(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】血液透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230512BHJP
A61M 1/34 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61M1/36 127
A61M1/34 145
A61M1/34 135
(21)【出願番号】P 2019127895
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】松崎 光正
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4182461(JP,B2)
【文献】特開2012-192102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路および透析液が流れる透析液流路が形成されて血液を浄化する血液浄化手段と、ダイアフラムによって内部に供給室および回収室が形成された透析液チャンバと、上記供給室に清浄水もしくは透析液を供給する給液通路と、供給室から血液浄化手段へと透析液を供給する透析液供給通路と、血液浄化手段から回収室へと使用済み透析液を回収する透析液回収通路と、当該透析液回収通路に設けられて透析液を送液する回収ポンプと、上記回収室から使用済み透析液を排出する排液通路とを備えた血液透析装置において、
上記透析液回収通路における上記回収ポンプの上流側に、液体中の気体を除去する除気槽が設けられるとともに、当該除気槽から気体を排出する排気通路が設けられ、
さらに、上記透析液回収通路における除気槽と回収ポンプとの間に、上記給液通路に接続されるとともに給液通路から上記透析液回収通路へと清浄水もしくは透析液を供給するバイパス通路が設けられ、
上記血液浄化手段の透析液流路に透析液を充満させるプライミング作業を行う際、
血液浄化手段から排出された気体が上記除気槽より上記排気通路へと排出され、一方上記給液通路から清浄水もしくは透析液が上記バイパス通路より透析液回収通路へと供給されることを特徴とする血液透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液透析装置に関し、詳しくはプライミング作業を行う際に血液浄化手段内の透析液流路に透析液を充満させる血液透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路および透析液が流れる透析液流路が形成されて血液を浄化する血液浄化手段と、ダイアフラムによって内部に供給室および回収室が形成された透析液チャンバと、上記供給室に清浄水もしくは透析液を供給する給液通路と、供給室から血液浄化手段へと透析液を供給する透析液供給通路と、血液浄化手段から回収室へと使用済み透析液を回収する透析液回収通路と、当該透析液回収通路に設けられて透析液を送液する回収ポンプと、上記回収室から使用済み透析液を排出する排液通路とを備えた血液透析装置が知られている(特許文献1)。
このような血液透析装置では透析治療を行う前に、透析治療時に透析液が流通する上記給液通路、透析液供給通路、透析液回収通路、排液通路といった透析液回路に透析液を充満させるプライミング作業を行う必要がある。
このプライミング作業では、予め透析液回路に透析液を充満させてから、上記透析液供給通路および透析液回収通路に空の血液浄化手段を接続し、当該血液浄化手段内の透析液流路に上記透析液を充満させることが行われている。
ここで、
図3は特許文献1と同様の構成を有する血液透析装置を示し、上記透析液回収通路15における上記回収ポンプP5の下流側には、液体から気体を除去する除気槽31が設けられている。また上記回収ポンプP5の上流側には、上記給液通路13に接続されるとともに給液通路13から上記透析液回収通路15にプライミング液(清浄水)を供給するバイパス通路33が設けられている。
このような構成により、プライミング作業において空の血液浄化手段2の透析液流路に透析液を充満させる際には、上記回収ポンプP5を作動させて透析液回収通路15の透析液を透析液チャンバ12の回収室12bに流入させることで、回収室12bの容積拡大に伴って供給室12aの容積を減少させ、供給室12aから透析液供給通路14を介して血液浄化手段2へと透析液を流入させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記供給室12aから供給された透析液が血液浄化手段2に流入すると、その代わりに血液浄化手段2からはそれまで収容されていた空気が透析液回収通路15へと排出されることとなる。
一方、上記バイパス通路33からは給液通路13からプライミング液が供給されているため、バイパス通路33の接続位置から下流側の区間では、血液浄化手段2から排出された気体とバイパス通路33から供給されたプライミング液とが合流し、気液混合状態で流通することとなる。
その後、回収ポンプP5を通過した気液混合状態のプライミング液は、上記除気槽31によって空気が除去されるが、除気槽31より排出されるプライミング液の流量は、除去された空気の容積分だけ減少してしまうため、その後透析液チャンバ12の回収室12bに流入するプライミング液の流量は減少したままとなってしまう。
その結果、回収室12bに流入したプライミング液が回収室12bの容積を拡大させる速度が低下してしまい、供給室12aより排出される透析液の流量が減少してしまうことから、血液浄化手段2を透析液によって充満させるまでの時間がかかることとなる。
このような問題に鑑み、本発明はより迅速にプライミング作業を行うことが可能な透析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる血液透析装置は、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路および透析液が流れる透析液流路が形成されて血液を浄化する血液浄化手段と、ダイアフラムによって内部に供給室および回収室が形成された透析液チャンバと、上記供給室に清浄水もしくは透析液を供給する給液通路と、供給室から血液浄化手段へと透析液を供給する透析液供給通路と、血液浄化手段から回収室へと使用済み透析液を回収する透析液回収通路と、当該透析液回収通路に設けられて透析液を送液する回収ポンプと、上記回収室から使用済み透析液を排出する排液通路とを備えた血液透析装置において、
上記透析液回収通路における上記回収ポンプの上流側に、液体中の気体を除去する除気槽が設けられるとともに、当該除気槽から気体を排出する排気通路が設けられ、さらに、上記透析液回収通路における除気槽と回収ポンプとの間に、上記給液通路に接続されるとともに給液通路から上記透析液回収通路へと清浄水もしくは透析液を供給するバイパス通路が設けられ、
血液浄化手段の透析液流路に透析液を充満させるプライミング作業が行われる際、血液浄化手段から排出された気体が上記除気槽より上記排気通路へと排出され、一方上記給液通路から清浄水もしくは透析液が上記バイパス通路より透析液回収通路へと供給されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記回収ポンプの上流側に除気槽が設けられ、さらに除気槽と回収ポンプとの間に上記バイパス通路が設けられたことで、血液浄化手段に透析液を充満させる際には、上記血液浄化手段から排出された空気を除気槽で除去した直後に、上記バイパス通路より清浄水もしくは透析液を補充することが可能となっている。
換言すると、脱気により透析液の流量が減少するものの、バイパス通路から清浄水もしくは透析液を補充することができるため、透析液チャンバの回収室には従来よりも大量の清浄水もしくは透析液を供給することが可能となり、その結果、供給室からの透析液の排出量が増大するため、迅速に血液浄化手段を透析液によって充満させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】血液透析装置のプライミング作業時の動作を説明する図
【
図3】従来の血液透析装置のプライミング作業時の動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1は血液透析装置1を示しており、血液透析を行う血液浄化手段としての透析器2と、透析器2に血液を流通させる血液回路3と、透析器2に透析液を流通させる透析液回路4とを備え、図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
本実施例の血液透析装置1はいわゆる個人用血液透析装置となっており、透析用水としての清浄水(RO水)に、塩化ナトリウムを主成分とするA原液と、炭酸水素ナトリウム水溶液からなるB原液とを所定の比率で混合させることで、新鮮な透析液を調製しながら治療を行うものとなっている。なお、本発明は予め調製された透析液を使用して治療を行ういわゆる透析監視装置にも適用することが可能となっている。
上記透析器2の内部には血液浄化膜からなる無数の中空糸が設けられており、図示しないが血液が流通する血液流路と透析液が流通する透析液流路とに区画されている。本実施例では、血液は血液流路の内部を図示左方から右方に流通し、透析液は透析液流路を図示右方から左方に流通するようになっている。
上記血液回路3についての詳細な説明は省略するが、患者から透析器2に血液を送る動脈通路3Aと、透析器2から患者に血液を返す静脈通路3Bとを有し、このうち上記動脈通路3Aには図示しないが血液ポンプが設けられている。
【0009】
そして、上記血液透析装置1によって透析治療を行うためには、上記透析器2、透析液回路4、血液回路3といった、血液や透析液が流通する部分に予めプライミング液としての透析液を充満させるプライミング作業を行う必要がある。
本実施例の血液透析装置1のプライミング作業は、最初に透析器2を接続しない状態で透析液回路4にプライミング液として透析液を充満させ、その後空の透析器2および血液回路3を透析液回路4に接続して、当該透析器2に透析液を充満させるようになっている。
以下に行う血液透析装置1の説明では、上記プライミング作業に関連する構成についての説明を行うものとし、直接的に関連しない構成についての説明を省略するものとする。
【0010】
上記透析液回路4は、ダイアフラムによって内部に供給室11a、12aおよび回収室11b、12bが形成された第1、第2透析液チャンバ11、12と、上記供給室11a、12aに清浄水を供給する給液通路13と、供給室11a、12aから透析器2へと透析液を供給する透析液供給通路14と、透析器2から回収室11b、12bへと使用済み透析液を回収する透析液回収通路15と、上記回収室11b、12bから使用済み透析液を排出する排液通路16とを備えている。
このうち上記給液通路13には、当該給液通路13を介して上記第1、第2透析液チャンバ11、12の供給室11a、12aにA原液を供給するためのA原液通路17と、B原液を供給するためのB原液通路18とが接続されている。
【0011】
上記給液通路13は、上流側の端部が清浄水を供給する図示しない給水源に接続され、また給液通路13の下流部分は2方向に分岐して上記第1、第2透析液チャンバ11、12の上記供給室11a、12aに接続されている。
そして、上記給液通路13における給水源に隣接した位置には第1開閉弁V1が設けられ、上記第1、第2透析液チャンバ11、12の供給室11a、12aへと分岐した通路には給液弁V2、V3がそれぞれ設けられている。
また上記給液通路13には、上記第1開閉弁V1の下流側に清浄水を送液する給液ポンプP1が設けられ、上記第1開閉弁V1と給液ポンプP1との間には、清浄水を加温するための熱交換器21のほか、温度センサやヒータ、清浄水を一時的に貯溜するバッファタンクが設けられている。
さらに上記給液ポンプP1の下流側には、送液される清浄水に含まれる空気を除去する脱気槽22が設けられ、当該脱気槽22には他端が上記排液通路16に接続された排気通路23が接続されている。
【0012】
上記A原液通路17およびB原液通路18は上記給液ポンプP1と上記第1、第2透析液チャンバ11、12との間となる位置で上記給液通路13に接続され、上記B原液通路18はA原液通路17よりも上流側に接続されている。
上記A原液通路17の上流側の端部は上記A原液を収容したA原液容器24に接続されており、またA原液供給弁V4およびA液ポンプP2が設けられている。
上記B原液通路18の上流側の端部は上記B原液を収容したB原液容器25に接続されており、またB原液供給弁V5およびB液ポンプP3が設けられている。
そして、給液通路13におけるB原液通路18とA原液通路17との間には、清浄水によって希釈されたB液の濃度を計測する濃度センサや温度センサが設けられている。
【0013】
上記透析液供給通路14の上流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ11、12の供給室11a、12aに接続され、下流側の端部は上記透析器2に接続されている。また上記分岐部分にはそれぞれ供給弁V6、V7が設けられ、上記透析器2との接続部近傍には第2開閉弁V8が設けられている。
上記透析液供給通路14の下流側の端部にはカプラ14aが設けられており、透析治療時には上記透析器2の透析液室に接続され、透析液回路4に透析液を充満させるプライミング作業時には上記透析液回収通路15の上流側の端部に設けられたカプラ15aに接続されるようになっている。
また透析液供給通路14には、透析液中のエンドトキシンなどを吸着するフィルタFや、透析液の濃度や温度を計測する濃度センサや温度センサが設けられ、さらに透析液供給通路14と上記透析液回収通路15との間にはバイパス通路28が配設されている。
上記バイパス通路28は、上記濃度センサや温度センサによって透析液供給通路14を流通する透析液に異常を発見した場合に、当該不良透析液を透析器2に供給しないで透析液回収通路15を介して排出するために用いられる。
【0014】
上記透析液供給通路14における上記第2開閉弁V8の上流側に隣接した位置には、上記血液回路3における上記動脈通路3Aとの間に補液通路29が設けられ、この補液通路29には透析液よりエンドトキシンを除去するためのフィルタおよび補液ポンプP4が設けられている。
透析治療時に上記補液ポンプP4を作動させると、上記透析液供給通路14を流通する透析液を上記動脈通路3Aへと補充液として供給することができ、これにより透析液を用いた補液を行うようになっている。
なお、補液通路29および補液の手順自体は従来公知であるためこれ以上の説明は省略するものとする。
【0015】
上記透析液回収通路15は、上流側の端部が上記透析器2に接続され、下流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ11、12の回収室11b、12bに接続され、上流側の端部近傍には第3開閉弁V9が設けられ、上記分岐部分には回収弁V10、V11が設けられている。
上記透析液回収通路15の上流側の端部にはカプラ15aが設けられており、透析治療時には上記透析器2に接続され、透析液回路4に透析液を充満させるプライミング作業時には、上記透析液供給通路14の下流側の端部に設けられたカプラ14aに接続されるようになっている。
また、上記透析液回収通路15には、透析液を透析器2から第1、第2透析液チャンバ11、12に向けて送液する回収ポンプP5が設けられており、当該回収ポンプP5の上流側には、透析液の濃度を測定する濃度センサS1、透析液の温度を測定する温度センサS2、流通する液体の液圧を測定する液圧センサS3が設けられている。
【0016】
さらに、透析液回収通路15における回収ポンプP5の下流側には、排液通路16との間に除水通路30が接続されており、当該除水通路30には除水ポンプP6が設けられている。
この除水通路30および除水ポンプP6は透析治療時に患者から除水を行う際に使用され、これ以上の詳細な説明については省略する。
【0017】
そして本実施例の血液透析装置1には、透析液回収通路15における上記回収ポンプP5よりも上流側に隣接した位置に、透析液回収通路15を流通する液体中の気体を除去する除気槽31と、当該除気槽31と上記排液通路16とを接続する排気通路32とが設けられ、さらに上記除気槽31と回収ポンプP5との間には、給液通路13から上記透析液回収通路15にプライミング液(清浄水もしくは透析液)を供給するバイパス通路33が設けられている。
上記除気槽31は従来公知であり、透析治療中には使用済み透析液が流入すると、当該使用済み透析液に含まれる気体を分離し、これを上記排気通路32を介して上記排液通路16より排出するために用いられる。
上記排気通路32には第4開閉弁V12が設けられており、また上記排液通路16との接続位置にはバッファタンク34が設けられている。
上記バイパス通路33は、一端が上記除気槽31と回収ポンプP5との間に接続され、他端が上記給液通路13における上記熱交換器21の下流側に隣接した位置に接続されている。
またバイパス通路33には、第5開閉弁V13および流通するプライミング液の流量を一定にする固定抵抗35が設けられている。
【0018】
上記排液通路16は、上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ11、12の回収室11b、12bに接続され、下流側の端部は透析治療施設に敷設された排液管に接続されている。そして上記分岐部分には排液弁V14、V15が設けられている。
また排液通路16の一部は上記給液通路13に設けられた熱交換器21に引き込まれており、排液通路16を流通する透析液と上記給液通路13を流通する清浄水との間で熱交換を行い、上記給液通路13の清浄水の加温を行うようになっている。
【0019】
上記構成を有する血液透析装置1の動作について説明する。ここでは最初に上記透析液回路4における透析液の送液動作について説明する。
まず、給液通路13に設けられた給液ポンプP1を作動させて給液通路13に清浄水を流通させ、上記A原液通路17およびB原液通路18では、それぞれA液ポンプP2およびB液ポンプP3を作動させて、A原液およびB原液をA原液通路17およびB原液通路18を介して給液通路13へと供給する。
そして、例えば第1透析液チャンバ11の供給室11aに隣接する給液弁V2を開放し、供給弁V6を閉鎖すると、清浄水とA液とB液とが第1透析液チャンバ11の供給室11aに流入し、当該供給室11aの内部で混合されて新鮮な透析液が調製される。
このとき、第1透析液チャンバ11の回収室11bに隣接する排液弁V14を開放し、回収弁V10を閉鎖すると、供給室11aに清浄水とA液とB液とが流入するのに伴い、ダイアフラムが変形して回収室11bの容積が減少するため、当該回収室11bに収容されていた使用済み透析液が排液通路16へと排出されることとなる。
【0020】
一方第2透析液チャンバ12では、供給室12aの給液弁V3を閉鎖するとともに供給弁V7を開放し、さらに回収室12bの回収弁V11を開放して排液弁V15を閉鎖することで、上記透析器2を通過した使用済み透析液が上記透析液回収通路15の回収ポンプP5によって上記回収室12b内に供給される。
すると、第2透析液チャンバ12の回収室12bの容積が拡大して供給室12aの容積が減少することから、当該供給室12aに収容されている新鮮な透析液が透析液供給通路14を介して透析器2へと供給されることとなる。
その後、第1、第2透析液チャンバ11、12の給液弁V2、V3、供給弁V6、V7、回収弁V10、V11、排液弁V14、V15を交互に開閉することで、透析液回路4において透析液を調製しながら流通させることができる。
【0021】
このようにして透析液回路4に透析液を流通させながら、透析治療中の所要のタイミングで上記補液通路29の補液ポンプP4を作動させると、透析液供給通路14の新鮮な透析液が補液通路29を介して血液回路3の動脈通路3Aに補充液として供給され、患者に対して補液を行うことができる。
これと同様、透析治療中の所要のタイミングで上記除水通路30の除水ポンプP6を作動させると、透析液回収通路15の使用済み透析液が除水通路30を介して排液通路16に排出されることにより、血液中から除水を行うことができる。
【0022】
次に、本実施例の血液透析装置1における透析治療前に行うプライミング作業での動作について説明する。上述したように、本実施例のプライミング作業では、最初に透析液回路4に透析器2を接続しない状態で、当該透析液回路4を透析液で充満させ、その後、透析液回路4に透析器2を接続して当該透析器2に透析液を充満させる作業を行うようになっている。
まず、透析器2を透析液回路4に接続しない状態でのプライミング作業では、上記透析液供給通路14の下流側の端部のカプラ14aと、透析液回収通路15の上流側の端部のカプラ15aとを連結しておく。
この状態で、透析液回路4を構成する開閉弁を開放し、その状態で清浄水を給液通路13を介して供給する。また、A液ポンプP2およびB液ポンプP3を作動させて、A原液およびB原液を第1、第2透析液チャンバ11、12の供給室11a、12aに供給することにより、調製された透析液が上記透析液供給通路14へと排出される。
その後、透析液はカプラ14a、15aを介して透析液回収通路15を流通し、第1、第2透析液チャンバ11、12の回収室11b、12bに流入した後、上記排液通路16より排出される。
その間、透析液回路4に設けられた開閉弁を開閉したり、A液ポンプP2、B液ポンプP3、補液ポンプP4、除水ポンプP6を作動させたりすることで、透析液回路4を構成する全ての通路を透析液によって充満させることができる。
【0023】
このようにして透析器2を接続していない状態での透析液回路4への透析液の充填が終了したら、
図2に示すように、作業者は透析液供給通路14のカプラ14aと透析液回収通路15のカプラ15aとを分離させ、それぞれ上記透析器2に接続する。
透析器2の透析液流路に透析液を充満させる際の動作は、上述した透析治療時において透析液回路4に透析液を流通させる際の動作と同じ動作となる。
つまり作業者が透析器2を接続した旨の操作を制御手段に行うと、制御手段は上記給液ポンプP1、A液ポンプP2、B液ポンプP3および回収ポンプP5を作動させて、透析液を調製するとともに透析液回収通路15に充満する透析液の送液を開始する。なお、補液ポンプP4、除水ポンプP6については作動させる必要はない。
まず、上記透析液回収通路15に充満している透析液を上記回収ポンプP5によって送液すると、透析液は例えば第2透析液チャンバ12の回収室12bに流入する。
これにより、第2透析液チャンバ12の供給室12aからは透析液が透析液供給通路14へと排出されることとなり、その後当該透析液は透析器2に流入することとなるが、透析器2が透析液によって充満されるまでの間、透析器2からはそれまで透析器2内に収容されていた空気が透析液回収通路15へと排出されることとなる。
【0024】
透析器2から排出された空気は、その後透析液回収通路15を流通しながら、上記濃度センサS1、温度センサS2、液圧センサS3を通過し、制御手段は上記濃度センサS1によって、当該濃度センサS1を通過した流体が透析液から空気に置き換わったことを検知する。なお、透析液から空気に置き換わったことを、温度センサS2や液圧センサS3によって検知してもよい。
制御手段には、上記透析液回収通路15に排出された空気が上記濃度センサS1を通過してから上記除気槽31に到達するまでの時間が登録されており、制御手段は上記濃度センサS1によって気体が検知されると、登録された時間の経過後、上記バイパス通路33に設けた第5開閉弁V13を開放する。
【0025】
すると、上記濃度センサS1を通過した空気はその後上記除気槽31において回収され、回収された空気は排気通路32を介して排液通路16より排出される。
このとき、透析液回収通路15に排出された流体のほとんどが透析器2より排出された空気となるため、除気槽31に流入した流体のほとんどが気体として排気通路32より排出され、除気槽31の下流側に排出される透析液はほとんどないこととなる。
一方、除気槽31の下流側にはバイパス通路33が設けられているため、給液通路13からのプライミング液(清浄水)が上記バイパス通路33を介して透析液回収通路15へと供給されるようになっている。
このとき、バイパス通路33に設けた固定抵抗35を、除気槽31から排出される気体の流量に合わせて設定することで、除気槽31で損失した気体分のプライミング液が補充されることとなる。
これにより、第2透析液チャンバ12の回収室12bに流入した透析液およびプライミング液は当該回収室12bの容積を速やかに増大させることができ、代わりに供給室12aからは透析器2へと速やかに透析液を供給することができるため、迅速な透析器2のプライミングを行うことができる。
そして、透析器2よりすべての空気が排出されて透析液が充満すると、透析器2からはあふれた透析液が透析液回収通路15へと排出され、当該透析液が上記濃度センサS1を通過すると、制御手段は透析器2に透析液が充満したことを認識し、濃度センサS1以降の透析液回収通路15および除気槽31が透析液で充填される所定時間の経過後にプライミング作業を終了させる。
【0026】
図3は、特許文献1に開示されるような従来の血液透析装置1において、透析器2のプライミング作業を行う場合の図を示している。なお、本実施例の構成と対応する構成については同じ符号を用いて説明する。
本実施例の血液透析装置1と同様、透析液回路4の透析液供給通路14および透析液回収通路15に空の透析器2を接続し、この状態で回収ポンプP5を作動させると、透析液回収通路15の透析液が第2透析液チャンバ12の回収室12bに流入し、供給室12aの透析液は透析液供給通路14へと供給される。
そして透析液供給通路14に排出された透析液が透析器2に流入すると、その代わりに透析器2から透析液回収通路15へと空気が排出されることとなる。
一方、透析液回収通路15では、上記給液通路13からバイパス通路33を介して清浄水が供給されているが、上記透析液回収通路15を流通した空気は、透析液回収通路15におけるバイパス通路33の接続位置において流入したプライミング液と混合され、当該接続位置から下流側の区間ではプライミング液が気液混合状態で流通することとなる。
【0027】
回収ポンプP5の下流側の位置で気液混合状態のプライミング液から除気槽31で空気を除去すると、除気槽31の下流側に排出されるプライミング液の流量は、当該除去された空気の分だけ減少することとなる。
その結果、除気槽31より下流側に排出されたプライミング液が第2透析液チャンバ12の回収室12bに流入しても、流量の減少分だけ回収室12bの容積を拡大させる速度が低下してしまい、供給室12aより排出される透析液の流量が減少してしまうこととなる。
これは透析器2への透析液の流入量が減少してしまうことを意味し、透析器2が透析液によって充満されるまでの時間がかかる原因となっていた。
【符号の説明】
【0028】
1 血液透析装置 2 透析器(血液浄化手段)
4 透析液回路 11、12 第1、第2透析液チャンバ
11a、12a 供給室 11b、12b 回収室
13 給液通路 14 透析液供給通路
15 透析液回収通路 16 排液通路
31 除気槽 32 排気通路
33 バイパス通路 P1 給液ポンプ
P5 回収ポンプ