(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】組織構成特定方法、組織構成特定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20230512BHJP
【FI】
G01N23/2252
(21)【出願番号】P 2019160626
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高山 透
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-054441(JP,A)
【文献】特開2018-044855(JP,A)
【文献】特開2014-215987(JP,A)
【文献】特開2014-137344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338358(US,A1)
【文献】汪志全,外5名,EPMA無作為面分析による高アルミナ焼結鉱の組成解析,鉄と鋼,日本,日本鉄鋼協会,1998年03月26日,第84巻第10号,第689頁~第696頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/84/10/84_10_689/_pdf/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結鉱に対するEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた酸素元素Oの測定により得られる第1の画像を取得する第1の取得工程と、
前記第1の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の第1の対応関係を特定する第1の対応関係特定工程と、
前記第1の対応関係に基づいて、前記第1の画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の第1の範囲と、前記第1の画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の第2の範囲と、前記第1の画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の第3の範囲と、前記第1の画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の第4の範囲と、を特定する第1の範囲特定工程と、
前記焼結鉱に対する前記EPMAを用いたケイ素元素Siとカルシウム元素Caとのうちの何れか1つの測定により得られる第2の画像を取得する第2の取得工程と、
前記第2の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の第2の対応関係を特定する第2の対応関係特定工程と、
前記第2の対応関係に基づいて、前記第2の画像中における気孔に対応する画素の輝度値の第5の範囲と、前記第2の画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の第6の範囲と、を特定する第2の範囲特定工程と、
前記第1の画像における前記第2の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をカルシウムフェライトとして特定し、前記第1の画像における前記第3の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をマグネタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第4の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をヘマタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第5の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分を気孔として特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第6の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分をシリケートスラグとして特定することで、前記焼結鉱の組織構成を特定する構成特定工程と、
を含む組織構成特定方法。
【請求項2】
前記第2の取得工程では、前記焼結鉱に対する前記EPMAを用いたSiの測定により得られる前記第2の画像を取得する請求項1に記載の組織構成特定方法。
【請求項3】
前記第1の対応関係特定工程では、前記第1の画像についてのヒストグラムであって、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の対応を示す前記ヒストグラムの第1の近似曲線を、前記第1の対応関係として特定し、
前記第2の対応関係特定工程では、前記第2の画像についてのヒストグラムであって、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の対応を示す前記ヒストグラムの第2の近似曲線を、前記第2の対応関係として特定する請求項1又は2に記載の組織構成特定方法。
【請求項4】
前記第1の範囲特定工程では、前記第1の近似曲線の極大値のうち最も大きいのものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第1のピーク、第2のピーク、第3のピークとして特定し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間の最小の極小値を第1の谷として特定し、前記第2のピークと前記第3のピークとの間の最小の極小値を第2の谷として特定し、対応する値が設定された閾値であり、且つ、前記第1のピークよりも対応する輝度値が小さい前記第1の近似曲線における位置のうち、最も前記第1のピークに近い位置を境界位置として特定し、前記境界位置に対応する輝度値未満の範囲を前記第1の範囲として特定し、前記境界位置に対応する輝度値以上であり前記第1の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第2の範囲として特定し、前記第1の谷に対応する輝度値以上であり前記第2の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第3の範囲として特定し、前記第2の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第4の範囲として特定し、
前記第2の範囲特定工程では、前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから2つの極大値を特定し、特定した前記2つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第4のピーク、第5のピークとして特定し、前記第4のピークと前記第5のピークとの間の最小の極小値を第3の谷として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定し、前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第6のピーク、第7のピーク、第8のピークとして特定し、前記第6のピークと前記第7のピークとの間の最小の極小値を第4の谷として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定する請求項3に記載の組織構成特定方法。
【請求項5】
前記第1の範囲特定工程では、前記第1の近似曲線の極大値のうち最も大きいのものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第1のピーク、第2のピーク、第3のピークとして特定し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間の最小の極小値を第1の谷として特定し、前記第2のピークと前記第3のピークとの間の最小の極小値を第2の谷として特定し、対応する値が設定された閾値であり、且つ、前記第1のピークよりも対応する輝度値が小さい前記第1の近似曲線における位置のうち、最も前記第1のピークに近い位置を境界位置として特定し、前記境界位置に対応する輝度値未満の範囲を前記第1の範囲として特定し、前記境界位置に対応する輝度値以上であり前記第1の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第2の範囲として特定し、前記第1の谷に対応する輝度値以上であり前記第2の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第3の範囲として特定し、前記第2の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第4の範囲として特定し、
前記第2の範囲特定工程では、前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから2つの極大値を特定し、特定した前記2つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第4のピーク、第5のピークとして特定し、前記第4のピークと前記第5のピークとの間の最小の極小値を第3の谷として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値に設定された閾値を加えた値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値に前記閾値を加えた値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定し、前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第6のピーク、第7のピーク、第8のピークとして特定し、前記第6のピークと前記第7のピークとの間の最小の極小値を第4の谷として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値に設定された閾値を加えた値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値に前記閾値を加えた値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定する請求項3に記載の組織構成特定方法。
【請求項6】
前記構成特定工程で特定された前記焼結鉱の組織構成を示す情報を出力する出力工程を更に含む請求項1乃至5の何れか1項に記載の組織構成特定方法。
【請求項7】
気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトを設定された水準以上の割合で含む第1の焼結鉱に対するEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた酸素元素Oの測定により得られる第1の画像を取得する第1の取得工程と、
前記第1の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の第1の対応関係を特定する第1の対応関係特定工程と、
前記第1の対応関係に基づいて、前記第1の画像中における気孔、又は、スラグに対応する画素の輝度値の第1の範囲と、前記第1の画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の第2の範囲と、前記第1の画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の第3の範囲と、前記第1の画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の第4の範囲と、を特定する第1の範囲特定工程と、
前記第1の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたケイ素元素Siとカルシウム元素Caとのうちの何れか1つの測定により得られる第2の画像を取得する第2の取得工程と、
前記第2の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の第2の対応関係を特定する第2の対応関係特定工程と、
前記第2の対応関係に基づいて、前記第2の画像中における気孔に対応する画素の輝度値の第5の範囲と、前記第2の画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の第6の範囲と、を特定する第2の範囲特定工程と、
第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたOの測定により得られる第3の画像を取得する第3の取得工程と、
前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたSiの測定により得られる画像を第4の画像として取得し前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたCaの測定により得られる画像を前記第4の画像として取得する第4の取得工程と、
前記第3の画像における前記第2の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をカルシウムフェライトとして特定し、前記第3の画像における前記第3の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をマグネタイトとして特定し、前記第3の画像における前記第4の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をヘマタイトとして特定し、前記第3の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第4の画像における前記第5の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記第2の焼結鉱の部分を気孔として特定し、前記第3の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第4の画像における前記第6の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記第2の焼結鉱の部分をシリケートスラグとして特定することで、前記
第2の焼結鉱の組織構成を特定する構成特定工程と、
を含む組織構成特定方法。
【請求項8】
前記第2の取得工程では、前記第1の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたSiの測定により得られる前記第2の画像を取得する請求項7に記載の組織構成特定方法。
【請求項9】
前記第1の対応関係特定工程では、前記第1の画像についてのヒストグラムであって、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の対応を示す前記ヒストグラムの第1の近似曲線を、前記第1の対応関係として特定し、
前記第2の対応関係特定工程では、前記第2の画像についてのヒストグラムであって、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の対応を示す前記ヒストグラムの第2の近似曲線を、前記第2の対応関係として特定する請求項7又は8に記載の組織構成特定方法。
【請求項10】
前記第1の範囲特定工程では、前記第1の近似曲線の極大値のうち最も大きいのものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第1のピーク、第2のピーク、第3のピークとして特定し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間の最小の極小値を第1の谷として特定し、前記第2のピークと前記第3のピークとの間の最小の極小値を第2の谷として特定し、対応する値が設定された閾値であり、且つ、前記第1のピークよりも対応する輝度値が小さい前記第1の近似曲線における位置のうち、最も前記第1のピークに近い位置を境界位置として特定し、前記境界位置に対応する輝度値未満の範囲を前記第1の範囲として特定し、前記境界位置に対応する輝度値以上であり前記第1の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第2の範囲として特定し、前記第1の谷に対応する輝度値以上であり前記第2の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第3の範囲として特定し、前記第2の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第4の範囲として特定し、
前記第2の範囲特定工程では、前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから2つの極大値を特定し、特定した前記2つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第4のピーク、第5のピークとして特定し、前記第4のピークと前記第5のピークとの間の最小の極小値を第3の谷として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定し、前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第6のピーク、第7のピーク、第8のピークとして特定し、前記第6のピークと前記第7のピークとの間の最小の極小値を第4の谷として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定する請求項9に記載の組織構成特定方法。
【請求項11】
前記第1の範囲特定工程では、前記第1の近似曲線の極大値のうち最も大きいのものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第1のピーク、第2のピーク、第3のピークとして特定し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間の最小の極小値を第1の谷として特定し、前記第2のピークと前記第3のピークとの間の最小の極小値を第2の谷として特定し、対応する値が設定された閾値であり、且つ、前記第1のピークよりも対応する輝度値が小さい前記第1の近似曲線における位置のうち、最も前記第1のピークに近い位置を境界位置として特定し、前記境界位置に対応する輝度値未満の範囲を前記第1の範囲として特定し、前記境界位置に対応する輝度値以上であり前記第1の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第2の範囲として特定し、前記第1の谷に対応する輝度値以上であり前記第2の谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を前記第3の範囲として特定し、前記第2の谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を前記第4の範囲として特定し、
前記第2の範囲特定工程では、前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから2つの極大値を特定し、特定した前記2つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第4のピーク、第5のピークとして特定し、前記第4のピークと前記第5のピークとの間の最小の極小値を第3の谷として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値に設定された閾値を加えた値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第3の谷に対応する輝度値に前記閾値を加えた値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定し、前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の近似曲線の極大値のうち最も大きいものから3つの極大値を特定し、特定した前記3つの極大値のそれぞれを対応する輝度値の小さいものから順に第6のピーク、第7のピーク、第8のピークとして特定し、前記第6のピークと前記第7のピークとの間の最小の極小値を第4の谷として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値に設定された閾値を加えた値未満の輝度値の範囲を前記第5の範囲として特定し、前記第4の谷に対応する輝度値に前記閾値を加えた値以上の輝度値の範囲を前記第6の範囲として特定する請求項9に記載の組織構成特定方法。
【請求項12】
前記構成特定工程で特定された前記第2の焼結鉱における気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトの部分を示す情報を出力する出力工程を更に含む請求項7乃至11の何れか1項に記載の組織構成特定方法。
【請求項13】
焼結鉱に対するEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた酸素元素Oの測定により得られる第1の画像を取得する第1の取得手段と、
前記第1の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の第1の対応関係を特定する第1の対応関係特定手段と、
前記第1の対応関係に基づいて、前記第1の画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の第1の範囲と、前記第1の画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の第2の範囲と、前記第1の画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の第3の範囲と、前記第1の画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の第4の範囲と、を特定する第1の範囲特定手段と、
前記焼結鉱に対する前記EPMAを用いたケイ素元素Siとカルシウム元素Caとのうちの何れか1つの測定により得られる第2の画像を取得する第2の取得手段と、
前記第2の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の第2の対応関係を特定する第2の対応関係特定手段と、
前記第2の対応関係に基づいて、前記第2の画像中における気孔に対応する画素の輝度値の第5の範囲と、前記第2の画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の第6の範囲と、を特定する第2の範囲特定手段と、
前記第1の画像における前記第2の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をカルシウムフェライトとして特定し、前記第1の画像における前記第3の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をマグネタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第4の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をヘマタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第5の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分を気孔として特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第6の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分をシリケートスラグとして特定することで、前記焼結鉱の組織構成を特定する構成特定手段と、
を有する組織構成特定装置。
【請求項14】
マグネタイトを設定された水準以上の割合で含む第1の焼結鉱に対するEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた酸素元素Oの測定により得られる第1の画像を取得する第1の取得手段と、
前記第1の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の第1の対応関係を特定する第1の対応関係特定手段と、
前記第1の対応関係に基づいて、前記第1の画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の第1の範囲と、前記第1の画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の第2の範囲と、前記第1の画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の第3の範囲と、前記第1の画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の第4の範囲と、を特定する第1の範囲特定手段と、
前記第1の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたケイ素元素Siとカルシウム元素Caとのうちの何れか1つの測定により得られる第2の画像を取得する第2の取得手段と、
前記第2の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の第2の対応関係を特定する第2の対応関係特定手段と、
前記第2の対応関係に基づいて、前記第2の画像中における気孔に対応する画素の輝度値の第5の範囲と、前記第2の画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の第6の範囲と、を特定する第2の範囲特定手段と、
第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたOの測定により得られる第3の画像を取得する第3の取得手段と、
前記第2の画像がSiの測定により得られた画像である場合、前記第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたSiの測定により得られる画像を第4の画像として取得し前記第2の画像がCaの測定により得られた画像である場合、前記第2の焼結鉱に対する前記EPMAを用いたCaの測定により得られる画像を前記第4の画像として取得する第4の取得手段と、
前記第3の画像における前記第2の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をカルシウムフェライトとして特定し、前記第3の画像における前記第3の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をマグネタイトとして特定し、前記第3の画像における前記第4の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記第2の焼結鉱の部分をヘマタイトとして特定し、前記第3の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第4の画像における前記第5の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記第2の焼結鉱の部分を気孔として特定し、前記第3の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第4の画像における前記第6の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記第2の焼結鉱の部分をシリケートスラグとして特定することで、前記
第2の焼結鉱の組織構成を特定する構成特定手段と、
を有する組織構成特定装置。
【請求項15】
コンピュータに、請求項1乃至12の何れか1項に記載の組織構成特定方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織構成特定方法、組織構成特定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱の品質の因子解明や生成条件推定の高精度のため、焼結鉱の組織構成を精度よく特定することが要望されている。物体の組織構成の特定に用いられる技術には、特許文献1、2がある。
特許文献1には、X線回折法によって得られたXRDパターンから求めた各構成相の存在比を用いて、組織画像中の輝度値のヒストグラム中にヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相、気孔を区別する境界値を高精度に決定し、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相、気孔に対応して焼結鉱の組織画像を4値化する技術が開示されている。
特許文献2には、組織画像中の各画素の輝度値を求め、輝度値を横軸にとってヒストグラム化し、そのヒストグラム中の輝度値の範囲を求めた後、対象画像に対応する組織画像中の構成相の境界を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-137344号公報
【文献】特開平2-232550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼結鉱は、気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とで構成されていることが分かっている。そこで、焼結鉱内におけるこの気孔と4種の鉱物相とを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定することが要望されている。
特許文献1では、焼結鉱を気孔と3種の鉱物相に分類することはできるが、気孔と4種の鉱物相には分類できなかった。また、焼結鉱の画像において同じ組織を示す画素の輝度値は、必ずしも同一とはならないため、特許文献2を用いて、各組織の境界を決定することは困難であった。
また、従来、光学顕微鏡で撮影された焼結鉱の画像の輝度値の分布から、焼結鉱内のこの気孔と4種の鉱物相とを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定することが行われていたが、精度に限界があった。
そこで、本発明は、より精度よく、焼結鉱内の気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の焼結鉱の組織構成の特定方法は、焼結鉱に対するEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた酸素元素Oの測定により得られる第1の画像を取得する第1の取得工程と、前記第1の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第1の画像中の画素の個数と、の第1の対応関係を特定する第1の対応関係特定工程と、前記第1の対応関係に基づいて、前記第1の画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の第1の範囲と、前記第1の画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の第2の範囲と、前記第1の画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の第3の範囲と、前記第1の画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の第4の範囲と、を特定する第1の範囲特定工程と、前記焼結鉱に対する前記EPMAを用いたケイ素元素Siとカルシウム元素Caとのうちの何れか1つの測定により得られる第2の画像を取得する第2の取得工程と、前記第2の画像に基づいて、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する前記第2の画像中の画素の個数と、の第2の対応関係を特定する第2の対応関係特定工程と、前記第2の対応関係に基づいて、前記第2の画像中における気孔に対応する画素の輝度値の第5の範囲と、前記第2の画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の第6の範囲と、を特定する第2の範囲特定工程と、前記第1の画像における前記第2の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をカルシウムフェライトとして特定し、前記第1の画像における前記第3の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をマグネタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第4の範囲の輝度値を有する画素に対応する前記焼結鉱の部分をヘマタイトとして特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第5の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分を気孔として特定し、前記第1の画像における前記第1の範囲の輝度値を有する画素と前記第2の画像における前記第6の範囲の輝度値を有する画素とに対応する前記焼結鉱の部分をシリケートスラグとして特定することで、前記焼結鉱の組織構成を特定する構成特定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より精度よく、焼結鉱内の気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、焼結鉱の鉱物相と含有元素との対応を示す図である。
【
図2】
図2は、EPMAによる測定により得られた画像等を示す図である。
【
図3】
図3は、画像間の輝度値の相関を示す図である。
【
図4】
図4は、気孔・各鉱物相に対応する輝度値の範囲について説明する図である。
【
図7】
図7は、構成特定システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、情報処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0009】
(実験)
発明者らは、焼結鉱に対するElectron Probe Micro Analyzer(EPMA)を用いた測定により得られる画像を用いて、焼結鉱の組織構成を特定する実験を行った。EPMAとは、電子線を測定対象に照射することで発生する特性X線の波長と強度とから構成元素を分析する測定装置である。
以下に発明者らが行った実験について説明する。
発明者らは、組織構成を特定する対象として焼結鉱を用意した。焼結鉱とは、粉状の鉄鉱石に粉コークス、石灰石を混ぜ合せたものを、一定の大きさに焼き固めたものである。焼結鉱の組織は、気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とで構成されていることが分かっている。
本実験の説明では、発明者らが用意した焼結鉱を、実験用焼結鉱とする。
【0010】
本実験では、発明者らは、EPMAを用いて、実験用焼結鉱から、ケイ素元素Si、マグネシウム元素Mg、鉄元素Fe、カルシウム元素Ca、酸素元素Oそれぞれの元素を測定して画像を取得した。
ここで、Si、Mg、Fe、Ca、Oそれぞれが、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトのうちの何れに含まれるかを説明する。Si、Mg、Fe、Ca、Oそれぞれが、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトの何れに含まれるかを
図1のテーブル100に示す。テーブル100が示すように、Siは、シリケートスラグ、カルシウムフェライトに含まれる。Mgは、マグネタイト、カルシウムフェライトに含まれる。Feは、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトに含まれる。Caは、カルシウムフェライト、シリケートスラグに含まれる。Oは、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイト、シリケートスラグに含まれる。ただし、シリケートスラグに含まれるOの量は、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに含まれるOの量に比べて微量である。また、カルシウムフェライトに含まれるSiの量は、極めて微量である。
【0011】
実験用焼結鉱に対するEPMAを用いたSi、Mg、Fe、Ca、Oそれぞれの測定により得られた画像のそれぞれを、
図2に示す。本実験でEPMAを用いた測定により得られた画像のサイズは、500画素×500画素である。また、EPMAを用いた測定により得られた画像の1画素×1画素の領域には、測定対象の実験用焼結鉱における2μm×2μmの領域が写される。
以下では、EPMAを用いたSiの測定により得られた画像を、Si画像とする。また、以下では、EPMAを用いたMgの測定により得られた画像を、Mg画像とする。また、以下では、EPMAを用いたFeの測定により得られた画像を、Fe画像とする。また、以下では、EPMAを用いたCaの測定により得られた画像を、Ca画像とする。また、以下では、EPMAを用いたOの測定により得られた画像を、O画像とする。
画像201は、実験用焼結鉱を測定対象としたSi画像である。画像202は、実験用焼結鉱を測定対象としたMg画像である。画像203は、実験用焼結鉱を測定対象としたFe画像である。画像204は、実験用焼結鉱を測定対象としたCa画像である。画像205は、実験用焼結鉱を測定対象としたO画像である。画像201~205は、それぞれ焼結鉱における同じ部分が測定された画像である。そのため、画像201~205それぞれにおける同じ位置に存在する画素同士は、実験用焼結鉱における同じ領域が写された画素となる。
【0012】
発明者らは、画像201~205それぞれについて、画素の輝度値をビン(各ビンの幅は1)として、対応する輝度値を有する画素が画像に幾つ含まれかを示すヒストグラムを生成した。生成されたヒストグラムを
図2に示す。
ヒストグラム211は、画像201に対応するヒストグラムである。ヒストグラム212は、画像202に対応するヒストグラムである。ヒストグラム213は、画像203に対応するヒストグラムである。ヒストグラム214は、画像204に対応するヒストグラムである。ヒストグラム215は、画像205に対応するヒストグラムである。
【0013】
また、発明者らは、
図3に示すグラフ301~325を生成した。
図3の各グラフについて説明する。
図3において、グラフ301~325は、5×5の行列状に並んでいる。以下では、グラフ301~325で構成される5×5の行列をグラフ行列とする。
グラフ行列の各行は、画像201~205の何れか1つに対応する行である。また、グラフ行列の各列は、画像201~205の何れか1つに対応する列である。
【0014】
グラフ行列の1行目は、実験用焼結鉱を測定対象としたCa画像(画像204)に対応する行である。グラフ行列の2行目は、実験用焼結鉱を測定対象としたFe画像(画像203)に対応する行である。グラフ行列の3行目は、実験用焼結鉱を測定対象としたMg画像(画像202)に対応する行である。グラフ行列の4行目は、実験用焼結鉱を測定対象としたO画像(画像205)に対応する行である。グラフ行列の5行目は、実験用焼結鉱を測定対象としたSi画像(画像201)に対応する行である。
グラフ行列の1列目は、実験用焼結鉱を測定対象としたCa画像(画像204)に対応する列である。グラフ行列の2列目は、実験用焼結鉱を測定対象としたFe画像(画像203)に対応する列である。グラフ行列の3列目は、実験用焼結鉱を測定対象としたMg画像(画像202)に対応する列である。グラフ行列の4列目は、実験用焼結鉱を測定対象としたO画像(画像205)に対応する列である。グラフ行列の5列目は、実験用焼結鉱を測定対象としたSi画像(画像201)に対応する列である。
【0015】
グラフ301、307、313、319、325それぞれは、グラフ行列における対応する行と列との双方が示す1つの画像についてのヒストグラムである。ただし、縦軸の数値は、単に同じ行の他のグラフと形式的に揃えているだけで、対応する輝度値を有する画素の個数を表示したものではない。グラフ302~306、308~312、314~318、322~324それぞれは、対応する行が示す画像と対応する列が示す画像との2つの画像に対応するグラフである。
グラフ301は、ヒストグラム214と同様に、画像204に対応するヒストグラムであり、各ビンの幅がヒストグラム214に比べて大きいヒストグラムである。グラフ307は、ヒストグラム213と同様に、画像203に対応するヒストグラムであり、各ビンの幅がヒストグラム213に比べて大きいヒストグラムである。グラフ313は、ヒストグラム212と同様に、画像202に対応するヒストグラムであり、各ビンの幅がヒストグラム212に比べて大きいヒストグラムである。グラフ319は、ヒストグラム215と同様に、画像205に対応するヒストグラムであり、各ビンの幅がヒストグラム212に比べて大きいヒストグラムである。グラフ325は、ヒストグラム211と同様に、画像201に対応するヒストグラムであり、各ビンの幅がヒストグラム211に比べて大きいヒストグラムである。
【0016】
グラフ302~306、308~312、314~318、320~324は、それぞれ画像201~205のうちの2つの画像に対応するグラフであって、対応する2つの画像において同じ被写体がそれぞれどのような輝度値で撮影されているかを示す。グラフ302~306、308~312、314~318、320~324それぞれの縦軸は、グラフ行列における対応する行が示す画像における画素の輝度値を示す。また、横軸は、グラフ行列における対応する列が示す画像における画素の輝度値を示す。グラフ302~306、308~312、314~318、320~324は、それぞれ、対応する2つの画像における同じ位置に存在する画素の組に対応する各点を、対応する2つの画像のうちの1つの画像におけるその位置の画素の輝度値と、他の画像におけるその位置の画素の輝度値と、に対応する位置にプロットしたグラフ(即ち、散布図)である。
即ち、グラフ302~306、308~312、314~318、320~324には、画像間における同じ被写体が撮影された画素の輝度値の相関が示されている。例えば、グラフ324にプロットされた点には、以下のことが示されている。即ち、画像201(Si画像)においては、グラフ324におけるこの点の縦軸の値の輝度値で撮影された被写体が、画像205(O画像)においては、グラフ324におけるこの点の横軸の値の輝度値で撮影されていることが示されている。
【0017】
発明者らは、グラフ320とグラフ324とを見て、画像201(Si画像)の輝度値を局所的に限定して画像205(O画像)の輝度値の分布を見たときに、画像201(Si画像)の輝度値を変化させても画像205(O画像)の輝度値の平均があまり変化していないように見えることに気づいた。発明者らは、このことから、以下の仮説を立てた。即ち、焼結鉱に対するEPMAを用いたOの測定で得られる画像の各画素の輝度値と、焼結鉱に対するEPMAを用いたSiの測定で得られる画像の各画素の輝度値と、が統計学的に独立に近い関係にあるとの仮説である。以下では、この仮説を第1の仮説とする。
また、
図1に示すように、Oは、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイト、シリケートスラグに含まれるが、前述したように、シリケートスラグに含まれるOの量は他の鉱物相に比べて微量である。ヒストグラム215を見てみると、3つのピークが存在することが分かる。発明者らは、これらのピークを、対応する輝度値の小さいものから順に、カルシウムフェライトに対応するピーク、マグネタイトに対応するピーク、ヘマタイトに対応するピークであると考えた。そして、発明者らは、焼結鉱に対するEPMAを用いたOの測定で得られる画像についての画素の輝度値についてのヒストグラムには、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応するピークが現れるとの仮説を立てた。以下では、この仮説を、第2の仮説とする。
【0018】
また、Siは、主にシリケートスラグに含まれ、前述したように、カルシウムフェライトには極めて微量にしか含まれない。ヒストグラム211を見てみると、輝度値0付近に2つのピークが存在することが分かる。発明者らは、輝度値0の位置のピークが気孔に対応するピークであり、輝度値が非負値の部分のピークがシリケートスラグに対応するピークであると考えた。そして、発明者らは、焼結鉱に対するEPMAを用いたSiの測定で得られる画像についての画素の輝度値についてのヒストグラムには、気孔、シリケートスラグそれぞれに対応するピークが現れるとの仮説を立てた。以下では、この仮説を、第3の仮説とする。また、発明者らは、ヒストグラム215と、ヒストグラム211と、を見比べて、輝度値の分布域が顕著に離れていることに気づいた。
発明者らは、第1の仮説~第3の仮説から、焼結鉱に対するEPMAを用いたOの測定により得られた画像と、焼結鉱に対するEPMAを用いたSiの測定により得られた画像と、から、焼結鉱の組織構成を特定する方法を想到した。以下では、発明者らが想到したこの方法を、組織構成特定方法とする。
【0019】
ここで、発明者らが想到した組織構成特定方法の概要について説明する。組織構成特定方法とは、以下のような方法である。
まず、焼結鉱を測定対象としたO画像(以下では、測定O画像)について、画素の輝度値と、測定O画像内の対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係(例えば、ヒストグラム等)を特定する。そして、求めた対応関係に基づいて、測定O画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の範囲(以下では、KS範囲とする)と、測定O画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の範囲(以下では、CF範囲)と、を特定する。また、このO画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の範囲(以下では、M範囲とする)と、このO画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の範囲(以下では、H範囲とする)と、を特定する。そして、焼結鉱を測定対象としたSi画像(以下では、測定Si画像とする)について、画素の輝度値と、測定Si画像内の対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係を特定する。そして、求めた対応関係に基づいて、測定Si画像中における気孔に対応する画素の輝度値の範囲(以下では、K範囲とする)と、測定Si画像中における気孔と異なる組織であって、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の範囲(以下では、S範囲とする)と、を特定する。
【0020】
図4は、測定O画像が画像205であり、測定Si画像が画像201である場合におけるKS範囲、CF範囲、M範囲、H範囲、K範囲、S範囲の一例を示す図である。
範囲401は、KS範囲である。範囲402は、CF範囲である。範囲403は、M範囲である。範囲404は、H範囲である。範囲405は、K範囲である。範囲406は、S範囲である。
【0021】
そして、測定対象の焼結鉱の部分であって、測定O画像におけるCF範囲の輝度値を有する画素に対応する部分をカルシウムフェライトとして特定する。また、測定対象の焼結鉱の部分であって、測定O画像におけるM範囲の輝度値を有する画素に対応する部分を、マグネタイトとして特定する。また、測定対象の焼結鉱の部分であって、測定O画像におけるH範囲の輝度値を有する画素に対応する部分を、ヘマタイトとして特定する。
そして、測定対象の焼結鉱の部分であって、測定O画像におけるKS範囲の輝度値を有する画素と測定Si画像におけるK範囲の輝度値を有する画素とに対応する部分を、気孔として特定する。また、測定対象の焼結鉱の部分であって、測定O画像におけるKS範囲の輝度値を有する画素と測定Si画像におけるS範囲の輝度値を有する画素とに対応する部分を、シリケートスラグとして特定する。
以上が、発明者らが想到した組織構成特定方法の概要である。
【0022】
発明者らは、組織構成特定方法の実効性を検証するために、組織構成特定方法を用いて、実験用焼結鉱の組織構成を特定する実験を行った。以下にこの実験の詳細を説明する。
発明者らは、組織構成特定方法を用いて、実験用焼結鉱の組織構成を特定するため以下の作業を行った。
発明者らは、実験用焼結鉱を対象としたO画像を測定O画像として取得し、画素の輝度値と、測定O画像内の対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係として、ヒストグラムを特定した。
【0023】
そして、発明者らは、特定したヒストグラムを、公知の方法で曲線近似して、近似曲線を求めた。発明者らは、求めた近似曲線のピークのうち値が最も大きなものから3つのピークを特定した。即ち、発明者らは、この近似曲線の極大値のうち値が上位3個の極大値を特定した。また、発明者らは、特定したピーク間の谷を特定した。ここで、ピークとは、近似曲線の極大値である。また、ピーク間の谷とは、対応するピーク間における近似曲線の最小の極小値である。この3つのピークは、対応する輝度値の低いものから順に、カルシウムフェライトに対応するピーク、マグネタイトに対応するピーク、ヘマタイトに対応するピークとなる。以下では、カルシウムフェライトに対応するピークを、CFピークとする。また、以下では、マグネタイトに対応するピークを、Mピークとする。また、以下では、ヘマタイトに対応するピークを、Hピークとする。また、この2つの谷は、それぞれ、CFピークとMピークとの間の谷、MピークとHピークとの間の谷である。以下では、CFピークとMピークとの間の谷を、CF・M谷とする。また、以下では、MピークとHピークとの間の谷を、M・H谷とする。
【0024】
発明者らは、M・H谷に対応する輝度値以上を示す輝度値の範囲を、H範囲として特定した。また、発明者らは、CF・M谷に対応する輝度値以上でありM・H谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、M範囲として特定した。
発明者らは、測定O画像から特定したヒストグラムから求めた近似曲線において、CFピークの位置から左側(輝度値の小さい側)に走査していき、対応する値が予め定められた閾値となる位置を特定した。以下では、この位置をCF取り付き点とする。CF取り付き点は、対応する値がこの閾値であり、且つ、対応する輝度値がCFピークよりも小さい近似曲線における位置のうち、最もCFピークに近い位置である。この閾値は、CF・M谷の値、M・H谷の値とのうち小さい方の値以下となるように予め決定した。そして、発明者らは、CF取り付き点に対応する輝度値以上、CF・M谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、CF範囲として特定した。また、発明者らは、CF取り付き点に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、KS範囲として特定した。
【0025】
また、発明者らは、実験用焼結鉱を測定対象としたSi画像を測定Si画像として取得し、画素の輝度値と、測定Si画像内の対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係として、ヒストグラムを特定した。
そして、発明者らは、特定したヒストグラムを、公知の方法で曲線近似して、近似曲線を求めた。発明者らは、求めた近似曲線のピークのうち値の最も大きなものから2つのピークを特定した。また、発明者らは、特定したピーク間の1つの谷を特定した。この2つのピークは、対応する輝度値の低いものから順に、気孔に対応するピーク、シリケートスラグに対応するピークとなる。以下では、気孔に対応するピークを、Kピークとする。また、以下では、シリケートスラグに対応するピークを、Sピークとする。また、Kピークと、Sピークと、の間の谷を、K・S谷とする。
発明者らは、K・S谷に対応する輝度値未満を示す輝度値の範囲を、K範囲として特定した。また、発明者らは、K・S谷に対応する輝度値以上である輝度値の範囲を、S範囲として特定した。
【0026】
そして、発明者らは、実験用焼結鉱の部分であって、測定O画像中のH範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分を、ヘマタイトとして特定した。また、発明者らは、実験用焼結鉱の部分であって、測定O画像中のM範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分を、マグネタイトとして特定した。また、発明者らは、実験用焼結鉱の部分であって、測定O画像中のCF範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分を、カルシウムフェライトとして特定した。
また、発明者らは、実験用焼結鉱の部分であって、測定O画像中のKS範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分のうちの測定Si画像中のK範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分を、気孔として特定した。また、発明者らは、実験用焼結鉱の部分であって、測定O画像中のKS範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分のうちの測定Si画像中のS範囲の輝度値を有する各画素に対応する部分を、シリケートスラグとして特定した。
そして、発明者らは、測定O画像における気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分を、対応する物質に応じた色で着色した画像を生成した。
【0027】
また、発明者らは、比較例として、従来行われている方法を用いて、光学顕微鏡で実験用焼結鉱を撮影した画像から、実験用焼結鉱の組織を、気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とに分類した。
従来行われている方法とは、光学顕微鏡を用いて撮影された実験用焼結鉱の撮影画像について、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムから、気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトに対応する輝度値の範囲を求めて、求めた輝度値の範囲を用いて、撮影画像の各画素に対応する組織が何であるかを特定する方法である。
より具体的には、このヒストグラムの近似曲線を求めて、求めた近似曲線の5つのピーク(対応する輝度値の小さい順に、シリケートスラグ、気孔、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトに対応)と、ピーク間の4つの谷を特定した。この4つの谷を、対応する輝度値の小さい順に、第1谷(光学)、第2谷(光学)、第3谷(光学)、第4谷(光学)とする。そして、実験用焼結鉱の部分であって、光学顕微鏡で撮影した画像における第1谷(光学)に対応する輝度値未満の輝度値を有する画素に対応する部分を、シリケートスラグとする。また、実験用焼結鉱の部分であって、光学顕微鏡で撮影した画像における第1谷(光学)に対応する輝度値以上であり第2谷(光学)に対応する輝度値未満の輝度値を有する画素に対応する部分を、気孔とする。また、実験用焼結鉱の部分であって、光学顕微鏡で撮影した画像における第2谷(光学)に対応する輝度値以上であり第3谷(光学)に対応する輝度値未満の輝度値を有する画素に対応する部分を、カルシウムフェライトとする。また、実験用焼結鉱の部分であって、光学顕微鏡で撮影した画像における第3谷(光学)に対応する輝度値以上であり第4谷(光学)に対応する輝度値未満の輝度値を有する画素に対応する部分を、マグネタイトとする。また、実験用焼結鉱の部分であって、光学顕微鏡で撮影した画像における第4谷(光学)に対応する輝度値以上の輝度値を有する画素に対応する部分を、へマタイトとする。なお、5つのピーク(気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトに対応)のうちの何れかが検出できない場合、ピークが検出できなかったために特定できなかった谷の位置は、ユーザにより推定される。以上が、従来の方法である。
そして、発明者らは、光学顕微鏡で撮影された撮影画像における気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分を、対応する物質に応じた色で着色した画像を生成した。
【0028】
発明者らは、実験用焼結鉱における2つの異なる部分それぞれを測定対象として、組織構成特定方法を用いて組織構成を特定し、比較例として光学顕微鏡による撮影画像を用いて構成を特定した。
実験用焼結鉱における2つの異なる部分それぞれについての実験結果を、
図5、
図6を用いて説明する。
【0029】
図5の画像500は、実験用焼結鉱の測定対象の部分を光学顕微鏡で撮影した画像である。また、ヒストグラム501は、画像500についての、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムである。
画像502は、画像500、ヒストグラム501から従来の方法を用いて特定された組織構成を示す画像である。また、画像503は、測定対象の実験用焼結鉱の部分から、組織構成特定方法により特定された組織構成を示す画像である。画像502と画像503とでは、シリケートスラグ、気孔、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分には、それぞれ異なる色が着色されている。ただし、
図5では、シリケートスラグ、気孔、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分に対応する色それぞれを、異なる模様で表されている。
焼結鉱における同じ部分を示す領域520と領域521とは、気孔であることが確認された領域である。領域520では、気孔とシリケートスラグとが不自然に混在している様子が示されているが、領域521においては気孔のみが示されている。このことから、発明者らは、組織構成特定方法の方が、従来の方法に比べて、シリケートスラグと気孔との識別能が向上していることを確認した。
【0030】
図6の画像600は、実験用焼結鉱の測定対象の部分を光学顕微鏡で撮影した画像である。また、ヒストグラム601は、画像600についての、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムである。
画像602は、画像600、ヒストグラム601から従来の方法を用いて特定された組織構成を示す画像である。また、画像603は、測定対象の実験用焼結鉱の部分から、組織構成特定方法により特定された組織構成を示す画像である。画像602と画像603とでは、シリケートスラグ、気孔、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分には、それぞれ異なる色が着色されている。ただし、
図6では、
図5と同様に、シリケートスラグ、気孔、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する部分に対応する色それぞれを、異なる模様で表されている。
発明者らは、画像603と画像602と実験用画像の測定対象の部分とを見比べて、画像603の方が画像602よりも、実験用焼結鉱における測定対象の部分についてマグネタイトの領域が精度よく表されていることを確認した。即ち、発明者らは、組織構成特定方法の方が従来の方法よりもマグネタイトの識別能が向上していることを確認した。
【0031】
また、EPMAで測定された画像における気孔の部分は、理論上、輝度値が0となる。ただし、実際には、気孔の奥行方向に存在するシリケートスラグ等の影響で気孔の部分に対応する画素の輝度値が、正確に0とはならない場合がある。そこで、発明者らは、このような気孔周辺のシリケートスラグの影響を加味して、K範囲、S範囲を以下のように決定することを想到した。即ち、発明者らは、K範囲を、(谷(Si)に対応する輝度値+設定された閾値(例えば、2、3等))未満を示す輝度値の範囲として決定し、S範囲を、(谷(Si)に対応する輝度値+設定された閾値)以上を示す輝度値の範囲として決定することを想到した。
そして、発明者らは、このように決定したK範囲、S範囲を用いることで、気孔とシリケートスラグとの識別能の向上が図れることを見出した。
【0032】
また、発明者らは、グラフ304とグラフ316との両者についても、画像204(Ca画像)の輝度値を局所的に限定して画像205(O画像)の輝度値の分布を見たときに、画像204(Ca画像)の輝度値を変化させても画像205(O画像)の輝度値の平均値があまり変化していないように見えることに気づいた。また、グラフ305とグラフ321とを見て、画像204(Ca画像)の輝度値と画像201(Si画像)の輝度値との間に、比較的強い相関が有るように見えることに気づいた。そのため、発明者らは、組織構成特定方法において、測定Si画像の代わりに測定Ca画像を用いることを想到した。
測定Si画像の代わりに測定Ca画像を用いる場合の組織構成特定方法について、測定Si画像を用いる場合の組織構成特定方法との差異について説明する。
測定Ca画像を用いる場合、測定Ca画像を用いてK範囲とS範囲とを求めることとなる。例えば、以下のようにしてK範囲とS範囲とが求めることとなる。
【0033】
測定Ca画像から画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムを生成する。生成されるヒストグラムにおいては、ヒストグラム214に示されるように3つのピーク(気孔に対応するピーク、シリケートスラグに対応するピークに加えてカルシウムフェライトに対応するピーク)が生じる。生じた3つのピークは、対応する輝度値の小さいものから順に、気孔に対応するピーク、シリケートスラグに対応するピーク、カルシウムフェライトに対応するピークである。このうちの気孔に対応するピークとシリケートスラグに対応するピークとの間の谷を求めて、求めた谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、K範囲として、求めた谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を、S範囲として、特定することとなる。
【0034】
ただし、グラフ304とグラフ316とが示す分布において画像204(Ca画像)の輝度値が大きいところでの画像205(O画像)の輝度値の分布範囲は、グラフ320とグラフ324とが示す分布において画像201(Si画像)の輝度値が大きいところでの画像205(O画像)の輝度値の分布範囲に比べて小さい方へ移動している。即ち、グラフ304とグラフ316との方が、グラフ320とグラフ324とに比べて相関が強いと考えられる。そのため、O画像との間での輝度値の独立性は、Si画像の方が、Ca画像よりも高いと考えられる。また、ヒストグラム215は、ヒストグラム214に対し輝度分布が大きな方向にシフトしており、ヒストグラム211の分布から離れた位置にあるため、ヒストグラム211との違いが顕著である。したがって、O画像とCa画像とを用いた組織構成特定方法よりも、O画像とSi画像とを用いた組織構成特定方法の方が望ましい。
【0035】
以上の実験の結果から、発明者らは、組織構成特定方法が、従来の方法に比べて、シリケートスラグと気孔との識別能が高く、マグネタイトの識別能も高いことを確認した。このことから、発明者らは、組織構成特定方法を用いて、従来の方法を用いるよりも、より精度よく、焼結鉱の組織構成を特定できるとの知見を得た。
以下では、
図7で後述する構成特定システムが、組織構成特定方法を用いて焼結鉱の組織構成を特定する処理について説明する。
【0036】
(構成特定システム)
(構成特定システムの詳細)
図7は、本実施形態の構成特定システムのシステム構成の一例を示す図である。
構成特定システムは、情報処理装置700、EPMA710を含む。
情報処理装置700は、焼結鉱に対するEPMA710による設定された元素の測定により得られた画像から、焼結鉱の組織構成を特定する情報処理装置である。本実施形態では、情報処理装置700は、パーソナルコンピュータ(PC)であるとするが、サーバ装置、タブレット装置、EPMA710に組み込まれたコンピュータ等の他の情報処理装置であってもよい。
【0037】
情報処理装置700の機能構成について説明する。
情報処理装置700は、取得部701、対応関係特定部702、範囲特定部703、構成特定部704、出力制御部705を含む。
取得部701は、EPMA710から焼結鉱の測定により得られた画像を取得する。
対応関係特定部702は、取得部701により取得された画像について、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係を特定する。
【0038】
範囲特定部703は、対応関係特定部702により特定された対応関係から、取得部701により取得された画像における気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とに対応する画素の輝度値の範囲を特定する。
構成特定部704は、範囲特定部703により特定された輝度値の範囲から、取得部701により取得された画像にしめされる焼結鉱における各部分が何であるかを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定する。
出力制御部705は、構成特定部704により特定された焼結鉱の組織構成の情報を出力する。
【0039】
図8は、情報処理装置700のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置700は、CPU801、主記憶装置802、補助記憶装置803、デバイスI/F804、入力部805、出力部806を含む。各要素は、システムバス807を介して相互に通信可能に接続されている。情報処理装置700は、組織構成特定装置の一例である。
CPU801は、情報処理装置700を制御する中央演算装置である。主記憶装置802は、CPU801のワークエリアやデータの一時的な記憶領域として機能するRandom Access Memory(RAM)である。補助記憶装置803は、各種プログラム、各種設定情報、各種画像データ等を記憶する記憶装置である。本実施形態では、補助記憶装置803は、ハードディスクドライブ(HDD)であるとするが、Read Only Memory(ROM)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の他の記憶装置であってもよい。デバイスI/F804は、EPMA710等の外部のデバイスとの間での情報の入出力に用いられるインターフェースである。入力部805は、情報の入力に用いられる入力部である。本実施形態では、入力部805は、マウスとキーボードとの組であるとするが、マイク、タッチパネル、他の組み合わせの複数の入力装置の組等であってもよい。出力部は、情報の出力に用いられる出力部である。本実施形態では、出力部806は、モニタであるとするが、スピーカ、タッチパネルの表示部等の他の出力装置であってもよい。
CPU801が、補助記憶装置803等に記憶されたプログラムにしたがって処理を実行することで、
図7に示す情報処理装置700の機能、及び、
図9で後述するフローチャートの処理等の情報処理装置700の処理が実現される。
【0040】
(構成特定処理)
図9を用いて、情報処理装置700が組織構成特定方法を実行して、焼結鉱の組織構成を特定する処理について説明する。
図9の処理における組織構成の特定の対象の焼結鉱を、対象焼結鉱とする。
S901において、取得部701は、EPMA710により測定対象の対象焼結鉱に対して行われたOの測定により得られた画像(測定O画像)を、EPMA710から取得する。S901で取得された測定O画像を、第1の画像とも称する。S901の処理は、第1の取得処理の一例である。本実施形態では、EPMA710を用いた測定により得られた画像のサイズは、500画素×500画素である。また、EPMA710を用いた測定により得られた画像の1画素×1画素の領域には、測定対象の対象焼結鉱における2μm×2μmの領域が写される。
本実施形態では、取得部701は、測定O画像を、EPMA710から取得することとする。ただし、他の例として、取得部701は、他の方法で、測定O画像を取得してもよい。例えば、補助記憶装置803に予め測定O画像が記憶されている場合、取得部701は、補助記憶装置803から測定O画像を取得することとしてもよい。また、取得部701は、外部の情報処理装置から送信された測定O画像を取得することとしてもよい。
【0041】
S902において、対応関係特定部702は、S901で取得された測定O画像について、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムを生成する。より具体的には、対応関係特定部702は、S901で取得された測定O画像について、画素の輝度値をビン(各ビンの幅は1)として、対応する輝度値を有する画素が画像に幾つ含まれかを示すヒストグラムを生成する。
そして、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、最小二乗法による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係を示す曲線として特定する。S902で特定された近似曲線を、第1の対応関係とも称する。S902の処理は、第1の対応関係特定処理の一例である。なお、近似曲線はスプラインや多項式のような近似関数を使って作成すればよい。
本実施形態では、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、最小二乗法による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を特定することとした。ただし、他の例として、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、他の手法(例えば、最尤推定法等)による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を特定してもよい。
【0042】
S903において、範囲特定部703は、S902で特定された近似曲線の極大値のうち値の最も大きなもの3つの極大値を、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトに対応する3つのピークとして特定する。範囲特定部703は、この3つのピークを、対応する輝度値の値が小さい順に、それぞれ、カルシウムフェライトに対応するCFピーク、マグネタイトに対応するMピーク、ヘマタイトに対応するHピークとして特定する。ここで特定されたCFピークを、第1のピークとも称する。また、ここで特定されたMピークを、第2のピークとも称する。また、ここで特定されたHピークを、第3のピークとも称する。
そして、範囲特定部703は、M・H谷(MピークとHピークとの間の谷(MピークとHピークとの間の最小の極小値))を特定し、特定したM・H谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を、H範囲として特定する。ここで特定されたM・H谷を、第2の谷とも称する。また、ここで特定されたH範囲は、測定O画像中におけるヘマタイトに対応する画素の輝度値の範囲である第4の範囲の一例である。
また、範囲特定部703は、CF・M谷(CFピークとMピークとの間の谷(CFピークとMピークとの間の最小の極小値))を特定し、特定したCF・M谷に対応する輝度値以上でありM・H谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、M範囲として特定する。ここで特定されたCF・M谷を、第1の谷とも称する。また、ここで特定されたM範囲は、測定O画像中におけるマグネタイトに対応する画素の輝度値の範囲である第3の範囲の一例である。
【0043】
また、範囲特定部703は、CF取り付き点(対応する値が設定された閾値であり、且つ、対応する輝度値がCFピークよりも小さいS902で特定された近似曲線における位置のうち、最もCFピークに近い位置)を特定する。ここで特定されたCF取り付き点は、SK範囲とCF範囲との境界に対応する境界位置である。本実施形態では、この閾値は、CF・M谷の値、M・H谷の値のうちの小さい値とする。範囲特定部703は、CF取り付き点に対応する輝度値以上でありCF・M谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、CF範囲として特定する。ここで特定されたCF範囲は、測定O画像中におけるカルシウムフェライトに対応する画素の輝度値の範囲である第2の範囲の一例である。また、範囲特定部703は、特定した位置に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、KS範囲として特定する。ここで特定されたKS範囲は、測定O画像中における気孔、又は、シリケートスラグに対応する画素の輝度値の範囲である第1の範囲の一例である。
S903の処理は、第1の範囲特定処理の一例である。
【0044】
S904において、取得部701は、EPMA710により測定対象の対象焼結鉱に対して行われたSiの測定により得られた画像(測定Si画像)を、EPMA710から取得する。S904で取得された測定Si画像を、第2の画像とも称する。S904の処理は、第2の取得処理の一例である。S904で取得された測定Si画像は、S901で取得された測定O画像と同じ領域(対象焼結鉱の部分)が撮影された画像である。以下では、対象焼結鉱におけるS901で取得された測定O画像とS904で取得された測定Si画像とに撮影されている領域を、撮影領域とする。
本実施形態では、取得部701は、測定Si画像を、EPMA710から取得することとする。ただし、他の例として、取得部701は、他の方法で、測定Si画像を取得してもよい。例えば、補助記憶装置803に予め測定Si画像が記憶されている場合、取得部701は、補助記憶装置803から測定Si画像を取得することとしてもよい。また、取得部701は、外部の情報処理装置から送信された測定Si画像を取得することとしてもよい。
【0045】
S905において、対応関係特定部702は、S904で取得された測定Si画像について、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムを生成する。より具体的には、対応関係特定部702は、S904で取得された測定Si画像について、画素の輝度値をビン(各ビンの幅は1)として、対応する輝度値を有する画素が画像に幾つ含まれるかを示すヒストグラムを生成する。
そして、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、最小二乗法による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係を示す曲線として特定する。S905で特定された近似曲線を、第2の対応関係とも称する。S905の処理は、第2の対応関係特定処理の一例である。
本実施形態では、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、最小二乗法による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を特定する。ただし、他の例として、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、他の手法(例えば、最尤推定法等)による回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を特定してもよい。
【0046】
S906において、範囲特定部703は、S905で特定された近似曲線の極大値のうち値の最も大きなものから2つの極大値を、気孔、シリケートスラグに対応する2つのピークとして特定する。範囲特定部703は、この2つのピークを、対応する輝度値の値が小さい順に、それぞれ、気孔に対応するKピーク、シリケートスラグに対応するSピークとする。ここで特定されたKピークを、第4のピークとも称する。また、ここで特定されたSピークを、第5のピークとも称する。
そして、範囲特定部703は、K・S谷(KピークとSピークとの間の谷(KピークとSピークとの間の最小の極小値))を特定し、特定したK・S谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、K範囲として特定する。ここで特定されたK・S谷を、第3の谷とも称する。また、ここで特定されたK範囲は、測定Si画像中における気孔に対応する画素の輝度値の範囲である第5の範囲の一例である。また、範囲特定部703は、特定したK・S谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を、S範囲として特定する。ここで特定されたS範囲は、測定Si画像中におけるシリケートスラグに対応する画素の輝度値の範囲である第6の範囲の一例である。
S906の処理は、第2の範囲特定処理の一例である。
【0047】
S907において、構成特定部704は、撮影領域の部分であって、測定O画像におけるH範囲の輝度値を有する画素が示す部分を、ヘマタイトであると特定する。また、構成特定部704は、撮影領域の部分であって、測定O画像におけるM範囲の輝度値を有する画素が示す部分を、マグネタイトであると特定する。また、構成特定部704は、撮影領域の部分であって、測定O画像におけるCF範囲の輝度値を有する画素が示す部分を、カルシウムフェライトであると特定する。
また、構成特定部704は、撮影領域の部分であって、測定O画像におけるKS範囲の輝度値を有する画素と、測定Si画像におけるK範囲の輝度値を有する画素と、が示す部分を、気孔であると特定する。構成特定部704は、撮影領域の部分であって、測定O画像におけるKS範囲の輝度値を有する画素と、測定Si画像におけるS範囲の輝度値を有する画素と、が示す部分を、シリケートスラグであると特定する。
S907の処理により、構成特定部704は、対象焼結鉱における撮影領域の部分について、組織構成を特定する。S907の処理は、構成特定処理の一例である。
【0048】
S908において、出力制御部705は、S907で特定された組織構成に基づいて、S901で取得された測定O画像における気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトそれぞれに対応する画素を特定する。そして、出力制御部705は、測定O画像の各画素を、対応する組織に応じた色で着色した画像を、S907で特定された組織構成を示す情報を示す画像として生成する。出力制御部705は、生成した画像を出力部806に表示することで出力する。ただし、他の例として、出力制御部705は、生成した画像を、予め定められた送信先(例えば、ユーザの保有する端末等)に送信することで出力してもよい。また、出力制御部705は、生成した画像を、印刷装置を用いて、印刷媒体に印刷することで、出力してもよい。また、出力制御部705は、生成した画像を、予め定められた記憶先(例えば、補助記憶装置803等)に記憶することで、出力してもよい。S908の処理は、出力処理の一例である。
本実施形態では、出力制御部705は、S901で取得された測定O画像を用いて出力する画像を生成した。ただし、他の例として、出力制御部705は、S901で取得された測定O画像とS904で取得された測定Si画像と同じ被写体を示す画像を生成することができれば、他の方法で出力する画像を生成してもよい。例えば、出力制御部705は、S904で取得された測定Si画像上に各組織に応じた色を着色することで、出力する画像を生成してもよい。
【0049】
(効果)
本実施形態の処理により、構成特定システムは、より精度よく、焼結鉱の組織を気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とに分類することで、焼結鉱の組織構成を特定できる。
【0050】
<実施形態2>
本実施形態では、構成特定システムは、基準とする焼結鉱についての測定O画像と測定Si画像とを用いて、予め特定したK範囲・S範囲・CF範囲・M範囲・H範囲を用いて、組織構成を特定したい対象焼結鉱の組織構成を特定する。例えば、焼結鉱には、非常に微量なマグネタイトしか含まれない場合がある。そのような場合、実施形態1の構成特定システムは、S903においてMピークを特定できない場合がある。その結果、構成特定システムは、CF・M谷、M・H谷を特定できないため、CF範囲、M範囲、H範囲を特定できず、焼結鉱の組織構成を特定できないこととなる。本実施形態の構成特定システムは、このような場合にも焼結鉱の組織構成を特定できる。
本実施形態の構成特定システムのシステム構成は、実施形態1と同様である。また、情報処理装置700のハードウェア構成及び機能構成は、実施形態1と同様である。
【0051】
本実施形態の構成特定システムの処理について説明する。本実施形態では、構成特定システムは、気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトを設定された水準以上の割合で含む焼結鉱(以下では、基準焼結鉱)を用いて、予め以下の処理を行う。
即ち、情報処理装置700は、対象焼結鉱を基準焼結鉱と読み替えて、S901~S906と同様の処理を行う。これにより、情報処理装置700は、基準焼結鉱についての測定O画像と測定Si画像とを用いて、予め、K範囲・S範囲・CF範囲・M範囲・H範囲を特定する。尚、気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトを設定された水準以上の割合で含むかどうかは、CFピーク、Mピーク、Hピーク、Kピーク、Sピークを特定できるかどうかで判断してもよい。また、基準焼結鉱を、第1の焼結鉱とも称する。
続いて、情報処理装置700は、組織構成を特定したい対象焼結鉱について、S901、S904と同様の処理を行うことで、測定O画像と測定Si画像とを取得する。この対象焼結鉱を、第2の焼結鉱とも称する。このS901と同様の処理で取得された測定O画像を、第3の画像とも称する。このS904と同様の処理で取得された測定Si画像を、第4の画像とも称する。そして、情報処理装置700は、取得した測定O画像と、測定Si画像と、予め特定したK範囲・S範囲・CF範囲・M範囲・H範囲と、を用いてS907と同様の処理を行うことで、対象焼結鉱の組織構成を特定する。
【0052】
以上、本実施形態では、構成特定システムは、基準焼結鉱を用いて、予め、K範囲・S範囲・CF範囲・M範囲・H範囲を特定し、特定したK範囲・S範囲・CF範囲・M範囲・H範囲を用いて、対象焼結鉱の組織構成を特定することとした。これにより、対象焼結鉱にマグネタイトが微量にしか含まれない場合であっても、より精度よく、焼結鉱内の気孔と、シリケートスラグ、カルシウムフェライト、マグネタイト、ヘマタイトといった4種の鉱物相とを特定することで、焼結鉱の組織構成を特定できる。
【0053】
<その他の実施形態>
実施形態1、2では、情報処理装置700は、対象焼結鉱に対するEPMA710を用いたOの測定により得られた画像(測定O画像)と、対象焼結鉱に対するEPMA710を用いたSiの測定により得られた画像(測定Si画像)と、を用いることとした。ただし、他の例として、情報処理装置700は、測定Si画像の代わりに、対象焼結鉱に対するEPMA710を用いたCaの測定により得られた画像(測定Ca画像)を用いることとしてもよい。その場合、測定Si画像を用いる場合と比べて、K範囲・S範囲を求める処理(S904~S906)が異なる。
ここで、実施形態1における測定Si画像の代わりに測定Ca画像を用いる場合におけるS904~S906の処理について説明する。
【0054】
S904において、取得部701は、EPMA710により測定対象の対象焼結鉱に対して行われたCaの測定により得られた画像(測定Ca画像)を取得する。S904で取得された測定Ca画像を、第2の画像とも称する。S904で取得された測定Ca画像は、S901で取得された測定O画像と同じ領域(対象焼結鉱の部分)が撮影された画像である。
S905において、対応関係特定部702は、S904で取得された測定Ca画像について、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応を示すヒストグラムを生成する。そして、対応関係特定部702は、生成したヒストグラムについて、回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を、画素の輝度値と、対応する輝度値を有する画素の個数と、の対応関係を示す曲線として特定する。
【0055】
S906において、範囲特定部703は、S905で特定された近似曲線の極大値のうち値の最も大きなものから3つの極大値を、気孔、シリケートスラグ、カルシウムフェライトに対応する3つのピークとして特定する。範囲特定部703は、特定した3つのピークを、対応する輝度値の値が小さい順に、それぞれ、気孔に対応するKピーク、シリケートスラグに対応するSピーク、カルシウムフェライトに対応するCFピーク(Ca)と特定する。ここで特定されたKピークを、第6のピークとも称する。また、ここで特定されたSピークを、第7のピークとも称する。ここで特定されたCFピーク(Ca)を、第8のピークとも称する。
そして、範囲特定部703は、K・S谷(KピークとSピークとの間の谷(KピークとSピークとの間の最小の極小値))を特定し、特定したK・S谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、K範囲として特定する。ここで特定されたK・S谷を、第4の谷とも称する。また、範囲特定部703は、特定したK・S谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を、S範囲として特定する。
実施形態2における測定Si画像の代わりに測定Ca画像を用いる場合には、対象焼結鉱を基準焼結鉱と読み替えて、S904~S906と同様の処理を行う。
以上が、測定Si画像の代わりに測定Ca画像を用いる場合のK範囲・S範囲を求める処理である。
また、構成特定部704は、測定Si画像を測定Ca画像と読み替えて、S907と同様の処理を行うことで、対象焼結鉱の組織構成を特定する。
【0056】
また、実施形態1、2では、範囲特定部703は、S906で、K・S谷に対応する輝度値未満の輝度値の範囲を、K範囲として特定し、K・S谷に対応する輝度値以上の輝度値の範囲を、S範囲として特定することとした。ただし、他の例として、範囲特定部703は、気孔の奥行方向に存在するシリケートスラグの影響で気孔の部分に対応する画素の輝度値が正確に0とはならない場合に対応して、以下のようにしてもよい。
即ち、範囲特定部703は、S906で、(K・S谷に対応する輝度値+設定された閾値(例えば、2、3等))未満の輝度値の範囲を、K範囲として特定し、(K・S谷に対応する輝度値+設定された閾値)以上の輝度値の範囲を、S範囲として特定してもよい。
また、実施形態1、2では、範囲特定部703は、ヒストグラムの近似曲線に基づいて、M範囲とH範囲との境界となる輝度値、CF範囲とM範囲との境界となる輝度値、及びK範囲とS範囲との境界となる輝度値を特定した。ただし、範囲特定部703は、モード法、判別分析法などの公知の手法でこれらの輝度値を特定してもよい。
【0057】
また、実施形態1、2では、対応関係特定部702は、S902、S905で、ヒストグラムについて、回帰分析を行うことで、このヒストグラムの近似曲線を特定することとした。
対応関係特定部702は、生成したヒストグラムに外れ値が存在する場合に対応して、生成したヒストグラムに対して、公知の外れ値除去処理(例えば、ローパスフィルタ処理、メディアンフィルタ処理等)を施した後で、回帰分析を行うこととしてもよい。
【0058】
また、実施形態1、2では、範囲特定部703は、SK範囲とCF範囲との境界として特定された位置に対応する輝度値を、SK範囲とCF範囲との境界(双方の範囲の端点)とした。ただし、範囲特定部703は、SK範囲とCF範囲との境界として特定された位置に対応する輝度値に設定された値(例えば、1、2、-1、-2等)を加えた輝度値を、SK範囲とCF範囲との境界としてもよい。
また、範囲特定部703は、CF・M谷に対応する輝度値を、CF範囲とM範囲との境界とした。ただし、範囲特定部703は、CF・M谷に対応する輝度値に設定された値(例えば、1、2、-1、-2等)を加えた輝度値を、CF範囲とM範囲との境界としてもよい。
【0059】
また、範囲特定部703は、M・H谷に対応する輝度値を、M範囲とH範囲との境界とした。ただし、範囲特定部703は、M・H谷に対応する輝度値に設定された値(例えば、1、2、-1、-2等)を加えた輝度値を、M範囲とH範囲との境界としてもよい。
また、範囲特定部703は、K・S谷に対応する輝度値を、K範囲とS範囲との境界とした。ただし、範囲特定部703は、K・S谷に対応する輝度値に設定された値(例えば、1、2、-1、-2等)を加えた輝度値を、K範囲とS範囲との境界としてもよい。
【0060】
また、実施形態1、2では、情報処理装置700が組織構成特定方法を実行する処理について説明した。ただし、他の例として、ユーザが、組織構成特定方法を実行することとしてもよい。その場合、ユーザは、計算機等のツールを用いてもよい。
また、実施形態1、2の構成特定システムの機能構成の一部又は全てをハードウェアとして情報処理装置700に実装してもよい。
【符号の説明】
【0061】
700 情報処理装置、710 EPMA、801 CPU