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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20230512BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230512BHJP
   C22C 11/06 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310B
C22C11/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019030185
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020131257
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】川又 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】北澤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 咲枝
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025305(JP,A)
【文献】特開2016-182633(JP,A)
【文献】特開平05-185282(JP,A)
【文献】特開2010-269356(JP,A)
【文献】特表2004-526309(JP,A)
【文献】特開平10-109188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/22
B23K 35/26
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体である少なくとも1種類の固体溶剤と、
常温で液体である少なくとも1種類の液体溶剤と、
分子量が200以上1000以下であり、フラックス全体の質量に対して1~10質量%であるポリエチレングリコールとを含んでいるフラックスであって、
フラックスをアルミパンに10mg入れ、ピーク温度350℃、昇温速度1℃/secにて加熱した際の加熱後の前記フラックスの質量が加熱前の質量の5%以下であるフラックスと、
融解温度が280℃から330℃であるはんだ粒子と、
を含む、ソルダペースト。
【請求項2】
さらに、チキソ剤および活性剤からなる群から選択された少なくとも一つの添加成分を含む、請求項1記載のソルダペースト。
【請求項3】
前記チキソ剤が、脂肪酸アミドから選ばれる、請求項2に記載のソルダペースト。
【請求項4】
前記脂肪酸アミドが、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、及び、トルアミドからなる群から選択された少なくとも一つである、請求項3に記載のソルダペースト。
【請求項5】
前記活性剤が、マレイン酸モノオクチル、トリメリット酸、及び、イソオクタデカン酸からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項2から4のいずれか一項に記載のソルダペースト。
【請求項6】
前記固体溶剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ベヘン酸ベヘニル、ジペンタエリスリトール、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のソルダペースト。
【請求項7】
前記液体溶剤が、1,2,6-ヘキサントリオール、イソボルニルシクロヘキサノール、イソオクタデカノール、流動パラフィン、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のソルダペースト。
【請求項8】
加熱後の前記フラックスの質量が加熱前の質量の3%以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス及びソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の電子部品を接合するために、フラックスが使用され、特に、はんだ粒子とペースト状のフラックスとが混合されたソルダペーストが広く用いられている。ソルダペーストを用いた電子部品の接合は、例えば、はんだ接合部にソルダペーストを適量塗布し、その後、リフロー温度にて加熱することではんだ粒子を融解させ、はんだ接合部に接合させる(以下、リフロー工程ともいう)。しかし、リフロー工程後のはんだ接合部に、固形成分がフラックス残渣として発生し、電子回路の性能劣化や腐食等の問題があった。
【0003】
そこで近年、リフロー工程後において、はんだ接合部に発生するフラックス残渣を抑えるフラックスが提案されている(特許文献1、2)。これらのフラックスは、リフロー温度の加熱により、フラックスが気化することで、はんだ接合部の周囲にフラックス残渣が発生しないのが特徴である。フラックス残渣が発生しないことを無残渣ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-25305号公報
【文献】特開2013-132654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RoHS指令により、鉛含有のはんだ組成は規制対象となっており、電子部品の接合には、鉛を含まない無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)が使用されている。しかし、一部部品においては、現在も高温鉛はんだの使用が認められている。高温鉛はんだと従来の無残渣用フラックスを混合したソルダペーストを用いてリフローを行うと、はんだが溶融する前にフラックスが揮発し、はんだ溶融時にはフラックスが残っておらず、十分な溶融性及びリフロー性が確保できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、高温域のリフロー温度において、はんだ粒子のリフロー性に優れ、且つ、残渣が発生しないフラックス及びソルダペーストの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のフラックスは、
常温で固体であり、リフロー温度で蒸発する少なくとも1種類の固体溶剤と、
常温で液体であり、リフロー温度で蒸発する少なくとも1種類の液体溶剤と、
分子量1000以下であり、フラックス全体の質量に対して1~10質量%含有するポリエチレングリコールとを含んでいることを特徴とする。
【0008】
本発明のソルダペーストは、本発明のフラックスと、はんだ粒子とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温域のリフロー温度において、はんだ粒子のリフロー性に優れ、且つ、残渣が発生しないフラックス及びソルダペーストを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「無残渣」とは、フラックス残渣の量がフラックス中の5%以下であることをいう。
【0011】
本発明のフラックスは、例えば、さらに、チキソ剤および活性剤からなる群から選択された少なくとも一つの添加成分を含み、前記添加成分がリフロー温度で他の成分とともに、蒸発するものである。
【0012】
本発明のフラックスは、例えば、前記固体溶剤が、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ベヘン酸ベヘニル、ジペンタエリスリトール、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択された少なくとも一つを含む。
【0013】
本発明のフラックスは、例えば、前記液体溶剤が、1,2,6-ヘキサントリオール、イソボルニルシクロヘキサノール、イソオクタデカノール、流動パラフィン、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一つを含む。
【0014】
本発明のフラックスは、例えば、前記チキソが、脂肪酸アミドから選ばれる。
【0015】
本発明のフラックスは、例えば、前記脂肪酸アミドが、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、及びトルアミドからなる群から選択された少なくとも一つである。
【0016】
本発明のフラックスは、例えば、前記活性剤が、マレイン酸モノオクチル、トリメリット酸、及び、イソオクタデカン酸からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0017】
本発明のフラックスは、例えば、リフロー温度で蒸発しない成分が3質量%以下である。
【0018】
本発明のソルダペーストは、例えば、前記はんだ粒子の融解温度が、280℃から330℃である。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、例をあげてさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。各溶剤は、リフロー温度で蒸発可能なもの、即ち、その沸点または分解温度がリフロー温度以下であるものである。
【0020】
<フラックス>
本実施形態のフラックスは、固体溶剤と液体溶剤とポリエチレングリコール(以下、PEG)を含む。前記固体溶剤は、常温で固体であり、リフロー温度で蒸発する少なくとも1種類の溶剤である。前記固体溶剤は、特に制限されず、フラックスの溶剤として、一般に用いられる固体溶剤が挙げられる。具体的には、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ベヘン酸ベヘニル、ジペンタエリスリトール、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記固体溶剤の配合量は、特に制限されず、例えば、フラックス全体の質量に対して25~60質量%であり、好ましくは、40~60質量%であり、より好ましくは、45~55質量%である。
【0021】
前記リフロー温度は、特に制限されず、例えば、300~380℃、好ましくは、330~360℃である。
【0022】
前記液体溶剤は、常温で液体であり、リフロー温度で蒸発する少なくとも1種類の溶剤である。前記液体溶剤は、特に制限されず、フラックスの溶剤として、一般に用いられる液体溶剤が挙げられる。具体的には、1,2,6-ヘキサントリオール、イソボルニルシクロヘキサノール、イソオクタデカノール、流動パラフィン、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記液体溶剤の配合量は、特に制限されず、例えば、フラックス全体の質量に対して20~60質量%であり、好ましくは、25~50質量%であり、より好ましくは、25~35質量%である。
【0023】
前記PEGは、分子量1500未満である。前記PEGの分子量は、1500未満であればよく、例えば、200、300、400、600、800、1000等であり、具体的には、1000以下、より好ましくは400~600である。前記PEGの分子量が、1500になると、完全に蒸発せず、その一部がフラックス残渣として残ることがある。前記PEGの配合量は、フラックス全体の質量に対して1~10質量%含有する。前記PEGの形状は特に制限されず、例えば、液状、ペースト状、固形状等が挙げられ、好ましくは、液状である。
【0024】
本実施形態のフラックスは、さらに、例えば、チキソ剤および活性剤等の添加成分を含んでもよい。この場合、前記添加成分がリフロー温度で他の成分とともに、蒸発するものを使用する。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これにより、チキソトロピー性やぬれ性を高めることが可能である。従来のソルダペーストでは、無残渣にするには、活性剤やチキソ剤は、蒸発が困難であるため、全く含有させないか、含有させる場合でも、リフロー温度で気化するものに限られており、十分な活性または流動性改善特性を有するものが使用できなかった。
【0025】
前記チキソ剤は、フラックスと他の成分との分離を防いで保存安定性を高め、かつ印刷や吐出時の転写性を高めるように流動特性を改善する働きを持つ。前記チキソ剤として、例えば、脂肪酸アミド等が挙げられ、具体的には、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、及びトルアミド等が挙げられる。前記チキソ剤の配合量は、特に制限されず、例えば、フラックス全体の質量に対して5~25質量%であり、好ましくは、15~25質量%である。
【0026】
前記活性剤は、はんだ付け部や粉末はんだ表面の酸化物を還元除去して清浄化し、溶融したはんだのぬれ性を高め、はんだ接合部に金属的に付着させる作用を有している。前記活性剤として、例えば、マレイン酸モノオクチル、トリメリット酸、イソオクタデカン酸等が挙げられる。前記活性剤の配合量は、特に制限されず、例えば、フラックス全体の質量に対して5~20質量%であり、好ましくは、5~10質量%である。
【0027】
本発明のフラックスは、さらに、ロジンを含んでもよい。前記ロジンはアビエチン酸およびその異性体を主成分とする天然樹脂であり、前記ロジンの添加により、粘度調整、電子部品の粘着保持、アビエチン酸による酸化物の還元除去作用等の効果が得られる。前記ロジンは、例えば、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ロジンエステル等が挙げられる。前記ロジンの配合量は、フラックス全体の質量に対して0.1~1質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明のフラックスにおいて、フラックスが、リフロー温度で蒸発しない成分を5質量%以下の量で含有してもよい。本発明のフラックスは、多量の固体溶剤を含有するため、そのような非蒸発性成分も、少なくとも一部はリフロー中に蒸発しうるので、実際のフラックス残渣はさらに少なくなる可能性がある。好ましくは、非蒸発性成分のフラックス中の含有量は0.5質量%以下とする。この非蒸発性成分は、フラックス残渣として微量が残留してもリフロー性や融解性に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。
【0029】
本発明のフラックスは、還元性雰囲気および窒素雰囲気のいずれかで使用可能することが好ましい。還元性雰囲気は、例えば、ギ酸や水素ガスを含有する一般的な還元性雰囲気に加え、特開2001-58259号公報に記載されている、水素ラジカルを含む雰囲気であってもよい。
【0030】
前記水素ラジカルを含有する雰囲気でのリフローはんだ付けは、水素ガス供給装置とプラズマ発生装置を備え、内部を真空に排気できるリフロー炉を用いて行うことができる。
【0031】
本発明のフラックスを用いて還元性雰囲気でリフローはんだ付けを行う場合、雰囲気ガスが酸化物の除去作用を示すため、フラックス中に活性剤を全く含有させなくてもよい。
【0032】
<ソルダペースト>
本実施形態のソルダペーストは、本発明のフラックスと、はんだ粒子とを含む。本実施形態のソルダペーストは、本発明のフラックスの記載を援用できる。前記はんだ粒子は、特に制限されず、例えば、融点が280℃から330℃のはんだ粒子等が挙げられる。
【0033】
本実施形態のソルダペーストにおいて、本発明のフラックスは、前述したように、チキソとして脂肪酸アミドを含むことが好ましい。前記脂肪酸アミドは、前述と同様である。前記チキソ剤を有することで、本発明のソルダペーストにおいて比重が大きく異なる粉末はんだとフラックスの分離を防いで保存安定性を高め、かつ印刷や吐出時の転写性を高めるように流動特性を改善できる。
【0034】
前記はんだ粒子の粒径は、特に制限されず、例えば、10~60μmの範囲でよいが、より大径または小径のものでもよい。前記はんだ粒子と本発明のフラックスの配合量は、前記はんだ粒子の粒径によっても異なるが、一般には本発明のフラックスが8~15質量%、前記はんだ粒子が85~92質量%でよい。
【0035】
本実施形態のソルダペーストは、本発明のフラックスを含むことにより、高温域のリフロー温度においても、リフロー性に優れ、且つ、はんだ接合部において残渣の発生しないはんだ付けが可能となる。
【実施例
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
【0037】
<フラックスの作製>
下記表1に実施例1から実施例23を、下記表2に比較例1から比較例3を示す。下記表1及び下記表2に示す配合量の各材料をそれぞれ混合し、加熱融解することにより、均一に分散された実施例1から実施例23及び比較例1から比較例3を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
なお、前記表1及び表2における流動パラフィン及びイソオクタデカノールの詳細は、以下に示す。
流動パラフィン:商品名ハイコールK-350、カネダ株式会社製
イソオクタデカノール:商品名ファインオキソコール180T、日産化学株式会社製
【0041】
<ソルダペーストの作製>
前記各実施例(前記表1)、及び前記各比較例(前記表2)で示した組成の各フラックスを用いて、ソルダペーストを作製した。具体的には、ソルダペースト全体に対して、10質量%の前記各フラックスと、90質量%の90Pb-10Snのはんだ粉末(粒径:20~38μm)とを混合することにより、各ソルダペーストを作製した。前記はんだ粒子は、鉛(Pb)を90質量%、及び、スズ(Sn)を10質量%含む、高温鉛(Pbrich)はんだであり、前記はんだ粒子の融点は、301℃である。
【0042】
<残渣量評価試験>
前記各実施例及び前記各比較例を基に作製した前記各フラックスを用いて、前記各フラックスの残渣量を評価した。前記残渣量の評価方法について説明する。前記各フラックスをアルミパンに10mg入れ、ULVAC社製 TGD9600を用いて、ピーク温度350℃、昇温速度1℃/secにて加熱した。前記加熱したものを評価サンプルとし、加熱後の前記各フラックスの量を算出し、下記評価基準に従って評価した。
【0043】
残渣量評価試験 評価基準
◎:量が加熱前の3%以下になった
〇:量が加熱前の3%より多く、5%以下になった
×:量が加熱前の5%より多かった
【0044】
<リフロー性評価試験>
前記各実施例及び前記各比較例のフラックスを用いてソルダペーストを作製し、はんだ広がり試験を行うことでリフロー性の評価を行った。はんだ広がり試験はJIS Z3197に準拠した。リフロー条件について説明する。プリヒートを170℃で90秒行い、ピーク温度330℃で60秒保持し、はんだを溶融させた。リフローは窒素雰囲気下で行った。前記融解したものを評価サンプルとし、リフロー後の前記各ソルダペーストのぬれ広がり率を算出し、下記評価基準に従って評価した。
【0045】
リフロー性評価試験 評価基準
◎:ぬれ広がり率が90%以上
〇:ぬれ広がり率が85%以上90%未満
×:ぬれ広がり率が85%未満、または、はんだが溶融しなかった
【0046】
前記各実施例及び前記各比較例の残渣量及びリフロー性の各評価結果を下記表3に示す。
【表3】
【0047】
前記表3から明らかな通り、比較例に用いた前記各ソルダペーストは、一方の特性は良好となるが、どれも他方の試験で悪影響が出ることが確認できる。これに対し、本発明によれば、残渣量評価試験、リフロー性評価試験の何れにおいても、良好な結果となる。
【0048】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明によれば、例えば、高温域において、はんだ粒子のリフロー性に優れ、且つ、残渣が発生しないことが可能になる。このため、本発明は、例えば、融解温度が高いはんだ粒子を使用する分野において有用である。