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特許7277780クランクシャフトの形状検査方法及び形状検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】クランクシャフトの形状検査方法及び形状検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019233488
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103089
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊勢居 良仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 真也
(72)【発明者】
【氏名】臼谷 祐輝
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194728(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159626(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式の3次元形状測定装置によってクランクシャフトの表面形状を測定することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる第3ステップと、
前記第3ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる第4ステップと、
前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する第5ステップと、
を含むクランクシャフトの形状検査方法。
【請求項2】
光学式の3次元形状測定装置によってクランクシャフトの表面形状を測定することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記3次元点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記3次元点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる第2ステップと、
前記第2ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する第3ステップと、
前記第3ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる第4ステップと、
前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する第5ステップと、
を含むクランクシャフトの形状検査方法。
【請求項3】
前記第4ステップにおいて、
前記加工基準部位は、前記クランクシャフトの2箇所の軸部、1箇所のピン及び隣り合う2箇所のカウンタウェイトであり、
前記加工基準は、前記2箇所の軸部それぞれの中心、前記1箇所のピンの中心及び前記2箇所のカウンタウェイトの対向する側面である、
請求項1又は2に記載のクランクシャフトの形状検査方法。
【請求項4】
前記第4ステップにおいて、
前記加工基準部位のうち、前記2箇所の軸部及び前記1箇所のピンについて、加工基準部位点群データとして、前記クランクシャフトを固定するための固定チャックが接触する部位の点群データを抽出する、
請求項3に記載のクランクシャフトの形状検査方法。
【請求項5】
前記3次元形状測定装置は、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置であり、
前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに角度βだけ傾斜しており、
前記第1ステップにおいて、前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成し、
前記第5ステップにおいて、前記3次元点群データの長手方向の測定ピッチをΔxとし、前記第1しきい値をTh1とし、前記第2しきい値をTh2とした場合に、以下の式(1)を満足する前記第1しきい値Th1を用いて生成した前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、以下の式(2)を満足する前記第2しきい値Th2を用いて生成した前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する、
請求項1から4の何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法。
Δx<Th1<4Δx ・・・(1)
Δx/tan(abs(β))<Th2 ・・・(2)
上記の式(2)において、abs(β)はβの絶対値を意味する。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法を実行するためのクランクシャフトの形状検査装置であって、
クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置と、
前記4つの3次元形状測定装置による測定結果が入力され、所定の演算を実行する演算装置と、を備え、
前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜しており、
前記演算装置には、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき作成された前記クランクシャフトの表面形状モデルが予め記憶されており、
前記演算装置は、
前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成する第1ステップと、
前記第1ステップで取得した前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる第3ステップと、
前記第3ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる第4ステップと、
前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する第5ステップと、
を実行するクランクシャフトの形状検査装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法を実行するためのクランクシャフトの形状検査装置であって、
クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置と、
前記4つの3次元形状測定装置による測定結果が入力され、所定の演算を実行する演算装置と、を備え、
前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜しており、
前記演算装置には、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき作成された前記クランクシャフトの表面形状モデルが予め記憶されており、
前記演算装置は、
前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成する第1ステップと、
前記第1ステップで生成した前記3次元点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記3次元点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる第2ステップと、
前記第2ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する第3ステップと、
前記第3ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる第4ステップと、
前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する第5ステップと、
を実行するクランクシャフトの形状検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン等に用いられるクランクシャフトの形状をその製造工程で検査する方法及び装置に関する。特に、本発明は、クランクシャフトのカウンタウェイトの側面寸法及び長手方向位置を精度良く算出可能なクランクシャフトの形状検査方法及び形状検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、クランクシャフトの一例(直列4気筒エンジン用クランクシャフト)を模式的に示す図である。図1(a)はクランクシャフトSの回転中心軸Lの方向から見た正面図であり、図1(b)は回転中心軸Lに直交する方向から見た側面図である。
図1に示すように、クランクシャフトSは、クランクシャフトSの回転中心軸Lに設けられたフロントSAと、回転中心軸Lに設けられた複数のジャーナルSB(図1に示す例では、第1ジャーナルSB1~第5ジャーナルSB5)と、回転中心軸Lに設けられた回転バランスを取るための複数のカウンタウェイトSC(図1に示す例では、第1カウンタウェイトSC1~第8カウンタウェイトSC8)と、回転中心軸L周りの所定角度の位置に設けられたコネクティングロッド(図示せず)を取り付けるための複数のピンSD(図1に示す例では、第1ピンSD1~第4ピンSD4)と、回転中心軸Lに設けられたフランジSEと、を備えている。ピンSDの断面形状は、回転中心軸Lから離間した位置を中心とする円形であり、エンジンの軸部に相当するクランクシャフトSの軸部であるフロントSA、ジャーナルSB及びフランジSEの断面形状は、クランクシャフトSの回転中心軸Lを中心とする円形である。カウンタウェイトSCの断面形状は、左右対称の複雑な形状である。
【0003】
図1に示すようなクランクシャフトSは、加熱した素材を上下の金型でプレスして型鍛造することにより、バリを含む鍛造品を成型した後、バリを除去し、ショットブラスト処理を施して製造される。これらの製造工程で製造されたクランクシャフトSは、自動車のエンジン等に組み込む際に、適切に組み込めるように切削による機械加工が施される。具体的には、クランクシャフトSの軸部(フロントSA、ジャーナルSB及びフランジSE)と、ピンSDは、円柱状に機械加工が施される。これら軸部及びピンSDには、機械加工できるように、数mm程度の加工代が設けられる。
【0004】
上記のように、クランクシャフトは形状が複雑であるため、鍛造する際に、素材寸法の変動、素材温度のムラ、鍛造操業の変動等により、金型の端部まで素材が充填されない欠肉と称される欠陥や、クランクシャフトの全長に亘る曲がりやねじれが発生することがある。また、クランクシャフトをハンドリングする際に搬送設備等と接触して凹み疵が生じることもある。さらには、クランクシャフトの加工部位である軸部及びピンに十分な加工代を有しないこともある。このため、クランクシャフトの製造工程では、機械加工を施す前に、クランクシャフトの実形状を基準形状と比較して検査し、合否を判定している。
【0005】
クランクシャフトの合否判定の基準としては、(a)クランクシャフトの曲がり及びねじれが所定の許容範囲内にあること、(b)カウンタウェイトに許容範囲を超えた欠肉や凹み疵が無いこと、(c)加工部位である軸部やピンに所定の加工代を有していること、が挙げられる。
上記(a)及び(b)は、クランクシャフトの最終製品としての寸法精度や重量バランスを達成するために必要な条件として設定されている。クランクシャフトの曲がりが大きい、又は、ねじれが大きくピンの設置位置が所定角度から大きくずれていると、後工程でどのような加工を施したとしても、クランクシャフトの最終製品としての寸法精度や重量バランスを達成することが困難になるからである。また、欠肉や凹み疵によってカウンタウェイトの形状が設計通りにはならずに重心がずれた場合にも、同様に、クランクシャフトの最終製品としての重量バランスを達成することが困難になるからである。
上記(c)は、機械加工を施すために必要な条件として設定されている。如何に重量バランスの取れたクランクシャフトであっても、十分な加工代が無ければ、機械加工後の寸法精度を達成し難い上に、表面性状の悪い鍛造表面が残存してしまい、エンジンの構成部品として使用することができないからである。
【0006】
具体的には、クランクシャフトの曲がりの合否は、クランクシャフトを機械加工時の座標系(図1のXYZ座標系)に合わせ込んだときの軸部(フロント、ジャーナル及びフランジ)の回転中心軸からのずれ量を管理指標とし、この管理指標が公差以内(例えば、±1mm以内)であるか否かによって合否が判定される。また、クランクシャフトのねじれの合否は、ピンの分割角度を管理指標とし、この管理指標が規定以内(例えば、±1°)であるか否かによって合否が判定される。
また、カウンタウェイトの形状の合否は、図1(a)に示すようなクランクシャフトの回転中心軸方向から見たカウンタウェイトの側面寸法(幅、高さ、外周径)を管理指標として判定される。この管理指標は、クランクシャフトの回転バランスを確保するために必要である。また、カウンタウェイトの形状の合否は、図1(b)に示すようなクランクシャフトの回転中心軸に直交する方向から見たカウンタウェイトの長手方向位置も管理指標として判定される。この管理指標は、カウンタウェイトの厚み(回転軸方向に沿った寸法)や倒れを検出するために必要である。上記のカウンタウェイトの形状に関する管理指標には、それぞれ公差が決められている(例えば、±1mm、±2mm)。
さらに、軸部の形状の合否については、型鍛造の精度を把握可能な鍛造厚みや鍛造型ずれが、製造工程における管理指標として使用されている。
【0007】
従来のクランクシャフトを検査する方法は、ピン及びカウンタウェイトの基準形状に合致するように形成された各板ゲージを、クランクシャフトの検査するピン及びカウンタウェイトにそれぞれあてがい、各板ゲージとピン及びカウンタウェイトとの隙間をスケールで測定して、その隙間の寸法(形状誤差)が許容範囲内であれば、そのクランクシャフトを合格と判定するものであった。この方法は、ピン及びカウンタウェイトの基準形状に合致するように形成された板ゲージを用いて、オペレータの手作業によって行われるので、検査精度に個人差が生じるばかりでなく、検査に多大な時間を要するという問題を有していた。このため、自動で正確な検査を行うために、特許文献1~6に示すような種々のクランクシャフトの形状検査方法が提案されてきた。
しかしながら、従来の形状検査方法には、ショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトの形状、特に、カウンタウェイトの側面寸法及び長手方向位置を精度良く算出可能な方法が提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭59-184814号公報
【文献】特開平6-265334号公報
【文献】特開平10-62144号公報
【文献】特開2007-212357号公報
【文献】国際公開第2016/194728号
【文献】国際公開第2017/159626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、クランクシャフトのカウンタウェイトの側面寸法及び長手方向位置を精度良く算出可能なクランクシャフトの形状検査方法及び形状検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、第1の方法として、以下の第1~第5ステップを含むクランクシャフトの形状検査方法を提供する。
(1)第1ステップ:光学式の3次元形状測定装置によってクランクシャフトの表面形状を測定することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを取得する。
(2)第2ステップ:前記第1ステップで取得した前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する。
(3)第3ステップ:前記第2ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる。
(4)第4ステップ:前記第3ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
(5)第5ステップ:前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する。
【0011】
本発明に係る第1の方法によれば、第1ステップを実行することにより、クランクシャフト表面の3次元点群データが取得される。
次いで、本発明に係る第1の方法によれば、第2ステップを実行することにより、3次元点群データに孤立点除去処理が施される。本発明者らの知見によれば、ショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトの場合、第1ステップで取得された3次元点群データに、クランクシャフト表面に対応する本来の3次元点群データ以外のデータ点が本来の3次元点群データから孤立して発生する場合があり、この孤立したデータ点が測定精度の悪化の原因になっている。したがい、3次元点群データに孤立点除去処理を施すことで、測定精度の悪化を抑制可能である。特に、本発明に係る第1の方法の第2ステップでは、最近接データ点(注目しているデータ点に最も近いデータ点)までの距離が第1しきい値以上のデータ点が除去された第1点群データが生成されると共に、最近接データ点までの距離が第2しきい値(第2しきい値>第1しきい値)以上のデータ点が除去された第2点群データが生成される。本発明者らの知見によれば、第1点群データは、カウンタウェイトの側面寸法(幅、高さ、外周径等)を精度良く算出する上で有効であり、第2点群データは、カウンタウェイトの長手方向位置(クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向の位置)を精度良く算出する上で有効である。
次いで、本発明に係る第1の方法によれば、第3ステップを実行することにより、第1点群データ及び第2点群データが、例えば、設計仕様に基づく3次元CADデータを変換することにより三角メッシュ等で構成された表面形状モデルに重ね合わせられる。すなわち、第1点群データ及び第2点群データと表面形状モデルとの距離が最小となるように、第1点群データ及び第2点群データが平行移動及び回転移動する。なお、本発明に係る第1の方法における「クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となる」とは、第1点群データ及び第2点群データを構成する各データ点と表面形状モデルとの距離の総和、又は、距離の二乗和の総和が最小となることを意味する。
【0012】
次いで、本発明に係る第1の方法によれば、第4ステップを実行することにより、第1点群データ及び第2点群データから、予め決められた加工基準部位(クランクシャフトの2箇所の軸部等)の点群データである加工基準部位点群データが抽出される。加工基準部位点群データの位置は、表面形状モデルから認識可能である一方、第3ステップで第1点群データ及び第2点群データが表面形状モデルに重ね合わせられているため、第1点群データ及び第2点群データにおける加工基準部位点群データの位置も認識可能である。このため、第1点群データ及び第2点群データから加工基準部位点群データを抽出可能である。
そして、第4ステップを実行することにより、抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準(クランクシャフトの2箇所の軸部それぞれの中心等)の座標が、クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、第1点群データ及び第2点群データが平行移動及び回転移動する。これにより、クランクシャフトの機械加工時の座標系でクランクシャフトの第1点群データ及び第2点群データが表される、換言すれば、クランクシャフトの機械加工時の状態を再現することが可能になる。
【0013】
最後に、本発明に係る第1の方法によれば、第5ステップを実行することにより、第4ステップで移動した後の第1点群データ及び第2点群データのそれぞれから、クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出する。カウンタウェイト点群データの位置は、機械加工時の座標系で認識可能である一方、第4ステップを実行することで第1点群データ及び第2点群データがクランクシャフトの機械加工時の座標系で表されているため、第1点群データ及び第2点群データにおけるカウンタウェイト点群データの位置も認識可能である。このため、第1点群データ及び第2点群データのそれぞれからカウンタウェイト点群データを抽出可能である。
そして、本発明に係る第1の方法によれば、第5ステップを実行することにより、第1点群データから抽出したカウンタウェイト点群データを用いてカウンタウェイトの側面寸法を算出し、第2点群データから抽出したカウンタウェイト点群データを用いてカウンタウェイトの長手方向位置を算出することで、前述の本発明者らの知見の通り、カウンタウェイトの側面寸法及び長手方向位置を精度良く算出可能である。
【0014】
以上に説明した第1の方法では、第2ステップで第1点群データ及び第2点群データを生成し、第3ステップで第1点群データ及び第2点群データを表面形状モデルに重ね合わせているが、この順番が逆であっても、同様の作用効果を奏する。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第2の方法として、以下の第1~第5ステップを含むクランクシャフトの形状検査方法としても提供される。
(1)第1ステップ:光学式の3次元形状測定装置によってクランクシャフトの表面形状を測定することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを取得する。
(2)第2ステップ:前記第1ステップで取得した前記3次元点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記3次元点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる。
(3)第3ステップ:前記第2ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する。
(4)第4ステップ:前記第3ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
(5)第5ステップ:前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する。
なお、本発明に係る第2の方法における「クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となる」とは、3次元点群データを構成する各データ点と表面形状モデルとの距離の総和、又は、距離の二乗和の総和が最小となることを意味する。
【0015】
本発明に係る第1及び第2の方法では、前記第4ステップにおいて、前記加工基準部位は、前記クランクシャフトの2箇所の軸部、1箇所のピン及び隣り合う2箇所のカウンタウェイトであり、前記加工基準は、前記2箇所の軸部それぞれの中心、前記1箇所のピンの中心及び前記2箇所のカウンタウェイトの対向する側面(クランクシャフトの回転中心軸に直交し、クランクシャフトの回転中心軸方向に対向する側面)であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る第1及び第2の方法では、前記第4ステップにおいて、前記加工基準部位のうち、前記2箇所の軸部及び前記1箇所のピンについて、加工基準部位点群データとして、前記クランクシャフトを固定するための固定チャックが接触する部位の点群データを抽出することが好ましい。
【0017】
本発明に係る第1及び第2の方法では、3次元形状測定装置として、特許文献6に記載の形状測定装置と同様の3次元形状計測装置を用いることが好ましい。
具体的には、本発明に係る第1及び第2の方法では、前記3次元形状測定装置は、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置であり、前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに角度βだけ傾斜しており、前記第1ステップにおいて、前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成し、前記第5ステップにおいて、前記3次元点群データの長手方向(クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向)の測定ピッチをΔxとし、前記第1しきい値をTh1とし、前記第2しきい値をTh2とした場合に、以下の式(1)を満足する前記第1しきい値Th1を用いて生成した前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、以下の式(2)を満足する前記第2しきい値Th2を用いて生成した前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出することが好ましい。
Δx<Th1<4Δx ・・・(1)
Δx/tan(abs(β))<Th2 ・・・(2)
上記の式(2)において、abs(β)はβの絶対値を意味する。
【0018】
なお、上記の好ましい方法において、「逆向きに角度βだけ傾斜」とは、一方がクランクシャフトのフロント側に角度βだけ傾斜しているとすれば、他方はクランクシャフトのフランジ側に角度βだけ傾斜していることを意味する。また、角度β=5°のとき、式(2)は11.4Δx<Th2になり、角度β=10°のとき、式(2)は5.7Δx<Th2になる。通常、角度βは数度程度に設定されるため、式(1)を満足するTh1と、式(2)を満足するTh2は、Th1>Th2の関係になる。
【0019】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第1の手段として、前記何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法を実行するためのクランクシャフトの形状検査装置であって、特許文献6に記載の形状測定装置と同様の3次元形状計測装置を備えるクランクシャフトの形状検査装置としても提供される。
具体的には、前記課題を解決するため、本発明は、第1の手段として、前記何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法を実行するためのクランクシャフトの形状検査装置であって、クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置と、前記4つの3次元形状測定装置による測定結果が入力され、所定の演算を実行する演算装置と、を備え、前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜しており、前記演算装置には、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき作成された前記クランクシャフトの表面形状モデルが予め記憶されており、前記演算装置は、以下の第1~第5ステップを実行するクランクシャフトの形状検査装置を提供する。
(1)第1ステップ:前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成する。
(2)第2ステップ:前記第1ステップで取得した前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する。
(3)第3ステップ:前記第2ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる。
(4)第4ステップ:前記第3ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
(5)第5ステップ:前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する。
【0020】
上記の第1の手段では、演算装置が、第2ステップで第1点群データ及び第2点群データを生成し、第3ステップで第1点群データ及び第2点群データを表面形状モデルに重ね合わせているが、この順番が逆であっても、同様の作用効果を奏する。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第2の手段として、前記何れかに記載のクランクシャフトの形状検査方法を実行するためのクランクシャフトの形状検査装置であって、クランクシャフトの回転中心軸周りに90°ピッチで配置され、前記クランクシャフトの回転中心軸に平行な方向に相対的に移動しながら前記クランクシャフトに対して光を投受光することで前記クランクシャフトの3次元形状を測定する4つの光学式の3次元形状測定装置と、前記4つの3次元形状測定装置による測定結果が入力され、所定の演算を実行する演算装置と、を備え、前記4つの3次元形状測定装置のうち、前記クランクシャフトの回転中心軸周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向が前記クランクシャフトの回転中心軸に直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜しており、前記演算装置には、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき作成された前記クランクシャフトの表面形状モデルが予め記憶されており、前記演算装置は、以下の第1~第5ステップを実行するクランクシャフトの形状検査装置としても提供される。
(1)第1ステップ:前記4つの3次元形状測定装置による測定結果を合成することで、前記クランクシャフト表面の3次元点群データを生成する。
(2)第2ステップ:前記第1ステップで生成した前記3次元点群データと、前記クランクシャフトの設計仕様に基づき予め用意された前記クランクシャフトの表面形状モデルとの距離が最小となるように、前記3次元点群データを平行移動及び回転移動させて、前記表面形状モデルに重ね合わせる。
(3)第3ステップ:前記第2ステップで前記表面形状モデルに重ね合わせられた前記3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が前記第1しきい値よりも大きな第2しきい値以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する。
(4)第4ステップ:前記第3ステップで生成した前記第1点群データ及び前記第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、前記クランクシャフトの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、前記第1点群データ及び前記第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
(5)第5ステップ:前記第4ステップで移動した後の前記第1点群データ及び前記第2点群データのそれぞれから、前記クランクシャフトのカウンタウェイトの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出し、前記第1点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの側面寸法を算出し、前記第2点群データから抽出した前記カウンタウェイト点群データを用いて前記カウンタウェイトの長手方向位置を算出する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クランクシャフトのカウンタウェイトの側面寸法及び長手方向位置を精度良く算出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】クランクシャフトの一例(直列4気筒エンジン用クランクシャフト)を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査装置の概略構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査装置の概略構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査装置の概略構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査方法の第1ステップで取得される3次元点群データの一例を示す図である。
図6】ノイズが生じる原因を説明する説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査方法の第2ステップで生成される第1点群データ及び第2点群データの一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査方法の第4ステップを説明する説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査方法の第4ステップを説明する説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査方法の第4ステップを説明する説明図である。
図11】カウンタウェイトの幅及び高さを説明する説明図である。
図12】カウンタウェイトの外周径を説明する説明図である。
図13】カウンタウェイトの長手方向位置を説明する説明図である。
図14】孤立点除去処理におけるしきい値がカウンタウェイトの幅測定及び長手方向位置測定の測定成功率に及ぼす影響を調査した結果の一例を示す。
図15】クランクシャフトの曲がりを説明する説明図である。
図16】クランクシャフトの鍛造厚み及び鍛造型ずれを説明する説明図である。
図17】クランクシャフトのねじれを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
図2図4は、本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの形状検査装置(以下、単に「形状検査装置」という)の概略構成を示す図である。図2は、クランクシャフトSの回転中心軸の方向(X軸方向)から見た正面透視図である。図3(a)は、図2の矢符Aに示す方向から見た側面図である。図3(b)は、図3(a)の部分的拡大側面図である。図4は、図2の矢符Bに示す方向から見た側面図である。なお、図2図4において、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じていない場合のクランクシャフトSの回転中心軸Lに平行な方向をX軸方向、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する水平方向をY軸方向、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する鉛直方向をZ軸方向としている。また、図3及び図4では、演算装置2の図示を省略している。
図2図4に示すように、本実施形態に係る形状検査装置100は、光学式の3次元形状測定装置1と、演算装置2と、移動機構3と、支持装置4と、を備えている。
【0025】
3次元形状測定装置1は、クランクシャフトSに対して光を投受光することでクランクシャフトSの3次元形状を測定する装置である。具体的には、本実施形態の3次元形状測定装置1は、クランクシャフトSに向けてクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に延びる線状のレーザ光を投光する投光手段11と、クランクシャフトSの表面で反射した光を受光して撮像する受光手段12とを具備し、線状のレーザ光の変形を解析する光切断法によってクランクシャフトSの3次元形状を測定する構成である。ただし、本発明の3次元形状測定装置としては、これに限るものではなく、縞パターンや格子パターンを投影して空間符号化法によってクランクシャフトSの3次元形状を測定する構成を採用することも可能である。
【0026】
本実施形態の3次元形状測定装置1は、仮にクランクシャフトSの回転中心軸の方向(X軸方向)に直交する面に対して角度βだけ傾斜した位置に配置し、クランクシャフトSまでの距離が400mmであるときに、クランクシャフトSの周方向の測定視野が180mmである。また、クランクシャフトSの周方向の測定分解能は0.3mmであり、測定周期が500HzのときのクランクシャフトSの径方向の測定分解能は約0.02mmである。このような3次元形状測定装置1としては、例えば、キーエンス社製の超高速インラインプロファイル測定器「LJ-V7300」を用いることができる。後述の移動機構3で3次元形状測定装置1をX軸方向に200mm/secで移動させた場合、X軸方向(クランクシャフトSの軸方向)の測定分解能が0.4mmで、クランクシャフトSの径方向の測定分解能が0.3mmで、クランクシャフトSの径方向の測定分解能が0.02mmであるクランクシャフトSの3次元形状を測定可能である。
【0027】
本実施形態の形状検査装置100は、3次元形状測定装置1として、クランクシャフトSの回転中心軸L周りに90°ピッチで配置された4つの3次元形状測定装置1a~1dを備えている。3次元形状測定装置1aは、投光手段11a及び受光手段12aを具備し、3次元形状測定装置1bは、投光手段11b及び受光手段12bを具備し、3次元形状測定装置1cは、投光手段11c及び受光手段12cを具備し、3次元形状測定装置1dは、投光手段11d及び受光手段12dを具備している。このように4つの3次元形状測定装置1a~1dを備えることで、クランクシャフトSを回転中心軸L周りに回転させなくても、クランクシャフトS全体の3次元形状を測定可能である。
【0028】
そして、4つの3次元形状測定装置1a~1dのうち、クランクシャフトSの回転中心軸L周りに隣り合う3次元形状測定装置は、光の投光方向がクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜している。
例えば、図3(b)に示すように、3次元形状測定装置1aの投光手段11aからの光の投光方向は、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向LV1に対してフランジSE側に角度βだけ傾斜しているのに対して、3次元形状測定装置1aに隣り合う3次元形状測定装置1bの投光手段11bからの光の投光方向は、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向LV2に対してフロントSA側に角度βだけ傾斜している。図4を参照すれば分かるように、3次元形状測定装置1aに隣り合う3次元形状測定装置1dの投光手段11dからの光の投光方向は、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に対してフロントSA側に傾斜(図示を省略するが角度βだけ傾斜)しており、3次元形状測定装置1b及び1dに隣り合う3次元形状測定装置1cの投光手段11cからの光の投光方向は、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に対してフランジSE側に傾斜(図示を省略するが角度βだけ傾斜)している。
【0029】
本実施形態に係る3次元形状測定装置1のように、光の投光方向をクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に対して傾斜させることで、カウンタウェイトSCの側面(クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向の側面)の形状を測定可能である。また、隣り合う3次元形状測定装置1の光の投光方向がクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向に対して互いに逆向きに傾斜しているため、カウンタウェイトSCの両側面(フロントSA側の側面及びフランジSE側の側面)の形状を測定可能である。角度βが5°の場合、カウンタウェイトSCの側面のY軸方向の測定ピッチは4.5mm(=0.4mm/tan5°)である。
【0030】
演算装置2は、3次元形状測定装置1による測定結果に対して所定の演算を実行する。具体的には、演算装置2は、4つの3次元形状測定装置1a~1dによる測定結果を合成することで、クランクシャフトS表面全体の3次元点群データを生成(取得)する。そして、後述する各種の演算を実行する。演算装置2は、例えば、上記の演算を実行するプログラムやアプリケーションがインストールされたコンピュータから構成される。具体的には、例えば、オープンソース系の「PCL(Point Cloud Library)」や、MVTec社製「HALCON」のような公知の点群処理ライブラリをコンピュータに実装することで、演算装置2を構成可能である。上記の点群処理ライブラリは、点群データに加えて、表面データ(円筒、平面、三角メッシュ等で構成されたデータ)を扱うことが可能であり、スムージングや間引き処理等の前処理、座標や距離等に基づく点群データの抽出、座標変換、マッチング処理、フィッティング処理、点群データの寸法測定、立体表面の生成など、点群データや表面データに関する種々の演算を実行可能である。後述する孤立点除去処理も上記の点群処理ライブラリによって実行可能である。
また、演算装置2には、クランクシャフトSの設計仕様に基づき作成されたクランクシャフトSの表面形状モデルが予め記憶されている。具体的には、演算装置2には、設計仕様に基づく3次元CADデータが入力され、演算装置2は、この入力されたCADデータを三角メッシュ等で構成された表面形状モデルに変換して記憶する。表面形状モデルはクランクシャフトSの品種毎に作成し記憶しておけばよいので、同じ品種のクランクシャフトSを連続して検査する場合には、検査毎に表面形状モデルを作成する必要はない。
【0031】
移動機構3は、3次元形状測定装置1をクランクシャフトSの回転中心軸Lに平行なX軸方向に相対的に移動させるものである。移動機構3としては、例えば、一軸ステージを用いることができる。移動機構3に用いる一軸ステージとしては、0.1mm以下の分解能で位置決め又は位置を把握できるものが好ましい。本実施形態では、4つの3次元形状測定装置1を独立して移動させるために、3次元形状測定装置1毎に移動機構3が設けられている。なお、本実施形態の移動機構3は、3次元形状測定装置1の方を移動させるものであるが、必ずしもこれに限るものではなく、クランクシャフトSの方をX軸方向に移動させる機構とすることも可能である。3次元形状測定装置1がX軸方向に相対的に移動しながら、クランクシャフトSに対して光を投受光することで、クランクシャフトS全体の3次元形状を測定可能である。
なお、4つの3次元形状測定装置1a~1dのX軸方向の測定位置が互いに近いと、各3次元形状測定装置1a~1dから投光される光が互いに干渉して誤測定が発生するおそれがある。このため、例えば、4つの各移動機構3は、各3次元形状測定装置1a~1dがX軸方向に200mm程度の間隔を隔てるように、各3次元形状測定装置1a~1dを移動させる。
【0032】
支持装置4は、基台41と、基台41の両端部からそれぞれZ軸方向に延在する一対の支持部42と、を具備する。一方の支持部42は、クランクシャフトSのフロントSAを支持し、他方の支持部42は、クランクシャフトSのフランジSEを支持する。支持部42の上端はV字状に形成されており、これにより、クランクシャフトSは、安定した姿勢で支持される。
【0033】
なお、本実施形態に係る形状検査装置100が備える3次元形状測定装置1、移動機構3及び支持装置4としては、それぞれ特許文献6に記載の形状検査装置、移動装置及び支持装置と同様の構成を採用可能であるため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0034】
以下、上記の構成を有する形状検査装置100を用いたクランクシャフトSの形状検査方法について説明する。
本実施形態に係る形状検査方法は、第1ステップ~第5ステップを含むことを特徴としている。以下、各ステップについて順次説明する。
【0035】
<第1ステップ>
第1ステップでは、3次元形状測定装置1によってクランクシャフトSの表面形状を測定することで、クランクシャフトS表面の3次元点群データを取得する。
具体的には、クランクシャフトSを支持装置4上に配置し、移動機構3で4つの3次元形状測定装置1a~1dをX軸方向にフロントSA側に移動させる。そして、移動機構3で4つの3次元形状測定装置1a~1dをX軸方向にフランジSE側に移動させながらクランクシャフトSに対して光を投受光することで、クランクシャフトSの3次元形状を測定する。この際、各3次元形状測定装置1a~1dから投光される光が互いに干渉して誤測定が発生しないように、例えば、各3次元形状測定装置1a~1dがX軸方向に200mm程度の間隔を隔てるように、各3次元形状測定装置1a~1dを移動させる。例えば、各3次元形状測定装置1a~1dを200mm/sで移動させる場合には、1secずつ遅らせて各3次元形状測定装置1a~1dを移動させる。クランクシャフトSの長さは3~6気筒のエンジン用であれば、最大700mm程度であるので、移動距離を800mmとしても、8sec以内でクランクシャフトSの全長に亘る3次元点群データを取得可能である。
【0036】
上記のようにして取得されたクランクシャフトSの全長に亘る3次元点群データは、イーサネット(登録商標)等を介して、演算装置2に入力され、記憶される。演算装置2は、4つの3次元形状測定装置1a~1dによる測定結果を合成することで、クランクシャフトS表面全体の3次元点群データを生成(取得)する。
図5は、第1ステップで取得される3次元点群データの一例を示す図である。図5(a)は表面が錆びた状態のクランクシャフトSについて取得される3次元点群データの一例を、図5(b)はショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトSについて取得される3次元点群データの一例を示す。なお、図5には、4つの3次元形状測定装置1a~1dによる測定結果を合成するとき等に使用する位置合わせターゲットの3次元点群データも表示されているが、この位置合わせターゲットは特許文献6に記載のものと同様の機能を奏するため、ここでは詳細な説明を省略する。
図5(b)に示すように、ショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトSについて取得される3次元点群データにおいては、図5(a)に示す表面が錆びた状態のクランクシャフトSについて取得される3次元点群データでは生じていないノイズ(破線で囲んだデータ点)が、カウンタウェイト近傍に生じている。このノイズがカウンタウェイトの形状に関する測定精度を悪化させることになる。
【0037】
図6は、上記ノイズが生じる原因を説明する説明図である。図6に示す投光手段11から投光されたレーザ光は、ジャーナルSBの点Pに照射される。点Pは、図6の右側に隣接するカウンタウェイトSCによって、受光手段12の死角に位置するため、点Pで反射した光が受光手段12で直接受光されることはない。しかしながら、ジャーナルSBの点Pで正反射した光が図6の左側に隣接するカウンタウェイトSCの側面の点P’で更に正反射して、迷光として受光手段12で受光される場合がある。この場合、点Pが図6に示す位置P''(投光手段11の投光軸と受光手段12の受光軸が交差する点)に存在するかのように、投光手段11からの距離が測定されてしまう。ショットブラスト処理を施した直後のクランクシャフトSは、表面が金属光沢を有するため、上記の迷光の強度が強く、クランクシャフトS表面の3次元点群データの一部として取得される場合があることが分かった。
上記の迷光に起因したノイズを低減する対策としては、投光手段11から投光するレーザ光の強度を下げたり、受光手段11での光の検出しきい値を上げることも考えられる。しかしながら、このような対策では、カウンタウェイトSCの側面など、元々反射光の強度が小さい部位の形状測定が更に困難になる。そこで、本発明では、投光手段11や受光手段12に対する対策ではなく、迷光に起因したノイズを含んだ3次元点群データを取得した後に、後述の第2ステップにおいて、この3次元点群データに孤立点除去処理を施すことで、ノイズを低減する対策を採用している。
【0038】
<第2ステップ>
第2ステップでは、演算装置2が、第1ステップで取得した3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値Th1以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第1点群データを生成すると共に、最近接データ点までの距離が第1しきい値Th1よりも大きな第2しきい値Th2以上のデータ点を除去する孤立点除去処理を施して第2点群データを生成する。
具体的には、第1点群データについては、演算装置2が、3次元点群データに対して、最近接データ点までの距離が第1しきい値Th1未満の点群データを一つの塊として連結し、その塊毎にラベリング処理を施す。次いで、演算装置2が、ラベリングされた各塊のデータ点数と寸法(最外データ点間の距離)とを演算して、小さな塊(例えば、データ点数10以下、寸法10mm以下)を除去して、残った大きな塊のみを結合する。このような処理により、クランクシャフト表面に対応する本来の3次元点群データ(大きな塊)以外の第1しきい値Th1以上離れた位置にあるデータ点(小さな塊を構成するデータ点)のみが除去されることになる。第2点群データについても、しきい値として第1しきい値Th1よりも大きな第2しきい値Th1を用いる点を除き同様である。
【0039】
ここで、3次元点群データの長手方向(クランクシャフトSの回転中心軸Lに平行な方向)の測定ピッチをΔxとすると、カウンタウェイトSCの幅、高さ、外周径等の側面寸法を算出するために用いるカウンタウェイトSCの周面の点群データは、X軸方向にΔxのピッチで生成されるが、カウンタウェイトSCの長手方向位置を算出するために用いるカウンタウェイトの側面の点群データは、Y軸方向にΔx/tan(abs(β))のピッチで生成されることになる。なお、abs(β)はβの絶対値を意味する。したがい、迷光に起因したノイズの影響を低減するには、カウンタウェイトSCの側面寸法を算出する際に、以下の式(1)を満足する第1しきい値Th1を用いて生成した第1点群データを用い、カウンタウェイトSCの長手方向位置を算出する際に、以下の式(2)を満足する第2しきい値Th2を用いて生成した第2点群データを用いるのが好ましい。
Δx<Th1<4Δx ・・・(1)
Δx/tan(abs(β))<Th2 ・・・(2)
例えば、Δx=0.4mm、β=5°とすると、0.4mm<Th1<1.6mmとなり、4.5mm<Th2となる。
【0040】
図7は、第2ステップで生成される第1点群データ及び第2点群データの一例を示す図である。図7(a)は、ショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトSについて第1しきい値Th1=1.0mmで生成した第1点群データを示す。図7(b)は、ショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトSについて第2しきい値Th2=10mmで生成した第2点群データを示す。図7(a)に示すように、小さな第1しきい値Th1で生成した第1点群データは、カウンタウェイトSCの側面の点群データが一部欠落しているものの、カウンタウェイトSC近傍にノイズは全く存在せず、完全に除去されている。一方、図7(b)に示すように、大きな第2しきい値Th2で生成した第2点群データは、カウンタウェイトSCの側面の点群データが十分に存在するものの、カウンタウェイトSC近傍にノイズが残存している。
【0041】
<第3ステップ>
第3ステップでは、演算装置2が、第2ステップで生成した図7に示すような第1点群データ及び第2点群データと、クランクシャフトSの設計仕様に基づき予め用意されたクランクシャフトSの表面形状モデルとの距離が最小となるように、第1点群データ及び第2点群データを平行移動及び回転移動させて、表面形状モデルに重ね合わせる。すなわち、演算装置2は、第1点群データ及び第2点群データを構成する各データ点と表面形状モデルとの距離の総和、又は、距離の二乗和の総和が最小となるように、第1点群データ及び第2点群データを平行移動及び回転移動させて、表面形状モデルに重ね合わせる。
【0042】
<第4ステップ>
第4ステップでは、演算装置2が、第3ステップで表面形状モデルに重ね合わせられた第1点群データ及び第2点群データから、予め決められた加工基準部位の点群データである加工基準部位点群データを抽出し、前記抽出した加工基準部位点群データによって定まる加工基準の座標が、クランクシャフトSの機械加工時の座標系において予め決められた座標と合致するように、第1点群データ及び第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
【0043】
図8図10は、第4ステップを説明する説明図である。図8(a)は、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じていない場合のクランクシャフトSの回転中心軸Lの方向から見た正面図であり、図8(b)は、図8(a)に対応するクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向から見た側面図である。図9(a)は、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じている場合のクランクシャフトSの回転中心軸Lの方向から見た正面図であり、図9(b)は、図9(a)に対応するクランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向から見た側面図である。図10は、クランクシャフトSの回転中心軸Lに直交する方向から見た第1点群データ又は第2点群データの一例を示す図である。
図8図10に示すように、本実施形態では、加工基準部位は、クランクシャフトSの2箇所の軸部(具体的には、第1ジャーナルSB1及びフランジSE)、1箇所のピン(具体的には、第1ピンSD1)及び隣り合う2箇所のカウンタウェイト(具体的には、第4カウンタウェイトSC4及び第5カウンタウェイトSC5)に設定されている。また、加工基準は、2箇所の軸部(第1ジャーナルSB1及びフランジSE)それぞれの中心PK0、PK1、1箇所のピン(第1ピンSD1)の中心P及び2箇所のカウンタウェイト(第4カウンタウェイトSC4及び第5カウンタウェイトSC5)の対向する側面PN0、PN1に設定されている。
【0044】
具体的には、第4ステップにおいて、演算装置2は、加工基準部位であるクランクシャフトSの2箇所の軸部(第1ジャーナルSB1及びフランジSE)について、加工基準部位点群データとして、クランクシャフトSを固定するための固定チャック(具体的には、芯出しチャック、図示せず)が接触する部位の点群データBK0、BK1を抽出する。点群データBK0は、固定チャックの爪が接触する第1ジャーナルSB1の周方向4箇所の点群データであり、その位置は、第1点群データ及び第2点群データに重ね合わせられた表面形状モデルから認識可能である。同様に、点群データBK1は、固定チャックの爪が接触するフランジSEの周方向4箇所の点群データであり、その位置は、第1点群データ及び第2点群データに重ね合わせられた表面形状モデルから認識可能である。実際には、点群データBK0、BK1の範囲は、表面形状モデルから認識される位置の近傍も含むように、やや大きめに設定される。やや大きめに設定することで、後述のフィッティング処理における円筒の中心の算出精度を向上させることができる。
なお、点群データBK0、BK1の抽出には、第1点群データを用いるのが好ましい。
【0045】
そして、演算装置2は、抽出した4箇所の点群データBK0及び4箇所の点群データBK1に対して、それぞれ円筒をフィッティングさせるフィッティング処理を施し、フィッティングされた円筒の中心を算出して、この算出した中心を加工基準である2箇所の軸部(第1ジャーナルSB1及びフランジSE)それぞれの中心PK0、PK1とする。演算装置2は、加工基準PK0、PK1の座標が、クランクシャフトSの機械加工時の座標系(図8図10のXYZ座標系)において予め決められた座標と合致するように、第1点群データ及び第2点群データを平行移動及び回転移動させる。具体的には、クランクシャフトSの機械加工時の座標系における加工基準PK0、PK1の座標をそれぞれPK0(xk0,yk0,zk0)、PK1(xk1,yk1,zk1)とし、Y軸方向の平行移動量をyとし、Y軸周りの回転角度をy[rad]とし、Z軸方向の平行移動量をzとし、Z軸周りの回転角度をz[rad]とすると、演算装置2は、加工基準PK0、PK1がX軸上に位置するように、以下の式(3)~(6)に従って、第1点群データ及び第2点群データを平行移動及び回転移動させる。
=(xK0・yK1-yK0・xK1)/(xK0-xK1) ・・・(3)
=(xK0・zK1-yK0・xK1)/(xK0-xK1) ・・・(4)
=-180/π・tan-1((zK1-zK0)/(xK1-xK0)) ・・・(5)
=180/π・tan-1((yK1-yK0)/(xK1-xK0)) ・・・(6)
【0046】
また、第4ステップにおいて、演算装置2は、加工基準部位であるクランクシャフトSの1箇所のピン(第1ピンSD1)について、加工基準部位点群データとして、クランクシャフトSを固定するための固定チャック(具体的には、位相クランプ、図示せず)が接触する部位の点群データBAを抽出する。点群データBAは、固定チャックの爪が接触する第1ピンSD1の周方向2箇所の点群データであり、その位置は、第1点群データ及び第2点群データに重ね合わせられた表面形状モデルから認識可能である。実際には、点群データBAの範囲は、表面形状モデルから認識される位置の近傍も含むように、やや大きめに設定される。やや大きめに設定することで、第1ピンSD1の実際の角度や位置がずれることで、固定チャックの実際に接触する位置が設計位置からずれたとしても、精度良く第1ピンSD1の中心を算出することができる。
なお、点群データBAの抽出には、第1点群データを用いるのが好ましい。
【0047】
そして、演算装置2は、抽出した2箇所の点群データBAの最大のZ軸座標と最小のZ軸座標との中間座標zを算出して、加工基準である1箇所のピン(第1ピンSD1)の中心P(x,y,z)を求める。ここで、x,yは、それぞれ、設計仕様で決められた第1ピンSD1の形状において、X軸方向の中心となるX軸座標と、Y軸方向の中心となるY軸座標である。演算装置2は、加工基準Pの座標が、クランクシャフトSの機械加工時の座標系(図6図8のXYZ座標系)において予め決められた座標と合致するように、第1点群データ及び第2点群データを回転移動させる。具体的には、クランクシャフトSの機械加工時の座標系における加工基準Pの座標をP(x,y,z)とし、X軸周りの回転角度をx[rad]とすると、演算装置2は、加工基準PがXY平面内に位置するように、以下の式(7)に従って、第1点群データ及び第2点群データを回転移動させる。
=180/π・tan-1(z/y) ・・・(7)
【0048】
さらに、第4ステップにおいて、演算装置2は、加工基準部位であるクランクシャフトSの隣り合う2箇所のカウンタウェイト(第4カウンタウェイトSC4及び第5カウンタウェイトSC5)について、加工基準部位点群データとして、対向する側面の2箇所の点群データBN0、BN1を抽出する。点群データBN0、BN1の位置は、第1点群データ及び第2点群データに重ね合わせられた表面形状モデルから認識可能である。実際には、点群データBN0、BN1の範囲は、表面形状モデルから認識される位置の近傍も含むように、やや大きめに設定される。やや大きめに設定することで、カウンタウェイトSCの長手方向位置がずれたとしても、この設定した範囲に入っていれば、長手方向位置を算出可能である。
なお、点群データBN0、BN1の抽出には、第2点群データを用いるのが好ましい。
【0049】
そして、演算装置2は、抽出した2箇所の点群データBN0、BN1のそれぞれについてX軸座標の平均値を算出して、この算出したX軸座標を有する点を加工基準である2箇所のカウンタウェイトの対向する側面PN0、PN1とする。演算装置2は、加工基準PN0、PN1の座標が、クランクシャフトSの機械加工時の座標系(図6図8のXYZ座標系)において予め決められた座標と合致するように、第1点群データ及び第2点群データを平行移動させる。具体的には、クランクシャフトSの機械加工時の座標系における加工基準PN0、PN1のX軸座標をそれぞれxN0,xN1とし、X軸方向の平行移動量をxとすると、演算装置2は、加工基準PN0、PN1がYZ平面内に位置するように、以下の式(8)に従って、第1点群データ及び第2点群データを平行移動させる。
=-(xN0+xN1)/2 ・・・(8)
【0050】
図8に示すように、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じていない場合には、第4ステップを実行しても、第1点群データ及び第2点群データは平行移動及び回転移動しない、又は移動量はわずかである。これに対して、図9に示すように、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じている場合には、第4ステップを実行することで、図9(a)のY軸近傍に示す破線(X軸方向から見て加工基準PK0、Pを通る直線)がY軸に合致し、図9(b)のX軸近傍に示す破線(Z軸方向から見て加工基準PK0、PK1を通るクランクシャフトSの回転中心軸L)がX軸に合致するように、第1点群データ及び第2点群データが平行移動及び回転移動することになる。
以上に説明した第4ステップを実行することで、クランクシャフトSの機械加工時の座標系でクランクシャフトSの第1点群データ及び第2点群データが表される、換言すれば、クランクシャフトSの機械加工時の状態を再現することが可能になる。
【0051】
<第5ステップ>
第5ステップでは、演算装置2が、第4ステップで移動した後の第1点群データ及び第2点群データのそれぞれから、クランクシャフトSのカウンタウェイトSCの点群データであるカウンタウェイト点群データを抽出する。カウンタウェイト点群データの位置は、機械加工時の座標系で認識可能である一方、第4ステップを実行することで第1点群データ及び第2点群データがクランクシャフトSの機械加工時の座標系で表されているため、第1点群データ及び第2点群データにおけるカウンタウェイト点群データの位置も認識可能である。
【0052】
次いで、第5ステップでは、演算装置2が、第1点群データから抽出したカウンタウェイト点群データを用いてカウンタウェイトSCの側面寸法を算出し、第2点群データから抽出したカウンタウェイト点群データを用いてカウンタウェイトSCの長手方向位置を算出する。
以下、第5ステップで算出するカウンタウェイトSCの側面寸法及び長手方向位置について、具体的に説明する。
【0053】
[カウンタウェイトSCの幅W、高さH、H
図11は、カウンタウェイトSCの側面寸法の一種であるカウンタウェイトSCの幅W及び高さH、Hを説明する説明図である。
演算装置2は、図11(a)に破線で示すカウンタウェイト点群データを、カウンタウェイトSCの向きがY軸の正方向となるように、X軸周りに回転させる。図11(a)に示す例では、-180°(反時計回りに180°)回転させることになる。図11(b)に示す破線は、回転後のカウンタウェイト点群データである。次いで、演算装置2は、回転後のカウンタウェイト点群データから、予め決められた幅・高さ測定範囲(例えば、Y軸方向の基準位置±10mmの範囲)に含まれる点群データを抽出し、その点群データを構成するデータ点のZ軸座標の最大値zmax及び最小値zminを算出する。
そして、演算装置2は、カウンタウェイトSCの幅Wを以下の式(9)によって算出し、カウンタウェイトSCの高さH、Hを以下の式(10)及び式(11)によって算出する。
W=zmax-zmin ・・・(9)
=abs(zmax) ・・・(10)
=abs(zmin) ・・・(11)
上記の式(10)において、abs(zmax)はzmaxの絶対値を意味する。上記の式(11)において、abs(zmin)はzminの絶対値を意味する。
【0054】
[カウンタウェイトSCの外周径R]
図12は、カウンタウェイトSCの側面寸法の一種であるカウンタウェイトSCの外周径Rを説明する説明図である。
演算装置2は、図12(a)に破線で示すカウンタウェイト点群データを、予め決められた外周径測定方向の向きがY軸の正方向となるように、X軸周りに回転させる。図12(a)に示す例では、-θ(反時計回りにθ)回転させることになる。図12(b)に示す破線は、回転後のカウンタウェイト点群データである。次いで、演算装置2は、回転後のカウンタウェイト点群データから、予め決められた外周径測定範囲(例えば、Z軸方向の0±5mmの範囲)に含まれる点群データを抽出し、その点群データを構成するデータ点のY軸座標の最大値ymaxを算出する。
そして、演算装置2は、カウンタウェイトSCの外周径Rを以下の式(12)によって算出する。
R=abs(ymax) ・・・(12)
上記の式(12)において、abs(ymax)はymaxの絶対値を意味する。
【0055】
[カウンタウェイトSCの長手方向位置nFR、nFL
図13は、カウンタウェイトSCの長手方向位置nFR、nFLを説明する説明図である。
演算装置2は、図13に破線で示すカウンタウェイト点群データから、予め決められた長手方向位置測定範囲(例えば、X軸方向の基準位置±2.5mm、Y軸方向の基準位置±2.5mm、Z軸方向の基準位置±5mmの範囲)に含まれる点群データを抽出し、その点群データを構成するデータ点のX軸座標の平均値を算出する。カウンタウェイトSCのフロントSA側の側面に位置する点群データの平均値をxFR、カウンタウェイトSCのフランジSE側の側面に位置する点群データの平均値をxFLとし、表面形状モデルにおけるカウンタウェイトSCのフロントSA側の側面のX軸座標をxFR0、表面形状モデルにおけるカウンタウェイトSCのフランジSE側の側面のX軸座標をxFL0とすると、演算装置2は、カウンタウェイトSCの長手方向位置nFR、nFLを以下の式(13)及び式(14)によって算出する。
FR=xFR0-xFR ・・・(13)
FL=xFL-xFL0 ・・・(14)
長手方向位置nFR、nFLは、カウンタウェイトSCが表面形状モデルよりも厚くなる(X軸方向の寸法が大きくなる)ときに正となる値である。
【0056】
図14は、孤立点除去処理におけるしきい値(第1しきい値Th1又は第2しきい値Th2)がカウンタウェイトSCの幅測定及び長手方向位置測定の測定成功率に及ぼす影響を調査した結果の一例を示す。図14(a)は表面が錆びた状態のクランクシャフトSについて得られた結果を、図14(b)はショットブラスト処理を施した直後の表面が金属光沢を有するクランクシャフトSについて得られた結果を示す。何れの場合も、クランクシャフトSに曲がりやねじれが生じていない良品のクランクシャフトSを用いて、8つのカウンタウェイトSCの幅と、24箇所の長手方向位置とを測定し、測定不能や誤測定がなく、正しく測定できた数の割合を測定成功率とした。
図14(a)に示すように、表面が錆びた状態のクランクシャフトSの場合、迷光に起因したノイズが生じないため、孤立点除去処理におけるしきい値に関わらず、カウンタウェイトSCの幅を100%測定可能であった。一方、カウンタウェイトSCの長手方向位置については、カウンタウェイトSCの側面の測定ピッチ(Y軸方向の測定ピッチ)が4.5mmであるため、しきい値が5mmよりも小さくなるにつれて測定成功率が低下している。
【0057】
また、図14(b)に示すように、表面が金属光沢を有するクランクシャフトSの場合も、カウンタウェイトSCの長手方向位置については、図14(a)に示す表面が錆びた状態のクランクシャフトSの場合と同等の測定成功率である。一方、カウンタウェイトSCの幅については、迷光に起因したノイズが生じるため、しきい値が1mm(X軸方向の測定ピッチΔX=0.4mmの2.5倍)を超えたあたりから、測定成功率が低下している。
以上の結果から、前述のように、カウンタウェイトSCの幅等の側面寸法を算出する際に、式(1)を満足する第1しきい値Th1を用いて生成した第1点群データを用い、カウンタウェイトSCの長手方向位置を算出する際に、式(2)を満足する第2しきい値Th2を用いて生成した第2点群データを用いるのが好ましいことが分かる。
【0058】
なお、本実施形態の演算装置2は、カウンタウェイトSCの幅、高さ、外周径及び長手方向位置に限らず、その他のクランクシャフトSの形状も算出可能に構成されている。以下、演算装置2で算出可能な他の形状の例を説明する。
【0059】
[曲がりm]
図15は、クランクシャフトSの曲がりmを説明する説明図である。
演算装置2は、第1点群データから、クランクシャフトSの軸部(フロントSA、ジャーナルSB及びフランジSE)の点群データを抽出する。図15には、一例として、ジャーナルSBの点群データを破線で示している。
次いで、演算装置2は、抽出した軸部の点群データに対して、円筒をフィッティングさせるフィッティング処理を施し、フィッティングされた円筒の中心Cを算出する。この算出した中心Cの座標をC(x,y,z)とすると、演算装置2は、クランクシャフトの曲がりmを以下の式(15)によって算出する。
m=(y +z 1/2 ・・・(15)
【0060】
[鍛造厚みT、鍛造型ずれD
図16は、クランクシャフトSの鍛造厚みT及び鍛造型ずれDを説明する説明図である。図16(a)は鍛造厚みTを、図16(b)は鍛造型ずれDを説明する説明図である。
演算装置2は、第1点群データから、クランクシャフトSの軸部(フロントSA、ジャーナルSB及びフランジSE)の点群データを抽出する。図16には、一例として、ジャーナルSBの点群データを破線で示している。
次いで、演算装置2は、図16(a)に示すように、抽出した軸部の点群データを内包する直方体(直方体を構成する各面がX軸、Y軸又はZ軸の何れかに直交する直方体)を作成し、その直方体のZ軸座標の最大値zmax及び最小値zminを算出する。演算装置2は、クランクシャフトSの鍛造厚みTを以下の式(16)によって算出する。
T=zmax-zmin ・・・(16)
また、演算装置2は、図16(b)に示すように、図16(a)に示す軸部の点群データをX軸周りに45°(時計回りに45°)回転させ、回転後の軸部の点群データを内包する直方体(直方体を構成する各面がX軸、Y軸又はZ軸の何れかに直交する直方体)を作成し、その直方体のZ軸座標の最大値zmax及び最小値zminと、その直方体のY軸座標の最大値ymax及び最小値yminとを算出する。T+45=zmax-zminとし、T-45=ymax-yminとすると、演算装置2は、クランクシャフトSの鍛造型ずれDを以下の式(17)によって算出する。
=T+45-T-45 ・・・(17)
【0061】
[ねじれα
図17は、クランクシャフトSのねじれαを説明する説明図である。
演算装置2は、第1点群データから、クランクシャフトSのピンSDの点群データを抽出する。図17には、ピンSDの点群データを破線で示している。
次いで、演算装置2は、抽出したピンSDの点群データに対して、円筒をフィッティングさせるフィッティング処理を施し、フィッティングされた円筒の中心Cを算出する。この算出した中心Cの座標をC(x,y,z)とすると、演算装置2は、クランクシャフトのねじれαを以下の式(18)によって算出する。
【数1】
【0062】
以上に説明した本実施形態に係るクランクシャフトSの形状検査方法では、演算装置2が、第2ステップで3次元点群データに対して孤立点除去処理を施して第1点群データ及び第2点群データを生成し、その後に第3ステップで第1点群データ及び第2点群データを表面形状モデルに重ね合わせているが、この順番が逆であってもよい。すなわち、演算装置2が、3次元点群データを表面形状モデルに重ね合わせた後に、3次元点群データに対して孤立点除去処理を施して第1点群データ及び第2点群データを生成する方法を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b、1c、1d・・・3次元形状測定装置
2・・・演算装置
3・・・移動機構
4・・・支持装置
100・・・形状検査装置
S・・・クランクシャフト
SC・・・カウンタウェイト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17