(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】簡易舗装体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/04 20060101AFI20230512BHJP
E01C 7/10 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
E01C7/04
E01C7/10
(21)【出願番号】P 2019101145
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 清人
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 晴彦
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166456(JP,A)
【文献】特開2017-061815(JP,A)
【文献】特開2015-063884(JP,A)
【文献】特開2002-004262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/04
E01C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼スラグと、高炉水砕スラグと、セメント系固化材とを含む簡易舗装材料を用いた簡易舗装体の施工方法であって、
前記製鋼スラグおよび前記高炉水砕スラグの混合スラグに対する前記セメント系固化材の配合量を決定する工程と、
前記配合量の前記セメント系固化材および前記混合スラグの混合物に対する水の配合量を決定する工程と、
前記配合量の水と前記混合物とを混合して、前記簡易舗装材料を製造する工程と、
前記製造された簡易舗装材料を施工箇所に敷き均す工程と、
前記施工箇所に敷き均された簡易舗装材料を転圧する工程とを含み、
前記水の配合量を決定する工程、および、前記簡易舗装材料を製造する工程を、施工現場で行
い、
前記簡易舗装材料を製造する工程は、
前記セメント系固化材と前記混合スラグとを混合する工程と、
前記混合物の混合状態を把握する工程と、
当該把握した混合状態に基づいて、前記水と前記混合物とを混合する工程とを含み、
土壌水分計を用いた前記混合物の水分率の測定結果に基づいて、前記混合状態を把握することを特徴とする簡易舗装体の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易舗装体の施工方法において、
土壌水分計を用いた前記混合スラグおよび前記混合物のうち少なくとも一方の水分率の測定結果に基づいて、前記水の配合量を決定することを特徴とする簡易舗装体の施工方法。
【請求項3】
製鋼スラグと、高炉水砕スラグと、セメント系固化材とを含む簡易舗装材料を用いた簡易舗装体の施工方法であって、
前記製鋼スラグおよび前記高炉水砕スラグの混合スラグに対する前記セメント系固化材の配合量を決定する工程と、
前記配合量の前記セメント系固化材および前記混合スラグの混合物に対する水の配合量を決定する工程と、
前記配合量の水と前記混合物とを混合して、前記簡易舗装材料を製造する工程と、
前記製造された簡易舗装材料を施工箇所に敷き均す工程と、
前記施工箇所に敷き均された簡易舗装材料を転圧する工程とを含み、
前記水の配合量を決定する工程、および、前記簡易舗装材料を製造する工程を、施工現場で行う簡易舗装体の施工方法において、
バケットと、ドラムと、前記ドラムを回転させる回転機構と、前記ドラム内の収容物を排出する排出機構と、水タンクと、ポンプとを有する自走式プラントを、前記簡易舗装材料を製造する工程と前記簡易舗装材料を前記施工箇所に敷き均す工程とに用い、
前記自走式プラントは、
前記ポンプで前記水タンクの水を前記ドラムに投入する
水投入工程と、
前記バケットで前記配合量のセメント系固化材を前記ドラムに投入する
固化材投入工程と、
前記バケットで前記混合スラグを前記ドラムに投入する
混合スラグ投入工程と、
前記回転機構で前記ドラムを回転させて、前記水と前記セメント系固化材と前記混合スラグとを混合する工程と、
前記排出機構で前記ドラム内の前記簡易舗装材料を前記施工箇所に敷き均す工程とを行うことを特徴とする簡易舗装体の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の簡易舗装体の施工方法において、
前記混合スラグ投入工程の後に、前記固化材投入工程および前記水投入工程と同様の要領で、前記セメント系固化材および水を前記ドラムに投入することを特徴とする簡易舗装体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易舗装体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料費、施工費の増大を抑制できる簡易舗装方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の簡易舗装方法は、所定の特性を有する製鋼スラグと、所定量の高炉水砕スラグとを混合した簡易舗装材料を施工箇所に敷き均し、水を散布する。その後、簡易舗装材料を転圧したままで養生し、簡易舗装材料を固めることで施工が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような簡易舗装材料では、耐摩耗性、耐凍害性などの耐久性を高くできないため、交通量の多い道路や積雪寒冷地での適用が難しいという問題がある。そこで、特許文献1のような簡易舗装材料にセメント系固化材などの結合材を配合して、上記問題を解決することが考えられる。
しかしながら、結合材を配合すると、配合しない場合と比べて、簡易舗装材料の固化の進行が速くなってしまう。固化が進行した簡易舗装材料を用いて簡易舗装体を施工すると、耐久性に優れた簡易舗装体を形成できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、耐久性に優れた簡易舗装体を施工できる簡易舗装体の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の簡易舗装体の施工方法は、製鋼スラグと、高炉水砕スラグと、セメント系固化材とを含む簡易舗装材料を用いた簡易舗装体の施工方法であって、前記製鋼スラグおよび前記高炉水砕スラグの混合スラグに対する前記セメント系固化材の配合量を決定する工程と、前記配合量の前記セメント系固化材および前記混合スラグの混合物に対する水の配合量を決定する工程と、前記配合量の水と前記混合物とを混合して、前記簡易舗装材料を製造する工程と、前記製造された簡易舗装材料を施工箇所に敷き均す工程と、前記施工箇所に敷き均された簡易舗装材料を転圧する工程とを含み、前記水の配合量を決定する工程、および、前記簡易舗装材料を製造する工程を、施工現場で行うことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、水の配合量を決定する工程と、簡易舗装材料を製造する工程とを施工現場で行うため、固化が進行する前の簡易舗装材料を施工箇所に敷き均し転圧できる。したがって、耐久性に優れた簡易舗装体を施工できる。
【0008】
本発明の簡易舗装体の施工方法において、土壌水分計を用いた前記混合スラグおよび前記混合物のうち少なくとも一方の水分率の測定結果に基づいて、前記水の配合量を決定することが好ましい。
【0009】
本発明によれば、入手が容易な土壌水分計を用いて、水の配合量を容易にかつ適切に決定できる。
【0010】
本発明の簡易舗装体の施工方法において、前記簡易舗装材料を製造する工程は、前記セメント系固化材と前記混合スラグとを混合する工程と、前記混合物の混合状態を把握する工程と、当該把握した混合状態に基づいて、前記水と前記混合物とを混合する工程とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明によれば、水分をほとんど含まないセメント系固化材と水分をある程度含む混合スラグとが適度に混合していることを確認してから、さらに水を混合するため、簡易舗装全体にセメント系固化材をムラなく混合する作業時間を短縮できる。
【0012】
本発明の簡易舗装体の施工方法において、土壌水分計を用いた前記混合物の水分率の測定結果に基づいて、前記混合状態を把握することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、入手が容易な土壌水分計を用いて、混合物の混合状態を容易にかつ適切に確認できる。
【0014】
本発明の簡易舗装体の施工方法において、バケットと、ドラムと、前記ドラムを回転させる回転機構と、前記ドラム内の収容物を排出する排出機構と、水タンクと、ポンプとを有する自走式プラントを、前記簡易舗装材料を製造する工程と前記簡易舗装材料を前記施工箇所に敷き均す工程とに用い、前記自走式プラントは、前記ポンプで前記水タンクの水を前記ドラムに投入する工程と、前記バケットで前記配合量のセメント系固化材を前記ドラムに投入する工程と、前記バケットで前記混合スラグを前記ドラムに投入する工程と、前記回転機構で前記ドラムを回転させて、前記水と前記セメント系固化材と前記混合スラグとを混合する工程と、前記排出機構で前記ドラム内の収容物を前記簡易舗装材料として前記施工箇所に敷き均す工程とを行うことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、1台の自走式プラントを用いて上記工程を行うため、簡易舗装体を少ない建機および人員で施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る簡易舗装体の施工方法を示すフローチャート。
【
図2】前記第1実施形態および本発明の第2実施形態に係る混合物の水分率と含水比との関係を示すグラフ。
【
図3】前記第2実施形態に係る簡易舗装体の施工方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[簡易舗装材料の構成材料]
まず、第1,第2実施形態の簡易舗装体の施工方法に用いる簡易舗装材料の構成を説明する。
簡易舗装材料は、製鋼スラグと、高炉水砕スラグと、セメント系固化材とを含む。
簡易舗装材料は、施工中、または、施工後に、製鋼スラグ(SiO2=10~15%、Al2O3=2%程度、CaO=42~48%)中のカルシウムがスラグ界面に付着する水に溶け出し、付着水に溶けた大気中の炭酸ガスと反応して水酸化カルシウムや炭酸カルシウムに化学変化する。
【0018】
製鋼スラグは、粒径が40mm以下であることが好ましい。
高炉水砕スラグは、簡易舗装材料の全量に対して5質量%以上、35質量%以下含まれていることが好ましい。製綱スラグと高炉水砕スラグを混合し、高炉水砕スラグの質量%を変えて、大型のロードローラで締め固めてから1か月後と3か月後に地盤の強度を測定したところ、高炉水砕スラグの質量%が、5質量%未満または35質量%を超えると、簡易舗装材のキャスポルCBR%値が急激に低下した。
【0019】
高炉水砕スラグが5質量%未満では、高炉水砕スラグ(SiO2=30~35%、Al2O3=10~15%、CaO=38~43%)から溶け出すシリカ、アルミナが少ないために、ポゾラン反応が十分に起こらず簡易舗装体の強度が上昇しない。
高炉水砕スラグの量が、35質量%を超えると、相対的に製鋼スラグが少なくなり、溶出するカルシウムが少なくなるため、ポゾラン反応が十分に起こらず簡易舗装体の強度が上昇しない。
【0020】
なお、高炉水砕スラグ中のアルミナやシリカなどは、時間の経過とともに、スラグ表面の付着水にゆっくりと溶け出してくるので、ポゾラン反応もゆっくりと進み、さらに強度のあるカルシウム、アルミナやシリカの水和物ができ、時間をかけて固まることで、割れを生じることなく強度が発現する。
【0021】
さらに、結合材であるセメント系固化材として、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ微粉末のうち1種または2種以上を、簡易舗装材料の全量に対して外添で1.5%重量%以上4.5%重量%以下を加えて施工すると、施工後の養生日数を短くすることができる。これは、散水し転圧して施工された後、カルシウムシリケイト水和物(C-S-H)と水酸化カルシウムが生成し初期強度が発現することで、養生時間が短縮可能となるためである。
ただし、4.5質量%超を加えると、早期に固化することで製鋼スラグ自体の膨張を強く拘束してしまうため、内部応力が高まり、数か月で割れることが懸念される。
【0022】
[第1実施形態]
〔簡易舗装体の施工方法〕
次に、上述の簡易舗装材料を用いた第1実施形態の簡易舗装体の施工方法について説明する。
第1実施形態の簡易舗装体の施工方法は、
図1に示すように、製鋼スラグおよび高炉水砕スラグの混合スラグに対するセメント系固化材の配合量を決定する工程(固化材配合量決定工程S1)と、セメント系固化材および混合スラグの混合物に対する水の配合量を決定する工程(水配合量決定工程S4)と、水と混合物とを混合して、簡易舗装材料を製造する工程(簡易舗装材料製造工程)と、簡易舗装材料を施工箇所に敷き均す工程(敷き均し工程S8)と、簡易舗装材料を転圧する工程(転圧工程S9)とを含む。
第1実施形態の簡易舗装体の施工方法は、固化材配合量決定工程S1、水配合量決定工程S4、および、簡易舗装材料製造工程を施工現場で行う。施工現場とは、道路などの施工箇所を含む所定範囲の領域を意味する。
【0023】
簡易舗装材料製造工程は、固化材配合量決定工程S1で決定された配合量のセメント系固化材を混合スラグに投入する工程(固化材投入工程S2)と、セメント系固化材と混合スラグとを混合する工程(第1の混合工程S3)と、セメント系固化材と混合スラグとの混合物の混合状態を把握する工程(混合状態把握工程S5)と、混合状態把握工程S5で把握した混合状態が所定状態の場合、水配合量決定工程S4で決定された配合量の水を第1の混合工程S3で得られた混合物に投入する工程(水投入工程S6)と、水投入工程S6で水が投入された混合物を混合する工程(第2の混合工程S7)とを含む。
【0024】
以下、各工程について詳述するが、以下の作業に限定されず、各工程の目的を達成できる範囲で他の作業を行ってもよい。なお、網目状の格子が設けられたバケットをスケルトンバケットと言い、格子が設けられていないバケットを通常バケットと言う。
【0025】
固化材配合量決定工程S1は、施工現場に山積みにされたあるいはダンプトラックの荷台に積まれた混合スラグを、バックホーの通常バケットで他の場所に運搬し、あらかじめ決定しておいた容積のマウンドを形成する。マウンドの容積は、通常バケットの容量と、混合スラグの運搬回数とに基づいて、管理することができる。マウンドの形成を、ホイールローダーやショベルローダーや人手で行ってもよい。
マウンドの容積と、混合スラグの密度とに基づいて、マウンドの質量を求める。このマウンドの質量に基づいて、セメント系固化材の配合量を決定する。
セメント系固化材の配合量は、簡易舗装材料の全量に対して外添で1.5%質量%以上4.5%質量%以下の質量であることが好ましい。セメント系固化材として、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ微粉末のうち1種以上を採用することが好ましい。
【0026】
固化材投入工程S2は、セメント系固化材が収容されたフレコンバッグを準備し、このフレコンバッグをバックホーのアームで吊り上げる。吊り上げ前あるいは吊り上げ後にフレコンバッグに形成した切欠きから、セメント系固化材をマウンド上に撒く。このとき、アームを移動させることで、マウンドの上面にセメント系固化材を均等に撒くことが好ましい。
【0027】
第1の混合工程S3は、乾式ミキサー、スタビライザ(ヴイルトゲン社製)、通常バケットまたはスケルトンバケットあるいはミキシングバケットが装着されたバックホーを使用できる。本第1実施形態は、バックホーのスケルトンバケットで、マウンドの混合スラグとセメント系固化材とをすくって、格子から落とす要領で両者を混合する。
【0028】
水配合量決定工程S4は、まず、第1の混合工程S3で混合した混合スラグとセメント系固化材との混合物の含水比を求める。混合物の含水比とは、以下の式(1)で得られる値である。
混合物の含水比(%)=mw/ms×100 … (1)
mw:混合物の水分質量
ms:混合物の乾燥質量
【0029】
含水比を求めるときは、混合物の水分率を測定する。ここで用いる水分率は、以下の式(2)で得られる値である。
混合物の水分率(%)=Vw/V×100 … (2)
Vw:混合物の水分が占める容積
V:混合物全体の容積
【0030】
この水分率測定結果と、
図2に示すようなあらかじめ求めておいた水分率と含水比との関係に基づいて、混合物の含水比を求める。次に、この混合物の含水比と、あらかじめ求めておいた簡易舗装材料の最適含水比との差を求め、この差をなくす水の量を配合量として決定する。
混合物の含水比は、5%以上12%以下であることが好ましい。水分率の測定は、赤外線水分計、RI水分計、土壌水分計を使用できるが、コストの観点から土壌水分計を使用することが好ましい。含水比は、混合物の1箇所の測定結果に基づき求めてもよいし、複数箇所の測定結果の平均値に基づき求めてもよい。混合物の含水比を求める工程、水の配合量を決定する工程は、作業者が行ってもよいし、コンピュータが行ってもよい。
【0031】
混合状態把握工程S5は、例えば、水配合量決定工程S4で使用した土壌水分計で混合物の複数箇所、例えば10箇所の水分率を測定する。この水分率の測定結果の最大値と最小値との差が、閾値以下の場合、十分に混合されたと判断する。一方、閾値を超える場合、混合が不十分と判断し、再度、例えば第1の混合工程S3と同じ方法で、混合物を混合する。混合状態が十分であると判断する閾値は、0%以上5%以下であることが好ましい。
混合状態の把握は、水配合量決定工程S4の水分率測定結果をそのまま使用してよいし、水配合量決定工程S4の水分率測定結果だけではデータ数が足りない場合には、足りない分だけ追加測定してもよいし、水配合量決定工程S4の水分率測定結果を使用せずに、新たに測定してもよい。混合状態の把握は、作業者の目視や混合物の画像認識で行ってもよい。
【0032】
水投入工程S6は、ポンプとホースを使って給水タンク内の水を混合物に散水する。散水は、水が1箇所に集中しないように行うことが好ましい。散水量は、水分蒸発を考慮に入れて、水配合量決定工程S4で決定した配合量よりも1~2質量%程度多めの量にしてもよい。散水量の管理は、給水タンクの水位や重量の計測で行ってもよいし、散水に使う量だけ給水タンクに水を入れておいてもよい。
【0033】
第2の混合工程S7は、第1の混合工程S3と同じ要領で、あるいは、第1の混合工程S3で例示した方法とは違う方法で、混合物と水とを混合する。簡易舗装材料は、施工現場における以上の工程を経て製造される。
第2の混合工程S7は、簡易舗装材料の水の混合状態を把握しながら行うことが好ましい。例えば、作業者がゴム手袋を装着した手で簡易舗装材料を握って、水の混合状態を把握してもよい。
【0034】
敷き均し工程S8は、ブルドーザー、モーターグレーダー、バックホーなど使用できる。敷き均し工程S8は、簡易舗装材料を施工箇所である地盤の上に敷き均す。敷き均す厚みは50mm以上300mm以下である。ここで、敷き均す材料の厚さ(高さ)を50mm以上にしているのは、その厚さ(高さ)が50mm以下では、固まった後の強度が不足するためである。
また、300mm以下にしている理由は、300mmを超えると、大型のロードローラあるいは小型のプレートでの転圧では、下部まで圧力が行き渡らないために締め固めができずに、車重の圧力で下部の材料が動き、上部に割れを生じてしまうおそれがあるためである。
敷き均し工程S8のうち、簡易舗装材料を施工箇所に敷く工程のみをダンプトラックで行ってもよい。
【0035】
転圧工程S9は、例えばタイヤローラで一次転圧を行い、ロードローラで二次転圧を行う。さらに、振動式の転圧機を用いて転圧してもよい。
最後に、養生は、混合物への散水、転圧後、1週間から2週間養生する。これにより、シュミットハンマーによる推定圧縮強度は6MPa以上となり、乗用車程度の重量物は、轍ができずに問題なく走行できる。
【0036】
〔第1実施形態の作用効果〕
上述の第1実施形態によれば、固化材配合量決定工程S1から第2の混合工程S7に至る工程を施工現場で行うため、固化材投入から簡易舗装材料を施工箇所に敷き均して転圧するまでの時間を短縮できる。したがって、固化が進行する前の簡易舗装材料を転圧でき、耐久性に優れた簡易舗装体を施工できる。特に、混合スラグとセメント系固化材との混合物の含水比に基づいて、水投入工程S6で投入する水の配合量を決定するため、簡易舗装材料の水分量を混合物の量に応じた適切な量にすることができ、転圧後の養生期間の長期化を抑制できる。
混合状態把握工程S5を行っているため、セメント系固化材と混合スラグとが適度に混合されてから水を混合でき、簡易舗装材料全体にセメント系固化材をムラなく混合する作業時間を短縮できる。
混合状態把握工程S5で土壌水分計を使用すれば、作業者の目視で混合状態を把握する場合と比べて、作業者によるばらつきを抑制できる。
水配合量決定工程S4と混合状態把握工程S5とで同じ土壌水分計を使用すれば、施工に使用する機器を少なくできる。
水配合量決定工程S4で使用した水分率測定結果を混合状態把握工程S5でも使用すれば、測定箇所を少なくできる。
【0037】
[第2実施形態]
〔簡易舗装体の施工方法〕
次に、第2実施形態の簡易舗装体の施工方法について説明する。
第2実施形態の簡易舗装体の施工方法は、
図3に示すように、固化材配合量決定工程S11と、水配合量決定工程S12と、簡易舗装材料製造工程と、敷き均し工程S19と、転圧工程S20とを含む。
第2実施形態の簡易舗装体の施工方法は、水配合量決定工程S12、および、簡易舗装材料製造工程を施工現場で行う。
【0038】
簡易舗装材料製造工程は、バケットと、ドラムと、ドラムを回転させる回転機構と、ドラムの収容物の重量を測定する重量計と、ドラム内の収容物を排出する排出機構と、水タンクと、ポンプとを有する自走式プラントを使用する。自走式プラントとしては、METALGALANTE社製のCARMIXが例示できる。
簡易舗装材料製造工程は、水配合量決定工程S12で決定された配合量の一部の水をドラムに投入する工程(第1の水投入工程S13)と、固化材配合量決定工程S11で決定された配合量の一部のセメント系固化材をドラムに投入する工程(第1の固化材投入工程S14)と、混合スラグをドラムに投入する工程(混合スラグ投入工程S15)と、固化材配合量決定工程S11で決定された配合量の残りのセメント系固化材をドラムに投入する工程(第2の固化材投入工程S16)と、水配合量決定工程S12で決定された配合量の残りの水をドラムに投入する工程(第2の水投入工程S17)と、水とセメント系固化材と混合スラグとを混合する工程(混合工程S18)とを含む。
【0039】
固化材配合量決定工程S11は、簡易舗装材料製造工程で製造する簡易舗装材料の全量をあらかじめ決めておき、この決めておいた全量に対して外添で1.5%重量%以上4.5%重量%以下の量を、セメント系固化材の配合量として決定する。なお、この固化材配合量決定工程S11を、作業者が施工現場に来る前に他の場所で行ってもよいし、施工現場で行ってもよい。
【0040】
水配合量決定工程S12は、ドラムに投入する前の混合スラグに対し、第1実施形態の水配合量決定工程S4と同様の作業を行うことで、水の配合量を決定する。すなわち、上記式(1)と同様の式を用いて、土壌水分計で計測した混合スラグの水分率に基づき混合スラグの含水比を求め、この含水比と最適含水比との差をなくす量を、水の配合量として決定する。
【0041】
第1の水投入工程S13は、自走式プラントの水タンクの水をポンプでドラムに投入する。水の投入量は、自走式プラントの重量計または積算流量計で管理する。第1の水投入工程S13で投入する水の量は、第2の水投入工程S17と同じであってもよいし違っていてもよい。
【0042】
第1の固化材投入工程S14は、施工現場に運搬された袋詰めまたはフレコンバッグ詰めのセメント系固化材を、自走式プラントのバケットを使用して、水が入ったドラムに投入する。セメント系固化材の投入量は、自走式プラントの重量計で管理する。第1の固化材投入工程S14で投入するセメント系固化材の量は、第2の固化材投入工程S16と同じであってもよいし違っていてもよい。
【0043】
混合スラグ投入工程S15は、施工現場に山積みにされたあるいはダンプトラックの荷台に積まれた混合スラグを、自走式プラントのバケットを使用して、水およびセメント系固化材が入ったドラムに投入する。混合スラグの投入量は、自走式プラントの重量計で管理する。
【0044】
第2の固化材投入工程S16および第2の水投入工程S17は、それぞれ第1の固化材投入工程S14および第1の水投入工程S13と同様の要領で、セメント系固化材および水をドラムに投入する。
【0045】
混合工程S18は、自走式プラントの回転機構でドラムを回転させて、水とセメント系固化材と混合スラグとを混合する。この混合は、水とセメント系固化材と混合スラグとが十分に混合される時間をあらかじめ決定しておき、決定した時間だけ行う。
【0046】
敷き均し工程S19は、自走式プラントの排出機構でドラム内の簡易舗装材料を排出しながら、ドラムおよび排出機構の一部であるシュートを移動させること、および自走式プラントを走行させることで、簡易舗装材料を地盤の上に敷く。次に、ブルドーザー、モーターグレーダー、バックホーなど使用して、簡易舗装材料を均す。
転圧工程S20は、第1実施形態の転圧工程S9と同じ要領で行う。最後に、1週間から2週間養生して、簡易舗装体が完成する。
【0047】
〔第2実施形態の作用効果〕
上述の第2実施形態によれば、水配合量決定工程S12から混合工程S18に至る工程を施工現場で行うため、固化が進行する前の簡易舗装材料を転圧でき、耐久性に優れた簡易舗装体を施工できる。
第1の水投入工程S13から敷き均し工程S19における簡易舗装材料を敷くまでの工程を、1台の自走式プラントで行うため、簡易舗装体を少ない建機および人員で施工できる。
水やセメント系固化材を、それぞれ複数回に分けてタンクに投入するため、タンク内で水やセメント系固化材の層をそれぞれ複数ずつ形成でき、水とセメント系固化材と混合スラグとをムラなく混合する時間を短縮できる。
【0048】
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能であり、その他、本発明の実施の際の具体的な手順、および構造などは本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【0049】
例えば、第1実施形態の固化材配合量決定工程S1の代わりに第2実施形態の固化材配合量決定工程S11を行ってもよい。つまり、第1実施形態の固化材配合量決定工程を、作業者が施工現場に来る前に他の場所で行ってもよい。第2実施形態の固化材配合量決定工程S11の代わりに第1実施形態の固化材配合量決定工程S1を行ってもよい。
第1実施形態において、水配合量決定工程S4の代わりに、固化材投入工程S2よりも前に、第2実施形態の水配合量決定工程S12を行ってもよい。
第1実施形態において、混合状態把握工程S5を作業者の目視で行ってもよい。
第2実施形態において、ドラムに水およびセメント系固化材を投入する工程をそれぞれ2回ずつ行ったが、3回以上行ってもよいし、1回だけ行ってもよい。水およびセメント系固化材を投入する工程の回数は、同じであってもよいし違っていてもよい。タンクに水、セメント系固化材、混合スラグを投入する順序は、この記載した順序でなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
S1…固化材配合量決定工程、S2…固化材投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S3…第1の混合工程(簡易舗装材料製造工程)、S4…水配合量決定工程、S5…混合状態把握工程(簡易舗装材料製造工程)、S6…水投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S7…第2の混合工程(簡易舗装材料製造工程)、S8…敷き均し工程、S9…転圧工程、S11…固化材配合量決定工程、S12…水配合量決定工程、S13…第1の水投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S14…第1の固化材投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S15…混合スラグ投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S16…第2の固化材投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S17…第2の水投入工程(簡易舗装材料製造工程)、S18…混合工程(簡易舗装材料製造工程)、S19…敷き均し工程、S20…転圧工程。