(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】二次電池保護回路、二次電池保護装置、電池パック及び二次電池保護回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230512BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230512BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230512BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2019193028
(22)【出願日】2019-10-23
(62)【分割の表示】P 2019103263の分割
【原出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 貴志
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-225007(JP,A)
【文献】特開2009-183126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタ及び放電制御NMOSトランジスタを用いて、前記二次電池を保護する二次電池保護回路であって、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断
する遮断回路と、
前記
過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、二次電池保護回路。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記制御電圧を供給する高電源電位部にソースが接続された第2のPMOSトランジスタと、前記高電源電位部よりも電位が低い低電源電位部にソースが接続された第2のNMOSトランジスタとによるCMOSインバータを有し、
前記制御回路が、前記二次電池の電圧が前記
過放電検出電圧よりも低い状態において、前記第2のPMOSトランジスタと前記第2のNMOSトランジスタの各ゲートにローレベルの信号を出力する設定の場合、前記遮断回路は、前記CMOSインバータの出力ノードと前記高電源電位部との間を遮断
し、
前記制御回路が、前記二次電池の電圧が前記
過放電検出電圧よりも低い状態において、前記第2のPMOSトランジスタと前記第2のNMOSトランジスタの各ゲートにハイレベルの信号を出力する設定の場合、前記遮断回路は、前記CMOSインバータの出力ノードと前記低電源電位部との間を遮断
する、
請求項
1に記載の二次電池保護回路。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記制御電圧を供給する高電源電位部にソースが接続された第2のPMOSトランジスタと、前記高電源電位部よりも電位が低い低電源電位部にソースが接続された第2のNMOSトランジスタとによるCMOSインバータを有し、
前記制御回路が、前記二次電池の電圧が前記
過放電検出電圧よりも低い状態において、前記第2のPMOSトランジスタと前記第2のNMOSトランジスタの各ゲートにローレベルの信号を出力する設定の場合、前記遮断回路は、前記CMOSインバータの出力ノードと前記高電源電位部との間を遮断
し、
前記遮断回路は、PMOSトランジスタを有し、
前記PMOSトランジスタは、前記CMOSインバータの出力ノードと前記高電源電位部との間に挿入されている、請求項
1に記載の二次電池保護回路。
【請求項4】
二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタと、
前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタと、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断
する遮断回路と、
前記
過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、二次電池保護装置。
【請求項5】
二次電池と、
前記二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタと、
前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタと、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断
する遮断回路と、
前記
過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記
過放電検出回路により検出されている
間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、電池パック。
【請求項6】
二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタのゲート、及び、前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタのゲートに、前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路とを備える二次電池保護回路の制御方法であって、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が検出されている
間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断
し、
前記
過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が検出されている
間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定する、二次電池保護回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池保護回路、二次電池保護装置、電池パック及び二次電池保護回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池の正極と、負荷及び充電器の高電位側電源端子に接続されるプラス端子との間の電流経路に直列に挿入される一対のNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを用いて、二次電池を保護する保護回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、特許文献1に開示された従来の電池パックの回路図である。
図1に示す電池パックは、二次電池113と、二次電池113を保護する保護回路117と、不図示の充電装置及び負荷装置が接続される端子111,112とを有する。保護回路117は、二次電池113の正極と+端子111との間に直列に接続されるNチャネル型MOSFET114,115と、MOSFET114,115を制御する制御部116とを含む。
【0004】
制御部116は、電源線119と接地線120との間の電圧を昇圧するチャージポンプ121を含む。また、制御部116は、チャージポンプ121の昇圧電圧をMOSFET114,115のそれぞれのゲートに印加させるPチャネル型MOSFET122,123と、MOSFET114,115のそれぞれのゲートを接地線120の電位にするNチャネル型MOSFET124,125とを含む。MOSFET122,124の共通ゲート、及び、MOSFET123,125の共通ゲートは、制御部116の図示しない内部回路に接続されている。
【0005】
制御部116は、さらに、電源切換え回路126を含む。電源切換え回路126は、Pチャネル型MOSFET128,129と、インバータ127とを含む。電源切換え回路126へのゲート信号の入力により、MOFET128,129のどちらかがオン状態になり、電源線119への電圧供給元は、二次電池113から又は+端子111からのどちらかに切換わる。
【0006】
次に、
図1に示す電池パックの動作について説明する。負荷装置に電池パックの端子111,112が接続されると、MOSFET128を介して電源線119に印加される二次電池113の電圧は、チャージポンプ121により昇圧される。MOSFET122,123はオン状態、MOSFET124,125はオフ状態なので、その昇圧電圧によりMOSFET114,115はオン状態になり、二次電池113は放電状態となる。
【0007】
放電が進み、二次電池113の電圧値が過放電検出電圧を下回ると、MOSFET115はオフ状態となるので、二次電池113の放電は停止し、二次電池113は過放電から保護される。このとき、MOSFET128はオフ状態、MOSFET129はオン状態に切換わるので、二次電池113から電源線119への電圧は遮断される。これにより、チャージポンプ121はオフ状態となるので、MOSFET114もオフ状態となる。
【0008】
次に、二次電池113の電圧値が過放電検出電圧を下回った状態で、端子111,112に充電装置が接続されると、充電装置からの電圧は、+端子111、MOSFET115の寄生ダイオード、電源切換え回路126のMOSFET129を経由して、電源線119に印加される。電源線119に電圧が印加されると、その電圧は、チャージポンプ121により昇圧される。チャージポンプ121により昇圧された電圧によって、MOSFET114はオン状態となり、二次電池113は充電状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1に示す構成では、二次電池113の電圧値が過放電検出電圧に対して非常に下回った状態(例えば、二次電池113の電圧値が0ボルトに近い状態)では、チャージポンプ121の停止によりMOSFET114はオフとなる。その状態で、端子111,112に充電装置が接続されると、+端子111の電圧は充電装置の出力電圧VCHGに持ち上がる。このとき、チャージポンプ121への入力電圧VcpIN(電源線119の電圧)は、MOSFET115の寄生ダイオードの順方向電圧をVf
115とすると、「VcpIN=VCHG-Vf
115」となる。
【0011】
入力電圧VcpINがチャージポンプ121の最低作動電圧VcpL以上になるまで+端子111の電圧が持ち上がると、チャージポンプ121は起動する。起動したチャージポンプ121による昇圧電圧は、MOSFET114のゲートに供給され、MOSFET114はオン状態となる。
【0012】
MOSFET114がオン状態になると、MOSFET114のドレイン-ソース間の電圧は約0ボルトになるので、入力電圧VcpINは、二次電池113の電圧VBまでドロップする。「VcpIN=VB<VcpL」であれば、チャージポンプ121は再び停止し、MOSFET114も再びオフ状態となってしまう。つまり、VB>VcpLとなるまで、チャージポンプ121の起動と停止が繰り返され、二次電池113に対する充電効率が低下する場合が考えられる。
【0013】
そこで、本開示は、低電圧状態の二次電池に対する充電効率の低下を抑制可能な、二次電池保護回路、二次電池保護装置、電池パック及び二次電池保護回路の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、
二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタ及び放電制御NMOSトランジスタを用いて、前記二次電池を保護する二次電池保護回路であって、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断する遮断回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、二次電池保護回路を提供する。
【0015】
また、本開示は、
二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタと、
前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタと、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断する遮断回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、二次電池保護装置を提供する。
【0016】
また、本開示は、
二次電池と、
前記二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタと、
前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタと、
前記二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記充電制御NMOSトランジスタのゲート及び前記放電制御NMOSトランジスタのゲートに前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断する遮断回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定するスイッチ回路とを備える、電池パックを提供する。
【0017】
また、本開示は、
二次電池の電圧を昇圧することで制御電圧を生成する昇圧回路と、
前記二次電池の正極と負荷及び充電器の高電位側電源端子との間の電流経路に直列に挿入される充電制御NMOSトランジスタのゲート、及び、前記電流経路に直列に挿入される放電制御NMOSトランジスタのゲートに、前記制御電圧を供給する駆動回路と、
所定の過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧を検出する過放電検出回路と、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が前記過放電検出回路により検出されている場合、前記放電制御NMOSトランジスタのゲートがローレベルになるように前記駆動回路を動作させる制御回路とを備える二次電池保護回路の制御方法であって、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が検出されている間に、前記制御電圧を前記充電制御NMOSトランジスタのゲートに供給するノードを遮断し、
前記過放電検出電圧よりも低い前記二次電池の電圧が検出されている間に、前記充電制御NMOSトランジスタのゲートを前記高電位側電源端子の電位に固定する、二次電池保護回路の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、低電圧状態の二次電池に対する充電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】一実施形態における電池パックの構成を示す図である。
【
図4】一実施形態における電池パックの動作を例示するタイミングチャートである。
【
図5】低電圧検出回路の第1の構成例を示す図である。
【
図6】低電圧検出回路の第2の構成例を示す図である。
【
図7】低電圧検出回路の第3の構成例を示す図である。
【
図9】一比較形態における電池パックの構成を示す図である。
【
図10】第2の実施形態における電池パックの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図2は、第1の実施形態における電池パックの構成を示す図である。
図2に示す電池パック100は、二次電池70と、電池保護装置80とを内蔵して備える。
【0022】
二次電池70は、充放電可能な電池の一例である。二次電池70は、プラス端子5(P+端子)とマイナス端子6(P-端子)に接続される負荷90に電力を供給する。二次電池70は、プラス端子5とマイナス端子6に接続される充電器91によって充電されることが可能である。二次電池70の具体例として、リチウムイオン電池やリチウムポリマ電池などが挙げられる。電池パック100は、負荷90に内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。
【0023】
負荷90は、電池パック100の二次電池70を電源とする負荷の一例である。負荷90の具体例として、電動工具などの電動機器や、携帯可能な携帯端末装置などの電子機器が挙げられる。電子機器の具体例として、携帯電話、スマートフォン、コンピュータ、ゲーム機、テレビ、カメラなどが挙げられる。負荷90は、これらの機器に限られない。
【0024】
電池保護装置80は、二次電池70を電源として動作する二次電池保護装置の一例であり、二次電池70の充放電を制御することによって二次電池70を過充電や過放電等から保護する。電池保護装置80は、プラス端子5(P+端子)と、マイナス端子6(P-端子)と、正極端子7(B+端子)と、負極端子8(B-端子)と、スイッチ回路部3と、電池保護回路10とを備える。
【0025】
プラス端子5は、負荷90及び充電器91の高電位側電源端子が接続され得る端子の一例である。マイナス端子6は、負荷90及び充電器91の低電位側電源端子が接続され得る端子の一例である。正極端子7は、プラス側電流経路9aを二次電池70の正極71に接続するための端子であり、負極端子8は、マイナス側電流経路9bを二次電池70の負極72に接続するための端子である。
【0026】
二次電池70の正極71とプラス端子5とは、プラス側電流経路9aによって接続され、二次電池70の負極72とマイナス端子6とは、マイナス側電流経路9bによって接続される。プラス側電流経路9aは、二次電池70の正極71とプラス端子5との間の充放電電流経路の一例であり、マイナス側電流経路9bは、二次電池70の負極72とマイナス端子6との間の充放電電流経路の一例である。
【0027】
スイッチ回路部3は、二次電池70の正極71と、負荷90及び充電器91の高電位側電源端子に接続され得るプラス端子5との間のプラス側電流経路9aに直列に挿入される。
【0028】
スイッチ回路部3は、例えば、充電制御トランジスタ1と放電制御トランジスタ2とを備える。充電制御トランジスタ1は、二次電池70の充電経路を遮断する充電経路遮断部の一例であり、放電制御トランジスタ2は、二次電池70の放電経路を遮断する放電経路遮断部の一例である。
図1の場合、充電制御トランジスタ1は、二次電池70の充電電流が流れる電流経路9aを遮断し、放電制御トランジスタ2は、二次電池70の放電電流が流れる電流経路9aを遮断する。トランジスタ1,2は、電流経路9aの導通/遮断を切り替えるスイッチング素子であり、電流経路9aに直列に挿入されている。トランジスタ1,2は、例えば、NMOSトランジスタである。
【0029】
充電制御トランジスタ1は、ゲート-ソース間に寄生する入力容量と、ゲート-ドレイン間に寄生する入力容量とを有する。放電制御トランジスタ2は、ゲート-ソース間に寄生する入力容量と、ゲート-ドレイン間に寄生する入力容量とを有する。充電制御トランジスタ1は、ドレインとソースとの間に、二次電池70の充電電流の向きとは逆の向きを順方向とする寄生ダイオードを有する。放電制御トランジスタ2は、ドレインとソースとの間に、二次電池70の放電電流の向きとは逆の向きを順方向とする寄生ダイオードを有する。
【0030】
電池保護回路10は、二次電池保護回路の一例である。電池保護回路10は、二次電池70の正極71と、負荷90及び充電器91の高電位側電源端子に接続されるプラス端子5との間の電流経路109aに直列に挿入される一対のNMOSトランジスタを用いて、二次電池70を過放電等から保護する。電池保護回路10は、スイッチ回路部3をオフにすることによって、二次電池70の保護動作を行う。電池保護回路10は、二次電池70の正極71と負極72との間の電池電圧("セル電圧"とも称する)で動作する集積回路(IC)である。電池保護回路10は、例えば、充電制御端子11(COUT端子)、放電制御端子12(DOUT端子)、監視端子18(V+端子)、電源端子15(VDD端子)及びグランド端子13(VSS端子)を備える。
【0031】
COUT端子は、充電制御トランジスタ1のゲートに接続され、充電制御トランジスタ1をオン及びオフさせる信号を出力する。DOUT端子は、放電制御トランジスタ2のゲートに接続され、放電制御トランジスタ2をオン及びオフさせる信号を出力する。
【0032】
V+端子は、プラス端子5の電位の監視に使用され、プラス端子5に接続されている。V+端子は、例えば、制御回路40が負荷90又は充電器91の接続の有無を監視するのに使用され、トランジスタ1,2とプラス端子5との間でプラス側電流経路9aに抵抗14を介して接続されている。
【0033】
VDD端子は、電池保護回路10の電源端子であり、二次電池70の正極71及びプラス側電流経路9aに接続されている。VSS端子は、電池保護回路10のグランド端子であり、二次電池70の負極72及びマイナス側電流経路9bに接続されている。抵抗4aとキャパシタ16との直列回路が、二次電池70に並列に接続されるように、プラス側電流経路9aとマイナス側電流経路9bとの間に接続されている。VDD端子は、抵抗4aとキャパシタ16との間の接続ノードに接続されているので、VDD端子における電位の変動を抑えることができる。
【0034】
電池保護回路10は、充電制御トランジスタ1をオフにすることによって、二次電池70を過充電等の充電異常から保護し、放電制御トランジスタ2をオフにすることによって、二次電池70を過放電等の放電異常や短絡異常から保護する。電池保護回路10は、検出回路20、チャージポンプ30、駆動回路50、制御回路40、低電圧検出回路61、遮断回路62及びスイッチ回路69を備える集積回路(IC)である。
【0035】
検出回路20は、二次電池70の状態を検出し、その検出状態を出力する。検出回路20は、VDD端子とVSS端子との間の電圧である電源電圧Vdをモニタする。VDD端子は二次電池70の正極71に接続され、VSS端子は二次電池70の負極72に接続されているため、電源電圧Vdは、二次電池70のセル電圧VBATに略等しい。したがって、検出回路20は、電源電圧Vdをモニタすることによって、二次電池70のセル電圧VBATを検出できる。また、検出回路20は、VDD端子を基準電位とするV+端子の電圧である監視電圧V+をモニタする。
【0036】
検出回路20は、例えば、所定の過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが検出されている場合、過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが検出されていることを表す過充電検出信号を出力する。また、検出回路20は、例えば、所定の過充電復帰電圧Vrel1よりも低い電源電圧Vdが検出されている場合、過充電復帰電圧Vrel1よりも低い電源電圧Vdが検出されていることを表す過充電復帰検出信号を出力する。過充電検出電圧Vdet1は、過充電検出用の閾値であり、過充電復帰電圧Vrel1は、過充電復帰検出用の閾値である。過充電復帰電圧Vrel1は、過充電検出電圧Vdet1よりも低い電圧値に設定される。
【0037】
検出回路20は、例えば、所定の過放電検出電圧Vdet2よりも低い電源電圧Vdが検出されている場合、過放電検出電圧Vdet2よりも低い電源電圧Vdが検出されていることを表す過放電検出信号を出力する。また、検出回路20は、例えば、所定の過放電復帰電圧Vrel2よりも高い電源電圧Vdが検出されている場合、過放電復帰電圧Vrel2よりも高い電源電圧Vdが検出されていることを表す過放電復帰検出信号を出力する。過放電検出電圧Vdet2は、過放電検出用の閾値であり、過放電復帰電圧Vrel2は、過放電復帰検出用の閾値である。過放電復帰電圧Vrel2は、過放電検出電圧Vdet2よりも高い電圧値に設定される。
【0038】
検出回路20は、例えば、所定の放電過電流検出電圧Vdet3よりも低い監視電圧V+が検出されている場合、放電過電流検出電圧Vdet3よりも低い監視電圧V+が検出されていることを表す放電過電流検出信号を出力する。また、検出回路20は、例えば、所定の放電過電流復帰電圧Vrel3よりも高い監視電圧V+が検出されている場合、放電過電流復帰電圧Vrel3よりも高い監視電圧V+が検出されていることを表す放電過電流復帰検出信号を出力する。放電過電流検出電圧Vdet3は、放電過電流検出用の閾値であり、放電過電流復帰電圧Vrel3は、放電過電流復帰検出用の閾値である。放電過電流復帰電圧Vrel3は、放電過電流検出電圧Vdet3よりも高い電圧値に設定される。
【0039】
検出回路20は、例えば、所定の充電過電流検出電圧Vdet4よりも高い監視電圧V+が検出されている場合、充電過電流検出電圧Vdet4よりも高い監視電圧V+が検出されていることを表す充電過電流検出信号を出力する。また、検出回路20は、例えば、所定の充電過電流復帰電圧Vrel4よりも低い監視電圧V+が検出されている場合、充電過電流復帰電圧Vrel4よりも低い監視電圧V+が検出されていることを表す充電過電流復帰検出信号を出力する。充電過電流検出電圧Vdet4は、充電過電流検出用の閾値であり、充電過電流復帰電圧Vrel4は、充電過電流復帰検出用の閾値である。充電過電流復帰電圧Vrel4は、充電過電流検出電圧Vdet4よりも低い電圧値に設定される。
【0040】
チャージポンプ30は、電源電圧Vdを昇圧することで、電圧値が電源電圧Vdよりも高い制御電圧Vcpを生成する昇圧回路である。チャージポンプ30は、例えば、充電制御トランジスタ1及び放電制御トランジスタ2の入力容量をチャージポンプ30の出力容量として利用して昇圧した制御電圧Vcpを生成する。チャージポンプ30は、他の公知の構成によって電圧を昇圧する回路でもよい。例えば、チャージポンプ30は、フライングキャパシタ31を電源電圧Vdで充電した電荷を、充電制御トランジスタ1及び放電制御トランジスタ2の入力容量に転送することを繰り返すことにより、電源電圧Vdの2倍の制御電圧Vcpを生成する。フライングキャパシタ31は、電池保護回路10に内蔵されても外付けされてもよい。
【0041】
駆動回路50は、充電制御トランジスタ1のゲート及び放電制御トランジスタ2のゲートに制御電圧Vcpを供給する。
【0042】
駆動回路50は、制御電圧Vcpを使用して、充電制御トランジスタ1をオンにする信号をCOUT端子から出力する。つまり、駆動回路50は、制御電圧VcpをCOUT端子に供給してCOUT端子の出力状態をハイレベルにする。一方、駆動回路50は、放電制御トランジスタ2をオンにする信号をDOUT端子から出力する。つまり、駆動回路50は、制御電圧VcpをDOUT端子に供給してDOUT端子の出力状態をハイレベルにする。
【0043】
駆動回路50は、VSS端子のグランド電位又はVDD端子の電源電位を使用して、充電制御トランジスタ1をオフにする信号をCOUT端子から出力する。つまり、駆動回路50は、VSS端子のグランド電位又はVDD端子の電源電位をCOUT端子に供給してCOUT端子の出力状態をローレベルにする。一方、駆動回路50は、VSS端子のグランド電位又はV+端子の電位を使用して、放電制御トランジスタ2をオフにする信号をDOUT端子から出力する。つまり、駆動回路50は、VSS端子のグランド電位又はV+端子の電位をDOUT端子に供給してDOUT端子の出力状態をローレベルにする。
【0044】
駆動回路50は、例えば、高電源電位部32にソースが接続されたPチャネル型の駆動スイッチ51と、低電源電位部33にソースが接続されたNチャネル型の駆動スイッチ52とが直列に接続されるCMOS(Complementary MOS)インバータ構造を備える充電制御側駆動回路を有する。駆動スイッチ51は、PMOSトランジスタであり、駆動スイッチ52は、NMOSトランジスタである。高電源電位部32は、チャージポンプ30の出力部に接続される導電部位であり、チャージポンプ30により生成された制御電圧Vcpを出力する。低電源電位部33は、二次電池70の過放電が検出されていない状態で、高電源電位部32よりも電位が低い導電部位であり、
図2に示す例では、VSS端子に接続されている。また、
図2に示す例では、遮断回路62と駆動スイッチ52との間の接続ノード(充電制御側のCMOSインバータの出力ノード55)がCOUT端子に接続されている。
【0045】
駆動回路50は、例えば、高電源電位部32にソースが接続されたPチャネル型の駆動スイッチ53と、低電源電位部33にソースが接続されたNチャネル型の駆動スイッチ54とが直列に接続されるCMOSインバータ構造を備える放電制御側駆動回路を有する。駆動スイッチ53は、PMOSトランジスタであり、駆動スイッチ54は、NMOSトランジスタである。駆動スイッチ53と駆動スイッチ54との間の接続ノード(放電制御側のCMOSインバータの出力ノード56)がDOUT端子に接続されている。
【0046】
制御回路40は、二次電池70の過充電又は充電過電流が検出回路20により検出された場合、所定の遅延時間経過後に、COUT端子の出力状態がハイレベルからローレベルになるように駆動回路50を動作させる。COUT端子の出力状態がローレベルになることにより、充電制御トランジスタ1はオフとなるので、二次電池70を充電する方向の電流が電流経路9aに流れることが禁止される。これにより、二次電池70の充電が停止し、二次電池70を過充電又は充電過電流から保護できる。
【0047】
例えば、制御回路40は、所定の過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが検出されていない場合、駆動スイッチ51,52の各ゲートにローレベルの信号Lを出力する。これにより、駆動スイッチ51がオンになり駆動スイッチ52がオフになるので、遮断回路62が低電圧検出回路61によりオンしていれば、COUT端子の出力状態はハイレベルになる。一方、制御回路40は、過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが検出された場合、当該電源電圧Vdが検出回路20により検出されてから所定の過充電検出遅延時間tVdet1が経過したか否かを判定する。制御回路40は、過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが過充電検出遅延時間tVdet1が経過するまで継続的に検出回路20に検出された場合、駆動スイッチ51,52の各ゲートにハイレベルの信号を出力する。これにより、駆動スイッチ51がオフになり駆動スイッチ52がオンになるので、COUT端子の出力状態はローレベルになる。
【0048】
一方、制御回路40は、二次電池70の過放電又は放電過電流が検出回路20により検出された場合、所定の遅延時間経過後に、DOUT端子の出力状態がハイレベルからローレベルになるように駆動回路50を動作させる。DOUT端子の出力状態がローレベルになることにより、放電制御トランジスタ2はオフとなるので、二次電池70を放電させる方向の電流が電流経路9aに流れることが禁止される。これにより、二次電池70の放電が停止し、二次電池70を過放電又は放電過電流から保護できる。
【0049】
例えば、制御回路40は、所定の過放電検出電圧Vdet2よりも低い電源電圧Vd(≒セル電圧VBAT)が検出回路20により検出されていない場合、駆動スイッチ53,54の各ゲートにローレベルの信号を出力する。これにより、駆動スイッチ53がオンになり駆動スイッチ54がオフになるので、DOUT端子の出力状態はハイレベルになる。一方、制御回路40は、所定の過放電検出電圧Vdet2よりも低い電源電圧Vd(≒セル電圧VBAT)が検出回路20により検出された場合、当該電源電圧Vdが検出回路20により検出されてから所定の過放電検出遅延時間tVdet2が経過したか否かを判定する。制御回路40は、過放電検出電圧Vdet2よりも低い電源電圧Vdが過放電検出遅延時間tVdet2が経過するまで継続的に検出回路20に検出された場合、駆動スイッチ53,54の各ゲートにハイレベルの信号Hを出力する。これにより、駆動スイッチ53がオフになり駆動スイッチ54がオンになるので、DOUT端子の出力状態はローレベルになる。
【0050】
その後、制御回路40は、所定の過放電復帰電圧Vrel2よりも高い電源電圧Vd(≒セル電圧VBAT)が検出回路20により検出された場合、当該電源電圧Vdが検出回路20により検出されてから所定の過放電復帰遅延時間tVrel2が経過したか否かを判定する。制御回路40は、過放電復帰電圧Vrel2よりも高い電源電圧Vdが過放電復帰遅延時間tVrel2が経過するまで継続的に検出回路20に検出された場合、駆動スイッチ53,54の各ゲートにローレベルの信号を出力する。これにより、駆動スイッチ53がオンになり駆動スイッチ54がオフになるので、DOUT端子の出力状態はハイレベルになる。DOUT端子の出力状態がハイレベルになることにより、放電制御トランジスタ2はオフからオンとなるので、二次電池70の放電停止が解除される。
【0051】
制御回路40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を使用せずにアナログの複数の論理回路を用いて形成される。
【0052】
低電圧検出回路61は、過放電検出電圧Vdet2に比べて低く設定された低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdを検出する。低電圧検出電圧Vstは、低電圧検出用の閾値であり、チャージポンプ30の最低作動電圧VcpLよりも高く設定される。低電圧検出回路61は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが検出されていない場合、ローレベルの信号を出力する。これにより、遮断回路62がオンになり、スイッチ回路69の駆動スイッチ64及びスイッチ65はオフになる。一方、低電圧検出回路61は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが検出されている場合、ハイレベルの信号Hを出力する。これにより、遮断回路62がオフになり、スイッチ回路69の駆動スイッチ64及びスイッチ65はオンになる。
【0053】
遮断回路62は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されている場合、制御電圧Vcpを充電制御トランジスタ1のゲートに供給するノードを遮断してはインピーダンスにする。
【0054】
次に、遮断回路62による遮断形態の例として、第1の遮断形態と第2の遮断形態について説明する。
【0055】
第1の遮断形態は、制御回路40が、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態において、駆動スイッチ52と駆動スイッチ52の各ゲートにローレベルの信号Lを出力する設定のときの形態である。例えば、制御回路40は、所定の過充電検出電圧Vdet1よりも高い電源電圧Vdが検出されていない場合(つまり、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態では)、駆動スイッチ51,52の各ゲートにローレベルの信号Lを出力する。
【0056】
第1の遮断形態では、遮断回路62は、CMOSインバータの出力ノード55と高電源電位部32との間のハイサイドの経路を遮断する。
図2には、遮断回路62が、当該ハイサイドの経路を遮断するPMOSトランジスタであるスイッチ素子を有し、当該スイッチ素子が、出力ノード55と駆動スイッチ51のドレインとの間に直列に挿入される回路形態が示されている。なお、当該スイッチ素子は、駆動スイッチ51のソースと高電源電位部32との間に直列に挿入されてもよい。
【0057】
第1の遮断形態では、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態において、駆動スイッチ51,52の各ゲートにローレベルの信号Lが入力されるので、駆動スイッチ51はオン状態であり駆動スイッチ52はオフ状態である。したがって、第1の遮断形態では、オン状態の駆動スイッチ51を、ハイサイドの遮断回路62により出力ノード55から切り離すことによって、充電制御トランジスタ1のゲート及びCOUT端子から駆動回路50の充電制御側駆動回路を切り離すことができる。つまり、遮断回路62は、出力ノード55と高電源電位部32との間を遮断して出力ノード55をハイインピーダンスにできる。
【0058】
一方、第2の遮断形態は、制御回路40が、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態において、駆動スイッチ52と駆動スイッチ52の各ゲートにハイレベルの信号を出力する設定のときの形態である。例えば、制御回路40は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されている場合(つまり、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態では)、駆動スイッチ51,52の各ゲートにハイレベルの信号を出力する。
【0059】
第2の遮断形態では、
図2には示されていないが、遮断回路62は、CMOSインバータの出力ノード55と低電源電位部33との間のローサイドの経路を遮断する。例えば、遮断回路62は、当該ローサイドの経路を遮断するスイッチ素子を有し、当該スイッチ素子は、出力ノード55と駆動スイッチ52のドレインとの間に直列に挿入される。なお、当該スイッチ素子は、駆動スイッチ52のソースと低電源電位部33との間に直列に挿入されてもよい。
【0060】
第2の遮断形態では、二次電池70の電圧が低電圧検出電圧Vstよりも低い状態において、駆動スイッチ51,52の各ゲートにハイレベルの信号が入力されるので、駆動スイッチ51はオフ状態であり駆動スイッチ52はオン状態である。したがって、第2の遮断形態では、オン状態の駆動スイッチ52を、不図示のローサイドの遮断回路62により出力ノード55から切り離すことによって、充電制御トランジスタ1のゲート及びCOUT端子から駆動回路50の充電制御側駆動回路を切り離すことができる。つまり、遮断回路62は、出力ノード55と低電源電位部33との間を遮断して出力ノード55をハイインピーダンスにできる。
【0061】
スイッチ回路69は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されている場合、充電制御トランジスタ1のゲートを充電器91の高電位側電源端子の電位に固定する。例えば、スイッチ回路69は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されている場合、COUT端子とV+端子との間の接続をオン状態にする。スイッチ回路69は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されていない場合、COUT端子とV+端子との間の接続をオフ状態にする。
【0062】
スイッチ回路69は、例えば、駆動スイッチ64及びスイッチ65を有する。駆動スイッチ64は、NMOSトランジスタであり、スイッチ65は、PMOSトランジスタである。駆動スイッチ64のオンにより、スイッチ65のゲートにはローレベルの信号Lが入力されるので、スイッチ65はオンになる。接続ノード57は、COUT端子とスイッチ65とが接続されるノードである。
【0063】
次に、低電圧検出回路61及びスイッチ回路69の機能について、より詳細に説明する。
【0064】
電源電圧Vdが低電圧検出電圧Vstよりも高い場合、スイッチ65はオフしておりチャージポンプ30は昇圧動作する。チャージポンプ30の昇圧動作により、電源電圧Vdの2倍の制御電圧VcpがCOUT端子に供給されるので、充電制御トランジスタ1はオンしている。したがって、充電器91を接続すれば、二次電池70に対する充電は可能である。
【0065】
一方、電源電圧Vdが低電圧検出電圧Vstよりも低い場合、スイッチ65は低電圧検出回路61によりオンする。これにより、COUT端子の電位は、放電制御トランジスタ2はオフしているので、P+端子の電位に一致する。この状態で、充電器91が接続されていると、P+端子の電圧は(VDD+Vf+Vds)まで持ち上がり、
図3に示すように、充電電流Ichgが流れるように、充電制御トランジスタ1のドレイン-ソース間の電圧Vdsが定まる。
図3において、縦軸は、充電制御トランジスタ1のドレイン-ソース間の電流Ids、横軸は、充電制御トランジスタ1のゲート-ソース間の電圧Vgsを表す。Vfは、放電制御トランジスタ2の寄生ダイオードの順方向電圧を表す。VDDは、電源電圧Vdを表す。
【0066】
このように、スイッチ65のオンにより、充電器91の出力電圧で充電制御トランジスタ1を継続的にオンさせることができる。したがって、充電制御トランジスタ1が従来技術のようにオンオフを繰り返すことを防止できるので、低電圧状態の二次電池に対する充電効率の低下を抑制できる。
【0067】
ここで、駆動回路50は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが低電圧検出回路61により検出されている場合、制御電圧VcpをCOUT端子に供給する経路を遮断回路62のオフにより遮断することが好ましい。これにより、COUT端子を駆動回路50から切り離すことができ、COUT端子の電位の不安定化を防ぎ、COUT端子の電位をP+の電位に確実に一致させることができる。
【0068】
また、低電圧検出回路61は、低電圧検出電圧Vstよりも低い電源電圧Vdが検出されている場合、チャージポンプ30を停止させることが好ましい。これにより、制御電圧Vcpの生成が停止し、低電圧状態でのチャージポンプ30の動作による誤作動を防止できる。
【0069】
図4は、一実施形態における電池パックの動作を例示するタイミングチャートである。電源電圧Vdが低電圧検出電圧Vstよりも低い場合、スイッチ65はオン状態で放電制御トランジスタ2はオフ状態なので、COUT端子の電位は、P+の電位に一致する。この状態で、充電器91が接続されると(Connect CHG)、P+端子及びCOUT端子の電圧は、(VDD+Vf+Vds)まで持ち上がり、二次電池70は充電電流Ichgで充電される。充電電流Ichgは、放電制御トランジスタ2の寄生ダイオード及びオン状態の充電制御トランジスタ1を流れる。
【0070】
電源電圧Vdが低電圧検出電圧Vstよりも高くなると(0V CHG Release)、低電圧検出回路61は、チャージポンプ30の昇圧動作を再開させ、遮断回路62をオンし、スイッチ65をオフにする。これにより、COUT端子には、昇圧後の制御電圧Vcp(=2×VDD)が供給され、P+端子の電圧は、VDD+Vfとなる。
【0071】
電源電圧Vdが過放電復帰電圧Vrel2よりも高くなると(UVP Release)、制御回路40は、駆動回路50を動作させて、DOUT端子をハイレベルにする。これにより、放電制御トランジスタ2はオンし、P+端子の電圧は、VDD端子の電源電圧Vdに一致する。
【0072】
図5は、低電圧検出回路の第1の構成例を示す図である。
図5に示す低電圧検出回路61Aは、NMOSトランジスタ61aと抵抗61bとの直列回路を有し、その直列回路の中間点から信号を出力する。NMOSトランジスタ61aは、ゲートがVDD端子に接続され、ソースがグランドに接続され、ドレインが抵抗61bの一端に接続される。抵抗61bの他端は、V+端子に接続される。低電圧検出回路61Aでは、低電圧検出電圧Vstは、NMOSトランジスタ61aの閾値電圧に基づいて設定されている。低電圧検出回路61Aは、低電圧検出回路61Aの出力信号の電位レベルを充電器91の高電位側電源端子(V+端子の電位レベル)にシフトするレベルシフト回路63Aを有する。レベルシフト回路63Aは、低電圧検出回路61Aの出力ノードとV+端子との間に挿入された抵抗61bを有し、抵抗61bによりレベルシフトを行う。
【0073】
図6は、低電圧検出回路の第2の構成例を示す図である。
図6に示す低電圧検出回路61Bは、抵抗61c,61dとの抵抗比で低電圧検出電圧Vstを変更する構成を有する。抵抗61c,61dによって電源電圧Vdが分圧された電圧がNMOSトランジスタ61aのゲートに供給される。低電圧検出回路61Bは、
図5と同構成のレベルシフト回路63Aを有する。
【0074】
図7は、低電圧検出回路の第3の構成例を示す図である。
図7に示す低電圧検出回路61Cは、
図6の抵抗61bをデプレッション型のNMOSトランジスタ61eに置換したものである。デプレッション型のNMOSトランジスタ61eは、電流源として機能する。低電圧検出回路61Cは、低電圧検出回路61Cの出力信号の電位レベルを充電器91の高電位側電源端子(V+端子の電位レベル)にシフトするレベルシフト回路63Bを有する。レベルシフト回路63Bは、低電圧検出回路61Cの出力ノードとV+端子との間に接続されるデプレッション型のNMOSトランジスタ61eを有し、NMOSトランジスタ61eによりレベルシフトを行う。
【0075】
図8は、スイッチの構成例を示す図である。
図8に示すスイッチ65は、PMOSトランジスタ66,67の直列回路と、PMOSトランジスタ66,67の接続中間点と共通ゲートとの間に接続された電流源68とを有する。この構造により、COUT端子とV+端子との間で電流の逆流を防止できる。
【0076】
駆動スイッチ64は、前述のレベルシフト回路の出力によりゲートが制御されるNMOSトランジスタである。PMOSトランジスタ66,67は、駆動スイッチ64により制御されるゲートが共通接続され、且つ、ソースが共通接続されている。PMOSトランジスタ66のドレインは、COUT端子に接続され、PMOSトランジスタ67のドレインは、V+端子に接続されている。電流源68は、PMOSトランジスタ66,67における共通接続ゲートと共通接続ソースとの間に接続されている。
【0077】
図9は、一比較形態における電池パックの構成を示す図である。電池パックの安全性を高めるため、第1の電池保護回路110Aと第2の電池保護回路110Bとが直列に接続されるデュアル保護構成が増えている。第1の電池保護回路110Aと第2の電池保護回路110Bは、それぞれ、過放電を独立に検出する。第1の電池保護回路110Aは、過放電を検出した場合、放電制御トランジスタDFETaをオフにし、自身のV+端子をVSS端子にプルダウンする。第2の電池保護回路110Bは、過放電を検出した場合、放電制御トランジスタDFETbをオフにし、自身のV+端子をVSS端子にプルダウンする。
【0078】
ところが、第2の電池保護回路110Bが過放電を検出しDFETbをオフして、放電禁止となると、第1の電池保護回路110AのVDD端子とVSS端子との間の電源電圧が0ボルトになる。この場合、第1の電池保護回路110Aが電源電圧の低電圧状態(0ボルト)を検出して充電制御トランジスタCFETaをオフにすると、電池パックは充放電禁止となる。その結果、充電器を接続しても再充電できないため、電池パックは使用不可になってしまう。
【0079】
これに対し、
図10は、第2の実施形態における電池パックの構成を示す図である。第1の電池保護回路10Aと第2の電池保護回路10Bは、いずれも、上述の電池保護回路10(
図2)と同じ構成を有する。
図10に示すスイッチ65a,65bは、上述のスイッチ65に対応する。
【0080】
図10の構成では、第2の電池保護回路10Bは、過放電を検出することでDFETbをオフし、低電圧状態を検出することでスイッチ65bをオンにする。したがって、充電器をP+端子とP-端子との間に接続すると、充電器の電圧をCFETbのゲートに印加できるので、充電器から出力される充電電流は、オン状態のDFETa、オン状態のCFETa、オフ状態のDFETbの寄生ダイオード、オン状態のCFETbを経由して、二次電池70に流れる。このように、電池パックが使用不可になることを防止できる。
【0081】
以上、二次電池保護回路、二次電池保護装置及び電池パックを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0082】
例えば、充電制御トランジスタ1と放電制御トランジスタ2の配置位置は、図示の位置に対して互いに置換されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 充電制御トランジスタ
2 放電制御トランジスタ
3 スイッチ回路部
5 プラス端子
10,10A,10B 電池保護回路
13 グランド端子
15 電源端子
18 監視端子
20 検出回路
30 チャージポンプ(昇圧回路の一例)
32 高電源電位部
33 低電源電位部
40 制御回路
50 駆動回路
51~54 駆動スイッチ
61,61A,61B,61C 低電圧検出回路
62 遮断回路
63A,63B レベルシフト回路
65 スイッチ
68 電流源
69 スイッチ回路
70 二次電池
80 電池保護装置
91 充電器
100 電池パック
110A,110B 電池保護回路