(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】鋼板の表面疵除去装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/154 20060101AFI20230512BHJP
B23C 3/13 20060101ALI20230512BHJP
B21B 15/00 20060101ALI20230512BHJP
B21B 45/00 20060101ALI20230512BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20230512BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B23Q3/154 B
B23C3/13
B21B15/00 Z
B21B45/00 Z
B21B38/00 F
B21C51/00 P
(21)【出願番号】P 2019137810
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中崎 昭仁
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-288856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/154;
B23C 3/13;
B21B 15/00,38/00,45/00;
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の一方の面において、鋼板の表面に沿った面方向に所定の空間を設けて配置される吸着用金属片と、
鋼板の他方の面に配置され、鋼板を間に介在させた状態で電磁力により前記吸着用金属片を吸着する電磁チャックと、
前記電磁チャックが前記吸着用金属片を吸着した状態で前記所定の空間に挿入され、鋼板の前記一方の面の表面疵を切削除去する切削工具と、
を備え、
前記吸着用金属片は、前記所定の空間に相当する開口が設けられたリング形状を成し、
前記電磁チャックは、前記吸着用金属片と対向配置されて電磁力を発生させる電磁力発生部と、前記開口の位置に対向配置されて電磁力を発生させない電磁力非発生部と、を有し、
前記切削工具は、前記開口に挿入されて前記一方の面の表面疵を切削除去することを特徴とする、鋼板の表面疵除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の表面疵除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、通板する熱延鋼帯の表面欠陥部を検出して、この表面欠陥部を欠陥除去手段により除去し、その後に冷間圧延等を施す鋼帯の製造方法において、欠陥除去手段として鋼帯パスラインと略平行な平面内に回転軸心を有するロータリー切削工具を用い、このロータリー切削工具で鋼帯表面を切削して表面欠陥部を除去する技術が記載されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、鋼板上に疵検査装置を配置して疵を検知し、切削工具、超音波切削工具、あるいはフライス加工工具により疵を切削加工し、圧延機により圧延して加工疵を消去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-279898号公報
【文献】特開2001-191206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、ブライドロール上に欠陥除去装置を設置して、鋼板を通板しながら切削するため、欠陥除去装置を既設のラインへ導入するためには、新たにブライドロールを設ける必要があり、導入には困難が伴う。また、切削により切粉が切削工具に巻き込まれると、更なる疵が発生する問題も生じる。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術は、熱延後の鋼板に生じている、いわゆる反り、波、耳のび、又は中のびといった湾曲を抑えることができない問題がある。このため、鋼板が湾曲した状態で切削を行うと、鋼板の表面を精度良く切削することができないという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、既設のラインを変更することなく導入することができ、鋼板表面の疵を高精度に除去することが可能な、新規かつ改良された鋼板の表面疵除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼板の一方の面において、鋼板の表面に沿った面方向に所定の空間を設けて配置される吸着用金属片と、鋼板の他方の面に配置され、鋼板を間に介在させた状態で電磁力により前記吸着用金属片を吸着する電磁チャックと、前記電磁チャックが前記吸着用金属片を吸着した状態で前記所定の空間に挿入され、鋼板の前記一方の面の表面疵を切削除去する切削工具と、を備える鋼板の表面疵除去装置が提供される。
【0009】
前記電磁チャックは、前記吸着用金属片と対向配置されて電磁力を発生させる電磁力発生部と、前記所定の空間に対向配置されて電磁力を発生させない電磁力非発生部と、を有し、前記切削工具は、前記電磁力非発生部に対応する領域において、鋼板の前記一方の面の表面疵を切削除去するものであっても良い。
【0010】
また、前記吸着用金属片は、前記所定の空間に相当する開口が設けられたリング形状を成し、前記電磁力非発生部は前記開口の位置に対向配置され、前記切削工具は前記開口に挿入されて前記一方の面の表面疵を切削除去するものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、既設のラインを変更することなく導入することができ、鋼板表面の疵を高精度に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋼板ストリップ表面疵の除去装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る鋼板ストリップ表面疵の除去装置の構成を説明するための模式図である。
【
図3】熱延から冷延に至る処理工程を示す模式図である。
【
図4】吸着用金属片が電磁チャックに吸着されて、鋼板がチャッキングされた様子を示す模式図である。
【
図5】電磁チャックにより発生する磁界を示す模式図である。
【
図6】吸着用金属片を上方から見た状態を示す模式図である。
【
図7】
図5に示す状態を鋼板の通板方向と直交する方向から見た状態を示す模式図である。
【
図8】電磁チャック及び切削ユニットを鋼板に近接させて位置決めするための機構を示す模式図である。
【
図9】
図8に示す構成を鋼板の通板方向と直交する方向から見た状態を示す模式図である。
【
図10】電磁チャックと切削ユニットの組を2つ設けた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る鋼板の表面疵除去装置100の構成について説明する。表面疵除去装置100は、熱延後の鋼板200(鋼板ストリップ、鋼帯)の表面に生じた表面疵を、鋼板200の反り、波、耳のび、又は中のびを矯正しながら切削により除去するものである。なお、本実施形態は、鋼板200に限らず、各種板材の表面疵の除去に適用することができる。
図1は、鋼板200の通板方向(搬送方向)から表面疵除去装置100を見た状態を示す模式図である。また、
図2は、鋼板200の通板方向と直交する方向(板幅方向、又は通板方向の側面の方向)から鋼板ストリップ表面疵の表面疵除去装置100を見た状態を示す模式図である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、表面疵除去装置100は、電磁チャック102、吸着用金属片104、切削工具106、スピンドル・モータ108、切削深さ方向直動ガイド110、切削深さ方向送り機構112、切削深さ方向駆動モータ114、切削送り方向直動ガイド116、切削送り方向送り機構118、切粉回収フード120、集塵機122、切粉回収パイプ123、切削送り方向直動ガイド係合部124、切削送り方向駆動モータ126、切削送り方向駆動モータ固定用アーム130、フレーム132、モータ台134を有して構成されている。
【0016】
図1に示すように、熱延後の鋼板200の表面には、通板方向に沿って線状の疵202が発生している場合がある。例えば、熱延加工の前に何らかの要因で点状の疵が鋼板200に生じていた場合、熱延加工によって点状の疵は通板方向に延在する線状の疵202となる。なお、
図1では図示の便宜上、鋼板200の表面の凸状の疵202を示しているが、鋼板200の表面よりも凹んだ凹状の疵202が形成される場合もある。
【0017】
図3は、熱延から冷延に至る処理工程を示す模式図である。熱延加工後、鋼板200を酸洗し、冷延加工を行う。鋼板200の表面に疵202が生じていた場合は、酸洗ライン又は酸洗後の精製ラインにおいて、表面疵除去装置100によって疵202を除去する。そして、疵202の除去後に冷延加工を行うことで、疵202を確実に消失させることが可能となる。
【0018】
鋼板200の厚さは、一般的に2mm~8mm程度である。一方、鋼板200に生じる疵202の深さは、厚さの1/10~1/20程度であり、例えば0.1mm~0.8mm程度である。一方、熱延後の鋼板200には、
図1に示すように、反り、波、耳のび、又は中のびと呼ばれる湾曲が、板厚方向に数センチメートルの幅で生じている場合がある。この場合、湾曲量に比べて疵202の深さが非常に小さいため、通常の切削工具を用いた切削では、疵202を精度良く除去することは困難である。
【0019】
このため、本実施形態の表面疵除去装置100は、鋼板200の一方の面側に配置される電磁チャック102と、鋼板200の他方の面側に配置される吸着用金属片104を備えている。吸着用金属片104は、鉄などの強磁性体の金属から構成されている。電磁チャック102と吸着用金属片104で鋼板200を挟み、電磁チャック102が発生させた電磁力で吸着用金属片104を吸着することで、鋼板200をチャッキングする。この際、電磁力により数トン~数十トン程度の吸着力を発生させる。これにより、鋼板200の湾曲を矯正して平坦にし、その状態で鋼板200の通板方向に生じた線状(直線形状)の疵202を切削加工により除去する。従って、鋼板200の表面が平坦化された状態で疵202を精度良く切削することができ、切削痕(カッターマーク)を極力残さない高精度な仕上げ表面を得ることができる。また、エンドミル等の切削工具106を用いることで、非常に短時間で疵除去の加工を行うことができる。
【0020】
図1及び
図2は、電磁チャック102と吸着用金属片104によって鋼板200をチャッキングする前の状態を示している。鋼板200をチャッキングする際には、
図1及び
図2に示す状態から、電磁チャック102を上方向に移動し、吸着用金属片104を下方向へ移動する。これにより、電磁チャック102と吸着用金属片104が鋼板200を間に介在させて近接する。この状態で、電磁チャック102により磁界を発生させると、
図4に示すように、吸着用金属片104が電磁チャック102に吸着されて、鋼板200がチャッキングされる。
【0021】
図5は、電磁チャック102により発生する磁界を示す模式図である。
図5に示すように、電磁チャック102は、電磁力発生部102aと電磁力非発生部102bとを有している。電磁力発生部102aは、切削工具106の両側に配置されている。吸着用金属片104は、電力磁発生部102aの位置に対応して、切削工具106の両側に配置されている。そして、切削工具106の直下には、電磁力非発生部102bが配置されている。
【0022】
鋼板200をチャッキングする際には、電磁力発生部102aのN極からS極へ磁界を発生させ、電磁力発生部102aと対向する位置にある吸着用金属片104を吸着する。一方、電磁力非発生部102bからは電磁力は発生しない。従って、切削工具106による鋼板200の切削部位に電磁力が及ぶことがなく、切削による切粉が電磁力によって鋼板200に吸着されることを抑止できる。これにより、切粉が切削工具106による切削部位に混入して新たな疵が生じてしまうことを確実に抑止できる。
【0023】
図6は、吸着用金属片104を上方から見た状態を示す模式図である。
図6に示すように、吸着用金属片104は、矩形のリング状とされ、切削工具106が移動する開口104aが設けられている。また、吸着用金属片104の上面には、切削送り方向直動ガイド116が設けられている。
【0024】
図6に示す形状の吸着用金属片104を電磁チャック102の電磁力によって吸着する際には、上述したように数トン~数十トンの荷重によって吸着を行う。これにより、鋼板200に生じている湾曲を確実に矯正して平坦化することができる。特に、切削工具106の周囲にリング状に配置された吸着用金属片104を吸着することで、開口104a内の鋼板200を確実に平坦化することができる。また、切削工具106の近くで吸着用金属片104の吸着を行うことで、矯正されて平坦となった鋼板200の表面を精度良く切削することが可能となる。
【0025】
前述した特許文献2に記載されているような、ロールに鋼板を巻き付けて疵を除去する方法は、ロールの設置場所が限定されてしまい、ロールの駆動、ロール交換の作業の妨げとなる。更に、ロールを導入するために既設された鋼板の通板パスを変更しようとすると、大掛かりな改造が必要となる。また、油圧や機械的な力により鋼板200の湾曲を矯正しようとすると、反力を鋼板板幅の外部で支持するための門形や片持ち梁構造が必要となり、装置が大型化してしまう。一方、本実施形態の表面疵除去装置100は、鋼板200の両側に対向配置された電磁チャック102と吸着用金属片104によって電磁力を用いて鋼板200をチャッキングするため、小型化が可能であり、既設のラインに導入を容易に行うことができ、鋼板200の湾曲を確実に矯正することができるため、疵202を精度良く除去することができる。
【0026】
また、吸着用金属片104の上に切削工具106と、切削工具106を駆動するためのスピンドル・モータ108、切削深さ方向直動ガイド110、切削深さ方向送り機構112、切削深さ方向駆動モータ114、切削送り方向直動ガイド116、及び切削送り方向送り機構118を配置しているため、工具支持部の片持ち量が小さくなる。また、切削工具106は、鋼板200上の吸着用金属片104に沿って移動する。従って、工具支持部の撓みを最小限に抑えることができ、高精度な加工が可能である。
【0027】
更には、砥石等を用いた研削ではなく、エンドミル等の切削工具106を用いた切削を行うことにより、疵202の除去を高速且つ短時間で行うことができる。
【0028】
本実施形態において、切削ユニット150は、
図1において鋼板200よりも上に位置する構成要素によって構成されている。切削ユニット150は、吸着用金属片104を基部として、切削工具106を切削深さ方向と切削送り方向に駆動する。このため、切削ユニット150のフレーム132に固定された切削送り方向直動ガイド係合部124が、吸着用金属片104の上面に固定された切削送り方向直動ガイド116に沿って移動可能とされている。
【0029】
吸着用金属片104には、切削送り方向駆動モータ固定用アーム130が固定され、切削送り方向駆動モータ固定用アーム130には切削送り方向駆動モータ126及び切削送り方向送り機構118が固定されている。切削送り方向送り機構118は、雄ネジのスクリューから構成され、フレーム132に設けられた雌ネジ(不図示)と係合している。切削送り方向送り機構118は、切削送り方向駆動モータ126によって回転駆動され、切削送り方向送り機構128が回転駆動されると、切削送り方向送り機構128に係合したフレーム132が、通板方向(
図6に示す矢印A2方向)に移動するように構成されている。
【0030】
フレーム132には、切削深さ方向直動ガイド110、切削深さ方向送り機構112、切削深さ方向駆動モータ114が装着されている。スピンドル・モータ108は、モータ台134に固定されている。切削深さ方向直動ガイド110は、モータ台134に設けられた切削深さ方向直動ガイド係合部と係合し、モータ台134の垂直方向(切削深さ方向)の移動をガイドする。切削深さ方向送り機構112は、雄ネジのスクリューから構成され、モータ台134に設けられた雌ネジ(不図示)と係合している。切削深さ方向送り機構112は、切削深さ方向駆動モータ114によって回転駆動され、切削深さ方向送り機構112が回転駆動されると、切削深さ方向送り機構112に係合したモータ台134が、切削深さ方向(
図4に示す矢印A1方向)に移動するように構成されている。
【0031】
図7は、
図5に示す状態を鋼板200の通板方向と直交する方向から見た状態を示す模式図である。鋼板200をチャッキングした状態で、スピンドル・モータ108を駆動し、切削深さ方向駆動モータ114を駆動すると、スピンドル・モータ108に装着された切削工具106が疵202の位置まで下降し、疵202が切削されて除去される。また、スピンドル・モータ108を駆動しながら、切削送り方向駆動モータ126を駆動すると、フレーム132が、切削送り方向直動ガイド116に沿って矢印A2方向(通板方向)へ移動する。上述したように疵202は通板方向に線状に生じるため、スピンドル・モータ108を駆動しながら、切削送り方向駆動モータ126を駆動することで、切削工具106を通板方向へ移動しながら線状の疵202を除去することができる。
【0032】
図4及び
図7に示すように、切粉回収フード120は、切削工具106を覆うように設けられている。また、切粉回収フード120は、切粉回収パイプ123を介して集塵機122と接続されている。
【0033】
切削工具106によって鋼板200の表面の疵202を切削すると、切粉が発生する。切削工具106によって切削している箇所に切粉が入ると、新たに疵を発生させてしまう。このため、切削中は集塵機122を駆動して負圧を発生させ、切粉回収パイプ123を介して切粉回収フード120へ負圧を導入し、切粉を吸い取る。この際、
図5で説明したように、切削工具106の直下は電磁力非発生部102bとされているため、切粉が磁力を受けることはない。従って、電磁力によって切削箇所に切粉が吸着されてしまうことがなく、集塵機122の駆動による負圧によって、切粉を確実に除去することができる。これにより、切粉の残留、巻き込みを確実に抑止することができ、切粉による新たな疵の発生を確実に抑止することが可能となる。
【0034】
図8は、
図1に示す状態から、電磁チャック102及び切削ユニット150を鋼板200に近接させて位置決めするための機構を示す模式図であって、鋼板200の通板方向から表面疵除去装置100を見た状態を示す模式図である。また、
図9は、
図8に示す構成を鋼板200の通板方向と直交する方向から見た状態を示す模式図である。
【0035】
図8及び
図9に示すように、表面疵除去装置100は、切削ユニット150の鋼板板幅方向の位置決めを行う位置決め機構160と、切削ユニット150の垂直方向の位置決めを行う位置決め機構162と、を有して構成されている。
【0036】
図9に示すように、梁170には、鋼板幅方向へ切削ユニット150を移動可能に支持するガイド172が設けられている。垂直方向の位置決めを行う位置決め機構162は、フレーム173に固定されている。フレーム173には、ガイド172と係合する係合部174が設けられている。また、切削ユニット150は、吸着用金属片104がフレーム176に固定されることによってフレーム176に固定されている。そして、フレーム173が係合部174とともにガイド172に沿って移動することで、位置決め機構162によって吊り下げられたフレーム176及び切削ユニット150が鋼板200の幅方向へ移動するように構成されている。
【0037】
位置決め機構160は、梁170に固定され、駆動モータ160aと送り機構160bを有している。送り機構160bは、雄ネジのスクリューから構成され、フレーム173に設けられた雌ネジ(不図示)と係合している。送り機構160bは、駆動モータ160aによって回転駆動され、送り機構160bが回転駆動されると、送り機構160bに係合したフレーム173が、鋼板200の幅方向(
図8に示す矢印A3方向)に移動する。
【0038】
位置決め機構162は、空圧シリンダ又は油圧シリンダを有している。位置決め機構162が駆動されると、フレーム173に係合したフレーム176及びフレーム176に固定された切削ユニット150が、垂直方向(
図8に示す矢印A4方向)に移動する。
【0039】
また、表面疵除去装置100は、電磁チャック102の鋼板幅方向の位置決めを行う位置決め機構164と、電磁チャック102の垂直方向の位置決めを行う位置決め機構166と、を有して構成されている。位置決め機構164は、台座180上に固定されている。
図9に示すように、台座180には、鋼板幅方向へ電磁チャック102を移動可能に支持するガイド182が設けられている。また、電磁チャック102はフレーム186に固定され、フレーム186にはガイド182と係合する係合部184が設けられている。そして、フレーム186が係合部184とともにガイド182に沿って移動することで、電磁チャック102が鋼板200の幅方向へ移動するように構成されている。
【0040】
位置決め機構164は、台座180に固定され、駆動モータ164aと送り機構164bを有している。送り機構164bは、雄ネジのスクリューから構成され、フレーム186に設けられた雌ネジ(不図示)と係合している。送り機構164bは、駆動モータ164aによって回転駆動され、送り機構164bが回転駆動されると、送り機構164bに係合したフレーム186が、鋼板200の幅方向(
図8に示す矢印A3方向)に移動する。
【0041】
位置決め機構166は、空圧シリンダ又は油圧シリンダを有している。位置決め機構166が駆動されると、フレーム186に係合した電磁チャック102が、垂直方向(
図8に示す矢印A4方向)に移動する。
【0042】
鋼板200に疵202が発見されると、切削ユニット150を鋼板幅方向へ移動して、切削工具106を疵202の位置へ移動する。この際、位置決め機構160の駆動モータ160aの駆動により送り機構160bを駆動することで、切削ユニット150を疵202の位置へ移動させることができる。
【0043】
また、鋼板に疵202が発見されると、電磁チャック102を鋼板幅方向へ移動して、電磁チャック102の電磁力発生部102aの位置と切削ユニット150の吸着用金属片104の位置とを対応させる。すなわち、切削工具106の位置に電磁チャック102の電磁力非発生部102bが位置するように電磁チャック102を移動させる。この際、位置決め機構164の駆動モータ164aの駆動により送り機構164bを駆動することで、電磁チャック102を疵202の位置へ移動させることができる。
【0044】
その後、切削ユニット150の垂直方向の位置決めを行う位置決め機構162を駆動して、吸着用金属104を鋼板200の上面に近接させる。具体的には、位置決め機構162の空圧シリンダ又は油圧シリンダによって、切削ユニット150を下方向に移動して吸着用金属片104を鋼板200の上面に所定の圧力を発生させながら近接させる。その際、位置決め機構162の空圧シリンダ又は油圧シリンダの発生する力は、鋼板200の湾曲を矯正する必要はなく、切削ユニット150を昇降できる程度の大きさでよい。
【0045】
また、電磁チャック102の垂直方向の位置決めを行う位置決め機構166を駆動して、電磁チャック102を鋼板200の下面に近接させる。具体的には、位置決め機構166の空圧シリンダ又は油圧シリンダによって電磁チャック102を上方向に移動して電磁チャック102を鋼板200の下面に近接させる。
【0046】
その後、
図5に示したように、電磁チャック102の電磁力発生部102aにより磁力を発生させることで、電磁チャック102に吸着用金属片104が吸着され、鋼板200が電磁チャック102と電磁力発生部102aの間にチャッキングされる。
【0047】
また、
図10は、電磁チャック102と切削ユニット150の組を2つ設けた例を示す模式図である。ここで、
図10中右側に示す電磁チャック102と切削ユニット150の組は、
図1と同様に、切削ユニット150が鋼板200の上部に配置され、電磁チャック102が鋼板200の下部に配置されている。一方、
図10中の左側に示す電磁チャック102と切削ユニット150の組は、電磁チャック102が鋼板200の上部に配置され、切削ユニット150が鋼板200の下部に配置されている。
【0048】
図10に示す構成によれば、鋼板200の上部に配置された切削ユニット150によって鋼板200の上面に発生した疵202を除去できるとともに、鋼板200の下部に配置された切削ユニット150によって鋼板200の下面に発生した疵202を除去できる。従って、鋼板200の表裏面に発生した疵200を確実に除去することができる。
【0049】
図10に示す構成において、電磁チャック102及び切削ユニット150を鋼板200に近接させる位置決め機構は、
図8及び
図9と同様に構成されている。鋼板200の上側では、フレーム176に対して右側の切削ユニット150と左側の電磁チャック102が共に固定されている。従って、位置決め機構160及び位置決め機構162によって、フレーム176に固定された切削ユニット150と電磁チャック102を同時に駆動することができる。
【0050】
また、鋼板200の下側では、フレーム190に対して右側の電磁チャック102と左側の切削ユニット150が共に固定されている。
図8及び
図9に示す構成では、送り機構166bが電磁チャック102に設けられた雌ネジ(不図示)と係合していたが、
図10に示す構成では、送り機構166bがフレーム190に設けられた雌ネジ(不図示)と係合している。従って、位置決め機構164及び位置決め機構166によって、フレーム190に固定された切削ユニット150と電磁チャック102を同時に駆動することができる。
【0051】
以上説明したように本実施形態によれば、電磁チャック102と吸着用金属片104で鋼板200を挟み、電磁チャック102が発生させた電磁力で吸着用金属片104を吸着することで、鋼板200のいわゆる反り、波、耳のび、又は中のびと呼ばれる湾曲を矯正して平坦にすることができる。そして、この状態で鋼板200の通板方向に生じた線状(直線形状)の疵202を切削加工により除去することで、切削痕を極力残さない高精度な仕上げ表面を得ることができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
100 表面疵除去装置
102 電磁チャック
104 吸着用金属片
104a 開口
106 切削工具
114 切削深さ方向駆動モータ
126 切削送り方向駆動モータ
150 切削ユニット
160,162,164,166 位置決め機構
176,190 フレーム
200 鋼板