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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】風管式環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20230512BHJP
   G01M 9/04 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G01N17/00
G01M9/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021081892
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175490
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】若原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高信 純一郎
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-234328(JP,A)
【文献】実開昭58-138053(JP,U)
【文献】特開昭61-178634(JP,A)
【文献】実開平01-117544(JP,U)
【文献】特開平05-026762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0182741(US,A1)
【文献】特開2008-286467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - 17/04
G01M 9/00 - 9/08
G01M 17/00 - 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器で生成された冷気を送風ダクトにより循環させるとともに、前記冷気の循環流路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、
前記送風ダクトは、前記冷却器で生成された前記冷気を循環させる送風機を内部に配設してなる第1ダクト部と、前記第1ダクト部の前又は後側で前記第1ダクト部と連結された第2ダクト部と、を備え、
前記第1ダクト部を、外側に断熱材を取り付けた外防熱とし、前記第2ダクト部を、内側に断熱材を取り付けた内防熱としてなるとともに、
前記第1ダクト部と前記第2ダクト部との結合部分に、前記結合部分の周方向に沿って電気ヒーターを配設してなる、
ことを特徴とする風管式環境試験装置。
【請求項2】
前記送風ダクトの外側を更に外装体で囲い、前記冷気の循環流路を断面二重筒構造に形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の風管式環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風管式環境試験装置に関し、特に高温からマイナス温度域(例えば、+60℃~-50℃)まで、広い温度範囲で各種の試験を行うのを可能にするための風管式環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、完成モデルの車両を室内等に置き、さまざまな自然環境・気象条件を設定し、車両への負荷をデータとして収集し、分析するための環境試験装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、一般に、管式環境試験装置では、マイナス温度域、特に-50℃程度まで下げた厳寒での環境試験は行わないため、風管は建屋の躯体、壁、床、天井にて施工をしている。そのため、マイナス温度域での試験をした場合の結露、凍結対策が取られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-223683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の管式環境試験装置では、マイナス温度域、特に-50℃程度の温度域まで下げた厳寒での環境試験は行わないため、結露、凍結対策が取られていなかった。そのため、従来の管式風洞環境試験装置を使用して、マイナス温度域まで下げた環境試験を行うとした場合、風管を建屋の躯体、壁、床、天井等に設置した構造とした場合には、内防熱、すなわち装置の内側に断熱材等を張り巡らす対策を必要とする。しかし、風管式では、金属で製作された送風機や冷却器等の空調機器を内部に配設している送風ダクトでは、空調機器等が断熱材を敷設する作業の邪魔をし、送風ダクトの内側に断熱材を敷設することは困難である。また、複数のダクト部を連結している送風ダクトでは、ダクト部分同志を連結している結合部分にヒートブリッジを形成し、送風ダクトの外側に結露・凍結を起こす問題点があった。
【0006】
そこで、低温環境下での各種の試験を行っても、結露、凍結等を防ぐことができる構造にした風管式環境試験装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、冷却器で生成された冷気を送風ダクトにより循環させるとともに、前記冷気の循環流路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、前記送風ダクトは、前記冷却器で生成された前記冷気を循環させる送風機を内部に配設してなる第1ダクト部と、前記第1ダクト部の前又は後側で前記第1ダクト部と連結された第2ダクト部と、を備え、前記第1ダクト部を、外側に断熱材を取り付けた外防熱とし、前記第2ダクト部を、内側に断熱材を取り付けた内防熱としてなるとともに、前記第1ダクト部と前記第2ダクト部との結合部分に、前記結合部分の周方向に沿って電気ヒーターを配設してなる、風管式環境試験装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、冷却器で生成された冷気を循環させる送風機を内部に配設している第1ダクト部では、内周側面に断熱材を敷設することは難しいが、外周側面に断熱材を敷設して外防熱としているので、内部に送風機を配設している断熱性を有した第1ダクト部は容易に形成できる。一方、送風機を設けていない第2ダクト部では、内周側面に断熱材を敷設して、内防熱の第2ダクト部を容易に形成できる。したがって、第1ダクト部と第2ダクト部は共に断熱性を有し、また連結されて一つの送風ダクトとして形成されているので、送風ダクト内で低温の大気を循環させても、循環される低温の大気と送風ダクトの外側における外気との間は遮断されて、循環される低温の大気は、外気の影響を受けることがない。これにより、送風ダクト内における結露や凍結を防ぐと共に、送風ダクト内の温度を常に必要とする適正な温度に維持することができる。
また、外防熱タイプの第1ダクト部と内防熱タイプの第2ダクト部とを連結させると、結合部分にヒートブリッジが発生し、そのヒートブリッジを介して熱が建屋躯体側に逃げやすい。しかし、この構成によれば、第1ダクト部と第2ダクト部との結合部分に、その結合部分の周方向に沿って電気ヒーターを配設させて、電気ヒーターによりヒートブリッジを防ぐようにしているので、結合部分の外側に結露・凍結が生じるのを防ぐことができる。そして、送風ダクト内の温度を必要とする適正な温度に維持した状態で環境試験を行うことができ、更に試験精度の向上が期待できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記送風ダクトの外側を更に外装体で囲い、前記冷気の循環流路を断面二重筒構造に形成している、風管式環境試験装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、送風ダクトの外側を外装体で筒状に囲い、冷気の循環流路を断面二重筒構造に形成しているので、送風ダクト内の冷気と外気との間の温度は、外装体により更に遮断される。これにより、送風ダクト内の温度を必要とする適正な温度に維持した状態で環境試験を行うことができるので、更に試験精度の向上が期待できる。また、送風ダクト内における結露や凍結を更に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却器で生成された冷気を循環させる送風機を内部に設けた第1ダクト部は外防熱での断熱仕様で形成されていると共に、第1ダクト部と連結された第2ダクト部は内防熱での断熱仕様で形成されている。すなわち、第1ダクト部と第2ダクト部共に断熱性を有して一つの送風ダクトとして形成されているので、送風ダクト内で低温の大気を循環させても、循環される低温の大気と送風ダクトの外側における外気との間は遮断されて、送風ダクト内を循環する低温の大気は外気の影響を受けることがない。これにより、送風ダクト内における結露や凍結を防ぐと共に、送風ダクト内の温度を常に必要とする適正な温度に維持できる。また、厳寒の環境も容易に作ることができるので、温度を-50度程度まで下げた厳寒環境での試験も可能となり、適用試験範囲も拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る風管式環境試験装置の機器配置構成を示す水平断面図である。
図2】同上風管式環境試験装置の外装体を取り除くと共に、一部を破断して内部機器の配置構成を示す斜視図である。
図3】空調機器等である送風機を内部に配設したダクト部の概略断面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5図3のB-B断面図である。
図6図3のC-C断面図である。
図7】同上風管式環境試験装置における電気ヒーターの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、低温環境下での各種の試験を行っても、結露、凍結等を防ぐことができる構造にした風管式環境試験装置を提供するという目的を達成するために、冷却器で生成された冷気を送風ダクトにより循環させるとともに、前記冷気の循環流路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、前記送風ダクトは、前記冷却器で生成された前記冷気を循環させる送風機を内部に配設してなる第1ダクト部と、前記第1ダクト部の前又は後側で前記第1ダクト部と連結された第2ダクト部と、を備え、前記第1ダクト部を、外側に断熱材を取り付けた外防熱とし、前記第2ダクト部を、内側に断熱材を取り付けた内防熱としてなるとともに、前記第1ダクト部と前記第2ダクト部との結合部分に、前記結合部分の周方向に沿って電気ヒーターを配設してなる、構成としたことにより実現した。
【実施例
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0015】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0016】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0017】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の風管式環境試験装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0018】
図1及び図2は本発明に係る風管式環境試験装置10の機器配置構成の一例を示すものであり、図1はその水平断面図、図2はその風管式環境試験装置10の外装体16を取り除き、かつ、一部を破断して内部機器の配置構成を示す斜視図である。
【0019】
図1及び図2において、風管式環境試験装置10(以下、単に「環境試験装置10」という)は、高温からマイナス温度域(例えば、+60℃~-50℃)まで、広い温度範囲の環境下で、被検体としての自動車Mの風切り音の測定、自動車Mのエンジンに供給されるガソリンの気化状態や空調装置の性能等を建屋内において試験をするための環境試験装置である。その環境試験装置10は、被試験車両である自動車Mの性能試験等を行う環境試験室11と、環境試験室11内の空気を循環させるための風管である風胴12とを備えている。
【0020】
環境試験室11には、低温での環境試験を行う場合に、被試験車両の全体を予め低温に冷やしておくソーク室(図示せず)等から環境試験室11の試験位置13(図1中の自動車Mが配置されている位置)に、自動車Mを出し入れするための出入口11Aと、冷風(空気)を取り入れるための、前面壁11aに形成した風送入口11Bと、風送入口11Bから環境試験室11内に流入された冷風を順次排出するための後面壁11bに形成した風排出口11Cが設けられている。また、環境試験室11の出入口11Aには、開閉ドア14が設けられている。
【0021】
風胴12は、断面略矩形状をした筒状の送風ダクト15と、送風ダクト15の外側を覆った、同じく断面略矩形状をした筒状の外装体16と、を有して、断面多重筒構造を成している。
【0022】
送風ダクト15の一端側の開口15aは、環境試験室11の前面壁11aに設けられている風送入口11Bから環境試験室11内に差し込まれて、環境試験室11内の試験位置13に向けて開放されている。一方、送風ダクト15の他端側の開口15bは、環境試験室11の後面壁11bに設けられている風排出口11Cから環境試験室11内に差し込まれて、試験位置13に向けて開放されている。すなわち、送風ダクト15は、環境試験室11を前後端に挟んで、平面視概略矩形のループ状に形成されており、送風ダクト15の開口15aから環境試験室11内に吹き込まれた低温(又は高温)の大気を、送風ダクト15の開口15bから再び送風ダクト15内に取り込み、更に送風ダクト15内を開口15a側に流し、再び送風ダクト15の開口15aから環境試験室11内に送り込む、冷気の循環流路を形成する。
【0023】
送風ダクト15の第1コーナー箇所15Aには、開口15bから送風ダクト15内に吸い込まれて来た低温の大気の流れを、第2コーナー箇所15B側に導く第1コーナーベーン17が設けられ、送風ダクト15の第2コーナー箇所15Bには、第1コーナーベーン17を通って来た低温の大気の流れを、第3コーナー箇所15C側に導く第2コーナーベーン18が設けられ、送風ダクト15の第3コーナー箇所15Cには、第2コーナーベーン18を通って来た低温の大気の流れを、第4コーナー箇所15D側に導く第3コーナーベーン19が設けられ、送風ダクト15の第4コーナー箇所15Dには、第3コーナーベーン19を通って来た低温の大気の流れを、環境試験室11側に導く第4コーナーベーン20が設けられている。
【0024】
また、送風ダクト15の風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aまでの間のダクト部151は、風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aに向かうに従い、開口断面積が徐々に大きくなる拡散胴21(以下、これを「第1拡散胴21」と言う)で形成されている。第2コーナー箇所15Bと第3コーナー箇所15Cとの間のダクト部153には、ダクト部154側に向けて冷気を送る強制循環用の送風機22が設けられ、第3コーナー箇所15Cと第4コーナー箇所15Dとの間のダクト部154には、送風ダクト15内を流れる-50度の厳寒大気流を形成可能な図示しない冷却器が設けられている。
【0025】
第2コーナー箇所15Bと第3コーナー箇所15Cとの間のダクト部153は、送風機22を設けた第1ダクト部153aが第2コーナー箇所15Bから第3コーナー箇所15Cへ向かうに従い、開口断面積が徐々に小さくなる縮流胴23(以下、これを「第1縮流胴23」という)と、第1縮流胴23の下流端から第3コーナー箇所15Cに向かうに従い、開口断面積が徐々に大きくなる拡散胴24(以下、これを「第2拡散胴24」という)とで形成されている。そして、送風機22は、第1縮流胴23内に配設されている。
【0026】
第4コーナー箇所15Dとから風送入口11Bまでの間のダクト部155は、整流胴25と、整流胴25の下流端から風送入口11Bへ向かうに従い、開口断面積が徐々に小さくなる縮流胴26(以下、これを「第2縮流胴26」という)とで形成されている。そして、縮流胴26の先端は、送風ダクト15の開口15aとして、環境試験室11内に開口している。
【0027】
送風ダクト15の外側面を覆った筒状の外装体16は、ダクト部151、ダクト部152、ダクト部153、ダクト部154、ダクト部155の外周面を連続的に覆い、断面二重構造をした風胴12を形成し、送風ダクト15内の冷気が風胴12の外側における環境温度の影響を受けないように、熱を遮断する役目をなしている。
【0028】
次に、このように構成された環境試験装置10の動作を説明する。この環境試験装置10では、環境試験室11内に、例えば、+60℃~-50℃の環境を再現して試験を行うことができる。そして、例えば-50℃程度の極寒の環境を再現して低温環境試験を行う場合は、試験に先立ち、ソーク室内で予め低温に冷やされた被検体としての自動車Mを、環境試験室11内の試験位置13まで運び込む。
【0029】
そして、試験が開始されると、ダクト部153内の送風機22とダクト部154内の冷却器とが駆動される。送風機22が駆動されると、送風機22の後側(第2コーナーベーン18側)が負圧で、送風機22の前側(第2拡散胴24側)が正圧となる。これにより、送風機22は、環境試験室11内の空気を風排出口11C側の開口15bから送風ダクト15内に取り込み、ダクト部154内の図示しない冷却器側へ強制的に送る。なお、図1中において、送風ダクト15内に示す矢印は、空気が流れる方向を示している。また、ダクト部154内の図示しない冷却器では、送風ダクト15内を流れる気流を厳寒(例えば、-50℃)の大気流まで冷し、冷やされた厳寒大気流を風送入口11B側の開口15aから環境試験室11内に吹き出し供給する。吹き出された厳寒大気流の一部は、自動車Mに当たり、また自動車Mの後側に廻った風が、風排出口11C側の開口15bから送風ダクト15内に吸い込まれて、再び送風ダクト15内に戻される。さらに、送風ダクト15内に戻された厳寒大気流は、ダクト部151、ダクト部152、ダクト部153,ダクト部154、ダクト部155を順に通り、途中でダクト部154内の冷却器により再び厳寒大気流の温度まで冷やされ、風送入口11B側の開口15aから自動車Mに向けて吹き出される。このようにして、厳寒大気流を循環させることにより、環境試験室11内には厳寒の環境が再現され、厳寒環境下での試験を行うことができる。
【0030】
ところで、このように厳寒大気流を流す送風ダクト15では、送風ダクト15内を流す大気流に、送風ダクト15の外側における環境温度の影響を受けないようにするのに、例えば図3図6に示すように、送風ダクト15に断熱材31を設けている。その断熱構造を図3図7を加えて更に説明する。図3図6は、送風ダクト15の中の、ダクト部153における第1縮流胴23の周辺箇所を拡大して示している。そして、図3はダクト部153の断面図、図4図3のA-A断面図、図5図3のB-B断面図、図6図3のC-C断面図であり、図7は後述する電気ヒーター32の平面図である。
【0031】
送風ダクト15に設ける断熱材31は、熱損失を考慮すると、送風ダクト15の内面側に設けて内防熱とするのが一般的である。しかし、図3に示すダクト部153のように、内部に送風機22を設置した第1ダクト部153aの構造の場合では、送風機22が断熱材31の設置の邪魔をし、内防熱とすることが難しい。したがって、第1ダクト部153aの外側に断熱材31を設けた外防熱にせざるを得ない。一方、第1ダクト部153aの前後で、第1ダクト部153aと連結された第2ダクト部153bと第3ダクト部153cは熱損失を考慮し、断熱材31を内側に設けた内防熱にしている。
【0032】
ここで問題となるのが、外防熱とした第1ダクト部153aの前後に、内防熱とした第2ダクト部153b、第3ダクト部153cを各々連結した構造とした場合、第1ダクト部153aと第2ダクト部153bとの結合部分153A、及び、第1ダクト部153aと第3ダクト部153cとの結合部分153Bに、それぞれヒートブリッジが発生し、送風ダクト15の外部に結露・凍結を起こす問題が発生する。
【0033】
そこで、本実施例の環境試験装置10では、外防熱とした第1ダクト部153aと内防熱とした第2ダクト部153bとの結合部分153Aの外側、及び、第1ダクト部153aと第3ダクト部153cとの結合部分153Bの外側に、それぞれ結合部分153A、153Bの周方向に沿って電気ヒーター32を配設している。電気ヒーター32は、ダクト部153の外周形に倣って、図7に示すように矩形状に形成されており、結合部分153A及び結合部分153Bの外面に、それぞれダクト部(153a、153b、153c)の周方向に沿って略密着して配設されている。そして、電気ヒーター32は、図示しないセンサーにより、結合部分153A及び結合部分153Bでの結露・凍結が検出されると、通電されて加温され、結露・凍結を解くように機能する。なお、電気ヒーター32は、ダクト部153の箇所に限らず、これ以外にも外防熱としたダクト部と内防熱とした送風ダクト部との結合部分にも適用可能であり、適用することによって結露・凍結を解くことが可能になる。
【0034】
したがって、本実施例で説明した環境試験装置10によれば、送風機22等を通路途中に設けた第1ダクト部153aでは、内周側面に断熱材31を敷設することは難しいが、外周側面に断熱材31を敷設しているので、通路途中の内側に空調機器である送風機22であっても断熱性能を有する第1ダクト部153aを容易に形成することができる。一方、送風機22等を設けていない第2ダクト部153b及び第3ダクト部153cでは、内周側面に断熱材31を敷設することは容易であり、そして内周側面にそれぞれ断熱材31を敷設しているので、内防熱の第2ダクト部153b及び第3ダクト部153cを容易に形成することができる。そして、第1ダクト部153aと第2ダクト部153bと第3ダクト部153cが、共に断熱性を有し、かつ、連結されて一つの送風ダクト15として形成されているので、送風ダクト15内で低温の大気を循環させても、送風ダクト15の外側における外気との間は互いに断熱されて、外気の影響を受けることがない。これにより、送風ダクト15内における結露や凍結を防ぐことができると共に、送風ダクト15内の温度を常に必要とする適正な温度に維持することができる。
【0035】
また、外防熱タイプの第1ダクト部153aと内防熱タイプの第2ダクト部153b、又は、外防熱タイプの第1ダクト部153aと内防熱タイプの第3ダクト部153c、とを接合させると、結合部分153A、153Bにヒートブリッジが発生し、そのヒートブリッジを介して建屋躯体側(外側)に熱が逃げやすいが、第1ダクト部153aと第2ダクト部153bとの結合部分153A、及び、第1ダクト部153aと第3ダクト部153cとの結合部分153Bに、それぞれ周方向に沿って電気ヒーター32を配設して、その電気ヒーター32によりヒートブリッジを防ぐようにしているので、送風ダクト15内の温度を必要とする適正な温度に維持した状態で環境試験を行うことができ、更に試験精度の向上が期待できる。また、送風ダクト15内における結露や凍結を更に防ぐことができる。
【0036】
また、送風ダクト15の外側を更に外装体16で囲い、冷気の循環路を断面二重筒構造に形成しているので、送風ダクト15内の冷気と外気との間の温度は、外装体16により更に遮断される。これにより、送風ダクト15内の温度を必要とする適正な温度に維持した状態で環境試験を行うことができるので、更に試験精度の向上が期待できる。
【0037】
なお、本実施例では、送風機22を配設した第1縮流胴23の箇所について説明した。しかし、送風機22を配設した第1縮流胴23の箇所に限ることなく、空調機器等に関連して送風ダクト15内に配置される、例えば図示しない冷却器等を内部に配設したダクト部154等にも適用できる。
【0038】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0039】
10 :風管式環境試験装置
11 :環境試験室
11A :出入口
11B :風送入口
11C :風排出口
11a :前面壁
11b :後面壁
12 :風胴
13 :試験位置
14 :開閉ドア
15 :送風ダクト
15A :第1コーナー箇所
15B :第2コーナー箇所
15C :第3コーナー箇所
15D :第4コーナー箇所
15a :開口
15b :開口
16 :外装体
17 :第1コーナーベーン
18 :第2コーナーベーン
19 :第3コーナーベーン
20 :第4コーナーベーン
21 :第1拡散胴
22 :送風機
23 :第1縮流胴
24 :第2拡散胴
25 :整流胴
26 :第2縮流胴
31 :断熱材
32 :電気ヒーター
151 :ダクト部
152 :ダクト部
153 :ダクト部
153A :結合部分
153B :結合部分
153a :第1ダクト部
153b :第2ダクト部
153c :第3ダクト部
154 :ダクト部
155 :ダクト部
M :自動車(被検体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7