(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】スクリュープレスのスクリュー羽根測定装置及びスクリュー羽根測定方法
(51)【国際特許分類】
B30B 9/14 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
B30B9/14 Z
(21)【出願番号】P 2020106962
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真司
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187673(JP,A)
【文献】米国特許第03932941(US,A)
【文献】特開2002-346794(JP,A)
【文献】国際公開第2006/086116(WO,A1)
【文献】実公平07-013917(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/12-9/14
C02F 11/12-11/125
B01D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の通孔を有した外筒(6)と、外筒(6)の内周面に張設した通孔より細目の細孔を有したスクリーン(7)で構成した円筒状のろ過体(3)内にスクリュー羽根(4)を巻き掛けたスクリュー軸(5)を配置するスクリュープレスにおいて、
外筒(6)から外側に突設し、ろ過体(3)の始端側から終端側に渡って設けられた複数の基部(13)と、
各基部(13)とスクリーン(7)を貫通する測定孔(14)と、
測定孔(14)を閉止して着脱自在なプラグ(15)と、
測定孔(14)に挿入してスクリュー羽根(4)先端から
基部(13)までの距離を測定する測定器(18)と、を備え
、
測定孔(14)をろ過体(3)の始端側から終端側に渡って設けるとともに隣り合う基部(13)を連結してろ過体(3)の補強部材とする
ことを特徴とするスクリュープレスのスクリュー羽根測定装置。
【請求項2】
多数の通孔を有した外筒(6)と、外筒(6)の内周面に張設した通孔より細目の細孔を有したスクリーン(7)で構成した円筒状のろ過体(3)内にスクリュー羽根(4)を巻き掛けたスクリュー軸(5)を配置するスクリュープレスのスクリュー羽根測定方法において、
外筒(6)から外側に突設し、ろ過体(3)の始端側から終端側に渡って設けられた複数の基部(13)とスクリーン(7)を貫通する
とともにろ過体(3)の始端側から終端側に渡って設けられた測定孔(14)を閉止するプラグ(15)を取り外し、
測定孔(14)の真下にスクリュー羽根(4)の先端が位置するようにスクリュー軸(5)を回転し、
測定孔(14)に測定器(18)を挿入すると共に測定器(18)をスクリュー羽根(4)に当接し、
スクリュー羽根(4)先端から
基部(13)までの距離が、
スクリーン(7)内周面から基部(13)までの厚みと等しければ、スクリュー羽根(4)が摩耗していないと判断し、
スクリュー羽根(4)先端から
基部(13)までの距離が、
スクリーン(7)内周面から基部(13)までの厚みより大きければ、スクリュー羽根(4)が摩耗していると判断する
ことを特徴とするスクリュープレスのスクリュー羽根測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープレスのメンテナンスにおいて、スクリュー羽根の摩耗量を測定する装置及びスクリュー羽根の摩耗量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリュープレスは、円筒状のスクリーン内にスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を備えており、運転時にはスクリーンにスクリュー羽根を摺動させてスクリーンに堆積した汚泥を搬送している。従って、スクリーンとスクリュー羽根の刃先の隙間はスクリュープレスの脱水性能に大きな影響を与える。そして、スクリュープレスの運転によってスクリュー羽根は徐々に摩耗しており、摩耗が進むとスクリーン近傍の汚泥を掻き取って搬送することができなくなる。
そして、特許文献1には、多数の通孔を設けた半円筒状の支持枠体にメタルメッシュを張設し、2つの支持枠体を合着して円筒状の外筒を構成するスクリュープレスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリュープレスの運転によってスクリュー羽根は次第に摩耗していくが、特許文献1のようなスクリュープレスは、半円筒状の支持枠体を合着する構造のため、合着した後はスクリュー羽根とメタルメッシュの隙間を確認することができない。よって、スクリュー羽根の摩耗状態を確認するには、その都度支持枠体を取り外してスクリュー羽根を確認する必要があった。
【0005】
この発明は、円筒状のろ過体内にスクリュー羽根を備えるスクリュープレスにおいて、ろ過体の外部からスクリュー羽根とろ過体の間隙を測定し、スクリュー羽根の摩耗量を測定するスクリュー羽根測定装置及びスクリュー羽根測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多数の通孔を有した外筒と、外筒の内周面に張設した通孔より細目の細孔を有したスクリーンで構成した円筒状のろ過体内にスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を配置するスクリュープレスにおいて、外筒から外側に突設し、ろ過体の始端側から終端側に渡って設けられた複数の基部と、各基部とスクリーンを貫通する測定孔と、測定孔を閉止して着脱自在なプラグと、測定孔に挿入してスクリュー羽根先端から基部までの距離を測定する測定器と、を備え、測定孔をろ過体の始端側から終端側に渡って複数設けるとともに隣り合う基部を連結してろ過体の補強部材とすることで、ろ過体の外部からスクリュー羽根の摩耗状態を確認することができるとともに、ろ過体の耐久性が向上する。
【0008】
多数の通孔を有した外筒と、外筒の内周面に張設した通孔より細目の細孔を有したスクリーンで構成した円筒状のろ過体内にスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を配置するスクリュープレスのスクリュー羽根測定方法において、外筒から外側に突設し、ろ過体の始端側から終端側に渡って設けられた複数の基部とスクリーンを貫通するとともにろ過体の始端側から終端側に渡って設けられた測定孔を閉止するプラグを取り外し、測定孔の真下にスクリュー羽根の先端が位置するようにスクリュー軸を回転し、測定孔に測定器を挿入すると共に測定器をスクリュー羽根に当接し、スクリュー羽根先端から基部までの距離が、スクリーン内周面から基部までの厚みと等しければ、スクリュー羽根が摩耗していないと判断し、スクリュー羽根先端から基部までの距離が、スクリーン内周面から基部までの厚みより大きければ、スクリュー羽根が摩耗していると判断することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、スクリュープレスのスクリュー羽根の摩耗状態をろ過体の外部から確認することができるため、スクリュー羽根の摩耗状態を確認するのにろ過体を分解する作業を必要としない。スクリュー羽根の測定を簡便に行えるため、測定頻度を高く設定し、スクリュー羽根の摩耗を早い段階で判断することができる。よって、スクリュー羽根が摩耗した場合に速やかにスクリュー羽根を交換することができ、常時安定した脱水運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスクリュープレスの断面図である。
【
図2】同じく、スクリュープレスの脱水運転中の要部断面図である。
【
図3】同じく、スクリュープレスのスクリュー羽根測定時の要部断面図である。
【
図4】同じく、スクリュープレスのスクリュー羽根摩耗時の要部断面図である。
【
図5】同じく、スクリュープレスのろ過体の正面断面図である。
【
図6】同じく、スクリュープレスのろ過体の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係るスクリュープレスの断面図である。
本発明のスクリュープレス1は、前後のスタンド2に円筒状のろ過体3を支架して構成し、ろ過体3内にはスクリュー羽根4を巻き掛けた回転駆動するスクリュー軸5を配置している。ろ過体3は、多数の通孔を有した外筒6と、外筒6の内周面に張設した通孔より細目の細孔を有したスクリーン7で構成される。スクリュー軸5の始端部には汚泥の供給路8が設けてあり、供給路8の供給口9がろ過体3始端側に開口してある。スクリュー軸5の終端部に駆動軸10が連結してあり、駆動軸10には駆動用のスプロケット11が嵌着してある。そして、スクリュー軸5に巻き掛けたスクリュー羽根4がろ過体3の始端部に供給された汚泥を終端側に向かって移送させ、ろ過体3のスクリーン7からろ液を排出しながらろ過・脱水する。ろ過体3の終端部に配置した押圧板12で汚泥に背圧を加え、排出口から脱水されたケーキを排出する。
【0012】
外筒6はスクリーン7の補強部材で、通孔はスクリーン7の細孔を透過したろ液をろ過体3外部に排出できれば形状、大きさを限定しない。本実施例では外筒6としてパンチングメタルを用いているが、例えば格子状のリブで円筒を形成して外筒6に用いてもよい。
【0013】
図2は、本発明に係るスクリュープレスの脱水運転中の要部断面図である。
ろ過体3内に配置されたスクリュー羽根4は、先端をスクリーン7に摺接させながら回転し、汚泥を移送している。ろ過体3は、外筒6から外側に突設する基部13を有し、基部13及びスクリーン7を貫通する測定孔14を備える。
【0014】
図2に示すように、スクリュープレス1の脱水運転中は、測定孔14にプラグ15を嵌入して閉止する。プラグ15は測定孔14に嵌入する嵌入部16を有し、嵌入部16の上端にはプラグ15を把持するためのキャップ17を備える。測定孔14の内周面にネジを切り、嵌入部16には測定孔14に対応したネジを切ることで、プラグ15を着脱可能とする。本実施例ではネジによりプラグ15を着脱可能としているが、スクリュープレス1の脱水運転中に測定孔14を閉止できれば、プラグ15の形態、着脱構造はこれに限定されず公知の技術を利用できる。
【0015】
測定孔14はろ過体3の始端側から終端側に渡って複数設けることで、スクリュー羽根4の始端側から終端側まで摩耗量を測定できる。基部13は、複数の基部13を連結してろ過体3の補強部材とすることができる。
【0016】
図3は、本発明に係るスクリュープレスのスクリュー羽根測定時の要部断面図である。
スクリュー羽根4測定時には、測定孔14からプラグ15を取り外し、測定孔14に測定器18を挿入してスクリュー羽根4の摩耗量を測定する。測定器18は、予め目盛りを設けたスケール18、又は非接触の距離計など、長さを測定する公知の技術を利用する。
【0017】
スクリュー羽根4の摩耗量を測定する際には、スクリュー羽根4を回転して測定孔14の真下にスクリュー羽根4の先端を移動させると共に、測定器18を測定孔14に挿入し、スクリュー羽根4の先端と当接させる。通常、スクリュー羽根4はスクリーン7と摺接しながら回転しているため、スクリュー羽根4先端から外筒6の基部13上端までの距離は、スクリーン7と外筒6の基部13の厚みと等しくなる。よって、スクリュー羽根4先端から外筒6の基部13上端までの距離が、スクリーン7と外筒6の基部13の厚みと等しければ、スクリュー羽根4が摩耗していないと判断できる。
【0018】
図4は、本発明に係るスクリュープレスのスクリュー羽根摩耗時の要部断面図である。
スクリュープレス1の運転によりスクリュー羽根4が摩耗した場合、スクリュー羽根4とスクリーン7に隙間ができ、スクリュー羽根4の先端から外筒6の基部13上端までの距離が大きくなる。従って、測定孔14に測定器18を挿入すると、スクリュー羽根4が摩耗していない状態と比べて深く挿入される。よって、スクリュー羽根4先端から外筒6の基部13上端までの距離が、スクリーン7と外筒6の基部13の厚みより大きければ、スクリュー羽根4が摩耗していると判断できる。
【0019】
スクリュー羽根4が摩耗していると判断した場合、スクリュー羽根4とスクリーン7が摺接しておらず、スクリュープレス1の脱水性が低下しているため、ろ過体3を分解してスクリュー羽根4を交換する。
【0020】
図5は、本発明に係るスクリュープレスのろ過体の正面断面図である。
図6は、本発明に係るスクリュープレスのろ過体の要部断面図である。
本発明のろ過体3は、半円筒状の外筒6の内周面にスクリーン7を張設し、一対の外筒6を向かい合わせに合着してろ過体3を構成する。半円筒状の外筒6は両端縁20の合着部にフランジ19を設け、フランジ19の段部にスクリーン7の屈曲した端縁20を載置する。スクリーン7の端縁20には固定板21を当接し、固定板21に挿入した固定ネジ22がスクリーン7を挿通して外筒6のフランジ19に螺着している。ろ過体3を一対の外筒6を合着して構成することで、スクリュー羽根4が摩耗した際には、一対の外筒6の一方を取り外すことでスクリュー羽根4の交換が可能となる。
【符号の説明】
【0021】
3 ろ過体
4 スクリュー羽根
5 スクリュー軸
6 外筒
7 スクリーン
13 基部
14 測定孔
15 プラグ
18 測定器