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特許7277700撥水性保護膜形成用薬液、及びウェハの表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】撥水性保護膜形成用薬液、及びウェハの表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20230512BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230512BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20230512BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C09K3/18 104
H01L21/304 647A
C09K3/18 103
C09K3/18 102
C07F7/08 K
C07F7/10 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018231703
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2019123860
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018003977
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 由季
(72)【発明者】
【氏名】照井 貴陽
(72)【発明者】
【氏名】山田 周平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】公文 創一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 彩織
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克哉
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015335(JP,A)
【文献】特開2013-118347(JP,A)
【文献】特開2016-036038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
H01L 21/304
C07F 7/08
C07F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)下記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と
(II)下記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(III)非プロトン性溶剤
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物とを有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液。
(RSi(H)(NH4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(RSi(H)4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。また、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
[(R Si(H) NH [4]
[式[4]中、R は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。
【請求項2】
前記(I)が、下記一般式[3]で表される化合物である、請求項1に記載の撥水性保護膜形成用薬液。
(RSi(H)NH [3]
[式[3]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【請求項3】
前記(I)~(III)の総量に対する(II)の含有量が0.05~20質量%である、請求項1又は2に記載の撥水性保護膜形成用薬液。
【請求項4】
前記(II)が、下記一般式[5]からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~のいずれかに記載の撥水性保護膜形成用薬液。
(RSi(OC(=O)R4-g [5]
[式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基であり、Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。また、gは1~3の整数である。]
【請求項5】
ウェハ表面に洗浄液及びリンス液からなる群から選ばれる少なくとも1種の液体が保持された状態で、該液体を、
(I)下記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と
(II)下記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(III)非プロトン性溶剤
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物とを有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液で置換し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、
乾燥工程
を有する、ウェハの表面処理方法。
(RSi(H)(NH4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(RSi(H)4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。また、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
[(R Si(H) NH [4]
[式[4]中、R は、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【請求項6】
前記(I)が、下記一般式[3]で表される化合物である、請求項に記載のウェハの表面処理方法。
(RSi(H)NH [3]
[式[3]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【請求項7】
前記撥水性保護膜形成工程の前に、
(II)前記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(IV)前記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させることにより、
前記(I)~(III)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有する、請求項5又は6に記載のウェハの表面処理方法
【請求項8】
前記撥水性保護膜形成工程の前に、
(II)前記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(IV)前記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させることにより、
前記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有する、請求項に記載のウェハの表面処理方法
【請求項9】
前記薬液調製工程が、
プロトン性化合物を含有する空間中に前記原料薬液を導入して両者を接触させることである、請求項又はに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項10】
前記プロトン性化合物が気体状態である、請求項のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項11】
前記プロトン性化合物が液体状態である、請求項のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項12】
前記プロトン性化合物が、-OH基、及び/又は、-NH基を有する化合物である、請求項11のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項13】
前記プロトン性化合物が水、及び/又は、2-プロパノールである、請求項12のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項14】
前記撥水性保護膜形成工程の前に、
(IV)前記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で下記一般式[6]で表される酸性化合物を接触させることにより、
前記(I)~(III)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程、
を有する、請求項5又は6に記載のウェハの表面処理方法
H-X [6]
[式[6]中、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rを表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。]
【請求項15】
前記撥水性保護膜形成工程の前に、
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で下記一般式[6]で表される酸性化合物を接触させることにより、
前記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有する、請求項に記載のウェハの表面処理方法。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
H-X [6]
[式[6]中、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rを表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。]
【請求項16】
前記(I)~(III)の総量に対する(II)の含有量が0.05~20質量%である、請求項15のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
【請求項17】
前記(II)が、下記一般式[5]からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項16のいずれかに記載のウェハの表面処理方法。
(RSi(OC(=O)R4-g [5]
[式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基であり、Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。また、gは1~3の整数である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板(ウェハ)表面の微細な凹凸パターンの凹部表面に撥水性保護膜を形成するための撥水性保護膜形成用薬液、及びウェハの表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため回路パターンの微細化が進行しており、半導体デバイスの微細化に伴うパターンのアスペクト比が高くなることによる問題が顕在化している。すなわち洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象(以降「パターン倒れ」と記載する場合がある)を引き起こし、歩留まりが大幅に低下することが大きな問題となっている。
【0003】
このパターン倒れは、ウェハ表面から洗浄液やリンス液を乾燥除去するときに生じる。これは、パターンのアスペクト比が高い部分と低い部分との間において、残液高さの差ができ、それによってパターンに作用する毛細管力に差が生じることが原因と言われている。
このため、洗浄液やリンス液を撥水性保護膜形成用薬液で置換してパターン表面に撥水性保護膜を形成することで、当該パターンに作用する毛細管力を小さくすれば、残液高さの違いによる毛細管力の差が低減し、パターン倒れが解消すると期待できる。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、
表面に微細な凹凸パターンを有し該凹凸パターンの少なくとも一部がシリコン元素を含むウェハの洗浄時に、該凹凸パターンの少なくとも凹部表面に撥水性保護膜を形成するための薬液であり、
下記一般式で表される酸性ケイ素化合物Aと酸Aとを含み、
該酸Aはトリメチルシリルトリフルオロアセテート、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ジメチルシリルトリフルオロアセテート、ジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ブチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ヘキシルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ヘキシルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、オクチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、オクチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、デシルジメチルシリルトリフルオロアセテート、及び、デシルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記薬液の出発原料中の水分の総量が、該原料の総量に対し100質量ppm以下であることを特徴とする、撥水性保護膜形成用薬液や、
当該薬液を用いたウェハの洗浄方法について開示している。
Si(H)4-a-b
(Rは、それぞれ互いに独立して、炭素数が1~18の炭化水素基を含む1価の有機基、及び、炭素数が1~8のフルオロアルキル鎖を含む1価の有機基から選ばれる少なくとも1つの基であり、Xは、それぞれ互いに独立して、Si元素に結合する元素が窒素である1価の有機基であり、aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5821844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイス製造において、特に微細でアスペクト比の高い回路パターン化されたデバイスの製造歩留まりの向上を目的とした基板(ウェハ)の洗浄技術において、撥水性保護膜形成用薬液が開発されている。特許文献1に記載の保護膜形成用薬液は、確かに、優れた撥水性付与効果を発揮するとともに、薬液の出発原料中の水分の総量が該原料の総量に対し100質量ppm以下であることによって薬液の保管安定性に優れるものである。しかし、近年、半導体デバイスの高集積化、微小化の傾向が高まり、ウェハパターンの微細化・高アスペクト比化が進んでいることから、パターン倒れを低減させる撥水性保護膜形成用薬液には、撥水性付与効果の更なる向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(I)下記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と
(II)下記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液(以降、単に「保護膜形成用薬液」や「薬液」と記載する場合がある)である。
(RSi(H)(NH4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(RSi(H)4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。また、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
【0008】
また、上記(I)が、下記一般式[3]で表される化合物であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
(RSi(H)NH [3]
[式[3]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0009】
上記薬液は、(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物をさらに含有することが薬液の調製のし易さの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0010】
また、上記(I)~(III)の総量に対する(II)の含有量は、撥水性付与効果の向上の観点から0.05質量%以上が好ましく、また、コストの観点から20質量%以下が好ましい。
【0011】
また、上記(II)が、下記一般式[5]からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが撥水性付与効果の向上の観点から好ましい。
(RSi(OC(=O)R4-g [5]
[式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基であり、Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。また、gは1~3の整数である。]
【0012】
また本発明は、
ウェハ表面に洗浄液及びリンス液からなる群から選ばれる少なくとも1種の液体が保持された状態で、該液体を、
(I)下記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と
(II)下記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液で置換し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、
乾燥工程
を有する、ウェハの表面処理方法である。
(RSi(H)(NH4-a-b [1]
[式[1]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。aは1~3の整数、bは0~2の整数であり、aとbの合計は1~3である。]
(RSi(H)4-c-d [2]
[式[2]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。また、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rからなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、cとdの合計は1~3である。]
【0013】
また、上記(I)が、下記一般式[3]で表される化合物であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
(RSi(H)NH [3]
[式[3]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0014】
上記方法において、上記撥水性保護膜形成用薬液が、
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物をさらに含有することが薬液の調製のし易さの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0015】
また上記方法は、
上記撥水性保護膜形成工程の前に、
(II)上記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(III)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有することが薬液の調製のし易さの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0016】
また上記方法は、
上記撥水性保護膜形成工程の前に、
(II)上記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有することが薬液の調製のし易さの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
【0017】
また上記方法において、上記薬液調製工程が、
プロトン性化合物を含有する空間中に上記原料薬液を導入して両者を接触させることであると、両者を均一に接触させ易いため好ましい。なお、上記の空間中に含有されたプロトン性化合物は液体状態であっても、気体状態であってもよい。プロトン性化合物が気体状態の場合、空間中のプロトン性化合物の濃度(体積%)と接触させる時間を管理することが好ましい。
【0018】
また上記方法において、上記プロトン性化合物は、-OH基、及び/又は、-NH基を有する化合物であることが撥水性付与効果の向上の観点から好ましく、水、及び/又は、2-プロパノールであるとより好ましく、特に水が好ましい。
【0019】
また上記方法は、
上記撥水性保護膜形成工程の前に、
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で下記一般式[6]で表される酸性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(III)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程、
を有することが使用する原料の数が少なくできるため、コストの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
H-X [6]
[式[6]中、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rを表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。]
【0020】
また上記方法は、
上記撥水性保護膜形成工程の前に、
(IV)下記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で下記一般式[6]で表される酸性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程
を有することが使用する原料の数が少なくでき、コストの観点から好ましい。
[(RSi(H)NH [4]
[式[4]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基である。eは1~3の整数、fは0~2の整数であり、eとfの合計は3である。]
H-X [6]
[式[6]中、Xは、ハロゲン基、-OC(=O)R、-OS(=O)-R、-N(S(=O)-R、-C(S(=O)-Rを表す。Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。]
【0021】
また上記方法において、上記(I)~(III)の総量に対する(II)の含有量は、撥水性付与効果の向上の観点から0.05質量%以上が好ましく、また、コストの観点から20質量%以下が好ましい。
【0022】
また上記方法において、上記(II)が、下記一般式[5]からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であると、撥水性付与効果の向上の観点から好ましい。
(RSi(OC(=O)R4-g [5]
[式[5]中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部または全ての水素元素がフッ素元素に置き換えられていても良い炭素数が1乃至18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基であり、Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基である。また、gは1~3の整数である。]
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より優れた撥水性付与効果を発揮できる新規な組成の撥水性保護膜形成用薬液、及び当該薬液を用いたウェハの表面処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】表面処理態様1のフローチャート
図2】表面処理態様2のフローチャート
図3】表面処理態様3のフローチャート
図4】表面処理態様4のフローチャート
図5】表面処理態様5のフローチャート
図6】表面処理態様6のフローチャート
図7】水添加量に対する、表面処理後の接触角のプロット(比較例1-1、実施例1-3、実施例1-2、実施例1-1、比較例1-2)
図8】水添加後のアミノシラン化合物の濃度に対する、表面処理後の接触角のプロット(比較例1-1、比較例1-2、実施例1-3、実施例1-2、実施例1-1)
図9】iPA添加量に対する、表面処理後の接触角のプロット(比較例1-1、実施例1-6、実施例1-5、実施例1-4、比較例1-3)
図10】iPA添加後のアミノシラン化合物の濃度に対する、表面処理後の接触角のプロット(比較例1-1、比較例1-3、実施例1-6、実施例1-5、実施例1-4)
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.撥水性保護膜形成用薬液
撥水性保護膜形成用薬液は、被処理体の表面に撥水性保護膜(以降、単に「保護膜」と記載する場合がある)を形成する際に使用される。被処理体の種類は特に限定されない。被処理体としては、「基板(ウェハ)」が好ましい。ここで、処理対象となる「ウェハ」としては、半導体デバイス作製のために使用されるウェハが例示され、「ウェハの表面」とは、ウェハ自体の表面のほか、ウェハ上に設けられた無機パターン及び樹脂パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層及び有機層の表面が例示される。
【0026】
ウェハ上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法によりウェハに存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成されたパターンが例示される。無機層としては、ウェハ自体の他、ウェハを構成する元素の酸化膜、ウェハの表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物の膜や層等が例示される。このような膜や層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において形成される無機物の膜や層等が例示される。
【0027】
ウェハ上に設けられた樹脂パターンとしては、フォトレジスト法によりウェハ上に形成された樹脂パターンが例示される。このような樹脂パターンは、例えば、ウェハ上にフォトレジストの膜である有機層を形成し、この有機層に対してフォトマスクを通して露光し、現像することによって形成される。有機層としては、ウェハ自体の表面の他、ウェハの表面に設けられた積層膜の表面等に設けられたものが例示される。このような有機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において、エッチングマスクを形成するために設けられた有機物の膜が例示される。
【0028】
予め調製して得た本発明の薬液をスピンコート法や浸漬法等の手段によってウェハ等の被処理体の表面に塗布して、当該表面に保持させることができる。
また、上記薬液を蒸気にしてウェハ等の被処理体の表面に供給して(以降、「蒸気法」と記載する場合がある)、当該表面に保持させることもできる。
【0029】
さらには、上記の原料薬液をスピンコート法や浸漬法や蒸気法等の手段によってウェハ等の被処理体の表面に塗布した状態でプロトン性化合物を接触させて、後述する反応によって撥水性保護膜形成用薬液を調製し、これを被処理体の表面に保持させることもできる。
また、予めプロトン性化合物を含有する空間中において、上記の原料薬液をスピンコート法や浸漬法や蒸気法等の手段によってウェハ等の被処理体の表面に塗布して、後述する反応によって撥水性保護膜形成用薬液を調製し、これを被処理体の表面に保持させることもできる。
【0030】
本発明の撥水性保護膜形成用薬液は、少なくとも(I)アミノシラン化合物と、(II)ケイ素化合物と、(III)非プロトン性溶剤とを含む。以下、各成分について説明する。
【0031】
[(I)アミノシラン化合物と(II)ケイ素化合物]
上記一般式[1]のRと、上記一般式[2]のRは、撥水性の官能基である。そして、上記一般式[1]の-NH基や上記一般式[2]の-X基が、例えば被処理体がケイ素を含有するウェハの場合であればウェハ表面のシラノール基等と反応し、上記撥水性の官能基を有する部位がウェハ表面に固定されることにより、該ウェハ表面に撥水性の保護膜が形成する。上記(I)と(II)の両方を用いることで、両者がウェハ表面と早く反応するようになり、より優れた撥水性付与効果が得られる。
【0032】
上記一般式[1]のRは、直鎖状アルキル基であると、上記被処理体であるウェハ表面に保護膜を形成した際に、該表面により優れた撥水性を付与できるため好ましい。
【0033】
上記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物の具体例としては、例えば、CHSi(NH、CSi(NH、CSi(NH、CSi(NH、C11Si(NH、C13Si(NH、C15Si(NH、C17Si(NH、C19Si(NH、C1021Si(NH、C1123Si(NH、C1225Si(NH、C1327Si(NH、C1429Si(NH、C1531Si(NH、C1633Si(NH、C1735Si(NH、C1837Si(NH、(CHSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、CSi(CH)(NH、(CSi(NH、C11Si(CH)(NH、C13Si(CH)(NH、C15Si(CH)(NH、C17Si(CH)(NH、C19Si(CH)(NH、C1021Si(CH)(NH、C1123Si(CH)(NH、C1225Si(CH)(NH、C1327Si(CH)(NH、C1429Si(CH)(NH、C1531Si(CH)(NH、C1633Si(CH)(NH、C1735Si(CH)(NH、C1837Si(CH)(NH、(CHSiNH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSi(CH)NH、(CSiNH、CSi(CHNH、(CSiNH、C11Si(CHNH、C13Si(CHNH、C15Si(CHNH、C17Si(CHNH、C19Si(CHNH、C1021Si(CHNH、C1123Si(CHNH、C1225Si(CHNH、C1327Si(CHNH、C1429Si(CHNH、C1531Si(CHNH、C1633Si(CHNH、C1735Si(CHNH、C1837Si(CHNH、(CHSi(H)NH、CHSi(H)NH、(CSi(H)NH、CSi(H)NH、CSi(CH)(H)NH、(CSi(H)NH、CSi(H)NH、CFCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、CCHCHSi(NH、C11CHCHSi(NH、C13CHCHSi(NH、C15CHCHSi(NH、C17CHCHSi(NH、CFCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、CCHCHSi(CH)(NH、C11CHCHSi(CH)(NH、C13CHCHSi(CH)(NH、C15CHCHSi(CH)(NH、C17CHCHSi(CH)(NH、CFCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、CCHCHSi(CHNH、C11CHCHSi(CHNH、C13CHCHSi(CHNH、C15CHCHSi(CHNH、C17CHCHSi(CHNH、CFCHCHSi(CH)(H)NHなどが挙げられる。
【0034】
また、上記一般式[1]において4-a-bで表される-NH基の数が1であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0035】
また、上記一般式[1]においてbが0であると、後述の保護膜形成後の洗浄(リンス)を行った場合であっても撥水性を維持しやすいため好ましい。
【0036】
さらに、上記Rは、2個の-CH基と1個の直鎖状アルキル基の組合せであると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0037】
さらに、上記Rは、3個の-CH基であることが特に好ましい。
【0038】
また、上記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物は、反応によって得られたものであってもよい。
【0039】
上記(I)アミノシラン化合物は、(I)~(III)の総量に対して0.02~0.5質量%である。0.02質量%未満では、撥水性付与効果の更なる向上が達成できない。また、0.5質量%を超えると、アミノシラン同士が反応しやすくなるため薬液の調製が難しくなる。好ましくは0.03~0.4質量%、より好ましくは0.03~0.3質量%である。
【0040】
また、上記一般式[2]で表されるケイ素化合物の具体例としては、CHSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、CSi(OC(=O)CF、C11Si(OC(=O)CF、C13Si(OC(=O)CF、C15Si(OC(=O)CF、C17Si(OC(=O)CF、C19Si(OC(=O)CF、C1021Si(OC(=O)CF、C1123Si(OC(=O)CF、C1225Si(OC(=O)CF、C1327Si(OC(=O)CF、C1429Si(OC(=O)CF、C1531Si(OC(=O)CF、C1633Si(OC(=O)CF、C1735Si(OC(=O)CF、C1837Si(OC(=O)CF、(CHSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、CSi(CH)(OC(=O)CF、(CSi(OC(=O)CF、C11Si(CH)(OC(=O)CF、C13Si(CH)(OC(=O)CF、C15Si(CH)(OC(=O)CF、C17Si(CH)(OC(=O)CF、C19Si(CH)(OC(=O)CF、C1021Si(CH)(OC(=O)CF、C1123Si(CH)(OC(=O)CF、C1225Si(CH)(OC(=O)CF、C1327Si(CH)(OC(=O)CF、C1429Si(CH)(OC(=O)CF、C1531Si(CH)(OC(=O)CF、C1633Si(CH)(OC(=O)CF、C1735Si(CH)(OC(=O)CF、C1837Si(CH)(OC(=O)CF、(CHSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSi(CH)OC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSi(CH)OC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、CSi(CHOC(=O)CF、(CSiOC(=O)CF、C11Si(CHOC(=O)CF、C13Si(CHOC(=O)CF、C15Si(CHOC(=O)CF、C17Si(CHOC(=O)CF、C19Si(CHOC(=O)CF、C1021Si(CHOC(=O)CF、C1123Si(CHOC(=O)CF、C1225Si(CHOC(=O)CF、C1327Si(CHOC(=O)CF、C1429Si(CHOC(=O)CF、C1531Si(CHOC(=O)CF、C1633Si(CHOC(=O)CF、C1735Si(CHOC(=O)CF、C1837Si(CHOC(=O)CF、(CHSi(H)OC(=O)CF、CHSi(H)OC(=O)CF、(CSi(H)OC(=O)CF、CSi(H)OC(=O)CF、CSi(CH)(H)OC(=O)CF、(CSi(H)OC(=O)CF、CSi(H)OC(=O)CF、CFCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、CCHCHSi(OC(=O)CF、C11CHCHSi(OC(=O)CF、C13CHCHSi(OC(=O)CF、C15CHCHSi(OC(=O)CF、C17CHCHSi(OC(=O)CF、CFCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CCHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C11CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C13CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C15CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、C17CHCHSi(CH)(OC(=O)CF、CFCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、CCHCHSi(CHOC(=O)CF、C11CHCHSi(CHOC(=O)CF、C13CHCHSi(CHOC(=O)CF、C15CHCHSi(CHOC(=O)CF、C17CHCHSi(CHOC(=O)CF、CFCHCHSi(CH)(H)OC(=O)CF等のトリフルオロアセトキシシラン、あるいは、上記トリフルオロアセトキシシランの-OC(=O)CF基を、ハロゲン基、-OC(=O)CF基以外の-OC(=O)R基、-OS(=O)-R基、-N(S(=O)-R基、-C(S(=O)-R基(Rは、炭素数が1乃至6の1価のパーフルオロアルキル基)に置き換えたものなどが挙げら





れる。
【0041】
また、上記一般式[2]において4-c-dで表される-X基の数が1であると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0042】
また、上記一般式[2]においてdが0であると、後述の保護膜形成後の洗浄(リンス)を行った場合であっても撥水性を維持しやすいため好ましい。
【0043】
さらに、上記Rは、2個の-CH基と1個の直鎖状アルキル基の組合せであると、上記保護膜を均質に形成できるのでより好ましい。
【0044】
さらに、上記Rは、3個の-CH基であることが特に好ましい。
【0045】
また、上記一般式[2]で表されるケイ素化合物は、反応によって得られたものであってもよい。
【0046】
また、(I)~(III)の総量に対する(II)ケイ素化合物の含有量は、撥水性付与効果の向上の観点から0.05質量%以上が好ましく、また、コストの観点から20質量%以下が好ましい。さらに好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~10質量%である。
【0047】
[(III)非プロトン性溶剤]
本発明の撥水性保護膜形成用薬液は、非プロトン性溶剤を含有する。非プロトン性溶剤を含有することにより、スピンコート法や浸漬法や蒸気法等による被処理体の表面処理を容易に行うことができる。また、薬液の保管安定性を確保しやすい。
【0048】
上記非プロトン性溶剤としては、例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないもの、N-H基を持たない窒素元素含有溶媒、シリコーン溶媒、テルペン系溶媒などの有機溶媒、あるいは、それらの混合液が好適に使用される。この中でも、炭化水素類、エステル類、エーテル類、含ハロゲン溶媒、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないもの、あるいは、それらの混合液を用いると、被処理体の表面に上記保護膜を短時間に形成できるためより好ましい。
【0049】
上記炭化水素類の例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン、n-アイコサン、並びにそれらの炭素数に対応する分岐状の炭化水素(例えば、イソドデカン、イソセタンなど)、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、(オルト-、メタ-、又はパラ-)ジエチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンなどがあり、上記エステル類の例としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、ぎ酸n-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチルなどがあり、上記エーテル類の例としては、ジ-n-プロピルエーテル、エチル-n-ブチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチル-n-アミルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、エチル-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル、並びにそれらの炭素数に対応するジイソプロピルエーテル、ジイソアミルエーテルなどの分岐状の炭化水素基を有するエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあり、上記ケトン類の例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどがあり、上記含ハロゲン溶媒の例としては、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンなどのパーフルオロカーボン、1、1、1、3、3-ペンタフルオロブタン、オクタフルオロシクロペンタン、2,3-ジハイドロデカフルオロペンタン、ゼオローラH(日本ゼオン製)などのハイドロフルオロカーボン、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル、アサヒクリンAE-3000(旭硝子製)、Novec7100、Novec7200、Novec7300、Novec7600(いずれも3M製)などのハイドロフルオロエーテル、テトラクロロメタンなどのクロロカーボン、クロロホルムなどのハイドロクロロカーボン、ジクロロジフルオロメタンなどのクロロフルオロカーボン、1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンなどのハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、パーフルオロポリエーテルなどがあり、上記スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドなどがあり、上記スルホン系溶媒の例としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホンなどがあり、上記ラクトン系溶媒の例としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ウンデカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ノナノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ウンデカノラクトン、δ-ドデカノラクトン、ε-ヘキサノラクトンなどがあり、上記カーボネート系溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどがあり、上記多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものの例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネートなどがあり、上記N-H基を持たない窒素元素含有溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン、トリエチルアミン、ピリジンなどがあり、シリコーン溶媒の例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンなどがあり、テルペン系溶媒の例としては、p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナンなどがある。
【0050】
また、上記非プロトン性溶剤として引火点が70℃を超える溶媒を用いると、消防法上の安全性の観点から好ましい。例えば、カーボネート系溶媒や、多価アルコールの誘導体のうちOH基を持たないものは、引火点が高いものが多いので薬液の危険性を低くできるため好ましい。上記の安全性の観点から、具体的には引火点が70℃を超える、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等を上記溶剤として用いることがより好ましい。
【0051】
本発明の撥水性保護膜形成用薬液は、該薬液の安定性をさらに高めるために、重合禁止剤や連鎖移動剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0052】
また、上記薬液中の液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.2μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であることが好ましい。上記0.2μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個超であると、パーティクルにより、被処理体であるウェハのパターンダメージを誘発する恐れがありデバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、0.2μmより大きい粒子の数が該薬液1mL当たり100個以下であれば、上記保護膜を形成した後の、溶媒や水による該ウェハ表面(保護膜表面)の洗浄(リンス)を省略又は低減できるため好ましい。なお、上記0.2μmより大きい粒子の数は少ないほど好ましいが上記の含有量範囲内であれば該薬液1mL当たり1個以上あってもよい。なお、本発明における薬液中の液相でのパーティクル測定は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して測定するものであり、パーティクルの粒径とは、PSL(ポリスチレン製ラテックス)標準粒子基準の光散乱相当径を意味する。
【0053】
ここで、上記パーティクルとは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子や、薬液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子であり、最終的に薬液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
【0054】
また、上記薬液中のNa、Mg、K、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、Zn及びAgの各元素(金属不純物)の含有量が、該薬液総量に対し各0.1質量ppb以下であることが好ましい。上記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し0.1質量ppb超であると、デバイスの接合リーク電流を増大させる恐れがありデバイスの歩留まりの低下及び信頼性の低下を引き起こす原因となるため好ましくない。また、上記金属不純物含有量が、該薬液総量に対し各0.1質量ppb以下であると、被処理体であるウェハ表面に上記保護膜を形成した後の、溶媒や水による該ウェハ表面(保護膜表面)の洗浄(リンス)を省略又は低減できるため好ましい。このため、上記金属不純物含有量は少ないほど好ましいが、上記の含有量範囲内であれば該薬液の総量に対して、各元素につき、0.001質量ppb以上であってもよい。
【0055】
2.ウェハの表面処理方法
本発明の表面処理方法は、
ウェハ表面に洗浄液及びリンス液からなる群から選ばれる少なくとも1種の液体が保持された状態で、該液体を、
(I)上記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と
(II)上記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液で置換し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、
乾燥工程
を有するものである。
【0056】
すなわち、図1に示すように、
少なくとも、(I)、(II)、及び(III)を混合して溶液(撥水性保護膜形成用薬液)として、該薬液をウェハ表面に液体状態又は気体状態で供給して、該ウェハ表面に液体状態の撥水性保護膜形成用薬液を保持させる。
上記薬液の供給は、ウェハ表面に洗浄液やリンス液等の液体が保持された状態で行われ、当該液体を薬液で置換するものである。
置換に際して、ウェハ表面に保持された状態の洗浄液やリンス液等の液体としては特に限定はないが、2-プロパノール(iPA)等が一般的である。
上記置換によって、薬液をウェハ表面に保持することによりウェハ表面に撥水性保護膜を形成する。必要に応じてウェハ表面の上記薬液をリンス液に置換してリンス処理をさらに施しても良い。
そして、乾燥によりウェハ表面から液体を除去する。ウェハ表面に撥水性保護膜が形成されているため、優れた撥水性により乾燥時のパターン倒れを低減することができる。なお、乾燥により除去される液体としては、上記の撥水性保護膜形成用薬液、リンス液、又はそれらの混合液が挙げられる。
なお、除去される液体がリンス液であるときは、上記薬液がリンス液に置換されてリンス処理をさらに施された場合である。また、除去される液体が上記薬液とリンス液の混合液であるときは、上記薬液をリンス液に置換する途中の状態の「混合液」である場合でもよいし、予めリンス液に薬液原料を溶解した「混合液」を用いて上記薬液を置換した場合でもよい。後述の表面処理態様2~6においても、同様である。
以降、上記の態様を、「表面処理態様1」と記載する。
なお、表面処理態様1において、薬液の原料である(I)~(III)を混合する順番は特に限定されないが、(III)非プロトン性溶剤に(I)や(II)を混合することが好ましい。
【0057】
また本発明の表面処理方法は、
(II)上記一般式[2]で表されるケイ素化合物と
(IV)上記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(III)を有し、又は上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程、
ウェハ表面に洗浄液及びリンス液からなる群から選ばれる少なくとも1種の液体が保持された状態で、該液体を得られた撥水性保護膜形成用薬液で置換し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、
乾燥工程
を有するものである。
【0058】
原料薬液にプロトン性化合物を接触させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。なお、上記接触により撥水性保護膜形成用薬液を調製する際には、詳細は不明であるが、下記の反応式のごとく、上記一般式[2]で表されるケイ素化合物とプロトン性化合物(A-H)とが反応して生成した反応生成物(X-H;酸性化合物)が、上記一般式[4]で表されるシラザン化合物と反応することで、上記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物が生成し、その結果、
上記(I)~(III)を有し、又は上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液が得られると考えられる。

(R2)cSi(H)dX4-c-d + (4-c-d) A-H → (R2)cSi(H)dA4-c-d + (4-c-d) X-H
X-H + [(R1)eSi(H)f]2NH → (R1)eSi(H)fNH2 + (R1)eSi(H)fX
【0059】
この表面処理方法として、後述の表面処理態様2~3を採用することができる。
【0060】
(表面処理態様2)
図2に示すように、
少なくとも、(II)、(III)、及び(IV)を混合して溶液(原料薬液)として、該原料薬液にプロトン性化合物を、(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製する。上記接触に用いるプロトン性化合物は、非プロトン性溶剤で希釈されたもの(相溶しない場合は分散させた状態)であってもよい。当該希釈に用いる非プロトン性溶剤としては、本発明の(III)として述べたものが挙げられる。
薬液調製工程で用いられる原料薬液とプロトン性化合物は、液体状態であっても良く、気体状態であっても良い。例えば、チャンバー内の容器中やタンク中や合流点以降の配管中で液体状態の両者を混合することでもよいし、チャンバー内や気化室中や気化後の合流点以降の配管中で気体状態の両者を混合することでもよいし、チャンバー内の容器中の液体状態の原料薬液を気体状態のプロトン性化合物に曝して接触させることでもよい。なお、該原料薬液中に(I)が含まれていても良い。
【0061】
上記プロトン性化合物は、-OH基、及び/又は、-NH基を有する化合物であることが撥水性付与効果の向上の観点から好ましく、-OH基を有する化合物、及び/又は、NHであることが特に好ましい。さらに、水、及び/又は、炭素数が6個以下のアルコールが好ましく、特に、水、及び/又は、2-プロパノールであるとより好ましい。
【0062】
前記炭素数が6個以下のアルコールの例としては、メタノール、エタノール、直鎖又は分岐鎖の、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールだけでなく、多価アルコールやOH基を持つ多価アルコールの誘導体も挙げられる。前記多価アルコールの例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリンなどがあり、前記-OH基を持つ多価アルコールの誘導体の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
また、(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合でプロトン性化合物を接触させると、上記撥水性保護膜形成用薬液において、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量を0.02~0.5質量%に制御しやすいため好ましい。上記のプロトン性化合物を接触させる割合は、0.003~0.2モルの割合がより好ましく、0.003~0.1モルの割合が特に好ましい。
【0064】
そして、得られた薬液を液体状態又は気体状態でウェハ表面に供給して、該ウェハ表面に液体状態の撥水性保護膜形成用薬液を保持させる。なお、上述のように反応により(I)アミノシランが生成するため、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲となった状態の薬液をウェハ表面に供給する。一方で、副反応などの薬液組成への影響を無視しやすいので、上記の接触から1日以内の薬液をウェハ表面に供給することが好ましく、上記の接触から5時間以内の薬液をウェハ表面に供給することがより好ましく、上記の接触から1時間以内の薬液をウェハ表面に供給することが特に好ましい。
上記薬液の供給は、ウェハ表面に洗浄液やリンス液等の液体が保持された状態で行われ、当該液体を薬液で置換するものである。なお、上記の洗浄液やリンス液等の液体がプロトン性化合物である場合は、上記の置換の過程でもさらにプロトン性化合物が接触することになり、上記(II)とプロトン性化合物が反応し、反応生成物(酸性化合物)がさらに上記(IV)と反応することで上記(I)が新たに生成する可能性がある。しかし、上記の置換において、上記の洗浄液やリンス液等の液体は撥水性保護膜形成用薬液に速やかに置換されるため、上記(II)とプロトン性化合物とが反応する影響は殆どない。そのため、上記の置換に際して、上述のような(I)が新たに生成する影響は無視できる程度である。置換に際して、ウェハ表面に保持された状態の洗浄液やリンス液等の液体としては特に限定はないが、2-プロパノール(iPA)等が一般的である。
上記置換によって、薬液をウェハ表面に保持することによりウェハ表面に撥水性保護膜を形成する。必要に応じてウェハ表面の上記薬液をリンス液に置換してリンス処理をさらに施しても良い。
【0065】
そして、乾燥によりウェハ表面から液体を除去する。ウェハ表面に撥水性保護膜が形成されているため、優れた撥水性により乾燥時のパターン倒れを低減することができる。なお、乾燥により除去される液体としては、上記の撥水性保護膜形成用薬液、リンス液、又はそれらの混合液が挙げられる。
【0066】
(表面処理態様3)
図3に示すように、
少なくとも、(II)、(III)、及び(IV)を混合して溶液(原料薬液)として、該原料薬液を液体状態又は気体状態でウェハ表面に供給して、該ウェハ表面に液体状態の原料薬液を保持させる。
上記原料薬液の供給は、ウェハ表面に洗浄液やリンス液等の液体が保持された状態で行われ、当該液体を原料薬液で置換するものである。なお、上記の洗浄液やリンス液等の液体が水やアルコール等のプロトン性化合物である場合は、上記の置換の過程で上記(II)とプロトン性化合物が反応し、反応生成物(酸性化合物)がさらに上記(IV)と反応することで上記(I)が生成する可能性がある。しかし、上記の置換において、上記の洗浄液やリンス液等の液体は原料薬液に速やかに置換されるため、上記(II)とプロトン性化合物とが反応する影響は殆どない。そのため、上記の置換に際して、上述のような(I)が新たに生成する影響は無視できる程度である。置換に際して、ウェハ表面に保持された状態の洗浄液やリンス液等の液体としては特に限定はないが、2-プロパノール(iPA)等が一般的である。
次に、該原料薬液にプロトン性化合物を、(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で接触させて、ウェハ表面において撥水性保護膜形成用薬液を調製する。なお、上述のように反応により(I)アミノシランが生成するため、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲となるようにウェハ表面に薬液を保持する。
上記接触に用いるプロトン性化合物は、非プロトン性溶剤で希釈されたもの(相溶しない場合は分散させた状態)であってもよい。当該希釈に用いる非プロトン性溶剤としては、本発明の(III)として述べたものが挙げられる。薬液調製工程で用いられるプロトン性化合物は、液体状態であっても良く、気体状態であっても良い。例えば、チャンバー内でウェハ表面に保持された液体状態の原料薬液に液体状態のプロトン性化合物を添加することでもよいし、チャンバー内でウェハ表面に保持された液体状態の原料薬液を気体状態のプロトン性化合物に曝して接触させることでもよい。後者の場合、例えばチャンバー内を所定の濃度のプロトン性化合物の蒸気雰囲気にしておいて原料薬液の供給を行うことでもよい。
また、原料薬液と気体状態のプロトン性化合物を接触させる場合、ウェハ表面に溶液状態の原料薬液を広げて、気体状態のプロトン性化合物と接触させると、接触面積を大きくでき、短時間でプロトン性化合物を導入できるので好ましい。このとき、空間中の気体状態のプロトン性化合物の濃度は、0.05~5体積%が好ましく、さらに0.1~2体積%が好ましい。また、接触時間は、0.1~600秒が好ましく、さらに2~180秒が好ましい。ウェハ表面に原料薬液を広げる方法は適宜公知の方法が使用でき、特にスピンコート法が好ましい。
上述のように調製された薬液をウェハ表面に保持することによりウェハ表面に撥水性保護膜を形成する。必要に応じてウェハ表面の上記薬液をリンス液に置換してリンス処理をさらに施しても良い。
そして、乾燥によりウェハ表面から液体を除去する。ウェハ表面に撥水性保護膜が形成されているため、優れた撥水性により乾燥時のパターン倒れを低減することができる。なお、乾燥により除去される液体としては、上記の撥水性保護膜形成用薬液、リンス液、又はそれらの混合液が挙げられる。
【0067】
また本発明の表面処理方法は、
(IV)上記一般式[4]で表されるシラザン化合物と
(III)非プロトン性溶剤とを有する原料薬液に、
(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で、上記一般式[6]で表される酸性化合物を接触させることにより、
上記(I)~(III)を有し、又は上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、
撥水性保護膜形成用薬液を調製する、薬液調製工程、
ウェハ表面に洗浄液及びリンス液からなる群から選ばれる少なくとも1種の液体が保持された状態で、該液体を得られた撥水性保護膜形成用薬液で置換し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、
乾燥工程
を有するものである。
【0068】
原料薬液に酸性化合物を接触させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。なお、上記接触により撥水性保護膜形成用薬液を調製する際には、詳細は不明であるが、下記の反応式のごとく、上記一般式[4]で表されるシラザン化合物と上記一般式[6]で表される酸性化合物とが反応することで、上記一般式[1]で表されるアミノシラン化合物と上記一般式[2]で表されるケイ素化合物が生成し、その結果、
上記(I)~(III)を有し、又は上記(I)~(IV)を有し、
(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である、撥水性保護膜形成用薬液が得られると考えられる。

[(R1)eSi(H)f]2NH + X-H → (R1)eSi(H)fNH2 + (R1)eSi(H)fX
【0069】
また、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で酸性化合物を接触させると、上記撥水性保護膜形成用薬液において、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量を0.02~0.5質量%に制御しやすいため好ましい。上記の酸性化合物を接触させる割合は、0.003~0.2モルの割合がより好ましく、0.003~0.1モルの割合が特に好ましい。
【0070】
この表面処理方法として、後述の表面処理態様4~5を採用することができる。
【0071】
(表面処理態様4)
図4に示すように、
少なくとも、(III)及び(IV)を混合して溶液(原料薬液)として、該原料薬液に上記一般式[6]で表される酸性化合物を(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製する。上記接触に用いる酸性化合物は、非プロトン性溶剤で希釈されたもの(相溶しない場合は分散させた状態)であってもよい。当該希釈に用いる非プロトン性溶剤としては、本発明の(III)として述べたものが挙げられる。
薬液調製工程で用いられる原料薬液と酸性化合物は、液体状態であっても良く、気体状態であっても良い。例えば、チャンバー内の容器中やタンク中や合流点以降の配管中で液体状態の両者を混合することでもよいし、チャンバー内や気化室中や気化後の合流点以降の配管中で気体状態の両者を混合することでもよいし、チャンバー内の容器中の液体状態の原料薬液を気体状態の酸性化合物に曝して接触させることでもよい。
そして、得られた薬液を液体状態又は気体状態でウェハ表面に供給して、該ウェハ表面に液体状態の撥水性保護膜形成用薬液を保持させる。なお、上述のように反応により(I)アミノシランが生成するため、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲となった状態の薬液をウェハ表面に供給する。一方で、副反応などの薬液組成への影響を無視しやすいので、上記の接触から1日以内の薬液をウェハ表面に供給することが好ましく、上記の接触から5時間以内の薬液をウェハ表面に供給することがより好ましく、上記の接触から1時間以内の薬液をウェハ表面に供給することが特に好ましい。
上記薬液の供給は、ウェハ表面に洗浄液やリンス液等の液体が保持された状態で行われ、当該液体を薬液で置換するものである。置換に際して、ウェハ表面に保持された状態の洗浄液やリンス液等の液体としては特に限定はないが、2-プロパノール(iPA)等が一般的である。
上記置換によって、薬液をウェハ表面に保持することによりウェハ表面に撥水性保護膜を形成する。必要に応じてウェハ表面の上記薬液をリンス液に置換してリンス処理をさらに施しても良い。
そして、乾燥によりウェハ表面から液体を除去する。ウェハ表面に撥水性保護膜が形成されているため、優れた撥水性により乾燥時のパターン倒れを低減することができる。なお、乾燥により除去される液体としては、上記の撥水性保護膜形成用薬液、リンス液、又はそれらの混合液が挙げられる。
【0072】
(表面処理態様5)
図5に示すように、
少なくとも、(III)及び(IV)を混合して溶液(原料薬液)として、該原料薬液を液体状態又は気体状態でウェハ表面に供給して、該ウェハ表面に液体状態の原料薬液を保持させる。
上記原料薬液の供給は、ウェハ表面に洗浄液やリンス液等の液体が保持された状態で行われ、当該液体を原料薬液で置換するものである。置換に際して、ウェハ表面に保持された状態の洗浄液やリンス液等の液体としては特に限定はないが、2-プロパノール(iPA)等が一般的である。
次に、該原料薬液に酸性化合物を(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001~0.3モルの割合で接触させて、ウェハ表面において撥水性保護膜形成用薬液を調製する。なお、上述のように反応により(I)アミノシランが生成するため、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲となるようにウェハ表面に薬液を保持する。
上記接触に用いる酸性化合物は、非プロトン性溶剤で希釈されたもの(相溶しない場合は分散させた状態)であってもよい。当該希釈に用いる非プロトン性溶剤としては、本発明の(III)として述べたものが挙げられる。薬液調製工程で用いられる酸性化合物は、液体状態であっても良く、気体状態であっても良い。例えば、チャンバー内でウェハ表面に保持された液体状態の原料薬液に液体状態の酸性化合物を添加することでもよいし、チャンバー内でウェハ表面に保持された液体状態の原料薬液を気体状態の酸性化合物に曝して接触させることでもよい。後者の場合、例えばチャンバー内を所定の濃度の酸性化合物の蒸気雰囲気にしておいて原料薬液の供給を行うことでもよい。
また、原料薬液と気体状態の酸性化合物を接触させる場合、ウェハ表面に溶液状態の原料薬液を広げて、気体状態の酸性化合物と接触させると、接触面積を大きくでき、短時間で酸性化合物を導入できるので好ましい。このとき、空間中の気体状態の酸性化合物の濃度は、0.05~5体積%が好ましく、さらに0.1~2体積%が好ましい。また、接触時間は、0.01~600秒が好ましく、さらに0.1~180秒が好ましい。ウェハ表面に原料薬液を広げる方法は適宜公知の方法が使用でき、特にスピンコート法が好ましい。
上述のように調製された薬液をウェハ表面に保持することによりウェハ表面に撥水性保護膜を形成する。必要に応じてウェハ表面の上記薬液をリンス液に置換してリンス処理をさらに施しても良い。
そして、乾燥によりウェハ表面から液体を除去する。ウェハ表面に撥水性保護膜が形成されているため、優れた撥水性により乾燥時のパターン倒れを低減することができる。なお、乾燥により除去される液体としては、上記の撥水性保護膜形成用薬液、リンス液、又はそれらの混合液が挙げられる。
【0073】
また、表面処理方法として、後述の表面処理態様6を採用してもよい。
(表面処理態様6)
例えばアンモニア成分を有するSC-1での前処理を施すと、ウェハ表面にアンモニア成分に由来するNH基を含む成分(プロトン性化合物)が分子レベルで残留しやすい傾向がある。上記NH基を含む成分(プロトン性化合物)が分子レベルで所定量残留したウェハ表面に対して、図6に示すように、少なくとも、(II)、(III)、及び(IV)を混合して得た溶液(原料薬液)を液体状態又は気体状態で供給して、上記SC-1やSC-1処理後に置換した洗浄液等を、液体状態の原料薬液に置換する。そして、当該原料薬液と上記分子レベルで所定量残留したNH基を含む成分(プロトン性化合物)とを接触させて、ウェハ表面において本発明に記載の撥水性保護膜形成用薬液を調製し、該薬液をウェハ表面に保持する、撥水性保護膜形成工程、及び、乾燥工程を有する。
【0074】
反応の発熱を抑制しやすいという観点から、表面処理態様3が好ましい。
【0075】
上記一般式[4]で表されるシラザン化合物の具体例としては、例えば、[(CHSi]NH、[(CHSi(H)]NH、[CHSi(H)NH、[CSi(CHNH、[(CSi(CH)]NH、[(CSi]NH、[CSi(CHNH、[(CSi(CH)]NH、[(CSi]NH、[CSi(CHNH、[C11Si(CHNH、[C13Si(CHNH、[C15Si(CHNH、[C17Si(CHNH、[C19Si(CHNH、[C1021Si(CHNH、[C1123Si(CHNH、[C1225Si(CHNH、[C1327Si(CHNH、[C1429Si(CHNH、[C1531Si(CHNH、[C1633Si(CHNH、[C1735Si(CHNH、[C1837Si(CHNH、[(CSi(H)]NH、[CSi(H)NH、[CSi(CH)(H)]NH、[(CSi(H)]NH、[CSi(H)NH、[CFCHCHSi(CHNH、[CCHCHSi(CHNH、[CCHCHSi(CHNH、[CCHCHSi(CHNH、[C11CHCHSi(CHNH、[C13CHCHSi(CHNH、[C15CHCHSi(CHNH、[C17CHCHSi(CHNH、[CFCHCHSi(CH)(H)]NHなどが挙げられ、その中でも特に、[(CHSi]NH、[CSi(CHNH、[CSi(CHNH、[CSi(CHNH、[CFCHCHSi(CHNHが好ましく、特に[(CHSi]NHが好ましい。
【0076】
上記一般式[6]で表される酸性化合物の具体例としては、例えば、HCl、HBr、HI、CFCOOH、CCOOH、CCOOH、CCOOH、C11COOH、C13COOH、CFS(=O)OH、CS(=O)OH、CS(=O)OH、CS(=O)OH、C11S(=O)OH、C13S(=O)OH、{CFS(=O)}NH、{CS(=O)}NH、{CS(=O)}NH、{CS(=O)}NH、{C11S(=O)}NH、{C13S(=O)}NH、{CFS(=O)}CH、{CS(=O)}CH、{CS(=O)}CH、{CS(=O)}CH、{C11S(=O)}CH、{C13S(=O)}CHなどが挙げられ、その中でも特に、CFCOOH、CCOOH、CCOOH、CCOOHが好ましく、特にCFCOOHが好ましい。
【実施例
【0077】
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
ウェハの表面を凹凸パターンを有する面とすること、凹凸パターンの少なくとも凹部に保持された洗浄液を他の洗浄液で置換することは、他の文献等にて種々の検討がなされ、既に確立された技術であるので、本発明では、撥水性保護膜形成用薬液でウェハを表面処理した際の撥水性付与効果について評価を行った。なお、実施例において、接触角を評価する際にウェハ表面に接触させる液体としては、水系洗浄液の代表的なものである水を用いた。
【0079】
ただし、表面に凹凸パターンを有するウェハの場合、該凹凸パターン表面に形成された撥水性保護膜自体の接触角を正確に評価できない。
【0080】
水滴の接触角の評価は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するウェハの場合、接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
【0081】
そこで、本実施例では上記薬液を表面が平滑なウェハに供して、ウェハ表面に保護膜を形成して、該保護膜を表面に凹凸パターンが形成されたウェハの表面に形成された保護膜とみなし、種々評価を行った。なお、本実施例では、表面が平滑なウェハとして、表面が平滑なシリコンウェハ上にSiO層を有する「SiO膜付きウェハ」を用いた。
【0082】
詳細を下記に述べる。以下では、評価方法、撥水性保護膜形成用薬液や原料薬液の調製、撥水性保護膜形成用薬液を用いたウェハの表面処理方法、及び評価結果を記載する。
【0083】
〔評価方法〕ウェハ表面に形成された保護膜の接触角評価(撥水性付与効果の評価)
保護膜が形成されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、水滴とウェハ表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA-X型)で測定し、80°以上を合格とした。
【0084】
[実施例1-1]
(1-1)撥水性保護膜形成用薬液の調製
(II)ケイ素化合物であるトリメチルシリルトリフルオロアセテート〔TMS-TFA:(CHSi-OC(=O)CF〕:15g、
(IV)シラザン化合物であるヘキサメチルジシラザン〔HMDS:(CHSi-NH-Si(CH〕:70g、
(III)非プロトン性溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):915gを混合して溶液状態の原料薬液を得た。
次に、プロトン性化合物である水:3.6gを原料薬液に添加することで、TMS-TFA、HMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.2モルのプロトン性化合物(液体状態の水)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。
【0085】
(1-2)シリコンウェハの洗浄
平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に室温で10分浸漬し、純水に室温で1分、2-プロパノール(iPA)に室温で1分浸漬した。
【0086】
(1-3)シリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理
上記洗浄後のシリコンウェハを、上記「(1-1)撥水性保護膜形成用薬液の調製」で調製した撥水性保護膜形成用薬液に25℃で30秒浸漬し、iPAに室温で30秒浸漬した。最後に、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて、表面のiPAを除去して乾燥させた。
【0087】
本実施例は、表面処理態様2の方法で表面処理したものになる。得られたウェハを評価したところ、表1に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は90°となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0088】
【表1】
【0089】
[実施例1-2~1-23]
実施例1-1で用いたプロトン性化合物の種類や接触方法や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例1-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表中で、「iPA」は2-プロパノールを意味し、「MeOH」はメタノールを意味し、「EtOH」はエタノールを意味し、「nBuOH」は1-ブタノールを意味し、「PGME」はプロピレングリコールモノメチルエーテルを意味し、「TFAcA」はトリフルオロアセトアミドを意味する。
【0090】
なお、実施例1-18においては、まず、シラザン化合物であるジブチルテトラメチルジシラザン〔DBTMDS:C(CHSi-NH-Si(CH〕:86g、非プロトン性溶剤であるPGMEA:900g、トリフルオロ酢酸無水物:14gを混合して、後述の反応によって溶液状態の原料薬液を得た。トリフルオロ酢酸無水物は、DBTMDSと即座に反応して、ブチルジメチルシリルトリフルオロアセテート〔BDMS-TFA:C(CHSi-OC(=O)CF〕とブチルジメチルシリルトリフルオロアセトアミド〔BDS-TFAcA:C(CHSi-NH-C(=O)CF〕に変化する。すなわち、本実施例の原料薬液は、ケイ素化合物やシラザン化合物の種類が異なるとともに、その他のケイ素化合物としてBDS-TFAcAを含有するものとなっている。
次に、プロトン性化合物である水:0.9gを原料薬液に添加することで、BDMS-TFA、DBTMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.05モルのプロトン性化合物(液体状態の水)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。
【0091】
また、実施例1-19においては、まず、シラザン化合物であるジオクチルテトラメチルジシラザン〔DOTMDS:C17(CHSi-NH-Si(CH17〕:89g、非プロトン性溶剤であるPGMEA:900g、トリフルオロ酢酸無水物:11gを混合して、後述の反応によって溶液状態の原料薬液を得た。トリフルオロ酢酸無水物は、DOTMDSと即座に反応して、オクチルジメチルシリルトリフルオロアセテート〔ODMS-TFA:C17(CHSi-OC(=O)CF〕とオクチルジメチルシリルトリフルオロアセトアミド〔ODS-TFAcA:C17(CHSi-NH-C(=O)CF〕に変化する。すなわち、本実施例の原料薬液は、ケイ素化合物やシラザン化合物の種類が異なるとともに、その他のケイ素化合物としてODS-TFAcAを含有するものとなっている。
次に、プロトン性化合物である水:0.9gを原料薬液に添加することで、ODMS-TFA、DOTMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.05モルのプロトン性化合物(液体状態の水)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。
【0092】
また、実施例1-22においては、まず、シラザン化合物であるHMDS:83g、非プロトン性溶剤であるPGMEA:900g、トリフルオロ酢酸無水物:17gを混合して、後述の反応によって溶液状態の原料薬液を得た。トリフルオロ酢酸無水物は、HMDSと即座に反応して、TMS-TFAとトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド〔TMS-TFAcA:(CHSi-NH-C(=O)CF〕に変化する。すなわち、本実施例の原料薬液は、ケイ素化合物やシラザン化合物以外のその他のケイ素化合物としてTMS-TFAcAを含有するものとなっている。
【0093】
なお、実施例1-20、1-21、1-23では、プロトン性化合物濃度が(II)、(III)、(IV)の総量1kgに対して0.001モル未満の割合となるように予めコントロールされた空間内に原料薬液を載置し、当該空間に気体状態のプロトン性化合物を所定量導入し、両者を接触させることで撥水性保護膜形成用薬液を調製した。
【0094】
いずれの実施例においても、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後に接触角は80°以上となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0095】
[比較例1-1~1-3]
実施例1-1で用いたプロトン性化合物の種類や接触量を変更した以外は実施例1-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表1に示す。いずれも表面処理後の接触角が80°未満となり、撥水性付与効果は実施例よりも劣るものであった。
【0096】
実施例1-1~1-3、比較例1-1、1-2の結果から、プロトン性化合物(液体状態の水)の接触量に対する表面処理後の接触角のプロットを図7に、(I)~(III)の総量中の(I)アミノシラン化合物(TMS-NH)の含有量に対する表面処理後の接触角のプロットを図8に、それぞれ示す。
図7、8より、プロトン性化合物(液体状態の水)を接触させない比較例1-1や、該接触量が多すぎる比較例1-2では、(I)~(III)の総量中の(I)アミノシラン化合物(TMS-NH)の含有量がいずれも少なすぎる((I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲から外れる)ため、表面処理後の接触角は80°未満であった。
これに対し、プロトン性化合物(液体状態の水)を接触させることにより、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である撥水性保護膜形成用薬液を用いた実施例1-1~1-3は、いずれも表面処理後の接触角が80°を超え、より優れた撥水性付与効果を示した。
【0097】
また、プロトン性化合物の種類を変えた場合も同様の傾向が確認された。
実施例1-4~1-6、比較例1-1、1-3の結果から、プロトン性化合物(液体状態のiPA)の接触量に対する表面処理後の接触角のプロットを図9に、(I)~(III)の総量中の(I)アミノシラン化合物(TMS-NH)の含有量に対する表面処理後の接触角のプロットを図10に、それぞれ示す。
図9、10より、プロトン性化合物(液体状態のiPA)を接触させない比較例1-1や、該接触量が多すぎる比較例1-3では、(I)~(III)の総量中の(I)アミノシラン化合物(TMS-NH)の含有量がいずれも少なすぎる((I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%の範囲から外れる)ため、表面処理後の接触角は80°未満であった。
これに対し、プロトン性化合物(液体状態のiPA)を接触させることにより、(I)~(III)の総量に対する(I)の含有量が0.02~0.5質量%である撥水性保護膜形成用薬液を用いた実施例1-4~1-6は、いずれも表面処理後の接触角が80°を超え、より優れた撥水性付与効果を示した。
【0098】
[実施例2-1]
(2-1)原料薬液の調製
(II)ケイ素化合物であるTMS-TFA:15g、
(IV)シラザン化合物であるHMDS:70g、
(III)非プロトン性溶剤であるPGMEA:915gを混合して溶液状態の原料薬液を得た。
【0099】
(2-2)撥水性保護膜形成用薬液の調製とシリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理
実施例1-1と同様の方法で洗浄したシリコンウェハを、上記「(2-1)原料薬液の調製」で調製した原料薬液に浸漬し、次いでプロトン性化合物である液体状態の水:3.6gを当該原料薬液に添加することで、TMS-TFA、HMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.2モルのプロトン性化合物(液体状態の水)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。当該撥水性保護膜形成用薬液に30秒浸漬後にシリコンウェハを取出し、iPAに室温で30秒浸漬後、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて、表面のiPAを除去して乾燥させた。
【0100】
本実施例は、表面処理態様3の方法で表面処理したものになる。得られたウェハを評価したところ、表2に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は90°となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0101】
【表2】
【0102】
[実施例2-2~2-16]
実施例2-1で用いたプロトン性化合物の種類や接触方法や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例2-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表2に示す。
【0103】
なお、実施例2-13、2-14、2-16では、実施例1-1と同様の方法で洗浄したシリコンウェハを、予め所定量の気体状態のプロトン性化合物が導入された空間内に載置し、該シリコンウェハ表面(SiO膜側表面)に原料薬液を液盛りすることで、原料薬液とプロトン性化合物とを接触させて撥水性保護膜形成用薬液を調製した。
【0104】
いずれの実施例においても、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後に接触角は80°以上となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0105】
[比較例2-1~2-3]
実施例2-1で用いたプロトン性化合物の種類や接触量を変更した以外は実施例2-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表2に示す。いずれも表面処理後の接触角が80°未満となり、撥水性付与効果は実施例よりも劣るものであった。
【0106】
[実施例3-1]
(IV)シラザン化合物であるHMDS:71g、
(III)非プロトン性溶剤であるPGMEA:929gを混合して溶液状態の原料薬液を得た。
次に、酸性化合物であるトリフルオロ酢酸〔TFA:CFCOOH〕:22.8gを原料薬液に添加することで、HMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.2モルの酸性化合物(液体状態のTFA)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。それ以外は、実施例1-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表3に示す。
【0107】
本実施例は、表面処理態様4の方法で表面処理したものになる。得られたウェハを評価したところ、表3に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は90°となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0108】
【表3】
【0109】
[実施例3-2~3-6]
実施例3-1で用いた酸性化合物の種類や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例3-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表3に示す。なお、表中で、「TFMSA」はトリフルオロメタンスルホン酸〔CFSOH〕を意味し、「TMS-TFMSA」はトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート〔(CHSi-OS(=O)CF〕を意味する。
【0110】
いずれの実施例においても、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後に接触角は80°以上となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0111】
[比較例3-1、3-2]
実施例3-1で用いた酸性化合物の接触量を変更した以外は実施例3-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表3に示す。いずれも表面処理後の接触角が80°未満となり、撥水性付与効果は実施例よりも劣るものであった。
【0112】
[実施例4-1]
(4-1)原料薬液の調製
(IV)シラザン化合物であるHMDS:71g、
(III)非プロトン性溶剤であるPGMEA:929gを混合して溶液状態の原料薬液を得た。
【0113】
(4-2)撥水性保護膜形成用薬液の調製とシリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理
実施例1-1と同様の方法で洗浄したシリコンウェハを、上記「(4-1)原料薬液の調製」で調製した原料薬液に浸漬し、次いで酸性化合物である液体状態のTFA:22.8gを当該原料薬液に添加することで、HMDS、PGMEAの総量1kgに対して0.2モルの酸性化合物(液体状態のTFA)を原料薬液に接触させて、撥水性保護膜形成用薬液を調製した。当該撥水性保護膜形成用薬液に30秒浸漬後にシリコンウェハを取出し、iPAに室温で30秒浸漬後、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて、表面のiPAを除去して乾燥させた。
【0114】
本実施例は、表面処理態様5の方法で表面処理したものになる。得られたウェハを評価したところ、表4に示すとおり、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後の接触角は90°となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0115】
【表4】
【0116】
[実施例4-2~4-6]
実施例4-1で用いた酸性化合物の種類や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例4-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。
【0117】
いずれの実施例においても、表面処理前の初期接触角が10°未満であったものが、表面処理後に接触角は80°以上となり、優れた撥水性付与効果を示した。
【0118】
[比較例4-1、4-2]
実施例4-1で用いた酸性化合物の接触量を変更した以外は実施例4-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表4に示す。いずれも表面処理後の接触角が80°未満となり、撥水性付与効果は実施例よりも劣るものであった。
【0119】
以上のように、異なる表面処理態様であっても、本発明に係る撥水性保護膜形成用薬液、及び、本発明に係るウェハの表面処理方法を採用することで、撥水性付与効果を従来に比べ更に向上することができる。
【0120】
[実施例1-1a]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製」において、プロトン性化合物である水を非プロトン性溶剤であるPGMEAに希釈した状態で(相溶しない場合は分散させた状態で)、原料薬液に添加すること以外は、実施例1-1と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、水の添加量は、TMS-TFA、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるPGMEAの総量1kgに対して0.2モルとなるようにした。結果を表5に示す。なお、希釈に用いたPGMEAの量と原料薬液に含まれるPGMEAの量を同量となるようにした。
【0121】
【表5】
【0122】
[実施例1-2a~1-22a、比較例1-2a~1-3a]
実施例1-1aで用いたプロトン性化合物の種類や接触方法や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例1-1aと同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。なお、実施例1-20a、1-21aについては、気体状態のプロトン性化合物を気体状態の非プロトン性溶剤に希釈して原料薬液に接触させた。結果を表5に示す。
なお、プロトン性化合物を接触させない比較例については、比較例1-1の結果を記載した。
【0123】
[実施例2-1a]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製とシリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」において、プロトン性化合物である水を非プロトン性溶剤であるPGMEAに希釈した状態で(相溶しない場合は分散させた状態で)、原料薬液に添加すること以外は、実施例2-1と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、水の添加量は、TMS-TFA、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるPGMEAの総量1kgに対して0.2モルとなるようにした。結果を表6に示す。なお、希釈に用いたPGMEAの量と原料薬液に含まれるPGMEAの量を同量となるようにした。
【0124】
【表6】
【0125】
[実施例2-2a~2-15a、比較例2-2a~2-3a]
実施例2-1aで用いたプロトン性化合物の種類や接触方法や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例2-1aと同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。なお、実施例2-13a、2-14aについては、気体状態のプロトン性化合物を気体状態の非プロトン性溶剤に希釈して原料薬液に接触させた。結果を表6に示す。
なお、プロトン性化合物を接触させない比較例については、比較例2-1の結果を記載した。
【0126】
[実施例3-1a]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製」において、酸性化合物であるTFAを非プロトン性溶剤であるPGMEAに希釈した状態で(相溶しない場合は分散させた状態で)、原料薬液に添加すること以外は、実施例3-1と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、TFAの添加量は、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるPGMEAの総量1kgに対して0.2モルとなるようにした。結果を表7に示す。なお、希釈に用いたPGMEAの量と原料薬液に含まれるPGMEAの量を同量となるようにした。
【0127】
【表7】
【0128】
[実施例3-2a~3-6a、比較例3-2a]
実施例3-1aで用いた酸性化合物の種類や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例3-1aと同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表7に示す。
なお、酸性化合物を接触させない比較例については、比較例3-1の結果を記載した。
【0129】
[実施例4-1a]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製とシリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」において、酸性化合物であるTFAを非プロトン性溶剤であるPGMEAに希釈した状態で(相溶しない場合は分散させた状態で)、原料薬液に添加すること以外は、実施例4-1と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、TFAの添加量は、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるPGMEAの総量1kgに対して0.2モルとなるようにした。結果を表8に示す。なお、希釈に用いたPGMEAの量と原料薬液に含まれるPGMEAの量を同量となるようにした。
【0130】
【表8】
【0131】
[実施例4-2a~4-6a、比較例4-2a]
実施例4-1aで用いた酸性化合物の種類や接触量、および、アミノシラン化合物やケイ素化合物やシラザン化合物の種類や含有量を変更した以外は実施例4-1aと同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表8に示す。
なお、酸性化合物を接触させない比較例については、比較例4-1の結果を記載した。
【0132】
[実施例5-1]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製」において、プロトン性化合物をNHとし、非プロトン性溶剤であるジオキサンに希釈した状態で、原料薬液に添加すること以外は、実施例1-2と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、NHの添加量は、TMS-TFA、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるジオキサンの総量1kgに対して0.05モルとなるようにした。結果を表9に示す。なお、原料薬液に添加する際のNH/ジオキサン溶液の濃度は0.4モル/リットルとした。
【0133】
【表9】
【0134】
[実施例5-2]
実施例5-1で希釈に用いた非プロトン性溶剤の種類をテトラヒドロフラン〔THF〕に変更した以外は実施例5-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表9に示す。
なお、プロトン性化合物を接触させない比較例については、比較例1-1の結果を記載した。
【0135】
[実施例6-1]
「撥水性保護膜形成用薬液の調製とシリコンウェハ表面への保護膜形成用薬液による表面処理」において、プロトン性化合物をNHとし、非プロトン性溶剤であるジオキサンに希釈した状態で、原料薬液に添加すること以外は、実施例2-2と同様の操作を行って、同様の評価を行った。なお、NHの添加量は、TMS-TFA、HMDS、原料薬液に含まれるPGMEA、及び希釈に用いるジオキサンの総量1kgに対して0.05モルとなるようにした。結果を表10に示す。なお、原料薬液に添加する際のNH/ジオキサン溶液の濃度は0.4モル/リットルとした。
【0136】
【表10】
【0137】
[実施例6-2]
実施例6-1で希釈に用いた非プロトン性溶剤の種類をテトラヒドロフラン〔THF〕に変更した以外は実施例6-1と同様にウェハの表面処理を行い、さらにその評価を行った。結果を表10に示す。
なお、プロトン性化合物を接触させない比較例については、比較例2-1の結果を記載した。
【0138】
以上のように、原料薬液に添加するプロトン性化合物や酸性化合物が非プロトン性溶剤に希釈された状態(相溶しない場合は分散させた状態)であっても、同様に、撥水性付与効果を従来に比べ更に向上することができる。
図1
図2
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図7
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図9
図10