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特許7277734スキッドボタンの評価方法及びスキッドボタンの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】スキッドボタンの評価方法及びスキッドボタンの補修方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20230512BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20230512BHJP
   F27D 3/02 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G01B11/30 A
C21D1/00 116B
F27D3/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019096623
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020190513
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正司
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-205224(JP,A)
【文献】特開2018-140403(JP,A)
【文献】特開昭61-291917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
C21D 1/00
F27D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内において鋼材を搬送するスキッドに設けられた前記鋼材を支持する複数のスキッドボタンの損傷状態を評価するスキッドボタンの評価方法であって、
加熱炉内の予め定められた複数の設置位置に設置された3Dスキャナによって複数の前記スキッドボタンの3次元座標を取得する座標取得工程と、
前記座標取得工程で取得された前記スキッドボタンの3次元座標からなる測定点により構成された前記スキッドボタンの測定点群を生成する点群生成工程と、
複数の前記スキッドボタンのそれぞれにおいて、前記スキッドボタンの測定点群のうち任意の一点である参照点を決定する参照点決定工程と、
複数の前記スキッドボタンのそれぞれにおいて、前記参照点に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価する評価工程と
を備えるスキッドボタンの評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたスキッドボタンの評価方法であって、
複数の前記スキッドボタンは、それぞれ前記鋼材を支持する支持面を備えており、
前記参照点は、前記スキッドボタンの前記支持面上の任意の一点であるスキッドボタンの評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記座標取得工程は、前記3Dスキャナが前記スキッドボタンの前記支持面それぞれの3次元座標を複数取得可能な範囲であって、前記設置位置を中心として広がる円形状の3次元座標取得可能範囲の大きさを決定する3次元座標取得可能範囲決定工程と、
隣接する前記設置位置のそれぞれを中心として広がる前記3次元座標取得可能範囲の少なくとも一部が互いに重複するように前記設置位置を決定する設置位置決定工程とをさらに備えるスキッドボタンの評価方法。
【請求項4】
請求項3に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記3次元座標取得可能範囲決定工程では、前記3Dスキャナの分解能と、前記スキッドボタンの前記支持面の平面寸法と、前記3Dスキャナの設置高さと前記スキッドボタンの高さとの高低差とに基づいて前記3次元座標取得可能範囲を決定するスキッドボタンの評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記点群生成工程は、前記座標取得工程で各前記3次元座標取得可能範囲で取得された前記3次元座標をもとに生成された前記スキッドボタンの前記測定点群を合成した合成点群を生成する合成点群生成工程を備え、
前記参照点決定工程では、複数の前記スキッドボタンのそれぞれにおいて、前記合成点群をもとに前記参照点を決定するスキッドボタンの評価方法。
【請求項6】
請求項5に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記座標取得工程では、前記3Dスキャナを用いて前記スキッドボタンの前記支持面の前記3次元座標を取得する際に、平面位置及び高さが既知である3以上の参照物の3次元座標をさらに取得し、
前記点群生成工程では、さらに前記参照物の前記3次元座標をもとに複数の前記参照物の点群をそれぞれ生成し、
前記合成点群生成工程では、生成された複数の前記参照物の点群をもとに、前記スキッドボタンの前記測定点群を合成して前記合成点群を生成することを特徴とするスキッドボタンの評価方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記評価工程では、前記スキッドボタンの前記合成点群をもとに前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の高さを算出し、
算出された前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の高さと、予め定められた前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の基準高さとの差に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価するスキッドボタンの評価方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記評価工程では、前記複数のスキッドボタンのうちの一部の複数のスキッドボタンによって構成されるスキッドボタン群を複数組予め設定し、
前記スキッドボタン群ごとに前記スキッドボタンの損傷状態を評価するスキッドボタンの評価方法。
【請求項9】
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記評価工程では、前記複数のスキッドボタンのうちの一部の複数のスキッドボタンによって構成されるスキッドボタン群を複数組予め設定し、
前記評価工程では、各前記スキッドボタン群ごとに、前記スキッドボタン群を構成する複数の前記スキッドボタンごとの前記支持面の前記参照点を基準とした高さに基づいて、前記スキッドボタン群を構成する前記スキッドボタンの前記支持面の高さの代表値を示す群代表値をそれぞれ算出し、各前記スキッドボタン群ごとに算出された前記群代表値に基づいて、前記スキッドボタン群ごとに前記スキッドボタンの損傷状態を評価することを特徴とするスキッドボタンの評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記スキッドは、高さが固定された複数の固定スキッドと、
可動機構によって高さが変動する複数の可動スキッドとを備え、
前記スキッドボタンは、前記固定スキッドに設けられた固定スキッドボタンと、
前記可動スキッドに設けられた可動スキッドボタンとを備え、
前記スキッドボタン群は、前記固定スキッドボタンによって構成された第1のスキッドボタン群と、
前記可動スキッドボタンによって構成された第2のスキッドボタン群とを有し、
前記群代表値は、前記第1のスキッドボタン群の前記固定スキッドボタンの高さの代表値を示す第1の群代表値と、
前記第2のスキッドボタン群の前記可動スキッドボタンの高さの代表値を示す第2の群代表値とを有し、
前記固定スキッドボタンの損傷状態は、前記第1の群代表値に基づいてそれぞれ評価し、
前記可動スキッドボタンの損傷状態は、前記第2の群代表値に基づいてそれぞれ評価するスキッドボタンの評価方法。
【請求項11】
請求項6に記載のスキッドボタンの評価方法において、
前記参照点決定工程では、前記スキッドボタンの前記支持面の任意の一点である前記参照点を複数決定し、
前記評価工程では、決定された複数の前記参照点における高さの相対関係に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価することを特徴とするスキッドボタンの評価方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11に記載されたスキッドボタンの評価方法によって、補修する対象となる前記スキッドボタンを選定する補修対象選定工程と、
補修する対象として選定された前記スキッドボタンの補修を行う補修工程とを備えるスキッドボタンの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドボタンの評価方法及びスキッドボタンの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼材を熱間圧延する際には、鋼材に対して予め加熱炉で加熱処理が行われ、鋼材は熱間圧延に必要とする温度に調整される。このような加熱処理を行う加熱炉として、ウォーキングビーム式加熱炉がある(例えば、特許文献1参照)。ウォーキングビーム式加熱炉は、加熱炉内に、ウォーキングビーム式搬送装置が設けられており、当該搬送装置により鋼材を搬送しながら加熱炉内に設けられたバーナーなどにより鋼材の加熱を行う。ウォーキングビーム式搬送装置は、鋼材を支持する複数のスキッドを備えている。スキッドには、高さが固定された固定スキッドと、可動機構により上下及び前後に移動可能な可動スキッドとがある。固定スキッドと可動スキッドとは、鋼材の搬送方向Xに交互に配されている。そして、鋼材は、可動機構により可動スキッドボタンが上昇することで、固定スキッドに支持された状態から可動スキッドに支持されて固定スキッドから上方に持ち上げられた状態とされる。次に、鋼材は、可動機構により可動スキッドが前進することで搬送方向X前方へ移動し、可動機構により可動スキッドが下降することで、再び固定スキッドに支持された状態となる。これを繰り返すことにより、鋼材は搬送方向X前方へ順次搬送されつつ加熱炉内で加熱される。
【0003】
ここで、加熱炉内の温度は、例えば、1000℃以上の温度となる。このため、ウォーキングビーム式加熱炉内において鋼材を直接支持するスキッドボタンは、耐熱合金で形成されており、冷却機構が設けられたスキッドパイプ上に固定されている(例えば、特許文献2、3参照)。スキッドパイプは、内部に冷却用水が通水されており、外周が耐火物に覆われている。スキッドボタンは、スキッドパイプに例えば溶接によって固定されており、スキッドボタンの外周を覆う耐火物から突出するようにして設けられている。このようなスキッドボタンも、上記のとおり耐熱合金で形成されているものの、使用を継続することで、加熱炉内の高温環境に曝され、鋼材からの荷重、摩擦を受けることにより、摩耗、欠落が生じ、あるいは、スキッドボタンそのものがスキッドパイプから脱落してしまう恐れがある。このため、ウォーキングビーム式加熱炉の停止期間を利用して、スキッドボタンの損傷状態を確認する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-265538号公報
【文献】特開2014-169490号公報
【文献】実公昭58-35640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウォーキングビーム式加熱炉の停止期間を利用しても、スキッドボタンの損傷状態を網羅的に、かつ、正確に把握することは困難であった。具体的には、スキッドボタンは、鋼材を支持し搬送するために数千個設けられていて、一つ一つスキッドボタンの損傷状態を確認するだけでも多大な時間が必要となる。また、スキッドボタンの設置高さは、可動スキッドボタンを上下、前後に移動させる構造にするなど、可動するためのスペースや、炉内が均一に加熱するための燃焼スペースを確保するために、床面から上方に離間した高さとなる。このため、スキッドボタンの設置高さで、スキッドボタンの高さを測定するためには、足場を設ける手間と時間が必要であった。また、ウォーキングビーム式加熱炉の稼働停止直後において、加熱炉の内部は高温であるため、すぐにスキッドボタンの高さの測定や補修ができる温度環境になく、加熱炉が冷却するための準備期間が必要となる。同様に、ウォーキングビーム式加熱炉は、停止期間において目的とする作業が完了してもすぐに稼働することはできず、稼働に必要な温度まで昇温する必要がある。このため、例えば停止期間を7日間としても実際に加熱炉内で作業が可能な期間は3日間程度となってしまう。この3日間の中で、足場の設置・撤去の時間を確保しつつ、数千個ものスキッドボタンの損傷状態を確認することは困難を極めていた。また、仮にスキッドボタンの損傷状態を確認する時間を確保することができたとしても、ウォーキングビーム式加熱炉の停止期間中に実施すべき他の保守作業等の支障とならないように、可能な限り足場の設置・撤去を含めてスキッドボタンの損傷状態を確認するための時間を抑制し、また、足場の設置スペースを最小限にすることが望まれていた。
【0006】
そこで、この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、短時間で容易にスキッドボタンの損傷状態を評価することが可能なスキッドボタンの評価方法及びスキッドボタンの補修方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係るスキッドボタンの評価方法は、加熱炉内において鋼材を搬送するスキッドに設けられた前記鋼材を支持する複数のスキッドボタンの損傷状態を評価するスキッドボタンの評価方法であって、加熱炉内の予め定められた複数の設置位置に設置された3Dスキャナによって複数の前記スキッドボタンの3次元座標を取得する座標取得工程と、前記座標取得工程で取得された前記スキッドボタンの3次元座標からなる測定点により構成された前記スキッドボタンの測定点群を生成する点群生成工程と、複数の前記スキッドボタンのそれぞれにおいて、前記スキッドボタンの測定点群のうち任意の一点である参照点を決定する参照点決定工程と、複数の前記スキッドボタンのそれぞれにおいて、前記参照点に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価する評価工程とを備える。
この方法によれば、座標取得工程では、加熱炉内において3Dスキャナを用いることで、それぞれのスキッドボタンの近傍に測定者が位置する必要なく、複数のスキッドボタンの3次元座標を取得することができる。このため、スキッドボタンの測定に要する時間を抑制することができるとともに、スキッドボタンにアクセスするための足場の設置も抑制することができる。そして、3Dスキャナによる測定であるため、3次元座標を取得することができるので、どのスキッドボタンからどのような3次元座標が得られたのかを測定後に容易に把握することができる。そして、点群生成工程で3次元座標からなる測定点により構成された測定点群を生成し、参照点決定工程で、測定点群の中から参照点を決定し、評価工程においては、決定された参照点における3次元座標に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価する。このため、スキッドボタンごとに測定する位置の相違による評価のずれを抑制し正確に評価することができる。
【0008】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、複数の前記スキッドボタンは、それぞれ前記鋼材を支持する支持面を備えており、前記参照点は、前記スキッドボタンの前記支持面上の任意の一点であるものとしても良い。
この方法によれば、参照点が支持面上の任意の一点であることで、鋼材を実際に支持する部分によって損傷状態を評価することができる。
【0009】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記座標取得工程は、前記3Dスキャナが前記スキッドボタンの前記支持面それぞれの3次元座標を複数取得可能な範囲であって、前記設置位置を中心として広がる円形状の3次元座標取得可能範囲の大きさを決定する3次元座標取得可能範囲決定工程と、隣接する前記設置位置のそれぞれを中心として広がる前記3次元座標取得可能範囲の少なくとも一部が互いに重複するように前記設置位置を決定する設置位置決定工程とをさらに備えるものとしても良い。
この方法によれば、各設置位置を中心として円形に広がる3次元座標取得可能範囲の大きさをスキッドボタンの支持面それぞれの3次元座標を複数取得可能な大きさとし、複数の設置位置の3次元座標取得可能範囲が互いに重複するように決定されることで、各設置位置の3次元座標取得可能範囲での精度を確保しつつ、広い範囲で測定、損傷状態の評価を行うことができる。
【0010】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記3次元座標取得可能範囲決定工程では、前記3Dスキャナの分解能と、前記スキッドボタンの前記支持面の平面寸法と、前記3Dスキャナの設置高さと前記スキッドボタンの高さとの高低差とに基づいて前記3次元座標取得可能範囲を決定するものとしても良い。
この方法によれば、3Dスキャナの分解能と、スキッドボタンの支持面の平面寸法と、3Dスキャナの設置高さとスキッドボタンの高さとの高低差に基づいて3次元座標取得可能範囲を決定することで、各設置位置における測定精度を確保しつつ、一定の水準とすることができる。
【0011】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記座標取得工程では、前記3Dスキャナを用いて前記スキッドボタンの前記支持面の前記3次元座標を取得する際に、平面位置及び高さが既知である3以上の参照物の3次元座標をさらに取得し、前記点群生成工程では、さらに前記参照物の3次元座標をもとに複数の前記参照物の点群をそれぞれ生成し、前記合成点群生成工程では、生成された複数の前記参照物の点群をもとに、前記スキッドボタンの前記測定点群を合成して前記合成点群を生成するものとしても良い。
この方法によれば、3以上の参照物の3次元座標に基づいて複数の設置位置における3次元座標取得可能範囲で取得した3次元座標を精度良く合成することができる。
【0012】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記評価工程では、前記スキッドボタンの前記合成点群をもとに前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の高さを算出し、算出された前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の高さと、予め定められた前記スキッドボタンの前記支持面の前記参照点の基準高さとの差に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価するものとしても良い。
この方法によれば、算出された参照点の高さと、参照点において予め定められた基準高さとに基づいて定量的にスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【0013】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記評価工程では、前記複数のスキッドボタンのうちの一部の複数のスキッドボタンによって構成されるスキッドボタン群を複数組予め設定し、前記スキッドボタン群ごとに前記スキッドボタンの損傷状態を評価するものとしても良い。
この方法によれば、スキッドボタン群として構成された複数のスキッドボタンの特性に応じて、スキッドボタン群ごとにスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【0014】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記評価工程では、各前記スキッドボタン群ごとに、前記スキッドボタン群を構成する複数の前記スキッドボタンごとの前記支持面の前記参照点を基準とした高さに基づいて、前記スキッドボタン群を構成する前記スキッドボタンの前記支持面の高さの代表値を示す群代表値をそれぞれ算出し、各前記スキッドボタン群ごとに算出された前記群代表値に基づいて、前記スキッドボタン群ごとに前記スキッドボタンの損傷状態を評価するものとしても良い。
この方法によれば、スキッドボタン群内での支持面の高さの代表値を示す群代表値を基準としてスキッドボタンの損傷状態の評価を行うことができる。
【0015】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、 前記スキッドは、高さが固定された複数の固定スキッドと、可動機構によって高さが変動する複数の可動スキッドとを備え、前記スキッドボタンは、前記固定スキッドに設けられた固定スキッドボタンと、前記可動スキッドに設けられた可動スキッドボタンとを備え、前記スキッドボタン群は、前記固定スキッドボタンによって構成された第1のスキッドボタン群と、前記可動スキッドボタンによって構成された第2のスキッドボタン群とを有し、前記群代表値は、前記第1のスキッドボタン群の前記固定スキッドボタンの高さの代表値を示す第1の群代表値と、前記第2のスキッドボタン群の前記可動スキッドボタンの高さの代表値を示す第2の群代表値とを有し、前記固定スキッドボタンの損傷状態は、前記第1の群代表値に基づいてそれぞれ評価し、前記可動スキッドボタンの損傷状態は、前記第2の群代表値に基づいてそれぞれ評価するものとしても良い。
この方法によれば、固定スキッドボタンで構成された第1のスキッドボタン群と、可動スキッドボタンで構成された第2のスキッドボタン群のそれぞれにおいて、固定スキッドボタンまたは可動スキッドボタンの特性に応じた第1の群代表値または第2の群代表値が設定され、当該群代表値に基づいて、固定スキッドボタンまたは可動スキッドボタンの特性に応じて損傷状態を評価することができる。
【0016】
また、上記のスキッドボタンの評価方法において、前記参照点決定工程では、前記スキッドボタンの前記支持面の任意の一点である前記参照点を複数決定し、前記評価工程では、決定された複数の前記参照点における高さの相対関係に基づいて前記スキッドボタンの損傷状態を評価するものとして良い。
この方法によれば、複数の支持面の高さの相対関係に基づいて損傷状態を評価することができる。
【0017】
また、本発明の一態様のスキッドボタンの補修方法は、上記のウォーキングビーム式加熱炉のスキッドボタンの評価方法によって、補修する対象となる前記スキッドボタンを選定する補修対象選定工程と、補修する対象として選定された前記スキッドボタンの補修を行う補修工程とを備える。
この方法によれば、短時間で容易にスキッドボタンの損傷状態を評価して、評価結果に基づいて損傷したスキッドボタンを補修することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、短時間で容易にスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ウォーキングビーム式加熱炉の一例の概要を示す平断面図である。
図2】ウォーキングビーム式加熱炉の一例の概要を示す幅方向視した断面図である。
図3】ウォーキングビーム式加熱炉の一例の概要を示す搬送方向視した断面図である。
図4】ウォーキングビーム式加熱炉において、スキッドボタンの詳細を示す平面図である。
図5】ウォーキングビーム式加熱炉において、スキッドボタンの詳細を示す断面図である。
図6】ウォーキングビーム式加熱炉において、スラブの搬送方法を説明する説明図である。
図7】第1の実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価方法及び補修方法を示すフロー図である。
図8】第1の実施形態の座標取得工程を説明する幅方向視した説明図である。
図9】第1の実施形態の座標取得工程を説明する平面視した説明図である。
図10】第1の実施形態の座標取得工程において、3Dスキャナの設置位置を説明する平面視した説明図である。
図11】第1の実施形態の座標取得工程において、スキッドボタンの支持面上の測定点の詳細を説明する平面視した説明図である。
図12】第1の実施形態の座標取得工程において、測定条件を決定するためのフロー図である。
図13】第1の実施形態の座標取得工程において、複数の設置位置で3Dスキャナによって測定する方法を説明する幅方向視した説明図である。
図14】第1の実施形態の参照点決定工程を説明する平面視した説明図である。
図15】第2の実施形態の高さ測定工程を説明する説明図である。
図16図16におけるXVI部の拡大図である。
図17】第3の実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
(ウォーキングビーム式加熱炉)
以下、本発明に係る第1の実施形態について図1から図14を参照して説明する。図1から図6は、本実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価方法及び補修方法における対象となるウォーキングビーム式加熱炉1(以下、単に加熱炉1という)を示している。図1及び図2に示すように、加熱炉1は、炉本体10と、炉本体10の内部に配されるスラブSを搬送するウォーキングビーム式搬送装置20(以下、単に搬送装置20という)と、スラブSを加熱する図示しない加熱バーナーとを備える。炉本体10は、炉床11、炉壁12及び炉天井13によって構成されており、炉床11、炉壁12及び炉天井13に囲まれる空間AがスラブSの加熱処理空間とされている。炉本体10は、基礎2から延びる炉床支柱3により支持されていて、基礎2より上方に離間して配されている。また、炉本体10は、未加熱のスラブSが装入される装入口14と、加熱処理されたスラブSが抽出される抽出口15とを備える。ここで、装入口14から抽出口15へ延びる略水平な方向を搬送方向Xといい、装入口14側を上流側X1、抽出口15側を下流側X2という。また、搬送方向Xと直交する略水平な方向を幅方向Yといい、搬送方向X及び幅方向Yに直交する方向を上下方向Zという。図示しない加熱バーナーは、搬送装置20で搬送されるスラブSの幅方向Yの両側または上方に取り付けられて、スラブSを加熱する。加熱バーナーによる加熱により炉本体10の内部の温度は例えば1250℃程度まで昇温され、スラブSは所定の目標温度、例えば1200℃程度まで加熱される。
【0021】
図1から図4に示すように、搬送装置20は、スラブSを支持するスキッドである固定スキッド21及び可動スキッド31と、可動スキッド31を移動させる可動機構40とを備える。固定スキッド21は、搬送方向Xに延び幅方向Yに間隔を有して配された複数の固定スキッドパイプ22と、固定スキッドパイプ22のそれぞれに搬送方向Xに複数間隔を有して固定され、スラブSの下面に接触する支持面230を有するスキッドボタンである固定スキッドボタン23とを備える。さらに、固定スキッド21は、固定スキッドパイプ22から下方向に延び固定スキッドパイプ22を支持する固定ポスト24と、炉床支柱3に取り付けられ固定ポスト24を支持する固定フレーム25とを備える。固定スキッドパイプ22及び固定スキッドボタン23は、炉本体10の炉床11から上方へ離間して配されている。固定ポスト24は、固定フレーム25から上方へ延び、炉床11を貫通して固定スキッドパイプ22を支持している。本実施形態において固定スキッドパイプ22は、搬送方向Xにも分割され複数設けられている。図5に示すように、固定スキッドパイプ22の内部には冷却用水が通水される。固定スキッドパイプ22の外周面は、固定スキッドボタン23が設置されている部位を除いて耐火物で形成された被覆層26によって覆われている。固定スキッドボタン23は、耐熱合金によって形成されている。固定スキッドボタン23は、固定スキッドパイプ22の外周上部に例えば溶接により固定されている。なお、固定スキッドボタン23の固定手段は溶接に限らず、クランプ等固定冶具を用いて固定スキッドパイプ22に固定されていても良い。固定スキッドボタン23は、固定スキッドパイプ22の外周を覆う耐火物から上方に突出しており、上面がスラブSを支持する支持面230とされている。複数の固定スキッドボタン23の支持面230の高さは通常略等しい高さに設定されている。
【0022】
図1から図4に示すように、可動スキッド31は、搬送方向Xに延び幅方向Yに間隔を有して配された複数の可動スキッドパイプ32と、可動スキッドパイプ32のそれぞれに搬送方向Xに複数間隔を有して固定され、スラブSの下面に接触する支持面330を有するスキッドボタンである可動スキッドボタン33とを備える。さらに、可動スキッド31は、下方向に延び下方から可動スキッドパイプ32を支持する可動ポスト34と、可動ポスト34を支持する可動フレーム35と、可動フレーム35の下部に設けられた架台36とを備える。本実施形態において可動スキッドパイプ32は、搬送方向Xにも分割され複数設けられている。図5に示すように、可動スキッドパイプ32の内部には冷却用水が通水される。可動スキッドパイプ32の外周面は、可動スキッドボタン33が設置されている部位を除いて耐火物で形成された被覆層37によって覆われている。可動スキッドボタン33は、耐熱合金によって形成されている。可動スキッドボタン33は、可動スキッドパイプ32の外周上部に例えば溶接により固定されている。なお、可動スキッドボタン33の固定手段は溶接に限らず、固定冶具等を用いて可動スキッドパイプ32に可動されていても良い。可動スキッドボタン33は、可動スキッドパイプ32の外周を覆う耐火物から上方に突出しており、上面がスラブSを支持する支持面330とされている。各可動スキッドボタン33の支持面330の高さは通常略等しい高さに設定されている。可動ポスト34は、炉床11に形成された貫通孔11aに挿通され炉床11に対して上下方向Zに進退可能とされている。架台36は、可動フレーム35の下部に固定されていて可動機構40からの駆動力を受ける。
【0023】
図2及び図3に示すように、本実施形態において、可動機構40は、カム方式を採用している。具体的には、可動機構40は、昇降動作部41と、水平動作部45とを備える。昇降動作部41は、基礎2に支持されており、幅方向Yの両側に対をなして設けられているとともに、搬送方向Xに複数設けられている。各昇降動作部41は、基礎2に支持された基部411と、基部411に対して幅方向Yに延びる軸回りに回転可能に支持された回転軸412と、回転軸412に偏心して取り付けられたカム413とを備える。複数の可動機構40のカム413は、図示しない駆動手段によって同期して回転する。したがって、回転するカム413の位相に応じて、可動スキッド31は上昇及び下降を繰り返し、これにより可動スキッドボタン33の支持面330の高さは、固定スキッドボタン23の高さよりも低い下端位置Pから、固定スキッドボタン23の高さと略等しい受け渡し位置Qを経て固定スキッドボタン23の高さよりも高い上端位置Rまで、上下に往復することが可能となっている。また、水平動作部45は、図示しない支持構造により基礎2に支持されており、搬送方向Xに進退するアクチュエータを備える。アクチュエータの先端は可動フレーム35に固定されている。このため、可動スキッド31は、アクチュエータの進退により搬送方向Xに進退することが可能となっている。
【0024】
そして、図6に示すように、昇降動作部41と水平動作部45とが同期することによってスラブSを固定スキッド21と可動スキッド31との間で交互に受け渡し、スラブSを搬送方向X下流側X2へ搬送することができる。すなわち、図6(a)に示すとおり、可動機構40において昇降動作部41のみが作動することにより、可動スキッドボタン33の支持面330が下端位置Pから受け渡し位置Qよりも所定高さ上方の位置Q´まで鉛直上方へ移動する。これによりスラブSは、固定スキッドボタン23の支持面230に支持された状態から、固定スキッドボタン23の支持面230よりも上方に離間し、可動スキッドボタン33の支持面330に支持された状態となる。次に、可動機構40が昇降動作部41及び水平動作部45を作動することにより、上端位置Rに至るまでに搬送方向X下流側X2へ移動し、これによりスラブSは搬送方向X下流側X2へと移動する。次に、図6(b)に示すとおり、可動機構40において昇降動作部41のみが作動することにより、可動スキッドボタン33の支持面330は、上端位置Rから受け渡し位置Qよりも所定高さ下方の位置Q´´まで鉛直下方へ移動する。これによりスラブSは、可動スキッドボタン33の支持面330に支持された状態から、元の固定スキッドボタン23に支持された位置よりも搬送方向X下流側X2となる位置で固定スキッドボタン23の支持面230に支持された状態となる。その後、可動機構40において昇降動作部41及び水平動作部45が作動することにより、可動スキッドボタン33は、下端位置Pに至るまでに搬送方向X上流側X1へ移動し、これにより元の位置に復帰する。これを繰り返すことによりスラブSは搬送方向X下流側X2へと順次搬送されていく。なお、可動機構40としては、上記カム方式に限定されるものではなく、上記のように上下及び前後に往復運動する限り、クランクレバー方式、傾斜レール方式など様々な方式を適用可能である。
【0025】
このような加熱炉1では、炉本体10の内部を所定の温度で保ちつつ、順次スラブSを装入口14から搬入して搬送装置20によって搬送しながら、スラブSの加熱処理を行う。その間、固定スキッドボタン23及び可動スキッドボタン33などのスキッドボタンは、炉本体10の内部で高温環境に曝され、さらに、高温に加熱されたスラブSに接触し、スラブSから鉛直荷重を受け、また、搬送時においてはスラブSとの間で摩擦が生じる。このため、スキッドボタンは、稼働中に摩耗や部分的な欠損が生じたり、スキッドボタン自体がスキッドパイプから脱落したりしてしまうなどの損傷が生じる場合がある。加熱炉1の稼働中は高温であり続けるため、スキッドボタンの損傷状態を把握することは困難であり、加熱炉1の停止期間に、損傷したスキッドボタンを把握し補修する必要がある。さらに、このような加熱炉1の停止期間には、次回の運転期間において損傷する可能性があるスキッドボタンを把握し、また、全スキッドボタンについて停止期間ごとに状態を確認し状態の推移を把握することが望ましい。以下、この加熱炉1の停止期間に実施可能なスキッドボタンの損傷状態の評価方法及び補修方法について説明する。
【0026】
(スキッドボタンの評価方法)
図7に本実施形態のスキッドボタンの評価方法のフロー図を示す。図7に示すように、本実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価方法は、スキッドボタンの3次元座標を3Dスキャナによって取得する座標取得工程S10と、座標取得工程S10で取得された前記スキッドボタンの3次元座標からなる測定点により構成された前記スキッドボタンの測定点群を生成する点群生成工程S20と、複数のスキッドボタンのそれぞれにおいて、スキッドボタンの測定点群のうち任意の一点である参照点を決定する参照点決定工程S30と、複数のスキッドボタンのそれぞれにおいて、参照点に基づいてスキッドボタンの損傷状態を判断する評価工程S40とを備える。以下、詳細について説明する。
【0027】
(座標取得工程)
座標取得工程S10では、3DスキャナNを炉本体10の内部に設置してスキッドボタンの支持面230、330の3次元座標を取得する。なお、座標取得工程S10を実施するのに先立ち、スキッドボタンのうち可動スキッドボタン33については、可動機構40により下端位置Pなど特定の位置に設定する。図8及び図9に示すように、炉床11上に三脚Mを立てて、三脚M上に3DスキャナNを設置する。3DスキャナNは、図示しないが、対象物にレーザBを照射する照射部と、反射したレーザBを受光する受光部とを備える。照射部は、予め設定された照射周期でレーザBを照射する。照射部がレーザBを照射するごとに、受光部が反射した反射光を受光し、照射部によるレーザBの照射タイミングと受光部による反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて対象物の距離を取得する。照射部は、水平軸H回りに回転する水平軸回転機構Naにより当該水平軸H回りに回転して、鉛直面内で360度全周に対してレーザBを照射することが可能である。さらに、水平軸回転機構Na及び水平軸回転機構Naに取り付けられた照射部は、鉛直軸V回りに回転する鉛直軸回転機構Nbにより当該鉛直軸V回りに回転して、照射部は水平面内で360度全周に対してレーザBを照射することが可能である。
【0028】
水平軸H回りの回転周期は、求める分解能となる鉛直角度ごとにレーザBを照射可能に、レーザBの照射周期に基づいて設定される。また、鉛直軸V回りの回転周期は、求める分解能となる水平角度ごとにレーザBを照射可能に、水平軸H回りの回転周期に基づいて設定される。また、3DスキャナNでは、照射部によってレーザBを照射したタイミングの水平軸H回りの角度、及び、鉛直軸V回りの角度が取得される。そして、取得された水平距離L、水平軸H回りの角度θv、及び鉛直軸V回りの角度θhである実測データ(L,θv,θh)と、予め取得された3DスキャナNの設置座標(X0,Y0,Z0)と、基準方位とに基づいて、照射部によるレーザBの照射ごとに、基準方位を基準とした3次元測定座標(X,Y,Z)が算出される。ここで、レーザBが照射されて、3次元測定座標(X、Y、Z)を取得した点を測定点と定義し、特にスキッドボタンの支持面で取得されたものを測定点Fと称する。そして、水平軸H回り全周での検出を鉛直軸V回り全周で行うことで、全方位に対して少なくとも1回ずつスキャナを完了して複数の測定点Fにおいて3次元測定座標(X,Y,Z)を算出し出力する。なお、3DスキャナNから出力可能なデータは、実測データ(L、θv、θh)として、外部のコンピュータにおいて3次元測定座標(X,Y,Z)を算出するものとしても良い。
【0029】
3DスキャナNの設置高さNhとしては、測定対象であるスキッドボタンの支持面230、330の高さよりも十分に高い位置とし、例えば1m程度高い位置とする。このように3DスキャナNの設置高さNhをスキッドボタンの支持面230、330の高さよりも十分に高くすることで、3DスキャナN近傍のスキッドボタンの支持面230、330に上方からレーザBを照射することができ、これにより同じ分解能でも細かい間隔の測定点Fで、支持面230、330上で3次元座標を取得することができる。また、3DスキャナNの設置高さNhとスキッドボタンの支持面230、330の高さの差が同一かつ分解能が同一であっても、3DスキャナNからの水平距離Lが離れれば離れるほど測定点Fの点間距離Cが離間していく。点間距離Cが大きくなってしまうと、全てのスキッドボタンの支持面230、330上に測定点Fを設定することができなくなってしまう。このため、スキッドボタンの支持面230、330の縦、横の幅寸法D1、D2のうち、小さい寸法であるスキッド代表寸法を閾値Jとする。そして、当該閾値Jに対して、少なくとも測定点Fの点間距離Cが小さくなる範囲が図10に示す測定範囲T(3次元座標取得可能範囲)となるように、測定範囲Tを3DスキャナNからの水平距離Lによって規定する。
【0030】
また、図11(a)に示すように、測定点Fの点間距離Cの閾値Jを、スキッド代表寸法の半分としても良い。このように閾値Jを設定することで、スキッドボタンの支持面230、330上において、少なくとも2点以上の測定点Fを確保することができ、望ましい。さらに、測定点Fの点間距離Cの閾値Jを、スキッド代表寸法の1/3としても良い。このように閾値Jを設定することで、スキッドボタンの支持面230、330上において、少なくとも3点以上の測定点Fを確保できる。すなわち、スキッドボタンの支持面230、330を中央エリアE1及びサイドエリアE2に分割した中央エリアE1に1点、両サイドエリアE2に1点ずつの計3点以上の測定点Fを確保することができてより望ましい。以下、本実施形態では、1つのスキッドボタンの支持面230、330上において、3点以上の測定点Fを確保するものとして説明する。
【0031】
図12は、3DスキャナNによる測定条件となる分解能、設置高さNh及び水平距離Lの決定フローの一例を示している。図12に示すように、まず、分解能、設置高さNh及び水平距離Lの初期値を決定する(ステップS1-1、S1-2、S1-3)。次に、水平距離Lで規定される測定範囲Tの境界においてスキッドボタンの支持面230、330上での測定点Fの点間距離Cを求める(ステップS1-4)。点間距離Cは、予め算出しておいた分解能、設置高さNh及び水平距離Lをパラメータとしたテーブルを参照して求めても良いし、設定した分解能、設置高さNh及び水平距離Lに基づいて算出しても良い。そして、算出した点間距離Cと閾値Jとを比較する(ステップS1-5)。点間距離Cが閾値Jよりも小さい場合(ステップS1-5:YES)には、設定した分解能、設置高さNh及び水平距離Lを測定条件として確定する(S1-6)。また、点間距離Cが閾値J以上である場合(ステップS1-5:NO)には、測定条件の再設定を行う。すなわち、分解能を上げるか、設置高さNhを高くするか、水平距離を小さくするか、少なくともいずれか一つを選択し変更する。いずれを優先的に再設定するかは適宜選択可能である。そして、分解能、設置高さNh及び水平距離Lの再設定を、点間距離Cが閾値Jよりも小さくなるまで繰り返す。
【0032】
以上のようにして、図10に示すように、水平距離Lに基づいて測定範囲Tを定義する。そして、スキッドボタンの設置範囲が測定範囲Tよりも広い場合には、3Dスキャナ設置位置Npを複数設定して、各3Dスキャナ設置位置Npにおいて3DスキャナNによってスキッドボタンの支持面230、330上の3次元座標を取得する。ここで、各3Dスキャナ設置位置Npは、それぞれの位置において測定範囲Tで3DスキャナNによって測定した場合に測定範囲Tが互いに重複するように設定される。これにより、一部のスキッドボタンについては重複して測定し精度を高めることができる。以下では、複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNを用いて測定して複数のスキッドボタンを網羅的に測定する手順を、図7のフロー図に基づいて説明する。
【0033】
図10に示すように、まず、加熱炉1の外に設置された3つ以上の基準点Uを装入口14または抽出口15を通して測定可能な3DスキャナNの設置位置Np1を決定する。そして、設置位置Np1を1回目の3Dスキャナ設置位置Npとして設定し、3DスキャナNを設置する(ステップS11)。基準点Uは、予め平面位置(X,Y)及び高さ(Z)が既知の点である。予め平面位置(X,Y)及び高さ(Z)が既知である基準点Uを複数点にて3次元座標を取得することで、3Dスキャナ設置位置Npに設置した3DスキャナNの設置座標(X0、Y0、Z0)を求めることができる。なお、1つの基準点Uにおいて平面位置(X,Y)及び高さ(Z)が既知であれれば、もう1つの基準点Uは平面位置のみが既知であるか、または、真北、真南などの基準方位が分かるものとしても良い。ただし、基準点Uは、上記のとおり加熱炉1の外に設けられることが、稼働時における熱や振動の影響を抑制することができるために望ましい。
【0034】
そして、上記のとおり3DスキャナNの設置座標(X0、Y0、Z0)を取得したら、1回目の3Dスキャナ設置位置Npにおける3次元座標の取得を開始する(ステップS12)。この際、各3Dスキャナ設置位置Npでの測定範囲T内または測定範囲T近傍に、複数の3Dスキャナ設置位置Npにおける測定結果を結合するための参照物Wを3箇所以上に設ける。参照物Wの形状としては特に限定されないが、いずれの方向から見ても同条件で測定できることから球体であることが望ましい。そして、当該参照物Wを含めて全方位について3DスキャナNによる3次元座標の取得が完了したら、次の3Dスキャナ設置位置Npに移動する(ステップS11)。
【0035】
そして、次の3Dスキャナ設置位置Npにおいても同様に3DスキャナNによって全方位測定を行う(ステップS12)。この際、他の3Dスキャナ設置位置Npで測定した3つ以上の参照物Wについても測定を行う。参照物Wについては先に3DスキャナNを設置した他の3Dスキャナ設置位置Npでの測定により3次元座標、すなわち平面位置及び高さが既知である。このため、現在の3Dスキャナ設置位置Npにおける3DスキャナNの設置座標(X0、Y0、Z0)は、参照物Wを測定することで取得でき、これにより各測定点Fの座標(X,Y,Z)を取得することができる。なお、参照物Wの座標から3DスキャナNの設置座標(X0、Y0、Z0)を求めずに、3DスキャナNの設置座標は任意の座標として、例えば(0、0、0)としても良い。そして、後述する点群生成工程S20を実施する際に、座標変換を行うものとしても良い。また、球体の参照物Wを例にして、測定対象である加熱炉1とは異なる参照物Wを設置するものとしたが、これに限られるものではない。測定対象の一部を参照物としても良い。具体的には、例えば3次元座標を取得するスキッドボタン自体を参照物として複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNにより3次元座標を取得しても良い。また、スキッドボタン以外の加熱炉1の構造物、例えば炉壁12や炉天井13に設けられた加熱バーナーやその他設備の特徴部分を参照物として複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNにより3次元座標を取得しても良い。以上を繰り返すことで、3DスキャナNによって、全てのスキッドボタンの支持面230、330において、3つ以上の測定点Fにて3次元座標を取得することができる(ステップS13:YES)。
【0036】
(点群生成工程)
点群生成工程S20では、3DスキャナNで3次元座標を取得した測定点によって構成されたスキッドボタンの測定点群を生成する。具体的には、複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNによって3次元座標を取得した測定結果は、参照物Wの測定結果に基づいて座標変換が行われ、また、補正処理が行われる(合成点群生成工程:ステップS21)。すなわち、合成点群生成工程では、座標取得工程S10において各測定範囲Tで取得された3次元座標をもとに生成されたスキッドボタンの測定点群を合成して合成点群を生成する。また、取得した測定座標のフィルタリング処理(ステップS22)、取得した測定座標に基づく測定画像作成処理(ステップS23)が行われる。フィルタリング処理としては、例えば、測定点Fの平面位置(X,Y)がスキッドボタンの支持面230、330上にないものを削除する処理が行われる。具体的には、予めCADデータとして、スキッドボタンの設計位置が記録されている。そして、平面位置(X,Y)がスキッドボタンの設計位置と重複しない測定点Fについては削除する。これにより、平面位置(X,Y)としてスキッドボタン上に位置するもののみを表示させることができる。また、測定点Fの高さ(Z)が閾値を超えているかを判定することにより、測定点Fの高さ(Z)がスキッドボタンの支持面230、330の高さよりも大幅に異なるものを抽出して削除する。これにより、スキッドボタンの支持面230、330と平面位置(X,Y)が一致しているものの、炉床11や炉天井13の3次元座標を取得した測定点Fを削除することができる。そして、予め取得しているスキッドボタンに関するCADデータに、フィルタリング処理された後の測定点Fを重畳した図13に示すような測定画像を作成する。これにより、視覚的にスキッドボタンとの相対関係を理解することができるようになる。なお、図13は平面図を示しているが、これに限られるものではなく、断面図を表示するものとしても良い。また、CADデータに対して測定結果を重畳するものとせずに、単に点群データである測定結果を画像化したものを測定画像としても良い。
【0037】
(参照点決定工程)
次に、参照点決定工程S30として、複数のスキッドボタンのそれぞれにおいて、3次元座標が取得された測定点Fから少なくとも任意の一点となる参照点Gを決定する。本実施形態では、支持面230、330上における任意の一点を参照点Gに決定する。具体的には、本実施形態では、各スキッドボタンの支持面230、330において、複数の測定点Fで3次元座標を取得している。そして、同一のスキッドボタンの支持面230、330で3次元座標が取得された複数の測定点Fのうち、中央部に位置する測定点Fを参照点Gとして選択する。具体的には、作業者が、測定画像を目視して作業者の判断に基づいて、中央部に位置する測定点Fを参照点Gに指定する。また、数値処理によって参照点Gを選定しても良い。例えば各スキッドボタンの支持面230、330について図心の平面座標(X,Y)を予め取得しておき、当該図心の平面座標と測定点Fとの水平距離が最も近いものとすれば良い。また、図11(b)に示すように、予め、スキッドボタンの支持面230、330内において上記図心を含む中央エリアE1と、その周辺で支持面230、330の外縁を含むサイドエリアE2を規定しておいて、中央エリアE1に含まれる測定点Fを参照点Gとしても良い。また、高さ(Z)が最高値、中央値または最低値となる測定点Fを参照点Gとしても良い。さらに、一つの測定点Fを参照点Gとせずに、スキッドボタンの支持面230、330に位置する複数の測定点Fの平面座標(X,Y)の平均値をとって、平均値となる平面座標(X,Y)の点を参照点Gとしても良い。この場合に高さ(Z)も平面座標(X,Y)の平均値をとった複数の測定点Fの高さ(Z)の平均値としても良いし、これら複数の測定点Fの高さの最高値、最低値または中央値としても良い。
【0038】
以上のようにして参照点Gを決定することで、確実にスキッドボタンの支持面230、330において中央部での高さによってスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。このため、スキッドボタンごとに3次元座標取得に関する位置条件が異なってしまい、評価する際の条件が異なってしまうことを防止することができる。すなわち、例えば、一のスキッドボタンでは摩耗や欠損をしにくくスラブSと接触しやすい中央部で評価する。一方、他のスキッドボタンでは比較的摩耗や欠損をしやすく長期使用の結果スラブSと接触していない可能性もある端部で評価する。このように位置条件が異なると、損傷の度合い、スラブSの接触の状況が異なってしまうため、損傷状態を評価するための条件が異なって適切にスキッドボタンの損傷状態の評価ができなくなってしまう恐れがあり、これを防止することができる。また、複数の測定点Fの中で中央部の測定点Fを参照点Gとして選択することでスラブSに接触する部位で評価することができる。なお、参照点Gとしては端部にある測定点Fを参照点Gとして決定しても良い。このようにすることで、摩耗が促進され、また、欠損が生じやすい端部において摩耗の進捗状況、欠損の有無を的確に把握することができる。なお、参照点Gとしてはスキッドボタンの支持面230、330上の1点とする必要はない。例えば、中央部で1点、端部で1点のようにスキッドボタンの支持面230、330上において参照点Gを複数点設け、以下の評価工程S40においては中央部における参照点Gに関する評価と、端部における参照点Gに関する評価をそれぞれ実施しても良い。あるいは、複数の参照点Gに基づいて参照点G同士の相対比較を実施しても良い。
【0039】
(評価工程)
次に、評価工程S40として、複数のスキッドボタンのそれぞれについて、参照点Gで取得された3次元座座標に基づいて高さを算出し損傷状態を評価する。具体的には、例えば、各参照点Gで取得された高さと予め設定された基準高さとの差が、予め設定された閾値を超えているか否に基づいて損傷状態を評価する。基準高さは、例えば、スキッドボタンの支持面230、330の設計高さである。設計高さは、予め設定された仮想水平面からの高さの差として表せる。または、設計高さは、標高や、基準点Uからの高さの差としても良い。さらに、基準高さとしては、上記のような設計高さ以外でもよい。例えば、前回の停止期間において各スキッドボタンの支持面230、330の参照点Gで取得された高さとしても良い。このようにすることで、前回からの高さの変化を評価することができる。
【0040】
また、閾値としては、例えば使用可能な状態を超えて摩耗が生じていると評価できる値である。このような閾値としては、例えば、スキッドボタンの支持面230、330の高さが被覆層26、37と等しくなる高さが挙げられる。これにより、閾値を超えていると判定された場合には、当初設置したスキッドボタンの支持面230、330の高さから摩耗により低くなっており損傷したと評価できる。あるいは、スキッドボタン自体が脱落してしまっており損傷したと評価できる。このようにスキッドボタンが損傷したと評価された場合には、当該スキッドボタンを損傷部として特定し、図14に示すように測定画像にマーキングKを行う。あるいは、損傷部として特定されたスキッドボタンをリスト化していく。このようにすることで数千個にもなるスキッドボタンのうち、損傷したと評価したものと、正常なものとを区別し、損傷したスキッドボタンを視覚的に把握することが可能となる。
【0041】
ここで、スキッドボタンには、上記のとおり固定スキッドボタン23と可動スキッドボタン33とがある。可動スキッドボタン33は、上記例では下端位置Pで静止しており、固定スキッドボタン23と設計上の高さも異なる。このため、評価工程S40においては複数の固定スキッドボタン23を第1のスキッドボタン群、複数の可動スキッドボタン33を第2のスキッドボタン群と異なるスキッドボタン群として、異なる設計高さに基づいて損傷状態を評価する。また、固定スキッドボタン23は単にスラブSを支持するものであるのに対し、可動スキッドボタン33はスラブSに対して上下方向Z及び搬送方向Xに相対移動しながら接触、非接触を繰り返すことから、固定スキッドボタン23と可動スキッドボタン33とは使用条件が異なる。このため、異なるスキッドボタン群である固定スキッドボタン23と可動スキッドボタン33とで閾値も異なるものとしても良く、これにより使用条件に応じて適切に損傷状態を評価することができる。
【0042】
また、スキッドボタン群の区分としては固定スキッドボタン23全数と可動スキッドボタン33全数とすることに限られない。例えば、同じスキッドパイプに固定されているものを一つのスキッドボタン群として、スキッドボタン群ごとに基準高さや閾値を設定しても良い。また、搬送方向Xに複数の区分を設けて幅方向Yには全体にわたって延びるように区分しスキッドボタン群を定義して、基準高さや閾値を設定しても良い。あるいは、幅方向Yにも複数の区分を設けても良い。
【0043】
(第1の変形例)
次に、第1の変形例として、評価工程S40の変形例を説明する。第1の変形例の評価工程S40においては、スキッドボタン群ごとに群代表値を算出して、群代表値に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価する。具体的には、例えば、スキッドボタン群を固定スキッドボタン全数となる第1のスキッドボタン群と、可動スキッドボタン全数となる第2のスキッドボタン群との2つのスキッドボタン群で構成する。そして、第1のスキッドボタン群では、固定スキッドボタン23の参照点Gにおける高さの平均値を第1の群代表値として取得する。また、第2のスキッドボタン群では、可動スキッドボタン33の参照点Gにおける高さの平均値を第2の群代表値として取得する。そして、平均値に対して予め設定された閾値を超えたか否かでスキッドボタンの損傷状態を評価する。このように平均値に基づいて評価することで、基準高さとの比較において損傷していると判断されなくても、スキッドボタン群全体としての摩耗レベルよりも著しく摩耗が進んでいるスキッドボタンについて損傷していると評価することできる。これにより、例えば、摩耗することで一部のスキッドボタンにスラブSが支持されていないために、スラブSの荷重が残りのスキッドボタンにかかり、スラブSを支持している健全なスキッドボタンの損傷が促進してしまうことを防止し、また、傾斜してスラブSを支持してしまいスラブSが斜行してしまうことを防止することができる。なお、群代表値としては中央値、最高値、最低値などとしても良く、分散値としても良い。分散値自体が予め設定された閾値を超えているか否かを判断することで、スキッドボタン群全体の損傷状態のばらつきを評価することができる。
【0044】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例として、参照点決定工程S30及び評価工程S40の変形例を示す。第2の変形例の参照点決定工程S30においては、スキッドボタンの支持面230、330上で3次元座標が取得された複数の測定点Fから複数の参照点Gを決定する。例えば、上記のとおり一つの参照点Gとしてはスキッドボタンの支持面230、330上における中央部の測定点Fに決定する。また、もう一つの参照点Gとしてはスキッドボタンの支持面230、330上における端部の測定点Fに決定する。また、評価工程S40においては、スキッドボタンごとに、決定された複数の参照点Gで取得された高さの相対関係に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価する。すなわち、中央部において決定した参照点Gの高さと端部において決定した参照点Gの高さとの差と、予め設定された閾値とを比較し、閾値を超えている場合にはスキッドボタンが損傷したと評価する。このようにすることで、中央部の高さとしてはスラブSを支持するのに許容される高さが取得されているものの、端部において摩耗が促進され、または、欠損が生じてしまっているスキッドボタンを損傷していると判断することができる。
【0045】
なお、上記の実施形態に記載したような基準高さに基づく参照点決定工程S30及び評価工程S40と、第1の変形例に記載したような参照点決定工程S30及び評価工程S40と、第2の変形例に記載したような参照点決定工程S30及び評価工程S40とを同時に実施するものとしても良い。このようにすることで、1回の座標取得工程S10の結果に基づいてより多面的にスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【0046】
(スキッドボタンの補修方法)
以上のようなスキッドボタンの損傷状態の評価方法に基づく評価結果に基づいて、損傷したスキッドボタンが確認される場合には、当該スキッドボタンを補修対象として選定し、スキッドボタンの補修を行う。すなわち、本実施形態のスキッドボタンの補修方法は、上記評価方法によって補修する対象となるスキッドボタンを選定する補修対象選定工程S50と、補修する対象として選定されたスキッドボタンの補修を行う補修工程S60とを備える。
【0047】
(補修対象選定工程)
補修対象選定工程S50では、上記評価工程S40において損傷状態にあると評価されたスキッドボタンを補修対象として選定する。補修対象として選定したスキッドボタンを測定画像にマークする。また、補修対象としては、上記損傷状態にあると評価されたスキッドボタン以外にも、その周辺のスキッドボタンや、設置した後に所定の使用時間が経過したものも含めても良い。
【0048】
(補修工程)
次に、補修工程S60として、補修対象としたスキッドボタンの補修を行う。ここで、予め損傷状態にあるスキッドボタン、補修対象としたスキッドボタンが測定画像やリストに表示されていることで、炉本体10の内部において、測定画像、測定画像を印刷した図面、または、リストを見ながら、数千個あるスキッドボタンから補修対象のものを容易に特定することができる。また、事前に補修対象の位置、箇所数が特定できていることから、スキッドボタンを補修するための足場を限定的に配置することができ足場設置・撤去の工数、時間及びコストを抑制することができる。また、事前に補修対象の位置、箇所数が特定できていることから、停止期間中に炉本体10内で実施する他の作業との調整も容易となる。ここで、スキッドボタンの補修としては、欠陥部分の除去、切削・研削、肉盛り、及び、スキッドボタン自体の交換などが含まれる。
【0049】
以上のように、本実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価方法によれば、座標取得工程S10では、3DスキャナNを用いることで、それぞれのスキッドボタンの近傍に測定者が位置する必要なく、複数のスキッドボタンの支持面230、330の3次元座標を取得することができる。このため、スキッドボタンの高さ測定に要する時間を抑制することができるとともに、スキッドボタンにアクセスするための足場の設置も抑制することができる。そして、3DスキャナNによる測定であるため、高さのみならず平面位置も測定することができるので、どのスキッドボタンがどのような高さであったのかを測定後に容易に把握することができる。そして、参照点決定工程S30で、評価すべき測定点Fを参照点Gとして決定し、評価工程S40においては、決定された参照点Gにおける高さに基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価する。このため、スキッドボタンごとの高さを測定する位置の相違による評価のずれを抑制し正確に評価することができる。このため、短時間で容易にスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【0050】
ここで、座標取得工程S10では、加熱炉1の外に設けられ予め平面位置及び高さが既知である基準点Uを、3DスキャナNによって参照することで、加熱炉1における熱の影響を受けず、当該基準点Uを基準にして正確にスキッドボタンの支持面230、330の3次元座標を取得しスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。また、基準点Uが炉外に設けられていることで、次回の加熱炉1の停止期間においても同様の基準点Uを用いることができ、当該基準点Uを基準としてスキッドボタンの経時変化も正確に評価することができる。
【0051】
また、複数の3Dスキャナ設置位置Npにおいてそれぞれ3DスキャナNでスキッドボタンの3次元座標を取得し、点群生成工程S20で複数の3Dスキャナ設置位置Npでの測定結果を合成することで、精度を確保しつつ広い範囲においてスキッドボタンの高さを測定できる。特に、上記のようなスキッドボタンは、図1にも示すように、加熱炉内において広い範囲にわたって多数存在している。このため、3DスキャナNの設置位置から離れた位置のスキッドボタンの3次元座標を精密に取得することは難しい。加えて、スキッドボタンが設けられた加熱炉内は、粉塵などが多く存在している。3DスキャナNのレーザBの照射及び受光は粉塵によって阻害されやすいため、このような環境下では3次元座標を精密に取得することは難しい。しかしながら、スキッドボタンの損傷状態を正確に評価するためには、全てのスキッドボタンの3次元座標を網羅的に取得する必要があり、許容できる3次元座標の欠損量は著しく低い。スキッドボタンの3次元座標を網羅的に取得できなければ、取得できなかった箇所における損傷状態を評価できないからである。これに対して、上記のとおり、複数の3Dスキャナ設置位置Npで測定を行うことで、取得する3次元座標の精度を確保して精密にスキッドボタンの損傷状態の評価を行うことができる。特に、このような複数の3Dスキャナ設置位置Npをの測定結果を上記のとおり合成することで、全範囲にわたって同一の基準で損傷状態の評価を行うことができる。
【0052】
ここで、座標取得工程S10に先立って、複数の3Dスキャナ設置位置Npを決定する3Dスキャナ設置計画工程を実施しても良い。3Dスキャナ設置計画工程では、予め設定された3DスキャナNの分解能と、スキッドボタンの支持面230、330の平面寸法と、3DスキャナNの設置高さNhとスキッドボタンの支持面230、330の高さの高低差とに基づいて、1回の3DスキャナNによって精度を確保することが可能な測定範囲(3次元座標取得可能範囲)を定め、当該測定範囲が重複するような3Dスキャナ設置位置Npを決定する。なお、分解能、設置高さNh、測定範囲Tの水平距離Lの決定方法の一例は、図12を参照しながら上記説明したとおりである。これにより、座標取得工程S10では、3DスキャナNの分解能、スキッドボタンの支持面230、330の平面寸法、および3DスキャナNの設置高さNhとスキッドボタンの支持面の高さの高低差に基づいて3Dスキャナ設置位置Npを決定することができ、スキッドボタンの支持面230、330上において、必要とする測定精度と、測定点Fの点数を確保してスキッドボタンの支持面230、330の高さを測定することができる。
【0053】
また、評価工程S40において、予め設定された基準高さと参照点Gで測定された高さとの差に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価することで、予め設定された基準高さに基づいて定量的にスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。また、評価工程S40において、複数のスキッドボタンのうちの一部の複数のスキッドボタンによって構成されるスキッドボタン群が複数組予め設定され、スキッドボタン群ごとにスキッドボタンの損傷状態を評価することで、各スキッドボタン群に応じた基準に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価することできる。例えば、評価工程S40では、固定スキッドボタン23と可動スキッドボタン33とで異なる基準に基づいて損傷状態を評価する。これにより、使用条件の異なる固定スキッドボタン23と可動スキッドボタン33とで異なる基準に基づいて損傷状態を評価することができる。また、評価工程S40において、群代表値を算出し、群代表値に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価することで、スキッドボタン群内での群代表値を基準とした各スキッドボタンの高さの相対評価に基づいてスキッドボタンの損傷状態の評価を行うことができる。
【0054】
また、参照点決定工程S30において、スキッドボタンごとに平面上の位置が異なる複数の参照点Gを決定し、評価工程S40では、スキッドボタンごとに、決定された複数の参照点Gで測定された高さの相対関係に基づいてスキッドボタンの損傷状態を評価することで、例えばスキッドボタンの端部の偏摩耗状態、部分欠損など、同一スキッドボタンにおける部分的な損傷状態を評価することができる。
【0055】
また、点群生成工程S20において、座標取得工程S10で測定された測定結果を示す測定画像を作成することで、作成された測定画像をもとに、視覚的に参照点Gを決定することができる。また、損傷状態にあるスキッドボタンを視覚的に把握し、また、補修工程S60においては当該測定画像を参照しながら補修計画を行い、また、補修を実施することができる。
【0056】
また、座標取得工程S10では、複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNを設置し、各3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNによって、互いの測定範囲Tが重なるようにスキッドボタンの支持面230、330の3次元座標を取得し、点群生成工程S20では、各3Dスキャナ設置位置Npにおける3DスキャナNによる測定結果を、測定範囲Tが重なる部分での測定結果に基づいて合成処理している。これにより、測定範囲Tを一定の範囲として精度を確保しつつ、複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNによって3次元座標を取得することで、広範な範囲おいて複数のスキッドボタンの支持面230、330の3次元座標を取得することができる。そして、複数の3Dスキャナ設置位置Npで3DスキャナNによって測定したとしても互いに測定範囲Tが重なる部分での測定結果に基づいて合成処理することで、一つの測定結果として複数のスキッドボタン全体について、スキッドボタンの損傷状態を評価することができる。なお、上記のとおり本実施形態では点群生成工程S20で複数の測定範囲T(3次元座標取得可能範囲)で取得した3次元座標からなる測定点群を合成して参照点決定工程S30及び評価工程S40を実施したが、合成をせずに、各測定範囲T内における参照点決定工程S30及び評価工程S40を個別に実施しても良い。
【0057】
また、スキッドボタンの補修方法では、補修対象選定工程S50で、補修する対象となるスキッドボタンを選定し、補修工程S60で、補修する対象として選定されたスキッドボタンの補修を行い、短時間で容易にスキッドボタンの損傷状態を評価して、評価結果に基づいて損傷したスキッドボタンを補修することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図15及び図16は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
図15及び図16に示すように、本実施形態のスキッドボタンの損傷状態の評価方法では、座標取得工程S10において、全てのスキッドボタン23、33について少なくとも2箇所以上の3Dスキャナ設置位置Npに設置された3DスキャナNによって3次元座標を取得する。さらに、一つのスキッドボタン23、33に対して、当該スキッドボタン23、33を測定するための3Dスキャナ設置位置Npは、一の3Dスキャナ設置位置Npに対して他の3Dスキャナ設置位置Npが当該スキッドボタン23、33を挟んで反対側に位置するように設定されるのが好ましい。このようにすることで、各スキッドボタン23、33を異なる方向から3次元座標を取得することができ、支持面230、330のみならず、支持面230、330から下方に延びる側面231、331についてもスキッドボタン自体が死角となり3次元座標の取得ができない面が生じてしまうことを抑えてスキッドボタン全体の形状を計測することができる。また、支持面及び側面にて確実に3次元座標を取得することができるため、支持面と側面とが接続して形成され、使用により破損しやすい角部分も正確に3次元座標を取得することができる。そして、第1の実施形態同様に、点群生成工程S20、参照点決定工程S30及び評価工程S40を実施することでスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。ここで、上記のとおり座標取得工程S10でスキッドボタン23、33の側面231、331についても計測することができていることで、側面231、331の状態も含めてスキッドボタンの損傷状態を評価することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、上記のとおり座標取得工程S10で、スキッドボタン23、33の支持面230、330とともに、側面231、331についても3次元座標を取得したが、参照点決定工程S30では、支持面230、330とともに側面231、331にも参照点を設定しても良い。又は、側面231、331のみに参照点を設定しても良い。このようにすることで、評価工程S40では、側面231、331の損傷状態を直接的に評価することができ、例えば側面部分の欠損を検出することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図17は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
(評価装置)
本実施形態では、上記第1の実施形態で説明でしたスキッドボタンの損傷状態の評価方法及びスキッドボタンの補修方法に用いられるスキッドボタンの評価装置100について説明する。図17に示すように、本実施形態の評価装置100は、測定点Fの座標データを取得する測定点データ取得部101と、取得した座標データのデータ処理を行うデータ処理部102と、参照点を決定する参照点決定部103と、スキッドボタンの損傷状態を判断する判断部104と、損傷状態の判断結果に基づいて補修対象のスキッドボタンを選定する補修対象選定部105と、記憶部106と、表示部107とを備える。記憶部106は、ROM、RAMなどの記憶媒体である。また、表示部107は例えばディスプレイである。また、評価装置100は、CPUを備え、CPUが記憶部106に記憶されたプログラムに従って動作することで、測定点データ取得部101、データ処理部102、参照点決定部103、判断部104及び補修対象選定部105の各機能を動作させる。
【0063】
測定点データ取得部101は、3DスキャナNによって3次元座標を取得した測定点に関するデータを取得する。測定点に関するデータとは、平面位置と高さによって構成される3次元測定座標(X,Y,Z)である。なお、第1の実施形態で説明したとおり取得する測定点に関するデータとしては実測データ(L,θv,θh)としても良いが、この場合には3Dスキャナの設置座標(X0,Y0,Z0)も取得する。測定点データ取得部101は、3DスキャナNから無線通信により受信機によって受信した受信データから取得しても良いし、3DスキャナNによって書き込まれた記憶媒体から読み取ることで取得しても良い。
【0064】
データ処理部102は、座標変換部102aと、補正処理部102bと、フィルタリング処理部102cと、測定画像生成部102dとを備える。座標変換部102aは、複数の3Dスキャナ設置位置Npで取得されたそれぞれの測定座標を、一つの座標系となるように変換する。変換する方法としては、第1の実施形態で説明したとおり、それぞれの3Dスキャナ設置位置Npで3Dスキャナによって取得された参照物Wに関する測定結果を用いる。補正処理部102bでは、測定座標の補正を行う。具体的には、参照物W及びスキッドボタンの測定結果のうち、異なる3Dスキャナ設置位置Npで同じ箇所を測定した測定結果について例えば平均化処理などの補正処理を行う。フィルタリング処理部102cは、第1の実施形態で説明したとおり、平面位置(X,Y)が、記憶部106に記憶されているスキッドボタンの設計位置と重複しない測定点Fを削除する処理を行う。また、フィルタリング処理部102cは、測定点Fの高さ(Z)が閾値を超えているかを判定することにより、測定点Fの高さ(Z)がスキッドボタンの支持面230、330の高さよりも大幅に異なるものを抽出して削除する処理を行う。測定画像生成部102dは、測定点Fの3次元測定座標(X,Y,Z)をプロットした画像を生成し、表示部107に表示する。その際、予め記憶部106に記憶されたスキッドボタンの設計位置が描かれたCADデータと、測定点Fとを重畳した測定画像を生成するものとしても良い。
【0065】
参照点決定部103は、データ処理部102で処理された測定点Fに関するデータに基づいて参照点を決定する。すなわち、各スキッドボタンの支持面230、330上に位置する測定点Fのうち、特定の条件に合致する測定点Fを参照点Gに決定する。特定の条件とは、第1の実施形態及びその変形例に示したとおりであり、例えば、中央部に位置する測定点、端部に位置する測定点などである。参照点決定部103が参照点Gを決定したら、測定画像生成部102dは、参照点Gが特定できる表示態様に測定画像を変更する。なお、参照点決定部103は、スキッドボタンごとに参照点Gの指定を求める構成としても良い。すなわち、参照点決定部103は、スキッドボタンごとに選定対象となる測定点Fを抽出し、抽出した測定点Fのいずれかが指定されることを要求する。入力装置などにより抽出した測定点Fのいずれかが指定された場合には当該測定点Fを参照点Gに決定する。一のスキッドボタンについて参照点Gが決定されたら、次のスキッドボタンに移行し同様に測定点Fを抽出していずれかの測定点Fを指定することを要求する。これをすべてのスキッドボタンについて実施するものとしても良い。
【0066】
判断部104は、参照点の高さ(Z)に基づいて対象となるスキッドボタンが損傷しているか否か判断を行う。判断の方法については第1の実施形態及びその変形例に記載したとおりであり、判断に用いる閾値等は記憶部106に記憶されている。判断部104が特定のスキッドボタンが損傷状態にあると判断した場合には、測定画像生成部102dは、対象となるスキッドボタンが特定できる表示態様となるように測定画像を変更する。
【0067】
補修対象選定部105は、損傷状態の判断結果に基づいて補修対象のスキッドボタンを選定する。補修対象の選定方法は第1の実施形態に示したとおりである。補修対象選定部105が補修対象に選定した場合には、測定画像生成部102dは、補修対象に選定されたスキッドボタンが特定できる表示態様となるように測定画像を変更する。なお、判断部104で損傷状態にあると判断したスキッドボタン限って補修対象とする場合には当該構成を省略しても良い。
【0068】
以上のような評価装置100によれば、第1の実施形態及びその変形例で説明したスキッドボタンの評価方法及びスキッドボタンの補修方法に関して、作業者によるデータ処理から補修対象決定のプロセスまでの作業負荷を軽減し、より短時間で実施可能とすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 加熱炉
23 固定スキッドボタン(スキッドボタン)
33 可動スキッドボタン(スキッドボタン)
230、330 支持面
F 測定点
G 参照点
N 3Dスキャナ
Np 設置位置
S スラブ
T 測定範囲(3次元座標取得可能範囲)
S10 座標取得工程
S20 点群生成工程
S30 参照点決定工程
S40 評価工程
S50 補修対象選定工程
S60 補修工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17