(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電子部品冷却モジュール及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20230512BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2019080806
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】金井 祐樹
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249411(JP,A)
【文献】実開平02-084394(JP,U)
【文献】特開平08-264981(JP,A)
【文献】特開平05-107519(JP,A)
【文献】特開平04-017358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0194745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40-23/473
H05K 7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部の肉厚は、前記高さ寸法維持部の肉厚よりも薄い、
電子部品冷却モジュール。
【請求項2】
基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部は、前記チューブの上端部及び下端部にそれぞれ装着されるカバー部材の間に形成されている、
電子部品冷却モジュール。
【請求項3】
基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記高さ寸法維持部及び前記膨張部は、前記電子部品に向かう方向に沿って伸縮する蛇腹状部を含み、前記チューブは、前記蛇腹状部の伸縮に伴って、前記電子部品に対して接近及び離間する、
電子部品冷却モジュール。
【請求項4】
基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部は、袋状部である、
電子部品冷却モジュール。
【請求項5】
基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、
前記電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部の肉厚は、前記高さ寸法維持部の肉厚よりも薄い、
電子装置。
【請求項6】
基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、
前記電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部は、前記チューブの上端部及び下端部にそれぞれ装着されるカバー部材の間に形成されている、
電子装置。
【請求項7】
基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、
前記電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記高さ寸法維持部及び前記膨張部は、前記電子部品に向かう方向に沿って伸縮する蛇腹状部を含み、前記チューブは、前記蛇腹状部の伸縮に伴って、前記電子部品に対して接近及び離間する、
電子装置。
【請求項8】
基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、
前記電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下で
あり、
前記膨張部は、袋状部である、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品冷却モジュール及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリ等の電子部品の通信量増大や、通信速度の高速化、さらには、データセンターのフリークーリング等に起因するサーバ等の電子装置の設置環境温度が高くなっている。また、電子部品の高密度実装により冷却のための空気の流路が十分に確保できない場合がある。このような状況下においては、システムファンによる強制空冷を行っても電子部品の冷却が十分に行われない可能性がある。そこで、冷媒液により受熱する冷却方式を採用した電子デバイスの冷却器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、電子デバイスを挟む間隙を有すると共に内部に冷媒液が流れる構造体を有する冷却器が開示されている。この冷却器は、構造体と、この構造体を引き伸ばすことで幅が狭くなった間隙に挟まれた電子デバイスとの接触圧力を確保して電子デバイスを冷却するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子装置に組み込まれた電子部品を冷却する冷却モジュールの一部が電子部品の高さを超えた状態で設置されていると電子装置の高密度実装の妨げとなる。例えば、電子部品であるメモリがマザーボードに設けられているメモリスロットに挿し込まれた状態を想定したとき、冷却モジュールの一部がメモリのマザーボードから離れた側の端縁よりも上側に位置していると高密度実装に影響が及ぶ。このため、冷却モジュールは、電子装置の高密度実装に影響を及ぼすことがないように、電子装置に組み込まれた電子部品の高さを超えない状態とされることが望ましい。しかしながら、特許文献1は、構造体が有する間隔で電子デバイスを挟む態様であり、構造体の一部が電子デバイスの高さよりも高い状態となっていた。
【0005】
1つの側面では、本明細書開示の発明は、電子部品の高さを超えることなく冷媒液によって電子部品を冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、電子部品冷却モジュールは、基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、前記チューブを支持する支持部と、を有し、前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下である。
【0007】
他の態様では、電子装置は、基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、前記電子部品と並列に配置されるチューブと、前記チューブを支持する支持部と、を有し、前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子部品の高さを超えることなく冷媒液によって電子部品を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態の電子装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は実施形態の電子部品冷却モジュールの斜視図である。
【
図3】
図3は実施形態の電子装置に含まれるサーバの斜視図である。
【
図4】
図4は実施形態の電子装置に含まれるサーバの平面図である。
【
図5】
図5は実施形態の電子部品冷却モジュールに含まれるチューブの斜視図である。
【
図6】
図6は実施形態の電子部品冷却モジュールに含まれるチューブの
図5におけるA-A線断面図である。
【
図7】
図7(A)は膨張していない状態のチューブの断面図であり、
図7(B)は膨張量が少ない状態のチューブの断面図であり、
図7(C)は膨張量が多い状態のチューブの断面図である。
【
図8】
図8はチューブが膨張して電子部品に接触している状態を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9(A)は電子部品間のピッチが大きいときにチューブが膨張して電子部品に接触している状態を模式的に示す説明図であり、
図9(B)は電子部品間のピッチが小さいときにチューブが膨張して電子部品に接触している状態を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11はさらに他の変形例のチューブの断面図である。
【
図12】
図12はさらに他の変形例のチューブの断面図である。
【
図13】
図13はさらに他の変形例のチューブの断面図である。
【
図14】
図14はサーバ毎にポンプを備えた電子装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されていたり、寸法が実際よりも誇張されて描かれていたりする場合がある。
【0011】
(実施形態)
まず、
図1から
図9を参照して実施形態の電子装置100について説明する。
図1を参照すると、電子装置100は、複数のサーバ(ノード)50を備える。各サーバ50には、電子部品冷却モジュール(以下、単に「冷却モジュール」という)1が設けられている。各冷却モジュール1は、第1配管43と第2配管44を介してCDU(Coolant Distribution Unit)40と接続されている。CDU40は、熱交換器41とポンプ42を備える。ポンプ42は、第1配管43、各冷却モジュール1及び第2配管44内に封入されている冷媒液15(
図6参照)を循環させる。熱交換器41は、外部で冷却された冷媒と冷媒液15との間で熱交換を行い、冷媒液15を冷却する。第1配管43は、熱交換器41で冷却された冷媒液15を各冷却モジュール1に分配する。第2配管は、各冷却モジュールでサーバ50から熱を奪い温まった冷媒液15を回収する。なお、
図1には、4台のサーバ50が描かれているが、サーバ50の台数はこれに限定されるものではない。また、本実施形態の説明では、説明の都合上、複数のサーバ50を含む形態を電子装置と称しているが、サーバ50の一台ずつを電子装置と称することもできる。
【0012】
図2を参照すると、冷却モジュール1は、複数のチューブ2と、チューブ2を支持する支持部3を備えている。複数のチューブ2は、直列に配列されている。直列に配列されたチューブ2の入口部分と出口部分には、圧力調整タンク45が設けられている。圧力調整タンク45が冷媒液15によるチューブ2内の圧力が所定値を超えないように設けられている。圧力調整タンク45は、カプラ形状とすることもできる。カプラ形状とすることで、冷却モジュール1の脱着を容易とし、冷却モジュール1内の冷媒液15を抜く作業をし易くすることができる。また、圧力調整タンク45に代えてアキュムレータを装備するようにしてもよい。
【0013】
図3や
図4を参照すると、サーバ50は、マザーボード(基板)51上にメモリスロット53を備え、このメモリスロット53に挿し込まれた電子部品としてメモリ52を備えている。本実施形態のメモリ52は、長手方向に沿って2列、厚み方向に沿って8列設けられており、合計16枚のメモリ52がマザーボード上に実装されている。このようなメモリ52の配列に対し、チューブ2は、メモリ52の長手方向に沿うように配置されている。チューブ2は、マザーボード51上に固定された支持部3によって支持されている。チューブ2は、対向配置されているメモリ52の間を通過し、メモリ52と並列するように配置されている。メモリ52は、冷却対象となる電子部品の一例であり、冷却対象となる電子部品は、メモリに限定されるものではない。
【0014】
なお、マザーボード51自体は、サーバラック等に搭載される際、その平滑面が水平となるように設置されたり、平滑面が垂直となるように設置されたりすることがある。但し、以下の説明では、説明の都合上、
図3に示すように、マザーボード51の平滑面と垂直となる方向を上下方向、または、高さ方向と称し、メモリ52が対向配置されている方向をチューブ2が膨張し、収縮する伸縮方向として説明する。このため、メモリ52は、上下方向に立てた状態でマザーボード51に装着されており、
図3において符号3aを付して示した上端縁が最も高い位置となっている。
【0015】
図5や
図6を参照すると、チューブ2は、内部に冷媒液15が流れると共に、膨張部2aと、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部2b、2cを備えている。高さ寸法維持部2bは、膨張部2aの上側に設けられている。膨張部2aは、サーバ50に組み込まれた状態のときに、側方に位置しているメモリ52と対向するように設けられている。膨張部2aは、チューブ2内に冷媒液15が流れると、その圧力に応じて膨張及び収縮することができる。膨張部2aは、膨張することで、側方に配置されるメモリ52に接触することができる。膨張部2aは、チューブ2内の圧力を適切に調節することでメモリ52と面接触することができ、メモリ52との間で熱伝導を行うことができる。冷媒液15はメモリ52から熱を奪う。これにより、メモリ52は冷却される。メモリ52の熱を奪った冷媒液15は、CDU40で冷却され、ポンプ42によって、再び冷却モジュール1に送られる。なお、チューブ2の前端及び後端は、配管部となっており、他のチューブ2や配管部材と接続可能とされている。本実施形態体のチューブ2は、複数のチューブ2を連結して用いられているが、冷却モジュール1に用いられるチューブ全体を一体に形成するようにしてもよい。
【0016】
チューブ2は、熱伝導性を有する素材で成形されている。本実施形態のチューブ2は、膨張部2aが膨張し易いように、弾性を有する素材であるシリコーンゴムで形成されている。チューブ2は、熱伝導性を有し、変形可能な弾性を有するものであれば良く、シリコーンゴム以外では、例えば、エチレンプロピレンゴムを用いることができる。また、多硫化ゴム、ニトリルゴム、ノルボルネンゴム水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等、従来公知の素材を適宜採用することができる。また、チューブの伝熱性を向上させるために、ゴム素材中に熱伝導率が良好な銅やアルミニウム等のフィラーを配合してもよい。
【0017】
ここで、膨張部2aと高さ寸法維持部2b、2cの肉厚について説明する。本実施形態では、膨張部2aと高さ寸法維持部2b、2cを一体に形成しているが、膨張部2aの肉厚は、高さ寸法維持部2b、2cの肉厚よりも薄い。これにより、膨張部2aは、高さ寸法維持部2b、2cと比較して変形し易く、チューブ2内の圧力が上昇したときに、側方に向かって膨張し、メモリ52に面接触することができる。これに対し、高さ寸法維持部2b、2cは、チューブ2が支持部3によって支持された状態における高さ位置はほとんど変化することがない。
【0018】
なお、本実施形態のチューブ2は、対向する壁面にそれぞれ膨張部2aを備えている。但し、膨張部2aは、チューブ2の一方の側壁にのみ設けるようにしてもよい。例えば、チューブ2の一方の側方にのみメモリ52が配置されているようなレイアウトの場合には、メモリ52が配置されている側にのみ膨張部2aを設けるようにしてもよい。
【0019】
膨張部2aは、チューブ2内の圧力が上昇することによってメモリ52に密着することができるため、良好な熱伝導性を実現することができる。このため、サーマルシート等、従来の冷却装置に装備されていた部品が不要となる。また、チューブ2が直接メモリと接触するため、ヒートスプレッダ等も不要である。このため、装置のコストダウンと図ることができる。
【0020】
なお、本実施形態のチューブ2は、その断面形状を楕円形とし、曲率の大きい側壁に膨張部2aを設けているため、膨張部2aをメモリ52の広範囲に接触させることができる。これにより、熱伝導性を高め、冷却効率を向上させることができる。
【0021】
本実施形態の冷媒液15は、純水を用いているが、冷媒液15はこれに限定されない。エチレングリコール水溶液等、従来、水冷の冷却装置の冷媒として採用されている公知の冷媒は、本実施形態の冷媒液15として採用することができる。
【0022】
チューブ2は、ポンプ42の出力を調整することで、
図7(A)から
図7(C)に示すように、膨張部2aの膨張具合を調整することができる。膨張部2aは、ポンプ42が稼働していないときには、
図7(A)に示すように、収縮した状態となっている。また、ポンプ42の出力を中程度に調整することで、
図7(B)に示すように膨張部2aは、わずかに膨張した状態となる。そして、ポンプ42の出力をさらに高めることで
図7(C)に示すように膨張部2aは、大きく膨張した状態となる。膨張部2aは、大きく膨張することで、メモリ52に対する密着度を向上させることができる。すなわち、例えば、バネや複雑な構造の加圧構造等を備えることなく、チューブ2とメモリ52との密着状態と実現することができる。
【0023】
つぎに、
図8を参照して、チューブ2の設置に関し、より詳細に説明する。
図8を参照すると、チューブ2は、メモリスロット53間のピッチがPであるメモリ52の間に配置されている。チューブ2には、メモリ52が備える実装部品(チップ)521に押し当てられる程度に膨張部2aが膨張するように冷媒液15が送り込まれる。チューブ2内の圧力を決める冷媒液15の流量は、予めポンプ42の出力を調整しておくことで決められる。
【0024】
チューブ2は、その上端部2b1が、メモリ52の上端部52aよりも下側、すなわち、マザーボード51に近い側に位置するように設置されている。また、支持部3もその上端部3aが、メモリ52の上端部52aよりも下側、すなわち、マザーボード51に近い側に位置するように設置されている。このように、チューブ2と支持部3の高さを、マザーボード51に実装された状態のメモリ52の高さ以下とすることで、冷却モジュール1が電子装置100における高密度実装の妨げとなることがない。
【0025】
すなわち、各サーバ50において、最も高い位置をメモリ52の上端部52aとすることで、各サーバ50の高さがメモリ52を基準に設定されることになり、冷却モジュール1は、各サーバ50の高さに影響を与えることがない。この結果、各サーバ50は、メモリ52の高さ位置を基準に寸法設計を行えばよい。
【0026】
つぎに、
図9(A)及び
図9(B)を参照して、チューブ2の異なるメモリスロット53間のピッチPへの対応について説明する。チューブ2は、
図7(A)から
図7(C)を参照して説明したように、その内部の圧力に応じて、膨張部2aの膨張量を調節することができる。このため、チューブ2は、例えば、
図9(A)のようにピッチP1で配置されるメモリ52や
図9(B)で示すようにピッチP1よりも狭いピッチP2で配置されるメモリ52にも対応することができる。すなわち、
図9(A)に示すようにピッチP1のときは膨張部2aの膨張量を大きくし、一方、
図9(B)に示すようにピッチP2のときは膨張部2aの膨張量を小さくする。このように、本実施形態の冷却モジュール1は、メモリ52の異なるレイアウトに対応することができる。
【0027】
このように、本実施形態の冷却モジュール1によれば、メモリ52の高さを超えることなく冷媒液15によってメモリを冷却することができる。なお、冷却モジュール1は、例えば、ポンプ42を停止させ、チューブ2内の圧力を低下させることで、容易にメモリ52を脱着することができ、保守作業性も良好である。チューブ2から冷媒液15を抜くための治具を準備しておき、この治具によって冷媒液15を抜き、チューブ2内の圧力を低下させるようにしてもよい。
【0028】
(第1変形例)
つぎに、
図10を参照して、第1変形例について説明する。本実施形態のチューブ2は、
図6に示すように、チューブ2の内周壁面側を凹状として薄肉に形成して膨張部2aを形成していた。これに対し、第1変形例のチューブ12は、チューブ12の外周壁面側を凹状として薄肉に形成し、膨張部12aを形成している。膨張部12aの上側に厚肉の高さ寸法維持部12bが形成され、膨張部12aの下側に厚肉の高さ寸法維持部12cが形成されている点は、チューブ6と共通している。このようなチューブ12であっても、膨張部12aを適宜膨張させ、メモリ52に面接触させることができる。このようなチューブ12も上端部12b1がメモリ52の上端部52aよりも低い位置となるようにサーバ50に搭載され、メモリ52の高さを超えることなく冷媒液15によってメモリを冷却することができる。
【0029】
(第2変形例)
つぎに、
図11を参照して、第2変形例について説明する。第2変形例のチューブ22は、全周に亘って、同じ肉厚とし、上端部及び下端部にそれぞれカバー部材23を装着している。これにより、カバー部材23間を膨張部22aとしている。カバー部材23を装着した部分は、それぞれ、高さ寸法維持部22b、22cを形成している。このようなチューブ22であっても、膨張部22aを適宜膨張させ、メモリ52に面接触させることができる。このようなチューブ22も上端部22b1がメモリ52の上端部52aよりも低い位置となるようにサーバ50に搭載され、メモリ52の高さを超えることなく冷媒液15によってメモリを冷却することができる。
【0030】
(第3変形例)
つぎに、
図12を参照して、第3変形例について説明する。第3変形例のチューブ32は、メモリ52に向かう方向に沿って伸縮する蛇腹状部32b、32cを含み、膨張部32aは、蛇腹状部32b、32cの伸縮に伴って、メモリ52に対して接近及び離間することができる。蛇腹状部32b、32cは、メモリ52に向かう方向に沿って伸縮するものであり、高さ方向の位置は、概ね変化することがない。このため、蛇腹状部32b、32cは、高さ寸法維持部としての機能を有している。蛇腹状部32b、32cは、内部の圧力が上昇すると、広がり、この結果、膨張部32aは側方に位置しているメモリ52に向かって移動し、メモリ52に面接触する。このようなチューブ32も上端部32b1がメモリ52の上端部52aよりも低い位置となるようにサーバ50に搭載され、メモリ52の高さを超えることなく冷媒液15によってメモリを冷却することができる。
【0031】
(第4変形例)
図13(A)及び
図13(B)を参照して、第4変形例について説明する。第3変形例のチューブ32は、チューブ62の側壁部に設けられた袋状部62aを備える。袋状部62aは膨張部として機能する。袋状部62aの上側には、高さ寸法維持部62bが形成され、袋状部62aの下側には、高さ寸法維持部62cが形成されている。袋状部62aは、ポンプ42が稼働していなかったり、チューブ62内の圧力が低かったりする場合には、
図13(A)に示すように萎んだ状態となっている。一方、袋状部62aは、ポンプ42が稼働し、チューブ62内の圧力が高まると、
図13(B)に示すように膨らむ。袋状部62aは、膨らむことでメモリ52に面接触することができる。このようなチューブ62も上端部62b1がメモリ52の上端部52aよりも低い位置となるようにサーバ50に搭載され、メモリ52の高さを超えることなく冷媒液15によってメモリを冷却することができる。
【0032】
(第5変形例)
つぎに、
図14を参照して第5変形例について説明する。
図14に示す第5変形例としての電子装置200が
図1に示す電子装置100と異なる点は、電子装置200が、電子装置100が備えるポンプ42に代えてサーバ50毎に設けられたポンプ46を備える点である。
【0033】
電子装置100では、単一のポンプ42を備えているため、各サーバ50が備える冷却モジュール1が備えるチューブ2に導入される冷媒液15の流量は、ほぼ均一である。このため、チューブ2が備える膨張部2aの膨張量も概ね同じである。これに対し、電子装置200では、サーバ50毎にポンプ46を備えるため、各ポンプ46の出力を調整することで、冷却モジュール1毎に膨張部2aの膨張量を調節することができる。このため、サーバ50毎にメモリ52間のピッチPが異なっているようなレイアウトにも適宜対応することができる。
【0034】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0035】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板に実装される電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下である電子部品冷却モジュール。
(付記2)
前記膨張部の肉厚は、前記高さ寸法維持部の肉厚よりも薄い付記1に記載の電子部品冷却モジュール。
(付記3)
前記膨張部は、前記チューブの上端部及び下端部にそれぞれ装着されるカバー部材の間に形成されている付記1に記載の電子部品冷却モジュール。
(付記4)
前記高さ寸法維持部は、前記電子部品に向かう方向に沿って伸縮する蛇腹状部を含み、前記膨張部は、前記蛇腹状部の伸縮に伴って、前記電子部品に対して接近及び離間する付記1に記載の電子部品冷却モジュール。
(付記5)
前記膨張部は、袋状部である付記1に記載の電子部品冷却モジュール。
(付記6)
基板に設けられているスロットに実装された電子部品と、
前記電子部品と並列に配置されるチューブと、
前記チューブを支持する支持部と、を有し、
前記チューブは、内部に前記電子部品を冷却する冷媒液が流れ、前記冷媒液の圧力によって側方に配置される前記電子部品に向かって膨張し、前記電子部品と面接触する膨張部と、高さ方向の寸法を維持する高さ寸法維持部と、を有し、
前記チューブと前記支持部の高さは、前記基板に実装された状態の前記電子部品の高さ以下である電子装置。
(付記7)
前記膨張部の肉厚は、前記高さ寸法維持部の肉厚よりも薄い付記6に記載の電子装置。
(付記8)
前記膨張部は、前記チューブの上端部及び下端部にそれぞれ装着されるカバー部材の間に形成されている付記6に記載の電子装置。
(付記9)
前記高さ寸法維持部は、前記電子部品に向かう方向に沿って伸縮する蛇腹状部を含み、前記膨張部は、前記蛇腹状部の伸縮に伴って、前記電子部品に対して接近及び離間する付記6に記載の電子装置。
(付記10)
前記膨張部は、袋状部である付記6に記載の電子装置。
【符号の説明】
【0036】
1 電子部品冷却モジュール
2、12、22、62 チューブ
2b1、12b1、22b1、62b1 上端部
3 支持部
3a 上端部
42、46 ポンプ
50 サーバ
51 マザーボード(基板)
52 メモリ(電子部品)
100 電子装置