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特許7277715オーステナイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】オーステナイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230512BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20230512BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20230512BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C22C38/00 302A
C22C38/60
C21D6/00 102A
C22C30/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019031195
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020132979
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 崇光
(72)【発明者】
【氏名】照沼 正明
(72)【発明者】
【氏名】中村 潤
(72)【発明者】
【氏名】上山 正樹
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/068009(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132992(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175739(WO,A1)
【文献】特開平01-147042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C22C 30/00-30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.06%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:6.0~12.0%、
P:0.050%以下、
S:0.0500%以下、
Ni:15.0~17.0%、
Cr:16.1~30.0%、
V:0.01~0.28%、
Nb:0.01~0.20%、
N:0.40~0.60%、
Mo:0.33.5%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
式(1)~式(3)を満たす化学組成を有し、
未固溶のV含有量が0.20質量%以下である、オーステナイト系ステンレス鋼。
0.16≦Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧2.0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【請求項2】
質量%で、
C:0.06%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:6.0~12.0%、
P:0.050%以下、
S:0.0500%以下、
Ni:15.0~17.0%、
Cr:16.1~30.0%、
V:0.01~0.28%、
Nb:0.01~0.20%、
N:0.40~0.60%、
Mo:0.33.5%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
式(1)~式(3)を満たす化学組成を有する素材を準備する工程と、
前記素材を熱間加工して中間材を製造する工程と、
前記中間材を、1000℃以上の温度で20分以上、最終熱処理する工程とを備える、オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法。
0.16≦Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧2.0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーステナイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に代えて、水素をエネルギーとして利用する輸送機器の実用化研究が活発に進められている。水素エネルギーの実用化に際しては、水素を高圧で貯蔵、輸送できる使用環境の整備が併せて必要である。そのため、水素の貯蔵施設及び輸送施設に使用される材料として、水素環境下での耐脆化特性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の開発が進められている。これらのオーステナイト系ステンレス鋼は、高圧の水素に耐えるために高強度を有することが望まれる。
【0003】
現状、水素の貯蔵及び輸送は、圧縮水素ガスを用いて行われるのが主流である。一方で、液体水素を用いれば、より効率的に水素を貯蔵及び輸送できる。そのため、近年では、液体水素を用いた水素の貯蔵施設及び輸送施設に適したオーステナイト系ステンレス鋼の検討が行われている。
【0004】
たとえば、特開2017-8413号公報(特許文献1)、国際公開第2012/132992号(特許文献2)及び国際公開第2017/175739号(特許文献3)には、高圧水素用途のオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0005】
特許文献1の低温水素用オーステナイト系ステンレス鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%未満、Mn:3.0~17.0%、Ni:9.5~15%、Cr:15~25%、Mo:0.1~3.0%、N:0.20%を超え0.35%以下、Nb:0~0.3%、V:0~0.3%、Cu:0~4.0%、Al:0.10%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Co:0~3%、Ti:0~0.3%、
B:0~0.01%、Ca:0~0.05%、Mg:0~0.05%、REM:0~0.5%、残部:Fe及び不純物であり、固溶N量が0.20質量%以上であり、化学組成が、下記式(1)及び(2)を満たす。
Nb+V≧0.1(1)
Ni+12.93C+1.11Mn+0.72Cr+0.88Mo-0.27Si+0.19Nb+0.53Cu+0.9V+7.55N≧30.0(2)
これにより、強度、低温靱性、及び低温における耐水素脆性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が得られる、と特許文献1に記載されている。
【0006】
特許文献2の高圧水素ガス用オーステナイトステンレス鋼は、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.0%以下、Mn:3%以上7%未満、Cr:15~30%、Ni:10%以上17%未満、Al:0.10%以下、N:0.10~0.50%、並びにV:0.01~1.0%およびNb:0.01~0.50%のうちの少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.050%以下、Sが0.050%以下であり、引張強さが800MPa以上、結晶粒度番号(ASTM E 112)が8番以上で、最大径が50~1000nmの合金炭窒化物を断面観察で0.4個/μm2以上含有することを特徴とする。これにより、Mnが7%未満の組成領域で、引張強度800MPa以上の高強度でかつ水素環境脆化特性に優れた、オーステナイトステンレス鋼が得られる、と特許文献2に記載されている。
【0007】
特許文献3のオーステナイト系ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.0%以下、Mn:3~8%、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Ni:10~20%、Cr:15~30%、N:0.20~0.70%、Mo:0~5.0%、V:0~0.5%、及び、Nb:0~0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、ASTM E 112に準拠した結晶粒度番号が6.0以上であり、引張強度が800MPa以上であり、引張強度の最大値と最小値との差が50MPa以下であり、鋼中の円相当径が1000nmを超える合金炭窒化物の個数が10個/mm2以上である。これにより、鋼材全長にわたって安定した高強度を有するオーステナイト系ステンレス鋼が得られる、と特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-8413号公報
【文献】国際公開第2012/132992号
【文献】国際公開第2017/175739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~特許文献3に開示された技術により、低温靱性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
【0010】
ところで、水素の貯蔵施設及び輸送施設を建設するのに際し、部材を溶接により接合することがある。溶接部には、溶接部以外と同様に、優れた低温靱性が要求される。しかしながら、特許文献1~特許文献3に開示された技術では、溶接部における優れた低温靱性が得られない場合がある。
【0011】
本開示の目的は、高強度を有し、さらに、溶接部の低温靱性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.00%以下、Mn:6.0~12.0%、P:0.050%以下、S:0.0500%以下、Ni:15.0~17.0%、Cr:15.0~30.0%、V:0.01~0.30%、Nb:0.01~0.30%、N:0.40~0.60%、Mo:0~5.0%、及び、残部がFe及び不純物からなり、式(1)~式(3)を満たす化学組成を有し、未固溶のV含有量が0.20質量%以下であり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下である。
Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0013】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、準備工程と、熱間加工工程と、最終熱処理工程とを備える。準備工程では、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.00%以下、Mn:6.0~12.0%、P:0.050%以下、S:0.0500%以下、Ni:15.0~17.0%、Cr:15.0~30.0%、V:0.01~0.30%、Nb:0.01~0.30%、N:0.40~0.60%、Mo:0~5.0%、及び、残部がFe及び不純物からなり、式(1)~式(3)を満たす化学組成を有する素材を準備する。熱間加工工程では、素材を熱間加工して中間材を製造する。最終熱処理工程では、中間材を、1000℃以上の温度で最終熱処理する。
Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【発明の効果】
【0014】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度を有し、さらに、溶接部の低温靱性に優れる。また、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、たとえば本開示の製造方法で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、オーステナイト系ステンレス鋼の高強度化、及び、オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合の溶接部の低温靱性について調査及び検討し、次の知見を得た。
【0016】
オーステナイト系ステンレス鋼の強度を高めるには、結晶粒の細粒化、固溶強化又は析出強化等様々な方法がある。たとえば、多量の析出物によりオーステナイト系ステンレス鋼の強度を高めることができる。しかしながら、析出物はオーステナイト系ステンレス鋼の低温靱性を低下させる。そのため、析出物は抑制しつつ、窒素(N)の固溶強化により強度を高めることが有効である。
【0017】
オーステナイト系ステンレス鋼同士を溶接により接合する場合、オーステナイト系ステンレス鋼の母材の一部が溶融し、凝固することで溶接金属が形成される。溶接金属からなる領域を溶接部という。本発明者らは、溶接部の低温靱性を高める方法を検討した。その結果、オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成が適切、特にNiを15.0%以上含有し、さらに式(1)~式(3)を満たす化学組成を有し、かつ、未固溶のV含有量が0.20質量%以下であり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下であれば、溶接部の低温靱性が高まることを新たに知見した。
Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0018】
以上の知見に基づいて完成した本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.00%以下、Mn:6.0~12.0%、P:0.050%以下、S:0.0500%以下、Ni:15.0~17.0%、Cr:15.0~30.0%、V:0.01~0.30%、Nb:0.01~0.30%、N:0.40~0.60%、Mo:0~5.0%、及び、残部がFe及び不純物からなり、式(1)~式(3)を満たす化学組成を有し、未固溶のV含有量が0.20質量%以下であり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下である。
Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0019】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度を得るため、及び、溶接部の低温靱性を高めるための適切な化学組成を有し、かつ、式(1)~式(3)を満たす。本開示のオーステナイト系ステンレス鋼はさらに、未固溶のV含有量が0.20質量%以下であり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下である。そのため、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度を有し、さらに、溶接部の低温靱性に優れる。
【0020】
上記オーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、Mo:0.1~5.0%を含有してもよい。
【0021】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、準備工程と、熱間加工工程と、最終熱処理工程とを備える。準備工程では、質量%で、C:0.10%以下、Si:1.00%以下、Mn:6.0~12.0%、P:0.050%以下、S:0.0500%以下、Ni:15.0~17.0%、Cr:15.0~30.0%、V:0.01~0.30%、Nb:0.01~0.30%、N:0.40~0.60%、Mo:0~5.0%、及び、残部がFe及び不純物からなり、式(1)~式(3)を満たす化学組成を有する素材を準備する。熱間加工工程では、素材を熱間加工して中間材を製造する。最終熱処理工程では、中間材を、1000℃以上の温度で最終熱処理する。
Nb+V≦0.40 (1)
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(1)~式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0022】
上記オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法において、化学組成は、Mo:0.1~5.0%を含有してもよい。
【0023】
以下、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼材について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
【0024】
[化学組成]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
【0025】
C:0.10%以下
炭素(C)は不可避に含有される。Cは水素脆性を生じにくいfcc構造であるオーステナイトを安定化する。Cはさらに、Cr等と結合し、析出強化により鋼の強度を高める。しかしながら、C含有量が高すぎれば、炭化物が粒界に析出して鋼の靭性を低下する。したがって、C含有量は0.10%以下である。C含有量の上限は好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.06%である。Cは不可避に含有されるため、C含有量の下限は0%超である。しかしながら、過度な脱炭は生産性を低下させるため、C含有量の下限はたとえば0.001%である。また、オーステナイトを安定化するためのC含有量の好ましい下限は0.005%である。
【0026】
Si:1.00%以下
シリコン(Si)は、Ni及びCrと結合して金属間化合物を形成する。Siはさらに、シグマ相(σ相)等の金属間化合物の成長を促進する。これらの金属間化合物は、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Si含有量は1.00%以下である。Si含有量の上限は好ましくは0.80%であり、より好ましくは0.60%である。Si含有量の下限は0%超である。しかしながら、精錬コストを考慮して、Si含有量の下限はたとえば0.10%である。また、鋼の脱酸の観点から、Si含有量の下限は0.20%であってもよい。
【0027】
Mn:6.0~12.0%
マンガン(Mn)はオーステナイトを安定化して、水素脆化感受性の高いマルテンサイトの生成を抑制する。Mnはさらに、Nの溶解量を高め、Nの固溶強化の作用を高める。Mn含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼の延性及び熱間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は6.0~12.0%である。Mn含有量の下限は好ましくは6.3%であり、より好ましくは6.5%であり、さらに好ましくは6.8%である。Mn含有量の上限は好ましくは11.5%であり、より好ましくは11.0%であり、さらに好ましくは10.5%である。
【0028】
P:0.050%以下
燐(P)は不純物である。Pは鋼の熱間加工性及び靭性を低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の上限は好ましくは0.045%であり、さらに好ましくは0.035%であり、さらに好ましくは0.025%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、過度な脱燐は生産性を低下させるため、P含有量の下限は好ましくは0%超であり、より好ましくは0.005%である。
【0029】
S:0.0500%以下
硫黄(S)は、不純物である。Sは鋼の熱間加工性及び靭性を低下する。したがって、S含有量は0.0500%以下である。S含有量の上限は好ましくは0.0300%であり、より好ましくは0.0020%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、過度な脱硫は生産性を低下させるため、S含有量の下限は好ましくは0%超であり、より好ましくは0.0002%である。
【0030】
Ni:15.0~17.0%
ニッケル(Ni)はオーステナイトを安定化する。Niはさらに、鋼の延性及び靭性を高める。また、本開示の化学組成を満たし、後述する式(1)~式(3)を満たした上で、Ni含有量が15.0%以上であれば、溶接部の低温靱性が高まる。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は15.0~17.0%である。Ni含有量の下限は好ましくは15.3%であり、より好ましくは15.5%であり、さらに好ましくは15.7%である。Ni含有量の上限は好ましくは16.9%であり、より好ましくは16.8%であり、さらに好ましくは16.5%である。
【0031】
Cr:15.0~30.0%
クロム(Cr)は鋼の耐食性を高める。Crはさらに、熱処理によりC及びNと結合してCr2N等の合金炭窒化物を形成して、析出強化により鋼の強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、M236型の炭化物が生成し、鋼の延性及び靭性が低下する。したがって、Cr含有量は15.0~30.0%である。Cr含有量の下限は好ましくは20.5%であり、より好ましくは21.0%であり、さらに好ましくは21.5%である。Cr含有量の上限は好ましくは27.0%であり、より好ましくは25.0%であり、さらに好ましくは23.5%である。
【0032】
V:0.01~0.30%
バナジウム(V)は炭窒化物を生成し、鋼の強度を高める。V炭窒化物は、VC及びVNを含む。V含有量が低すぎればこの効果を得られない。しかしながら、V含有量が高すぎれば、その効果は飽和し、製造コストが高くなる。V含有量が高すぎればさらに、未固溶のV含有量が多くなり過ぎ、溶接部の低温靱性が低下する。したがって、V含有量は0.01~0.30%である。V含有量の下限は好ましくは0.02%であり、より好ましくは0.05%である。V含有量の上限は好ましくは0.28%であり、より好ましくは0.26%であり、さらに好ましくは0.20%である。
【0033】
Nb:0.01~0.30%
ニオブ(Nb)は炭窒化物を生成し、鋼の強度を高める。Nb炭窒化物は、NbC及びNbNを含む。Nb含有量が低すぎればこの効果を得られない。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、その効果は飽和し、製造コストが高くなる。Nb含有量が高すぎればさらに、未固溶のNb含有量が多くなり過ぎ、溶接部の低温靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.01~0.30%である。Nb含有量の下限は好ましくは0.02%であり、より好ましくは0.05%である。Nb含有量の上限は好ましくは0.28%であり、より好ましくは0.26%であり、さらに好ましくは0.20%である。
【0034】
N:0.40~0.60%
窒素(N)はオーステナイトを安定化する。Nはさらに、固溶強化により鋼の強度を高める。本開示ではN含有量を高めることで固溶強化により高圧の水素に適した強度を得る。N含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び加工性が低下する。したがって、N含有量は0.40~0.60%である。N含有量の下限は好ましくは0.41%であり、より好ましくは0.42%であり、さらに好ましくは0.43%である。N含有量の上限は好ましくは0.59%であり、より好ましくは0.58%であり、さらに好ましくは0.55%である。
【0035】
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、オーステナイト系ステンレス鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0036】
[任意元素について]
本開示によるオーステナイト系ステンレス鋼はさらに、Feの一部に代えて、Moを含有してもよい。
【0037】
Mo:0~5.0%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moはオーステナイトを固溶強化する。Moはさらに、鋼の耐食性を高める。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、金属間化合物が析出しやすくなり、鋼の延性及び靭性が低下する。したがって、Mo含有量は0~5.0%である。Mo含有量の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mo含有量の上限は好ましくは4.5%であり、より好ましくは4.0%であり、さらに好ましくは3.5%であり、さらに好ましくは3.0%である。
【0038】
[式(1)~式(3)について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、上記各元素の含有量を満たし、かつ、式(1)~式(3)を満たす。これにより、高強度を有し、さらに、溶接部の低温靱性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
【0039】
[式(1)について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、式(1)を満たす。
Nb+V≦0.40 (1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0040】
F1=Nb+Vと定義する。F1が0.40より高ければ、析出物が抑制できず、オーステナイト系ステンレス鋼の低温靱性が低下する。したがって、F1は0.40以下である。F1の下限は0.02である。F1の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.10である。F1の上限は好ましくは0.39であり、より好ましくは0.35であり、さらに好ましくは0.30であり、さらに好ましくは0.27である。
【0041】
[式(2)について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、式(2)を満たす。
Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273≧0 (2)
ここで、式(2)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0042】
F2=Ni+30(C+N)+0.5Mn-1.091(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-3.273と定義する。F2が0未満であれば、溶接部の低温靱性を高めることができない。これは、溶接部のδ-フェライトを抑制できないためと考えられる。したがって、F2は0以上である。F2の下限は好ましくは0.2であり、より好ましくは1.0であり、さらに好ましくは2.0である。F2の上限は、たとえば20.0である。F2の上限は好ましくは15.0であり、より好ましくは13.0である。
【0043】
[式(3)について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、式(3)を満たす。
Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47≧0 (3)
ここで、式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0044】
F3=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.80(Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb)-47と定義する。F3が0未満であれば、溶接部の低温靱性を高めることができない。これは、溶接部のδ-フェライトを抑制できないためと考えられる。したがって、F3は0以上である。F3の下限は好ましくは1.0であり、より好ましくは2.0である。F3の上限は、たとえば20.0である。F3の上限は好ましくは15.0であり、より好ましくは12.0である。
【0045】
[ミクロ組織]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼のミクロ組織はオーステナイト単相である。
【0046】
[未固溶のV含有量について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は未固溶のV含有量が0.20質量%以下である。Vは炭窒化物を形成する。V炭窒化物を抑制できれば、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部の低温靱性が高まる。未固溶のV含有量は、V炭窒化物の生成量に依存する。つまり、未固溶のV含有量が0.20質量%以下ということは、V炭窒化物の生成が抑制されていることを意味する。この場合、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部の低温靱性が高まる。未固溶のV含有量は少ない程好ましい。未固溶のV含有量の下限は0質量%であってもよい。しかしながら、V炭窒化物を完全に除去することは、製造上困難な場合があるので、未固溶のV含有量の下限は好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.02質量%である。未固溶のV含有量の上限はより好ましくは0.18質量%であり、より好ましくは0.15質量%である。
【0047】
[未固溶のNb含有量について]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は未固溶のNb含有量が0.20質量%以下である。Nbは炭窒化物を形成する。Nb炭窒化物を抑制できれば、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部の低温靱性が高まる。未固溶のNb含有量は、Nb炭窒化物の生成量に依存する。つまり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下ということは、Nb炭窒化物の生成が抑制されていることを意味する。この場合、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部の低温靱性が高まる。未固溶のNb含有量は少ない程好ましい。未固溶のNb含有量の下限は0質量%であってもよい。しかしながら、Nb炭窒化物を完全に除去することは、製造上困難な場合があるので、未固溶のNb含有量の下限は好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.02質量%である。未固溶のNb含有量の上限はより好ましくは0.18質量%であり、より好ましくは0.15質量%である。
【0048】
[未固溶のV含有量、及び、未固溶のNb含有量の測定方法]
未固溶のV含有量、及び、未固溶のNb含有量は次の方法で測定する。オーステナイト系ステンレス鋼の一部を採取し、試験片とする。試験片を10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド/メタノールの電解液を用いて電解する。得られた電解液を0.2μmメッシュのフィルターを用いてろ過する。ろ過後に残った残渣を酸で分解する。酸での分解条件は以下のとおりであった、酸:硫酸5ml+リン酸5ml+過塩素酸5ml+硝酸10ml+水5ml、温度:約290℃、処理時間:約30分。得られた溶液をICP分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により分析する。ICP発光分光分析装置は島津製作所製ICPV-1017(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いる。
【0049】
[引張強さについて]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の引張強さは好ましくは700MPa以上である。引張強さの下限はより好ましくは750MPaであり、さらに好ましくは800MPaである。引張強さの上限は特に限定されないが、たとえば1000MPaであり、好ましくは950MPaであり、より好ましくは930MPaである。
【0050】
[引張強さの測定方法]
引張強さはJIS Z2241(2011)に準じて測定する。平行部の直径が6.0mmで標点間距離が30mmの丸棒引張試験片を2本採取する。丸棒引張試験片の採取方向は、圧延方向とする。採取された丸棒引張試験片に対して、室温でJIS Z2241(2011)に準拠した方法で引張試験を実施し、引張強さを求める。
【0051】
[製造方法]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法の一例を説明する。本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、準備工程と、熱間加工工程と、最終熱処理工程とを備える。
【0052】
[準備工程]
準備工程では、上記化学組成及び式(1)~式(3)を満たす素材を準備する。具体的には、上記化学組成を有する溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。脱ガス処理を実施した溶鋼から、素材を製造する。素材の製造方法はたとえば、連続鋳造法である。連続鋳造法により、連続鋳造材(素材)を製造する。連続鋳造材はたとえば、スラブ、ブルーム及びビレット等である。溶鋼を造塊法によりインゴットにしてもよい。
【0053】
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、素材を熱間加工して中間材を製造する。具体的には、素材(連続鋳造材又はインゴット)を周知の方法により熱間加工して、オーステナイト系ステンレス鋼の中間材を製造する。中間材はたとえば、鋼管、棒鋼、及び線材等である。中間材はたとえば、ユジーン・セジュルネ法による熱間押出加工により製造される。熱間加工時の加熱温度はたとえば、1000~1250℃である。
【0054】
[最終熱処理工程]
最終熱処理工程では、中間材を、1000℃以上の温度で最終熱処理する。最終熱処理の温度が1000℃未満では、V炭窒化物及びNb炭窒化物を含む析出物が多くなり過ぎ、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部の低温靱性が低下する。したがって、最終熱処理の温度は1000℃以上である。最終熱処理の温度の上限はたとえば1250℃である。
【0055】
たとえば、以上の製造方法により、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
【0056】
[その他の工程]
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法は、上記工程の他にその他の工程を有してもよい。たとえば、最終熱処理工程の前に、冷間加工工程を備えてもよい。また、熱間加工工程の後、最終熱処理工程の前に、中間の熱処理工程を備えてもよい。冷間加工工程及び熱処理工程は複数回実施してもよい。
【実施例
【0057】
[製造方法]
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼を試験炉で溶解し、熱間鍛造により長さ300mm、幅200mm、厚さ120mmの鋼板とした。得られた鋼板を表2に記載の熱処理温度で20分間保持した後に水冷する最終熱処理を実施した。最終熱処理した鋼板から、各試験に使用する試験片を作製した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[未固溶のV含有量及び未固溶のNb含有量の測定試験]
各試験番号の鋼板に対して、上述の方法で、未固溶のV含有量及び未固溶のNb含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
[シャルピー衝撃試験]
各試験番号の鋼板を、長さ150mm、幅200mm、厚さ120mmに機械加工し、溶接により接合した。溶接は、ガスタングステンアーク溶接法により、各試験番号の鋼板と同じ化学組成の溶加材を用いて、入熱5kJ/cmとして、鋼板同士に対して突合せ溶接を行った。溶接後の溶接部に、ノッチ角度45°、2mm深さのノッチ加工を施し、シャルピー試験片を作製した。JIS Z2242(2018)に準拠した方法でシャルピー衝撃試験を実施して、吸収エネルギー(J)及び横膨出量(mm)を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0062】
[引張試験]
各試験番号の鋼板に対して、上述の方法で引張強さを測定した。結果を表2に示す。
【0063】
[評価結果]
表1及び表2を参照して、試験番号1~試験番号6の鋼板は、化学組成が適切であり、式(1)~式(3)を満たした。試験番号1~試験番号6の鋼板はさらに、未固溶のV含有量が0.20質量%以下であり、未固溶のNb含有量が0.20質量%以下であった。そのため、試験番号1~試験番号6の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが30J以上であり、横膨出量が0.50mm以上であり、溶接部の優れた低温靱性を示した。また、試験番号1~試験番号6の鋼板は引張強さが700MPa以上であり、優れた強度を有した。
【0064】
一方、試験番号7の鋼板は、化学組成は適切であり、式(1)~式(3)を満たしたものの、未固溶のV含有量が0.20質量%を超えた。そのため、試験番号7の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが13Jであり、横膨出量が0.23mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0065】
試験番号8の鋼板は、化学組成は適切であり、式(1)~式(3)を満たしたものの、未固溶のNb含有量が0.20質量%を超えた。そのため、試験番号8の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが25Jであり、横膨出量が0.42mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0066】
試験番号9の鋼板は、各元素の含有量は適切であったものの、式(2)を満たさなかった。そのため、試験番号9の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが21Jであり、横膨出量が0.36mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0067】
試験番号10の鋼板は、V含有量が高すぎ、式(1)を満たさなかった。試験番号10の鋼板はさらに、未固溶のV含有量が0.20質量%を超えた。そのため、試験番号10の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが13Jであり、横膨出量が0.29mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0068】
試験番号11の鋼板は、Nb含有量が高すぎた。さらに未固溶のNb含有量が0.20質量%を超えた。そのため、試験番号11の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが15Jであり、横膨出量が0.32mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0069】
試験番号12の鋼板は、Ni含有量が低すぎた。そのため、試験番号12の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが13Jであり、横膨出量が0.29mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0070】
試験番号13の鋼板は、Cr含有量が低すぎた。そのため、試験番号13の鋼板は、引張強さが685MPaであり、強度が低かった。
【0071】
試験番号14の鋼板は、C含有量が高すぎた。そのため、試験番号14の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが8Jであり、横膨出量が0.22mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0072】
試験番号15の鋼板は、Mo含有量が高すぎた。そのため、試験番号15の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが23Jであり、横膨出量が0.32mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0073】
試験番号16の鋼板は、各元素の含有量は適切であったものの、式(1)を満たさなかった。そのため、試験番号16の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが19Jであり、横膨出量が0.21mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0074】
試験番号17の鋼板は、各元素の含有量は適切であったものの、式(3)を満たさなかった。そのため、試験番号17の鋼板は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが22Jであり、横膨出量が0.31mmであり、溶接部の低温靱性が低かった。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。