(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】既製杭の保持装置及び基礎杭構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20230512BHJP
E02D 13/04 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
E02D13/00
E02D13/04
(21)【出願番号】P 2019126393
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 寿大
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 和宏
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-082132(JP,U)
【文献】特開平06-322763(JP,A)
【文献】特開昭62-133255(JP,A)
【文献】特開平08-049235(JP,A)
【文献】特開平09-125391(JP,A)
【文献】特開2018-062779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
E02D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭穴に沈設された既製杭の保持装置において、
前記既製杭に係合可能な杭係合部と、
前記杭係合部に連なる軸部と、
前記軸部に外嵌可能な固定具と、
前記杭穴を横断するように配置される桁部材と、
前記固定具と前記桁部材との間に配置される高さ調整具と、
を備え、
前記軸部には前記軸部の軸線方向に離間して複数の凹部が設けられ、
前記固定具に設けられた凸部又は前記固定具に挿通される係合ピンを前記複数の凹部の何れかと選択的に係合可能である
ことを特徴とする既製杭の保持装置。
【請求項2】
前記固定具は、
2つの半割部材と、
前記2つの半割部材の周方向にて一方の側を相互に揺動可能に連結する第1連結ピンと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の既製杭の保持装置。
【請求項3】
前記固定具は、
前記軸部の軸線方向に沿って配置され、前記2つの半割部材の周方向にて他方の側を相互に連結する第2連結ピンを更に含む
ことを特徴とする請求項2に記載の既製杭の保持装置。
【請求項4】
前記高さ調整具は油圧式のジャーナルジャッキであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の既製杭の保持装置。
【請求項5】
杭穴を掘削する掘削工程と、
前記杭穴に固化材を注入する固化材注入工程と、
前記固化材注入工程後に、前記杭穴に既製杭を沈設する既製杭埋設工程と、
前記杭穴内の既製杭を前記固化材が固化するまで保持する保持工程と、
を備え、
前記保持工程において、請求項1乃至4の何れか1項に記載の既製杭の保持装置を用いて前記既製杭を保持する
ことを特徴とする基礎杭構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は既製杭の保持装置及び基礎杭構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭には、杭打ち機を用いて杭穴を掘削した後、杭穴にセメントミルク等の固化材を注入し、更に既製杭を沈設するプレボーリング工法によって構築されるものがある。そして、既製杭の杭頭部を地表よりも深くに配置するために、固化材が固化するまで支持ロッドを用いて杭穴内の既製杭を保持することがある。この際、支持ロッドには固定具が取り付けられ、支持ロッドを挟むように配置される基台上に固定具が配置される。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する固定具は、2つの固定片がボルトによって相互に締結されることで支持ロッドに固定されているが、支持ロッドの表面に泥等が付着してすべり易くなっている場合、既製杭の荷重によっては支持ロッドに対し固定具が滑ってしまう虞がある。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、プレボーリング工法において既製杭を所定深さに確実に保持可能な既製杭の保持装置及びそれを用いた基礎杭構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭の保持装置は、
杭穴に沈設された既製杭の保持装置において、
前記既製杭に係合可能な杭係合部と、
前記杭係合部に連なる軸部と、
前記軸部に外嵌可能な固定具と、
前記杭穴を横断するように配置される桁部材と、
前記固定具と前記桁部材との間に配置される高さ調整具と、
を備え、
前記軸部には前記軸部の軸線方向に離間して複数の凹部が設けられ、
前記固定具に設けられた凸部又は前記固定具に挿通される係合ピンを前記複数の凹部の何れかと選択的に係合可能である。
【0006】
上記構成(1)によれば、固定具の凸部又は係合ピンが軸部の凹部に係合することで、軸部の軸線方向にて固定具が軸部に対し固定される。このため、軸部に対する固定具の滑りが規制され、既製杭を所定深さに確実に保持することができる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記固定具は、
2つの半割部材と、
前記2つの半割部材の周方向にて一方の側を相互に揺動可能に連結する第1連結ピンと、
を含む。
上記構成(2)によれば、2つの半割部材が第1連結ピンによって連結されているので、軸部に固定具を容易に取り付けることができる。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(2)において、
前記固定具は、
前記軸部の軸線方向に配置され、前記2つの半割部材の周方向にて他方の側を相互に連結する第2連結ピンを更に含む。
上記構成(3)によれば、2つの半割部材の他端側を軸部の軸線方向に配置される第2連結ピンで連結するので、軸部に固定具を容易に取り付けることができる。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(3)の何れか1つにおいて、
前記高さ調整具は油圧式のジャーナルジャッキである。
上記構成(4)によれば、油圧式のジャーナルジャッキを用いることで、固定具の高さや傾きを容易に調整することができ、既製杭を所定深さに鉛直に確実に沈設することができる。
【0010】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係る基礎杭構築方法は、
杭穴を掘削する掘削工程と、
前記杭穴に固化材を注入する固化材注入工程と、
前記固化材注入工程後に、前記杭穴に既製杭を沈設する既製杭埋設工程と、
前記杭穴内の既製杭を前記固化材が固化するまで保持する保持工程と、
を備え、
前記保持工程において、上記構成(1)乃至(4)の何れか1つに記載の既製杭の保持装置を用いて前記既製杭を保持する。
【0011】
上記構成(5)によれば、固定具の凸部又は係合ピンが軸部の凹部に係合することで、軸部の軸線方向にて固定具が軸部に対し固定される。このため、軸部に対する固定具の滑りが規制され、既製杭を確実に保持することができる。この結果として、既製杭を所定深さに確実に設置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プレボーリング工法において既製杭を所定深さに確実に保持可能な既製杭の保持装置及びそれを用いた基礎杭構築方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る既製杭の保持装置を、既製杭とともに概略的に示す図である。
【
図3】保持装置の一部を概略的に示す側面図である。
【
図4】保持装置の一部を概略的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る基礎杭構築方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
【
図8】上述した基礎杭構築方法によって構築された基礎杭の概略的な構成を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る固定具の概略的な構成を示す平面図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態を示している。
【
図10】
図9の固定具の概略的な構成を示す正面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る固定具の概略的な構成を示す平面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る固定具を、軸部の一部とともに概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る既製杭の保持装置(以下、単に保持装置ともいう)1を、既製杭3とともに概略的に示す図である。
図2は、保持装置1を概略的に示す平面図である。
図3は、保持装置1の一部を概略的に示す側面図である。
図4は、保持装置1の一部を概略的に示す斜視図である。
【0016】
図1及び
図2に示したように、保持装置1は、杭穴5に沈設された既製杭3を杭穴5に注入された固化材6が固化するまで保持するものである。保持装置1は、杭係合部7と、軸部9と、固定具11と、桁部材13と、高さ調整具15とを備えている。
【0017】
杭係合部7は、既製杭3と係合可能である。例えば、杭係合部7は円筒形状を有し、杭係合部7の周壁には、正面視にてL字形状の係合溝7aが設けられている。既製杭3の杭頭部には、係合溝7aに挿入される突起3aが杭頭部から径方向に突出するように設けられる。既製杭3の軸線方向にて突起3aを係合溝7aの鉛直部分に所定長さ進入させてから、杭係合部7に対し既製杭3を相対回転させることで、突起3aが係合溝7aの水平部分に進入し、既製杭3と杭係合部7とが上下方向にて係合する。この状態から、杭係合部7に対し既製杭3を逆方向に相対回転させることで、既製杭3と杭係合部7との上下方向での係合を解除することができる。
【0018】
軸部9は杭係合部7に連なっており、既製杭3の上方に同軸に配置される。軸部9は、杭係合部7と分離可能であってもよいし、一体であってもよい。
固定具11は、軸部9に外嵌可能且つ固定可能である。固定具11の構成については後述する。
【0019】
桁部材13は、杭穴5を横断するように軸部9を挟むように配置される。好ましくは、地表には例えば平面視コの字形状の基台17が杭穴5の開口を囲むように設置され、2本の桁部材13が軸部9を挟むように基台17上に設置される。桁部材13も平面視コの字形状であってもよい。この場合、基台17及び桁部材13は平面視にて井型に配置される。
高さ調整具15は、固定具11と桁部材13との間に配置される。例えば、2つの高さ調整具15が、2本の桁部材13の上に1つずつ配置され、軸部9の両側に配置される。
【0020】
ここで、
図3は、杭係合部7、軸部9及び固定具11を概略的に示す正面図である。
図4は、杭係合部7、軸部9及び固定具11を概略的に示す斜視図である。
図5は、固定具11を概略的に示す正面図である。
図6は、固定具11を概略的に示す斜視図である。
図3~
図6に示したように、本実施形態では、軸部9の外周面には、軸部9の軸線方向に離間して複数の凹部19が設けられている。例えば、軸部9は円筒形状を有し、各凹部19は周方向溝19aによって構成されている。
【0021】
そして、固定具11の内周面には1つ以上の凸部21が設けられている。凸部21は、例えば、固定具11の周方向に延在する突条21aによって構成される。凸部21は、固定具11の内周面から径方向内側に突出しており、固定具11の内周面が軸部9の外周面に近接した状態において、複数の凹部19の何れかに進入して選択的に係合可能である。
【0022】
上記構成によれば、固定具11の凸部21が軸部9の凹部19に係合することで、軸部9の軸線方向にて固定具11が軸部9に対し固定される。このため、軸部9に対する固定具11の滑りが規制され、既製杭3を所定深さに確実に保持することができる。
また、高さ調整具15によって固定具11の高さや傾きを調整することで、既製杭3を所定深さに鉛直に確実に保持することができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、周方向溝19aの断面形状は、台形状である(
図3参照)。周方向溝19aの断面形状を台形状とすることにより、突条21aとの係合を容易にすることができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、突条21aは、固定具11の軸線方向に離間して複数設けられていてもよい(
図5及び
図6参照)。複数の突条21aを設けることで、固定具11を軸部に対しより確実に係合させることができる。なお、突条21aの断面形状は、台形状であってもよいし、四角形等であってもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、
図5及び
図6に示したように、固定具11は、2つの半割部材23によって構成されている。各半割部材23は軸部9の外周面に沿って配置される半円筒部25と、半円筒部25の軸線方向一端から径方向外側に突出するフランジ部27と、半円筒部25の周方向両側縁から径方向外側に突出する耳部29とを備えている。半円筒部25の内周面には、周方向に延在する例えば2つの突条21aが設けられている。耳部29には、ボルト31が挿通される貫通穴が設けられ、2つの半割部材23は、複数のボルト31によって相互に連結され、軸部9に対し固定される。
なお、
図3及び
図5中、右側の半割部材23は断面にて示されている。
【0026】
上記構成によれば、固定具11が2つの半割部材23によって構成されており、各半割部材23を別々に移動させることができる。このため、1人の作業者が2つの半割部材23を同時に移動させる必要がなく、各半割部材23を容易に移動させることができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、固定具11は、半円筒部25とフランジ部27との間を補強する補強リブ33、及び、半円筒部25と耳部29との間を補強する補強リブ35を更に備えている。
上記構成によれば、補強リブ33,35によって補強することで、固定具11の剛性を高めることができ、既製杭3を所定高さに確実に保持することができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、
図1に示したように高さ調整具15は油圧式のジャーナルジャッキ15aである。ジャーナルジャッキ15aは、桁部材13とフランジ部27との間に配置される。
上記構成によれば、高さ調整具15として油圧式のジャーナルジャッキ15aを用いることで、固定具11の高さや傾きを容易に調整することができ、既製杭3を鉛直に確実に沈設することができる。
【0029】
図7は、本発明の一実施形態に係る基礎杭構築方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、基礎杭構築方法は、掘削工程S1と、固化材注入工程S3と、既製杭埋設工程S5と、保持工程S7とを備えている。
掘削工程S1では、例えば杭打ち機を用いて杭穴5を掘削する。杭打ち機は、リーダ、リーダに上下動可能に取り付けられたオーガモータ、及びオーガモータに連結されたオーガドリルを具備する。
固化材注入工程S3では、杭穴5にセメントミルク等の硬化性を有する固化材6を注入する。固化材注入工程S3は、掘削工程S1と同時並行又は掘削工程S1後に行われる。
【0030】
既製杭埋設工程S5では、固化材注入工程S3後に、杭穴5に既製杭3を沈設する。例えば、既製杭埋設工程S5では、杭係合部7及び軸部9によって構成されるヤットコと称される保持具を杭打ち機に連結し、ヤットコに既製杭3が係合される。杭打ち機及びヤットコによって、既製杭3は所定深さまで挿入される。この際、必要に応じて、杭打ち機によってヤットコを回転させながら、既製杭3を杭穴5に挿入する。
【0031】
保持工程S7では、杭穴5内の既製杭3を固化材6が固化するまで(必要な強度が発現するまで)保持する。保持工程S7では、上述した保持装置1を用いて既製杭3を保持する。固化材6の固化後、保持装置1を取り外すことによって、基礎杭が構築される。
【0032】
上記した基礎杭構築方法によれば、保持工程S7において、固定具11の凸部21が軸部9の凹部19に係合することで、軸部9の軸線方向にて固定具11が軸部9に対し固定される。このため、軸部9に対する固定具11の滑りが規制され、既製杭3を所定深さに確実に保持することができる。この結果として、既製杭3を所定深さに確実に設置することができる。
【0033】
図8は、上述した基礎杭構築方法によって構築された基礎杭40の概略的な構成を示す図である。
図8に示したように、基礎杭40は、杭穴5と、固化材6と、既製杭3とを備えている。
【0034】
杭穴5は、例えば杭打ち機を用いて掘削されたものである。
固化材6は、杭穴5に注入されて固化したものであり、本実施形態では、杭穴5の底部に位置する根固め液6aと、杭穴5の底部よりも上方に位置する杭周液6bとによって構成されている。根固め液6aや杭周液6bは、例えば、セメントミルクや、セメントミルクと掘削土とを混合したソイルセメントによって構成される。
既製杭3の下端部は、根固め液6aが固化して形成される根固め部42aによって囲まれ、既製杭3の下端部よりも上方は杭周液6bが固化して形成される杭周面部42bによって囲まれる。
【0035】
なお、既製杭3は単杭であっても連結杭であってもよい。また、既製杭3の種類も特に限定されることはなく、PC杭(プレストレストコンクリート杭)、SC杭(外殻鋼管付きコンクリート杭)あるいは鋼管杭等であってもよい。連結杭の場合、上杭として拡頭杭を用いてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、
図8に示したように、杭穴5の掘削径(直径)Deは、杭穴5の入口から杭穴5の底部まで一定であって、既製杭3の外径に応じて設定される基準掘削径Dsの1倍以上2倍以下である。
なお、基準掘削径Dsは、既製杭3が軸部44a及び軸部44aから径方向外側に突出する節部44bを有する節杭の場合、根固め部42a内に位置する節部44bの外径Donに0.05m加算した値であるが(Ds=Don+0.05)、外径Donが0.44mの場合には、基準掘削径Dsを0.5mとする(Ds=0.5)。一方、既製杭3がストレート杭の場合、基準掘削径Dsは、ストレート杭の外径に0.05m加算した値である。
【0037】
上記構成の基礎杭40の構築にあたっては、固化材6が固化するまで保持装置1によって既製杭3を保持するので、保持装置1によって既製杭3を所定深さに鉛直に確実に保持することができる。この結果として、上記構成の基礎杭40においては、杭穴5の掘削径Deが、既製杭3の外径に応じて設定される基準掘削径Dsの1倍以上2倍以下であっても、既製杭3が所定深さに鉛直に設置される。
【0038】
幾つかの実施形態では、掘削径Deは、基準掘削径Dsの1.5倍以上2倍以下に設定されるのが好ましい。上記した基礎杭構築方法によれば、掘削径Deが基準掘削径Dsの1.5倍以上2倍以下であって、固化材6が固化するまでの間に既製杭3が傾きやすくても、固化材6が固化するまで保持装置1によって既製杭3を保持するので、既製杭3を所定深さに鉛直に確実に保持することができる。
【0039】
幾つかの実施形では、既製杭3の下端から杭穴5の底までの距離(杭下拡大根固め部長さ)LLは0m以上2m以下に設定され、好ましくは0.5m以上2m以下に設定され、より好ましくは1m以上2m以下に設定される。上記した基礎杭構築方法によれば、杭下拡大根固め部長さLLが0.5m以上2m以下であって、固化材6が固化するまでの間に既製杭3が沈下したり傾きやすくても、固化材6が固化するまで保持装置1によって既製杭3を保持するので、既製杭3を所定深さに鉛直に確実に保持することができる。
幾つかの実施形態では、既製杭3の下端から根固め部42aの上端までの長さ(杭上根固め部長さ)は約2mである。
【0040】
図9は、本発明の他の実施形態に係る固定具50の概略的な構成を示す平面図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態を示している。
図10は、固定具の概略的な構成を示す正面図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図9(a),(b)及び
図10に示したように、固定具50は、半割部材23の周方向にて一方の側が、相互に連結ピン(第1連結ピン)52を介して結合されている点において、固定具11と異なっている。固定具50においては、連結ピン52によって、2つの半割部材23の周方向にて一方の側が相互に揺動可能に連結されている。
【0041】
具体的には、各半割部材23において、半円筒部25の周方向の一方の側縁には、連結ピン52を挿通するためのスリーブ部54が一体に設けられている。2つの半割部材23のスリーブ部54は、連結ピン52を挿通するために、半円筒部25の軸線方向にて交互に配置されるように形成されている。なお、本実施形態では、連結ピン52が抜けないように、連結ピン52をボルトとナットで構成している。
【0042】
上記構成によれば、2つの半割部材23が連結ピン52によって連結されているので、軸部9に固定具50を容易に取り付けることができる。すなわち、2つの半割部材23が別体であると、2つの半割部材23をそれぞれ移動させて軸部9に取り付けねばならず煩雑であるが、2つの半割部材23が相互に揺動可能に連結されていれば、2つの半割部材23を同時に移動させて軸部9に容易に取り付けることができる。逆も同様であり、固定具50は軸部9から容易に取り外すことができる。
【0043】
図11は、本発明の他の実施形態に係る固定具60の概略的な構成を示す平面図である。
図11に示したように、固定具60は、半割部材23の周方向にて他方の側が、相互に連結ピン(第2連結ピン)62を介して結合されている点において、固定具50と異なっている。そのために、固定具60の半割部材23の周方向にて両側にスリーブ部54が一体に設けられている。
【0044】
上記構成によれば、2つの半割部材23の他端側を軸部9の軸線方向に沿って配置される第2連結ピン62で連結するので、ボルト31で耳部29を締結する場合に比べ、軸部9に固定具60を容易に取り付けることができる。また、第2連結ピン62がスリーブ部54から落下しなければ、第2連結ピン62のための抜け止めを設ける必要がない。この点からも、軸部9に固定具60を容易に取り付けることができ、その逆も同様であって軸部9から固定具60を容易に取り外すことができる。
【0045】
図12は、本発明の他の実施形態に係る固定具70を、軸部9の一部とともに概略的に示す正面図である。
図12に示したように、固定具70は、円筒形状の円筒部72と、円筒部72の軸線方向にて一端側に一体に設けられ径方向外側に突出するフランジ部74とを有している。そして、円筒部72には、接線方向に貫通穴76が設けられており、貫通穴76には係合ピン78を挿入可能である。貫通穴76に挿入された係合ピン78は、複数の凹部19の何れかと選択的に係合可能である。
上記構成によれば、固定具70に挿通された係合ピン78が軸部9の凹部19に係合することで、軸部9の軸線方向にて固定具70が軸部9に対し固定される。このため、軸部9に対する固定具70の滑りが規制され、既製杭3を所定深さに確実に保持することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、固定具70は吊り金具80有している。吊り金具80にワイヤーを掛けて吊ることで、固定具70を容易に移動させることができる。
【0047】
最後に本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態において、軸部9は円筒形状を有し、固定具11,50,60,70も全体として円筒形状を有していたが、軸部9は角筒形状を有していてもよく、これに対応して、固定具11,50,60,70も全体として角筒形状を有していてもよい。あるいは、軸部9は、凹部19が設けられる領域において部分的に角筒形状を有していてもよい。角筒形状の断面形状は、四角形、六角形、あるいは八角形等であってもよい。
【0048】
また、上述した実施形態において、凹部19は周方向溝19aであったが、軸部9の接線方向に延在する接線方向溝であってもよい。軸部9が角筒形状を有している場合、凹部19は軸部9の側面と平行な溝であってもよい。
更に、固定具70のように係合ピン78を固定具に挿入する場合、凹部19は、溝形状に限定されることはなく、軸部9を横断するように貫通する貫通穴であってもよい。
また更に、固定具11,50,60に設けられる凸部21の数や、固定具70のための係合ピン78の数も特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0049】
1 既製杭の保持装置
3 既製杭
3a 突起
5 杭穴
6 固化材
6a 根固め液
6b 杭周液
7 杭係合部
7a 係合溝
9 軸部
11,50,60,70 固定具
13 桁部材
15 高さ調整具
15a ジャーナルジャッキ
17 基台
19 凹部
19a 周方向溝
21 凸部
21a 突条
23 半割部材
25 半円筒部
27 フランジ部
29 耳部
31 ボルト
33,35 補強リブ
40 基礎杭
42a 根固め部
42b 杭周面部
44a 軸部
44b 節部
52 連結ピン(第1連結ピン)
54 スリーブ部
62 連結ピン(第2連結ピン)
72 円筒部
74 フランジ部
76 貫通穴
78 係合ピン
80 吊り金具