(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ロータリー成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 49/70 20060101AFI20230512BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20230512BHJP
B29C 49/36 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B29C49/70
B29C49/42
B29C49/36
(21)【出願番号】P 2019158012
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】河田 勝幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-047619(JP,U)
【文献】特開2016-187937(JP,A)
【文献】特開平11-333915(JP,A)
【文献】特開2017-177592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/70
B29C 49/42
B29C 49/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2金型と、押上部材と、駆動機構とを備え、
第2金型は、第1金型に対して開閉可能に構成され、
前記押上部材は、第1金型に設けられ、且つ、押上部
と、接触部と、軸支部とを有し、
前記押上部は、第1位置から第2位置にかけて移動自在に構成され、且つ、前記押上部が、第1位置から第2位置へ移動することで、第1金型上の成形体が押し上げられ、
第2位置は、第1位置よりも第1金型から離間しており、
前記駆動機構は、係合部材と、駆動部とを有し、
前記係合部材は、第1及び第2位置において前記押上部材に係合しており、
前記押上部は、前記押上部材の一方側に設けられ、
前記接触部は、前記係合部材とは連結しておらず、且つ、前記係合部材に接触可能に設けられ、且つ、前記押上部材の他方側に設けられ、
前記軸支部は、前記押上部と前記接触部との間に設けられ、
前記駆動部は
、前記係合部材を
直線方向に移動させるように構成され、
前記係合部材が前記直線方向に移動することに合わせて前記接触部が前記係合部材とともに移動し、前記押上部が第1位置から第2位置にかけて移動する、ロータリー成形機。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリー成形機であって、
前記軸支部は
、第1金型に軸支され
る、ロータリー成形機。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のロータリー成形機であって、
前記駆動部は、エアシリンダと、ピストンとを有し、
前記ピストンは、前記エアシリンダに取り付けられ、且つ、前記係合部材に連結している、ロータリー成形機。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のロータリー成形機であって、
エアー供給部を更に備え、
前記エアー供給部は、前記成形体を構成するパリソン内に空気を供給可能に構成され、
前記押上部は、前記エアー供給部に対向するように配置され、且つ、前記押上部の先端部は、二股に分岐するように構成されている、ロータリー成形機。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のロータリー成形機であって、
ベース部を更に備え、
前記ベース部は、軸回転可能に構成され、
第1金型は、前記ベース部に固定されている、ロータリー成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のロータリー成形機では、一対の金型を公転させながら開閉することによって、一対の金型の間へのパリソンの供給、パリソンの成形、及び成形体の取り出しを行っている。また、特許文献1のロータリー成形機は押上部材及びガイド部材を備えている。なお、押上部材は軸回転することで成形体を金型から取り外す機能を有し、金型に回転自在に取り付けられている。また、ガイド部材は、押上部材を回転させる機能を有し、ロータリー成形機に付設されている。そして、金型が公転する過程において押上部材がガイド部材に接触する。これにより、押上部材がガイド部材に回転させられて成形体が金型から押し上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、押上部材がガイド部材と接触しているときは、押上部材は、ガイド部材の表面に沿いながら、徐々に回転する。一方、押上部材がガイド部材を通過して押上部材とガイド部材とが非接触状態となっているときは、押上部材が自由に回転可能である。このため、特許文献1のロータリー成形機では、成形体の成形の前段階において押上部材がぶらついて押上部材が金型上のパリソンを移動させてしまい、パリソンの位置が所望の位置からずれ、成形体が所望の形状に成形されなくなる、場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より確実に所望の形状の成形体を成形することができるロータリー成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2金型と、押上部材と、駆動機構とを備え、第2金型は、第1金型に対して開閉可能に構成され、前記押上部材は、第1金型に設けられ、且つ、押上部を有し、前記押上部は、第1位置から第2位置にかけて移動自在に構成され、且つ、前記押上部が、第1位置から第2位置へ移動することで、第1金型上の成形体が押し上げられ、第2位置は、第1位置よりも第1金型から離間しており、前記駆動機構は、係合部材と、駆動部とを有し、前記係合部材は、第1及び第2位置において前記押上部材に係合しており、前記駆動部は、前記押上部が第1位置から第2位置にかけて移動可能するように、前記係合部材を駆動する、ロータリー成形機が提供される。
【0007】
本発明では、係合部材が第1及び第2位置の両位置において押上部材と係合しているので、第1及び第2位置のいずれにおいても、押上部材がぶらつくことを抑制することができる。つまり、本発明では、成形体の成形の前段階における押上部材のぶらつきを抑制し、より確実に所望の形状の成形体を成形することが可能になる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記押上部材は、接触部と、軸支部とを更に有し、前記押上部は、前記押上部材の一方側に設けられ、前記接触部は、前記押上部材の他方側に設けられ、前記軸支部は、前記押上部と前記接触部との間に設けられ、且つ、第1金型に軸支され、前記駆動部は、前記係合部材を直線方向に移動させる、ロータリー成形機が提供される。
好ましくは、前記駆動部は、エアシリンダと、ピストンとを有し、前記ピストンは、前記エアシリンダに取り付けられ、且つ、前記係合部材に連結している、ロータリー成形機が提供される。
好ましくは、エアー供給部を更に備え、前記エアー供給部は、前記成形体を構成するパリソン内に空気を供給可能に構成され、前記押上部は、前記エアー供給部に対向するように配置され、且つ、前記押上部の先端部は、二股に分岐するように構成されている、ロータリー成形機が提供される。
好ましくは、ベース部を更に備え、前記ベース部は、軸回転可能に構成され、第1金型は、前記ベース部に固定されている、ロータリー成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るロータリー成形機1の斜視図である。
図1では、説明の便宜上、板状部材12Cの一部(90度の範囲)を切断した状態を示している。
【
図2】
図2は、
図1に示すロータリー成形機1(ベース部2、金型ユニット3及び押出ヘッド4)、パリソン8及び成形体9を示す正面図である。
【
図3】
図3は、金型ユニット3が全開となっている状態を示している。
図3に示す状態は、金型ユニット3は
図12に示す位置P4から位置P1にあるときの状態であり、押上機構7は、押下状態である。
【
図4】
図4は、
図3とは異なる方向から見た金型ユニット3の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す金型ユニット3が全閉となっている状態を示している。
図5に示す状態は、金型ユニット3は
図12に示す位置P2から位置P3にあるときの状態である。
【
図6】
図6は、
図3に示す金型ユニット3の押上機構7が押上状態となっている様子を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6とは異なる方向から見た金型ユニット3の斜視図である。
【
図11】
図11は、カム軸3hの円筒部3h1がカム軌道部材5の環状溝5b内に配置されている状態の斜視図である。
【
図12】
図12は、15個の金型ユニット3のカム軸3hがカム軌道部材5の環状溝5b内に配置されている状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.ロータリー成形機1の構成及び動作
図1に示すように、実施形態のロータリー成形機1は、ベース部2と、複数の金型ユニット3と、押出ヘッド4(
図2参照)と、カム軌道部材5と、動力機構10と、シャフト11と、スイッチ機構12とを備えている。本実施形態では、15の金型ユニット3がベース部2の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0012】
1-2.ベース部2
ベース部2はシャフト11と連結しており、ベース部2はシャフト11の回転に伴って軸回転する。
図1において、ベース部2の回転方向が矢印AR1で示されている。ベース部2の周面には、複数(実施形態では15)の金型ユニット3が取り付けられている。ベース部2が回転することで、各金型ユニット3が公転軸Cを中心に公転する。ベース部2は、カム軌道部材5とスイッチ機構12との間に配置されている。
【0013】
1-3.金型ユニット3
図3及び
図4に示すように、各金型ユニット3は、支柱3a(
図1及び
図2参照)と、第1金型(固定型)3bと、第2金型(可動型)3cと、ヒンジ部3dと、ピニオンギア3eと、ラックギア3fと、リニアガイド3ftと、支持壁3gと、カム軸3hと、エアー供給部6と、押上機構7とを備えている。
【0014】
1-3-1.支柱3a及び支持壁3g
図1及び
図2に示すように、支柱3aは、ベース部2に固定されている。また、支柱3aには第1金型3bが固定されている。なお、
図3~
図6において、支柱3aは図示が省略されている。
支持壁3gも、支柱3aと同様に、ベース部2に固定されている。支持壁3gは、ベース部2の径方向に延びるように形成された板状部材である。支持壁3gには、直線状のスリット3g1が形成されている。実施形態では、支持壁3gには、互いに平行な2列のスリット3g1が形成されている。スリット3g1はカム軸3h(後述する軸部3h2)が挿入されている。
【0015】
1-3-2.第1及び第2金型3b,3c
図3及び
図4に示すように、第1金型3bには、押上機構7及びエアー供給部6が設けられている。実施形態では、第1金型3bには押上機構7が固定されているが、この形態に限定されるものではなく、押上機構7は例えばベース部2に固定されていてもよい。第1金型3bは、第1収容部3b1と、第1キャビティ部材3b2とを備えている。第1収容部3b1は、第1キャビティ部材3b2を配置可能に構成されている。第1収容部3b1は第1及び第2配置部3bt,3bsを備え、第1配置部3btと第2配置部3bsとは第1キャビティ部材3b2を隔てて設けられている。第1キャビティ部材3b2は第1収容部3b1に収容され、また、第1キャビティ部材3b2には成形体9の形状に対応した凹部が形成されている。第1金型3bには、後述する押上機構7の押上部材7Aが配置される溝部3b11(
図7参照)が形成されている。また、第1金型3bには、この押上部材7Aを回転可能に支持する軸部3b12が設けられている。なお、実施形態では、軸部3b12が第1金型3bに設けられているが、これに限定されるものではなく、軸部3b12は、第1金型3bには設けられておらず、第1金型3bに隣接するように設けられていてもよい。
【0016】
第2金型3cは、第2収容部3c1と、第2キャビティ部材3c2とを備えている。第2収容部3c1は、第2キャビティ部材3c2を配置可能に構成されている。第2キャビティ部材3c2は第2収容部3c1に収容され、また、第2キャビティ部材3c2には成形体9の形状に対応した凹部が形成されている。
【0017】
1-3-3.ヒンジ部3d及びピニオンギア3e
図3及び
図4に示すように、ヒンジ部3dは、第2金型3cが第1金型3bに対して回転可能となるように構成されている。第2金型3cは、ヒンジ部3dを介して第1金型3bに開閉可能に設けられている。第2金型3cがヒンジ部3dを中心に回転することによって第1金型3bと第2金型3cが開閉可能になっている。
ピニオンギア3eは第2金型3cに固定されている。ピニオンギア3eがヒンジ部3dを中心に回転することで、第2金型3cが回転し、第1及び第2金型3b,3cが開く(
図3参照)又は閉じる(
図5参照)。
【0018】
1-3-4.ラックギア3f及びリニアガイド3ft
図3及び
図4に示すように、ラックギア3fはピニオンギア3eに係合し、また、ラックギア3fはリニアガイド3ftに連結している。リニアガイド3ftは支持壁3gの表面に沿って移動可能なように支持壁3gに取り付けられている。リニアガイド3ftには、カム軸3hが固定されている。
【0019】
1-3-5.カム軸3h
図4に示すように、カム軸3hは、円筒部3h1と、軸部3h2とを備えている。円筒部3h1は軸部3h2の一方側に設けられている。円筒部3h1は、ベアリングを介して軸部3h2に連結している。円筒部3h1は、カム軌道部材5に形成されているカム軌道5c(
図11参照)に挿入されている。
軸部3h2はスリット3g1を挿通している。
図3及び
図4に示すように、軸部3h2の一方側には円筒部3h1が設けられ、軸部3h2の他方側にはリニアガイド3ftが設けられている。軸部3h2はリニアガイド3ftに固定されている。円筒部3h1の動きに伴ってリニアガイド3ftが移動し、その結果、ピニオンギア3eが回転し、第2金型3cが回転する。
【0020】
1-3-6.エアー供給部6
図3に示すように、エアー供給部6は、第1金型3bに設けられている。成形時において、エアー供給部6がパリソンに突き刺さり、エアーがエアー供給部6からパリソン内部に吹き込まれる。これにより、パリソンが、膨らみ、所望の形状に成形される。
【0021】
1-3-7.押上機構7
押上機構7は、押上部材7Aと、駆動機構とを備えている。押上機構7の駆動機構は、駆動部7Bと、係合部材7Cとを備えている。
【0022】
1-3-7-1.押上部材7A
図3及び
図6に示すように、押上部材7Aは棒状部材であり、押上部材7Aは押上部7A1と、軸支部7A2と、接触部7A3とを備えている。押上部材7Aの回転方向は、第1及び第2金型3b,3cの開く方向(第2金型3cの回転方向)と同じである。ここで、上述したエアー供給部6は、第1金型3bの第1収容部3b1の第2配置部3bsに設けられているが、押上部材7Aは、第1金型3bの第1収容部3b1の第1配置部3btに設けられている。つまり、押上部材7Aは、エアー供給部6が設けられている側に設けられておらず、押上部材7Aは、第1配置部3btから第2配置部3bsに向かう方向において、エアー供給部6と対向するように設けられている。
【0023】
図3、
図4、
図6及び
図7に示すように、押上部7A1は、押上部材7Aの一方側(一端側)に設けられている。押上部7A1は、後述する第1位置から第2位置にかけて移動自在である。押上部7A1が第1位置から第2位置に移動することで成形体が押し上げられる。また、押上部7A1が第2位置から第1位置に移動することで、第1金型3b上にパリソンを再び配置可能となる。
【0024】
実施形態における第1位置は、
図3及び
図4に示すように、押上部7A1が最下点まで降下しているときにおける押上部7A1の位置である。また、実施形態における第2位置は、
図7に示すように、押上部7A1が最上点まで上昇しているときにおける押上部7A1の位置である。そして、第2位置は、第1位置よりも、第1金型3bから離間した位置である。
【0025】
なお、第1位置は、押上部7A1が最下点まで降下しているときにおける押上部7A1の位置に限定されるものではない。また、第2位置も、押上部7A1が最上点まで上昇しているときにおける押上部7A1の位置に限定されるものではない。第2位置が、第1位置よりも、第1金型3bから離間した位置であれば良い。
【0026】
図8及び
図9に示すように、押上部7A1は、エアー供給部6に対向するように配置されている。また、エアー供給部6は、
図9に示す矢印AR2に示すように、前後方向に移動可能となっている。押上部7A1が第1位置から第2位置へ、又は、第2位置から第1位置へ移動するときにおいて、エアー供給部6が前側に移動していると、押上部7A1とエアー供給部6の先端とが干渉してしまう可能性がある。例えば、エアー供給部6が成形体に引っかかってしまい、エアー供給部6が後側に移動して押上部7A1から逃げている状態となっておらず、前側に移動したままとなっている状況が考えられる。このような状況において、押上部7A1が駆動すると、押上部7A1とエアー供給部6とが干渉してしまう可能性がある。このため、実施形態では、
図9に示すように、押上部7A1の先端部は、二股に分岐するように構成されている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、軸支部7A2は、押上部7A1と接触部7A3との間に設けられている。軸支部7A2は、第1金型3bに軸支されている。具体的には、
図6及び
図7に示すように、軸支部7A2は、第1金型3bに設けられている軸部3b12に連結されており、軸支部7A2は、軸部3b12を中心として回転可能となっている。
ここで、仮に、押上部7A1が第2位置に位置している状態において、軸支部7A2の全体が、溝部3b11から飛び出していると、押上部7A1が降下しているときに、軸支部7A2の下部と溝部3b11の壁面とが接触し、軸支部7A2が溝部3b11内に戻り難くなる場合がある。そこで、
図7に示すように、押上部7A1が第2位置に位置している状態において、軸支部7A2の少なくとも一部は、溝部3b11内に収まっている(
図7参照)。これにより、軸支部7A2が溝部3b11内に戻り難くなることを抑制することができる。
【0028】
ここで、長さx1を、押上部7A1の先端部から軸支部7A2の回転軸までにおける押上部材7Aの長手方向の長さと定義する。なお、軸支部7A2の回転軸の位置は、軸部3b12が設けられている位置に対応する。
また、長さx2を、軸支部7A2の回転軸から接触部7A3の接触位置までにおける押上部材7Aの長手方向の長さと定義する。接触部7A3の接触位置は、接触部7A3が第1係合部7C2又は第2係合部7C3に接触する位置である。
実施形態では、長さx2が長さx1よりも長い。これにより、テコの原理が押上部材7Aに効果的に作用し、駆動部7Bに要する駆動力を抑制することができる。
【0029】
図10A及び
図10Bに示すように、接触部7A3は、押上部材7Aの他方側に設けられている。接触部7A3は係合部材7Cに接触する部分である。係合部材7Cが駆動(移動)に伴って接触部7A3は移動する。実施形態において、接触部7A3と係合部材7Cとは連結していない。仮に、接触部7A3と係合部材7Cとが連結していると、駆動部7Bが、例えば、係合部材7Cを円弧状に動かす機構を備えたり、係合部材7Cと接触部7A3とを連結する軸部を有する機構を備えたりする必要が生じる。つまり、接触部7A3と係合部材7Cとが連結していると、駆動部7B及び係合部材7Cの機構が複雑化し、ロータリー成形機1のコストアップを招く。
また、ロータリー成形機1は、複数の金型ユニット3を備える装置であり、各金型ユニット3間の隙間が比較的狭いので、ロータリー成形機1は各種部材を配置するスペースを確保し難くなっている。実施形態において押上部材7A及び係合部材7Cは簡素に構成されており、大型化が抑制されているので、実施形態は、複数の押上機構7をロータリー成形機1に容易に取付可能である。加えて、押上機構7の大型化が抑制されているので、ロータリー成形機1の大型化も抑制される。
実施形態では、上述のように、接触部7A3と係合部材7Cとは連結しておらず、係合しているに留まる。そして、実施形態では、係合部材7Cの直線方向の動作だけで、押上部7A1が第1位置と第2位置との間を移動可能である。このため、実施形態は、機構の複雑化の抑制、ロータリー成形機1のコストアップの抑制、押上機構7の取付性の向上、及びロータリー成形機1の大型化の抑制を実現しながら、押上部7A1を適切に移動させることができる。
【0030】
1-3-7-2.駆動部7B
駆動部7Bは、押上部7A1が第1位置から第2位置にかけて移動可能するように、係合部材7Cを駆動する機能を有する。駆動部7Bには、油圧で押上部材7Aを駆動する方式やモータで押上部材7Aを駆動する方式を採用可能であるが、実施形態では、駆動部7Bには、エアーで押上部材7Aを駆動する方式を採用している。これにより、ロータリー成形機1の油汚れ、ロータリー成形機1の大型化、及びロータリー成形機1の重量増加等が抑制される。
【0031】
図10A及び
図10Bに示すように、駆動部7Bは、エアシリンダ7B1と、ピストン7B2とを備えている。エアシリンダ7B1は第1金型3bに固定されている。エアシリンダ7B1には図示省略のエアチューブからエアーが供給され、ピストン7B2を直線方向に移動させる機能を有する。ピストン7B2は、係合部材7Cに連結している。
【0032】
上述した特許文献1において、ガイド部材は押上部材を回転させることが可能ではある。その一方で、押上部材が適切に成形品を押し上げるために、ガイド部材の表面には、立体的で複雑な曲面が形成されている必要がある。このようなガイド部材は、製造の難易度が非常に高く、且つ、押上部材の動作精度を確保し難い、という問題がある。実施形態では、ガイド部材の代わりに、駆動部7Bを採用しているので、このような問題を回避することができる。
【0033】
1-3-7-3.係合部材7C
図10A及び
図10Bに示すように、係合部材7Cは、フレーム7C1と、第1及び第2係合部7C2,7C3とを備えている。フレーム7C1は、ピストン7B2に連結しており、ピストン7B2とともに移動可能となっている。また、係合部材7Cは、第1及び第2位置において押上部材7A(接触部7A3)に係合している。具体的には、第1係合部7C2は、第2係合部7C3よりも、エアシリンダ7B1から離れた側に設けられている。第1係合部7C2と第2係合部7C3との間には、押上部材7A(接触部7A3)が配置されている。なお、係合部材7Cの形態や形状は、適宜変更可能である。
【0034】
押上部7A1が第1位置に位置しているときにおいて(
図3参照)、接触部7A3は、
図10Aに示すように、第2係合部7C3と係合している。このため、接触部7A3は、接触部7A3が押し下げられる方向の移動が規制されている。
また、押上部7A1が第2位置に位置しているときにおいて(
図6参照)、接触部7A3は、
図10Bに示すように、第1係合部7C2と係合している。このため、接触部7A3は、接触部7A3が押し上げられる方向の移動が規制されている。
【0035】
このように、実施形態に係るロータリー成形機1では、係合部材7Cが第1及び第2位置の両位置において押上部材7Aと係合しているので、第1及び第2位置のいずれにおいても、押上部材7Aのぶらつきが抑制される。つまり、実施形態に係るロータリー成形機1では、成形体の成形の前段階における押上部材7Aのぶらつきが抑制されており、より確実に所望の形状の成形体を成形することが可能になっている。
【0036】
また、パリソンは、まず、第1金型3bに接触することで、成形体9の胴部に相当する部分が冷却される。これにより、パリソンが適切に膨みやすくなる。ここで、上述のように、押上部材7Aのぶらつきが抑制されるので、金型ユニット3に投入されたパリソンが、第1金型3bよりも先に、押上部材7Aに接触してしまうことを回避することができる。その結果、成形体9の口部に相当する部分から冷却されること抑制することができ、パリソンが適切に膨らまなくなることが抑制される。
【0037】
1-4.押出ヘッド4
図2に示すように、押出ヘッド4は位置P1における金型ユニット3の上方に配置されている。押出ヘッド4は、位置P1における金型ユニット3にパリソン8を投入可能に構成されている。パリソン8は、溶融樹脂で形成されており、筒状であることが好ましいがシート状であってもよい。
【0038】
1-5.カム軌道部材5
1-5-1.構成説明
図11及び
図12に示すように、カム軌道部材5は、ベース板5aを有し、ベース板5aに環状溝5bが設けられている。環状溝5bによってカム軌道5cが構成されている。カム軸3hの円筒部3h1は環状溝5b内に配置されており、ベース部2の回転に伴って、円筒部3h1が環状溝5b(カム軌道5c)に沿って移動し、その結果、カム軸3h及びラックギア3fが環状溝5b(カム軌道5c)に沿って移動する。ベース板5aにカム軌道5cが設けられているので、公転軸Cを中心にベース板5aを回転させることによって、第2金型3cの開閉タイミングを容易に変更可能である。
【0039】
図12に示すように、カム軌道5cは、周方向に沿って公転軸Cからの距離Dが変化するように構成されている。位置P1及びP2での公転軸Cからのカム軌道5cの内周面までの距離をそれぞれD1,D2とすると、以下のことがいえる。
・位置P1において距離Dが最小(D1)である。
・位置P1から位置P2に向かう間に距離Dが徐々に大きくなる。
・位置P2と位置P3の間で距離Dが一定(D2)である。
・位置P3から位置P4に向かう間に距離Dが徐々に小さくなる。
・位置P4と位置P1の間で距離Dが一定(D1)である。
【0040】
1-5-2.カム軸3hのカム軌道5cに沿う動作
カム軸3hはカム軌道5cに沿って移動するので、距離Dの増減は、カム軸3hの昇降に相当する。カム軸3hがカム軌道5cに沿って移動することによって、第2金型3cを開閉することができる。
【0041】
第2金型3cの開閉動作は、以下のようになる。
・位置P1において第2金型3cが最も開いた状態になっている。
・位置P1から位置P2に向かう間に第2金型3cが徐々に閉じる。
・位置P2と位置P3の間で第2金型3cが閉じている。
・位置P3から位置P4に向かう間に第2金型3cが徐々に開く。
・位置P4と位置P1の間で第2金型3cが最も開いた状態になっている。
【0042】
円筒部3h1が上昇すると、軸部3h2とラックギア3fも一緒に上昇する。ラックギア3fの上昇に伴ってピニオンギア3e及び第2金型3cが時計回りに回転する。
円筒部3h1が下降すると、軸部3h2とラックギア3fも一緒に下降する。ラックギア3fの下降に伴ってピニオンギア3e及び第2金型3cが反時計回りに回転する。
このように、ラックギア3fとピニオンギア3eによって構成されるギア機構によって、カム軸3hの直線移動が第2金型3cの回転移動に変換されて、第2金型3cが開閉される。なお、ギア機構は、直線移動を回転移動に変換可能な別の機構であってもよい。
【0043】
1-6.動力機構10及びシャフト11
図1に示す動力機構10はモータ等から構成されており、シャフト11を回転させる機能を有する。
図1に示すように、シャフト11の一端側は動力機構10に連結されており、シャフト11の他端側は図示省略の軸受に連結されている。シャフト11はベース部2及び後述するスイッチ機構12のベース部12Aに連結されており、シャフト11が回転することで、ベース部2及びベース部12Aが回転する。
【0044】
1-7.スイッチ機構12及び制御部
1-7-1.構成説明
図1に示すスイッチ機構12は、エアシリンダ7B1にエアーを供給するタイミング情報を制御部(図示省略)に出力する機能を有する。ここで、制御部は、エアシリンダ7B1にエアチューブを介してエアーを供給可能に構成されたエアー供給装置(図示省略)を制御する。また、エアシリンダ7B1にエアーを供給するタイミングは、係合部材7Cを駆動するタイミングに対応している。
【0045】
スイッチ機構12は、ベース部12Aと、スイッチ部12Bと、板状部材12Cとを備えている。ベース部12Aはシャフト11に連結している。一方、板状部材12Cはシャフト11が挿入されてはいるが、板状部材12Cはシャフト11とともに回転しないように構成されている。ロータリー成形機1には、スイッチ部12Bが金型ユニット3の数に対応する数だけ設けられており、実施形態では、スイッチ部12Bは15個設けられている。
【0046】
各スイッチ部12Bには、板状部材12Cの表面に対向配置されたスイッチ12B1が設けられている。また、板状部材12Cには図示省略の凸部が形成され、この凸部は、例えば、押上部7A1を上昇させるタイミングに対応する位置等に形成されている。スイッチ部12Bがベース部12Aとともに回転しているときに、スイッチ部12Bが板状部材12Cの凸部を通過すると、スイッチ12B1が凸部によって押し込まれる。これにより、制御部は、押し込まれたスイッチ12B1に対応する金型ユニット3の押上機構7にエアーを供給するタイミング情報を取得する。
【0047】
1-7-2.制御部による駆動部7Bの制御
実施形態において、制御部は、第1タイミングにおいて、押上部7A1が上昇するように(第1位置から第2位置へ移動可能するように)、駆動部7B(エアー供給装置)を制御する。第1タイミングでは、第2金型3cが全開の状態となっている。第1タイミングは、金型ユニット3が位置P41に位置するときのタイミングである。位置P41は、位置P4と位置P1との間の位置である。制御部が第1タイミングにおいて押上部7A1が上昇するようにエアー供給装置を制御するので、成形品が第2金型3cと干渉することが抑制され、成形品が円滑に第1金型3bから取り外される。
【0048】
また、制御部は、第2タイミングにおいて、押上部7A1が降下するように(第2位置から第1位置へ移動可能するように)、駆動部7B(エアー供給装置)を制御する。第2タイミングでは、第2金型3cが全開の状態であり、且つ、第2タイミングは、第1金型3bから成形品が取り出された後(押し出された後)のタイミングである。第2タイミングは、金型ユニット3が位置P42に位置するときのタイミングである。
なお、金型ユニット3には、第1金型3bから成形品が取り出されたか否か、及び、押上部7A1が上昇した状態になっているか否かを検出するセンサー(図示省略)が設けられている。制御部は、このセンサーから、第2タイミングに係る情報を取得可能である。
【0049】
そして、制御部が第2タイミングにおいて押上部7A1が降下するようにエアー供給装置を制御するので、次に投入されるパリソンと押上部7A1との干渉が回避され、パリソンが第1金型3b上に円滑に再投入される。
【0050】
2.ロータリー成形方法
実施形態に係るロータリー成形方法は、ロータリー成形機1を用いて実施される。
実施形態に係るロータリー成形方法は、パリソン投入工程と、成形工程と、取出工程とを備える。
【0051】
2-1.投入工程
パリソン投入工程は、開いた状態の第2金型3cの間に、押出ヘッド4から押し出されたパリソン8を第1及び第2金型3b,3cの間に投入する。第2金型3cは、位置P4とP1の間で最も開いた状態になっており、その後、位置P1からP2に向かう間に徐々に閉じるので、位置P42からP2までの所望の位置において、第1及び第2金型3b,3c間にパリソン8を投入することができる。
【0052】
2-2.成形工程
成形工程では、第1及び第2金型3b,3cによってパリソン8の成形を行う。第2金型3cが閉じた状態における第1及び第2キャビティ部材3b2,3c2の形状は、成形体9の外形に対応する形状になっているため、第1及び第2金型3b,3cを用いた成形によって成形体9を形成することができる。成形は、ブロー成形であってもよく、真空成形であってもよい。
【0053】
2-3.取出工程
2-3-1.押上部7A1の押上動作:押上部7A1が第1位置から第2位置へ移動
取出工程では、第1金型3bに成形された成形体9を第1金型3bから取り出す。第2金型3cが位置P41に至ると、制御部が駆動部7B(エアー供給装置)を制御し、係合部材7Cが降下する。これにより、係合部材7Cの第1係合部7C2が接触部7A3を押し下げ、その結果、押上部7A1が上昇する。これにより、第1金型3b上の成形体が押し上げられ、成形体9が第1金型3bから取り出される。
【0054】
2-3-2.押上部7A1の戻り動作:押上部7A1が第2位置から第1位置へ移動
また、第2金型3cが位置P42に至ると、制御部が駆動部7B(エアー供給装置)を制御し、係合部材7Cが上昇する。これにより、係合部材7Cの第2係合部7C3が接触部7A3を押し上げ、その結果、押上部7A1が降下する。これにより、次に投入されるパリソンと押上部7A1との干渉が回避される。
【0055】
3.その他の実施形態
・係合部材7Cと接触部7A3とは連結していてもよい。
・駆動部7Bは、油圧で押上部材7Aを駆動する方式、又は、モータで押上部材7Aを駆動する方式を採用していてもよい。
・押上部材7Aが第2配置部3bsに設けられ、エアー供給部6が第1配置部3btに設けられていてもよい。
・第1及び第2金型3b,3cの両方が回転することによって第1及び第2金型3b,3cが開閉するように構成してもよい。
・第1及び第2金型3b,3cは、平行に接近及び離間させることによって開閉させる構成であってもよい。
・カム軸3hが金型に直接連結された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 :ロータリー成形機
2 :ベース部
3 :金型ユニット
3a :支柱
3b :第1金型
3b1 :第1収容部
3bt :第1配置部
3bs :第2配置部
3b11 :溝部
3b12 :軸部
3b2 :第1キャビティ部材
3c :第2金型
3c1 :第2収容部
3c2 :第2キャビティ部材
3d :ヒンジ部
3e :ピニオンギア
3f :ラックギア
3ft :リニアガイド
3g :支持壁
3g1 :スリット
3h :カム軸
3h1 :円筒部
3h2 :軸部
4 :押出ヘッド
5 :カム軌道部材
5a :ベース板
5b :環状溝
5c :カム軌道
6 :エアー供給部
7 :押上機構
7A :押上部材
7A1 :押上部
7A2 :軸支部
7A3 :接触部
7B :駆動部
7B1 :エアシリンダ
7B2 :ピストン
7C :係合部材
7C1 :フレーム
7C2 :第1係合部
7C3 :第2係合部
8 :パリソン
9 :成形体
10 :動力機構
11 :シャフト
12 :スイッチ機構
12A :ベース部
12B :スイッチ部
12B1 :スイッチ
12C :板状部材
C :公転軸