からなる群から選択され、任意で前記配列のいずれかにおけるアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上が異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0162】
一実施形態では、本発明の抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域を含む。
(配列番号7)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYNMHWVRQAPGQGLEWMGGIYPGNGDTSYNQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGTVVGDWYFDVWGQGTLVTVSS
【0163】
一実施形態では、本発明の抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
(配列番号8)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQSLENSNGNTYLNWYQQKPGKAPKLLIYRVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCLQLTHVPWTFGQGTKVEITR
【0164】
一実施形態では、本発明の抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
(配列番号9)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQSLENSNGNTYLNWYQQKPGKAPKLLIYRVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQLTHVPWTFGQGTKVEIKR
【0165】
本発明の別の実施形態では、抗GPVI抗体(ACT017抗体)またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域および配列番号8の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
【0166】
本発明の別の実施形態では、抗GPVI抗体(ACT006抗体)またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域および配列番号9の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
【0167】
本発明によれば、本明細書の上に記載されている重鎖もしくは軽鎖可変領域のアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0168】
別の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載されているACT017抗体のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、かつ本発明のタンパク質の所望の機能的特性を保持している。
【0169】
別の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載されているACT006抗体のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、かつ本発明のタンパク質の所望の機能的特性を保持している。
【0170】
本発明によれば、重鎖可変領域は、配列番号7と60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を包含する。
【0171】
本発明によれば、軽鎖可変領域は、配列番号8または配列番号9と60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を包含する。
【0172】
本発明の抗体のいずれか、例えばACT017またはACT006では、指定された可変領域およびCDR配列は保存的配列修飾を含んでいてもよい。保存的配列修飾とは、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響を与えたりそれを変化させたりしないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野で知られている標準的な技術によって本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は典型的に、アミノ酸残基が同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。指定された可変領域およびCDR配列は、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換を含んでいてもよい。置換がなされる場合、好ましい置換は保存的修飾である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐鎖側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、本発明の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変化させた抗体を、本明細書に記載されているアッセイを用いて、保持されている機能(すなわち本明細書に記載されている特性)について試験することができる。
【0173】
一実施形態では、本発明は、ACT017またはACT006抗体と本質的に同じエピトープに結合する抗体も提供する。本発明では、ACT017またはACT006抗体と本質的に同じエピトープに結合する抗体をそれぞれACT017様またはACT006様抗体と呼ぶ。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態では、VHおよびVLドメインまたはそのCDRを含む抗hGPVI抗体は、そのアミノ酸配列が完全または実質的にヒトであるCH1ドメインおよび/またはCLドメインを含んでいてもよい。本発明の抗原結合タンパク質がヒトの治療的使用を目的とした抗体である場合、抗体の定常領域全体またはその少なくとも一部が完全または実質的にヒトアミノ酸配列を有するのが通常である。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメイン(および存在すればCH4ドメイン)の1つ以上またはあらゆる組み合わせはそのアミノ酸配列に関して完全または実質的にヒトであってもよい。CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメイン(および存在すればCH4ドメイン)は全て、完全または実質的にヒトアミノ酸配列を有すると有利であり得る。ヒト化もしくはキメラ抗体または抗体断片の定常領域の文脈において「実質的にヒト」という用語は、ヒト定常領域と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を指す。この文脈における「ヒトアミノ酸配列」という用語は、生殖系列遺伝子、再編成された遺伝子および体細胞変異した遺伝子を含むヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を指す。本発明は、「完全ヒト」ヒンジ領域の存在が明らかに必要とされている実施形態を除き、ヒト配列に対して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によって変化させた「ヒト」配列の定常ドメインを含むタンパク質も想定している。本発明の抗hGPVI抗体における「完全ヒト」ヒンジ領域の存在は、免疫原性を最小限に抑えると共に本抗体の安定性を最適化するのに有益であり得る。重鎖および/または軽鎖の定常領域内、特にFc領域内で1つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失を行うことができると考えられている。アミノ酸置換は置換されたアミノ酸の代わりに、異なる天然に生じるアミノ酸または非天然もしくは修飾されたアミノ酸により生じてもよい。例えばグリコシル化パターンにおける変化(例えば、N-もしくはO-結合されたグリコシル化部位の付加または欠失)などの他の構造修飾も許容される。本抗体の使用目的に応じて、Fc受容体へのその結合特性に関して本発明の抗体を修飾すること、例えばエフェクター機能を調節することが望ましい場合がある。例えばシステイン残基をFc領域に導入してもよく、それによりこの領域において鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にする。このようにして産生されたホモ二量体の抗体は向上したエフェクター機能を有し得る。「Caronら, J. Exp. Med. 176: 1191 - 1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)」を参照されたい。
【0175】
本発明の別の目的は、配列番号7の配列の重鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。前記核酸配列は配列番号10であることが好ましい。
(配列番号10)
CAGGTTCAGCTGGTTCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGAGCCTCAGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACATTTACCAGTTACAATATGCACTGGGTAAGACAGGCTCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGAGGTATTTATCCAGGAAATGGTGATACTTCCTACAATCAGAAGTTCCAGGGCCGAGTTACTATGACTCGGGACACTTCCACCTCTACAGTGTACATGGAGCTCAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCGGTCTATTACTGTGCAAGAGGCACCGTGGTCGGCGACTGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTGAGCAGT
【0176】
本発明の別の目的は、配列番号8の配列の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。前記核酸配列は配列番号11であることが好ましい。
(配列番号11)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGAAGTAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCTTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACATCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCACCCGG
【0177】
本発明の別の目的は、配列番号9の配列の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列である。前記核酸配列は配列番号12であることが好ましい。
(配列番号12)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGTGCCAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCCTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAACGC
【0178】
本発明の別の目的は、本発明の抗GPVI抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターである。一実施形態では、本発明の発現ベクターは、配列番号10、配列番号11および配列番号12のうちの少なくとも1つまたは前記配列番号10~12と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する核酸配列を有する任意の配列を含む。
【0179】
一実施形態では、本発明のベクターは、配列番号10の配列および重鎖の定常領域をコードする配列を含む。重鎖の定常領域をコードする配列の非限定的な例は配列番号14である。
(配列番号14)
GCCTCCACCAAGGGTCCCTCAGTCTTCCCACTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGTGGCACAGCTGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCAGTGACTGTGTCATGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCTGCTGTCTTGCAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTCGAGCCTAAGTCATGCGACAAGACTCAC
【0180】
一実施形態では、本発明のベクターは、配列番号11または配列番号12の配列および軽鎖の定常領域をコードする配列を含む。軽鎖の定常領域をコードする配列の非限定的な例は配列番号15である。
(配列番号15)
ACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGT
【0181】
一実施形態では、本発明のベクターはシグナルペプチドをコードする配列を含む。シグナルペプチド配列の非限定的な例としては、限定されるものではないが、配列番号16および配列番号17が挙げられる。
(配列番号16)
ATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGT
(配列番号17)
ATGGACTGGACTTGGAGAATCCTATTCTTGGTTGCTGCAGCTACAGGTGCTCATTCA
【0182】
一実施形態では、本発明のベクターは配列番号10の配列および重鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号14など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号18を含むベクターである。配列番号18はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号18)
GCGGCCGCCACCATGGACTGGACTTGGAGAATCCTATTCTTGGTTGCTGCAGCTACAGGTGCTCATTCACAGGTTCAGCTGGTTCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGAGCCTCAGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACATTTACCAGTTACAATATGCACTGGGTAAGACAGGCTCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGAGGTATTTATCCAGGAAATGGTGATACTTCCTACAATCAGAAGTTCCAGGGCCGAGTTACTATGACTCGGGACACTTCCACCTCTACAGTGTACATGGAGCTCAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCGGTCTATTACTGTGCAAGAGGCACCGTGGTCGGCGACTGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTGAGCAGTGCCTCCACCAAGGGTCCCTCAGTCTTCCCACTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGTGGCACAGCTGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCAGTGACTGTGTCATGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCTGCTGTCTTGCAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTCGAGCCTAAGTCATGCGACAAGACTCACTGATGAGGATCC
【0183】
一実施形態では、本発明のベクターは、配列番号8の配列および軽鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号15など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号19を含むベクターである。配列番号19はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号19)
GACGTCACCATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGTGACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGAAGTAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCTTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACATCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCACCCGGACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGTTGATGATATC
【0184】
一実施形態では、本発明のベクターは、配列番号9の配列および軽鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号15など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号20を含むベクターである。配列番号20はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号20)
GACGTCACCATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGTGACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGTGCCAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCCTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAACGCACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGTTGATGATATC
【0185】
本発明の別の目的は、前記ベクターを含む単離された宿主細胞である。前記宿主細胞を、本発明の抗体の組換え産生のために使用してもよい。一実施形態では、宿主細胞は、原核生物、酵母もしくは真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞、例えば、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら, J. Gen. Virol. 36:59 (1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980))、マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581、ATCC CRL 8287)またはNSO(HPA培養株保存番号85110503)、サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982))、MRC5細胞、FS4細胞およびヒト肝癌株(Hep G2)ならびにDSMのPERC-6細胞株などであってもよい。これらの宿主細胞のそれぞれに使用するのに適した発現ベクターも一般に当該技術分野で知られている。なお、「宿主細胞」という用語は一般に培養された細胞株を指す。本発明に係る抗原結合タンパク質をコードする発現ベクターが導入されている全ヒトは「宿主細胞」の定義から明示的に除外される。
【0186】
本発明の別の目的は、抗hGPVI抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞を抗hGPVI抗体の発現に適した条件下で培養する工程と、発現された抗hGPVI抗体を回収する工程とを含む、抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片の産生方法である。この組換えプロセスは試験管内、生体外、生体内において治療および診断使用を目的としたモノクローナル抗体を含む本発明に係る抗hGPVI抗体の大規模産生のために使用することができる。これらのプロセスは当該技術分野において利用可能であり、当業者に知られている。
【0187】
一実施形態では、本発明のタンパク質をクロマトグラフィー、好ましくは親和性クロマトグラフィー、より好ましくはプロテインL-アガロース上での親和性クロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0188】
従って、一実施形態では、本発明のタンパク質はプロテインL(PpL)に結合するためのドメインを含む。PpL結合活性を本発明のタンパク質上に移動させるための方法は、「Muzardら, Analytical Biochemistry 388, 331-338, 2009」および「Lakhrifら, MAbs. 2016;8(2):379-88」に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
本発明の抗体(特に明記しない限りあるいは文脈に明らかに矛盾しない限り、本出願で使用される「抗体」という用語によって包含される)、好ましくはACT017様またはACT006様抗体の断片および誘導体は、当該技術分野で知られている技術によって産生することができる。「断片」はインタクトな抗体の一部、一般に抗原結合部位または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2およびFv断片、二重特異性抗体、隣接するアミノ酸残基の1つの連続した配列からなる一次構造を有するタンパク質である任意の抗体断片(本明細書では「一本鎖抗体断片」または「一本鎖タンパク質」という)、例えば、限定されるものではないが、(1)一本鎖Fv分子、(2)1つの軽鎖可変ドメインのみを含む一本鎖タンパク質または関連する重鎖部分を含まない軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むその断片、(3)1つの重鎖可変領域のみを含む一本鎖タンパク質または関連する軽鎖部分を含まない重鎖可変領域の3つのCDRを含むその断片、ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。本抗体の断片は標準的な方法を用いて得ることができる。例えば、FabまたはF(ab’)2断片を従来の技術に従って単離された抗体のプロテアーゼ消化により産生してもよい。当然のことながら、例えば生体内クリアランスを遅くし、かつより望ましい薬物動態学的プロファイルを得るための公知の方法を用いて免疫反応性断片を修飾することができ、上記断片をポリエチレングリコール(PEG)で修飾してもよい。PEGをFab’断片にカップリングして部位特異的に結合させる方法は、例えば、「Leongら, Cytokines 16 (3): 106-119 (2001)」および「Delgadoら, Br. J. Cancer 73 (2): 175- 182 (1996)」に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
あるいは、本発明の抗体、好ましくはACT017様またはACT006様抗体をコードするDNAを、本発明の断片をコードするように修飾してもよい。次いで、修飾したDNAを発現ベクターに挿入し、適当な細胞が形質転換または形質移入されるように使用し、次いで所望の断片を発現させる。
【0191】
本発明の目的は、少なくとも1種の本明細書の上に記載した本発明のタンパク質を含む組成物である。
【0192】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の本明細書の上に記載した本発明のタンパク質と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0193】
これらの組成物に使用し得る薬学的に許容される賦形剤としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0194】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の本明細書の上に記載した本発明のタンパク質を含む薬である。
【0195】
一実施形態では、前記タンパク質はGPVIシグナル伝達および/またはGPVIのリガンドのシグナル伝達を阻害する抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片である。本明細書で使用される「阻害する」という用語は、当該タンパク質がそのリガンドとのGPVI相互作用、GPVIシグナル伝達および/またはGPVIシグナル伝達経路からの分子の活性化を阻止、減少、防止または中和できることを意味する。
【0196】
GPVIのリガンドの例としては、限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンが挙げられる。
【0197】
一実施形態では、前記タンパク質は中和抗hGPVI抗体である。
【0198】
一実施形態では、前記タンパク質は、GPVIのそのリガンド(例えば、コラーゲン、フィブリンまたは下流シグナル伝達および血小板活性化を誘導することができるあらゆる他のGPVIリガンドなど)への結合を阻害する。
【0199】
一実施形態では、前記タンパク質は、例えばコラーゲンなどのGPVIのリガンドに応答して血小板凝集を阻害および/または防止する。一実施形態では、前記タンパク質は、例えばコラーゲンなどのGPVIのリガンドへの血小板接着を阻害および/または防止する。
【0200】
一実施形態では、前記タンパク質は、例えばフィブリンなどのGPVIのリガンドに応答してGPVI依存性トロンビン産生を阻害および/または防止する。一実施形態では、前記タンパク質は、コラーゲンおよび/または組織因子に応答して血小板によって触媒されるトロンビン産生を阻害および/または防止する。
【0201】
一実施形態では、前記タンパク質は、GPVIを介するGPVIのリガンド(例えばフィブリンなど)による血小板動員を阻害および/または防止する。
【0202】
一実施形態では、本発明のタンパク質は、約0.1~約10μg/mL、好ましくは約0.5~約5μg/mL、より好ましくは約1~約2μg/mL(約2~約200nM、好ましくは約10~約100nM、より好ましくは約20~約40nMに対応する)の範囲の濃度で存在する場合に、全血または多血小板血漿中の血小板の飽和を誘導する。
【0203】
一実施形態では、本発明のタンパク質は、少なくとも約15μg/mL、好ましくは少なくとも約10μg/mL、より好ましくは少なくとも約5μg/mLの濃度で使用した場合にコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害する。本発明のタンパク質はそのような濃度で使用した場合にコラーゲン誘導性血小板凝集を完全に阻害することが好ましい。
【0204】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集を阻害するための本発明のタンパク質のIC50は、約0.5~約10μg/mL、好ましくは約1~約6μg/mL、より好ましくは約2~約3.2μg/mLの範囲である。
【0205】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集の速度を50%低下させる本発明のタンパク質の濃度は、約0.5~約5μg/mL、好ましくは約1~約3μg/mLの範囲、より好ましくは約2μg/mLである。
【0206】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集の強度を低下させる本発明のタンパク質の濃度は、約0.5~約10μg/mL、好ましくは約1~約6μg/mLの範囲、より好ましくは約3.2μg/mLである。
【0207】
一実施形態では、本発明のタンパク質は生体内に投与した場合、例えば0.01~500mgの範囲の用量で投与した場合などにGPVIの枯渇を誘導しない。
【0208】
一実施形態では、本発明のタンパク質は生体内に投与した場合、例えば0.01~500mgの範囲の用量で投与した場合などに、血小板数の減少すなわち血小板減少症を誘導しない。
【0209】
本発明は、GPVIに関連する疾患、障害または病気を治療するための、またはそれらの治療に使用される、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬にも関する。
【0210】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、炎症および/または血栓症における白血球と血小板および血小板と内皮との相互作用を調節する。従って、一実施形態によれば、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して炎症および/または血栓症を治療する。
【0211】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して血小板凝集および脱顆粒を調節し、好ましくは防止する。
【0212】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、巨核球および/または血小板増殖、分化、形態、遊走、凝集、脱顆粒の異常および/または機能に関連する障害を治療する。これらの障害の例としては、限定されるものではないが、出血性障害(例えば、出血傾向および/または出血時間延長など)、例えば、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)または免疫性血小板減少症などの血小板減少症などが挙げられる。
【0213】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血栓性疾患(例えば冠状動脈の血栓性閉塞など)、出血性障害、定量的もしくは定性的血小板機能不全を示す疾患および内皮機能不全を示す疾患を治療する。これらの疾患としては、限定されるものではないが、冠状動脈および大脳動脈疾患が挙げられる。
【0214】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、脳卒中や虚血などの脳血管疾患、静脈血栓塞栓症疾患(例えば、下肢の腫脹、疼痛および潰瘍形成を伴う疾患、肺塞栓症、腹部の静脈血栓症など)、血栓性微小血管症、血管性紫斑病を治療する。
【0215】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血小板障害および/または疾患(例えば出血性障害など)に関連する症状を治療する。特に本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、紫斑病などのITPおよび深刻な出血問題に関連する症状を調節することができる。
【0216】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、冠状動脈疾患(例えば、不安定狭心症、心筋梗塞、急性心筋梗塞、冠動脈疾患、冠動脈の血管新生(coronary revascularization)、冠動脈再狭窄、心室血栓塞栓症(ventricular thromboembolism)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患(例えば動脈閉塞性疾患)、プラーク形成、心虚血などの心血管疾患および経皮的冠状動脈血管形成(バルーン血管形成)術などの冠動脈手術に関連する合併症など)を治療する。冠動脈手術に関して、当該手術の前、間または後における本発明のタンパク質の投与により、そのような治療を達成することができる。好ましい実施形態では、そのような投与を利用して血管形成後の急性心虚血を予防することができる。
【0217】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血小板凝集を引き起こし得るあらゆる血管損傷から生じる障害を治療する。そのような血管損傷としては、限定されるものではないが、損傷されなければ無傷である血管の中に露出される高度に血栓形成性の表面を生じさせる血管損傷などの血管壁損傷、例えば、ADP、トロンビンおよび/またはエピネフリンの放出を引き起こす血管壁損傷、アテローム性プラーク部位における血管狭窄、破裂および/または裂傷部位で生じる流体剪断応力、およびバルーン血管形成術またはアテローム切除術による生じる損傷が挙げられる。
【0218】
さらに、特定の実施形態では、本発明のタンパク質は、作用物質に誘導される血小板形態変化(例えば、GPIb-vWFによって媒介される血小板活性化)、血小板内顆粒成分の放出、シグナル伝達経路の活性化、またはGPVIと相互作用しない作用物質による血小板活性化時のカルシウム動員の誘導などの他の血小板の性状または機能に影響を与えないことが好ましい。
【0219】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、GPVIのリガンド(限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンなど)または他の細胞外マトリックスタンパク質に応答するシグナル伝達異常に関連する障害を治療する。
【0220】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、通常GPVIを発現する細胞またはGPVIを発現しない細胞のいずれかにおける異常なレベルのGPVI発現および/または活性に関連する障害を治療する。例えば、本発明のタンパク質を使用して、通常GPVIを発現しない癌(例えば腫瘍)細胞におけるGPVIの異常な発現に関連する障害を調節することができる。そのような障害としては、例えば腫瘍細胞の遊走および転移への進行に関連する障害を挙げることができる。
【0221】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して血小板の免疫調節機能を調節する。
【0222】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して肝臓、骨髄および末梢血の障害を治療する。
【0223】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、感染、関節炎、線維症または限定されるものではないが癌細胞増殖および/または転移などの血小板が細胞機能を調節する障害に関連する、限定されるものではないが持続的または長期間の炎症を含む血小板が炎症反応を調節することによって寄与する障害を治療する。
【0224】
GPVIに関連する疾患、障害または病気のさらなる例としては、限定されるものではないが、例えば、アテローム血栓症を含む動脈血栓症、虚血性イベント、急性冠状動脈症候群、心筋梗塞(心臓発作)、急性の脳血管虚血(脳卒中)、経皮的冠動脈介入、ステント血栓症、虚血性疾患、再狭窄、虚血(急性および慢性)、大動脈疾患およびその派生疾患(大動脈瘤、血栓症など)、末梢動脈疾患、静脈血栓症、急性静脈炎および肺塞栓症、癌関連の血栓症(トルソー症候群)、炎症性血栓症および感染に関連する血栓症などの心血管疾患および/または心血管系イベントが挙げられる。
【0225】
一実施形態では、本発明の医薬組成物または薬は、動脈もしくは静脈血栓症、再狭窄、急性冠症候群、またはアテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害、好ましくは血栓症を治療するためのものであるかそれらを治療するのに使用されるものである。
【0226】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象に本発明のタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を投与する工程を含む、GPVIに関連する疾患、障害または病気の治療方法である。
【0227】
治療的有効量の本発明のタンパク質をそれを必要とする対象に投与することが好ましい。
【0228】
当然のことながら、本発明のタンパク質、本発明の組成物、医薬組成物または薬の総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医によって決定される。あらゆる特定の患者のための特定の治療的有効用量レベルは、治療されている疾患および疾患の重症度、用いられる具体的なタンパク質の活性、用いられる具体的な組成物、対象の年齢、体重、健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および用いられる具体的なタンパク質の排泄率、治療の持続期間、用いられる具体的なタンパク質と組み合わせて使用されるか同時に使用される薬物、および医療分野で周知の同様の因子などの様々な因子によって決まる。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも少ないレベルで化合物の投与を開始して所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは十分に当業者の範囲内である。但し、タンパク質の1日投与量は成人1日当たり約0.01~500mgの広範囲にわたって異なってもよい。本組成物は、治療される患者への投与量の対症調整のために約1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250、300、350、400、450または500mgの有効成分を含むことが好ましい。薬剤は典型的には約0.01mg~約1000mgの有効成分、好ましくは1mg~約500mgの有効成分を含む。
【0229】
一実施形態では、対象はGPVIに関連する疾患、障害または病気、好ましくは心血管疾患および/またはイベントによって冒されているもの、好ましくはそれらと診断されているものである。
【0230】
別の実施形態では、対象はGPVIに関連する疾患、障害または病気、好ましくは心血管疾患および/またはイベントを発現するリスクがあるものである。リスクの例としては、限定されるものではないが、家族歴(例えば遺伝的素因など)、民族性、年齢、タバコへの曝露、高血圧(高血圧症)、高コレステロール、肥満症、運動不足、糖尿病(特に2型糖尿病)、不健康な食事およびアルコールの有害使用が挙げられる。
【0231】
対象への投与に使用するために、本組成物を対象への投与のために製剤化する。本発明の組成物を非経口投与、吸入スプレー投与、直腸内投与、経鼻投与するか、埋め込み型リザーバーを介して投与してもよい。本明細書で使用される投与という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射もしくは注入技術を含む。
【0232】
注射に適した形態の例としては、限定されるものではないが、例えば無菌水溶液などの溶液、ゲル、分散液、乳濁液、懸濁液または使用前に液体の添加により溶液または懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態、例えば粉末およびリポソーム形態などが挙げられる。
【0233】
本発明の組成物の無菌注射剤は、水性もしくは油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液を、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する当該技術分野で知られている技術に従って製剤化してもよい。無菌注射剤は、非経口的に許容される非毒性希釈剤または溶媒に入れた無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容可能な媒体および溶媒としては、水、リンガー液および等張の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。また無菌固定油は、従来通りに溶媒または懸濁媒として用いられる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなどのあらゆる無刺激性固定油を用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、天然の薬学的に許容される油、例えば特にそれらのポリオキシエチル化された形態のオリーブ油またはヒマシ油も有用である。また、これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース、または乳濁液および懸濁液などの薬学的に許容される剤形の製剤に通常使用される同様の分散剤を含有していてもよい。また製剤のために、Tweens、Spansおよび他の乳化剤などの他の一般に使用される界面活性剤または薬学的に許容される固体、液体もしくは他の剤形の製造に一般に使用される生物学的利用能増強剤を使用してもよい。
【0234】
本発明の医薬組成物中のタンパク質の投与のためのスケジュールおよび投与量は、これらの製品のための公知の方法に従い、例えば、製造業者の説明書を用いて決定することができる。例えば、本発明の医薬組成物中に存在するタンパク質は、例えば1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、50mg/mLまたは100mg/mLの濃度などの約1~約100mg/mLの範囲の濃度で供給することができる。一実施形態では、当該タンパク質は100mg(10mL)または500mg(50mL)のいずれかの使い捨てのバイアルに入れて約10mg/mLの濃度で供給される。一実施形態では、本発明の医薬組成物はPBS(pH7.2~7.7)中に本発明のタンパク質を含んでいてもよい。当然のことながら、これらのスケジュールは例示であり、最適なスケジュールおよび投与計画は、臨床試験で決定しなければならない医薬組成物中の特定の抗体の親和性および忍容性を考慮して調整することができる。
【0235】
一実施形態では、本発明のタンパク質を試験管内または生体内で使用してGPVIを発現する試料、組織、臓器または細胞を特定してもよい。
【0236】
本発明のタンパク質を使用することができるアッセイの例としては、限定されるものではないが、ELISA、サンドイッチELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウエスタンブロットおよび免疫沈降が挙げられる。
【0237】
本発明の一実施形態では、当該試料は生体試料である。生体試料の例としては、限定されるものではないが、体液、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、リンパ、腹水、尿、羊水、腹膜液、脳脊髄液、胸膜液、心嚢液および肺胞マクロファージ、組織溶解物、生検材料および罹患組織から調製した抽出物が挙げられる。
【0238】
本発明の一実施形態では、「試料」という用語は、あらゆる分析前に個体から採取される試料を意味するものとする。
【0239】
別の実施形態では、本発明のタンパク質は診断または検出のために標識されていてもよい。本明細書において標識されているとは、化合物が当該化合物の検出を可能にするために結合された少なくとも1種の元素、同位体または化学物質を有することを意味する。標識の例としては、限定されるものではないが、放射性同位体または重同位体などの同位体標識、磁石、電気または熱標識および有色または発光色素が挙げられる。発光色素の例としては、限定されるものではないが、ランタニド複合体、量子ドット、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(cascade blue)、テキサスレッド、アレクサ(alexa)色素およびcy色素が挙げられる。
【0240】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の本発明のタンパク質を含むキットである。
【0241】
「キット」とは、GPVIの発現を特異的に検出するための少なくとも1種の試薬すなわち例えば抗体を含む任意の製造品(例えば、パッケージまたは容器)を意図している。当該キットは、本発明の方法を行うための単位として宣伝、流通または販売されていてもよい。さらに、当該キットの試薬のいずれかまたは全てを密封容器などのそれらを外部環境から保護する容器に入れて提供してもよい。また当該キットは、当該キットおよびその使用方法について記載している添付文書を含んでいてもよい。
【0242】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、GPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0243】
一実施形態では、GPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害する方法は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現または出血時間に影響を与えない。
【0244】
一実施形態では、GPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害する方法は効率的かつ可逆的である。
【0245】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、GPVIのそのリガンド(好ましくは限定されるものではないがコラーゲン)への結合を阻害し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0246】
一実施形態では、GPVIのそのリガンドへの結合を阻害する方法は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現または出血時間に影響を与えない。
【0247】
一実施形態では、GPVIのそのリガンドへの結合を阻害する方法は効率的かつ可逆的である。
【0248】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、コラーゲンへの血小板接着を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0249】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、コラーゲン誘導性血小板凝集を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0250】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、コラーゲンに応答した血小板活性化、特に血小板凝集を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0251】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、コラーゲンおよび/または組織因子に応答したトロンビン産生を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0252】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、GPVIのフィブリンへの結合を阻害し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0253】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、GPVIを介したフィブリンによる血小板動員を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0254】
本発明はさらに、本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む、フィブリンに応答したGPVI依存性トロンビン産生を阻害および/または防止し、それによりGPVI関連疾患を治療する方法に関する。
【0255】
一実施形態では、本発明のタンパク質を対象に投与する工程は生体内でGPVIの枯渇を誘導しない。
【0256】
一実施形態では、本発明のタンパク質を対象に投与する工程は血小板数の減少を誘導しない。従って一実施形態では、本発明のタンパク質を対象に投与する工程は血小板減少症を誘導しない。
【0257】
一実施形態では、本発明のタンパク質を対象に投与する工程は出血時間の延長を誘導しない。
【0258】
一実施形態では、本発明の方法は治療的有効量の本発明のタンパク質を対象に投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【
図1】本発明のタンパク質を示すクマシーブルーで染色したゲルの写真である。MM:分子量マーカー、FT:通過画分、PX:精製されたタンパク質(プロテインL-アガロースカラムから溶出)、CM:細胞馴化培地。
【
図2】本発明の2種類のヒト化Fabの等温結合曲線を示すグラフである。精製したGPVI-Fcをマイクロタイトレーションプレート上に被覆し、精製したタンパク質を増加濃度で添加した。洗浄後、結合したタンパク質をヒトFab断片へのアルカリホスファターゼ結合特異的抗体を用いて顕色し、アルカリホスファターゼ基質の加水分解を485nmで測定した。
【
図3】Alexa488結合ACT017を用いるフローサイトメトリーによって得られた曲線である。製造業者の説明書に従ってACT017をA488に結合させた。A488-ACT0017を健康な志願者からのヒトの抗凝固全血または多血小板血漿に増加濃度で添加した。室温で20分後に試料を希釈し、フローサイトメトリーで直接分析した。血小板の平均蛍光はA488結合ACT017濃度の関数として表す。データは3回の実験のうちの1回の代表的な実験からのものである。
【
図4】ヒト多血小板血漿(PRP)中で測定した場合の血小板の凝集を示す曲線である。PRPを増加濃度の精製したACT017と共に撹拌せずに37℃で10分間予めインキュベートした後、血小板凝集をコラーゲン(1μg.mL
-1)で惹起した。撹拌し、かつ光透過率の変化の連続的な記録を行いながらインキュベーションを37℃で引き延ばした。データは3回の実験のうちの1回の代表的な実験からのものである。
【
図5】応答の速度および強度について定量化されるコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害するACT017の能力を示すグラフである。血小板凝集の強度および速度をACT017の各濃度で測定した。ACT017の非存在下での応答に対するACT017の存在下での応答の比×100として残留応答を計算し、Graph Pad Prism(5.0)ソフトウェアからの非線形回帰競合曲線(応答に対する対数(阻害剤))を用いてACT017濃度の関数としてプロットした(3つのパラメータ)。曲線は3回の実験のうちの1回の代表的な実験からのものである。
【
図6】コラーゲン誘導性血小板凝集を示すグラフの組み合わせである。媒体または増加用量のACT017を摂取したマウスの多血小板血漿(PRP)へのコラーゲン(1μg/mL)の添加によって惹起された血小板凝集の最大量を報告する。
【
図7】血小板上でのGPVIの発現を示すグラフの組み合わせである。注射前および媒体または増加用量のACT017の注射から30分後に得られた血液をFITC結合抗GPVIモノクローナル抗体3J24と共にインキュベートした。左のパネル:異なる用量の媒体(ACT17:0mg/kg)またはACT017で治療したマウスの血小板の平均蛍光。中央および右のパネル:媒体またはACT017(4mg/kg)で治療した個々の動物について注射前の時間と注射から30分後との間のGPVI発現の漸増的変化を報告する。
【
図8】ACT017(4mg/kg)または媒体(ACT17:0mg/kg)の投与後のマウスの血液中の血小板の数を示すグラフである。
【
図9】媒体(対照)、ACT017(4mg/kg)またはクロピドグレル(血小板上のP2Y12 ADP受容体拮抗薬)(10mg/kg)の投与から30分後のマウスの出血時間(A)および失血(B)を示すグラフの組み合わせである。
【
図10】カニクイザル(n=4)への増加用量のACT017(1、2、4、8mg/kg)の15分間の注入終了から30分および2時間後に測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の平均±標準誤差での強度(A)および速度(B)を示すグラフの組み合わせである。
【
図11】あらゆる治療前(T0)または増加用量(1、2、4、8mg/kg)の媒体またはACT017の注入から24時間後に測定したカニクイザルの血中血小板数を示す。
【
図12】治療前(時間=0)ならびにカニクイザルへのACT017(1、2、4、8mg/kg)または媒体の注入から30分および2時間後に4匹の対象において測定した出血時間を示すグラフの組み合わせである。
【
図13】カニクイザル(n=8)へのACT017(2および8mg/kg)の2種類の用量の1時間の注入開始後の異なる時間に測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の平均±標準偏差での強度(A)および速度(B)を示すグラフの組み合わせである。
【
図14】2mg/kgのACT017の1時間の注入開始後の異なる時間にカニクイザル(n=8)の血小板に対するフローサイトメトリーによって測定したGPVI発現レベルを示すグラフである(MFI:平均蛍光強度)。
【実施例】
【0260】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0261】
実施例1:ACT017およびACT006の作製
製造業者の説明書に従う標準的な条件を用いた一過性の形質移入によってCHO-S細胞(Invitrogen社)において抗体ACT017およびACT006(Fab断片)を作製した。
【0262】
簡単に言えば、形質移入の直前にCHO-S細胞を分割させ、10mLの血清を含まない増殖培地に0.5~1.0×106細胞/mLの密度で播種した。次いで、細胞を本発明の抗体の軽鎖および重鎖をコードする配列を含むベクターで形質移入させた。細胞生存度が80%よりも低くなったときの形質移入から4~5日後に培養物上澄みを回収した。
【0263】
ACT017のために、シグナルペプチド配列に融合させたACT017の軽鎖の定常および可変領域をコードする配列およびクローニング部位含む配列番号19と、シグナルペプチド配列に融合させたACT017の重鎖の定常および可変領域をコードする配列およびクローニング部位を含む配列番号18とを含むベクターを用いて細胞を形質移入させた。
【0264】
ACT006のために、シグナルペプチド配列に融合させたACT006の軽鎖の定常および可変領域をコードする配列およびクローニング部位を含む配列番号20と、シグナルペプチド配列に融合させたACT006の重鎖の定常および可変領域をコードする配列およびクローニング部位を含む配列番号18とを含むベクターを用いて細胞を形質移入させた。
【0265】
精製のために、製造業者の説明書に従ってヒト化FabのcDNAが一過性に形質移入された細胞の馴化培地をプロテインL-アガロースカラム(PIERCEプロテインL-アガロースcat番号20510017)に添加した。0.1Mのグリシン(pH2.5)および1MのTris(pH11)の表面で回収した画分を用いてこのFabを溶出させてpHを中和させた。PBSに対する透析後に、光散乱の補正のために280nmおよび320nmにおける吸光度を測定し、かつ当該配列から測定した場合に1.5の0.1%溶液吸光度値(A280nm
0.1%)を用いて、このFabの濃度を決定した。このタンパク質濃度をBCAアッセイで確認した。このFabの純度をSDS-PAGEおよびクマシーブルー染色で評価した。
【0266】
図1に示すように、非還元条件では、精製したヒト化Fabはそのアミノ酸配列に一致する42kDaの主要なバンドとして泳動した。ジスルフィド架橋還元後に、23~24kDaにおいて重鎖および軽鎖に対応する二重線が観察された。
【0267】
実施例2:GPVI-Fcへの結合
可溶性GPVI-Fcを以下のように作製した:GPVIの予測される細胞外ドメインのオープンリーディングフレームを、最初のメチオニンの前のKozak配列から予測される膜貫通配列の直前のアスパラギン269までPCR増幅させた。hGPVI cDNAの細胞外部分がそのC末端においてβアラニンリンカーを介してhFc配列に融合されるように、PCR断片をヒトIgG1のFcドメインのゲノム配列を含むpCDM8宿主ベクターの中に連結させた。配列決定されたDNA構築物をHEK293T細胞に形質移入した。製造業者の推奨に従ってプロテインAアガロース上での親和性クロマトグラフィーによって、GPVI-Fcを当該細胞の馴化培地から精製した。
【0268】
マイクロタイトレーションプレートをGPVI-FcのPBS溶液(2μg/mL、1ウェル当たり100μL)で4℃で一晩被覆した。非特異的結合部位を100μLの1%BSAのPBS溶液で120分間飽和させた。次いで、このプレートを増加濃度の抗体製剤(0.1%BSAおよび0.1%Tween20を含む100μLのPBS溶液)と共に120分間インキュベートした。4回の洗浄工程後に、プレートをアルカリホスファターゼに結合させたヒトFabに対するマウス抗体(100μLの0.1%BSAおよび0.1%Tween20を含むPBS溶液)と共に120分間インキュベートした。最後に、100μLの基質溶液(パラニトロフェニルリン酸)を各ウェルに5分間添加し、比色定量反応を25μLのNaOH(3M)で停止させた後、405nmで吸光度を読み取った。あるいは、基質としてペルオキシダーゼに結合させたプロテインLおよびO-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を用いてGPVIに結合した抗体を検出し、次いで485nmで読み取りを行った。
【0269】
図2は、固定化されたGPVI-Fcに対する本発明の2種類のヒト化Fabの等温結合曲線を示す。この曲線の分析によりACT006では1nM、ACT017では0.5nMの半飽和定数を計算することができた。
【0270】
実施例3:表面プラズモン共鳴(BIAcore)
ACT017、ACT006およびFab 9O12の可溶性ヒトGPVIへの結合をBIAcore 2000システム(スウェーデンのウプサラ)を用いる表面プラズモン共鳴で分析した。
【0271】
可溶性GPVI-Fc(実施例2に記載されているように作製)を、アミンカップリング法(ウィザード法)を用いてカルボキシメチルデキストランCM5センサーチップ上に10mMの酢酸塩緩衝液(pH6)中に960~1071RU(約6.4~7.15fmol/mm2に対応する)の範囲の用量で固定化させた。次いで、このタンパク質をPBS(pH7.4)(10mMのリン酸塩、138mMのNaCl、2.7mMのKCl、25.4℃でpH7.42)溶液として、固定化されたGPVI-Fcの上を20μL/分の流速および25℃で移動させた。データを結合モデルに当てはめることによって、BIAevaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いて速度定数(KA、KD、kon、koff)および親和性を決定する。PBS(pH7.4)は泳動用緩衝液である。
【0272】
【0273】
このように、本発明の抗体(ACT017およびACT006)は、先行技術に記載され、かつ同じ実験条件で研究したモノクローナルFab 9O12と比較した場合に可溶性GPVIに対して高い親和性を示す。
【0274】
実施例4:生物学的データ
材料および方法
ヒト血小板:10日間薬を服用していなかった健康な志願者から静脈穿刺によりクエン酸ナトリウム3.2%(Vacutainer Beckton Dickinson社、フランスのル・ポン=ド=クレ)上に血液を採取した。血液ドナーは全員、ヘルシンキ宣言の倫理基準に従うこの調査研究に対して自身自由意思に基づき事前に十分な情報を与えられた上での合意書を提出した志願者であった。
【0275】
フローサイトメトリー:製造業者の推奨に従ってヒト化Fab ACT017をAlexa488(Molecular Probes社)に結合させた。抗体複合体精製キット(Molecular Probes社)を用いて分離を行い、280および494nmで濃度を決定した。A488結合ヒト化Fabを異なる濃度で全血中のヒト血小板または多血小板血漿と共に暗所かつ室温で20分間インキュベートした。PBSでの希釈後に、蛍光活性化セルソーター(FACS LSR II BD)フローサイトメーターで細胞を分析した。
【0276】
血小板凝集:遠心分離(120×g、15分間、20℃)後にヒト多血小板血漿(PRP)を得て、即座に使用した。APACT(登録商標)血小板凝集計を用いて血小板凝集を測定し、各種濃度のヒト化Fabを含むPRPへの1μg.mL-1の1型コラーゲン(Hormコラーゲン、Nycomed社、DE)の添加によって開始して連続的に記録した。その凝集の速度および強度を測定した。
【0277】
GPVI-ヒト化マウス:ヒトgp6遺伝子配列をマウスgp6遺伝子のATGにおいてエクソン1に導入することによって、以前に報告されたようにgp6ノックイン突然変異マウス株を確立した(Mangin Pら, A Humanized Glycoprotein VI (GPVI) Mouse Model to Assess the Antithrombotic Efficacies of Anti-GPVI Agents(抗GPVI薬剤の抗血栓作用を評価するためのヒト化糖タンパク質VI(GPVI)マウスモデル). J Pharmacol Exp Ther. 2012;341(1):156-63. doi: 10.1124/jpet.111.189050. Epub 2012 Jan 11)。このマウスは生存可能かつ繁殖可能であり、どんな血液学的欠陥も示さなかった。血小板表面において約3700コピーのヒトGPVIが検出された。
【0278】
血小板数:マウスの尾部を切断した後、全血をEDTA(6mM)の中に採取した。マウスのパラメータに設定したscil Vet abc自動セルカウンター(Scil Animal Care Company社、フランスのホルツハイム)で血小板数を決定した。
【0279】
生体外での血小板凝集:注射前および増加用量のACT017または当量体積の媒体の注射から30分後に血液をクエン酸三ナトリウム上に採取し、遠心分離によってPRPを得た。血小板数を300×109.L-1に調整し、1μg.mL-1のI型コラーゲンによって惹起された血小板凝集を4チャネルCARAT TX4血小板凝集計で連続的に記録した。
【0280】
GPVI発現:注射前および増加用量のACT017または当量体積の媒体の注射から30分後に血液試料をEDTA上に採取し、ACT017のエピトープとは異なるエピトープにあるヒトGPVIを認識するFITC結合抗GPVIモノクローナル抗体3J24(10μg.mL-1)と共にインキュベートし、Beckman Coulter Galliosフローサイトメーターで蛍光を測定した。
【0281】
尾部の出血時間および失血:麻酔したマウスの尾部の末端をメス(3mm)で横方向に切断し、即座に13mLの0.9%等張性生理食塩水を含む管の中に37℃で浸漬した。出血を観察し、30分間測定し、必要に応じて10分の時点で出血を手で停止させて死亡を防いだ。ヘモグロビン含有量に基づき失血体積を測定した。
【0282】
カニクイザル:本研究ではどんな過去の治療も受けたことのない8匹のカニクイザルを使用した。主としてヒト血小板について記載されているように、2.5mg.mL-1のコラーゲン濃度を用いて血小板凝集測定を行った。EDTA抗凝固血液中で血小板数を測定した。標準的な臨床診断法に従い、かつ0.5cmのSurgicutt(商標)出血時間装置を用いて、覚醒状態のサルの前腕の表面で出血時間を測定した。カニクイザルGPVIと交差反応する市販のFITC結合抗ヒトGPVIモノクローナル抗体(クローン1G5、Biocytex社)を用いて主として上記のようにGPVI発現を測定した。
【0283】
結果
試験管内でのACT017のヒト血小板への結合-フローサイトメトリーで測定した場合にヒト血小板に結合するAlexa488結合ACT017の典型的な曲線が
図3に示されている。1~2μg/mL(20~40nM)の抗体濃度において全血およびPRP中で血小板の飽和が得られる。
【0284】
試験管内でのヒト血小板のコラーゲン誘導性凝集の阻害-ヒトPRPと増加濃度のACT017とをプレインキュベートした後に得られた典型的な凝集曲線が
図4に示されている。これらの条件では、ACT017は5μg/mL以上の濃度でコラーゲン誘導性血小板凝集を完全に阻害した。
【0285】
コラーゲン誘導性血小板凝集を阻害するACT017の能力を
図5に示すように応答の速度および強度について定量化した。3匹の異なるドナーについて、平均IC50は強度および速度のそれぞれにおいて3.2±2.5および2±0.7μg.mL
-1であり、両事例において6.7±2.9μg.mL
-1の濃度で総阻害が観察され、これは血小板への結合の結果に良好に一致している。
【0286】
従って、これらの結果は本発明のタンパク質がコラーゲン誘導性血小板凝集の強力な阻害剤であることを実証している。
【0287】
コラーゲン誘導性血小板凝集、血小板数およびGPVI発現に対する生体外でのACT017の効果を分析するために、GPVIヒト化マウスにACT017(1、2または4mg/kg)または媒体の静脈内注射を行った。注射から30分後に、コラーゲン誘導性血小板凝集、血小板数およびGPVI発現の分析のために血液を採取した。
【0288】
図6に示すように、マウスに0.5mg/kg以上の用量でACT017を与えた場合にコラーゲン誘導性血小板凝集の完全な阻害が観察される。
【0289】
GPVIの発現に関しては、治療前および治療後に採取した試料中ならびに媒体(ACT017:0mg/kg)または異なる用量のACT017で治療したマウスからの試料間において、血小板の平均蛍光において統計学的差は認められなかった(
図7、左のパネル)。
図7の中央および右のパネルは、媒体またはACT017(4mg/kg)で治療した個々の動物における注射前の時間と注射から30分後との間のGPVI発現の漸増的変化を示す。
【0290】
これらの結果は、ACT017が生体内でGPVI枯渇を誘導しないことを実証している。
【0291】
さらに、媒体(ACT017:0mg/kg)またはACT017(4mg/kg)を摂取したマウスの血小板数を測定した。
図8に示すように、2つの群における統計学的差は証明されなかった(平均±SD:847.7±110.5対842±115.5)。
【0292】
ACT017(4mg/kg)の投与から30分後にマウスの尾部の切断によって測定した出血時間および失血は、対照マウス(媒体注射)において得られた値と比較した場合変化していなかった(
図9)。比較のために、クロピドグレルで治療したマウス(10mg/kg、実験の1日前および実験の2時間前)の出血時間は有意に増加し、失血も同様であった。
【0293】
この結果は、ACT017が生体内での血小板数の減少すなわち血小板減少症を誘導しないことを実証している。
【0294】
ACT017投与の効果を非ヒト霊長類においてさらに特徴づけた。8匹のカニクイザルがこの研究に参加した。最初に、増加用量のACT017(1、2、4、8mg/kg)を15分間にわたって静脈内投与した。投与から30分および2時間後の時点で血液を採取した。血小板凝集は用量依存的に可逆的に阻害された(
図10)。1~2から2~4mg/kgに用量を増加させると効果が高まったが、8mg/kgでは4mg/kgと比較した場合にさらなる効果は生じなかった。注射から24時間後に測定した血小板数は、注射前に得られた値と比較した場合に変化していなかった(
図11)。媒体あるいは2、4または8mg/kgのACT017での治療後に出血時間における有意な延長は観察されなかった(
図12)。次に、洗浄期間後に、カニクイザルに1時間の潅流として投与されるACT017(2または8mg/kg)を与えた。血小板凝集およびGPVI発現を治療の開始後の異なる時間(1、1.5、2、4および7時間)で測定した(
図13および
図14)。コラーゲン誘導性血小板凝集は可逆的に阻害され、その効果の持続期間は2mg/kgと比較して8mg/kgで治療したカニクイザルにおいて引き延ばされた(
図13)。血小板上でのGPVI発現は、治療前の値と比較した場合に治療の開始後の異なる時間で安定なままであった(
図14)。
【0295】
まとめると、これらの結果から非ヒト霊長類におけるACT017の投与は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現または出血時間に対して影響を与えることなくGPVI機能を効率的かつ可逆的に阻害することが確認される。
【0296】
実施例5:エピトープマッピング
材料および方法
標的分子すなわちヒトGPVIのエピトープを再構築するために、ペプチドライブラリーを合成した。専売の親水性ポリマー製剤でグラフト化した後、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と共にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてt-ブチルオキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、その後にトリフルオロ酢酸(TFA)を用いてBoc基を切断することにより、アミノ官能化ポリプロピレン支持体を得た。標準的なFmocペプチド合成を使用して、カスタム修正されたJANUSリキッドハンドリングステーション(Perkin Elmer社)によってアミノ官能化固体支持体上でペプチドを合成した。
【0297】
Pepscan社専売のCLIPS(Chemically Linked Peptides on Scaffolds)(足場上の化学的結合ペプチド)技術を用いて構造的模倣体の合成を行った。CLIPS技術により構造ペプチドを単一ループ、二重ループ、三重ループ、シート様フォールド、へリックス様フォールドおよびそれらの組み合わせにすることができる。CLIPSテンプレートをシステイン残基に結合させる。ペプチド内の複数のシステインの側鎖を1つまたは2つのCLIPSテンプレートに結合させる。例えば、0.5mMのP2 CLIPS(2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン)溶液を重炭酸アンモニウム(20mM、pH7.8)/アセトニトリル(1:3(v/v))に溶解する。この溶液をペプチドアレイの上に添加する。CLIPSテンプレートは、ペプチドアレイ(3μLのウェルを有する455ウェルのプレート)の固相に結合したペプチド中に存在する2つのシステインの側鎖に結合する。このペプチドアレイを溶液で完全に覆われた状態で溶液中で30~60分間穏やかに振盪する。最後に、このペプチドアレイを過剰なH2Oで広範囲に洗浄し、PBS(pH7.2)中に1%SDS/0.1%β-メルカプトエタノールを含む破壊緩衝液中70℃で30分間超音波処理した後、H2O中でさらに45分間超音波処理する。3つのシステインを使用すること以外は同様の方法でペプチドを支持するT3 CLIPSを作製した。
【0298】
PEPSCANに基づくELISAにおいてACT017の合成ペプチドのそれぞれへの結合を試験した。このペプチドアレイを一次抗体溶液と共にインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、このペプチドアレイを1/1000希釈の適当な抗体ペルオキシダーゼ複合体(SBA、ヤギ抗ヒトHRP複合体、Southern Biotech社、2010-05)と共に25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート(ABTS)および20μl/mLの3%H2O2を添加した。1時間後、発色現象を測定した。発色現象を電荷結合素子(CCD)カメラおよび画像処理装置を用いて定量化した。
【0299】
CCDカメラから得られる値は、標準的な96ウェルプレートELISA-リーダーと同様の0~3000mAUの範囲である。その結果を定量化し、Peplabデータベースに保存する。
【0300】
合成ペプチドの品質を確認するために別個のセットの陽性および陰性対照ペプチドを同時に合成した。これらを抗体57.9を用いてスクリーニングした(Posthumusら, J. Virology, 1990, 64:3304-3309)。
【0301】
各セットのペプチド(直鎖状、ヘリカル状、ループ状、不連続状)の強度プロファイルを分析し、系統的な結合を評価した。
【0302】
結果
数回の条件の最適化後に、ACT017がペプチド鎖GPAVSSGGDVTLQCQおよびTVTAAHSGTYRCYSFからなる不連続状エピトープ(GPAVSSGGDVTLQCQが認識部位の主要な部分である)を系統的に認識することが分かったが、それは、この配列を含むCLIPSによって制約されるペプチドもACT017によって結合することができるが、この配列を含む直鎖状ペプチドで検出可能な結合は存在しないからである。
【0303】
どんな理論によっても縛られたくはないが、ペプチド鎖TVTAAHSGTYRCYSFが恐らくその結合のためにさらなる構造的状況を提供すると仮定される。
【0304】
ペプチド鎖GPAVSSGGDVTLQCQはマウスGPVIにおいていくつかの非同義突然変異により著しく変化しているが、対照的に非ヒト霊長類では高度に保存されている。どんな理論によっても縛られたくはないが、これはACT017がヒトGPVIおよび非ヒト霊長類GPVIに結合するがマウスのGPVIには結合しない理由を説明しているものと示唆される。
【0305】
どんな理論によっても縛られたくはないが、ACT17の同定されたエピトープへの結合は、コラーゲンのGPVI Ig様C2型ドメイン1(D1)および/またはGPVI二量体化への結合およびその後のコラーゲンへの高親和性結合を損なうに違いないことが示唆される。
【配列表】